平成2(オ)53 配当異議

裁判年月日・裁判所
平成6年4月5日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄自判 名古屋高等裁判所 金沢支部 平成1(ネ)44
ファイル
hanrei-pdf-62667.txt

判決文本文2,799 文字)

主文 一原判決及び第一審判決を次のとおり変更する。 金沢地方裁判所が同庁昭和六一年(リ)第一三四号、第一四〇号、第一六〇号、第一六二号、第一九四号、第二二〇号、第二四〇号、第二五九号、第二七五号、第三〇九号配当等手続事件について、昭和六二年一月二九日作成した配当表のうち、上告人に対する配当金を一五五万六三一〇円と、被上告人に対する配当金を零円と変更する。 二訴訟の総費用は、被上告人の負担とする。 理由 上告代理人田中幹則、同智口成市の上告理由第二の一について一原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。 1 被上告人と訴外D、同Eとの間に昭和六一年三月二二日金沢地方法務局所属公証人F作成に係る同年第四二二号金銭消費貸借契約公正証書(以下「本件公正証書」という。)が存在し、本件公正証書には、(1) 被上告人はDに対し、昭和六一年二月一三日二〇〇〇万円を、弁済期同年三月一三日、利息年一五パーセント、遅延損害金年三〇パーセントと定めて貸し付けた、(2) Eは被上告人に対し、Dの右債務につき連帯保証した、(3) D、Eは、右債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨を約した、と記載されている。 2 本件公正証書が作成された経緯は、(1) 被上告人は、昭和六一年二月五日から同年三月一九日にかけて、Dに対し、第一審判決添付別表(一)の1ないし6のとおり合計二八三万七〇九一円を貸し付け(以下「本件1ないし6の貸付け」という。)、同年二月末ころか三月初めころには、Dとの間で、Dが被上告人に対して負担している四九五万円のリース料相当損害金の賠償債務を消費貸借の目的とする旨を合意した(以下「本件準消費貸借」という。)、(2) 被上告人は、そのころ- 1 -Dから資金援助を要請され に対して負担している四九五万円のリース料相当損害金の賠償債務を消費貸借の目的とする旨を合意した(以下「本件準消費貸借」という。)、(2) 被上告人は、そのころ- 1 -Dから資金援助を要請されたので、二〇〇〇万円を限度としてこれに応ずることとし、その弁済を確保するため、昭和六一年三月二二日D、Eとの間で本件公正証書を作成した、(3) その際、被上告人とDは、本件1ないし6の貸付け債権と本件準消費貸借債権を本件公正証書に記載された消費貸借の目的とすることを合意し、被上告人は、その後も二〇〇〇万円を限度に逐次貸し付けることを約した、(4)被上告人は、昭和六一年四月二日から同年八月四日にかけて、Dに対し、第一審判決添付別表(一)の7ないし21のとおり合計八三三万一九九四円を貸し付けた(以下「本件7ないし21の貸付け」という。)、というのである。 3 金沢地方裁判所は、同庁昭和六一年(リ)第一三四号、第一四〇号、第一六〇号、第一六二号、第一九四号、第二二〇号、第二四〇号、第二五九号、第二七五号、第三〇九号配当等手続事件の昭和六二年一月二九日の配当期日において、Eが執行供託した一五五万七四八〇円から手続費用一一七〇円を除いた一五五万六三一〇円を、上告人の債権額(元利金一八七二万八三九五円)と被上告人の本件公正証書記載の債権額(元利金二一五二万八七六六円)で按分し、上告人に七二万四〇二五円を、被上告人に八三万二二八五円を配当する旨の配当表(以下「本件配当表」という。)を作成したが、上告人は、本件配当表の記載のうち、被上告人の本件公正証書記載の債権への配当の全額につき配当異議を申し立てた。 二上告人の本訴請求は、本件公正証書記載の債権が存在しないとして、本件配当表のうち、上告人への配当金を一五五万六三一〇円と、被上告人への配当金を零円とす の配当の全額につき配当異議を申し立てた。 二上告人の本訴請求は、本件公正証書記載の債権が存在しないとして、本件配当表のうち、上告人への配当金を一五五万六三一〇円と、被上告人への配当金を零円とする旨の変更を求めるものであるが、原審は、前記の事実関係に基づき、本件公正証書記載の債権は、(1) 本件7ないし21の貸付け債権とは同一性がないが、(2) 本件1ないし6の貸付け債権及び本件準消費貸借債権(元利合計八一二万五七三四円)とは同一性があり、その限度で債務名義として有効であると判断し、手続費用を除く前記配当総額を上告人の前記債権額と被上告人の右(2)の債権額で按- 2 -分し、本件配当表のうち、上告人への配当金を一〇八万五三八九円と、被上告人への配当金を四七万九二一円と変更する限度で、上告人の請求を一部認容した。 三しかし、原審の右二の(2)の判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 公正証書に記載された債権の発生原因事実が多少真実の事実と一致しないところがあっても、その記載により債権の同一性が認識できる場合は、その公正証書は真実の債権と一致する部分に限り、債務名義としての効力を有する(最高裁昭和四五年(オ)第二五〇号同年一〇月一日第一小法廷判決・裁判集民事一〇一号七頁)。 そして、原審の確定した前記事実関係によれば、本件公正証書に記載された債権の発生原因事実は、本件1ないし6の貸付け債権及び本件準消費貸借債権の発生原因事実と、契約日、金額などの点で全く一致せず(仮に、本件公正証書作成に際し、これらを一口の債権にとりまとめて消費貸借の目的としたと理解しても、契約日、金額など全く一致しない。)、これらの債権を含め将来二〇〇〇万円の限度で逐次貸し付けるとの当事者間の前記合意とも一致しない。したがって、本件公正証書に めて消費貸借の目的としたと理解しても、契約日、金額など全く一致しない。)、これらの債権を含め将来二〇〇〇万円の限度で逐次貸し付けるとの当事者間の前記合意とも一致しない。したがって、本件公正証書に記載された債権と、本件1ないし6の貸付け債権及び本件準消費貸借債権との間に客観的な同一性を認めることはできず、本件公正証書は債務名義として効力を有するとはいえない。 原判決の右判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法が原判決中の上告人敗訴部分に影響を及ぼすことは明らかである。右の違法をいう論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、右部分は破棄を免れない。そして、前記の事実関係の下においては、本件公正証書は債務名義として無効であり、上告人の本訴請求は正当として認容すべきものであるから、原判決及び第一審判決を主文第一項のとおり変更すべきである。 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官- 3 -全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官園部逸夫裁判官可部恒雄裁判官大野正男裁判官千種秀夫- 4 -

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る