令和2年7月30日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ワ)第2216号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和元年12月5日判決 原告 株式会社Shapes 上記訴訟代理人弁護士高橋隆二同寺島英輔 被告 A(以下「被告A」という。)上記訴訟代理人弁護士二宮麻里子 被告 エクササイズコーチジャパン株式会社(旧商号:株式会社ShapesInternational)(以下「被告会社」という。) 被告 B(以下「被告B」という。)上記2名訴訟代理人弁護士神田孝同井嶋倫子 主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して429万6000円及びこれに対する平成27年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,被告会社に生じた費用の7分の1,被告Bに生じた費用の7分の1,被告Aに生じた費用の7分の1及び原告に生じた費用の7分の1を原告の負担とし,被告会社に生じた費用の7分の6及び原告に生じた費用の7分の2を被告会社の負担とし,被告Bに生じた費用の7分の6及び原告に生じた費用の7分の2を被告Bの負担とし,その余の費用を被告Aの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被 の7分の6及び原告に生じた費用の7分 の2を被告Bの負担とし,その余の費用を被告Aの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して498万9600円及びこれに対する平成27 年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,原告が,別紙原告商標目録記載の商標(以下「本件商標」といい,本件商標に係る商標権を「本件商標権」という。)に係る原告と被告会社との間の譲 渡契約が解除されたことに伴い原告に返還(移転登録)されるべきであった本件商標権を,被告会社,被告B及び被告A(以下,これらの被告3名を「被告ら」と総称する。)が,原告を害する目的をもって共謀して不使用取消審決を経るなどして本件商標権の商標登録の取消を確定させたと主張して,被告らに対し,民法719条1項前段,民法709条に基づき,原告が申立てを余儀なくされた当 該不使用取消審決の再審請求(商標法58条1項)等に係る弁護士費用相当額の損害賠償を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) 原告は,健康トレーニング,健康管理の企画及びコンサルタント業務,スポ ーツトレーニングに対する指導及び業務委託等を目的として,平成18年5月 23日に設立された株式会社であり,パーソナルトレーニング等の指導者として活動するC(以下「C」という。)が代表取締役である。 原告は,平成18年9月,東京都渋谷区において「Shapes」という名称のパーソナルトレーニングジムを開設した。 原告は,平成20年8月21日に登録出願され,同年10月 う。)が代表取締役である。 原告は,平成18年9月,東京都渋谷区において「Shapes」という名称のパーソナルトレーニングジムを開設した。 原告は,平成20年8月21日に登録出願され,同年10月31日に設定登 録された本件商標権を有していた。 被告Bが代表取締役であった株式会社ラスカ(以下「ラスカ」という。)は,平成22年4月16日,原告との間で,原告がラスカに対して,本件商標や原告及びCが有するダイエットや女性ボディメイクのパーソナルトレーニングジム経営に関するノウハウ等を使用させ,ラスカがその対価として原告に対し ライセンスフィーを支払う旨のライセンス契約を締結した。 平成22年11月22日,フィットネスクラブの経営,企画,運営及び管理並びにフランチャイズチェーン加盟店の募集,経営指導等の経営コンサルティング等を目的として,被告Bを代表者とする被告会社が設立された。 原告と被告会社は,平成23年2月8日,ラスカが有する上記ライセンス契 約上の地位を実質的に被告会社に承継させるため,上記ライセンス契約と同内容のライセンス契約を新たに締結した。被告会社は,同月頃以降,「Shapes」のブランド名を使用してパーソナルトレーニングジムの運営を開始した。 原告と被告会社は,平成23年4月1日,上記ライセンス契約について,被告会社がフランチャイズ展開できるように内容を変更するとともに,同年8月 30日,ライセンスの存続期間を30年に変更する旨の変更をした。(甲9,10,弁論の全趣旨。以下,同年8月30日に締結されたライセンス契約を「本件ライセンス契約」という。)。 原告及びCと被告会社は,平成23年12月14日,原告又はCが有していたパーソナルトレーニング事業に関する営業権等を被告会社に対し されたライセンス契約を「本件ライセンス契約」という。)。 原告及びCと被告会社は,平成23年12月14日,原告又はCが有していたパーソナルトレーニング事業に関する営業権等を被告会社に対して譲渡す る事業譲渡契約(以下「本件営業譲渡契約」という。)及びCが被告会社から一 定割合の顧問料を継続的に受領する旨の顧問契約(以下「本件顧問契約」という。)を締結した。 本件営業譲渡契約では,原告又はCが有していた,本件商標権を含むパーソナルトレーニング事業に関する営業権,商標権,ノウハウ,ロゴ,キャッチフレーズ等の知的財産権等の一切の権利を被告会社に対して譲渡することが定 められた。(乙イ3)本件顧問契約では,被告会社が,Cに対し,平成24年1月1日から,顧問料として,Shapes心斎橋店については売上高(顧客から支払われる入会金,手数料,指導料その他の全ての金員)の5パーセント,Shapes梅田店については売上高の4パーセント,その他のShapesの店舗については 売上高の3パーセントの金員を支払う旨が定められるなどしていた。(乙イ4) 原告は,平成24年2月10日,本件営業譲渡契約に基づき,被告会社に対し,本件商標権の移転登録手続をした。(甲2) 原告は,本件顧問契約に定められた平成24年5月分以降の顧問料の支払を被告会社が拒絶したことを理由として,被告会社に対し,平成24年9月26 日付け解除通知書をもって,本件営業譲渡契約及び本件顧問契約を解除する旨の意思表示をした(以下,この解除を「本件解除」ということがある。)。 原告ないしCは,平成24年10月,本件営業譲渡契約の本件解除を理由として,被告会社に対して本件商標権の移転登録の抹消登録等を求めて訴訟を提起した(当庁平 本件解除」ということがある。)。 原告ないしCは,平成24年10月,本件営業譲渡契約の本件解除を理由として,被告会社に対して本件商標権の移転登録の抹消登録等を求めて訴訟を提起した(当庁平成24年(ワ)第29533号損害賠償請求事件等。以下「別 件訴訟」という。)。(弁論の全趣旨)別件訴訟について,東京地方裁判所は,平成27年7月,本件解除が有効であるとして,本件商標権の移転登録抹消登録請求を認容等する判決をした。 上記判決に対しては控訴がされたところ,知的財産高等裁判所は,平成28年2月,本件解除は有効であるとしたものの,本件商標権について登録が抹消 )を理由として本件商標権の移転登録抹消登録請求を棄 却した。同判決はその後確定した。(乙イ2,弁論の全趣旨)商標の不使用取消審判についてア被告Aは,平成26年11月28日,被告会社を被請求人として,本件商標について商標法50条に基づく不使用取消審判請求をした(取消2014-300963号審判事件。以下「本件不使用取消審判請求」という。審判 の予告登録日は同年12月17日。)。(甲2)被告会社は,上記事件について,代理人弁理士を選任したが,答弁はしなかった。(甲3)イ特許庁は,平成27年3月31日,本件不使用取消審判請求について,被請求人である被告会社が使用についての証明などをしない限り商標登録の 取消しを免れないところ被告会社が答弁していないことを述べて,本件商標の登録を取り消す旨の審決(以下「本件不使用取消審決」という。)をした。 本件不使用取消審決は同年5月11日付けで確定し,同年6月5日に本件商標権の登録の抹消についての登録がされた。(甲2,3)ウ原告は,平成27年6月25日,被告会社 審決」という。)をした。 本件不使用取消審決は同年5月11日付けで確定し,同年6月5日に本件商標権の登録の抹消についての登録がされた。(甲2,3)ウ原告は,平成27年6月25日,被告会社及び被告Aが共謀して本件商標 権を害する目的をもって本件不使用取消審決を確定させたとして,特許庁に対し,商標法58条1項に基づき本件不使用取消審決の取消しを求めて再審の請求をした(以下「本件再審請求」という。)。(乙イ20)特許庁は,平成28年10月31日,原告の本件再審請求を却下する旨の審決をした(再審2015-950001号審判事件)。(乙イ19) 原告は,平成28年11月28日,上記審決に対して,被告を被告会社及び被告Aとする審決取消訴訟(以下「本件審決取消訴訟」という。)を提起した(知的財産高等裁判所平成28年(行ケ)第10254号事件)。本件審決取消訴訟で,被告Aは,公益的観点から不使用登録商標の排除のために上記アの審判請求をした旨主張した。原告は,被告らが共謀して原告の利益を害 する目的をもって本件不使用取消審決をさせたことを尋問事項として,被告 Aの本人尋問の申出をして,同申出は採用された。被告Aは,被告会社の代表者と共謀したことはない旨が記載された陳述書を提出したが,適式の呼出しを受けたにもかかわらず,裁判所に事前の連絡をすることなく,本人尋問期日に出頭しなかった。(甲7)知的財産高等裁判所は,平成29年12月25日,被告会社と被告Aが共 謀して本件商標権を害する目的をもって本件不使用取消審決をさせた事実を認定して,特許庁の再審請求却下審決を取り消す旨の判決をした。その後,上告却下及び上告不受理決定を経て,同判決は確定した。 (甲7,25,27)特許庁は,上記取消判決を受けて,再審20 せた事実を認定して,特許庁の再審請求却下審決を取り消す旨の判決をした。その後,上告却下及び上告不受理決定を経て,同判決は確定した。 (甲7,25,27)特許庁は,上記取消判決を受けて,再審2015-950001号審判事件について更に審理し,平成31年3月27日,平成27年3月31日の本 件不使用取消審決を取り消し,本件不使用取消審判請求を却下する旨の審決をし,その後,上記審決は確定し,本件商標権を抹消する登録は抹消された。 (甲27,28,弁論の全趣旨) 原告は,本件商標権を回復するため,本件再審請求や本件審決取消訴訟等に係る法的手続を弁護士(原告代理人弁護士)に依頼し,その報酬として以下の 弁護士費用を支払う旨の約束をした(消費税は別途負担)。(甲24)ア着手金70万円イ成功報酬①特許庁の手続きのみで再審が確定した場合は140万円,②審決取消訴 訟(相手方の上告受理申立中も含む。)を経た場合は300万円,③再審後の不使用取消審判への参加手続により商標権の登録が維持された場合には更に50万円 原告は,平成27年6月30日,原告代理人弁護士に対し,上記アの着手金70万円を支払った。(弁論の全趣旨) 被告会社は,平成23年頃から被告会社のホームページにおいて別紙被告標 章目録の商標(以下「本件被告標章」という。)を表示するとともに,被告会社が運営する店舗の壁面等に本件被告標章を掲示するなどしており,本件被告標章を使用して多くの店舗を展開していた。(甲4,5,18,乙イ9,弁論の全趣旨) 3 争点 本件不使用取消審決を得たことについての被告会社,被告B及び被告Aの共同不法行為に基づく損害賠償請求権の成否(争点1) 損害の有無及 ,乙イ9,弁論の全趣旨) 3 争点 本件不使用取消審決を得たことについての被告会社,被告B及び被告Aの共同不法行為に基づく損害賠償請求権の成否(争点1) 損害の有無及びその損害額(争点2) 4 争点に対する当事者の主張(なお,被告Aは,第13回弁論準備手続期日にお いて,被告会社及び被告Bの主張を全て援用すると述べた。)本件不使用取消審決を得たことについての被告会社,被告B及び被告Aの共同不法行為に基づく損害賠償請求権の成否(争点1)(原告の主張)ア被告会社及び被告Bの不法行為について 被告会社は,別件訴訟において本件商標権の移転登録抹消登録手続請求が認容される見通しとなったことから,不使用取消審判制度を悪用して本件商標権を消滅させることにより,原告に対する本件商標権の返還請求を法律上不可能にした。被告会社は,本件商標権が消滅することにより,本件商標(社会通念上同一の商標を含む)を合法的に使用する権利を専有できるほか,原 告から本件商標権に基づく本件被告標章の使用の差止めを求められるリスクを回避できることになるから,上記行為に及ぶ強い動機がある。本件商標権は,出願日が最も古く安定した権利であること,本件被告商標と実質的に同一の商標であること,別件訴訟における訴訟物となっていることから被告会社は本件商標を保持する信義則上の義務があることなどからすれば,被告 会社が本件商標権を放棄することは通常ありえない。 また,商標権の移転登録抹消登録手続請求を求める訴訟の被告となった者が当該商標権の不使用取消審判の被請求人となった場合には,信義に従い誠実に当該審判の審理に対応すべき義務を負うところ,被告会社は,そのような義務を故意に懈怠した。 被告Bは る訴訟の被告となった者が当該商標権の不使用取消審判の被請求人となった場合には,信義に従い誠実に当該審判の審理に対応すべき義務を負うところ,被告会社は,そのような義務を故意に懈怠した。 被告Bは,本件不使用取消審判請求への対応を委任した弁理士に対して当 該審判請求への答弁を放置するよう指示した。上記の被告会社の不法行為は,被告Bが会社の業務執行として被告会社を代表して自ら行ったものである。 イ被告Aの不法行為について被告Aは,被告会社が本件商標権と同一又は類似である本件被告標章を使用している事実を認識していたか,又は容易に認識できる状況にあったにも かかわらず,あえて本件不使用取消審判請求を行った。 被告Aは,本件不使用取消審決の確定の前後を通じ,本件商標と同一又は類似の商標についての使用又は登録出願をしておらず,かえって被告会社による同一内容の商標についての登録出願を黙認していた。 被告Aは,本件不使用取消審判請求をした積極的動機を容易に主張立証で きたにもかかわらず,そのような主張立証をせず,本件審決取消訴訟において裁判所から適式の呼出しを受けたにもかかわらず正当な理由なく尋問期日に出頭しなかった。本件再審請求の主張書面においては,被告Aは被告会社と間接的に関係があったことが示唆されており,被告会社から依頼を受けて本件不使用取消審判請求をしたことを自白したに等しい。 不使用取消審判請求をすることは,外形上は商標法50条に基づく権利の行使であるが,被告Aの行為は,被告会社との事前共謀に基づき原告の本件商標権を故意に消滅させるという加害目的に向けた手段の一部を構成するものであり,第三者の商標使用や商標選択の余地ないし自由度を拡大するという不使用取消審判請求の公益目的に反し,制度趣旨を逸 告の本件商標権を故意に消滅させるという加害目的に向けた手段の一部を構成するものであり,第三者の商標使用や商標選択の余地ないし自由度を拡大するという不使用取消審判請求の公益目的に反し,制度趣旨を逸脱するものである から,権利濫用というべきものであり顕著な違法性を有する。 ウ被告らの不法行為についての関連共同性について上記ア,イによれば,被告らは,本件商標権を消滅させることそれ自体を目的として,共謀により原告を害する目的をもって本件不使用取消審決を確定させたといえる。被告らには,共謀と本件商標権を害する目的という極めて強い主観的関連共同性が存在する。 (被告らの主張)ア被告会社及び被告Bの不法行為について本件不使用取消審判請求は,被告会社及び被告Bが申し立てたものではないし,本件商標と本件被告商標は同一ではないから本件商標は予告登録前3年の間に使用された事実がなく,被告会社が本件不使用取消審判請求に対し て答弁をしていたとしても結論は変わらなかったのであるから,被告会社及び被告Bは積極的に加害行為をしたとはいえず,また,加害行為の具体的認識もなかったことから故意も認められない。 本件商標は社会的に使用されていない状態であり,被告会社としては本件不使用取消審判請求に対して反論の余地はなかったのであるから,上記請求 に対して答弁する義務はなく,また,不使用取消審判が提起されていることを原告に知らせる義務もないから,被告会社及び被告Bの対応に過失や違法性はない。 イ被告Aの不法行為について被告Aは,長期にわたって使用されていない本件商標を取り消すことに公 益的観点から理由があると考え,取消審決が出される可能性があるという一応の心証を得た後に本件不使用取消審 不法行為について被告Aは,長期にわたって使用されていない本件商標を取り消すことに公 益的観点から理由があると考え,取消審決が出される可能性があるという一応の心証を得た後に本件不使用取消審判請求をした。商標法50条の趣旨に照らせば,積極的な自己使用目的を有しない不使用取消審判請求がされたとしても適法な行為であり,それが不合理ともいえない。 ウ被告らの不法行為についての関連共同性について 被告会社及び被告Bと被告Aは一切面識や利害関係がなく,本件不使用取 消審判請求について共謀した事実もない。 損害の有無及びその損害額(争点2)(原告の請求)ア,別件訴訟において本件商 標権の移転登録抹消登録手続が命じられ,それにより本件商標権の登録名義人は原告になっていたのであり,本件再審請求や本件審決取消訴訟に係る手続をする必要がなかった。ところが,本件商標権の移転登録抹消登録手続を受けることが社会通念上不可能となったため,原告は,本件商標権を回復するために本件再審請求や本件審決取消訴訟に係 る手続をすることを余儀なくされた。 本件再審請求や本件審決取消訴訟についての弁護士費用は,高度の法的判断が不可欠であることに加え,そのような法的手続を執らない限り本件商標権を復活させる手段がないために負担を余儀なくされたものであり,被告らの共同不法行為から直接的に負担を余儀なくされたものであるといえるか ら,,原告による原告代理人弁護士に対する上記両事件の手続委任との間には相当因果関係が存在する。 イ原告は,原告代理人弁護士に対し,上記の手続委任に係る報酬として,前提事実⑻記載の弁護士費用を支払う旨の約束をした。 原告は,平成27年6月30日,原告代理人弁護 当因果関係が存在する。 イ原告は,原告代理人弁護士に対し,上記の手続委任に係る報酬として,前提事実⑻記載の弁護士費用を支払う旨の約束をした。 原告は,平成27年6月30日,原告代理人弁護士に対し,着手金70万 円を支払った。また,原告は,原告代理人弁護士に対し,成功報酬として300万円を支払う義務がある。これらの合計370万円に消費税(8パーセント)相当額29万6000円を加算した399万6000円が本件の共同不法行為と相当因果関係にある損害額である。 ウによる原告代理人弁護士に対する本件訴訟 の手続委任との間には相当因果関係が存在する。本件訴訟に係る弁護士費用 としては上記イで認められる損害額の1割が相当である。 (被告らの主張)否認ないし争う。被告会社は,別件訴訟において,本件商標と同一の構成の商標を出願した上で,それを原告に譲渡する旨の和解を提案した。この和解に応じていれば原告は本件商標と同一の商標を取得できたにもかかわらず,原告 は上記和解を拒絶したのであるから,本件再審請求や本件審決取消訴訟は原告の判断に起因するものである。したがって,それらの弁護士費用は原告自身の判断による出捐であるから損害ではなく,仮に損害であるとしても原告の積極的な意思が介在しているから被告らの行為との間に因果関係がない。 原告は,本件商標権の侵害を理由とする損害賠償等を求める訴訟(東京地方 裁判所平成30年(ワ)第19783号事件。以下「19783号事件」という。)を別途提起しているところ,本件訴訟は,19783号事件の手段として位置づけられるものであり,両者の訴訟物が異なるとしても経済的目的は同一であるというべきであるから,本件訴訟における請求が独立して成り立つものではない。 本件訴訟は,19783号事件の手段として位置づけられるものであり,両者の訴訟物が異なるとしても経済的目的は同一であるというべきであるから,本件訴訟における請求が独立して成り立つものではない。 仮に,本件訴訟の請求原因が認められたとしても,被告らの共同不法行為と相当因果関係が認められる損害額は,(旧)日本弁護士連合会報酬等基準にしたがって算出された合計158万7600円(着手金49万円,成功報酬98万円,消費税11万7600円)にとどまる。 第3 争点に対する判断 1 本件不使用取消審決を得たことについての被告会社,被告B及び被告Aの共同不法行為に基づく損害賠償請求権の成否(争点1)について原告は,本件解除によって原告に返還(移転登録)されるべき本件商標権について,被告らが原告を害する目的をもって共謀して不使用取消審決を経て本件商標権の商標登録の取消しを確定させたと主張し,被告らの行為が不法行為 となる旨主張する。 本件不使用取消審判をめぐり,前提事実の事実があるほか,次のような事実があった。 ア平成27年5月11日に本件不使用取消審決が確定したところ,被告会社は,同月25日,本件商標と全く同一の外観の標章について,指定役務を第41類「フィットネス・エクササイズ及びボディートレーニングに関する教 授,フィットネス・エクササイズ及びボディートレーニングに関する施設の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,スポーツの興行の企画・運営又は開催,運動用具の貸与,録画済み記録媒体の貸与」という本件商標と全く同一の指定役務とする商標登録出願をした(以下,この出願を「新出願」という。)。この商標は,その後,商標登 録された。(甲6,弁論の全趣旨) 貸与,録画済み記録媒体の貸与」という本件商標と全く同一の指定役務とする商標登録出願をした(以下,この出願を「新出願」という。)。この商標は,その後,商標登 録された。(甲6,弁論の全趣旨)イ平成24年に提起された別件訴訟において,次の事実があった。 被告会社は,平成26年6月20日付けで別件訴訟の受訴裁判所に対して「事務連絡書(和解提案書)」を送付した。同事務連絡書には被告会社が本件営業譲渡契約によって原告から取得した登録商標(「C」登録番号第536 3879号,第5506266号及び「●メソッド」登録番号第5506265号)を原告に無償譲渡する旨の提案がされていた。(甲13)別件訴訟では,平成27年4月16日にCや被告Bの尋問が実施されたところ,その尋問において本件不使用取消審決に関する質問等がされることはなかった。別件訴訟は,同日に口頭弁論が終結され,その後,和解協議が行 われた。(甲17,26)被告会社は,平成27年4月23日付けで別件訴訟の受訴裁判所に対して「事務連絡書(和解条項案)」を送付した。同事務連絡書には被告会社が原告に対して解決金を支払うことや,被告会社が本件営業譲渡契約によって原告から取得した登録商標(「C」登録番号第5363879号,「●メソッド」 登録番号第5506265号,「シセトレ」・「姿勢トレ」登録番号第5107 897号,第5506264号)を原告に無償譲渡することなどを内容とする和解条項案が記載されていた。(甲14)被告会社は,平成27年5月11日付けで別件訴訟の受訴裁判所に対して「事務連絡書(和解条項案②)」を送付した。同事務連絡書には,被告会社が本件営業譲渡契約によって原告から取得した全ての登録商標を譲渡するこ とは,被告 月11日付けで別件訴訟の受訴裁判所に対して「事務連絡書(和解条項案②)」を送付した。同事務連絡書には,被告会社が本件営業譲渡契約によって原告から取得した全ての登録商標を譲渡するこ とは,被告会社が「Shapes」商標でチェーン展開を行う以上はロゴマークの商標であっても第三者を権利者とすることはできないため受け入れられず,原告に譲渡することができる商標はC個人名,シセトレ,●メソッドに関するものにとどまるとした上で,被告会社が解決金として1000万円以上を支払うことなどを内容とする和解条項案が記載されていた。(甲1 5)被告会社は,平成27年5月26日付けで,別件訴訟の受訴裁判所に対して「事務連絡書(和解条項案③)」を送付した。被告会社は,同事務連絡書において,同年3月31日付けで本件不使用取消審決がされてその審決が確定し,本件商標の商標登録が取り消されたこと,同年5月25日に本件商標と 同一の商標について,被告会社が新出願をしたことを原告に連絡した。それまで,被告会社らが,本件不使用取消審判請求に関係する事実を原告に知らせたことはない。そして,被告会社らは,「被告らは,以上を前提に次の和解案をご提案します。」として,2つの和解条項案を提示した。その一つは,「Shapesgirl」及び新出願に係る商標を被告会社が原告に譲渡 し,被告会社が原告に対して1000万円を支払うことなどを内容とする和解案(和解条項案③-A)であり,もう一つは,「shapes」関連の商標は譲渡せずに「シセトレ」「●メソッド」などの商標のみを被告会社が原告に譲渡し,被告会社が原告に対して2500万円を支払うことなどを内容とする和解案(和解条項案③-B)であった。(甲16,弁論の全趣旨) 上記によれば,被告らについて,以 告会社が原告に譲渡し,被告会社が原告に対して2500万円を支払うことなどを内容とする和解案(和解条項案③-B)であった。(甲16,弁論の全趣旨) 上記によれば,被告らについて,以下の事情が認められる。 ア被告Aは,平成24年の別件訴訟提起後の平成26年11月に本件不使用取消審判請求をした。本件不使用取消審判請求に基づいてされた本件不使用取消審決に対する再審に係る本件審決取消訴訟では,被告Aと被告会社,被告Bとの共謀が争点となっていたところ,被告Aは,裁判所から適式の呼出しを受けたにもかかわらず正当な理由なく尋問期日に出頭しなかった。なお, 本件においても,被告Aは尋問の申立てをしない。 被告Aは,本件審決取消訴訟や本件訴訟において,本件商標を取り消すことに公益的観点から理由があると考えて本件不使用取消審判請求をした旨主張する。 イ被告会社について,平成24年10月,本件営業譲渡契約の解除を理由と して被告会社に対して本件商標権について移転登録手続を請求する別件訴のとおり,被告会社は,平成23年2月頃以降,「Shapes」のブランド名を使用してパーソナルトレーニングジムの運営を開始し,本件被告標章を使用していて,後記エのような事情があり,別件訴訟において,本件営業譲渡契約の解除が認められ本件商標権の 移転登録手続請求が認容された場合,本件被告標章の使用等について原告から本件商標権に基づき,損害賠償請求を含む権利行使を受ける可能性があった。 別件訴訟係属中の平成26年11月に本件不使用取消審判請求がされたところ,被告会社は,代理人は選任したが,答弁をせず,本件不使用取消審 決がされてそれが確定し,本件商標権が消滅した。 そして,被告会社は,上記のよ 6年11月に本件不使用取消審判請求がされたところ,被告会社は,代理人は選任したが,答弁をせず,本件不使用取消審 決がされてそれが確定し,本件商標権が消滅した。 そして,被告会社は,上記のような経緯で本件不使用取消審決が確定してから1か月以内に,本件商標と同一の外観を有し,指定役務を同一とする商標について,新出願をした。 また,別件訴訟においては,第1審の東京地方裁判所において,被告会社 は,複数回,和解の提案をしており,弁論の終結後にも和解の提案をした。 被告会社は,平成27年5月26日付けの連絡までは,本件不使用取消審判請求に関係する事実を原告に知らせず,新出願をした直後にした同連絡において,原告に対し本件不使用取消審決がされた事実や新出願をしたことを知らせるとともに,それらの事実を前提とするとして,和解案の提示を行った。 ウ本件審決取消訴訟では,判決において被告会社と被告Aが共謀して本件商 標権を害する目的をもって本件不使用取消審決をさせたという事実が認定され,同判決は確定し エ前提事実のとおり,被告会社は,平成23年頃以降,本件被告標章を使用していたところ,本件商標と本件被告標章は,欧文字「Shapes」が強く支配的な印象を与える部分であるといえ,当該部分を対比すると,両者 のフォントの相違は微差であって外観は類似し,また,称呼及び観念も同一であるといえるから,本件商標と,被告らが使用していた本件被告標章は類似のものであるといえる。 審判請求が認められて不使用取消審判が確定すれば被告会社及び被告会社 の代表取締役である被告Bが得る可能性がある利益の状況,その後の被告A,被告会社及び被告Bが現実にした行為やしなかった行為の内容等に照らすと,被告A,被告会社及び被告Bは, 会社及び被告会社 の代表取締役である被告Bが得る可能性がある利益の状況,その後の被告A,被告会社及び被告Bが現実にした行為やしなかった行為の内容等に照らすと,被告A,被告会社及び被告Bは,共謀して,被告Aが,本件商標権者であるべき原告を害する目的をもって本件不使用取消審判請求をし,被告会社及び被告Bは,同じ目的をもって本件不使用取消審判請求に係る手 続で答弁をせず,本件不使用取消審決を確定させ,本件商標権を消滅させたと認めるのが相当である。そして,本件では,少なくとも,最終的に,本件不使用取消審決が取り消されて,本件不使用取消審判請求が却下されるに至ったことからも,被告らの行為は違法な行為であるといえる。 以上によれば,不使用取消審判に関する被告らの一連の行為は,被告らに よる共同の不法行為というべきものであり,被告らは,被告らの上記一連の 行為により原告が被った損害を賠償しなければならない。 イ被告らは,被告Aがした本件不使用取消審判請求は商標法50条の趣旨に照らして適法な行為であると主張し,被告会社や被告Bは積極的に加害行為をしたとはいえないとか,本件再審請求に対して答弁する義務はないなどと主張して不法行為の成立を争う。 しかし,上記アの説示のとおり,被告らは,共謀して原告を害する目的で本件不使用取消審判をしたと認められるし,被告らの行為は違法な行為であると認められるから,上記の主張は採用できない。 損害の有無及びその損害額(争点2)について 不法行為の被害者が自己の権利を回復するために弁護士に委任して訴訟を提起することを余儀なくされたといえる場合,事案の難易度,認容された内容,その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内の弁護士費用については,当該不 利を回復するために弁護士に委任して訴訟を提起することを余儀なくされたといえる場合,事案の難易度,認容された内容,その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内の弁護士費用については,当該不法行為と相当因果関係のある損害であると解するのが相当である。 前記のとおり,被告らは,共謀して,原告を害する目的をもって本件不使用取消審判請求を利用し,本件不使用取消審決を確定させ,原告が保有すべき本件商標権を消滅させたものであり,この行為は違法である。このことと,その権利の回復のための困難さの程度等に照らせば,原告は,原告が保有すべき権利である本件商標権を回復するため,弁護士に委任して本件再審請求や本 件審決取消訴訟等の手続をすることを余儀なくされたものといえる。 そして,本件における事情を勘案すれば,原告が原告代理人弁護士に対して支払った本件再審請求に係る着手金75万6000万円(70万円に消費税8パーセント相当額を加算した額)及び審決取消訴訟を経た上で勝訴したことによる成功報酬として原告代理人弁護士に対して支払義務を負う324万円(3 00万円に消費税8パーセント相当額を加算した額)()は,いずれ も被告らの共同不法行為と相当因果関係のある損害であると認めるのが相当である。また,本件訴訟提起に係る弁護士費用としては30万円をもって相当と認める。したがって,原告の請求は,上記合計額429万6000円の限度で理由がある。 これに対し,被告らは,別件訴訟において本件商標と同一の構成の商標を出 願した上で,それを原告に譲渡する旨の和解を提案したにもかかわらず原告はそれを拒絶したのであるから,本件再審請求や本件審決取消訴訟は原告の判断に起因するものであるといえ,それらの弁護士費用は原告自身の判断による それを原告に譲渡する旨の和解を提案したにもかかわらず原告はそれを拒絶したのであるから,本件再審請求や本件審決取消訴訟は原告の判断に起因するものであるといえ,それらの弁護士費用は原告自身の判断による出捐であって損害ではないなどと主張する。しかし,本件商標権と新出願に係る権利は別個の権利であり,また,様々な条件が関係し得る和解に対して原告が 応じなければならない義務はないのであって,被告らの上記主張は採用できない。 また,被告らは,本件訴訟と19783号事件の経済的目的は同一であるから本件訴訟は19783号事件と独立して成り立つものではないと主張するが,本件訴訟と19783号事件で請求されている損害は別個のものであり, 各訴訟における請求の経済的目的が同一であるとはいえないから,被告らの上記主張は採用できない。 さらに,被告らは,本件訴訟における損害額は(旧)日本弁護士連合会報酬等基準にしたがって算出された金額にとどまるなどと主張するが,同基準に法的拘束力があるものではなく,本件において上記で認定した損害が不合理なも のであることをうかがわせる事情は見当たらないから,被告らの上記主張は採用できない。 第4 結論よって,原告の請求は主文掲記の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとして主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐藤雅浩 裁判官安岡美香子は転勤のため署名押印することができない。 裁判長裁判官柴田義明 (別紙)原告商標目録 商標登録 裁判官安岡美香子は転勤のため署名押印することができない。 裁判長裁判官柴田義明 (別紙)原告商標目録 商標登録番号 5177809号出願年月日平成20年8月21日 登録年月日平成20年10月31日商品及び役務の区分第41類指定役務フィットネス・エクササイズ及びボディートレーニングに関する教授,フィットネス・エクササイズ及びボディートレーニングに関する施設 の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,スポーツの興行の企画・運営又は開催,運動用具の貸与,録画済み記録媒体の貸与登録商標 以上 (別紙)被告標章目録
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