【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人を罰金三万四、〇〇〇円に処する。 右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算 した期間、被告人を労役場に留置
主文 原判決を破棄する。 被告人を罰金三万四、〇〇〇円に処する。 右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人岡野隆男作成名義の控訴趣意書に記載されたとおりであり、これに対する答弁は、東京高等検察庁検察官検事富田孝三作成名義の答弁書に記載されたとおりであるから、これらをここに引用し、これに対して、当裁判所は、次のとおり判断する。 控訴趣意第一(事実誤認)について所論は要するに、原判決は、被告人が「時速約一八・三キロメートル乃至二〇キロメートル(一八キロ余と考えられる)の速度をもつて右折進行」し、「自車前部をAに接触転倒させ」た旨認定しているが、右速度の認定は適格な証拠に基かないもので、真実に合致せず、又Aに自車を接触させた事実も極めて疑わしく、原判決にはこの点で判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認があるというのである。 所論につき検討を加えるに先立ち、本件審理の経緯について、記録を調査すると、大略次の事実が認められる。 1、 被告人は昭和四八年一一月一六日新潟簡易裁判所に、「被告人は昭和四八年七月一三日午前一一時四五分ごろ大型貨物自動車を運転し、新潟市ab番地先道路(交差点)を姥ケ山方面から紫竹方面に向かい時速約六キロメートルで右折進行中、進路前方、左右を注視して進行すべき注意義務を怠り、被害者を前方約一・二メートルの地点ではじめて発見した業務上の過失により、前方横断歩道を左方から右方に向け、歩行横断していたB(当二二年)に自車左前部を接触転倒させ、よつて同人に対し全治約一二日間を要する脳振盪、後頭部皮下血腫等の傷害を負わせた」との公訴事実につき、略式手続による公訴を提起され、 に向け、歩行横断していたB(当二二年)に自車左前部を接触転倒させ、よつて同人に対し全治約一二日間を要する脳振盪、後頭部皮下血腫等の傷害を負わせた」との公訴事実につき、略式手続による公訴を提起され、略式命令の送達をうけたが、これを不服として正式裁判の申立をし、同裁判所の公判に付されたこと、同裁判所は第四回公判において、検察官の請求により右公訴事実中「被害者を進路前方約一・二メートルの地点に発見した」とあるのを「被害者を進路前方約五・四メートルの地点に発見した」と訴因の変更を許可したうえ、同四九年三月七日有罪の判決を言い渡したが、右判決において、被告人は大型貨物自動車を時速約六ないし一〇キロメートルで運転し、前記交差点を右折するに際し、進路前方、左右を注視して進行すべき注意義務を怠り、横断歩道を左から右に横断歩行中の被害者A(旧姓B)を前方約五・四メートルの地点にはじめて発見し、急制動をかけたが間に合わず、自車前部を同人に接触させてその場に転倒させ、同人に前記のごとき傷害を負わせた事実を認定判示したこと、2、 右判決に対し、被告人より控訴し、控訴審において、被告人は自車が被害者Aに接触した事実はない旨主張したこと、控訴裁判所である当裁判所(第三刑事部)は右事件を審理した結果、同四九年九月三〇日、原判決を破棄し、本件を新潟簡易裁判所に差し戻す旨の判決を言い渡したが、その理由の要旨は、原判決は、被告人が大型貨物自動車を運転し、時速約六ないし一〇キロメートルで前記交差点を右折進行中、前方横断歩道を横断歩行中のAを前方約五・四メートルの地点にはじめて発見し、急制動をかけたが間に合わなかつた旨認定判示しているが、時速約六ないし一〇キロメートルで右折進行中、前方約五・四メートルの地点に横断中の歩行者を発見し、直ちに急制動をかければ、特段の事情(歩 発見し、急制動をかけたが間に合わなかつた旨認定判示しているが、時速約六ないし一〇キロメートルで右折進行中、前方約五・四メートルの地点に横断中の歩行者を発見し、直ちに急制動をかければ、特段の事情(歩行者の横断の方向が右自動車に接近するような右斜め横断である場合等)がない限り、日常の経験則上空走距離を含めた広義の制動距離を前提に考えても、歩行者に接触しないうちにその手前で停止するものといわねばならないから、特段の事情について何ら説示せずに、右の速度と距離のもとで急制動をかけたが間に合わず、自車を被害者に接触させた旨認定判示した原判決には理由のくいちがいがあるのみでなく、本件現場には被告人運転車両の前輪及び後輪のスリツプ痕が残つており、被告人およびCの各捜査官に対する供述調書中には被告人車両の速度は時速一五ないし二〇キロメートルであつたような供述もあり、右各供述と前記スリツプ痕の状況とを合わせ考えると、被告人車両の速度は原判決が認定した時速六ないし一〇キロメートルより速い速度であつた疑いが強いところ、原判決のように被告人が被害者を発見するのが遅れた点を被告人の過失と認定するには、被告人車両の速度は、被害者を発見した時点及び同人との距離との関連上重要な前提事実であるので、さらにその点の審理を十分に尽す必要があるというにあつたこと、3、 右差戻判決後、新潟区検察庁は、本件現場に残されたスリツプ痕について更に補充捜査を行い、差戻後の原審第二回公判において、検察官は、「時速約六キロメートルで右折進行中」とあるのを「時速約一八ないし二〇キロメートルで右折進行中」と訴因の変更を請求し、原審裁判所はこれを許可したこと、原審裁判所は右差戻判決にしたがつて更に審理し、同五〇年八月七日言い渡しの原判決において、所論のとおり、被告人が大型貨物自動車を運転し、 進行中」と訴因の変更を請求し、原審裁判所はこれを許可したこと、原審裁判所は右差戻判決にしたがつて更に審理し、同五〇年八月七日言い渡しの原判決において、所論のとおり、被告人が大型貨物自動車を運転し、原判示交差点を時速約一八・三キロメートル乃至二〇キロメートル(一八キロ余と考えられる)の速度で右折進行するに当り、原判示のごとき業務上の注意義務を怠り、前方の横断歩道を左から右に横断歩行中の被害者Aを前方約五・四メートルの地点に接近してはじめて発見し、発見と同時に急制動をかけたが間に合わず、自車前部を同人に接触転倒させた旨判示したこと、以上の事実が認められる。 ところで、原判決挙示の証拠を総合すれば、被告人車両の速度、被告人が自車を被害者に接触転倒させた点を含めて、原判示の事実はすべてこれを認めることができ、原判決に所論の事実誤認があるとは考えられない。 所論に鑑み、記録を調査し、更に所論指摘の諸点について、その当否を検討する。 一、 本件事故直前における被告人車両の速度について原判決挙示の証拠、特に司法巡査D作成の昭和四八年七月二一日付実況見分調書、新潟県警察技術吏員E作成の鑑定書(以下、単に実況見分調書、鑑定書という。いずれも原審弁護人において証拠とすることに同意している。)によれば、本件事故現場路上には、被告人車両の左右前輪によるスリツプ痕(スキツドマーク)二条(各約三・四メートル)、と左右の内外後輪によるスリツプ痕四条(各約二・四メートルないし約二・九メートル)が残つていたこと、前輪のスリツプ痕の長さと、乾燥したアスフアルト路面におけるタイヤと路面との摩擦係数(〇・六ないし〇・八)とから車速を換算すると、三二ないし二七キロメートル毎時となり、前後輪のスリツプ痕全六条の開始点、終了点の決定上の誤差等を考慮し、測定値の許容誤差 けるタイヤと路面との摩擦係数(〇・六ないし〇・八)とから車速を換算すると、三二ないし二七キロメートル毎時となり、前後輪のスリツプ痕全六条の開始点、終了点の決定上の誤差等を考慮し、測定値の許容誤差をプラス、マイナス〇・三メートルとし、全スリツプ痕の長さの総和を走行タイヤ数で割つた値に基いて、前同様の方法で車速を換算すると、一八・三ないし二五・一キロメートル毎時となることが認められる。なお弁護人は当審弁論において、本件当時は盛夏で路面のアスフアルトは常温下より平滑になり、スリツプ痕が長く印象される状況にあつたというのであるが、当審における事実取調の結果によれば、摩擦係数が季節による路面温度により変化することは認められるが、右鑑定の基礎となつた摩擦係数を特に修正しなければならない特段の事情は見当らない。 所論は、右鑑定書について、(1)鑑定の対象となつた問題のスリツプ痕が、被告人車両によるスリツプ痕であるとの証拠はなく、(2)鑑定の方法はスリツプ痕の長さを、現場写真から推定しているが、これでは、センチメートル単位の測定は不可能である、(3)鑑定書は、事故車両を「F型(F)と認定しているが、G株式会社において、右の様な型式の貨物自動車を製造、販売した事実はないから、右鑑定書の証明力は極めて弱く、事実認定の基礎とすることはできないというのであるが、前記各証拠によれば、(1) 問題のスリツプ痕のうち前輪の分二条は、本件事故直後行われた司法巡査Dの実況見分に被告人も立会つて、右二条のスリツプ痕が被告人車両のものであることを確認しており、右スリツプ痕はその場で測定され、前記実況見分調書にその旨記載されていること、後輪の分四条については右実況見分調書にその記載はない(もつとも右実況見分の際には、その存在につき確認はされていた)が、その際撮影したス の場で測定され、前記実況見分調書にその旨記載されていること、後輪の分四条については右実況見分調書にその記載はない(もつとも右実況見分の際には、その存在につき確認はされていた)が、その際撮影したステレオカメラによる現場写真を拡大すると、右スリツプ痕四条が明認できるところ、被告人は本件の審理を通じ一貫して、本件事故現場には、前輪のスリツプ痕と共に、後輪のスリツプ痕も残つていたことを認めており、特に差戻前の原審第四回公判廷において、右現場拡大写真を示され、そこに明認できるスリツプ痕四条は被告人車両の後輪によるものに間違いない旨供述していることが認められるから、鑑定の対象となつたスリツプ痕はすべて被告人車両によるものであることは明らかである。 (2) 次に問題のスリツプ痕のうち後輪の分四条の長さの鑑定が右現場拡大写真からの推定によるものであることは所論のとおりであるが、右鑑定書によれば、前記現場拡大写真を検討すると、直線道路両側及びスリツプ痕に接着してゼブラ状の横断歩道も同時にうつつているので、これらを利用し、各スリツプ痕の開始点、終了点を横断歩道の線上に移動し道路巾を基にして線長比を算出し、各スリツプ痕の長さを決定したというのであつて、右鑑定の方法につき、特に疑念をさしはさむ余地はなく、又前記のごとき測定値の許容誤差(プラス・マイナス〇・三メートル)を考慮していることをも併せ考えると、所論のごとく、センチメートル単位の測定は右鑑定の方法では不可能であるとか、或は鑑定の数値が著しく不正確であるとか論難することは当を得ないものといわねばならない。 (3) 右鑑定書及び当審における事実取調の結果によれば、車両の型式につき所論指摘のような事実が認められ、したがつて、右鑑定書中本件事故車両の型式の判定については、誤記ないし誤解があつたのではないか (3) 右鑑定書及び当審における事実取調の結果によれば、車両の型式につき所論指摘のような事実が認められ、したがつて、右鑑定書中本件事故車両の型式の判定については、誤記ないし誤解があつたのではないかと思われるが、右鑑定書を仔細に検討すると、右車両の型式は、問題のスリツプ痕が被告人車両のものであるかどうかの判定の一資料として考慮されたにすぎず、右スリツプ痕が被告人車両のものであることが他の証拠により明認できる本件では、右の事実があるからといつて右鑑定書の証明力が左右されるものとは到底考えられない。 所論はまた、前記実況見分調書には後輪のスリツプ痕、横断歩道の巾、被害者の転倒位置等の記載がなく、又車両の型式に誤記又は誤認があること等を理由としてその証明力を争うのであるが、かかる事実をもつて直ちに、前記実況見分調書のその余の記載部分までがその証明力を失うものとは認められない。 なお、所論は、被告人車両に同乗していたCの検察官に対する供述調書中、被告人車両の右折進行中の速度に関する供述部分は証明力に乏しい旨主張するが、原判決挙示のその余の証拠と対比し右供述調書の証明力に欠けるところがあるとは考えられず、これと右鑑定書および実況見分調書、被告人の司法巡査に対する昭和四八年七月一七日付供述調書中の、事故当時の自車の速度は時速約一五キロメートル位であつた旨の供述等を総合すれば、本件事故直前の被告人車両の速度は時速約一八・三キロメートルないし二〇キロメートルであると認めるのが相当であり、原審証人Aの、被告人車両はそれほど速度を出していなかつたと思う旨の供述も右の認定を妨げるものとは認められない。 二、 被告人車両前部が被害者Aに接触したかどうかについて原判決挙示の証拠、特にA(旧姓B)に対する証人尋問調書、医師H作成の診断書、原審第五回公判廷にお の認定を妨げるものとは認められない。 二、 被告人車両前部が被害者Aに接触したかどうかについて原判決挙示の証拠、特にA(旧姓B)に対する証人尋問調書、医師H作成の診断書、原審第五回公判廷における証人Hの供述によれば、被告人が原判示交差点を時速約一八キロ余で右折進行中、原判示のとおり前方の横断歩道を左から右に横断歩行中の被害者Aを至近距離に接近してはじめて発見し、急制動措置を講じたが間に合わず、右横断歩道の左端から約二・四メートルの歩道上で自車前部を同人の右肘又は右腰部附近に接触させて、同人を路上に転倒させたことを優に認めることができ、このことは、被告人車両の前輪スリツプ痕が右接触地点の直前までつづいていること、被害者A(当二二年)は原判示のごとく脳振盪、後頭部皮下血腫のほか腰臀部、右肘関節部打撲傷の傷害をうけ、路上に転倒直後一時的に意識を喪失しており、シヨツクが非常に大きかつたと思われることなどからみても、明認できるのである。 所論は要するに、被害者Aの原審における証言は車と接触した部位について極めて不明瞭で信用できないし、又人と自動車とが接触又は衝突する場合、特段の事情がない限りバンパーが接触する筈であるが、被告人車両の前面のバンパーの高さからみて、成人の女子の肘又は腰に接触するとは考えられないというのであるが、Aの前記証言を検討すると、所論のとおり質問者の質問に応じて接触部位に関する供述がしばしば変転しており、腰、右肘、頭のいずれであるか極めてあいまいであることが認められるが、前示のように同人が本件事故による受傷直後、一時意識を喪失していることを考慮すると、この点に関する記憶が鮮明ではないとも考えられ、また同人は本件事故直前、横断歩道上を横断歩行中であつたものであるから、被告人車両との接触時の姿勢如何によつて、必ずしも同車 失していることを考慮すると、この点に関する記憶が鮮明ではないとも考えられ、また同人は本件事故直前、横断歩道上を横断歩行中であつたものであるから、被告人車両との接触時の姿勢如何によつて、必ずしも同車両前面のバンパーに接触する筈であるとはいえないから、同人の接触部位に関する供述があいまいな点、ならびに被告人車両のバンパーおよび被害者の身長等のみによつて、接触の事実自体を否定する理由とはなし難いといわねばならない。 被告人の検察官事務取扱検察事務官に対する供述調書、被告人の差戻前の第一審および原審公判廷における供述中、以上の認定に反する部分は、前記各証拠と対比し信用することができず、その他記録を精査し、当審における事実取調の結果によつても、以上の認定を履すに足りる証拠は存しない。 したがつて原判決には所論指摘のごとき事実の誤認はないから論旨は理由がない。 控訴趣意第二(法令適用の誤り)について所論は、原判決は主文において、被告人を罰金三万五、〇〇〇円に処するとともに、右罰金を完納することができないときは、金一、〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置するものとしているが、右判決主文を、本件差戻前の第一審判決主文(「被告人を罰金四万円に処する。右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する」)と比較すると、労役場留置の部分に関する限り、差戻前の第一審判決より重い刑を言い渡したものであるから、刑事訴訟法四〇二条にいう不利益変更禁止の原則に違反しており、原判決には判決に影響を及ぼすこと明らかな法令違反があるというのである。 <要旨第一>所論の当否につき検討するに先立ち、まず、被告人が控訴し(または被告人のため控訴し)た事件が、控訴</要旨第一>審における審理の結果、原判決破棄の かな法令違反があるというのである。 <要旨第一>所論の当否につき検討するに先立ち、まず、被告人が控訴し(または被告人のため控訴し)た事件が、控訴</要旨第一>審における審理の結果、原判決破棄のうえ原裁判所に差し戻された場合、原裁判所は、その破棄された原判決との関係において、不利益変更禁止の制限をうけるかどうかについては、現行刑事訴訟法に直接的な明文の規定を欠いているので問題があるが、同法四〇二条は、被告人が控訴し、又は被告人のために控訴をした事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない旨を規定しており、このいわゆる不利益変更禁止の原則は、被告人側のした上訴の結果、却つて被告人に不利益な結果を来たすようなことがあつては、被告人側の上訴権の行使を躊躇させるおそれがあることを慮つて採用されているものと解すべきところ、もし差戻後の原裁判所は、その破棄された原判決との関係で右不利益変更禁止の制限をうけないとすると、被告人側は原判決に対し、有利な変更を求めて控訴申立をし、控訴審もまた被告人の利益のために原判決を破棄して原裁判所に差戻したにも拘らず、却つて原裁判所における再度の審理(同一公訴事実に関する限り、訴因の変更の有無を問わない)のために不利益な処断を甘受しなければならない結果となり、被告人は控訴申立にあたり、常にこの危険を覚悟しなければならないこととなる。かくては同条が被告人のため不利益変更禁止の原則を規定した根本精神に反するのみでなく、控訴審が原判決を破棄して自判する場合には右法条により不利益変更禁止の制限をうけることとの間に納得しがたい不権衡を来たすことになるから、以上のような理由で、差戻後の原裁判所もまた同条の規定の精神に徴し、その破棄された原判決との関係においても不利益変更禁止の原則に従うべきものと解するのが相当 得しがたい不権衡を来たすことになるから、以上のような理由で、差戻後の原裁判所もまた同条の規定の精神に徴し、その破棄された原判決との関係においても不利益変更禁止の原則に従うべきものと解するのが相当である(旧刑事訴訟法に関する最高裁判所昭和二六年(れ)第三二〇号、同二七年一二月二四日大法廷判決、刑集六巻一一号一三六三頁参照)。 <要旨第二>そこで、記録を調査し検討すると、本件が差戻前の第一審判決に対し、被告人よりこれを不服として控訴の</要旨第二>申立がなされ(控訴趣意は事実誤認、法令違反、量刑不当)、控訴裁判所である当裁判所において右判決を破棄して、原裁判所に差戻した(破棄理由は理由のくいちがいによる職権破棄)ものであることは前認定のとおりであり、右差戻前後における第一審判決の言い渡した各罰金刑の額を対比すると、差戻後の第一審判決(原判決)は、差戻前のそれと比べて罰金額を四万円より三万五、〇〇〇円に減じてはいるが、罰金不完納の場合の換刑率を、一日当り金二、〇〇〇円から金一、〇〇〇円に減じたため、換刑処分としての労役場留置期間は逆に二〇日から三五日に延長された結果となつていることが認められる。そこてそのいずれが重いかの問題について考察することとなるが、刑の軽重を比較するにあたつては、これを形式的にのみ判断することなく、綜合的考察の下に実質的、具体的になすべきものであつて、罰金刑の場合においても、その罰金額の多寡の点のみを見て判断すべきではなく、これと共に、その不完納の場合における換刑処分としての労役場留置期間の長短の点をも総合して実質的に判断すべきものであるといわねばならない(最高裁判所昭和三一年(あ)第四二四七号、同三三年九月三〇日第三小法廷判決、刑集一二巻一三号三一九〇頁参照)。これを本件についてみるに、前記のとおり差戻後の第一審 べきものであるといわねばならない(最高裁判所昭和三一年(あ)第四二四七号、同三三年九月三〇日第三小法廷判決、刑集一二巻一三号三一九〇頁参照)。これを本件についてみるに、前記のとおり差戻後の第一審判決(原判決)は差戻前の第一審判決より罰金額の点で金五、〇〇〇円(一割三分弱)を減じているが、労役場留置期間の点で一五日(七割五分)延長していることは計算上明らかであり、両判決の罰金刑を総合的実質的に考察して比較すると、差戻後の第一審判決(原判決)の方が重くなつているといわねばならない。してみると原判決は刑事訴訟法四〇二条の規定の趣旨に違反しており、この違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。 そこで控訴趣意第三(量刑不当)に対する判断は、後に破棄自判する際に自ら示されるので、これを省略し、刑事訴訟法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条但書により当裁判所において更に次のとおり自ら判決する。 原判決が確定した事実に、原判決が適用した法令を適用し、所定刑中罰金刑を選択し、その所定罰金額の範囲内において処断すべきところ、記録を調査し、当審における事実取調の結果をも加えて犯情について検討すると、本件は被告人が大型貨物自動車を運転し、原判示交差点を右折進行するに際し、前方左右を注視して進行すべき、自動車運転者としての基本的注意義務を怠り、漫然進行したため、信号機に従つて横断歩道を左方から右方に横断歩行中の被害者Aに自車を接触させ、同女を路上に転倒させたもので、被害者の蒙つた傷害の程度も、接触のシヨツクによる一時的な意識喪失を伴うもので、軽傷とはいい難いこと等を合わせ考慮すると、被告人の本件刑事責任はこれを軽視することはできないが、被害者Aの横断の仕方にもやや軽卒と思われるふし 、接触のシヨツクによる一時的な意識喪失を伴うもので、軽傷とはいい難いこと等を合わせ考慮すると、被告人の本件刑事責任はこれを軽視することはできないが、被害者Aの横断の仕方にもやや軽卒と思われるふしが窺われること、被害者との間に円満に示談が成立していること、被告人には過去、交通事犯を含めて特段の前科なく、妻子を養つて真面目にトラツクの運転手をして働いていること、その他被告人の健康状態等、弁護人指摘の諸事情をも考慮したうえ、前記金額の範囲内で被告人を罰金三万四、〇〇〇円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法一八条に則り金二、〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置し、原審及び当審における訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人に負担させないこととして、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官綿引紳郎裁判官石橋浩二裁判官藤野豊)
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