令和6(わ)1123 電子計算機使用詐欺被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年7月14日 福岡地方裁判所
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判決文本文4,750 文字)

令和7年7月14日宣告令和6年(わ)第1123号、第1233号、第1301号電子計算機使用詐欺被告事件主文 被告人を懲役3年6月に処する。 未決勾留日数中170日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、株式会社Aが提供する同社の提携事業者である「B」に対して顧客が支払うべき商品購入代金等を立替払する決済サービスの「C」につき、他者を利用権者とする同サービスのアカウント(以下「Aアカウント」という。)を利用して、財産上不法の利益を得ようと考え、第1 Dと共謀の上、令和5年12月26日、福岡市(住所省略)のE店において、スマートフォン3点の購入手続に際し、スマートフォンを使用し、電気通信回線を通じて、株式会社Aが日本国内に設置してその事務処理に使用するサーバコンピューターに対し、真実はFのAアカウントの正当な使用権限はないのに、購入に係る前記スマートフォン3点の代金額合計52万4400円の債務につき、FのAアカウントを使用して「C」による代金決済を行う旨の虚偽の情報を与え、その頃、前記サーバコンピューターに、その旨の不実の電磁的記録を作成して前記債務の支払を免れ、もって人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報を与えて財産権の得喪及び変更に係る不実の電磁的記録を作り、財産上不法の利益を得た。 第2 Gと共謀の上、別表1記載(別表1省略)のとおり、令和6年1月9日から同月14日までの間、4回にわたり、前記E店ほか3か所において、スマートフォン合計7点の購入手続に際し、スマートフォンを使用し、電気通信回線を通じて、前記サーバコンピューターに対し、真実はHほか3名のAア カウントの正当な使用権限はないのに、購入に係る前記スマートフォン合計7点 の購入手続に際し、スマートフォンを使用し、電気通信回線を通じて、前記サーバコンピューターに対し、真実はHほか3名のAア カウントの正当な使用権限はないのに、購入に係る前記スマートフォン合計7点の代金額のうち合計106万3600円分の債務につき、Hほか3名のAアカウントを使用して「C」による代金決済を行う旨の虚偽の情報を与え、その頃、前記サーバコンピューターに、その旨の不実の電磁的記録を作成して前記債務の支払を免れ、もって人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報を与えて財産権の得喪及び変更に係る不実の電磁的記録を作り、財産上不法の利益を得た。 第3 Iと共謀の上、令和6年1月28日、名古屋市(住所省略)JビルのK店において、スマートフォン2点の購入手続に際し、スマートフォンを使用し、電気通信回線を通じて、前記サーバコンピューターに対し、真実はLのAアカウントの正当な使用権限はないのに、購入に係る前記スマートフォン2点の代金額のうち28万9600円分の債務につき、LのAアカウントを使用して「C」による代金決済を行う旨の虚偽の情報を与え、その頃、前記サーバコンピューターに、その旨の不実の電磁的記録を作成して前記債務の支払を免れ、もって人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報を与えて財産権の得喪及び変更に係る不実の電磁的記録を作り、財産上不法の利益を得た。 第4 別表2記載(別表2省略)のとおり、令和6年1月28日から同年2月21日までの間、2回にわたり、前記K店ほか1か所において、スマートフォン合計4点の購入手続に際し、スマートフォンを使用し、電気通信回線を通じて、前記サーバコンピューターに対し、真実はMほか1名のAアカウントの正当な使用権限はないのに、購入に係る前記スマートフォン合計4点の代金額のうち合計57万9600円分 を使用し、電気通信回線を通じて、前記サーバコンピューターに対し、真実はMほか1名のAアカウントの正当な使用権限はないのに、購入に係る前記スマートフォン合計4点の代金額のうち合計57万9600円分の債務につき、Mほか1名のAアカウントを使用して「C」による代金決済を行う旨の虚偽の情報を与え、その頃、前記サーバコンピューターに、その旨の不実の電磁的記録を作成して前記債務の支払を免れ、もって人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報を与えて財産権の得喪及び変更に係る不実の電磁的記録を作り、財産上不法の利益を得た。 第5 Nと共謀の上、令和6年2月2日、東京都千代田区(住所省略)OビルのP店において、スマートフォン2点の購入手続に際し、スマートフォンを使用し、電気通信回線を通じて、前記サーバコンピューターに対し、真実はQのAアカウントの正当な使用権限はないのに、購入に係る前記スマートフォン2点の代金額のうち29万円分の債務につき、QのAアカウントを使用して「C」による代金決済を行う旨の虚偽の情報を与え、その頃、前記サーバコンピューターに、その旨の不実の電磁的記録を作成して前記債務の支払を免れ、もって人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報を与えて財産権の得喪及び変更に係る不実の電磁的記録を作り、財産上不法の利益を得た。 第6 Rと共謀の上、令和6年8月13日、前記E店において、スマートフォン2点の購入手続に際し、スマートフォンを使用し、電気通信回線を通じて、前記サーバコンピューターに対し、真実はSのAアカウントの正当な使用権限はないのに、購入に係るスマートフォン2点の代金額のうち合計28万9600円の債務につき、SのAアカウントを使用して「C」による代金決済を行う旨の虚偽の情報を与え、その頃、前記サーバコンピューターに、その旨の 、購入に係るスマートフォン2点の代金額のうち合計28万9600円の債務につき、SのAアカウントを使用して「C」による代金決済を行う旨の虚偽の情報を与え、その頃、前記サーバコンピューターに、その旨の不実の電磁的記録を作成して前記債務の支払を免れ、もって人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報を与えて財産上の得喪及び変更に係る不実の電磁的記録を作り、財産上不法の利益を得た。 第7 Rと共謀の上、令和6年9月3日、前記E店において、スマートフォン3点の購入手続に際し、スマートフォンを使用し、電気通信回線を通じて、前記サーバコンピューターに対し、真実はTのAアカウントの正当な使用権限はないのに、購入に係る前記スマートフォン3点の代金額のうち合計53万円の債務につき、TのAアカウントを使用して「C」による代金決済を行う旨の虚偽の情報を与え、その頃、前記サーバコンピューターに、その旨の不実の電磁的記録を作成して前記債務の支払を免れ、もって人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報を与えて財産権の得喪及び変更に係る不実の電磁的記録を作り、 財産上不法の利益を得た。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑理由)本件は、被告人が、他人のAアカウントを利用して高額のスマートフォンを購入し、その代金の支払を免れるとともに、同スマートフォンを転売して利益を得ることを企て、共犯者と共謀して、又は単独で、その企図のとおり多数の高額スマートフォンを購入して、その代金中合計356万6800円の支払を免れたという事案である。その計画性の高い常習的な犯行態様は甚だ悪質といえ、被害結果も大きい上、本件が判示決済サービスの根幹を大きく揺るがしかねなかった点も見過ごすことはできない。かかる本件において、被告人は、手広く、時に欺罔的手 性の高い常習的な犯行態様は甚だ悪質といえ、被害結果も大きい上、本件が判示決済サービスの根幹を大きく揺るがしかねなかった点も見過ごすことはできない。かかる本件において、被告人は、手広く、時に欺罔的手段も講じながら他人のAアカウントの入手を進め、それらを利用した高額スマートフォンの購入及び換金を主導し、それにより得た利益の大半を自ら取得している。もとよりその利欲的な動機に酌量の余地がないばかりか、前記事情に照らせば、被告人が首謀者というべき立場にあったといえ、厳しい非難を免れず、その刑事責任は共犯者中最も重い。 なお、被告人は、判示第1ないし第5の事実について、使用したAアカウントの各名義人に対し、支払意思があったと供述し、その趣旨は、確実に全額の支払をする意思があったというものと解されるが、およそ信用できない。すなわち、実際上、同事実に関し、被告人による支払は殆どなされていない上、そもそも融資等の正規の手段で資金を得ることができるのであれば、適法性という意味でも、経済的合理性に欠ける(スマートフォンの購入代金と転売価格を比較すると前者の方が高価であるのは自明である。)という意味でも本件の如き手段に及ぶ必要はないところ、被告人は、判示第1の事実以前から同様の行為を繰り返していたことが窺われる上、 被告人の負債状況に照らしても、遅くとも判示第1の事実頃には既にその全てについて確実な支払をすることは困難な状況にあったと優に認められる。この点、被告人は、自身が営む株式会社Uが、令和6年3月に締結した新築マンションの契約に伴う入金があればやっていけると思った(実際は、同年6月頃契約を切られた。)とか、令和5年初め頃から融資を受けていた暴力団関係の高利貸しより更なる借入を得て、これによる支払が可能であった(実際は、令和5年12月末の支払ができ ると思った(実際は、同年6月頃契約を切られた。)とか、令和5年初め頃から融資を受けていた暴力団関係の高利貸しより更なる借入を得て、これによる支払が可能であった(実際は、令和5年12月末の支払ができず、その後、融資を断られた。)などと強弁するが、いずれも手持資金とは異なり、確実性を伴わないのは自明である上、そもそも前者については判示第1ないし第5の事実時点では契約締結にすら至っておらず、後者に至ってはおよそ期待を抱く性質のものではない。被告人の負債状況に照らすと、これらをもって確実な支払が可能であり、そう認識していたという供述については、経済的裏付けを伴っておらず、前記趣旨で支払意思があったとの供述については全く信用することができない(被告人は、判示第1のアカウントの名義人は自分の叔父であるため支払うつもりであったとか、他人のアカウントの収集に関与した者の父親が警察官であることは知っていたのでだますつもりはなかったなどとも供述するが、その供述を踏まえても前記判断は動かない。)。 以上のとおり、被告人は不合理な弁解を述べており、真摯な反省をしているのか多分に疑問が残るが、判示第6及び第7の事実については認め、判示第1ないし第5の事実についても支払意思の点以外は争わず、一応、反省の弁を述べていること、被告人が判示第1の事実に関して株式会社Aに対し一部支払をしていること、共犯者により同社ないし名義人に対する一部支払がなされていること、被告人には交通関係での罰金前科1犯以外に前科がないことなど、被告人のために酌むべき事情もある。しかし、それらを併せ考慮しても、被告人の前記刑事責任の重さに照らせば、本件は刑の執行を猶予すべき事案とは認められず、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当である。 (求刑懲役4年6月) 令和7年7月14日 主文 慮しても、被告人の前記刑事責任の重さに照らせば、本件は刑の執行を猶予すべき事案とは認められず、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当である。(求刑懲役4年6月) 理由 令和7年7月14日福岡地方裁判所第3刑事部 裁判官森喜史

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