平成16(行コ)66 債務負担行為差止等,損害賠償,共同訴訟参加,神戸空港建設事業関連予算の支出差止等,神戸空港建設事業関連予算の支出差止請求控訴事件(原審 神戸地方裁判所平成11年(行ウ)第43号,平成12年(行ウ)第15号,同第18号,同第46号,平成13年(行ウ)第23号,平成15年(行ウ)第5号,同第39号)

裁判年月日・裁判所
平成17年7月27日 大阪高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文44,046 文字)

主文 1 控訴人P1及び控訴人P2を除く,その余の控訴人らの本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴人P1及び控訴人P2の本件各控訴について(1) 原判決主文第1項(2)を次のとおり変更する。 ① 同控訴人らの訴えのうち,平成15年12月26日から平成17年4月13日までの間に終了した債務負担行為の差止を求める部分を却下する。 ② 同控訴人らの同日後の債務負担行為の差止を求める請求をいずれも棄却する。 (2) 同控訴人らのその余の本件各控訴をいずれも棄却する。 3 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 第1 控訴の趣旨 1 控訴人P1及び控訴人P2(以下「控訴人P1・P2」という。)(1) 原判決中,控訴人P1・P2に関する部分を取り消す。 (2) 被控訴人神戸市長(以下「被控訴人市長」という。)は,神戸空港建設関連事業(以下「本件事業」という。)に関する起債を含む一切の債務負担行為(以下「本件債務負担行為」という。)をしてはならない。 (3) 被控訴人市長は,P3及びP4に対して,本件債務負担行為によって神戸市が被る損害を回復するために必要な措置をとることを求める旨の請求をせよ。 2 控訴人P5及び控訴人P6(以下「控訴人P5ら」という。)(1) 原判決中,控訴人P5らに関する部分を取り消す。 (2) 平成11年度予算について被控訴人P3は,神戸市に対し,91億8162万5122円を支払え。 (3) 平成12年度予算について被控訴人P3は,神戸市に対し,50億円を支払え。 (4) 平成13年度予算について被控訴人 162万5122円を支払え。 (3) 平成12年度予算について被控訴人P3は,神戸市に対し,50億円を支払え。 (4) 平成13年度予算について被控訴人P3は,神戸市に対し,50億円を支払え。 (5) 平成14年度予算について被控訴人市長は,P4に対して,50億円を神戸市に支払うよう求める請求をせよ。 3 控訴人P7及び控訴人P8(以下「控訴人P7・P8」という。)(1) 原判決中,控訴人P7・P8に関する部分を取り消す。 (2) 平成11年度ないし平成13年度予算について被控訴人P3は,神戸市に対し,44億2500万円を支払え。 (3) 平成14年度予算について被控訴人市長は,P4に対して,17億8600万円を神戸市に支払うよう求める請求をせよ。 (4) 平成15年度予算について被控訴人市長は,P4に対して,7億9800万円を神戸市に支払うよう求める請求をせよ。 第2 原審における控訴人らの請求 1 控訴人P1・P2の請求前記第1の1(2)及び(3)と同旨 2 控訴人P5らの請求(1) 平成11年度予算について被控訴人P3は,神戸市に対し,91億8162万6122円及びこれに対する平成12年4月23日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 前記第1の2(3)ないし(5)と同旨 3 控訴人P7・P8の請求(1) 上記2と同旨(2) 平成15年度予算について① 被控訴人市長は,神戸市収入役に対して,平成15年度神戸市予算のうち,本件事業に関する予算334億円の支出命令をしてはなら 1) 上記2と同旨(2) 平成15年度予算について① 被控訴人市長は,神戸市収入役に対して,平成15年度神戸市予算のうち,本件事業に関する予算334億円の支出命令をしてはならない。 ② 被控訴人市長は,P4に対して,334億円を神戸市に支払うよう求める請求をせよ。 第3 事案の概要及び当事者の主張 1 事案の概要(1) 本件は,神戸市の住民である控訴人ら及び選定者らが,本件事業(神戸空港建設関連事業)に関する予算支出(以下「本件予算支出」という。)について,地方自治法(以下,平成14年法律第4号による改正前の地方自治法を「旧自治法」といい,同改正後の地方自治法を「現自治法」といい,両者を併せて「自治法」という。以下,原判決を引用するときは,このように読み替える。)及び地方財政法(以下「地財法」という。)の定める公金支出要件(公金支出の必要性,合理性・効率性,健全性等)を充たしていない(本件事業の財政計画は破綻している。神戸空港を建設する必要性はない。神戸空港は航空機航行の安全性を確保できない危険な空港であり,このような危険な空港を建設しても使い物にならず,公金の無駄遣いとなる。)から,本件予算支出に関する財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)は違法であり,また,被控訴人P3(元神戸市長)及びP4(現神戸市長)には,違法な上記行為をしたことについて過失があること等を主張して,神戸市の執行機関である被控訴人市長に対し,自治法242条の2第1項1号に基づく差止(債務負担行為ないし支出命令発令行為の差止),並びに被控訴人P3に対し,神戸市に代位して,旧自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償金の支払を求め,あるいは現自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償の請求をすること 発令行為の差止),並びに被控訴人P3に対し,神戸市に代位して,旧自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償金の支払を求め,あるいは現自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償の請求をすること(被控訴人市長が,P3及びP4に対して,損害賠償金を神戸市に支払うよう請求すること)を求めた事案である。 (2) 原審裁判所は,①控訴人P1・P2の訴えのうち,平成15年12月25日(原審口頭弁論終結日)までに終了した本件債務負担行為の差止を求める部分については,訴えの利益を欠いており,また,現自治法242条の2第1項4号に基づき損害を回復するために必要な措置をとることを求める部分については,出訴期間を徒過しているから,いずれも不適法であるとして,これらを却下し,②控訴人P1・P2のその余の請求,並びにその余の控訴人らの請求については,神戸市の財政事情等を勘案しつつ,いかなる事業を実施し,その事業費としていかなる財源を充てるかは,総合的かつ政策的見地から判断されるべき事項であって,神戸市議会の監視の下,神戸市長の広範な裁量に委ねられているというべきであるから,その判断が著しく合理性を欠き,上記の広範な裁量権を逸脱又は濫用したと認められる例外的な場合を除いて,損害賠償責任を課せられる違法なものとはなり得ないところ,本件事業を継続することにより神戸市財政に悪影響を与えるおそれがあり,かつ,日本全体の利益という大きな視点に立って考えると,神戸空港建設の必要性にも疑問がないではないが,本件予算支出に関する財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)の際の被控訴人らの判断が,著しく合理性を欠き,上記の広範な裁量権を逸脱又は濫用する違法なものであるとまでは認められないとし,また,先行行為たる非財務会計行為(安全性に重大な欠陥のある空港を 令行為)の際の被控訴人らの判断が,著しく合理性を欠き,上記の広範な裁量権を逸脱又は濫用する違法なものであるとまでは認められないとし,また,先行行為たる非財務会計行為(安全性に重大な欠陥のある空港を建設する行為を含む。)の違法性が,後行行為たる財務会計行為に承継されることがあるとしても,それは,当該先行行為(非財務会計行為)が著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない違法が存する場合に限られるから,神戸空港につき,安全性に重大な欠陥があり,将来,重大な事故が頻発するおそれが高い確率で認められ,神戸空港が閉鎖されたり,その機能が著しく縮小されたりする事態に追い込まれるおそれがある場合に限り,違法性の承継が問題となるところ,神戸空港の安全性に問題がないとはいえないものの,控訴人らが主張する諸点(特殊な気象条件,他の空港の飛行経路との競合等)を考慮しても,神戸空港の安全性に重大な欠陥があり,将来上記のような事態に追い込まれるとは認められないし,控訴人らが主張する各種行政法規違反(航空関連法規違反,船舶関連法規違反,環境保全関連法規違反,神戸市環境影響評価条例違反)の点は,その主張自体に照らして,先行行為たる本件事業が著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない違法が存するとは認められないなどとして,上記各請求を全部棄却した。 (3) そこで,これを不服とする控訴人らが本件各控訴を提起した。 なお,控訴人P7・P8は,当審において,判断の対象となる財務会計行為の範囲を固定翼小型航空機(以下「固定翼機」という。)機能用地(以下「固定翼用地」という。)の埋立費用に関する支出命令に限定して,前記第1の3のとおり,損害賠償請求を減縮するとともに(なお,違法事由の主張も,後記6記 航空機(以下「固定翼機」という。)機能用地(以下「固定翼用地」という。)の埋立費用に関する支出命令に限定して,前記第1の3のとおり,損害賠償請求を減縮するとともに(なお,違法事由の主張も,後記6記載のものに限定した。),支出命令発令行為の差止請求を取り下げた。 2 前提事実(1) 前提事実は,後記(2)の事実を付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の第2「事案の概要」の2(原判決3頁10行目から10頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(なお,当審における控訴人P7・P8の請求の減縮に伴い,原判決中,「原告P8ら」とあるのは,「控訴人P5ら」と読み替える。以下同様。)ただし,原判決4頁21行目から25行目までを削除する。 また,原判決6頁20行目から末行までを次のとおり改める。 「イ平成17年1月末現在,空港島の総面積約272haのうち,約210ha(約77%)の陸地化が完了しており,空港施設用地部分(約154ha)はすべて陸地化している。 空港島とポートアイランドを結ぶ連絡橋は既に完成し,平成16年4月から仮供用が開始されている。 空港施設については,平成16年度末(平成17年3月末)に滑走路,誘導路等の主要施設の整備が概ね完了する予定であり,また,国直轄施設(管制塔)についても,平成16年8月に着工し,平成17年夏ころに完成する予定である。旅客ターミナルビルも,平成16年9月7日に着工し,平成17年秋の完成を目指している。 神戸市は,神戸空港の開港を平成18年2月16日と予定している。 (以上につき,乙96,98,弁論の全趣旨)」(2) 告示区域の範囲神戸空港 神戸市は,神戸空港の開港を平成18年2月16日と予定している。 (以上につき,乙96,98,弁論の全趣旨)」(2) 告示区域の範囲神戸空港の告示区域の範囲は,概ね本判決別紙1において水色で囲まれた部分である(乙13及び甲G72)。 3 当事者の主張は,後記4ないし7のとおり,当審における各当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3ないし第6(原判決10頁2行目から60頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 4 当審における控訴人P1・P2の主張(1) 原審における訴えの変更後の訴えの適法性について原審における訴えの変更は,自治法の改正の結果,従来のように裁判所が判決において被控訴人らに対して直接損害賠償金の支払を命じることができなくなったので,損害賠償請求の訴えを変更する必要がある旨の原審裁判所による指示に従って行ったものである。 しかし,自治法の改正は本件訴訟の提訴後に施行されたものであるから,不遡及の原則により,訴えを変更する必要はなかった。 それにもかかわらず,原審裁判所は,裁判所の訴訟指揮を信用しきっている控訴人P1・P2を陥穽に落とし入れ,出訴期間経過後の訴えの変更があたかも必要であるかのごとく指示して,訴えの変更をさせ,その後,その訴えを不適法として退けた。 上記の原審裁判所の訴訟指揮は,裁判の公正を自ら放擲したものであると同時に,忠実義務違反の重大な違法行為である。 (2) 原因行為たる本件事業の違法性の承継について本件債務負担行為の原因行為たる本件事業については,次の3つの違法事由が存するところ,本件財務負担行為は,本件事業の違法性を承継し (2) 原因行為たる本件事業の違法性の承継について本件債務負担行為の原因行為たる本件事業については,次の3つの違法事由が存するところ,本件財務負担行為は,本件事業の違法性を承継しているから,違法である。被控訴人らは,これら3つの違法事由について,何ら反論をしていないから,民事訴訟法140条所定の擬制自白が成立する。原判決は,これらの点について,全く判断をしていない。 ア神戸市条例違反神戸市長は,神戸市条例36条に違反して,本件事業を管理する新都市整備事業会計において,同会計管理下で先行する六甲アイランド事業における発生済みの976億9300万円の赤字を隠蔽し,逆に架空の利益を計上するという長期,大がかりな粉飾決算を継続中であり,結果として,本件債務負担行為ないし本件予算支出等の重要な財務会計行為を審議するために必要な神戸市議会の適正な審議能力を奪い,違法・無効な議決を行わしめたものである。 イ財産の管理を怠る事実神戸市長が本件事業の資金調達のために生じた債務の返済に,新都市整備事業会計が保有する1661億円の基金を取り崩して充当することを計画しているが,これは自治法242条の「財産の管理を怠る事実」に該当する違法な行為である。 ウ信義則違反-違法な情報操作本件事業計画の公表以来,「神戸空港建設費の負担を一切神戸市民に転嫁しない」旨を繰り返し表明してきた被控訴人市長の基本方針が全く虚偽であり,実際は,建設費総額3140億円から国の補助金(上限250億円,下限52億円)を差し引いた残額(最高3088億円,最低2890億円)が究極的に神戸市民に転嫁されることが,原審における神戸市職員の証人尋問の結果,判明した。 助金(上限250億円,下限52億円)を差し引いた残額(最高3088億円,最低2890億円)が究極的に神戸市民に転嫁されることが,原審における神戸市職員の証人尋問の結果,判明した。 被控訴人市長の上記の虚偽の基本方針の表明は,市長選挙と市議会議員選挙を通しての有権者の強い神戸空港建設反対の意思表示を押さえ込むための謀略として実行されたものであり,選挙結果を著しく歪めた重大かつ悪質な信義則違反の行為である。 5 当審における控訴人P5らの主張(1) 自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償,ないし同項1号に基づく差止めの各要件たる違法性に関する一般論について原判決は,いわゆる「一日校長事件」に関する最高裁判決(最高裁平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁参照)を引用して,「ある先行行為(非財務会計行為)の違法性が,後行行為(財務会計行為上の行為)に承継されることがあるとしても,それは,当該財務会計行為上の行為の原因となる先行行為(非財務会計行為)が著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない違法が存する場合に限られる」旨説示している。 しかし,同事件の事案は,原因行為に当たるものが,地方公共団体の長から独立した行政機関の行為(教育委員会のした任命行為)であり,長との関係において教育委員会が職務遂行上の独立性を持っているため,長は,例外的事情がある場合を除き,教育委員会の決定を尊重しなければならないこととされたのであり,原因行為をする者と財務会計行為をする者とが全く同一である本件とは決定的に異なっている。 本件の場合,神戸市長は,原因行為に関する瑕疵について,すべてを認識し,是正することが可能であったから,原因行為の違法 会計行為をする者とが全く同一である本件とは決定的に異なっている。 本件の場合,神戸市長は,原因行為に関する瑕疵について,すべてを認識し,是正することが可能であったから,原因行為の違法はすべて承継されるというべきである。 いわゆる「織田が浜埋立工事費用支出差止事件」(最高裁平成5年9月7日第三小法廷判決・民集47巻7号4755頁参照)及び「川崎市退職金支払事件」(最高裁昭和60年9月12日第一小法廷判決・判例時報1171号62頁参照)の各最高裁判決は,控訴人P5らの上記主張に沿う判断をしている。 (2) 神戸市長の裁量に関する一般論について原判決は「被告市長の政策的選択・判断の内容等が著しく不合理であるとまでは認められず,地方公共団体の長に認められている広範な裁量権の逸脱又は濫用にあたるものではない」旨説示しているが,どのような場合に,政策的選択・判断の内容等が著しく不合理で,裁量権の逸脱又は濫用にあたるのかが全く不明であり,裁量の範囲を無限定に認めるものであって,司法による実効的な審査機能を果たしていないから,裁量的判断を審査するための一般的規範を明示すべきである。 そして,判断の基礎となる事実の認定に明白かつ顕著な誤認があるか,判断が,考慮すべき事項を考慮せず,考慮すべきでない事項を考慮し,あるいは,本来過大に評価すべきでない事項を過大に考慮し,これにより左右されたものと認められるときは,その判断は合理性を欠くものとして裁量権の逸脱又は濫用にあたるというべきである。 また,本件の場合,公金支出の必要性,合理性,効率性及び財政の健全性の確保を要考慮事項とすべきである。 (3) 本件事業の財政計画について本件事業の財政計画において売却を予定し また,本件の場合,公金支出の必要性,合理性,効率性及び財政の健全性の確保を要考慮事項とすべきである。 (3) 本件事業の財政計画について本件事業の財政計画において売却を予定していた空港島の土地について,現時点でも確実な売却の見通しを提示できないほどに計画が大きく狂ったこと等によれば,神戸市長の裁量的判断の前提となる事実の認定に大きな誤認があったというべきである。 このような事実誤認に基づいてされた本件事業実施の判断は,著しく合理性を欠くものとして,裁量権を逸脱したものであることは明らかである。 (4) 神戸空港の安全性についてア原判決は「神戸空港の供用開始後,神戸空港発着機の航空機事故が頻発し,そのため早晩,神戸空港が閉鎖されたり,その機能が著しく縮小されたりする事態に追い込まれることが高い確率で予想されるとは認められない。」と説示しているが,これは,少々の航空機事故であれば起こっても構わないということを容認するかのごとき,人命軽視どころか,人命無視の極致ともいうべき不当な判断である。 イ安全な飛行経路等の設定について原判決は,神戸空港につき,国において,未だ航空機の飛行経路と運用を設定できていないが,開港までに責任をもって設定する予定であるから,将来的に安全かつ円滑な飛行経路等を設定できる確実な見込みがある旨説示しているが,何ら客観的・科学的根拠のない予想にすぎない。 国土交通省は,現在までに3回(平成12年6月,平成15年6月,平成16年5月),管制シミュレーションを実施したが,未だ安全な飛行経路を設定できていないが,このような状況は他に例のない異常なものである。 しかも,上記管制シミュレーションは,運航上復航 6年5月),管制シミュレーションを実施したが,未だ安全な飛行経路を設定できていないが,このような状況は他に例のない異常なものである。 しかも,上記管制シミュレーションは,運航上復航(ゴーアラウンド)を予想せず,また,気象の特異性(ウインドシア,下降気流,山岳波等)を考慮せずに,ほぼ晴天微風の状況を想定して実施されたものであって,極めて問題のあるものである。例えば,関西国際空港の到着機の復航と,神戸空港の到着機の復航や出発機とは衝突する可能性があり,両空港の同時運用はできない。復航で管制が複雑となる状況でこそ,安全性が検証されなければならず,このような緊急事態でも安全性が確保されて初めて安全宣言をなし得るはずである。 関西国際空港,伊丹空港及び神戸空港の3空港の航空管制対象の空域状況を分析すると,①トラフィック(航空交通)の混雑,②飛行経路の競合,③神戸空港発着機の飛行方位が明石大橋一方向のみであり(神戸空港から270度),しかも,明石大橋(940ft,約283m)が障害物となること,④空域が狭小(数10㎞の範囲)であること,⑤高度も競合するため,許容される高度範囲がほとんどない(1000ftの低高度飛行が強いられる)こと,⑥3空港の発着機が不安定かつ危険な飛行状態にあること,⑦航空機は,高速度(時速800㎞)で大空を移動し,停止できない物体であること,⑧航空機は瞬時に飛行位置を変えられない(高速のわりに,回避動作が緩慢であり,瞬時の垂直・横移動ができない)こと,⑨気象条件(風,雷雲等)に脆弱であること,⑩リアルタイムの気象情報を提供できないこと,⑪航空管制に許容された時間が秒単位(多くて数分)であることが存在しており,これだけの悪条件が重なる中,現在の航空機の性能及び航空管制方式(個人の技量と判断に頼 ルタイムの気象情報を提供できないこと,⑪航空管制に許容された時間が秒単位(多くて数分)であることが存在しており,これだけの悪条件が重なる中,現在の航空機の性能及び航空管制方式(個人の技量と判断に頼るもの)によっては,3空港同時運用の安全な飛行経路は存在せず,安全な空域管制を確保する方策はないというべきである。 なお,飛行経路案(乙107)は,飛行経路を確定したものではない。 また,仮に今後開港までの間に飛行経路が設定されたとしても,開港までの期間が短すぎるため,同飛行経路の安全性に問題がないかを検証することはできないし,また,管制官やパイロットの訓練もできず,慣熟はなし得ない状況である。 さらに,原判決は,神戸市の環境影響評価書(甲D30)に記載されている飛行経路を控訴人P5らが安全でないと批判していることについて,未定の飛行経路を批判する主張であって,前提を欠くものであると一蹴しているが,これでは,飛行経路が設定されるまで,一切の批判を封じ込めるに等しく,安全性について争えないことになってしまう。 ウ気象条件について原判決は,神戸空港の飛行場設置許可申請の際の観測気象データから,神戸空港の安全性に問題がない旨説示しているが,原審において控訴人P5らが指摘した諸事情,①神戸市によるデータのごまかし(航空機の発着の安全性については,10分間平均よりも,瞬時の横風観測値が重要であること),②神戸市の観測機材は不備であって,風車型パルス計では鉛直流(六甲おろし)やウインドシア(ねじれ風)の観測ができないこと,③神戸市のデータによれば,秋・冬季よりも夏季に横風が多いとされているが,このような観測値になったのは,夏の海風(水平方向の風)しか観測できないからである ンドシア(ねじれ風)の観測ができないこと,③神戸市のデータによれば,秋・冬季よりも夏季に横風が多いとされているが,このような観測値になったのは,夏の海風(水平方向の風)しか観測できないからであること,④神戸海洋気象台のP9氏によれば,秋・冬季に風速15m(29.16ノット)前後の六甲おろしが吹き荒れること(甲D37),⑤山岳波が吹き降りるときは,跳ね返り波により,低高度乱気流が発生すること(甲D12,28),⑥離陸時の横風制限を超える山岳波があることについて,何ら判断をしていない。 甲D27(航空機の運航ABC)によれば,全日空のエアバスA320(エンジン2機,乗客166席,離陸滑走路長1780m)の離陸時の最大横風限界は,滑走路ドライ(乾燥)の場合で29ノット,ウエット(湿潤)の場合,通常舗装で20ノット,グルーピング舗装で25ノットである。他方,六甲おろしの風速は15m(29.16ノット)前後であり,滑走路が乾燥状態でも,離陸の最大横風限界を超えている。 なお,神戸空港の飛行場設置許可申請書に添付された3年間の風向風速図(乙13)は,10分間平均値に基づくものであり,かつ,3年間の平均値となっていて,瞬間値は無視されているが,これでは危険な数値は隠されてしまう。 同風向風速図の基となった航空気象観測業務報告書(甲D54,55)中の瞬間値に関する記載(「3.6日最大風速」の「日最大瞬間風速」)によっても,瞬間的には最大横風限界である20ノットを超えることが少なからずあることが認められるから,不幸にして離陸中にこの横風に遭遇すると,墜落に至る可能性が大きくなる。 また,神戸海洋気象台(その南東約8㎞に神戸空港が位置する。)の24時間観測データ(甲D62ないし64) ら,不幸にして離陸中にこの横風に遭遇すると,墜落に至る可能性が大きくなる。 また,神戸海洋気象台(その南東約8㎞に神戸空港が位置する。)の24時間観測データ(甲D62ないし64)によれば,最高瞬間風速10m以上の横風が吹いた日数は,1か月当たり平均17.7日(最小14日,最多20日)である。 しかも,最高瞬間風速10m以上の横風が,いつ吹いて,いつ収束するのかを見極めるのは非常に困難であり,この見極めに失敗すると,墜落に至る可能性が大きくなる。 さらに,神戸空港からの東向き出発機は,離陸後直ちに右旋回に入り,180度方向転換を完了してからも1000ft(300m)の高度を維持して西に向かうところ,同右旋回中は,離陸直後であるから,極めて低高度である。同右旋回中に,強い北風(六甲おろし)を受けると,背風となり,揚力が低下し,低高度のためリカバリー(回復操作)をする時間及び高度の余裕もないため,失速して墜落する危険性が大きい。 エ海上交通との調整について原判決は,神戸空港に係る海上交通問題検討委員会において,海上交通との調整が可能とされたから,航空機と船舶との衝突事故が頻発するとは予想されない旨説示している。 しかし,そもそも,同検討会は,主として工事中における海上交通を検討したものである。 また,神戸空港に係る海上交通問題検討委員会報告書(乙83)は,進入表面高(滑走路端から3000m地点で68m)とマスト高(57m)とを比較して,航空機との衝突事故がないと結論付けているが,潮流・風の航行船舶の進路への影響(船舶が空港島に接近すること)や,山岳波,ダウンバースト,ウインドシア(甲D22),ガストフロントによって航空機の して,航空機との衝突事故がないと結論付けているが,潮流・風の航行船舶の進路への影響(船舶が空港島に接近すること)や,山岳波,ダウンバースト,ウインドシア(甲D22),ガストフロントによって航空機の対気速度と揚力が急激に変化し,高度を失う局地的な気象現象があることを考慮していない。 次に,同報告書は,第三航路を南に延伸すれば,海上交通の安全性が確保できると結論付けており,その意見に従って港則法が改正され(甲D46),第三航路は1000m南に延長されたが,延長された第三航路の南端から1海里(1852m)は指導区域とされ,航路指定からは外された。なお,指導区域から南の港域までは無指定となった(この点,原判決は,第三航路の範囲を誤認している。)。同報告書の結論では,これにより海上交通の安全性が確保できるはずであったが,実際は,①東西に航行する船舶が指導区域を横切り,②第三航路に入港する船舶が,指導区域から進入せずに,燃料と時間を節約するため,空港島近くから斜めに短絡(ショートカット)し,③出港船が第三航路南端より右転して,空港島寄りに直進航行する船舶が半数に及び,逆に海難事故の危険性が高まっている(甲D48)。神戸空港開港後も,このような状況は変わらないから,上記危険性は解消されないことになる。 そして,第三航路を接近してきた大型船が,①右にショートカットしたり,②東からの風と潮流に流されたり,③指導区域の横切船やショートカットした入港船との衝突を避けるために右転した場合には,空港島に接近することになり,航空機と船舶との衝突事故が発生する危険性が高い。 なお,神戸空港航行安全委員会は,上記のような危険性を認めているが,有効な対策を打ち出していない(乙92)。 さらに,第三航路 との衝突事故が発生する危険性が高い。 なお,神戸空港航行安全委員会は,上記のような危険性を認めているが,有効な対策を打ち出していない(乙92)。 さらに,第三航路付近では,航空機は約150mの上空を通過することになるから,そのエンジン音は轟音である。その轟音の中で,船舶のブリッジでは,船長や水先案内人が大声ないしトランシーバーで操舵手やタグボートに操船指示を与えることになるが,それらが全く聞こえない事態が起こるし,また,汽笛が聞こえない事態も起こるから,船舶どおしの衝突事故の危険性も増すことになる。 なお,原判決は,上記報告書に「基本的な航行安全対策はとり得る」とあるから,騒音問題も大丈夫である旨説示しているが,航空機の騒音で操船への影響があったと回答したマリンパイロットが3名(33%)いた事実を無視している。 オ以上によれば,神戸空港の安全性についての原判決の判断は極めて不当であるというべきである。 (5) 航空法違反,環境保全関連法規違反及び神戸市環境影響評価条例違反についてア航空法1条違反原判決の認定・説示によっても,神戸空港について,安全な飛行ルートを確保できる保証がないことが認められるところ,航空法1条によれば,その保証がないときは,飛行場の設置を許可すべきではなかったことになるから,これに反してされた神戸空港の設置許可には重大な違法性がある。 イ瀬戸内海環境保全特別措置法13条2項及び公有水面埋立法4条1項2号違反空港島は公害防止・環境保全に資するものではなく,また,被控訴人市長が空港島埋立のためにとるとしている施策も何ら公害防止・環境保全に資するものではない。かえって,現実に空港島の護 空港島は公害防止・環境保全に資するものではなく,また,被控訴人市長が空港島埋立のためにとるとしている施策も何ら公害防止・環境保全に資するものではない。かえって,現実に空港島の護岸が完成した結果,特に空港島の東側海域において,水質の低下が著しく,汚染が現実化していることは,P10教授の調査結果により明らかである(甲C9ほか)。 したがって,空港島の埋立には,瀬戸内海環境保全特別措置法13条2項及び公有水面埋立法4条1項2号に反する重大な違法性がある。 ウ環境基本法7条,8条違反空港島周辺地域は,現在でも,大気汚染が深刻であり,浮遊粒子状物質(PM)については,法が予定している環境基準を超える状況が続いている。被控訴人市長が行った環境影響評価には,排ガス規制効果を安易に組み入れたり,阪神間の他の開発計画等も考慮に入れた負荷の総量を軽視している等の瑕疵がある。特に,神戸空港へのアクセスを担うポートアイランドの沿道の大気環境は,現在でも深刻であるのに,神戸空港の建設及び供用により更に悪化するおそれがある。 したがって,本件事業の遂行は,事業者に対して,公害を防止し,又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる義務があることを定めた環境基本法7条,8条に反する重大な違法性がある。 エ神戸市環境影響評価条例違反被控訴人らが行った空港島埋立事業に関する環境影響評価は,P11助教授の証言や意見書(甲C5)等から明らかなように,①水理模型実験を併用せず,数値シミュレーションしか行わなかったこと,②予測対象時期を取っていないこと,③数値シミュレーションの条件等を全く示していないこと,④現地調査が杜撰なこと,⑤環境保全措置の優先的検討 験を併用せず,数値シミュレーションしか行わなかったこと,②予測対象時期を取っていないこと,③数値シミュレーションの条件等を全く示していないこと,④現地調査が杜撰なこと,⑤環境保全措置の優先的検討を配慮,措置した形跡が全くないこと等,神戸市環境影響評価条例8条に基づく技術指針の数々の規定に違反しており,到底技術指針の要求する水準を満たすものではない。 また,神戸市が行った環境影響評価の手続には,故意による現況調査義務違反行為,及び水理模型実験をあえて無視して,適切な予測手法の採用を怠った意図的な違反行為が存する。 したがって,被控訴人らは,同条例に違反し,環境影響評価を履践していないのも同然であるから,本件事業には同条例及び技術指針に反する重大な違法性が存するというべきである。 (6) 条理上の違法現行の航空法においては,飛行場の設置を許可するに際して,安全な飛行経路が確保できるか否かの審査がされることになっておらず,同法は,手続的にも,安全性確保の点でも,全くの「ザル法」になっている。 このような安全性を無視する同法に基づいて設置許可を付与された神戸空港の設置手続には,条理上の違法がある。 6 当審における控訴人P7・P8の主張(1) 固定翼用地の埋立費用の予算支出に関する財務会計行為(支出命令発令行為)の違法ア公金支出要件違反及び違法性の承継に関する一般論原審における控訴人P5らの主張(原判決17頁17行目から18頁3行目まで,及び同47頁23行目から48頁7行目まで)と同旨である。 イ違法事由固定翼用地は,エプロン(駐機場)や誘導路等の空港基本施設を備えた飛行場に含まれるべき用地である ,及び同47頁23行目から48頁7行目まで)と同旨である。 イ違法事由固定翼用地は,エプロン(駐機場)や誘導路等の空港基本施設を備えた飛行場に含まれるべき用地であるから,航空法38条1項所定の飛行場設置許可を受けなければならず,かつ,固定翼用地は神戸空港の滑走路を利用するものであるから,同法47条1項により,本件事業の事業者である神戸市が同許可を申請すべきである。 そして,同法39条1項5号は「申請者がその敷地について所有権その他の使用の権原を有するか又はこれを確実に取得できること」を同許可の要件としているから,申請者である神戸市が固定翼用地の権原を有しなければならない。ところが,神戸市は,固定翼用地について,飛行場設置許可を申請しておらず,すべてを民間事業者に売却するとの違法な計画を立てている。 神戸市は,国に提出した神戸空港整備事業に係る環境影響評価書(甲G18)において固定翼機に関する記載をせず,本件事業に固定翼機事業が含まれていることを国に秘したまま,国から神戸空港の設置許可を受けた。なお,神戸市は,国の指示により固定翼用地を飛行場設置許可の対象から外した旨回答しているが,国土交通省航空局の担当官の発言(甲G49,53)によれば,国はエプロンについてまで補助を出す余裕がない旨を述べただけであるから,上記の神戸市の回答は虚偽であったことになる。 神戸空港の設置許可申請書(乙13)には,飛行場の利用を予定する航空機の種類及び型式(航空法施行規則76条1項7号)として,大型機のみが記載されているから,小型機である固定翼機は,神戸空港の滑走路を利用することができない。 また,仮に,今後神戸市から固定翼用地を購入した民間事業者が飛行場設 )として,大型機のみが記載されているから,小型機である固定翼機は,神戸空港の滑走路を利用することができない。 また,仮に,今後神戸市から固定翼用地を購入した民間事業者が飛行場設置許可申請をしたとしても,既存の神戸空港と滞空旋回圏が重なり,かつ,独自の滑走路を有しない以上,同法施行規則79条所定の要件(滞空旋回圏が既存の飛行場に設定された滞空旋回圏と重ならないこと,滑走路,着陸帯及び誘導路を有すること)を充たさないことになるから,その民間事業者が同許可を受けることは不可能である。 なお,被控訴人らの主張する能登空港については,飛行場施設変更許可申請書に「航空学校専用誘導路」及び「航空学校専用駐機場」との記載があり,それらが告示区域内に含まれていることが分かる(乙95)から,固定翼用地と同様の事例とはいえない。 したがって,固定翼用地は,民間事業者への売却ができず,かつ,飛行場としても使用できない土地であるから,本件事業のうち,固定翼用地に関する部分は,当初から違法な破綻した事業であった。 さらに,国が行っている管制シミュレーションにおいては,神戸空港において小型機である固定翼機が1日56離発着する予定であることが考慮されておらず,固定翼機を含む安全性が確保されているとはいえないから,神戸空港の安全性には問題がある。 以上によれば,固定翼用地の埋立費用の予算支出に関する財務会計行為(支出命令発令行為)は違法である。 (2) 被控訴人市長の故意・過失及び損害の発生被控訴人市長は,本件事業の事業者である神戸市の代表者として,固定翼用地に関する神戸市の計画が破綻しており,固定翼用地の埋立費用の予算支出が違法であることを知っていた又は容易 害の発生被控訴人市長は,本件事業の事業者である神戸市の代表者として,固定翼用地に関する神戸市の計画が破綻しており,固定翼用地の埋立費用の予算支出が違法であることを知っていた又は容易に知ることができたから,同予算支出に関する財務会計行為(支出命令発令行為)を差し控えるべきであったにもかかわらず,漫然とこれを行った。 これにより,神戸市は,同予算支出相当額(平成11年度4億7900万円,平成12年度15億2600万円,平成13年度24億2000万円,平成14年度17億8600万円,平成15年度7億9800万円)の損害を被った。 (3) 控訴人P7・P8の請求よって,控訴人P7・P8は,次のとおり求める。 ① 旧自治法242条の2第1項4号に基づき,被控訴人P3に対し,神戸市に代位して,損害賠償金44億2500万円(平成11年度から平成13年度までの固定翼用地の埋立費用の予算支出相当額)を支払うこと② 現自治法242条の2第1項4号に基づき,被控訴人市長に対し,P4に対して,損害賠償金25億8400万円(平成14年度及び平成15年度の同予算支出相当額)を神戸市に支払うよう求める請求をすること 7 当審における被控訴人らの主張(1) 当審における控訴人P5らの主張についてア神戸空港の安全性について(ア) 安全な飛行経路等の設定について飛行経路の設定や航空機の安全航行に責任を持つのは国であり,それらは国の専管事項となっている。 神戸空港の飛行経路設定については,一定の見通しが確保できたということで,平成17年3月22日付けで,国から,飛行経路の骨格たる飛行経路案が示された(乙107)。 っている。 神戸空港の飛行経路設定については,一定の見通しが確保できたということで,平成17年3月22日付けで,国から,飛行経路の骨格たる飛行経路案が示された(乙107)。 (イ) 気象条件について一般に,滑走路が横風に対して使用可能であるか否かは,横風(横風成分のことであり,滑走路方向の真横でない場合には,真横方向のベクトルに換算する。)の最大値が毎時20ノット(約10.3m/s)以下となる割合である「ウインドカバレッジ」により示されるが,国際民間航空機関(ICAO)は,ウインドカバレッジが95%以下にならないように勧告している。そして,ICAOの勧告である「ICAOANNEX 14」(飛行場に対する国際標準及び勧告方式,国際民間航空条約14付属書)には,風速は,瞬間風速ではなく,平均風速で検討を行うべきことが示されている(乙102)。なお,地上気象観測指針(気象庁)でも,「平均風向・風速は一般に観測時前10分間の平均値をその時刻の値とする。通常,単に風向風速という場合は,この10分間の平均風向風速を意味する。」とされており(乙106),風速とは平均風速を意味することは気象観測では常識である。 また,実際の運航段階で各航空会社が定める基準では,ボーイング747の最大横風限界値が滑走路ドライ状態で30ノットであることからも,20ノットという数値は,十分に安全を見込んだものであるといえる(乙103)。 神戸空港建設地の風向風速については,昭和59年6月から平成元年にかけて,航空気象観測を実施している。同観測は,計器による自動観測であり(財団法人日本気象協会に委託して行ったものである。),各正時の10分前から正時までの10分間の平均風向 9年6月から平成元年にかけて,航空気象観測を実施している。同観測は,計器による自動観測であり(財団法人日本気象協会に委託して行ったものである。),各正時の10分前から正時までの10分間の平均風向・風速を1日24回計測し,それにより得られたデータのうち,神戸空港の運用時間として予定されている午前7時から午後10時に係る1日16回×3年間の計測データを統計処理したものが,上記飛行場設置許可申請書に添付した風向風速図(乙13)である。上記観測の結果によると,ウインドカバレッジは3年間の平均で99.8%であり,神戸空港は横風の影響を受けにくい空港であって,十分安全であることが確認されている。なお,風向風速については,その後も,阪神淡路大震災による中断を除いて,現在に至るまで実施されており,飛行場設置許可申請書に添付した風向風速図に変化がないことが確認されている(乙105)。 さらに,かつて運輸省において六甲山の影響によるウインドシア(風速勾配)について,風洞実験が行われたが,空港立地に支障がないとの結論が得られている(乙16)。 したがって,神戸空港付近は乱気流発生の要注意地域であるとはいえない。 控訴人P5らの主張は,瞬間的に20ノット以上の風速が観測されればその日1日の離着陸が不可能との前提の下に,神戸空港から10㎞近くも離れた神戸海洋気象台で北風(神戸空港にとっての横風)が観測されたことを主張しているにすぎない(一般に,同気象台の北側には再度谷があり,その谷に沿って流れる北風の影響を直接受けるため,同気象台では北風の頻度が高いといわれている。)し,安全に離着陸している他の空港と神戸空港との比較もされていないから,同主張は失当である。 (ウ) 海上交通との調 響を直接受けるため,同気象台では北風の頻度が高いといわれている。)し,安全に離着陸している他の空港と神戸空港との比較もされていないから,同主張は失当である。 (ウ) 海上交通との調整について海上交通問題検討委員会は,神戸港内に神戸空港が建設されたときに海上交通に与える影響と航行安全対策及びその工事中の航行安全対策を検討したものである。 神戸空港の制限表面のうち,進入表面とは,航空機の離陸直後又は最終着陸の際の直線飛行の安全を確保するために物件を制限する表面のことであり,実際の航空機の進入角度3度(1/19)及び出発角度6度(1/9.5)を考慮して,航空機の突発的な故障が生じても安全性を確保できるように,1.1度(1/50)の角度で,着陸帯の端部から3000mの範囲を指定している。 また,騒音や電波が操船に与える影響については,海上交通問題検討委員会において慎重に検討されており,その検討資料として,制限表面と航路との位置関係及び港湾との共存という点から神戸空港と類似点の多い東京国際空港周辺の状況について,東京水先案内人へのアンケート調査を行った結果,回答者14名中11名が「操船への影響なし」と回答している。また,操船に影響があると回答した3名も,短時間であるので,実害はないとか,その後の操船に支障はない等との回答であった。 さらに,平成16年1月,学識経験者,海事・港湾関係者や関係行政機関等からなる神戸空港航行安全委員会において,平成17年度の神戸空港供用を前に,当初の検討条件と現状の海上環境との間に状況の変化あるいは違いが生じてきていることを踏まえ,過去に調査検討・確認された内容を整理した上で,空港供用に際しての航行安全の確保が再確認 戸空港供用を前に,当初の検討条件と現状の海上環境との間に状況の変化あるいは違いが生じてきていることを踏まえ,過去に調査検討・確認された内容を整理した上で,空港供用に際しての航行安全の確保が再確認されるとともに,制限表面下の船舶航行方法と航行安全対策,航空灯火等が航行船舶に与える影響,航空機の騒音・電波が港湾荷役・航行船舶に与える影響,指定錨地の変更が検討され,承認された。控訴人P5らが主張する第三航路周辺の航行の安全については,①進入表面下を航行する船舶に対して,進入表面の制限高さが容易に判別できるように,進入表面ブイを設置すること,②進入表面の安全高さについて,海図,水路通報,瀬戸内海水路誌,航空安全指導録集への記載,神戸港入港マニュアル,リーフレット,ポスター等を通じて,船舶代理店,入港船舶,海事関係者に周知・広報すること,③マスト高が進入表面を侵すおそれがある船舶に対しては,こうべポートラジオ等を通じて,航行方法を指導すること,④航行方法が周知・徹底されるまでの間は,現場に広報活動船を配置するとともに,こうべポートラジオ等から注意喚起を促す等の対策をとることにより,進入表面下を安全に航行するよう指導すること,⑤神戸市及びこうべポートラジオは,国土交通省航空局の機関と相互に情報を調整することにより,航行船舶と航空機の安全を確保することが検討され,承認された(乙92)。 なお,潮流・風が航行船舶の進路に影響を及ぼし,船舶が空港島に接近したときに,山岳波,ダウンバースト,ウインドシア,ガストフロントによって航空機の対気速度と揚力が急激に変化し,高度を失い局地的な気象現象があることを考慮していない旨の控訴人P5らの主張は,船舶が異常な気象条件により空港島近傍に流されたときに,さらに,突発的な気象条件がその場所で発 速度と揚力が急激に変化し,高度を失い局地的な気象現象があることを考慮していない旨の控訴人P5らの主張は,船舶が異常な気象条件により空港島近傍に流されたときに,さらに,突発的な気象条件がその場所で発生するということを前提としており,実現性のない事象の危険性を論じているものにすぎない。 また,空港島や第三航路際海域における事故発生の危険性に関する控訴人P5らの主張は,航行船舶が,現在既に運用されている航路前面での横断自粛区域の設定,航路内での優先権等の海上交通の航行ルールを無視し,航行規制を守らないことを前提とするものであるから,失当である。 イ環境保全関連法規違反及び神戸市環境影響評価条例違反について(ア) 瀬戸内海環境保全特別措置法13条2項及び公有水面埋立法4条1項2号違反について本件事業に係る埋立計画については,港湾審議会において,環境庁が,①災害時における防災拠点,②中長期的な観点からの震災復興に資するもの,③神戸海域環境の改善において先導的かつ主要な役割を果たすものとして必要であり,とりわけ,③については,空港島及び周辺において,大規模な浅場を有した緩傾斜石積護岸,神戸港内における底泥の大規模な浚渫・受入れ等,各種の先駆的な事業を大規模に展開するとしていることから,当庁としては,やむを得ないものと考える旨の意見を述べており(乙84),その意見を踏まえた上で,公害防止・環境保全に資するものと認められ,港湾計画への組入れが承認されている。 (イ) 環境基本法7条,8条違反について環境影響評価において排ガス規制効果を組み入れたのは,環境庁の窒素酸化物総量規制マニュアル(乙85)において,「将来年までに設定 (イ) 環境基本法7条,8条違反について環境影響評価において排ガス規制効果を組み入れたのは,環境庁の窒素酸化物総量規制マニュアル(乙85)において,「将来年までに設定されることが明らかな自動車排出ガス規制にかかる規制車の排出係数式に関しては,当該規制の内容及び既に実施されている規制適合車の実走行モードと排出係数の関係等を十分に検討のうえ設定する。」とされているため,これに準じたものである。そして,この考え方及びシミュレーションについては,環境影響評価専門委員会答申書(乙16)において,概ね適切であると評価されている。 また,平成10年10月の公有水面埋立免許願書に添付した環境影響評価(乙86)では,平成8年4月の環境影響評価書提出後に公表された神戸製鋼所の発電所建設計画等を折り込んだバックグラウンド濃度,環境要素について最新の知見により精査しており,また,この中で,一般環境大気質,沿道環境大気質とも,浮遊粒子状物質に関する予測を行い,将来予測値が環境基準値を下回ることを確認している。 さらに,港島大気観測所における二酸化窒素及び浮遊粒子状物質の年平均値の経年変化をみると,いずれも,平成12年度,13年度,14年度,15年度と減少傾向である。 (ウ) 神戸市環境影響評価条例違反について空港島埋立事業に関する環境影響評価における潮流予測については,神戸市環境影響評価審査会において,①水理模型実験においては,渦動粘性係数,地球の自転によるコリオリ力(直角横向きの力)が考慮されていないが,これらを考慮し予測ができる点で,数値シミュレーションの方がより精度の高い予測と言えること,②水理実験の結果は鉛直方向に平均化された流れしか示せないこ リオリ力(直角横向きの力)が考慮されていないが,これらを考慮し予測ができる点で,数値シミュレーションの方がより精度の高い予測と言えること,②水理実験の結果は鉛直方向に平均化された流れしか示せないこと,③神戸海域のような富栄養化した海域では,富栄養化現象の予測が必要であるが,2次元流れの水理模型実験ではこれを求めることはできないことが挙げられて,水理模型実験の限界が指摘されている。 技術指針においても,水理模型実験は必須のものとされていない。 (2) 当審における控訴人P7・P8の主張(固定翼用地の埋立費用の予算支出に関する財務会計行為の違法)について固定翼用地は,神戸市が飛行場許可申請をしなければならない用地でない。 固定翼用地内における具体的な施設整備の内容は,同用地を取得した民間事業者が決めるべきものであるし,固定翼機の安全性については,管制官の指示のもと,事業者となる民間企業の自らの責任によって確保されるべきものである。 なお,神戸空港の飛行場設置許可申請の際,神戸市は,固定翼用地を含む告示地域外の計画も国に説明しており,固定翼用地を民間事業者に処分する計画であることについても,国の了解を得ている。 また,固定翼用地と同様の事例として,能登空港においては,航空専門学校(日本航空学園)が空港に隣接して立地しているが,訓練機の駐機場や格納庫は県が管理する飛行場の空港用地(告示区域)の外にあり,安全管理は管理者である学校側において行われている(乙95)。 したがって,固定翼用地の埋立費用の予算支出に関する財務会計行為(支出命令発令行為)については,何ら違法性はない。 理由 第1 したがって,固定翼用地の埋立費用の予算支出に関する財務会計行為(支出命令発令行為)については,何ら違法性はない。 理由 第1 控訴人P1・P2の訴えの適法性 1 判断の前提となる事実,及び控訴人P1・P2の訴え(原審における訴えの交換的変更前のもの)が監査請求前置の要件を充たしていたことは,原判決の認定・説示するとおりであるから(原判決65頁2行目から66頁25行目まで),これを引用する。 ただし,原判決66頁6行目の「被告P3に対する損害賠償代位請求を取り下げ,」から9行目の「訴えの交換的変更を行った。」までを「自治法が改正されたのに伴って原審裁判所から釈明されたのを契機として,被控訴人P3に対する損害賠償代位請求を取り下げるとともに,P3(元神戸市長)及びP4(現神戸市長)に対して,本件債務負担行為によって神戸市が被る損害を回復するために必要な措置をとることを求める旨の請求を追加する訴えの交換的変更を行った。」に改める。 2 訴えの交換的変更後の新請求に係る訴えの適法性について上記のとおり,控訴人P1・P2は,原審において,旧自治法242条の2第1項1号に基づく被控訴人市長に対する本件債務負担行為の差止請求,及び同項4号に基づく被控訴人P3に対する損害賠償代位請求をしていたが,それらについては出訴期間(平成10年1月13日から30日以内)を遵守していたこと,原審係属中の平成15年11月27日,自治法が改正されたのに伴って原審裁判所から釈明されたのを契機として,後者の請求のみを取り下げて,被控訴人市長に対し,現自治法242条の2第1項4号に基づき損害を回復するために必要な措置をとることを求める旨の請求(同請求の実質は,P3及びP4に対して のを契機として,後者の請求のみを取り下げて,被控訴人市長に対し,現自治法242条の2第1項4号に基づき損害を回復するために必要な措置をとることを求める旨の請求(同請求の実質は,P3及びP4に対して,本件予算支出相当額の損害賠償金を神戸市に支払うよう請求することを求める趣旨であると善解できる。)を追加する訴えの交換的変更を行ったことが認められる。 ところで,訴えの変更は,変更後の新請求については新たな訴えの提起にほかならないから,同訴えにつき出訴期間の制限がある場合には,同出訴期間の遵守の有無は,原則として,訴えの変更の時を基準として決すべきであるが,変更前後の請求の間に訴訟物の同一性が認められるとき,又は両者の間に存する関係から,変更後の新請求に係る訴えを当初の訴え提起の時に提起されたものと同視し,出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるときは,当初の訴えが出訴期間を遵守していた以上,変更後の訴えも適法であると解するのが相当である(最高裁昭和61年2月24日・民集40巻1号69頁参照)。 そこで,上記特段の事情の有無について検討するに,上記のとおり,控訴人P1・P2は,原審において,被控訴人市長に対する本件債務負担行為の差止請求と,被控訴人P3に対する損害賠償代位請求を提起していたところ,同差止請求と,前記訴えの交換的変更後の新請求とは,いずれも被控訴人市長を被告とするものであり,新請求も,前記のとおり,その実質は損害賠償を求める請求であると解され,上記の取下げに係る損害賠償代位請求と同じ性質のものであると認められる上(旧自治法から新自治法に換わったことにより,訴えの形式が変わったものと理解できる。),内容的にも,中心的な争点を共通とするものであるのみならず,公金支出の差止請求,公金の支出 であると認められる上(旧自治法から新自治法に換わったことにより,訴えの形式が変わったものと理解できる。),内容的にも,中心的な争点を共通とするものであるのみならず,公金支出の差止請求,公金の支出及びこれを原因とする損害賠償の請求は,いわば一連の流れであって,訴訟上差止を求められている公金の支出をすれば,これに対する損害賠償の請求がされるであろうことは当然予測することができるから,当初の訴え提起の時点において,実質的には,本件債務負担行為がされた場合にはその違法を主張する旨の意思が表明されていたものと解することができる。 そうすると,上記変更後の新請求に係る訴えは,出訴期間遵守との関係では,当初の訴え提起の時に提起されたものと同視することができるというべきであって,上記特段の事情があると認めるのが相当である。 したがって,控訴人P1・P2の上記訴えの交換的変更後の新請求についても,出訴期間は遵守されており,同請求に係る訴えは適法であるというべきであって,これを不適法とした原審の判断は失当である。 3 本件債務負担行為の差止を求める訴えの適法性について控訴人P1・P2は,当初の訴え提起時以降の本件債務負担行為の包括的差止を求めているところ,同差止を求める訴えのうち,本訴口頭弁論終結時以前に完了した債務負担行為の差止を求める部分は,訴えの利益が消滅しているから不適法であるが,その余の部分は適法であることは,原判決の説示するとおりであるから(原判決69頁2行目から70頁9行目まで),これを引用する。 ただし,原判決70頁2行目から3行目にかけての「平成15年12月25日の口頭弁論終結時」を「平成17年4月13日の当審口頭弁論終結時」に,6行目から7行目にかけての「本件口頭弁論終結日である平成15年12 原判決70頁2行目から3行目にかけての「平成15年12月25日の口頭弁論終結時」を「平成17年4月13日の当審口頭弁論終結時」に,6行目から7行目にかけての「本件口頭弁論終結日である平成15年12月25日」を「当審口頭弁論終結日である平成17年4月13日」に,それぞれ改める。 したがって,上記訴えのうち,当審口頭弁論終結日である平成17年4月13日以前に完了した債務負担行為の差止を求める部分は不適法であり,その余の部分は適法であるというべきである。 第2 違法性に関する一般論 1 自治法242条の2第1項1号に基づく差止め,ないし同項4号に基づく損害賠償の各要件たる違法性に関する一般論(いわゆる「違法性の承継」論を含む。)(1) 自治法242条の2の規定に基づく住民訴訟は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を住民に与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものである。同法242条の2第1項1号に基づく差止めの請求及び同項4号に基づく損害賠償の請求は,このような住民訴訟の一類型として,財務会計上の行為を行う権限を有する当該職員の職務上の義務に違反する財務会計上の行為について,当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止め,並びに当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求めるものにほかならない。そして,同法242条の2第1項所定の住民訴訟は,当該普通地方公共団体の住民であれば誰でも提起し得るものとされている。 他方,行政事件訴訟法は,行政行為の遂行に際して違法事由が存する場合であっても,処分性,原告適格,出訴期間等の要件を充たさない限り,抗告訴訟を提起することができないもの とされている。 他方,行政事件訴訟法は,行政行為の遂行に際して違法事由が存する場合であっても,処分性,原告適格,出訴期間等の要件を充たさない限り,抗告訴訟を提起することができないものとしている。また,自治法12条2項,75条1項は,行政事務の遂行に際して違法事由が存する場合であっても,選挙権を有する者の総数の50分の1以上の者の連署がない限り,事務監査の請求をすることができないものとしている。すなわち,上記のような限定された要件を充たさない限り,抗告訴訟ないし事務監査請求において,行政行為ないし行政事務に存する違法事由を主張することはできないこととされている。 上記の行政事件訴訟法における各訴訟類型の規定の構造や自治法75条1項の趣旨に鑑みると,自治法242条の2第1項の規定に基づく住民訴訟における違法性は,原則として財務会計上の行為自体に固有のものでなければならず,たとえ上記財務会計上の行為に先行する原因行為に非財務会計法規上の違法事由が存する場合であっても,当然にその違法性が承継されて後行の財務会計上の行為も違法となると解するのは相当ではなく,例外的に原因行為に存する違法事由の内容及び程度が予算執行の適正確保の見地から看過し得ないものであると認めるときに限って,その違法性を問うことができるものと解するのが相当である(最高裁平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁,控訴人P5らの引用する「一日校長事件」参照)。 そうすると,本件において上記の違法性の有無を判断するに際しては,本件予算支出に関する財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)自体に違法性が認められるか否か,若しくは財務会計上の行為につき,原因行為たる本件事業に存する非財務会計法規上の違法事由の内容及 予算支出に関する財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)自体に違法性が認められるか否か,若しくは財務会計上の行為につき,原因行為たる本件事業に存する非財務会計法規上の違法事由の内容及び程度が予算執行の適正確保の見地から看過し得ないものであると認められるか否かを検討すべきことになる。 したがって,本件における原因行為の違法性がすべて承継される旨の控訴人らの主張は,採用することができない。 (2) これに対し,控訴人P5らは,当審において,上記の「一日校長事件」の事案は,原因行為に当たるものが,地方公共団体の長から独立した行政機関(教育委員会)の行為である点で,原因行為をする者と財務会計行為をする者とが全く同一である本件とは決定的に異なっている旨主張するところ,同事件と本件とが事案を異にすることは同主張のとおりである。 しかしながら,前記のとおりの行政事件訴訟法全体の法構造や自治法75条との比較検討からすれば,上記の最高裁判決の趣旨は,本件のように原因行為をする者と財務会計上の行為をする者とが同一の場合であっても妥当するものと解するのが相当である。 なお,同控訴人らは,原因行為の違法がすべて承継される旨の主張を根拠付けるものとして,「織田が浜埋立工事費用支出差止事件」及び「川崎市退職金支払事件」の各最高裁判決を挙げているが,前者は,自治法242条の2第1項1号に基づく差止請求の対象の特定の程度の点について判示したものであって,いわゆる「違法性の承継」の点について判示したものではないし,後者は,原因行為たる行政処分が後行の財務会計上の行為の直接の原因をなす場合(必然的な原因・結果の関係にあり,両行為が一体的なものと評価できる場合)について,原因行為に重大な違法事由が存すれば,後行 者は,原因行為たる行政処分が後行の財務会計上の行為の直接の原因をなす場合(必然的な原因・結果の関係にあり,両行為が一体的なものと評価できる場合)について,原因行為に重大な違法事由が存すれば,後行の財務会計上の行為も違法となることを認めたものにすぎないから,これらも上記の判断と何ら抵触するものではない。 2 神戸市長の裁量に関する一般論(1) 控訴人らは,本件事業について,神戸市の財政資金を用いていかなる公共事業を実施するか,その事業費としていかなる財源を充てるかに関する被控訴人市長の判断が,財務会計法規である自治法2条12項,14項,10条,地財法4条,4条の2,8条の各規定に違反し,違法である旨主張しているところ,上記各規定は,いずれも地方公共団体や地方行財政の運営の在り方に関わる基本的指針を定めたものであって,かかる基本的指針に適合するか否かは,当該地方公共団体の置かれた社会的,経済的,歴史的諸条件の下における具体的な行政課題との関連で,総合的かつ政策的見地から判断されるべき事項であり,首長制と間接民主制とを基本とする現行地方自治制度の下においては,このような判断は,当該地方公共団体の議会による民主的コントロールの下,当該地方公共団体の長の広範な裁量に委ねられているものというべきであるから,長の判断が著しく合理性を欠き,長に与えられた広範な裁量権を逸脱又は濫用するものと認められる場合に限り,上記各規定違反の違法性が肯定されると解すべきである。 そして,上記の長に広範な裁量権を与えた趣旨からすると,長の判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により同判断が全く事実の基礎を欠くものと認められる場合,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により長の判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが とされた重要な事実に誤認があること等により同判断が全く事実の基礎を欠くものと認められる場合,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により長の判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるものと認められる場合に限り,長の判断が上記の裁量権を逸脱又は濫用するものであると認めるのが相当である(最高裁昭和53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁参照)。 そうすると,本件において,上記の違法性の有無を判断するに際しては,本件予算支出に関する財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)の際の神戸市長(被控訴人P3ないしP4)の判断について,判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により同判断が全く事実の基礎を欠くもの,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により長の判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるものと認められ,そのため,同判断が,著しく合理性を欠き,神戸市長に与えられた広範な裁量権を逸脱又は濫用するものと認められるか否かを検討すべきことになる。 (2) これに対し,控訴人P5らは,当審において,長の判断が,考慮すべき事項を考慮せず,考慮すべきでない事項を考慮し,あるいは,本来過大に評価すべきでない事項を過大に考慮し,これにより左右されたものと認められるときは,その判断は合理性を欠くものとして裁量権の逸脱又は濫用にあたるというべきであり,また,公金支出の必要性,合理性,効率性及び財政の健全性を要考慮事項とすべきである旨主張する。 しかしながら,前記の長に広範な裁量権を与えた趣旨に鑑みると,上記(1)で示した以上に一般的規範を明示することは相当でなく,また,より具体的な要考慮事項や不可考慮事項を明らかにすることも困難であるといわざ ながら,前記の長に広範な裁量権を与えた趣旨に鑑みると,上記(1)で示した以上に一般的規範を明示することは相当でなく,また,より具体的な要考慮事項や不可考慮事項を明らかにすることも困難であるといわざるを得ない。原判決は,本件予算支出の必要性ないし神戸市の財政の健全性の確保が考慮事項であることを認め,それらに関する判断の前提となる事実を認定した上で,神戸市長(被控訴人P3ないしP4)の判断が,著しく合理性を欠き,広範な裁量権を逸脱又は濫用する違法なものであるとまでは認められないと説示したものであって,後記のとおり,その限度では,当裁判所の判断も同旨である。 したがって,控訴人P5らの上記主張は採用することができない。 第3 控訴人ら(控訴人P7・P8を除く。以下同様)の各主張に対する判断 1 非財務会計法規違反の主張について(1) 控訴人P1・P2の主張の当否ア控訴人P1・P2は,本件事業に至る手続の違法(一連の許認可手続の違法,信義則違反)を主張するが,これらは,いずれも非財務会計法規上の違法事由を主張するものであるから,前記のとおり,本件債務負担行為につき,その原因行為たる本件事業に存する違法事由の内容及び程度が予算執行の適正確保の見地から看過し得ないものであると認められる場合に限り,本件債務負担行為の違法性が肯定されることになる。 しかしながら,上記主張が,その主張自体に照らして,本件債務負担行為につき,その原因行為たる本件事業に存する違法事由の内容及び程度が予算執行の適正確保の見地から看過し得ないものであると認められないことは,原判決の説示するとおりであるから(原判決73頁8行目から19行目まで),これを引用する。 イ当審において,控訴人P1・P2は,本件債務負担 看過し得ないものであると認められないことは,原判決の説示するとおりであるから(原判決73頁8行目から19行目まで),これを引用する。 イ当審において,控訴人P1・P2は,本件債務負担行為の原因行為たる本件事業について,3つの違法事由(神戸市条例違反,財産の管理を怠る事実,信義則違反)を主張する。 しかしながら,上記の3つの違法事由の主張も,その主張自体に照らして,本件債務負担行為につき,その原因行為たる本件事業に存する違法事由の内容及び程度が予算執行の適正確保の見地から看過し得ないものであるとは認められないというべきである。 なお,控訴人P1・P2は,被控訴人らは上記の3つの違法事由について何ら反論をしていないから,民事訴訟法140条所定の擬制自白が成立する旨主張するが,弁論の全趣旨によれば,被控訴人らが控訴人P1・P2のすべての違法事由の主張を争っていることは明らかであり,擬制自白は成立していないというべきであるから,控訴人P1・P2の上記主張は理由がない。 (2) 控訴人P5らの航空関連法規違反,船舶関連法規違反,環境保全関連法規違反及び神戸市環境影響評価条例違反の主張の当否アこの点に関する控訴人P5らの主張は,非財務会計法規上の違法事由を主張するものであるから,前記のとおり,本件予算支出に関する財務会計上の行為(支出命令発令行為)につき,その原因行為たる本件事業に存する違法事由の内容及び程度が予算執行の適正確保の見地から看過し得ないものであると認められる場合に限り,同財務会計上の行為(支出命令発令行為)の違法性が肯定されることになる。 しかしながら,上記の控訴人P5らの違法事由の主張は,神戸空港の安全性や周囲の自然環境への影響に関するものであ 財務会計上の行為(支出命令発令行為)の違法性が肯定されることになる。 しかしながら,上記の控訴人P5らの違法事由の主張は,神戸空港の安全性や周囲の自然環境への影響に関するものであるが,その主張自体に照らして,本件予算支出に関する財務会計上の行為(支出命令発令行為)につき,その原因行為たる本件事業に存する違法事由の内容及び程度が予算執行の適正確保の見地から看過し得ないものであるとは認められないというべきである。 なお,仮に神戸空港の安全性について疑問の余地があるとしても,前記第2の1で検討したところに照らすと,原則として,安全性の点は,自治法75条1項所定の事務監査請求や,飛行場設置許可等に対する抗告訴訟の中で主張すべきものであるから,安全性に関する違法事由の内容及び程度が,安全性の問題それ自体にとどまるものであって,神戸市の財政に対して相当程度の損失を与える蓋然性の高いものであると認められない限りは,予算執行の適正確保の見地から看過し得ないものとは認められないというべきである。 また,控訴人P5ら主張に係る環境保全関連法規ないし神戸市環境影響評価条例のうちの多くは,神戸市に対して責務を課したものにすぎないから,仮にそれらを遵守しなかったからといって,その行為が直ちに違法となるわけではないと解される。 したがって,非財務会計法規上の違法事由の存否について判断するまでもなく,控訴人P5らの上記主張は理由がない。 イ当審における控訴人P5らの主張について当審において,控訴人P5らは,本件予算支出に関する財務会計上の行為(支出命令発令行為)の原因行為たる本件事業には,航空法1条,瀬戸内海環境保全特別措置法13条2項,公有水面埋立法4条1項2号違 当審において,控訴人P5らは,本件予算支出に関する財務会計上の行為(支出命令発令行為)の原因行為たる本件事業には,航空法1条,瀬戸内海環境保全特別措置法13条2項,公有水面埋立法4条1項2号違反,環境基本法7条,8条,神戸市環境影響評価条例に反する重大な違法性がある旨,及び航空法上,飛行場の設置を許可するに際して,安全な飛行経路が確保できるか否かの審査がされることになっておらず,安全性が無視されているから,同法に基づいて設置許可を付与された神戸空港の設置手続には,条理上の違法がある旨を主張する。 しかしながら,上記アと同様の理由により,上記各違法事由の存否について判断するまでもなく,控訴人P5らの上記各主張はいずれも理由がないというべきである。 2 本件事業の財政計画及び神戸空港の必要性について(1) これらの点に関する控訴人らの主張は,自治法2条12項,14項,10条,地財法4条,4条の2,8条違反(財務会計法規違反)の違法事由を主張するものであるから,前記のとおり,本件予算支出に関する財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)の際の神戸市長(被控訴人P3ないしP4)の判断について,判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により同判断が全く事実の基礎を欠くもの,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により長の判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるものと認められ,そのため,同判断が,著しく合理性を欠き,神戸市長に与えられた広範な裁量権を逸脱又は濫用するものと認められる場合に限り,違法性が肯定されることになる。 (2) 判断の前提となる事実ア後記イないしエの各事実を付加するほか,原判決の認定するとおりであるから(原判決77頁冒頭から1 れる場合に限り,違法性が肯定されることになる。 (2) 判断の前提となる事実ア後記イないしエの各事実を付加するほか,原判決の認定するとおりであるから(原判決77頁冒頭から101頁21行目まで),これを引用する。 ただし,原判決を次のとおり補正する。 ① 原判決81頁4行目の「空港島土地処分代金,空港供用開始後の事業収益」を「神戸空港の管理収益(航空機着陸料及び土地使用料による収益。甲B79によれば,年間の見込額は,平成18年度が約12億4086万円〔22億4901万7000円-10億0815万9000円〕,平成21年度が約16億6755万円〔27億1066万1000円-10億4310万8000円〕となる。),地方交付税(約100億円の見込み),兵庫県からの補助金,航空機燃料譲与税等(甲B79,甲G15,乙13,90,原審証人P12)」に改める。 ② 原判決81頁10行目の「空港島の土地処分代金,港湾事業収益等」を「港湾使用料を含む港湾整備事業の管理収益(乙90,原審証人P12)」に改め,11行目から14行目までを削除する。 ③ 原判決85頁16行目の「困難な状況にある」を「容易ではない状況になりつつある」に改める。 ④ 原判決92頁10行目から18行目までを次のとおり改める。 「国の厳しい財政事情を反映して,平成16年度までの国庫補助金の内示額は合計85億円にとどまっており,国庫補助金の交付のペースは当初の予定よりも遅れている。しかし,国は,最終的には空港整備事業費関連の国庫補助金250億円全額を補助する方針であることを確認しており,平成16年12月13日,国土交通大臣は,平成21年度までに全額を補助する方針である旨述べ しかし,国は,最終的には空港整備事業費関連の国庫補助金250億円全額を補助する方針であることを確認しており,平成16年12月13日,国土交通大臣は,平成21年度までに全額を補助する方針である旨述べた(乙80,97)。」⑤ 原判決93頁17行目から18行目にかけての「主として着陸料収入により,年間12億円の事業収益を上げられるものと予測し,かかる着陸料収入をもって,」を「神戸空港の管理収益(航空機着陸料及び土地使用料)として,年間12億円を超える収益(12億4086万円〔平成18年度〕ないし約16億6755万円〔平成21年度〕)を上げられるものと予測し,同収益及びその余の収入(地方交付税,兵庫県からの補助金,航空機燃料譲与税等)をもって,」に改める。 ⑥ 原判決98頁末行から99頁3行目までを次のとおり改める。 「(イ) 前記認定事実及び証拠(甲B79)によれば,仮に神戸空港の航空機着陸料を3分の2に値下げした場合,神戸空港の管理収益(航空機着陸料及び土地使用料による収益)の予測額は年間8億円を下回る(平成18年度は約5億1077万円〔21億9027万7000円×2/3-10億0815万9000円+5874万円〕,平成21年度は約7億8358万円〔26億5192万1000円×2/3-10億4310万8000円+5874万円〕となる。)から,他の収入(地方交付税,兵庫県からの補助金,航空機燃料譲与税等)の額によっては,起債償還費用の年額約15億円(前記の空港整備事業に係る起債金額299億円を20年間で均等償還する場合の年間償還額)に不足する可能性もある。」⑦ 原判決101頁6行目の「意思」を「医師」に,19行目の「空港硬派意見」を「空港背後圏」に,それぞれ改める。 年間で均等償還する場合の年間償還額)に不足する可能性もある。」⑦ 原判決101頁6行目の「意思」を「医師」に,19行目の「空港硬派意見」を「空港背後圏」に,それぞれ改める。 イ外部評価神戸市行政評価条例に基づいて設置された神戸市建設事業外部評価委員会は,平成16年6月22日から同年9月6日までの間,本件事業に関する行政評価を行い,その結果,神戸空港の必要性に関する事業者の考えは理解できるし,神戸空港についての需要予測及び費用対効果分析は,国のガイドラインないしマニュアルに沿って適切に実施されていると考えられ,本件事業を「事業継続」とする事業者の対応方針は妥当なものと考えられる旨の意見案をとりまとめた(乙90)。 ウ神戸空港における就航予定スカイマークエアラインズ株式会社は,開港当初から1日6往復便以上の運航を予定している旨,全日本空輸株式会社(ANA)は,開港当初から1日約10往復便の運航を予定している旨,株式会社日本航空ジャパン(JAL)は,開港当初は1日5往復便程度,平成19年度以降は1日10往復便程度の規模の運航を予定している旨をそれぞれ表明している(乙99,100)。 エ兵庫県からの補助金神戸市の当初の財政計画には含まれていなかったが,兵庫県は,神戸市に対し,平成14年度以降,神戸空港の整備に関する補助金として,総額71億7000万円を交付することを決めた(乙48)。 (3) 本件事業の財政計画についてア控訴人らは,空港島の土地処分代金によって,本件事業費を調達したり,市債償還費用を賄うこと,国庫補助金によって本件事業費を調達すること,空港供用開始後の着陸料収入によって市債償還費用を賄うことは,い 控訴人らは,空港島の土地処分代金によって,本件事業費を調達したり,市債償還費用を賄うこと,国庫補助金によって本件事業費を調達すること,空港供用開始後の着陸料収入によって市債償還費用を賄うことは,いずれも不可能であり,本件事業計画は破綻している旨主張する。 そして,本件事業のうち,臨海部土地造成事業の費用の内金677億円について,神戸市は空港島の土地処分代金によって賄う予定であるところ,当初の計画どおりに処分することが不可能となっているため,不足額を新都市整備事業会計から一時借入をして対処しているが,今後も同様の一時借入を繰り返すことが可能であるかについては,疑問があること,同事業の起債償還費用1743億円についても,神戸市は空港島の土地処分代金によって賄う予定であるが,その大部分について,当初の計画どおりに調達できるかどうか疑問があること,仮に神戸空港の航空機着陸料が3分の2に値下げされた場合,空港整備事業の管理収益の予測額は年間8億円を下回るから,他の収入の額によっては,起債償還費用の年額約15億円に不足する可能性もあること,そのような事情を考慮すれば,本件事業を継続した場合,本件事業費及び起債償還費用の不足分について,神戸市の一般財源から補填せざるを得なくなり,神戸市財政に悪影響を与える可能性もあること,他方,神戸市の財政は極めて厳しい状況にあり,仮に本件事業の財政計画が破綻し,神戸空港の建設及び維持に当初予定していたよりも多額の公的資金を投入しなければならない事態に追い込まれれば,神戸市が財政再建団体に転落する懸念も絶無ではないことは,上記(2)で認定したほか,原判決の説示するとおりであるから(原判決102頁末行から104頁24行目まで),これを引用する。 ただし,原判決103頁16行目の「そ 無ではないことは,上記(2)で認定したほか,原判決の説示するとおりであるから(原判決102頁末行から104頁24行目まで),これを引用する。 ただし,原判決103頁16行目の「それも限界に達し,」から17行目末尾までを「それも限界に達しつつある。」に改め,23行目冒頭から24行目の「ことに,」までを削除する。 また,原判決104頁8行目の「市債の償還費用1966億円」を「起債償還費用1743億円」に改める。 イしかしながら,そもそも,将来的な神戸空港の空港島の土地処分の見通しや神戸空港供用開始後の事業収益の予測は,将来の景気動向や航空需要等の多くの不確実な要因に左右されざるを得ない性質のものであるから,高度の蓋然性をもって予測をすることは困難であること,後記(4)のとおり,神戸空港の建設が神戸市に一定の経済波及効果をもたらすことも期待し得ること等に照らすと,上記アの諸事情を考慮しても,今後,本件事業の費用に不足が生じ,神戸市の財政に悪影響を与える蓋然性が高いとまでは認められない。 また,国は,最終的には空港整備事業費関連の国庫補助金250億円全額を補助する方針であることを確認しており,国土交通大臣は,平成21年度までに全額を補助する方針である旨述べたこと,平成14年度航空需要予測のモデルについては,学識経験者からなる神戸空港需要検討会において,妥当なモデルであると評価されていること,神戸市建設事業外部評価委員会は,神戸空港の必要性に関する事業者の考えは理解できるし,神戸空港についての需要予測及び費用対効果分析は,国のガイドラインないしマニュアルに沿って適切に実施されていると考えられ,本件事業を「事業継続」とする事業者の対応方針は妥当なものと考えられる旨の意見案をとりまと ての需要予測及び費用対効果分析は,国のガイドラインないしマニュアルに沿って適切に実施されていると考えられ,本件事業を「事業継続」とする事業者の対応方針は妥当なものと考えられる旨の意見案をとりまとめたこと,航空会社3社が,神戸空港の開港当初から就航する予定である旨を表明していること,兵庫県は,神戸市に対し,平成14年度以降,神戸空港の整備に関する補助金として,総額71億7000万円を交付することを決めたことは,いずれも前記(2)のとおりである。 さらに,一般に,地方公共団体の財政が極めて厳しい状況にあり,かつ,必要性のある大規模公共事業を実施すると,事業費用に不足が生じるリスクがあり,財政に悪影響を与える可能性がある場合であっても,同公共事業自体は実施した上で,財政の健全化については他の手段(事務の合理化や他の歳出の削減等)により達成するとの選択をすることも,あり得るところである。 以上によれば,上記アの諸事情及び控訴人らのその余の主張(航空需要予測の当否に関するものを含む。)を考慮しても,本件予算支出に関する財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)の際の神戸市長(被控訴人P3ないしP4)の判断が,全く事実の基礎を欠くものであるとは認められないし,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるとも認められないというべきであるから,同判断が,著しく合理性を欠き,神戸市長に与えられた広範な裁量権を逸脱又は濫用するものとは認められないと解するのが相当である。 よって,本件事業の財政計画が破綻していることを前提として,被控訴人P3ないしP4の本件予算支出に係る財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)は違法である旨の控訴人らの主張は,理由がない。 財政計画が破綻していることを前提として,被控訴人P3ないしP4の本件予算支出に係る財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)は違法である旨の控訴人らの主張は,理由がない。 ウ当審において,控訴人P5らは,本件事業の財政計画において売却を予定していた空港島の土地について,現時点でも確実な売却の見通しを提示できないほどに計画が大きく狂ったこと等によれば,神戸市長の裁量的判断の前提となる事実の認定に大きな誤認があったというべきである旨主張するが,上記イの諸事情に照らすと,控訴人P5らの同主張も,上記の判断を左右するものとはいえない。 (4) 神戸空港の必要性についてア神戸空港の開港により,神戸市や神戸市以西の地域からの航空旅客の利便性が高まること,神戸空港が神戸市に一定の経済波及効果をもたらすことも期待し得ること,神戸医療産業都市構想において,神戸空港が航空機を利用する実益の大きい医療関連産業の誘致や人材の育成等を推進するために大きな力となることも期待されていることは,いずれも原判決の認定・説示するとおりであるから(原判決109頁17行目の「関西国際空港は,」から110頁13行目末尾まで),これを引用する。 ただし,原判決110頁3行目の「確かに」から5行目の「しかし,」までを削除する。 イまた,本件事業のうちの空港整備事業について,国土交通省航空局が行った費用対効果分析を基本とする公共事業再評価システムに基づく中間評価の結果,再評価の必要性はないとの結論が示されたことは,前記(2)のとおりである。 ウ上記の諸事情に照らすと,神戸空港を建設する必要性がないとは認められない。 したがって,本件予算支出に関する財務会計上の行為(債務負担行為 前記(2)のとおりである。 ウ上記の諸事情に照らすと,神戸空港を建設する必要性がないとは認められない。 したがって,本件予算支出に関する財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)の際の神戸市長(被控訴人P3ないしP4)の判断が,全く事実の基礎を欠くものであるとは認められないし,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるとも認められないというべきであるから,同判断が,著しく合理性を欠き,神戸市長に与えられた広範な裁量権を逸脱又は濫用するものとは認められない。 そうすると,神戸空港の必要性がないことを前提として,被控訴人P3ないしP4の本件予算支出に係る財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)が違法である旨の控訴人らの主張は理由がない。 3 神戸空港の安全性及びそれに関する控訴人らの主張について(1) 神戸空港の安全性に関する控訴人らの主張は,上記2と同様の財務会計法規違反の違法事由を主張するものであるから,前記のとおり,本件予算支出に関する財務会計上の行為(支出命令発令行為)の際の神戸市長(被控訴人P3ないしP4)の判断について,判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により同判断が全く事実の基礎を欠くもの,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により長の判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるものと認められ,そのため,同判断が,著しく合理性を欠き,神戸市長に与えられた広範な裁量権を逸脱又は濫用するものと認められる場合に限り,違法性が肯定されることになる。 (2) 判断の前提となる事実ア後記イ及びウの各事実を付加するほか,原判決の認定するとおりであるから(原判決112頁4行目から120 合に限り,違法性が肯定されることになる。 (2) 判断の前提となる事実ア後記イ及びウの各事実を付加するほか,原判決の認定するとおりであるから(原判決112頁4行目から120頁7行目まで),これを引用する。 ただし,原判決113頁8行目,及び13行目から14行目にかけての各「頻発する危険な欠陥空港となる」をいずれも「発生するおそれのある危険な空港となることが懸念されるところであった」に改める。 イ神戸空港の飛行経路案国土交通省航空局管制保安部は,神戸市みなと総局空港整備室に対し,平成17年3月22日付けで,神戸空港の飛行経路の骨格がまとまったとして,本判決別紙2記載の内容の飛行経路案を示すとともに,これをもとに飛行検査(フライトチェック)等を行い,航空路誌への掲載を経て最終確定となる旨を通知した(乙107)。 ウ神戸空港航行安全委員会における検討平成16年1月,学識経験者,海事・港湾関係者や関係行政機関等からなる神戸空港航行安全委員会において,平成17年度の神戸空港供用を前に,当初の検討条件と現状の海上環境との間に状況の変化あるいは違いが生じてきていることを踏まえ,過去に調査検討・確認された内容を整理した上で,空港供用に際しての航行安全の確保が再確認されるとともに,制限表面下の船舶航行方法と航行安全対策,航空灯火等が航行船舶に与える影響,航空機の騒音・電波が港湾荷役・航行船舶に与える影響,指定錨地の変更が検討され,承認された。第三航路周辺の航行の安全については,①進入表面下を航行する船舶に対して,進入表面の制限高さが容易に判別できるように,進入表面ブイを設置すること,②進入表面の安全高さについて,海図,水路通報,瀬戸内海水路誌,航空 の安全については,①進入表面下を航行する船舶に対して,進入表面の制限高さが容易に判別できるように,進入表面ブイを設置すること,②進入表面の安全高さについて,海図,水路通報,瀬戸内海水路誌,航空安全指導録集への記載,神戸港入港マニュアル,リーフレット,ポスター等を通じて,船舶代理店,入港船舶,海事関係者に周知・広報すること,③マスト高が進入表面を侵すおそれがある船舶に対しては,こうべポートラジオ等を通じて,航行方法を指導すること,④航行方法が周知・徹底されるまでの間は,現場に広報活動船を配置するとともに,こうべポートラジオ等から注意喚起を促す等の対策をとることにより,進入表面下を安全に航行するよう指導すること,⑤神戸市及びこうべポートラジオは,国土交通省航空局の機関と相互に情報を調整することにより,航行船舶と航空機の安全を確保することが検討され,承認された(乙92)。 (3) 上記各事実に照らして,神戸空港が航空機航行の安全性を確保できない危険な空港になるとは認められないこと,これに反する控訴人らの主張を採用できないことは,原判決の説示するとおりであるから(原判決120頁9行目から124頁10行目まで),これを引用する。 ただし,原判決を次のとおり補正する。 ① 原判決120頁18行目の「神戸空港付近において,」から22行目末尾までを「控訴人ら主張の特殊な気象条件により,神戸空港が航空機航行の安全性を確保できない危険な空港になるとは認められない。」に改める。 ② 原判決121頁10行目の「神戸空港発着機」から13行目末尾まで,123頁5行目の「神戸」から8行目末尾までをいずれも「神戸空港が航空機航行の安全性を確保できない危険な空港になるとは認められない。」に改める。 ③ 原判決12 機」から13行目末尾まで,123頁5行目の「神戸」から8行目末尾までをいずれも「神戸空港が航空機航行の安全性を確保できない危険な空港になるとは認められない。」に改める。 ③ 原判決123頁9行目から14行目までを削除する。 ④ 原判決124頁3行目の「原告らが主張するように,」から7行目末尾までを「控訴人らが主張する神戸港内の船舶航路との競合の点を考慮しても,神戸空港が航空機航行の安全性を確保できない危険な空港になるとは認められない。」に改める。 (4) 神戸空港が航空機航行の安全性を確保できない危険な空港になると認められないことは,上記のとおりであるから,神戸空港の安全性について,本件予算支出に関する財務会計上の行為(支出命令発令行為)が違法となるほどの重大な問題が存在するとは認められない。 また,仮に神戸空港の安全性について疑問の余地があるとしても,それだけでは,上記の財務会計上の行為の際の神戸市長の判断が,全く事実の基礎を欠くものであるとか,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるとまでは認められないから,上記の結論が変わることはないというべきである(なお,安全性の点は,原則として,自治法75条1項所定の事務監査請求や,飛行場設置許可等に対する抗告訴訟の中で主張すべきものであることは,前記のとおりである。)。 したがって,本件予算支出に関する財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)の際の神戸市長(被控訴人P3ないしP4)の判断が,全く事実の基礎を欠くものであるとは認められないし,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるとも認められないというべきであるから,同判断が,著しく合理性を欠き,神戸市長に与えられた広範な裁量権を逸脱又は濫用す であるとは認められないし,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるとも認められないというべきであるから,同判断が,著しく合理性を欠き,神戸市長に与えられた広範な裁量権を逸脱又は濫用するものとは認められない。 そうすると,神戸空港の安全性に問題があることを前提として,被控訴人P3ないしP4の本件予算支出に係る財務会計上の行為(債務負担行為ないし支出命令発令行為)は違法である旨の控訴人らの主張は,理由がない。 (5) 当審における控訴人P5らの主張についてア安全な飛行経路等の設定について控訴人P5らは,関西国際空港,伊丹空港及び神戸空港の3空港同時運用の安全な飛行経路は存在せず,安全な空域管制を確保する方策はない旨主張するが,その事実を認めるに足りる的確な証拠はなく,かえって,国土交通省航空局管制保安部は,神戸市みなと総局空港整備室に対し,平成17年3月22日付けで,神戸空港の飛行経路の骨格がまとまったとして,飛行経路案を示すとともに,これをもとに飛行検査(フライトチェック)等を行い,航空路誌への掲載を経て最終確定となる旨を通知したことは,前記(2)のとおりである。 イ気象条件について控訴人P5らは,前記のとおり,航空機の発着の安全性については,10分間平均よりも,瞬時の横風観測値が重要であるところ,神戸空港周辺では,秋・冬季において,離陸時の最大横風限界値(滑走路ドライの場合で29ノット,ウエットの場合,通常舗装で20ノット,グルーピング舗装で25ノット)を超える風速15m(29.16ノット)前後の六甲おろしが吹き荒れるから,神戸空港の安全性には問題がある旨主張する。 しかしながら,国は,空港の安全性を所管する立場から,神 ノット)を超える風速15m(29.16ノット)前後の六甲おろしが吹き荒れるから,神戸空港の安全性には問題がある旨主張する。 しかしながら,国は,空港の安全性を所管する立場から,神戸市の提出した風向風速図(乙13)等の法定の申請書類に基づいて,神戸空港の位置,気象条件,位置選定理由等について,専門的な調査,検討を加え,その安全性に問題がないことを審査した上で,飛行場設置許可を行ったこと,それらの事実に鑑みれば,神戸空港が航空機航行の安全性を確保できない危険な空港になるとは認められないことは,前記(3)及び(4)のとおりである。 また,証拠(甲D54,乙102,103,105,106)によれば,国際民間航空機関(ICAO)は,「ICAOANNEX 14」において,ウインドカバレッジ(横風成分の最大値が毎時20ノット〔10.3m/s〕以下となる割合)が95%以下にならないよう勧告していること,国際民間航空条約の第14付属書においては,風速のデータは平均風の分布統計によるべきであり,観測は,少なくとも1日に8回,かつ,等しい時間間隔で実施すべきであるとされていること,気象庁の地上気象観測指針においても,平均風向・風速は一般に観測時前10分間の平均値をその時刻の値とし,通常,単に風向風速という場合は,この10分間の平均風向風速を意味するとされていること,神戸空港建設地の風向風速については,昭和59年6月から平成元年にかけて,航空気象観測が実施されたところ,同観測は財団法人日本気象協会に委託して行ったものであり,その内容は,計器による自動観測で,各正時の10分前から正時までの10分間の平均風向・風速を1日24回計測したものであったこと,同観測により得られたデータのうち,神戸空港の運用時間として予定されている 内容は,計器による自動観測で,各正時の10分前から正時までの10分間の平均風向・風速を1日24回計測したものであったこと,同観測により得られたデータのうち,神戸空港の運用時間として予定されている午前7時から午後10時に係る1日16回×3年間の計測データを統計処理したものが,飛行場設置許可申請書に添付された風向風速図(乙13)に記載されたこと,同観測の結果によると,ウインドカバレッジは3年間の平均で99.8%であったこと,神戸空港建設地の風向風速の観測については,平成14年4月から平成16年3月にかけても実施されたが,月別にみても,ウインドカバレッジはいずれも95%を超えていることが確認されたことがそれぞれ認められる。 ウ海上交通との調整について控訴人P5らは,前記のとおり,神戸空港の供用開始により,海難事故や航空機と船舶との衝突事故が発生する危険性が高い旨主張する。 しかしながら,証拠(乙68,90,92)によれば,平成5年3月,神戸空港に係る海上交通問題検討委員会は,神戸港内に神戸空港が建設された場合の海上交通への影響と航行安全対策について検討し,その結果,基本的な航行安全対策はとり得る旨の見解を示したことが認められる。 また,平成16年1月,学識経験者,海事・港湾関係者や関係行政機関等からなる神戸空港航行安全委員会において,平成17年度の空港供用を前に,当初の検討条件と現状の海上環境との間に状況の変化あるいは違いが生じてきていることを踏まえ,過去に調査検討・確認された内容を整理した上で,制限表面下の船舶航行方法と航行安全対策,航空灯火等が航行船舶に与える影響,航空機の騒音・電波が港湾荷役・航行船舶に与える影響,指定錨地の変更が検討され,承認されたことは,前記(2) 整理した上で,制限表面下の船舶航行方法と航行安全対策,航空灯火等が航行船舶に与える影響,航空機の騒音・電波が港湾荷役・航行船舶に与える影響,指定錨地の変更が検討され,承認されたことは,前記(2)ウのとおりである。 さらに,騒音や電波が操船に与える影響については,前記(2)のとおり,海上交通問題検討委員会において慎重に検討されたところであり,その検討資料として,制限表面と航路との位置関係及び港湾との共存という観点から神戸空港と類似点の多い東京国際空港周辺の状況について,東京水先案内人へのアンケート調査を行った結果,回答者14名中11名が「操船への影響なし」と回答しており,また,証拠(乙83,92)によれば,操船に影響があると回答した3名についても,その影響の内容は,トランシーバーによる交信が一時的に不通になったというものにすぎなかったことが認められる。 エ上記の諸事情に照らすと,当審における控訴人P5らの各主張を考慮しても,神戸空港の安全性について,本件予算支出が違法となるほどの重大な問題があるとは認められないというべきであるから,控訴人P5らの上記各主張は,いずれも前記(4)の判断を左右するものとはいえない。 第4 当審における控訴人P7・P8の主張に対する判断控訴人P7・P8は,固定翼用地について,これが誘導路やエプロン等を備えた飛行場に含まれるべきものであるから,航空法38条1項所定の飛行場設置許可を受けなければならず,かつ,第3種空港である神戸空港の滑走路を利用するものであるから,同法47条1項により,本件事業の事業者である神戸市が同許可を申請すべきである旨,及び同法39条1項5号により,申請者である神戸市が固定翼用地の権原を有しなければならない旨を主張する。 しかしながら,航空 より,本件事業の事業者である神戸市が同許可を申請すべきである旨,及び同法39条1項5号により,申請者である神戸市が固定翼用地の権原を有しなければならない旨を主張する。 しかしながら,航空法38条1項所定の「飛行場」とは,航空機の到着,出発及び移動のために全部又は一部を使用する目的を有する地上又は水上の限定された区域のことを指すから,神戸空港の告示区域外に存し,かつ,航空機の離着陸のための滑走路又は着陸帯を含まない固定翼用地は,上記「飛行場」には当たらないと解されること,航空法施行規則79条1項は,飛行場の告示区域内において同項の規格に適合する滑走路,着陸帯及び誘導路やエプロンを有することを飛行場設置基準の一つとしているが,他に飛行場の告示区域外に小型機である固定翼機のためのエプロンや誘導路が存在すること自体を禁止する規定はないことに照らすと,固定翼用地は航空法38条1項所定の上記許可を受けなければならない土地には当たらないというべきである。 また,航空法47条1項は,飛行場の設置者に対して,飛行場の用地(告示区域)内に存する施設を国土交通省令で定める保安上の基準に従って管理すべき義務を負わせた規定であって,神戸空港の告示区域外に存する固定翼用地に関して神戸市が飛行場設置許可申請をすべきであると解する根拠とはなり得ないし,同法39条1項5号は,同許可申請をした者が,当該飛行場用地(告示区域)内の敷地について,所有権その他の使用権原を有するか,又はこれを確実に取得することが認められることを同許可の要件とした規定であって,神戸空港の告示区域外に存する固定翼用地の権原を神戸市が有しなければならないと解する根拠とはなり得ない。 したがって,神戸市が,固定翼用地について飛行場設置許可を申請しておらず,かつ,固定翼用地 港の告示区域外に存する固定翼用地の権原を神戸市が有しなければならないと解する根拠とはなり得ない。 したがって,神戸市が,固定翼用地について飛行場設置許可を申請しておらず,かつ,固定翼用地を民間事業者に売却する計画を立てているからといって,そのことが上記各条項に違反しているとは認められない。 そうすると,固定翼用地は民間事業者への売却ができない土地であるから,本件事業のうち,固定翼用地に関する部分は,当初から違法な破綻した事業であり,固定翼用地の埋立費用の予算支出に関する財務会計行為(支出命令発令行為)は違法である旨の控訴人P7・P8の主張は,その前提を欠くものであるから,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 また,控訴人P7・P8は,固定翼機を含む安全性が確保されていないから,神戸空港の安全性には問題がある旨の主張もする。 しかしながら,前記のとおり,固定翼用地は,神戸空港の告示区域内の土地ではなく,民間業者への売却が予定されている土地であって,同売却が可能であれば,固定翼用地の埋立費用の予算支出が公金支出要件(公金支出の必要性,合理性・効率性,健全性等)を充たさないとはいえないから,上記安全性の点は,同予算支出に関する財務会計行為(支出命令発令行為)自体の違法事由とはならないというべきである。 そうすると,上記安全性の点について判断するまでもなく,控訴人P7・P8らの上記主張も採用できない。 さらに,これまで検討してきたところに照らすと,固定翼用地の埋立費用の支出に関する財務会計上の行為(支出命令発令行為)の際の神戸市長(被控訴人P3ないしP4)の判断が,全く事実の基礎を欠くものであるとか,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるとは認められないというべ 会計上の行為(支出命令発令行為)の際の神戸市長(被控訴人P3ないしP4)の判断が,全く事実の基礎を欠くものであるとか,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるとは認められないというべきであるから,同判断が,著しく合理性を欠き,神戸市長に与えられた広範な裁量権を逸脱又は濫用するものとは認められないし,また,同財務会計上の行為(支出命令発令行為)につき,その原因行為たる本件事業に存する違法事由の内容及び程度が予算執行の適正確保の見地から看過し得ないものであるとも認められないというべきである。 よって,いずれにしても,当審における控訴人P7・P8らの主張は理由がない。 第5 結論控訴人P1・P2を除く,その余の控訴人らの請求については,当審で変更された控訴人P7・P8の請求を含め,いずれも理由がないからこれを棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当であって,同控訴人らの本件各控訴はいずれも理由がない。 次に,控訴人P1・P2の訴えのうち,当審の口頭弁論終結時である平成17年4月13日までに終了した本件債務負担行為の差止を求める部分は,不適法であるから,これを却下すべきであり,同控訴人らのその余の差止請求(同日後からの本件債務負担行為の差止めを求める部分)は,いずれも理由がないから,これを棄却すべきである。 そうすると,これと異なる原判決(同控訴人らに関する部分)は,上記の限度で変更すべきものである。 また,原審裁判所は,控訴の趣旨(3)の請求に関する訴えについて,出訴期間の徒過を理由としてこれを却下しており,これが失当であって取り消されるべきであることは前記のとおりであるが,本件においては,事件につき更に弁論をする必要がないと認められるから,民事訴訟法307条但書により,当審 としてこれを却下しており,これが失当であって取り消されるべきであることは前記のとおりであるが,本件においては,事件につき更に弁論をする必要がないと認められるから,民事訴訟法307条但書により,当審において同請求の本案について審理・判断をしたところ,同請求については,すでにみたとおり,棄却されるべきこととなる。しかし,被控訴人市長が控訴又は附帯控訴をしていない本件においては,同却下部分を控訴人P1・P2に不利益に変更して同訴えに係る請求を棄却することは許されず,したがって,同却下部分については,同控訴人らの本件各控訴を棄却するにとどめるのが相当である。 したがって,控訴人P1・P2の本件各控訴については,職権により,原判決主文第1項(2)を本判決主文第2項(1)①②のとおり変更した上,同控訴人らのその余の各控訴をいずれも棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第5民事部裁判長裁判官大和陽一郎裁判官菊池徹裁判官細島秀勝

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