平成28(ワ)35026 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年8月30日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-87996.txt

判決文本文32,769 文字)

平成30年8月30日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成28年(ワ)第35026号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成30年6月26日判決 原告株式会社ザ・リラクス 同訴訟代理人弁護士鮫島正洋同山本真祐子同訴訟復代理人弁護士和田祐造 同高瀬亜富 被告株式会社ザラ・ジャパン同訴訟代理人弁護士宮川美津子 同新谷美保子同稲葉大輔 主文 1 被告は,原告に対し,1041万7282円及びこれに対する平成28年4月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その4を原告の,その余を被告の各負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告は,原告に対し,6897万6004円及びこれに対する平成28年4月 8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告が販売した別紙被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)は,原告の販売する別紙原告商品目録記載1ないし4の各商品(以下「原告各商品」と総称する。)の形態を模倣したものであり,被告による被告商 品の販売等 品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)は,原告の販売する別紙原告商品目録記載1ないし4の各商品(以下「原告各商品」と総称する。)の形態を模倣したものであり,被告による被告商 品の販売等の行為が不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項3号所定の不正競争行為に当たると主張して,被告に対し,同法4条及び5条1項に基づき,損害賠償金6897万6004円及びこれに対する平成28年4月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者原告は,アパレル製品のデザイン,製造及び販売を業とする株式会社である。 被告は,アパレル製品の販売等を業とする株式会社であり,ファッションブ ランド「ZARA」を扱う日本法人である(甲28)。 (2) 原告による原告各商品の販売ア原告は,平成26年2月頃から,別紙原告商品目録記載の婦人用コート(原告各商品)を順次販売した。 原告各商品の販売期間は,同目録記載1の婦人用コート(以下「14SS」 という。)について平成26年2月から7月頃まで,同目録記載2の婦人用コート(以下「14FW」という。)について平成26年8月から平成27年1月頃まで,同目録記載3の婦人用コート(以下「15SS」という。)について平成27年2月から7月頃まで,同目録記載4の婦人用コート(以下「15FW」という。)について平成27年8月から平成28年1月頃までであ った。また,原告は,同目録記載5の婦人用コート(以下「16SS」とい う。)を平成28年2月から7月頃まで販売した。 なお,原告は,前記14FW及び15FWとは別 年1月頃までであ った。また,原告は,同目録記載5の婦人用コート(以下「16SS」とい う。)を平成28年2月から7月頃まで販売した。 なお,原告は,前記14FW及び15FWとは別に,両商品にボタンやジッパーにより取り外しのできるコートの裏地であるライナーを付した商品を販売した(甲8.10ないし12。以下,14FWにライナーを付した商品を「ライナー付き14FW」と,15FWにライナーを付した商品を「ラ イナー付き15FW」と,それぞれいう。)。 イ原告各商品のうち14FWの形態は,別紙原告各商品の形態の各写真に示されるとおりである。 (3) 被告の行為ア被告は,平成28年2月26日から同年4月11日までの間,別紙被告商 品目録記載の婦人用コート(被告商品)を販売し,また販売のために展示した(乙45,46)。 イ被告商品の形態は,別紙被告商品の形態の各写真に示されるとおりである。 2 争点(1) 被告による原告各商品の形態模倣の有無 ア原告各商品と被告商品の形態が実質的に同一であるかイ被告商品の形態が原告各商品に依拠したものであるか(2) 転得者の抗弁(不競法19条1項5号ロ)の成否(3) 原告の損害額 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)ア(原告各商品と被告商品の形態が実質的に同一であるか)について(原告の主張)原告各商品のうち14FWの形態は,別紙対比表のとおりである。被告商品は,基本的形態のみならず,具体的形態の細部にわたり原告各商品と同一であるから,被告商品の形態は原告各商品の形態と実質的に同一である。 ア被告は,原告各商品の形態がミリタリーパーカと呼ばれるパーカとしてあ りふれたものにすぎないと主張するが,被 であるから,被告商品の形態は原告各商品の形態と実質的に同一である。 ア被告は,原告各商品の形態がミリタリーパーカと呼ばれるパーカとしてあ りふれたものにすぎないと主張するが,被告が提出する,原告各商品の販売が開始された平成26年2月頃より前に存在した製品の形態が掲載されている資料には,原告各商品の基本的形態及び具体的形態全てを備えるものは一切掲載されていないから,原告各商品の形態がありふれた形態であるとはいえない。 イ被告が提出する前記資料には,少なくとも原告各商品の別紙対比表「原告各商品(14FW)」欄記載の構成A(以下,単位「構成A」といい,他の構成も同様とする。)ないしC,FないしI,K,L,OないしQに係る形態は全く掲載されておらず,被告商品がこれらの点を備えていることは実質的同一性を基礎づける。 ウ被告が相違点として主張する2点のうち,フードの立体感(構成C)については,被告商品はハリのある素材であり,約11㎝程度のファスナー等によってフードの前部分が固定されやすい状態になっていることから,ワイヤーの有無にかかわらず,側面視においてフードが略正三角形状となるものであり,相違点ではなく共通点というべきである。 また,素材の点についても,原告各商品と被告商品において,素材の相違に基づく形態上の差異は認められない。 さらに,たとえ前記2点が相違点と評価されるとしても,被告において,フードにワイヤーを入れないという改変を行うこと,あるいは単一素材を用いることは,着想は容易である上,極めて些細な創作性の乏しい改変であり, 原告各商品の形態を手間若しくは費用をかけない方向に変更したものにすぎないから,実質的同一性を否定することはできない。 (被告の主張)原告各商品の て些細な創作性の乏しい改変であり, 原告各商品の形態を手間若しくは費用をかけない方向に変更したものにすぎないから,実質的同一性を否定することはできない。 (被告の主張)原告各商品の形態はミリタリーパーカと呼ばれるパーカとしては極めてありふれたものにすぎず,また被告商品の形態は14FWと相違するから,被告商 品の形態と原告各商品の形態とは実質的に同一ではない。 ア不競法2条1項3号の趣旨は,他人の商品形態を模倣した商品を譲渡等する行為を不正競争として規制し,もって先行商品の開発者が投下した資本,労力の回収利益を保護し,商品開発意欲を与える点にあるから,開発者が資本,労力を投下せずに開発することのできたありふれた形態は,同号によって保護される「商品の形態」に該当しない。原告各商品と被告商品の実質的 同一性の有無を検討するに当たっては,両製品の共通点が同種製品としてありふれたものであるかとの観点から検討されるべきである。 イ原告各商品は,M65コールド・ウェザー・パーカ(以下「M65パーカ」という。)というミリタリーパーカのデザインをベースにしており,同パーカは,原告各商品の形態のうち,構成I(フード部分から垂れ下がる金色の 金具付きの黒色の紐)及び構成L(後身頃のダーツ)以外の特徴は全て備えている。 また,ファッション業界において,ミリタリーをモチーフにしたファッションが一類型として確立されており,M65パーカをはじめとするミリタリーパーカをベースに製作されたモッズコート,マウンテンパーカ等と呼ばれ る商品は市場に多数存在し,いずれの商品も,微差はあるものの原告各商品の特徴を備えている。 したがって,原告各商品の形態は,需要者をして,一般的なミリタリーパーカとしか認識され得 ばれ る商品は市場に多数存在し,いずれの商品も,微差はあるものの原告各商品の特徴を備えている。 したがって,原告各商品の形態は,需要者をして,一般的なミリタリーパーカとしか認識され得ないありふれた形態である。 ウまた,被告商品は,以下の2点において原告各商品と相違し,これらの相 違点が需要者の印象に及ぼす影響は大きいから,原告各商品と被告商品は実質的に同一ということはできない。 すなわち,側面視において,14FWはフード端にワイヤーを使用することでフードの立体感を構成しているのに対し,被告商品にはフード部分にワイヤーは入っておらず,フードの立体感は形態として含まれていない。原告 各商品の前記フードの立体感が際立つような仕様は,同製品の大きな形態的 特徴を構成するものであるということができ,そのような立体感を備えない被告商品と原告商品とでは,需要者に与える印象が大きく異なる。 また,原告各商品の素材はポリエステル65%及びナイロン35%であるのに対し,被告商品の素材はポリエステル100%であり,その質感,色合い,光沢感,しわのできやすさ,着心地等の点で大きく異なる。 (2) 争点(1)イ(被告商品の形態が原告各商品に依拠したものであるか)について(原告の主張)原告各商品と被告商品は細部に至るまで共通している。このような共通性が偶然の一致であるとは経験則上およそ考えられないから,依拠性が肯定されることは明らかである。 また,原告各商品は,著名な雑誌において紹介され,世界的に有名なル・ボン・マルシェに出展されるなどしていたのであるから,同じファッション業界に身を置く被告は,これを目にしていたと考えられる。 したがって,被告商品の形態は原告各商品に依拠したものと認められる ・ボン・マルシェに出展されるなどしていたのであるから,同じファッション業界に身を置く被告は,これを目にしていたと考えられる。 したがって,被告商品の形態は原告各商品に依拠したものと認められる。 (被告の主張) 原告各商品が掲載されたとする雑誌は5誌にとどまり,ページ全体のごく一部に原告各商品の全体像が分からない写真が掲載されたからといって,その商品が市場において広く認知されていたということはできない。また,これらの雑誌に掲載されている商品は,甲9を除き,原告各商品ではないライナー付き15FWであり,被告の依拠性を基礎付けるものとは到底いうことができない。 したがって,原告各商品の知名度は業界において高いものということはできず,被告としても原告各商品の存在を知らなかった。 (3) 争点(2)(転得者の抗弁の成否)について(被告の主張)ア被告は,アパレル製品の販売を行なっているものの,同製品のデザイン及 び製造を行っていない。 すなわち,被告は,販売する商品をA(以下「A」という。)から仕入れており,本件訴訟の対象となっている被告商品も同社から仕入れたものである。 被告は,被告商品のデザイン過程及び製造工程には一切関与しておらず,被告商品がどのような過程を経てデザインされたかについての情報を持ち合わせていない。 ●省略●イ被告は,売上高及び規模ともに世界トップクラスのアパレルチェーンの日本子会社であり,現在全国で98店の「ZARA」ショップを経営している。 被告が扱う商品ラインはレディースだけでなく,「ZARAMAN」「ZARAKIDS」「ZARABASIC」「ZARAWOMEN」「TR F」など複数のラインがある。そして,被告が被告商品を販売した平 ラインはレディースだけでなく,「ZARAMAN」「ZARAKIDS」「ZARABASIC」「ZARAWOMEN」「TR F」など複数のラインがある。そして,被告が被告商品を販売した平成28年の春夏シーズン1シーズンに仕入れた商品の種類は●省略●種類(色違いの商品を一種類としても●省略●種類)に及び,その数は●省略●着を超える。このような膨大な数の商品全てについて,そのデザイン過程を確認するとともに,形態が実質的に同一である同種商品がないかどうかを精査するこ とは著しく困難である。 ウ一方,原告は,平成22年に設立されたばかりの会社であり,原告の商品を取り扱う店舗は,その全てがセレクトショップであって,路面店や百貨店内のテナントショップのように原告の商品のみを取り扱う店舗は存在しない。また,平成29年1月16日時点において,国内で販売されている女性 雑誌は少なくとも113誌に及ぶのであり,原告が主張する雑誌への掲載は,前記(2)で述べたとおり,いずれも原告各商品の知名度を高めるものではない。 エさらに,前記(1)イで述べたとおり,原告各商品は,M65パーカをはじめとするミリタリーパーカをベースに製作された商品であり,その形態はあり ふれたもので,従来の商品に見られない形態上の特徴を有しているというこ とはできない。 オしたがって,被告が取引上要求される通常の注意を払ったとしても,原告各商品の存在を知り,被告商品が原告各商品の形態を模倣した事実を認識することは困難であるから,被告は,被告商品を販売したことにつき重過失はない。 (原告の主張)ア以下に述べるとおり,被告は,不競法19条1項5号ロ「譲り受けた者」に該当しない。 (ア) 不競法19条1項5号ロの趣旨は,形態模倣 販売したことにつき重過失はない。 (原告の主張)ア以下に述べるとおり,被告は,不競法19条1項5号ロ「譲り受けた者」に該当しない。 (ア) 不競法19条1項5号ロの趣旨は,形態模倣品が,これを製造した者の手を離れて転々流通する場合,形態模倣品であることについて善意無重 過失で取得した者の取引の安全を守ることにある。したがって,形態模倣品の譲受人について,当該商品を製造・譲渡した者との関係において取引の安全を考慮する必要のない場合についてまで当該譲受人を保護する必要性はないところ,被告は,完全親会社であるAから被告商品を譲り受けたのであるから,同号の「譲り受けた者」には該当しないというべきであ る。このような譲受人が同号の「譲り受けた者」に該当するとなると,日本において形態模倣品を販売しようとする者は,海外に拠点を置き,そこから日本法人において形態模倣品を仕入れることにより不競法の規制を潜脱することができ,極めて不合理である。 (イ) また,被告は,原告各商品の形態に係る情報をAに提供の上,Aをして 被告商品を製造させたのであるから,同号の「譲り受けた者」には該当しない。 すなわち,被告は新商品の提案や新商品のための情報提供を行うために,クリッピングやその他の手法を用いて日本においてアパレル企業のリサーチを行い,これによって得た人気商品等の情報をAに提供し,「ZAR A」の新商品に係る企画・提案を行なっているから,被告が,原告各商品 の情報を入手し,これを新商品の企画・提案としてAに提供することにより,被告商品を製造させたと考えられる。 イまた,被告は,以下に述べるとおり,被告商品を仕入れる際に,これが原告各商品の形態模倣品であることを知っていたか,または極めて容易に知ること ることにより,被告商品を製造させたと考えられる。 イまた,被告は,以下に述べるとおり,被告商品を仕入れる際に,これが原告各商品の形態模倣品であることを知っていたか,または極めて容易に知ることができたのであり,無重過失とは認められない。 (ア) すなわち,原告は,雑誌,店舗での実売,ファッション系インターネットマガジン,ソーシャルネットワーキングサイトといった媒体に露出し,一般又は少なくともアパレル業界や服飾に関心のある者に周知されていた。被告は,求人広告において「ファッションメディア(紙・デジタル)とのネットワーク」がある者を募集しているところ,デジタルファッショ ンメディアとして最大規模を誇る「Fashionnap.com」や,これに次ぐ規模を誇る「FASHIONPRESS」においては,毎シーズン,原告が展開するザ・リラクスコレクションが掲載され,原告各商品も多数掲載されていた。被告が原告及び原告各商品を認識していなかったなどということはあり得ず,仮に認識していなかったとしても,認識することは極めて容易であっ た。 (イ) また,原告各商品の形態は,構成AないしQのみならず,①身頃はゆったりとしているのに対して腕は細身であること,②バスト下にかけて広がる,ゆったりとしたAライン形状を備えること,③フード部分が大きめであって,フード部分のファスナーが本体と別になっていることにより, ボリュームかつ立体感のあるネックラインやフードとなっていること,④裾がラウンドしたカッティングとなっていること,⑤裾が「後ろ下がり」形状であり,後ろ部分はヒップを覆う程度の長さとなっていることの各特徴を備え,これらはM65パーカ又はミリタリーパーカになかった形態的特徴といえる。 (ウ) 仮に被告が被告商品のデザ り」形状であり,後ろ部分はヒップを覆う程度の長さとなっていることの各特徴を備え,これらはM65パーカ又はミリタリーパーカになかった形態的特徴といえる。 (ウ) 仮に被告が被告商品のデザイン・製造工程に一切関与していなかったと しても,被告商品の販売前に,他人の商品の形態を模倣する商品であるか否かを確認することが可能であり,無重過失ということはできない。むしろ,●省略●がありながら,自社取扱製品について,他人の商品の形態を模倣した商品ではないことの調査確認をせずに被告商品を輸入販売したのであるから,重過失があることは明らかである。 (4) 争点(3)(原告の損害額)について(原告の主張)ア損害の発生侵害者による侵害品の販売によって被侵害者に販売数量の減少による逸失利益が発生したことは,権利者による製品の販売等及び権利者の製品と同 種の市場での競業関係により事実上推認される。原告各商品と被告商品は市場において競合しているから,原告に,原告各商品の販売数量減少による逸失利益(損害)が発生していることは優に推認することができる。 イ不競法5条1項に基づく損害額(ア) 譲渡数量 被告商品の譲渡数量は,被告が,日本国内において実店舗99店及びインターネット上のオンラインショップを有しており,その販売チャンネルが原告の●省略●であることに鑑みれば,平成28年2月頃以降の原告各商品の販売数量(●省略●着)の●省略●である●省略●着と推測される。 (イ) 単位数量当たりの利益の額原告各商品の単位数量当たりの利益の額は,●省略●円である。 また,16SSの販売価格は5万3000円(税抜),変動費は●省略●円(原材料費●省略●円,工賃●省略●円,物流費●省略●円の合 原告各商品の単位数量当たりの利益の額は,●省略●円である。 また,16SSの販売価格は5万3000円(税抜),変動費は●省略●円(原材料費●省略●円,工賃●省略●円,物流費●省略●円の合計額)であるから,16SSに係る単位数量当たりの利益の額は,以下の計算式 のとおり,●省略●円となる。 ●省略●なお,16SSに係る卸売と小売双方の販売数量は合計●省略●着,販売金額は合計●省略●円であるから,以下の計算式のとおり,平均販売金額は●省略●円となる。 ●省略● (ウ) 原告の販売能力不競法5条1項本文「行為を行う能力」は,侵害行為がなければ生じたであろう製品の追加需要に対応して供給し得る潜在的能力が認められれば足りるところ,原告は,複数の製造委託先を有しており,1か月当たり●省略●着(原告の月平均販売枚数●省略●着と被告の月平均販売枚数 ●省略●着との差分)程度の着数は極めて一般的な追加生産着数であるから,これを製造して供給する能力は十分に存在した。 (エ) 損害額前記(ア)及び(イ)によれば,原告の被った損害は,以下の計算式のとおり,6697万6004円を下らない。(単位数量当たりの利益額については ●省略●円として算出。)●省略●着×●省略●円=6697万6004円(オ) 「販売することができないとする事情」(不競法5条1項ただし書)被告は,原告が被告商品の販売開始日である平成28年2月29日以降に原告が追加発注しても,被告商品の販売数量と同数の原告製品を追加 販売することは不可能であったと主張するが,そもそも被告商品の販売時期と同じ時期に原告各商品が販売できなければ1項本文の推定が覆滅するという前提自体が誤りである。 数量と同数の原告製品を追加 販売することは不可能であったと主張するが,そもそも被告商品の販売時期と同じ時期に原告各商品が販売できなければ1項本文の推定が覆滅するという前提自体が誤りである。 また,被告は,原告の第2回目以降の生産に3か月を要すると主張するが,原告は第1回の生産時に追加生産を見据えた余剰材料の用意をして いるため,2週間程度で追加生産が可能である。 さらに,原告各商品と被告商品は同一市場で競合しており,被告商品の需要者も,デザインが気に入るから商品を購入しているのであって,被告商品が低価格であることは考慮要素の一つにすぎない。両製品の需要者である女性は,被告において気に入るデザインが安く購入できれば被告で購入し,被告で購入できないのであれば原告といったデザイナーズブ ランド等で購入するという使い分けをしている。このことは,被告において六本木ヒルズ等,高級な商品を購入すると考えられる需要者の来店が見込まれる地域に出店していることからも裏付けられる。 加えて,被告はファストファッションブランドであり,トレンド性のあるデザインの商品が比較的手頃な値段で販売されているために人気があ るにとどまるのであって,ブランド力は存在しないことからすれば,被告商品を購入した者は,もっぱらそのデザインに惹かれて被告商品を購入したといえる。 ウ弁護士費用本件に係る弁護士費用の総額は,200万円を下らない。 (被告の主張)ア損害の不発生原告商品のような商品の卸販売においては,一般的に,アパレルメーカーが展示会等を通じて小売業者等から受注し,その受注数量を基準に原材料等の発注をし,製品を製造している。原告が14SSに係る原材料を発注し, 製造の委託等をしたの は,一般的に,アパレルメーカーが展示会等を通じて小売業者等から受注し,その受注数量を基準に原材料等の発注をし,製品を製造している。原告が14SSに係る原材料を発注し, 製造の委託等をしたのが平成25年11月から平成26年1月頃までであったことからすれば,16SSについても,遅くとも平成27年11月頃には前記受注数量は決まっていたものと推認される。そうすると,平成28年2月29日から同年4月11日まで行われた被告商品の販売が,平成27年11月頃に行われた小売業者からの受注に影響を与えたはずがない。 また,原告が16SSを値引きして販売したとか,売れ残りが出た等の事 実もないことからすれば,原告は,小売業者から受注した数量及びオンラインショップで販売できると予測して製造した数量の全てを販売したと考えるのが相当であり,16SSの販売が,被告商品の販売により影響を受けたとは認められない。 加えて,原告は,平成28年1月以降の追加発注を示す証拠を一切提出し ておらず,被告商品の販売開始後に,原告がさらなる受注を受け16SSを製造し販売数量を伸ばすことは不可能であったといえる。 したがって,被告の行為によって原告の営業上の利益が侵害されていないから,原告の損害賠償請求は失当である。 イ不競法5条1項に基づく損害額 (ア) 譲渡数量被告商品の販売数量は,合計●省略●着である。 (イ) 単位数量当たりの利益の額16SSは,後身頃のダーツ(構成L)がないことによってシルエットがゆったりとしたルーズフィットになっている点及び後身頃の切欠がな い点(構成M及びN)において14FWと異なり,被告商品と市場において代替性がないから,16SSは「その侵害の行為がなければ販売することが たルーズフィットになっている点及び後身頃の切欠がな い点(構成M及びN)において14FWと異なり,被告商品と市場において代替性がないから,16SSは「その侵害の行為がなければ販売することができた物」に該当しない。 また,原告は,原告各商品を自身のオンラインショップで小売販売するだけでなく,セレクトショップや百貨店などに対して卸販売していたた め,小売価格のみを基準として利益の計算を行うことは失当である。 (ウ) 原告の販売能力被告は,平成28年2月29日から同年4月11日までの約1か月半の間に被告商品を●省略●着販売しているのに対し,原告は,平成28年の春夏シーズンの約3か月半(3月初旬から6月中旬)の間に16SSを● 省略●着販売していることから,両者の販売能力には●省略●の差が存 在するのであり,被告商品の販売がなかったとしても,原告が,被告商品の販売数量と同量の16SSを追加販売する能力があったとは考えられない。 (エ) 「販売することができないとする事情」(不競法5条1項ただし書)原告各商品は,長袖の比較的生地が厚手のアウターであり,追加生産に 少なくとも3か月以上を要するものと考えられることからすれば,原告が,原告各商品が最も販売できる1月から3月までに増産・追加販売をすることは不可能であった。そして,被告商品の販売開始(平成28年2月29日)の3か月後であり既に暖かくなった5月下旬以降に,原告に追加発注をする顧客ないし小売業者が存在したとは考えられない。 また,原告各商品の標準小売価格は5万3000円(税抜)であるのに対し,被告商品の標準小売価格は7398円(税抜)であり,その差は7倍を超える。「ZARA」ブランドがメインターゲットとする顧客は,トレンド 告各商品の標準小売価格は5万3000円(税抜)であるのに対し,被告商品の標準小売価格は7398円(税抜)であり,その差は7倍を超える。「ZARA」ブランドがメインターゲットとする顧客は,トレンドファッションに興味がありながらも,高価な商品を購入することに躊躇を覚える女性であるから,仮に被告が被告商品を販売していなか った場合,被告商品を購入した顧客は,5万3000円(税抜)と高額な16SSではなく,手頃な価格で手に入る,似たようなミリタリーパーカを購入したといえる。 さらに,「ZARA」ブランドは,著名な雑誌においても度々特集が組まれる超人気ブランドであり,被告商品を購入した顧客は「ZARA」ブ ランドの商品であるからこそ被告商品を購入したと考えられ,知名度のそれほど高くない原告の原告各商品を購入したとはいえない。 したがって,原告には,被告が被告商品を販売した数量の全部につき,販売することができない事情が存在したということができる。 ウ弁護士費用 争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)ア(原告各商品と被告商品の形態が実質的に同一であるか)について(1) 不競法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等を不正競争行為とするところ,同号によって保護される「商品の形態」とは,「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商 品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感」(同条4項)をいい,商品の個々の構成要素を離れた商品全体の形態をいう。また,特段の資力や労力をかけることなく作り出すことができるありふれた形態は,同号により保護される「商品の形態」に該当しないと解すべきである。 (2) 原告各商品及び 品全体の形態をいう。また,特段の資力や労力をかけることなく作り出すことができるありふれた形態は,同号により保護される「商品の形態」に該当しないと解すべきである。 (2) 原告各商品及び被告商品は,いずれもフード付きの長袖ブルゾンである。 原告各商品のうち14FWの形態は,別紙原告各商品の形態の各写真に示されるとおりであり,被告商品の形態は,別紙被告商品の形態の各写真に示されるとおりである。 ア原告各商品(14FW)と被告商品の形態を比較すると,別紙対比表の とおり,次の共通点があることが認められる(甲3,21,乙9)。 すなわち,基本的形態については,①正面視において,全体が裾広がり略Aライン形状であること(構成A),②側面視において,全体が略Aライン形状であるが,前丈より後ろ丈の方が長いため,ブルゾンの裾が前身頃から後ろ身頃に向かって下り傾斜していること(構成B),③背面視におい て,全体が裾広がりの略Aライン形状であること(構成D)が,それぞれ共通している。 また,具体的形態については,①前身頃において,比翼仕立てになっていることから,裾部から襟部までにかけて,中央部やや左側に,縦に一本線が入っており,中央部やや右側に,これに略平行な薄い一本線が入って いること(構成E),②フードにおいて,見頃部から取り外し可能なフード が襟部に沿って設けられ(構成F),当該フードの前部分略中央に,約11㎝程度のファスナーが縦方向に付され(構成G),当該ファスナーを覆うように縦長の比翼が設けられ,当該比翼の内側には,前記ファスナーの左わき上下に設けられた2つのドットボタンに対応する2つのドットボタンが付されており(構成H),ファスナー引手の開口部には,平面状の黒色の紐 が通され,フード左右 翼の内側には,前記ファスナーの左わき上下に設けられた2つのドットボタンに対応する2つのドットボタンが付されており(構成H),ファスナー引手の開口部には,平面状の黒色の紐 が通され,フード左右端部から下方へ垂れており,紐の先端には略細長円筒状の金色の金具が付され(構成I),フードの前側端部分において,三角形状が連続するステッチが施されていること(構成J),③ポケットにおいて,裾から少し上の部分より胴体部の中間あたりにかけて,縦長形状のポケットのフラップが形成されていること(構成K),④後身頃において,両 肩の内側部分に肩部から裾部へ向かって縦方向にダーツが施されることにより,2本の縦線が生じており(構成L),裾は円弧を描き,円弧が最も膨らむ後裾の略中央部が略縦長三角形状に切欠かれ(構成M),当該切欠きの上に,横長長方形状のステッチが存在すること(構成N),⑤袖部において,端が三角形状のベルトが設けられ(構成O),当該ベルト三角形状部の裏側 にはドットボタンが付され(構成P),袖部下方中央部の左側及び右側にもこれに対応するドットボタンが付されていること(構成Q)が,それぞれ共通している。 イ原告各商品(14FW)と被告商品の形態を比較すると,次の2点において,一応相違すると認められる。 まず,原告各商品(14FW)のフードには,フード端に弾力のあるワイヤーが縫い込まれているため,側面視において,同フードが身頃部分から立ち上がって立体的な略正三角形状となるのに対し(構成C),被告商品のフードには,前記のワイヤーが使用されておらず,側面視において,同フードが身頃部分に折り重なる形状となる(構成C’,甲1,2,乙9)。 また,原告各商品(14FW)の素材はポリエステル65%及びナイロ 使用されておらず,側面視において,同フードが身頃部分に折り重なる形状となる(構成C’,甲1,2,乙9)。 また,原告各商品(14FW)の素材はポリエステル65%及びナイロ ン35%であるのに対し,被告商品の素材はポリエステル100%であり,それぞれの素材や加工方法に応じた質感を有する(甲1,争いのない事実)。 (3)1960年代にアメリカ軍によって開発,使用された防寒服であるM65パーカは,①前身頃において比翼仕立てになっている点(構成E),②身頃部から取り外し可能なフードが設けられている点(構成F),③縦長形状のポケッ トのフラップが形成されている点(構成K)において,原告各商品と共通している(乙1)。 また,原告各商品が発売された平成26年より前から,M65パーカ等のアメリカ軍が使用した防寒服の形態をベースにデザインされた,ミリタリーパーカ,ミリタリージャケット,モッズコート等と呼ばれるファッションのカ テゴリーが存在して,複数の製品が存在し,原告各商品もこれに含まれる(甲1,9,15)。 (4) 以上を踏まえ,原告各商品(14FW)と被告商品の形態が実質的に同一といえるかどうかについて検討する。 ア原告各商品(14FW)と被告商品とは,前記(2)アで述べたとおり,そ の基本的な形態から具体的な細部の形態に至るまで多数の共通点が認められ,その形状はほぼ同一であるといえる。 一方,原告各商品(14FW)と被告商品には,前記(2)イで述べた2つの点において一応相違すると認められるが,これらは,フードの立体感や生地の質感に若干の相違を与えることがあったとしても,その違いは大き いものではなく,需要者が通常の用法に従った使用に際してその違いを直ちに認識することができるとまでは らは,フードの立体感や生地の質感に若干の相違を与えることがあったとしても,その違いは大き いものではなく,需要者が通常の用法に従った使用に際してその違いを直ちに認識することができるとまではいえないものであり,原告各商品(14FW)と被告商品の全体の印象を異なったものとするものとはいえない。 イ前記(3)のとおり,原告各商品とM65パーカには複数の共通点があるが,M65パーカが,兵士が野外における活動の際に身につける防寒着である のに対し,原告各商品は,女性がファッションとして身につける上着とし てデザインされたもので,基本的形態が略Aラインで,全体として女性的かつ都会的な印象を与えるものであって,M65パーカと異なる形態を有するものといえる。 また,原告各商品が発売された平成26年以前において,ミリタリーパーカなどと呼ばれるファッションの一形態として複数の製品が販売されてお り,原告各商品もその範疇に入る商品であると認められる。しかし,原告各商品は,基本的な形態が略Aラインであること(構成AないしD),身頃部分から取り外し可能なフードがあること(構成F),フードの右左端部から黒色の紐が下方へ垂れ下がり,紐の先端に細長円筒状の金色の金具が付されていること(構成I),フードの前側端部分に三角形状が連続するステッ チが施されていること(構成J),フード部分に本体と独立したファスナーが設けられていることにおいて特徴を有しているところ,ミリタリーパーカなどと呼ばれる製品において,これら原告各商品の特徴的な形態を全て備え,商品全体の形態において原告各商品と酷似する商品が他に存在したことを認めるに足りる証拠はない(甲2,乙13)。そうすると,原告各商 品の形態が,個々の形態の組み合わせとして個性 態を全て備え,商品全体の形態において原告各商品と酷似する商品が他に存在したことを認めるに足りる証拠はない(甲2,乙13)。そうすると,原告各商 品の形態が,個々の形態の組み合わせとして個性を有しないということはできず,他の商品に見られるありふれたものということはできない。 ウ以上によれば,原告各商品の形態はありふれたものではなく,「商品の形態」(不競法2条1項3号)に該当するところ,原告各商品(14FW)と被告商品は,基本的な形態から具体的な細部の形態に至るまで多数の共通 点が認められる一方,相違する点は需要者が通常の用法に従った使用に際してこれらの違いを直ちに認識することができるとまではいえないものであって,原告各商品(14FW)と被告商品の形態は実質的に同一であると認められる。 2 争点(1)イ(被告商品の形態が原告各商品に依拠したものであるか)について 前記1のとおり,原告各商品のうち14FWと被告商品の形態は,実質的に同 一であるところ,同じミリタリーパーカに属するコートであっても,フード,襟部,袖部といった相当数の個別の部分があり,全体的形態においても各個別的形態においても,それぞれ相当数の選択肢が存在するのであるから,これらが偶然に一致することは考えがたい。 また,前記前提事実(2)及び(3)のとおり,14FWが発売されたのは平成26 年8月から平成27年1月頃までであるのに対し,被告商品の発売は,それから1年以上が経過した平成28年2月26日であり,被告商品の製造者において,市場において14FWを入手するなどの何らかの方法によって,その形態を把握することは十分に可能であったといえる。 したがって,被告商品は,原告各商品のうち14FWの形態に依拠して製作さ れ 場において14FWを入手するなどの何らかの方法によって,その形態を把握することは十分に可能であったといえる。 したがって,被告商品は,原告各商品のうち14FWの形態に依拠して製作さ れたものと認めるのが相当である。 3 争点(2)(転得者の抗弁の成否)について(1) 前記前提事実に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実を認めることができる。 ア原告各商品及びライナー付き商品の形態 (ア) 14SSは,別紙対比表「原告各商品(14FW)」欄記載の14FWの基本的及び具体的形態の全てを備えている。ただし,14FWの後身頃の切欠き部分(構成M)には,表面及び裏面の双方にボタンが付されているが,14SSの同切欠き部分の表面にはボタンが付されていない(甲22,26)。 (イ) 14FWの形態は,別紙対比表「原告各商品(14FW)」欄記載のとおりであり,ライナー付き14FWは,14FWに裾から下方向に台形型に飛び出る取り外し可能なライナーを付した商品である(甲105の1,105の4)。 (ウ) 15SSは,14FWの形態のうち,少なくとも構成Aないし構成K を備えている(甲27,105の5ないし105の7)。 (エ) 15FWは,14FWの形態のうち構成L(後身頃のダーツ)を除く全ての構成を備えている。ただし,14FWの後身頃の切欠き部分(構成M)には,表面及び裏面の双方にボタンが付されているが,15FWの同切欠き部分の表面及び裏面にはボタンが付されていない(甲9,弁論の全趣旨)。ライナー付き15FWは,15FWに裾から下方向に台形 型に飛び出る取り外し可能なライナーを付した商品である(甲8,10ないし12,105の8)。 (オ) 16SSは,14FWの形態のうち構成 ライナー付き15FWは,15FWに裾から下方向に台形 型に飛び出る取り外し可能なライナーを付した商品である(甲8,10ないし12,105の8)。 (オ) 16SSは,14FWの形態のうち構成L(後身頃のダーツ),構成M(後身頃の切欠き)及び構成N(後身頃のステッチ)を除く全ての構成を備えている(甲1,228)。 イ原告による原告各商品の販売(ア) 原告は,平成26年2月頃から平成28年2月頃までの間,14SS,14FW,15SS,15FW,16SSを順次販売した。その販売数は,当初は各シーズン(春夏シーズンあるいは秋冬シーズン)に●省略●着程度であったが,ライナー付き15FWが後記ウ(ア)のとおり著名 ファッション雑誌に掲載された平成27年8月以降に増加し,平成28年各シーズンで●省略●着を販売した(甲107)。 (イ) 原告各商品は,原告の運営するオンラインショップにて販売されていたほか,全国の百貨店やユナイテッドアローズ,ビームス,ドゥーズィエムクラス,トゥモローランドエディション,アクアガールといった比 較的著名なセレクトショップで販売されていた(甲61の1,61の2,62,63,72ないし74,107,165)。 ウ原告各商品の雑誌への掲載(ア) ライナー付き15FWは,平成27年8月頃,雑誌「VOGUEJAPAN」2015年8月号において,同雑誌の1頁全体にこれを着用し た女優の全身写真が掲載されると共に,「ジャパンブランドで着る,極上 エフォートレスルック。」等と紹介された(甲8,49)。 「VOGUE」は,主に女性向けのファッション雑誌で,世界18か国とラテンアメリカで出版されている。ハイファッションの最先端をいく雑誌のひとつとして著名であり,「世界で最も た(甲8,49)。 「VOGUE」は,主に女性向けのファッション雑誌で,世界18か国とラテンアメリカで出版されている。ハイファッションの最先端をいく雑誌のひとつとして著名であり,「世界で最も影響力のあるファッション誌」と評されることがある。「VOGUEJAPAN」はその日本 版であり,平成27年10月1日から平成28年9月30日までの間の発行部数は7万2839部であった(甲47,48,50)。 (イ) 原告各商品のうち15FWは,平成27年9月頃,雑誌「VERY」2015年9月号において,1頁の約半分に正面視の写真が,別の1頁の約半分にこれを着用したモデルの写真がそれぞれ掲載され,「Tシャ ツ・デニムに足す流行ロングカーディガン&ミリタリージャケット」等と紹介された(甲9)。 「VERY」は,主に30代の女性向けのファッション雑誌であり,平成27年10月1日から平成28年9月30日までの間の発行部数は30万0717部であった(甲48,52)。 (ウ) ライナー付き15FWは,平成27年10月頃,雑誌「BAILA」2015年10月号において,1頁の約8分の1に正面視の写真が掲載され,「多くのラブコールを受け,ザ・リラクスの名品コートがバージョンアップ!」等と紹介された(甲10,57)。 「BAILA」は,25歳から35歳の女性向けのファッション雑誌 であり,平成27年10月1日から平成28年9月30日までの間の発行部数は17万部であった(甲48,55,58)。 (エ) ライナー付き15FWは,平成27年10月頃,雑誌「装苑」2015年10月号において,1頁の約16分の1に正面視の写真が掲載され,「GIRL'SMILITARYCATALOG ひねりをきかせたアイテムに夢中!」等と 27年10月頃,雑誌「装苑」2015年10月号において,1頁の約16分の1に正面視の写真が掲載され,「GIRL'SMILITARYCATALOG ひねりをきかせたアイテムに夢中!」等と 紹介された(甲11)。 「装苑」は,20代のファッションデザイナー,クリエイター,アパレル業界人向けの女性ファション雑誌であり,平成27年10月1日から平成28年9月30日までの間の発行部数は3万1458部であった(甲48,59)。 (オ) ライナー付き15FWは,平成28年1月頃,再び雑誌「VERY」 2016年1月号において,1頁の約半分にこれを着用したモデルが座っている写真(側面視)が,別の1頁の約4分の1に同じモデルの立った写真が,それぞれ掲載された(甲12)。 エ原告各商品のインターネット上の反響(ア) 原告各商品は,ファッション情報に特化した大規模なオンラインメデ ィアの1つである「Fashionsnap.com」において,平成26年4月17日にはライナー付き14FWを含む原告の秋冬シーズンのコレクションが掲載され,平成27年4月2日にはライナー付き15FWを含む原告の秋冬シーズンのコレクションが掲載された(甲103ないし104の3,123ないし125)。 (イ) 原告各商品は,ファッション情報に特化した大規模なオンラインメディアの1つである「FASHIONPRESS」において,平成26年8月又は9月頃にライナー付き14FWを含む原告の秋冬シーズンのコレクションの紹介記事が掲載され,平成27年1月又は2月頃に15SSを含む原告の春夏コレクションの紹介記事が掲載され,平成28年1月又は2 月頃に16SSを含む原告の春夏コレクションの紹介記事が掲載されるとともに,各シーズンのコ 7年1月又は2月頃に15SSを含む原告の春夏コレクションの紹介記事が掲載され,平成28年1月又は2 月頃に16SSを含む原告の春夏コレクションの紹介記事が掲載されるとともに,各シーズンのコレクションの一部として,14SSは1種類,14FWは1種類,15SSは3種類,16SSは3種類の写真が掲載された(甲105の1ないし105の11,107,123,弁論の全趣旨)。 (ウ) 原告各商品は,平成26年6月から平成28年2月までの間,同製品 を購入した者等により,少なくとも23回にわたり,コーディネートを紹介するウェブサイトである「WEAR」にこれを着用した写真が投稿された(甲102の1ないし102の23)。 (エ) 原告各商品は,平成27年7月頃から平成28年2月頃までの間,同製品を購入した者,あるいは同製品を販売するセレクトショップの店員 等により,少なくとも50回にわたり,写真投稿サイトであるインスタグラムにこれを着用した写真等が投稿された(甲101の1ないし101の50)。 オ被告による被告商品の輸入及び販売(ア) Aは,スペインのアパレルメーカーであり,世界88都市に7000 店舗以上を展開するファッションブランド「ZARA」を運営している。 被告は,Aの完全子会社の日本法人である(甲20,149)。 (イ) 被告は,日本国内で販売する商品を全てAから仕入れ,日本に空輸した上で,「ZARA」の各店舗にて販売している。すなわち,●省略●(甲39ないし42,乙14ない16,20)。 (ウ) 被告は,平成28年2月26日頃から同年4月11日頃までの間,被告商品を順次Aに発注して仕入れ,同年2月26日からオンラインショップにおいて,同月29日から全国の店舗において,被告商品の販売を ) 被告は,平成28年2月26日頃から同年4月11日頃までの間,被告商品を順次Aに発注して仕入れ,同年2月26日からオンラインショップにおいて,同月29日から全国の店舗において,被告商品の販売を開始した。その後,原告による指摘を受け,同年4月8日,全国の店舗に対して,被告商品の販売を中止して店頭から引き揚げるように指示し, 同月9日に被告商品の販売を終了した(乙14ないし16,45,46)。 (エ) 被告は,被告商品の仕入れに当たり,被告商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことについて,Aに被告商品のデザイン過程を確認するなどしたことはない(弁論の全趣旨)。 カ被告による被告商品の企画・開発過程への関与 (ア) A及び被告の展開するブランド「ZARA」は,手軽に安く着ること ができる衣料品としてファストファッションと呼ばれたりすることもあるブランドの一つであり,「ZARA」の特徴として,流行を取り入れた商品を安く提供することが挙げられたりする(甲19,34,乙23)。 (イ) 被告には,ストア(ショップ)マネージャー(各店舗の店長),コマーシャルマネージャー(担当する8ないし10店舗のストアマネージャー に店舗運営等の指導を行う者),エリアマネージャー(担当する8ないし10店舗のストアマネージャーに人事的な側面から店舗運営を補助する者),ショールームコーディネーター(プレスルームの管理運営等を行う者),セールスマネージャー(各店舗のマーケットを把握し,入荷商品のコントロール等を行う者)等の役職がある(甲37ないし42,11 0ないし112,114)。 また,Aには,各国あるいはエリアの店舗を担当するプロダクトマネージャー,コマーシャルダイレクター等の役職がある(甲37ないし40, 甲37ないし42,11 0ないし112,114)。 また,Aには,各国あるいはエリアの店舗を担当するプロダクトマネージャー,コマーシャルダイレクター等の役職がある(甲37ないし40,42,110,乙20)。 (ウ) 被告が,インターネット上に掲載した求人広告には,ストアマネージ ャーの業務として「ZARA では,週2回空輸で新商品が到着しますが,到着する商品はどの店舗も同じではなく,地域や客層によって異なります。 店長となった貴方には,スペイン本社商品部と頻繁にやりとりをしていただき,所属店舗のお客様のニーズやお声を常に共有し,自店に最適な商品が店舗に届くようオーダーし,効果的にレイアウトをしていただき ます。」,「各店舗に最適な商品を週2回発注・納品していただくためにスピード感とマーケティング力が求められます。スペイン本社と頻繁に連絡を取り,お客様の要望やトレンド情報の共有を行うため,顧客が求める商品創りにも携われます。」等の記載がある(甲39ないし42)。 また,同様に,コマーシャルマネージャーの業務として「コンペティ ターブランドの商品やマーケットの動向を分析し,利益に繋がる効果的 なオーダーと在庫をコントロールする。 (中略)本国スペインのプロダクトマネージャー達への商品動向フィードバック,改良点や新商品の提案,コマーシャルダイレクターへの担当エリア状況の報告」との記載が,エリアマネージャーの業務として,「マーケットトレンド,コンペティター案件リサーチ」との記載が,ショールームコーディネーターの業務とし て「レポーティング業務,競合・マーケット・トレンドリサーチ,クリッピング等」との記載が,セールスマネージャーの業務として「本国プロダクトマネージャー,コマーシャルダイレク ネーターの業務とし て「レポーティング業務,競合・マーケット・トレンドリサーチ,クリッピング等」との記載が,セールスマネージャーの業務として「本国プロダクトマネージャー,コマーシャルダイレクターとのコミュニケーションマーケットをリサーチし,競合ブランドの製品や日本に必要な商品を分析,把握。効果的なオーダーと在庫管理を行います。」との記載が ある(甲37,38,110,112,114)。 なお,前記「クリッピング」とは,自社や競合企業,業界などの記事を新聞,雑誌,ウェブ媒体等からチェックし,切り抜き,保存することをいう(甲113)。 キ原告各商品と被告商品が酷似していることを指摘するインターネット上 の投稿(ア) 一般需要者である氏名不詳者は,平成28年3月9日頃,写真共有サイトであるインスタグラムに,被告商品の写真を投稿するとともに,「ザラで購入した春ジャケット,どこかのソックリさん似過ぎてるけど大丈夫なのか…」と記載し,「#リラクス」とのタグを付した(甲95)。 (イ) 一般需要者である氏名不詳者は,平成28年2月末から同年4月8日頃までの間に,写真共有サイトであるインスタグラムに,原告各商品と被告商品の写真を並べて投稿するとともに,「RERACSのモッズが毎年欲しいと思っても,なかなか買えずに今年も…とその時!!ZARAで完コピ発見!57000円が7800円になった」と記載した(甲 16,107)。 (ウ) 一般需要者である氏名不詳者は,平成28年6月頃,被告商品の中古品を販売するために,インターネット上のサイトに被告商品の写真を掲載するとともに,これを「ZARAリラクスデザインアシンメトリージャケットアウター」と紹介した(甲98)。 (エ) 一般需要者である氏名不詳 するために,インターネット上のサイトに被告商品の写真を掲載するとともに,これを「ZARAリラクスデザインアシンメトリージャケットアウター」と紹介した(甲98)。 (エ) 一般需要者である氏名不詳者は,平成28年2月から同年12月頃, 被告商品の中古品を販売するために,インターネット上のサイトに被告商品の写真を掲載するとともに,これを「ザラ・リラクス風モッズコートTHERERACS m65」と紹介した(甲99)。 (オ) 一般需要者である氏名不詳者は,平成29年1月頃,被告商品の中古品を販売するために,インターネット上のサイトに被告商品の写真を掲 載するとともに,これを「リラクスとデザインが似ていると思います。」と紹介した(甲100)。 (カ) 一般需要者である氏名不詳者は,平成29年2月頃,被告商品の中古品を販売するため,インターネット上のサイトに被告商品の写真を掲載するとともに,これを「ZARAリラクスM65風モッズコート」と紹 介し,「RERACSのM65も持っておりますが,本当にそっくりで形も綺麗です。」と記載した(甲97)。 (キ) 一般需要者である氏名不詳者は,平成29年3月頃,被告商品の中古品を販売するために,インターネット上のサイトに被告商品の写真を掲載するとともに,これを「リラクスに似ているとインスタでも話題で, すぐに売れてしまった商品です。」と紹介した(甲96)。 (2) 以上の各事実を前提に,まず被告が形態模倣品を「譲り受けた者」(不競法19条1項5号ロ)に該当するか否かについて検討する。 ア前記前提事実(3)及び前記認定事実オ(ウ)によれば,被告は,平成28年2月26日頃から同年4月11日頃までの間,Aから被告商品を仕入れて, 日本国内で販売等したことが認められる。 ア前記前提事実(3)及び前記認定事実オ(ウ)によれば,被告は,平成28年2月26日頃から同年4月11日頃までの間,Aから被告商品を仕入れて, 日本国内で販売等したことが認められる。 そうすると,被告は,Aから被告商品を仕入れた者であって,他人の商品の形態を模倣した商品と認められる被告商品を「譲り受けた者」に当たる。 イこれに対し,原告は,①Aは被告の100%親会社であり被告の取引の安全を不競法19条1項5号ロで保護する必要はない,②被告は,原告各 商品の形態にかかる情報をAに提供の上,Aをして被告商品を製造させたのであるから,同号の「譲り受けた者」に該当しないと主張する。 しかしながら,被告とAとの間に完全親子関係があるとしても,それらの法人格は異なる上,前記認定事実カのとおり,被告は,各店舗のストアマネージャー等において,Aが製造する商品の中から日本国内で販売する 商品を選定し,必要な数量を発注して輸入しているのであって,両社の間の譲渡は形式的なものではなく,被告は被告製品を「譲り受けた者」(不競法19条1項5号ロ)ということができる。 また,被告が原告各商品の形態をAに提供の上,被告商品を製造させたと認めるに足りる証拠もない。 したがって,前記原告の主張は採用できない。 (3) 次に,被告が,被告商品が14FWの形態を模倣した商品であることを知らないことについて重過失がなかったといえるか否かについて検討する。 ア被告は,衣料品の販売業者であるところ,衣料品の販売業者は,自らが開発したものでない商品を仕入れる際には,それが模倣品であるなど他者 の権利を侵害する商品でないことについて,当該商品やその取引に関係する諸事情に応じた注意を払うべき立場にあるといえる。 らが開発したものでない商品を仕入れる際には,それが模倣品であるなど他者 の権利を侵害する商品でないことについて,当該商品やその取引に関係する諸事情に応じた注意を払うべき立場にあるといえる。 イ前記認定事実カによれば,A及び被告が展開する「ZARA」は,流行を取り入れた商品を安く提供することが特徴として挙げられたりすることがあるブランドである。 そして,被告は,Aの完全子会社であるところ,コマーシャルマネージ ャー等の従業員をして,日本における一般的なトレンドや,被告に必要な商品等を分析・把握させた上で,Aに対しこれらの情報を提供して同社とこれらの情報を共有するとともに,Aに対し,既存商品の改良点や新商品の提案を行なっていたこともうかがわわれる。また,被告は,被告商品も含めて日本国内で販売する商品を全てAから仕入れていた。これらのAが 扱う商品の性質,被告の商品の仕入れ先に関する事情等に照らせば,被告による前記の情報の共有等がされて商品が開発された場合,日本国内の消費者が求めるデザインの商品をAが開発等し,被告において,唯一の仕入れ先であるAからこれを仕入れて販売することが可能となることとなる。 被告によるAに対する日本における一般的なトレンドその他の情報の提供 等は,日本の消費者のニーズに沿ったより売れるデザインの商品がAにより開発されるという目的を有する面があることは否定できず,被告は,そのような商品が開発され,それを仕入れて販売することによって利益を得る関係にあった。被告とAとの関係は,単に被告がAから商品を仕入れて販売したということにとどまるものではなく,被告商品の仕入れは上記の ような関係の下でされたものである。Aの開発する新商品は被告が上記の目的で行った情報提供等を契機にデ がAから商品を仕入れて販売したということにとどまるものではなく,被告商品の仕入れは上記の ような関係の下でされたものである。Aの開発する新商品は被告が上記の目的で行った情報提供等を契機にデザインされた可能性のあるものであったのであり,そうである以上,被告は仕入れに当たりその形態が他者の権利を侵害しないものでないかにつき,そのような関係がない場合と比べて,慎重に確認する義務を負うことが相当というべきである。 他方,前記(1)オ(エ)のとおり,被告は,被告商品を仕入れるに当たり,被告商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことについて,Aに被告商品のデザイン過程を確認するなどして調査したことはない。 ウ原告各商品は,全て被告製品の基本的及び具体的形態の大部分を備えており,フードの立体感(構成C’),後身頃のダーツ(構成L’)や切欠き(構 成M’)の有無といった軽微な差異はあるものの,いずれも一見して被告商 品と似ていると評価できることに加え,ライナー付き14FW及び同15FWもまた,14FW及び15FWに取り外し可能なライナーを付したものにすぎず,ライナー部分を除いた形態は被告製品と一見して似ていると評価できる(前記認定事実(1)ア)。そして,これらの商品は,①全国の百貨店や比較的著名なセレクトショップで販売されていたこと(前記認定事 実(1)イ(イ)),②平成27年8月以降,著名で影響力のある女性ファッション雑誌「VOGUEJAPAN」に掲載されたのを皮切りに3誌の女性ファッション雑誌に取り上げられ,それに伴って販売数が増加し,各シーズンで●省略●着を販売していたこと(前記認定事実(1)イ(ア)及びウ),③インターネット上においても,ファッション情報に特化した複数のオンライ ンメ られ,それに伴って販売数が増加し,各シーズンで●省略●着を販売していたこと(前記認定事実(1)イ(ア)及びウ),③インターネット上においても,ファッション情報に特化した複数のオンライ ンメディアに取り上げられ,平成28年2月頃までの間に,購入者等によるコーディネート写真の投稿も70回以上行われたこと(前記認定事実(1)エ)が認められ,アパレル製品の販売を行い,また,トレンド情報を収集していた(前記イ)被告において,著名な雑誌等を閲読していたことで被告商品の仕入れ前から原告各商品の形態を知り得たともいえるし,また, インターネットを検索し,あるいは過去のクリッピング業務等において収集した雑誌記事等の情報を参照することによって,被告商品が原告各商品と酷似していることを認識することは比較的容易であったといえる。 そして,被告商品が店頭にて販売された平成28年2月29日からわずか10日ほどが経過した同年3月9日頃には,一般需要者により,インタ ーネット上に原告各商品と被告商品が酷似していることを指摘する投稿がされ,この頃,別の一般需要者からも両製品を「完コピ」などと評する投稿がされ,その後も平成29年3月頃までの間に,別々の一般需要者から被告商品を「ザ・リラクス風」,「リラクスM65風」「リラクスに似ているとインスタでも話題」などとする投稿が複数回された。これらは,被告商品 が原告各商品と酷似していることを認識することが困難であったとはいえ ないことを裏付けるものといえる。 エ前記イのとおりの被告とAの関係下で被告商品が仕入れられたことを考慮すると,被告は,Aから仕入れる商品の形態が日本における競合ブランドの製品の形態を模倣したものではないことにつき,前記関係がない場合と比べて,慎重に確認する義務を負 被告商品が仕入れられたことを考慮すると,被告は,Aから仕入れる商品の形態が日本における競合ブランドの製品の形態を模倣したものではないことにつき,前記関係がない場合と比べて,慎重に確認する義務を負っていたというべきである。そして, 前記ウのとおり,原告各商品が雑誌等で取り上げられていたことなどから被告商品が原告各商品と酷似していることを認識することは比較的容易であったといえる。このような状況において,被告商品を仕入れるに当たって被告商品が14FWの形態を模倣した商品であることを知らなかったことにつき,被告に重大な過失がなかったと認めることはできない。 したがって,被告の抗弁には理由がない。 オ被告は,被告商品を販売した平成28年の春夏シーズン1シーズンに仕入れた商品の種類は●省略●種類(色違いの商品を一種類としても●省略●種類)に及び,このような膨大な数の商品全てについて,そのデザイン過程を確認するとともに,形態が実質的に同一である同種商品がないかど うかを精査することは著しく困難であったと主張する。 しかしながら,前記のとおり,衣料品の販売業者は,自らが開発したものでない商品が他者の権利を侵害する商品でないことについて,当該商品やその取引に関係する諸事情に応じた注意を払うべき立場にあるといえるところ,被告については,Aとの間に,単に被告がAから商品を仕入れて 販売することを超えた関係があったのであり,この関係を考慮すれば,被告商品について原告各商品と酷似していることを認識することが困難であったとはいえないことと併せて,被告に重過失がなかったということはできない。 4 争点(3)(原告の損害額)について 前記1ないし3のとおり,被告は,原告各商品の形態を模倣した被告商品を販 売し とと併せて,被告に重過失がなかったということはできない。 4 争点(3)(原告の損害額)について 前記1ないし3のとおり,被告は,原告各商品の形態を模倣した被告商品を販 売し,また販売のために展示し,かつ,被告商品が原告各商品(14FW)の形態を模倣した商品であることを知らないことについて重過失がなかったとはいえないことから,原告の営業上の利益を侵害したものと認められ,不競法4条に基づき,これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。 そして,後記(1)イ(ア)のとおり,原告は,被告商品の販売当時,原告各商品の うち16SSを製造・販売しており,同製品は被告商品と市場において競合すると認められるから,原告には,被告の販売行為により一定の損害が発生したと認めることができる。 これに対し,被告は,原告には被告商品の販売開始前に受けた当初受注分以上の商品を製造・販売することは不可能であり,被告商品の販売によって損害が発 生したとは認められない旨主張する。しかし,原告が当初受注分以上の原告各商品を製造・販売することが全くできなかったと認めるに足りる証拠は存在せず,被告による被告商品の販売行為がなければ,さらなる追加注文を受け,販売し得た可能性は否定し得ないのであるから,原告に何らの損害も発生していないということはできない。 (1) 不競法5条1項に基づく損害額ア被告商品の譲渡数量被告による被告商品の譲渡数量は,●省略●着と認められる(乙45,46)。 イ原告各商品の単位数量当たりの利益額等 (ア) 原告各商品のうち,被告商品の販売期間(平成28年2月26日から同年4月9日)には,16SSが販売されていた(前記前提事実(2)ア)。 16SSは14FWの形態のうち構成L(後身頃のダ (ア) 原告各商品のうち,被告商品の販売期間(平成28年2月26日から同年4月9日)には,16SSが販売されていた(前記前提事実(2)ア)。 16SSは14FWの形態のうち構成L(後身頃のダーツ),構成M(後身頃の切欠き)及び構成N(後身頃のステッチ)を除く全ての構成を備え(前記3(1)(オ)),16SSと14FWは,全体的な形態や多くの個別 的形態が共通する。そして,前記構成L,M,Nについての差異は共通 部分に比べて部分的なものにとどまること,14FWと被告商品が実質的に同一の形態といえることに照らせば,16SSは市場において被告商品と競合し,被告商品の販売によってその販売数量に影響を受ける製品であり,不競法5条1項にいう「侵害の行為がなければ販売することができた物」に該当するというべきである。 これに対し,被告は,16SSは,後身頃のダーツ(構成L)がないことによってシルエットがゆったりとしたルーズフィットになっている点及び後身頃の切欠がない点(構成M)において14FWと異なるから,市場において被告商品と代替可能性がない旨主張する。 しかしながら,前記2点の差異は16SSの裾部分の広がり具合及び 後身頃の形態に若干の差を与えるものにすぎず,前記1(2)イで述べた14FWと被告商品との相違点(フードの立体感及び生地の質感)を考慮しても16SSの印象が被告商品と大きく異なるとはいえないから(甲228),16SSは市場において被告商品と競合し,被告商品の販売によってその販売数量に影響を受ける製品に当たるといえる。 (イ) 次に,16SSの販売価格についてみるに,証拠(甲165ないし215)によれば,原告は,16SSを,運営するインターネット上のショッピングサイトにおいて,需要者に 当たるといえる。 (イ) 次に,16SSの販売価格についてみるに,証拠(甲165ないし215)によれば,原告は,16SSを,運営するインターネット上のショッピングサイトにおいて,需要者に対し,小売価格(5万3000円,税抜)で販売すると共に,小売業者に対し,●省略●円で卸販売しているところ,その販売数量及び販売価格は別紙販売一覧表記載のとおりで ある。 そして,前記一覧表末尾記載のとおり,16SSの販売合計数量は●省略●着,合計販売金額は●省略●円であるから,以下の計算式のとおり,16SSの平均販売価格は●省略●円(小数点第1位を四捨五入)と認められる。 ●省略● これに対し,原告は,前記平均販売価格ではなく,小売価格(5万3000円,税抜)を基準として16SSの単位数量当たりの利益額を算出すべきであると主張するが,被告商品の販売による影響が原告のショッピングサイトにおける販売のみに及ぶとは認めがたい上,前記販売合計数量(●省略●着)のうち小売価格で販売されたのはわずか●省略●着 であるから(甲165の1,165の2),小売価格を基準として単位数量当たりの利益額を算出するのは妥当とはいえない。 また,原告は,甲181記載の小売価格9万1000円(税抜)の製品●省略●についても,16SSと生地の質感を除く形態が同一の商品であるから,同製品も含めて平均販売価格を算出すべきと主張するが,同 製品の形態を認めるに足りる証拠はなく,同製品が「侵害の行為がなければ販売することができた物」に該当するとは認められない。 (ウ) さらに,16SSの製造原価及び同製品の販売数量に応じて増加する変動経費についてみるに,証拠(甲151ないし164)によれば,16SSの1着当たりの製造原 物」に該当するとは認められない。 (ウ) さらに,16SSの製造原価及び同製品の販売数量に応じて増加する変動経費についてみるに,証拠(甲151ないし164)によれば,16SSの1着当たりの製造原価は●省略●円(小数点第1位を四捨五 入),変動経費は●省略●円(工賃●省略●円+物流費●省略●円)と認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 (エ) 以上を前提に16SSの単位数量当たりの利益額を算出すると,以下の計算式のとおり,●省略●円と認めることができる。 ●省略● ウ原告の販売能力被告は,原告の販売能力は被告の半分程度であるから,たとえ被告商品の販売がなかったとしても,原告が被告商品の販売数量(●省略●点)と同程度の16SSを追加販売する能力はなかったと主張する。 しかしながら,原告は,これまで小売業者に対して一度に最大で●省略● 着の16SSを納品したことがあったのであり(甲200),16SSの販売当時,同商品が頻繁に品切れ状態になっていたなど,原告の製造・販売能力に制限があることをうかがわせる事情も見当たらないから,原告は,被告商品の販売数量(●省略●着)と同程度の需要に対し,16SSの「販売その他の行為を行う能力」を有していたと認める。 エ 「販売することのできないとする事情」(不競法5条1項ただし書)(ア) 被告は,16SSは長袖の上着であり,被告商品が販売開始した2月下旬以降に原告に追加発注をする小売業者が存在したとは考えられないこと,16SSは被告商品の7倍程度の販売価格であり,また原告の知名度はそれほど高くないのに対して,被告のブランド「ZARA」は 人気ブランドであることからすれば,原告は,被告が被告 られないこと,16SSは被告商品の7倍程度の販売価格であり,また原告の知名度はそれほど高くないのに対して,被告のブランド「ZARA」は 人気ブランドであることからすれば,原告は,被告が被告商品を販売した数量の全部につき,販売することができない事情が存在したと主張する。 (イ) そこで検討するに,証拠(甲217)によれば,原告は,平成26年7月25日頃,小売業者に対し,16SSと同じ長袖の上着である14S Sの同追加受注分●省略●着を納品したと認められる。これによれば,16SSについても,被告商品の販売が開始した平成28年2月26日以降も同年3月以降の販売に向けて原告において追加注文を受ける可能性があったことがうかがわれるから,同年2月下旬以降に原告に対して追加発注をする小売業者が存在しないと認めることはできず,この点 を「販売することができないとする事情」として考慮することはできない。 一方,16SSの販売価格は5万3000円(税抜)であるのに対し,被告商品の販売価格は7398円(税抜)であり(甲1,14の1),16SSの販売価格は被告商品の7倍以上であり,相当に大きいから,い ずれの商品も全国の小売店及びオンラインショップにおいて販売され ていたことを考慮しても,16SSを購入する客層と被告製品を購入する客層とでは,重なり合わない部分もあり,また,その価格差に鑑みれば,被告商品の販売がなかった場合,被告商品を購入した者のうちの一定数は原告製品を購入しなかったと推認することができる。 その他,前記1(3)のとおり,原告各商品が発売された平成26年より 前から,M65パーカ等のアメリカ軍が使用した防寒服の形態をベースにデザインされたミリタリーパーカ等と呼ばれるファッションのカテゴ ,前記1(3)のとおり,原告各商品が発売された平成26年より 前から,M65パーカ等のアメリカ軍が使用した防寒服の形態をベースにデザインされたミリタリーパーカ等と呼ばれるファッションのカテゴリーが存在し,被告商品の販売された平成28年2月当時には,原告各商品のほかにも,M65パーカの形態の一部を取り入れた競合製品が相当多数販売されていて,それらの競合品の価格は3000円台から2 万円台である(乙4,5,13,47ないし58)。それらの競合製品と被告商品の形態は異なり,印象も異なるといえるものではあるが,ベースとなる形態の同一性から,被告商品を購入した者の中には,被告商品の販売がなかったとしても,16SSではなく,より手頃な価格の製品も存在する前記競合品を購入した者がいた可能性が全くなかったとは いえない。また,被告の展開するブランド「ZARA」は,平成27年末時点で全国99店舗を有し,意識調査においても「好きなブランド」あるいは「よく買うブランド」として首位になるなど著名な人気ブランドであり,被告商品の形態に加え,被告商品が「ZARA」ブランドであることや,被告の一定の営業力に基づき被告商品を購入した者が全く 存在しなかったわけではないとも推認することができる(甲20,149,乙42ないし44,弁論の全趣旨)。 以上の諸事情,特に16SSと被告商品の大きな価格差を考慮すれば,被告商品の販売数量(●省略●着)のうち50%に相当する数量については,被告による不正競争行為がなくとも,原告が16SSを「販売す ることができないとする事情」があったものと認めるのが相当である。 したがって,前記(1)アの被告商品の譲渡数量のうち,50%に相当する●省略●着(小数点第1位を四捨五入)に応じた金額を, ができないとする事情」があったものと認めるのが相当である。 したがって,前記(1)アの被告商品の譲渡数量のうち,50%に相当する●省略●着(小数点第1位を四捨五入)に応じた金額を,原告の損害額から控除すべきである。 オ原告の損害額以上を前提に,原告の不正競争防止法5条1項に基づく損害額を,前記ア の被告商品の販売数量(ただし,前記エによる減算後のもの)に前記イの16SSの一個あたりの利益額を乗じて算出すると,合計1135万7302円となる。 ●省略●点(●省略●)×●省略●円=946万7282円 (2) 弁護士費用本件事案の性質・内容,本件訴訟に至る経緯,本件審理の経過等諸般の事情に鑑みれば,被告の不正競争行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相当額は,前記(1)の損害額の約1割に相当する95万円と認めるのが相当である。 (3) 小括以上によれば,原告は,被告に対し,不正競争防止法4条に基づく損害賠償として1041万7282円(前記(1)と(2)の合計額)及びこれに対する最後に被告製品が販売された日である平成28年4月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 5 結論よって,原告の請求は主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し,原告のその余の請求は理由がないから棄却することとし,主文第1項には仮執行宣言を付すこととして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官安岡美香子 所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官安岡美香子 裁判官大下良仁 (別紙)原告商品目録 以下の製品番号の婦人用コート 1 14SS-RECT-003L 2 14FW-RECT-031LNONLINEAR 3 15SS-RECT-042L 4 15FW-RECT-078LNONLINEAR 5 16SS-RECT-091L (別紙)被告商品目録 製品番号「5191/021」の婦人用コート (別紙)原告各商品の形態 【取り外したフードを畳んだ状態の正面視拡大画像】 【取り外したフードを開いた状態の正面視拡大画像】 【袖部分の拡大画像】 【袖部分のベルトを左側へ開いた状態の拡大画像】 (別紙)被告商品の形態 【取り外したフードを畳んだ状態の正面視拡大画像】 【取り外したフードを開いた状態の正面視拡大画像】 【袖部分の拡大画像】 【袖部分のベルトを左側へ開いた状態の拡大画像】 (別紙)販売一覧表販売金額/1着(円)販売数量(着)合計販売金額(円) 証拠 ●省略●●省略●●省略●甲165●省略●●省略● 大画像】 (別紙)販売一覧表販売金額/1着(円)販売数量(着)合計販売金額(円) 証拠 ●省略●●省略●●省略●甲165●省略●●省略●●省略●甲166●省略●●省略●●省略●甲167 の1 ないし5●省略●●省略●●省略●甲168●省略●●省略●●省略●甲169●省略●●省略●●省略●甲170●省略●●省略●●省略●甲171●省略●●省略●●省略●甲172●省略●●省略●●省略●甲173●省略●●省略●●省略●甲174●省略●●省略●●省略●甲175●省略●●省略●●省略●甲176●省略●●省略●●省略●甲177●省略●●省略●●省略●甲178●省略●●省略●●省略●甲179●省略●●省略●●省略●甲180●省略●●省略●●省略●甲181●省略●●省略●●省略●甲182●省略●●省略●●省略●甲183●省略●●省略●●省略●甲184●省略●●省略●●省略●甲185 ●省略●●省略●●省略●甲186●省略●●省略●●省略●甲187●省略●●省略●●省略●甲188●省略●●省略●●省略●甲189●省略●●省略●●省略●甲190●省略●●省略●●省略●甲191●省略●●省略●●省略●甲192●省略●●省略●●省略●甲193●省略●●省略●●省略●甲194●省略 ●省略●●省略●●省略●甲191●省略●●省略●●省略●甲192●省略●●省略●●省略●甲193●省略●●省略●●省略●甲194●省略●●省略●●省略●甲195●省略●●省略●●省略●甲196●省略●●省略●●省略●甲197●省略●●省略●●省略●甲198●省略●●省略●●省略●甲199●省略●●省略●●省略●甲200●省略●●省略●●省略●甲201●省略●●省略●●省略●甲202●省略●●省略●●省略●甲203●省略●●省略●●省略●甲204●省略●●省略●●省略●甲205 の1 ないし7●省略●●省略●●省略●甲206●省略●●省略●●省略●甲207●省略●●省略●●省略●甲208●省略●●省略●●省略●甲209●省略●●省略●●省略●甲210 ●省略●●省略●●省略●甲211●省略●●省略●●省略●甲212●省略●●省略●●省略●甲213●省略●●省略●●省略●甲214●省略●●省略●●省略●甲215 ●省略●●省略●

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る