令和6(行ケ)10036 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年1月15日 知的財産高等裁判所 1部 判決 訴却下
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判決文本文7,450 文字)

- 1 - 令和7年1月15日判決言渡令和6年(行ケ)第10036号審決取消請求事件判決 原告 DMG森精機株式会社 同訴訟代理人弁理士越村優一薮 慎吾 被告特許庁長官 主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 特許庁が不服2022-8864号事件について令和6年3月5日にした審決を取り消し、不服2022-8864号事件の請求の趣旨どおり「補正却下の決定を取り消し、当該補正に基づいて、原査定を取り消す、本願の発明は特許すべきものとする。」。 2 特許庁が不服2022-8864号事件について令和6年3月5日にした審 決「原査定を取り消す。本願の発明は、特許すべきものとする。」は、不服2022-8864号事件の請求の趣旨どおり「補正却下の決定を取り消し、当該補正に基づいて、原査定を取り消す、本願の発明は特許すべきものとする。」である。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 特許出願- 2 - 原告は、2020年(令和2年)2月20日を国際出願日(優先日:平成31年2月25日)とする特許出願をした(特願2020-542668。以下「本願」という。また、明細書、特許請求の範囲及び図面を併せて「明細書等」という。)。 (2) 審査段階における手続等本願については、数度にわたり拒絶理由の通知と手続補正書の提出がされたが、 審査官は、令和3年7月28日付けで最後の拒絶理由の通知(甲14)をした。原告は、同年11月24日付けで意見書を提出するとともに、同日付け手続補正書を提出 の通知と手続補正書の提出がされたが、 審査官は、令和3年7月28日付けで最後の拒絶理由の通知(甲14)をした。原告は、同年11月24日付けで意見書を提出するとともに、同日付け手続補正書を提出した(甲2。同手続補正書による補正を以下「本件補正1」という。)。 審査官は、令和4年2月16日付けで、本件補正1につき補正の却下の決定(甲12。以下「本件補正却下決定」という。)をした上で、本願につき拒絶査定をした (以下「本件拒絶査定」という。)。 (3) 審判段階における手続等原告は、令和4年5月23日、上記拒絶査定につき拒絶査定不服審判を請求し、その請求の趣旨において、「補正却下の決定を取り消し、当該補正に基づいて、原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする。」との審決を求めた(甲13)。 なお、原告は、同請求と同時に明細書等の補正をしなかった。 審判官は、令和5年4月5日付けで拒絶理由の通知(甲11)をした。同通知には、本件補正却下決定は不適法であるから取り消されるべき旨が記載されるとともに、本件補正1による補正後の本願につき新たに拒絶理由を通知する旨が記載されていた。 原告は、同年6月9日、意見書(甲27)及び手続補正書(甲26)を提出したが、審判官は、同年9月26日付けで拒絶理由の通知(甲5)をした。 原告は、同年12月4日付けで意見書(甲10)を提出するとともに、同日付けで手続補正書を提出した(甲28。同手続補正書による補正を以下「本件補正2」という。)。原告は、同意見書において、「審判請求人は、本願の審判請求時の請求項 1(補正却下決定された請求項1)に係る発明は、特許されるべきものと考える。 - 3 - さらに、本意見書と同日付で手続補正書を提出しているが、その手続補正書の請求項 審判請求時の請求項 1(補正却下決定された請求項1)に係る発明は、特許されるべきものと考える。 - 3 - さらに、本意見書と同日付で手続補正書を提出しているが、その手続補正書の請求項1に係る発明についても、特許されるべきものと考える。」との意見を述べた。 令和6年3月5日、「原査定を取り消す。本願の発明は、特許すべきものとする。」との審決(以下「本件審決」という。)がされ、その謄本は同月19日に原告に送達された。 2 本件審決の要旨本件審決の理由の要旨は、次のとおりである。 (1) 本件補正却下決定の適否について本件補正却下決定は、本件補正1が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認めたものの、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記メッシ ュ画像全体に対して1つの特徴量を算出し、」との発明特定事項につき、「メッシュ画像全体」との記載が「1つのメッシュ画像全体」を示すのか「複数のメッシュ画像全体」を示すのかが不明確であるから、請求項1に係る発明は明確でなく、独立して特許を受けることができるものではないことを理由に、本件補正1を却下した(特許法(以下「法」という。)17条の2第6項が準用する法126条7項)。 しかし、本件補正1による補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載を全体としてみると、「メッシュ画像のそれぞれ」について「1つの特徴量」が算出され、判定用パラメータとそれぞれの「1つの特徴量」とを用いてそれぞれ「切屑情報」を判定し、出力するものであると解される。また、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、上記発明特定事項における特徴量は、各メッシュ画像に対してそれぞれ算出さ れ、それぞれについて切屑情報の判定に用いられるものといえる。 したがって、本件補正1による補正後の 記載を参酌すると、上記発明特定事項における特徴量は、各メッシュ画像に対してそれぞれ算出さ れ、それぞれについて切屑情報の判定に用いられるものといえる。 したがって、本件補正1による補正後の特許請求の範囲の請求項1における「メッシュ画像全体」との記載は、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 そうすると、本件補正1による補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は 明確であり、法36条6項2号の要件を満たしているから、本件補正1を却下した- 4 - 本件補正却下決定は不適法であり、取り消されるべきものである。 (2) 本件発明審判官は、令和5年4月5日付け拒絶理由通知において、上記(1)のとおり本件補正却下決定は取り消されるべきものである旨を明示し、本件補正1による補正後の請求項1に係る発明について審理を進めたところ、同年12月4日付け手続補正書 により本件補正2がされた。その結果、本願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、本件補正2によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。 (3) 本件拒絶査定の理由についての判断本件拒絶査定の理由のうち、理由1(新規事項)及び理由2(明確性)について は、令和3年6月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4の記載事項に対するものであって、本件発明は、当該記載事項により発明を特定するものではないから、これらの理由によっては本願を拒絶することはできない。 本件拒絶査定の理由のうち、理由3(進歩性)については、本件発明は、引用文献1に記載された発明、並びに、引用文献2~5及び参考文献に記載された技術的 事項に基づいて、当事者が容易に発明をする 本件拒絶査定の理由のうち、理由3(進歩性)については、本件発明は、引用文献1に記載された発明、並びに、引用文献2~5及び参考文献に記載された技術的 事項に基づいて、当事者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、この理由によっては本願を拒絶することはできない。 (4) 審判官が通知した拒絶理由についての判断審判官が令和5年9月26日付けでした拒絶理由通知に記載された理由1(明確性)及び理由2(サポート要件)は、原告が同年12月4日に提出した意見書に記 載された主張を踏まえると、これらの理由によっては本願を拒絶することはできない。 (5) 結論以上によると、本願については、本件拒絶査定の拒絶理由及び審判官が通知した拒絶理由のいずれによっても拒絶すべきとすることはできず、他に本願を拒絶すべ き理由を発見しない。 - 5 - したがって、本件拒絶査定を取り消し、本願の発明は特許すべきものとする。 第3 原告の主張 1 本件訴えの適法性について本件審判は、審判段階でされた本件補正2による補正後の特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本件補正発明2」という。)を「本件発明」として、これを 特許すべきものとした。原告が特許を求めている発明は、本件補正1による補正後の特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本件補正発明1」という。)である。 本件審決が取り消されれば、原告は、本件補正発明1について特許を受けることができるようになるのであるから、原告には、本件審決を取り消す利益があるというべきであって、本件訴えにつき訴えの利益を有する。 2 本件審決の誤り(1) 法153条3項違反原告は、拒絶査定不服審判の請求の趣旨に「補正却下の決定を取り消し、当該補正に基づいて、原査定を取り 、本件訴えにつき訴えの利益を有する。 2 本件審決の誤り(1) 法153条3項違反原告は、拒絶査定不服審判の請求の趣旨に「補正却下の決定を取り消し、当該補正に基づいて、原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする。」と記載したが、本件審決の結論は、「原査定を取り消す。本願の発明は、特許すべきものとす る。」というものであった。 本件審決は、まず、結論において、本件補正却下決定を取り消す旨を記載していない。次に、このため、本件拒絶査定に係る発明(令和3年6月3日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲に記載された各発明)が「本願の発明」となるはずであるが、本件審決はこれとは異なる発明を「本件発明」として特許している。 このように、本件審決が本件補正却下決定を取り消していないことは、審判請求人が申し立てた請求の趣旨についてのみ審理すべきとする法153条3項の規定に違反するから、本件審決は取り消されるべきである。 (2) 法153条1項違反、手続違背審判官は、本件補正却下決定が取り消されるべきと判断したのであれば、本件補 正1に基づいて本件拒絶査定の理由について審理すべきであり、これらの理由は本- 6 - 件補正1により解消されているから、本件補正発明1が特許されるべきであった。 しかし、審判官は、本件拒絶査定の理由の審理を行わず、新たに発見した拒絶理由を通知するなどした。これは、法153条1項の職権審理の範囲を逸脱した違法な手続であり、重大な瑕疵があるから、本件審決は取り消されるべきである。 (3) 行政手続法8条1項、14条1項違反 原告は、拒絶査定不服審判の請求の趣旨の記載により、本件補正却下決定の適法性を争うとともに、本件補正発明1につき特許されるべきことを求めたものである。 3) 行政手続法8条1項、14条1項違反 原告は、拒絶査定不服審判の請求の趣旨の記載により、本件補正却下決定の適法性を争うとともに、本件補正発明1につき特許されるべきことを求めたものである。 しかし、審判官は、本件補正発明1が特許されるべきかを判断せず、その理由を記載することもなく、権利範囲が制約された本件補正発明2につき特許すべきものとした。これは、実質的に原告の申請による許認可を拒否する処分であり、かつ、不 利益処分であるのに、本件審決にはその理由が記載されていない。同様に、本件審決の前段階でされた令和5年4月5日付け拒絶理由の通知にも、本件拒絶査定の理由によっては本願を拒絶すべきでないと判断した理由が記載されていない。これらによると、本件審決は、行政手続法8条1項、14条1項にいずれも違反してされたものといえるから、取り消されるべきである。 (4) 法159条2項違反審判官は、拒絶査定不服審判において、新たな拒絶理由の通知をしているが、これらの理由は、恣意的に作出された理由のないものであったから、法159条2項の規定に違反してされたものである。このような審理上の違法があった本件審決は取り消されるべきである。 (5) 法1条違反審判官は、令和5年9月26日付け拒絶理由の通知において、「補正等の示唆」をしているが、発明者に確認したところ、審判官が示唆した発明の権利範囲では原告の製品を保護できないことが判明した。原告は、その旨を意見書において指摘したが、本件審決がされた。本件審決が特許した本件補正発明2は、原告製品を保護し ないから、公開の代償として権利を付与するという法の目的に反する。したがって、- 7 - 本件審決は、法1条に違反するものであり、取り消されるべきである。 3 本来され 告製品を保護し ないから、公開の代償として権利を付与するという法の目的に反する。したがって、- 7 - 本件審決は、法1条に違反するものであり、取り消されるべきである。 3 本来されるべき審決原告は、本件補正1を却下した本件補正却下決定に対する不服を申し立てるために、拒絶査定不服審判請求をした(法53条3項ただし書)。そして、本件補正却下決定が取り消されるのであれば、本件補正1により、審査官による拒絶の理由は解 消されており、本件補正発明1が特許されるべきであった。また、審判段階で新たな拒絶の理由として通知されたものはいずれも恣意的に作出された理由のないものであるから、本来、通知されるべきものではなく、通知がされていなければ原告が本件補正2をすることもなかったのであるから、やはり、本件補正発明1が特許されるべきであった。 したがって、審判官は、原告の請求の趣旨どおり、「補正却下の決定を取り消し、当該補正に基づいて、原査定を取り消す、本願の発明は特許すべきものとする。」との審決をすべきであった。本件審判は取り消され、上記の趣旨の審判がされるべきである。 第4 当裁判所の判断 1 請求の趣旨第1項の後段及び第2項について原告の請求(前記第1)のうち、1項の後段(「不服2022-8864事件の請求の趣旨どおり「補正却下の決定を取り消し、当該補正に基づいて、原査定を取り消す、本願の発明は特許すべきものとする。」。」との部分)及び2項の請求については、原告が正当と考える審決の結論を判決において宣言することを求めるもの と解される。 しかし、裁判所は、審決取消訴訟において、請求を理由があると認めるときは、当該審決を取り消さなければならず(法181条1項)、その判決が確定したときは、審判官において るもの と解される。 しかし、裁判所は、審決取消訴訟において、請求を理由があると認めるときは、当該審決を取り消さなければならず(法181条1項)、その判決が確定したときは、審判官において更に審理を行い、審決をしなければならないものである(同条2項)。 これらの規定に照らすと、原告が正当と考える審決の結論を裁判所に宣言するこ- 8 - とを求めるこれらの請求は、いずれも不適法である。 2 請求の趣旨第1項の前段の訴えについて(1) 訴えの利益について原告の請求のうち1項の前段(「特許庁が不服2022-8864事件について令和6年3月5日にした審決を取り消し、」との部分)は、本件審決の取消しを求 めるものと解される。 しかし、本件審決は、原査定である本件拒絶査定を取り消した上で、原告の判断によって最後にされた補正である本件補正2による補正後の特許請求の範囲の請求項1記載の発明(本件補正発明2)を特許すべきとするものであり、審判請求人である原告の請求を全て認めているものであるから、原告にこれを取り消す利益はな いというべきである。 したがって、上記請求は、訴えの利益を欠くものとして不適法である。 (2) 原告の主張について原告は、原告が特許を求めている発明は本件補正1による補正後の特許請求の範囲の請求項1記載の発明(本件補正発明1)であり、本件審決が取り消されれば、 原告は本件補正発明1につき特許を受けることができるようになるから、原告には本件審決を取り消す利益があると主張する。 しかし、原告は、拒絶査定不服審判の請求の趣旨には「補正却下の決定を取り消し、当該補正に基づいて、原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする。」と記載していたが、審判段階で新たな拒絶理由の通知を受け、その 、拒絶査定不服審判の請求の趣旨には「補正却下の決定を取り消し、当該補正に基づいて、原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする。」と記載していたが、審判段階で新たな拒絶理由の通知を受け、その後、特許請求の 範囲の各補正(令和5年6月9日付け手続補正書(甲26)による補正、同年12月4日付け手続補正書(甲28)による本件補正2)をしているのであるから、原告は、審判手続において、自らの判断により、最後にされた本件補正2による補正後の発明(本件補正発明2)について特許すべきことを求めるに至ったとみるほかはない。そして、本件審決は、原告の請求どおり、本件補正発明2を特許すべき旨 の結論に至ったのであるから、先に自らの判断によって行った補正を否定して、補- 9 - 正をしなかったならばされたであろう発明への特許を求めるために、請求どおりにされた審決の取消しを求めることは許されないというべきである。 したがって、原告の主張は採用することができない。その他、原告が主張する手続の経緯等をもっても、上記結論は左右されない。 3 結論 以上のとおり、本件訴えの全ては不適法であるところ、その性質上、その不備を補正することはできないから、行政事件訴訟法7条、民訴法140条に基づき、口頭弁論を経ないで本件訴えをいずれも却下することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官本多知成 裁判官遠山敦士 裁判官 裁判官 遠山敦士 裁判官 天野研司

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