平成15(行ウ)7等 第二次納税義務告知処分取消等請求事件(甲事件),損害賠償請求事件(乙事件)

裁判年月日・裁判所
平成17年7月25日 金沢地方裁判所 租税
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判決文本文29,417 文字)

主文 1 原告らの甲事件請求及び乙事件請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 原告らの請求 1 甲事件(1) 被告金沢国税局長が原告らに対し,平成13年12月20日付けでした納税者P1の滞納国税に係る連帯納付義務者P2の第二次納税義務に基づく告知処分をいずれも取り消す。 (2) 被告金沢国税局長が原告らに対し,平成14年2月7日付けでした納税者P1の滞納国税に係る連帯納付義務者P2の第二次納税義務に基づく督促処分をいずれも取り消す。 (3) 被告国は,ア原告P3に対し,6680万2350円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員をイ原告P4に対し,4839万5900円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員をウ原告P5に対し,4713万1800円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員をエ原告P6に対し,4712万8400円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員をオ原告P7に対し,8661万5220円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員をカ原告P8に対し,1316万9188円及び内金56万5827円に対する平成14年3月12日から,内金130万0022円に対する平成14年3月27日から,内金1130万3339円に対する平成14年4月10日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員をキ原告P9に対し,5302万69 万0022円に対する平成14年3月27日から,内金1130万3339円に対する平成14年4月10日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員をキ原告P9に対し,5302万6932円及び内金1014万8242円に対する平成14年3月12日から,内金4287万8690円に対する平成14年6月20日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 2 乙事件被告国は,(1) 原告P3に対し,6680万2350円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を(2) 原告P4に対し,4839万5900円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を(3) 原告P5に対し,4713万1800円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を(4) 原告P6に対し,4712万8400円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を(5) 原告P7に対し,8661万5220円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を(6) 原告P8に対し,1316万9188円及び内金56万5827円に対する平成14年3月12日から,内金130万0022円に対する平成14年3月27日から,内金1130万3339円に対する平成14年4月10日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を(7) 原告P9に対し,5302万6932円及び内金1014万8242円に対する平成14年3月12日から,内金4287万8690円に対する平成14年6月20日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を P9に対し,5302万6932円及び内金1014万8242円に対する平成14年3月12日から,内金4287万8690円に対する平成14年6月20日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告金沢国税局長が,被相続人P10の相続財産に係る相続税について,相続税法34条1項に基づく連帯納付義務を負担するものとされたP2から財産の贈与を受けた原告らに対して,原告らが国税徴収法39条に基づく第二次納税義務を負うとして,納付通知書による告知処分及び納付催告書による督促処分を行い,原告らの財産を差押え,取り立て,一部の原告からは納付を受けたところ,原告らが,それぞれに対する上記各処分は違法であるとして,被告金沢国税局長に対して各処分の取消を求めるとともに,被告国に対し,取立あるいは納付を受けた金銭が不当利得にあたるとしてその返還を求め(甲事件),更に,大野税務署長及び金沢国税局長がP10の相続人であるP1に対してした上記相続税の延納許可及び延納条件変更許可(以下「延納許可等」という。)が違法であり,これによって原告らは,財産の差押え,取立を受け,一部の原告は納付を余儀なくされるという損害を被ったとして,被告国に対し,国家賠償法1条1項に基づく賠償を求めた(乙事件)事案である。 2 前提事実(争いがないか,証拠[各項末尾記載]及び弁論の全趣旨により明らかに認められる。)(1) 当事者ア被相続人P10は,全財産を養子であるP1に相続させる旨の公正証書遺言を残し,平成3年7月19日に死亡した。 イ相互タクシー株式会社(以下「相互タクシー」という。)は,自動車による旅客運送事業等を目的として,大正14年9月28日に設立された株式会社であり,別紙 平成3年7月19日に死亡した。 イ相互タクシー株式会社(以下「相互タクシー」という。)は,自動車による旅客運送事業等を目的として,大正14年9月28日に設立された株式会社であり,別紙相互タクシーグループ一覧表記載の会社を傘下に置いている。 ウ P2は,P10の相続人の1人(配偶者)であるが,平成14年5月12日に死亡した。 エ原告P3及び同P7は,いずれも,P2の妹であるP11(平成7年2月5日死亡)の子,原告P4は同P3の妻,同P5及び同P6は同P3の子,同P8は同P7の妻,同P9は同P7の子である。原告らは,それぞれP2から,別紙贈与目録の贈与金額欄記載の現金贈与(以下「本件贈与」という。)を受け,同目録の贈与税額欄記載の各贈与税を支払った。 (2) 本件紛争の経緯ア P10からの相続について(ア) P10は,平成2年2月11日及び同年9月30日,自己の全財産をP1に相続させる内容の公正証書遺言2通を作成した。(甲18,19)(イ) P2は,P10死亡後の平成3年11月15日,P1に対し,P10の相続財産(以下「本件相続財産」という。)について遺留分減殺請求をした。 P1とP2は,平成4年4月30日,P1がP2に対して,相互タクシーの株式50万株を引き渡し,民法1041条による価額弁償として25億円を支払うことによってP2の遺留分問題を解決する旨の合意をした。その後,P2は,P1から,上記合意内容の履行を受けた。 イ P1に対する相続税の課税経緯について(ア) P1は,平成4年1月20日,大野税務署長に対し,納付すべき税額を216億9714万4200円とする相続税(以下「本件申告分」という。)の申告書を提出した。(甲 経緯について(ア) P1は,平成4年1月20日,大野税務署長に対し,納付すべき税額を216億9714万4200円とする相続税(以下「本件申告分」という。)の申告書を提出した。(甲46)(イ) P1が,同年7月16日,大野税務署長に対し,遺留分減殺請求及び死後認知による法定相続人の増加等を理由として,本件申告分につき更正請求をしたところ,これを受けた大野税務署長は,同年9月3日,P1の納付すべき税額を57億0804万1300円減額する更正処分を行い,P1の納付すべき本件申告分の相続税額を,159億8910万2900円とした。(甲48の1)(ウ) 大野税務署長は,平成5年2月19日,P1に対し,相続財産の評価に誤りがあったこと等を理由として,相続税の納付税額を増額する更正処分を行い,P1の納付すべき相続税額を,36億8892万1500円増加させ,196億7802万4400円とした。(甲48の2。以下,この増加分を「本件更正分」という。)(エ) さらに,大野税務署長は,平成6年8月8日,相続財産の評価に異動があったことを理由とする減額更正処分を行い,P1の納付すべき本件更正分相続税額を,34億1288万4500円とした(本件申告分と合わせ,195億9141万4900円)。(甲48の3)(オ) P1は,本件申告分につき平成4年1月20日に,本件更正分につき平成5年3月5日に,それぞれ相続税法39条1項に基づく延納許可申請をした。これを受けて大野税務署長は,同条2項に基づき,本件申告分について平成4年3月25日に,本件更正分について平成5年9月28日に,それぞれ延納を許可した。その後の本件申告分延納の条件変更及び納付の経緯は別表1記載のとおりであり,本件更正分 づき,本件申告分について平成4年3月25日に,本件更正分について平成5年9月28日に,それぞれ延納を許可した。その後の本件申告分延納の条件変更及び納付の経緯は別表1記載のとおりであり,本件更正分延納の条件変更及び納付の経緯は別表2記載のとおりである。 (甲47,甲50)(カ) P1は,延納の許可を受けた本件申告分に係る分納金のうち,分納回数4回目ないし7回目の各分納金をそれぞれの分納期限までに完納しなかった。 そこで大野税務署長は,平成11年2月22日,P1に対し,その延納分納税額につき,国税通則法(以下「通則法」という。)37条に基づき督促状を送付した。 しかし,P1は,同督促に係る延納分納税額を納付しなかった。 (キ) さらに,P1は,本件更正分に係る分納金のうち,分納回数3回目ないし6回目の各分納金を,それぞれの分納期限までに完納しなかった。そこで大野税務署長は,平成11年3月31日,P1に対し,上記延納分納税額につき,通則法37条に基づき,督促状を送付した。 (ク) 同年5月31日,大野税務署長は,相続税法40条2項に基づき,P1の相続税に対して行っていた延納許可を取り消し,同日,P1にその旨を通知した。P1は,取消にかかる相続税を同年6月7日までに完納しなかったので,同日,大野税務署長は,通則法37条に基づき,督促状を送付した。 ウ P2に対する相続税の課税経緯等について(ア) P2は,平成4年1月20日,大野税務署長に対して,上記遺留分減殺請求権行使による将来の申告内容を示した申告書を提出し,その後,同年7月27日,同遺留分減殺請求について合意したところに基づき,相続税の申告書を提出したが,相続税法19条の2により,P2の納付すべき相続税額は0円であった 告内容を示した申告書を提出し,その後,同年7月27日,同遺留分減殺請求について合意したところに基づき,相続税の申告書を提出したが,相続税法19条の2により,P2の納付すべき相続税額は0円であった。(甲22,甲23)(イ) 大野税務局長は,平成4年9月3日,平成5年2月1日及び平成6年8月8日に更正処分を行ったが,これらの処分によるP2の納付税額は0円であった。なお,最終の更正処分による「取得した財産の価額」は,80億9250万円であった。(甲23から甲25)(ウ) その後,上記2の(2)のイの(カ)及び(キ)記載のP1の未納を受け,大野税務署長は,平成11年3月1日,P2に対し,「あなたは,他の相続人と共にP10殿の財産を相続しましたが,P1殿の相続税については,相続税法第34条第1項の規定により,相続によって受けた利益の価額を限度として,他の相続人と連帯して納付する責任があるのでお知らせします。」と記載された「相続税の連帯納付義務のお知らせ」(以下「本件お知らせ」という。)を送付した。(甲26)(エ) また,大野税務署長は,同月31日,P2に対し,本件申告分に係る延納許可税額のうち,分納回数4回目ないし7回目の延納分納税額各8億0162万4000円及び利子税11億4216万6900円並びに本件更正分に係る延納許可税額のうち,分納回数3回目ないし6回目の延納分納税額各1億8473万2000円及び利子税2億7395万8200円について,それぞれ相続税法34条1項に基づき,連帯納付義務に係る督促状を送付した(以下「連帯督促処分1」という。)。(甲27の1ないし8)(オ) さらに,大野税務署長は,同年6月7日,P2に対し,P1に対する上記延納許可取消しに係る分の督促未了の 状を送付した(以下「連帯督促処分1」という。)。(甲27の1ないし8)(オ) さらに,大野税務署長は,同年6月7日,P2に対し,P1に対する上記延納許可取消しに係る分の督促未了の本件申告分相続税額103億7772万2000円及び利子税1億4536万6000円並びに本件更正分相続税額24億8923万8000円及び利子税1754万1000円について,それぞれ相続税法34条1項に基づき,連帯納付義務に係る督促状を送付した(以下「連帯督促処分2」という。)。(甲28の1,2)(カ) P2は,大野税務署長に対し,同年4月23日に連帯督促処分1について,同年6月25日に連帯督促処分2について,それぞれ異議申立をしたが,大野税務署長は,同年7月5日及び9月28日に,これらの申立を棄却又は却下した。(甲29ないし甲32)(キ) P2は,これを不服として,同年7月16日及び10月20日,国税不服審判所長に対し,審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成12年11月20日付けで,これらを棄却した。(甲33ないし36)(ク) P2は,同年12月21日,金沢地方裁判所に対し,通則法43条3項に基づき大野税務署長から徴収の引継ぎを受けた被告金沢国税局長を被告として,連帯督促処分1及び2の取消し等を求める訴えを提起したが,平成14年2月18日,請求の一部を却下し,一部を棄却する旨の判決の言渡しを受けた(なお,これに対してはP2が控訴し,現在,名古屋高等裁判所金沢支部において係属中である。)。(乙1)エ原告らに対する第二次納税義務の課税経緯について(ア) 被告金沢国税局長は,平成13年12月20日付けで,原告らに対し,徴収法39条に基づき,納期限を平成14年1月21 エ原告らに対する第二次納税義務の課税経緯について(ア) 被告金沢国税局長は,平成13年12月20日付けで,原告らに対し,徴収法39条に基づき,納期限を平成14年1月21日とする第二次納税義務の各納付告知処分(以下「本件告知処分」という。)をした(本件告知処分による納付限度額〔納付すべき金額〕は,別紙納付通知書目録記載のとおり。)。(甲1の1ないし7)(イ) 原告らは,本件告知処分に係る税額を,その納期限である平成14年1月21日までに納付しなかった。そこで被告金沢国税局長は,原告らに対し,同年2月7日付けで納付催告書による督促処分(以下これを「本件督促処分」といい,本件告知処分と併せて「本件告知処分等」という。)をした。(甲2の1ないし7)(ウ) 原告らは,第二次納税義務者として,被告金沢国税局長から,別紙差押及び納付目録記載のとおり,普通預金の払戻請求権並びに満期保険金及び解約返戻金の支払請求権を差し押さえられ,また,原告P9は現金を納付した(なお,原告P9に係る株式会社大和銀行千里北支店における被差押債権は,確定利息の払戻請求権も含み,確定利息分79円も取り立てられている。)。 (エ) 原告らは,本件告知処分等を不服として,本件告知処分につき平成14年1月15日,本件督促処分につき同年2月27日,それぞれ国税不服審判所長に対し,審査請求をしたが,国税不服審判長は,これらの審査請求を併合の上,平成15年6月26日,いずれも棄却する旨の裁決をした。(甲5ないし甲7)第3 主要な争点及びそれに対する当事者の主張 1 主要な争点(1) 国税徴収法(以下「徴収法」という。)39条が適用されるのが,滞納者から譲受人への譲渡が詐害行為又はそれに準ずる場合に 第3 主要な争点及びそれに対する当事者の主張 1 主要な争点(1) 国税徴収法(以下「徴収法」という。)39条が適用されるのが,滞納者から譲受人への譲渡が詐害行為又はそれに準ずる場合に限定されるか(甲事件争点(1))(2) 原告らに対する本件告知処分等が徴収法39条の補充性の要件を満たすか(甲事件争点(2))(3) 徴収法39条にいう「法定納期限の1年前の日」とはいつか(甲事件争点(3))(4) P2に対する課税処分に違法があった場合,本件告知処分等に違法性が承継されるか(甲事件争点(4))(5) P2に対する課税処分の違法性の有無(甲事件争点(5))(6) P2に対する国税徴収権が時効消滅したか(甲事件争点(6))(7) P1に対してした延納許可等が国家賠償法上違法か(乙事件争点(1))(8) 原告らが被った損害及び因果関係の有無(乙事件争点(2)) 2 当事者の主張(1) 徴収法39条の適用が適用されるのが,滞納者から譲受人への譲渡が詐害行為又はそれに準ずる場合に限定されるか(甲事件争点(1))(原告らの主張)徴収法39条は,次のアないしウの理由から,詐害行為又はこれに準ずる場合,すなわち,①滞納者が贈与等の際に,自己に納税義務があること及びこれを滞納することによって自己の財産に対する差押処分等がなされる可能性が高いことを現実に認識していた場合で,②滞納者が,上記の認識を前提として,差押処分等を免れる目的をもって贈与等を行った場合に限定して適用されるべきである。 そして,エのとおり,本件贈与は,詐害行為又はこれに準ずる場合でないから,本件告知処分等は違法である。 ア第二次納税義務制度は,形式的に第三 限定して適用されるべきである。 そして,エのとおり,本件贈与は,詐害行為又はこれに準ずる場合でないから,本件告知処分等は違法である。 ア第二次納税義務制度は,形式的に第三者に財産が帰属している場合であっても,実質的には納税者にその財産が帰属していると認めても,公平を失しないときにおいて,形式的な権利の帰属を否認して,私法秩序を乱すことを避けつつ,その形式的に権利が帰属している者に対して補充的に納税義務を負担させることにより,徴税手続の合理性を図ることが,その制度趣旨である。 イ通則法42条は,民法424条の詐害行為取消権の規定を国税の徴収に関して準用することを定めている。そして,徴収法39条及び通則法42条の沿革は次のとおりである。 (ア) 国税徴収法(明治30年法律第21号)には,15条に,詐害行為取消と同趣旨の規定があった。 (イ) 昭和26年法律第78号の改正により,国税徴収法4条の7に,第二次納税義務と同旨の規定が新設された。もっとも,納税者の悪意(「財産ノ差押ヲ免ルル為」)が要件とされていた。新設の目的は,譲受人が譲渡人の悪意を知らないために詐害行為として取り消せない事例が多く,これに対処することと,訴訟手続ではなく行政手続で簡易迅速な徴収を図ることであると説明されている。 (ウ) 国税徴収法は昭和34年に全面改正された(同年法律第147号)。それまでの4条の7及び15条はいずれも廃止され,39条及び178条(現在の通則法42条と同旨の規定)が設けられた。 (エ) 昭和37年に通則法が制定されたが,その際,徴収法178条が廃止され,同旨の規定が通則法42条に設けられた。 以上の沿革によれば,民法424条の詐害行為 た。 (エ) 昭和37年に通則法が制定されたが,その際,徴収法178条が廃止され,同旨の規定が通則法42条に設けられた。 以上の沿革によれば,民法424条の詐害行為取消を基本としつつ,訴訟によらずに行政手続によって徴収できるようにすること,そのことによって譲受人の利益を不当に侵害することのないように徴収権の確保と私法秩序の保持との調整を図りながら法改正が行われてきたということができ,徴収法39条と通則法42条で準用されている民法424条が,性質を同じくする制度であることが明らかである。 ウ 「国税徴収法精解」(財団法人大蔵財務協会発行)の解説について(ア) 徴収側の有権解釈が記載されている国税徴収法精解(財団法人大蔵財務協会発行,編者代表吉国二郎,以下「精解」という。)によると,「この条(徴収法39条)においては,『債権者を害することを知り』の明文の規定はないが,詐害行為の取消しをすることができる場合とほとんど同様の事情にあるとみなし得る場合及びこれに準ずる場合に,この条が適用されると考えて差し支えない」とされている。 (イ) 精解の記載に反する解釈をして税の徴収をされることは許されるべきではなく,精解の記載に反した本件告知処分等は,信義則違反,権利濫用として許容されるべきものではない。 エ本件へのあてはめ本件贈与は,詐害行為に該当しないし,これに準ずる場合でもない。 すなわち,P2は,P1と別個に相続税の申告を行っており,P1の申告内容,相続税額,納税の方法・時期,延納申請・許可の有無並びにその内容,延納期間及び担保の有無・内容等について一切知らず,かつ,本件お知らせが来るまで自己に連帯納付義務が存在すること り,P1の申告内容,相続税額,納税の方法・時期,延納申請・許可の有無並びにその内容,延納期間及び担保の有無・内容等について一切知らず,かつ,本件お知らせが来るまで自己に連帯納付義務が存在すること等を全く認識していなかった。よって,P2には,連帯納付義務に基づく徴収を免れる目的,租税回避の目的をもって本件贈与をする,という詐害意思は全くなかった。 (被告らの主張)ア徴収法39条の要件として,明文に反してまで「納税者の詐害意思」を持ち込まなければならない理由はない。 イ通則法42条との関係について昭和34年における徴収法の全面改正において,第二次納税義務について徴収法39条が設けられたのとは別に,詐害行為取消についての旧徴収法15条と同旨の規定が178条として設けられたこと,その後の昭和37年における通則法の創設に伴い,徴収法178条が削除され,通則法42条において詐害行為取消の規定が定められたにもかかわらず,徴収法39条が存続されたことから,第二次徴収義務と詐害行為取消は本質的に異なる制度であるというべきである。 (2) 原告らに対する本件告知処分等が徴収法39条の補充性の要件を満たすか(争点(2))(原告らの主張)ア補充性について本件告知処分等をするためには,徴収法39条に規定されているとおり,P2に対して,「滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる」こと,すなわち「補充性」が必要である。 イ P2との関係での補充性について被告金沢国税局長は,P2の銀行預金及びP2がP10から相続した相互タクシー株式会社の株式50万株等を差し押さえたが,P2の固有財産である同社の株式54万867 での補充性について被告金沢国税局長は,P2の銀行預金及びP2がP10から相続した相互タクシー株式会社の株式50万株等を差し押さえたが,P2の固有財産である同社の株式54万8672株(相続税評価時の1株1万1185円×104万8672株=117億2939万6320円)を差し押さえていないから,本件告知処分は,補充性に違反している。 ウ P1との関係での補充性について原告らに対する第二次納税義務は,究極的には,P1の相続税の徴収の確保を図ることを目的としており,本来の納税義務者であるP1から相続税が徴収可能であれば,第二次納税義務を追及する必要がないから,原告らに対して第二次納税義務を追及するための要件としての補充性は,P1との関係でも充足していることを要すると解すべきである。 そして,本来の納税義務者であるP1から相続税を徴収できなかったのは,大野税務署長がP1に対して延納を許可した際の担保評価及びその後の担保の管理に誤りがあったからである。そうすると,原告らとの関係においては,第二次納税義務の要件としての「補充性」は満たしていないというべきであり,担保からの徴収不可能な状態を自ら招来した被告らが「補充性」があると主張するのは,信義則に違反し,あるいは権利の濫用として許されないというべきである。 (被告らの主張)ア補充性について「徴収すべき額に不足すると認められる場合」(徴収法39条)とは,滞納処分により徴収できるものの価額が,納税者の国税の総額に満たないと認められる場合をいう。 そして,その判定は,滞納処分を現実に執行した結果に基づいてする必要はない。すなわち,第二次納税義務者に対して納付通知書(徴収法32条1項 の総額に満たないと認められる場合をいう。 そして,その判定は,滞納処分を現実に執行した結果に基づいてする必要はない。すなわち,第二次納税義務者に対して納付通知書(徴収法32条1項)を発するときの現況において,滞納処分を行うとすれば徴収できるであろう価格を算定して行えばよいのである(基本通達39条関係1)。 イ P2との関係での補充性について原告らに対して納付通知書が発せられた平成13年12月20日において,P2の連帯納付義務の残高は76億8775万1334円であった。他方,P2所有にかかる相互タクシーの株式については,同年11月28日に純資産価額方式により評価を行った結果,1株807円,総額8億4627万8304円と評価し,その他の財産についても,納付通知書発出当時の現況に基づいて算出した結果,P2に帰属する財産の価格は,合計12億6933万4152円となった。 よって,納付通知書発出当時において,P2の財産に滞納処分を執行してもなおその徴収すべき税額に不足することは明らかであった。 ウ P1との関係での補充性について本件においては,徴収法39条における「滞納者」は,P2であり,P1との関係で補充性を論ずる余地はない。 (3) 徴収法39条にいう「法定納期限の1年前の日」とはいつか(甲事件争点(3))(原告らの主張)ア(ア) 徴収法39条が,納税者から「法定納期限の1年前の日」以降に贈与等の利益を受けた者に滞納国税の第二次納税義務を負わせたのは,納税を免れるために財産隠しをする期間としては,法定納期限の1年前からととらえておけばよい,という考えに基づくものである。したがって,本件における「法定納期限の1年前の日」 納税義務を負わせたのは,納税を免れるために財産隠しをする期間としては,法定納期限の1年前からととらえておけばよい,という考えに基づくものである。したがって,本件における「法定納期限の1年前の日」は,平成11年3月31日付け督促状のP2への送達日(同年4月1日)又はP2による財産隠しが現実的に可能な状態となった本件お知らせのP2への送達日(同年3月2日)と解すべきであり,いずれにしても,本件贈与はそれ以前になされたものであるから,原告らに第二次納税義務を負わせることはできない。 (イ) 仮に,「法定納期限の1年前の日」を形式的に相続税の場合にも適用すると,相続開始前の相続人の固有財産からの贈与までが対象となってくることになり,不合理である。特に本件では,連帯納付義務についての第二次納税義務という極めて特異なケースであるところ,被告らの主張どおりに解すると,「遺留分減殺請求についての合意成立以前にP2がもし贈与をした場合,贈与財産は当然固有財産であるが,この場合に贈与を受けた者が第二次納税義務を負うことになる」「P10の生前にP2から固有財産の贈与を受けた者が第二次納税義務を負うことになる」という徴収法39条がおよそ予定していない結論に達することになる。 (ウ) さらに,「法定納期限の1年前の日」を平成4年1月20日(P10が死亡した平成3年7月19日から6か月後)の1年前である平成3年1月20日と解すると,本件お知らせや督促状がP2に送達された平成11年3月2日あるいは同年4月1日から,実に8年以上も遡って,P2から贈与を受けた者が第二次納税義務の対象となりうるという異常な結果を招来することになる。このような事態は,徴収法39条の想定外であるから,本件において上記解釈をすることは誤りである。 ら贈与を受けた者が第二次納税義務の対象となりうるという異常な結果を招来することになる。このような事態は,徴収法39条の想定外であるから,本件において上記解釈をすることは誤りである。 イ連帯納付義務者に対する適正手続との関係(ア) P2に対する相続税法34条1項の連帯納付義務に基づく徴収手続において,納税の告知がなされていない。P2に対しては,本件お知らせが送付されただけである。しかし,適正手続保障の観点から,連帯納付義務者に対し,納税金額,納期限及び納付場所を記載した納税の告知が必要である。 (イ) そして,納期限を明示した告知がなされておれば,「法定納期限の1年前の日」とは,少なくとも「告知に明示された納期限の1年前」となるはずである。さらに,連帯納付義務者,第二次納税義務者の置かれた立場に鑑みれば,「法定納期限の1年前」とは,「告知に明示された納期限」と解すべきである。 (ウ) しかし本件においては,P2に対する納税の告知がなされていないから,「法定納期現の1年前」は定まっておらず,原告らに第二次納税義務を負わすことはできない。 (被告らの主張)ア相続税法34条1項の連帯納付義務は,本来の納税義務と共に同一の租税債務を履行するという共通の目的を有し,相続人等の固有の相続税の納税義務が確定すれば,連帯納付義務も自動的に確定するものであるから,連帯納付義務に係る国税の法定納期限は,本来の納税義務者の国税の法定納期限と同日と解さざるを得ない。 イよって,P2の連帯納付義務に係る国税の法定納期限は,本来の納税義務者であるP1の相続税の法定納期限である平成4年1月20日であり,その1年前の日は,平成3年1月20日であるから,その後になされた本件贈 て,P2の連帯納付義務に係る国税の法定納期限は,本来の納税義務者であるP1の相続税の法定納期限である平成4年1月20日であり,その1年前の日は,平成3年1月20日であるから,その後になされた本件贈与を受けた原告らは第二次納税義務を負う。 ウ連帯納付義務者に対する適正手続との関係そもそも,相続税法34条1項の連帯納付義務は,相続税徴収の確保を図るため,法律上当然に生ずるものであるから,連帯納付義務につき格別の確定手続を要するものではない。相続人等の固有の相続税の納税義務が確定すれば,国税の徴収に当たる所轄庁は,連帯納付義務者に対して徴収手続を行うことが許される。 よって,連帯納付義務者に対する告知処分が必要であることを前提とする原告らの主張は失当である。 (4) P2に対する課税処分に違法があった場合,本件告知処分等に違法性が承継されるか(甲事件争点(4))(原告らの主張)滞納処分を組成する各行政処分は,租税債権の強制的満足という目的を達成するための一連の行為であるから,先行行為の違法性は,後行行為に承継されると解すべきである。 よって,P2に対する督促処分に基づき連帯納付義務を追及することが違法であれば,本件告知処分はその前提を欠き,違法として取り消されるべきである。 (被告らの主張)第一次課税処分であるP2への連帯納付義務の追及と第二次課税処分である本件告知処分等とは別個の処分であるから,第一次課税処分に瑕疵があり違法であるとしても,その違法性は第二次課税処分に承継されるいわれはない。よって,第二次課税処分義務者が,第二次課税処分に第一次課税処分の違法性が承継されたものとして,これを理由に,第二次課税処分の無効確認若 としても,その違法性は第二次課税処分に承継されるいわれはない。よって,第二次課税処分義務者が,第二次課税処分に第一次課税処分の違法性が承継されたものとして,これを理由に,第二次課税処分の無効確認若しくは取消しを求めることは許されない。 (5) P2に対する課税処分の違法性の有無(甲事件争点(5))(原告らの主張)ア P2に連帯納付義務があるとした違法大野税務署長及び被告金沢国税局長は,P1に延納許可及び延納条件変更許可をした際に充分な担保を徴したから,これによって相続税は担保から回収すべきであり,回収されなければならない。したがって,連帯納付義務を追及する必要がないので,延納が許可された場合には,そもそも相続税法34条は適用できないと解すべきである。 イ担保徴収手続違反の違法大野税務署長及び被告金沢国税局長は,P1から充分な担保を徴した上で延納許可及び延納条件変更許可をしたのであるから,P1が納付すべき相続税は,これによって確実に徴収されるはずであった。これができなかったのは,大野税務署長及び被告金沢国税局長が,延納及び延納条件変更の許可に際して十分な担保を徴すべきことを定めた相続税法38条等の法令に違反したためである。そうすると,被告金沢国税局長が自らの法律違反を棚に上げてP2の連帯納付義務を追及することは,信義則違反,徴収権の濫用として許されない。 ウ P2が納付すべき税額が不明である違法(ア) P2が納付すべき税額は,当該相続によって取得した財産に係る相続税について,当該相続により受けた利益の価額に相当する金銭を限度とする。 (イ) P10の相続によってP2が取得した財産の価額は80億9250万円(①)であっ て取得した財産に係る相続税について,当該相続により受けた利益の価額に相当する金銭を限度とする。 (イ) P10の相続によってP2が取得した財産の価額は80億9250万円(①)であった。そして,P2の相続税額は55億3215万5490円(②),配偶者としての税額軽減額が55億3215万5490円(③),差引相続税額が零円(④)であった。 (ウ) 原告らは,P2が「P10の相続によって受けた利益の価額」は,①から②を控除した25億6034万4510円であると考える。しかし,①から④を差し引いた80億9250万円であるとの考え方もあり得るのであって,P2が納付すべき税額が不明である。 エ確定手続及び納税告知がなされていない違法(ア) P2に対する連帯納付義務について,確定手続,少なくとも納税告知が必要であり,これがなされていないP2に対する督促処分は違法である。 (イ) P2に対して確定手続,少なくとも納税告知がなされなければ,督促処分はP2にとって不意打ちである。P2は,自らの相続税について単独申告をしたから,P1の申告内容は知らないし,知り得ない。P2は,相続税法19条の2に定められた相続税額の軽減措置を受け,相続税の追及はないものと安心していたのであり,このようなP2に対する督促処分は,不意打ち以外の何ものでもない。 (ウ) なお,連帯納付義務の確定手続を不要とした最高裁判所昭和55年7月1日判決民集34巻4号535頁は,共同相続人が共同で相続税申告をした事案であって,本件とは事案が異なる。 オ通則法基本通達8条関係4に違反する違法(ア) 通則法基本通達8条関係4は,「相続税法34条に規定する連帯納付義務の徴収手続は 事案であって,本件とは事案が異なる。 オ通則法基本通達8条関係4に違反する違法(ア) 通則法基本通達8条関係4は,「相続税法34条に規定する連帯納付義務の徴収手続は,それぞれ次によるものとする。」として,(1)から(4)の方法が定められている。本件は(4)に該当するところ,(4)の場合は,納税の告知をすることとされている。 (イ) P2に対する徴収手続は上記通達に違反して,違法である。 カ過大督促の違法P2に対する連帯督促処分1により53億6154万9100円(利子税含む)の,連帯督促処分2により130億2986万7000円(利子税含む)の各督促がなされた。これは,P2が本件相続により受けた利益である80億9250万円を遙かに超えているから,P2に対する上記各連帯督促処分は,相続税法34条1項に違反している。 (被告らの主張)アいずれの主張も争う。 イエの主張に対し(ア) 通則法36条1項は,納税の告知を要する場合を列挙しているが,それは制限的な列挙と考えられるから,これを相続税法34条1項の連帯納付義務に適用する余地はない。 (イ) そもそも,P2に対する連帯納付義務は,P1の固有の納税義務の確定という事実に照応して,法律上当然に生じるものであるから,確定手続は必要でない(前掲最高裁昭和55年7月1日判決参照)。 (6) P2に対する国税徴収権が時効消滅したか(甲事件争点(6))(原告らの主張)本件相続税の法定納期限は,平成4年1月20日であり,P2に対する督促処分の時までに5年以上が経過しているので,P2に対する国税徴収権は通則法72条により,時効消滅してい 告らの主張)本件相続税の法定納期限は,平成4年1月20日であり,P2に対する督促処分の時までに5年以上が経過しているので,P2に対する国税徴収権は通則法72条により,時効消滅している。 なお,主たる納付義務者に対する延納許可によって進行を停止するのは主たる納付義務者に対する国税徴収権の時効だけであって,連帯納付義務者に対する国税徴収権の時効の進行を停止しないと解するべきである。仮に,連帯納付義務者に対する国税徴収権の時効の進行が停止する場合があるとしても,それは,共同して相続税の申告及び延納許可申請を行った場合に限られると解するべきである。 (被告らの主張)争う。 (7) P1に対してした延納許可等が国家賠償法上違法か(乙事件争点(1))(原告らの主張)ア相続税法38条4項は,「税務署長は(中略)延納の許可をする場合には,その延納税額に相当する担保を徴さなければならない。」と,同法39条2項ただし書は,「当該申請者の提供しようとする担保が適当でないと認めるときは,その変更を求めることができる。この場合において,当該申請者がその変更の求めに応じなかったときは,当該申請を却下することができる。」と定めている。更に,通則法基本通達「第50条関係担保の種類」の「9担保の額」は,「国税の担保は,その担保にかかる国税が完納されるまでの延滞税,利子税および担保の処分に要する費用をも十分に担保できる価額のものでなければならない。」と規定している。大野税務署長は,P1に対して延納許可をするに際し,上記の十分な担保を徴する義務があったのである(以下「担保徴求義務」という。)。 イ通則法51条1項は,「税務署長等は,担保として提供された財産の価額又は保証人の資力 可をするに際し,上記の十分な担保を徴する義務があったのである(以下「担保徴求義務」という。)。 イ通則法51条1項は,「税務署長等は,担保として提供された財産の価額又は保証人の資力の減少その他の理由によりその国税の納付を担保することができないと認めるときは,その担保を提供した者に対し,増担保の提供,保証人の変更その他の担保を確保するため必要な行為をすべきことを命ずることができる。」と定めている。これは,税務署長等の権限であると同時に義務であると解すべきである。大野税務署長及び被告金沢国税局長は,延納条件の変更等をするに際し,上記必要な行為をする義務があったのである(以下「担保維持義務」という。)。 ウ P1が延納許可申請の際に提供した担保は,相互タクシーの株式,相互不動産株式会社の株式及び株式会社大阪タクシー会館の株式であった。その後の担保評価によって追加した担保は,保証人相互タクシー株式会社,同京都相互林業株式会社,同株式会社大阪タクシー会館,同相互林業株式会社であった。 エ大野税務署長は,平成11年5月31日延納許可を取り消し(第2の2の(2)のイの(ク)),P1が提供した担保からの回収に着手した。その時点で,滞納金額は183億9141万6100円であった。担保からの回収額は,株式担保からは零であり,保証人からは4億0612万4449円にすぎなかった。 オ被告らは,担保評価の明細を明らかにしないが,相互タクシーの資産のうち,相続税申告書に資産としてあがっている貸付金約800億円や,相互不動産株式会社の平成3年3月20日現在の貸借対照表に資産としてあがっている建物約231億円,附属設備約110億円,建設仮勘定約254億円等を額面どおりに評価したものと推測されるところ,前者は不良債権で 株式会社の平成3年3月20日現在の貸借対照表に資産としてあがっている建物約231億円,附属設備約110億円,建設仮勘定約254億円等を額面どおりに評価したものと推測されるところ,前者は不良債権であり,後者は換価価値がなく,これらを資産から除外すべきであったし,その後相互タクシーが所有していた上場有価証券を売却した際にも,相互タクシーに対して総額365億円に及ぶ法人税更生処分がなされた際にも適切な措置がとられなかったと推測される。そしてウ及びエの事実によれば,大野税務署長及び被告金沢国税局長が担保徴求義務及び担保維持義務に違反したことが容易に推認でき,これは国家賠償法上違法な行為である。 カその結果,原告らは,第二次納税義務を追及され,別紙差押及び納付目録記載のとおり,普通預金の払戻請求権並びに満期保険金及び解約返戻金の支払請求権を差し押さえられ,また,原告P9は現金の納付を余儀なくされる損害を被った。 (被告国の主張)ア(ア) 国家賠償法1条1項にいう「違法」とは,公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背することをいう。そして,公務員の職務行為が国家賠償法上違法となるかどうかは,当該職務行為の時点で,当該公務員が上記職務上の法的義務に違反したかどうかによるものであって,職務行為後に生じた新たな事情が遡って当該職務行為を違法づけることはない。 本件においても,事後的に徴収した担保から本件相続税を徴収できなかったことが,遡ってその担保評価を違法たらしめるものではない。 (イ) 適正に担保に係る処理が行われていた場合においても,その後の経済変動により担保価額が変動し,結果的に担保が不足する事態は当然あり得るのであって,法もそのような事 のではない。 (イ) 適正に担保に係る処理が行われていた場合においても,その後の経済変動により担保価額が変動し,結果的に担保が不足する事態は当然あり得るのであって,法もそのような事態を想定している(通則法基本通達50条関係9,相続税法39条2項ただし書,通則法51条1項)。 イ取消訴訟との関係について行政処分が取消訴訟上適法であれば,それによって,権利・利益の侵害が生じても,相手方は,損失補償請求権を有する場合を除きこれを受忍しなければならず,取消訴訟において適法とされる処分が,国家賠償訴訟において違法とされることはないのであり,処分が適法であれば,国家賠償責任を負わないことは当然である。 ウ原告らの国家賠償請求は,P1に対する延納許可及び延納条件変更許可について違法を理由とするもので,原告らに対する本件告知処分及び本件督促処分そのものの違法を理由とするものではない。しかし,P1に対する徴収手続と連帯納付義務者であるP2に対する徴収手続とは別個の手続であり,まして原告らは,連帯納付義務者の第2次納税義務者にすぎない。P1に対する徴収手続に瑕疵があったとしても,これが連帯納付義務者の第二次納税義務者にすぎない原告らに対する徴収手続に影響を与えるものではなく,P1の徴収手続における違法は,原告らの国家賠償請求の違法にはなり得ない。 (被告国の主張に対する原告らの反論-取消訴訟との関係について)違法な行政行為によって損害を被ったと考える者が,当該行政処分の取消を求め得る通常の場合であれば,国家賠償請求権の成立は,当該行政行為の取消訴訟上の違法が必要条件となるであろう。 しかし,原告らは,大野税務署長らがP1に対する担保徴求義務及び担保 を求め得る通常の場合であれば,国家賠償請求権の成立は,当該行政行為の取消訴訟上の違法が必要条件となるであろう。 しかし,原告らは,大野税務署長らがP1に対する担保徴求義務及び担保管理義務に違反したことを違法な行政処分と主張しているところ,P1及びP2が各行政処分の取消を求めることは考えられないから,上記の違法な行政行為については,取消訴訟により取消を求める方法が存在しないことになる。 仮に被告国主張のとおり,P2や原告らが自らに対する課税処分の取消訴訟で大野税務署長らの上記違法行為を違法事由として主張できないとすると,原告らには,残された方法は国家賠償請求訴訟しか存在しない。よって,本件においては,「取消訴訟上の違法」を必要条件とすることなく,国家賠償請求の可否が決せられるべきである。 (8) 原告らが被った損害及び因果関係の有無(乙事件争点(2))(原告らの主張)大野税務署長及び被告金沢国税局長の上記違法行為によって,原告らは,前記のとおり,差押を受け,あるいは現金納付を余儀なくされた。これは原告らが被った損害であり,大野税務署長らの上記違法行為と原告らが被った損害との間には因果関係がある。 (被告国の主張)適法な手続によって,第二次納税義務者の財産を国税徴収の対象とし,第二次納税義務に係る滞納国税にその換価代金等を充てることは,当該第二次納税義務者に何ら損害を加えるものではない。また,延納許可を原因として納税者の財産が減少することはありえない。よって,原告らに損害はない。 第4 当裁判所の判断 1 徴収法39条が適用されるのが,滞納者から譲受人への譲渡が詐害行為又はそれに準ずる場合に限定されるか(甲事件争点(1))(1) 徴収法39 原告らに損害はない。 第4 当裁判所の判断 1 徴収法39条が適用されるのが,滞納者から譲受人への譲渡が詐害行為又はそれに準ずる場合に限定されるか(甲事件争点(1))(1) 徴収法39条が納税の対象となる財産を追及して国税の徴収権を確保することを目的としていること及び徴収法39条制定に関する立法の経緯(第3の2の(1)の「原告らの主張」のイに記載のとおりである。)に照らすと,徴収法39条が,責任財産を保全して被保全債権を確保することを目的とする詐害行為取消権と共通の目的を有することは明らかである。 そこで,徴収法39条の第二次納税義務と通則法42条が準用する詐害行為取消を比較すると,前者は,簡易・迅速に国税の徴収権を実現するために,財産移転等の私法上の効果を否定せず,受益者に対して直接徴税権を行使できることとし,債務者の詐害の意思を要件としない代わりに,時期(法定納期限の1年前の日以後),対象(無償又は著しく低い額の対価による譲渡,債務の免除その他第三者に利益を与える処分)を限定したものと解することができる。 そうすると,明文に反してまで,徴収法39条の適用のために納税義務者の詐害の意思が要件となると解することはできないし,受益者が善意を立証すれば,第二次納税義務を免れると解することもできない。 (2) これに対し原告らは,精解に「この条(徴収法39条)においては,『債権者を害することを知り』の明文の規定はないが,詐害行為の取消しをすることができる場合とほとんど同様の事情にあるとみなし得る場合及びこれに準ずる場合に,この条が適用されると考えて差し支えない」との一節があることを捉え,精解は原告らと同一の解釈をしている旨主張する。 しかしながら,精解の上記一節は,39条を適用した結果 に準ずる場合に,この条が適用されると考えて差し支えない」との一節があることを捉え,精解は原告らと同一の解釈をしている旨主張する。 しかしながら,精解の上記一節は,39条を適用した結果が,詐害行為取消を適用した場合と大きくは異ならないだろうとの見通しを述べたものと解するのが相当であって,徴収法39条を適用する要件として,納税者の詐害の意思を求めていると解することはできない。 2 原告らに対する本件告知処分等が徴収法39条の補充性の要件を満たすか(甲事件争点(2))(1) 「滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合」(徴収法39条。以下「補充性の要件」という。)とは,第二次納税義務を負わせるかどうかを判定する時(納付通知書を発する時)の現況において,差押えができる滞納者の財産の見積価額の総額が徴収しようとする国税の額に明らかに不足すると認められる場合をいい,補充性の要件の有無の判断のために滞納者の財産に滞納処分を執行することを要しないものというべきである。 (2) そして,証拠(甲7の1)及び弁論の全趣旨によると,原告らに対して納付通知書が発せられた平成13年12月20日当時において,P2に帰属する財産の価額は,12億6933万4152円と評価されたこと,P2の連帯納付義務の残高は,相続によって取得した財産の価額80億9250万円(第2の2の(2)のウの(イ))からそれまでにP2から徴収した4億0474万8666円を控除した76億8775万1334円と認められるから,補充性の要件を満たしていたことは明らかである。原告らは,相続開始時(平成3年7月19日)における相互タクシー株式の価額を前提として,P2の固有財産の価額が,117億2939万6320円であると主張す 性の要件を満たしていたことは明らかである。原告らは,相続開始時(平成3年7月19日)における相互タクシー株式の価額を前提として,P2の固有財産の価額が,117億2939万6320円であると主張するが,採用できない。。 (3) また,原告らは,P1との関係でも補充性の要件を満たす必要がある旨主張するところ,なるほど,徴収法39条が補充性を要件として定めているのは,本来国税は納税者から徴収すべきもので,第二次納税義務者から徴収するのは,必要やむを得ない場合の例外的措置であるからであり,そうであれば,納税者が連帯納付義務者である場合は,補充性は,連帯納付義務者のみならず,本来の納税義務者との間でも満たす必要があるとの原告らの主張は理由のないものではない。しかしながら,仮にそうだとしても,原告らに対する納付通知書が発せられた当時において,P1の財産に滞納処分を執行しても,その徴収すべき額に不足すると認められたことは,弁論の全趣旨によって明らかであるというべきである。 3 徴収法39条にいう「法定納期限の1年前の日」とはいつか(甲事件争点(3))(1) 連帯納付義務の確定は,各相続人等の固有の相続税の納付義務の確定という事実に照応して,法律上当然に生ずるものであるから,連帯納付義務につき格別の確定手続を要するものではない(前掲最高裁昭和55年7月1日判決参照)。そうすると,連帯納付義務者に対する法定納期限は,本来的納税義務者の法定納期限(平成4年1月20日)と同日となると解するのが相当である。 (2) これに対し原告らは,平成11年3月31日付け督促状のP2への送達日(同年4月1日)又は本件お知らせのP2への送達日(同年3月2日)が「法定納期限の1年前の日」に当たると解するべきである旨主張するが,明文に明らかに抵触す 11年3月31日付け督促状のP2への送達日(同年4月1日)又は本件お知らせのP2への送達日(同年3月2日)が「法定納期限の1年前の日」に当たると解するべきである旨主張するが,明文に明らかに抵触するから,同主張は採用できない。 (3) 更に原告らは,連帯納付義務者に対する納税金額及び納期限等を定めた告知処分が必要であり,これがなされていない本件では,「法定納期限の1年前の日」が定まっていない旨主張する。 しかし,連帯納付義務について確定手続を要しないと解すべきことは(1)で説示したとおりである。なお,確定手続の要否の問題と告知の要否の問題は別問題であるが,告知が必要であると解したとしても,既に連帯納付義務が各相続人等の固有の相続税の確定という事実に照応して法律上当然に生じているから,告知書に記載すべき法定納期限は,「平成4年1月20日」でしかあり得ない。すなわち,告知がなされなければ,「法定納期限の1年前の日」が定まらないということはないのである。 4 P2に対する課税処分に違法があった場合,本件告知処分等に違法性が承継されるか(甲事件争点(4))(1) 主たる課税処分等が不存在又は無効でないかぎり,主たる納税義務の確定手続における瑕疵は第二次納税義務の納付告知の効力に影響を及ぼすものではなく,第二次納税義務者は上記納付告知の取消訴訟において,主たる納税義務の存否又は数額を争うことはできないと解するべきである(最高裁判所昭和50年8月27日判決・民集29巻7号1226頁参照)。 よって,仮に,P2に対する督促処分に基づく連帯納付義務の追及に取消事由たる違法があったとしても,本件告知処分等の取消を求めている本件取消訴訟においては,その違法を主張することはできない。 (2) これに対し原 対する督促処分に基づく連帯納付義務の追及に取消事由たる違法があったとしても,本件告知処分等の取消を求めている本件取消訴訟においては,その違法を主張することはできない。 (2) これに対し原告らは,滞納処分を組成する各行政処分は一連の行為であり,先行行為の違法性は後行行為に承継されると主張し,P2に対する督促処分に基づく連帯納付義務の追及の違法性は,本件取消訴訟においても主張することができると主張する。 しかし,P2に対する課税処分と原告らに対する本件告知処分等は,相互に関連するとはいえ,それぞれ別個の目的を指向する別個の処分であって,相互に手段目的の関係があるものでもないから,先行行為の違法性は,後行行為に承継されないというべきである。 このように解した場合,第二次納税義務者は,主たる納税義務の存否,数額を争うことが極めて困難になるが,現行法上の第二次納税義務者は,いずれも,何らかの意味において主たる納税義務者と密接な親近性を有する者であり(本件においてもそうである),主たる課税処分について主たる納税義務者に争訟の機会が与えられている以上,これを不合理ということはできない。 5 P2に対する課税処分の違法性の有無(甲事件争点(5))前記のとおり,仮に,P2に対する課税処分に違法があったとしても,その違法性は本件告知処分等に承継されないから,個々の違法事由についての主張に対しては,判断しない。 6 P2に対する国税徴収権が時効消滅したか(甲事件争点(6))(1) 国税の徴収権は,法定納期限から5年間行使しないことによって,時効により消滅するところ(通則法72条1項),本件相続税の法定納期限は,平成4年1月20日である。 しかし,国税の徴収権の時効は,延納がされている 限から5年間行使しないことによって,時効により消滅するところ(通則法72条1項),本件相続税の法定納期限は,平成4年1月20日である。 しかし,国税の徴収権の時効は,延納がされている期間内は,進行しないところ(同法73条4項),大野税務署長は本来的納税義務者であるP1に対して相続税の徴収につき延納を許可したから,P1に対する徴収権は,その延納期間中は時効の進行は停止しており,同許可が取り消された後に進行を始めたものである。すなわち,本件申告分の分納回数4回目ないし7回目及び本件更正分3回目ないし6回目の各延納分納税額については,それぞれの延納分納期限まで消滅時効の進行が停止し,その後それぞれ進行するも,本件申告分については平成11年2月22日付督促状の送付による督促処分によって,本件更正分については同年3月31日付督促状の送付による督促処分によってそれぞれ時効が中断され,本件申告分の分納回数8回目以降及び本件更正分の分納回数7回目以降の各延納分納税額については,同年5月31日に延納許可が取り消された時点から時効が進行し,6月7日付督促状の送付による督促処分によって時効が中断した。 (2) 相続税法34条1項の連帯納付義務は,相続税の徴収の確保を目的として,本来の納税義務者が負う納税義務について,連帯納付義務者に同内容の履行義務を負わせたものと解するべきであるから,本来の納税義務者が延納の許可を受ければその効果は連帯納付義務にも及び,本来の納付義務者に時効中断事由が生ずれば,その効果は連帯納付義務にも及ぶと解するべきである。 そうすると,P2に対する国税徴収権が時効消滅したと認めることはできない。原告らは,本来の納税義務者に生じた時効中断事由の効果が連帯納付義務者に及ぶのは,共同して相続税の申告及び延 。 そうすると,P2に対する国税徴収権が時効消滅したと認めることはできない。原告らは,本来の納税義務者に生じた時効中断事由の効果が連帯納付義務者に及ぶのは,共同して相続税の申告及び延納許可申請を行った場合に限られる旨主張するが,同主張は採用できない。 7 P1に対してした延納許可等が国家賠償法上違法か。原告らが被った損害及び因果関係の有無(乙事件争点(1)(2))(1) 国家賠償法1条1項の「違法」とは,公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背することをいうと解すべきである。 (2) 原告らは,税務署長等には,延納を許可するに当たり,担保徴求義務があり,その後は担保維持義務がある旨主張する。なるほど,税務署長は,延納の許可をする場合には,その延納金額に相当する担保を徴さなければならず(相続税法38条4項),延納の申請者や延納の条件変更の申請者が提供しようとする担保が適当でないと認めるときは,その変更を求めることができ,当該申請者がその求めに応じなかったときは,その申請を却下することができ(相続税法39条2項ただし書),これを「担保徴求義務」と称することは可能である。また,税務署長等は,担保として提供された財産の価額又は保証人の資力の減少その他の理由によりその国税の納付を担保することができないと認めるときは,その担保を提供した者に対し,増担保の提供,保証人の変更その他の担保を確保するため必要な行為をすべきことを命ずることができ(通則法51条1項),これを「担保維持義務」と称することが可能である。 しかしながら,これらの義務は,相続税を確実に徴収するために税務署長等に課せられた国に対する職務上の義務と解すべきであって,これが連帯納付義務者に対して負担する義務であるとは直 ることが可能である。 しかしながら,これらの義務は,相続税を確実に徴収するために税務署長等に課せられた国に対する職務上の義務と解すべきであって,これが連帯納付義務者に対して負担する義務であるとは直ちには解しがたい。 (3) もっとも,連帯納付義務者としては,税務署長等が不十分な担保で延納を許可したために,その後の担保価値の下落等により,延納を許可しないで速やかに本来的納税義務者に対する滞納処分を行った場合よりも,事実上多額の負担を被ることがあるから,税務署長等が担保徴求義務及び担保維持義務を履践することが連帯納付義務者やその第二次納税義務者にとって利益になる場合がある。そうすると,担保徴求義務及び担保維持義務が,税務署長等が連帯納付義務者やその第二次納税義務者に対して負担する義務であると認める余地がないではない。しかしながら,仮にその点を肯認しても,本件において,被告国が原告らに対し,国家賠償債務を負担していると認めることはできない。その理由は,次の(4)に説示するとおりである。 (4) 税務署長の担保徴求義務に基づく権限は,延納や延納条件変更の申請者が提供しようとする担保が適当でないと認めるときに,その変更を求めることができ,当該申請者がその求めに応じなかったときは,その申請を却下することであり,担保として提供された財産の価額又は保証人の資力の減少その他の理由によりその国税の納付を担保することができないと認めるときに,その担保を提供した者に対し,増担保の提供,保証人の変更その他の担保を確保するため必要な行為をすべきことを命ずることである。そして,原告らの主張は,大野税務署長の上記権限の不行使を違法と主張するものであるところ,裁量的権限の不行使は,その不行使が具体的事情の下で権限付与の趣旨,目的に照らして著しく不合理と認 ことである。そして,原告らの主張は,大野税務署長の上記権限の不行使を違法と主張するものであるところ,裁量的権限の不行使は,その不行使が具体的事情の下で権限付与の趣旨,目的に照らして著しく不合理と認められるときでない限り,国家賠償法上違法の評価を受けないというべきである(最高裁判所平成元年11月24日判決・民集43巻10号1169頁参照)。 そこで,以下,本件においてこの点を検討する。 ア国税通則法基本通達50条関係10によると,担保の評価は時価によることとし,担保の種類に応じて見積価額が定められている。そして,地方債,社債及びその他の有価証券については,「時価の8割以内において担保の提供期間中の予想される価額変動を考慮した金額」と定められ,保証人による保証については,延納税額が滞納となった場合に,保証人から徴収することができると見込まれる額とされている。担保の時価の算定は,原則として財産評価基本通達により評価した金額とされる。 イ P1から提供された担保は,別表P1に提供した延納担保の状況記載のとおりである。なお,弁論の全趣旨によれば,株式はすべて取引相場のない株式であり,このうち,「A株式会社」及び「E株式会社」は相互タクシーと,「B株式会社」は相互不動産株式会社と,「C株式会社」及び「F株式会社」は株式会社大阪タクシー会館と,「D株式会社」は京都相互林業株式会社と,「G株式会社」は相互林業株式会社とそれぞれ推認できる。 ウ(延納申請時の担保徴求義務について)弁論の全趣旨によれば,別表の1回目評価の際,提供された担保はすべて取引相場のない株式であり,大野税務署長は,これらの株式を,財産評価基本通達に基づき,純資産方式によって評価したことが認められる。原告らは,相互タ よれば,別表の1回目評価の際,提供された担保はすべて取引相場のない株式であり,大野税務署長は,これらの株式を,財産評価基本通達に基づき,純資産方式によって評価したことが認められる。原告らは,相互タクシーの資産のうち,相続税申告書にあがっている貸付金約800億円は不良債権であったこと,相互不動産株式会社の平成3年3月20日現在の貸借対照表にあがっている建物約231億円,附属設備約110億円,建設仮勘定約254億円は換価価値がなく,資産から除外すべきであった旨主張する。大野税務署長が提供された担保を評価するに当たり,原告らが主張する点をどのように評価したかについては,これを認めるに足る証拠はない。しかしながら,純資産方式によって評価するに当たり,財産評価基本通達に基づいて評価し,これによって必要担保額を充足していると判断された以上,担保の変更を求めなかったことが,権限付与の趣旨,目的に照らして著しく不合理とまでいうことはできない。 エ(延納条件変更申請時の担保徴求義務及び担保維持義務について)(ア) 証拠(甲46,52ないし55の1及び2,甲63及び64の各1,2,甲65及び66の各1ないし3,甲75)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 aP10の相続財産は,その大部分(当初申告によれば,相続財産総額約381億1900万円のうち380億3000万円)が相互タクシーの株式であったから,P1は,莫大な相続税を納付するためには,相互タクシーの株式及び自己が保有していた相互林業株式会社の株式を売却する以外に方法はなかった。他方でP1は,相互タクシーの経営権を今後も確保したいと考えていた。その結果,P1は,P12税理士の助言を得て,次の方策(以下「P12スキーム」という)を考え,平成 を売却する以外に方法はなかった。他方でP1は,相互タクシーの経営権を今後も確保したいと考えていた。その結果,P1は,P12税理士の助言を得て,次の方策(以下「P12スキーム」という)を考え,平成5年ないし6年ころ,これらを実行した。 (a) P1は,相互タクシーの株式約314億円分及び相互林業株式会社の株式約254億円分を,相互タクシーのグループ会社である京都相互林業株式会社に売却し,代金の一部の弁済を受ける。京都相互林業株式会社は,その残金を,P1が負担する上記相続税及び贈与税未払額等をP1に代わって支払う方法により弁済する。 (b) 京都相互林業株式会社には,上記相続税等を代位弁済する資金がなかったので,相互タクシーから同社が所有している上場有価証券(時価は約590億円,簿価は約79億円)を時価で譲り受け,これを市場で売却して,上記代位弁済の資金とする。譲受代金を捻出するため,京都相互林業株式会社は,増資し,これを相互タクシーが引き受ける。 (c) 相互タクシーの上場有価証券の売却益に対する法人税等の課税を避けるため,グループ会社で多額の債務超過となっていた相互不動産株式会社を利用する。すなわち,相互タクシーがP1らから相互不動産株式会社の株式を無償取得し,相互不動産株式会社を100パーセント子会社とした上で,相互不動産株式会社が増資し,これを相互タクシーが高額で引き受けた後,相互不動産株式会社の株式を第三者に低額で売却し,相互タクシーに,上記の上場有価証券売却益に見合う株式売却損を発生させる。 b 相互タクシーは,平成5年3月21日から平成6年3月20日までの事業年度の法人税につき,相互不動産株式会社の株式について527億4108万3600 う株式売却損を発生させる。 b 相互タクシーは,平成5年3月21日から平成6年3月20日までの事業年度の法人税につき,相互不動産株式会社の株式について527億4108万3600円の売却損が発生したとして,これを前提に,所得金額を15億7186万2474円の欠損と算定し,その旨の確定申告をした。 c これに対し,大野税務署長は,平成8年4月4日付で相互タクシーに対し,相互不動産株式会社の株式の取得金額の大部分は寄付金であると認定した上で,所得金額を500億2742万3267円,納付すべき法人税額を185億8272万3300円とする更正決定処分及び過少申告加算税27億6436万0500円とする賦課課税処分をした。 d 平成7年1月に行われた第3回目の担保評価の際,大野税務署長は,平成5年9月に行われた第2回目の担保評価と同じ担保によって,必要担保が充足していると判断した。しかし,前記のとおり,この間に,相互タクシーの資産状況は,所有していた上場有価証券が売却され,未収入金が約568億円増加していた。 e 平成8年1月に行われた第5回の担保評価の結果,大野税務署長は,相互タクシーの株式140万株及び保証人京都相互林業株式会社を追加担保に徴した。次いで平成8年6月に行われた第6回の担保評価の結果,大野税務署長は,保証人相互タクシー,同株式会社大阪タクシー会館,同相互林業株式会社をそれぞれ追加担保に徴した。 f 大野税務署長は,平成11年5月31日延納許可を取り消し,P1が提供した担保からの回収に着手したが,滞納金額183億9141万6100円(うち本税額168億1238万4000円,利子税額15億7903万2100円)であったのに対し,担保からの回 り消し,P1が提供した担保からの回収に着手したが,滞納金額183億9141万6100円(うち本税額168億1238万4000円,利子税額15億7903万2100円)であったのに対し,担保からの回収額は,滞納金額株式担保からは零であり,保証人からは4億0612万4449円(上記滞納金額の約2.2パーセント)にすぎなかった。 (イ) 被告らは,守秘義務に反するとして,個々の担保評価の明細を明らかにしない。しかしながら,本税のみならず,利子税及び担保の処分に関する費用をも十分に担保できる価額であると評価されたはずの担保からの回収が,結果的には,滞納金額の約2.2パーセントにすぎなかったこと,とりわけ担保評価の大部分を占めていた相互タクシーの株式の価額が下落し,零となったこと,その主たる原因としては,上記の上場有価証券の売却及び法人税課税が考えられること等を総合すると,提供された担保の価値が変動することが一般的に予想されるものであることを考慮しても,特段の事情のない限り,大野税務署長がした第3回以降の担保評価に重大な誤りがあったと推認することが可能であり,特段の事情を認めるに足る証拠はないから,大野税務署長がその後増担保の提供を命じなかったこと及びその後の延納条件変更の申請の際に担保の変更を求めなかったことが,具体的事情の下で権限付与の趣旨,目的に照らして著しく不合理と認める余地がないではない。 (ウ) しかしながら,大野税務署長が,上記の増担保の提供を命じたり,延納条件変更の申請の際に担保の変更を求めたとしても,P1がこれに応じない場合に大野税務署長に与えられた権限は,延納の条件変更の申請を却下することだけである。そして,仮に大野税務署長が第3回担保評価をする契機となったと推測される平成6年12月22日付の がこれに応じない場合に大野税務署長に与えられた権限は,延納の条件変更の申請を却下することだけである。そして,仮に大野税務署長が第3回担保評価をする契機となったと推測される平成6年12月22日付の延納の条件変更の申請を却下し,速やかにP1に対する滞納処分を行ったとしても,既に相互タクシー株式の価額減価事由(上記有価証券の売却及び法人税課税の理由となった相互不動産株式の取得)が発生していたから,これによってP1に対する課税額が徴収できたとは認めがたく,P2に対する連帯納付義務の督促処分や原告らに対する本件告知処分等及び滞納処分が回避できたと認めるのは困難である。 (エ) そうすると,大野税務署長の権限不行使に違法があると評価しても,それと原告らが被った損害,すなわち原告らに対してなされた滞納処分及び現金納付との間の因果関係を肯認することができない。 (5) よって,いずれにしても,被告国が原告らに対して国家賠償債務を負担していると認めることはできない。 8 以上の次第で,本件告知処分等は適法になされたものと認められるから,被告金沢国税局長に対して本件告知処分等の取消し及び被告国に対して不当利得の返還を求める原告らの甲事件請求は失当として棄却すべきであり,被告国に対して国家賠償を求める原告らの乙事件請求も理由がないから失当として棄却すべきである。 金沢地方裁判所第二部裁判長裁判官井戸謙一 裁判官冨上智子 裁判官冨上智子 裁判官長瀬貴志

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