【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人を懲役六月に処する。 原審及び当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理 由 本件控訴の趣意は弁護人
主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役六月に処する。 原審及び当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 本件控訴の趣意は弁護人三宅厚三提出の控訴趣意書記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。 右控訴趣意第一点(事実誤認)についてしかし、原判決挙示の各証拠を総合すると、被告人は原判示のとおり原判示の紡毛糸入木箱六個を執行吏のため代理占有保管中、昭和二十八年一月十四日頃ほしいままに、A株式会社に右物件を代金十一万五千円にて売渡す契約をなし、翌十五日頃右物件を原判示のB株式会社C出張所から搬出して岐阜市a町b丁目c番地D株式会社E営業所にA株式会社名義で預け入れ、もつてこれを横領したことを優に認定でき、原判決には所論のような事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 職権調査職権をもつて調査するに、本件記録によると、原判決は本件公訴事実中横領の点については一個の主文をもつて有罪の言渡をなし、他の封印破棄の点については、その理由において、公訴時効が完成しているから免訴の言渡をなすべきであるが、右は横領の所為と一所為数法の関係にありとして起訴されたものと認めるから(当審においても右両所為は一所為数法の関係にありとして起訴されたものと認める)、特に主文において免訴(原判文に「無罪」とあるは「免訴」の誤記と認める)の言渡をなさない旨の判示をなしたところ被告人から有罪部分に対してのみ控訴の申立をなし、検察官からは控訴の申立のなかつたことが明らかである。 第一、 移審の効力<要旨第一>(一)、 第一審判決が一所為数法の関係にありとして起訴された一罪の一部につき有罪の言渡をなし、他の一部</要旨第一>については免訴すべきものとなした場合においては、二個の主文をもつてその言 旨第一>(一)、 第一審判決が一所為数法の関係にありとして起訴された一罪の一部につき有罪の言渡をなし、他の一部</要旨第一>については免訴すべきものとなした場合においては、二個の主文をもつてその言渡をなしたときは格別、一部につき一個の主文をもつて有罪の言渡をなし、その理由において、他の一部については本来免訴の言渡をなすべきものである旨を判示したときは、有罪部分に対してのみ控訴の申立があつた場合でも、控訴の申立のなかつた部分すなわち、第一審判決がその理由において判示した本来免訴の言渡をなすべきものである旨の部分をも含む公訴事実全部につき移審の効力を生ずるものと解する。けだし、科刑上一罪の一部に対する上訴はその性質上原則として許されない。従つて、その一部に対して上訴をなしたときは公訴事実全部につき当然移審の効力が及ぶものと解すべきてあるからである。 それゆえに、本件においては横領及び封印破棄の公訴事実全部につき移審の効力を生じたものといわなければならない。 (二)、 従つて、右の場合控訴裁判所はその裁量により、第一審判決がその理由において本来免訴の言渡をなすべきものである旨を判示した点に関しては、刑事訴訟法第三百九十二条第二項に従い職権で調査をすることができる。 (三)、 審理の結果、有罪部分及び職権調査部分のいずれにも破棄理由のないときは、控訴を棄却すべく、いずれかの部分に破棄理由のあるときは、原判決全部を破棄すべきであるが、有罪部分に対する控訴が検察官控訴の場合には、原判決の刑より重い刑を言渡すことを妨げないこと一般検察官控訴の場合と異ならないけれども、被告人控訴または被告人のための控訴(刑事訴訟法第三百五十三条第三百五十五条所掲の者のなした控訴)の場合には、同法第四百二条の不利益変更禁止の規定の適用があり、従つて、原判決の刑より ないけれども、被告人控訴または被告人のための控訴(刑事訴訟法第三百五十三条第三百五十五条所掲の者のなした控訴)の場合には、同法第四百二条の不利益変更禁止の規定の適用があり、従つて、原判決の刑より重い刑を言渡すことはできない。 そこで、本件においては当裁判所は、前記原判決が、その理由において封印破棄の公訴事実については本来免訴の言渡をなすべきものである旨を判示した点につき、職権で調査をなし、その点につき判断をなした上、前段説示に従い判決することとする。 第二、 想像上数罪の公訴時効<要旨第二>想像上数罪は本来実質上数罪ではあるが、刑法第五十四条第一項前段の規定により科刑上一罪として扱われ</要旨第二>るものであるから、想像上数罪の公訴時効は、その最も重きに従い処断すべき罪の刑によりその完成を認めるべきで、想像上数罪を構成する各犯罪行為の刑により各別にその完成を認めるべきではないと解するを相当とする。それゆえに、本件においてはその最も重き横領罪の刑によりその完成を認めるべきものであるところ、刑法第二百五十二条第一項の横領罪は五年以下の懲役にあたり、その公訴時効は刑事訴訟法第二百五十条第四号により五年の期間を経過することによつて完成する。従つて、原判決挙示の各証拠により認められる犯罪行為の終つた昭和二十八年一月十五日から、五年の期間を経過せざること算数上明らかな昭和三十一年七月十八日公訴提起(本件記録により認定できる)された、本件横領及び封印破棄の犯罪行為全体(後記破棄自判の「証拠の標目」において示した証拠によりこれを認定できる)につき未だその公訴時効の完成を認めることはできない。しかるに、原判決が前記のごとく、横領及び封印破棄の本件公訴事実中封印破棄の点については、その理由において、公訴時効が完成しているから、本来免訴の言渡をなす の公訴時効の完成を認めることはできない。しかるに、原判決が前記のごとく、横領及び封印破棄の本件公訴事実中封印破棄の点については、その理由において、公訴時効が完成しているから、本来免訴の言渡をなすべきものである旨を判示したのは、ひつきょう、想像上数罪の公訴時効は、想像上数罪を構成する各犯罪行為の刑により各別にその完成を認めるべきものであるとの解釈の下に右のごとく判示したものと解するの外なく、従つて、原判決は法令の適用を誤つたもので、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。 よつて弁護人の量刑不当の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条第一項第三百八十条により原判決を破棄し、同法第四百条但書に従い当審において更に判決する。 (罪となるべき事実)被告人は福井市d町e番地に本店を有するB株式会社に雇われ愛知県葉栗郡f町大字gh番地F方の同社C出張所長として勤務していたものであるが、昭和二十六年二月十四日名古屋地方裁判所執行吏Gが同裁判所一宮支部同年(ヨ)第五号債権者B、債務者H株式会社同I株式会社間の仮処分決定にもとづき、前記f町大字ij番地IJ支店K営業所倉庫において、債権者の権利実行保全のため、Iが占有保管するH所有のガラス紡糸入(実は紡毛糸SW1800)木箱六個(合計千二百八十四封度、当時の取引価額約百万円)について仮処分をなして各個に仮処分の標示を施し、Iの占有を解き同執行吏の占有に移した際、債権者B側の立会人となり、同執行吏からその代理占有保管方の委任を受け、更に同月二十七日右物件が保管替のため前記BC出張所に移されてからも引続き同執行吏の委任により代理占有保管中、同年三月二日同執行吏が右物件の点検を行つた際、各個に先に施した標示の外に封印を施したところ、それをも知 右物件が保管替のため前記BC出張所に移されてからも引続き同執行吏の委任により代理占有保管中、同年三月二日同執行吏が右物件の点検を行つた際、各個に先に施した標示の外に封印を施したところ、それをも知りながら、同二十八年一月十四日頃岐阜市k町l丁目m番地A株式会社において同社に右物件を代金十一万五千円で売渡す契約をなし、翌十五日右物件を貨物自動車で前記BC出張所から搬出して、岐阜市a町b丁目c番地D株式会社E営業所にA会社名義で預け入れ、もつて公務員の施した封印または差押の標示を無効ならしめると共に右物件を横領したものである。 (証拠の標目)当審証人G同L同M各尋問調書を追加する外、原判決挙示のとおりであるから、ここにこれを引用する。 (法令の適用)被告人の判示所為中封印破棄の点は刑法第九十六条罰金等臨時措置法第二条第三条に、横領の点ほ刑法第二百五十二条第一項に、各該当するところ、右は一個の行為にして二個の罪名に触れる場合であるから、同法第五十四条第一項前段第十条により重い横領罪の刑に従い、その所定刑期範囲内において被告人を懲役六月に処し、原審及び当審における訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文により被告人の負担とすることとし、主文のとおり判決する。 (裁判長判事影山正雄判事水島亀松判事木村直行)
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