平成23(行ウ)199 法人税更正処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年12月7日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文46,246 文字)

平成24年12月7日判決言渡平成23年(行ウ)第199号法人税更正処分取消等請求事件 主文 1 麹町税務署長が原告に対し平成21年8月7日付けでした平成19年4月1日から平成20年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち所得金額237億4082万2014円及び納付すべき法人税額44億3180万2900円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税額3億0561万3000円を超える部分を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求麹町税務署長が原告に対し平成21年8月7日付けでした平成19年4月1日から平成20年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち所得金額236億6968万2638円及び納付すべき法人税額44億1046万0900円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税額3億0347万8000円を超える部分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,アメリカ合衆国に本店を置き,日本国内に支店を有して保険業を営んでいた外国法人である原告が,平成19年4月1日から平成20年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)終了の時に保有する外貨建有価証券について,本件事業年度において外国為替の売買相場が著しく変動したとして,本件事業年度終了の時の外国為替の売買相場により円換算した金額とその時の帳簿価額との差額に相当する金額を損金の額に算入し,本件事業年度の法人税の確定申告を行ったところ,麹町税務署長が,原告が損金の額に算入した上記差額に相当する金額のうち一部の外貨建社債に係るものについては,その外国為替の変動に伴って生ずるおそれのある損失の額を減少させるためにデリバテ ろ,麹町税務署長が,原告が損金の額に算入した上記差額に相当する金額のうち一部の外貨建社債に係るものについては,その外国為替の変動に伴って生ずるおそれのある損失の額を減少させるためにデリバティブ取引が行われており,損金の額に算入されないなどとして,本件事業年度の法人税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)をしたことから,本件更正処分等の一部の取消しを求めた事案である。 1 関係法令等の定め(1) 外国法人の各事業年度の所得に対する法人税についてア法人税法(平成20年法律第23号による改正前のもの。以下「法」という。)4条2項は,外国法人は,法138条に規定する国内源泉所得を有するときは,法人税を納める義務がある旨定めている。 イ法141条1号は,国内に支店を有する外国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は,すべての国内源泉所得に係る所得の金額とする旨定めており,法142条は,外国法人の国内源泉所得に係る所得の金額は,原則として,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算を定めた法2編1章1節2款から10款までの規定に準じて計算した金額とする旨定めている。 (2) デリバティブ取引に係る損益相当額の処理についてア法61条の5第1項は,内国法人がデリバティブ取引(金利,通貨の価格,商品の価格その他の指標の数値としてあらかじめ当事者間で約定された数値と将来の一定の時期における現実の当該指標の数値との差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引又はこれに類似する取引であって,財務省令で定めるものをいう。)を行った場合において,当該デリバティブ取引のうち事業年度終了の時において決済さ の数値との差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引又はこれに類似する取引であって,財務省令で定めるものをいう。)を行った場合において,当該デリバティブ取引のうち事業年度終了の時において決済されていないもの(以下「未決済デリバティブ取引」という。)があるときは,その時において当該未決済デリバティブ取引を決済したものとみなして財務省令で定めたところにより算出した利益の額又は損失の額に相当する金額(以下「みなし決済損益額」という。)は,当該事業年度の所得の金額の計算上,益金の額又は損金の額に算入する旨定めている。 イ上記規定を受け,法人税法施行規則(平成20年財務省令第25号による改正前のもの。以下「施行規則」という。)27条の7第1項1号は,法61条の5第1項にいう「デリバティブ取引」には,金融商品取引法2条20項に規定するデリバティブ取引,すなわち,市場デリバティブ取引,店頭デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引が,これに当たる旨定めている。 また,施行規則27条の7第3項3号は,店頭デリバティブ取引のうち金融商品取引法2条22項3号に該当する取引(当事者の一方の意思表示により当事者間において金融商品の売買等を成立させることができる権利を相手方が当事者の一方に付与し,当事者の一方がこれに対して対価を支払うことを約する取引)に係る法61条の5第1項に規定するみなし決済損益額とは,当該取引につき,その取引に係る権利の行使により当事者間で授受することを約した金額,事業年度終了の時の当該権利の行使に係る指標の数値及び当該指標の予想される変動率を用いた合理的な方法により算出した金額をいう旨定めている。 (3) 繰延ヘッジ処理による損益額の繰延べについてア法61条の6第1項は,内国法人が,①資産若しくは負債(以下「 の予想される変動率を用いた合理的な方法により算出した金額をいう旨定めている。 (3) 繰延ヘッジ処理による損益額の繰延べについてア法61条の6第1項は,内国法人が,①資産若しくは負債(以下「ヘッジ対象資産」という。)の価額の変動(同項1号)又は資産の取得等に係る決済により受け取ることとなり若しくは支払うこととなる金銭(以下,ヘッジ対象資産と併せて「ヘッジ対象資産等」という。)の額の変動(同項2号)に伴って生ずるおそれのある損失の額(以下「ヘッジ対象資産等損失額」という。)を減少させるためにデリバティブ取引等を行った場合であって,②当該デリバティブ取引等が当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行ったものである旨その他財務省令で定める事項を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載した場合において(同項柱書き),③当該デリバティブ取引等を行った時から事業年度終了の時までの間において当該ヘッジ対象資産等の譲渡又は消滅等がなく(同項柱書き),④当該デリバティブ取引等が当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であると認められる場合として政令で定める場合に該当するとき(同項柱書き)は,当該デリバティブ取引等に係る利益額又は損失額(当該デリバティブ取引等の決済によって生じた損益額,法61条の4第1項に規定する有価証券の空売り等に係るみなし決済損益額,法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額及び法61条の9第2項に規定する外貨建資産等の期末換算差額をいい,以下,これらを併せて「デリバティブ取引等損益額」という。)のうち,ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効である部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額は,法61条の4第1項,法61条の5第1項及び法61条の9第2項の 損益額」という。)のうち,ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効である部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額は,法61条の4第1項,法61条の5第1項及び法61条の9第2項の規定にかかわらず,当該事業年度の所得の金額の計算上,益金の額又は損金の額に算入しない旨定めている(なお,このように,法61条の6第1項の規定により,デリバティブ取引等損益額を,当該事業年度の所得の金額の計算上,益金の額又は損金の額に算入せず,翌年度以降に繰り延べることを,「繰延ヘッジ処理」という。)。 イ上記規定を受け,法人税法施行令(平成20年政令第156号による改正前のもの。以下「施行令」という。)121条1項は,ヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引等を行った内国法人は,期末時(当該事業年度終了の時までにヘッジ対象資産等につき譲渡又は消滅等がなく,かつ,当該デリバティブ取引等の決済をしていない場合のその時をいう。)及び決済時(当該デリバティブ取引等の決済をした場合のその決済の時をいう。)において,当該デリバティブ取引等がそのヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であるか否かの判定(以下「有効性判定」という。)を行わなければならない旨定めており,その判定方法として,同項1号は,ヘッジ対象資産に係るヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引等を行った場合については,期末時又は決済時における法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額,すなわち,デリバティブ取引等損益額とヘッジ対象資産等評価差額(ヘッジ対象資産のデリバティブ取引等を行った時における価額とその期末時又は決済時における価額との差額をいう。同条2項)とを比較する方法を定めている。 ウまた,施行令121条の2第1項1号は,上記 ッジ対象資産のデリバティブ取引等を行った時における価額とその期末時又は決済時における価額との差額をいう。同条2項)とを比較する方法を定めている。 ウまた,施行令121条の2第1項1号は,上記ア④の「当該デリバティブ取引等が当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であると認められる場合として政令で定める場合」とは,ヘッジ対象資産に係るヘッジ対象資産等損失額を減少させるために当該デリバティブ取引等を行った場合においては,ヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引等を行った時から当該事業年度終了の時までの間のいずれかの有効性判定において,次に掲げる場合の区分に応じ,次に定める割合(以下「有効性割合」という。)が概ね100分の80から100分の125までとなっている場合とする旨定めている。 (ア) 当該資産のデリバティブ取引等を行った時における価額が期末時又は決済時における価額を超える場合には,当該デリバティブ取引等に係るデリバティブ取引等損益額に係る利益額を,その超える部分の金額で除して計算した割合(同号イ)(イ) 当該資産の期末時又は決済時における価額が当該デリバティブ取引等を行った時における価額を超える場合には,当該デリバティブ取引等に係るデリバティブ取引等損益額に係る損失額を,その超える部分の金額で除して計算した割合(同号ロ)エそして,施行規則27条の8は,上記ア②の「財務省令で定める事項」とは,デリバティブ取引等によりヘッジ対象資産等損失額を減少させようとするヘッジ対象資産等及びそのデリバティブ取引等の種類,名称,金額,ヘッジ対象資産等損失額を減少させようとする期間その他参考となるべき事項(以下「ヘッジ対象等の明細」という。)とする旨定めており(同条1項),また,「財務省令で定めると ブ取引等の種類,名称,金額,ヘッジ対象資産等損失額を減少させようとする期間その他参考となるべき事項(以下「ヘッジ対象等の明細」という。)とする旨定めており(同条1項),また,「財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載した場合」とは,デリバティブ取引等を行った日において,ヘッジ対象資産の取得若しくは発生又は当該デリバティブ取引等に係る契約の締結等に関する帳簿書類に,当該デリバティブ取引等が当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行ったものである旨及びヘッジ対象等の明細を記載した場合とする旨定めている(同条2項)。 オ一方,施行令121条の4第1項は,有効性判定の方法に関し,常時多数のデリバティブ取引等を行う内国法人が,施行令121条1項各号に定める方法により有効性判定を行うことに代えてその方法以外の合理的な方法により有効性判定を行うことなどについて納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には,その承認を受けた方法により有効性判定などを行う旨定めており,施行令121条の4第2項は,その承認を受けようとする内国法人は,その採用しようとする有効性判定の方法の内容,その方法を採用しようとする理由,その方法により有効性判定をしようとするデリバティブ取引等の範囲等を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない旨定めている。 (4) 事業年度終了の時における外貨建資産等の円換算についてア法61条の9第1項は,内国法人が事業年度終了の時において有する外貨建資産等(外貨建債権,外貨建有価証券,外貨預金及び外国通貨をいう。)のその時における当該外貨建資産等の円換算の方法について定めているところ,同項2号ロは,外貨建有価証券のうち売買目的外有価証券(売買目的有価証券(短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得 )のその時における当該外貨建資産等の円換算の方法について定めているところ,同項2号ロは,外貨建有価証券のうち売買目的外有価証券(売買目的有価証券(短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券として政令で定めるものをいう。法61条の3第1項1号)以外の有価証券をいう。法61条の3第1項2号)については,その取得等の基因となった外貨建取引の金額の円換算額への換算に用いた外国為替の売買相場により換算した金額をもって期末時の円換算額とする方法(法61条の9第1項1号イ。以下「発生時換算法」という。)又は当該事業年度終了の時の外国為替の売買相場により換算した金額をもって円換算額とする方法(同号ロ。以下「期末時換算法」という。)のうち内国法人が選定した方法とし,その方法を選定しなかった場合には,政令で定める方法による旨定めている(同項柱書き)。 イ上記規定を受け,施行令122条の7第2号は,内国法人が売買目的外有価証券について換算方法を選定しなかった場合の換算方法は,発生時換算法とする旨定めている。 (5) 外貨建資産等の期末外国為替差損益の処理についてア法61条の9第2項は,内国法人が事業年度終了の時において,期末時換算法により円換算額への換算をする外貨建資産等を有する場合には,当該外貨建資産等の金額を期末時換算法により換算した金額と当該外貨建資産等のその時の帳簿価額との差額に相当する金額(以下「外国為替換算差損益」という。)は,当該事業年度の所得の金額の計算上,益金の額又は損金の額に算入する旨定めている。 イ(ア) 法61条の9第3項は,外国為替の売買相場が著しく変動した場合の外貨建資産等の金額の円換算額への換算等に関し必要な事項は,政令で定める旨規定している。 (イ) 上記規定を受け,施行令122条の3は,内 1条の9第3項は,外国為替の売買相場が著しく変動した場合の外貨建資産等の金額の円換算額への換算等に関し必要な事項は,政令で定める旨規定している。 (イ) 上記規定を受け,施行令122条の3は,内国法人が事業年度終了 の時において有する外貨建資産等につき,当該事業年度において,その外貨建資産等に係る外国為替の売買相場が著しく変動した場合には,その外貨建資産等と通貨の種類を同じくする外貨建資産等のうち外国為替の売買相場が著しく変動したもののすべてにつき,これらの取得等の基因となった外貨建取引を当該事業年度終了の時において行ったものとみなして,法61条の8第1項及び法61条の9第1項の規定を適用することができる旨定めている。 (ウ) また,法人税基本通達(国税庁長官発出昭和44年5月1日付け直審(法)25(例規)。ただし,平成22年課法2-1による改正前のもの。以下「基本通達」という。)13の2-2-10は,法61条の9第3項にいう「外国為替の売買相場が著しく変動した場合」に関し,事業年度終了の時において有する個々の外貨建資産等につき,次の算式により計算した割合が概ね15パーセントに相当する割合以上となるものがあるときは,当該外貨建資産等については,施行令122条の3に規定する「外国為替の売買相場が著しく変動した場合」に該当するものとして当該外貨建資産等の額(帳簿価額として付されている金額の外貨表示金額をいう。)につき,同条の規定に基づく円換算を行うことができる旨定めている。 (算式) 当該外貨建資産等の額につき当該事業年度終了の日における当該事業年度終了の日の為替当該外貨建資産等の帳簿価額(同相場により換算した本邦通貨 - 日における同条の規定の適用前の額の帳簿 年度終了の日における当該事業年度終了の日の為替当該外貨建資産等の帳簿価額(同相場により換算した本邦通貨 - 日における同条の規定の適用前の額の帳簿価額をいう。) 当該外貨建資産等の額につき当該事業年度終了の日の為替相場により換算した本邦通貨の額 ウ他方,施行令122条の2は,施行令122条の3にいう「外貨建資産等」には,当該外貨建資産に係るヘッジ対象資産等損失額を減少させるた めにデリバティブ取引等が行われ,当該デリバティブ取引等につき,法61条の6第1項の規定の適用を受け,繰延ヘッジ処理がされている場合における当該外貨建資産等は含まれない旨定めている(施行令122条の2第2号)。 2 前提となる事実(当事者間に争いがない又は各文末尾に記載した証拠等により容易に認定することができる事実)(1) 当事者原告は,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)で設立された法人であり,日本国内に支店を置き,日本国内で保険業を営む外国法人であったが,平成24年6月1日,日本国内の支店を閉鎖した。(乙2,弁論の全趣旨)なお,原告は,平成22年11月まで,米国法人のA Inc.(以下「A」という。)の子会社であった。 (2) 原告の保有する外貨建有価証券の取扱いア原告は,企業会計上,その保有する有価証券を「売買目的有価証券」と,「満期保有目的有価証券」,「その他有価証券」及び「責任準備金対応債券」にそれぞれ区分していたところ,本件事業年度終了の時において保有する外貨建社債については,「その他有価証券」に区分していた。 (乙3)イ原告は,法人税法上,上記外貨建社債に係る事業年度終了の時における円換算の方法を選定していなかったため,施行令1 いて保有する外貨建社債については,「その他有価証券」に区分していた。 (乙3)イ原告は,法人税法上,上記外貨建社債に係る事業年度終了の時における円換算の方法を選定していなかったため,施行令122条の7第2号の規定により,発生時換算法が適用されることとなる。(乙4)(3) 原告の外国為替変動リスクに係るヘッジ方針ア原告は,法61条の6第1項,施行規則27条の8第1項及び2項に定める帳簿書類として,その保有する「その他有価証券」として区分した有価証券のうち,米国ドル建債券,ユーロ建債券及びその他通貨建債券に係る為替変動リスクのヘッジに関して,基本的なヘッジ方針及び取扱いの方法を定めたリスク管理方針(以下「本件リスク管理方針」という。)を作成していた。(乙10)イ本件リスク管理方針には,概ね以下のことが定められていた。(乙10)(ア) ヘッジ手段ヘッジ手段は通貨オプションとする。 (イ) ヘッジ有効性の評価方法a ヘッジ有効性の評価は,通貨オプションの基礎商品の時価変動額とヘッジ対象の時価変動額を比較する方法により,両者の変動額の比率が概ね80パーセントから125パーセントの範囲内にあればヘッジ対象とヘッジ手段との間に高い相関関係があると判定する。 なお,オプションの時間的価値は有効性の評価から除く。 b 具体的には,当該通貨オプションにおけるヘッジ通貨を基礎商品として,オプションの想定元本と当該基礎商品の変化額を掛け合わせた額をオプションの基礎商品の時価変動額とし,ヘッジ対象の時価変動額との比較の以下の式で行う。 ヘッジ対象の時価変動額80パーセント ≦≦ 125パーセントオプションの基礎商品の時価変動額( 式で行う。 ヘッジ対象の時価変動額80パーセント ≦≦ 125パーセントオプションの基礎商品の時価変動額(ウ) ヘッジ方針a 円建保険商品に対し,全社勘定で保有する外貨建その他有価証券について,保有する各通貨ごとの総額までを限度として,同一通貨建ての通貨オプションにてヘッジを行う。 b ヘッジを行う際は,ヘッジ実行申請書にヘッジ対象となる有価証券の金額と内容,ヘッジ手段の金額と内容,ヘッジ比率を記載するものとする。 (エ) ヘッジ取引の実施手続a 資産運用本部長はヘッジを行う際は,本件リスク管理方針に従い,ヘッジ実行申請書にてCEO(日本における代表者)に対して申請する。 b ヘッジの実行は,承認取得の後に行う。 c ヘッジ手段実行の書類には,ヘッジとして行った取引であることを明瞭に記載する。 (オ) ヘッジ手段の損益管理方法ヘッジ対象資産とヘッジ手段の損益は取引後も個別ひも付きで管理し,ヘッジ対象期間が終了した後もヘッジ対象資産が売却,償還等により消滅するまで繰延ヘッジ損益として繰り延べる。 (カ) ヘッジの事後における有効性の評価ヘッジの事後における有効性の評価は,3月末及び9月末に運用リスク管理室が行い,経理部へ報告する。 (キ) 会計処理方法a ヘッジ取引の会計処理方法は,金融商品に関する会計基準(平成11年1月22日付け企業会計審議会企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という。)及び金融商品会計に関する実務指針(平成12年1月31日付け日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号。以下「実務指針」という。)における「ヘッジ会計」に関する事項に準拠する。 b ヘッジ会計の方法としては繰延ヘ する実務指針(平成12年1月31日付け日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号。以下「実務指針」という。)における「ヘッジ会計」に関する事項に準拠する。 b ヘッジ会計の方法としては繰延ヘッジ会計を行う。すなわち,ヘッジ手段の損益又は評価差額をヘッジ対象に係る損益が認識されるまで資産又は負債として繰り延べる。 (4) 原告が保有する米ドル建社債及びそれについて行ったヘッジ取引ア原告は,本件事業年度において,外貨建社債である別表3の「ヘッジ対象資産」欄記載の70銘柄の米国ドル建社債(以下「本件米ドル建社債」という。)を保有していた。(乙6)イ原告は,本件事業年度において,本件米ドル建社債について,そのヘッジ対象資産等損失額を減少させるため,本件米ドル建社債をヘッジ対象資産として,別表6記載の合計18の通貨オプション取引(米国ドルプット・円コールの買建取引。以下「本件通貨オプション取引」という。)を行っていた。(乙7,8)なお,本件米ドル建社債と本件通貨オプション取引との対応関係は,別表1の「ヘッジ対象資産」欄及び「対応する通貨オプション取引」欄記載のとおりである。 ウ本件通貨オプション取引は,取引先をB Inc.又はC銀行とした「店頭デリバティブ取引」であって,金融商品取引法2条22項3号に規定する取引(当事者の一方の意思表示により当事者間において金融商品の売買等を成立させることができる権利を相手方が当事者の一方に付与し,当事者の一方がこれに対して対価を支払うことを約する取引)に該当し,同条20項に規定する「デリバティブ取引」に該当するものであった。(乙8,9)また,本件通貨オプション取引は,原告が,当該取引を行うに当たり,本件通貨オプション取引と想定元本の額を同一とする米国ドルコール・円プッ 「デリバティブ取引」に該当するものであった。(乙8,9)また,本件通貨オプション取引は,原告が,当該取引を行うに当たり,本件通貨オプション取引と想定元本の額を同一とする米国ドルコール・円プットのオプション取引の売建取引を行い,本件通貨オプション取引によって生じた支払のプレミアムと上記通貨オプション取引の売建取引によって生じた受取のプレミアムとが同額になるように設定した,いわゆるレンジ・フォワードの手法を用いたデリバティブ取引であった。(乙9)エ本件米ドル建社債は,本件通貨オプション取引を行った時から本件事業年度の終了の時までの間において譲渡又は消滅等はなく,本件事業年度終了の時において,原告が保有していた。(乙6,7)また,本件通貨オプション取引は,本件事業年度の終了の時において,いずれも権利を行使されておらず,決済はされていなかった。(乙8)(5) 原告における本件通貨オプション取引の実行申請及び有効性の判定ア原告においては,本件通貨オプション取引の実行に際し,事前に本件リスク管理方針に基づき,ヘッジ対象とする資産の帳簿価額及び明細,ヘッジ手段である通貨オプションの想定元本,デリバティブ取引の種類,名称及び期間並びにヘッジ比率等を記載した「ヘッジ実行申請書」(以下「本件ヘッジ実行申請書」という。)が作成され,原告の日本における代表者による承認が行われていた。(乙11)イ原告の運用リスク管理室職員は,平成20年(2008年)5月2日付け「通貨オプションの有効性の事後評価に関し以下報告いたします。」との文章から始まる書面(以下「本件報告書」という。)により,原告の経理部長に対し,本件事業年度終了の日である同年3月31日を対象期日とした本件通貨オプション取引の有効性について報告しており,本件報告書には ら始まる書面(以下「本件報告書」という。)により,原告の経理部長に対し,本件事業年度終了の日である同年3月31日を対象期日とした本件通貨オプション取引の有効性について報告しており,本件報告書には,本件通貨オプション取引の有効性について,概ね以下のとおり記載されていた。(乙12)(ア) 有効性評価の対象有効性評価の対象は,米国ドル建債券の為替による時価の変動をヘッジするためのゼロコスト通貨オプションである。 (イ) 有効性テストの評価判定の方法a 当該通貨オプションにおける通貨のうちどちらかを有効性の評価の基準通貨と定め,また,行使価格を有効性の評価の基準値とし,オプション行使期限において,当該基準通貨が基準値の前後(プットの場合は対基準通貨下落幅,コールの場合は対基準通貨上昇幅)5パーセント,10パーセント,15パーセント変動したものとして,以下の算式でその有効性を計測する。 ヘッジ対象の時価変動額80パーセント ≦≦ 125パーセントオプションの価格の変動額b 当該通貨オプションにおけるヘッジ通貨を基礎商品として,オプションの想定元本と当該基礎商品の変化額を掛け合わせた額をオプションの基礎商品の時価変動額とし,ヘッジ対象の時価変動額との比較を以下の算式で行う。 ヘッジ対象の時価変動額80パーセント ≦≦ 125パーセントオプションの基礎商品の時価変動額(ウ) 選択した有効性テストの評価判定の方法の検証企業会計上においては,原則的には税法と同様の有効性判定を行うものとされているが,例外として,かかる一定の損失を見込んだ価格設定 時価変動額(ウ) 選択した有効性テストの評価判定の方法の検証企業会計上においては,原則的には税法と同様の有効性判定を行うものとされているが,例外として,かかる一定の損失を見込んだ価格設定となっているオプション取引については,オプション取引の基礎商品価格の変動額とヘッジ対象の時価変動額を比較する方法が認められている。 そこで,ヘッジ取引に利用されている通貨オプションについては,通貨としての米国ドルを基礎商品として,その価格の変動額(オプションの想定元本×円・ドル為替の変化額)により算出される損益を法61条の6第1項に規定するデリバティブ取引等に係る利益額又は損失額として,その金額とヘッジ対象資産等評価差額とを比較する方法により有効性判定を行うこととする。 (エ) 有効性テストの評価判定米国ドルのヘッジ対象資産評価差額と基礎商品価額の変動額は,104.84パーセントの有効性をもって連動するため,当該ヘッジは有効であると判断される。 (6) 本件更正処分等の経緯等ア本件更正処分等の経緯は,別表1のとおりである。 (ア) 原告は,平成20年6月30日,本件米ドル建社債を含む本件事業年度終了の時において保有していた外貨建有価証券について,法61条の9第3項に規定されている「外国為替の売買相場が著しく変動した場合」に該当するとして,施行令122条の3の規定に基づき,本件事業年度終了の時に当該外貨建有価証券の取得の基因となった外貨建取引が行われたものとみなして期末時の円換算額を算定し,法61条の9第2項の規定に基づき,その外国為替換算差損の額688億9520万7960円を損金の額に算入した上で,所得金額を135億9437万6810円,納付すべき法人税額を13億7567万2400円として,本件事業年度の法人税の その外国為替換算差損の額688億9520万7960円を損金の額に算入した上で,所得金額を135億9437万6810円,納付すべき法人税額を13億7567万2400円として,本件事業年度の法人税の確定申告をした。(乙5の1)(イ) なお,原告が損金の額に算入した上記外国為替換算差損の額のうち,原告が「その他有価証券」として区分し,かつ,円換算について発生時換算法を適用している外貨建社債に係る外国為替換算差損の額は595億9743万9859円であり,その余は,原告の親会社であったAの株式に係る外国為替換算差損の額92億9776万8101円であった。(乙6)また,上記外貨建社債に係る外国為替換算差損の額のうち,本件米ドル建社債に係る外国為替換算差損の額は,別表1「ヘッジ対象資産に係る外国為替換算差損」欄記載のとおりであり,その合計額は326億0050万5530円であった(以下「本件外国為替換算差損」という。)。(乙6,7)(ウ) これに対し,麹町税務署長は,平成21年8月7日,本件米ドル建社債は,法61条の6に規定する「デリバティブ取引等を行った場合」の資産に該当し,施行令122条の2の規定により,施行令122条の3の規定は適用されないから,原告が損金の額に算入した外国為替換算差損の額688億9520万7960円のうち,本件米ドル建社債に係る本件外国為替換算差損の額である326億0050万5530円は損金の額に算入されないなどとして,所得金額を562億7018万8168円,納付すべき法人税額を141億9061万2700円とする本件更正処分及び過少申告加算税の額を17億1931万5500円とする本件賦課決定処分をした。(乙1)(エ) そこで,原告は,平成21年10月5日,国税不服審判所長に対し,本件米ドル建社債は る本件更正処分及び過少申告加算税の額を17億1931万5500円とする本件賦課決定処分をした。(乙1)(エ) そこで,原告は,平成21年10月5日,国税不服審判所長に対し,本件米ドル建社債は法61条の6に規定する「デリバティブ取引等を行った場合」の資産に該当せず,施行令122条の3の規定が適用されるから,本件外国為替換算差損の額は損金の額に算入されるべきであるとして,本件更正処分のうち,所得金額236億6968万2638円,納付すべき法人税額44億1046万0900円を超える部分及び本件賦課決定処分のうち,過少申告加算税の額3億0347万8000円を超える部分の各取消しを求めて審査請求したが,平成22年10月1日,同請求が棄却されたことから,本件訴えを提起した。(乙1)イ本件訴訟における本件更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張は,別紙1「本件更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張」記載のとおりである。 3 本件の争点(1)ア前記2(6)のとおり,原告は,本件米ドル建社債について,法61条の9第3項,施行令122条の3に規定する「外国為替の売買相場が著しく変動した場合」に該当するとして,本件事業年度終了の時にその取得の基因となった外貨建取引が行われたものとみなして期末時の円換算額を算定し,法61条の9第2項の規定に基づき,本件米ドル建社債に係る外国為替換算差損である本件外国為替換算差損の額を損金の額に算入して本件事業年度の法人税の確定申告をしたのに対し,麹町税務署長は,本件米ドル建社債は,法61条の6に規定する「デリバティブ取引等を行った場合」の資産に該当し,施行令122条の2の規定により,施行令122条の3の規定は適用されないから本件外国為替換算差損の額は損金の額に算入されないとして,本件 「デリバティブ取引等を行った場合」の資産に該当し,施行令122条の2の規定により,施行令122条の3の規定は適用されないから本件外国為替換算差損の額は損金の額に算入されないとして,本件更正処分等をした。 イすなわち,前記1(5)ア,イのとおり,法61条の9第2項は,事業年度終了の時において,同条1項に規定する期末時換算法により円換算額への換算をする外貨建資産等を有する場合には,その外貨建資産等に係る外国為替差損益は,当該事業年度の所得の金額の計算上,益金の額又は損金の額に算入する旨定めているところ,同条3項,施行令122条の3は,事業年度終了の時において有する外貨建資産等につき,当該事業年度において,その外貨建資産等に係る外国為替の売買相場が著しく変動した場合には,これらの取得等の基因となった外貨建取引を当該事業年度終了の時において行ったものとみなして,法61条の9第1項の規定に基づく事業年度終了の時における外貨建資産等の円換算をすることができる旨定めている。 そして,証拠(乙15)によれば,本件事業年度における米国ドルの売買相場の変動は,法61条の9第3項に規定する「外国為替の売買相場が著しく変動した場合」に関する基本通達13の2-2-10に定める算式により計算すると,いずれもその割合が15パーセントを超えていることが認められるから,法61条の9第3項に規定する「外国為替の売買相場が著しく変動した場合」に該当することが認められる。 ウ他方で,前記1(5)イのとおり,施行令122条の2は,施行令122条の3にいう「外貨建資産等」には,当該外貨建資産等に係るヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引等が行われ,当該デリバティブ取引等につき,法61条の6第1項の規定に基づく繰延ヘッジ処理の適用を受けて 資産等」には,当該外貨建資産等に係るヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引等が行われ,当該デリバティブ取引等につき,法61条の6第1項の規定に基づく繰延ヘッジ処理の適用を受けている場合における当該資産等は含まれない旨定めている。 (2) そこで,法61条の6第1項の規定に基づく繰延ヘッジ処理を適用するための要件についてみると,前記1(3)のとおり,その要件は,次のアないしエのいずれの要件も満たす場合である。 アヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引等を行っていること。 イ当該デリバティブ取引等がヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行ったものである旨その他規則27条の8第1項で定める事項(ヘッジ対象等の明細)を同条2項で定めるところにより帳簿書類に記載していること。 ウ当該デリバティブ取引等を行った時から事業年度終了の時までの間において当該ヘッジ対象資産等の譲渡又は消滅等がないこと。 エ当該デリバティブ取引等につき,施行令121条1項に定められた方法により有効性判定を行い,当該デリバティブ取引等が当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であると認められる場合として施行令121条の2第1項に定める場合に該当すること。 (4) これを本件についてみると,前記2によれば,原告は,①本件リスク管理方針に基づき本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために「デリバティブ取引」に当たる本件通貨オプション取引を行っていること(前記2(5)アないしウ),②本件通貨オプション取引が本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行ったものである旨及びヘッジ対象等の明細を帳簿書類と認められる本件リスク管理方針及び本件ヘッジ実行申請書に記載していること(前記2 取引が本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行ったものである旨及びヘッジ対象等の明細を帳簿書類と認められる本件リスク管理方針及び本件ヘッジ実行申請書に記載していること(前記2(3),(5)ア),③本件米ドル建社債については,本件通貨オプション取引を行った時から本件事業年度終了の時までの間において譲渡がなく,本件事業年度の終了の時において原告が保有していること(前記2(4)エ)が認められるのであって,上記要件のうちアないしウを満たすことは明らかであり,この点について当事者間に争いはない。 よって,本件の争点は,上記エの要件を満たすか否か,すなわち,本件通貨オプション取引につき,施行令121条1項に定められた方法により有効性判定を行い,本件通貨オプション取引が本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であると認められる場合として施行令121条の2第1項に定める場合に該当するか否かである。 4 争点に関する当事者の主張(1) 原告の主張ア(ア) 企業会計上のヘッジの有効性判定の方法について,実務指針156項は,オプション取引については,「オプション価格の変動額とヘッジ対象の時価変動額を比較するか又はオプションの基礎商品の時価変動額とヘッジ対象の時価変動額を比較して判定を行う。」と規定しており(以下,前者の方法を「デリバティブ比較法」といい,後者の方法を「基礎商品比較法」という。),企業会計上,オプション取引については,デリバティブ比較法と基礎商品比較法の2つの有効性判定の方法が認められている。 (イ) これに対し,施行令121条1項1号は,ヘッジの有効性判定の方法について,「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額とヘッジ対象資産等評価差額とを比較す いる。 (イ) これに対し,施行令121条1項1号は,ヘッジの有効性判定の方法について,「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額とヘッジ対象資産等評価差額とを比較する方法」とする旨定めているところ,ここにいう「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額」とは,法61条の6第1項柱書きにより,①当該デリバティブ取引等の決済によって生じた損益額,②法61条の4第1項に規定する有価証券の空売り等に係るみなし決済損益額,③法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額,④法61条の9第2項に規定する外貨建資産等の期末時換算差額をいうとされている。 しかるに,基礎商品比較法で用いられる「オプションの基礎商品の時価変動額」とは,オプションの想定元本と当該基礎商品の時価変動額とを掛け合わせた金額をいうのであって,上記①ないし④のいずれにも該当しない。 よって,施行令121条1項1号に規定する「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額とヘッジ対象資産等評価差額とを比較する方法」と基礎商品比較法とは,全く異なるものであるから,基礎商品比較法は,施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法ではない。 (ウ) そこで,施行令121条1項1号に定める方法であるデリバティブ比較法により,本件事業年度終了の時(平成20年3月31日)において,本件通貨オプション取引が本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であるか否かについて判定するに,本件通貨オプション取引は,本件事業年度終了の時において未決済であったから,本件通貨オプション取引に係る「法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額」とは,上記③の法61条の について判定するに,本件通貨オプション取引は,本件事業年度終了の時において未決済であったから,本件通貨オプション取引に係る「法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額」とは,上記③の法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額をいうことになる。 そして,本件通貨オプション取引は,米国ドルのプットオプション取引であり,その基礎商品は米国ドルという受渡可能な現物であるから,その決済は,米国ドルという現物の行使価格による売買により行われるところ,本件事業年度終了の時における米国ドルの為替レートは100円19銭であったのに対し,その行使価格は95円,92円,90円又は88円のいずれかであって,基礎商品の市場価格が行使価格よりも高く,権利行使しても利益を生じない,いわゆるアウト・オブ・ザ・マネーの状態にあったから,本件事業年度終了の時に本件通貨オプション取引を決済したとみなしても利益は算出されない。 そうすると,本件通貨オプション取引に係る「法61条の6第1項に規定する利益額」はいずれも零であり,これとヘッジ対象資産等損失額とを比較した有効性割合もいずれも零となるから,本件通貨オプション取引の有効性割合は,繰延ヘッジ処理に係るヘッジが有効であると認められる場合として,施行令121条の2が規定する100分の80から100分の125までの範囲に入らない。 (エ) また,仮に,本件通貨オプション取引に係るみなし決済損益額について,オプション価格を算定するモデルの1つであるブラック・ショールズ・モデルを用いて計算したとしても,そのみなし決済損益額及びそれに基づくデリバティブ比較法による有効性割合は,それぞれ別表7のとおりであって,本件通貨オプション取引のうち8件については,本件事業年度終了の時におけるオ したとしても,そのみなし決済損益額及びそれに基づくデリバティブ比較法による有効性割合は,それぞれ別表7のとおりであって,本件通貨オプション取引のうち8件については,本件事業年度終了の時におけるオプション評価額が当初のオプション料支払額を下回って損失が発生しており,そもそもヘッジ対象資産等損失額を相殺する利益が発生していない。また,その余の10件についても,その有効性割合は,0.15パーセントないし4.91パーセントであって,施行令121条の2に規定する100分の80から100分の125までの範囲に入らない。 (オ) 以上によれば,本件通貨オプション取引は,本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるものとして有効であると認められないから,本件米ドル建社債は,法61条の6に規定する「デリバティブ取引等を行った場合」の資産に該当しない。 したがって,本件米ドル建社債については,施行令122条の3の規定が適用され,その外国為替換算差損益である本件外国為替換算差損の額は損金の額に算入されるべきであるにもかかわらず,麹町税務署長はこれを認めず本件更正処分等をしたものであるから,本件更正処分等は違法である。 イ(ア) これに対し,被告は,基礎商品比較法は,企業会計上,ヘッジの有効性判定の方法として広く認められた方法であり,法人税法上もこれを認めなければ,オプション取引を行う多数の法人において,重大な支障が生じるおそれがあるから,施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法として取り扱われるべきであると主張する。 しかし,そもそも租税法規は,侵害規範であり,法的安定性の要請が強く働くから,その解釈は原則として文理解釈によるべきであるところ,施行令121条1項1号に規定する「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項 もそも租税法規は,侵害規範であり,法的安定性の要請が強く働くから,その解釈は原則として文理解釈によるべきであるところ,施行令121条1項1号に規定する「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額」と基礎商品比較法にいう「オプション取引の基礎商品の時価変動額」とは,全く異なるものであり,施行令121条1項1号の文言上,明らかにデリバティブ比較法しか有効性判定の方法として規定されていないのに,その文言を離れ,デリバティブ比較法と基礎商品比較法が有効性判定の方法として認められていると解釈することは,納税者の予測可能性を害し,法的安定性を害することになるから許されない。 また,企業会計上,オプション取引について,有効性判定の方法として,デリバティブ比較法のほかに基礎商品比較法が認められた趣旨は,企業会計上は,一度ヘッジが有効ではないと評価されるとヘッジ会計を中止しなければならず(実務指針180項参照),以後の事業年度においてヘッジが有効であると認められる状態になっても,もはやヘッジ会計を行うことはできず,ヘッジ手段に係る損益又は評価差額を繰り延べることができなくなることから(金融商品会計基準110項参照),アウト・オブ・ザ・マネーの状態となった時点でヘッジが有効ではないと判断されることがないように,基礎商品比較法の適用が認められたものであるところ,法人税法上,繰延ヘッジ処理を行うか否かは,各事業年度ごとの有効性判定の結果によるものであり,ある事業年度において有効ではないと判定されても,以後の事業年度において,オプションが権利行使すれば利益を生じる,いわゆるイン・ザ・マネーの状態になり,有効であると判定されれば,当該事業年度において繰延ヘッジ処理が行われることになるから,法人税法上,有効性判定の方法として,基礎 が権利行使すれば利益を生じる,いわゆるイン・ザ・マネーの状態になり,有効であると判定されれば,当該事業年度において繰延ヘッジ処理が行われることになるから,法人税法上,有効性判定の方法として,基礎商品比較法を認めなくとも,何ら不都合な結果は生じない。 さらに,法人税法が,納税者に対し,複数の会計処理方法の選択を認める場合には,その選択に係る届出手続や届出がない場合に適用する会計処理方法について規定されているものであるところ,ヘッジの有効性判定の方法に関しては,このような規定が存在しないことからすれば,施行令121条1項1号が,ヘッジの有効性判定の方法としてデリバティブ比較法と基礎商品比較法という2つの異なる会計処理方法を認めているとは到底解し得ない。 (イ) また,被告は,有効性判定の方法として基礎商品比較法を認めなければ,デリバティブ取引を利用した利益調整が行われるおそれがあると主張する。 しかし,利益調整は,所得計算に際して複数の方法が選択可能であることにより生じるものであって,一つの方法しか認められない場合には利益調整の余地はないところ,施行令121条1項1号は,企業会計上はデリバティブ比較法と基礎商品比較法の2つの会計処理方法の選択が認められているものを,法人税法上の所得計算に際しては,画一的にデリバティブ比較法を適用することによって利益調整の余地をなくしたものであるから,有効性判定の方法として基礎商品比較法を認めなければデリバティブ取引を利用した利益調整が行われるおそれがあるとの被告の主張は失当である。 (ウ) 被告は,基礎商品比較法は,基本通達や国税庁のホームページ上において,税務の運用上も有効性判定の方法として認められているから,施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法として取り扱われるべき 礎商品比較法は,基本通達や国税庁のホームページ上において,税務の運用上も有効性判定の方法として認められているから,施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法として取り扱われるべきであると主張する。 しかし,法令の解釈により税務の運用が適法かどうかが判断されるのであって,税務の運用から法令の解釈が導かれるものではない。また,通達は租税法の法源ではなく,ましてや国税庁のホームページ上の記載が法源でないことは当然であって,被告の主張は失当である。 (エ) さらに,被告は,原告自身が基礎商品比較法を適用してヘッジの有効性判定を行い,確定申告をした旨主張する。 しかし,法令の意味内容は,法令自体を客観的に解釈してなされるものであって,個々の納税者がどのような行為を行ったかにより左右されるものではない。また,原告は,企業会計上,基礎商品比較法を適用して有効性判定を行っただけであって,税務上は基礎商品比較法を適用したわけではなく,本件事業年度終了の時に本件通貨オプション取引を決済したものとみなしても利益の額が算出されないから,法61条の5の規定による益金の額への算入をしていないにすぎず,繰延ヘッジ処理が適用されることを前提として,確定申告をしたわけではない。 (2) 被告の主張ア(ア) 法61条の6に規定する繰延ヘッジ処理は,企業会計上,ヘッジ取引の実態を反映し,ヘッジ対象とヘッジ手段の損益を同一の会計期間に認識するためにヘッジ会計が導入されたことを前提に,企業会計と同様,ヘッジ取引の実態を正しく示すとともに,税務上の観点から,デリバティブ取引を利用した利益調整が行われるといった課税上の弊害を防止することを目的とするものであり,企業会計上,ヘッジ会計が適用される取引については,課税上の弊害が認められない限り,原則として税 リバティブ取引を利用した利益調整が行われるといった課税上の弊害を防止することを目的とするものであり,企業会計上,ヘッジ会計が適用される取引については,課税上の弊害が認められない限り,原則として税務上も繰延ヘッジ処理を行うことが想定されているから,企業会計上,ヘッジ会計が適用されているデリバティブ取引について,税務上,特段の理由がないにもかかわらず,法61条の6に規定する繰延ヘッジ処理を適用しないことは,デリバティブ取引を利用した利益調整が行われるおそれを生じさせるというべきである。 (イ) また,企業会計上,基礎商品比較法が認められた趣旨は,オプション取引が,事業年度末の時点において,アウト・オブ・ザ・マネーの状態にあったとしても,その後の基礎商品の相場の変動により,オプションの権利行使の時期においてイン・ザ・マネーの状態にあれば損失削減等のヘッジ効果が生じるものについては,ヘッジ会計を適用する必要があり,それを認めることに合理性があると考えられたためと解されるところ,法人税法上も,アウト・オブ・ザ・マネーの状態であるオプション取引であっても,ヘッジ対象資産が消滅するまでの間にイン・ザ・マネーの状態になる可能性があり,その場合には新たに発生するヘッジ対象資産の損失とオプション取引のみなし決済利益額が高い程度で相殺される関係が認められることを考えれば,企業会計上,基礎商品比較法が認められた上記趣旨は,そのまま法人税法上にも妥当するというべきである。 したがって,企業会計上,ヘッジの有効性判定の方法として広く認められている基礎商品比較法について,税務上も,施行令121条1項1号に規定された判定方法として取り扱うことは,法61条の6の趣旨から考えても,必要かつ合理的であり,逆にこれを認めず,企業会計と連動しない形で,各 商品比較法について,税務上も,施行令121条1項1号に規定された判定方法として取り扱うことは,法61条の6の趣旨から考えても,必要かつ合理的であり,逆にこれを認めず,企業会計と連動しない形で,各事業年度末において,みなし決済損益額の益金又は損金の額への算入を強制することとすれば,オプション取引を行っている多数の法人において,重大な支障を生じるおそれがあることは明らかである。 (ウ) 基本通達2-3-48は,施行令121条1項に規定する有効性判定を行うに当たり,オプション取引の時間的価値に係る部分(オプション取引の価値に係る部分のうち,基礎商品の価格に基因する部分以外の部分をいう。)を当該有効性判定の要素から除くこととしているときは,帳簿書類にあらかじめ記載していることを条件に,これを認めるとの取扱いを定めており,実質的に,実務指針156項で定める基礎商品比較法を認めている。また,国税庁は,そのホームページ上において,「オプション取引の有効性判定の方法について」の照会に対する回答として,通貨オプション取引について,基礎商品価格の変動額により算出される損益を「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額」として有効性判定を行って差し支えない旨回答しており,国税庁の運用としては,基礎商品比較法をもって,施行令121条1項1号の有効性判定の方法として取り扱うこととしている。 このような取扱いは,デリバティブ取引には,多種多様な種類の取引が存在し,その内容も日々進化していることから,すべての取引に対応する合理的な判定方法について,子細に政令で規定することは極めて困難であること,企業会計上,ヘッジ会計が適用される場合には,課税上弊害がない限り,税務上も同様の処理を行うのが法61条の6の趣旨であることなど な判定方法について,子細に政令で規定することは極めて困難であること,企業会計上,ヘッジ会計が適用される場合には,課税上弊害がない限り,税務上も同様の処理を行うのが法61条の6の趣旨であることなどに鑑みれば,合理的な取扱いを定めたものであって,法61条の6の趣旨に合致するというべきである。 (エ) 施行令121条の4は,事前に有効性判定の方法の内容等について記載した申請書を税務署長に提出し,税務署長が承認した場合には,施行令121条1項に定める有効性判定の方法に代えて,申請のあった方法により有効性判定を行うことを認めているところ,これは,デリバティブ取引には,多種多様な取引が存在し,それぞれの取引に対応して様々な有効性判定の方法が考えられることから,課税上の弊害が生じ得るものであるか否かを確認する必要がある場合も存在し得るためである。 このような制度の在り方からすれば,本件通貨オプション取引のようにシンプルな類型の典型的なオプション取引については,基礎商品比較法のように施行令121条1項の文言から直接導くことのできる方法でなくても,企業会計上,広く合理的と認められている判定方法によってヘッジが有効であると認められ,企業会計上,ヘッジ会計を適用すべきとされる場合には,税務上も,繰延ヘッジ処理に係る法61条の6の規定が適用されるというべきである。 (オ) さらに,原告自身も,企業会計上,基礎商品比較法により本件通貨オプション取引に係るヘッジが有効であるとしてヘッジ会計を適用し,ヘッジ手段である本件通貨オプション取引に係る損益を繰延ヘッジ損益として純資産の部に計上することにより,企業会計上の当期純利益の額に反映させておらず,税務上も,法61条の6の繰延ヘッジ処理を適用することが適法であることを前提として,本件通貨オプション ヘッジ損益として純資産の部に計上することにより,企業会計上の当期純利益の額に反映させておらず,税務上も,法61条の6の繰延ヘッジ処理を適用することが適法であることを前提として,本件通貨オプション取引に係るデリバティブ損益額を所得金額に加算又は減算することなく,本件事業年度の法人税の確定申告を行っている。 (カ) 以上のとおり,本件通貨オプション取引に係るヘッジの有効性判定に関し,原告が本件リスク管理方針に定めて採用した基礎商品比較法は,施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法として取り扱われるべきである。 イ本件通貨オプション取引につき,基礎商品比較法によりその有効性判定を行うと,本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額と基礎商品価額の変動額は104.84パーセントの有効性をもって連動し,施行令121条の2第1号に定める概ね100分の80から100分の125までの範囲に入っており,本件通貨オプション取引は,本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であると認められるから,本件米ドル建社債は,法61条の6に規定する「デリバティブ取引等を行った場合」の資産に該当する。 したがって,本件米ドル建社債については,施行令122条の2の規定により,施行令122条の3の規定は適用されず,その外国為替換算差損益である本件外国為替換算差損の額を損金の額に算入することはできないから,これを認めなかった本件各更正処分等は適法である。 第3 当裁判所の判断1(1) 施行令121条1項1号は,ヘッジ対象資産に係るヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引等を行った場合における,当該デリバティブ取引等が当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であるか否かの判定方法について,「期末時又は決 ジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引等を行った場合における,当該デリバティブ取引等が当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であるか否かの判定方法について,「期末時又は決済時におけるそのデリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額とヘッジ対象資産等評価差額とを比較する方法」とする旨定めている。 一方,金融商品に係る取引についての会計処理について定めている実務指針156項は,企業会計上のヘッジ取引の有効性判定の方法について,原則としてヘッジ開始時から有効性判定時点までの期間において,ヘッジ対象の相場変動の累計とヘッジ手段の相場変動の累計とを比較し,両者の変動額等を基礎にして判断するが,オプション取引については,オプション価格の変動額とヘッジ対象の時価変動額を比較する方法,すなわち,デリバティブ比較法又はオプションの基礎商品の時価変動額とヘッジ対象の時価変動額を比較する方法,すなわち,基礎商品比較法により判定を行う旨定めている。 そして,原告は,基礎商品比較法は,施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法には当たらない旨主張するのに対し,被告は,基礎商品比較法も,施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法として扱われるべきである旨主張する。 (2) そこで,検討するに,上記のとおり,施行令121条1項1号は,「期末時又は決済時におけるそのデリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額とヘッジ対象資産等評価差額とを比較する方法」と規定しているところ,ここにいう「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額」とは,法61条の6第1項柱書きが明示するとおり,①当該デリバティブ取引等の決済によって生じた損益額,②法61条の4第 にいう「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額」とは,法61条の6第1項柱書きが明示するとおり,①当該デリバティブ取引等の決済によって生じた損益額,②法61条の4第1項に規定する有価証券の空売り等に係るみなし決済損益額,③法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額及び④法61条の9第2項に規定する外貨建資産等の期末換算差額をいう。 しかるに,基礎商品比較法にいう「オプションの基礎商品の時価変動額」とは,オプションの想定元本と当該基礎商品の時価変動額とを掛け合わせた金額をいうものであるから,上記①ないし④のいずれにも該当しないことは明らかである。 よって,基礎商品比較法は,施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法とはいえない。 2(1) これに対し,被告は,基礎商品比較法も施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法として取り扱われるべきであると主張し,その理由として,法61条の6に規定する繰延ヘッジ処理は,ヘッジ取引の実態を正しく示すとともに,デリバティブ取引を利用した利益調整が行われるといった課税上の弊害を防止することも目的とするものであるから,企業会計上,ヘッジ会計が適用されているデリバティブ取引について,税務上,特段の理由がないにもかかわらず,法61条の6に規定する繰延ヘッジ処理を適用しないことは,デリバティブ取引を利用した利益調整が行われるおそれを生じさせると主張する。 しかし,法61条の6に規定する繰延ヘッジ処理は,平成12年の税制改正により導入された制度であるところ,その趣旨は,従前は,資産等の価格変動によって生ずるおそれのある損失額を減少させるためにデリバティブ取引等を行っている場合において,ヘッジ取引の対象である資産等に含み益が 制度であるところ,その趣旨は,従前は,資産等の価格変動によって生ずるおそれのある損失額を減少させるためにデリバティブ取引等を行っている場合において,ヘッジ取引の対象である資産等に含み益が生じる一方,ヘッジ取引の手段であるデリバティブ取引等に含み損が生じており,双方の含み損益が相殺関係にあっても,会計処理上,それぞれが別個のものとして取り扱われていたため,含み損が生じているデリバティブ取引等のみを決済することにより,納税者が恣意的に利益調整を行うことが可能であったことから,デリバティブ取引等を決済したものとみなして算出する損益額の計上時期を,資産等の損益の計上時期に合わせて繰り延べ,両者の計上時期を合わせることにより,ヘッジ取引の実態を正しく示すとともに,上記のような納税者による恣意的な利益調整を防止することにあると解される。 しかるに,法61条の6に規定する繰延ヘッジ処理が適用されるか否かは,当該デリバティブ取引等について,施行令121条1項に規定する方法により有効性判定を行い,その有効性割合が,施行令121条の2第1項1号に定められた一定の範囲内にあるか否かにより一義的に決まるものであって,納税者において,その適用の有無を恣意的に選択する余地はないのであるから,企業会計上,ヘッジ会計が適用されているデリバティブ取引について,税務上,法61条の6に規定する繰延ヘッジ処理が適用されない場合があるからといって,そのことをもって,デリバティブ取引を利用した利益調整が行われるおそれを生じさせるとはいえない。 したがって,この点についての被告の主張は採用の限りではない。 (2) また,被告は,企業会計上,基礎商品比較法が認められた趣旨は,オプション取引が,事業年度末の時点において,アウト・オブ・ザ・マネーの状態にあったとしても の被告の主張は採用の限りではない。 (2) また,被告は,企業会計上,基礎商品比較法が認められた趣旨は,オプション取引が,事業年度末の時点において,アウト・オブ・ザ・マネーの状態にあったとしても,その後の基礎商品の相場の変動により,オプションの権利行使の時期においてイン・ザ・マネーの状態にあれば損失削減等のヘッジ効果が生じるものについては,ヘッジ会計を適用する必要があり,それを認めることに合理性があると考えられたためと解されるところ,かかる基礎商品比較法が認められた趣旨は,そのまま法人税法上も妥当するというべきであるから,基礎商品比較法について,税務上も,施行令121条1項1号に規定された有効性判定の方法として取り扱うことは必要かつ合理的であると主張する。 確かに,実務指針156項が企業会計上のオプション取引に係る有効性判定の方法としてデリバティブ比較法のみならず基礎商品比較法をも認めた趣旨は,オプション取引については,その有効性判定の時点においてアウト・オブ・ザ・マネーの状態にあり,ヘッジ対象資産等損失額を相殺する利益が生じていない場合であっても,その後,基礎商品の価格が変動し,その権利行使の時点において,イン・ザ・マネーの状態にあれば,ヘッジ対象資産等損失額を相殺する利益が生じることになることから,有効性判定の時点においてアウト・オブ・ザ・マネーの状態にあるオプション取引について,その有効性が否定されることがないようにするためであると解されるところ,上記(1)のとおり,法61条の6に規定する繰延ヘッジ処理の趣旨が,ヘッジ取引の実態を正しく示すことにあることに照らせば,企業会計上,ヘッジ取引として有効であると認められる取引については,税務上も,繰延ヘッジ処理が適用されることが望ましいということができる。 しかしなが 引の実態を正しく示すことにあることに照らせば,企業会計上,ヘッジ取引として有効であると認められる取引については,税務上も,繰延ヘッジ処理が適用されることが望ましいということができる。 しかしながら,租税法規は侵害規範であって,法的安定性の要請が強く働くものであるから,みだりに規定の文言を離れて解釈すべきではない(最高裁判所平成22年3月2日第三小法廷判決・民集64巻2号420頁参照)ところ,基礎商品比較法にいう「オプションの基礎商品の時価変動額」が,その文言上,施行令121条1項1号にいう「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額」に該当しないことは上記1(2)のとおりであって,上記のような実務指針156項及び法61条の6の趣旨を考慮してもなお,施行令121条1項1号の文言を離れ,明らかに同号に規定する有効性判定の方法には当たらない基礎商品比較法を,同号に規定する有効性判定の方法として取り扱うべきであると解すべき合理的理由は見出すことができない。 (3) さらに,被告は,基本通達2-3-48及び国税庁のホームページ上の照会に対する回答において,オプション取引の有効性判定の方法として,基礎商品比較法によることを認めているところ,このような取扱いは,デリバティブ取引には多種多様な種類の取引が存在し,その内容も日々進化しており,すべての取引に対応する合理的な判定方法について,子細に政令で定めることは極めて困難であることなどに鑑みれば,合理的な取扱いである旨主張する。 しかし,そもそも,租税法規は,みだりに規定の文言を離れて解釈すべきでないことは前記(2)のとおりであるが,この点をおくにしても,基礎商品比較法が施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法として認められるか否かは,専ら同号の解釈 規定の文言を離れて解釈すべきでないことは前記(2)のとおりであるが,この点をおくにしても,基礎商品比較法が施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法として認められるか否かは,専ら同号の解釈により決せられるべきものであって,通達の定めや実際の税務運用上の取扱いにより,その結論が左右されるべきものではない。 また,オプション取引は,デリバティブ取引の中でも一般的ないし典型的な類型に属する取引であって,現に実務指針は,平成12年1月31日に公表された当初から,オプション取引の有効性判定の方法としてデリバティブ比較法と基礎商品比較法の2つを認める旨の明文の規定を設けていたのであるから,少なくともオプション取引について,政令において,実務指針156項と同旨の規定を設けることは十分に可能であったのであり,それにもかかわらず政令があえてそのような規定を設けなかった以上は,租税法規の解釈として,そのような規定があるものとして解することは許されないといわざるを得ない。 (4) そして,被告は,施行令121条の4が,事前に有効性判定の方法の内容等について記載した申請書を税務署長に提出し,税務署長が承認した場合には,施行令121条1項に定める有効性判定の方法に代えて,申請のあった方法により有効性判定を行うことを認めているところ,これは,多種多様なデリバティブ取引に対応して様々な有効性判定の方法が考えられることから,課税上の弊害が生じ得るものであるか否かを確認する必要があるためであることからすれば,本件通貨オプション取引のようにシンプルな類型の典型的なオプション取引については,基礎商品比較法のように施行令121条1項の文言から直接導くことのできる方法でなくても,企業会計上,広く合理的と認められている判定方法によってヘッジが有効であると 典型的なオプション取引については,基礎商品比較法のように施行令121条1項の文言から直接導くことのできる方法でなくても,企業会計上,広く合理的と認められている判定方法によってヘッジが有効であると認められる場合には,税務上も,法61条の6の規定による繰延ヘッジ処理が適用されるべきであると主張する。 しかし,有効性判定の方法は,繰延ヘッジ処理の適用の有無を左右するものであり,法人の益金又は損金の額の算定に重大な影響を及ぼすものであるから,法人税法上も,企業会計上と同様,複数の有効性判定の方法を選択的に適用することを認める趣旨であれば,その選択手続や選択がされなかった場合に適用すべき方法等について定める規定が存在すべきであるところ,施行令の規定をみても,施行令121条1項1号において,「期末時又は決済時におけるそのデリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額とヘッジ対象資産等評価差額とを比較する方法」と規定し,施行令121条の4において,常時多数のデリバティブ取引等を行う法人に限り,納税地の所轄税務署長の承認を受けることを条件として,施行令121条1項に定める方法以外の合理的な方法により有効性判定を行うことを認めている以外には,有効性判定の方法やその選択手続等について定めている規定は存在しない。 このような施行令の規定ぶりに照らせば,施行令は,その121条1項において,原則的な有効性判定の方法を規定し,121条の4において,デリバティブ取引には多種多様な形態の取引が存在し,それぞれの取引形態に応じて121条1項に規定する方法以外にも合理的な有効性判定の方法があり得るが,納税者にその自由な選択を認めれば,恣意的に利益調整が行われるおそれがあることから,常時多数のデリバティブ取引等を行う法人に限り,納 1項に規定する方法以外にも合理的な有効性判定の方法があり得るが,納税者にその自由な選択を認めれば,恣意的に利益調整が行われるおそれがあることから,常時多数のデリバティブ取引等を行う法人に限り,納税地の所轄税務署長の承認を受けることを条件として,121条1項に規定する方法以外の方法により有効性判定を行うことを認めたものと解される。 したがって,施行令121条の4の規定を根拠として,施行令121条1項の文言から直接導くことのできる方法でなくても,企業会計上,広く合理的と認められている判定方法によってヘッジが有効であると認められる場合には,税務上も法61条の6の規定による繰延ヘッジ処理が適用されるべきであるとの被告の主張は採用することができない。 (5) また,被告は,原告自身が,企業会計上,基礎商品比較法により本件通貨オプション取引に係るヘッジが有効であるとしてヘッジ会計を適用し,税務上も,法61条の6に規定する繰延ヘッジ処理を適用して本件事業年度の法人税の確定申告を行っている旨主張するが,基礎商品比較法が施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法として認められるべきか否かは,納税者である原告が確定申告を行うに当たり基礎商品比較法を採用したか否かにより左右されるものではないことはいうまでもない。 (6) 以上のとおり,被告が,基礎商品比較法も施行令121条1項1号に規定する有効性判定の方法として取り扱われるべきであるとして述べる点は,いずれも理由がない。 3(1) そこで,本件通貨オプション取引について,施行令121条1項1号に規定する方法,すなわち,「期末時又は決済時におけるそのデリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額とヘッジ対象資産等評価差額とを比較する方法」により有効性判定を行い,その有効性 する方法,すなわち,「期末時又は決済時におけるそのデリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額とヘッジ対象資産等評価差額とを比較する方法」により有効性判定を行い,その有効性割合が概ね100分の80から100分の125まで(施行令121条の2)となっており,本件通貨オプション取引が本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるものとして有効であると認められるか否かについて検討する。 (2) まず,施行令121条1項1号は,「期末時又は決済時」と規定するところ,ここにいう「期末時」とは,当該事業年度終了の時までにヘッジ対象資産につき譲渡又は消滅等がなく,かつ,当該デリバティブ取引等の決済をしていない場合のその時をいい,「決済時」とは,当該デリバティブ取引等の決済をした場合のその決済の時をいう(同項)。 前記第2の2(4)エのとおり,本件米ドル建社債は,本件通貨オプション取引を行った時から本件事業年度の終了の時までの間において譲渡又は消滅等はなく,かつ,本件通貨オプション取引は,本件事業年度の終了の時において,いずれも権利行使されておらず,決済されていなかったから,本件通貨オプション取引の有効性判定は,「期末時」,すなわち,本件事業年度の終了の時における本件通貨オプション取引に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額とヘッジ対象資産等評価差額とを比較することとなる。 (3) 次に,施行令121条1項1号にいう「ヘッジ対象資産等評価差額」とは,ヘッジ対象資産のデリバティブ取引等を行った時における価額とその期末時又は決済時における価額との差額をいう(同条2項)。 証拠(乙1,7)及び弁論の全趣旨によれば,本件通貨オプション取引に係るヘッジ対象資産である本件米ドル建社債の本件通貨オプション取 額とその期末時又は決済時における価額との差額をいう(同条2項)。 証拠(乙1,7)及び弁論の全趣旨によれば,本件通貨オプション取引に係るヘッジ対象資産である本件米ドル建社債の本件通貨オプション取引時における価額,本件通貨オプション取引時における米国ドルの為替レート,本件事業年度の終了の時における米国ドルの為替レートは,それぞれ別表7の「ヘッジ対象資産のオプション取引時価額」欄,「オプション取引時為替レート」欄,「期末時為替レート」欄のとおりであると認められるから,本件通貨オプション取引に係る「ヘッジ対象資産等評価差額」は,別表7の「ヘッジ対象資産等評価差額」欄のとおりとなる。 (4)アまた,施行令121条1項1号にいう「デリバティブ取引等に係る法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額」とは,前記1(2)のとおり,①当該デリバティブ取引等の決済によって生じた損益額,②法61条の4第1項に規定する有価証券の空売り等に係るみなし決済損益額,③法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額及び④法61条の9第2項に規定する外貨建資産等の期末換算差額をいうところ,前記第2の2(4)エのとおり,本件通貨オプション取引は,本件事業年度の終了の時において,いずれも権利行使されておらず,決済されていなかったから,本件通貨オプション取引に係る「法61条の6第1項に規定する利益額又は損失額」とは,上記③法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額をいうこととなる。 イ(ア) そして,前記第2の2(4)ウのとおり,本件通貨オプション取引は,「店頭デリバティブ取引」のうち金融商品取引法2条22項3号に該当する取引であるところ,施行規則27条の7第3項3号は,金融商品取引法2条22項 第2の2(4)ウのとおり,本件通貨オプション取引は,「店頭デリバティブ取引」のうち金融商品取引法2条22項3号に該当する取引であるところ,施行規則27条の7第3項3号は,金融商品取引法2条22項3号に該当する取引に係る法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額とは,当該取引につき,その取引に係る権利の行使により当事者間で授受することを約した金額,事業年度終了の時の当該権利の行使に係る指標の数値及び当該指標の予想される変動率を用いた合理的な方法により算出した金額をいうと定めている。 (イ) ところで,通貨オプションの価格を算定するモデルの1つであるブラック・ショールズ・モデルは,オプションの行使価格(いわゆるストライキングプライス),外国為替の直物相場(いわゆるスポットレート),各通貨の金利,権利行使日までの期間(いわゆるオプション期間),外国為替相場の変動率の標準偏差(いわゆるボラティリティ)を変数として,オプション価格を算定する方法であるところ(乙16,22),このうち,オプションの行使価格は,施行規則27条の7第3項3号にいう「その取引に係る権利の行使により当事者間で授受することを約した金額」に,外国為替の直物相場,各通貨の金利及び権利行使日までの期間は,同号にいう「当該権利の行使に係る指標の数値」に,外国為替相場の変動率の標準偏差は,同号にいう「当該指標の予想される変動率」に,それぞれ該当するものであり,また,ブラック・ショールズ・モデルは,通貨オプションの価格の算定方法として広く合理的と認められ,一般的に使用されているものといえる(乙16,17の1,2,乙22)。 そうすると,ブラック・ショールズ・モデルにより算定されたオプション価格とオプション取引時に支払を約したオプション料 められ,一般的に使用されているものといえる(乙16,17の1,2,乙22)。 そうすると,ブラック・ショールズ・モデルにより算定されたオプション価格とオプション取引時に支払を約したオプション料との差額をもって,法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額とする方法は,施行規則27条の7第3項3号に規定する「その取引に係る権利の行使により当事者間で授受することを約した金額,事業年度終了の時の当該権利の行使に係る指標の数値及び当該指標の予想される変動率を用いた合理的な方法」というべきである。 (ウ) なお,原告は,ブラック・ショールズ・モデルを用いて算定したオプション価格は理論値にすぎず,オプションの基礎商品を期末時に市場価格で購入し,その基礎商品を権利行使日にオプションを行使して行使価格で売却するものとして算定する方法こそが,施行規則27条の7第3項3号の規定に合致する旨主張するが,このような算定方法は,同号に規定する「オプション取引の権利行使により当事者間で授受することを約した金額」,「当該権利の行使に係る指標の数値」及び「当該指標の予想される変動率」のうち,「当該指標の予想される変動率」を用いる方法ではないから,同号に規定する「合理的な方法」であるとはいえない。 ウそこで,本件通貨オプション取引に係る法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額を算定するに,証拠(乙17の1,2)によれば,ブラック・ショールズ・モデルにより算定した本件通貨オプション取引の本件事業年度の終了の時における評価額は,別表7の「期末時評価額」欄のとおりであると認められるところ,証拠(乙8)によれば,本件通貨オプション取引のオプション料は,別表7の「オプション料」欄のとおりであると 度の終了の時における評価額は,別表7の「期末時評価額」欄のとおりであると認められるところ,証拠(乙8)によれば,本件通貨オプション取引のオプション料は,別表7の「オプション料」欄のとおりであると認められるから,本件通貨オプション取引に係る法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額,すなわち,本件通貨オプション取引の本件事業年度の終了の時における評価額と本件通貨オプション取引のオプション料との差額は,別表7の「みなし決済損益額」欄のとおりとなる。 (5)ア以上に基づき,本件通貨オプション取引の有効性判定を行うに,本件通貨オプション取引に係るヘッジ対象資産等評価差額は,別表7の「ヘッジ対象資産等評価差額」欄のとおり,いずれも零を下回っているから,施行令121条の2第1項1号イにいう「当該デリバティブ取引等を行った時におけるヘッジ対象資産の価額が期末時又は決済時における価額を超える場合」に該当する。 よって,本件通貨オプション取引の有効性判定の方法は,同号イに定める方法,すなわち,本件通貨オプション取引に係るデリバティブ等損益額に係る利益額を,その超える部分の金額で除して計算した割合が,概ね100分の80ないし125までとなっているか否かにより判定することとなる。 イそして,本件通貨オプション取引のうち,別表7の番号1ないし4,9ないし12の取引については,いずれもみなし決済損益額が零を下回っており,デリバティブ取引等に係る利益額が生じていないところ,本件米ドル建社債の本件通貨オプション取引を行った時における価額が本件事業年度終了の時における価額を超える部分の金額は零を上回るものであるから,みなし決済損益額をその超える部分で除して計算した割合も零を下回ることとなり,概ね100分の80ないし 時における価額が本件事業年度終了の時における価額を超える部分の金額は零を上回るものであるから,みなし決済損益額をその超える部分で除して計算した割合も零を下回ることとなり,概ね100分の80ないし125までの範囲に入らないことは明らかである。 また,その余の別表7の番号5ないし8,13ないし18の取引について,みなし決済損益額を,本件米ドル建社債の本件通貨オプション取引を行った時における価額が本件事業年度終了の時における価額を超える部分の金額で除して計算した割合は,別表7の「有効性」欄のとおり,100分の0.15ないし4.91であり,いずれも有効性割合が概ね100分の80ないし125までの範囲に入っていないから,本件通貨オプション取引が,本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であるとは認められない。 ウしたがって,本件通貨オプション取引は,いずれも本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であるとは認められない。 4(1) 以上によれば,本件米ドル建社債は,そのヘッジ対象資産等損失額を減少させるために本件通貨オプション取引が行われているものの,本件通貨オプション取引が,本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であるとは認められず,法61条の6第1項の規定による繰延ヘッジ処理の適用はないから,本件米ドル建社債は,施行令122条の3に規定する「外貨建資産等」に当たる。 したがって,本件米ドル建社債については,法61条の9第3項,施行令122条の3の規定により,その取得等の基因となった外貨建取引を当該事業年度終了の時において行ったものとみなして,法61条の9第1項の規定に基づく事業年度終了の時における外貨建資産等の円換算をすることができるから,同条2項の 基因となった外貨建取引を当該事業年度終了の時において行ったものとみなして,法61条の9第1項の規定に基づく事業年度終了の時における外貨建資産等の円換算をすることができるから,同条2項の規定に基づき,その外国為替換算差額である本件外国為替換算差損を損金の額に算入することができる。 (2) 一方,本件通貨オプション取引については,法61条の6の規定による繰延ヘッジ処理が適用されないから,法61条の5第1項の規定に基づき,そのみなし決済損益額を益金又は損金の額に算入すべきであるところ,前記3(4)ウのとおり,本件通貨オプション取引に係る法61条の5に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額は,別表7の「みなし決済損益額」欄のとおりであり,その合計額は7113万9376円であるから,この金額は,原告の本件事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入されるべきである。 5 以上に基づき,原告の本件事業年度の法人税に係る所得金額及び納付すべき法人税額並びに過少申告加算税額を算定すると,別紙2「原告の本件事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額並びに原告の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税額」記載のとおり,所得金額は237億4082万2014円,納付すべき法人税額は44億3180万2900円,過少申告加算税額は3億0561万3000円となる。 したがって,本件更正処分のうち所得金額237億4082万2014円及び納付すべき法人税額44億3180万2900円を超える部分並びに本件賦課決定処分のうち過少申告加算税額3億0561万3000円を超える部分は違法であり,取消しを免れない。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,本件更正処分のうち所得金額237億4082万2014円,納付すべき法人税額44億3180万29 万3000円を超える部分は違法であり,取消しを免れない。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,本件更正処分のうち所得金額237億4082万2014円,納付すべき法人税額44億3180万2900円を超える部分及び本件賦課決定処分のうち過少申告加算税額3億0561万3000円を超える部分の取消しを求める部分に限り理由があるから,これを一部認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条ただし書を適用して主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官定塚誠 裁判官中辻雄一朗 裁判官渡邉哲別紙1本件更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張 1 本件更正処分の根拠被告が本訴において主張する,原告の本件事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額は,次のとおりである。 (1) 所得金額(別表2⑱欄) 562億7018万8168円上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算し,ウの金額を減算したものである。 ア確定申告における所得金額(別表2①欄)135億9437万6810円上記金額は,原告が麹町税務署長に対し平成20年6月30日に提出した本件事業年度の法人税の確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)の「所得金額」欄に記載された金額である。 イ所得金額に加算される金額(別表2⑭欄)427億4345万6746円上記金額は次の(ア)ないし(コ)の金額の合計額である。 (ア) 外国為替換算差損の過大計上額(別表2②欄)418億9827万3631円上記金額は,次のa及びbの金額の合計額である。 a 上記金額は次の(ア)ないし(コ)の金額の合計額である。 (ア) 外国為替換算差損の過大計上額(別表2②欄)418億9827万3631円上記金額は,次のa及びbの金額の合計額である。 a 外貨建債券に係る為替換算差損の過大計上額(別表2③欄,別表3「合計金額」欄) 326億0050万5530円上記金額は,原告が外国為替換算差損として本件事業年度の損金の額に算入した金額のうち,原告がヘッジ対象資産とした本件米ドル建社債に係る外国為替換算差損の金額であるが,上記ヘッジ対象資産とした外貨建債券は施行令122条の3に規定する外貨建資産等から除かれることとなるため,上記金額は本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 b 外貨建株式に係る外国為替差損の過大計上額(別表2④欄)92億9776万8101円上記金額は,原告が本件事業年度終了の日において保有する外貨建株式のうちAの外貨建株式につき,外国為替の売買相場が著しく変動したとして,本件事業年度の損金の額に算入した外国為替換算差損の金額であるが,当該外貨建株式に係る外国為替の売買相場の変動は,施行令122条の3に規定する外国為替の売買相場が著しく変動した場合に該当しないため(別表4⑥欄参照),当該金額は,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (イ) 再保険料の過大計上額(別表2⑤欄) 2億9271万0963円上記金額は,原告が一時払最低死亡保障特約付変額個人年金保険における最低死亡保障部分に係る再保険として出再した再保険料のうち,本件事業年度の終了の日までの収益に対応しない未経過再保険料の額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (ウ) 有価証券評価損の過大計上額(別表2⑥欄) 822万0976円上記金額 事業年度の終了の日までの収益に対応しない未経過再保険料の額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (ウ) 有価証券評価損の過大計上額(別表2⑥欄) 822万0976円上記金額は,原告が有価証券評価損として損金の額に算入した,非上場会社の株式に係る帳簿価額と本件事業年度終了の日の同株式の時価との差額であるが,同社の資産状態が著しく悪化したとは認められないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (エ) 支払手数料のうち損金の額に算入されない金額(別表2⑦欄)2億1201万1084円上記金額は,原告が支払手数料として計上した,生命保険募集代理店に対して支出した奨励手当の金額のうち,本件事業年度の終了の日までに債務が確定していない金額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (オ) 支払備金の過大計上額(別表2⑧欄) 1億1789万5000円上記金額は,本件事業年度の終了の日における支払備金勘定のうち,同日において保険契約に基づく支払義務が認められないものであり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (カ) 減価償却超過額(別表2⑨欄) 4880万6345円上記金額は,原告が外注費用に計上した,システム開発におけるプログラム作成に要した費用としてソフトウェアの取得価額に算入されるべき金額のうち,償却限度額を超える部分の金額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (キ) 減価償却費のうち損金の額に算入されない金額(別表2⑩欄)9754万4600円上記金額は,次のaないしcの金額の合計額である。 a 6895万3086円上記金額は,原告が減価償却費に計上した金額のうち,開発中のシステムの取得価額に算入すべき金額であ 754万4600円上記金額は,次のaないしcの金額の合計額である。 a 6895万3086円上記金額は,原告が減価償却費に計上した金額のうち,開発中のシステムの取得価額に算入すべき金額であり,当該システムは事業の用に供されていないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 b 1459万9200円上記金額は,原告が本件事業年度において除却したとして減価償却費に含めて計上した,汎用開発ツールの使用ライセンスの本件事業年度の終了の日の未償却残高であるが,同汎用開発ツールが除却された事実は認められないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 c 1399万2314円上記金額は,原告が本件事業年度において除却したとして減価償却費に含めて計上した,自社開発ソフトウェアの本件事業年度終了の日の未償却残高であるが,同ソフトウェアが除却された事実は認められないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (ク) 交際費等の損金不算入額(別表2⑪欄) 928万0297円上記金額は,次のaないしcの金額の合計額である。 a 591万0050円上記金額は,原告がその他会議費として損金の額に算入した金額のうち,支社マーケティング本部が行ったミーティング後の社員懇親会に伴う社員のホテル宿泊代であり,租税特別措置法(平成20年法律第23号による改正前のもの。以下「措置法」という。)61条の4第3項に規定する交際費等に該当するため,同条1項により本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 b 298万4672円上記金額は,原告がその他会議費として損金の額に算入した金額のうち,原告の保険代理店の従業員を接待するために要した懇親会代及びD観光代等であり,措置法61条の 額である。 b 298万4672円上記金額は,原告がその他会議費として損金の額に算入した金額のうち,原告の保険代理店の従業員を接待するために要した懇親会代及びD観光代等であり,措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当するため,同条1項により本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 c 38万5575円(別表5 22 欄)上記金額は,措置法61条の4第3項に規定する交際費等に係る消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の額のうち,控除対象外消費税額等の増加額であり,同項に規定する交際費等の額に含まれる金額である(消費税法等の施行に伴う法人税の取扱について(平成元年3月1日直法2-1)12(注)2参照)。 (ケ) 損金の額に算入されない控除対象外消費税額等の額(別表2⑫欄,別表5 21 欄) 5871万1590円上記金額は,原告が本件事業年度の損金の額に算入した,控除対象外消費税額等のうち,施行令139条の4第3項に規定される繰延消費税額等以外の金額68億4187万0828円(別表5⑳欄)と,原告が原告の平成19年4月1日から平成20年3月31日までの消費税等の課税期間に係る消費税等の修正申告書及び麹町税務署長が平成21年8月7日付けで原告に対してした同課税期間の消費税等の更正処分に基づき再計算した控除対象外消費税額等67億8315万9238円(別表5⑰欄)との差額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (コ) 繰延消費税額等の損金算入限度超過額(別表2⑬欄,別表5⑲)2260円上記金額は,原告が施行令139条の4第3項に規定する繰延消費税額等について,本件事業年度の損金の額に算入した金額4861万7163円(別表5⑱欄)と,同項の規定に ⑬欄,別表5⑲)2260円上記金額は,原告が施行令139条の4第3項に規定する繰延消費税額等について,本件事業年度の損金の額に算入した金額4861万7163円(別表5⑱欄)と,同項の規定に基づき計算した損金の額に算入される金額4861万4903円(別表5⑯欄)との差額であり,法65条及び施行令139条の4第3項の規定により,損金の額に算入されない金額である。 ウ所得金額から減算される金額(別表2⑰欄) 6764万5388円上記金額は,次の(ア)及び(イ)の金額の合計額である。 (ア) 減価償却超過額の損金算入額(別表2⑮欄)1616万9320円上記金額は,本件事業年度の前事業年度から繰り越された減価償却資産の償却超過額のうち,本件事業年度における償却不足額であり,本件事業年度の損金の額に算入される金額である。 (イ) 前払費用の過大計上額(別表2⑯欄) 5147万6068円上記金額は,原告が本件事業年度に募集人支払手数料として計上した金額のうち,新規代理店に前払したものとして,本件事業年度の損金の額から減算した金額10億8099万7441円のうち消費税等に相当する金額であるが,原告が会計上税抜経理を選択していることから,本件事業年度の損金の額から減算する必要のない金額である。 (2) 所得金額に対する法人税額(別表2⑲欄)168億8105万6400円上記金額は,上記(1)の所得金額(国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)に法人税法143条(平成19年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)に規定する税率を乗じて計算した金額である。 (3) 法人税額の特別控除額(別表2⑳欄) 761万2189円上記金額は 税法143条(平成19年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)に規定する税率を乗じて計算した金額である。 (3) 法人税額の特別控除額(別表2⑳欄) 761万2189円上記金額は,租税特別措置法42条の11(平成19年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)に規定される所得金額に対する法人税額から控除する情報基盤強化設備等を取得した場合の法人税額の特別控除額であり,本件事業年度の法人税額から控除される金額である。 (4) 法人税額から控除される所得税額等(別表2 23 欄)26億8283万1506円上記金額は,法144条により準用された,読替え後の法68条の規定により法人税の額から控除される金額であり,本件確定申告書に記載された金額と同額である。 (5) 納付すべき法人税額(別表2 24 欄) 141億9061万2700円上記金額は,上記(2)の金額から上記(3)及び上記(4)の金額を差し引いた金額である(ただし,通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)。 (6) 既に納付の確定した法人税額(別表2 25 欄)13億7567万2400円上記金額は,本件確定申告書の提出により納付の確定した法人税額である。 (7) 差引納付すべき法人税額(別表2 26 欄) 128億1494万0300円上記金額は,上記(5)の金額から上記(6)の金額を差し引いた金額である。 2 本件更正処分の適法性本訴において,被告が主張する原告の本件事業年度の法人税の所得金額及び納付すべき法人税額は,それぞれ562億7018万8168円(上記1(1))及び141億9061万2700円(上記1(5))であるところ,これらの金額は,本件更正処分における所得金額及び納付すべき法人 付すべき法人税額は,それぞれ562億7018万8168円(上記1(1))及び141億9061万2700円(上記1(5))であるところ,これらの金額は,本件更正処分における所得金額及び納付すべき法人税額と同額であるから,本件更正処分は適法である。 3 本件賦課決定処分の根拠(1) 上記2のとおり,本件更正処分は適法であるところ,同処分により原告が新たに納付すべき法人税額128億1494万0300円(上記1(7))については,その計算の基礎となった事実について,原告がこれを計算の基礎としなかったことに,通則法65条4項所定の「正当な理由」があるとは認められない。 (2) したがって,原告の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税の額は,次のア及びイの金額を合計した17億1931万5500円となる。 ア原告が新たに納付すべきこととなった法人税額128億1494万0300円(上記1(7))を基礎として,通則法65条1項の規定を適用し,128億1494万円(通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。以下同じ。)に対して100分の10の割合を乗じて算出した金額12億8149万4000円イ 128億1494万円のうち,通則法65条2項の規定に従い原告の期限内申告税額に相当する金額(控除税額を差し引く前の法人税額40億5850万3928円)を超える部分に相当する税額87億5643万円を基礎となる税額とし,これに100分の5の割合を乗じて算出した金額4億3782万1500円 4 本件賦課決定処分の適法性本訴において,被告が主張する法人税の過少申告加算税の金額は,上記3で述べたとおりであるところ,本件賦課決定処分の金額はこれと同額であるから,本件賦課決定処分は適法である。 別紙2 性本訴において,被告が主張する法人税の過少申告加算税の金額は,上記3で述べたとおりであるところ,本件賦課決定処分の金額はこれと同額であるから,本件賦課決定処分は適法である。 別紙2原告の本件事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額並びに原告の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税額 1 原告の本件事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額当裁判所が認定した原告の本件事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額は,次のとおりである。 (1) 所得金額(別表8⑰欄) 237億4082万2014円上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算し,ウの金額を減算したものである。 ア確定申告における所得金額(別表8①欄)135億9437万6810円上記金額は,本件確定申告書の「所得金額」欄に記載された金額である。 イ所得金額に加算される金額(別表8⑬欄)102億1409万0592円上記金額は次の(ア)ないし(コ)の金額の合計額である。 (ア) 外国為替換算差損の過大計上額(別表8②欄)92億9776万8101円上記金額は,原告が本件事業年度終了の日において保有する外貨建株式のうちAの外貨建株式につき,外国為替の売買相場が著しく変動したとして,本件事業年度の損金の額に算入した外国為替換算差損の金額である。当該外貨建株式に係る外国為替の売買相場の変動は,施行令122条の3に規定する外国為替の売買相場が著しく変動した場合に該当しないため(別表4⑥欄参照),当該金額は,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (イ) 再保険料の過大計上額(別表8③欄) 2億9271万0963円上記金額は,原告が一時払最低死亡保障特約付変額個人年金保険における最低死亡保障部分に係る再保険として 金額である。 (イ) 再保険料の過大計上額(別表8③欄) 2億9271万0963円上記金額は,原告が一時払最低死亡保障特約付変額個人年金保険における最低死亡保障部分に係る再保険として出再した再保険料のうち,本件事業年度の終了の日までの収益に対応しない未経過再保険料の額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (ウ) 有価証券評価損の過大計上額(別表8④欄) 822万0976円上記金額は,原告が有価証券評価損として損金の額に算入した,非上場会社の株式に係る帳簿価額と本件事業年度終了の日の同株式の時価との差額であるが,同社の資産状態が著しく悪化したとは認められないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (エ) 支払手数料のうち損金の額に算入されない金額(別表8⑤欄)2億1201万1084円上記金額は,原告が支払手数料として計上した,生命保険募集代理店に対して支出した奨励手当の金額のうち,本件事業年度の終了の日までに債務が確定していない金額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (オ) 支払備金の過大計上額(別表8⑥欄) 1億1789万5000円上記金額は,本件事業年度の終了の日における支払備金勘定のうち,同日において保険契約に基づく支払義務が認められないものであり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (カ) 減価償却超過額(別表8⑦欄) 4880万6345円上記金額は,原告が外注費用に計上した,システム開発におけるプログラム作成に要した費用としてソフトウェアの取得価額に算入されるべき金額のうち,償却限度額を超える部分の金額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (キ) 減価償却費のうち損金の額に算入されない金額 用としてソフトウェアの取得価額に算入されるべき金額のうち,償却限度額を超える部分の金額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (キ) 減価償却費のうち損金の額に算入されない金額(別表8⑧欄)9754万4600円上記金額は,次のaないしcの金額の合計額である。 a 6895万3086円上記金額は,原告が減価償却費に計上した金額のうち,開発中のシステムの取得価額に算入すべき金額であり,当該システムは事業の用に供されていないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 b 1459万9200円上記金額は,原告が,本件事業年度において除却したとして減価償却費に含めて計上した,汎用開発ツールの使用ライセンスの本件事業年度の終了の日の未償却残高であるが,同汎用開発ツールが除却された事実が認められないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 c 1399万2314円上記金額は,原告が,本件事業年度において除却したとして減価償却費に含めて計上した,自社開発ソフトウェアの本件事業年度終了の日の未償却残高であるが,ソフトウェアが除却された事実は認められないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (ク) 交際費等の損金不算入額(別表8⑨欄) 928万0297円上記金額は,次のaないしcの金額の合計額である。 a 591万0050円上記金額は,原告がその他会議費として損金の額に算入した金額のうち,支社マーケティング本部が行ったミーティング後の社員懇親会に伴う社員のホテル宿泊代であり,措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当するため,同条1項により本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 b 298万4672円上記金 に伴う社員のホテル宿泊代であり,措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当するため,同条1項により本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 b 298万4672円上記金額は,原告がその他会議費として損金の額に算入した金額のうち,原告の保険代理店の従業員を接待するために要した懇親会代及びD観光代等であり,措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当するため,同条1項により本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 c 38万5575円(別表5 22 欄)上記金額は,措置法61条の4第3項に規定する交際費等に係る消費税等の額のうち,控除対象外消費税額等の増加額であり,同項に規定する交際費等の額に含まれる金額である(消費税法等の施行に伴う法人税の取扱について(平成元年3月1日直法2-1)12(注)2参照)。 (ケ) 損金の額に算入されない控除対象外消費税額等の額(別表8⑩欄,別表5 21 欄) 5871万1590円上記金額は,原告が本件事業年度の損金の額に算入した,控除対象外消費税額等のうち施行令139条の4第3項に規定される繰延消費税額等以外の金額68億4187万828円(別表5⑳欄)と,原告が原告の平成19年4月1日から平成20年3月31日までの消費税等の課税期間に係る消費税等の修正申告書及び麹町税務署長が平成21年8月7日付けで原告に対して行った同課税期間の消費税等の更正処分に基づき再計算した控除対象外消費税額等67億8315万9238円(別表5⑰欄)との差額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (コ) 繰延消費税額等の損金算入限度超過額(別表8⑪欄,別表5⑲)2260円上記金額は,原告が施行令139条の4第3項に規定する繰延消費税 本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (コ) 繰延消費税額等の損金算入限度超過額(別表8⑪欄,別表5⑲)2260円上記金額は,原告が施行令139条の4第3項に規定する繰延消費税額等について,本件事業年度の損金の額に算入した金額4861万7163円(別表5⑱欄)と,同項の規定に基づき計算した損金の額に算入される金額4861万4903円(別表5⑯欄)との差額であり,法65条及び施行令139条の4第3項の規定により,損金の額に算入されない。 (サ) 未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額(別表8⑫欄)7113万9376円上記金額は,施行規則27条の7第3項3号の規定に基づき計算した本件通貨オプション取引に係る法61条の5第1項に規定するみなし決済損益額であり,同項の規定により,益金の額に算入される。 ウ所得金額から減算される金額(別表8⑯欄) 6764万5388円上記金額は,次の(ア)及び(イ)の金額の合計額である。 (ア) 減価償却超過額の損金算入額(別表8⑭欄)1616万9320円上記金額は,本件事業年度の前事業年度から繰り越された減価償却資産の償却超過額のうち,本件事業年度における償却不足額であり,本件事業年度の損金の額に算入される金額である。 (イ) 前払費用の過大計上額(別表8⑮欄) 5147万6068円上記金額は,原告が本件事業年度に募集人支払手数料として計上した金額のうち,新規代理店に前払したものとして,本件事業年度の損金の額から減算した金額10億8099万7441円のうち消費税等に相当する金額であるが,原告が会計上税抜経理を選択していることから,本件事業年度の損金の額から減算する必要のない金額である。 (2) 所得金額に対する法人税額(別表8⑱欄)71億22 消費税等に相当する金額であるが,原告が会計上税抜経理を選択していることから,本件事業年度の損金の額から減算する必要のない金額である。 (2) 所得金額に対する法人税額(別表8⑱欄)71億2224万6600円上記金額は,上記(1)の所得金額(通則法118条1項の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)に法人税法143条に規定する税率を乗じて計算した金額である。 (3) 法人税額の特別控除額(別表8⑲欄) 761万2189円上記金額は,租税特別措置法42条の11に規定される所得金額に対する法人税額から控除する情報基盤強化設備等を取得した場合の法人税額の特別控除額であり,本件事業年度の法人税額から控除される金額である。 (4) 法人税額から控除される所得税額等(別表8 22 欄)26億8283万1506円上記金額は,法144条により準用された,読替え後の同法68条の規定により法人税の額から控除される金額であり,本件確定申告書に記載された金額と同額である。 (5) 納付すべき法人税額(別表8 23 欄) 44億3180万2900円上記金額は,上記(2)の金額から上記(3)及び上記(4)の金額を差し引いた金額である(ただし,通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)。 (6) 既に納付の確定した法人税額(別表8 24 欄)13億7567万2400円上記金額は,本件確定申告書の提出により納付の確定した法人税額である。 (7) 差引納付すべき法人税額(別表8 25 欄) 30億5613万0500円上記金額は,上記(5)の金額から上記(6)の金額を差し引いた金額である。 2 原告の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税額(1 法人税額(別表8 25 欄) 30億5613万0500円上記金額は,上記(5)の金額から上記(6)の金額を差し引いた金額である。 2 原告の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税額(1) 原告が新たに納付すべき法人税額30億5613万0500円(上記1(7))については,その計算の基礎となった事実について,原告がこれを計算の基礎としなかったことに,通則法65条4項所定の「正当な理由」があるとは認められない。 (2) したがって,原告の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税の額は,原告が新たに納付すべきこととなった法人税額30億5613万0500円(上記1(7))を基礎として,通則法65条1項の規定を適用し,30億5613万円(通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)に対して100分の10の割合を乗じて算出した金額3億0561万3000円となる。 

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