平成10(行コ)5 土地改良区賦課金賦課取消等請求控訴事件(原審・松山地方裁判所平成元年(行ウ)第7号、平成6年(行ウ)第2号、平成7年(行ウ)第5号、平成9年(行ウ)第1号)

裁判年月日・裁判所
平成13年3月22日 高松高等裁判所 公用負担・公用収用など
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判決文本文21,507 文字)

主文 一原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。 二右部分に係る一審原告ら(一審原告A及び同Bを除く。)の請求をいずれも棄却する。 三一審原告A及び同Bの各控訴を棄却する。 四訴訟費用は、第一、二審とも、一審原告らの負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨一一審原告A及び同B(以下右両名を「一審原告A両名」という。)の控訴の趣旨 1 原判決中、一審原告A両名に関する部分を取り消す。 2 一審被告が一審原告A両名に対してなした、昭和五九年第二期から昭和六三年第二期までの、原判決別紙「賦課金額一覧表」1及び8の「既賦課額」欄記載の各賦課金賦課処分のうち、平成九年四月八日付け組合費減額通知書によりなされた各減額更正処分によっても維持されている部分(同表1及び8の「改定額」欄記載の金額相当部分)が無効であることを確認する。 3 一審被告が一審原告A両名に対してなした、平成元年第一期、平成六年第一期・第二期、平成八年第二期分の、原判決別紙「賦課金額一覧表」1及び8の「既賦課額」欄記載の各賦課金賦課処分のうち、平成九年四月八日付け組合費減額通知書によりなされた各減額更正処分によっても維持されている部分(同表1及び8の「改定額」欄記載の金額相当部分)を取り消す。 4 一審被告が原判決別紙物件目録一記載の(一)及び(七)の各土地につき、一審原告A両名に対し、平成元年五月二日付け通知書によりなした、右各土地を一審被告の地区から除外しない旨の各処分を取り消す。 二一審被告の控訴の趣旨主文一、二項と同旨第二事案の概要一請求の概要及び訴訟経過本件は、水利改良事業施設(灌概用施設等)の維持管理等の事業を行っている土地改良区たる一審被告の組合員である一審原告らが、一審被告の地区内で所有又は耕作している田の一部について、一審被 び訴訟経過本件は、水利改良事業施設(灌概用施設等)の維持管理等の事業を行っている土地改良区たる一審被告の組合員である一審原告らが、一審被告の地区内で所有又は耕作している田の一部について、一審被告の事業による利益を全く受けていないと主張して、右田について一審被告が一審原告らに課した複数期の各賦課金賦課処分(一審原告らの被相続人に対してなされたものを含む。以下、一審被告による他の処分についても同じ。)のうち、一部(出訴期間経過分)についてはその無効であることの確認を、一部についてはその取消しを求めるとともに、右田について一審被告の地区から除外することを求めた一審原告らの申請を拒否した一審被告の各除外申請拒否処分の取消しを求めた事件である。 原審は、一審原告ら(一審原告A両名を除く。)の請求のうち、一審被告の事業による補給水が流入したことがないと認定した土地については受益を否定して、原判決別紙物件目録二記載の各土地に関する賦課金賦課処分の無効確認又は取消請求並びに原判決別紙物件目録三記載の各土地(以下、右両物件目録の双方又は一方に記載された土地を「原審受益否定土地」という。)に関する除外申請拒否処分の取消請求を認容した。しかし、右補給水が流入している土地については受益を肯定し、その土地にかかる処分に関する請求は棄却した。また、一審原告A両名の請求については、右両名が所有する原判決別紙物件目録一記載(一)及び(七)の各土地(以下「一審原告A両名土地」という。また、原審受益否定土地と合わせて「本件係争土地」という。」)の受益を肯定して、請求を棄却した。 そこで、一審被告及び一審原告A両名が、原判決中それぞれの敗訴部分の取消しを求めて控訴した。 二前提事実原判決「事実及び理由」第二の一(七頁七行目から二九頁六行目まで)記載のうち、一 した。 そこで、一審被告及び一審原告A両名が、原判決中それぞれの敗訴部分の取消しを求めて控訴した。 二前提事実原判決「事実及び理由」第二の一(七頁七行目から二九頁六行目まで)記載のうち、一審原告らに関係する部分のとおりであるから、これを引用する。 ただし、原判決一一頁三行目の次に改行して次のとおり加える。 「 Cは、第二審の訴訟係属中である平成一〇年四月二九日死亡し、その地位は子又は孫である一審原告D、同E、同F、同G及び同Hが相続した(一審被告の平成一〇年九月一一日付け訴訟手続受継申立書添付書類)。」三争点 1 本件係争土地に、一審被告事業による受益が存するか。 2 一審原告らに対する本件各賦課処分には、土地改良法三六条二項に違反する裁量権の逸脱があるか。 3 一審原告らに対する本件各拒否処分の違法性の有無四当事者の主張 1 原判決の引用(一) 一審原告らの主張原判決「事実及び理由」第二の二(二九頁八行目から三八頁一行目まで)記載のうち、一審原告らに関係する部分のとおりであるから、これを引用する。 (二) 一審被告の主張原判決「事実及び理由」第二の三(三八頁三行目から五三頁七行目まで)記載のうち、一審原告らに関係する部分のとおりであるから、これを引用する。 ただし、原判決四六頁末行の「約四八メートル」を「約三八メートル」に改める。 2 当審補充主張(一) 一審原告A、同B、同I、同J、同K及び同Lの主張(1) 受益の判断基準土地改良区が組合員に対して金銭等の賦課をするに当たっては、当該土地が何らかの具体的利益を受けることが要件とされているとみるべきであって、これが一般の人的公用負担における受益者負担の制度に適合する解釈である。 一審被告は、組合員は土地改良事業の地区内に農用地を保有する以上、当然に、具体的な が要件とされているとみるべきであって、これが一般の人的公用負担における受益者負担の制度に適合する解釈である。 一審被告は、組合員は土地改良事業の地区内に農用地を保有する以上、当然に、具体的な利益の存在を問題とすることなく、賦課の前提である利益を受けているものとみなし(あるいは強く推定され)、さらに、具体的利益の不存在を立証するか否かにかかわらず、受益の有無は既に事業計画に編入する段階で審査済みであるから土地改良法六六条の地区除外は認められないとの趣旨の主張をする。しかし、右解釈は、受益者負担の原則の法意を形骸化させるものである。また、同法六六条が地区除外の申出制度を定めているのは、事業開始後の事情変更(農地から宅地への地目変更等)の場合を想定しているのはもちろんだが、事業計画の策定段階では受益の有無は一般的類型的な方法、調査によらざるを得ないのであるから、一定地域を受益があるとして包括的に地区に編入した場合でも、具体的な立地条件等により具体的利益を受けない農用地が存在することは事柄の性質上当然にありうるのであって、同法はかかる場合の地区除外をも想定したと考えられる。一審被告主張の解釈は、ことさら右の観点を無視するものである。 (2) 利益を受ける可能性について原判決は、現時点で何らかの具体的利益を受けていなくても、将来的には当該土地につき何らかの利便の増進を受け得る状況下にある場合には、かかる状況にあること自体を一つの利益と認めることができるとの前提に立った上で、少なくとも、土地改良事業が一応完成し、その運営が開始した後に、なお現実の受益がない土地について、当該事業による将来的な利便の増進があるか否かを判断するにあたっては、右利便を現実化するために必要な労力や費用等のマイナス面と、それによって増進が期待しうる利便性等を総合勘案 益がない土地について、当該事業による将来的な利便の増進があるか否かを判断するにあたっては、右利便を現実化するために必要な労力や費用等のマイナス面と、それによって増進が期待しうる利便性等を総合勘案してなおプラス面が勝るという場合に限って「当該事業により土地が受ける利益」が存するとした。右判断は、受益の可能性や将来の利益の審査基準をより具体化、客観化させようとする解釈論であり、強い説得力がある。一審被告は、この「費用対効果論」を強く批判するが、右解釈論は常識的な立論であって、批判には全く根拠がない。 (3) α地区について(一審原告A両名の主張)水利権によって管理されない流下水は単なる余水であって受益の根拠とすることはできない。受益を主張する土地改良事業者は、計画した用水を現実に配分できるようにするために、具体的な施設を設置し、関係する水利団体の水利規範を調整する義務を負うべきである。そして、補給水を受益の根拠とする以上、関係する地区に補給した水の量と補給した時期を明確に立証する責任は、事業者の側にある。 土地改良法でいう受益として観念される「直接受益」とは、物理的に上流地区から下流地区に対し不可避的に流下水が流入するという事実だけでは足りない。水利規範として上流地区の自由な取水を制約して下流地区のために直接取水する権利が設定されていなければ受益の根拠たり得ないと解すべきであり、これが本件の重要な解釈上の争点である。 そして、α地区が補給水について上流地区の自由な取水を制限する権利も水利規範もなく、伝統的な上流地区優先の水利慣行がそのまま存続していることは明らかである。これまで、α地区が一審被告に対し補給水の配水を申し出たことはないが、仮に申し出たところで、上流地区がα地区に対する配水に協力することはありえない。したがって、α地区 続していることは明らかである。これまで、α地区が一審被告に対し補給水の配水を申し出たことはないが、仮に申し出たところで、上流地区がα地区に対する配水に協力することはありえない。したがって、α地区に受益はない。 (4) 第四土地改良区(角部本線掛かり)について(一審原告I、同J及び同Kの主張)第四土地改良区についても、右(3)で述べたことがそのまま当てはまる。 そして、角部本線掛かりには、一審被告事業による補給水が流入していない。第四土地改良区は、一審被告事業が開始する以前から角部ポンプで完全に灌漑できていた水利団体である。一審被告が事業を開始したからといって、事情が何も変わっていないのであるから、受益が発生する筈がない。一審被告は、水路の延長工事をすればよいと主張するが、補給水をもらう必要もないし、それだけの水量もないのに、地元負担で工事をせよという理由が理解できない。受益を肯定する方便として、費用対効果の観点から現実的には何の意味のない水路でも、多額の費用をかけて設置すればよいというのは本末転倒の議論である。 (五) 出口ポンプ掛かりについて(一審原告Lの主張)出口ポンプは、昭和四年ころ、地元耕作者の共同負担で設置され、昭和三〇年ころ改修を加えて現在に至っており、一審被告の事業が完成した昭和四二年時点で他の水源に依存しない閉鎖的な灌漑態勢が確立していたのであり、この状況は現在まで変化していない。 一審原告Lは、その耕作する原判決別紙物件目録二記載(四)の土地(同目録三記載(四)の土地も同一の土地である。以下「一審原告L土地」という。)の北側にある水路からの取水を一切行っていない。右北側水路は、その西方で本線水路と接続しているが、接続地点には段差と堰板が存在し、下流にある住宅地に冠水被害が生じるのを避けるため、本線水路から右 )の北側にある水路からの取水を一切行っていない。右北側水路は、その西方で本線水路と接続しているが、接続地点には段差と堰板が存在し、下流にある住宅地に冠水被害が生じるのを避けるため、本線水路から右北側水路へ流下水が来るのを防止している。 このように、右北側水路への水の流入は迷惑だから防止しているのであり、受益を拒否しているわけではない。 (二) 一審被告の主張(1) 受益について土地改良事業の地区となるべき一定の地域(土地改良法五条一項等)は、その事業によって利益を受ける土地である。この「一定の地域」は、農業の生産性の向上等という公的な目標を達成するという観点から、全く任意のものではあり得ず、土地や水系のつながり等自然的・社会的条件によって、一定の受益地として自ずと定まってくる性格のものである。この場合、当該土地に及ぶ「受益」については現実に利益を受けているかどうかのみにより定まるのではなく、利益を受け得るかどうかも含めて判断されるべきものである。すなわち、同法三六条、九〇条の「受ける利益」に応ずる賦課金については、末端の各受益地に水が供給されない状態でも、三条資格者は、利益を受けることが確実であればこれを負担しなければならない。 したがって、ある農用地が土地改良事業計画で定められた「一定地域」に含められれば、土地改良事業の実施により、その農用地は利益を得る可能性がある土地であり、当該土地を賦課対象とすることができる。三条資格者であっても土地改良事業による受益者に当たらない場合がありうることを予想している旨の原判決の判示は、法を曲解するものである。 そして、一審被告は、一審原告ら所有の本件係争土地についても、一審被告事業の実施により補給水を受け得る農用地としての意味で「受益」があると判断しているものである。 (2) 費用対効果論に である。 そして、一審被告は、一審原告ら所有の本件係争土地についても、一審被告事業の実施により補給水を受け得る農用地としての意味で「受益」があると判断しているものである。 (2) 費用対効果論について土地改良法上、事業の費用対効果は事業計画を策定する時点で地区全体で策定することとなっている。したがって、係争三地区を含め各地区ごとに事業の効用を算定することとしていないため、原判決の採用する費用対効果論は採り得ず、この点は司法判断の争点にならないと考える。 (3) α地区について一審原告ら主張の水利慣行は本件事業完成前に形成された慣行であり、新たに開発された用水に及ぶものではない。本件国営事業は、一定地域の慢性的な水不足を解消するために広域的な新たな水利秩序の形成を目指し、面河ダムを新規水源とする大規模な国営事業として計画し、関係受益農家の同意を得て申請し実施されたものであり、自らが発意した新たな水利秩序の形成のためのものであって、土地改良区内部の地区の間で更なる協定締結の必要性は認め難い。 一審被告が水利調整を行わなければならない範囲は、土地改良事業計画で定められた範囲に限られる。一審被告の地区内を流れる水路であっても、土地改良事業計画に定めがなく、その管理責任が及ばない末端の水路に関する水利調整については、一審被告が調整しなければならない責務はない。水利規範の問題は地域間の水利秩序の問題であって、本件国営事業ひいては一審被告の事業によって「受ける利益」とは何ら関係がない。 一審被告は、係争三地区を計画上も実質上も余水地区の扱いはせず、水の権利を与えている。そして、一審被告の事業による補給水は、水利施設が係争三地区まで直接的につながっており余水ではない状態で配水できる。そもそも、土地改良事業計画では、余水地区などという考え方 、水の権利を与えている。そして、一審被告の事業による補給水は、水利施設が係争三地区まで直接的につながっており余水ではない状態で配水できる。そもそも、土地改良事業計画では、余水地区などという考え方自体が存在しない。 なお、一審被告は、第一土地改良区と「大谷池調整池利用に関する協定書」を結び、大谷池に用水を貯留し、α地区からの配水要請に応じることとしている。 (4) 第四土地改良区について一審被告補給水は角部ポンプの手前の水路まで流下しており、この水路と角部本線水路との間に約三八メートル(一審では四八メートルと主張していたが、測量の結果約三八メートルと訂正する。)の区間の用水路新設工事を行えば、角部本線掛かりに一審被告補給水が容易に流入しうる状態にある。角部本線掛かりにおいては、一審被告補給水を容易に取水できる状況にありながら、主観的事情により受益が拒否されているのであり、受益を否定することはできない。 また、角部ポンプは、その位置、地形等からして、その湧水の水源は中山川の伏流水であることが明らかであり、その伏流水には、中山川の自然水に加えて一審被告の補給水が混入しているのであるから、一審被告の補給水が角部本線掛かりに流入していないとは断定できない。 (5) 出口ポンプ掛かりについて出口ポンプ掛かりについては、当該水田に隣接する既存の水路に一審被告補給水が流入している。したがって、一審被告補給水を取水するには、農家にとって一般的、日常的に行われている当該水路の僅かな堰上げで可能となる。 しかし、一審原告Lは、主観的事情により受益を拒否しているのであり、受益の存在を否定することはできない。 第三当裁判所の判断一争点1(受益の有無)について 1 土地改良法三六条一項の賦課の対象となる土地について本件各賦課処分は、土地改良法三六条一 のであり、受益の存在を否定することはできない。 第三当裁判所の判断一争点1(受益の有無)について 1 土地改良法三六条一項の賦課の対象となる土地について本件各賦課処分は、土地改良法三六条一項に基づき、一審被告の定款の定めにしたがってなされたものである。同法三六条二項は、同条一項の規定による賦課に当たっては、地積、用水量その他の客観的な指標により、当該事業によって当該土地が受ける利益を勘案しなければならない旨規定している。右規定は、同条一項による賦課処分の対象となる土地が事業によって利益を受ける土地であることを前提にしていると解される。しかし、同条一項による賦課の対象とすることができる土地は、当該事業によって現実の利益を受けている土地のみではなく、当該事業により利益を受け得る土地をも包含するものと解すべきである。 そこで、以下、右解釈に基づき、本件係争土地が一審被告事業によって利益を受け又は利益を受け得る土地といい得るかどうかを検討する。 2 一審被告補給水配水状況等について(一) 一審被告による係争三地区への補給水配水状況、一審被告による指定揚水設備制度と係争三地区における利用状況等についての認定事実は、出口ポンプ掛かり及び角部本線掛かりに関する事実を後記(二)、(三)のとおり補充するほか、原判決「事実及び理由」第三の二1(一)、(二)(六六頁一〇行目から七七頁六行目まで)記載のうち、一審原告らに関係する部分のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり補正する。 (1) 原判決七三頁三行目「上流地区において利用された水の余水が」を「上流地区からの流下水が」に改める。 (2) 同七三頁五行目から七四頁四行目までを削る。 (3) 同七五頁六行目「、その余水が」を削る。 (4) 同七五頁末行「乙三九」を「乙二四、三九」に改め、 」を「上流地区からの流下水が」に改める。 (2) 同七三頁五行目から七四頁四行目までを削る。 (3) 同七五頁六行目「、その余水が」を削る。 (4) 同七五頁末行「乙三九」を「乙二四、三九」に改め、「四三」の次に「、四六、四七」を加え、「、七二の3」を削る。 (5) 同七六頁五行目末尾の次に次のとおり加える。 「右指定用水設備制度は、一審被告が昭和四五年に事業賦課金の一部について地積割りと水量割りを併用していた賦課金賦課基準を改め、例外規定はあるもののすべての賦課金を地積割りにすると変更した際に設けられたものであり、一審被告地区内にある指定水源(ため池・ポンプ等)を一審被告が一元管理して、その維持、稼働に要する経費を一審被告が負担し、用水受益の平準化を図ろうとしたものである。」(6) 同七六頁七行目文頭から七七頁一行目「また、」までを削る。 (7) 同七七頁五行目「、余水となって」を削る。 (二) 出口ポンプ掛かりについて右(一)の事実(原判決引用部分)並びに証拠(甲五四の8・9、七四、七五、乙九二、九四の1ないし20、一一三、証人M、同N、一審原告L本人、検証〔当審〕)及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。 出口ポンプ掛かり付近の水路の状況は本判決別紙図面一の平面図(上図)に表示されたとおりであり、同図でA及びBと表示されている土地が一審原告L土地である。同土地は、その北側で水路(以下「北側水路」という。)と隣接しており、その東側にも水路(以下「東側水路」という。)が存する。北側水路は、同図面のとおり、その約九〇メートル西方において、町道に沿って南から北へ流れる水路(以下「西方本線水路」という。)と接続している。 西方本線水路及び東側水路には、前記(一)で引用した原判決「事実及び理由」第三の二1(一)の(3)②の三経路で配 、町道に沿って南から北へ流れる水路(以下「西方本線水路」という。)と接続している。 西方本線水路及び東側水路には、前記(一)で引用した原判決「事実及び理由」第三の二1(一)の(3)②の三経路で配水される一審被告補給水が流入している。西方本線水路と北側水路との接続点には、現在段差と堰板が存在し、西方本線水路の流下水は、右段差と堰板を越えないと北側水路に流入しないようになっている。しかし、西方本線水路の右接続点以北の部分は、一審被告事業の完成後である昭和四七ないし四八年ころに延長されたものであり、それ以前は西方本線水路を流れる水は、右接続点を経て北側水路に流入していた。 一審原告L土地は、地盤が少し高くなっているため北側水路の水が自然に流入する状況にはないが、北側水路に堰板等を設置し水口を造れば、北側水路から取水することが可能である。このような堰上げによる取水は農家にとって一般的な方法である。なお、一審原告L本人は、北側水路に堰板を落とすと、右土地の西側にある別紙図面一の平面図表示の私道地中の排水路を通じて南側の土地(同平面図で八〇ー一と表示された土地)に水が溢れる旨供述する。しかし、右供述は、実際の経験に基づくものではなく、同一審原告の推測、意見に止まるものであり、乙九四号証の1ないし20の写真、図面に照らしても、北側水路に堰板を設置した場合に他の土地への溢水が避け難いとは認められない。 (三) 角部本線掛かりについて前記(一)の事実(原判決引用部分)並びに証拠(甲八、乙六八、一〇六ないし一〇九、一一三、証人O、同M、検証〔原審及び当審〕)及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。 第四土地改良区用水系統図は、原判決別紙図面5のとおりであり、角部本線掛かりは、一審被告補給水が流入する用水路と現在接続していない。また、過去にも 及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。 第四土地改良区用水系統図は、原判決別紙図面5のとおりであり、角部本線掛かりは、一審被告補給水が流入する用水路と現在接続していない。また、過去にも一審被告補給水が水路等の導水設備によって角部本線掛かりの農用地に流入したことはない。 角部本線掛かりにおいて一審被告補給水を取水するためには、本判決別紙図面二のとおり、NO.4点からNO.7点にかけて約三八メートルの水路新設工事(あわせて約六〇メートルの勾配修正工事を行うことになる。)を行うことが必要である。一審被告の積算によると、右工事費用は二〇七万円(別途消費税相当額が加算される。以下の金額についても同じ。)となる。一審被告地区では、右工事のような末端地元水路工事はそれぞれの地区で行うこととなっているが、実際に右水路新設工事を行う場合の工事費用に対しては、愛媛県から四〇パーセント、一審被告から一〇パーセントの助成が見込まれる(右助成がされたときの地元負担額は一〇三万五〇〇〇円となる。)。さらにβ町から一〇パーセントの助成を受けることも不可能ではない(この助成がされれば地元負担額は八二万八○○○円となる。)。なお、仮に平成一一年一二月時点で角部ポンプを更新した場合の経費は、七〇五万円と見積られている。 3 本件係争土地における一審被告補給水の利用又は利用可能性右2の事実によると、一審原告A両名土地には一審被告補給水が流入しており、同土地で現に利用されていると認められる。 また、一審原告L土地は、一審被告補給水が流入していないものの、一審被告補給水が流入する西方本線水路と接続する北側水路に農家にとって一般的な方法で堰上げをすることにより、北側水路から取水することが可能な土地であるから、一審被告補給水を利用し得る土地であるというべきである 給水が流入する西方本線水路と接続する北側水路に農家にとって一般的な方法で堰上げをすることにより、北側水路から取水することが可能な土地であるから、一審被告補給水を利用し得る土地であるというべきである。なお、前示のとおり、西方本線水路と北側水路との接続点には、現在段差と堰板が存在し、西方本線水路の流下水は、右段差と堰板を越えないと北側水路に流入しないようになっている。しかし、右段差と堰板は、一審被告事業完成後である昭和四七ないし四八年ころに西方本線水路が北方へ延長されてから設けられたものであり、それ以前は北側水路に一審被告補給水が流入していた。したがって、現在右段差と堰板により西方本線水路を流れる一審被告補給水が北側水路に流入しないとしても、これは右水路を管理する末端地区の主観的事情に基づき、一審被告補給水が流入しないようにしたものに過ぎず、右段差、堰板の存在をもって一審原告L土地が一審被告補給水を利用し得る土地であることを否定することはできない。 角部本線掛かりについても、現在まで一審被告補給水が流入する水路と接続しておらず、一審被告補給水を取水するためには、前示のとおり約三八メートルの水路新設等の工事を行うことが必要である。しかし、右新設水路の長さが角部本線掛かりに張り巡らされた水路全体の長さに比べればごく僅かであることは、第四土地改良区の用水系統図(原判決別紙図面5)に照らしても明らかである。また、その費用についても、助成等が得られれば地元負担額は一〇〇万円前後にとどまり、仮に角部ポンプを更新した場合に要することが見込まれる経費七〇五万円と比較しても、これを負担することが困難であるとはいえない。したがって、右水路新設等の工事は、規模面でも費用面でも、一審被告補給水を取水するための方法として現実的なものというべきである。そうすると、 比較しても、これを負担することが困難であるとはいえない。したがって、右水路新設等の工事は、規模面でも費用面でも、一審被告補給水を取水するための方法として現実的なものというべきである。そうすると、角部本線掛かりについても、一審被告補給水を利用し得る土地であるということができる。 以上のとおり、本件係争土地は、いずれも一審被告補給水を現に利用しているか、あるいは現実的に可能な工夫や工事を施すことによりこれを利用することが可能な土地であるということができる。 4 一審被告補給水の有用性一審原告らは、本件係争土地の属する係争三地区は、豊富な湧水によって十二分に灌漑が可能であり、同地区に流入してくる一審被告補給水は農業用水としての有用性がないから、一審被告補給水の流入が受益であるとはいえないと主張する。そこで、右主張に対する判断の前提としてまず本件係争土地の属する係争三地区の灌漑の現状についての事実関係を検討しておく。 (一) α地区の灌漑の現状等について原判決「事実及び理由」第三の二2(二)(八二頁七行目から九二頁九行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり補正する。 (1)原判決八二頁九行目「六六」の次に「、六八、七一、七二」を加える。 (2) 同八四頁三行目「第一、第二、小ポンプの三機」を「小ポンプ」に改める。 (3) 同八四頁末行「(但し、」から同八五頁一行目「補助している。)」までを削る。 (4) 同八五頁五行目「水の余水が」を「後の水が」に改める。 (5) 同八五頁九行目及び一〇行目を削る。 (6) 同八五頁末行から八九頁六行目までを次のとおり改める。 「(3) α地区への流下水の状況及び水利慣行α地区の上流地区である第一土地改良区では、大正九年に同改良区が費用を負担して造成した大谷池を、大谷幹線水路 行から八九頁六行目までを次のとおり改める。 「(3) α地区への流下水の状況及び水利慣行α地区の上流地区である第一土地改良区では、大正九年に同改良区が費用を負担して造成した大谷池を、大谷幹線水路(右池、水路の位置関係は原判決別紙図面3のとおり)とともに維持管理してきた。α地区と第一土地改良区との間では、一審被告が設立される以前に、大谷池の貯留水については同改良区が自由に取水でき、α地区は仮に水が不足した場合であっても分水を要求しないという水利慣行があった。そして、大谷池のひ門の開閉や大谷幹線水路からの取水は、もっぱら第一土地改良区における水利用のために調整管理され、大谷池の貯留水が意図的にα地区に分水されることはなかった。なお、第一土地改良区からの排水についても、α地区と第一土地改良区との間では、一審被告設立以前から、第一土地改良区が自由に排水でき、その承水をα地区は拒否できない慣行であった。 一審被告設立後も、α地区が第一土地改良区に対し、その取水及び排水の量及び時期等について、何らかの要請をしたり、苦情を述べたことはない。」(7) 同九〇頁二行目「余水流入状況」を「流下水の状況」に改める。 (8) 同九一頁七行目文頭から九二頁一行目「なかったところ」までを次のとおり改める。 「 α地区では、一審被告が設立される以前から、地下水を利用して灌漑を行い、昔から一審被告地区内の他の地区が旱魃被害に遭った年でも被害に遭わなかったと伝承されてきたものであるところ」(二) γ地区の灌漑の現状等について原判決「事実及び理由」第三の二2(三)(九二頁末行から一〇二頁五行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり補正する。 (1) 原判決九五頁三行目及び四行目を削る。 (2) 同九三頁七行目から八行目にかけて「第一土地改良区 行から一〇二頁五行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり補正する。 (1) 原判決九五頁三行目及び四行目を削る。 (2) 同九三頁七行目から八行目にかけて「第一土地改良区」を「第一土地改良区及びβ町第三土地改良区」に改める。 (3) 同九六頁五行目「水の余水が」を「後の水が」に改める。 (4) 同九六頁九行目及び一〇行目を削る。 (5) 同九七頁六行目から一〇〇頁八行目までを次のとおり改める。 「(3) γ地区への流下水の状況及び水利慣行γ地区は、かつて小松川の流水を自由に取水し、これを灌漑用水として利用していたが、大正初期に第一土地改良区が設立された際、同改良区が農耕期にγ地区より上流にある仏心寺堰を通じて小松川流水を自由に取水することを承諾した。以後は、仏心寺堰の維持費用はすべて第一土地改良区が負担するようになる一方、右堰はもっぱら同改良区の水利用のために調整管理され、同改良区が小松川流水を自由に取水するようになった。γ地区は、昭和二〇年代に第二土地改良区に対しても仏心寺堰よりさらに上流に設けられた本谷堰を通じて小松川流水を自由に取水することを認め、同改良区が小松川流水を取水するようになり、γ地区が利用する小松川流水は、右両改良区が利用した後の水となった。 また、第一土地改良区が管理する大谷池と大谷幹線水路の流下水についての同改良区とγ地区との間の水利慣行は、前示の第一土地改良区とα地区との間の水利慣行と同様である。 排水についても、γ地区は、第一土地改良区からの承水を拒否できない慣行であった。 一審被告設立後も、γ地区が第一土地改良区に対し、その取水及び排水の量及び時期等について、何らかの要請をしたり、苦情を述べたことはない。」(6) 同一〇一頁二行目「余水流入状況」を「流下水の状況」に改める。 立後も、γ地区が第一土地改良区に対し、その取水及び排水の量及び時期等について、何らかの要請をしたり、苦情を述べたことはない。」(6) 同一〇一頁二行目「余水流入状況」を「流下水の状況」に改める。 (7) 同一〇一頁九行目文頭から一〇二頁二行目「なかったところ」までを次のとおり改める。 「 γ地区では、一審被告が設立される以前から、地下水を利用して灌漑を行い、昔から一審被告地区内の他の地区が旱魃被害に遭った年でも被害に遭わなかったと伝承されてきたものであるところ」(三) 第四土地改良区の灌漑の現状等について原判決「事実及び理由」第三の二2(四)(一〇二頁七行目から一一一頁三行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり補正する。 (1) 原判決一〇五頁六行目「水の余水は」を「後の水は」に改める。 (2) 同一〇五頁一〇行目から一〇六頁一行目までを削る。 (3) 同一〇六頁九行目から一〇九頁四行目までを次のとおり改める。 「(3) 第四土地改良区への流下水の状況及び水利慣行聖徳寺ポンプ掛かりは、かねてより、その地区内の湧水池に聖徳寺ポンプを設置し、維持管理してきた。第四土地改良区と聖徳寺ポンプ掛かりとの間では、一審被告が設立される以前に、右ポンプから取水した水については聖徳寺ポンプ掛かりが自由に取水でき、第四土地改良区は仮に水が不足した場合であっても分水を要求しないという水利慣行があった。そして、聖徳寺ポンプは、もっぱら聖徳寺ポンプ掛かりにおける水利用のために調整管理され、右ポンプ用水が意図的に第四土地改良区に分水されることはなかった。なお、聖徳寺ポンプ掛かりからの排水についても、第四土地改良区と聖徳寺ポンプ掛かりとの間では、一審被告設立以前から、聖徳寺ポンプ掛かりが自由に排水でき、その承水を第四土地改良区は拒否でき なかった。なお、聖徳寺ポンプ掛かりからの排水についても、第四土地改良区と聖徳寺ポンプ掛かりとの間では、一審被告設立以前から、聖徳寺ポンプ掛かりが自由に排水でき、その承水を第四土地改良区は拒否できない慣行であった。 一審被告設立後も、第四土地改良区が聖徳寺ポンプ掛かりに対し、その取水及び排水の量及び時期等について、何らかの要請をしたり、苦情を述べたことはない。」(4) 同一一〇頁二行目「角部九号支線掛かりへの余水流入状況」を「第四土地改良区への流下水の状況」に改める。 (5) 同一一〇頁五行目「まして」から一一一頁一行目「なかったところ」までを次のとおり改める。 「 第四土地改良区では、一審被告が設立される以前から、角部ポンプを利用して灌漑を行い、昔から一審被告地区内の他の地区が旱魃被害に遭った年でも被害に遭わなかったと伝承されてきたものであるところ」 5 受益の有無についての判断(一) 前記3のとおり、本件係争土地は、一審被告補給水を現に利用し、又は、利用することが可能な土地であり、このことをもって一審被告事業による受益があると評価することができる。 もっとも、右4の(一)ないし(三)で認定した事実によると、本件係争土地の属する係争三地区は、一審被告設立前から、主として、あるいは、もっぱらポンプを利用して汲み上げた地下水を水源として灌漑を行ってきたものであり、他の地区と比べて上流地区からの流下水に対する依存度は低く、本件係争土地にとって一審被告補給水の必要性が相対的に小さかったことは否定できないところである。 しかし、このことは、本件係争土地の受益の程度が低いことを意味するものではあっても、受益が存在しないことを意味するものではない。農地の灌漑に用いることができる水源として、単一のものでなく複数のものが存在することは、それ自体が 土地の受益の程度が低いことを意味するものではあっても、受益が存在しないことを意味するものではない。農地の灌漑に用いることができる水源として、単一のものでなく複数のものが存在することは、それ自体が有益なことということができる。仮に、一審被告事業開始前に係争三地区が地下水を利用できたため旱魃による被害を受けたことがなかったとしても、このことに変わりはない。揚水前の地下水は、都市開発、工場建設等の社会情勢の変化によって上流地域での地下水の揚水が増加すれば、地下水を従前どおり利用することが困難になるおそれを内包している。また、揚水前の地下水については、元来管理をすることができず、地下水を客体とする水利権の概念も成熟していないから、新たに上流地区での地下水利用者が出現し、そのため揚水できる地下水の量が減少したり地下水が枯渇したりした場合でも、そのことについて法的救済を得ることは極めて困難である。もとより、地下水を農地の近傍で揚水できる場合には便利であるし、浸透水であるが故に一時的な降水、渇水の影響を受けにくいなどの長所もあるが、他方で地下水利用には不安定な面が存在することも否定できないのである。したがって、従前から地下水が水源として存在する場合であっても、これに加えて性質の異なる水源である一審被告補給水が新たに利用できるようになることは、なお受益に該当するということができる。 なお、前記4(一)ないし(三)(原判決を補正して引用した部分)で認定したとおり、一審被告事業完成後であり、大旱魃といわれた平成六年においても、係争三地区は、さしたる旱魃被害を受けていない。しかし、証拠(乙一〇三の1ないし5、証人M)及び弁論の全趣旨によると、一般に水田においては一日当たりの水深で十数ミリないし二十数ミリの水量が地下へ浸透するとされていること、角部ポンプ けていない。しかし、証拠(乙一〇三の1ないし5、証人M)及び弁論の全趣旨によると、一般に水田においては一日当たりの水深で十数ミリないし二十数ミリの水量が地下へ浸透するとされていること、角部ポンプの湧水の水源としては一審被告補給水が流入する中山川の伏流水が大きいと考えられること、P愛媛大学農学部助教授の水収支モデルによる定量的解析(乙一〇三の2)によれば、δ地区における水田からの地下水浸透割合は、昭和五八年には全地下浸透量の約六〇パーセント、この内面河ダムからの補給水の関与割合は、灌漑期(六月ないし九月)における地下浸透量の約二四パーセントであったが、記録的な渇水年となった平成六年では全地下浸透量の約七一パーセント、この内面河ダムからの補給水の関与割合は、灌漑期における地下浸透量の約四二パーセントを占めるとされていることが認められる。そして、仮に右渇水年において面河ダムからの補給水がなければ、平野中央部で約四メートルの地下水位の低下が生じ、下流域への地下水流動量はほぼゼロになったであろうと分析されている。右事実のうち、地下水に対する面河ダムからの補給水の関与割合については一つの解析結果であり、その数値については異論がありうるとしても、係争三地区の背後地に当たる農地や中山川に流入した一審被告補給水が係争三地区の利用する地下水の涵養と安定に寄与したこと自体は容易に推認される。もとより、地下水や伏流水は管理が困難であって、一審被告補給水がその涵養に寄与していることを直ちに土地改良法三六条二項の受益とみることはできないし、一審被告もそのように主張するものではない。しかし、渇水年における右地下水涵養の事実に鑑みれば、仮に一審被告の事業がなかったとしても係争三地区が平成六年に何ら旱魃の被害に遭わなかったとは断じ得ないのであり、平成六年の旱魃の際 ものではない。しかし、渇水年における右地下水涵養の事実に鑑みれば、仮に一審被告の事業がなかったとしても係争三地区が平成六年に何ら旱魃の被害に遭わなかったとは断じ得ないのであり、平成六年の旱魃の際に係争三地区が被害を受けなかったことから遡って、一審被告補給水を利用し又は利用し得ることが本件係争土地にとって受益に当たらないと解することはできないのである。 (二) 一審原告らは、水利規範として上流地区の自由な取水を制約して下流地区のために直接取水する権利が設定されていなければ受益の根拠たり得ないと解すべきであると主張し、この点は当審補充主張でも強調されている。 しかし、土地改良事業開始前に上流地区と下流地区との間で形成された水利慣行は、事業開始前の流水に関するものであり、その水利慣行の拘束力が新たに開発された用水に及ぶものではない。下流地区の組合員と上流地区との組合員との間で、土地改良事業に関する資格、権利に優劣はなく、従前の水利慣行の存在故に一審原告らの一審被告補給水に関する権利までが制約されると解する根拠はない。すなわち、新たに開発された一審被告補給水については新たな水利慣行が形成されることが期待されているのであり、その形成は地域間の自主的な水利秩序の問題である。 この新たな水利秩序は各地区間の協議により形成されるものであり、一審被告がこれを調整する法律上の義務を負うものではない。したがって、新たに開発された一審被告補給水について、本件係争土地のために上流地区に対して一定の要求をなしうる水利慣行が未だ具体的かつ現実的なものとして形成されていないとしても、そのことをもって本件係争土地が受益地であることを否定することはできない。 また、証拠(甲六、証人O)によれば、一審被告は、昭和四七年五月、第一土地改良区との間で大谷池調整池利用に関する協 しても、そのことをもって本件係争土地が受益地であることを否定することはできない。 また、証拠(甲六、証人O)によれば、一審被告は、昭和四七年五月、第一土地改良区との間で大谷池調整池利用に関する協定書(甲六)を交わし、同改良区から大谷池を調整池として利用することについて同意を得ていること、右協定書では同改良区が有する大谷池の既得水利権については従前のとおりとするが、一審被告補給水の調整池として利用するための施設および用水管理は一審被告の権限で行い、貯水及び配水操作は一審被告が委嘱した者が一審被告の指示に従って行うものとされていることが認められる。このように、一審被告は、第一土地改良区との間で、大谷池を調整池として利用し、第一土地改良区の下流地区(一審原告A両名土地の属するα地区が含まれる。)に一審被告補給水を配水することを可能ならしめる合意をしている。このことからしても、第一土地改良区とα地区との間に前示の一審被告設立前の水利慣行があるからといって、一審被告補給水に関してまで、α地区が第一土地改良区に対して何ら要求をなしえないものではないことが明らかである。なお、右協定に基づき実際に貯水及び配水操作の委嘱を受けるのは第一土地改良区の組合員であり(証人O)、右協定締結後、これに基づき現実に大谷池の貯留水が意図的にα地区に配水されたとは認められない。しかし、そもそも、α地区から用配水調整委員ないし地区配水委員によって一審被告に対し必要配水量を申告し配水の申し出をしたことがないというのであるから、現実の配水がされた実績がないからといって、α地区において右協定を根拠とした配水を受けられないことになるものではない。 (三) また、前記第二の四2(当審補充主張)の(一)(2)で援用される「費用対効果論」、すなわち、土地改良事業が一応完成し、その運 いて右協定を根拠とした配水を受けられないことになるものではない。 (三) また、前記第二の四2(当審補充主張)の(一)(2)で援用される「費用対効果論」、すなわち、土地改良事業が一応完成し、その運営が開始した後に、なお現実の受益がない土地について、当該事業による将来的な利便の増進があるか否かを判断するにあたっては、右利便を現実化するめに必要な労力や費用等のマイナス面と、それによって増進が期待しうる利便性等を総合勘案してなおプラス面が勝るという場合に限って受益が認められるとする解釈論も、採用することはできない。土地改良法施行令二条は、土地改良法八条四項一号にいう土地改良事業の施行に関する基本的な要件を定めているが、その三号では「当該土地改良事業のすべての効用がそのすべての費用をつぐなうこと」とされている。すなわち、土地改良事業の費用対効果は事業計画を策定する時点で地区全体で考慮することとされているのであるが、土地改良法及び同法施行令において、個々の土地ごとに費用対効果を考慮することを想定したと解される規定はない。したがって、同法三六条二項の「当該土地が受ける利益」の解釈についても、右の個々の土地ごとの費用対効果を受益の要件とする根拠は乏しい。なお、原審受益否定土地では一審被告事業開始後三〇年以上にわたり、一審被告補給水を利用してこなかったのであるが、前記(二)で示したとおり、一審被告事業が完成したことにより、地下水が涵養され、係争三地区においてこれを豊富かつ安定的に使用できた可能性が認められるのであるから、これを所与のものとして現時点で費用対効果を論じることも相当でないというべきである。 したがって、一審被告事業開始後、水路等によって導水された一審被告補給水を現実に利用してこなかった原審受益否定土地についても、一審被告補給水を利用し 果を論じることも相当でないというべきである。 したがって、一審被告事業開始後、水路等によって導水された一審被告補給水を現実に利用してこなかった原審受益否定土地についても、一審被告補給水を利用し得ることをもって受益があると評価するのが相当である。 (四) そうすると、本件係争土地は、いずれも一審被告事業による利益を現に受け又は利益を受け得る土地に該当するから、一審被告は、本件係争土地について土地改良法三六条一項に基づく賦課をなしうる。 二争点2(裁量権逸脱の有無)について 1 土地改良区が組合員に対し土地改良法三六条一項による賦課を行うに当たっては、地積、用水量その他の客観的な指標により、当該事業によって当該土地が受ける利益を勘案しなければならないとされている(同条二項)。そして、右利益の程度の認定は、賦課を行う土地改良区の広範な裁量に委ねられ、明白に利益の認定を誤る等の裁量権の逸脱や恣意的に利益認定を行う等の裁量権の濫用がない限り、違法となるものではないと解される。けだし、右利益の認定は、具体的場面においては必ずしも容易でなく、農業生産、農業水利等に関する専門性・技術性を要するものである上に、賦課の基本となる経費の分担に関する事項は土地改良区の定款に記載することとされ(同法一六条一項五号)、その制定には土地改良事業に参加する資格を有する者の三分の二以上の同意(同法五条二項)、変更には総組合員の三分の二以上が出席し、その議決権の三分の二以上の議決を要し(同法三〇条一項一号、三三条一号)、いずれも都道府県知事の認可を受けることとされ(同法七条、三〇条二項)、かつ、賦課金の賦課徴収の方法は総会の議決事項であり、その議決には総組合員の半数以上が出席し、その過半数で決することとされており(同法三〇条一項六号、三二条一項)、法は、賦課処分権の行 三〇条二項)、かつ、賦課金の賦課徴収の方法は総会の議決事項であり、その議決には総組合員の半数以上が出席し、その過半数で決することとされており(同法三〇条一項六号、三二条一項)、法は、賦課処分権の行使について、都道府県知事の一定の監督のもとに、土地改良区の自主性を尊重しようとしていると解されるからである。 2 一審被告における賦課金賦課基準は、当初、事業賦課金のうち地元負担金ないし分担金相当額については地積割りと水量割りを併用し、その余の賦課金は地積割りとする旨定められていたが、昭和四五年に、例外規定はあるものの、すべての賦課金について地積割りにすると変更されたものである(前記第二の二の前提事実、原判決引用部分)。その際には、一審被告地区内にある指定水源(ため池・ポンプ等)を一審被告が一元管理し、その維持、稼働に要する経費を一審被告が負担する制度を設けて用水受益の平等化が図られている。そして、地積は、土地改良法三六条二項で例示として第一に挙げられている客観的指標であり、用水量の測定が容易でないのに比してその基準が明確であるから、一般的には右のような水源の一元管理の下で賦課金賦課基準を全額地積割りとすることにも一定の合理性があるといえる。 もっとも、前示のとおり、係争三地区では、ポンプによって地下水を揚水し主たる水源として利用してきたものであって、他の地区に比して、一審被告事業開始前から農業用水に恵まれており、一審被告補給水の必要性も類型的に低かったものである。このような事情を全く考慮に入れることなく、地積平等割りのみに基づき、本件係争土地に対する賦課金賦課処分を行ったとすれば、その処分に裁量権逸脱がないと断じ得るかどうかについては疑問が残るところである(ちなみに、係争三地区のポンプは一元管理の指定下にはなく、一審原告らがその費用を負担 する賦課金賦課処分を行ったとすれば、その処分に裁量権逸脱がないと断じ得るかどうかについては疑問が残るところである(ちなみに、係争三地区のポンプは一元管理の指定下にはなく、一審原告らがその費用を負担している。)。しかし、係争対象である本件各賦課処分は、本件訴訟が原審に係属中の平成九年に減額更正、すなわち一審被告補給水の流入がある一審原告A両名土地については通常賦課金の三〇パーセントの割合に、右流入のない原審受益否定土地については同一四パーセントの割合に、それぞれ減額された後のものであり、本件係争土地の受益の程度が類型的に低いことについてかなりの考慮が払われている。そして、賦課対象土地の受益の程度の認定は一審被告の広範な裁量に委ねられていることに鑑みれば、右減額を行った後に維持されている本件各賦課処分に裁量権逸脱があるということはできない。 なお、一審原告らは、東予市ε・ζ地区との対比において、本件各賦課処分の相当性を問題とする。しかし、証拠(甲三五、乙五一の1ないし3、八三の1・2、証人丹下勝)及び弁論の全趣旨によると、ε・ζ地区の農地は、一審被告から通常賦課金額の一四パーセントの賦課金賦課処分を受けているが、同地区は第四土地改良区より県営三号線幹線水路から遠方に位置し、海岸にも近い低地であること、ε・ζ地区内で、一審被告補給水が流入するε川から灌漑用水を取得している地域面積はかなり小さいことが認められる。右事情に照らすと、同地区との対比においても本件係争土地に対する本件各賦課処分が一審被告の前示の広範な裁量権を逸脱してなされた違法なものであるとは到底いえない。 3 したがって、本件各賦課処分に裁量権の逸脱の違法はない。また、裁量権の濫用も認められない。 三争点3(本件各拒否処分の違法性の有無)について前記一で示したとおり、本件係 るとは到底いえない。 3 したがって、本件各賦課処分に裁量権の逸脱の違法はない。また、裁量権の濫用も認められない。 三争点3(本件各拒否処分の違法性の有無)について前記一で示したとおり、本件係争土地は、すべて一審被告事業による利益を現に受け又は利益を受け得る土地に該当するものである。そして、一審被告の事業により利益を受けないことが明らかになったということもできない。したがって、一審原告ら(本件各拒否処分の相手方でない亡Qの相続人たる一審原告らを除く。)の地区除外申請を拒否した一審被告の処分に違法性はない。 四結論以上の次第で、一審原告らの請求はすべて理由がないから棄却すべきものである。したがって、原判決中、一審原告ら(一審原告A両名を除く。)の請求を一部又は全部認容した部分は失当であるから取り消し、右部分にかかる請求をいずれも棄却することとする。また、原判決中、一審原告A両名の請求をいずれも棄却した部分は相当であって、同一審原告らの各控訴は理由がないから棄却する。 よって、主文のとおり判決する。 高松高等裁判所第二部裁判長裁判官小田耕治裁判官田中俊次裁判官朝日貴浩

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