主文 原判決中上告人らに関する部分を破棄し,同部分に関する第1審判決を取り消す。 上記取消部分につき,本件を東京地方裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人和久田修,同國廣正,同五味祐子,同寒竹里江の上告受理申立て理由第1について 1 本件の甲事件は,中小企業等協同組合法に基づき設立された信用協同組合であるK信用組合(以下「訴外信組」という。)の組合員である上告人A1が,訴外信組はL商事株式会社及びそのグループ会社に対してした融資によって損害を被ったが,それは訴外信組の当時の理事で融資を担当した本店長であったB1及び当時の代表理事であったKの忠実義務違反によるものであるとして,B1及びKの相続人であるB2(選定当事者)に対し,同法42条において準用する商法267条に基づき,訴外信組へ損害の賠償をするよう求める訴訟である。また,本件の乙事件は,訴外信組の組合員である上告人A2及び同A3が,中小企業等協同組合法42条において準用する商法268条2項に基づき,上告人A1と同じ請求をするために甲事件の訴訟に参加したものである。 記録によれば,訴外信組は,甲事件及び乙事件が第1審に係属中の平成12年12月16日,金融再生委員会から,金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(以下「金融再生法」という。)8条1項に基づき金融整理管財人による業務及び財産の管理を命じられ,L及びMが金融整理管財人に選任された。 2 原審は,次のとおり判断して,上告人A1の本件訴え並びに上告人A2及び同A3の本件各参加申出をいずれも不適法として却下した第1審判決を是認し,上告人らの控訴をいずれも棄却した。 - 1 -金融再生法は,金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分があったときは,被管理 各参加申出をいずれも不適法として却下した第1審判決を是認し,上告人らの控訴をいずれも棄却した。 - 1 -金融再生法は,金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分があったときは,被管理金融機関を代表し,業務の執行並びに財産の管理及び処分を行う権利は金融整理管財人に専属する旨を定めるとともに,金融整理管財人は,被管理金融機関の取締役,理事等又はこれらの者であった者の職務上の義務違反に基づく民事上の責任を履行させるため,訴えの提起その他の必要な措置をとらなければならない旨を定めている(同法11条1項,18条1項)。このような規定に照らせば,信用協同組合が金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分を受けた後は,理事の責任を追及する権限は金融整理管財人に専属し,組合員は,組合員代表訴訟を提起し,又は同訴訟に参加する資格を失う。このことは,金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分の時期が,組合員代表訴訟の提起又は参加の申出の後であった場合においても同じであると解するのが相当である。そうすると,上告人A1の本件訴え並びに上告人A2及び同A3の本件各参加申出は,事後的に金融整理管財人が選任されたことによりいずれも不適法なものとなったというべきであり,却下すべきものである。 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 金融整理管財人は,あくまでも被管理金融機関を代表し,業務の執行並びに財産の管理及び処分を行うのであり(金融再生法11条1項),被管理金融機関がその財産等に対する管理処分権を失い,金融整理管財人が被管理金融機関に代わりこれを取得するものではない。この点において,金融整理管財人は,会社更生手続等における管財人等とは,法的地位を異にするものである。会社更生手続にお 処分権を失い,金融整理管財人が被管理金融機関に代わりこれを取得するものではない。この点において,金融整理管財人は,会社更生手続等における管財人等とは,法的地位を異にするものである。会社更生手続においては,更生手続開始の決定があると,会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利は,管財人に専属し(会社更生法53条),会社の財産関係の訴えについては,- 2 -管財人を原告又は被告とし(同法96条1項),既に係属中の訴訟の手続は,中断し(同法68条),管財人と相手方との間で受継が行われる(同法69条1項)。 民事再生手続においては,管理命令が発せられると,再生債務者の業務の遂行並びに財産の管理及び処分をする権利は,管財人に専属し(民事再生法66条),再生債務者の財産関係の訴えについては,管財人を原告又は被告とし(同法67条1項),既に係属中の訴訟の手続は,中断し(同条2項),管財人と相手方との間において受継が行われる(同条3項)。また,破産手続においては,破産財団の管理及び処分をする権利は,破産管財人に専属し(破産法7条),破産財団に関する訴えについては,破産管財人を原告又は被告とし(同法162条),既に係属中の訴訟は,中断し(民訴法125条1項),破産管財人と相手方との間において受継が行われる(破産法69条1項)。一方,金融再生法には,金融整理管財人の被管理金融機関に代わっての財産等管理処分権並びに訴訟手続における当事者適格,中断及び受継に関する規定がないのである。これは,金融整理管財人が被管理金融機関を代表する地位にあるからである。 金融再生法18条1項は,「金融整理管財人は,被管理金融機関の取締役若しくは監査役又はこれらの者であった者の職務上の義務違反に基づく民事上の責任を履行させるため,訴えの提起その他の必要な措置をとらなけ 融再生法18条1項は,「金融整理管財人は,被管理金融機関の取締役若しくは監査役又はこれらの者であった者の職務上の義務違反に基づく民事上の責任を履行させるため,訴えの提起その他の必要な措置をとらなければならない。」と規定しているが,これは,金融整理管財人は被管理金融機関を代表する立場でこれらの措置をとらなければならないという趣旨であって,訴えの提起についても,金融整理管財人は,当事者としてではなく,被管理金融機関の代表者として訴訟を追行することになるのである。訴えの当事者は,あくまでも被管理金融機関である。 したがって,【要旨】信用協同組合の組合員は,当該信用協同組合に対し金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分がされても,中小企業等協同組合法42条において準用する商法267条に基づき,「当該信用協同組合のため」組- 3 -合員代表訴訟を提起することができる。そして,組合員代表訴訟が既に係属中に,上記の処分がされても,当該訴えを提起した組合員は,訴訟を追行する資格又は権限を失うものではない。また,中小企業等協同組合法42条において準用する商法268条2項に基づく組合員又は信用協同組合の組合員代表訴訟に参加する資格も,上記の処分により影響を受けるものではないと解すべきである。金融整理管財人としては,必要に応じて,組合員代表訴訟の推移を見守り,又は被管理信用協同組合を代表して同訴訟に参加することができるものというべきである。 4 以上によれば,論旨は理由があり,これと異なる原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決中上告人らに関する部分は破棄を免れない。そして,同部分に関する第1審判決を取り消した上で,同取消部分につき本件を第1審に差し戻すべきである。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のと あり,原判決中上告人らに関する部分は破棄を免れない。そして,同部分に関する第1審判決を取り消した上で,同取消部分につき本件を第1審に差し戻すべきである。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官深澤武久裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官島田仁郎)- 4 -
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