平成21(行ウ)58 原告所有小型船舶の河川水利使用権利確認請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年4月28日 横浜地方裁判所 公物・公企業など
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判決文本文6,836 文字)

主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求神奈川県知事が,平成19年10月4日付けで原告に対してした別紙1船舶目録記載の船舶の撤去命令を取り消す。 第2事案の概要 事案の骨子神奈川県知事が管理する二級河川であるα川に別紙1船舶目録記載の船舶(以下「本件船舶」という。)を錨のみによって係留していた原告は,平成19年10月4日付けで同知事が河川法(以下「法」という。)75条1項1号の規定に基づき原告に対してした本件船舶の撤去命令処分(同項の「その他の措置」として命じられたもの。以下「本件撤去命令」という。)の取消しを求めるとともに,将来における本件撤去命令に基づく代執行の差止めを求めて本件訴えを提起した(当庁平成▲年(行ウ)第▲号)。 当庁は,平成21年2月4日,原告は既に本件船舶をα川から移動させているので,これにより本件撤去命令の取消しを求める利益を欠く上,神奈川県知事によって本件撤去命令に基づいて今後行われる本件船舶の撤去に係る代執行処分がされようとしているとはいえないと判断して,いずれの訴えも不適法であるとして訴えを却下した。原告は,第1審判決中本件撤去命令の取消しに係る部分のみを不服として控訴を申し立てたところ,控訴審である東京高等裁判所は,同年7月8日,原告には本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益が認められるとし,第1審判決中の上記部分を取り消して本件を第1審に差し戻す判決をした(同庁平成▲年(行コ)第▲号)。 本件は,差戻後の第1審である。 基礎となる事実(掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)原告は,本件船舶を所有している(甲1の1,32,33,乙1)。 (2)神奈川県知事は,法10条1項の規定に基づき,二級河川である 実(掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)原告は,本件船舶を所有している(甲1の1,32,33,乙1)。 (2)神奈川県知事は,法10条1項の規定に基づき,二級河川であるα川(逗子市所在)を管理している(弁論の全趣旨)。 (3)原告は,遅くとも,平成19年9月4日から,神奈川県知事の許可を受けないで,本件船舶をα川に錨のみによって係留させるようになった(乙3,弁論の全趣旨)。 (4)神奈川県知事は,平成19年9月12日付けで,原告が,本件船舶をα川に係留することは法24条の規定に違反するので,本件船舶の撤去命令を予定しているとして,原告に対し,行政手続法13条1項2号に基づき,弁明書を提出するよう通知した(乙3)。 (5)神奈川県知事は,同年10月4日付けで,原告に対し,本件船舶の係留は法24条の規定に違反するとして,法75条1項に基づき,同月25日までに本件船舶をα川から撤去するよう命じた(本件撤去命令。甲3の1,乙4)。 (6)原告が本件撤去命令に従わず,本件船舶をα川から撤去しなかったので,神奈川県知事は,同年11月14日付けで,原告に対し,行政代執行法3条1項に基づき,同月25日までに原告が本件撤去命令を履行しないときは,本件船舶撤去の代執行をする旨文書で戒告した(乙5)。 (7)原告は,同月21日,本件撤去命令の取消しを求める本件訴訟を提起した。 (8)神奈川県知事は,同年12月7日付けで,原告に対し,行政代執行法3条2項に基づき,次の内容の代執行令書を送付した(乙6)。 ア物件の所在地二級河川α川イ物件の名称本件船舶 ウ代執行の時期平成19年12月19日から同月27日までエ代執行責任者神奈川県県土整備部河川課課長代理Aオ代執行に要する費用の概算見積額約18万円から α川イ物件の名称本件船舶 ウ代執行の時期平成19年12月19日から同月27日までエ代執行責任者神奈川県県土整備部河川課課長代理Aオ代執行に要する費用の概算見積額約18万円から36万円(9)原告は,同月12日,係属中の本件撤去命令の取消訴訟に,代執行の差止請求を追加する訴えの変更申立てをした。 (10)被告の代執行担当責任者は,同月19日,本件撤去命令についての代執行を実施しようとしたが,原告が同日早朝に本件船舶をα川から移動させたため,実施することができなかった(乙12)。 原告が上記のとおり本件船舶の移動を行ったのは,代執行を免れるためであり,その後民間の施設と契約して,本件船舶を係留し,又は陸揚げして保管している(弁論の全趣旨)。 (11)本件船舶は,小型船舶の登録等に関する法律の規定により登録されているところ,原告は,平成20年10月27日,その船籍港を横浜市から逗子市に変更する変更登録を行った(甲33)。 争点 本件の争点は,本件撤去命令の適法性であり,具体的には次の2点である。 (1)原告による本件船舶の係留が占用に当たるか否か(2)本件撤去命令が憲法14条1項に違反するか否か 争点に関する当事者の主張(被告の主張)(1)原告による本件船舶の係留が占用に当たるか否か(争点(1))ア河川区域内における船舶の係留と占用について一時的使用の場合を除き,船舶係留者が河川区域内の一定の範囲の土地を反復又は継続して排他的に使用する場合には占用に当たる。 本件のように,錨を降ろして船舶を係留する場合は,係留している間は排他的な使用であるから,それが一時的使用といえるかどうかにより占用 に当たるか否かが定まるといえるところ,当該係留場所において何らかの作業等をするわけではなく,船舶を係留すること自 している間は排他的な使用であるから,それが一時的使用といえるかどうかにより占用 に当たるか否かが定まるといえるところ,当該係留場所において何らかの作業等をするわけではなく,船舶を係留すること自体が目的であるような係留形態である場合には,一時的な使用とはいえず,占用に該当する。 イ土地の特定について船舶が錨により係留される場合には,常に同一場所にとどまるものではなく,測量して船舶の形態に沿って土地を特定することは困難である。ただし,占用における土地の特定は,反復使用も想定されていることからしても測量的に土地を特定する必要はなく,一定の場所を使用している実態があって,その一定の場所が図面上観念できれば,土地の特定として十分である。 ウ本件船舶が係留していた土地の特定及び占用該当性について原告がα川において,本件船舶を係留していた場所は,神奈川県逗子市β×番地先の無地番の土地(水面部分を含む。以下同じ。)であり,その敷地が河川管理者の管理するものであることは公図及び境界査定図から明らかである。 また,被告は,平成19年4月5日から同年12月19日の間の巡視時に,本件船舶が係留(錨のみによる係留)されている状態を計33日確認しているが,かかる係留が一定の土地で行われたことは,乙第16号証の図面中の河川にせり出した階段の位置と乙第18号証に写っている河川にせり出した階段の位置を比較することにより確認でき,本件船舶が一定のの土地を反復又は継続的に使用していたことは明らかである。 原告は,本人尋問において,本件船舶のα川における係留について,「定係港がα川なんですよ。」と駐車場のような使用をしていることを認め,さらに,本件船舶を,平成19年3月ころに購入してすぐから,平成19年12月までずっとα川に係留していたことを認めている。このよう 係港がα川なんですよ。」と駐車場のような使用をしていることを認め,さらに,本件船舶を,平成19年3月ころに購入してすぐから,平成19年12月までずっとα川に係留していたことを認めている。このような事実からすれば,原告は,河川区域内の土地を排他的,かつ,継続的に な使用,すなわち,占用をしていたといえる。 (2)本件撤去命令が憲法14条1項に違反するか否か(争点(2))被告は従前から不法係留船の対策に取り組んでいるが,不法係留船はかなりの数になりつつあり,また,恒久的な係留施設の建設が十分に進んでいない状況の下では,河川によっては一挙に強制的な撤去措置をとることが困難な状況にあった。被告は,各河川の状況を踏まえて,対処方法が整った河川から順次不法占有対策を実施しているのであって,あえてα川だけを差別的に措置するというものではなく,本件撤去命令は憲法違反に当たらない。 (3)以上のとおり,本件船舶の係留は占用に該当するから,許可を受けていない以上不法占用である。したがって,不法占用であることを前提としてされた本件撤去命令は適法である。 (原告の主張)(1)原告による本件船舶の係留が占用に当たるか否か(争点(1))法75条1項の規定による監督処分は,係留施設に係留されている船舶の除却を命ずることはできるが,錨のみによって係留している船舶の撤去を命ずることはできない。 (2)本件撤去命令が憲法14条1項に違反するか否か(争点(2))神奈川県内にはα川以外にγ川及びδ川といった二級河川があるところ,神奈川県知事は,γ川及びδ川においては許可を得ない占用を容認しているのに,α川における占用についてのみ撤去命令を発することは,法の下の平等(憲法14条1項)に違反する。 (3)よって,本件撤去命令は違法である。 第3当裁判所の判断 得ない占用を容認しているのに,α川における占用についてのみ撤去命令を発することは,法の下の平等(憲法14条1項)に違反する。 (3)よって,本件撤去命令は違法である。 第3当裁判所の判断 原告による本件船舶の係留が占用に当たるか否か(争点(1))(1)占用の意義について本件撤去命令は,原告が本件船舶の係留によってα川の河川区域内の一定 の土地を占用しているとして,原告に対し,本件船舶を当該土地から撤去してその占用を解消することを義務付けるものである。 本件撤去命令は,法75条1項1号,24条の規定に基づくものであるところ,同条は,「河川区域内の土地(括弧内略)を占用しようとする者は,国土交通省令で定めるところにより,河川管理者の許可を受けなければならない。」と規定している。 この「河川区域内の土地」の「占用」とは,ある特定の目的のために,その目的を達成するのに必要な限度において,公共用物である河川区域内の土地を排他的,継続的に使用することをいい,河川区域内の土地に固着せずに水面部分だけを使用する場合も,河川管理上支障があると認められるような場合には「占用」に含まれると解するのが相当である。 そして,河川区域内の土地の水面部分を保管場所として使用する行為は,河川の自由使用としての船舶の航行及びそれに伴う一時的な係留とは別途の使用形態であり,かつ,河川の流水及び土地を排他的,継続的に使用する行為にほかならず,また,河川管理上支障があると認められるものとして,「占用」に含まれると解するのが相当である。 原告は,錨のみにより固定する形態での係留であれば,排他的,継続的な使用とはならないと主張するもののようであるが,錨のみにより固定する形態の係留であっても,一時的な係留でなく,反復継続して行われる場合には,河川の一定の場所に錨を降ろ 係留であれば,排他的,継続的な使用とはならないと主張するもののようであるが,錨のみにより固定する形態の係留であっても,一時的な係留でなく,反復継続して行われる場合には,河川の一定の場所に錨を降ろして船舶を停止させることによって,当該錨から一定の距離内の土地を排他的,継続的に使用したといい得るから,原告の上記主張を採用することはできない。 (2)占用に係る土地の特定について船舶が特定の桟橋に係留される場合には,当該桟橋を特定さえすれば,当該桟橋から一定の距離内の特定の土地を占用していると観念できるのに対し,錨のみにより固定する形態での係留が反復される場合には,毎回厳密に同一 の場所に錨が降ろされるわけではないから,特定の桟橋に係留する場合と比較して,占用に係る土地を特定することは容易ではない。しかし,占用の一形態として,船舶の保管のために反復使用することも含まれると解すべきことは前述のとおりであるから,そのような場合には,測量的に土地を特定するまでの必要はなく,一定範囲の場所を反復して使用している実態があって,その一定範囲の場所が社会通念上特定して識別することが可能であれば,占用に係る土地の特定として欠けるところはないと解すべきである。 (3)本件船舶の係留に係る土地の特定及び占用の有無についてア証拠(乙15ないし18)及び弁論の全趣旨によれば,被告職員は,平成19年4月5日から同年12月19日までの間,α川の巡視を行い,本件船舶が神奈川県逗子市β×番地先の河川区域内において錨のみによって係留されている状態を計33日確認したことが認められる。また,証拠(乙16,18)によれば,本件船舶が係留されていた位置は,乙第16号証の図面中の河川にせり出した階段の位置と乙第18号証の各写真に写っている河川にせり出した階段の位置を比較する られる。また,証拠(乙16,18)によれば,本件船舶が係留されていた位置は,乙第16号証の図面中の河川にせり出した階段の位置と乙第18号証の各写真に写っている河川にせり出した階段の位置を比較することにより,別紙2α川河川台帳境界査定図の楕円で囲まれた水域(以下「本件水域」という。)であると認めることができる。よって,本件船舶が本件水域という一定範囲の場所を反復継続して使用している実態があって,その一定範囲の場所が社会通念上特定して識別することが可能であると認められるから,本件船舶の係留に係る土地について特定に欠けるところはないというべきである。 イ証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成19年3月ころから同年12月28日までの間,α川沿いの駐車場(神奈川県逗子市β××所在)を年間契約で借り,同駐車場に軽トラックを停め,同所近くのα川に係留している本件船舶に乗り込み,α川ではなく海上や漁港に出て船の修繕等をする作業に従事し,上記作業を終えた後に本件船舶をα川 内の本件水域に係留させていたことが認められる。 したがって,本件船舶の本件水域における係留は,河川区域内の土地の水面部分を保管場所として使用する行為にほかならず,上記アのとおりの反復継続した使用の実態をも考慮すれば,本件水域を排他的,継続的に使用していたものであり,また,河川管理上も支障があると認められるから,占用に該当するというべきである。 (4)小括以上によれば,原告は,河川管理者である神奈川県知事から法24条の許可を受けないまま河川区域内の土地の占用を行っていたものであるから,神奈川県知事は,法75条1項1号の規定に基づき,「その他の措置」(同項柱書)として,本件船舶の撤去を命ずる監督処分を行うことができるものと解される。 憲法14条1項違反の主 たものであるから,神奈川県知事は,法75条1項1号の規定に基づき,「その他の措置」(同項柱書)として,本件船舶の撤去を命ずる監督処分を行うことができるものと解される。 憲法14条1項違反の主張について原告は,神奈川県知事が,γ川及びδ川について規制せずにα川のみ規制するのは差別であり,本件撤去命令は憲法14条1項に違反する旨主張する。 しかし,証拠(乙12)によれば,被告は,α川については,河口付近の県有地を事業者に貸し付け,小型船舶保管施設を整備し,不法係留船の所有者に対し,当該施設との利用契約の締結を促す措置をとりつつ,船舶を撤去しない所有者に対しては,一斉に,平成19年9月ころから,法75条1項に基づく監督処分及び行政代執行の手続をとったこと,α川以外の河川については,不法係留船対策を実効的に行うため,河川ごとの状況に応じて一部の河川において暫定的に係留を認め,対処方法が整った河川から順次撤去命令等の対策を実施していることが認められ,あえてα川に係留された船舶,あるいは本件船舶だけを差別的に取り締まったものとはいえない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。 結論 以上によれば,本件処分には,原告主張の違法事由はなく,適法なものと認められる。よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官佐村浩之裁判官戸室壮太郎裁判官一原友彦は,差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官佐村浩之

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