令和4(行ヒ)373 法人税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年7月18日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所 令和4(行コ)36
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判決文本文5,716 文字)

- 1 - 主文 原判決を破棄する。 被上告人の控訴を棄却する。 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 理由 上告代理人小原一人ほかの上告受理申立て理由について 1 連結法人である被上告人は、平成28年4月1日から平成29年3月31日までの連結事業年度及び課税事業年度(以下、これらを併せて「本件事業年度」という。)に係る法人税及び地方法人税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、被上告人がその株式の全てを間接保有する外国法人であるNissanGlobalReinsurance, Ltd.(以下「NGRE」という。)の個別課税対象金額に相当する金額が、租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「措置法」という。)68条の90第1項の規定によって、被上告人の本件事業年度の連結所得の金額の計算上、益金の額に算入されるなどとして、上記法人税等の各増額再更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けた。 本件は、被上告人が、上告人を相手に、上記各処分のうち被上告人が主張する金額を超える部分(以下「本件各処分」という。)の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定めは、次のとおりである。 措置法68条の90第1項は、同項各号に掲げる連結法人に係る特定外国子会社等(以下、単に「特定外国子会社等」という。)が各事業年度において適用対象金令和4年(行ヒ)第373号法人税更正処分等取消請求事件令和6年7月18日第一小法廷判決(処分行政庁の表示)上告人国処分行政庁神奈川税務署長 A- 2 -額を有する場合には、その適用対象金額のうち個別課税対象金額 7月18日第一小法廷判決(処分行政庁の表示)上告人国処分行政庁神奈川税務署長 A- 2 -額を有する場合には、その適用対象金額のうち個別課税対象金額に相当する金額は、その連結法人の収益の額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含むその連結法人の各連結事業年度における連結所得の金額の計算上、益金の額に算入する旨を規定する。同条3項1号は、特定外国子会社等が、同項柱書き所定のものである場合であって、各事業年度においてその行う主たる事業である保険業を主として同号所定の者(以下「関連者」という。)以外の者との間で行っている場合として政令で定める場合に該当するときは、当該特定外国子会社等の当該事業年度に係る適用対象金額については、同条1項の規定は適用しない旨を規定する(以下、上記の「政令で定める場合に該当するとき」という要件を「非関連者基準」という。)。 上記の「政令で定める場合」につき、租税特別措置法施行令(平成28年政令第159号による改正前のもの。以下「施行令」という。)39条の117第8項5号は、当該各事業年度の収入保険料の合計額のうちに当該収入保険料で関連者以外の者から収入するもの(当該収入保険料が再保険に係るものである場合には、関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料に限る。)の合計額の占める割合が100分の50を超える場合とする旨を規定する(以下、同号の括弧書きを「本件括弧書き」という。)。 3 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 ア被上告人は、自動車の製造、売買等を目的とする連結法人である。 イ NGREは、バーミューダ諸島において設立された保険業を主たる事業とする外国 に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 ア被上告人は、自動車の製造、売買等を目的とする連結法人である。 イ NGREは、バーミューダ諸島において設立された保険業を主たる事業とする外国法人であり、本件事業年度における被上告人に係る特定外国子会社等に当たる。 ウ NRFinanceMexico, S.A. deC.V. SOFOMER(以下「NRFM」という。)は、メキシコ合衆国に所在する金融業を営む外国法人であり、平成27年4月1日から平成28年3月31日までのNGREの事業年度(以下「本件NGRE事業年- 3 -度」という。)におけるNGREに係る関連者に当たる。 エ AssurantVidaMexico, S.A.(以下「AVM」という。)は、メキシコ合衆国に所在する保険業を営む外国法人であり、本件NGRE事業年度におけるNGREに係る関連者には当たらない。 NRFMは、被上告人の企業グループが製造する自動車を割賦で購入する顧客(以下「本件各顧客」という。)との間で、購入資金を貸し付けることを内容とする契約(以下「本件クレジット契約」といい、本件クレジット契約に基づく貸金債権を「本件クレジット債権」という。)を締結していた。 本件クレジット契約には、次のような定めがあった。 ア本件各顧客は、NRFMを最優先の受益者として指定して、本件クレジット債権の未償還残高等を保障する生命保険及び本件クレジット債権の月額賦払金の少なくとも6か月分を保障する失業等に係る保険を内容とする保険契約を締結しなければならない。 イ本件各顧客が上記アの保険契約を締結しない場合は、NRFMは、所定の保険契約を締結し、これに本件各顧客を加入させることができ、本件各顧客は、上記保険契約に係る費用を支払わなければならない。 イ本件各顧客が上記アの保険契約を締結しない場合は、NRFMは、所定の保険契約を締結し、これに本件各顧客を加入させることができ、本件各顧客は、上記保険契約に係る費用を支払わなければならない。 NRFMは、AVMとの間で、保険期間を平成26年8月6日から平成27年8月5日までとする保険契約を締結し、その後、同一の内容で保険期間を同月6日から平成28年8月5日までとする保険契約を締結した(以下、これらの契約を併せて「本件元受保険契約」という。)。NRFMは、本件各顧客が上記アの保険契約を締結しない場合、本件各顧客を本件元受保険契約に加入させた上で、本件各顧客から本件元受保険契約の保険料に相当する金額を徴収し、保険料をAVMに支払っていた。 本件元受保険契約には、次のような定めがあった。 ア NRFMを優先受益者に指定し、この指定は取り消すことができない。 イ本件各顧客の死亡及び恒久的な全身の障害が発生した場合、AVMは、所定- 4 -の限度額を上限として、本件クレジット債権の未償還残高を優先受益者(NRFM)に支払う。 本件各顧客の失業及び一時的な全身の障害が発生した場合、AVMは、所定の限度額を上限として、本件クレジット債権の月額賦払金6か月分を優先受益者(NRFM)に支払う。 ウ保険料は、本件クレジット債権の期首残高1000メキシコ・ペソ当たり月額0.96メキシコ・ペソである。 AVMとNGREは、契約期間を平成26年7月1日から5年間とし、AVMが本件元受保険契約において引き受ける全保険リスクの70%をNGREに対して再保険に付し、NGREがこれを引き受けることを内容とする再保険契約(以下「本件再保険契約」という。)を締結した。 本件NGRE事業年度におけるNGREの収入保険料の総額は5億2521万4976 再保険に付し、NGREがこれを引き受けることを内容とする再保険契約(以下「本件再保険契約」という。)を締結した。 本件NGRE事業年度におけるNGREの収入保険料の総額は5億2521万4976米ドル(①)であったところ、そのうち関連者以外の者(AVMを除く。)から受領した収入保険料は2億5318万3120米ドル(②)であり、AVMから受領した本件再保険契約に係る収入保険料は1149万3075米ドル(③)であった。②の金額は①の金額の100分の50を超えないが、②の金額に③の金額を加えた額は、①の金額の100分の50を超える。 処分行政庁は、被上告人に対し、令和2年7月31日、本件再保険契約に係る収入保険料は、NGREに係る関連者に当たるNRFMの資産を「保険の目的」とする保険に係るものであって本件括弧書きの要件を満たさず、施行令39条の117第8項5号にいう「関連者以外の者から収入するもの」に該当しないために、同号にいう割合が100分の50を超えないこととなる結果、NGREは本件NGRE事業年度において非関連者基準を満たさないなどとして、措置法68条の90第1項の規定を適用し、前記各増額再更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。 4 原審は、上記事実関係等の下において、要旨次のとおり判断し、本件各処分- 5 -は違法であるとして被上告人の請求を認容した。 本件括弧書きにいう「資産」や「損害賠償責任」は例示にすぎず、「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」とは、関連者以外の者の資産等に対する保険危険を担保する保険をいうものと解するのが相当である。本件元受保険契約は本件各顧客の生命、身体等に対する保険危険を担保する保険契約であるから、本件再保険契約に係る収入保険料は、本件 資産等に対する保険危険を担保する保険をいうものと解するのが相当である。本件元受保険契約は本件各顧客の生命、身体等に対する保険危険を担保する保険契約であるから、本件再保険契約に係る収入保険料は、本件括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に当たるものとして施行令39条の117第8項5号にいう「関連者以外の者から収入するもの」に該当し、同号にいう割合が100分の50を超えることとなる結果、NGREは本件NGRE事業年度において非関連者基準を満たすので、措置法68条の90第1項の適用は除外される。 5 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 施行令39条の117第8項5号は、措置法68条の90第1項の規定の適用が除外される場合の要件の一つである非関連者基準を、主として保険業を行う特定外国子会社等について具体化するものである。そして、本件括弧書きは、特定外国子会社等が関連者との間の保険取引に関連者以外の者を介在させた場合の収入保険料の取扱いを明確にし、上記の者を形式的に介在させることによって非関連者基準を充足させ、同項の適用が除外されることとなるのを防ぐ趣旨に出たものと解される。 このような本件括弧書きの趣旨に加えて、通常、保険に加入する者は、保険金の支払を受けることによって経済的不利益の保障、填補を受けることを目的として、保険料を負担して保険契約を締結するものと考えられることを踏まえると、本件括弧書きは、特定外国子会社等が保険者として再保険取引を行うに際し、当該再保険取引が関連者以外の者の資産又は損害賠償責任に係る経済的不利益を担保しようと- 6 -するものである場合に限り、当該特定外国子会社等が当該再保険取 等が保険者として再保険取引を行うに際し、当該再保険取引が関連者以外の者の資産又は損害賠償責任に係る経済的不利益を担保しようと- 6 -するものである場合に限り、当該特定外国子会社等が当該再保険取引から得る収入保険料は関連者以外の者から収入するものとして扱うこととしたものと解される。 したがって、本件括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」とは、関連者以外の者の資産又は損害賠償責任に係る経済的不利益を担保する保険をいうものと解すべきである。 これを本件についてみるに、前記事実関係等によれば、NRFMは、本件クレジット契約を締結した本件各顧客が所定の保険契約を締結しない場合には、本件元受保険契約に本件各顧客を加入させ、本件各顧客から、本件クレジット債権の残高に応じて定められる本件元受保険契約の保険料に相当する金額を徴収して保険料をAVMに支払っており、また、本件元受保険契約においては、NRFMが優先受益者に指定され、この指定は取り消すことができないこととされるとともに、本件各顧客の死亡等又は失業等の保険事故が生じた場合には、それぞれ、所定の限度額を上限として、本件クレジット債権の未償還残高又は月額賦払金6か月分に相当する保険給付を受けることとされていたというのである。 上記のような本件元受保険契約の実質に照らせば、本件再保険契約に係る保険は、本件NGRE事業年度におけるNGREに係る関連者に当たるNRFMが有する資産である本件クレジット債権に係る経済的不利益を担保するものであるということができる。したがって、上記保険は、本件括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」には当たらないから、NGREは本件NGRE事業年 うことができる。したがって、上記保険は、本件括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」には当たらないから、NGREは本件NGRE事業年度において非関連者基準を満たさず、措置法68条の90第1項の適用が除外されることとはならない。 6 以上によれば、原審の上記判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、前記事実関係等の下においては、本件各処分にその他の違法事由も見当たらず、本件各処分は適法であるというべきである。そうすると、被上告人の請求は理由がないから、これを棄却した第1審判決は正当であって、被上告人の控訴は棄却すべきである。 - 7 -よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官岡正晶裁判官深山卓也裁判官安浪亮介裁判官堺徹裁判官宮川美津子)

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