平成20(行ク)20 執行停止申立事件(本案・当庁平成20年(行ウ)第38号営業停止処分取消請求事件)

裁判年月日・裁判所
平成20年11月21日 広島地方裁判所 警察関係
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判決文本文3,552 文字)

- 1 -主文 広島県公安委員会が申立人に対して平成20年11月12日付けで行った,平成20年11月25日から平成21年2月12日までの80日間の風俗営業の営業停止処分の効力は,本案判決が確定するまで停止する。 申立費用は,相手方の負担とする。 理由 第1申立ての趣旨広島県公安委員会が申立人に対して平成20年11月12日付けで行った,平成20年11月25日から平成21年2月12日までの80日間の風俗営業の営業停止処分の効力は,これを停止する。 第2事案の概要本件は,広島県公安委員会が,平成20年11月12日付けで,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)26条1項の規定に基づき,申立人に対して,平成20年11月25日から平成21年2月12日までの80日間,風俗営業の営業停止を命じる処分を行ったため,申立人が,同処分の取消しを求める当庁平成20年(行ウ)第38号営業停止処分取消請求事件を提起した上,同処分により生じる重大な損害を避けるため緊急の必要があるとして,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)25条2項本文に基づき,同処分の執行の停止を求めた事案である。 前提事実(1)申立人は,広島県公安委員会から風俗営業の許可を受けて,広島県竹原市α×番16号所在のパチンコ店「A」(以下「本件店舗」という。)を営む者である(疎甲1)。 (2)広島県公安委員会は,申立人に対して,平成20年11月12日,本件店舗での風俗営業の営業を平成20年11月25日から平成21年2月12日までの80日間停止するとの処分(以下「本件処分」という。)を行った。 - 2 -本件処分の理由は,申立人を含む会社グループの営業本部長のBことC,申立人の開発事業部室長のD,本件店舗の店長であるE,申立人の従業員で るとの処分(以下「本件処分」という。)を行った。 - 2 -本件処分の理由は,申立人を含む会社グループの営業本部長のBことC,申立人の開発事業部室長のD,本件店舗の店長であるE,申立人の従業員であるFらが共謀の上,風営法23条1項2号に違反して,申立人の営業に関し,平成▲年▲月▲日及び同年▲月▲日の両日,5回にわたり,広島県竹原市α×番10号所在の景品買取所において,Fらが,本件店舗の遊技客合計5名から,同店が遊技客に提供した賞品合計34個を合計3万9100円で買い取ったというものである(疎甲1)。 争点 (1)「重大な損害を避けるため,緊急の必要があるとき」(行訴法25条2項本文)に該当するか(2)公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか(行訴法25条4項)(3)本案について理由がないとみえるか(行訴法25条4項) 当事者の主張(1)本件申立ての理由は,①風評被害等により業績が悪化し申立人が倒産する危険があるから,「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当する,②執行停止をすることで公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれはない,③本件店舗の遊技客から賞品を買い取ったのは有限会社Gであり申立人ではないから本件処分理由は事実誤認であるし,申立人のみを処分することは平等原則に違反するから,「本案につき理由がないとみえるとき」に当たらないというものである。 (2)これに対する相手方の意見は,①本件店舗が営業停止となっても申立人が倒産の危機に直面するとも考えられないし,金銭賠償による回復も可能であるから,「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当しない,②本件処分の執行を停止すれば,申立人が,風営法23条1項2号に違反する行為を継続し,遊技客の射幸心の蔓延を招来し,また,営業者が遊技客相手に賭博をし 避けるため緊急の必要があるとき」に該当しない,②本件処分の執行を停止すれば,申立人が,風営法23条1項2号に違反する行為を継続し,遊技客の射幸心の蔓延を招来し,また,営業者が遊技客相手に賭博をしていることにほかならない事態を招くから,「公共の福祉に重- 3 -大な影響を及ぼすおそれ」がある,③申立人が遊技客から賞品を買い取っていたことは明らかであり,「本案について理由がないとみえるとき」に該当するというものである。 第3当裁判所の判断 争点(1)について一件記録によれば,申立人は,本件店舗の外,パチンコ店2店とボウリング店1店を経営していること,平成20年2月1日から同年10月31日までの申立人の売上総利益に占める本件店舗の売上総利益は約4分の3に及ぶこと,同期間の本件店舗の売上総利益は1日平均200万円弱であったことが認められる(疎甲27)。 本件処分がなされれば,申立人は,80日の営業停止期間中,本件店舗からの売上げが得られなくなり,一方で,設備投資資金の返済も含めた店舗維持の経費を負担せざるを得ない。しかも,遊技客を集客するというパチンコ店の営業形態や,80日の営業停止期間に照らすと,いったん営業を停止すれば,その後に営業を再開しても,客足が遠のく等により本件店舗の営業が著しく悪化することも十分に考えられる。これらの点に加えて,申立人の売上総利益に占める本件店舗の売上の比率を総合すると,申立人は,本件処分による営業停止によって,経営状態が著しく悪化し,倒産する可能性も否定できない。また,このような有形無形の損害は,金銭賠償によっては容易に回復することは困難なものといえる。 上記の点にかんがみれば,本件は,行訴法25条2項の「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に当たるといえる。 相手方は,申立人がHグループに属 っては容易に回復することは困難なものといえる。 上記の点にかんがみれば,本件は,行訴法25条2項の「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に当たるといえる。 相手方は,申立人がHグループに属する一企業であり,資金も同グループ内で流動的に動いているから,「重大な損害」の発生の判断において,形式的に申立人に属する店舗にだけ着目すべきではない旨主張し,これに沿う疎明資料も提出する。しかし,仮に上記のような事情が存在するとしても,申立人は一- 4 -個の営利法人であるから,その経営の維持は法人ごとに検討されるべき事項であり,本件店舗の営業停止に伴う申立人の上記損害を軽視することはできないから,上記の相手方が指摘する点によって上記結論を覆すことはできないというべきである。 争点(2)について相手方の主張する公共の福祉に対する影響は一般的,抽象的なものにすぎず,本件において,本件処分の執行停止は公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるというに足りる具体的な事情は認められない。 争点(3)について相手方は,捜査活動によって収拾された資料を提出し,これによって,申立人が,風営法23条1項2号の禁止行為(「客に提供した賞品を買い取ること」)を実行したことは明らかであるから,本件は行訴法25条4項の「本案について理由がないとみえるとき」に当たる旨主張する。 しかし,申立人は,Fは申立人の従業員ではなく有限会社Gの従業員である,同社は申立人とは実質的にも別の法人格である,同社からさらに株式会社I,J株式会社に賞品が売買されている旨主張し,これに沿う疎明資料を一応提出している。また,本件処分理由と同一の事実で起訴され略式命令を受けたE,C,D及び申立人は,相手方の主張する事実関係を否認し,それぞれ正式裁判の請求をし,この刑事裁判は未だ審理 う疎明資料を一応提出している。また,本件処分理由と同一の事実で起訴され略式命令を受けたE,C,D及び申立人は,相手方の主張する事実関係を否認し,それぞれ正式裁判の請求をし,この刑事裁判は未だ審理中である。相手方は,賞品が物理的に本件店舗と有限会社Gを循環していれば,有限会社G・株式会社I間,株式会社I・J株式会社間の賞品の売買契約が存在しても風営法23条1項2号の禁止行為に当たる旨主張するが,同主張の当否の判断には,法解釈,上記各売買契約の実態等についてさらなる審理を尽くす必要があり,少なくとも現段階でその当否を決することは困難である。以上にかんがみれば,相手方が提出した疎明資料のみから,現段階で,申立人が風営法23条1項2号違反に当たる行為を実行したと判断し,本件が上記の「本案について理由がないとみえるとき」- 5 -に当たるとまでは言い難い。 結論 よって,本件申立ては理由があるから,主文のとおり決定する。 平成20年11月21日能勢顯男裁判長裁判官馬場俊宏裁判官戸田有子裁判官

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