令和2(ワ)19928 特許権侵害差止請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年11月24日 東京地方裁判所
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令和3年11月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第19928号特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日令和3年8月20日判決原告ワーナー-ランバートカンパニーリミテッドライアビリティーカンパニー同訴訟代理人弁護士飯村敏明磯田直也森下梓同訴訟復代理人弁護士永島太郎同訴訟代理人弁理士泉谷玲子同補佐人弁理士小野新次郎被告日本ジェネリック株式会社同訴訟代理人弁護士宮嶋学髙田泰彦柏延之砂山麗同補佐人弁理士中村行孝反町洋 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙物件目録記載の医薬品を製造し,販売し,販売の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙物件目録記載の医薬品を廃 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙物件目録記載の医薬品を製造し,販売し,販売の申出をしては ならない。 2 被告は,別紙物件目録記載の医薬品を廃棄せよ。 3 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,発明の名称を「イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮 痛剤」とする発明に係る特許権(特許第3693258号。以下「本件特許権」といい,同特許権に係る特許を「本件特許」という。)を有する原告が,被告に対し,被告が別紙物件目録記載の医薬品(以下「被告医薬品」という。)の製造,販売及び販売の申出をすることが本件特許権の侵害に当たると主張して,特許法100条1項及び2項に基づき,被告医薬品の製造,販売,販売の申出 の差止め及び廃棄を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)(1) 当事者 ア原告は,アメリカ合衆国の法人である。 イ被告は,医薬品の販売等を目的とする会社である。(甲8)(2) 本件特許権原告は,以下の特許権を有している(以下,本件特許の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書等」と,本件特許の優先日を「本件優先日」 という。)。原告は,ファイザー株式会社に対して専用実施権を設定し,同社は,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛の治療薬である先発医薬品(商品名:リリカカプセル,リリカOD錠)を販売している。(甲1,2)発明の名称:イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤特許番号:特許第3693258号 出願日:平成9年7月16日(特願平10- D錠)を販売している。(甲1,2)発明の名称:イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤特許番号:特許第3693258号 出願日:平成9年7月16日(特願平10-507062号) 優先日:平成8年7月24日優先権主張国:米国登録日:平成17年7月1日(3) 本件特許権の延長登録原告は,別紙延長登録目録記載のとおり,本件特許権について,延長登録 の出願をし,その登録を受けた。(甲1)(4) 本件特許権の特許請求の範囲(後記(7)ウ記載の本件訂正前のもの)ア請求項1(以下,同請求項に係る発明を「訂正前発明1」という。)「式I (式中,R1 は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3 は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する痛みの処置における鎮痛剤。」イ請求項2(以下,同請求項に係る発明を「訂正前発明2」という。) 「化合物が,式IにおいてR3 およびR2 はいずれも水素であり,R1 は-(CH2)0-2-iC4H9 である化合物の(R),(S),または(R,S)異性体である請求項1記載の鎮痛剤。」ウ請求項3(以下,同請求項に係る発明を「訂正前発明3」という。)「化合物が,(S)−3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸または 3−アミノメチル−5−メチルヘキサン酸である請求項1記載の鎮痛剤。」エ請求項4(以下,同請求項に係る発明を「訂正前発明4」といい,訂正前発明1~3と併せて「訂正前各発明」という。)「痛みが炎症性疼痛,神経障害による痛み,癌による痛み 請求項1記載の鎮痛剤。」エ請求項4(以下,同請求項に係る発明を「訂正前発明4」といい,訂正前発明1~3と併せて「訂正前各発明」という。)「痛みが炎症性疼痛,神経障害による痛み,癌による痛み,術後疼痛, 幻想肢痛,火傷痛,痛風の痛み,骨関節炎の痛み,三叉神経痛の痛み,急性ヘルペスおよびヘルペス後の痛み,カウザルギーの痛み,特発性の痛み,または線維筋痛症である請求項1記載の鎮痛剤。」(5) 本件特許権の特許請求の範囲(後記(7)ウ記載の本件訂正後のもの。下線部が訂正箇所) ア請求項1(以下,同請求項に係る発明を「本件発明1」という。)「式I (式中,R1 は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R 2 は水素またはメチルであり,R3 は水素,メチルまたはカルボキシルであ る)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤。」イ請求項2(以下,同請求項に係る発明を「本件発明2」という。)「式I (式中,R3 およびR2 はいずれも水素であり,R1 は-(CH2)0-2-iC4H9 である)の化合物の(R),(S),または(R,S)異性体を含有する,神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤。」ウ請求項3(以下,同請求項に係る発明を「本件発明3」という。) 「(S)−3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸または3−アミノメチル−5−メチルヘキサン酸を含有する,炎症を原因とする痛み,又は手術を 原因とする痛みの処置における鎮痛剤。」エ請求項4(以下,同請求項に係る発明を「本件発明4」といい,本 メチル−5−メチルヘキサン酸を含有する,炎症を原因とする痛み,又は手術を 原因とする痛みの処置における鎮痛剤。」エ請求項4(以下,同請求項に係る発明を「本件発明4」といい,本件発明1~3と併せて「本件各発明」という。)「式I (式中,R1 は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3 は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤。」 (6) 本件発明1等の構成要件本件発明1及び訂正前発明1,本件発明2及び訂正前発明2,本件発明3並びに本件発明4を構成要件に分説すると,以下のとおりである(以下,請求項記載の式1の化合物を「本件化合物」という。)。 ア本件発明1及び訂正前発明1 (ア) 訂正前発明11A 式I (式中,R1 は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2 は水素またはメチルであり,R3 は水素,メチルまたはカルボ キシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する 1B´痛みの処置における1C 鎮痛剤。 (イ) 本件発明11A 式I (式中,R1 は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2 は水素またはメチルであり,R3 は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,1B 痛覚 ルであり,R2 は水素またはメチルであり,R3 は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,1B 痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における 1C 鎮痛剤。 イ本件発明2及び訂正前発明2(ア) 訂正前発明22A´化合物が,式IにおいてR3 およびR2 はいずれも水素であり,R1 は-(CH2)0-2-iC4H9 である化合物の(R),(S),または(R,S)異 性体である請求項1記載の2C 鎮痛剤。 (イ) 本件発明22A 式I (式中,R3 およびR2 はいずれも水素であり,R1 は-(CH2)0-2-iC4H9 である)の化合物の(R),(S),または(R,S)異性体を含有する, 2B 神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における2C 鎮痛剤。 ウ本件発明33A (S)−3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸または3−アミノメ チル−5−メチルヘキサン酸を含有する,3B 炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における3C 鎮痛剤。 エ本件発明44A 式I (式中,R1 は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2 は水素またはメチルであり,R3 は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する, 4B 炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における4C 鎮痛剤。 (7) 本件特許に関する無効 はエナンチオマーを含有する, 4B 炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における4C 鎮痛剤。 (7) 本件特許に関する無効審判及び審決取消訴訟ア沢井製薬株式会社は,平成29年1月16日付けで,本件特許の特許請 求の範囲の請求項1~4に係る発明の特許を無効にすることについて,特許庁に対し,特許無効審判(無効2017-800003号。以下「本件無効審判」という。)の請求をし,その後,被告ほか15名が,同審判手続に参加した。(甲9) イ特許庁は,平成31年2月28日,訂正前各発明についての特許を無効にする旨の審決の予告をした(甲21,乙25)。その理由は,①本件明細書等の記載は,訂正前各発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものということができないので,実施可能要件に違反する,②本件明細書等の記載に接した当業者が,訂正前各発明によりその課題を 解決できると認識し得ず,サポート要件に違反する,というものであった。 ウ原告は,上記審決の予告を受け,令和元年7月1日付け訂正請求書(甲3)をもって,本件特許に係る特許請求の範囲の記載を,上記(5)のとおり訂正すること(以下「本件訂正」という。なお,本件訂正による本件明細書等の訂正部分はない。)を求める旨の訂正請求を行った。 エ特許庁は,令和2年7月14日付けで審決(以下「本件審決」という。 甲9)をし,新規事項の追加を理由に請求項1及び2に係る訂正を認めず,訂正前発明1及び2は実施可能要件及びサポート要件に違反するとして,同各発明に係る特許を無効とし,請求項3及び4に係る訂正は認めた上で,本件訂正後の本件発明3及び4についての本件無効審判の請求は成り立た 発明1及び2は実施可能要件及びサポート要件に違反するとして,同各発明に係る特許を無効とし,請求項3及び4に係る訂正は認めた上で,本件訂正後の本件発明3及び4についての本件無効審判の請求は成り立た ないとした。本件審決のうち請求項3及び4に係る部分は確定した。 オ原告は,令和2年11月19日,本件審決の請求項1及び2に係る部分の取消しを求める審決取消訴訟(知財高裁令和2年(行ケ)第10135号)を提起した。 (8) 被告医薬品の構成等 ア被告医薬品の構成は,以下のとおりである。 a (S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸(一般名:プレガバリン)を有効成分とし,b 効能・効果を神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛とする,c 疼痛治療剤 イ被告は,令和2年8月17日付けで,別紙物件目録記載の販売名の被告 医薬品の製造販売について,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第84号による改正前の題名は,薬事法。以下,同改正の前後を通じて「医薬品医療機器等法」という。)14条1項に基づき,厚生労働大臣の承認を受けた。(甲11) 2 争点 (1) 訂正前発明1及び2ア被告医薬品が訂正前発明1及び2の技術的範囲に属するか(構成要件1B´の充足性)(争点1)イ訂正前発明1及び2に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2) (ア) 無効理由1(実施可能要件違反の有無)(争点2-1)(イ) 無効理由2(サポート要件違反の有無)(争点2-2)ウ本件発明1及び2に係る訂正の再抗弁の成否(争点3)(ア) 被告医薬品が本件発明1及び2の技術的範囲に属するか(構成要件 2-1)(イ) 無効理由2(サポート要件違反の有無)(争点2-2)ウ本件発明1及び2に係る訂正の再抗弁の成否(争点3)(ア) 被告医薬品が本件発明1及び2の技術的範囲に属するか(構成要件1B及び2Bの充足性)(争点3-1) (イ) 無効理由の解消の有無(争点3-2)a 無効理由1の解消の有無(争点3-2-1)b 無効理由2の解消の有無(争点3-2-2)(ウ) 訂正要件の具備の有無(争点3-3)a 本件発明1の訂正要件の具備の有無(争点3-3-1) b 本件発明2の訂正要件の具備の有無(争点3-3-2)(2) 本件発明3及び4ア被告医薬品が本件発明3及び4の技術的範囲に属するか(争点4)(ア) 構成要件3B及び4Bの充足性(争点4-1)(イ) 均等侵害の成否(争点4-2) イ本件発明3及び4に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきも のであるか(争点5)(ア) 無効理由1(実施可能要件違反の有無)(争点5-1)(イ) 無効理由2(サポート要件違反の有無)(争点5-2)(ウ) 無効理由3(訂正要件違反の有無)(争点5-3)(3) 本件特許権の存続期間の延長登録 ア延長登録により存続期間が延長された本件特許権の効力は被告医薬品に及ぶか(争点6)イ延長登録の無効理由の有無(争点7)第3 争点に関する当事者の主張争点に関する当事者の主張は,別紙「原告の主張」及び別紙「被告の主張」 (当裁判所の提示した争点に従い,当事者がその主張を総括的にまとめた準備書面の記載に基づくもの)に記載されたとおりである。 第4 当裁判所の判断 1 訂正前各発明及び本件各発明の内容(1) 本件明細書等(甲2)には,以下の ,当事者がその主張を総括的にまとめた準備書面の記載に基づくもの)に記載されたとおりである。 第4 当裁判所の判断 1 訂正前各発明及び本件各発明の内容(1) 本件明細書等(甲2)には,以下の記載等が存在する。 ア発明の詳細な説明(ア) 発明の背景「本発明は,痛みの治療において鎮痛/抗痛覚過敏作用を発揮する化合物としてのグルタミン酸およびγ-アミノ酪酸(GABA)の類縁体の使用である。これらの化合物の使用の利点には,反復使用により耐性 を生じないことまたはモルヒネとこれらの化合物の間に交叉耐性がないことの発見が包含される。 本発明の化合物は,てんかん,ハンチントン舞踏病,大脳虚血,パーキンソン病,遅発性ジスキネジアおよび痙性のような中枢神経系疾患に対する抗発作療法に有用な既知の薬物である。また,これらの化合物は抗 うつ剤,抗不安剤および抗精神病剤としても使用できることが示唆され ている。WO 92/09560(米国特許出願第618,692 号,1990 年11 月27 日出願)およびWO 93/23383(米国特許出願第886,080 号,1992 年5 月20日出願)参照。」(2頁4~12行目)(イ) 発明の概要「本発明は,以下の式Iの化合物の,痛みの処置とくに慢性の疼痛性 障害の処置における使用方法である。このような障害にはそれらに限定されるものではないが炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,三叉神経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経 痛,神経障害および特発性疼痛症候群が 痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経 痛,神経障害および特発性疼痛症候群が包含される。 化合物は式I (式中,R1 は炭素原子1~6個の直鎖状または分枝状アルキル,フェニルまたは炭素原子3~6個のシクロアルキルであり,R2 は水素またはメチ ルであり,R3 は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。 式Iの化合物のジアステレオマーおよびエナンチオマーも本発明に包含される。 本発明の好ましい化合物は式Iにおいて,R3 およびR2 は水素であり,R1 は-(CH2)0-2-iC4H9 の化合物の(R),(S),または(R,S)異性体である。 本発明のさらに好ましい化合物は(S)-3-(アミノメチル)-5-メチ ルヘキサン酸および3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸である。」(2頁14~33行目)イ発明の詳述(ア) 「本発明は,上記式Ⅰの化合物の上に掲げた痛みの処置における鎮痛剤としての使用方法である。痛みにはとくに炎症性疼痛,神経障害の痛 み,癌の痛み,術後疼痛,および原因不明の痛みである特発性疼痛たとえば幻想肢痛が包含される。神経障害性の痛みは末梢知覚神経の傷害または感染によって起こる。これには以下に限定されるものではないが,末梢神経の外傷,ヘルペスウイルス感染,糖尿病,カウザルギー,神経叢捻除,神経腫,四肢切断,および血管炎からの痛みが包含される。神 経障害性の痛みはまた,慢性アルコール症,ヒト免疫不全ウイルス感染,甲状腺機能低下症,尿毒症またはビタミン欠乏からの神経障害によっても起こる。神経障 ,および血管炎からの痛みが包含される。神 経障害性の痛みはまた,慢性アルコール症,ヒト免疫不全ウイルス感染,甲状腺機能低下症,尿毒症またはビタミン欠乏からの神経障害によっても起こる。神経障害性の痛みには,神経傷害によって起こる痛みに限らず,たとえば糖尿病による痛みも包含される。 上に掲げた状態が,現在市場にある鎮痛剤たとえば麻薬性鎮痛剤または 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)では,不十分な効果または副作用からの限界により不完全な処置しか行われていないことは周知である。」(3頁45行目~4頁6行目)(イ) ラットホルマリン足蹠試験におけるギャバペンチン,CI-1008,および3-アミノメチル-5-メチル-ヘキサン酸の効果 「雄性Sprague-Dawley ラット(70~90g)を試験前に少なくとも15 分間パースペックスの観察チャンバー(24cm×24cm×24cm)に馴化させた。 ホルマリン誘発後肢リッキングおよびバイティングを5%ホルマリン溶液(等張性食塩溶液中5%ホルムアルデヒド)50μl の左後肢の足蹠表面への皮下注射によって開始させた。ホルマリンの注射直後から,注射し た後肢のリッキング/バイティングを60 分間5分毎に評価した。結果 はリッキング/バイティングを合わせた平均時間として初期相(0~10分)および後期相(10~45 分)について示す。 ギャバペンチン(10~300mg/kg)またはCI-1008(1~100mg/kg)のホルマリン投与1時間前の皮下投与は,ホルマリン応答の後期相におけるリッキング/バイティング行動を,それぞれ最小有効用量(MED)30 および 10mg/kg で用量依存性にブロックした(図1)。しかしながら,いずれの化合物 は,ホルマリン応答の後期相におけるリッキング/バイティング行動を,それぞれ最小有効用量(MED)30 および 10mg/kg で用量依存性にブロックした(図1)。しかしながら,いずれの化合物も試験した用量では初期相には影響しなかった。3-アミノメチル-5-メチル-ヘキサン酸の同様の投与は100mg/kg で後期相の中等度のブロックを生じたのみであった。」(5頁49行目~6頁10行目)【図1a】 【図1b】 【図1c】 【図1d】 【図1e】 【図1f】 (図面の簡単な説明)「図1.ギャバペンチン[1-(アミノメチル)-シクロヘキサン酢酸],CI-1008[(S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸],および3-アミノメチル-5-メチル-ヘキサン酸のラット足蹠ホルマリン試 験における効果。 試験化合物は50μl のホルマリンの足蹠内注射の1時間前に皮下投与した。初期および後期相に注射された足蹠のリッキング(舐める行動)/バイティング(咬む行動)に費やされる時間を記録した。結果は各群6~8匹の平均±SEM として示す。*P<0.05 および**P<0.01 はビヒクル (Veh.)処置対照から有意に異なることを示す(ANOVA, Dunnett'st-検定による)。」(2頁35~42行目)(ウ) ギャバペンチンおよびCI-1008のカラニゲン誘発痛覚過敏に対する効果「試験日にラット(雄性Sprague-Dawley 70~90g)に2~3のベース ライン測定を行ったのち,2%カラゲニン100μl を右後肢の足蹠表面に皮下注射した。 る効果「試験日にラット(雄性Sprague-Dawley 70~90g)に2~3のベース ライン測定を行ったのち,2%カラゲニン100μl を右後肢の足蹠表面に皮下注射した。痛覚過敏のピークの発症後,動物に試験薬物を投与した。機械的および熱的痛覚過敏に対する試験には別個の動物群を使用した。」(6頁12~15行目)a 機械的痛覚過敏 「侵害受容圧閾値を,ラット足蹠加圧試験により鎮痛計(UgoBasile) を用いて測定した。足蹠への傷害を防止するため,250gのカットオフ点を使用した。カラゲニンの足蹠内注射は注射後3~5時間の間侵害受容圧閾値を低下させ,痛覚過敏の誘発を示した。モルヒネ(3mg/kg,皮下)は痛覚過敏の完全なブロックを生じた(図2)。ギャバペンチン(3~300mg/kg,皮下)およびCI-1008(1~100mg/kg,皮下)は用量 依存性に痛覚過敏に拮抗し,MED はそれぞれ10 および3mg/kg であった(図2)。」(6頁17~22行目)【図2a】 【図2b】 (図面の簡単な説明) 「図2.ギャンバペンチンおよびCI-1008 のカラゲニン誘発機械的痛覚過敏に対する効果。 侵害受容圧閾値を,足蹠加圧試験を用いてラットで測定した。足蹠内注射により動物に100μl の2%カラゲニンを投与する前に,ベースライン(BL)の測定を行った。結果は各群について8匹の動物の平均 (±SEM)として示す。ギャバペンチン(GP),CI-1008 またはモルヒネ(MOR;3mg/kg)をカラゲニン後3.5 時間に皮下投与した。*P<0.05および**P<0.01 は同時点でのビヒクル対照群と有意に す。ギャバペンチン(GP),CI-1008 またはモルヒネ(MOR;3mg/kg)をカラゲニン後3.5 時間に皮下投与した。*P<0.05および**P<0.01 は同時点でのビヒクル対照群と有意に異なる(ANOVA, Dunnett'st-検定による)。」(2頁43~48行目)b 熱痛覚過敏 「ベースライン足蹠回避潜時(PWL)を各ラットについてHargreaves モデルを用いて測定した。上述のようにカラゲニンを注射した。カラゲニン投与2時間後に,動物を熱痛覚過敏について試験した。ギャバペンチン(10~100mg/kg)またはCI-1008(1~30mg/kg)は,カラゲニン投与後2.5 時間に皮下に投与し,PWL をカラゲニン投与3および4時間後に再評価した。カラゲニンは注射後2,3および4時間に足蹠 回避潜時の有意な低下を誘発し,熱痛覚過敏の誘発を示した(図3)。 ギャバペンチンおよびCI-1008 は用量依存性に痛覚過敏に拮抗し,MEDは30 および3mg/kg を示した(図3)。」(6頁24~30行目)【図3a】 【図3b】 (図面の簡単な説明)「図3.ギャバペンチンおよびCI-1008 のカラゲニン誘発熱痛覚過敏に対する効果。 侵害受容熱閾値をHargreaves の装置を用いてラットで測定した。足蹠内注射により動物に100μl の2%カラゲニンを投与する前にベー スライン(BL)の測定を行った。結果は各群8匹の動物の平均(±SEM)として示す。ギャバペンチン(GP)またはCI-1008 はカラゲニン投与後2.5時間に皮下に投与した。*P<0.05 および**P<0.01 は同時点でのビ 結果は各群8匹の動物の平均(±SEM)として示す。ギャバペンチン(GP)またはCI-1008 はカラゲニン投与後2.5時間に皮下に投与した。*P<0.05 および**P<0.01 は同時点でのビヒクル対照群から有意に異なる(ANOVA, Dunnett'st-検定による)。」(2頁49行目~3頁4行目) c 「これらのデータはギャバペンチンおよびCI-1008 が炎症性疼痛の 処置に有効であることを示す。」(6頁31~32行目)(エ) 末梢性神経障害の動物モデル「BennettG.J.のアッセイはヒトに認められるのと類似の疼痛感覚の障害を生じるラットにおける末梢性単発神経障害の動物モデルを提供する(Pain, 1988; 33: 87-107)。 KimS.H.らのアッセイは,ラットにおける分節脊椎神経の結紮によって生じる末梢神経障害の一つの実験モデルを提供する(Pain, 1990; 50:355-363)。」(6頁33~36行目)(オ) 術後疼痛のラットモデル「術後疼痛のラットモデルも報告されている(Brennan ら,1996)。そ れには,後肢足蹠面の皮膚,筋膜および筋肉の切開が包含される。これは数日間続く再現可能かつ定量可能な機械的痛覚過敏の誘発を招く。このモデルはヒトの術後疼痛状態にある種の類似性を示す。本研究においては,本発明者らは術後疼痛のこのモデルでギャバペンチンおよびS-(+)-3-イソブチルギャバの活性を調べ,モルヒネの場合と比較した。」 (6頁37~41行目)a 方法「BantinandKingmen(Hull, U.K.)から入手した雄性Sprague-Dawley ラット(250~300g)をすべての 頁37~41行目)a 方法「BantinandKingmen(Hull, U.K.)から入手した雄性Sprague-Dawley ラット(250~300g)をすべての実験に使用した。手術の前に動物は6匹の群として飼育ケージに入れ,12 時間明暗サイクル(07 時00 分に点灯)下に置いて飼料および水は自由に与えた。動物は手術後,同じ条件下に,空気を含んだセルロースから構成される“Aqua-sorb”床(BetaMedicalandScientific, Sale, U.K.)上に対で収容した。すべての実験は薬物処置に盲検とした観察者により行われた。」(6頁43~48行目) b 手術 「動物は2%イソフルオランおよび1.4 O2/NO2 混合物で麻酔し,鼻円錐により手術中を通じて麻酔下に維持した。右後肢足蹠表面を50%エタノールで準備して踵の端から0.5cm に開始し足指の方向に皮膚および筋膜を通して1-cm 縦に切開した。足蹠の筋肉は鉗子によって持ち上げ縦に切開した。傷口を編んだ絹の縫合糸によりFST-02 の針を 用いて2個所で閉じた。傷口の部位はテラマイシンスプレーおよびオーロマイシン末で被覆した。手術後,すべての動物において感染の徴候は認められず,創傷は24 時間後には良好に治癒した。縫合糸は48時間後に抜糸した。」(6頁50行目~7頁6行目)c 熱痛覚過敏の評価 「熱痛覚過敏はラット足蹠試験(UgoBasile, Italy)を用い,Hargreaves らの方法(1988)の改良法に従い評価した。ラットは上方に傾斜したガラステーブル上3個の個々のパースペックスの箱からなる装置に順化させた。テーブルの下に可動 aly)を用い,Hargreaves らの方法(1988)の改良法に従い評価した。ラットは上方に傾斜したガラステーブル上3個の個々のパースペックスの箱からなる装置に順化させた。テーブルの下に可動性放射熱源を置き,後肢足蹠に焦点を合わせ足蹠回避潜時(PWL)を記録した。組織の傷害を回避する ため,自動カットオフ点を22.5 秒に設定した。各動物の両後肢について2~3回PWL を測定し,その平均を左右後肢のベースラインとした。 装置は約10 秒のPWL が得られるように検量した。PWL(秒)は上述のプロトコールに従い術後2,24,48 および72 時間に再評価した。」(7頁8~14行目) d 接触異痛の評価「接触異痛はシーメンス・ワインシュタイン・フォン・フライの毛(Stoelting, Illinois, USA)を用いて測定した。動物は,針金の網の底のケージに収容して,足蹠に接触できるようにした。動物は実験の開始前に,この環境に順化させた。接触異痛試験は動物の後肢の足蹠 表面に,順次力を増大させて(0.7,1.2,1.5,2,3.6,5.5,8.5,11.8, 15.1,および29g)フライの毛で触れ,後肢の回避が誘発されるまで試験した。フライの毛はそれぞれ6秒間または反応が起こるまで後肢に適用した。回避反応が確立されたならば,後肢を次に下降するフライの毛で試験を始めて反応が起こらなくなるまで再試験した。したがって,後肢を上げて反応が誘発される最高の力29gがカットオフ点と なった。各動物を,この様式で両後肢について試験した。反応が誘発されるのに必要な最低の力量を回避閾値としてグラムで記録した。化合物を手術前に投与する場合には,接触痛覚過敏,接触異痛および熱痛覚過敏 なった。各動物を,この様式で両後肢について試験した。反応が誘発されるのに必要な最低の力量を回避閾値としてグラムで記録した。化合物を手術前に投与する場合には,接触痛覚過敏,接触異痛および熱痛覚過敏に対する薬物効果の試験に同一の動物を使用し,各動物について熱痛覚過敏試験の1時間後に接触異痛の試験を行った。術後にS -(+)-3-イソブチルギャバを投与する場合には,接触異痛および熱痛覚過敏の検査に別個の群の動物を使用した。」(7頁16~28行目)e 統計「熱痛覚過敏試験で得られたデータは一元(分散分析)ANOVA に付し, ついでDunnett'st-検定を実施した。フライの毛で得られた接触異痛の結果は個別のMannWhitneyt-検定に付した。」(7頁30~32行目)f 結果「ラット足蹠筋肉の切開は熱痛覚過敏および接触異痛を生じた。い ずれの侵害受容反応も手術後1時間以内にピークに達し,3日間維持された。実験期間中,動物はすべて良好な健康状態を維持した。」(7頁34~36行目)g 手術前に投与したギャバペンチン,S-(+)-3-イソブチルギャバおよびモルヒネの熱痛覚過敏に対する効果 「手術1時間前におけるギャバペンチンの単回用量投与(3~30mg /kg,皮下)は,用量依存性に熱痛覚過敏の発生を遮断し,MED は30mg/kg であった(図4b)。最大用量のギャバペンチン30mg/kg は痛覚過敏の反応を24 時間防止した(図4b)。S-(+)-3-イソブチルギャバを同様に投与した場合も用量依存性(3~30mg/kg,皮下)に熱痛覚過敏の発生が遮断され,MED は30mg/kg であった(図4c)。30mg 止した(図4b)。S-(+)-3-イソブチルギャバを同様に投与した場合も用量依存性(3~30mg/kg,皮下)に熱痛覚過敏の発生が遮断され,MED は30mg/kg であった(図4c)。30mg /kg 用量のS-(+)-3-イソブチルギャバは3日まで有効であった(図4c)。手術0.5 時間前のモルヒネの投与は,用量依存性(1~6mg/kg,皮下)は熱痛覚過敏の発生に拮抗し,MED は1mg/kg であった(図4a)。この作用は24 時間維持された(図4a)。」(7頁39~46行目) 【図4a】 【図4b】 【図4c】 (図面の簡単な説明) 「図4.ラット術後疼痛モデルにおける熱痛覚過敏に対する(a)モ ルヒネ,(b)ギャバペンチン,および(c)S-(+)-3-イソブチルギャバの効果。 ギャバペンチンまたはS-(+)-3-イソブチルギャバは術前1時間に投与した。モルヒネは術前0.5 時間に投与した。ラット足蹠試験を用いて同側および対側足蹠の両者について熱足蹠回避潜時(PWL)を測 定した。明瞭にするため薬物処置動物の対側足蹠のデータは示していない。術前にベースライン(BL)の測定を行い,術後2,24,48 および 72 時間にPWL を再評価した。結果は各群につき8~10 匹の動物の平均PWL(秒,縦線は±SEM を示す)として表す。*P<0.05,**P<0.01は各時点で薬物処置群の同側足蹠をビヒクル処置群の同側足蹠と比較 して有意に異なる(ANOVA. Dunnett'st-検定による)。図中,図4aでは,-●-はビヒクル対側,-○-はビヒクル同側,-△-,-□-および-◇-はそれぞれモルヒネ1 蹠と比較 して有意に異なる(ANOVA. Dunnett'st-検定による)。図中,図4aでは,-●-はビヒクル対側,-○-はビヒクル同側,-△-,-□-および-◇-はそれぞれモルヒネ1,3および6mg/kg である。図4bでは,-△-は3,-□-は10 および-◇-は30mg/kg のギャバペンチンである。図4cでは-△-は3,-□-は10 および-◇- は30mg/kg のS-(+)-3-イソブチルギャバである。」(3頁5~17行目)h 手術前に投与したギャバペンチン,S-(+)-3-イソブチルギャバおよびモルヒネの接触異痛に対する効果「接触異痛の発生に対する薬物の効果は上述の熱痛覚過敏に用いた のと同じ動物で測定した。熱痛覚過敏試験と接触異痛試験の間には1時間の間隔を置いた。ギャバペンチンは,用量依存性に接触異痛の発生を防止し,MED は10mg/kg であった。ギャバペンチン10 および30mg/kg の用量はそれぞれ25 および49 時間有効であった(図5b)。S-(+)-3-イソブチルギャバも同様に用量依存性(3~30mg/kg)に接 触異痛の発生を遮断し,MED は10mg/kg であった(図5c)。この侵害 受容応答の遮断は30mg/kg 用量のS-(+)-3-イソブチルギャバにより3日間維持された(図5c)。これに反して,モルヒネ(1~6mg/kg)は,6mg/kg の最大用量で術後3時間,接触異痛の発生を防止したのみであった(図5a)。」(7頁49行目~8行目6行目)【図5a】 【図5b】 【図5c】 (図面の簡単な説明)「図5.ラット術後疼痛モデルにおける接触異 目)【図5a】 【図5b】 【図5c】 (図面の簡単な説明)「図5.ラット術後疼痛モデルにおける接触異痛に対する(a)モル ヒネ,(b)ギャバペンチン,および(c)S-(+)-3-イソブチルギャバの効果。 ギャバペンチンまたはS-(+)-3-イソブチルギャバは術前1時間に投与した。モルヒネは術前0.5 時間に投与した。フライ毛フィラメントに対する足蹠回避閾値を同側および対側足蹠の両者について測定 した。明瞭にするため,薬物処置動物の対側足蹠のデータは示してい ない。術前にベースライン(BL)の測定を行い,術後3,25,49 および 73 時間に回避閾値を再評価した。結果は,各群について8~10 匹の動物の足蹠回避を誘発するのに要した中間力(g)として表す(縦線は第1および第3四分位を示す)。*P<0.05 は各時点において薬物処置群の同側足蹠をビヒクル処置群の同側足蹠と比べた有意差である(Mann Whitneyt-検定)。図5中,-●-はビヒクル対側,-○-はビヒクル同側である。モルヒネ(図5a)については-△-は1,-□-は3および-◇-は16mg/kg である。 図5b中,ギャバペンチンおよびS-(+)-3-イソブチルギャバについては,-△-は3,-□-は10および-◇-は30mg/kgである。」 (3頁18~30行目)i 手術1時間後に投与したS-(+)-3-イソブチルギャバの接触異痛および熱痛覚過敏に対する効果「接触異痛および熱痛覚過敏はすべての動物で1時間以内にピークに達し,以後5~6時間維持された。30mg/kg のS-(+)-3-イソ ブチルギ 痛および熱痛覚過敏に対する効果「接触異痛および熱痛覚過敏はすべての動物で1時間以内にピークに達し,以後5~6時間維持された。30mg/kg のS-(+)-3-イソ ブチルギャバの手術1時間後における皮下投与は接触異痛および熱痛覚過敏の維持を3~4時間ブロックした。この時間後に,侵害受容の両応答はいずれも対照レベルに復し,これは抗熱痛覚過敏および抗接触異痛作用の消失を示す(図6)。 ギャバペンチンおよびS-(+)-3-イソブチルギャバは,すべての 実験で試験された最大用量まで,対側後肢の熱痛覚過敏試験または接触異痛評点におけるPWL に影響しなかった。これに反して,モルヒネ(6mg/kg,皮下)は熱痛覚過敏試験おける対側後肢のPWL を増大させた(データは示していない)。 ここに掲げた結果はラット足蹠筋肉の切開は少なくとも3時間続く熱 痛覚過敏および接触異痛を誘発することを示している。本試験の主要 な所見は,ギャバペンチンおよびS-(+)-3-イソブチルギャバがいずれの侵害受容反応の遮断に対しても等しく有効なことである。これに反し,モルヒネは接触異痛よりも熱痛覚過敏に有効であることが見出された。さらに,S-(+)-3-イソブチルギャバは接触異痛および熱痛覚過敏の誘発および維持を完全に遮断した。」(8頁9~2 3行目)【図6a】 【図6b】 (図面の簡単な説明)「図6.ラット術後疼痛モデルにおける(a)熱痛覚過敏および(b) 接触異痛の維持に対するS-(+)-3-イソブチルギャバの効果。 S-(+)-3-イソブチルギャバ[S-(+)-IBG]は術後1時間に投与した。熱足蹠回避潜時はラット足蹠試験を用いて (b) 接触異痛の維持に対するS-(+)-3-イソブチルギャバの効果。 S-(+)-3-イソブチルギャバ[S-(+)-IBG]は術後1時間に投与した。熱足蹠回避潜時はラット足蹠試験を用いて測定し,フライ毛フィラメントに対する足蹠回避閾値は同側および対側足蹠の両者について別個の群で測定した。明瞭にするために,同側足蹠のデータのみ を示す。術前にベースライン(BL)の測定を行い,術後6時間まで回避閾値を再評価した。熱痛覚過敏については,結果は各群について6匹の動物の平均PWL(秒)として表す(縦線は±SEM を示す)。*P<0.05,**P<0.01 は各時点で薬物処置群の同側足蹠をビヒクル(Veh-○-)処置群の同側足蹠と比較した有意差を示す(対のないt-検定)。接触 異痛については,結果は各群について6匹の動物の足蹠回避を誘発す るのに要した中間力(g)として表す(縦線は,第1および第3四分位を示す)。*P<0.05 は各時点において薬物処置群の同側足蹠をビヒクル処置群の同側足蹠と比較した場合の有意差である(MannWhitneyt-検定)。-●-はS-(+)-IBG 30mg/kg。」(3頁31~43行目)(2) 本件特許の特許請求の範囲及び上記(1)の記載によれば,訂正前各発明及 び本件各発明は,本件特許出願当時に市場にある鎮痛剤,例えば麻薬性鎮痛剤又は非ステロイド性抗炎症薬ではその効果が不十分であり,又は副作用からの限界により痛みの処置が不完全であるとの課題を解決するため,てんかん等の中枢神経系疾患に対する抗発作療法に有用であるとされていた既知の薬物である本件化合物が,各請求項に記載の痛みの治療において,反復使用 による耐性やモルヒネとの交叉耐性が生じることなく,鎮痛,抗痛 枢神経系疾患に対する抗発作療法に有用であるとされていた既知の薬物である本件化合物が,各請求項に記載の痛みの治療において,反復使用 による耐性やモルヒネとの交叉耐性が生じることなく,鎮痛,抗痛覚過敏作用を発揮することを新たに見出したことにより,本件化合物を包含する鎮痛剤の提供を可能にした医薬の用途発明であると認められる。 2 争点2-1(無効理由1(実施可能要件違反の有無))について事案に鑑み,争点2-1から判断する(なお,以下,証拠の摘示に当たって は,本件無効審判手続で提出された証拠を「審判甲1」などとして並記する。)。 (1) 判断基準特許法36条4項(平成14年法律第24号による改正前のもの。以下同じ。)は,発明の詳細な説明の記載が,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分 に,記載しなければならない」と定めるところ,この規定にいう「実施」とは,物の発明においては,当該発明にかかる物の生産,使用等をいうものであるから,実施可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明の記載が,当業者が当該発明に係る物を生産し,使用することができる程度のものでなければならないと解される。 そして,医薬の用途発明においては,一般に,物質名,化学構造等が示さ れることのみによっては,当該用途の有用性及びそのための当該医薬の有効量を予測することは困難であり,当該医薬を当該用途に使用することができないから,医薬用途発明において実施可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明は,その医薬を製造することができるだけでなく,出願時の技術常識に照らして,医薬としての有用性を当業者が理解できるように記 載される必要がある 可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明は,その医薬を製造することができるだけでなく,出願時の技術常識に照らして,医薬としての有用性を当業者が理解できるように記 載される必要がある。 (2) 本件明細書等の記載内容ア訂正前発明1の構成要件1B´及び1Cは,「痛みの処置における鎮痛剤」であり,訂正前発明2は訂正前発明1に係る請求項を引用するものであるところ,これらの発明に係る請求項には,構成要件1B´の「痛み」の種 類や原因を限定する記載はない。 そして,本件明細書等には,本件化合物を含む鎮痛剤が使用される痛みについて,「本発明は,…痛みの処置とくに慢性の疼痛性障害の処置における使用方法である。このような障害にはそれらに限定されるものではないが,炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,三叉神経痛, 急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経痛,神経障害および特発性疼痛症候群が包含される。」(2頁14~19行目),「痛みにはとくに炎症性疼痛、神経障害の痛み、癌の痛み、術後疼痛、および原因不明の痛み である特発性疼痛たとえば幻想肢痛が包含される。神経障害性の痛みは末梢知覚神経の傷害または感染によって起こる。これには以下に限定されるものではないが、末梢神経の外傷、ヘルペスウイルス感染、糖尿病、カウザルギー、神経叢捻除、神経腫、四肢切断、および血管炎からの痛みが包含される。」(3頁46~50行目)との記載がある。 これらの記載によれば,構成要件1B´の「痛み」には,本件明細書等 に記載された上記の様々な痛みが全て包含されるものと解さ される。」(3頁46~50行目)との記載がある。 これらの記載によれば,構成要件1B´の「痛み」には,本件明細書等 に記載された上記の様々な痛みが全て包含されるものと解される。 イ証拠(甲78,乙3〔審判甲3〕,甲79・乙4〔審判甲4〕,甲80・乙5〔審判甲5〕,甲81・乙6〔審判甲6〕,甲88・乙14〔審決甲14〕,甲90・乙18〔審判甲18〕,甲91・乙19〔審判甲19〕)によれば,痛みには,様々なものがあり,その発生原因に応じ,①侵害受 容性疼痛(組織損傷による侵害受容体への過剰刺激や炎症により発痛増強物質等が同受容体を刺激することにより発生する痛み。炎症性疼痛や術後疼痛等がこれに該当する。),②神経障害性疼痛(末梢神経や中枢神経の損傷に起因して発生する痛み。三叉神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,帯状疱疹後神経痛等がこれに該当する。),③心因性疼痛(精密検 査を行っても原因となるような器質的病変ないし病態生理的機序が見出されないにもかかわらず訴えられる疼痛,また,器質的病変が存在する場合であっても,その身体的所見から予期される以上の強さの疼痛の訴えがあり,背景に心理的要因が関与していると考えられるもの。線維筋痛症等がこれに該当する。)に区分されるものと認められる。 ウ本件特許請求の範囲の請求項2に記載された化合物は請求項1記載の化合物(本件化合物)を特定したものであり,請求項3に記載した化合物は請求項2記載の化合物を特定したものであるところ,本件明細書等には,薬理試験結果のデータとして,①CI-1008((S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸。請求項3記載の化合物)及び3-アミノメチ ル-5-メチル-ヘキサン酸(同請求項記載の化合物)等を用い 結果のデータとして,①CI-1008((S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸。請求項3記載の化合物)及び3-アミノメチ ル-5-メチル-ヘキサン酸(同請求項記載の化合物)等を用いたラットホルマリン足蹠試験結果,②CI-1008を用いたカラゲニン痛覚過敏に対する試験結果,③本件化合物に該当するS-(+)-3-イソブチルギャバ(先発医薬品の名称や化学構造(甲5)に照らし,CI-1008と同一であると認められる。)を用いたラット術後疼痛モデルにおける熱痛 覚過敏及び接触異痛に対する試験結果が記載されている。 (ア) このうち,術後疼痛が侵害受容性疼痛に当たることは上記イのとおりであり,当業者は,上記③の試験を侵害受容性疼痛に対する医薬品等の効果を評価するための動物実験であると認識すると考えられる。 (イ) 次に,本件明細書等には,カラゲニン痛覚過敏に対する試験結果について,「これらのデータは…CI-1008 が炎症性疼痛の処置に有効である ことを示す。」(6頁31,32行目)と記載されており,本件特許出願前に公表された甲57〔審判乙34〕(「Alterationsinneuronalexcitabilityandthepotencyofspinalmu, deltaandkappaopioidsaftercarrageenan-inducedinflammation」351頁左欄11,12行目。平成4年公表。なお,文献については著者名,出版社又は雑誌 の名称・号数等の記載は省略する。以下同様。)にも「カラゲニンは,炎症及び痛覚過敏を誘発するために広く使用されている。」などの記載が存在する。これらによれば,当業者は,上記試験を,侵害受容性疼痛に属する ・号数等の記載は省略する。以下同様。)にも「カラゲニンは,炎症及び痛覚過敏を誘発するために広く使用されている。」などの記載が存在する。これらによれば,当業者は,上記試験を,侵害受容性疼痛に属する炎症性疼痛に対する医薬品等の効果を評価するための試験であると認識するものと認められる。 (ウ) さらに,ラットホルマリン足蹠試験について,本件特許出願前に公表された甲27〔審判乙4〕(「Effectsoflocalanaesthesiaonformalin-inducedFosexpressionintheratdorsalhorn」2301頁序論左欄1,2行目。平成7年公表)には,「ホルマリン試験は,動物における侵害刺激のモデルとして使用されてきている。」との記載が, 甲45〔審判乙22〕(「Theformalintest: anevaluationofthemethod」)13頁左欄末行~右欄2行目。平成4年公表)には,「ホルマリン試験は…侵害受容の標準的動物モデルの1つと考えるべきである。」との記載が存在する。これによれば,当業者は,上記試験を,炎症性の痛み,すなわち侵害受容性疼痛に対する医薬品等の効果を評価するため の試験であると認識するものと認められる。 (エ) 以上によれば,本件明細書等に記載された三つの薬理試験は,いずれも,本件化合物が侵害受容性疼痛に対して鎮痛効果を有することを確認したものであり,当業者もそのように認識するものと考えられる。 エ他方,神経障害性疼痛については,本件明細書等に「BennettG.J.のアッセイはヒトに認められるのと類似の疼痛感覚の障害を生じるラットに おける末梢性単発神経障害の動物モデルを提供する(P 他方,神経障害性疼痛については,本件明細書等に「BennettG.J.のアッセイはヒトに認められるのと類似の疼痛感覚の障害を生じるラットに おける末梢性単発神経障害の動物モデルを提供する(Pain, 1988; 33:-107)。KimS.H.らのアッセイは,ラットにおける分節脊椎神経の結紮によって生じる末梢神経障害の一つの実験モデルを提供する(Pain, 1990;50: 355-363)。」(6頁33~36行目)との記載が存在するにとどまり,本件化合物が神経障害性疼痛又は心因性疼痛による痛覚過敏又は接触異 痛の痛みの治療に有効であることを示す薬理試験結果は,動物実験の結果も含め,何ら開示されていない。 医薬の用途発明においては,一般に,物質名,化学構造等が示されることのみによっては,当該用途の有用性を予測することは困難であり,当該医薬を当該用途に使用することができないから,医薬の用途発明において 実施可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明にその医薬の有用性を当業者が理解できるような薬理試験結果を記載する必要があるが,前記判示のとおり,本件明細書等には,本件化合物が神経障害性疼痛又は心因性疼痛による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの治療に有効であると当業者が理解し得るような薬理試験結果の記載は存在しない。 (3) 本件特許出願当時の技術常識ア本件明細書等には,本件化合物が侵害受容性疼痛による痛覚過敏又は接触異痛に対して有効であれば,神経障害又は心因性による痛覚過敏又は接触異痛についての薬理試験を要することなく治療効果が予測されることを明示又は示唆する技術常識の記載は存在しない。また,侵害受容性疼痛, 神経障害性疼痛,心因性疼痛などの種類を問わず,痛覚過敏又は接触異痛 いての薬理試験を要することなく治療効果が予測されることを明示又は示唆する技術常識の記載は存在しない。また,侵害受容性疼痛, 神経障害性疼痛,心因性疼痛などの種類を問わず,痛覚過敏又は接触異痛 などの痛みの発症原因や機序が同一であり,いずれかの種類の痛みに対して有効な医薬品であれば,他の種類の痛みに対しても有効であることが本件特許出願当時の当業者に知られていたなどの記載もない。 イ本件特許出願前に公表された文献である甲79・乙4〔審判甲4〕(「病態生理よりみた内科学」652頁2~18行目,653頁7~13行目。 平成8年公表)には「慢性疼痛は極めて多彩な特徴を持ち,その基礎となる病態生理に著しい差違がある」とした上で,①侵害受容性疼痛について,侵害受容神経路に進行しつつある侵害刺激による痛みであり,その痛みの質は「体性であればチクチクする,脈打つような,あるいは差し込むような痛みであり,内臓性なら鈍いあるいは絞るような痛み」であって,「鎮 痛薬としてのモルヒネは有効である」,②神経障害性疼痛について,求心路遮断性,交感神経依存性及び末梢性の三つの亜型に分類され,その痛みは,「神経損傷により急激に現れ,臨床的には,異常感覚…,感覚異常…,あるいは神経学的障害または局在性自律神経障害のような特徴を合併」し,神経障害性疼痛のうち交感神経依存性疼痛と求心路遮断性疼痛には「モル ヒネは無効で」ある,③心因性疼痛について,「この痛みは,器質性病変を伴うものと伴わないものとがあ」り,「この種の痛みを特徴付けるのは困難で」,「診断には器質的要因と心理的要因とがどの程度疼痛経験に寄与しているかを識別する必要があり,問題はしばしば複雑となる」などと記載されている。 同様に,甲80・乙5 のは困難で」,「診断には器質的要因と心理的要因とがどの程度疼痛経験に寄与しているかを識別する必要があり,問題はしばしば複雑となる」などと記載されている。 同様に,甲80・乙5〔審判甲5〕(「最新脳神経外科学」200頁3~19行目。平成8年公表)には,侵害受容性疼痛について,「組織損傷による機械的な侵害レセプターへの過剰刺激や炎症による内因性発痛物質や発痛増強物質がレセプターを刺激することにより発生する痛み」であり,「刺激となる組織障害に対処し,抗炎症療法を施行し,それらが効果 をみる前には,モルフィンなどの鎮痛薬で対処することが可能であ」り, 神経性疼痛について,「末梢神経に対する圧迫や絞扼によって発生するもので,脱髄や虚血のために異常知覚が発生したり,細系線維と太系線維との間でエファプス伝達…が発生したり,細経(判決注:ママ)線維に過剰興奮を惹起させたりして,脊髄後角へ有害刺激の信号を大量に送り込み,脊髄視床路を介して,激しい痛みとして認識される」などと記載されてい る。 さらに,甲84・乙9〔審判甲9〕(「神経内科 QuickReference 第2版新しい神経学の進歩をふまえた診療の実際-診察から治療まで-」199頁下から4行目~200頁7行目。平成7年公表)には,心因性疼痛について,「中枢神経系に器質的病変がなく,直接末梢からの侵害刺激が ないにもかかわらず存在する痛みで,通常慢性疼痛の形をとるもの」であって,痛む部位は「精神的な影響を受けやす」く,「常に1個所に固定しているのでなく,他の部位に移動しやすく,しばしば同時に2個所以上に痛みが存在し,しかもそれぞれが互いに関連のない部位であることも特徴的」であり,痛みの強さは「一般にあまり強くなく,痛みの内 固定しているのでなく,他の部位に移動しやすく,しばしば同時に2個所以上に痛みが存在し,しかもそれぞれが互いに関連のない部位であることも特徴的」であり,痛みの強さは「一般にあまり強くなく,痛みの内容も漠然と しており」,治療は「精神安定薬,抗うつ薬の投与や精神療法が行われるが,一般になかなか治りにくい」などと記載されている。 上記各文献は,本件の技術分野に属する専門家により執筆されたものであり,その当時の技術常識を反映した書籍であるというべきところ,上記に摘示した各記載によれば,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛及び心因性 疼痛は,その発症原因,痛みの態様・程度及び治療方法がそれぞれ異なるというのが本件特許出願当時の技術常識であり,痛みの種類を問わず,痛覚過敏又は接触異痛などの痛みの発症原因や機序は同一であり,いずれかの種類の痛みに対して有効な医薬品であれば,他の種類の痛みに対しても有効であるとの技術常識が存在したということはできない。 ウ以上によれば,本件化合物が神経障害又は心因性による痛覚過敏又は接 触異痛の痛みの治療に有効であることを示す薬理試験結果の記載もなく,本件明細書等の記載に接した当業者が,本件化合物がこれらの痛みの治療に有効であると認識し得たとは考えられない。 (4) したがって,本件明細書等の記載は訂正前発明1及び2を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできず,実施可 能要件を充足しない。 (5) 原告の主張についてこれに対し,原告は,本件特許出願当時,慢性疼痛は,それが侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛又は心因性疼痛のいずれによるものであっても,末梢や中枢の神経細胞の感作という神経の機能異常で生ずる痛覚過敏や接触異痛 告は,本件特許出願当時,慢性疼痛は,それが侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛又は心因性疼痛のいずれによるものであっても,末梢や中枢の神経細胞の感作という神経の機能異常で生ずる痛覚過敏や接触異痛 の痛みであるとの技術常識が存在したので,当業者は,本件明細書等の記載及び同明細書等に記載された薬理試験から,本件化合物が同明細書等に記載された各種の痛みに有用であると認識することができたと主張する。 アその理由として,原告は,本件特許出願当時,ホルマリン試験等を用いた研究により,組織損傷や炎症の後に,興奮性アミノ酸を伝達物質とする NMDAレセプター作動性の中枢性感作を生ずることが知られ(甲39,46,47,49等),カラゲニンの炎症や,術後疼痛における感作についても,これと同様の機序であると理解されていた上(甲15の1,甲50,52,57,146等),神経損傷の後にも,同様にNMDAレセプター作動性の中枢性感作を生ずることが知られていたこと(甲42,46, 55,80,86等)などを指摘する。 (ア) 確かに,甲39〔審判乙16〕(「TheinductionandmaintenanceofcentralsensitizationisdependentonN-methyl-D-asparticacidreceptoractivation; implicationsforthetreatmentofpost-injurypainhypersensitivitystates」293頁要約14,15行目, 序論左欄1~6行目。平成3年公表)には,傷害後疼痛過敏に関し,「中 枢感作はヒトにおける損傷後疼痛過敏状態の原因となる可能性がある」,「末梢組織の損傷に続いて生じる痛 , 序論左欄1~6行目。平成3年公表)には,傷害後疼痛過敏に関し,「中 枢感作はヒトにおける損傷後疼痛過敏状態の原因となる可能性がある」,「末梢組織の損傷に続いて生じる痛覚過敏は,損傷付近の一次求心性侵害受容器の感受性の増大(末梢性感作)…および,脊髄におけるニューロンの興奮性の増大(中枢性感作)の結果生じる」との記載が,甲46〔審判乙23〕(「EvidenceforspinalN-methyl-D-aspartaterecep torinvolvementinprolongedchemicalnociceptionintherat」218頁要約下から3行目~末行。平成2年公表)には「ホルマリンによって生成される求心性集中砲火(が)…比較的に短いタイムスパンでNMDA介在性の中枢性活性を誘発し,この誘発された活性が長期間の痛みの状態における侵害受容とその調節の変化の一つの基礎となって いる可能性がある」との記載が,甲49〔審判乙26〕(「TheRoleofNMDAReceptor-operatedCalciumChannelsinPersistentNociceptionafterFormalin-inducedTissueInjury」3671頁左欄の要約部分下から6行目〜末行。平成4年公表)には「この結果は,ホルマリン損傷により誘発された組織損傷後の中枢性感作および持続性侵害受 容は,主にNMDA受容体作動性(比較的程度は低いが電位依存性の)カルシウムチャネルを介したカルシウム流入に依存することを示す。」との記載が存在する。 (イ) また,甲15の1〔審判丙四6〕(「Characterizationofaratmodelofin ムチャネルを介したカルシウム流入に依存することを示す。」との記載が存在する。 (イ) また,甲15の1〔審判丙四6〕(「Characterizationofaratmodelofincisionalpain」500頁左欄36~39行目。平成8年公 表)には,術後疼痛に関し,「著者らは,傷の上10cmの位置での疼痛閾値の減少を検出し,これが中枢性感作による二次痛覚過敏であったことを示した。」との記載が,甲50〔審判乙27〕(「SpinalnitricoxidesynthesisinhibitionblocksNMDA-inducedthermalhyperalgesiaandproducesantinociceptionintheformalintestinrat s」291頁要約下から3行目~末行,299頁左欄2~6行目。平成5 年公表)には「この痛覚過敏要素は,脊髄のNMDA受容体の活性化によって開始され,それはNO 生成を介して求心性インプットの実際の増大処理および続く疼痛行動の関連する痛覚過敏要素に導く。」,「ヒトの術後疼痛状態は,…長引く求心性の活動や脊髄のNMDAレセプターを用いた動物モデルやシステムと少なからず類似している」との記載が, 甲146(「IntrathecalAmitriptylineActsasanN-Methyl-D-AspartateReceptorAntagonistinthePresenceofInflammatoryHyperalgesiainRats」1046頁右欄13〜19行目。平成7年公表)には「神経損傷と炎症のモデルは,結果として得られる痛覚過敏の脊椎での薬理学及び生理学に一般的に違 atoryHyperalgesiainRats」1046頁右欄13〜19行目。平成7年公表)には「神経損傷と炎症のモデルは,結果として得られる痛覚過敏の脊椎での薬理学及び生理学に一般的に違いはない。両方の種類のモデルにおい て,介入から維持される有害な感覚入力は,脊椎でのN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)レセプターの活動に依存して痛覚過敏を生ずるという強い証拠がある。」との記載がある。 (ウ) さらに,神経障害性疼痛に関し,甲42〔審判乙19〕(「Responseofchronicneuropathicpainsyndromestoketamine: aprelimina rystudy」56頁左欄26~35行目。平成6年公表)には「動物の神経障害性疼痛モデルにおいて示唆されるように…,痛覚過敏はNMDA受容体によって介在される「ワインドアップ現象」の提示である可能性がある。これに関して神経障害性疼痛症候群における痛覚過敏はホルマリン誘発性の痛みの第二相…に類似する。これらはすべて,NMDA受 容体介在性の中枢性促通による脊髄レベルでのワインドアップ現象によって生じると思われる。」との記載が,前掲甲46〔審判乙23〕(218頁序論1~15行目)には「持続したあるいは慢性的な痛みに関連する多くの問題の一つは,長く持続する痛みのある種の形態を緩和する難しさにあり,これは特に,神経損傷に関連する形態についてである。 …動物についての様々な研究は,末梢の侵害受容繊維(判決注:ママ) の感作が発生し得ること…を明らかに示し,さらに最近では,マイナー入力に対する後角の侵害受容的システムの反応を顕著に促進する,急速に誘発された中枢性過敏についての証拠が蓄積している。このよ の感作が発生し得ること…を明らかに示し,さらに最近では,マイナー入力に対する後角の侵害受容的システムの反応を顕著に促進する,急速に誘発された中枢性過敏についての証拠が蓄積している。このようなメカニズムは,痛みを増幅し,持続する痛みの状態の問題に貢献する可能性がある。」との記載がある。 (エ) 他方,前記(3)イ判示のとおり,甲79・乙4〔審判甲4〕,甲80・乙5〔審判甲5〕,甲84・乙9〔審判甲9〕等によれば,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛及び心因性疼痛は,その発生原因,発現する痛みの態様や程度,治療方法等が異なるものと認められ,さらに,本件特許出願前に公表された甲41〔審判乙18〕(「Nociceptormodulatedc entralsensitizationcausesmechanicalhyperalgesiainacutechemogenicandchronicneuropathicpain」588頁右欄32~43行目。平成6年公表)には,神経障害性疼痛について,「神経因性疼痛を有する患者が異種性であることは,以前に指摘されており…本研究により確認された。調査により,異なる型の痛覚過敏が個々の患者に同時に 存在し得ること,および単一の感覚異常が必ずしも他の感覚機能障害と関連するわけではないことが明らかになった。また,機械的疼痛閾値の低下などの1つの症状が,同じ患者においても,異なる神経メカニズムによって媒介され得ることも指摘されている。」との記載がある。 また,心因性疼痛に分類される線維筋痛症について,甲60〔審判乙 37〕(「BecomingFamiliarwithFibromyalgia」33頁左欄5~7行目,右欄下から18行目~末行。平成8年公表)に 類される線維筋痛症について,甲60〔審判乙 37〕(「BecomingFamiliarwithFibromyalgia」33頁左欄5~7行目,右欄下から18行目~末行。平成8年公表)には,「線維筋痛症は,睡眠障害に関連していると思われる筋肉の微小外傷によって引き起こされる可能性があることも示唆されている。…神経伝達物質の不均衡もこの疾患の原因として調査されている。…これらの不均衡に対する遺伝的 素因があるかもしれない…身体的外傷,心理社会的外傷,または感染が 症状の発現を引き起こす可能性がある」,「原因は謎のままである。線維筋痛症に対する治療法はない。」との記載がある。 (オ) 以上によれば,上記(ア)ないし(ウ)の各記載から,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛等で出現する痛覚過敏と,脊髄のNMDA受容体の活性化による中枢性感作との間に関連性があるといい得るとしても,本件特許 出願当時,本件明細書等に記載された侵害受容性疼痛(炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,痛風,火傷痛等)や神経障害性疼痛(三叉神経痛,急性疱疹性神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー等)により出現する痛覚過敏がすべて末梢や中枢の神経細胞の感作という神経の機能異常により生じるとの技術常識が存在したとは認め難 く,まして,これらの記載から,当業者が,薬理試験結果の記載もなく,本件化合物が神経障害性疼痛の治療に有効であると認識し得たということはできない。 イ原告は,甲129,乙11等を根拠に,組織損傷や炎症により神経を損傷し,逆に神経損傷により炎症を生じるなどして,神経細胞の感作を生じ て痛覚過敏や接触異痛を生ずることから,痛みを組織損傷,炎症,神経損傷,心因性の要因などの原因では明確に区別する り神経を損傷し,逆に神経損傷により炎症を生じるなどして,神経細胞の感作を生じ て痛覚過敏や接触異痛を生ずることから,痛みを組織損傷,炎症,神経損傷,心因性の要因などの原因では明確に区別することはできず,炎症性疼痛や術後疼痛と神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛とは,相互に重複する痛みであると理解されていたと主張する。 しかし,本件特許出願当時の技術常識として,痛みは,侵害受容性疼痛, 神経障害性疼痛,心因性疼痛に区分され,それぞれの区分により,痛みの態様や程度が異なると認められることは,前記判示のとおりであり,乙11〔審判甲11〕(「ペインクリニック療法の実際-痛みをもつ患者への集学的アプローチ-」15頁等。平成8年公表)にも,末梢組織・末梢神経に起因する痛みを「組織の損傷や炎症」により生じるものと,「末梢神 経自体の損傷により起こる痛み」とを分けて論じており,甲129(「Pa induetonervedamage: Areinflammatorymediatorsinvolved?」平成7年公表)にも,痛みを組織損傷,炎症,神経損傷,心因性の要因などの原因で明確に区別することはできない旨の記載は存在しない。 そうすると,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛に共通して痛覚過敏や接触異痛の症状がみられるとしても,そのことから,痛みを組 織損傷,炎症,神経損傷,心因性の要因などの原因では明確に区別することができず,炎症性疼痛,術後疼痛,神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛とが相互に重複する痛みであると当業者から理解されていたということはできない。 ウ原告は,本件明細書等に記載された「炎症性疼痛」は,神経細胞の感作 による痛覚過敏や接触異痛に う疼痛とが相互に重複する痛みであると当業者から理解されていたということはできない。 ウ原告は,本件明細書等に記載された「炎症性疼痛」は,神経細胞の感作 による痛覚過敏や接触異痛による痛みであり,侵害受容性疼痛を意味しないとした上で,ホルマリン試験は,後期相が痛覚過敏や接触異痛の原因である中枢性感作を反映したものであることが知られ,神経障害性疼痛治療薬の研究に用いられており,本件明細書等においても,本件化合物が,ホルマリンの侵害刺激を反映した前期相には効果を奏さず,痛覚過敏や接触 異痛の直接の原因である中枢性感作を反映した後期相に効果を奏することが確認されていると主張する。 (ア) しかし,炎症性疼痛が侵害受容性疼痛に該当することは,前掲甲80・乙5〔審決甲5〕(199頁右欄下から9~7行目)に「炎症や組織損傷による痛覚レセプターを異常に刺激することにより,痛覚求心系を激 しく興奮させる侵害受容性疼痛」と記載されていることなどからも明らかであり,本件明細書等における「炎症性疼痛」が侵害受容性疼痛以外に該当するとの原告の主張は採用し得ない。 (イ) また,前記判示のとおり,本件特許出願前に公表された前掲甲27〔審判乙4〕には,「ホルマリン試験は,動物における侵害刺激のモデルと して使用されてきている。」との記載が,前掲甲45〔審判乙22〕に は,「ホルマリン試験は…侵害受容の標準的動物モデルの1つと考えるべきである。」との記載があることに加え,前掲乙11・〔審判甲11〕(18頁10~13行目)には,「ホルマリンをラットの足底に注入したときの痛みの発現は,疼痛回避行動の解析からearlyphase(10分以内)とlatephase(刺激後15~45分)の2相性を示す 頁10~13行目)には,「ホルマリンをラットの足底に注入したときの痛みの発現は,疼痛回避行動の解析からearlyphase(10分以内)とlatephase(刺激後15~45分)の2相性を示すことはよく 知られている。前者はホルマリンそのものが痛覚受容器を刺激することによる痛みで,後者は二次的に起こる炎症性の痛みであると考えられており」との記載が,乙22〔審判甲22〕(「医薬品の開発」106頁22~25行目。平成2年公表)には,「侵害受容反応は希釈ホルマリン注射直後より発現し(第1相)5~10分後にいったん収まったのち, 15分前後から再度発現し始め30~40分間持続する(第2相)。第1相の反応はホルムアルデヒドにより侵害受容線維が直接刺激されて発現し,第2相は炎症性反応でプロスタグランジンの生成が関与していると考えられている。」との記載が存在する。これらの記載によれば,本件特許出願当時,ホルマリン試験は,侵害受容性疼痛に属する炎症性 疼痛に対する医薬品等の効果を評価する上で有用なモデルと当業者から認識されていたと認めるのが相当である。 (ウ) これに対し,原告は,ホルマリン試験は,その後期相が痛覚過敏や接触異痛の原因である中枢性感作を反映したものであることは当業者に知られていたため,神経障害性疼痛治療薬の研究に用いられていたと主 張する。 この点について,例えば,甲47〔審判乙24〕(「TheContributionofExcitatoryAminoAcidstoCentralSensitizationandPersistentNociceptionafterFormalin-inducedTissueInjury」3665頁右欄1~16行目。平成4年公 SensitizationandPersistentNociceptionafterFormalin-inducedTissueInjury」3665頁右欄1~16行目。平成4年公表)には「我々は以前…損傷に誘導 される中枢性感作の行動モデルとして,ホルマリン試験を用いた。…こ れは,ホルマリン応答の初期相の間に生じた神経作用が中枢神経系の機能の変化(すなわち,中枢性感作)を引き起こし,それが次いで後期相の間の処理に影響すること,をもたらし得ることを示唆する。」との記載が,甲49〔審判乙26〕(「TheRoleofNMDAReceptor-operatedCalciumChannelsinPersistentNociceptionafterFormalin-indu cedTissueInjury」3671頁左欄要約1~26行目。平成4年公表)には,「ラットにおける組織損傷に対する応答である中枢性感作および持続性侵害受容への細胞内カルシウムの貢献が,後肢へのホルマリンの皮下注射の後に調べられた。…この結果は,ホルマリン損傷により誘発された組織損傷後の中枢性感作および持続性侵害受容は,主にNMDA 受容体作動性…カルシウムチャネルを介したカルシウム流入に依存することを示す」との記載があり,甲49~51〔審判乙26~28〕の各文献には,ホルマリン試験の後期相を抑制する効果のある化合物が痛覚過敏を抑制したことが記載されている。 上記各記載等によれば,ホルマリン試験による組織損傷に対する応答 として中枢性感作が生じ,これが同試験の後期相の発現に影響を及ぼしている可能性があるとはいい得るが,上記各記載等をもって,同試験の後期相が中枢性感作の反映である 験による組織損傷に対する応答 として中枢性感作が生じ,これが同試験の後期相の発現に影響を及ぼしている可能性があるとはいい得るが,上記各記載等をもって,同試験の後期相が中枢性感作の反映であるという技術常識が存在したとまでは認められず,また,ホルマリン試験が,本件特許出願当時,神経障害性疼痛治療薬の研究に用いられていたと認めるに足りる証拠は存在しな い。さらに,本件化合物と異なる上記の化合物がホルマリン試験の後期相を抑制したことがあるとしても,そのことから,本件化合物が薬理試験もなく神経障害性疼痛や心因性疼痛に効果があると当業者が認識したとは考えられない。 エ原告は,当業者にカラゲニン試験が侵害受容性疼痛の試験と理解される ことはないとした上で,同試験は,神経細胞の感作を反映したものとして 知られ,神経障害性疼痛治療薬の研究にも用いられており,本件明細書等においても,神経細胞の感作で生じた痛覚過敏に対する本件化合物の効果が確認されていると主張する。 (ア) しかし,本件明細書等には,カラゲニン痛覚過敏に対する試験結果について,「これらのデータは…CI-1008 が炎症性疼痛の処置に有効であ ることを示す。」(6頁31,32行目)と記載されている上,本件特許出願前に公表された甲44〔審判乙21〕(「Anewandsensitivemethodofmeasuringthermalnociceptionincutaneoushyperalgesia」77頁要約3,4行目。昭和63年公表)には「カラゲニンに誘発された炎症は,食塩水で処置した足と比較して有意に短い足回避潜時を もたらし,そしてこれらの潜時変化は熱侵害受容閾値の低下に対応した。」との記載が,前掲 昭和63年公表)には「カラゲニンに誘発された炎症は,食塩水で処置した足と比較して有意に短い足回避潜時を もたらし,そしてこれらの潜時変化は熱侵害受容閾値の低下に対応した。」との記載が,前掲甲57〔審判乙34〕(351頁左欄11~17行目)には,「カラゲニンは,炎症と痛覚過敏を誘発するために広く使用されている。カラゲニンで処理された動物における多くの行動試験は,炎症状態によって引き起こされる変化およびこれらの変化に対する 様々な薬物の効果を決定するために,侵害性の圧力(足圧力試験)および侵害性の熱に対する足蹠回避を使用してきた。」との記載が存在する。 これらによれば,カラゲニン試験は,本件特許出願当時,侵害受容性疼痛に属する炎症性疼痛に対する医薬品等の効果を評価するものとして,当業者に広く知られていたものと認められる。 (イ) これに対し,原告は,本件特許出願当時,カラゲニン試験が侵害受容性疼痛の試験と理解されることはなく,同試験は,神経細胞の感作を反映したものとして知られ,神経障害性疼痛治療薬の研究にも用いられていたと主張する。 しかし,カラゲニン試験が侵害受容性疼痛の試験として知られていた ことは前記判示のとおりであり,原告の挙げる証拠(甲44,56,5 7,69等。なお甲72は本件特許出願後に公表された文献である。)を総合しても,同試験が神経細胞の感作を反映したものとして当業者に認識されていたと認めることはできず,また,同試験が神経障害性疼痛の治療薬の研究に用いられていたとの事実を認めるに足りる証拠もない。 オ原告は,術後疼痛試験は,神経細胞の感作を反映したものであることが知られており,本件明細書等においても,術後疼痛試験により,切開創の治癒後も との事実を認めるに足りる証拠もない。 オ原告は,術後疼痛試験は,神経細胞の感作を反映したものであることが知られており,本件明細書等においても,術後疼痛試験により,切開創の治癒後も持続する,神経細胞の感作で生じた痛覚過敏や接触異痛に対する本件化合物の効果が確認されていると主張する。 (ア) しかし,術後疼痛が侵害受容性疼痛に該当することは,甲81・乙6 〔審決甲6〕(「TheMassachusettsGeneralHospitalHandbookofPainManagement」32頁末行。平成8年公表)に「術後疼痛」が侵害受容性疼痛に該当するものとして例示されているとおりであり,術後疼痛試験は,皮膚や筋膜,筋肉を切開することによって生じる侵害受容性疼痛に対する侵害受容反応を評価するものであると認められる。 (イ) これに対し,原告は,甲58等を挙げ,動物の皮膚を切開することにより,神経細胞の感作が起こり,痛覚過敏などの神経の機能異常による症状が生ずることが知られており,これを痛覚過敏等の研究に使用することが技術常識であったと主張するが,手術等により神経の機能異常が生じるとしても,そのことから,術後疼痛が神経細胞の感作を反映した ものであるとの技術常識があったと認めることはできず,同試験が神経障害性疼痛の治療薬の研究に用いられていたとの事実を認めるに足りる証拠はない。 また,原告は,カプサイシン試験やマスタードオイル試験について記載された証拠(甲41等)も根拠に挙げるが,これらの試験は本件明細 書等に記載された試験ではなく,術後疼痛試験が侵害受容性疼痛に対す る医薬品等の効果を評価するためのものとして知られていたとの上記結論を左右するものでは らの試験は本件明細 書等に記載された試験ではなく,術後疼痛試験が侵害受容性疼痛に対す る医薬品等の効果を評価するためのものとして知られていたとの上記結論を左右するものではない。 カ原告は,本件化合物は,本件明細書等において中枢神経疾患である「てんかん」に対して効果を有する既知の化合物であることが記載され,更に神経障害性疼痛や線維筋痛症を含む慢性疼痛の全体に対し,抗痛覚過敏作 用を有することにより効果を奏することが明示されていたと主張する。 しかし,本件明細書等(甲2)には「本発明の化合物は,てんかん…のような中枢神経系疾患に対する抗発作療法に有用な既知の薬物である。」(2頁8~10行目)と記載されているとおり,抗発作作用を有することが既知であったにすぎず,当業者が,同記載から,本件化合物が神経障害 性疼痛や線維筋痛症を含む痛み全体に対し鎮痛効果を有すると認識するとは考えられない。 キ原告は,甲26,42,46,52〜55等に基づき,ホルマリン試験で中枢性感作を抑制することが確認されたケタミンが,広く神経障害性疼痛や線維筋痛症を含む慢性疼痛に効果を奏することも知られていたと主 張する。 しかし,ケタミンが侵害受容性疼痛及び神経障害性疼痛等による痛覚過敏や接触異痛に効果を奏するとしても,本件化合物とは異なる化合物であり,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛及び心因性疼痛により出現する痛覚過敏や接触異痛がすべて末梢や中枢の神経細胞の感作という神経の機能 異常により生じるとの技術常識が存在したとは認められないことにも照らすと,本件特許出願当時の当業者が,ケタミンに関する知見に基づき,薬理試験結果の記載もなく,本件化合物が神経障害性疼痛や心因性疼痛の治療に有効であると認識し得たとは したとは認められないことにも照らすと,本件特許出願当時の当業者が,ケタミンに関する知見に基づき,薬理試験結果の記載もなく,本件化合物が神経障害性疼痛や心因性疼痛の治療に有効であると認識し得たとは考えられない。 ク原告は,本件明細書等において,組織損傷や炎症による通常の痛みに対 して効果のあるモルヒネを比較例としていることから,当業者は,本件化 合物が,組織損傷や炎症による侵害刺激で生ずる通常の痛みではなく,神経細胞の感作による痛覚過敏や接触異痛に直接効果を奏すると理解すると主張する。 しかし,本件明細書等の薬理試験においては,ラットホルマリン足蹠試験についてギャバペンチンが,カラゲニン試験についてモルヒネ及びギャ バペンチンが,術後疼痛試験についてモルヒネ及びギャバペンチンが,それぞれ比較例として使用されているところ,本件明細書等にはモルヒネを比較例として使用した理由の記載はなく,侵害受容性疼痛に対する効果を確認する試験においてモルヒネを比較例として使用したからといって,そのことから,本件化合物が侵害受容性疼痛以外の痛みに効果があると当業 者が認識するとは考えられない。 また,原告は,本件明細書等では,慢性疼痛である神経障害性疼痛に有効なギャバペンチンを比較例としてより優れた効果を有することも確認していることからすると,本件化合物は神経障害性疼痛にも効果があると当業者は認識すると主張する。 しかし,モルヒネと同様に,本件明細書等にはこれらの化合物を比較例として使用した理由の記載はなく,侵害受容性疼痛に対する効果を確認する試験においてギャバペンチンを比較例として使用したからといって,そのことから,本件化合物が侵害受容性疼痛以外の痛みに効果があると当業者が認識するとは考えられない。 容性疼痛に対する効果を確認する試験においてギャバペンチンを比較例として使用したからといって,そのことから,本件化合物が侵害受容性疼痛以外の痛みに効果があると当業者が認識するとは考えられない。 ケ原告は,本件明細書等において,当時まだ一般的に用いられていなかった動物モデルであるチャングモデルやベネットモデルがあることについても紹介しており,当業者はこれらの動物モデルにより容易に追試が可能であったと主張する。 しかし,本件明細書等に「BennettG.J.のアッセイはヒトに認められる のと類似の疼痛感覚の障害を生じるラットにおける末梢性単発神経障害の 動物モデルを提供する…。KimS.H.らのアッセイは,ラットにおける分節脊椎神経の結紮によって生じる末梢神経障害の一つの実験モデルを提供する」(6頁33~36行目)との記載が存在するにとどまることは前記判示のとおりであり,他に,本件特許出願当時,本件化合物が侵害受容性疼痛以外の痛みに有効であることを上記動物モデル等により明らかにしたデ ータや資料等は存在しない。 (6) 以上によれば,本件明細書の記載は訂正前発明1及び2を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではなく,同各発明に係る特許は特許法36条4項の規定に違反してされたものであるので,特許法123条1項4号に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 3 争点2-2(無効理由2(サポート要件違反の有無))について(1) 特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者 のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲の ものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日判決・判タ1192号164頁参照)。 (2) これを本件についてみると,前記1及び2で判示したとおり,訂正前発明 1及び2が解決しようとする課題は,本件明細書等記載の神経障害性疼痛や心因性疼痛を含む様々な痛みの処置に有効な鎮痛剤を提供することにあるところ,本件明細書等には,本件化合物が侵害受容性疼痛に対して効果を有することは記載されているものの,本件特許出願当時の技術常識を斟酌しても,それ以外の疼痛に対して効果を有すると当業者が認識することはできない。 そうすると,本件明細書等の記載に接した当業者が訂正前発明1及び2に より,上記の課題を解決できると認識できるということはできない。 (3) したがって,訂正前発明1及び2に係る特許は,サポート要件に違反する。 4 争点3-2(無効理由の解消の有無)及び争点3-3(訂正要件の具備の有無)について(1) 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面の訂正は,その記載した 事項の範囲内においてしなければならない(特許法134条の2第9項,126条5項)。ここでいう「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内」とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総 の範囲内においてしなければならない(特許法134条の2第9項,126条5項)。ここでいう「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内」とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであることをいう。 (2) これを本件についてみると,本件訂正は,本件訂正請求前の請求項1及び2に記載された鎮痛剤の処置対象を,それぞれ,「痛み」から「痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に(構成要件1B),「…である請求項1記載の鎮痛剤」から「…を含有する,神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤」(構成要件2A~2C)に訂正しようとす るものである。 前記2で判示したとおり,本件明細書等には,本件化合物が侵害受容性疼痛に対して効果を有することは記載されているものの,本件特許出願当時の技術常識を斟酌しても,それ以外の疼痛に対して効果を有すると当業者が認識することはできない。 このように,本件明細書等には,神経障害又は線維筋痛症を含む侵害受容性疼痛以外の疼痛により生じた痛覚過敏や接触異痛について本件化合物が効果を有すると認識し得るだけの記載はないところ,請求項1を「痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に訂正することは,本件明細書等からはその効果を認識し得ない,侵害受容性疼痛以外の疼痛により生じた痛覚過敏や接触異痛の痛 みの処置を請求項1に導入するものであり,また,請求項2に「神経障害又 は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置」を加えることも,同様に,本件明細書等からはその効果を認識し得ない,侵害受容性疼痛以外の疼痛である神経障害や線維筋痛症により生じた痛覚過敏や接触異痛の 筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置」を加えることも,同様に,本件明細書等からはその効果を認識し得ない,侵害受容性疼痛以外の疼痛である神経障害や線維筋痛症により生じた痛覚過敏や接触異痛の痛みの処置を請求項2に特定して導入するものであるということができる。 (3) そうすると,請求項1及び2に係る上記訂正は,いずれも,本件明細書等 の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであるというべきであり,訂正要件を具備しない。 (4) 仮に,請求項1及び2に係る本件訂正が訂正要件を具備するとしても,前記2で判示したとおり,本件明細書等には,神経障害又は線維筋痛症を含む 侵害受容性疼痛以外の疼痛により生じた痛覚過敏や接触異痛について本件化合物が効果を有すると認識し得るだけの記載はないので,同明細書等は,当業者が本件発明1及び2を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められず,また,当業者がその記載により同各発明の課題を解決できると認識し得たとも認められない。 したがって,訂正前発明1及び2に係る特許の無効理由は本件訂正により解消されるものではなく,本件発明1及び2に係る特許は実施可能要件及びサポート要件に反し,特許無効審判により無効にされるべきものである。 5 争点4-1(構成要件3B及び4Bの充足性)について(1) 本件発明3に係る構成要件3Bは「炎症を原因とする痛み,又は手術を原 因とする痛みの処置における」というものであり,本件発明4に係る構成要件4Bは「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における」というものである。 上記各発明に係る請求項の訂正の趣旨について,原告は,本件訂正の 要件4Bは「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における」というものである。 上記各発明に係る請求項の訂正の趣旨について,原告は,本件訂正の際に原告が特許庁に提出した上申書(甲18,乙26)において,「訂正発明3 及び4において,鎮痛剤の処置対象である痛みを,審決の予告において実施 可能要件及びサポート要件を満たすと判断された『炎症を原因とする痛み(炎症性疼痛)』及び『手術を原因とする痛み(術後疼痛)』に限定した。」(9頁)などと説明しているところ,前記第4の2(2)イのとおり,構成要件3Bの「炎症を原因とする痛み」,「手術を原因とする痛み」及び構成要件4Bの「炎症性疼痛」,「術後疼痛」は,いずれも,侵害受容性疼痛に分類され る炎症性疼痛や術後疼痛を意味し,神経障害性疼痛や線維筋痛症は含まれないものと解するのが相当である。 (2) 被告医薬品の充足性について前記前提事実(8)アによれば,被告医薬品は「効能・効果を神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛とする」ものであり,「炎症を原因とする痛み」, 「手術を原因とする痛み」,「炎症性疼痛」又は「術後疼痛」を処置対象とするものではないから,構成要件3B及び4Bを充足しない。 (3) 原告の主張について原告は,慢性疼痛は,原因にかかわらず,神経細胞の感作という神経の機能異常で生ずることが知られていたことや,痛みを原因で区別することはで きず,炎症性疼痛や術後疼痛と,神経障害性疼痛や線維筋痛症とは,相互に重複することが理解されていたことなどを根拠として,構成要件3B,4Bの充足性を否定するが,原告のかかる主張が採用し得ないことは前記2で判示したとおりである。 また,原告は,炎症 痛症とは,相互に重複することが理解されていたことなどを根拠として,構成要件3B,4Bの充足性を否定するが,原告のかかる主張が採用し得ないことは前記2で判示したとおりである。 また,原告は,炎症や手術による組織損傷から神経細胞の感作という神経 の機能異常を生じ,痛覚過敏や接触異痛を生ずることなどを理由に,神経障害性疼痛を効能,効果とする被告医薬品は,炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みを用途とするものであると主張するが,侵害受容性疼痛において神経細胞の感作が生じることがあるとしても,そのことから,「神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛」を効能・効果とする被告医薬品の 用途が炎症を原因とする痛み又は手術を原因とする痛み等であるということ はできない。 さらに,原告は,痛みは患者の主観的心理状態であるから,混合性疼痛において,侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛とは,同一の患者において生ずる一つの痛みであり,両者を区別できないなどと主張するが,実際の臨床の場において患者の訴える痛みがいかなる種類の疼痛に当たるかの判断が困難な 場合があるとしても,それは診断の問題であり,構成要件充足性を左右するものではない。 (4) したがって,被告医薬品が本件発明3及び4の技術的範囲に属するということはできない。 6 争点4-2(均等侵害の成否)について 原告は,被告医薬品が構成要件3B,4Bの文言を充足しない場合であっても,均等侵害が成立すると主張する。 しかし,相手方が製造等をする製品(対象製品)が,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属すると認められるためには,当該対象製品が特許請求の範囲に記載された構成と異なる部分が特 許発明の本質的 象製品)が,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属すると認められるためには,当該対象製品が特許請求の範囲に記載された構成と異なる部分が特 許発明の本質的部分ではないことを要する(第1要件)。 本件発明3及び4と被告医薬品との相違部分は,その用途にあるところ,同各発明は,既知の薬物である本件化合物が,侵害受容性疼痛の治療に有効であることを新たに見出したことにあるので,その用途が同各発明の本質的部分を構成することは明らかである。 したがって,被告医薬品は,第1要件を充足しないので,均等侵害は成立しない。 7 まとめ以上によれば,訂正前発明1及び2に係る特許は,実施可能要件及びサポート要件の各違反を理由に特許無効審判により無効にされるべきものであり,本 件訂正は訂正要件を具備せず,また,同訂正によっても上記各無効理由が解消 されない。また,被告医薬品は,本件発明3及び4の技術的範囲に属しない。 したがって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。 第5 結論よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも 理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 小田誉太郎 裁判官 齊藤敦 (別紙)物件目録 (S)−3−(アミノメチル)−5−メチルヘキ 裁判官 齊藤敦 (別紙)物件目録 (S)−3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸(一般名:プレガバリン)を有効成分とし,「効能又は効果」として「神経障害性疼痛」又は「線維筋痛症に伴う 疼痛」を含む医薬品(商品名が以下のものを含む。)・プレガバリンOD錠25mg「JG」・プレガバリンOD錠75mg「JG」・プレガバリンOD錠150mg「JG」以上 (別紙)延長登録目録 1 出願年月日平成22年6月25日出願番号 2010-700105号 延長の期間 4年9月14日登録年月日平成22年11月24日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認 (2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00297000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル25mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途 帯状疱疹後神経痛 2 出願年月日平成22年6月25日出願番号 2010-700106号延長の期間 4年9月14日 登録年月日平成22年11月24日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号 条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号 承認番号 22200AMX00298000 (3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル75mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途帯状疱疹後神経痛 3 出願年月日平成22年6月25日出願番号 2010-700107号延長の期間 4年9月14日登録年月日平成22年11月24日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容 (1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00299000(3) 処分の対象となった物 プレガバリン(販売名:リリカカプセル150mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途帯状疱疹後神経痛 4 出願年月日平成23年1月14日 出願番号 2011-700002号延長の期間 5年登録年月日平成24年2月15日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分 薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認 (2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00297000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリ 品に係る同項の承認 (2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00297000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル25mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途 末梢性神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛を除く) 5 出願年月日平成23年1月14日出願番号 2011-700003号延長の期間 5年 登録年月日平成24年2月15日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号 承認番号 22200AMX00298000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル75mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途末梢性神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛を除く) 6 出願年月日平成23年1月14日出願番号 2011-700004号延長の期間 5年登録年月日平成24年2月15日 特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容 (1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00299000(3) 処分の対象となった物 プレガバリン(販売名:リリカカプセル150mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途 認番号 22200AMX00299000(3) 処分の対象となった物 プレガバリン(販売名:リリカカプセル150mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途末梢性神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛を除く) 7 出願年月日平成24年8月30日 出願番号 2012-700107号延長の期間 5年登録年月日平成25年10月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分 薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00297000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル25mg) (4) 処分の対象となった物について特定された用途線維筋痛症に伴う疼痛 8 出願年月日平成24年8月30日出願番号 2012-700108号 延長の期間 5年 登録年月日平成25年10月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号 承認番号 22200AMX00298000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル75mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途線維筋痛症に伴う疼痛 9 出願年月日平成24年8月30日出願番号 (販売名:リリカカプセル75mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途線維筋痛症に伴う疼痛 9 出願年月日平成24年8月30日出願番号 2012-700109号延長の期間 5年登録年月日平成25年10月23日 特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00299000 (3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル150mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途線維筋痛症に伴う疼痛 10 出願年月日平成25年4月26日 出願番号 2013-700062号延長の期間 5年登録年月日平成26年4月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分 薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00297000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル25mg) (4) 処分の対象となった物について特定された用途神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛(末梢性神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛を除く) 11 出願年月日平成25年4月26日 出願番号 2013-700063号 神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛(末梢性神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛を除く) 11 出願年月日平成25年4月26日 出願番号 2013-700063号延長の期間 5年登録年月日平成26年4月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分 薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00298000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル75mg) (4) 処分の対象となった物について特定された用途 神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛(末梢性神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛を除く) 12 出願年月日平成25年4月26日出願番号 2013-700064号 延長の期間 5年登録年月日平成26年4月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認 (2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00299000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル150mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途 神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛(末梢性神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛を除く)以上 (別紙) ) 処分の対象となった物について特定された用途 神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛(末梢性神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛を除く)以上 (別紙)原告の主張 第1 訂正前発明1及び2 1 被告医薬品が訂正前発明1及び2の技術的範囲に属するか(構成要件1B´ の充足性)(争点1)以下のとおり,被告医薬品は訂正前発明1及び2の技術的範囲に属する。 (1) 被告医薬品は,有効成分として本件化合物を含有し,効能,効果を「神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛」として承認された鎮痛剤である。被告医薬品が当該効能,効果に用いられた場合,訂正前発明1及び2で特定され た本件化合物の用途である「痛みの処置」に用いられることとなるので,被告医薬品は訂正前発明1及び2の技術的範囲に属する(構成要件1B´)。 構成要件1A,2A´,1C,2Cの充足は明らかである(以上,訴状)。 (2) 本件明細書等や技術常識等を参酌しても,訂正前発明1及び2の用途から,神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛が除外されるように限定解釈すべき 理由はない。 2 訂正前発明1及び2に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2)(1) 無効理由1(実施可能要件違反の有無)(争点2-1)ア本件各発明(及び訂正前各発明)は,これまで有効な治療法の存在しな かった,神経障害性疼痛や線維筋痛症の画期的治療薬であり,多額の研究開発投資を重ねて生まれたパイオニア発明である(訴状)。また,本件優先日当時,疼痛分野の技術発展は目覚ましく,本件各発明(及び訂正前各発明)は,本件優先日直前である1990年代中頃までに,組織損傷や炎症の侵害刺激から生ずる通常の痛みと区別された,神経の機能異 件優先日当時,疼痛分野の技術発展は目覚ましく,本件各発明(及び訂正前各発明)は,本件優先日直前である1990年代中頃までに,組織損傷や炎症の侵害刺激から生ずる通常の痛みと区別された,神経の機能異常による 慢性疼痛の存在が理解され,ホルマリン試験等を用いて感作のメカニズム の理解が進んだことにより,中枢神経系に作用する既知の薬剤の疼痛治療効果が再検討され,その中から,本件化合物が感作を抑制することを見出してなされたものである。本件明細書等は,本件優先日当時の技術常識に照らして可能な限りの記載がなされているから,記載要件は必要以上に厳格に適用されるべきではない(原告第4準備書面「第2の1」,原告第7 準備書面「第1」,原告第8準備書面「第1」)。痛みの詳細なメカニズムを論ずるまでもなく,通常の痛みと区別された慢性疼痛のうち,ホルマリン,カラゲニン,術後の痛みに効果を奏したことで,記載要件としては十分である。 イ訂正前発明1及び2の痛みは,本件明細書等を参照すると,麻薬性鎮痛 剤やNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)では効果が不十分な慢性疼痛と解釈できる(原告第4準備書面「第7」)。 慢性疼痛は,組織損傷や炎症の侵害刺激による通常の痛みとは異なり,原因にかかわらず,組織損傷や炎症によるものであっても,神経損傷その他神経の障害によるものであっても,心因性の要因によるものであっても, 神経障害性疼痛や線維筋痛症におけるものであっても,いずれも末梢や中枢の神経細胞の感作という神経の機能異常で生ずる痛覚過敏や接触異痛の痛みである(原告第3準備書面「第1及び第2」,原告第8準備書面「第2の3」,原告第9準備書面「第1の1」,「第2の1(1)及び(5),3並びに4」,原告第10準備書面「第2」)。かかる 接触異痛の痛みである(原告第3準備書面「第1及び第2」,原告第8準備書面「第2の3」,原告第9準備書面「第1の1」,「第2の1(1)及び(5),3並びに4」,原告第10準備書面「第2」)。かかる痛覚過敏や接触異痛の 痛みに対しては,ケタミン等の研究により,その直接の原因である神経細胞の感作を抑制することで,原因にかかわらず痛みを治療できることが知られていた(原告第3準備書面「第6」,原告第9準備書面「第2の1(2)及び8」)。 具体的には,慢性疼痛に共通する痛覚過敏や接触異痛の機序として,ホ ルマリン試験等を用いた研究により,組織損傷や炎症の後に,興奮性アミ ノ酸を伝達物質とするNMDAレセプター作動性の中枢性感作を生ずることが知られており(甲39,46,47,49等),カラゲニンの炎症や,術後疼痛における感作も,これと同様の機序であると理解されていた(甲15の1,甲50,52,57,146等)。 「この結果は,ホルマリン損傷により誘発された組織損傷後の中枢 性感作および持続性侵害受容は,主にNMDA受容体作動性(比較的程度は低いが電位依存性の)カルシウムチャネルを介したカルシウム流入に依存することを示す。」(甲49〔3671頁左欄Summary 下から6行目〜末行〕)「モデルは急増しているけれども,神経損傷と炎症のモデルは,結 果として得られる痛覚過敏の脊椎での薬理学及び生理学に一般的に違いはない。両方の種類のモデルにおいて,介入から維持される有害な感覚入力は,脊椎でのN−メチルーD−アスパルテート(NMDA)レセプターの活動に依存するという強い証拠がある。そのため,NMDAレセプターアンタゴニストのクモ膜下腔内注射は,かかるモデルに おいて痛覚過敏を妨げ,元に戻すのであ スパルテート(NMDA)レセプターの活動に依存するという強い証拠がある。そのため,NMDAレセプターアンタゴニストのクモ膜下腔内注射は,かかるモデルに おいて痛覚過敏を妨げ,元に戻すのであり,さらにNMDAレセプターアンタゴニストのクモ膜下腔内注射により長く続く神経障害性疼痛の患者の痛覚過敏や異痛が減少するという事実は,これらのモデルが臨床と関係することを示す。」(甲146〔1046頁右欄12〜25行目〕。下線を追加した。) 一方,神経損傷の後にも,同様にNMDAレセプター作動性の中枢性感作を生ずることが知られていた(甲42,46,55,80,86等)。 「興奮性アミノ酸(EAA)は,神経系における侵害受容情報の伝達に関与する。N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体は,EAAグルタミン酸の受容体サブタイプの1 つであり,神経傷害 疼痛の発症において重要な役割を果たすと考えられる(概説について は,Coderre ら,1993 を参照されたい)。中枢性NMDA受容体の遮断は,神経傷害によって引き起こされる侵害受容挙動を低減し(Seltzer ら,1991),一次求心性C線維の刺激の延長によって引き起こされる侵害受容細胞における過剰興奮性を減少させる(Davies およびLodge 1987; Dickenson およびSullivan 1987)。」(甲55〔221頁左 欄2行目〜右欄2行目〕。下線を追加した。)「過興奮の認められる痛覚求心路では,興奮性アミノ酸を伝達物質とするNMDAレセプターが著しく増加し(図5.46),その拮抗薬であるMK−801の投与で,過興奮を60%以上,用量依存性に抑制できることが判明した。」(甲80〔202頁左欄下から3行目〜 右欄 NMDAレセプターが著しく増加し(図5.46),その拮抗薬であるMK−801の投与で,過興奮を60%以上,用量依存性に抑制できることが判明した。」(甲80〔202頁左欄下から3行目〜 右欄2行目〕。下線を追加した。)「障害部位での過放電とそれより上位の痛覚求心系を異常興奮させて除神経性疼痛を発生せしめるものと考えられる。」(甲80〔202頁右欄11〜13行目〕)そのため当業者は,原因にかかわらず,痛覚過敏や接触異痛を生ずる感 作の機序は同一であると考えており(甲146等),組織損傷や炎症の疼痛モデルの結果を用いて,神経障害性疼痛や線維筋痛症の痛みが研究されていた(甲26,41~43,46,59,64等)。そして,ホルマリン試験で中枢性感作を抑制することが確認されたケタミンが(甲46),広く神経障害性疼痛や線維筋痛症を含む慢性疼痛に効果を奏することも 知られていた(甲26,42,52〜55等。なお,本段落では,証拠の一部を摘示しているが,本段落の主張を裏付ける証拠は,ここに摘示したものに限られない。)。 ウまた,本件優先日当時,上記のように原因にかかわらず神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生ずることに加え(原告第3準備書面「第2」), 組織損傷や炎症により神経を損傷し,逆に神経損傷により炎症を生じ,更 にはストレスで侵害刺激を生じ,侵害刺激がストレスで増幅され,これらの原因で神経細胞の感作を生じて痛覚過敏や接触異痛を生ずることから,痛みを組織損傷,炎症,神経損傷,心因性の要因といった原因では明確に区別できず,炎症性疼痛や術後疼痛と神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛とは,相互に重複する痛みであることが理解されていた(原告第8準 備書面「第2の2」,「第3」,原告第9準備 原因では明確に区別できず,炎症性疼痛や術後疼痛と神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛とは,相互に重複する痛みであることが理解されていた(原告第8準 備書面「第2の2」,「第3」,原告第9準備書面「第2の1(3)及び2(3)」,原告第10準備書面「第2」等)。 例えば,本件優先日当時,組織損傷や炎症の痛みにおいて,マクロファージや交感神経が作用し,プロスタグランジン(PG)E2及びPGI2,IL−1β,IL−6,IL−8,TNFα,NOなどの物質を生じ,これら が神経細胞の感作を生ずることが知られていた(乙11)。 「BKはまた,他の細胞や交感神経終末からPGE2やPGI2などのプロスタノイドを放出させ,マクロファージからはIL−1やTNF−αなどのサイトカインを放出させる。(中略)TNF−αや,IL−1β,IL−6,IL−8などのサイトカインも,プロスタノイドの産生 を刺激し,交感神経終末を興奮させることにより,炎症時のhyperalgesia の形成に関与している。マクロファージから産生されたこれらのサイトカインは,再びマクロファージに働いてNOSを活性化させる。 NOもhyperalgesia の形成に一役買っていると考えられる。」(乙11〔16頁22行目〜末行〕。下線を追加した。) 「このような末梢の知覚神経終末の興奮は,脊髄後角に伝播され,後角ニューロンを興奮させる。」(乙11〔17頁下から3〜下から2行目〕。下線を追加した。)一方,神経損傷の後にも全く同様に,マクロファージや交感神経が作用し,PGE2及びPGI2,IL−1β,IL−6,IL−8,TNFα,NO などの物質を生じ,神経細胞の感作を生ずることが知られていた(甲12 9)。 「末梢神経は在住マク PGE2及びPGI2,IL−1β,IL−6,IL−8,TNFα,NO などの物質を生じ,神経細胞の感作を生ずることが知られていた(甲12 9)。 「末梢神経は在住マクロファージを含有し,ラットの坐骨神経細胞の1〜4%を構成する[37]。末梢神経が損傷すると,マクロファージが傷害された神経に集まり[38,39],縮退した軸索とミエリン鞘を除去するのに貢献する[40]。マクロファージは,幅広い 範囲の物質を分泌し[41],そのいくつかは直接又は間接に侵害受容器を活性化する。これらの物質は,プロスタグランジンE2及びI2を含み,一次求心性入力を感作させる[19,23]。マクロファージはまた,サイトカインであるIL1−β,IL−6,IL−8及びTNFα,更にロイコトリエンLTB4を放出する[41,42]。上記の サイトカインは全て,痛覚過敏を生じるが[24],この場合には間接作用を有する。IL1−β及びIL−6の場合には痛覚過敏の効果はプロスタグランジンの合成により媒介される[24]。ロイコトリエンB4もまたおそらく間接的なメカニズムにより痛覚過敏を生じ[31],多形核ロイコサイトの活性化を伴う(後記)。マクロファージ はまた,一酸化窒素を放出し[43],これは末梢の痛覚過敏に寄与し得る[44,45]。それ故に,Frisenにより提案されているとおり[38],神経傷害で生ずる痛覚過敏にマクロファージが寄与するというのがもっともであろう。」(甲129〔408頁左欄27行目〜右欄4行目〕。下線を追加した。) 「節後交感神経ニューロンは,それ故に,炎症に役割を果たし得る。 交感神経切除によるこれらのニューロンの除去により,末梢神経障害の動物モデルにおいて[5,52,53],そしてカウザルギー ) 「節後交感神経ニューロンは,それ故に,炎症に役割を果たし得る。 交感神経切除によるこれらのニューロンの除去により,末梢神経障害の動物モデルにおいて[5,52,53],そしてカウザルギーの患者においても[2]痛覚過敏が緩和された。」(甲129〔409頁左欄27〜31行目〕) 「この考えに従うと,ノルアドレナリンは,交感神経終末に位置す るアデノレセプターに作用する[22]。この作用により,プロスタグランジンE2及びI2の合成が促進され[54,55],そしてこれらのプロスタグランジンの放出は痛覚過敏を生じ,交感神経切除により緩和する。それ故に,神経障害による痛覚過敏は,インドメタシン等のプロスタグランジン合成阻害剤によって緩和されるべきであると 予期される。これは,神経傷害の2つの動物モデルで示されている[5,22]。」(甲129〔409頁左欄42〜51行目〕。下線を追加した。)このように,原因にかかわらず,痛覚過敏や接触異痛は,等しく神経細胞の感作で生ずることに加え(上記イ),感作に至るまでの炎症性メディ エーターの動作等を含めて同様のものであり,区別できないことが理解されていた。 エそのため,当業者は,既に述べたとおり,実験的疼痛状態を生じさせる動物またはヒトの疼痛モデルの症状に着目し,炎症や組織損傷により痛覚過敏や接触異痛を生じさせるモデルを利用して,神経障害性疼痛や線維筋 痛症等の慢性疼痛の研究を行っていた(原告第3準備書面「第3及び第4」,原告第7準備書面「第3」,原告第9準備書面「第1の4」,「第2の1(4),5及び6」)。疼痛治療薬の分野だけでなく,抗がん剤や糖尿病治療薬,認知症治療薬,うつ病治療薬等の隣接分野でも,同様の理由から当業者は症状に着目して動物モ 9準備書面「第1の4」,「第2の1(4),5及び6」)。疼痛治療薬の分野だけでなく,抗がん剤や糖尿病治療薬,認知症治療薬,うつ病治療薬等の隣接分野でも,同様の理由から当業者は症状に着目して動物モデルを用いていた(原告第4準備書面「第6の 8」)。疼痛の動物モデルは,人工的に痛みを生じさせるモデルであり,かつヒトではなく動物のモデルであることから,ヒトの具体的な疾患とは原因や病態生理が異なり,動物モデルでは効果のあった薬剤が,ヒトの治療薬として認められないことがあるが,そのことにより,動物モデルが疼痛治療薬のスクリーニングに利用できないということにはならない(原告 第4準備書面「第5の3(3)」,原告第7準備書面「第3」,原告第9準備 書面「第1の2」,「第2の5(6)」)。仮に動物モデルによりヒトの疾患の病態生理を正確に模倣することを要求した場合,そのような動物モデルなど存在しないことから,特許の取得は不可能となる(原告第9準備書面「第2の5(6)及び(7)」)。 オ本件優先日当時,ベネットモデルやチャングモデルなどの神経障害によ って痛みを生じさせる動物モデルは開発途上であり,広く用いられていなかった(原告第8準備書面「第1」,原告第10準備書面「第1」)。神経細胞の感作の機序が共通するのであるから,ベネットモデルやチャングモデルが存在したからといって,ホルマリン試験,カラゲニン試験,術後疼痛試験を用いて慢性疼痛の研究ができないということにはならない(原 告第9準備書面「第1の3」,「第2の5(5)及び(6)」)。 カ本件化合物は,本件明細書等において,中枢神経系に作用するGABA類縁体であり,中枢神経の過活動により生ずる疾患である「てんかん」に対して効果を有する既知の化合物であるこ 5)及び(6)」)。 カ本件化合物は,本件明細書等において,中枢神経系に作用するGABA類縁体であり,中枢神経の過活動により生ずる疾患である「てんかん」に対して効果を有する既知の化合物であることが述べられ,更に神経障害性疼痛や線維筋痛症を含む慢性疼痛の全体に対し,抗痛覚過敏作用を有する ことにより効果を奏することが明示されている。 キホルマリン試験は,慢性疼痛の試験として誕生し,後期相が痛覚過敏や接触異痛の原因である中枢性感作を反映したものであることが知られていたため,神経障害性疼痛治療薬の研究に用いられていた(原告第3準備書面「第3及び第6」,原告第9準備書面「第2の5(1)及び6(1)」)。本 件明細書等では,ホルマリンの侵害刺激を反映した前期相には効果を奏さず,痛覚過敏や接触異痛の直接の原因である中枢性感作を反映した後期相に本件化合物が効果を奏することを確認している。 クカラゲニン試験は,痛覚過敏の試験として適合されており,神経細胞の感作を反映したものであることも知られており,神経障害性疼痛治療薬の 研究に用いられていた(原告第3準備書面「第4」,原告第8準備書面「第 2の4」,原告第9準備書面「第2の5(2)及び6(2)」,原告第10準備書面「第2の7」)。本件明細書等のカラゲニン試験では,神経細胞の感作で生じた痛覚過敏に対する本件化合物の効果を確認している。 ケ術後疼痛試験は,神経細胞の感作を反映したものであることが知られており,感作のメカニズムを研究する動物モデルである(原告第3準備書面 「第4」,原告第9準備書面「第2の2(2)及び6(3)」)。本件明細書等では,術後疼痛試験により,切開創の治癒後も持続する,神経細胞の感作で生じた痛覚過敏や接触異痛に対する本件化合物の 書面 「第4」,原告第9準備書面「第2の2(2)及び6(3)」)。本件明細書等では,術後疼痛試験により,切開創の治癒後も持続する,神経細胞の感作で生じた痛覚過敏や接触異痛に対する本件化合物の効果を確認している(原告第9準備書面「第2の5(3)」)。 コさらに,本件明細書等では,組織損傷や炎症による通常の痛みに対して 効果を奏し,慢性疼痛に効果の不十分な麻薬性鎮痛剤であるモルヒネを比較例として,本件化合物の効果を確認している。例えば術後疼痛試験では,本件化合物がモルヒネの効かない痛覚過敏や接触異痛に有効であることや,モルヒネと異なり対側後肢のPWLに影響を与えないことが示されている。 「上に掲げた状態が,現在市場にある鎮痛剤たとえば麻薬性鎮痛剤 または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)では,不十分な効果または副作用からの限界により不完全な処置しか行われていないことは周知である。」(甲2〔4頁4〜6行目〕)「S−(+)−3−イソブチルギャバも同様に用量依存性(3〜30mg/kg)に接触異痛の発生を遮断し,MEDは10mg/kgであ った(図5c)。この侵害受容応答の遮断は30mg/kg用量のS−(+)−3−イソブチルギャバにより3日間維持された(図5c)。これに反して,モルヒネ(1〜6mg/kg)は,6mg/kgの最大用量で術後3時間,接触異痛の発生を防止したのみであった(図5a)。」(甲2〔8頁2〜6行目〕) 「ギャバペンチンおよびS−(+)−3−イソブチルギャバは,すべて の実験で試験された最大用量まで,対側後肢の熱痛覚過敏試験または接触異痛評点におけるPWLに影響しなかった。これに反して,モルヒネ(6mg/kg,皮下)は熱痛覚過敏試験おける対側後肢 の実験で試験された最大用量まで,対側後肢の熱痛覚過敏試験または接触異痛評点におけるPWLに影響しなかった。これに反して,モルヒネ(6mg/kg,皮下)は熱痛覚過敏試験おける対側後肢のPWLを増大させた(データは示していない)。」(甲2〔8頁14〜17行目〕) そのため,本件化合物が,麻薬性鎮痛剤やNSAIDの有効な,組織損傷や炎症による侵害刺激で生ずる通常の痛みではなく,神経細胞の感作による痛覚過敏や接触異痛に直接効果を奏することが明らかであるし,麻薬性鎮痛剤と同じオピオイド作用や,NSAIDと同じ抗炎症作用を有すると理解することもない(原告第9準備書面「第2の2(2)及び5(6)」)。 サ本件明細書等では,慢性疼痛である神経障害性疼痛に有効なギャバペンチンを比較例として,これと同じ作用により,より優れた効果を有することも確認している。ギャバペンチンも本件化合物も,ともにホルマリン試験,カラゲニン試験,術後疼痛試験の全てにおいて用量依存性で痛覚過敏や接触異痛に拮抗しており,機序の同一性が明らかである(原告第8準備 書面「第1の2」)。 シ加えて,本件明細書等では,当時まだ一般的に用いられていなかった動物モデルであるチャングモデルやベネットモデルがあることについても紹介しており,当業者はこれらの動物モデルにより容易に追試が可能である(原告第4準備書面「第2」)。 ス上記アないしシの理由により,当業者は,本件化合物が慢性疼痛に有用であることを十分に理解する。 (被告主張への反論)セこれに対し,被告は,痛みが侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛に分類されると主張する。しかし,このことは,原因にかかわらず, 神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生じ,神経細胞の感作 れに対し,被告は,痛みが侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛に分類されると主張する。しかし,このことは,原因にかかわらず, 神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生じ,神経細胞の感作を抑制 することで鎮痛できることを否定するものではない(原告第9準備書面「第2の2(1)」)。 ソ神経障害性疼痛に上腕神経叢捻除,帯状疱疹後神経痛,幻肢痛,視床痛,カウザルギー,三叉神経痛,糖尿病性神経障害等の様々な疾患が含まれるとしても,それらは結局のところ神経障害性疼痛に分類され,求心路遮断 性,交感神経依存性,末梢性といった分類にかかわらず(上腕神経叢捻除,帯状疱疹後神経痛,幻肢痛,視床痛は求心路遮断痛であり,カウザルギーは交感神経依存性疼痛であり,三叉神経痛,糖尿病性神経障害は末梢性疼痛である。),等しく神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生ずる。 例えば,求心路遮断痛は,上記イで述べたとおり,中枢性感作の痛みで あると理解されていた(甲80)。また,交感神経依存性疼痛も,中枢性感作の痛みであることが理解されていた(甲134)。 「機械的受容器が交感神経依存性疼痛(SMP)の接触誘起痛の原因であり,この入力への中枢の侵害受容ニューロンの感作が生じていることの十分な証拠が存在する。」(甲134〔618頁20〜22 行目〕。下線を追加した。なお,SMPはCRPSを意味する。)さらに,末梢性疼痛も,例えば椎間板ヘルニアについて,組織や神経の炎症で生ずる,中枢性感作の痛みであることが理解されていた(甲128)。 「疼痛の状況が末梢組織で生ずると,侵害信号の脊髄への継続的なバラージにより後角における体性感覚ニューロンを感作させ得る。こ れらの感作されたニューロンは,慢性疼痛状態に寄 128)。 「疼痛の状況が末梢組織で生ずると,侵害信号の脊髄への継続的なバラージにより後角における体性感覚ニューロンを感作させ得る。こ れらの感作されたニューロンは,慢性疼痛状態に寄与し得る。」(甲128〔1808頁右欄14〜18行目〕。下線を追加した。)心因性疼痛も,結局のところ,心因性の要因で侵害刺激が生じ,又は器質的病変が心理的要因で増幅され,神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生ずる(原告第9準備書面「第2の1(5)」)。心因性疼痛に分類さ れることもある線維筋痛症も,以下のとおり,中枢性感作の痛みとされて いる(甲26)。 「これらの結果は,NMDA 受容体が線維筋痛症の疼痛機構に関与するという仮説を支持する。これらの知見から,FM に中枢性感作があること,および圧痛点が二次痛覚過敏を示すことも示唆される。」(甲26〔360頁Summary7行目〜末行〕。下線を追加した。) 一方,侵害受容性疼痛は,侵害受容器への刺激により生じ,侵害刺激に比例する通常の痛みであると理解されており,ホルマリン試験,カラゲニン試験,術後疼痛試験において,神経細胞の感作により生ずる痛覚過敏や接触異痛の痛みを含まない(原告第9準備書面「第2の2(1)」)。本件明細書等に記載された「炎症性疼痛」や「術後疼痛」も,神経細胞の感作に よる痛覚過敏や接触異痛の痛みであり,侵害受容性疼痛を意味しない。本件明細書等のホルマリン試験,カラゲニン試験,術後疼痛試験が侵害受容性疼痛の試験と理解されることはない(原告第9準備書面「第2の2(2)」,「第4の3(2)」)。 タ先行技術文献に「示唆されている」といった断定形でない記載があるの は,実験結果を論ずる際の作法であり,動物モデルにおける薬剤の 告第9準備書面「第2の2(2)」,「第4の3(2)」)。 タ先行技術文献に「示唆されている」といった断定形でない記載があるの は,実験結果を論ずる際の作法であり,動物モデルにおける薬剤の作用からヒトの疾患の機序を述べる必要があること等によるものであり,神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生ずること,ホルマリン試験が中枢性感作を反映したものであること,ケタミンが中枢性感作を抑制し,神経障害性疼痛や線維筋痛症に効果を奏すること等が仮説であることを意味し ない(原告第9準備書面「第2の3及び6」,原告第10準備書面「第2」等)。 チ末梢から脳に至るまでの痛覚求心路の伝達をどこかで阻害すれば,痛覚過敏や接触異痛を緩和できる。そのため,神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生ずるからといって,薬物の作用点が感作を生じた部位にな ければ痛覚過敏や接触異痛に効果を奏しないというわけではない(原告第 9準備書面「第2の5(7)」)。本件明細書等の記載からは,本件化合物が,侵害刺激による通常の痛みではなく,神経細胞の感作により生じた痛覚過敏や接触異痛に直接作用したことが明らかであるから,本件化合物の作用点が開示されていなくとも,本件化合物が原因にかかわらず痛覚過敏や接触異痛に効果を奏したことが理解できる。 (2) 無効理由2(サポート要件違反の有無)(争点2-2)上記第1の2(1)アないしチにおいて述べたことと同様の理由により,当業者は,本件化合物が慢性疼痛に効果を奏することを十分に理解する。 3 本件発明1及び2に係る訂正の再抗弁の成否(争点3)(1) 被告医薬品が本件発明1及び2の技術的範囲に属するか(構成要件1B及 び2Bの充足性)(争点3-1)ア本件発明1について(構成 本件発明1及び2に係る訂正の再抗弁の成否(争点3)(1) 被告医薬品が本件発明1及び2の技術的範囲に属するか(構成要件1B及 び2Bの充足性)(争点3-1)ア本件発明1について(構成要件1Bの充足性)本件発明1の処置対象となる痛みは「痛覚過敏又は接触異痛の痛み」であるところ,これは神経細胞の感作により生ずる神経の機能異常の痛みであり,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛の主症状である(訴状,原 告第3準備書面「第2」,原告第8準備書面「第2の3」)。そのため,被告医薬品が神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛に用いられた場合,本件発明1で特定された上記処置対象の痛みに用いられることとなるので,被告医薬品は本件発明1の技術的範囲に属する(構成要件1B)。 イ本件発明2について(構成要件2Bの充足性) 本件発明2の処置対象となる痛みは「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛み」であるところ,上記第1の3(1)アで述べたとおり,被告医薬品が神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛に用いられた場合,本件発明2で特定された上記処置対象の痛みに用いられることとなるので,被告医薬品は本件発明2の技術的範囲に属する(構成要件2B)。 (2) 無効理由の解消の有無(争点3-2) ア無効理由1の解消の有無(争点3-2-1)(ア) 上記第1の2(1)アないしチにおいて述べたとおり,当業者は,痛みの原因にかかわらず,本件化合物が痛覚過敏や接触異痛に効果を奏することを十分に理解する。 (イ) また,本件発明1及び2では,処置対象となる痛みが,慢性疼痛のう ち「痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に明確に限定されている。これは,ホルマリン試験の後期相に反映された中枢性感作で生じる痛みであ ) また,本件発明1及び2では,処置対象となる痛みが,慢性疼痛のう ち「痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に明確に限定されている。これは,ホルマリン試験の後期相に反映された中枢性感作で生じる痛みであり,カラゲニン試験及び術後疼痛試験において,本件化合物の効果が明示的に確かめられた痛みである(原告第3準備書面「第2ないし第4」,原告第8準備書面「第2の4」)。 (ウ) 本件発明2では,処置対象となる痛みが更に「神経障害又は線維筋痛症による」痛覚過敏又は接触異痛に限定されている。本件優先日当時,神経障害性疼痛は,一次的な神経損傷又は神経の機能異常の痛みとして定義されており(原告第3準備書面「第5」,原告第9準備書面「第2の7」),炎症や組織損傷だけでなく,神経損傷によっても神経細胞の 感作という神経の機能異常を生じて,神経障害性疼痛における痛覚過敏や接触異痛を生ずることが知られていた(原告第3準備書面「第2」)。 また,線維筋痛症も,痛覚過敏を伴う慢性疼痛症候群として定義されており(原告第3準備書面「第5」,原告第9準備書面「第2の7」,「第3の2」),中枢性感作により痛覚過敏や接触異痛を生ずることが知ら れていた(原告第3準備書面「第2」)。すなわち,神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏や接触異痛は,神経細胞の感作で生じたものであることがますます明らかである。本件明細書等では,上記のように,本件優先日当時に神経障害又は線維筋痛症の痛みであると理解されていた,神経細胞の感作による痛覚過敏や接触異痛に対する本件化合物の効果が 確かめられている。 (エ) 上記(ア)ないし(ウ)の理由により,当業者は,本件化合物が痛覚過敏又は接触異痛の痛み,並びに神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛 確かめられている。 (エ) 上記(ア)ないし(ウ)の理由により,当業者は,本件化合物が痛覚過敏又は接触異痛の痛み,並びに神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みに有用であることを十分に理解する。 イ無効理由2の解消の有無(争点3-2-2)上記第1の3(2)ア(ア)ないし(ウ)において述べたことと同様の理由によ り,当業者は,本件化合物が痛覚過敏又は接触異痛の痛み,及び神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みに効果を奏することを十分に理解する。 (3) 訂正要件の具備の有無(争点3-3)ア本件発明1の訂正要件の具備の有無(争点3-3-1) (ア) 本件明細書等のカラゲニン試験では,機械的痛覚過敏及び熱痛覚過敏に対する本件化合物の効果が確認されており,術後疼痛試験では,熱痛覚過敏及び接触異痛に対する本件化合物の効果が確認されているから,痛覚過敏又は接触異痛の痛みに対して本件化合物を用いることが開示されている。痛覚過敏や接触異痛は痛みの症状を示す用語であり,痛み の原因に応じて複数の痛覚過敏や複数の接触異痛が存在するわけではない。 (イ) さらに,上記第1の2(1)アないしチにおいて述べたとおり,当業者は,痛みの原因にかかわらず,痛覚過敏や接触異痛が神経細胞の感作によって生じ,本件化合物が効果を奏することを十分に理解する。このこ とからも,原因に応じて複数の痛覚過敏や接触異痛が存在するわけではないことが明らかである。 (ウ) したがって,構成要件1Bは,本件明細書等に記載した事項の範囲内で訂正されたものであり,新規事項の追加に該当しない。訂正の目的が痛みの減縮であり,訂正により拡張変更に該当しないことは明らかであ る(以上,原告第4準備書 本件明細書等に記載した事項の範囲内で訂正されたものであり,新規事項の追加に該当しない。訂正の目的が痛みの減縮であり,訂正により拡張変更に該当しないことは明らかであ る(以上,原告第4準備書面「第1の2(1)」)。 (エ) なお,訂正要件は,訂正事項が明細書等を総合することにより導かれる技術的事項であるか否かによって判断され,本件化合物が痛覚過敏や接触異痛に有用であり,或いは効果を奏することが本件明細書等から理解できるかどうかは,実施可能要件又はサポート要件の問題である(原告第4準備書面「第4」,原告第9準備書面「第3の1」)。仮にそう でないとしても,上記第1の3(2)で述べたことにより訂正要件を満たす。 イ本件発明2の訂正要件の具備の有無(争点3-3-2)(ア) 上記第1の3(3)ア(ア)ないし(ウ)において述べたとおり,構成要件2Bのうち,「痛覚過敏又は接触異痛の痛み」については,訂正要件を満 たす。 (イ) また,本件明細書等には,本件化合物の処置対象となる慢性疼痛に含まれる痛みとして,神経障害の痛み,線維筋痛症が記載されている(原告第4準備書面「第1の2(2)ウ」)。 (ウ) さらに,神経障害の痛みや,線維筋痛症において痛覚過敏や接触異痛 を生ずることは,本件優先日当時の技術常識である(原告第3準備書面「第2及び第5」)。 (エ) したがって,構成要件2Bは,本件明細書等に記載した事項の範囲内で訂正されたものであり,新規事項の追加に該当しない。訂正の目的が引用関係の解消及び痛みの減縮であり,訂正により拡張変更に該当しな いことは明らかである(以上,原告第4準備書面「第1の2(2)」,原告第7準備書面「第2」)。 なお,適用されるべき訂正要件の規範は,上記第1の3( 減縮であり,訂正により拡張変更に該当しな いことは明らかである(以上,原告第4準備書面「第1の2(2)」,原告第7準備書面「第2」)。 なお,適用されるべき訂正要件の規範は,上記第1の3(3)ア(エ)のとおりである。 第2 本件発明3及び4 1 被告医薬品が本件発明3及び4の技術的範囲に属するか(争点4) (1) 構成要件3B及び4Bの充足性(争点4-1)ア本件発明3について(構成要件3Bの充足性)(ア) 神経障害性疼痛が炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みであること(クレーム解釈) a 本件発明3の処置対象となる痛みは,「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」である。 b 「炎症を原因とする痛み」は,本件明細書等のカラゲニン試験の痛みであり,「手術を原因とする痛み」は,術後疼痛試験の痛みである。 これらの試験では,炎症や手術から神経細胞の感作を生じ,痛覚過敏 や接触異痛を生ずるまでの機序は限定されていない。 c 本件明細書等では,炎症性疼痛や術後疼痛が,神経障害性疼痛や線維筋痛症と並んで,麻薬性鎮痛剤やNSAIDでは不十分な効果しか有しない慢性疼痛として記載されており,カラゲニン試験や術後疼痛試験がかかる慢性疼痛の試験であることが明らかである(原告第5準 備書面「第3の1」)。 d そして,上記第1の2(1)イで述べたとおり,慢性疼痛は,原因にかかわらず,神経細胞の感作という神経の機能異常で生ずることが知られており,神経細胞の感作を抑制することで,原因にかかわらず痛みを治療できることも知られていた。 e また,上記第1の2(1)ウで述べたとおり,本件優先日当時,炎症で神経の病変や疾患を生じ,手術で末梢神経や神経終末を損傷し,神経の 因にかかわらず痛みを治療できることも知られていた。 e また,上記第1の2(1)ウで述べたとおり,本件優先日当時,炎症で神経の病変や疾患を生じ,手術で末梢神経や神経終末を損傷し,神経の損傷によっても炎症が生ずることなどから,痛みを原因で区別できず,炎症性疼痛や術後疼痛と,神経障害性疼痛や線維筋痛症とは,相互に重複することが理解されていた。 f そのため,上記第1の2(1)エないしケで述べたとおり,当業者は, 痛みの症状に着目して動物モデルを用いており,カラゲニン試験や術後疼痛試験は,神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生じさせる動物モデルとして,神経障害性疼痛治療薬の探索や,感作のメカニズムの研究に利用されていた。 g したがって,上記第1の2(1)クないしサで述べたとおり,本件明細 書等のカラゲニン試験や術後疼痛試験は,神経細胞の感作により生ずる,神経障害性疼痛や線維筋痛症などの慢性疼痛に共通する痛覚過敏や接触異痛に対する効果を見たものであることが明らかである。 h 上記aないしgの理由により,本件発明3の技術的範囲には,神経の病変,疾患,損傷が関与するか否かにかかわらず,炎症や手術によ って生ずる痛覚過敏や接触異痛の全てが含まれる(原告第5準備書面「第3」,原告第10準備書面「第3の3」)。 (被告医薬品の充足性)i 被告医薬品は,変形性関節症,リウマチ性関節炎,癌性疼痛,帯状疱疹後神経痛,アレルギー性肉芽腫性血管炎,結合組織病(血管炎), 結節性多発動脈炎,多発性単神経炎,神経叢炎,炎症性脱髄性多発性神経障害,有痛性糖尿病性神経障害,尿毒症性ニューロパチー,椎間板ヘルニア,反射性交感神経性ジストロフィー,手根管症候群,自己免疫疾患等において,炎症を原因として生じ ,神経叢炎,炎症性脱髄性多発性神経障害,有痛性糖尿病性神経障害,尿毒症性ニューロパチー,椎間板ヘルニア,反射性交感神経性ジストロフィー,手根管症候群,自己免疫疾患等において,炎症を原因として生じた神経障害性疼痛を用途とする(訴状,原告第5準備書面「第2」,原告第8準備書面「第2 の2」,「第3の2」)。 j また,被告医薬品は,術後遷延性疼痛,開胸術後疼痛症候群,外傷後後遺症,手術後後遺症,乳房切除術後痛,ヘルニア縫合術後痛,複合性局所疼痛症候群,手根管症候群,橈骨遠位端骨折,デュプイトラン拘縮,CM関節症,股関節置換術等において,手術を原因として生 じた神経障害性疼痛を用途とする(訴状,原告第5準備書面「第2」, 原告第8準備書面「第2の2」,「第3の3」)。 k 上記i及びjで挙げた神経障害性疼痛の疾患において,炎症や手術による組織損傷から神経細胞の感作という神経の機能異常を生じ,痛覚過敏や接触異痛を生ずる(原告第3準備書面「第1の1及び2」,原告第7準備書面「第5の2」,原告第8準備書面「第2の3」,原 告第9準備書面「第6の3及び5」)。それだけでなく,炎症により神経の病変や疾患を生じ,手術により神経を損傷し,これらの神経の病変,疾患,損傷により神経細胞の感作を生じ,痛覚過敏や接触異痛を生ずる。さらに,神経の病変,疾患,損傷により,組織や神経の炎症を生じ,炎症により神経細胞の感作を生じ,痛覚過敏や接触異痛を 生ずる(以上,原告第8準備書面「第2の2」,「第3」,原告第10準備書面「第2」)。 例えば,帯状疱疹後神経痛は,帯状疱疹ウイルスによる炎症が原因で,神経が変性してしまったことによる痛みである。これは,炎症で神経の病変や疾患を生ずる例である(原告第7準備書面「第5の2」, )。 例えば,帯状疱疹後神経痛は,帯状疱疹ウイルスによる炎症が原因で,神経が変性してしまったことによる痛みである。これは,炎症で神経の病変や疾患を生ずる例である(原告第7準備書面「第5の2」, 原告第9準備書面「第6の3」)。また,手術により末梢神経や神経終末を損傷することは当然である(原告第8準備書面「第3」)。逆に,椎間板ヘルニア等の腰部神経根症において,神経の圧迫により組織や神経の炎症を生ずるし(甲128,137,138),既に述べたとおり,神経損傷により,組織損傷と全く同様の機序で炎症を生ず る(甲129,130。詳細は上記第1の2(1)ウ。なお,本段落で挙げたものに限られない。)。そして,これらの原因により,神経細胞の感作を生じ,神経障害性疼痛となる。 l さらに,明確に神経の病変や疾患が見出されない場合でも,痛覚過敏や接触異痛といった,神経細胞の感作で生ずる症状により,神経障 害性疼痛と診断され,先発医薬品や被告医薬品が投与される(原告第 3準備書面「第5」,原告第8準備書面「第2の2,3及び5」,「第3」)。そのため,神経障害性疼痛を神経の病変,疾患,損傷が明確な態様に限定することは誤りである。 例えば,有痛性糖尿病性神経障害は神経損傷が原因とされていないし(甲2,81,87,131,132),椎間板ヘルニアや複合性 局所疼痛症候群(反射性交感神経性ジストロフィーを含む。)は,神経損傷のみならず,組織損傷で神経障害性疼痛を生ずる疾患である(甲128,129,134,142。なお,本段落で挙げたものに限られない。)。 m 上記aないしlの理由により,被告医薬品の効能,効果である「神 経障害性疼痛」は,本件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該 段落で挙げたものに限られない。)。 m 上記aないしlの理由により,被告医薬品の効能,効果である「神 経障害性疼痛」は,本件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該当する。なお,被告医薬品の用途の解釈の基準時は,被告医薬品の実施時である(原告第9準備書面「第6の2」)。 (イ) 神経障害性疼痛を効能,効果とする被告医薬品が,炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みを用途とすること a 上記第2の1(1)ア(ア)kで述べたとおり,炎症や手術で神経細胞の感作を生ずるし,炎症により神経の病変や疾患を生じ,手術により神経を損傷し,神経の病変や疾患,損傷により,神経細胞の感作を生ずる。さらに,神経の病変や疾患,神経損傷により,組織の炎症や神経の炎症を生じ,炎症により神経細胞の感作を生ずる。そして,これら は全て神経障害性疼痛を生ずる。そのため,神経障害性疼痛は,侵害受容性疼痛との混合性疼痛とされている(原告第5準備書面「第2」の2(2)」,原告第9準備書面「第4の3(3)」,原告第10準備書面「第3の1及び2」)。 例えば,腰痛,変形性関節症,リウマチ性関節炎,癌性疼痛,術後 遷延性疼痛は,いずれも侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛との混合性 疼痛とされている(甲92,94~96,98。なお,本段落で挙げたものに限られない。)。 b 痛みは患者の主観的心理状態であるから,混合性疼痛において,侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛とは,同一の患者において生ずる一つの痛みであり,両者を区別できない(原告第5準備書面「第2の2(1)」, 原告第9準備書面「第2の2(3)」,「第4の2(1)」)。 c 先発医薬品は,適応症に用いられることにより,かかる混合性疼痛を生ずる患者の痛 別できない(原告第5準備書面「第2の2(1)」, 原告第9準備書面「第2の2(3)」,「第4の2(1)」)。 c 先発医薬品は,適応症に用いられることにより,かかる混合性疼痛を生ずる患者の痛みの処置に用いられて効果を奏しており(原告第8準備書面「第3」),被告医薬品も,同じ効能,効果を有するジェネリックとして,混合性疼痛を生じた患者の痛みの処置に用いられる(原 告第5準備書面「第2の2(3)及び3」,原告第9準備書面「第4の2(2)」)。 d 上記aないしcの理由により,被告医薬品の用途は,神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛との混合性疼痛の処置を含むものである(原告第5準備書面「第2」,原告第9準備書面「第4の2」)。 e したがって,本件発明3の技術的範囲が侵害受容性疼痛に限られるか否かにかかわらず,また,侵害受容性疼痛の定義とは無関係に,神経障害性疼痛を効能,効果とする被告医薬品の処置用途は,本件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該当する。 (ウ) 線維筋痛症が炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みであることa 上記第2の1(1)ア(ア)の理由により,本件発明3の技術的範囲には,線維筋痛症に伴って生ずるか否かにかかわらず,炎症や手術によって生ずる痛覚過敏や接触異痛の全てが含まれる。 b 被告医薬品は,関節炎,胃炎,アレルギー炎症,リウマチ等の炎症 性疾患から生ずる線維筋痛症に伴う疼痛を用途とする(原告第5準備書面「第2の2(2)」,原告第7準備書面「第5の2」)。また,線維筋痛症は腱付着部炎を生ずる疾患であり,腱付着部炎を生じた線維筋痛症に伴う疼痛は,被告医薬品の保険診療上の適応症である(原告第8準備書面「第3の2」,原告第10準備書面 面「第5の2」)。また,線維筋痛症は腱付着部炎を生ずる疾患であり,腱付着部炎を生じた線維筋痛症に伴う疼痛は,被告医薬品の保険診療上の適応症である(原告第8準備書面「第3の2」,原告第10準備書面「第3の2」)。 c また,被告医薬品は,手術により生ずる線維筋痛症に伴う疼痛を用途とする(原告第5準備書面「第2の2(2)」,原告第7準備書面「第5の2」)。 d 上記b及びcで挙げた線維筋痛症に伴う疼痛において,炎症や手術を原因として神経細胞の感作を生じ,痛覚過敏や接触異痛を生ずる(原 告第3準備書面「第2」,原告第9準備書面「第6の4」)。 e 上記aないしdの理由により,被告医薬品の効能,効果である「線維筋痛症に伴う疼痛」は,本件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該当する。 (エ) 線維筋痛症に伴う疼痛を効能,効果とする被告医薬品が,炎症を原因 とする痛み,又は手術を原因とする痛みを用途とすることa 上記第2の1(1)ア(ウ)b及びcで述べたとおり,線維筋痛症は,炎症性疾患や手術により生じ,更に炎症を生ずる疾患であるので,線維筋痛症に伴う疼痛は,侵害受容性疼痛との混合性疼痛である。 b そして,上記第2の1(1)ア(イ)bないしdの理由により,被告医薬 品の用途は,線維筋痛症に伴う疼痛と侵害受容性疼痛との混合性疼痛の処置を含むものである。このことは,線維筋痛症「に伴う疼痛」との効能,効果の記載からも明らかである。 c したがって,本件発明3の技術的範囲が侵害受容性疼痛に限られるか否かにかかわらず,また,侵害受容性疼痛の定義とは無関係に,線 維筋痛症に伴う疼痛を効能,効果とする被告医薬品の処置用途は,本 件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因と にかかわらず,また,侵害受容性疼痛の定義とは無関係に,線 維筋痛症に伴う疼痛を効能,効果とする被告医薬品の処置用途は,本 件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該当する。 (オ) 神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛が訂正により除外されていないことa 禁反言の法理(無効審判における訂正の経緯に基づき,発明の技術 的範囲を限定するような他の法理を含む。)は,原告が無効審判と本件訴訟とで矛盾挙動を取ったような場合に生ずる可能性があるが,原告は,訂正の前後にかかわらず,本件発明3の訂正の根拠となったカラゲニン試験や術後疼痛試験により,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛に対する本件化合物の効果を確認できることを一貫して主張 しており,矛盾挙動はない(原告第9準備書面「第4の4(2)」)。実際に,参加人1名は,訂正後の本件発明3に侵害受容性疼痛以外の痛みが含まれていると主張し,原告もこれを争った(原告第5準備書面「第4の1及び2」,原告第7準備書面「第5の1」)。また,訂正後になされた審決の判断により,禁反言の法理が成立する余地はない (原告第5準備書面「第4の1」)。さらに,審判請求人が,本件発明3の技術的範囲に神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛が含まれるかどうかを争わなかったことにより,禁反言の法理が成立することもない(原告第9準備書面「第4の4(1)」)。 b 本件訂正前になされた審決の予告は,カラゲニン試験や術後疼痛試 験により本件化合物の効果が確かめられた,炎症や手術を原因とする痛み以外の部分について,本件化合物の効果を確認することができないと述べているにすぎず,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛のうち,カラゲニン試験や術後疼痛試験の痛みに含まれる 症や手術を原因とする痛み以外の部分について,本件化合物の効果を確認することができないと述べているにすぎず,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛のうち,カラゲニン試験や術後疼痛試験の痛みに含まれる部分についてまで本件化合物の効果を確認することができないとは判断していない し,カラゲニン試験や術後疼痛試験の痛みが,神経障害性疼痛や線維 筋痛症に伴う疼痛と重複しないという判断もしていない(原告第5準備書面「第4の2」,原告第9準備書面「第4の4(2)」)。したがって,審決の予告の判断に基づき,禁反言の法理が成立する余地はない。 c さらに,本件発明4に関し,原告は本件訂正において,訂正前発明4に係る請求項から「神経障害による痛み」及び「線維筋痛症」との 記載を削除したが,訂正前発明4に係る請求項の痛みは相互に重複するものであるから,かかる訂正により,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛が本件発明4の技術的範囲から除外されることはない(原告第5準備書面「第4の3」,原告第7準備書面「第5の1」,原告第9準備書面「第4の3(1)」)。 d また,上記cの事情は,本件発明3とは関係がない(原告第5準備書面「第4の3」,原告第7準備書面「第5の1」)。 e 上記aないしdの理由により,本件発明3の技術的範囲から,神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛が除外されることはない。 f なお,上記第2の1(1)ア(イ)及び(エ)に係る混合性疼痛の主張は,本 件発明3の技術的範囲が侵害受容性疼痛に限られるか否かにかかわらず成り立つ主張であるから,訂正の経緯にかかわらず,被告医薬品の用途は,本件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該当する。 イ本件発明4について(本件発 わらず成り立つ主張であるから,訂正の経緯にかかわらず,被告医薬品の用途は,本件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該当する。 イ本件発明4について(本件発明4Bの充足性) (ア) 神経障害性疼痛が炎症性疼痛,術後疼痛に該当することa 本件発明4の処置対象となる痛みは,「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」である。 b 上記第2の1(1)ア(ア)の理由により,被告医薬品の効能,効果であ る「神経障害性疼痛」は,本件発明4の「炎症性疼痛による痛覚過敏 の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」に該当する。 c 本件発明4で特定された炎症性疼痛や術後疼痛は,神経障害性疼痛を含む混合性疼痛として定義されている(原告第5準備書面「第2の2(2)」)。これも,被告医薬品の用途が本件発明4の痛みに該当する ことを裏付ける。 (イ) 神経障害性疼痛を効能,効果とする被告医薬品が,炎症性疼痛,術後疼痛を用途とすること上記第2の1(1)ア(イ)aないしeの理由により,本件発明4の技術的範囲が侵害受容性疼痛に限られるか否かにかかわらず,神経障害性疼痛 を効能,効果とする被告医薬品の処置用途は,本件発明4の「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」に該当する。 (ウ) 線維筋痛症が炎症性疼痛,術後疼痛に該当すること上記第2の1(1)ア(ウ)aないしeの理由により,被告医薬品の効能, 効果である「線維筋痛症に伴う疼痛」は,本件発明4の「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」に該当する。 (エ) 線維筋痛症に 告医薬品の効能, 効果である「線維筋痛症に伴う疼痛」は,本件発明4の「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」に該当する。 (エ) 線維筋痛症に伴う疼痛を効能,効果とする被告医薬品が,炎症性疼痛,術後疼痛を用途とすること 上記第2の1(1)ア(エ)aないしcの理由により,本件発明4の技術的範囲が侵害受容性疼痛に限られるか否かにかかわらず,線維筋痛症に伴う疼痛を効能,効果とする被告医薬品の処置用途は,本件発明4の「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」に該当する。 (オ) 神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛が訂正により除外されていな いこと上記第2の1(1)ア(オ)aないしc,e及びfの理由により,本件発明4の技術的範囲から,神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛が除外されることはない。 (2) 均等侵害の成否(争点4-2) ア被告医薬品は本件発明3の構成と均等であること(ア) 第1要件に関し,本件発明3は,本件化合物を慢性疼痛である炎症を原因とする痛み,手術を原因とする痛みの処置に用いることを本質的部分としており,処置対象となる痛みが侵害受容性疼痛であるか,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛であるかは,本質的部分ではない(原 告第5準備書面「第5の1及び2」)。本件優先日当時,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛に対しては有効な治療薬がなく,本件化合物を慢性疼痛の処置に用いることも知られていなかったから(訴状,原告第5準備書面「第1」,原告第8準備書面「第1」),技術常識を参酌して,本件発明3の本質的部分を侵害受容性疼痛に限定すべき事情もな い。 (イ) 第2要件に関し ていなかったから(訴状,原告第5準備書面「第1」,原告第8準備書面「第1」),技術常識を参酌して,本件発明3の本質的部分を侵害受容性疼痛に限定すべき事情もな い。 (イ) 第2要件に関し,本件発明3は,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛の処置に用いても,効果を奏する(原告第5準備書面「第5の2」)。 (ウ) 第3要件に関し,本件化合物を神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛の処置に用いることは,被告医薬品の実施時において容易想到である (原告第5準備書面「第5の2」)。 (エ) 第4要件に関し,本件優先日当時,本件化合物を痛みの処置に用いることは全く知られておらず,本件優先日当時の公知技術から容易に推考できない(原告第5準備書面「第5の2」)。 (オ) 第5要件に関し,上記第2の1(1)ア(オ)aないしfの理由により,本 件発明3の技術的範囲から,神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛が 除外されることはない(原告第5準備書面「第5の2」)。 (カ) 上記(ア)ないし(オ)の理由により,仮に本件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」が侵害受容性疼痛であると解釈された場合であっても,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛のうち,炎症や手術を原因として生ずる痛みについては,本件発明3の均等の範 囲に含まれる。 イ被告医薬品は本件発明4の構成と均等であること上記第2の1(2)ア(ア)ないし(オ)の理由により,仮に本件発明4の「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」が侵害受容性疼痛であると解釈された場合であっても,神経 障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛における痛覚過敏や接触異痛のうち,炎症性疼痛や術後疼痛については,本件発明 敏若しくは接触異痛の痛み」が侵害受容性疼痛であると解釈された場合であっても,神経 障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛における痛覚過敏や接触異痛のうち,炎症性疼痛や術後疼痛については,本件発明4の均等の範囲に含まれる。 2 本件発明3及び4に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点5)(1) 無効理由1(実施可能要件違反の有無)(争点5-1) ア本件発明3及び4は,既に無効審判の有効審決が確定しており,同一の事実及び証拠に基づき再び無効を争うことは許されない(訴状)。 イまた,原告は,本件発明3及び4の痛みが,カラゲニン試験や術後疼痛試験において本件化合物の効果が確かめられた,炎症や手術により生じた痛覚過敏や接触異痛であり,これが被告医薬品の処置用途に含まれると主 張している(訴状,原告第5準備書面「第2」,原告第8準備書面「第3」等)。かかる実施例で確かめられた痛みについて,当業者が本件化合物の有用性を理解できることは当然である(原告第7準備書面「第6」)。 ウさらに,上記第1の2(1)アないしチにおいて述べたとおり,本件発明3及び4の痛みは,神経障害性疼痛や線維筋痛症を含む慢性疼痛に共通する, 神経細胞の感作により生じた痛覚過敏や接触異痛の痛みであり,当業者は, 本件明細書等の記載から,本件化合物が慢性疼痛に有用であることを十分に理解する。したがって,本件発明3及び4の技術的範囲に神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛が含まれるとしても,本件発明3及び4の痛みに対する本件化合物の有用性が理解できることは明らかである。 (2) 無効理由2(サポート要件違反の有無)(争点5-2) 上記第2の2(1)アないしウの理由により,当業者は,本件化合物が本件発明3 る本件化合物の有用性が理解できることは明らかである。 (2) 無効理由2(サポート要件違反の有無)(争点5-2) 上記第2の2(1)アないしウの理由により,当業者は,本件化合物が本件発明3及び4の痛みに効果を奏することを十分に理解する。 (3) 無効理由3(訂正要件違反の有無)(争点5-3)上記第2の2(1)アないしウの理由により,本件発明3及び4の痛みは,本件明細書等に記載された範囲のものである。 第3 本件特許権の存続期間の延長登録 1 延長登録により存続期間が延長された本件特許権の効力は被告医薬品に及ぶか(争点6)(1) 実質同一性は,「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」に関し,特許発明の内容に基づき,その内容との関連で,技術的特徴及び作用効果の同一 性を比較検討して判断すべきであり,処分対象物と被告医薬品との差異が,技術的特徴や作用効果に関わるものでなければ,実質同一性が肯定される(原告第6準備書面「第1」,「第2の1」,原告第7準備書面「第8の2」)。 (2) また,有効成分を特徴とする特許において,添加物について政令処分申請時の周知慣用技術に基づき成分を付加,転換等した場合には,実質同一性が 推認される(原告第6準備書面「第2の3」)。 (3) 上記(2)において,周知慣用技術の基準時は被告医薬品の政令処分申請時であると解すべきであるし,仮に周知慣用技術でないとしても,実質同一性は妨げられない(原告第6準備書面「第2の3」)。 (4) 剤形は実質同一性の考慮要素でないから,剤形の違いは実質同一性に影響 を及ぼさない。延長登録の制度趣旨からも,カプセルに係る延長登録の効力 範囲を市場の競合するOD錠に及ぼさなければ,先発医薬品が保護されない(原告第6準備書面「 一性に影響 を及ぼさない。延長登録の制度趣旨からも,カプセルに係る延長登録の効力 範囲を市場の競合するOD錠に及ぼさなければ,先発医薬品が保護されない(原告第6準備書面「第2の4」,原告第9準備書面「第5の1」)。また,延長登録の要件と延長登録の効力範囲とは別個の問題であるから,カプセルとOD錠とでそれぞれ登録が可能であるとしても,カプセルの延長登録の効力範囲はOD錠に及ぶ(原告第6準備書面「第3」,原告第7準備書面「第 8の2」,原告第9準備書面「第5の2」)。 (5) 本件各発明(及び訂正前各発明)は,有効成分である本件化合物を,痛みの処置に用いることを見出したものであり,添加物は本件各発明(及び訂正前各発明)の技術的特徴とは無関係であり,添加物の違いにより痛みの処置に関する作用効果に影響はない(原告第6準備書面「第2の2」,原告第7 準備書面「第8の3」)。 (6) また,被告医薬品に用いられている添加物は全て処分対象物の政令処分申請時の周知慣用技術に基づく付加,転換等であるから,実質同一性が推認される(原告第6準備書面「第2の3」,原告第7準備書面「第8の3」)。 (7) さらに,処分対象物と被告医薬品とは,分量,用法,用量,効能及び効果 が同一である(原告第6準備書面「第1」,原告第7準備書面「第8の1」)。 (8) 被告医薬品に用いられている添加物により,本件各発明(及び訂正前各発明)の技術的特徴や作用効果に影響が生ずることはないから,実質同一性に影響しない(原告第7準備書面「第8の3」)。 (9) したがって,処分対象物と被告医薬品とは実質同一であり,被告医薬品は, 延長後の本件各発明(及び訂正前各発明)の効力範囲に含まれる。 (10) なお,上記第2の1(1)ア(オ) )。 (9) したがって,処分対象物と被告医薬品とは実質同一であり,被告医薬品は, 延長後の本件各発明(及び訂正前各発明)の効力範囲に含まれる。 (10) なお,上記第2の1(1)ア(オ)で述べたことのほか,延長登録出願の審査過程を含め,禁反言により延長登録の効力範囲から被告医薬品が除外される事情はない(原告第6準備書面「第4」,原告第7準備書面「第9の1」)。 2 延長登録の無効理由の有無(争点7) (1) 平成28年法律第108号による改正前の特許法(以下「旧特許法」とい う。)125条の2第1項3号の無効理由がないことア旧特許法125条の2第1項3号は,政令処分を受けるために必要な試験が特許権者等によってなされたものであることを求めていない。実際にも,臨床試験が製造販売承認を受ける主体によって実施されるとは限らない。したがって,政令処分を受けるための試験が特許権者等によりなされ たものでないことを理由として延長登録が無効とされることはない(原告第6準備書面「第5の1」,原告第7準備書面「第10」)。 イ仮に旧特許法125条の2第1項3号の解釈として,政令処分を受けるための試験が特許権者の意思に基づくものであることを要するとしても,本件では,特許権者の意思により試験がなされたことが明らかであるから, 延長登録に無効理由はない(原告第6準備書面「第5の2」,原告第7準備書面「第10」)。 (2) 旧特許法125条の2第1項1号の無効理由がないことア上記第1の3(1)において述べたとおり,本件発明1及び2は,被告医薬品をその技術的範囲に含むものである。処分対象物は,被告医薬品と効能, 効果が同一であるから,被告医薬品と同様の理由により,処分対象物は,本件発明1及び2の技 り,本件発明1及び2は,被告医薬品をその技術的範囲に含むものである。処分対象物は,被告医薬品と効能, 効果が同一であるから,被告医薬品と同様の理由により,処分対象物は,本件発明1及び2の技術的範囲に含まれる。 イまた,第2の1(1)及び(2)において述べたとおり,本件発明3及び4は,被告医薬品をその技術的範囲に含むものである。処分対象物は,被告医薬品と効能,効果が同一であるから,被告医薬品と同様の理由により,処分 対象物は,本件発明3及び4の技術的範囲に含まれる。 ウしたがって,本件特許権の存続期間の延長登録は,本件発明の実施に政令処分を受けることが必要であった場合の出願に対してされたものであり,旧特許法125条の2第1項1号の延長登録無効理由はない(原告第9準備書面「第5の3」)。 (別紙)被告の主張 第1 訂正前発明1及び2 1 被告医薬品が訂正前発明1及び2の技術的範囲に属するか(構成要件1B´ の充足性)(争点1)訂正前発明1に関する構成要件1A,1C,並びに訂正前発明2に関する構成要件2A´,2Cについての充足は認め,構成要件1B´の「痛みの処置における」という構成の充足性に関しては,以下のとおり,否認ないし争う。 この点,被告準備書面(1)「第2の1」において述べたとおり,発明の公開の 代償として独占権たる特許権が付与されるという特許制度の趣旨に鑑みれば,本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常識に照らして,当業者がその有用性を認識できない用途に関しては,その技術的範囲に含まれると解釈される余地はない。 したがって,もし仮に本件発明1及び2に係る特許が有効であることを前提 に非充足論について議論するのであれば,当業者がその有用性を認識で は,その技術的範囲に含まれると解釈される余地はない。 したがって,もし仮に本件発明1及び2に係る特許が有効であることを前提 に非充足論について議論するのであれば,当業者がその有用性を認識できる用途のみがその範囲に含まれることが当然の前提とされるべきであり,被告製品の用途が当時の技術常識に照らしてその有用性を認識できないものであれば,その権利範囲には含まれないと解釈するほかない。 しかるところ,被告準備書面(1)「第2の2(2)ないし(5)」及び被告準備書 面(2)「第2及び第3」において述べたとおり,本件化合物に関して,本件明細書等から有用性が読み取れる痛みの種類は,せいぜい「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」に限られ,神経障害性疼痛・線維筋痛症を含めたこれら以外の痛みに関する有効性の根拠となり得るものではなく,その有用性が本件明細書等を基に認識し得ないことは明らかである。そして,被告医薬品の効能効果は,甲1 3に記載のとおり「神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛」なのであるから, 本件明細書等の記載を基に,本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常識に照らして,その用途に係る有用性を認識できないことは明らかといえる。 したがって,被告医薬品がいずれも訂正前発明1及び2に含まれると解する余地はないが,あえてこれを訂正前発明1及び2の構成に照らして評価するならば,当時の技術常識に照らしてもその有用性を認識できない痛み(すなわち, 「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の痛み)の種類が規定された,構成要件1B´の「痛みの処置における」という構成について,非充足と判断されるべきである。 2 訂正前発明1及び2に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2) (1) B´の「痛みの処置における」という構成について,非充足と判断されるべきである。 2 訂正前発明1及び2に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2) (1) 無効理由1(実施可能要件違反の有無)(争点2-1)被告準備書面(1)「第2の2(3)」においても述べたとおり,概ね審決書(甲9)で述べられていることと同様の理由により,訂正前発明1及び2に係る特許が,実施可能要件違反の無効理由を有することが明らかである。 すなわち,訂正前発明1には,痛みとの記載があるにとどまり,該痛みに 関して具体的な記載はなされていない。一方,本件明細書等の発明の詳細な説明には,式Iの化合物をその処置に用いる痛みに関連して,「炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,三叉神経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛 ならびに他の形態の神経痛,神経障害および特発性疼痛症候群」が包含されると記載されているから,訂正前発明1の痛みは,具体例として,少なくとも,本件明細書等の発明の詳細な説明に具体的に記載されている各痛みを包含するものであるといえる。 しかるところ,痛みには,本件明細書等の発明の詳細な説明に記載されて いる各痛みを含む種々の種類のものがあり,その原因や病態生理も様々であ ることは,本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常識であり,また,痛みの種類や原因によって治療法が異なり,鎮痛剤であればあらゆる種類の痛みに有効であるというわけではないことも,本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常識であったものといえる。 以上のことから,本 みの種類や原因によって治療法が異なり,鎮痛剤であればあらゆる種類の痛みに有効であるというわけではないことも,本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常識であったものといえる。 以上のことから,本件明細書等に記載の3種の薬理試験(ホルマリン試験, カラゲニン試験,術後疼痛試験)の結果から,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の本件明細書等に記載されている各痛みの治療に有効であるという,本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常識は見出せない。 そして,訂正前発明2の化合物は,訂正前発明1の化合物である式Iの化合物に包含されるものであり,該化合物を用いる痛みの処置についても,上 記と同様に判断される。 したがって,当業者は,本件明細書等の発明の詳細な説明に記載の上記3種の薬理試験結果の記載に接しても,訂正前発明1及び2に係る鎮痛剤が,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の本件明細書等に記載されている各痛みの処置における鎮痛効果を有することを認識することができない。 ところで,訂正前発明1の化合物であるプレガバリンに関する原告の専用実施権者であり,かつ訴状において原告のグループ会社と主張されているファイザー株式会社が販売する「リリカ」のインタビューフォーム(乙24)の89~97頁の「(2)薬効を裏付ける試験成績」においても,ホルマリン試験,カラゲニン試験,術後疼痛試験は,「1)神経障害性疼痛モデルに おけるプレガバリンの有効性」(ここには,⑤として線維筋痛症に伴う疼痛のモデルも含まれる)とは別の「2)その他の痛覚過敏モデルにおけるプレガバリンの有効性(ラット)」の「①ホルマリンテストにおける自発痛に対する鎮静作用」,「②ラット足蹠カラゲニン誘発痛覚過敏モデルにおけるプレガバリンの有効性」,「③ラット外科手術後疼痛モ おけるプレガバリンの有効性(ラット)」の「①ホルマリンテストにおける自発痛に対する鎮静作用」,「②ラット足蹠カラゲニン誘発痛覚過敏モデルにおけるプレガバリンの有効性」,「③ラット外科手術後疼痛モデルにおけるプレガバ リンの有効性」として分類されている。 このことは,原告ら自らにおいて,ホルマリン試験,カラゲニン試験,術後疼痛試験が,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛を評価する試験ではなく,本件明細書等に記載の試験ではそれらの有効性の裏付けとして足りないことを自ら認めるものにほかならない。すなわち,審決の認定する技術常識は,原告らにおいても同様に認識されていたと考えられることから,これ に反する原告の主張は,技術常識を恣意的に捻じ曲げるものであり失当である。 以上のとおり,訂正前発明1及び2に関し,本件明細書等の発明の詳細な説明は,当該発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないのであるから,これらの発明に係る特許はいずれも,実 施可能要件違反によって無効とすべきものである。 (2) 無効理由2(サポート要件違反の有無)(争点2-2)被告準備書面(1)「第2の2(4)」においても述べたとおり,概ね審決書(甲9)で述べられていることと同様の理由により,訂正前発明1及び2に係る特許が,サポート要件違反の無効理由を有することが明らかである。 すなわち,上記(1)において述べたとおり,訂正前発明1の痛みには,炎症性疼痛,術後疼痛以外の本件明細書等に記載の各種痛みが包含されると考えられるところ,それらの原因や病態生理も様々であり,痛みの種類や原因によって治療法が異なり,鎮痛剤であればあらゆる種類の痛みに有効であるというわけではないことが,本件優先日ないし が包含されると考えられるところ,それらの原因や病態生理も様々であり,痛みの種類や原因によって治療法が異なり,鎮痛剤であればあらゆる種類の痛みに有効であるというわけではないことが,本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常 識であった。 しかるところ,上述のとおり,本件明細書等に記載のラット足蹠ホルマリン試験,ラット足蹠カラゲニン誘発機械的痛覚過敏及び熱痛覚過敏に対する試験,又は,ラット足蹠筋肉切開により生じた熱痛覚過敏及び接触異痛に対する試験という3種の薬理試験は,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」に関す るものであって,上記各痛みの処置における鎮痛効果を有することを当業者 が認識し得ない。 以上のとおり,本件明細書等の発明の詳細な説明に接した当業者が,訂正前発明1及び2に係る発明により上記課題を解決できると認識できるとはいえないのであるから,これらの発明に係る特許はいずれも,サポート要件違反によって無効とすべきものである。 3 本件発明1及び2に係る訂正の再抗弁の成否(争点3)(1) 被告医薬品が本件発明1及び2の技術的範囲に属するか(構成要件1B及び2Bの充足性)(争点3-1)上記1において述べたとおり,本件明細書等から有用性が読み取れる痛みの種類は「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」に限られるところ,「神経障害性 疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛」を対象とする被告医薬品に関し,本件明細書等の記載を基に,本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常識に照らして,その用途に係る有用性を認識できないことは明らかといえる。 したがって,被告医薬品が本件発明1及び2に含まれると解する余地はないが,あえてこれを本件発明1及び2の構成に照らして評価するならば,当 時の技術常識に照らして とは明らかといえる。 したがって,被告医薬品が本件発明1及び2に含まれると解する余地はないが,あえてこれを本件発明1及び2の構成に照らして評価するならば,当 時の技術常識に照らしてもその有用性を認識できない痛み(すなわち,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の痛み)の種類が規定された,構成要件1Bの「痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における」という構成,及び構成要件2Bの「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における」について,非充足と判断されるべきである。 なお,本件発明で用いられている「痛覚過敏」及び「接触異痛」の定義,並びにこれらと「神経障害性疼痛」「線維筋痛症に伴う疼痛」との関係は必ずしも明らかではないが,痛覚過敏及び接触異痛は,神経障害性疼痛や線維筋痛症において常に生ずるものではなく,また,痛覚過敏及び接触異痛は炎症性疼痛においても生ずることが多い。 以上のことから,被告医薬品は本件訂正の適否にかかわらず,本件発明1 及び2の技術的範囲には含まれない。 (2) 無効理由解消の有無(争点3-2)ア無効理由1の解消の有無(争点3-2-1)(ア) まず,構成要件1B,2Bの「痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における」という構成に関し,河野達郎教授の見解書(乙33〔6頁〕) においても述べておられるとおり,痛覚過敏や接触異痛は,神経障害性疼痛,線維筋痛症,侵害受容性疼痛のいずれであっても認められることがあり得る痛みの性質でしかない(乙34〔41頁表4〕)。 すなわち,痛覚過敏や接触異痛は,神経障害性疼痛や線維筋痛症のみならず,その原因が消失すれば治癒する侵害受容性疼痛(原告の主張に よれば「組織の損傷や炎症による侵害刺激で生ずる 頁表4〕)。 すなわち,痛覚過敏や接触異痛は,神経障害性疼痛や線維筋痛症のみならず,その原因が消失すれば治癒する侵害受容性疼痛(原告の主張に よれば「組織の損傷や炎症による侵害刺激で生ずる通常の痛み」)でも発症し得るものであり,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛の各疾患に伴って生じ得る症状の1つにすぎず,侵害受容性疼痛における痛覚過敏や接触異痛の病態と,線維筋痛症や神経障害性疼痛における痛覚過敏や接触異痛の病態とを同一視することはできない。 したがって,「組織の損傷や炎症による侵害刺激で生ずる通常の痛み」ではない「神経の機能異常による慢性の痛み(慢性疼痛)」にのみ,痛覚過敏や接触異痛が生じるとする,原告主張の分類(原告第3準備書面〔7頁図1〕に示す分類)は,技術常識に照らして矛盾を来たしている上に,薬理学的,薬物治療学的な観点から全く無意味である。その上, 慢性疼痛に関しても,大きく侵害受容性,神経障害性,心因性の3つの異なった疼痛機序が考えられ,病態生理に著しい差異があるというのが技術常識である(乙4〔652頁2~5行目〕)。 (イ) 次に,痛みの分類(構成要件2Bの「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における」という構成)に関してい えば,被告準備書面(2)「第2の3」において述べたとおり,本件優先日 ないし本件特許出願日当時の技術常識として,痛みの分類は,その原因や病態に基づいて,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛に大別されており(乙4〔652頁2~5行目〕,乙33(河野教授の見解書)〔2~3頁〕等参照),この点は現時点においても何ら変わっていない(乙34〔40~41頁〕,35の1等参照)。 すなわち,侵害受容性疼痛は,侵害受容 頁2~5行目〕,乙33(河野教授の見解書)〔2~3頁〕等参照),この点は現時点においても何ら変わっていない(乙34〔40~41頁〕,35の1等参照)。 すなわち,侵害受容性疼痛は,侵害受容器(組織の損傷を感知する痛みの受容器)の活性化によって発生する痛みであり,炎症性疼痛や術後疼痛はその一種である。神経障害性疼痛は,神経の損傷により生じる痛みであり,幻肢痛,三叉神経痛,糖尿病性神経障害性疼痛,帯状疱疹後神経痛,視床痛などの多様な原因及び病態の痛みが含まれる。心因性疼 痛は,原因不明の心理的要因が関与していると考えられる痛みであり,線維筋痛症などがこれに含まれる。そして,侵害受容性疼痛(炎症性疼痛),神経障害性疼痛,心因性疼痛(線維筋痛症など)の3分類においては,それぞれ基礎とする病態生理及び疼痛機序に著しい差異があり,それゆえに有効な治療方法や治療薬も異なることが知られていた。 したがって,侵害刺激の存在を前提とする侵害受容性疼痛に関する報告が,病態生理及び疼痛機序を異にする神経障害性疼痛及び心因性疼痛について当然に妥当するものでないことは明らかである。 (ウ) しかるところ,被告準備書面(2)「第2の6」において詳述したとおり,本件明細書等に記載された上記3種の薬理試験(ホルマリン試験, カラゲニン試験,術後疼痛試験)は,ホルマリン,カラゲニン又は切開により,皮膚に炎症を生じさせることにより生ずる侵害受容性疼痛(炎症性疼痛)に対するNSAIDの薬効を観察するために開発されたモデルである(NSAIDが鎮痛作用をもたらす機序は,炎症による発痛増強物質の生成を抑制することによるので,NSAIDは,炎症性疼痛に は効果があるが,神経障害性疼痛や線維筋痛症には効果がない。)。さ らに, もたらす機序は,炎症による発痛増強物質の生成を抑制することによるので,NSAIDは,炎症性疼痛に は効果があるが,神経障害性疼痛や線維筋痛症には効果がない。)。さ らに,上記3種の薬理試験は,神経障害性疼痛のモデルの試験と異なり神経に損傷を与えない上に,疼痛発現が長くとも数日程度であってそのタイムコースが全く異なることからも,神経障害性疼痛に対する鎮痛作用を確認することはできない。 なお,線維筋痛症は未だ原因がわかっておらず,複雑な因子が関連し て多様な症状を呈するため動物モデルの確立は難しく,1990年代後半に確立された線維筋痛症モデルは存在しなかったため,上記3種の薬理試験によってその鎮痛効果を確認できないことは当然である(乙33(河野教授の見解書)〔5~6頁〕)。 (エ) そして,以下に述べるとおり,河野教授による上記見解は,他の教科 書的な文献を含む他の証拠や,本件明細書等の記載とも整合するものである。 a まずホルマリン試験に関しては,甲27において「ホルマリン試験は,動物における侵害刺激のモデルとして使用されてきている。ホルマリンの皮下注射は,ラット,猫,マウス及び霊長類で観察される二 相性の侵害応答を引き起こす」と記載されており,乙11(18頁9~14行目)においても,ホルマリン試験は2相性を示すことが知られており,「latephase(後期相)は二次的に起こる炎症性の痛みであると考えられており」と記載されている。以上のことから,ホルマリン試験は,動物における侵害刺激のモデル(炎症性モデル)として 使用され,二相性の侵害応答を引き起こすこと,その後期相が炎症性の痛みの評価に用いる実験モデルであったことは明らかである。さらに,審決においても正しく認定されているとおり 症性モデル)として 使用され,二相性の侵害応答を引き起こすこと,その後期相が炎症性の痛みの評価に用いる実験モデルであったことは明らかである。さらに,審決においても正しく認定されているとおり,甲27のほか,甲46~48の記載からも,ホルマリン試験は化学物質誘発性の炎症性疼痛の有用なモデルと認識されていたことが読み取れる。 b カラゲニン試験に関しても,そもそも本件明細書等(甲2)におい て,カラゲニン投与の「A.機械的痛覚過敏」及び「B.熱痛覚過敏」の結果を踏まえて,その6頁31~32行目において,「これらのデータはギャバペンチンおよびCI-1008が炎症性疼痛の処置に......... 有効である..... ことを示す」と記載されており,この試験が侵害受容性疼痛(炎症性疼痛)の評価のためのものであることを原告自ら認めてい る。 さらに,乙21には,カラゲニンによって誘発された炎症によってもたらされた動物の足回避潜時変化が,侵害受容閾値低下に対応したことが記載されており,甲56(135頁)には,「カラゲニン誘導.. 炎症.. は,1962年Winter等によって説明された,そして,非. ステロイド抗炎症薬のスクリーニングのために広く使われる........................... ようになっている」,「カラゲニン誘導炎症は,皮膚の痛覚過敏のモデルとして適合されている」と記載されており,また,甲57には,カラゲニン誘導炎症は,炎症/痛覚過敏のモデルを作製するために用いられることが記載されている。これらの記載を総合すれば,カラゲニン試 験は,ホルマリン試験と同様に,カラゲニンに誘発された炎症についての鎮痛作用を評価する侵害受容性疼痛の動物モデルであったことが理解で が記載されている。これらの記載を総合すれば,カラゲニン試 験は,ホルマリン試験と同様に,カラゲニンに誘発された炎症についての鎮痛作用を評価する侵害受容性疼痛の動物モデルであったことが理解できる。 c 術後疼痛試験に関していえば,本件明細書等(甲2)に「術後疼痛のラットモデルも報告されている(Brennanら,1996)。そ れには,後肢足蹠面の皮膚,筋膜および筋肉の切開が包含される。これは数日間続く再現可能かつ定量可能な機械的痛覚過敏の誘発を招く。このモデルはヒトの術後疼痛状態にある種の類似性を示す.......................... 」(6頁37行目以降)と記載されていることから,ヒトの術後疼痛状態の疼痛を評価するモデルであることが明らかであるところ,乙6(32 頁下から7行目以下)においては,「侵害受容性-侵害受容器の活性 化によって発生する痛み。…痛みは,皮膚や内臓の求心性神経線維の化学的,熱的又は機械的な活性化の程度と臨床的に比例し,急性又は慢性である(体性痛,癌性疼痛,術後疼痛.... )」と記載されていることから,同じく侵害受容性疼痛のモデルと認識されていたことが読み取れる。 その上,本件明細書等(甲2)の7頁35行目以降において,術後疼痛試験の結果として,「ラット足蹠筋肉の切開は熱痛覚過敏および接触異痛を生じた。いずれの侵害受容反応も........... 手術後1時間以内にピークに達し,3日間維持された。実験期間中,動物はすべて良好な健康状態を維持した」と記載されており,この試験が侵害受容性疼痛の評 価のためのものであることを原告自ら認めている。 なお,乙50(エッセンシャル麻酔科学第Ⅲ版〔301頁〕),乙51(麻酔蘇生科研修マニュアル〔18 載されており,この試験が侵害受容性疼痛の評 価のためのものであることを原告自ら認めている。 なお,乙50(エッセンシャル麻酔科学第Ⅲ版〔301頁〕),乙51(麻酔蘇生科研修マニュアル〔185頁〕)などの記載からも,本件優先日当時の技術常識として,術後疼痛が,手術から3日程度までに発生する手術による炎症を原因として発生する痛みを指すこと が技術常識であったことが理解できる。 (オ) 本件優先日ないし本件特許出願日当時の神経障害性疼痛の評価方法に関し,河野教授の見解書(乙33〔3~4頁〕)において,Bennettモデル,Seltzerモデル,Kim&Chungモデル(チャングモデル)で,その薬効を評価するのが常識であり,化合物の神経 障害性疼痛に対する効果を確認するのであれば,これらのいずれかのモデルを用いることが必要であったことが述べられている(上記見解書で引用されているWoolf教授の論文である乙36(Pain,2000; 87; 149-158の150頁左欄最終段落)においても同旨の記載が存在する)。 現に,本件優先日よりも前の優先日に係る乙37(特開平9-104 634号公報)及び乙38(特表平11-503452号公報)においても,現に上記3モデルの一つであるKim&Chungモデルを用いて的確に神経障害性疼痛の評価を行っており,また,乙39(特表2001-516335号公報)においては,侵害受容性痛み(侵害受容性疼痛)及び神経障害性痛み(神経障害性疼痛)に対応して,ホルマリン 試験とKim&Chungモデル試験が明確に使い分けられている。さらに,本件明細書等(甲2)の6頁31~34行目の「BennettG.J.のアッセイはヒトに認められるのと類似の疼痛感覚の障害を生じる とKim&Chungモデル試験が明確に使い分けられている。さらに,本件明細書等(甲2)の6頁31~34行目の「BennettG.J.のアッセイはヒトに認められるのと類似の疼痛感覚の障害を生じるラットにおける末梢性単発神経障害の動物モデルを提供する(Pain, 1988; 33: 87-107)」,「KimS.H.らのアッセ イは,ラットにおける分節脊椎神経の結紮によって生じる末梢神経障害の一つの実験モデルを提供する(Pain, 1990; 50: 355-363)」という記載からも,原告自身も神経障害性疼痛の評価をするためにはこれらの動物モデル実験が必要であったことを認識していたことは明らかであり,本件特許出願においてこれらの実験が行えない正 当な理由は何ら見いだせない。 (カ) 線維筋痛症に関しては,例えば乙3(825頁)において「精密検査を行っても,原因となるような器質的病変ないし病態生理的機序が見出されないにもかかわらず訴えられる疼痛,またある程度関連する器質的病変が存在する場合でも,その身体的所見から期待されるものを上回る 強さで訴えられる疼痛などで,背景に心理的要因が関与していると考えられるもの」と記載され,乙9(199頁)において「中枢神経系に器質的病変がなく,直接末梢からの侵害刺激がないにもかかわらず存在する痛み」と記載されているように,特定の病変や侵害刺激が存在しないため,そのための適切な動物実験モデルが当時存在しないことも,十分 に理解できるところである。 その上,乙53(WO2010/070971,優先日:2008年(平成20年)12月16日)の段落[0007]において「表面妥当性,構成概念妥当性,予測妥当性の観点において,線維筋痛症の病態を十分に反映したモデ (WO2010/070971,優先日:2008年(平成20年)12月16日)の段落[0007]において「表面妥当性,構成概念妥当性,予測妥当性の観点において,線維筋痛症の病態を十分に反映したモデル動物は,これまでに報告されていない」と記載されているように,少なくとも,本件優先日の12年後である平成20年 の段階においても,線維筋痛症の病態を十分に反映したモデル動物が存在しなかったのであるから,本件明細書等に記載の動物モデル実験(ホルマリン試験,カラゲニン試験,術後疼痛試験)によっては,線維筋痛症に対する鎮痛効果を評価できないという結論が演繹的に導かれることになる。 (キ) この点に関し,原告は,本件優先日当時,痛覚過敏や接触異痛が,その原因にかかわらず,末梢や中枢の神経細胞の感作という神経の機能異常により生ずることが知られており,ホルマリン試験が,中枢性感作による痛覚過敏の試験であることが知られており,カラゲニン試験や術後疼痛試験により,原因にかかわらず痛覚過敏や接触異痛に対する効果を 確かめることができるのであるから,当業者は,神経障害性疼痛や線維筋痛症に対して本件化合物が効果を奏すると理解するという趣旨の主張をしている(原告第3準備書面「第2ないし第5」)。 しかしながら,痛覚過敏や接触異痛が,その原因にかかわらず,神経の機能異常(中枢性感作,末梢性感作)により生ずることが知られていた などという技術常識は存在せず,それに関して被告が提出する各証拠に基づく主張に理由がないことは,被告準備書面(2)「第2の4」において述べたとおりである。また,動物モデルに関する技術常識は上述のとおりであり,それに関して被告が提出する各証拠に基づく主張に理由がないことは,被告準備書面(2)「第2の7」において述べたとお において述べたとおりである。また,動物モデルに関する技術常識は上述のとおりであり,それに関して被告が提出する各証拠に基づく主張に理由がないことは,被告準備書面(2)「第2の7」において述べたとおりであ る。 なお,乙9(200頁)や乙18(12~13頁)などから読み取れるように,痛みには,種々の種類のものがあり,その原因や病態生理も様々であること,さらに痛みの発生原因や機序によって有効な治療方法や医薬の種類も異なり,そういった要素を捨象して鎮痛剤であればあらゆる種類の痛みに有効であるなどといえないというのが技術常識であ る。こうした治療方法は当然のことながら,上述した動物モデル実験の中身と対応することが求められるところ(そうでなければ,実験モデルとしても存在意義がない。),原告の主張によれば,ホルマリン試験などで痛覚過敏や接触異痛に対して鎮痛効果を奏する化合物であれば,(線維筋痛症を含む心因性疼痛や神経障害性疼痛が原因のものを含め た)あらゆる痛覚過敏や接触異痛に対して効果を奏するといえることになるが,それは,上述した,痛みの発生原因や機序によって有効な治療方法や医薬の種類も異なるという現実と完全に矛盾することになる。 (ク) この点,NSAIDの実例を基に検討することにより上記の矛盾がより分かりやすくなる。 すなわち,NSAIDは,本件化合物と同じように,ホルマリン試験後期相の鎮痛に有効であるが,初期相の鎮痛に無効である(このことは,甲45の「NSAIDであるインドメタシンは,ホルマリン試験の第2相における反応を低下させるが,第1相では効果を持たないことが示されている」という記載や,下に示す,乙12(甲86)の表3-3(N SAIDはシクロオキシゲナーゼ阻害剤である)から 試験の第2相における反応を低下させるが,第1相では効果を持たないことが示されている」という記載や,下に示す,乙12(甲86)の表3-3(N SAIDはシクロオキシゲナーゼ阻害剤である)からも理解できる)。 そのため,本件明細書等のホルマリン試験の結果からは,本件化合物の効果とNSAIDの効果を全く区別できないことになる。そのため,原告の主張によれば,NSAIDも本件化合物と同様に,中枢性感作による痛覚過敏及び接触異痛に対して効果があると認識でき,痛みの発生原 因にかかわらず,すなわち,線維筋痛症や神経障害性疼痛が原因の痛覚 過敏及び接触異痛に対しても等しく効果を奏するということになる。 しかしながら,現実的には,乙12(甲86)の表3-3に示すとおり,(本件明細書等においてすらも神経障害の動物モデルとして記載されている)ベネットモデル及びチャングモデルにおける痛覚過敏及び接触異痛について,NSAIDであるシクロオキシゲナーゼ阻害剤による 鎮痛効果はゼロと評価されていることが示されている。そして,動物モデルでそのように評価されているのみならず,本件明細書等の4頁においても「上に掲げた状態が,現在市場にある鎮痛剤たとえば麻薬性鎮痛剤またはNSAIDでは,不十分な効果または副作用からの限界により不完全な処置しか行われていないことは周知である」と記載されている ように,NSAIDが現実にそのような痛みに効果がないことは周知の事実である。 以上の事実は,ホルマリン試験後期相に有効かつ初期相に無効である化合物が,炎症に起因する痛みには有効であっても,神経損傷などの他の原因による痛みにも有効であるとは限らないこと,換言すれば,ホル マリン試験において中枢性感作の抑制が観察される薬剤であれば,あら 物が,炎症に起因する痛みには有効であっても,神経損傷などの他の原因による痛みにも有効であるとは限らないこと,換言すれば,ホル マリン試験において中枢性感作の抑制が観察される薬剤であれば,あらゆる原因にかかる痛覚過敏及び接触異痛に対しても等しく効果を奏するという説明が,現実に反しており,論理的に成り立ち得ないことを如実に示している。 なお,もし仮にホルマリン試験の後期相が中枢性感作を反映したもの であるとしても,本件化合物の具体的な作用点や作用機序について,本件明細書等では全く言及されておらず,当時の技術常識としてそれが知られていたという事実も存在しないため,具体的にどのような機序により中枢性感作が抑制されているか(直接中枢を抑制しているのか,それとも炎症を抑制することにより間接的に抑制に寄与したかも含め)は全 く不明である。すなわち,本件明細書等に記載の結果のみでは,例えば, NSAIDと同様にシクロオキシゲナーゼの阻害により炎症により生ずる痛み増強物質の発生を抑えることにより間接的に中枢性感作が抑制されている可能性を何ら排除することができず,神経障害性疼痛や線維筋痛症などこれとは原因や発症機序の異なる「痛覚過敏及び接触異痛」に有効であるといえる根拠とはなり得ない。 (ケ) このように,本件明細書等に記載された3つの動物モデル(ホルマリン試験,カラゲニン試験,術後疼痛試験)が,神経障害性疼痛や線維筋痛症などの他の原因による痛覚過敏や接触異痛に対する鎮痛効果を有する根拠とはなり得ず,本件明細書等の発明の詳細な説明に加え,本件優先日当時の技術常識を参酌したとしても,本件化合物が,神経障害性 疼痛や線維筋痛症などの他の原因による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置という用途に対して有用性 の発明の詳細な説明に加え,本件優先日当時の技術常識を参酌したとしても,本件化合物が,神経障害性 疼痛や線維筋痛症などの他の原因による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置という用途に対して有用性があることを認識できないことは明らかである。 (コ) 以上のことから,「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における」という構成を規定する本件発明2が実施 可能要件を充足しないことは明らかであり,また,これよりも広くあらゆる原因に基づく痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置を規定する本件発明1も,同様の理由により実施可能要件を充足しないことは明らかである。 したがって,本件訂正を踏まえても無効理由1は何ら解消されない。 イ無効理由2の解消の有無(争点3-2-2)上記アで述べたことと同様の理由により,本件明細書等の発明の詳細な説明に加え,本件優先日当時の技術常識を参酌したとしても,本件化合物が,神経障害性疼痛や線維筋痛症などの他の原因による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛効果を有することを当業者が認識し得な い。そのため,本件明細書等の発明の詳細な説明に接した当業者が,本件 発明1及び2によりその技術的課題を解決できると認識できるとはいえないのであるから,これらの発明に係る特許はいずれも,サポート要件違反によって無効とすべきものである。 したがって,本件訂正を踏まえても無効理由2も何ら解消されない。 (3) 訂正要件の具備の有無(争点3-3) ア本件発明1の訂正要件の具備の有無(争点3-3-1)下記イにおいて述べるとおり,本件発明2に係る訂正事項は,本件明細書等に何ら記載されていない新たな技術的事項を追加するものとして,訂正 本件発明1の訂正要件の具備の有無(争点3-3-1)下記イにおいて述べるとおり,本件発明2に係る訂正事項は,本件明細書等に何ら記載されていない新たな技術的事項を追加するものとして,訂正要件に違反することは明らかであり,そうである以上,対応する訂正前の請求項2とともに一群の請求項を構成する訂正前の請求項1について 求める訂正は一体的に認められない。 イ本件発明2の訂正要件の具備の有無(争点3-3-2)まず前提として,本件各発明のような第二医薬用途発明は,例えば知財高裁平成28年(ネ)第10023号同年7月28日判決(いわゆる「メニエール病治療薬事件」)において判示されているとおり,既知の物質に ついて未知の性質を発見し,当該性質に基づき顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを特徴とするものであるから,その用途部分に係る訂正に関して訂正要件を充足する(本件明細書等の記載の範囲内である)といえるためには,対象の化合物がその用途に対して有用であること(効果を奏すること)が明細書に記載されていることが,最低限必要となること はいうまでもない。 しかるところ,上記(2)アにおいて詳述したとおり,痛覚過敏や接触異痛は,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛(線維筋痛症)の各疾患に伴って生じ得る症状の1つにすぎないものであり,その基礎となる病態生理に著しい差異があり,その疼痛機序や治療方法もそれぞれの原因 において異なっていたというのが,本件優先日当時も現在も変わらない技 術常識である。そして,上述のとおり,本件明細書等において,本件化合物の効果の確認のために行った試験として開示されているのは,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験であるところ,これらの試験はいず ある。そして,上述のとおり,本件明細書等において,本件化合物の効果の確認のために行った試験として開示されているのは,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験であるところ,これらの試験はいずれも侵害受容性疼痛(炎症性疼痛)に関する実験モデルであって,神経障害性疼痛や線維筋痛症における痛覚過敏や接触異痛の処置に本件化 合物を使用した試験ではない。 したがって,本件明細書等の記載から実質的に読み取ることができるのは,侵害受容性疼痛(炎症性疼痛)を原因とする痛覚過敏や接触異痛に対する有用性に限られ,それとは原因及び基礎となる病態生理が著しく異なる神経障害性疼痛,心因性疼痛を原因とする痛覚過敏や接触異痛に対する 有用性までもが記載されていたということにはならない。まして,侵害受容性疼痛(炎症性疼痛)を原因とする痛覚過敏や接触異痛の記載から「痛覚過敏」「接触異痛」のみを抽出し,他の段落において抽象的に記載された「神経障害性疼痛」「線維筋痛症」などの用語を組み合わせて「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛み」が記載されてい るなどといえるはずもない(このようにそれぞれ別の段落で関連性なく記載された技術的事項の組合せが新規事項の追加に該当し訂正要件を充足しないことについては,例えば知財高裁平成25年(行ケ)第10346号同26年10月9日判決,知財高裁平成28年(行ケ)第10257号同29年10月19日判決などにおいて判示されているとおりである。)。 以上のとおり,本件発明2に係る訂正事項は,本件明細書等に何ら記載されていない新たな技術的事項を追加するものとして,訂正要件に違反することは明らかである。 第2 本件発明3及び4 1 被告医薬品が本件発明3及び4の技術的範囲に属するか 何ら記載されていない新たな技術的事項を追加するものとして,訂正要件に違反することは明らかである。 第2 本件発明3及び4 1 被告医薬品が本件発明3及び4の技術的範囲に属するか (1) 構成要件3B及び4Bの充足性(争点4-1) ア構成要件3B,4Bは,本件無効審判における訂正請求によって新たに規定された構成であることから,その解釈において審判段階の経緯が参酌されるべきことは当然といえる。 しかるところ,被告準備書面(1)「第2の3」において述べたとおり,審決の予告(乙25)においては,「当業者は,本件明細書の発明の詳細 な説明に記載の上記3種の薬理試験結果の記載に接しても,本件発明に係る鎮痛剤が,『炎症性疼痛』及び『術後疼痛』以外の請求項4に記載の各........................... 痛みの処置における鎮痛効果を有することを認識することができない............................... 」,「よって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない」と いう実施可能要件違反の判断,並びにサポート要件違反に関する「本件発明に係る鎮痛剤が,上記『炎症性疼痛』及び『術後疼痛』以外の請求項4........................ に記載の各痛みの処置における鎮痛効果を有することを認識することが................................ できない.... のであるから,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者が,本件発明により上記課題を解決できると認識できるとはいえない」という 判断がなされている。 これを踏まえて原告は,令和元 .... のであるから,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者が,本件発明により上記課題を解決できると認識できるとはいえない」という 判断がなされている。 これを踏まえて原告は,令和元年7月1日付け上申書(乙26〔9頁8~13行目〕)において,「被請求人は,訂正発明3及び4において,鎮痛剤の処置対象である痛みを,審決の予告において実施可能要件及びサポ................... ート要件を満たすと判断された『炎症を原因とする痛み(炎症性疼痛)』................................. 及び『手術を原因とする痛み(術後疼痛)』に限定した......................... 。したがって,訂正発明3及び4は実施可能要件及びサポート要件を充足する」と主張したものである。その上で,令和元年8月7日付け手続補正書に添付の同年7月1日付け訂正請求書(甲4)において,「訂正前の請求項4において,炎症性疼痛から線維筋痛症まで,13項目の痛みが選択的に記載されてい たものを,『炎症性疼痛』及び『術後疼痛』のみを残し,その他の選択肢 を削除する」と述べ,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の痛みを権利範囲から排除することを明らかにしている。 上記のような審判段階の経緯に鑑みれば,本件発明3(構成要件3B)に規定する「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」は,本件発明4(構成要件4B)に規定する「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」 と同義であり,それ以外の痛み(訂正前発明4に係る請求項に列記されており,被告医薬品の用途に該当する「神経障害による痛み,線維筋痛症に伴う疼痛」を含む。)は対象とされないことは明らかであり,本件発明3及び4が神経障害性疼痛及び 訂正前発明4に係る請求項に列記されており,被告医薬品の用途に該当する「神経障害による痛み,線維筋痛症に伴う疼痛」を含む。)は対象とされないことは明らかであり,本件発明3及び4が神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛を対象に含むと主張することは,いわゆる禁反言の法理により許されない。 イ河野教授の見解書(乙33〔7頁〕)においても,「『炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み』とは,その言葉自体からは,『炎症性疼痛または術後疼痛』を意味するものと考えられるので,当然に神経障害性疼痛や線維筋痛症は該当しないと考える」と述べられている。 ウ医薬品の用途(効能・効果)は,特段の事情がない限り,医薬品医療機 器等法上の製造販売承認がなされ添付文書及びインタビューフォームに記載された事項に基づき,客観的に判断されるべきことは当然といえる(いわゆる「ラベル論」)ところ,あくまでも被告医薬品の添付文書に記載されているのは「神経障害性疼痛」及び「線維筋痛症に伴う疼痛」のみであり(甲13),「炎症性疼痛」ないし「術後疼痛」を対象としていな い。 なお,例えばメニエール病治療薬事件判決では,「用途発明とは,既知の物質について未知の性質を発見し,当該性質に基づき顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを特徴とするものであるから,用途発明にお...... ける特許法2条3項にいう『実施』とは,新規な用途に使用するために既................................. 知の物質を生産,使用,譲渡等をする行為に限られる........................ と解するのが相当で ある」と判示されており,製品の製造販売が当該発明の「実施」に該当するというには,当該製造販 行為に限られる........................ と解するのが相当で ある」と判示されており,製品の製造販売が当該発明の「実施」に該当するというには,当該製造販売が新規な用途(すなわち,当該特許において対象とされている用途)に用いられるために行われたことを要することが判示されている。 そして,当該判決においては,実際の臨床現場において当該特許に抵触 する方法で用いられる可能性があることを前提としつつも,被告製品の添付文書及びインタビューフォームに記載された方法ではなく,製造販売が当該用途に使用するために行われたとはいえないという理由により,侵害が成立しない旨判示されている。このような考えは,医薬品医療機器等法の承認申請制度の趣旨とも整合するものであり,また第三者の予測可能 性・法的安定性という観点からも極めて妥当な判断であるといえ,本件においてもこれと別異に考えるべき必然性は存在しない。 したがって,仮に実際の医療の現場において医薬品医療機器等法上の製造販売承認がなされ添付文書及びインタビューフォームに記載された事項と異なる方法で用いられることがあったとしても,そのことは上述した 被告医薬品が構成要件3B,4Bを充足しないという結論に何ら影響を及ぼすものではない。 エ原告は,帯状疱疹後神経痛がヘルペスの炎症によるものであることや,線維筋痛症が手術を原因として発症することや,開胸術後疼痛症候群,外傷後後遺症,手術後後遺症が手術を原因とする痛みであることなどを根拠 として被告医薬品が本件発明3(構成要件3B)の「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」に含まれるという主張をしているが,いずれも本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常識を示すものではない 告医薬品が本件発明3(構成要件3B)の「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」に含まれるという主張をしているが,いずれも本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常識を示すものではない上,上述のとおり,「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」という用語の誤った解釈に基づく主張であり失当というほかな い(このような解釈に従えば,本件発明3に係る特許は,後記2で述べる 無効理由を包含することになる。)。 オまた,帯状疱疹後神経痛に関しては,被告準備書面(2)「第4の3」において,乙35の3(https:// 以下省略)を引用しつつ述べたとおり,帯状疱疹に関連する痛みは,皮膚の炎症による痛み(侵害受容性疼痛)である「前駆痛」及び「急性帯状疱疹痛」と,神経が傷ついたことにより発 症し,皮疹が治癒した後も続く「帯状疱疹後神経痛」とに分類され,これらの痛みは明瞭に区別され,発症の仕組みも治療法も異なるものとされている。なお,乙43(「新麻酔科学≪Qシリーズ」(第4版)〔183頁〕)及び乙44(「看護学大辞典」第4版〔432頁〕)の記載からも明らかなとおり,帯状疱疹後神経痛が神経損傷(神経変性)による求心路遮断痛 であると理解され,「炎症を原因とする痛み(炎症性疼痛)」と理解されていなかったことは,本件優先日ないし本件特許出願日当時からの技術常識である。 カさらに,手術と線維筋痛症との関係に関していえば,甲7(101頁)の記載に加え,乙45(「ハリソン内科書」第12版)の2669頁及び 乙46(「内科学」第六版)の173頁の記載からも明らかなとおり,線維筋痛症の病因は不明で仕事環境,精神的要素も加わっていると考えられる非炎症性疾患と位置付けられていた。加えて,乙48(健康ライ 乙46(「内科学」第六版)の173頁の記載からも明らかなとおり,線維筋痛症の病因は不明で仕事環境,精神的要素も加わっていると考えられる非炎症性疾患と位置付けられていた。加えて,乙48(健康ライブラリーイラスト版「全身を激しい痛みが襲う線維筋痛症がよくわかる本」)の38頁の記載から明らかなとおり,線維筋痛症においては,きっかけと 原因をきちんと区別することが重要であるところ,乙47(慢性痛のサイエンス-脳からみた痛みの機序と治療戦略-)の85頁15~19行目の記載からも明らかなとおり,手術などはその「きっかけ」となることはあってもそれが「原因」として特定されているわけではない。 したがって,本件優先日ないし本件特許出願日当時の技術常識として, 線維筋痛症は外科的手術が原因と考えられていたなどという事実は存在 しない。 キ以上のとおり,本件発明3(構成要件3B)の「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」という用語をどのように解釈しても,被告医薬品が構成要件3Bを充足しないという結論に何ら変わりはない。 (2) 均等侵害の成否(争点4-2) ア被告準備書面(2)「第4の5」において述べたとおり,そもそも知財高裁平成28年(ネ)第10046号同29年1月20日特別部判決(いわゆる「オキサリプラチン事件」)において,特許法68条の2の実質同一の範囲に係る均等論の適用(ないしその類推適用)は明確に否定されている。したがって,各均等要件に関する原告主張の妥当性を検討するまでも なく,原告による均等侵害の主張に理由がないことは明らかであるから,被告においてこの点に関する更なる議論は不要である。 イ上記オキサリプラチン事件大合議判決においては,「延長登録出願の手続において,延長 告による均等侵害の主張に理由がないことは明らかであるから,被告においてこの点に関する更なる議論は不要である。 イ上記オキサリプラチン事件大合議判決においては,「延長登録出願の手続において,延長登録された特許権の効力範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がある場合には,法68条の2の実質同一が 認められることはない」とされており,その場合に均等侵害が成立する余地がないことが明らかにされている。また,同大合議判決において第5要件の類推適用を否定している趣旨は,これをそのまま適用すると実質同一の範囲が広がり過ぎ,権利者が不当に有利になる懸念があるためであるから,少なくとも特許法70条の技術的範囲の解釈において第5要件が成立 しない場合であれば,特許法68条の2の実質同一に関して均等侵害が成立する余地はないと考えられる。 しかるところ,まず被告準備書面(1)「第3の3」において詳述したとおり,本件特許権に係る12件の延長登録出願においては,「請求項4に..... 記載された神経障害による痛みである請求項1記載の鎮痛剤が............................ ,処分の対 象となった物及び用途である」,「請求項4に記載された鎮痛剤のうち,................. 痛みが神経障害による痛みであるものが.................. ,処分の対象となった用途である」,「請求項4に記載された鎮痛剤のうち,痛みが線維筋痛症であるも............................. のが.. ,処分の対象となった用途である」などと説明されている(乙1)。 かかる説明は,訂正前発明4に係る請求項に規定されている13項目「炎症性疼痛,神経障害による痛み,癌に .......... のが.. ,処分の対象となった用途である」などと説明されている(乙1)。 かかる説明は,訂正前発明4に係る請求項に規定されている13項目「炎症性疼痛,神経障害による痛み,癌による痛み,術後疼痛,幻想肢痛,火 傷痛,痛風の痛み,骨関節炎の痛み,三叉神経痛の痛み,急性ヘルペスおよびヘルペス後の痛み,カウザルギーの痛み,特発性の痛み,または線維筋痛症」の存在を明確に認識した上で,「神経障害による痛み」及び「線維筋痛症」のいずれかのみが対象用途であることを明言するものにほかならない。すなわち,延長登録出願手続における上記の説明は,処分の対象 となった医薬品の対象用途は,残りの11項目の選択肢(「炎症を原因とする痛み(炎症性疼痛)」及び「手術を原因とする痛み(術後疼痛)」を含む。)に含まれないことを明言しているに等しいといえる。 そして,被告医薬品の用途も処分対象品と同じく「神経障害性疼痛」及び「線維筋痛症に伴う疼痛」なのであるから,同様の理由により,当然に 本件発明3及び4に規定する「炎症を原因とする痛み(炎症性疼痛)」及び「手術を原因とする痛み(術後疼痛)」には含まれないという帰結になる。 このような経緯がありながら,特許法68条の2の実質同一の場面において,被告医薬品の用途が「炎症を原因とする痛み(炎症性疼痛)」ない し「手術を原因とする痛み(術後疼痛)」に含まれると主張することは,明らかに当該延長登録出願の手続における原告の言動と矛盾するものであり,上記大合議判決にいうところの「延長登録出願の手続において,延長登録された特許権の効力範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がある場合」に該当する。 ウ以上のことから,均等侵害に関する原告の主張に理由がないことは既に において,延長登録された特許権の効力範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がある場合」に該当する。 ウ以上のことから,均等侵害に関する原告の主張に理由がないことは既に 明らかといえるが,被告準備書面(1)「第2の3」の項において述べた本件訂正の経緯に照らせば,本件発明3及び4(構成要件3B,4B)において処置対象とする痛みは,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」のみであり,それ以外の痛み(訂正前発明4に係る請求項に列記されており,被告医薬品の用途に該当する「神経障害による痛み,線維筋痛症に伴う疼痛」を含 む。)は対象とされないことは明らかである。そして,このような本件訂正の経緯が,特許法70条の技術的範囲の均等解釈における第5要件の意識的除外に該当することは明らかである。 エそうである以上,上述のとおり,それよりも権利範囲が狭い(実質同一の範囲が広がり過ぎないような配慮を要する)特許法68条の2の実質同 一に関して,均等侵害が成立する余地はないことは明らかである。 以上より,被告医薬品に関して本件発明3及び4に対する均等侵害が成立し得ないことは明らかである。 2 本件発明3及び4に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点5) (1) 無効理由1(実施可能要件違反の有無)(争点5-1)原告の主張に従えば,本件発明3の「炎症を原因とする痛み」ないし「手術を原因とする痛み」という用語は,「神経障害による痛み」及び「線維筋痛症」を含む概念であるところ,上記第1の3(2)ア(無効理由1の解消の有無)で述べたとおり,本件化合物が,神経障害性疼痛や線維筋痛症などの 他の原因による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置という用途に対して有用性があ ろ,上記第1の3(2)ア(無効理由1の解消の有無)で述べたとおり,本件化合物が,神経障害性疼痛や線維筋痛症などの 他の原因による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置という用途に対して有用性があることを認識できない。したがって,本件発明3は,本件明細書等の記載によりその有用性を認識できる範囲を超えて規定されていることが明らかであり,その特許は実施可能要件違反の無効理由を包含することになる。 また,侵害論に関する原告の主張に従えば,本件発明4の「炎症性疼痛に よる痛覚過敏の痛み」及び「術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」という用語は,神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みを含む概念であるから,上記と同様の理由により,本件明細書等の記載によりその有用性を認識できる範囲を超えて規定されていることが明らかであり,その特許は実施可能要件違反の無効理由を包含することになる。 その上,このような原告の解釈は,上記1(1)において述べた本件訂正の経緯と明らかに矛盾するものであり,審判段階において,本件発明3及び4に関して特許維持と判断された審決の正当性が損なわれることになる。 以上のとおり,本件発明3及び4に関し,原告の主張に従えば,それらの特許はいずれも実施可能要件違反の無効理由を包含することになる。 (2) 無効理由2(サポート要件違反の有無)(争点5-2)原告の主張に従えば,本件発明3の「炎症を原因とする痛み」ないし「手術を原因とする痛み」という用語は,「神経障害による痛み」及び「線維筋痛症」を含む概念であるところ,上記第1の3(2)イで述べたとおり,本件化合物が,神経障害性疼痛や線維筋痛症などの他の原因による痛覚過敏又は 接触異痛の痛みの処置におけ よる痛み」及び「線維筋痛症」を含む概念であるところ,上記第1の3(2)イで述べたとおり,本件化合物が,神経障害性疼痛や線維筋痛症などの他の原因による痛覚過敏又は 接触異痛の痛みの処置における鎮痛効果を有することを当業者が認識し得ない。 したがって,本件発明3は,本件明細書等の記載によりその技術的課題を解決できると認識できる範囲を超えて規定されていることが明らかであり,その特許はサポート要件違反の無効理由を包含することになる。 また,侵害論に関する原告の主張に従えば,本件発明4の「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み」及び「術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」という用語は,神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みを含む概念であるから,上記と同様の理由により,その技術的課題を解決できると認識できる範囲を超えて規定されていることが明らかであり,そ の特許はサポート要件違反の無効理由を包含することになる。 その上,このような原告の解釈は,上記1(1)において述べた本件訂正の経緯と明らかに矛盾するものであり,審判段階において,本件発明3及び4に関して特許維持と判断された審決の正当性が損なわれることになる。 以上のとおり,本件発明3及び4に関し,原告の主張に従えば,それらの特許はいずれもサポート要件違反の無効理由を包含することになる。 (3) 無効理由3(訂正要件違反の有無)(争点5-3)原告の主張に従えば,本件発明3の「炎症を原因とする痛み」ないし「手術を原因とする痛み」という用語は,「神経障害による痛み」及び「線維筋痛症」を含む概念であるところ,本件優先日ないし本件特許出願日当時も現在も,神経障害性疼痛や線維筋痛症を含む意味での「炎症を原因とする痛み」 な いう用語は,「神経障害による痛み」及び「線維筋痛症」を含む概念であるところ,本件優先日ないし本件特許出願日当時も現在も,神経障害性疼痛や線維筋痛症を含む意味での「炎症を原因とする痛み」 ないし「手術を原因とする痛み」という概念は,技術常識として存在しないのであるから,そのような概念が本件明細書等に開示されている(ないし本件優先日当時の技術常識から自明である)と考えられる根拠は存在しない。 したがって,本件発明3に係る訂正は,本件明細書等に何ら記載されていない新たな技術的事項を追加するものであり新規事項の追加に該当する。 また,侵害論に関する原告の主張に従えば,本件発明4の「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み」及び「術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」という用語は,神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みを含む概念である。 したがって,上記第1の3(3)イで述べたことと同様の理由により,本件 発明4に係る訂正も,本件明細書等に記載されていない新たな技術的事項を追加するものであり,新規事項の追加に該当する。 以上のとおり,本件発明3及び4に関し,原告の主張に従えば新規事項の追加に該当し,それらの特許には訂正要件違反の無効理由が存在する。 第3 本件特許権の存続期間の延長登録 1 延長登録により存続期間が延長された本件特許権の効力は被告医薬品に及ぶ か(争点6)ア本件特許は,平成9年7月16日の出願に係るものであり,現時点において既にその特許権は20年の存続期間が満了している。したがって,本件特許権を基に被告医薬品に対して差止め等を求める場合には,本件発明の技術的範囲に含まれることを主張するのみでは足りず,被告医薬品の「成分,分 量,用法, 存続期間が満了している。したがって,本件特許権を基に被告医薬品に対して差止め等を求める場合には,本件発明の技術的範囲に含まれることを主張するのみでは足りず,被告医薬品の「成分,分 量,用法,用量,効能及び効果」が延長登録に係る「医薬品医療機器等法の承認処分の対象となった物」及び「用途」と同一であること(特許法68条の2)などを主張立証する必要がある。しかしながら,以下に述べるとおり,被告医薬品の物及び用途は,本件特許権の延長登録に係る「医薬品医療機器等法の承認処分の対象となった物」及び「用途」と同一でないことは明らか である。 この点に関し,例えば,最高裁平成26年(行ヒ)第356号同27年11月17日第三小法廷判決・民集69巻7号1912頁(いわゆる「アバスチン事件」)やオキサリプラチン事件大合議判決において判示されているように,特許法68条の2に規定する「物」及び「用途」は,医薬品医療機器 等法14条によりその品質,有効性及び安全性が審査される対象である医薬品及びその用途であることに争いはなく,同条2項3号柱書の趣旨に基づき,「(有効成分に限られない)成分,分量,用法,用量,効能及び効果」によって画されることとなる。 イしかるところ,まず,「医薬品医療機器等法の承認処分の対象となった物」 に関し,本件特許に係る12件の延長登録において対象として記載されている医薬品(処分の対象となった物)はいずれもリリカカプセル(25mg,75mg,150mg)である。これを踏まえて,処分対象物と被告医薬品を比較すると,甲5及び13に記載の成分表示からも明らかなとおり,両者の成分は全く異なっているのであるから,「成分,分量,用法,用量,効能 及び効果」によって画される医薬品が同一であるとは到底認められない。 及び13に記載の成分表示からも明らかなとおり,両者の成分は全く異なっているのであるから,「成分,分量,用法,用量,効能 及び効果」によって画される医薬品が同一であるとは到底認められない。 この点に関し,原告は,オキサリプラチン事件大合議判決の判示事項に言及しつつ実質同一性の判断においては,特許発明の内容(技術的特徴や作用効果)に照らして処分の対象となった物と被疑侵害品との差異が検討され,特許発明の内容に関連する差異がなければ,実質同一性が肯定される旨主張する。 しかし,被告医薬品は処分対象物と異なりOD錠であるところ,OD錠は口腔内で崩壊し有効成分が放出されることを特徴としており,水無しでも安全に飲めることや,そのことが有効成分の吸収性・有効性・保存安定性に悪影響を与えないという目的の見地から,有効成分以外の成分及びその構造が決せられるのに対し,カプセル剤の場合は,口の中で崩壊することなく,そ の形状を維持した状態のまま経口で摂取され,体内で胃液などによって効率よく分解され,有効成分を放出するという観点から有効成分以外の成分及びその構造が決せられるものである。このように,両者はその品質,有効性及び安全性に関する検討のポイントも異なるし,それに伴い有効成分以外の成分の選択や薬剤の設計思想も全く異なるものである。このような剤型の違い があるにもかかわらず,その相違を単なる添加成分の差異などとして剤型の相違が争点になっていないオキサリプラチン事件大合議判決の判示事項をそのまま当てはめることはできない。 その上,アバスチン事件最高裁判決の趣旨からも,医薬品としての実質的同一性の判断においては,新たな処分によって初めてその実施が可能となっ たか否か(品質,有効性及び安全性が認められたか) 。 その上,アバスチン事件最高裁判決の趣旨からも,医薬品としての実質的同一性の判断においては,新たな処分によって初めてその実施が可能となっ たか否か(品質,有効性及び安全性が認められたか)を基準にその同一性が認定されるべきことは明らかであり,その趣旨からも,品質,有効性及び安全性に関する検討のポイントや設計思想が全く異なるカプセル剤と口腔内崩壊錠(OD錠)を同一として扱うべきでないことは明らかである。そして,現在の特許実務においても,そのような考えに即して,OD錠とカプセル剤 が異なるものとして延長登録に関する特許庁の実務が運用されていること は,被告準備書面(1)「第3の2」において,乙30~32を示しつつ主張したとおりである。 ウ次に,「用途」に関し,被告準備書面(1)「第3の3」において述べたとおり,あえて13項目の痛み「炎症性疼痛,神経障害による痛み,癌による痛み,術後疼痛,幻想肢痛,火傷痛,痛風の痛み,骨関節炎の痛み,三叉神経 痛の痛み,急性ヘルペスおよびヘルペス後の痛み,カウザルギーの痛み,特発性の痛み,または線維筋痛症」が記載された訂正前発明4に係る請求項を挙げた上で,「請求項4に記載された神経障害による痛みである請求項1記........................... 載の鎮痛剤が...... ,処分の対象となった物及び用途である」,「請求項4に記載....... された鎮痛剤のうち,痛みが神経障害による痛みであるものが............................ ,処分の対象 となった用途である」,「請求項4に記載された鎮痛剤のうち,痛みが線維...................... 筋痛症であるものが......... ,処分の対象となった用 ,処分の対象 となった用途である」,「請求項4に記載された鎮痛剤のうち,痛みが線維...................... 筋痛症であるものが......... ,処分の対象となった用途である」などと説明されているのであるから(乙1),通常の日本語の解釈から,神経障害による痛み(ないし線維筋痛症に伴う痛み)以外の痛み(本件発明3及び4が対象とする炎症性疼痛,術後疼痛を含む。)がその対象に含まれないことは自明といえる。 したがって,本件特許に関する12件の延長登録出願の経緯に照らし,これらの延長登録出願に係る処分の用途は,本件発明3及び4には含まれず,処分対象物に関する一連の行為は,これらの請求項に係る延長登録の対象とはなり得ないこと(すなわち,本件発明3及び4はそもそも延長登録の対象とはなりえず,その本来の存続期間である満20年を経過した平成29年7 月16日満了を以って消滅していること)は明らかといえる。 この点,原告は,処分対象物が旧特許法67条2項の特許発明の実施に該当することを簡潔に説明しただけであるとか,訂正前発明4に係る請求項に列記された痛みは相互に重複するものであると述べるが,そのような趣旨であれば,例えば「請求項4に記載された鎮痛剤のうち,痛みが神経障害によ...... る痛み又は炎症性疼痛であるものが................ ,処分の対象となった用途である」とか 「請求項4に記載された鎮痛剤のうち,痛みが線維筋痛症による痛み又は術............. 後疼痛であるものが......... ,処分の対象となった用途である」のように説明すれば足りるのであり,このような簡潔な記載すら不可能であったという事情は何ら見出せない。 その上,上記第2の1(1 痛であるものが......... ,処分の対象となった用途である」のように説明すれば足りるのであり,このような簡潔な記載すら不可能であったという事情は何ら見出せない。 その上,上記第2の1(1)(構成要件3B,4Bの充足性)の項において述 べたとおり,審決の予告(乙25)における,「本件発明に係る鎮痛剤が,『炎症性疼痛』及び『術後疼痛』以外の請求項4に記載の各痛みの処置における鎮痛効果を有することを認識することができない」との判断を踏まえ,令和元年7月1日付け上申書(乙26〔9頁8~13行目〕)において,「被請求人は,訂正発明3及び4において,鎮痛剤の処置対象である痛みを,審. 決の予告において実施可能要件及びサポート要件を満たすと判断された『炎.................................. 症を原因とする痛み(炎症性疼痛)』及び『手術を原因とする痛み(術後疼.................................. 痛)』に限定した........ 。したがって,訂正発明3及び4は実施可能要件及びサポート要件を充足する」と主張し,訂正が認められた経緯があるのであるから,訂正前発明4に係る請求項に列記された痛みは相互に重複するとの主張は, 明らかにこのような本件訂正の経緯に反するものである。 エ以上のことから,被告医薬品の物及び用途は,処分対象物と同一ではなく,延長登録により存続期間が延長された本件特許権の効力は被告医薬品に及ばないことは明らかである。 2 延長登録の無効理由の有無(争点7) 甲1の「乙区」の表示によれば,ファイザー株式会社が専用実施権の登録がなされたのは平成22年5月6日であるが,当該12件の延長登録においては,いずれも当該専用実施権の設定登録時以降の 7) 甲1の「乙区」の表示によれば,ファイザー株式会社が専用実施権の登録がなされたのは平成22年5月6日であるが,当該12件の延長登録においては,いずれも当該専用実施権の設定登録時以降のみではなく,ファイザー株式会社が本件特許に関して何らの権利も有していなかった期間を含めて算定されている。 この点,そもそも延長登録制度の趣旨は,発明の保護と利用の調和を図るこ とによって産業の発達に寄与せんとする特許制度の目的に鑑みれば,特許権者が特許発明を実施する意思・能力があるにもかかわらず特許発明の実施ができなかった場合に,(5年を限度として)特許発明の実施をすることができなかった期間(旧特許法67条の3第1項1号にいう「政令で定める処分」を受けるために必要であった期間)に限って存続期間の延長を認めることにより,発 明者と第三者との利益の調和を図ることである。延長登録制度は本来特許法が認める20年の存続期間を例外的に延長し,対世的に第三者の使用を制限する制度なのであるから,例えば,知財高裁平成20年(行ケ)第10486号同21年10月28日判決 (いわゆる「クラビット錠事件」)において判示されているとおり,延長登録期間は,第三者の予測可能性の観点などから,客観的 に明らかな基準により確定されるべきことが当然といえる。 そして,旧特許法125条の2第1項2号において,「その延長登録が,その特許権者又はその特許権についての専用実施権若しくは登録した通常実施権を有する者が第67条第2項の政令で定める処分を受けていない場合の出願に対してされたとき」と規定されている趣旨に鑑みれば,延長登録のための 試験は専用実施権者らによってなされなければならないことはいうまでもない。当該処分のための試験を行ってい いない場合の出願に対してされたとき」と規定されている趣旨に鑑みれば,延長登録のための 試験は専用実施権者らによってなされなければならないことはいうまでもない。当該処分のための試験を行っている者が特許権者以外の者である場合,専用実施権などの実施許諾が存在しなければ,その第三者の行為が,特許権者の意思及び能力によるものと客観的に判断することは不可能であるから,現に当該第三者が専用実施権等の設定を受けている期間に限って,旧特許法125条 の2第1項3号に規定する「その特許発明の実施をすることができなかつた期間」に該当すると解するほかない。この点,原告の主張するファイザー株式会社が,原告の日本法人であるワーナー・ランバート株式会社による帯状庖疹後神経痛に関する臨床試験計画の届出後にこれを買収したという会社再編に関する事情は,具体的な本件化合物を有効成分とする特定の医薬品の製造販売の 意思を客観的に示すものとはいい難く,このような事情のみによって,ファイ ザー株式会社の行為が特許権者の意思及び能力によるものと客観的に判断することは不可能である。 したがって,少なくとも本件において,旧特許法67条の3第1項3号ないし旧特許法125条の2第1項3号に規定する「その特許発明の実施をすることができなかつた期間」の始期は,ファイザー株式会社が専用実施権の設定を 受けた平成22年5月6日と解釈するほかない。これに従ってその期間を正しく計算すると,用途を「帯状疱疹後神経痛」とする3件の延長登録出願については,ファイザー株式会社が原告の専用実施権者として処分に必要な試験等の手続を行った期間は1日も存在しないことになり,他の9件に関しても延長登録が認められる期間自体は存在するものの,本来認められ得る期間は,現に登 式会社が原告の専用実施権者として処分に必要な試験等の手続を行った期間は1日も存在しないことになり,他の9件に関しても延長登録が認められる期間自体は存在するものの,本来認められ得る期間は,現に登 録されている期間よりいずれも短く,いずれも現時点(ないし本件訴訟提起の時点)において既にその期間は満了していることになる(用途が「末梢性神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛を除く)」である3件については平成30年1月5日に,「線維筋痛症に伴う疼痛」である3件については令和元年8月31日に,「神経障害性疼痛(末梢性神経障害性疼痛を除く)」である3件につい ては令和2年5月7日に,それぞれ満了していることになる。)。 以上のことから,延長期間の減縮を目的とする訂正の再抗弁が成立する余地もなく,延長登録無効の抗弁ないし権利濫用の抗弁が成立し,これらの延長登録に基づく権利行使が認められる余地はない。

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