- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴人らの当審における請求拡張部分を棄却する。 当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする。 なお,原判決主文第1項は,控訴人らの訴えの取下げにより,原判決主文第2項及び第3項は,一審被告a協業組合の法人格の消滅による訴訟の当然終了により,それぞれ失効した。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決主文第4項を取り消す。 2(1)被控訴人bは,奈良県に対し,5億4285万7336円及びこれに対する平成19年4月4日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (2)被控訴人cは,奈良県に対し,3113万9125円及びこれに対する平成19年4月4日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (3)被控訴人dは,奈良県に対し,7994万1267円及びこれに対する平成19年4月4日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (4)被控訴人eは,奈良県に対し,1億7580万1550円及びこれに対する平成19年4月4日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (いずれも,当審において請求を拡張した)。 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2事案の概要 事案の要旨(1)奈良県は,一審被告a協業組合(以下「a」という)に対し,中小企。 業高度化資金の貸付として,平成2年2月20日,平成5年から毎年11- 2 -月30日限り9411万7000円ずつ償還するとの約定で16億円を貸し付け,平成3年5月30日,平成7年2月から毎年2月27日限り2352万9000円ずつ償還するとの約定で4億円を貸し付けた(いずれも違約金の約定は年10.75%。 )(2)この貸付金について,奈良県の住民である控訴人らは,一審被告奈良県知事(以下「知事 52万9000円ずつ償還するとの約定で4億円を貸し付けた(いずれも違約金の約定は年10.75%。 )(2)この貸付金について,奈良県の住民である控訴人らは,一審被告奈良県知事(以下「知事」という)及び同奈良県商工労働部長(以下「商工労。 働部長」といい,上記2名を「知事ら」と総称する)が,aに対し約定。 どおりの償還を請求せず,抵当権の実行や保証人に対する請求等を怠った,,結果奈良県に各償還金に対する利息相当額の損害が発生した旨主張して①知事らを被告として,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ)242条の2第1項3号に基づき,<ア>aに対する。 償還請求,<イ>抵当権の実行及び各連帯保証人に対する履行請求,<ウ>強制執行の手続,<エ>a又はfに対する増担保・代替担保の請求を各怠ることが違法であることの確認を,②上記怠る事実に係る相手方であるaに対し,同項4号後段に基づき,奈良県に代位して,償還期限が到来した貸付,,,,金の返還及び違約金の支払を③被控訴人b同c同d及び同eに対し同人らは,奈良県の執行機関又は職員として上記貸付に係る貸付金の債権管理権限を有していたが,その管理を怠って奈良県に損害を生じさせたとして,同項4号前段に基づき,奈良県に代位して,上記のaに対する貸付残金15億0234万9000円に対する当初の貸付契約における約定償還期日から訴え提起日である平成14年8月30日までの年5%の割合による利息相当額(ただし被控訴人ら各人の在任期間に対応する分であり,その金額は,被控訴人bにつき2億3830万1825円,同cにつき411万2778円,同dにつき2588万8572円,同eにつき9000万6460円)の賠償金の支払及びこれに対する各訴状送達の日の翌日(被控訴人cにつき平 つき2億3830万1825円,同cにつき411万2778円,同dにつき2588万8572円,同eにつき9000万6460円)の賠償金の支払及びこれに対する各訴状送達の日の翌日(被控訴人cにつき平成14年10月13日,その余の被控訴人らにつき- 3 -同月11日)以降年5%の遅延損害金の支払を求めた。 これに対して,被控訴人らは,知事らが上記貸付に係る債権の管理を違法不当に怠った事実はないなどと主張して争った。 訴訟経緯(1)原判決ア知事らが,上記各貸付金債権について,<ア>aに対する償還請求,<イ>原判決添付の別紙抵当権目録記載の抵当権の実行及び同別紙保証人目録記載の各保証人に対する履行請求,<ウ>強制執行の手続を各怠ることが違法であることを確認する。 イ控訴人らのaに対する訴えのうち,奈良県に対し,15億0234万9000円の支払を求める請求に係る部分を却下する。 ウaは,奈良県に対し,<ア>2億6261万8066円及び8億8836万5000円に対する平成18年9月1日から支払済みまで年10. 75%の割合による金員,<イ>5352万8095円及び1億9850万円に対する平成18年9月1日から支払済みまで年10.75%の割合による金員を各支払え。 エ控訴人らのその余の請求を棄却する。 (2)上記理由の要旨ア請求①関係(債権の管理を怠ることの違法確認)について(ア)上記各貸付が当初から償還可能性を全く考慮せずに実施されたものとはいえない。また,奈良県は,平成13年2月27日まで貸付条件の変更を繰り返しているが,これは,その都度,専門的な見地から経営診断が実施され,その結果を踏まえてされたものであり,中小企業事業団の了解や他の金融機関の協力も得られていたほか,奈良市から利子補給による支援も受けていた。このような事 の都度,専門的な見地から経営診断が実施され,その結果を踏まえてされたものであり,中小企業事業団の了解や他の金融機関の協力も得られていたほか,奈良市から利子補給による支援も受けていた。このような事情を考慮すれば,当初の契約に係る償還期日が到来した時点で,地方自治法施行令17- 4 -1条の6第1項2号の「債務者が当該債務の全部を一時に履行することが困難であり,かつ,その現に有する資産の状況により,履行期限を延長することが徴収上有利」であったと認められ,直ちに残債務全部の償還を請求せず,貸付の条件変更を承認したことが違法なものとまでいうことはできない。その後,平成12年度まで条件変更を承認し,変更後の各第1回目の償還期日まで残債務全部の即時償還を請求しなかったことについても同様である。 (イ)しかしながら,平成13年度以降は,奈良県自身がもはや貸付条件を変更しても徴収上有利であるとの判断ができず,条件変更を承認しなかったこと,特に平成14年度以降は,奈良県監査委員から厳正な指導と対応を行い,債権の保全及び回収に一層努めるよう促されており,平成5年度から8年間にわたり毎年条件変更を承認して履行期限の繰延べをしてきたにもかかわらず,売上高が貸付当初の予測や損益分岐点を大きく下回り続けたばかりか,かえって,国内牛のBSE問題の影響等から売上げが激減し,償還財源が全く確保できていなかった状況にかんがみれば,もはや,正常な形での債権回収が到底期待できない状況にあったことは明らかであったというべきである。 (ウ)担保提供者であるaやfが,上記抵当権の目的物以外に剰余価値。 ,のある目的物を所有していたことを認めるに足りる証拠はないまた上記の事情に照らせば,平成13年度以降,増担保等を請求しなかったことが違法であるとはいえない。 (エ) の目的物以外に剰余価値。 ,のある目的物を所有していたことを認めるに足りる証拠はないまた上記の事情に照らせば,平成13年度以降,増担保等を請求しなかったことが違法であるとはいえない。 (エ)以上によれば,知事らが,上記の各貸付について,aに対する償還請求,担保権の実行,強制執行の手続,各連帯保証人に対する履行請求を各怠ることは違法であるというべきであり,控訴人らの請求①はその限度で理由がある。 イ請求②(aに対する貸付金等返還代位請求)について- 5 -(ア)請求②に係る訴えのうち,奈良県に対し,約定償還金15億0234万9000円の支払を求める請求に係る部分は,地方自治法242条の2第1項4号所定のいずれの請求にも当たらない不適法な訴えであるから,却下を免れない。 (イ)控訴人らが代位請求できるのは,既に償還期限が到来した分(平成12年度にされた条件変更を前提に,平成13年度から平成17年度までの間に償還期限が到来した分)に対する違約金の請求に限られる。 ウ請求③(被控訴人らに対する損害賠償代位請求の可否)について控訴人らが主張する損害は,aが本件各貸付につき貸付当初の約定どおりに償還できることを前提とし,これが可能であった場合に初めて発生するものであるところ,これを認めるに足りる証拠は全くないから,請求③はその余の点について判断するまでもなく理由がない。 (3)これに対し,aが「原判決中,aの敗訴部分を取り消す。上記取消しに係る控訴人らのaに対する請求を棄却する」との裁判を求めて,知事ら。 が「原判決中,知事らの敗訴部分を取り消す。上記取消しに係る控訴人らの知事らに対する請求を棄却する」との裁判を求めて,控訴人らが,上。 記控訴の趣旨記載の裁判を求めて,それぞれ控訴を提起したが,控訴人らは,原審が上記請求②に関 を取り消す。上記取消しに係る控訴人らの知事らに対する請求を棄却する」との裁判を求めて,控訴人らが,上。 記控訴の趣旨記載の裁判を求めて,それぞれ控訴を提起したが,控訴人らは,原審が上記請求②に関し,奈良県に対して15億0234万9000円の支払を求める請求に係る部分の訴えを却下したことに対しては不服申立てをしなかった。 なお,控訴人らは,当審において,上記のとおり請求を拡張した(拡張分は,償還期限が到来した償還金に対する利息のうち原審への提訴日以降当審への控訴日までの分〔被控訴人らの各在任期間に対応する金額。 〕)(4)奈良地方裁判所は,平成20年12月19日午後5時,aについて破産手続開始決定をし(同裁判所平成▲年(フ)第▲号,平成21年8月5日,)- 6 -aにつき,破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認め,上記破産手続を廃止した。 同月19日,aにつき残余財産が存在しないものとなり,aの法人格は消滅した。 したがって,本件訴訟中,aに関する部分(上記請求②関係)は当然に終了した。 (5)控訴人らは,平成21年10月3日,知事らに対する上記請求①に係る,,,。 訴えを書面をもって取り下げ同書面は同月5日知事らに送達された知事らは,上記送達日から2週間以内に異議を述べなかった。 したがって,本件訴訟中,上記請求①に係る部分は,当審における控訴人らの訴えの取下げにより終了した。 (6)以上の結果,本件訴訟の当事者は,控訴人ら及び被控訴人らとなったものであり,当審における審判の対象は,控訴人らの被控訴人らに対する地方自治法242条の2第1項4号前段に基づく各損害賠償代位請求(上記請求③)の当否である。 (7)なお,当審において,一審原告gは平成▲年▲月▲日に死亡していたことが判明したため,原判 に対する地方自治法242条の2第1項4号前段に基づく各損害賠償代位請求(上記請求③)の当否である。 (7)なお,当審において,一審原告gは平成▲年▲月▲日に死亡していたことが判明したため,原判決添付の別紙当事者目録を,当審別紙当事者目録の末尾記載のとおり更正する。 前提事実(証拠等を掲げたもののほかは,当事者間に争いがない)。 原判決4頁6行目から同7頁19行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,文中の「被告組合」を「a」に「被告知事」を「知,事」に「被告商工労働部長」を「商工労働部長」にそれぞれ読み替えた上,(以下,原判決を引用する場合は同じ,次のとおり改める。 。)(1)原判決4頁14行目から15行目にかけての「本件口頭弁論終結時に至るまで,奈良県知事の職にある者である」を「平成19年5月2日まで,。 奈良県知事の職にあった者である」に改める。 。 - 7 -(2)同頁16行目の「被告商工労働部長は」から18行目の「者であり」,,までを「商工労働部長は,奈良県事務決済規程(昭和36年3月31日奈良県訓令甲第3号)3条,別表第1の六により,後記(2)の貸付金に関し,その貸付条件変更,督促等の軽易な事務について専決権限を有する者であり」に改める。 , 地方公共団体の有する債権の管理に関する関係法令の定め(ただし,本件に関連する部分に限る)。 原判決7頁22行目から同9頁12行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,同9頁3行目の「当該債権」を「当該債務」に改める。 当審における争点(1)債権の管理を怠った違法(地方自治法242条の2第1項3号の「怠る事実の違法)の有無」(2)被控訴人らに対する損害賠償代位請求の可否 上記争点に関する当事者の主張(1) 争点 争点 (1)債権の管理を怠った違法(地方自治法242条の2第1項3号の「怠る事実の違法)の有無」(2)被控訴人らに対する損害賠償代位請求の可否 上記争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(債権の管理を怠った違法〔地方自治法242条の2第1項3号の「怠る事実の違法〕の有無)について」,原判決9頁19行目から同27頁1行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。ただし,同17頁15行目の「被告知事らの主張」を【】「被控訴人らの主張」に,同18頁4行目の「中小企業事業団(独立行【】政法人中小企業基盤整備機構の前身。以下「旧事業団」という」を「中。)小企業事業団(独立行政法人中小企業基盤整備機構の前身。平成11年7月以降の名称は中小企業総合事業団。いずれも,以下「旧事業団」と呼称する」に,それぞれ改める。 。)(2)争点(2)(被控訴人らに対する損害賠償代位請求の可否)について原判決28頁1行目から同30頁21行目までに記載のとおりであるか- 8 -ら,これを引用する。 当審における当事者の補充主張(1)争点(1)(債権の管理を怠った違法〔地方自治法242条の2第1項3号の「怠る事実の違法〕の有無)について」【被控訴人ら】平成13年度以降の本件各貸付に係る債権管理について,地方自治法施行令171条の2ただし書に該当することア同条ただし書の「その他特別の事情があると認める場合」の意義(ア)この「特別の事情」については,法文の用語法からみても,徴収停止等の場合や履行期限を延長する場合に類似する必要性はなく,これらと並列する別個独立の場合が予定されている。そして,特別の事情の存否の判断に当たっては,貸付目的の政策性・公益性を勘案すべきである。債権管理に関する地方自治法及び同施行令のもとで 要性はなく,これらと並列する別個独立の場合が予定されている。そして,特別の事情の存否の判断に当たっては,貸付目的の政策性・公益性を勘案すべきである。債権管理に関する地方自治法及び同施行令のもとで一定の財産の管理を怠る事実の適法性の評価について,会計法規のみを根拠とすべきであって他の要素はおよそ入れるべきではないとまでいうのは相当性を欠く。 (イ)なお,債権管理に際して,貸付目的の政策性・公益性を勘案しても,補助金と貸付金の区別を不明確にすることにはならない。すなわち,補助金は,交付時の1回に限って政策性・公益性を検討するが,貸付においては,債権管理の各時点で,貸付目的の政策性・公益性と背馳することがないかを勘案することになる。したがって,貸付金の管理において,強制執行等をしても貸付目的の政策性・公益性と背馳しない状態に至っていれば,特別の事情があるとは認められないことになる(いったん行った補助がその後の情勢変化によって返還を要することがないのとは全く異なる。 。)また,原判決は,貸付目的の政策性・公益性を考慮することは,同- 9 -施行令171条の5が徴収停止の措置及び債権免除ができる場合を限定的に列挙していることを無意味にすると指摘する。しかし「以後,その保全及び取立をしない」という徴収停止及び債権免除と異なり,奈良県の措置は,aに経営改善努力を促して,履行期限の到来した債権の履行に務めさせると共に,強制執行等をしても貸付目的の政策性。 ・公益性に背馳しない状態に至っているかを検討していくものであるしたがって,徴収停止の措置や債権免除の手続が取られていないことをもって,被控訴人ら主張の上記解釈を退ける理由にはならない。 イ特別の事情の存在平成13年度以降も,化製業者の集約化,設備の近代化を図り,臭気公害を防止する や債権免除の手続が取られていないことをもって,被控訴人ら主張の上記解釈を退ける理由にはならない。 イ特別の事情の存在平成13年度以降も,化製業者の集約化,設備の近代化を図り,臭気公害を防止するとともに県食肉流通センターから排出される残滓物の引受先を確保することの重要性が現存し,強制執行等をすることがこれらの政策目的や公益性と背馳するから「その他特別の事情があると認め,る場合」に該当する。 すなわち,平成13年度は,BSE問題が発生し,化製業の加工生産物の一つである肉骨粉が市場性を失ったため,貸付条件の変更をすることができなくなった。しかし,同年秋には,農林水産省が肉骨粉の適正処分を推進することにより,円滑な畜産副産物の処理の継続を通じ,と畜場機能の維持及び肉畜出荷の安定化を図ることを目的として,畜産副産物のレンダリング処理及びこれにより製造された肉骨粉を焼却処分するのに必要な経費を助成する制度を創設した。しかも,この助成実施までの間に化製業者等が破綻しないように低利の短期資金の融資,利子補給,借入金の損失補償制度も設けられた。このように,BSE問題発生後も,化製業者の操業を維持することによって,と畜施設から排出される残滓が円滑に処理されることの公益性は存したのである。そして,奈良県においては,平成13年度以降も,aが県食肉流通センターから排- 10 -出される残滓(同センターの処理実績は当初の計画を下回っているが,それでも,同センターは,平成18年度は牛3184頭と豚4941頭の殺処理実績を有し,これによって残滓物が546t排出されたと推計される)を処理し,肉骨粉を製造することで,同センターのと畜場機。 能を維持し,食肉流通の安定化を図る上で,公益的な機能を果たしていたものである。aは,平成14年度に4780万円,平成15 たと推計される)を処理し,肉骨粉を製造することで,同センターのと畜場機。 能を維持し,食肉流通の安定化を図る上で,公益的な機能を果たしていたものである。aは,平成14年度に4780万円,平成15年度に6863万6000円の製造経費補助を受けていた。そして,奈良県内には,aの工場に代替しうる近代的な化製業工場はなかったため,平成13年11月30日と平成14年2月27日以降にaが本件各貸付に係る平成13年度分の約定償還金につき遅滞となったとはいえ,強制執行等によってその操業を停止させ,施設を解体売却することになれば,近代的な施設を持たない化製業者の操業により悪臭公害が再発し,あるいは食肉流通センターから排出される残滓の終末処理に支障を来す懸念があった。このような事情を考慮すれば,上記特別の事情があると認められるべきである。 (2)争点(2)(被控訴人らに対する損害賠償代位請求の可否)についてア被控訴人らの責任【被控訴人ら】(ア)地方自治法242条の2第1項4号の違法性の意義同条1項3号にいう「怠る事実の違法」と同条項4号が規定する当。 該職員に対する損害賠償請求の要件としての違法性とは同義ではないすなわち,後者は,客観的に処分庁がその処分のため手続上必要と考えられる期間内に処分ができなかったことだけでは足りず,その期間に比して更に長期間にわたり遅延が続き,かつ,その間に処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに,これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要であり,前者の違法は,後- 11 -者の要件のうち客観的に手続上必要と考えられる期間を経過したことを推認させるにすぎない(最高裁平成3年4月26日第2小法廷判決・民集45巻4号653頁参照。 )したがって,仮に,知事らが強制執行等をしないことにつ 観的に手続上必要と考えられる期間を経過したことを推認させるにすぎない(最高裁平成3年4月26日第2小法廷判決・民集45巻4号653頁参照。 )したがって,仮に,知事らが強制執行等をしないことにつき怠る事,,,実の違法があると判断される場合であってもその時点以降直ちに被控訴人らに対して賠償責任を問い得る違法性があるということにはならない。 (イ)上記のとおり,奈良県内の化製業者の工場操業による臭気公害の再発を防止するとともに,県食肉流通センターから排出される残滓物の引受先を確保するため,aの施設の稼働継続が求められるという政策的な配慮が必要であった。加えて,奈良県では,協調融資先である,民間金融機関と債権管理に関する協議をして適切に対応していたほか本件貸付金の80分の54の拠出先である旧事業団とも協議の上,対応していたところ,上記公害の再発や円滑な食肉流通が阻害されることを防止しつつ債権回収を進めるという方策が見当たらなかったものであり,被控訴人らの努力だけでは容易に解決し難い事情があった。 よって,本件では,被控訴人らに対する賠償責任を問い得る要件としての違法性はない。 (ウ)仮に,この点についての違法性が認められるとしても,上記の事情からすれば,被控訴人b及び同cにおいて,強制執行等の手続を直ちにとることを期待することはできなかったから,同被控訴人らに過失はない。なお,被控訴人e及び同dは,当時,商工労働部長の職になく,強制執行等に関与のしようがなかったものであるから,同人らに対し賠償責任を問うことはできない。 【控訴人ら】-反論被控訴人らが引用する平成3年最判は,水俣病患者の認定申請に対し- 12 -て,国から認定業務の委任を受けていた熊本県知事が長期間認定業務を遅滞させたことによる不作為による不法行為責任 ら】-反論被控訴人らが引用する平成3年最判は,水俣病患者の認定申請に対し- 12 -て,国から認定業務の委任を受けていた熊本県知事が長期間認定業務を遅滞させたことによる不作為による不法行為責任を問うもので,その責任根拠は条理上のものである。これに対して,本件は,地方自治体の長や担当職員が,貸付金という自治体の財産の管理につき善管注意義務を怠ったという債務不履行責任又は不作為による不法行為責任を問うもので,地方自治法138条の2,148条,149条,153条,154条,地方財政法8条に責任根拠を置くものである。このように,条理上の責任を問う場合と地方自治法上の責任を問題にする場合とでは,その違法性の判断が同じということはない。 ,。 また本件と平成3年最判の事案とでは職務懈怠の状況が全く異なるすなわち,知事による水俣病の認定には,多数の認定申請,検診及び審査をする機関の能力や運営方針,申請者側の協力等諸般の事情が認定の遅れという事態をもたらしていたもので,知事自身の努力だけでは容易に解決し難い事情があった。これに対して,本件で問題となっているものは,貸付金に係る督促や請求,強制執行等の通常の債権回収措置であり,特別の努力を要するものではない。知事らは,怠る事実の違法が確認できる状態であれば,通常期待される努力によって,直ちに,債権回収措置の遅延を解消することができたのであるから,その責任発生時期を遅らせる理由はない。 イ損害発生の有無【控訴人ら】(ア)主位的な請求原因奈良県が本件各貸付に係る債権について強制執行等の有効な措置を,,執らずに放置し続けたことによって本判決添付の別紙記載のとおり本件各貸付の残元金である15億0234万9000円に対し各償還期日から控訴状の提出日である平成19年4月3日まで民法所定年5- ,,執らずに放置し続けたことによって本判決添付の別紙記載のとおり本件各貸付の残元金である15億0234万9000円に対し各償還期日から控訴状の提出日である平成19年4月3日まで民法所定年5- 13 -%の割合による利息相当額の損害が奈良県に生じている。被控訴人らは,それぞれの在任期間中に償還期限を迎えた分について損害賠償義務がある。なお,被控訴人eは,その在任期間中に合計300万円を返済したため,同金額を同人に対する賠償額算定の基礎となる金額から控除している。 (イ)予備的な請求原因①民訴法248条の適用談合事件では,民訴法248条を適用して,談合のない自由競争下で行われた入札の結果判明した落札率を基礎として,自由競争による入札が行われた場合の落札価格を認定するという手法を採る裁判例が一般的となっている。 本件の場合も,平成13年の時点で奈良県が遅滞なく強制執行等をしていた場合の落札金額を客観的に割り出すことは,過去に遡って強制競売の申立てをすることができないから,談合の場合と同様に困難であり,民訴法248条にいう「損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるとき」に該当する。 そして,本件担保権の目的となっている建物その他の固定資産が経年により減価することは疑いがなく,土地に関しても,平成5年以降,奈良市内の土地が一貫して下落していることは明白であるから,化製業が脚光を浴びることになったというような特異な出来事でもない限り,強制執行等の遅れは,回収額の減収に直結するといえる。よって,本件では,民訴法248条を適用して損害額を認定すべきである。 ②損害額A本件担保権の目的物である原判決添付の別紙物件目録1ないし8の不動産(以下「工場の土地建物」という)について,平成。 - 14 -21年1月27日付けの 害額を認定すべきである。 ②損害額A本件担保権の目的物である原判決添付の別紙物件目録1ないし8の不動産(以下「工場の土地建物」という)について,平成。 - 14 -21年1月27日付けの改札結果は5145万円であった(したがって,平成19年に奈良県が競売を申し立てた結果,少なくとも5145万円を回収することができた)ことから,損害額に。 ついては,次のとおり,合理的に推測することができる。 a原判決添付の別紙物件目録1ないし7の土地(以下「工場の土地」という)について,路線価は,平成13年から平成1。 8年までの間で33.3%下落している(甲92の9~14。 )(「」b原判決添付の別紙物件目録8記載の建物以下工場の建物という)について,平成13年から平成19年の間の経済的。 残存耐用年数が18年から12年に減少しているから(甲102の4,33.3%の下落を認めることができる。 )c原判決添付別紙物件目録9記載の機械器具(以下「機械類」という)は,平成20年1月8日時点での評価額が0円であ。 るため(甲102の4,どの時期まで換価価値を有していた)かは判然としない。 以上を前提に,平成13年の時点で本件担保権の目的物について,奈良県が迅速に競売手続に着手していたとすれば,回収可能であった金額は,7717万5000円(=5145万円×〔100/66.7)となる。 〕したがって,その強制換価手続への着手を放置し続けたことによる損害は,少なくとも2572万5000円(=7717万5000円-5145万円)を下らない。 B連帯保証人所有の不動産について本件各貸付の連帯保証人の一人であるhは,平成19年3月12日,iに対し,自宅不動産を贈与した。奈良県は,詐害行為取消請求訴訟等を経て,722万3000円を回収 B連帯保証人所有の不動産について本件各貸付の連帯保証人の一人であるhは,平成19年3月12日,iに対し,自宅不動産を贈与した。奈良県は,詐害行為取消請求訴訟等を経て,722万3000円を回収したが,上記と- 15 -同様に,平成13年時点で直ちに強制換価手続に着手していたとすれば,回収可能であった金額は更に多かったはずである。 そこで,上記Aと同様にその回収可能金額を算定すると(建物〔〕。),の耐用年数はもともと超過していたと考えられる甲93の2(〔. 1083万4500円=722万3000円×100/667)となるから,損害額は,361万1500円(=1083〕万4500円-722万3000円)となる。 Cそうすると,損害額は合計2933万6500円(=A+B)となる。 ③被控訴人らは,会計手法上の減価償却率の適用のみで,価格評価ができるものではないと主張する。しかし,原審当時の商工労働部長であるjや被控訴人dは,その本人尋問(原審)において,路線価や減価償却率を基礎としていたと供述していたから,当審における被控訴人らの主張は,奈良県において行ったaの資産状態を把握する手法自体も誤っていたことを自認するに等しいもので不当である。 【被控訴人ら】-反論(ア)民訴法248条の適用には,損害の発生が必要であるところ,損害発生の立証はない。すなわち,債務者が遅滞になれば,債権者は遅,延利息を付加した債権の履行請求や繰上請求ができるようにはなるがこれらを行使したからといって,直ちに債務の履行を受けられたとは限らない。奈良県に損害が生じたというためには,①直ちに請求等の措置をすれば請求しうる債権相当額の回収ができたことに加え,②その後に実際に措置をしたことによる回収額が,直ちに請求等の措置をした場合の回収額を 奈良県に損害が生じたというためには,①直ちに請求等の措置をすれば請求しうる債権相当額の回収ができたことに加え,②その後に実際に措置をしたことによる回収額が,直ちに請求等の措置をした場合の回収額を超えないことが立証されなければならないが,①について何ら立証がない。 - 16 -この点,談合事件の場合は,その性格上,談合がされたこと自体から損害が生じたと認められるが,本件の場合は,被控訴人らが上記主張した公益的配慮等の事情から強制執行等に踏み切ることができなかっただけであるから,談合事件と同列に論じることはできない。 (イ)談合の場合は,正常ケースの平均落札率と当該落札率の比較が統計的に可能である。しかし,不動産の価格は,経済全般の情勢のみでなく,個別物件毎の要因に影響されるから,路線価の変遷や原価償却率だけで,担保目的物からの回収可能額の減少があったと認めることはできない。すなわち「路線価評価の推移」は,個別性の大きな地,価を路線価毎に一般化し,かつ,不動産地価の市況推計にすぎない評価が介在しているもので,後者は必ずしも経済実態に即したものとはいえず,予測困難な要素の介在が著しい上,統計的な確からしさもない。したがって,路線価の変遷は相当な損害額の算定根拠事実としての合理性がない。 なお,土地の公示価格でみると,工場の土地の近隣の奈良市β×番9外は,平成19年に5万3000円であったものが,平成20年には,5万4800円に回復しており(乙ロ104,一貫して下落し)ているわけではないから,強制執行等に踏み切ることの遅れが直ちに回収額の減少に直結するものではない。 ,,,,(,また機械類は化製業すなわちと畜場から発生する残滓骨内臓,脂,皮等)を原料として油脂・飼料・肥料を製造する事業における製造機械等諸設備 減少に直結するものではない。 ,,,,(,また機械類は化製業すなわちと畜場から発生する残滓骨内臓,脂,皮等)を原料として油脂・飼料・肥料を製造する事業における製造機械等諸設備であって,それらを収納している工場の建物と一体として特殊な施設であり,その利用需要者は限られていることから,およそ流通価格を形成することはなく,会計手法上の減価償却率の適用のみで適正な価格評価はできない。 仮に,工場の土地建物の近隣不動産の価格動向をもとに損害額を算- 17 -定するとしても,平成13年度に条件変更を承認しなかったことによって遅滞が生じるのは,平成元年度貸付については,その償還期限である平成13年11月30日の,平成2年度貸付については,同平成14年2月27日の各経過後であるし,督促の上,競売申立てをしたとしても,平成15年下旬以降にならなければ,売却換価ができなかったはずである。 第3当裁判所の判断 事実経過等原判決30頁24行目から同43頁25行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,同43頁25行目の末尾に改行の上,次のとおり加える。 「(8)aの操業状況等ア本件各貸付が実行され,aの化製事業所の設備が整備された平成2年,。 ,,度以降は近隣地域の臭気公害の発生は終息したその後aの経営は上記のとおり,BSE問題の発生を受けて逼迫したが,農林水産省は,平成13年秋ころ,肉骨粉の適正処分を推進し,円滑な畜産副産物の処理の継続を通じ,と畜場機能の維持及び肉畜出荷の安定化を図ることを目的として,畜産副産物のレンダリング処理及びこれにより製造された肉骨粉の焼却処分に必要な経費の助成制度を創設し,また,上記助成の実施までの間に化製業者等が破綻することを回避するため,低利の短期資金の融資, ,畜産副産物のレンダリング処理及びこれにより製造された肉骨粉の焼却処分に必要な経費の助成制度を創設し,また,上記助成の実施までの間に化製業者等が破綻することを回避するため,低利の短期資金の融資,利子補給,借入金の損失補償制度も設けられた。aも,平成14年度は4780万円,平成15年度は6863万6000円,平成16年度は1173万7885円,平成17年度は229万7400円の製造経費の補助を受け県食肉流通センターから排出される残滓平,(成18年の推計量は,約546t)等を原材料として肉骨粉等の製造を継続したが,上記残滓のうち牛骨については自ら処理ができなかったた- 18 -め,更にk協業組合に処理を委託していた(甲42,48,乙ロ13。 ないし16,34,42,43,100ないし103,一審被告a代表者本人〔原審)〕イaは,平成19年7月に2回目の不渡り手形を出し,同月5日に銀行取引停止処分を受けた。これに伴って,aは,同年8月初旬,化製工場の操業を停止したが,その後も,牛,豚の皮をl株式会社から,油脂等をm株式会社からそれぞれ仕入れてこれを運搬する業務は継続した甲,(94の1・2,乙ロ73の1~3。 )(9)奈良県の強制執行等の状況ア奈良県は,平成19年7月9日に中小企業基盤整備機構と対応を協議した上,aの事業継続は困難であると判断して,本件各貸付金の回収手続を進めることとし,同月24日,aに対し,返済期限未到来分の償還金について,繰上償還を命じる旨の通知をした。 奈良県は,同年8月と同年9月に,a及び連帯保証人らに対し,本件各貸付に係る貸付残金全額等の支払を催告した(乙ロ52ないし62の各1・2,66の1ないし5。 )イ本件各貸付に係る債務の連帯保証人であるhは,奈良市α×番地所在の宅地191.72 に対し,本件各貸付に係る貸付残金全額等の支払を催告した(乙ロ52ないし62の各1・2,66の1ないし5。 )イ本件各貸付に係る債務の連帯保証人であるhは,奈良市α×番地所在の宅地191.72mとその地上建物(家屋番号×番,同番2。以下 これらを併せて「h自宅不動産」という)を所有していたが,これを,。 同人の二男であるiに贈与した。そこで,奈良県は,h自宅不動産について,同年8月16日付けで処分禁止の仮処分決定を得た上(奈良地方裁判所平成▲年(ヨ)第▲号,同月24日にiを被告として詐害行為取)消等請求訴訟を提起した(同裁判所平成▲年(ワ)第▲号。iは,上記)訴訟の第1回口頭弁論期日(同年10月12日)において,請求を認諾した(甲93の1・2,乙ロ35,36,63,64。 )ウ奈良県は,同年9月19日,fが所有する工場の土地及びa所有に係- 19 -る工場の建物,機械類について,本件担保権に基づいて担保不動産競売の申立てをし(奈良地方裁判所平成▲年(ケ)第▲号,同年10月3日,)同開始決定がされた(乙ロ50。 )エ奈良県は,同年12月6日,h自宅不動産について,契約公正証書に基づいて強制競売の申立てをし,同月14日に同開始決定がされた(奈良地方裁判所平成▲年(ヌ)第▲号。その入札期間中の平成20年6月)10日に任意売却に関する申出がされたため,奈良県は回収額を比較検討して,これを承諾し,任意売却による売買代金722万3000円を受領するとともに上記強制競売事件を取り下げた(乙ロ65,76の1ないし6,77,92。 )オ奈良県は,平成▲年▲月▲日,a及びfに対する破産手続開始申立てをした(奈良地方裁判所平成▲年(フ)第▲号,第▲号。なお,同日,)fが死亡したため,同年9月3日,奈良県は,同人に対する上記申 オ奈良県は,平成▲年▲月▲日,a及びfに対する破産手続開始申立てをした(奈良地方裁判所平成▲年(フ)第▲号,第▲号。なお,同日,)fが死亡したため,同年9月3日,奈良県は,同人に対する上記申立て,。 ,を取り下げその相続財産に対する破産手続開始申立てをしたその後被相続人fにつき妻であるnが単独で相続したため,奈良県は上記相続財産に対する破産手続開始申立てを取り下げ,nについて破産手続開始申立てをした(同裁判所平成▲年(フ)第▲号。 )aとnについては,同年12月19日午後5時に破産手続開始決定がされ,管財人o弁護士が選任された。a及びnについては,平成21年8月5日,破産手続が廃止され(同日,nに対しては免責許可決定がされた,同月19日,aにつき残余財産が存在しないものとなった(乙。),,,,,,,,ロ79 90の1~791の1~3 98,99,107の1・2,108の1~3,109ないし112。 )カ上記ウの担保不動産競売手続において,工場の土地建物の評価額は4161万円(一括売却,機械類の評価額は0円であった。本件工場の)土地建物は,平成21年1月27日に5145万円で落札された(甲1- 20 -02の4・5」)。 争点(1)(債権の管理を怠った違法〔地方自治法242条の2第1項3号の「怠る事実の違法〕の有無)について」(1)当裁判所も,奈良県が平成12年度まで本件各貸付について貸付条件の変更を承認し,強制執行等の措置をとらなかったことが違法ということはできないが,平成13年度以降,奈良県が貸付条件変更を承認しなかったにもかかわらず,aに対する償還請求,各保証人に対する履行請求,強制執行の手続をとらなかったことは,違法に債権管理を怠ったものと判断 できないが,平成13年度以降,奈良県が貸付条件変更を承認しなかったにもかかわらず,aに対する償還請求,各保証人に対する履行請求,強制執行の手続をとらなかったことは,違法に債権管理を怠ったものと判断する。その理由は,原判決44頁1行目から同48頁13行目までに記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,同48頁12行目から13行目までの「違法であるというべきであり,原告らの請求はその限度において理由がある」を「違法であるというべきである」に改める。 。 ,。 。)(2)被控訴人らの当審補充主張についてア被控訴人らは,奈良県が本件各貸付の条件変更を承認しなかった平成13年度以降についても,化製業者の集約化と設備の近代化を図って臭気公害を防止するとともに,食肉流通センターから排出される残滓物の引受先を確保することの重要性が現存しており,強制執行等の措置をとることは,これらの政策目的や公益性と背馳する状況があったから,地方自治法施行令171条の2ただし書の「特別の事情があると認める場合」に該当し,奈良県が本件各貸付に係る債権について,強制執行等の措置をとらなかったことは違法でないと主張する。 イしかし,地方公共団体が有する債権の管理について定める地方自治法240条,同施行令171条から171条の7までの規定によれば,客観的に存在する債権を理由もなく放置したり免除したりすることは許されず,原則として,地方公共団体の長にその行使又は不行使についての裁量はなく,地方公共団体の長は,債権で履行期限後相当の期間を経過- 21 -してもなお完全に履行されていないものについて督促をした後相当の期間を経過してもなお履行されないときは,強制執行の手続等をしなければならず(同施行令171条の2第1号及び2号,例外的に同施行令)171条の5 全に履行されていないものについて督促をした後相当の期間を経過してもなお履行されないときは,強制執行の手続等をしなければならず(同施行令171条の2第1号及び2号,例外的に同施行令)171条の5の措置(徴収停止)をとる場合又は171条の6の規定により履行期限を延長する場合その他「特別の事情」があると認める場合は,この限りでないものとされている(171条の2ただし書。 上)記法の趣旨,規定ぶりからも,上記「特別の事情」は,財務会計上の考慮に基づき,直ちに強制執行の手続等をとることが得策ではないような極めて例外的な場合を指すと解さざるを得ない。これとは別に政策的・公益的な観点をも判断要素として考慮することは法の趣旨を超えるものであって,原則として許されないと解すべきである。この点は,原判決が説示するとおりである。 ウなお,上記認定事実によれば,aは,化製業者の集約化及び設備の近代化を図るために操業を開始したものであり,これにより悪臭公害が改善された。そして,奈良県が本件各貸付の条件変更を承認しなかった平成13年度以降も,化製業者の経営破綻を回避するための公的助成を受けながら県食肉流通センターから排出される残滓処理を継続していたから,aの操業を継続させることには,被控訴人らが主張する悪臭公害の防止,奈良県下における食肉流通の円滑化という公益的な目的に合致するものがあったことは認められる。しかし,他方で,aは,平成19年8月初旬から化製工場の操業を停止しているが,この操業停止以降,奈良県内において,化製業による悪臭公害が再発したり,あるいは食肉流通センターから排出される残滓物の引受先がなくなって,同センターのと畜場としての機能が阻害されたというような事情は窺われない。 そうすると,仮に,被控訴人らが主張する公益的な目的をもって,本件 肉流通センターから排出される残滓物の引受先がなくなって,同センターのと畜場としての機能が阻害されたというような事情は窺われない。 そうすると,仮に,被控訴人らが主張する公益的な目的をもって,本件各貸付に係る債権について強制執行等の措置をとらないことを是認す- 22 -べき例外的な事情と解する余地があるとしても,そのような例外的な考慮を必要とするような事情があったとは認められない。 争点(2)(被控訴人らに対する損害賠償代位請求の可否)について(1)被控訴人らの責任についてア被控訴人e,同d,同cらの責任奈良県の債権の管理に係る事務のうち,貸付条件の変更や督促等の軽易な事務は,奈良県事務決済規程3条,別表第1の六により,商工労働部長の専決事項とされていたから(前提事実,本件各貸付に係る債権)についても,償還期日の到来した償還金等の督促は,商工労働部長が専決権限を有していた。そして,平成13年度以降,本件各貸付について条件変更を承認しなかった結果,平成13年2月27日に承認された最終の貸付条件変更に従って,平成元年度貸付については同年11月30日に1億7777万7000円の,平成2年度貸付については平成14年2月27日に3970万円の各償還期日が到来し,以後,平成19年7月24日に繰上償還を命ずる旨の通知がされるまでの間,平成元年度貸付については,平成14年ないし平成18年までの各11月30日に各1億7777万7000円についてそれぞれ償還期日が到来し,平成2年度貸付については,平成14年ないし平成19年2月の各2月27日に各3970万円の償還期日がそれぞれ到来している(前提事実。 )ところで,被控訴人eが商工労働部長の職にあったのは平成8年4月1日から平成11年3月31日までの間であり,同dが同職にあったのは平成11 970万円の償還期日がそれぞれ到来している(前提事実。 )ところで,被控訴人eが商工労働部長の職にあったのは平成8年4月1日から平成11年3月31日までの間であり,同dが同職にあったのは平成11年4月1日から平成13年3月31日までの間であったから(前提事実,被控訴人eと同dについては,商工労働部長として上記)償還期日の各到来した償還金等の督促事務に関与する余地はなかったというべきである。 これに対して,被控訴人cは,平成13年4月1日から平成16年3- 23 -月31日まで商工労働部長の職にあった(前提事実)ところ,前提事実(),及び上記認定事実原判決41頁23行目から26行目までのとおり奈良県は,上記第1回の償還期日が到来した償還金について,平成14,,年7月23日付けで同年8月30日を納付期限とする督促を行い以後それぞれ償還期日が到来した償還金について納付期限を指定して納付を催告していたものであるから,被控訴人cが,その在職期間中,本件各貸付に係る債権の管理に関し,違法にその専権に属する事務を怠ったものとは認められない。 以上によれば,本件各貸付に係る債権について,被控訴人e,同d及び同cが,違法にその管理を怠ったものとは認められず,控訴人らの上記被控訴人らに対する損害賠償代位請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 イ被控訴人bの責任(ア)被控訴人bは,平成3年11月28日から平成19年5月2日までの間,奈良県知事の職にあり,本件各貸付に係る債権の回収(繰上償還請求強制執行等について職務権限を有していたものである前,)(提事実。 )そして,上記のとおり,奈良県は,平成13年度以降,本件各貸付について条件変更を承認せず,その結果,各償還金の償還期日が到来したもので,これ 権限を有していたものである前,)(提事実。 )そして,上記のとおり,奈良県は,平成13年度以降,本件各貸付について条件変更を承認せず,その結果,各償還金の償還期日が到来したもので,これに対する弁済状況は,原判決添付の別紙充当経過一覧表①及び②記載のとおりであったから(前提事実,被控訴人bに)おいては,aに対し,すみやかに繰上償還の通知を行った上,貸付残金全額等についての履行請求,強制執行等の措置をとるべきであったといえる。しかし,上記認定事実のとおり,aに対する繰上償還を命ずる旨の通知がされたのは,被控訴人bの退職後である平成19年7月24日であり,同人は,その在職中には上記の各手続を全くとらな- 24 -かったのであるから,同人については,その過失によって,違法に債権管理を怠ったものと評価せざるをえない。 (イ)被控訴人らは,地方自治法242条の2第1項4号に基づき債権管理に必要な措置を怠ったことに関し,職員等に対し賠償責任を問い得る違法性があるというためには,客観的に手続上必要と考えられる期間内に措置ができなかっただけでは足りず,その期間に比して更に長期間にわたり遅延が続き,かつ,その間に通常期待される努力によって,遅延を解消できたのに,これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要であり,仮に,平成13年度以降,aによる本件貸付金の返済に遅滞が発生した後,強制執行等の措置をしないことについて違法性があるとしても,被控訴人らが主張する公益性等の配慮か,,ら被控訴人bには強制執行等の措置を直ちにとることが期待できず過失はなかったと主張する。 しかし,上記のとおり,地方自治体の長には,原則として,履行期を経過した債権に関してその履行を請求する,しないということについて裁量の余地があるものではないから,上記 ず過失はなかったと主張する。 しかし,上記のとおり,地方自治体の長には,原則として,履行期を経過した債権に関してその履行を請求する,しないということについて裁量の余地があるものではないから,上記地方自治法施行令の各規定に従った措置をとらなかった場合,原則として,地方自治法242条の2第1項4号の代位請求の要件としての違法性も認められ,過失の存在も推認されるというべきである。 そして,上記認定事実によれば,平成13年度の貸付条件変更が承認されなかったことにより平成元年度の貸付につき第1回の償還期日が到来してから,繰上償還を命ずる旨の通知がされるまで5年以上が経過しているのであり,その間において,aの経営が好転して返済見込みが上がったとか,仮に,奈良県が,旧事業団や民間の協調融資先に対し,繰上償還請求や強制執行等に踏み切ることの是非につき協議を求めた場合,旧事業団らがこれに反対する立場をとることが確実で- 25 -あったということも窺われない。このような状況及び被控訴人ら主張の本件各貸付の公益性・政策性に関して上記2で検討したところを総合考慮すれば,被控訴人bにおいて,繰上償還請求や強制執行等の手続を進めなかったことがやむを得ないもので,これらの手続をとることに期待し難い状況があったとは認められない。したがって,被控訴人らの主張する事情をもって,違法性阻却あるいは過失の推認を覆すに足りる事情であるということもできない。 (2)損害発生の有無ア控訴人らの主位的請求原因について控訴人らは,奈良県が本件各貸付について強制執行等をせずに放置し続けたことによって,別紙記載のとおり,本件各貸付の残元金である15億0234万9000円に対し,当初(本件各条件変更前)の各償還期日から平成19年4月3日まで民法所定の年5%の割合による利息相 続けたことによって,別紙記載のとおり,本件各貸付の残元金である15億0234万9000円に対し,当初(本件各条件変更前)の各償還期日から平成19年4月3日まで民法所定の年5%の割合による利息相当額の損害が奈良県に生じたと主張する。 しかし,控訴人ら主張の損害の発生が認められないことは,原判決49頁20行目から24行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 イ控訴人らの予備的な請求原因について控訴人らは,知事らが遅滞なく強制執行等をしなかったことによって奈良県に損害が発生したことは明らかであり,本件担保権の目的物について,平成13年に競売申立てをしていた場合の落札価格を客観的に割り出すことは困難であるから,民訴法248条を適用して損害額を算定すべきところ,工場の土地建物の落札価格,h自宅不動産の任意売却価格,路線価の下落率,建物の経済的残存耐用年数の減少から,平成13年の回収可能金額を算定すると,工場の土地建物については7717万5000円,h自宅不動産は1083万4500円となるから,少なく- 26 -とも,これらと実際の回収額との差額の合計である2933万6500円の損害が奈良県に生じていると主張する。 ,,ところで民訴法248条を適用して損害額を算定するに当たっては損害の発生自体については立証があることを要する。この点を検討するに,上記のとおり,奈良県が平成13年度の条件変更を承認しなかった結果,平成元年度貸付は平成13年11月30日に,平成2年度貸付については同平成14年2月27日に,各第1回の償還期日が到来したから,これらの期日経過後,奈良県において,速やかに,繰上償還を命ず,,る旨の通知をした上工場の土地建物や機械類につき担保不動産競売のh自宅不動産について強制競売の,各申立てをしたとしても,これら ら,これらの期日経過後,奈良県において,速やかに,繰上償還を命ず,,る旨の通知をした上工場の土地建物や機械類につき担保不動産競売のh自宅不動産について強制競売の,各申立てをしたとしても,これらの不動産等が換価されるまでには,それなりの期間を要することは,手続の性質等からみて明らかである。そして,遅滞なくこれらの強制執行等に着手した場合に工場の土地建物やh自宅不動産について推定される競売価格と,現実の工場の土地建物の落札価格(5145万円)やh自宅不動産の任意売却価格(722万3000円)とを比較した場合,前者が後者よりも常に高額となる関係にあると認めるに足りる証拠はない。 控訴人らは,上記のとおり,奈良市内の路線価が一貫して下落しているから,損害発生は明らかであると主張するが,競売価格は,一般の取引市場において形成される金額とは異なるものであるし,控訴人らが引用する路線価(宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定するもので,路線に接する宅地について,売買実例価額,公示価格,不動産鑑定士等による鑑定評価額,精通者意見価格等を基として国税局長がその路線ごとに評定した1平方メートル当たりの価額。国税庁平成3年12月18日付課評2-4,課資1-6「財産評価基本通達」14参照)とも異なるものであって,競売手続特有の価格形成要因を有するものである。このような競売価格の本質に照らせ- 27 -ば,ある特定の期間において,ある特定地域の路線価が一貫して低落傾向にあったとしても,そのことから直ちに同地域内の土地の競売価格が経年によって必ず低落するという関係を認めることはできない。また,建物についても,控訴人らが主張するように,一般的には経済的耐用年数の減少に伴う減価が認められるといえるが,競売価格の場合は,その が経年によって必ず低落するという関係を認めることはできない。また,建物についても,控訴人らが主張するように,一般的には経済的耐用年数の減少に伴う減価が認められるといえるが,競売価格の場合は,その本質に照らし,経年による減価が常に認められるものとはいえない。 そうすると,本件においては,繰上償還請求やその後の強制執行等が遅滞したことによって,工場の土地建物やh自宅不動産からの回収額が減少して奈良県に損害が発生したとの事実を認めるには足りず,被控訴人bに対する控訴人らの損害賠償代位請求も理由がない。 以上のとおりであって,控訴人らの被控訴人らに対する損害賠償代位請求,。 ,をいずれも棄却した原判決は相当であるから本件控訴は理由がないまた控訴人らの当審における請求拡張部分も理由がないから棄却すべきである。 ,,,なお原判決主文第1項は当審における控訴人らの訴えの取下げによって原判決主文第2項及び第3項は一審被告aの法人格の消滅による訴訟の当然終了によって,それぞれ当然にその効力を失っているからその旨を明らかにすることとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第10民事部裁判長裁判官赤西芳文裁判官小野木等裁判官久保井恵子
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