主文 1 被告委員会が広労委平成26年(不)第3号・第5号事件について平成27年9月11日付けでした原告に対する不当労働行為救済命令のうち主文第2項を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)はこれを4分し,その2を原告の負担とし,その1を被告の負担とし,その余を被告補助参加人の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告委員会が広労委平成26年(不)第3号・第5号事件について平成27年9月11日付けでした原告に対する不当労働行為救済命令を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,原告が,被告委員会が原告に対して平成27年9月11日付けでした不当労働行為救済命令は事実誤認や判断の誤りなどがあるから違法であると主張して,その取消しを求めた事案である。 2 前提事実(争いがない事実又は証拠等により容易に認められる事実)当事者等ア原告は,測量機器等の販売や賃貸等を業とする株式会社である。 原告の取締役は,A社長,B総務部長(以下「B部長」という。),C営業部長(以下「C部長」という。)ほか1名の合計4名である。 イ補助参加人(以下「本件組合」という。)は,職場や雇用形態を問わず,広島県及びその近傍の労働者を対象に組織された労働組合である(乙B11)。 D(以下「D組合員」という。)は,平成14年10月3日に原告の正社 員として採用され,請求書の作成等を行う請求業務,商品等の受発注業務,電話応対業務などに従事する従業員である(甲3,4,乙A4,10,B2)。 原告従業員の賃金については,就業規則及びこれに基づく賃金規程において次のとおり定められている(甲7)。 ア就業規則48条社員の賃金は,別に定める「 (甲3,4,乙A4,10,B2)。 原告従業員の賃金については,就業規則及びこれに基づく賃金規程において次のとおり定められている(甲7)。 ア就業規則48条社員の賃金は,別に定める「賃金規程」により支給する。 イ賃金規程9条は,基準外賃金として,賞与について,次のとおり定めている。 賞与は,原則として毎年7月1日及び12月1日に在籍する社員に対し,会社の業績を勘案し,夏季賞与については7月末日,冬季賞与については12月末日迄に支給する。期間の途中で入社したものは在籍期間に応じ寸志とする。但し,会社の業績の著しい低下,その他やむを得ない事由がある場合は支給時期を延期し,又は支給しないことがある。 前号の賞与額は,取締役が,会社の業績及び社員の勤務態度・成績・将来性などを考慮して各人ごとに決定する。 決算状況に応じて,決算賞与を支給する場合がある。 平成26年3月6日(以下,日付は,特に記載のない限り,平成26年のものとする。),D組合員は,遅刻して出勤した(乙B6,7,14)。 3月10日,原告は,役員会議において,D組合員について,解雇する方針を決定したが,まずは半年程度の猶予期間を設けて退職勧奨をすることや,平成26年4月の決算賞与を支給しないことを決定した(甲3,5,乙B2,8,12,13)。 3月11日,B部長は,D組合員に対し,役員会議でD組合員を解雇することが決定されたため,2週間後までに,退職日につき半年を目処に自ら決めて回答することなどを告げた(甲3,4,乙A4,5,10,B13)。 3月15日,D組合員は,本件組合への加入手続を行い,本件組合の組合員となった(乙A4,10)。 3月21日,D組合員は,B部長に対し,退職したくない旨及び本 4,5,10,B13)。 3月15日,D組合員は,本件組合への加入手続を行い,本件組合の組合員となった(乙A4,10)。 3月21日,D組合員は,B部長に対し,退職したくない旨及び本件組合に加入したので交渉をさせてほしい旨を告げた(甲3,4,乙B13)。 ア 3月25日午前10時頃,本件組合に所属するE書記長及びF執行委員(以下「本件組合側担当者」という。)は,事前にアポイント(以下「アポ」という。)を取らずに,原告事務所を訪問し(以下「本件訪問」という。),C部長と面談して,組合員通知書及び団体交渉申入書を交付した(甲2ないし4,6,乙A3)。 イ同日,原告は,役員会議でD組合員や本件組合に関する今後の対応について協議した上,業務終了後,B部長が会議室でD組合員と面談した(以下「本件面談」という。)(甲3ないし5,乙A1,B2)。 4月9日,原告は,D組合員も出席の上,本件組合と第1回団体交渉を行い,D組合員に対し,同月30日付けで就業規則52条1項に基づき解雇する旨を通知し,同月11日付けで解雇理由書を交付した(甲3ないし5,乙A8,12)。 4月18日,原告は,D組合員も出席の上,本件組合と第2回団体交渉を行った際,本件組合から解雇撤回の要求を受け,団体交渉を一時中断し退席して15分程度協議した結果,解雇を撤回することを決定し,同日付けでD組合員の解雇を撤回する旨の解雇予告撤回通知書を交付した(甲5,乙A9,12)。 4月末頃,原告は,D組合員を除く全従業員に対して決算賞与を支給した(甲4,5,乙B14)。 原告は,原告代理人である日野誠司弁護士(以下「日野弁護士」という。)を通じて,本件組合から,D組合員への決算賞与の支給がされていないとの指摘を受け,5月27日,役員会議において,D組合員に対 原告は,原告代理人である日野誠司弁護士(以下「日野弁護士」という。)を通じて,本件組合から,D組合員への決算賞与の支給がされていないとの指摘を受け,5月27日,役員会議において,D組合員に対し,決算賞与と して11万円(以下「本件決算賞与」という。)を支給することを決定し,同月30日にこれを支給した(甲3ないし5,乙B8,12)。 5月28日,本件組合は,原告が本件面談において本件組合を誹謗・中傷したことが支配介入に当たるとして,被告委員会に不当労働行為救済命令の申立てをした(甲1)。 8月18日,本件組合は,原告が本件決算賞与を昨年度支給額の半額としたことがD組合員の組合加入及び組合活動に対する報復的措置であり,不利益取扱いに該当するとして,被告委員会に不当労働行為救済命令の申立てをした(甲1)。 被告委員会は,原告に対し,平成27年9月11日付けで,不当労働行為救済命令として,①命令書受領の日から2週間以内に,「当社が,貴組合所属の組合員Dに対して,平成26年3月25日に実施した面談における言動は,広島県労働委員会において,労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。今後,このような行為を繰り返さないようにします。」と記載した文書を本件組合に対して交付しなければならない旨を命じ(広労委平成26年(不)第3号・第5号事件についての不当労働行為救済命令のうち主文第1項。以下「本件救済命令1」という。),②本件決算賞与について,少なくとも19万8000円を超える額を支給することとし,支給済額11万円との差額を命令書受領の日から30日以内にD組合員に支払うよう命じた(広労委平成26年(不)第3号・第5号事件についての不当労働行為救済命令のうち主文第2項。以下「本件 ることとし,支給済額11万円との差額を命令書受領の日から30日以内にD組合員に支払うよう命じた(広労委平成26年(不)第3号・第5号事件についての不当労働行為救済命令のうち主文第2項。以下「本件救済命令2」といい,本件救済命令1と併せて「本件各救済命令」という。)(甲1)。 原告は,平成27年10月2日,本件各救済命令の命令書を受領し,同月30日,本件訴訟を提起した。 3 争点及びこれに対する当事者の主張 本件面談時のB部長の発言は,支配介入の不当労働行為(労組法7条3号)に当たるか。 (被告の主張)ア以下のとおり,本件面談時のB部長の発言は,その内容が本件組合の悪印象を強調などするものであり,本件面談の目的においても正当性が認められないことなどからすれば,支配介入の不当労働行為に当たる。 B部長が本件面談時に「印象としてタチが悪い」と発言したことは,D組合員にとって,本件組合への批判又は抗議の表明にとどまらず,その悪印象を強調したものと受け取られるものである。 B部長が「グワーと乗り付けて」と発言したことは,自身は本件組合が車で乗り付けた瞬間を見ていないにもかかわらず,あたかも目撃したかのような発言をして,本件組合の悪印象を強調したといえる。 B部長が本件組合のホームページに関して「ありゃちょっと。見とるなら,見て理解してそういうことを把握した上で,お話をしちょるんなら,もうこちら側で対応するけど,」などと発言したことは,本件組合が平穏な話合いができない団体であるという印象に基づき,D組合員に対して本件組合の悪印象を強調する発言であったといえる。 B部長が「そういう交渉とかになると参加せんのんじゃろ。」,「その場でいろいろうちの会社での色んな事の悪口を話してもええわけね。 員に対して本件組合の悪印象を強調する発言であったといえる。 B部長が「そういう交渉とかになると参加せんのんじゃろ。」,「その場でいろいろうちの会社での色んな事の悪口を話してもええわけね。」と発言したことは,D組合員に対して,本件組合との団体交渉の場でD組合員の不利益な人物評価に係るやり取りが行われることを示唆し,不安と不快感を喚起させ,本件組合との関わりを躊躇させようとして発せられた威圧的な発言であったといえる。 B部長が「やっても組合と噛み合わない。」,「ちょっと濁すような感じにはなりそうじゃね。」と発言したことは,原告が本件組合との団体交渉に臨むに当たり消極的な姿勢であることを表明したものといえる。 C部長は,本件訪問時に本件組合側担当者と面談した際,アポを取らずに来社したことに対する抗議を直接告げていたから,その後の本件面談の際にD組合員に対してことさらに上記抗議を直接伝える必要性があったとは認められない。 本件組合がC部長に組合員通知書を手渡し,原告が会社として組合員通知書を受領した上で,B部長がD組合員と面談しているから,B部長が組合員通知書を見ていたかどうかにかかわらず,D組合員に対し本件組合への加入を直接確認するために本件面談を行う必要があったとは認められない。 B部長は,D組合員の解雇を決定した役員の1人であって,D組合員に解雇予告を行った者であり,そのようなB部長と面談することによりD組合員が一定の圧力を感じるのは明らかであるから,原告がD組合員との面談の担当者としてB部長を選任したことは不適切であった。 イ支配介入は,その行為が客観的に労働組合の結成や運営に影響を及ぼすようなものであれば不当労働行為が成立するものであり,現実に影響を及ぼした結果までは要 B部長を選任したことは不適切であった。 イ支配介入は,その行為が客観的に労働組合の結成や運営に影響を及ぼすようなものであれば不当労働行為が成立するものであり,現実に影響を及ぼした結果までは要しない。 したがって,B部長の本件面談時の発言により,D組合員が本件組合から脱退せず,団体交渉のすべてに参加していたとしても,支配介入が成立することを妨げない。 ウ原告は,B部長の本件面談時の発言は本件組合側担当者が原告の施設管理権を侵害したことを発端とする旨を主張するが,会社の施設管理権の侵害が問題となるのは,労働組合が組合の集会やビラの貼付などに会社施設を利用する場合である。 また,本件組合側担当者は,原告の営業社員がC部長の席まで用件を伝えにカウンター内に入っていった後に付いて行き,C部長の机の手前まで入ったものであり,原告の事務所内にいた時間は2,3分に過ぎず,その 間,不穏当な発言もなかったから,原告に無断で事務所内に押し入るように立ち入ったとは認められないし,原告の日常業務に支障を来したとの疎明もされていない。 したがって,本件組合側担当者の本件訪問は,原告の施設管理権を侵害するものではない。 (原告の主張)ア以下のとおり,被告委員会の判断には事実誤認があり,B部長の本件面談時の発言は,支配介入の不当労働行為に当たらない。 原告は,団体交渉の申入れをするにせよ一度連絡をするようにD組合員を通じて本件組合に要請していた。それにもかかわらず,本件組合がアポを取らずに突然本件訪問をし,原告の事務所内に立ち入った。B部長が本件面談時に本件組合について「印象としてタチが悪い」と発言したのは,本件組合がアポを取らずに突然本件訪問をしたことに対する抗議であり,組合を敵視する発言と評価 原告の事務所内に立ち入った。B部長が本件面談時に本件組合について「印象としてタチが悪い」と発言したのは,本件組合がアポを取らずに突然本件訪問をしたことに対する抗議であり,組合を敵視する発言と評価されるべきではないから,B部長の上記発言は不当でない。 B部長が「グワーと乗り付けて」と発言したのは,本件組合の駐車方法を見てこれを問題としたものであるから,不当ではない。 B部長は,D組合員が話合いを求めていたのに本件組合がアポを取らずに突然本件訪問をしたため,D組合員の上記態度と本件組合の行動が異なるものではないかとの思いから,本件面談時に本件組合のホームページに関して発言したものであり,本件組合の悪印象を強調したものではない。 B部長が「そういう場には参加せんじゃろ。」と発言したのは,業務上の理由からD組合員が団体交渉に出席するのかどうかを確認する必要があったからであり,不当でない。 B部長が「その場でいろいろうちの会社での悪口を話してもええわけ じゃね。」と発言したのは,団体交渉において,D組合員の解雇に至る経緯,社内での評価,D組合員の職務能力,職務態度等を本件組合に話すことになるため,その確認をする必要があったからであり,不当でない。 B部長が「やっても組合と噛み合わない。」,「ちょっと濁すような感じにはなりそうじゃね。」と発言したのは,団体交渉においては,本件組合に対して,D組合員に対する率直な評価を伝えることを躊躇し,言葉を濁すようになるのではないかとの趣旨であったから,不当でない。 原告は,D組合員に対し,本件組合が来社する際には事前にアポを取るように伝えていたにもかかわらず,本件組合側担当者は,アポを取らずに突然本件訪問をした。C部長はこれに抗議したが,本件組 。 原告は,D組合員に対し,本件組合が来社する際には事前にアポを取るように伝えていたにもかかわらず,本件組合側担当者は,アポを取らずに突然本件訪問をした。C部長はこれに抗議したが,本件組合側担当者が誠意を持って聞き入れなかったため,D組合員に対して抗議の意思を直接伝える必要があった。本件面談の目的は,D組合員に対し,本件組合がアポを取ることなく来社したことが不快に感じたこと及び今後もアポを取ることなく来社されては困ることを伝えることにあり,正当である。 また,B部長は,本件面談前にD組合員が本件組合の組合員であることなどが記載された組合員通知書を見たことはなかったから,D組合員が本件組合の組合員であるかどうかを確認する目的で本件面談を行うことは正当である。 したがって,被告委員会が,D組合員に対して抗議の意思を直接伝える必要があったとは認められないとし,組合員通知書の記載内容をもってB部長がD組合員と面談し直接確認する必要はなかったとして,本件面談の目的の正当性が認められないとしたのは誤りである。 B部長がD組合員の解雇決定や解雇予告を行ったからといって,B部長との面談においてD組合員が圧力を感じたとはいえない。B部長が圧 力的な態度に出たことはなく,人事権を有する者を面談担当者として選任するのが合理的である。したがって,被告委員会が,原告が本件面談の担当者をB部長としたことが適正でなかったと認定したことは誤りである。 イ支配介入の成否は,「組合の組織・運営に影響を及ぼすと認められる場合」という基準に従って判断すべきであるが,被告委員会は,この点について事実認定及び評価をしていないから,その判断枠組みには誤りがある。 現に,原告は,本件組合との団体交渉にすべて応じており, という基準に従って判断すべきであるが,被告委員会は,この点について事実認定及び評価をしていないから,その判断枠組みには誤りがある。 現に,原告は,本件組合との団体交渉にすべて応じており,争議活動を妨害していない。また,D組合員は,B部長の本件面談時の発言があった後においても本件組合を離反せず,団体交渉のすべてに参加しており,原告は,D組合員が団体交渉に出席することを妨害していない。これらによれば,B部長の本件面談時の発言は,本件組合の組織・運営に影響を及ぼさなかったといえ,支配介入に当たらない。 ウ原告は,事務所の入口の掲示プレートや張り紙により,来訪者の自由な出入りを禁じていた。それにもかかわらず,本件組合側担当者は,アポを取らずに突然本件訪問をし,原告の従業員の案内によらずに自らの意思で,原告事務所内やカウンター内に立ち入っており,原告の施設管理権を侵害した。これに対して原告が抗議をすることは正当であるから,B部長の本件面談時の発言は,支配介入に当たらない。 また,本件組合側担当者の上記立入りにより,原告の従業員は,仕事を一時中断して唖然とする状態となり,注意力が散漫になるなど,業務に支障を来したから,被告委員会が,本件組合側担当者が本件訪問時に不穏当な言動をしたとは認められず,原告の業務に支障を来した旨の疎明がないとしたことは誤りである。 原告がD組合員の決算賞与の不支給決定を,D組合員が本件組合加入後も維持したこと,また,本件決算賞与11万円を支給したことが,不利益取扱 いの不当労働行為(労組法7条1号)に当たるか。 (被告の主張)原告の行ったD組合員に対する平成26年の決算賞与の不支給決定は正当なものではない。にもかかわらず,原告は,D組合員が本件組合加入後もこれを維持し, 法7条1号)に当たるか。 (被告の主張)原告の行ったD組合員に対する平成26年の決算賞与の不支給決定は正当なものではない。にもかかわらず,原告は,D組合員が本件組合加入後もこれを維持し,その後,D組合員の勤務態度等が決算賞与の支給時期前に特段悪化していない状況において,他の従業員に対して決算賞与を支給しているにもかかわらず,本件組合との関係を意識して,D組合員に対し,他の従業員と比べて著しく低額の本件決算賞与を支給したことや,他の従業員よりおおむね1か月遅れて本件決算賞与を支給したことからすれば,決算賞与の不支給決定の維持及び本件決算賞与の支給は,不当労働行為意思に基づくものであったといえ,不利益取扱いの不当労働行為に当たる。 (原告の主張)ア原告は,就業規則において,決算状況に応じて決算賞与を支給する場合があると規定しているに過ぎないから,D組合員が決算賞与支払請求権を取得するのは,原告がD組合員に対して決算賞与の金額や支払時期を決定し,支給することを決定した場合のみである。そのため,原告がD組合員に対する決算賞与の不支給決定を撤回しなかったことは,決算賞与支払請求権が発生しないという当然の権利状態を維持したに過ぎない。 また,本件決算賞与の支給額については,もともと不支給と決定していたがあえて支給することとしたものであるから,原告がD組合員に対して例年の水準と同等の金額を支払う義務はない。 したがって,原告がD組合員に対する決算賞与の不支給決定を撤回しなかったこと及び本件決算賞与を支給したことは,不当労働行為意思に基づくものではない。 イ原告がD組合員について決算賞与を支給することを決定していない以上,D組合員の原告に対する決算賞与支払請求権は存在しない。それにも かかわらず,被告委 為意思に基づくものではない。 イ原告がD組合員について決算賞与を支給することを決定していない以上,D組合員の原告に対する決算賞与支払請求権は存在しない。それにも かかわらず,被告委員会が,不当労働行為の成否の判断において,D組合員に対する決算賞与の不支給決定の正当性や,組合活動の正当性について,事実認定をしていること自体が前提を誤るものである。 ウ原告がD組合員の解雇を決定し,その無能力の故に決算賞与を不支給としたことは,不利益取扱いに当たらないのに,不支給の決定を撤回しなかったことや,本件決算賞与11万円の支給決定をしたことが不利益取扱いに当たるというのは不合理である。 エしたがって,原告がD組合員の決算賞与を不支給とし,その後,本件決算賞与11万円を支給したことは,不利益取扱いの不当労働行為に当たらない。 本件各救済命令は,被告委員会の裁量を逸脱・濫用したものか。 (原告の主張)ア本件救済命令1についてB部長の本件面談時の発言は,これが仮に支配介入に該当するとしても,本件組合が原告の施設管理権を侵害したことを発端とし,その侵害行為に対する意見表明であるから,いわば喧嘩両成敗の状態であって,原告だけに是正措置を命じ,本件組合を一方的に利する本件救済命令1は,著しく不合理であり,被告委員会の裁量を濫用したものである。 イ本件救済命令2について労働委員会による救済命令は,不当労働行為を排除してそれがなかった場合と同じ状態を作り出すことを目的とするから,それ以上に私法上の法律関係を形成し又は変更することは,労働委員会の権限を逸脱する。 決算賞与支払請求権は,原告の決定により初めて発生し,金額が確定するところ,原告の決定もないのに,D組合員の例年の支給額と本件決算賞与の額 し又は変更することは,労働委員会の権限を逸脱する。 決算賞与支払請求権は,原告の決定により初めて発生し,金額が確定するところ,原告の決定もないのに,D組合員の例年の支給額と本件決算賞与の額との差額の支払義務を定める本件救済命令2は,原告とD組合員との間に私法上の法律関係を形成するものである。 また,決算賞与は,年度末において今後の期待値等から支給されるインセンティブ報酬であり,他の従業員との平均値を取ることに意味はなく,本件決算賞与の支給額が低いことは,原告のD組合員に対する期待値や職務能力の低さによるものである。被告委員会が,原告に対し,決算賞与の性質や内容を無視して,決算賞与の平均額の支払を命じることは,原告の支給決定の自由を奪い,本来,私法上の義務のない平均値の決算賞与の支給義務を課すものである。 したがって,本件救済命令2は,被告委員会の権限を逸脱している。 (被告の主張)ア本件救済命令1についてB部長の本件面談時の発言が違法な支配介入の不当労働行為に当たると判断し,その是正をするため本件救済命令1を発したものである。本件組合が原告の施設管理権を侵害したとは認められないし,喧嘩両成敗の状態にもない。したがって,本件救済命令1につき裁量の濫用はない。 イ本件救済命令2について 労働委員会の救済命令制度は,使用者による組合活動侵害行為によって生じた状態を命令によって直接是正することにより,正常な集団的労使関係秩序の迅速な回復,確保を図るものである。また,救済命令は,不当労働行為を事実上是正するために行う行政処分であるから,労働委員会は,将来の良好な労使関係構築に向けて不当労働行為を是正するため,事案に応じた適切な措置を命じ得るのであって,これにより作出される事実上の状 を事実上是正するために行う行政処分であるから,労働委員会は,将来の良好な労使関係構築に向けて不当労働行為を是正するため,事案に応じた適切な措置を命じ得るのであって,これにより作出される事実上の状態が私法上の法律関係と必ずしも一致する必要はないし,直接的に私法上の権利の存否について判断するものでもない。 被告委員会は,本件決算賞与の支給額が不利益取扱いの不当労働行為に当たると認定し,その救済として,原告に対し,不利益取扱いがなか った場合に支給されるべき金額と実際の支給額との差額の支払を公法上の義務として命じたものであって,決算賞与支払請求権という実体法上の権利の存否を判断したものではない。また,本件救済命令2は,私法上の法律関係を形成するものでもない。 被告委員会は,D組合員の平成25年4月以前の5年間における決算賞与の平均支給額が19万8000円である一方,D組合員の勤務態度等が本件決算賞与の支給時期前に特段悪化していない状況において本件決算賞与の支給額が11万円と著しく低額であったことや,D組合員と採用年次の近い同一職種の従業員の支給額が増額されていたり,初めて決算賞与が支給された従業員でさえD組合員より多い支給額であったこと等から,不利益取扱いの不当労働行為があったと認めたものであり,他の従業員の平均支給額とD組合員の支給額との差額の支払を命じたものではない。 したがって,被告委員会が本件救済命令2を発したことにつき裁量の逸脱はない。 第3 当裁判所の判断 1 上記第2の2のとおりの前提事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 3月10日,原告は,役員会議において,D組合員について,以前から遅刻や欠勤を繰り返し,同月6日も遅刻をした上,これまで指導等を繰り返 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 3月10日,原告は,役員会議において,D組合員について,以前から遅刻や欠勤を繰り返し,同月6日も遅刻をした上,これまで指導等を繰り返してきたにもかかわらず,事務処理能力が向上せず,協調性に欠ける等の勤務態度に問題があり,指導等による改善は困難であるなどとして,D組合員を解雇する方針を決定したが,まずは半年程度の猶予期間を設けて退職勧奨をすることや,同人に対して平成26年4月の決算賞与を支給しないことを決 3月11日,B部長は,D組合員に対し,役員会議でD組合員を解雇する ことが決定されたため,2週間後までに,退職日につき半年を目処に自ら決 3月15日,D組合員は,本件組合の組合員となった)。 3月21日,D組合員は,B部長に対し,退職したくない旨及び本件組合に加入したので交渉をさせてほしい旨を告げた(前提事実 3月24日,D組合員は,B部長に対し,今週中に本件組合が来社する旨を伝えたところ,B部長は,決算期であることや消費税の改正に対する対応のために繁忙期であったため,できれば4月になってからにしてほしい旨や,まずは連絡を取ってからにしてほしい旨を本件組合に伝えるようにD組合員に話した。そこで,D組合員は,本件組合に対し,事前にアポを取ってから来社するように話したが,本件組合は,アポを取る必要はないと判断した。 (甲3,4,乙A4,10,B13)本件訪問の状況ア 3月25日午前10時頃,本件組合側担当者は,事前にアポを取らずに,ア)。 本件組合側担当者は,原告事務所1階の駐車場に車を停め,その駐車場付近にいた原告従業員のG(以下「G従業員」という。)に対し,名刺を渡して部長との面談を希望したところ,G従業員に2階事務室に案内 本件組合側担当者は,原告事務所1階の駐車場に車を停め,その駐車場付近にいた原告従業員のG(以下「G従業員」という。)に対し,名刺を渡して部長との面談を希望したところ,G従業員に2階事務室に案内された(乙B1)。 原告事務所1階の入口ドアには,突然の訪問及びアポを取っていない商用を断っている旨が記載された張り紙が貼られており,2階事務室の入口付近には,入口と奥の執務スペースを仕切る受付カウンターが設置され,そのカウンター上には「関係者以外の立入は御遠慮下さいませ。」と記載された掲示プレートが置かれていた(乙B4)。 本件組合側担当者は,事務室の受付カウンターの前で一旦立ち止まったが,G従業員がC部長に用件を伝えるためにカウンターの奥に入った後に 続いてカウンターの奥にあるC部長の席の前まで付いて行った(甲3,乙B1,2)。 G従業員は,C部長の指示により,本件組合側担当者を原告事務所3階のミーティングルームに案内した(甲3,乙B1)。 本件組合側担当者は,原告事務所2階の事務室内に2,3分滞在していたが,その間に声を出すことはなかった(甲3)。 イ本件組合側担当者は,原告事務所3階のミーティングルームでC部長と2,3分程度面談した。 上記面談において,本件組合側担当者は,組合員通知書及び団体交渉申入書を交付し,D組合員が本件組合の組合員となった旨の通知及び団体交渉の申入れのために訪問した旨や,団体交渉について原告の都合の良い日時を指定してもらえれば本件組合の方でできる限り都合を調整する旨などを告げた。 C部長は,本件組合側担当者に対し,「何もアポイントもなしに来られてもちょっと私も忙しいんで」,「わかってるけれどもいきなりね,今日社長もおらんし。」,「また連 調整する旨などを告げた。 C部長は,本件組合側担当者に対し,「何もアポイントもなしに来られてもちょっと私も忙しいんで」,「わかってるけれどもいきなりね,今日社長もおらんし。」,「また連絡ください。社長がいないので。」,「その前に連絡ちょうだいまた。まだ何も彼女とは話をしてないんよ。」,「何でこういう話が出るわけ。こういうことは一切やっていないよ。」,「いいです言う前に,こういうことがあったというまだそういう話もしてないし。」,「一方的に出されてもこれ受けられんわね。」,「その前にね,アポイントもなしにね。」ア,甲2,6,乙A3,B2) 本件面談の状況ア 3月25日,本件訪問の後,原告は,役員会議でD組合員や本件組合に関する今後の対応について協議し,①本件組合がアポを取らずに来社したことを不快に感じたこと及び今後もアポを取らずに来社されては困ることをD組合員に対して伝えること,②団体交渉の場でD組合員の社内におけ る悪いエピソードや個人情報等を話してよいかどうかをD組合員に対して確認すること,③D組合員が本件組合の組合員となったことについてD組合員本人から確認を取ることなどを決定した(甲3,5,乙B2)。 イ同日の業務終了後,B部長は,会議室でD組合員と面談した(本件面談))。 本件面談において,B部長は,D組合員に対し,「(本件組合側担当者について)まあ印象としてタチ悪いね。」,「車も,社長も言いよっちゃたけど,グワーと乗り着けて。」,「でもう,どういう対応するか,わからんけど別に文書を持って来るなりいきなり,見た,あの文書。」,「あんなに失礼なことはないよ。」,「普通考えられんじゃろう。」,「何時何時ですよ,どこどこですよ,普通はアポ取るじゃん。」,「こちらとしても,対応は 書を持って来るなりいきなり,見た,あの文書。」,「あんなに失礼なことはないよ。」,「普通考えられんじゃろう。」,「何時何時ですよ,どこどこですよ,普通はアポ取るじゃん。」,「こちらとしても,対応はするけど,普通のまあ,話でどうのこうのという感じではどうもないような,じゃけ,それなりの対応しか出来んねうちらも。」,「そういう交渉とかになると参加せんのんじゃろ。」,「その場でいろいろうちの会社での色んな事の悪口を話してもええわけね。」,「まあDさんが言うたんと全然違うことをやってきちょるけえ。」,「色々,あの,ホームページなんかも出てくるよね。見た。」,「ありゃちょっと,見とるなら,見て理解してそういうことを把握した上で,お話をしちょるんなら,もうこちら側で対応するけど。」,「(D組合員が「組合の方ともお話して,でもそんな,感じ悪いとか,話聞いていてもおかしなことを言うとか,わたしが話をしたときにはそういうのはなかったので。」と言ったのに対して)今日はおかしかったね。」,「まあ今日持ってきちゃった文書も見せてもろうとる。」,「(D組合員が「私としては会社を困らせようとかそういうのは別に考えてないので。」と言ったのに対して)困らせよう思わずに,困るっちゃ困るね,現に押しかけて来て,たんびに来るけじゃろそりゃ,おそらく。」,「(団体交渉の時期について)今この時期,分かるじゃん。」,「クソ忙しい,出来るわけないじゃん。僕にしても3月決算が あるし。」,「それなりの対応はするけど,多分,僕は見てないじゃんけど,部長なんかが見て,噛み合わんらしいけい。話しても。特別にDさんがそれをどうこうという話にはならんと思う。」,「まあ最後,ちょっと濁すような感じにはなりそうじゃね。」,「(D組合員が「ホームページもみて,実際組合の方と話 わんらしいけい。話しても。特別にDさんがそれをどうこうという話にはならんと思う。」,「まあ最後,ちょっと濁すような感じにはなりそうじゃね。」,「(D組合員が「ホームページもみて,実際組合の方と話して別にそんな何かこりゃおかしいとは感じませんでした。 私個人としては感じませんでした。」と言ったのに対して)そりゃ会社に対する対応とは違うから。」,「(D組合員が「私としては別に会社にこう困らせようと思っているわけではないので。」と言ったのに対して)めちゃくちゃ困るよ。」,「それが一般的かどうかそれをどう思うたかちょっと気になった,このくらいは普通なんかと思うたんか。」などと発言した(甲3ないし5,乙A1)。 4月9日,原告は,本件組合と第1回団体交渉を行い,D組合員に対し,同月30日付けで就業規則52条1項に基づき解雇する旨を通知した(前提)。 4月18日,原告は,本件組合と第2回団体交渉を行った際,本件組合から解雇撤回の要求を受け,団体交渉を一時中断し退席して15分程度協議した結果,解雇を撤回することを決定し,同日付けでD組合員の解雇を撤回する旨の解雇予告撤回通知書を交付した(前)。 4月末頃,原告は,D組合員を除く全従業員に対して決算賞与を支給した)。 原告は,日野弁護士を通じて,本件組合から,D組合員への決算賞与の支給がされていないとの指摘を受け,5月27日,役員会議において,D組合員に対し,本件決算賞与11万円を支給することを決定し,同月30日にこ)。 原告の決算賞与の支給状況等ア原告は,就業規則及びこれに基づく賃金規程において,会社の業績の著 しい低下,その他やむを得ない事由がある場合を除き,原則として毎年7月1日及び12月1日に在籍する従業員に対し,会社の業績及び社員 就業規則及びこれに基づく賃金規程において,会社の業績の著 しい低下,その他やむを得ない事由がある場合を除き,原則として毎年7月1日及び12月1日に在籍する従業員に対し,会社の業績及び社員の勤務態度・成績・将来性などを考慮して従業員ごとに賞与額を決定し,夏季賞与及び冬季賞与をそれぞれ支給することを定めるとともに,これらとは別に,決算状況に応じて決算賞与を支給する場合があることを定めている イ原告の決算期は3月であり,決算賞与は,4月末頃に役員が従業員と面談した上で支給されていた(甲3,4,乙B14)。 ウ平成14年9月にA社長が原告の代表取締役に就任してから平成25年までの間に,従業員全員の決算賞与が不支給とされたことはなかったが,個別的に支給されなかった事例が2件あり,そのうち1件は,平成15年に不正経理を行った従業員に対する支給をしなかったというものであり,残りの1件は,平成17年に成績及び勤務態度の不良により注意を受けていた従業員2名が退職届を提出したため支給しなかったというものであった(甲5,乙B12,14)。 エ D組合員は,平成14年10月に原告に入社して以来,平成15年から平成25年までの間に決算賞与が不支給とされたことはなく,平成21年以降にD組合員に対して支給された決算賞与の額は,平成21年が17万円,平成22年が19万円,平成23年が21万円,平成24年が20万円,平成25年が22万円であった(乙A6,B10)。 平成12年6月入社の他の従業員に対して支給された決算賞与の額は,平成21年が38万円,平成22年が40万円,平成23年及び平成24が各41万円,平成25年が56万円,平成26年が66万円であった(乙B10)。 また,平成25年4月入社の従業員2名に対して支 21年が38万円,平成22年が40万円,平成23年及び平成24が各41万円,平成25年が56万円,平成26年が66万円であった(乙B10)。 また,平成25年4月入社の従業員2名に対して支給された平成26年の決算賞与の額は,それぞれ20万円であった(乙B10)。 (本件面談時のB部長の発言は,支配介入の不当労働行為に当たるか)について 労組法7条3号は,労働者が労働組合を結成し,又は運営することを支配し,又はこれに介入することを禁止するところ,ここにいう支配介入とは,使用者の組合結成ないし運営に対する干渉行為や諸々の組合を弱体化させる行為など労働組合が使用者との対等な交渉主体であるために必要な自主性,独立性,団結力,組織力を損なうおそれのある使用者の行為を広く含むものと解すべきであり,ある行為が支配介入といえるかどうかは,組合員である労働者を威嚇又は懐柔し,労働組合の組織・運営に干渉・妨害を行い,組合を弱体化させる行為と評価できるかどうかにより判断すべきである。 上記1認定のとおり,B部長は,本件面談において,D組合員に対し,本件組合側担当者について,たちが悪い印象である旨を述べ,事前にアポを取らなかったなどの本件訪問の仕方や駐車方法などについて批判し,本件組合側担当者の行動はD組合員の説明と異なると非難し,本件組合との団体交渉において,原告が十分な対応ができず,交渉の結果がD組合員にとって実益のあるものにならないと見込まれることや,D組合員にとって不利益又は不快な会社における評価に関する話をすることを示唆し,本件組合のホームページに関し,本件組合が穏当でない言動をする団体であるとの認識を暗に示してこれに対するD組合員の認識を求め,本件組合による団体交渉の申入れにより会社が困っていると述べ とを示唆し,本件組合のホームページに関し,本件組合が穏当でない言動をする団体であるとの認識を暗に示してこれに対するD組合員の認識を求め,本件組合による団体交渉の申入れにより会社が困っていると述べた上,本件組合の行動に対するD組合員の感想を求めている。 このようなB部長の発言は,その客観的・外形的な発言内容からすれば,本件組合の訪問方法等に対する批判ないし抗議にとどまらず,D組合員に対して,本件組合側担当者の印象の悪さを強調し,本件組合がD組合員の意図に反し利益にならない活動を行い,D組合員が本件組合の組合員であることにより得られる利益がないことを示唆し,不安や不快感を喚起させることに よって,D組合員に対して,本件組合との関係を継続することを躊躇させ,本件組合からの離反を促す効果があるといえ,本件組合に対する嫌悪の意思に基づきその組織・運営を弱体化させる行為であると評価できる。 アこれに対し,原告は,B部長の本件面談時の発言につき,①「印象としてタチが悪い」との発言は,本件組合がアポを取らずに突然本件訪問をしたことに対する抗議であり,組合を敵視する発言と評価されるべきではない,②「グワーと乗り付けて」との発言は,本件組合の駐車方法を見てこれを問題としたものである,③本件組合のホームページに関する発言は,D組合員の態度と本件組合の行動が整合しないことからなされたものであり,本件組合の悪印象を強調したものではない,④「そういう場には参加せんじゃろ。」との発言は,業務上の理由からD組合員が団体交渉に出席するのかどうかを確認する必要があったからである,⑤「その場でいろいろうちの会社での悪口を話してもええわけじゃね。」との発言は,団体交渉において,D組合員の解雇に至る経緯,社内での評価,D組合員の職務能力,職務態度 認する必要があったからである,⑤「その場でいろいろうちの会社での悪口を話してもええわけじゃね。」との発言は,団体交渉において,D組合員の解雇に至る経緯,社内での評価,D組合員の職務能力,職務態度等を本件組合に話してよいかどうかを確認する必要があったからである,⑥「やっても組合と噛み合わない。」,「ちょっと濁すような感じにはなりそうじゃね。」との発言は,団体交渉において,本件組合に対して,D組合員に対する率直な評価を伝えることを躊躇し,言葉を濁すようになるのではないかとの趣旨であるとして,いずれの発言も不当でないと主張する。 しかし,本件面談におけるB部長の一連の発言は,本件組合を敵視し悪印象を強調したものというほかない。また,本件面談の目的については,下記イのとおり,その全部について不当とはいえないにしても,その客観的・外形的な発言内容からすれば,D組合員において,本件組合への加入や,本件組合による団体交渉が成果をあげないかもしれないとの不安を生じさせるものといえ,本件組合の組織・運営を弱体化さ せる行為であると評価すべきものであるから,原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,本件組合に対する抗議の意思をD組合員に直接伝える必要があったし,D組合員の個人情報等を話してよいか確認する必要や,D組合員が本件組合の組合員であるかどうかを確認する必要があったから,本件面談の目的は正当であると主張している。 しかし,抗議の対象が本件組合の行った訪問方法である以上,抗議の意思を,本件組合に加えて,D組合員にも直接伝える必要があったとまでは認められない。また,D組合員は本件組合に加入したことをB部長に対し既に伝えていたのであるから,組合員であることの確認をする必要があったとは認められない。本 合員にも直接伝える必要があったとまでは認められない。また,D組合員は本件組合に加入したことをB部長に対し既に伝えていたのであるから,組合員であることの確認をする必要があったとは認められない。本件面談の目的のうち,D組合員の個人情報等の開示に関しては,原告が必要と判断したことにつき正当と解する余地があるけれども,本件面談におけるB部長の一連の発言内容やその経過からは,その目的のために聴取しているとは認められない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は,本件組合との団体交渉にすべて応じており,争議活動を妨害していないし,D組合員が団体交渉に出席することを妨害していないから,B部長の本件面談における発言は,本件組合の組織・運営に影響を及ぼしていないと主張している。 しかし,労働組合の組織・運営,活動等に現実に支障が生じることは,支配介入の不当労働行為の成立要件ではなく,原告主張の上記事情は,B部長の本件面談における発言が支配介入に当たることを妨げるものではない。 エ原告は,本件組合がアポを取らずに突然本件訪問をし,原告従業員の案内によらずに原告事務所内やカウンター内に立ち入っており,原告の施設管理権を侵害したと主張している。 しかし,上記1認定のとおり,B部長は,原告の繁忙期であった3月11日に2週間後までに退職日を回答するよう告げており,D組合員や本件組合にとっては至急対応する必要がある状況であったこと,上記1認定のとおり,D組合員は,3月24日に,本件組合が来社する旨を伝えたところ,B部長は,改めての連絡を求めた上,できれば4月になってからにして欲しいと述べて,本件組合の来社を承諾していないことが認められるから,本件組合がアポを取らずに本件訪問をしたことはや を伝えたところ,B部長は,改めての連絡を求めた上,できれば4月になってからにして欲しいと述べて,本件組合の来社を承諾していないことが認められるから,本件組合がアポを取らずに本件訪問をしたことはやむをえないものと評価できる。さらに,上記1は,G従業員の案内によらずに受付カウンター内に入っているが,G従業員の指示に反して立ち入ったというものではない上,受付カウンター上に関係者以外の立入りを禁じる旨の掲示プレートが置かれていることについても,同掲示プレートの記載から,本件組合が関係者に該当しないことが明確に読み取れないため,カウンター内への立入りが,原告の施設管理権を侵害したとは認められない。 以上によれば,本件面談時のB部長の発言は,支配介入の不当労働行為に当たると認められる。 (原告がD組合員の決算賞与の不支給決定を,D組合員が本件組合加入後も維持したこと,また,本件決算賞与11万円を支給したことが,不利益取扱いの不当労働行為に当たるか)について 上記1認定のとおり,原告は,D組合員について,勤務態度等に問題があり,指導等による改善が困難であるなどとして,D組合員を解雇する方針を決定し,まずは退職勧奨をすることとし,これに伴い,平成26年の決算賞与を支給しないことを決定した。その後,D組合員は本件組合の組合員となり,原告は,本件組合との団体交渉の途中で解雇決定を撤回したが,決算賞与の不支給決定については維持した。原告は,D組合員以外の従業員に対しては4月末頃に決算賞与を支給したが,本件組合 から指摘を受けたことにより,D組合員に対しても,他の従業員に遅れて5月30日に本件決算賞与を支給した。本件決算賞与の支給額は,D組合員が平成21年から平成25年までの間に支給された決算賞与と比べて半額程度であっ ことにより,D組合員に対しても,他の従業員に遅れて5月30日に本件決算賞与を支給した。本件決算賞与の支給額は,D組合員が平成21年から平成25年までの間に支給された決算賞与と比べて半額程度であった。 ア原告は,D組合員が本件組合の組合員になる前に平成26年の決算賞与の不支給を決定しているため,その不支給決定自体が不当労働行為に当たらないことは明らかである。 イ原告の行ったD組合員に対する平成26年の決算賞与の不支給決定は正当なものではなく,にもかかわらず,原告は,D組合員が本件組合加入後もこれを維持し,その後,D組合員の勤務態度等が決算賞与の支給時期前に特段悪化していない状況において,他の従業員に対して決算賞与を支給しているにもかかわらず,本件組合との関係を意識して,D組合員に対し,他の従業員と比べて著しく低額の本件決算賞与を支給したことや,他の従業員よりおおむね1か月遅れて本件決算賞与を支給したことからすれば,決算賞与の不支給決定の維持及び本件決算賞与の支給は,不当労働行為意思に基づくものであったと認められると主張する。 しかしながら,ては,会社の業績の著しい低下等のやむを得ない事由がある場合を除き,会社の業績及び社員の勤務態度・成績・将来性などを考慮して支給すると定められているのに対し,決算賞与については,決算状況に応じて決算賞与を支給する場合があると極めて抽象的に定められているに過ぎず,支給基準があるとは認められない。そうすると,決算賞与の支給を求める権利は,原告が支給決定をして初めて具体的な請求権として発生するものといわざるを得ず,さらに,原告が決算賞与を支給するかどうか及びその支給額について判断するに当たっては,夏季賞与及び冬季賞与に比して,広い 裁量が認められるものと解するのが相 発生するものといわざるを得ず,さらに,原告が決算賞与を支給するかどうか及びその支給額について判断するに当たっては,夏季賞与及び冬季賞与に比して,広い 裁量が認められるものと解するのが相当である。 D組合員については,支給決定がないばかりか不支給決定がなされているため,決算賞与を支給される地位になかったというほかない。また,上D組合員に不支給決定がなされたのは同人の勤務態度等を理由とするところ,これらの事情は不支給とする際に考慮することが許される事情と解されるため,不支給決定が直ちに違法となり,D組合員において従前の決算賞与と同額の損害賠償金が填補される地位にあったとも認められない。したがって,被告の主張する決算賞与の不支給決定が正当なものではないとの意味が,D組合員には決算賞与相当額の金銭を受領できる地位にあることを認める趣旨であれば採用することができない。 さらに,不支給決定を撤回すべき義務が認められない以上,不支給決定を維持することが不利益取扱いに該当すると解する余地はない。 もっとも,D組合員に対するこれまでの決算賞与額と比較して低額であり,さらに,平成26年に支給された他の従業員に対する金額と比較しても低額であるから,それらと比較すれば不利益取扱いに該当するといえる。 しかしながら,D組合員に対しては本件組合加入前に不支給決定があってその撤回義務は認められず,その上,少なくとも原告が,不支給決定が違法無効なものであると認識していたことを認めるに足りる証拠もなく,さらには,D組合員が本件組合に加入した結果,不支給決定が11万円の支給決定に有利に変更されたという経過に照らせば,本件決算賞与11万円を支給したことにつき,原告において,反組合的な動機があるなどの不当労働行為意思に基づくものであったとは認められない。 11万円の支給決定に有利に変更されたという経過に照らせば,本件決算賞与11万円を支給したことにつき,原告において,反組合的な動機があるなどの不当労働行為意思に基づくものであったとは認められない。 以上によれば,原告がD組合員の決算賞与の不支給決定を,D組合員が本件組合加入後も維持したこと,また,本件決算賞与11万円を支給したことが,不利益取扱いの不当労働行為に当たるとは認められない。 (本件各救済命令は,被告委員会の裁量を逸脱・濫用したものか)について 労働委員会は,使用者の不当労働行為によって生じた侵害状態を除去,是正し,正常な集団的労使関係秩序の回復,確保を図るために,個々の事案に応じて必要かつ適切と考えられる是正措置を決定し,これを命ずる権限を有するものであって,かかる救済命令の内容の決定については,広い裁量権が認められるから,裁判所は,労働委員会の救済命令の内容の適法性が争われる場合においても,労働委員会の右裁量権を尊重し,その行使が右の趣旨,目的に照らして是認される範囲を超え,又は著しく不合理であって濫用にわたると認められるものでない限り,当該命令を違法とすべきではないというべきである(最高裁昭和57年(行ツ)第50号同62年5月8日第二小法廷判決・裁判集民事151号1頁参照)。 本件救済命令1について,原告は,B部長の本件面談時の発言は本件組合が原告の施設管理権を侵害したことを発端とし,その侵害行為に対する意見表明であるから,いわば喧嘩両成敗の状態であって,原告だけに是正措置を命じ,本件組合を一方的に利する本件救済命令1は,著しく不合理であると主張している。 しかし,上記認定のとおり,本件組合が原告の施設管理権を侵害したとは認められないから,原告の上記主張は,前提を欠いてお を一方的に利する本件救済命令1は,著しく不合理であると主張している。 しかし,上記認定のとおり,本件組合が原告の施設管理権を侵害したとは認められないから,原告の上記主張は,前提を欠いており,これを採用することはできない。 そして,他に本件救済命令1が被告委員会の裁量を逸脱・濫用したものであることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件救済命令1は,被告委員会の裁量を逸脱・濫用したものとは認められない。 本件救済命令2については,上記3のとおり,その発令の前提となる不当労働行為があったとは認められないから,発令内容についての被告委員会の 裁量の逸脱・濫用について検討するまでもなく,取消しを免れない。 5 結論以上によれば,原告の請求は,本件救済命令2(広労委平成26年(不)第3号・第5号事件についての不当労働行為救済命令のうち主文第2項)の取消しを求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官小西洋 裁判官平井健一郎 裁判官加藤弾
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