平成27(ネ)10128 損害賠償請求控訴事件,損害賠償請求反訴控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成28年7月20日 知的財産高等裁判所 2部 判決 原判決変更 東京地方裁判所 平成25(ワ)30386
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判決文本文16,589 文字)

- 1 -平成28年7月20日判決言渡平成27年(ネ)第10128号損害賠償等請求控訴事件,損害賠償請求反訴控訴事件(原審・(本訴)東京地方裁判所平成25年(ワ)第30386号,(反訴)同平成26年(ワ)第12202号)口頭弁論終結日平成28年5月23日判決 控訴人・被控訴人(本訴原告・反訴被告)株式会社染めQテクノロジィ(以下「原告」という。) 訴訟代理人弁護士宮下文夫 控訴人・被控訴人(本訴被告・反訴原告)Y(以下「被告」という。)訴訟代理人弁護士安田好弘 主文 1 原告の控訴により,原判決第1項及び第2項を次のとおり変更する。 (1) 被告は原告に対し,589万3450円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 原告のその余の本訴請求をいずれも棄却する。 - 2 - 2 被告の本件控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審及び本訴反訴を通じてこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,1項(1)に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 用語の略称及び略称の意味は,本判決で付するもののほか,原判決に従う。 第1 控訴の趣旨 1 原告(1) 原判決中原告敗訴部分を取り消す。 (2) 被告は,原告に対し,1302万2000円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割 第1 控訴の趣旨 1 原告(1) 原判決中原告敗訴部分を取り消す。 (2) 被告は,原告に対し,1302万2000円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被告は,原告の取引先その他の第三者に対し,原告の「タタミ染めQ」に塗料として欠陥があるとの内容を含む表現,又は原告を,欠陥商品を製造販売する無責任会社と評する内容を含む表現を告知又は流布してはならない。 (4) 被告は,原判決別紙送付先一覧の4社に対し,原判決別紙名誉信用回復措置目録の訂正謝罪文を本判決確定の日から10日以内に送付せよ。 2 被告(1) 原判決中被告敗訴部分を取り消す。 (2) 原告の本訴請求を棄却する。 (3) 原告は,被告に対し,696万8560円及びこれに対する平成26年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件の本訴は,原告が,原告の製品である本件製品には欠陥がないにもかかわらず,被告が同製品には欠陥があるなどとして苦情を申し立てるとともに,本件製品 - 3 -の販売店に対して本件製品及び原告自身について虚偽の内容を記載した書面を配布することにより,原告の名誉・信用を毀損し業務を妨害したことが,①主位的には不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項14号(平成27年法律第54号による改正前のもの。以下同じ。)所定の不正競争に該当する旨主張して,被告に対し,同法3条1項に基づき「本件製品には欠陥がある」又は「原告は無責任な会社である」旨の表現を行うことの差止め,同法14条に基づき,営業上の信用ないし名誉の回復措置として上記販売店への謝罪文の送付,並びに不競法4条に基づき,損害賠償金1760万円(慰謝料16 無責任な会社である」旨の表現を行うことの差止め,同法14条に基づき,営業上の信用ないし名誉の回復措置として上記販売店への謝罪文の送付,並びに不競法4条に基づき,損害賠償金1760万円(慰謝料1600万円,弁護士費用160万円,売上げ喪失等による損害950万5000円の合計2710万5000円の一部請求)及びこれに対する不正競争行為後の日である平成25年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,②予備的には民法上の不法行為に該当する旨主張して,被告に対し,同法723条に基づき,営業上の信用ないし名誉の回復措置として上記販売店への謝罪文の送付,並びに同法709条に基づき,損害賠償金1760万円(慰謝料1600万円,弁護士費用160万円,売上げ喪失等による損害950万5000円の合計2710万5000円の一部請求)及びこれに対する不法行為後の日である平成25年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 本件の反訴は,被告が,①自らが購入した本件製品には欠陥があり,同製品を用いても宣伝内容に反し畳が適切に染まらなかった上,その後も,原告が,②本件製品の剥離について不適切な方法を教示し,③被告による正当な苦情申入れに対して法的措置を検討中であるなどと脅し,④本訴という不当訴訟の提起に及んだところ,これらがいずれも被告に対する不法行為に該当する旨主張して,原告に対し,民法709条に基づき,損害賠償金696万8560円(精神的苦痛による損害500万円,実費等16万8560円,弁護士費用180万円の合計額)及びこれに対する不法行為後の日(反訴状送達の日の翌日)である平成26年5月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 弁護士費用180万円の合計額)及びこれに対する不法行為後の日(反訴状送達の日の翌日)である平成26年5月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 - 4 -原判決は,本訴請求のうち,不競法4条に基づく損害賠償金457万8000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で請求を認容し,その余の請求を棄却した。また,原判決は,反訴請求を全部棄却した。 原告及び被告双方が,控訴した。 原告は,当審において,本訴請求における損害金1760万円の内訳を,返品による損害139万3450円,販売中止による損害162万7622円,新商品取扱い保留による逸失利益797万8928円(1663万円の一部請求),無形損害500万円及び弁護士費用160万円と訂正した。 1 前提事実等原判決の「事実及び理由」欄の第2,2に記載のとおりである。 2 争点本件の争点は,原判決の「事実及び理由」欄の第2,3に記載のとおりである。 3 当事者の主張当事者の主張は,以下に,(1)争点(5)に関する原告の主張の変更及び被告の反論,(2)当審における被告の補充主張及び原告の反論,並びに,(3)当審における原告の補充主張及び被告の反論を加えるほか,原判決の「事実及び理由」欄の第2,4(ただし,(4)を除く)に記載のとおりである。 (1) 争点(5)における原告の主張の変更及び被告の反論ア原告の主張の変更(ア) 被告の行為によって原告が被った損害額のうち,本訴請求に係る1663万円の内訳は,以下のとおりである。 ① 返品による損害合計 139万3450円ⅰ 返品による販売利益の喪失による損害 70万4926円ⅱ 返送料の損害 の内訳は,以下のとおりである。 ① 返品による損害合計 139万3450円ⅰ 返品による販売利益の喪失による損害 70万4926円ⅱ 返送料の損害 7万8000円ⅲ 返品による商品廃棄による損害 61万0524円② 販売中止による損害 162万7622円 - 5 -③ 新商品取扱い保留による逸失利益 797万8928円(1年間の売上推定額に基づく販売利益見込額1663万円の一部請求)④ 慰謝料 500万円⑤ 弁護士費用 160万円(イ) 返品による損害原告は,本件販売店に対し,返品された本件製品に対応する受領済販売代金をすみやかに返却し,返品された本件製品は廃棄した。したがって,原告は,返品された本件製品の販売機会を喪失して販売利益を失い,返品された本件製品の原価相当額を廃棄により失った。よって,原告は,返品された本件製品の販売代金相当額の損害を被った。また,着払いにより返品を受けたこともあり,着払送料相当額の損害を被った。 返品数量,販売代金相当額及び着払送料は以下のとおり,合計139万3450円である。 ① 株式会社LIXILビバ(以下「ビバホーム」という。)キャンペーン2本セット 343セット 74万0880円二代目1本セット 260セット 45万5780円単品 37本 6万7858円返品着払送料 7万8000円② ドイト株式会社(以下「ドイト」という。)キャンペーン2本セット 28セット 5万0932円(ウ) 販売中止による損害a 本件侵害行為により,ビバホーム,ドイト及び株式会社 ドイト株式会社(以下「ドイト」という。)キャンペーン2本セット 28セット 5万0932円(ウ) 販売中止による損害a 本件侵害行為により,ビバホーム,ドイト及び株式会社島忠(以下「島忠」という。)は,平成25年7月から本件製品の販売を中止して現在に至っている。本件訴訟の決着が平成30年6月と見込まれるので,その期間(5年間)に喪失した又は喪失が見込まれる売上利益が,本件侵害行為と相当因果関係の範囲にある損害である。 - 6 -b ビバホーム平成23年1月から平成25年6月までの2年半の売上げ実績が104万5546円であり,平均売上高利益率が51.6%であるから,売上喪失期間である5年間の売上喪失額は,107万9003円である。 (計算式)104万5546円×2×0.516≒107万9003円c ドイト及び島忠平成23年1月から平成25年6月までの2年半の売上げ実績がドイトが12万3692円,島忠が56万0372円であり,売上高利益率は40.1%であるから,売上喪失期間である5年間の売上喪失額は,合計54万8619円である。 (計算式)(12万3692円+56万0372円)×2×0.401≒54万8619円d よって,売上高喪失見込額は,162万7622円である。 (エ) 新商品の取扱い保留による損害原告は,平成23年5月ころから新商品である床塗料シリーズを,平成25年5月から新商品である防錆塗料シリーズを発売し始めた。しかし,ビバホームは,本件侵害行為に起因して,床塗料シリーズ及び防錆塗料シリーズの新商品販売取扱いを保留している。 ビバホームと同じく全国に販売網を広げているカインズホームでは,大型店の塗料売場に専用のゴンドラコーナー 件侵害行為に起因して,床塗料シリーズ及び防錆塗料シリーズの新商品販売取扱いを保留している。 ビバホームと同じく全国に販売網を広げているカインズホームでは,大型店の塗料売場に専用のゴンドラコーナーを設けて床塗料シリーズ全種類を一括展示し集中販売したところ,上記新商品は,発売初期に1店舗当たり平均35万円,その後のリピート取引で1店舗当たり月平均3万8655円売り上げている。ビバホームでもカインズホームと同等の売上げが見込まれるところ,ビバホームでは,40店舗で上記ゴンドラ方式による集中販売をして1400万円(35万円×40店舗),その後,少なくとも20店舗で1年間にわたりリピート取引をして927万円(3万8655円×20店舗×12か月≒927万円)の,合計2327万円の売上げが見込まれた。新商品の利益率は0.715を下回らないから,販売利益の見込額は, - 7 -1663万円(2327万円×0.715≒1663万円)である。 ビバホームにおいて,平成26年11月から新商品の取扱いを始めることができていれば,その販売利益は少なくとも1年間で1663万円を下回ることはないと見込まれ,この全額が本件侵害行為と相当因果関係のあるものである。 (オ) 無形損害と弁護士費用本件侵害行為による原告の無形損害は500万円を下回らず,弁護士費用は160万円が相当である。 イ被告の反論(ア) 原告は,その誇大広告によって,被告の期待を裏切り,結局,被告に損害を発生させたのであるから,原告において発生した損害は受忍限度の範囲内である。したがって,仮に被告の行為によって原告に損害を発生させたとしても,被告の賠償責任は認められるべきではない。 (イ) 本件販売店による本件製品の返品や,原告の製品の取扱停止は,被告の本件侵害行為がきっかけ て,仮に被告の行為によって原告に損害を発生させたとしても,被告の賠償責任は認められるべきではない。 (イ) 本件販売店による本件製品の返品や,原告の製品の取扱停止は,被告の本件侵害行為がきっかけとなったとしても,あくまでも本件販売店が独自に判断して行ったものであって,被告の本件侵害行為との間に相当因果関係はない。原告は,返品を拒否することができたはずである。ビバホームからの「タタミ染めQ」の返品は55個にとどまり,343個ではない。ユニディからは返品されていないし,島忠から返品されたとの証拠もない。また,取扱いの停止の証拠もない。 (ウ) 返品された本件製品は,「タタミ染めQの2代目」と名前とパッケージを変更して再出荷されているから,原告に損害はない。 (2) 当審における被告の補充主張及び原告の反論ア被告の補充主張(ア) 原告の不法行為についてa 本件製品は,もとの畳の表面をまだら模様の異様な青色に変色させる,畳としての用を破壊ないし減殺するものであって,有害商品である。原判決が,本件製品は,畳の機能を一定程度青い状態に回復させる機能を有すると認定したの - 8 -は,濃淡やまだらがない,畳としてあるべき色に反するものであって,事実誤認である。原告は,甲49~51の報告書及び写真を提出して,本件製品が欠陥商品ではないと主張するが,甲50の最後の写真はその1枚前の写真と比して色調は明るくまだら模様も見られないなど,前提となった実験が公正に行われたものではなく,信用できない。 b ナノテクノロジーとは,物体を10億分の1メートルの超微細な粒子にまで分解する技術のことをいう。物質をこのような超微細な粒子にまで分解することは極めて困難であって高度な技術と施設が必要であり,仮に ナノテクノロジーとは,物体を10億分の1メートルの超微細な粒子にまで分解する技術のことをいう。物質をこのような超微細な粒子にまで分解することは極めて困難であって高度な技術と施設が必要であり,仮に分解できたとしても,専ら空中に浮遊してしまい,これを溶剤に混ぜることは物理的に不可能である。もし,原告がナノテクノロジーを用いているなら,原告は,実用新案や特許を取得していなければならないし,ナノテクノロジーを用いるための設備や機材を持っていなければならない。第三者にその製造を委託しているのなら,それが明らかにされなければならない。本件製品がナノテクノロジーを用いているのであれば,検査証があるはずだが,それも明らかにされていない。 原告は,電子顕微鏡写真である甲73の1及び2をもって,本件製品の顔料粒子がナノサイズのものであると主張する。しかし,ナノサイズの物体は光学顕微鏡で見ることはできず,電子顕微鏡の写真には色がつかないはずであるところ,甲73の2は色がついているから,光学顕微鏡の写真である。 したがって,本件製品がナノテクノロジーによるものではないことは明白であって,本件製品は,そのパッケージで虚偽を表示した,標榜する効果を生ずるはずもない商品である。 c 原判決は,本件製品の広告が誇大広告であることを認めながら,不法行為になるものではないと認定した。しかし,「わぁ,まるで新品」「誰も塗ったとは気がつかない。」といった明らかに虚偽の表示をすることは不法行為である。 (イ) 競争関係の存否(不競法2条1項14号)について被告は,個人として行動したのであって会社として行動したものではないから, - 9 -不競法が適用されるべき余地はない。仮に,会社として行動したとしても,被告が代表者となっている会社は,現実に塗料の ,個人として行動したのであって会社として行動したものではないから, - 9 -不競法が適用されるべき余地はない。仮に,会社として行動したとしても,被告が代表者となっている会社は,現実に塗料の製造や販売を全く行っていないし,将来も行うことはないのであるから,不競法が適用されるべき余地はない。 イ原告の反論(ア) 原告の不法行為についてa 本件製品を用いた場合の畳の色に関する被告の評価は,独善的なものである。原判決は,諸事情を総合的に評価して客観的な欠陥の存在を否定したのである。 b 本件製品がナノテクノロジーによるものではないという被告の主張には,科学的合理的裏付けがない。 原告は,経営政策として,ナノテクノロジー商品である塗料シリーズについては,特許等を申請しないことにしている。原告は,製造工程において顔料粒子を自社でナノ粒子化する機械を使って微細化している。 現代の電子顕微鏡によれば,カラー画像を提供し得るのであって,甲73の2は,電子顕微鏡による写真である。 c 原判決は,本件製品の広告が誇大広告であることではなく,誇大で不適切な宣伝文言が存在することのみを認めたのであって,許容範囲を超えた違法なものと認めたのではない。 (イ) 競争関係の存否(不競法2条1項14号)について原判決が被告に不正競争の競争関係を肯定したのは,被告がアパート賃貸事業の外「アパート清掃,塗装,リフォーム」を行っており,原告も塗料販売の外「塗り替えリフォームや不動産関連事業」をも行っているからである。 (3) 当審における原告の補充主張及び被告の反論ア原告の補充主張ホームセンターなどの消費者と直結する販売店では,消費者の評価に極めて敏感であることは,本件販売店が本件商品の販売中止を決めるに 審における原告の補充主張及び被告の反論ア原告の補充主張ホームセンターなどの消費者と直結する販売店では,消費者の評価に極めて敏感であることは,本件販売店が本件商品の販売中止を決めるに当たり,商品に欠 - 10 -陥があるかないかという事実を確定することより現にクレームを付ける消費者がいること自体を重視し,「欠陥に白黒を付ける」前に即「販売中止」を決定していることからも明らかである。 また,被告は,原判決が明確に「不正競争行為」と認定しているにもかかわらずこれを全面的に争い,本訴及び反訴の敗訴部分全部について控訴をしており,本件侵害行為によって失われた原告の名誉と信用は原判決言渡以降も回復しておらず,本件販売店の販売中止も依然として継続されている。 さらに,本件謝罪文の送付は,被告自身が配布した本件申入書の分量と内容の激越さに比べ,量的にわずかA4サイズで1枚であり,内容も事実を伝え陳謝の意を示す簡素なものにすぎず,被告が行った侵害行為の違法性の極端な程度に照らして被告の権利を過度に制約して名誉を毀損するというものでもない。 したがって,販売中止による原告の損害と名誉信用の毀損状態をこれ以上拡大させないため,本件侵害行為の差止めと謝罪文送付を命ずるべきである。 イ被告の反論原判決が謝罪広告の請求を棄却したことに誤りはない。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,原告の不法行為は成立せず,被告の行為は不競法2条1項14号の不正競争に該当すると判断するが,被告の行為による原告の損害額は,589万3450円及びこれに対する不正競争の後の日である平成25年8月1日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金であると判断する。その理由は,以下のとおり,原判決を補正し,当審において原告が主張を 及びこれに対する不正競争の後の日である平成25年8月1日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金であると判断する。その理由は,以下のとおり,原判決を補正し,当審において原告が主張を変更した争点(5)(原告が被った損害額)及び当審における当事者の補充主張に対して判断するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3,1~3及び5に判示のとおりである。 1 原判決の補正(1) 原判決14頁26行目「本件製品は,」の次に,「平成19年ころ発売開始 - 11 -されたが(甲45),」を加える。 (2) 原判決19頁20行目の次に,改行して,「原告は,返品を受けた本件製品全部を廃棄処分した(甲91,92。枝番号の書証を含む。以下同じ。)。」を加える。 (3) 原判決19頁26行目の次に,改行して,「原告は,平成23年1月から平成25年6月までの間,本件製品を,ビバホームに対し104万5546円,ドイトに対し12万3692円,島忠に対し56万0372円売り上げた(甲54)。」を加える。 2 争点(5)(原告が被った損害額)について(1) 返品による損害についてア上記1に原判決「事実及び理由」欄の第3,3を引用して示したとおり,被告は,本件製品に真に欠陥があるか否かを正確に検証することもせず,本件販売店4社に対し,本件製品に欠陥がある等の虚偽の内容が記載された本件申入書を交付するなどして不競法2条1項14号所定の信用毀損行為を行ったものであるから,被告が上記行為を行うにつき,少なくとも過失があったものと認められ,被告は,原告に対し損害賠償責任を負う(同法4条本文)。 そして,上記1に原判決「事実及び理由」欄の第3,1(5)を引用して示したとおり,原告は,ビバホームから本件製品の合計134万2518円分(着払送料を含 告に対し損害賠償責任を負う(同法4条本文)。 そして,上記1に原判決「事実及び理由」欄の第3,1(5)を引用して示したとおり,原告は,ビバホームから本件製品の合計134万2518円分(着払送料を含む。)の返品を受け(「タタミ染めQ」の返品に関する74万0880円,「二代目」の返品に関する45万5780円,「単品」の返品に関する6万7858円,及び着払送料7万8000円の合計額),ドイトからも5万0932円分の返品を受け,これらを全量廃棄処分とした。 よって,返品額(着払送料を含む。)合計139万3450円が,原告の損害と認められる。 イこれに対して,被告は,本件製品の返品は,被告の本件侵害行為がきっかけとなったとしても,本件販売店が独自に判断して行ったものであるから,被告 - 12 -の本件侵害行為との間に相当因果関係はない,と主張する。 しかし,上記1で原判決「事実及び理由」欄第3,1(4)ウ及びエを引用して認定したとおり,被告は,ドイト板橋志村店に対して,同店で本件製品を販売していることへ苦情を申し立て,ビバホーム板橋前野町店に対して,本件製品を販売していることが問題であるなどと述べ,ビバホーム及びドイトに対して,本件申入書を交付するなどして,本件製品の販売を続けることは問題であると繰り返し述べたのである。本件製品の販売を続けることが問題であると述べることは,販売を中止すれば問題が解消されるという意味を含むから,被告が暗に本件製品の販売停止を求めたといえる。そして,ビバホーム及びドイトが,本件製品の販売を停止した場合に,既に購入した本件製品を,欠陥商品であるというクレームがついたことを理由に原告に対して返品することは,通常予見される範囲内のことである。したがって,ビバホーム及びドイトの本件製品の返品による原告の損害 に購入した本件製品を,欠陥商品であるというクレームがついたことを理由に原告に対して返品することは,通常予見される範囲内のことである。したがって,ビバホーム及びドイトの本件製品の返品による原告の損害は,被告の本件侵害行為と相当因果関係のあるものである。 被告の主張には,理由がない。 ウまた,被告は,原告は返品を拒否することができたはずである,と主張する。 しかし,上記イのとおり,欠陥商品であるというクレームがついた本件製品について,納品先であるビバホーム及びドイトから返品を求められた場合に,原告がこれを拒否することは,事実上困難であったと認められる。 被告の主張には,理由がない。 エさらに,被告は,①ビバホームからの「タタミ染めQ」の返品は55個にとどまる,②返品された商品は再出荷されているから,原告に損害はない,と主張する。 しかし,①ビバホームからの「タタミ染めQ」の返品は,343個であると認められる(甲41)。被告が根拠とする甲52は,ビバホームの桑野店,鹿沼店,新名取店及び岩槻店のみの分である。②返品された商品は,上記1(2)で原判決を補正し - 13 -て認定したとおり,原告が全量廃棄しており,再出荷した事実は認められない。 被告の主張には,理由がない。 (2) 販売中止による損害について原告は,本件侵害行為により,ビバホーム,ドイト及び島忠が平成25年7月から本件製品の販売を中止したから,同月から5年間にわたる,本件製品の販売が継続していれば得られたであろう利益が損害であるとして,合計162万7622円の支払を求める。 しかし,原告が主張する,販売中止がなければ実現した売上額は,過去2年半の売上実績と同額の売上げが継続することを前提として算出されているところ,本件製品は,例えばビバホームの個別の 支払を求める。 しかし,原告が主張する,販売中止がなければ実現した売上額は,過去2年半の売上実績と同額の売上げが継続することを前提として算出されているところ,本件製品は,例えばビバホームの個別の店舗では,平成23年又は同24年には本件製品を購入していたが同25年には全く購入しないといった例が相当数見受けられ(スーパービバホーム橿原店,スーパービバホーム岩槻店,スーパービバホーム埼玉大井店,スーパービバホーム小山店,スーパービバホーム新習志野店,スーパービバホーム水戸県庁前店,スーパービバホーム長久手店など。同25年に購入を開始した店舗は3店。),常に安定的に販売されてきた実績があったとは認められないから,同程度の需要が継続するとは認めるに足りない上,製品自体の陳腐化や競合製品の発売など,本件侵害行為以外の原因によって売上げが低下し又は販売中止となる可能性もある。したがって,販売中止後も過去と同等の売上げがあったと直ちに推認することはできない。 よって,継続した売上げを前提とする損害の支払を認めることはできない。 (3) 新商品の取扱い保留による損害原告は,ビバホームが,新商品である床塗料シリーズや防錆塗料シリーズを取り扱わないのは,本件侵害行為によるものであり,平成26年11月から1 年間に見込まれた上記新商品の販売利益見込額1663万円の損害を被ったと主張し,原告従業員の報告書(甲60)はこれに沿う。 しかし,仮に,ビバホームが上記新商品を取り扱わない理由が本件侵害行為にあ - 14 -るとしても,本件侵害行為は,本件製品が欠陥商品であるという被告の見解に基づくものであって,本件製品以外の原告の他の商品について評価をするものではないから,原告の新商品を全て取り扱わないとするビバホームの反応を予見することはできない。 陥商品であるという被告の見解に基づくものであって,本件製品以外の原告の他の商品について評価をするものではないから,原告の新商品を全て取り扱わないとするビバホームの反応を予見することはできない。 また,原告は,カインズホームの各店舗での売上げ実績を元にビバホーム40店舗で販売初期の導入売上げ35万円,その後20店舗で1か月当たり3万8655円のリピート取引が生じるとして損害額を算定する。 しかし,①算定根拠となったカインズホームの店舗数はわずか4店舗で,②販売初期の導入売上げとして集計されたものも,合計7か月分(各月には1店舗しか売上げがない。)にすぎないから(甲60の1),合理的な推計を行うためのデータが十分とはいえない。しかも,原告は,販売初期の導入売上げに基づいて,その後の1か月当たりのリピート取引の売上額を算定しているところ,仮にビバホームが原告の新商品を取り扱ったとしても,販売初期の導入売上げと同額のリピート取引が生じるものとは推認できない。 よって,ビバホームが原告の新商品を全て取り扱うこと及び原告の計算を前提とする損害の支払を認めることはできない。 (4) 無形損害既に認定した被告の本件販売店に対する行為態様(原告及び本件製品に対する誹謗中傷が記載された本件申入書の交付,苦情申立ての執拗さ等)に加え,上記1で原判決第3「事実及び理由」欄の第3,1(5)を引用して認定したとおり,被告の行為により本件販売店のうち2社から多額に上る本件製品の返品を受け,本件販売店のうち3社は本件製品の販売を中止していること,本件販売店のうち最大手であるビバホームは,原告の新商品についても販売停止としていること等の諸事情を考慮すると,原告が,被告の信用毀損行為により無形損害を被ったことが認められ,同損害額を400万円と評価するのが相当で 手であるビバホームは,原告の新商品についても販売停止としていること等の諸事情を考慮すると,原告が,被告の信用毀損行為により無形損害を被ったことが認められ,同損害額を400万円と評価するのが相当である。 (5) このほか,本件での事情を総合考慮し,弁護士費用としては50万円を認 - 15 -めるのが相当である。 (6) 以上のとおり,被告に対し,(1),(4)及び(5)の損害賠償金として合計589万3450円及びこれに対する不正競争の後の日である平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じるのが相当である。 (7) これに対して,被告は,原告が,誇大広告によって被告の期待を裏切り,被告に損害を発生させたから,原告において発生した損害は受忍限度内である,と主張する。 しかし,上記1で原判決「事実及び理由」欄の第3,2(1)イを引用して認定判断したとおり,本件製品のパッケージにおける宣伝文言が,許容範囲を超えた違法なものであるとは認められないから,原告に発生した損害が受忍限度内となるものではない。 被告の主張には,理由がない。 3 被告の補充主張に対する判断(1) 原告の不法行為についてア(ア) 被告は,本件製品は,もとの畳の表面をまだら模様の異様な青色に変色させる有害商品だから,原判決が,本件製品は,畳の機能を一定程度青い状態に回復させる機能を有すると認定したのは事実誤認である,と主張する。 しかし,まだら模様になるのは,塗り方(技術の巧拙)の問題であって,手際よく塗布すれば濃淡が生じるものではないと認められる(甲14,29)。また,青色が異様かどうかは主観的な印象の問題ともいえるし(塗布後の畳を撮影した甲50の15頁の写真は,見る者によっては,新品の畳に近いと感じること が生じるものではないと認められる(甲14,29)。また,青色が異様かどうかは主観的な印象の問題ともいえるし(塗布後の畳を撮影した甲50の15頁の写真は,見る者によっては,新品の畳に近いと感じることもあろうと思われる。),濃色エッセンスを用いない場合は濃い青色ではなく(乙1の11頁,写真3),簡単マニュアル(甲2の1)に,濃色エッセンスを用いるときは「色の濃さの最終判断はお客様のお好みで行ってください」とあるように,仮に異様な青色だと感じるのであれば,濃色エッセンスを用いるべきではないから,これをもって有害商品ないし欠陥商品ということはできない。被告が施工した場合には,濃い色に - 16 -染まったこともあると認められるが(甲4,乙7),上記1に原判決「事実及び理由」欄の第3,1(3)を引用して認定したとおり,被告は,6~8畳で1缶使用することが適当とされている本件製品を,6畳の畳に対し約3缶半用いて重ね塗りしたのだから,被告の施工の結果の畳の色を根拠に,本件製品が有害又は欠陥があるとはいえない。 また,畳業を営む有限会社の代表取締役であって,東京都畳商工連合会副会長であるAは,本件製品を用いた畳は,①色調は,天然藺草に比べて青色が強く,特に「濃色エッセンス」を用いると藺草の色とは別物で異物感が強い,色段は,まだらが目立ち,異様であり,違和感が強いから,リラックス効果を損ねる,②畳の吸湿性及び保湿性が失われる,並びに,③有害物質吸着性能及び抗菌効果が減殺されるから,本件製品により畳の機能が改善されることはなく,むしろ劣化させていると述べる(乙6)。しかし,本件製品を用いると畳本来の風合いは一定程度減殺されることがあるとしても,古い畳を新しく見せるために,畳表を替えるのではなく塗料を塗るという手法は,安価かつ入手が容易で専門知識が る(乙6)。しかし,本件製品を用いると畳本来の風合いは一定程度減殺されることがあるとしても,古い畳を新しく見せるために,畳表を替えるのではなく塗料を塗るという手法は,安価かつ入手が容易で専門知識が不要であることから,広く利用されているとされ(甲18の1),本件製品の施工の結果,若干ムラが生じるとしても,使用が困難なほどの色調状態に至るとは認められない(甲14,29,75)から,前記意見書をもって,本件製品が有害商品ないし欠陥商品であるとはいえない。 さらに,インターネット上の本件製品を使用した意見として,否定的なものがあることは認められる(乙8)ものの,匿名であって根拠のある意見とも認めるに足りない上,「マア,こんなものかと,割り切れる方は,一度お試しになっても良いかも。」という意見もある(乙8)から,かかる意見をもって,本件製品が有害商品ないし欠陥商品であるとはいえない。 被告の主張には,理由がない。 (イ) また,被告は,甲50の最後の写真(塗布の結果を示したもの)が,その1枚前の写真(塗布前のもの)と比して色調がむしろ明るいことを具体的根拠 - 17 -として,甲49~51の報告書及び写真の前提となった実験は公正に行われたものではない,と主張する。 しかし,甲50の最後の写真と,その1枚前の写真とは,背景となった床が同じ物であるのに,前者のほうが青みが強く写っていることから,両者の畳の色調の違いは写真全体の色調の違いに影響されたものと解され,これをもって実験が公正でないとはいえない。その他,上記実験が公正に行われたものではないことを推認させる事情はない。 被告の主張には,理由がない。 イ被告は,本件製品はナノテクノロジーを用いたものではないから,原告は虚偽の表示をした商品を販売したと主張し,その根拠として,① ことを推認させる事情はない。 被告の主張には,理由がない。 イ被告は,本件製品はナノテクノロジーを用いたものではないから,原告は虚偽の表示をした商品を販売したと主張し,その根拠として,①物質を超微細な粒子に分解するためには高度な技術と施設が必要であり,仮に分解できても溶剤に混ぜることは不可能である,②原告はナノテクノロジーを用いていることについて特許や実用新案を取得していない,③ナノテクノロジーを用いるための設備,機材ないし第三者への製造委託が明らかにされていない,④本件製品にナノテクノロジーを用いられたことの検査証があることが明らかにされていない,⑤原告が提出した甲73の2の写真は,色がついているから光学顕微鏡の写真であって,本件製品にナノテクノロジーを用いている根拠とはならない,と指摘する。 しかし,①ナノテクノロジーを用いるために高度な技術,施設が必要であることや,物質を分解できても溶剤に混ぜるのが不可能であることについて,客観的根拠も示されておらず,それを裏付ける証拠も提出されていない。また,②原告は,経営政策として,ナノテクノロジー商品である本件製品を含む塗料シリーズについて特許出願及び実用新案登録出願をしないと述べるから(証人B6,7頁),原告がナノテクノロジーに関して特許権や実用新案権を有していないことは,本件製品にナノテクノロジーを用いていないことの根拠とはならない。さらに,③原告は,自社の製造工程において顔料粒子をナノ粒子化していると認められ(証人B13頁),そのことに疑いをさしはさむ合理的根拠も認められないから,さらに,ナノテクノロ - 18 -ジーを用いるための設備,機材及び第三者への製造委託が必要とは認められない。 ④ナノテクノロジーを用いた製品に検査証が必要であることは立証されていないから,本 さらに,ナノテクノロ - 18 -ジーを用いるための設備,機材及び第三者への製造委託が必要とは認められない。 ④ナノテクノロジーを用いた製品に検査証が必要であることは立証されていないから,本件製品に当該検査証があると明らかにされていないことは,本件製品にナノテクノロジーを用いていないことの根拠とはならない。⑤現在の技術水準では,電子顕微鏡でカラー画像を得ることもできると認められる(甲93~102)から,原告提出の写真が信用性を欠くものではない。 被告の主張には,理由がない。 ウ被告は,原判決が本件製品の広告が誇大であることを認めながら,原告の広告が不法行為になるものではないと認定したのは不当である,と主張する。 しかし,上記1において原判決「事実及び理由」欄の第3,2(1)イを引用して認定判断したとおり,「まるで新品」「タタミの質感や風合いを全く変えない」などは,誇大で不適切な宣伝文言であるが,畳の張り替えに比べて本件製品を用いる場合には費用が大幅に安いこと,日用品等に関しては誇大な内容を含む広告が少なからず存在することからすれば,一般消費者は,パッケージの宣伝文言にかかわらず,本件製品の性能につき過度な期待を寄せるものではなく,文言どおりの効果が生じないこともある程度想定すると解されるから,本件製品のパッケージが許容範囲を超えた違法なものであるとは認められない。 被告の主張には,理由がない。 (2) 競争関係の存否(不競法2条1項14号)について被告は,個人として行動したのであって,会社として行動したのではないから,不競法が適用される余地はない,と主張する。 しかし,被告が個人として行動したことにより,競争関係が否定されるものではない。上記1に原判決「事実及び理由」欄の第3,1(1)及び3(2)を引用して 不競法が適用される余地はない,と主張する。 しかし,被告が個人として行動したことにより,競争関係が否定されるものではない。上記1に原判決「事実及び理由」欄の第3,1(1)及び3(2)を引用して認定したとおり,被告は個人としてアパート賃貸業,同アパートの清掃や塗装,リフォームを行っているから,塗装事業及びリフォーム事業を行う原告との間で,需要者又は取引者を共通にする可能性があり,競争関係が認められる。 - 19 -被告の主張には,理由がない。 4 原告の補充主張に対する判断原告は,被告が控訴をして原判決の「不正競争行為」であるとの認定を争い,原判決後も本件侵害行為によって失われた原告の名誉と信用は回復しておらず,また,本件謝罪文の送付は量的にも内容的にも被告の権利を過度に制約するものではないから,本件侵害行為の差止めと謝罪文送付を命ずるべきである,と主張する。 しかし,被告が,本件侵害行為後,同様の不正競争行為を行っているとは認めるに足りないから,差止めの必要性はない。 また,本判決において原判決の判断が是認されることにより,原告は,本件販売店との関係で自らの信用を回復できる余地があるものと解されるから,被告に対し謝罪文の送付まで命ずべき必要性があるとは認められない。 5 結論よって,原告の本訴請求は,被告に対し589万3540円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余を棄却することとし,原告の控訴により上記と異なる原判決を変更するとともに,被告の控訴は理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 るとともに,被告の控訴は理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水節 裁判官片岡早苗 裁判官古庄研

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