平成15(ワ)611 損害賠償請求事件(交通事故)

裁判年月日・裁判所
平成17年3月29日 名古屋地方裁判所
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判決文本文48,395 文字)

平成17年3月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成15年(ワ)第611号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成16年12月14日判決 主文 1 被告社会福祉法人相和福祉会及び被告Aは,原告Bに対し,連帯して金2937万1571円及びこれに対する平成14年9月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告社会福祉法人相和福祉会及び被告Aは,原告Cに対し,連帯して金2937万1571円及びこれに対する平成14年9月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告らと被告社会福祉法人相和福祉会及び被告Aとの間に生じた費用については,これを2分し,その1を被告社会福祉法人相和福祉会及び被告Aの負担とし,その余を原告らの負担とし,原告らと被告D及び被告Eとの間に生じた費用については,原告らの負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら(1) 被告らは,原告Bに対し,連帯して金6559万5046円及びこれに対する平成14年9月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告らは,原告Cに対し,連帯して金6559万5046円及びこれに対する平成14年9月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,被告らの負担とする。 (4) 仮執行の宣言 2 被告ら(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は,原告らの負担とする。 第2 事実関係本件は,被告社会福祉法人相和福祉会(以下「被告法人」という。)経営のめぐみ保育園(以下「本件保育園」という。)の園舎屋上に設置した駐車場から乗用車が転落し は,原告らの負担とする。 第2 事実関係本件は,被告社会福祉法人相和福祉会(以下「被告法人」という。)経営のめぐみ保育園(以下「本件保育園」という。)の園舎屋上に設置した駐車場から乗用車が転落し,園庭にいた園児が死亡した事故(以下「本件事故」という。)につき,同園児の父母が,① 被告法人に対して,幼児保育委託契約による安全配慮義務不履行責任,民法709条による安全配慮義務違反の不法行為責任ないし保育士の同義務違反に関する同法715条1項の使用者責任,上記駐車場の設置又は保存の瑕疵による同法717条1項の土地工作物所有者責任に基づき,② 被告法人の代表者理事D(以下「被告D」という。)及び本件保育園の園長E(以下「被告E」という。)に対して,安全配慮義務不履行責任,民法709条による安全配慮義務違反の不法行為責任ないし保育士の同義務違反に関する同法715条2項の監督者責任に基づき,③ 上記乗用車の運転者被告A(以下「被告A」という。)に対して,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条本文ないし民法709条の不法行為責任に基づき,上記園児の損害及び原告ら固有の慰謝料として,各原告につき,連帯して金6559万5046円及びこれに対する本件事故の日である平成14年9月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実(証拠を示した部分以外は当事者間に争いがない。)(1)ア原告らはF(平成11年6月26日生,以下「F」という。)の父母である。 イ被告法人は,名古屋市a区b町cd番地f所在の本件保育園を経営しているものである。 被告Dは,被告法人の代表者理事であり,被告Eは,本件保育園の園長である。 ウ原告らは,平成13年4月ころ,被告法人 告法人は,名古屋市a区b町cd番地f所在の本件保育園を経営しているものである。 被告Dは,被告法人の代表者理事であり,被告Eは,本件保育園の園長である。 ウ原告らは,平成13年4月ころ,被告法人との間で,Fについて,幼児保育委託契約(以下「本件保育委託契約」という。)を締結した。 (2) 本件事故の発生(甲3ないし21,23ないし26,証人G,同H)ア本件保育園は,園庭の西側に二階建ての園舎があり,園庭の北側と南側にも園舎があり,園庭を囲んでコの字型(北が下)に園舎が配置されている状態である。 園庭の北側が本件保育園の正面入口であるところ,平坦な園庭の南側は崖下となっている。南側の園舎(以下「本件南側園舎」という。)はその西側部分が二階建てであり,その東側部分が一階建てであり,その一階建て部分の屋上に駐車場(崖上の公道と接している,以下「本件駐車場」という。)が設置されていて,本件事故当時,本件保育園の職員及び保護者が崖上の公道(以下「本件車道」という。)を通って駐車ないし方向転換する場所に使用されていた。 本件保育園における本件駐車場の位置関係は,ほぼ別紙図面1のとおりである(なお,本件南側園舎の北側に面してテラス部分があるが,以下これを含めて「本件園庭」という。)。本件駐車場の北端から本件園庭までは垂直に約3.6メートルある(その具体的内容は後記のとおりである。)。 イ被告Aが運転する自動車(登録番号名古屋34と9164,以下「A車」という。)が,平成14年9月18日午後4時5分ころ,本件駐車場の北側からA車前部を北に向けた状態で本件園庭に転落した。A車はフロント先端部分が先に本件園庭に着地したが(転落したときのA車のフロント先端部分は,本件南側園舎北側壁の基礎部分から約4.3メートル北の本件園庭に位置していた。),その後,同車 庭に転落した。A車はフロント先端部分が先に本件園庭に着地したが(転落したときのA車のフロント先端部分は,本件南側園舎北側壁の基礎部分から約4.3メートル北の本件園庭に位置していた。),その後,同車はタイヤを下にした状態で本件園庭に着地した。 ウ上記転落により,A車がFの上に乗り,Fは,同車の下敷きになって,頭蓋骨陥没,左足大腿部・下腿部骨折の傷害を負い,同日午後6時30分ころ死亡した。 (3) 被告Aの責任ア被告Aは,自己のためにA車を運行の用に供する者であるところ,平成14年9月18日午後4時5分ころ,A車を本件駐車場において運転し,上記のごとき本件事故を起こした。 よって,被告Aは,自賠法3条本文による損害賠償責任を負う。 イまた,被告Aは,運転操作を誤って,A車を本件駐車場から車止めを乗り越え,本件駐車場の柵(以下「本件駐車場柵」という。)を突き破って本件園庭に転落させた過失があり,民法709条の不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 2 被告法人,被告D及び被告E(以下同被告3名については,「被告法人ら」という。)の責任について【原告らの主張】(1) 債務不履行責任(危険防止に配慮すべき安全配慮義務)ア被告法人は,本件保育委託契約に基づく義務として,保育に当たり,児童の生命,身体及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている。このことは,児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号)5条2項が「児童福祉施設の構造設備は,採光,換気等入所している者の保険衛生及び此等の者に対する危害防止に十分な考慮を払って設けられなければならない。」と定めていることからも明らかである。 イ被告Dは,被告法人の代表者理事として,同被告からその業務執行を全面的に委任あるいは準委任されている契約関係にあった。また,被告Eは,本件 なければならない。」と定めていることからも明らかである。 イ被告Dは,被告法人の代表者理事として,同被告からその業務執行を全面的に委任あるいは準委任されている契約関係にあった。また,被告Eは,本件保育園の園長及び社会福祉法上の専任の管理者(同法61条)として,被告法人から同園に関する業務の執行につき,全面的に委任あるいは準委任されている契約関係にあった。 このような事実関係においては,被告D及び被告Eは,信義則上,保育園の園児達に対し,安全配慮義務を負う。安全配慮義務は,「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触に入った当事者間において」存するものであり(最高裁第三小法廷昭和50年2月25日判決),安全配慮義務を認めるには,配慮義務者と要配慮者との間に直接の契約関係は必要ない。被告D及び被告Eは,原告らと被告法人との間の本件保育委託契約及び被告法人と被告D及び被告Eとの間の委任ないし準委任契約を媒介として間接的に成立した法律関係に基づいて,Fと特別な社会的接触の関係に入っていたのであり,被告D及び被告Eは,信義則上,Fに対し,本件保育委託契約に準ずる法律関係上の安全配慮義務を負っていた。 ウ被告法人らの債務不履行責任の具体的内容(ア) 多くの園児達が利用する本件園庭に接した本件南側園舎の上部に屋上を利用した本件駐車場を設けることは,道路に面した立体駐車場以上の危険性があったのであり,被告法人らは,このような園児達にとって極めて危険な場所には自動車の駐車場を設置すべきではなかった。 しかし,被告法人らは,その義務を怠り,本件園庭に接する本件南側園舎の屋上という極めて危険な場所に本件駐車場を設置した。 (イ) 少なくとも,本件駐車場では,本件事故前の平成14年2月,自動車が本件駐車場柵(実際は本件駐車場柵根本の高さ25センチメートルのコン 園舎の屋上という極めて危険な場所に本件駐車場を設置した。 (イ) 少なくとも,本件駐車場では,本件事故前の平成14年2月,自動車が本件駐車場柵(実際は本件駐車場柵根本の高さ25センチメートルのコンクリート製埋込部)に衝突し,本件駐車場柵や根本のコンクリートが破損する事故(以下「本件駐車場2月事故」という。)が発生したのであるから,被告法人らは,本件駐車場2月事故の後,本件駐車場の使用を直ちに中止すべき義務があったが,被告法人らはその義務を怠った。 すなわち,被告法人らには,児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号)により,保育所の構造設備を園児に対する危害防止に十分な考慮を払って設ける義務がある。 本件駐車場2月事故は,自動車がゆるゆると滑るように手すりにぶつかったというものであり,同自動車の破損状況からもわかるように,その衝突の程度は軽微であった。それにもかかわらず,本件駐車場柵やその支柱の根本のコンクリート部分が破壊され,自動車は転落寸前であった。 被告法人の代表者理事被告D及び園長被告Eは,本件駐車場2月事故及びその破損状況を知っており,被告Eは,本件駐車場柵の根本のコンクリートが壊れており,本件駐車場柵が外れているのを見ていた。被告Dは,本件駐車場2月事故の発生は聞いたが,事故状況を確認しなかったというが,現場を見ていないはずはないし,仮に確認さえしなかったとすれば,確認しないことが重大な義務違反である。 (ウ) 仮に,被告法人らが本件駐車場を設置したこと自体を安全配慮義務違反とはいえないとしても,被告法人らには,本件駐車場に,屋上から自動車が転落して園児に危険が及ぶことがないような装置を設置する義務,具体的には,少なくとも,本件事故当時,国土交通省が,立体駐車場における自動車の転落防止対策について定めていた設計指針 ,屋上から自動車が転落して園児に危険が及ぶことがないような装置を設置する義務,具体的には,少なくとも,本件事故当時,国土交通省が,立体駐車場における自動車の転落防止対策について定めていた設計指針の基準である「立体駐車場における自動車転落事故防止対策について(昭和61年9月1日住指発185号)・建設省住宅局建築指導課長から特定行政庁建築主務部長宛」における「床面からの高さ60センチメートルの位置で,幅160センチメートルにわたり,25トンの衝撃力が加わっても自動車の転落を有効に防止できるような装置等」を設置する安全配慮義務があった。 本件事故当時,上記昭和61年9月1日住指発185号が本件駐車場を適用範囲としていなかったとしても,上記児童福祉施設最低基準に定められている義務からすれば,最低限,上記装置等を設置する義務があった。 しかるに,本件駐車場柵の強度は,10キロニュートン程度の強度しかなく,自動車の転落防止にほとんど意味をなさないものであった。 また,本件駐車場柵以外の部分も,被告Dの指示により,建築確認申請を受けた構造よりも更に危険な構造に変更して施工された。 すなわち,当初,本件駐車場は,自動車4台分の駐車場として設計され,車止めの形も通常一般的な駐車場で使用される凸型の車止めであり,本件駐車場柵の根本のコンクリートの基礎部分(以下「本件駐車場柵の基礎」という。)の高さは35センチメートルないし40センチメートルで設計され,被告法人は,上記設計で建築確認を受けた。 ところが,被告Dは,車止めを別紙図面2のように変更するように指示し,その結果,本件駐車場柵の基礎(腰壁)の高さは25センチメートルと低くなった。さらに,自動車が変更後の車止めに乗り上げた場合,車止めが車体前方(前進駐車の場合)又は後方(後進駐車の場合)を持ち上げる の結果,本件駐車場柵の基礎(腰壁)の高さは25センチメートルと低くなった。さらに,自動車が変更後の車止めに乗り上げた場合,車止めが車体前方(前進駐車の場合)又は後方(後進駐車の場合)を持ち上げる構造になって,ステップ台のような役割を果たすことになってしまい,かつ,強度の弱い本件駐車場柵の上部を押し込むことになって,車両転落事故が起こる危険性を増大させた。 そして,被告法人らは,本件駐車場2月事故が起こったにもかかわらず,補修工事を事故車の保険会社に任せ,補修工事に当たった株式会社I工務店(以下「I工務店」という。)と補修方法につき話合いもせずに,従前よりも強い強度にしてほしいという指示もしなかった。その結果,以前と同程度に復旧する内容の補修がされただけであった。 なお,本件保育園は,通常の平坦な地形にある保育園と異なり,本件駐車場から見ると,本件園庭がすり鉢の底のような地形にあり,本件駐車場は上記のとおり大変危険な場所にあったが,他方,本件保育園は,北側の正面から見ると高低差4.6メートルの階段を上り下りしなければ保育園内と行き来できないという,保育園としては極めて不合理な地形,構造の保育園であった。そのため,被告Aのような身体に障害を持つ者が,本件駐車場の利用を希望することになったのである。 (エ) 上記のとおり,被告法人らは,本件南側園舎の屋上に本件駐車場を設置する際,駐車場から園庭に自動車が転落するのを防止するに足りる装置を設置せず,しかも,本件駐車場では,自動車が本件駐車場柵に衝突して本件駐車場柵やその支柱の根本の本件駐車場柵の基礎コンクリートが破損するという本件駐車場2月事故が起こっていた。 そうであれば,仮に,被告法人らに上記の義務がなかったとしても,被告法人らには,本件園庭のうち,本件駐車場から自動車が落下した場合に園 ンクリートが破損するという本件駐車場2月事故が起こっていた。 そうであれば,仮に,被告法人らに上記の義務がなかったとしても,被告法人らには,本件園庭のうち,本件駐車場から自動車が落下した場合に園児達に危険が及ぶ範囲内には,園児達が立ち入れないようにするために,①緑地帯や花壇にしたり,柵等を設ける,②保育士らに対して,少なくとも保護者らの送迎時間帯には,上記危険が及ぶ範囲内に園児達を近づけないように指導する等して,未然に園児の危険を防止すべき義務があった。 しかし,被告法人らは,その義務を怠り,保育士のH(以下「H保育士」という。)は,午後4時ころという保護者が園児の迎えに来る時間帯に,園児達に対し,本件駐車場のすぐ近くの本件園庭に,本件南側園舎を背にして,腰を床面につけて座るよう指示した。 (オ) 本件駐車場では,本件駐車場2月事故が起こっていたのであるから,被告法人らは,本件駐車場柵強度が上記昭和61年9月1日住指発185号の基準を満たしていたか否かにかかわらず,本件駐車場の利用者及び利用方法に関して,安全配慮のための制限をするなどして,園児達の生命及び身体を危険から保護し,危険防止に配慮すべき義務があった。 すなわち,被告法人らは,本件駐車場の利用者に対し,少なくとも軽自動車より大きい自動車の駐車を禁止し,かつ,高齢者や身体障害者等運転ミスを起こす可能性の高い者が運転する自動車の駐車を禁止し,かつ,その必要性を保護者会を通して説明するなどしてその指示を徹底させるなどの安全配慮をして,事故の発生を未然に防止すべき義務があった。 ところが,被告法人らは,上記義務を怠り,本件駐車場のうち,A車が転落した場所を単なる駐車場より更に危険な「方向転換場所」に指定した。 本件駐車場は,自動車4台分の駐車場として設計され,また,車止めの形も駐 ,被告法人らは,上記義務を怠り,本件駐車場のうち,A車が転落した場所を単なる駐車場より更に危険な「方向転換場所」に指定した。 本件駐車場は,自動車4台分の駐車場として設計され,また,車止めの形も駐車台数と場所が事実上指定される通常の凸形の車止めで設計されていたところ,被告Dが,車止めを別紙図面2のように変更するよう指示した。この変更により,4台以上の自動車の駐車が可能になり,被告E及び保育士主任のO(以下「O主任」という。)らが勝手に線を引いて7台分の駐車場又は5台分の駐車場及び方向転換場所として使用しようとした。 その結果,本件駐車場では方向転換することも容易でなく,平成13年6月には近所の人から,本件保育園の保護者が近所の花壇に車を乗り入れて方向転換しているという苦情が寄せられた。 本件事故当時,本件駐車場は狭く,方向転換場所も狭いため,本件駐車場の一部であっても自動車が止まっていれば,方向転換が困難となるため,その手前で停車し,本件駐車場が空いてから移動するしかない状況であった。被告法人らは,そのような狭い駐車場において,本件現場を単なる駐車場所より更に危険な方向転換場所に指定したのである。 被告法人らは,75歳という高齢であり,右目の視力がなく,左耳の聴力がなく,右耳も補聴器を必要とし,高血圧で,右足が不自由な身体障害者である被告Aに対し,被告Aが日産ラルゴという車両重量1530キログラムの大きなA車に乗っているのを知りながら,平成14年6月下旬ころ,同車を本件駐車場に駐車することを許可した。そして,高齢で足が不自由な被告Aが,日産ラルゴ(A車)を運転していることを知りながら,被告Aに対して本件駐車場の使用許可を検討するとすれば,その際,被告法人らは,被告Aの身体状況や健康状況を十分調査すべき義務があったのに,これを怠った。 ラルゴ(A車)を運転していることを知りながら,被告Aに対して本件駐車場の使用許可を検討するとすれば,その際,被告法人らは,被告Aの身体状況や健康状況を十分調査すべき義務があったのに,これを怠った。 また,本件駐車場の利用方法について,軽自動車やトヨタヴィッツ,日産マーチ程度の小型乗用車に限定したようであるが,保護者会を通して園児たちの安全面配慮からの必要性を伝え,徹底することをしなかったため,保護者にはきちんと伝わっておらず,利用方法についての管理も事実上していなかった。駐車許可証の交付や利用方法の確実な管理も怠っていた。これは,本件駐車場の駐車位置や方向転換場所の指定について園児たちの危険防止に十分配慮すべき義務を怠る行為である。 エ保育士らの義務違反による被告法人の債務不履行責任(ア) 保育士らには,以下の注意義務違反があり,保育士は被告法人の履行補助者であるから,同義務違反について責任を負う。 ⅰ 本件保育園では,本件駐車場2月事故が起こっており,H保育士は,同事故現場を見て,本件駐車場柵及び本件駐車場柵の基礎であるコンクリートの破損状況を知っていた。 また,同破損状況は本件園庭からも見える位置にあったので,保育士のJ(以下「J保育士」という。),同K(以下「K保育士」という。),同L(以下「L保育士」という。)らも,同破損状況を容易に確認できた。 したがって,同保育士らは,本件事故の危険性を予見でき,園児らに対し,本件園庭のうち園舎の屋上から車が落下した場合に危険が及ぶ範囲内には近づかないように配慮して,園児らの危険を未然に防止すべき義務があったのに,同保育士らはその義務を怠った。本件事故当日,H保育士は,園児らに対し,午後4時ころという保護者が園児の迎えに来る時間帯に,本件駐車場に近い本件園庭で,本件南側園舎を背に,床に腰 き義務があったのに,同保育士らはその義務を怠った。本件事故当日,H保育士は,園児らに対し,午後4時ころという保護者が園児の迎えに来る時間帯に,本件駐車場に近い本件園庭で,本件南側園舎を背に,床に腰を下ろさせて園児らを整列させるという危険な指示をした。 ⅱ 保育士らは,本件駐車場において,異常な音,振動又は駐車場施設の異変が発生した場合には,直ちに園児達の安全を確保するための対処をする義務があった。 本件事故について,A車は本件駐車場柵に一度しか衝突していないが,仮に,二度衝突したとすれば,一度目の衝突と二度目の衝突までの間に20秒ないし30秒の時間はあった。したがって,保育士らは,一度目の衝突の後,直ちに危険を察知し,園児達に対し,本件事故現場からできるだけ離れて避難するよう指示し,又は救助する義務があったにもかかわらずその義務を怠った。 (2) 不法行為責任(安全配慮義務違反)及び使用者責任被告法人らは,保育にあたり,園児達の生命,身体及び健康等の危険防止に十分な配慮をすべき義務がある。 被告法人らは,Fに対して安全配慮義務があるにもかかわらず,上記第2,2原告らの主張(1)のとおり,これを怠った過失があり,民法709条の不法行為責任を負う。 また,被告法人は,その事業の執行について被用者である保育士らの上記第2,2原告らの主張(1)エのとおりの注意義務違反の過失につき,同法715条1項の使用者責任を負う。 (3) 不法行為責任(工作物責任)被告法人は,本件駐車場を含む本件保育園園舎の所有者であるところ,上記第2,2原告らの主張(1)ウ(ア)ないし(ウ)記載のとおり,本件駐車場の設置又は保存上の瑕疵により本件事故が発生したものであるから,民法717条1項の土地の工作物所有者責任を負う。 【被告法人らの主張】(1) 被告法人ら ウ(ア)ないし(ウ)記載のとおり,本件駐車場の設置又は保存上の瑕疵により本件事故が発生したものであるから,民法717条1項の土地の工作物所有者責任を負う。 【被告法人らの主張】(1) 被告法人らが安全配慮義務を負う点について被告D及び被告E個人は,原告らとの間に,Fに対する幼児保育委託契約を締結していないから,代表者理事又は園長であるからといっても,同契約の当事者と同等の安全配慮義務を負うことはあり得ない。 (2) 本件駐車場の設置,構造上の責任についてア本件駐車場は,その下の本件南側園舎と一括で下記のとおり建築確認申請がされ,園舎の計画及び工事とも,建築基準関係規定に適合している。本件駐車場の設計,施工過程で,駐車場スペースの形状,台数,車止めの形状と腰壁の高さ等が契約書添付図面から変更されているが,これらは建築基準法関連規則で規制されていない事項に関して,数値が与えられていなかった箇所に数値を具体的に与えたり,変更したものであって,建築基準法に抵触する行為ではない。 記園舎の建築確認申請日平成11年10月22日同確認済証交付日同年11月25日同完了検査日平成12年3月30日同検査済証交付日同年3月31日使用開始日同年4月1日イ本件事故当時の本件駐車場の構造は,次のとおりである。 本件駐車場の南側である本件園庭側には鉄製の本件駐車場柵が設置され,本件駐車場柵の基礎との接合部には高さ25センチメートルの埋め込み部分がコンクリートの腰壁として設置され,更にその1メートル手前まで駐車床面より15センチメートル高くなったコンクリートの段差状態の車止めが設置されていた。そして,本件駐車場柵は鉄製の支柱と笠木とこれらを結ぶ鉄棒とが相互に作用してネットのようになり,車両の転落を防止する安全装置となっ メートル高くなったコンクリートの段差状態の車止めが設置されていた。そして,本件駐車場柵は鉄製の支柱と笠木とこれらを結ぶ鉄棒とが相互に作用してネットのようになり,車両の転落を防止する安全装置となっていた。 ウ原告らは,本件事故当時,国土交通省が定めていた立体駐車場における自動車の転落防止対策について定められていた設計基準である「立体駐車場における自動車転落事故防止対策設計指針」における「床面からの高さ60センチメートルの位置で,幅160センチメートルにわたり,25トンの衝撃力が加わっても自動車の転落を有効に防止できるような装置等」を設置する安全配慮義務がある旨の基準が本件駐車場に妥当すると主張する。しかし,その基準は立体駐車場に対するものであり本件駐車場には適用がないものである。同基準における義務は極めて具体的な装置の設置義務をうたっており,極めて詳細な数値が規定されているが,このような数値を伴う安全装置の強度(設置義務)は,そのような基準が適用されていると認識する者にとっては意味があるが,適用されていないと認識する者にとっては意味がなく,上記具体的な数値どおりの強度の装置を設置する義務の根拠とはならない。このような具体的な数値的強度を備えた装置を本件駐車場のような駐車場に設置する義務を根拠づける規定としては,本件事故後の通達として平成15年2月25日付けの国土交通省住宅局建築指導課長の都道府県建築主務部長宛の通達「駐車場における自動車転落事故防止対策について(技術的助言)」(国住指発8290号)が存在するが,平成12年3月の本件駐車場設置当時及び本件事故当時において,具体的な数値どおりの強度の装置を設置すべき義務の根拠とはならない。 エ本件駐車場柵の強度については,本件駐車場2月事故の際も,本件事故のうち一度目のA車による衝突の際 時及び本件事故当時において,具体的な数値どおりの強度の装置を設置すべき義務の根拠とはならない。 エ本件駐車場柵の強度については,本件駐車場2月事故の際も,本件事故のうち一度目のA車による衝突の際も,本件駐車場柵が車両を受け止めて転落を防止したのであり,本件駐車場柵の強度は十分であった。 本件事故は,被告Aが二度にわたって連続して本件駐車場柵に強烈な衝撃を加えるという予測不可能な過失行為により発生したものであり,仮に,「床面からの高さ60センチメートルの位置で,幅160センチメートルにわたり,25トンの衝撃力が加わっても自動車の転落を有効に防止できるような装置等」を設置する安全配慮義務の存在及び被告法人らの同義務違反が認められる場合でも,当該義務違反と結果との間には相当因果関係がない。 (3) 上記第2,2原告らの主張(1)ウ(エ)についてH保育士において,保護者が園児の迎えに来る時間である午後4時ころ,園児らに対して,上記記載のごとき指示をしたことは認めるが,本件南側園舎の屋上から自動車が落下した場合に園児らに危険が及ぶ範囲内には,園児らが立ち入れないようにするために,緑地帯や花壇にしたり,柵等を設けること,保育士らに対し,少なくとも保護者らの送迎時間帯には,上記危険が及ぶ範囲内に園児らを近づけないように指導する等の義務の存在は争う。 本件事故の原因は,二度にわたる連続した車両の激突という予測不可能な被告Aの過失行為に基づくものであり,安全帯を設ける等の義務はなかった。 (4) 上記第2,2原告らの主張(1)ウ(オ)について本件駐車場の本件現場を方向転換場所に指定したことは認めるが,方向転換場所に指定したこと自体が危険な行為であるということは争う。本件駐車場には方向転換場所を含めて車止めと本件駐車場柵があり,本件駐車場の設置と同様に 現場を方向転換場所に指定したことは認めるが,方向転換場所に指定したこと自体が危険な行為であるということは争う。本件駐車場には方向転換場所を含めて車止めと本件駐車場柵があり,本件駐車場の設置と同様に方向転換場所の指定にも安全配慮義務違反ないし過失はない。 また,被告AにA車である日産ラルゴの駐車を許可したことは認めるが(許可したのは本件駐車場の東側に接続した本件車道と接する狭い駐車場部分),安全配慮義務違反ないし過失の主張は争う。被告法人は,本件駐車場には車止め及び本件駐車場柵を設置していた。本件駐車場2月事故は自動車が転落しなかったものであり,車止めや本件駐車場柵の存在にもかかわらず自動車が転落する事故を連想させるものではなかった。高齢者や身体障害者であるという理由のみにより二度にわたって連続して車両が激突するという過激な過失行為を連想させることはなく,被告Aに駐車許可をしたこと自体が安全配慮義務違反ないし過失を構成するとは考えられない。 本件駐車場に保護者の駐車を許可し,方向転換場所を指定した行為は,園児の保護者又は近隣の住民から感謝されることはあっても,非難されるべき行為ではない。本件保育園設立時には想像できなかったほど自動車で登降園する保護者が増えたことから,従来の施設のみではこのような自動車の増加に対応することができず,路上駐停車が増えて近隣住民の車両運行に多大の迷惑をかけてきた。そのような状況を一刻も早く解消するために計画されたのが本件駐車場である。当初は本件駐車場部分は職員専用とし,本件車道との境界近くの余地を保護者用に開放したが,それでも近隣に対する迷惑な状態が続いていることが明らかになったために,職員用の駐車場部分を方向転換場所又は駐車場として保護者に開放してきたのである。 本件駐車場は,当初,職員専用としており,そ ,それでも近隣に対する迷惑な状態が続いていることが明らかになったために,職員用の駐車場部分を方向転換場所又は駐車場として保護者に開放してきたのである。 本件駐車場は,当初,職員専用としており,その当時は,軽自動車や小型の乗用車専用ではなかったが,保護者の意見により,保護者のためにも使用を許可することになった。その際,軽自動車や小型の乗用車専用とすることにした。したがって,本件駐車場を使用できる保護者は,軽自動車や小型の乗用車で登降園する保護者に限るという方針にしていたため,被告Aに使用許可を与える予定ではなかったが,保護者懇談会の際に,被告Aの親族から窮状を訴えられたことから特別に検討し,被告Aにも本件駐車場の使用を許可したのである。 このように開放する過程では,被告Aが本件事故のような第一,第二の衝突を連続して発生させるような運転ミスを犯すことは予測不可能であったから,被告Aに対して本件駐車場を開放してはならないという注意義務を課する前提としての,予見可能性がなかった。 (5) 上記第2,2原告らの主張(1)エの保育士らの義務違反についてH保育士が父母が園児の迎えに来る時間帯である午後4時ころ,本件駐車場を屋上とする本件南側園舎に近い場所の本件園庭で,同園舎を背に,床に腰を下ろさせて園児達を整列させる指示をしたことは認めるが,保育士らが本件事故の危険性を予見できたこと,H保育士が危険な指示をしたことは争う。保育士らが避難,救助義務を怠ったことも争う。 本件事故当時,本件事故現場付近にいた保育士らに,園児らを救護する義務が一般論として課せられるとしても,以下に述べるように個別具体的な問題として本件A車の転落は予見不可能であり,義務の前提となる予見可能性がないから義務違反又は過失を問うことはできない。 A車の第一衝突以前の段階で せられるとしても,以下に述べるように個別具体的な問題として本件A車の転落は予見不可能であり,義務の前提となる予見可能性がないから義務違反又は過失を問うことはできない。 A車の第一衝突以前の段階で,A車が駐車場にほとんどノーブレーキで進入してくることに気付いている者は,ほとんどいなかった。遊戯室の出入口付近で本件駐車場を比較的見渡せる位置にいたL保育士ですら,A車に気付いたのは第一衝突の直前であり,気付いた直後に第一衝突を目撃している。同人が気付く以前にA車に気付き,第一衝突を予見することは,その場に立ち会っただれにとっても不可能であった。したがって,この時点では予見可能性がなかった。 このように突然発生した第一衝突は,本件駐車場柵によって転落に至らなかった。そしてA車が後退して行ったため,その場に立ち会って第一衝突を目撃しただれもが「ホッ」と安心して,第二衝突があり得るとは全く予想することはできなかった。本件園庭にいて園児らに指示を与えていたH保育士は,一度目の衝突による激しい音を耳にしたものの本件駐車場は死角であった。しかも,同保育士はそれ以前にそのような音を聞いた経験がなく,A車が鉄柵に衝突した音であると理解する間もなく二度目の衝突とA車の転落事故が発生した。したがって,二度目の衝突以前の時期における避難誘導の義務についても,その前提となる予見可能性がなかった。 本件事故が予見可能となる時期があるとすれば,それは後退したA車が再度猛烈に加速した瞬間以降である。しかし,猛烈に加速したA車が本件駐車場柵に激突するまでに要する時間はわずかである。この一瞬の間に,A車の加速の程度から最高到達時速を予測し,第二衝突から転落に至る危険性を認識予見することは極めて困難なことである。したがって,後退したA車が第二衝突に向けて再度加速を始める以前 る。この一瞬の間に,A車の加速の程度から最高到達時速を予測し,第二衝突から転落に至る危険性を認識予見することは極めて困難なことである。したがって,後退したA車が第二衝突に向けて再度加速を始める以前はもちろん,再度加速を始めた後であっても救護の必要を予見することは極めて困難であり,予見可能性はA車が転落し始めた後に生じた。 一度目の衝突と二度目の衝突及び二度目の衝突とA車転落までの時間的間隔はわずかであったため,本件事故の結果回避可能性もなかったが,保育士らはこの異常事態の中で可能な限りの避難誘導を行った。 A車が転落を開始してからは,本件事故の予見が可能になったので,一部の保育士はA車の転落現場の方向に向けて走り始めた。 K保育士は,比較的近くにいたため,A車が前部を地面に激突させた状態で立っていたときに,A車の右中央部を手で支えて転倒を防止しようとしたが,A車は同保育士が支えられる重量をはるかに超えており,転倒を防止できなかっただけでなく,同保育士の下半身はA車が転倒したときにその下に入って,同保育士が被害に遭うところであった。 H保育士は,A車が転落を開始するときまでA車の激突地点とほぼ同じ場所で園児を指導していたが,同保育士は,自分の身を守ると同時に,園児を危険から守るため,右の方向へ逃げながら可能な限りの園児を抱きかかえるなどして走った。このような状況では数人の園児を避難させるのが精一杯であり,A車が転倒するまでのわずかな時間にA車の下に戻って,逃げ遅れた園児を救護することは不可能であった。 L保育士は,20メートルないし30メートル離れた遊戯室の出入口付近でA車が転落を開始することに気付き,本件転落現場に向かっていち早く走り始めたが,距離的に遠すぎて本件事故現場に到着したときには既にA車はタイヤを下にして転倒した後であり, ル離れた遊戯室の出入口付近でA車が転落を開始することに気付き,本件転落現場に向かっていち早く走り始めたが,距離的に遠すぎて本件事故現場に到着したときには既にA車はタイヤを下にして転倒した後であり,本件事故の結果を回避することは不可能であった。 M保育士は,本件南側園舎前の本件園庭のテラスに腰掛ける形で12名ほど整列していた園児の最も西側寄りの場所に中腰になって園児を指導していた。A車が転落してきてから本件事故に気付いたが,そのときには園児は一斉に同保育士の方向に向かって走ってきたため,本件事故現場に近づくこと自体が不可能であり,結果回避可能性がなかった。 その他の保育士にとっても,各保育士と園児との間にA車が転落してきたため,このA車を回り込んで園児を救護することは上記時間の間には不可能であった。 このようにすべての保育士にとって,本件事故による結果を回避して園児を救護できた可能性はなく,救護義務の前提である結果回避可能性がない。 さらに,いずれの保育士にとっても,転落を開始したA車に駆け寄って,立っているA車の転倒を防止したり,A車が転落するまでのわずかな時間の間にA車を回り込んで園児を救護し安全に避難させることは極めて困難又は不可能なことであり,現実にこれを行えば保育士自身が被害者となる危険があったから,このような状態で,全ての園児を救護するべきことを期待するのは困難であり,期待可能性もない。 (6) 上記第2,2原告らの主張(2)の不法行為責任(安全配慮義務違反)及び使用者責任について民法709条ないし同法715条1項の不法行為責任ないし使用者責任については,上記のとおりであるから,過失が認められず,責任がない。 (7) 上記第2,2原告らの主張(3)の不法行為責任(工作物責任)について被告法人が本件駐車場を含む本件保育園 ないし使用者責任については,上記のとおりであるから,過失が認められず,責任がない。 (7) 上記第2,2原告らの主張(3)の不法行為責任(工作物責任)について被告法人が本件駐車場を含む本件保育園園舎の所有者であることは認めるが,本件駐車場の設置又は保存の瑕疵により本件事故が生じたことは否認し,被告法人が民法717条1項の土地の工作物所有者責任を負うことは争う。 ア本件駐車場柵は,A車による一度目の衝突があったが,これを受け止めて転落を防止した。このこと自体からして本件駐車場柵の強度が十分であったことは明白である。 イ本件駐車場の安全性は,本件駐車場柵のみで保たれているわけではない。本件駐車場には高さ15センチメートルのコンクリートの段差状態となった車止めが設置され,通常の運転操作であればこの車止めにより車両の移動は阻止される。この車止めに乗り上げる際に位置エネルギーが吸収されるため,乗り上げること自体にエネルギーが必要であって相当程度の速度がなければこの車止めに乗り上げること自体が困難な構造となっている。 そして,車止めの奥1メートルの位置には,高さ25センチメートルの腰壁(本件駐車場の基礎)が設置されている。乗用車の最低地上高は15センチメートル程度であるのが普通であり,高さ25センチメートルの腰壁があれば,車両のバンパーがこれに衝突して移動を阻止される。さらに,この腰壁があれば,通常はこれを乗り越える際にかなり大きなエネルギーが必要になり,乗り越えること自体が不可能である。万が一乗り越えたとしても,車両の下部がこの腰壁と摩擦を起こして移動が困難となり,車両の転落が阻止されるのが通常生ずべき事態である。 最終的には本件駐車場柵(腰壁に埋め込まれた支柱,笠木及びこれらを相互に溶接により連結している鉄棒が全体としてネットのような構造 動が困難となり,車両の転落が阻止されるのが通常生ずべき事態である。 最終的には本件駐車場柵(腰壁に埋め込まれた支柱,笠木及びこれらを相互に溶接により連結している鉄棒が全体としてネットのような構造となっている。)が,車両の転落を阻止するようにできている。 ウ通常は,何らかの事故により本件駐車場柵や腰壁などが不可逆的な損傷を受けた場合でも,復旧工事を行うことにより予定された強度は回復される。本件事故は,一度目の衝突により受けた損傷を復旧することなく二度目の衝突が加えられたために発生したものであり,二度目の衝突以前に復旧工事がされていたならば,一度目の衝突からの転落が阻止されたのと同様,二度目の衝突による転落も阻止されたものである。 エ以上のとおりであるから,本件駐車場は通常有するべき安全性を欠いていた事実はなく,瑕疵はなかった。 (8) 相当因果関係がないことについて本件事故は,被告Aが二度にわたって連続して本件駐車場の鉄柵に激しくA車を激突させるという通常では予想できない異常な運転操作ミスを犯したことによって発生したものである。したがって,仮に被告法人らに何らかの債務不履行,過失,本件駐車場についての瑕疵があったとしても,それらと本件事故の結果との間には相当因果関係がない。 すなわち,被告Aが一度目の運転ミスにより本件駐車場柵に激しく激突したものの転落することなく本件駐車場柵により前進を止められた。この一度目の衝突自体通常生じうることではなく,相当因果関係の存否について疑いがある。その後,本件駐車場柵に転落を防止された車両が後退することはありうることである。ところが,その後再度猛スピードで加速して修復されていない本件駐車場柵に二度目の衝撃を加えるという事態に至っては,到底通常生じうる事態とはいえず,しかも何人もこれを予測することは ありうることである。ところが,その後再度猛スピードで加速して修復されていない本件駐車場柵に二度目の衝撃を加えるという事態に至っては,到底通常生じうる事態とはいえず,しかも何人もこれを予測することは不可能である。よって,二度目の衝突に向けてA車が加速進行してからは相当因果関係の範囲外の出来事である。 3 損害について【原告らの主張】(1) 治療費 6230円(2) 葬儀費用 78万1564円原告らは,Fのための葬儀に,328万1564円を費やしたが,これに対しては,被告Aから250万円を受領したので,残金は78万1564円である。 (3) Fの死亡逸失利益 8040万2299円ア平成12年度賃金センサス全労働者平均賃金年497万7700円を基礎とし,就労可能年数を18歳から67歳まで49年間とする。そして,生活費割合を30パーセントとして中間利息を年2パーセントの割合で控除すると,Fの死亡による逸失利益は8040万2299円となる。 計算式 497万7700円×(1-0.3)×(35.925-12.85)=8040万2299円イ中間利息の控除率について(ア) 交通事故によって生じた逸失利益の現在価値を算定する方法については,法定の計算方法が定まっていないところ,逸失利益算定の基礎収入を被害者の死亡時に固定した上で将来分の逸失利益の現在価値を算定する場合には,中間利息の控除利率を裁判時の実質金利に従って計算するのが相当である。 (イ) そして,経済的利益において不利益がないと一般的に肯定されるためには,被害者が中間利息控除後の一括金を受領することによって,少なくとも名目金利と賃金上昇率又は物価上昇率との差にあたる実質金利相当の資金 して,経済的利益において不利益がないと一般的に肯定されるためには,被害者が中間利息控除後の一括金を受領することによって,少なくとも名目金利と賃金上昇率又は物価上昇率との差にあたる実質金利相当の資金運用が可能であると一般的に判断し得ることを要するというべきである。 (ウ) なお,民法404条を考慮して合理性を見いだすことはできない。 また,破産法46条5号ほかの倒産法や民事執行法88条2項が弁済期未到来の債権について,民事法定利率による中間利息の控除を認めていることについても,類推又は各法条の趣旨を援用する前提を認めることはできない。 (エ) 将来における逸失利益の現在価値を適正に算定するために重要なのは所得成長率や預金利率そのものではなく,その差(以下「実質割引率」という。)なのである。 実質割引率を考えるにあたり,昭和31年以降の統計データを検討すると,実際の実質金利の動向と,年5分との法定利率は著しく乖離していることが明らかであり,将来における変動率を考慮しても,中間利息控除率として年2分を採用することは十分控えめな率である。 仮にそうでないとしても,少なくとも実質金利について年3分を超えることはなく,中間利息控除率として年3分を採用すべきである。 とりわけFのような幼児の場合には,逸失利益について定期金賠償が認定される場合と,中間利息の控除率を5分として一時金により支払いが認定される場合との間には著しい不均衡を生じることとなり,不合理,不公平な結果となる。 (4) Fの死亡慰謝料 2800万円Fは,本件事故当時,まだ3才の幼児であり,本件事故に遭わなければ限りない可能性を有していたはずであったのに,突然,安全なはずの保育園において,本件事故により命を奪われた。その受けた傷害は,頭蓋骨陥没,左足大 事故当時,まだ3才の幼児であり,本件事故に遭わなければ限りない可能性を有していたはずであったのに,突然,安全なはずの保育園において,本件事故により命を奪われた。その受けた傷害は,頭蓋骨陥没,左足大腿部・下腿部骨折であり,Fの全身が擦過傷の状態であった。Fの苦痛,無念さは,計り知れない。 しかも,Fは,午後4時ころという保護者が迎えに来る時間帯に,本件保育園の保育士らに指示されて,本件駐車場を背にして,お尻を地面(床)につけて座らされていたところ,頭上背後から重さ1530キログラムのA車(日産ラルゴ)が落下し,その下敷きにされて死亡したものであり,その態様も極めて無惨かつ残酷である。もとより,Fには何ら責められるべき点はない。 (5) 原告らは,Fの上記(1)ないし(4)の損害賠償請求権につき,各2分の1の割合で相続した。 (6) 原告ら固有の慰謝料各500万円ア本件保育園内において,本件のような想像を超える無惨な事故を引き起こし,Fを死亡させた被告法人らの責任は極めて重大であるが,被告法人らは,原告らに対し,その責任を認めて謝罪することもしない。 イまた,本件事故直後に,原告らにおいて,本件事故の衝撃と慟哭の中からも,被告法人らに対し,「Fを友達皆に見送っていただきたいので保育園葬にして下さい。」と申し入れたが,被告法人らはこれを拒否した。 ウ被告法人らは,本件事故がどのような状況で発生したかも全く確認しなかった。被告Dは,Fが亡くなった場所さえ知らず,原告らに尋ねられても,誤った場所を教えた。 原告らにとって,我が子がどんな状況で亡くなったのかを知ることは,最小限の要求であり,被告Aが事故当時の状況の記憶がないと述べていることもあって,原告らは,被告法人らに,本件事故についての説明を何回も求めたが, て,我が子がどんな状況で亡くなったのかを知ることは,最小限の要求であり,被告Aが事故当時の状況の記憶がないと述べていることもあって,原告らは,被告法人らに,本件事故についての説明を何回も求めたが,被告法人らは何らの説明もしなかった。 原告らは,やむなく説明会を開催してほしいという要望書に本件保育園の他の父母たち84名の署名を添えて,平成14年11月1日に被告法人らに提出したが,被告法人らはそれを無視した。 なお,原告らは,同年10月に入って,同年2月に本件事故と同じような事故が起こっていたことを初めて知り,被告Dに問い合わせたが,被告Dは答えなかった。そのため,原告ら自身が悲しみの中,同月の事故を起こした者に事情を聞きに行って,ようやく本件駐車場2月事故の内容が分かった。 エ原告らは,同年9月23日,被告D及び被告Eに対して,せめてFが亡くなった場所に小さな花壇を作って欲しいと要望したところ,被告D及び被告Eは,「前向きに検討します。」と回答した。本件保育園の保育士らからもFのために花壇を作ってほしいと要望がされ,被告D及び被告Eは,保育士らに対しても「作るつもりでいる。」と回答した。 ところが,同年11月5日のFの忌明け後,被告Dは,「花壇を作る意思はない。作る必要がないから作らない。」と回答してきた。原告らは,欺かれたに等しい状態となった(原告らは費用を寄付する旨も述べている。)。 オ被告法人らは,同月9日,原告らに何らの連絡もなく,本件事故現場で運動会を開催した。 原告らの自宅は,本件保育園から100メートルほどしか離れておらず,原告らは大きな運動会のマーチの音をFの遺骨とともに堪え忍ぶことを強いられ,同日,原告C(以下「原告C」という。)は錯乱状態になった。そして,原告Cは,心因反応,強いストレスで抑うつ状態となっている 告らは大きな運動会のマーチの音をFの遺骨とともに堪え忍ぶことを強いられ,同日,原告C(以下「原告C」という。)は錯乱状態になった。そして,原告Cは,心因反応,強いストレスで抑うつ状態となっていると診断された。 カ原告らは,被告Aについては,高齢で足と耳が不自由な身体障害者である上,本件事故直後には「一生かけて償います。」と述べていたため,被告Aの言葉を信じて,Aの刑事処分について,検察庁に対し「(被告Aの年齢,身体状況等を考えれば)厳罰は求めていない。検察庁におまかせする。」との回答をした(原告らは罰金刑の上限が,わずか50万円であることを知らず,一人の人間を死亡させた者に対する刑罰がそのように軽いとは思わなかったのである。)。ところが,被告Aは,Fの一周忌以後は一度もお参りにも来なくなった。 キ本件事故後の不誠実極まりない被告らの対応が加わり,原告らは更なる精神的苦痛を受け続けており,原告Cは,閉塞的な空間では呼吸困難に陥るなどの症状が続き,パニック障害と診断されている。 (7) 弁護士費用各600万円【被告法人らの主張】(1) 上記第2,3原告らの主張のうち,原告らがFについて各2分の1の割合で相続する関係にあることは認めるが,その余は不知。 (2) 原告ら固有の慰謝料についてア原告らは,被告法人らが謝罪しなかったと主張するが,被告法人らは,本訴で争っているように,当初から,本件事故の原因は被告Aが二度も連続してA車を本件駐車場柵に衝突させるという通常では考えられない行為を行ったために発生した事故であり,被告法人らには損害賠償義務はないと考えていた。したがって,被告法人らとしては,謝罪しなければならない理由はないと考えている。 イ本件事故の翌日に保護者に対する説明会を持った。原告らは 事故であり,被告法人らには損害賠償義務はないと考えていた。したがって,被告法人らとしては,謝罪しなければならない理由はないと考えている。 イ本件事故の翌日に保護者に対する説明会を持った。原告らは,同説明会を中断した旨主張するが,中断していない。 本件事故の内容については,警察が調査中であり,詳細については被告法人らとして把握できていないことからほとんど説明すべき内容がなかったが,集まった保護者からは,家庭での園児の状況などが報告され,保護者・園児ともに事故のショックを受けていることが告げられ,対策を求められた。説明会が終了した後に,「これからN様のお宅に参ります。」という趣旨を述べたことは事実であるが,これが中断の理由と解釈されたとすれば遺憾である。 ウ Fのために花壇を作るかどうかは,被告法人らにおいて十分検討した上での拒否回答であった。園内に花壇を作るかどうかは,施設の使用管理の問題であり,基本的に被告法人の自由裁量の範囲内の問題であり,損害賠償額の判断要素とされるものではない。 被告法人らとしては,①花壇の設置を求められた場所は日当たりが悪く花の育ちが期待できない,②園児のボール遊びの際にボールが飛び込みやすい場所になる,③ボールが飛び込んで花が折れるたびに,園児の心を傷つける,④花が枯れるたびに植え替えなどをすれば,長い期間ではその費用負担は膨大となりかねない,などの理由により花壇は作らないこととした。ただし,被告法人らとしては,本件事故現場付近にプランターを設置している。 エ運動会の開催も,本件保育園の運営上の問題であり,損害賠償問題となる行為ではない。園児は,運動会のために練習を繰り返し行っており,年に一度の大イベントの到来を心待ちにしていた。その運動会を中止することは,園児の心を傷つけることになるので考えていなかっ 償問題となる行為ではない。園児は,運動会のために練習を繰り返し行っており,年に一度の大イベントの到来を心待ちにしていた。その運動会を中止することは,園児の心を傷つけることになるので考えていなかった。本件事故直後の時期に開催することは憚られたので,四十九日過ぎに行おうとしたが,冬になり寒い中で激しい運動をすることは怪我のもとになりかねないので,10月に開催した。 このように,Fと園児の双方に心を配った最善の判断として,時期をずらして開催した運動会について,問題視される理由はない。 【被告Aの主張】(1) 治療費については,不知。 (2) 葬儀費用については,社会通念上相当と認められる限度において損害賠償として請求し得るものであり,本件の場合は100万円が相当と考える。 なお,被告Aは原告らに対し250万円を支払済みであるが,これは損害金全般の内払金である。 (3) Fの死亡逸失利益について基礎収入について,原告らは賃金センサス全労働者平均賃金を基礎収入とするが,性別によって平均賃金に差があるのが現実であるから,賃金センサス女子労働者平均賃金を採用すべきである。 生活費控除について,原告らは30パーセントと主張するが,40パーセントが相当である。なお,基礎収入を全労働者平均賃金により算定する場合は,男児と同じ50パーセントと考えるべきである。 中間利息控除については,年5パーセントとするのが従来の圧倒的多数の取扱いであり,本件についても同様に考えるべきである。 (4) Fの死亡慰謝料について本件事故状況等を勘案して,一切を含め2000万円とすべきである。 (5) 原告らの固有の慰謝料について被告Aは,本件事故について深く反省しており,Fの一周忌後にお参りに行かなくなったのは,本件訴訟が提起されたこと,自動車を運転しなくなった 万円とすべきである。 (5) 原告らの固有の慰謝料について被告Aは,本件事故について深く反省しており,Fの一周忌後にお参りに行かなくなったのは,本件訴訟が提起されたこと,自動車を運転しなくなったことから足の便がなく,つい遠ざかってしまったのであって,毎日自宅でFの冥福を祈っている。その他については,被告法人らの問題であり,被告Aとは関係がない。 第3 当裁判所の判断 1 被告Aの責任について上記第2,1(3)のとおり,被告Aは,本件事故につき,自賠法3条本文の損害賠償責任ないし民法709条の損害賠償責任を負う。 2 被告法人の責任について(1) 原告らは,被告法人に対して,①本件保育委託契約による安全配慮義務不履行責任,②民法709条による安全配慮義務違反の不法行為責任ないし保育士の同義務違反に関する同法715条1項の使用者責任,③本件駐車場の設置又は保存の瑕疵による同法717条1項の土地工作物所有者責任による損害賠償を求めるものであるところ,これらの各請求は,損害賠償請求としては共通しているものの選択的請求であり,それぞれ主張,立証責任において異なる面がある。原告らは,損害賠償額に関する年5分の遅延損害金の始期を本件事故の日である平成14年9月18日からとする裁判を求めているが,本件保育委託契約による安全配慮義務不履行責任に関しては履行を怠った日と解されるから,仮に,安全配慮義務不履行責任が認められたとしても,遅延損害金の始期は,訴状送達以外履行の催告が窺えない本件においては,訴状送達の日の翌日である平成15年2月21日となり,少なくともこの部分について一部認容となってしまう。民法709条,同法715条1項の責任,同法717条1項の責任においては,そのような齟齬は生じない。そして,同法717条1項の土地工作物所有者責任は,不法行為 この部分について一部認容となってしまう。民法709条,同法715条1項の責任,同法717条1項の責任においては,そのような齟齬は生じない。そして,同法717条1項の土地工作物所有者責任は,不法行為の特別規定の性質を有している。 そこで,まず,被告法人の本件駐車場の設置又は保存の瑕疵による同法717条1項の土地工作物所有者責任について,検討していくこととする。 (2) 被告法人が本件駐車場を含む本件園舎の所有者であることは,当事者間に争いがなく,弁論の全趣旨によれば,本件園庭も被告法人の所有ないし占有にかかるものであることが認められる。 民法717条1項に規定されている土地の工作物の設置又は保存の瑕疵とは,当該工作物が通常有すべき安全性を欠いている状態をいうものである。そして,その安全性を欠いている状態とは,当該工作物自体の性状及び設備に存する物理的,外形的な欠陥ないしは不備によって,他者に被害を及ぼす危険性がある状態のみならず,当該工作物の設置された場所やその周囲の状況,用途,利用状況等の諸般の事情を考慮して,当該工作物が他者に被害を及ぼす危険性がある場合も含むものと解すべきである。 (3) 上記第2,1の事実並びに証拠(甲2の1ないし3,3ないし26,29の1ないし4,30,31,32の1・2,33,34の1・2,35,36,38,51の1・2,52の1・2,53ないし55,57,58,59の1・2,乙1ないし3,4の1ないし5,5の1・2,6,7の1ないし3,8の1ないし4,9,10の1・2,11ないし13,14の1・2,15の1・2,16ないし28,32,丙1,証人G,同O,同H,同L,同I,原告C,被告D(本人兼被告法人代表者),被告E,被告A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,認定の便宜上,被告D及び被告 いし28,32,丙1,証人G,同O,同H,同L,同I,原告C,被告D(本人兼被告法人代表者),被告E,被告A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,認定の便宜上,被告D及び被告Eの責任に関する事実についても認定する。)。 ア被告法人は,昭和55年12月25日に設立された。被告法人は,第一種社会福祉事業として知的障害者更生施設(ひがしうらの家及びパスピ・98)の設置経営並びに第二種社会福祉事業として本件保育園の設置経営,知的障害者短期入所事業(ひがしうらの家及びパスピ・98)の受託及び知的障害者地域生活援助事業の合計6つの事業を目的としている。 理事は6名(他の理事は,被告Eを除いて被告Dとの親族関係はない。)であるが,登記されている理事は被告Dのみであり,被告Dが代表者理事である。 被告法人は,年3回程度開かれる理事会において本件保育園を含む事業の運営について決するが,緊急を要する修繕等代表者理事の専決権のあるものもある。 被告法人の理事の職務は,本件保育園の経営(事業計画,事業報告及び予算決算等)にかかる被告法人の意思決定について年3回程度の理事会を通して関わることであり,代表者理事はこのほかに,幹事監査,愛知県の監査及び名古屋市の施設指導監査に立ち会うこと,被告法人の意思決定に従って被告法人の行為を機関として行うことがある。 被告Dは,本件保育園には常駐しておらず,もっぱら平成10年4月から本件保育園とは別の場所に所在するパスピ・98の施設長として勤務していたが,本件保育園の園長被告Eの子であり,被告Eと同居していたこともあり,事実上,ドアが壊れた等の修繕の打合せにも呼び出される等して,結果的に,本件保育園に月に1回程度は行っていた。 被告Eは,本件保育園の園長として施設管理の責任者であった。 イ被告法人に こともあり,事実上,ドアが壊れた等の修繕の打合せにも呼び出される等して,結果的に,本件保育園に月に1回程度は行っていた。 被告Eは,本件保育園の園長として施設管理の責任者であった。 イ被告法人においては,平成11年から,本件保育園の増築工事(本件駐車場の設置も含む。)についての議題が理事会で検討され,同工事については,施行業者の選定,入札立会,決定のための報告等のために3,4回理事会が持たれた。 本件駐車場を施工したI工務店は,平成11年12月ころから,約6か月間をかけ,従前の園舎の南側に本件南側園舎(その西側部分が二階建てであり,その東側部分が一階という構造となっている。)を新築し,その一階部分の屋上を本件駐車場にするという内容の増築工事を行った。本件南側園舎の屋上を本件駐車場にすることを発案したのは,被告Dであった。被告Dは,車両転落の危険がないような施工をするように株式会社P建築設計事務所(以下「P建築設計事務所」という。)に依頼した。 本件駐車場の車止めについて,当初,凸型の車止めを床面に取り付ける予定で建築確認申請がされて許可を得たが,被告Dにおいて,その方法の車止めでは外れてしまうと考え,駐車床面より南側にコンクリート段差をつけて高くする方法の車止めに変更した。そして,被告Dは,P建築設計事務所の設計士から,本件駐車場の駐車車両について,①コンクリート段差の車止めで止まること,②仮に車止めを乗り越えても,本件駐車場柵の基礎であるコンクリート部分に車両のバンパーが当たって車両を止めることができること,③更ににそれを乗り越えた場合でも,車両の腹部が本件駐車場柵の基礎となっているコンクリートに擦った状態で,本件南側園舎の庇で止まることができる三段階の安全対策になっているとの説明を受けた。 平成12年4月ころ,本件南側園舎が増築 ,車両の腹部が本件駐車場柵の基礎となっているコンクリートに擦った状態で,本件南側園舎の庇で止まることができる三段階の安全対策になっているとの説明を受けた。 平成12年4月ころ,本件南側園舎が増築され,その一階部分の屋上に本件駐車場が設置された。 被告Eは,本件駐車場の造成について具体的な権限があったわけではないが,本件駐車場の使用方法について指示しうる立場にあり,本件駐車場に線を引いてO主任とともに,方向転換場所の指定をした。平成13年11月ころからは,方向転換場所として,2台分のスペースを空けるようにした。 本件駐車場は,設置された当初は,本件保育園の職員だけが使用していた。被告法人は,その後,本件保育園園児の保護者も使用することができるようにしたが,本件駐車場を保護者に開放するに当たり,本件駐車場の床下にあるアスファルト防水が傷んで本件南側園舎が雨漏りする原因となる可能性があったことから,保護者に関しては,駐車可能な自動車を軽自動車や1300CC程度の自動車に限定した(本件保育園職員らについては,特段の限定はされていない。)。 ウ本件駐車場は,東西幅13メートル,南北奥行き約7メートルの長方形であり,その南側を東西に延びる幅員3.2メートル程度の本件車道と接している。本件駐車場は,雨水等を流すため,北から南へ向かって緩い下りの勾配が付いており,本件車道から見ると,本件駐車場の北側奥に向かって緩やかな上りとなっているところ,平坦なコンクリート床部分の更に北側に15センチメートル高い段差となったコンクリートの車止め部分(幅1メートル)があり,その北側先に転落防止用の本件駐車場柵の基礎となる厚さ22センチメートル,高さ25センチメートルのコンクリートの腰壁がある。 本件駐車場の北側は本件園庭に面しており,本件園庭に面した端に沿って本 り,その北側先に転落防止用の本件駐車場柵の基礎となる厚さ22センチメートル,高さ25センチメートルのコンクリートの腰壁がある。 本件駐車場の北側は本件園庭に面しており,本件園庭に面した端に沿って本件駐車場柵がある。本件駐車場柵は,直径4.27センチメートル,肉厚0.32センチメートルの円柱である支柱が約90センチメートル間隔で本件駐車場柵の基礎に約15センチメートルの深さで埋め込まれて連結され(打込アンカー止であるが,後記本件駐車場2月事故により修理された部分はケミカルアンカー止である。)ており,直径4.86センチメートル,肉厚0.32センチメートルの円柱である笠木により各支柱の上端を横に繋いでおり,直径3.4センチメートル,肉厚0.32センチメートルの円柱である下継により各支柱の下部(本件駐車場柵の基礎から10センチメートル程度上)を横に繋いでおり,各支柱と支柱との間に縦に直径1.3センチメートルの丸棒である立子を8本,均等間隔で配置している(長さは笠木と下継との間隔)。そして,これら各支柱,笠木,下継及び立子は,溶接等により連結されており,本件駐車場柵の高さは,約95センチメートルである。 本件駐車場柵の北側は,約95センチメートル突き出た本件南側園舎の庇があるのみで,庇の上端から垂直に2.95メートル(本件駐車場柵の基礎上端からは約3.6メートル)本件園庭に落ち込んでいる。 本件駐車場柵及び車止め部分を表わす断面図は,別紙図面2のとおりであり,本件駐車場の平面図は別紙図面3のとおりである。 エ昭和61年9月1日住指発第185号通達「立体駐車場における自動車転落事故防止対策について」によれば,本件事故当時,国土交通省は,立体駐車場における自動車の転落防止対策について設計指針の基準として,床面からの高さ60センチメートルの位置で, 駐車場における自動車転落事故防止対策について」によれば,本件事故当時,国土交通省は,立体駐車場における自動車の転落防止対策について設計指針の基準として,床面からの高さ60センチメートルの位置で,幅160センチメートルにわたり,25トンの衝撃力が加わっても自動車の転落を有効に防止できるような装置等を設置することを定めている。 この通達の目的は,「立体駐車場の内部において,通常考え得る程度の誤操作により,自動車が駐車場の外壁等を突き破り転落する事故を防止すること」である。 この通達の適用範囲は,「直下の地面からの高さが5.1メートル以上の部分(公共の用に供する道路,広場等に転落するおそれがある場合においては,直下の地面からの高さが2. 1メートル以上の部分)を駐車場に供する場合で,当該部分のうち,駐車の用又は車路に供する部分が建築物の外周部分にある場合に適用する。ただし,駐車場内で操車を行わない機械式駐車場においては,この限りでない。」とされている。 本件事故当時,上記設計指針は,直下の地面から約3.6メートルの高さにある本件駐車場を明示的には適用範囲としていなかった(園庭は保育園の専有庭であり,公共の用に供する道路,広場等に転落するおそれがある場合の基準である「2.1メートル以上」の適用がなかったと解釈されている。)。 本件事故後,本件駐車場がこれまでの通達では想定外であったことが問題視され,同通達が見直され,国土交通省住宅局建築指導課長から各都道府県建築主務部長宛ての「駐車場における自動車転落事故防止対策について(技術的助言)」(平成15年2月25日国住指発8290号)が通知された。同通知の目的は従前と変わらず,適用範囲は「直下の地面からの高さが5.1メートル(多数の者の利用する道路,広場等に転落するおそれがある場合は2.1メートル) 25日国住指発8290号)が通知された。同通知の目的は従前と変わらず,適用範囲は「直下の地面からの高さが5.1メートル(多数の者の利用する道路,広場等に転落するおそれがある場合は2.1メートル)以上である駐車場その他の自動車が転落することにより重大な事故が生じるおそれのあるものに適用する。」と改められ,また,従前は,床面からの高さ60センチメートルの位置で,幅160センチメートルにわたり,25トンの衝撃力が加わっても自動車の転落を有効に防止できるような装置等を設置することとされていたが,今回の改訂により,床面からの高さ60センチメートルの位置で,幅160センチメートルにわたり,250キロニュートンの衝撃力が加わっても自動車の転落を有効に防止できるような装置等を設置することと改められた(1キログラムの質量を有する物体に1メートル毎秒の加速度を生じさせる力の大きさが1ニュートンである。)。 また,厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長から各都道府県,指定都市,中核市民生主管部(局)長宛ての「保育所に設置されている屋上駐車場での自動車転落事故防止対策について」(平成16年7月1日雇児保発第0701001号)が通知されたが,その内容は,「保育所においては,児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号)5条2項に定められているとおり,その構造設備は入所者に対する危害防止に十分な考慮を払って設けなければならず,また,必要に応じてその維持管理を行っていく必要があります。特に,屋上駐車場を設置している保育所,又は隣接した屋上駐車場がある保育所にあっては,危機管理の観点から現状を点検し,問題点を把握することにより,児童の安全確保等のより一層の徹底をしてくださいますよう,管内市町村及び保育所に対する指導方よろしくお願いいたします。」というものであった 危機管理の観点から現状を点検し,問題点を把握することにより,児童の安全確保等のより一層の徹底をしてくださいますよう,管内市町村及び保育所に対する指導方よろしくお願いいたします。」というものであった。 オ平成14年2月,本件保育園の保護者の自動車(普通乗用車である日産リバティ,以下「本件日産リバティ」という。)が本件駐車場において段差状態の車止めを乗り越え,本件駐車場柵に衝突するという本件駐車場2月事故が発生した。同事故は,運転者がブレーキとアクセルを踏み間違えたものであるところ,同事故により,本件駐車場の北東角から西に向かって2本目の支柱が北側にくの字に曲がり,その根本が砕けて本件駐車場の基礎から本件園庭側に外れ,更にその西隣の支柱も変形してその根本部分が本件駐車場の基礎と共に損傷しており,これらの支柱間の下継が切れて本件園庭側に大きく外れ,立子も全て本件園庭側にくの字に曲がった。 被告Dは,本件駐車場2月事故の報告は受けたが,事故を起こした保護者にも,園児にも怪我がなく,本件駐車場柵は安全に車を止めることができたという報告を受け,年度替わりで多忙であったこともあり,同事故の現場を直接見に行くことはせず,本件駐車場柵の損傷状況等について写真による確認もしなかった。 O主任,H保育士,J保育士,K保育士及びL保育士は,本件駐車場2月事故を目撃しなかったが,事後に聞いて知った。H保育士は同事故の前後を通じて,本件日産リバティを見たことはなくその車種も知らなかったが,同事故のことは当日の朝礼で聞き,同事故で壊れた本件駐車場柵を見たことはあった。J保育士及びL保育士は,同事故後に同事故現場を見たことはなかった。 本件駐車場2月事故の件は,職員会議や保護者会等において問題として提出されることはなく,普通乗用車である本件日産リバティが本件駐車場 育士及びL保育士は,同事故後に同事故現場を見たことはなかった。 本件駐車場2月事故の件は,職員会議や保護者会等において問題として提出されることはなく,普通乗用車である本件日産リバティが本件駐車場を使用していたことについても,被告法人らは,保護者らに対して,特に,普通乗用車で本件駐車場を使用することができなくするような対応をとらなかった。 本件駐車場2月事故による本件駐車場の損傷については,平成14年2月22日,I工務店が「工事名めぐみ保育園上部駐車場手摺復旧工事」,「代金 70万2075円,消費税3万5104円」,工事明細を「1 仮設工事,2 RC腰壁解体工事,3 スチール手摺解体工事,4 スチール手摺取付工事,5 同上塗装工事,6 RC腰壁工事,7 防水工事(打継処理,ポリウレタン),8 防水工事(手摺足元防水処理,無収縮モルタル処理),9 左官工事(吹付下補修),10 吹付工事」とする見積書を作成し,本件日産リバティについて契約されていた保険の保険会社に提出した。 そして,I工務店により同事故の補修工事がされたが,補修工事の具体的内容は,4か所の支柱を補修し,それより広い範囲で笠木を取り替え,補修範囲の両端の笠木は,溶接で固定したものであるが,同事故前の状態に補修することであることから,同事故前の状態より本件駐車場柵の強度が増したということはかった(補修の範囲は,ほぼ別紙図面3において「補修範囲」と記載されている部分である。)。 補修工事については,被告法人の担当としてはO主任が主にかかわっており,被告Dは修繕するという報告を受けた以外はかかわっていなかった。 カ本件駐車場2月事故の前も以後も,被告法人らは,保育士らに対し,本件駐車場のすぐ下にある本件園庭に園児らを近づけないようにという指示ないし指導をしたことはない。 キ 外はかかわっていなかった。 カ本件駐車場2月事故の前も以後も,被告法人らは,保育士らに対し,本件駐車場のすぐ下にある本件園庭に園児らを近づけないようにという指示ないし指導をしたことはない。 キ被告Aは,本件事故の2年位前から,本件保育園に通う孫の送迎をしていた。被告Aは,送迎を始めた当初,本件保育園正面の道路上にA車を止めて送迎していた。 しかし,本件保育園正面側から園舎に入る際,階段が多く,急であり,足の不自由な被告Aにとって大変であったので,被告Aは,平成14年4月ころから,階段でも上り下りが緩やかな本件駐車場に駐車して送迎をするようになった。 同年6月20日以前に,K保育士は,被告Aが比較的大きな車であるA車を本件駐車場に駐車して孫の送迎をしていると他の保護者から聞き,O主任らを通して,被告Aの息子夫婦に,A車を本件保育園正面の駐車場に駐車するよう依頼した。 同年6月20日,本件保育園の個人懇談が実施され,K保育士は,被告Aの息子夫婦に対し,A車について本件保育園正面の駐車場を駐車場所とする「駐車許可証」を渡したところ,その時,同夫婦から,送迎しているのが被告Aであり,高齢で,しかも足が不自由であるため,本件保育園正面の駐車場からでは園児とともに階段を上り下りすることには非常な困難が伴い,大変であるので,なんとか本件駐車場に駐車させてほしい旨申し入れられた。K保育士は,その後,O主任にこの申入れを伝え,本件保育園内で主にO主任と被告Eが相談した結果,被告Aの事情及びA車の重量による本件南側園舎屋上の防水アスファルトの傷みのおそれを考慮し,本件駐車場東側に隣接して本件駐車場と一体として被告法人が設置した狭い駐車場部分(本件車道に接続しており被告法人所有に係るものである。)の別紙図面4(ほぼ別紙図面1と同じものである。)記載○A し,本件駐車場東側に隣接して本件駐車場と一体として被告法人が設置した狭い駐車場部分(本件車道に接続しており被告法人所有に係るものである。)の別紙図面4(ほぼ別紙図面1と同じものである。)記載○A部分に,篠原車の駐車を許可することとし,同月中に,被告Aに対し,本件駐車場の駐車許可証が交付された。 A車は,日産ラルゴというオートマティックの普通乗用車(車体の形状ステーションワゴン)であり,長さ4.58メートル,幅1.74メートル,高さ1.83メートル,車両重量1530キログラムである。 被告Aは,本件駐車場の東側にある上記狭い駐車場に,本件車道に平行にA車を駐車することにしていた。A車の駐車の方法は,本件車道を西進して前部から本件駐車場内に進入し,方向転換のため一旦本件車道上へ後退し,上記狭い駐車場に前部を東側に向けて,車道に平行に駐車するというものであった。被告Aは,A車を運転して,普段は,時速約10キロメートル前後の速度で本件駐車場に進入していた。 ク被告Aは,本件事故の直前は,本件保育園に孫を迎えに行くためにA車を運転し,本件保育園南側の本件車道の中央付近を時速約20キロメートルの速度で西進していた。 A車のサイドブレーキは,フットブレーキの左側にあり,踏み込み式のものであり,本件事故当時,A車には積荷はなく,ハンドル,ブレーキ等の故障もなかった。 本件事故当時の天候は晴れであり,本件車道はアスファルト舗装の平坦な道路で路面は乾燥していた。本件車道の見通しは良く,歩行者及び車両は他になかった。 被告Aは,いつもA車を止めている本件駐車場の東側にある上記狭い駐車場内に既に他の車が駐車してあったので,A車の前部から本件駐車場内に進入し,一旦後退して方向転換し,本件駐車場の南側の本件車道の脇に駐車しようとした(被告Aは,本件駐車場に の東側にある上記狭い駐車場内に既に他の車が駐車してあったので,A車の前部から本件駐車場内に進入し,一旦後退して方向転換し,本件駐車場の南側の本件車道の脇に駐車しようとした(被告Aは,本件駐車場に駐車することができるものと思っていたが,他の保護者らが脇に駐車するとA車が出にくくなることから,本件車道の脇に駐車しようとした。)。 そして,被告Aは,別紙図面4記載①の地点で,本件駐車場に進入するため,時速約10キロメートルないし20キロメートルの速度で進行し,同図面記載②の地点から,ハンドルを右に切り,本件駐車場に入ろうとした。ところが,A車は,同図面記載②から③へと進行してその前部を本件駐車場柵に衝突させ,一旦後退した後に,更に前進してその前部を本件駐車場柵に衝突させて,同図面記載⑥付近の本件園庭に落下した。 このようなA車の二度の衝突状況は,本件事故直後の同車について,ギアがドライブに入っており,踏み込み式のサイドブレーキがかかっている状態であったこと,本件事故直後に本件駐車場及び本件車道に印象されたタイヤ痕,H保育士,L保育士,G,J保育士の証言や陳述書,その他被告Aに関する本件事故の刑事記録(甲3ないし26)により認められるところである。 被告Aが,オートマッティック車であるA車について,上記のごとき運転をしてしまったのは,同車の速度調節を誤って同車を本件駐車場柵に衝突させ,あわてて,ブレーキとアクセルの誤操作,前進後退のギアの誤操作をしてしまったことによるものと推認される。 ケ本件事故による本件駐車場柵の損傷状態は,3本の支柱が本件駐車場柵の基礎から南側に外れ,これらの支柱の両脇の支柱も根本から南側に傾き,上記3本の支柱の間の笠木と下継が一箇所切れてその切れ目が大きく南側に広がっている状態であった。 コ本件事故当時,被告Dは 場柵の基礎から南側に外れ,これらの支柱の両脇の支柱も根本から南側に傾き,上記3本の支柱の間の笠木と下継が一箇所切れてその切れ目が大きく南側に広がっている状態であった。 コ本件事故当時,被告Dは本件保育園に常駐していないため,また,被告Eは銀行と郵便局に行っていたため,いずれも本件保育園にいなかった。 サ本件園庭は,本件保育園の園児,保護者及び職員らが遊技や出迎え等で使用していた。 (4) 以上の事実に基づき,本件駐車場について,民法717条1項に規定されている設置又は保存の瑕疵が認められるか否かに検討する。 本件駐車場は,本件保育園の職員や保護者の運転する自動車の駐車や方向転換の目的で設置されたものであるところ,本件駐車場柵の南側は,約95センチメートル突き出た本件南側園舎の庇があるのみで,庇の上端から垂直に2.95メートル(本件駐車場柵の基礎上端からは約3.6メートル)本件園庭に落ち込んでおり,本件園庭には多数の本件保育園園児,保護者及び職員が存在していることが予定されているから,本件駐車場から駐車ないし方向転換の自動車が逸脱して園庭に落下することは絶対に防止しなければならない。とりわけ,自己防衛力のほとんどない幼い園児らに対しては,その生命身体の保護に徹して,上記児童福祉施設最低基準に定められているとおり,その構造設備は危害防止に十分な考慮を払って設けなければならない。本件駐車場に防護柵がなく,運転操作の誤り等により自動車が園庭に落下した場合は,その下にいる園児が重大な被害を被ることは明らかである。したがって,本件駐車場柵は,多数の園児の命を守る生命線というべきものであり,その強度やこれと一体となった本件駐車場の構造については,高度の安全性が要求されるものと解すのが相当である。そこで,このような観点に立って,本件駐車場の構造等 の命を守る生命線というべきものであり,その強度やこれと一体となった本件駐車場の構造については,高度の安全性が要求されるものと解すのが相当である。そこで,このような観点に立って,本件駐車場の構造等について検討する。 本件駐車場の床面が本件車道から南側に向けてかなり緩い上りとなっていることは,本件南側園舎の屋上を兼ねており雨水等の排水上やむを得ないものと考えられるものの,車止めである段差は15センチメートルにすぎない。一般の自動車がブレーキをかけずに勢いよく進行した場合,本件駐車場の床面が上り勾配となっていなくても,容易にその車止めの段差を越えてしまうことは,本件駐車場2月事故及び本件事故に照らしてみても明らかである。そして,車止めの段差を越えた自動車は,その前輪が本件駐車場の床面より15センチメートル高くなった段差の上に上がっているから,その前部バンパーは,高さ25センチメートルの本件駐車場柵の基礎部分に直接当たらず,本件駐車場柵に当たり,同車が他の部分と接触することはあるものの,前進する自動車の推進力,衝撃力をもっぱら本件駐車場柵が受けることになる。すると,本件駐車場柵の強度が問題となるところ,本件駐車場2月事故及び本件事故による本件駐車場柵の上記各損傷状態,原告ら提出の名古屋工業大学Q教授の鑑定書等(甲33,34の1・2)において,本件駐車場柵の強度は10キロニュートンより若干大きめであるとされており,交通事故調査鑑定人Rの意見書(甲35)において,本件駐車場柵は,7.6トンの衝撃力に耐え得なかったとされていること,昭和61年9月1日住指発第185号通達「立体駐車場における自動車転落事故防止対策について」によれば,本件事故当時,国土交通省は,立体駐車場における自動車の転落防止対策の設計指針の基準として,床面からの高さ60センチメー 第185号通達「立体駐車場における自動車転落事故防止対策について」によれば,本件事故当時,国土交通省は,立体駐車場における自動車の転落防止対策の設計指針の基準として,床面からの高さ60センチメートルの位置で,幅160センチメートルにわたり,25トンの衝撃力が加わっても自動車の転落を有効に防止できるような装置等を設置することを定めていること(本件駐車場設置時のみならず,平成14年2月においては本件駐車場2月事故を反省して本件駐車場柵の強度改善をする機会があったから,その時点においても同設計指針の基準が参考とされるべきである。)等に照らすと,本件事故当時,本件駐車場柵の強度は,駐車ないし方向転換自動車の衝突による転落を防止するには不十分であったと認められる(被告法人ら提出のS技術士「機械・総合技術管理部門」の報告書等「乙4の1ないし5,5の1・2」においてさえ,本件駐車場柵は,13.4トンないし20.8トンの衝撃力にしか耐え得ないと受け取れる記載をしている。)。したがって,本件保育園は上記のごとき構造となっており,本件駐車場は,本件園庭の園児らの生命身体を守る高度の安全性を要求されることからすれば,本件事故当時,その通常有すべき安全性を欠いていた状態であるといわざるを得ない。 なるほど,上記昭和61年9月1日住指発第185号通達は,本件駐車場設置当時ないし本件事故当時には,本件駐車場には適用がなかったごとく解釈されている。しかしながら,甲29の1ないし4に照らしても,それは,保育園は,特定の者が利用する施設であり,管理上の配慮も一般に可能と考えられ,多くの園児達が利用する園庭の上部に屋上を利用した駐車場が設けられるような状況はこれまで想定していなかったことによるものと考えられる。そこで,同通達が見直され,上記国土交通省住宅局建築指導課長 れ,多くの園児達が利用する園庭の上部に屋上を利用した駐車場が設けられるような状況はこれまで想定していなかったことによるものと考えられる。そこで,同通達が見直され,上記国土交通省住宅局建築指導課長から各都道府県建築主務部長宛ての「駐車場における自動車転落事故防止対策について(技術的助言)」が通知されて本件保育園の本件駐車場の場合も適用が明文化され,また,上記厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長から各都道府県,指定都市,中核市民生主管部(局)長宛ての「保育所に設置されている屋上駐車場での自動車転落事故防止対策について」が通知され,屋上駐車場を設置している保育所にあっては,危機管理の観点から現状を点検し,問題点を把握することにより,児童の安全確保等のより一層の徹底をするようにとの指示がされたものである。したがって,上記昭和61年9月1日住指発第185号通達が本件駐車場設置当時ないし本件事故当時において,本件駐車場に適用がなかったと解釈されるとしても,同通達は,本件駐車場の瑕疵の有無を認定するに当たって参考となるものである。 なお,本件駐車場が建築基準法による建築確認を得ているとしても,瑕疵の有無は,客観的,実質的に判断されるものである上,本件駐車場の場合は,上記昭和61年9月1日住指発第185号通達等も参考になるというべきであるから,上記認定を左右するものではない。 そして,被告法人が,本件駐車場の瑕疵があるものの本件事故の防止のための特段の管理上の措置を講じたということも窺えない(被告法人において,本件駐車場を保護者に開放するに当たり,保護者に関しては駐車可能な自動車を軽自動車や1300CC程度の自動車に限定したことがあるが,本件保育園職員らについては,特段の限定はされていない上に,その措置は,本件駐車場の床である本件南側園舎屋上のア に関しては駐車可能な自動車を軽自動車や1300CC程度の自動車に限定したことがあるが,本件保育園職員らについては,特段の限定はされていない上に,その措置は,本件駐車場の床である本件南側園舎屋上のアスファルト防水が傷まないようにとのことからであり,被告法人は,普通自動車である本件日産リバティが本件駐車場2月事故を起こした後も特段の措置をとっていない。)。 以上によれば,土地の工作物たる本件駐車場の設置又は保存には瑕疵があったというべきであり,本件事故は上記設置又は保存の瑕疵により発生したものと認められる。 被告法人は,本件駐車場の瑕疵と本件事故との因果関係を争うが,オートマッティック車が駐車ないし方向転換に際して,アクセルとブレーキを踏み間違えたり,前進と後退のギアを誤操作したりすることは,本件駐車場2月事故及び本件事故のごとく,ままあることである。また,運転ミス等によりあわてたりパニック状態となって同じ動作,運転行動を繰り返すことは,必ずしも稀ではなく,通常考えられないというものではない。したがって,本件駐車場の瑕疵と本件事故との因果関係は認められるというべきである。 (5) 以上によれば,その余について判断するまでもなく,被告法人は,民法717条1項の工作物所有者責任に基づき,本件事故による損害賠償責任を負うものと認められる。 3 被告Dの責任について(1) 不法行為責任(安全配慮義務違反)ア上記認定事実によれば,被告Dは,被告法人の代表者理事として,被告法人が経営する本件保育園の業務について委任ないし準委任されていたこと及び原告らと被告法人との間にはFの保育について本件保育委託契約が締結されていたことが認められる。このような事実関係においては,被告Dについて,抽象的な安全配慮義務が認められるところ,その具体的内容は,義務の主体及び 人との間にはFの保育について本件保育委託契約が締結されていたことが認められる。このような事実関係においては,被告Dについて,抽象的な安全配慮義務が認められるところ,その具体的内容は,義務の主体及び客体の各性質,法律関係の内容,その具体的な状況等によって定まるべきものである。 イ原告らは,被告法人らの安全配慮義務として,①本件駐車場の場所に本件駐車場を設置してはならない義務ないし本件駐車場の使用を本件駐車場2月事故以降は中止すべき義務,②本件駐車場柵の強度を十分なものにすべき義務,③本件園庭に安全帯を設ける等をすべき義務,④本件駐車場における事故の可能性が高くなる駐車許可等をしてはならない義務等を主張するものの,被告D個人に対する具体的義務の主張については必ずしも明確ではない。そこで,被告Dは代表者理事として被告法人と同じ事実に基づいて同等の安全配慮義務がある旨の主張と一応解して以下検討する。 ウ上記認定事実によれば,被告法人の理事として登記されていたのは被告Dのみであるが,理事は6人おり,被告法人の理事会は,年に3回程度開かれ,主に予算や経理関係の議事を行い,本件駐車場の工事を含む本件南側園舎の増築についても3,4回の理事会が開かれていたことが認められるところ,これら理事会において代表者理事の意思表明のみで全てが決まったなどの事実までは認定できず,他に,被告Dと被告法人を同一視できるような特段の事情は,その主張,立証もない本件においては認められない。加えて,被告Dが代表者理事を務める被告法人は,本件保育園の設置経営の外,第二種社会福祉事業として3事業,第一種社会福祉事業として2事業を行っており,被告Dは,もっぱら平成10年4月から本件保育園とは別の場所に所在するパスピ・98の施設長として勤務していたのであり,本件事故当時,本件保育園に て3事業,第一種社会福祉事業として2事業を行っており,被告Dは,もっぱら平成10年4月から本件保育園とは別の場所に所在するパスピ・98の施設長として勤務していたのであり,本件事故当時,本件保育園には月1回赴く程度であった。 エまた,本件駐車場の設置又は保存に瑕疵があることは上記のとおりであるが,本件駐車場については一応建築基準法による建築許可を得ており,その設計及び工事については,専門業者が行っているものであり,被告Dは,これら業者から本件駐車場が安全である旨の報告を受けている。 オすると,被告Dが本件南側園舎の屋上に本件駐車場を作るという発案をしたことは認められるものの,被告Dが本件駐車場を設置したとまではいえないとともに,被告Dが本件駐車場の場所に本件駐車場を設置してはならない義務を負いこれを怠った旨の原告らの主張は採用できない。 カ本件駐車場2月事故後の対応については,本件日産リバティに関して契約されていた保険会社,O主任,I工務店等が関与しており,被告Dは,同事故後,事故を起こした保護者にも,また園児にも怪我はなく,本件駐車場柵は安全に車を止めることができたこと及び補修工事をするとの報告を受けた(補修工事については,被告法人の担当としては保育士主任のO主任が主にかかわっており,被告Dは特にかかわっていなかった。)ものである。すると,本件駐車場2月事故後については,多数の者が関与して対応しており,被告Dが報告を受けてそれ以上積極的に対応しなかったこと等を捉えて,本件駐車場の使用を中止すべき法的義務があること及びこれを怠ったことまでも認めることは困難である。 キ次に,本件駐車場の設置については,理事会において決められたことであり,被告Dの専決ではない上,本件駐車場については一応建築基準法による建築許可を得ており,その設計及び めることは困難である。 キ次に,本件駐車場の設置については,理事会において決められたことであり,被告Dの専決ではない上,本件駐車場については一応建築基準法による建築許可を得ており,その設計及び工事については,専門業者が行っているものであり,被告Dは,これら業者から本件駐車場が安全である旨の報告を受けていることに照らすと,被告Dが本件駐車場柵の強度を十分なものにすべき義務がありこれを怠った旨の原告らの主張は採用できない。 クさらに,原告ら主張の本件園庭に安全帯を設ける等をすること及び本件駐車場における駐車許可等をすることに関しては,主張のごとき具体的問題は,もっぱら本件保育園の園長や職員が相談して内部的に決める施設管理の問題であり,通常は,代表者理事である被告Dの権限と責任に係るものとは考え難いところ,被告Dにおいて,原告ら主張のごとき行為をする法的義務及びこれを怠ったことを認めるに足りる特段の事情が認められない本件においては,これらの点について,被告Dの義務及びその違反を問うこともできないといわざるを得ない。 ケ以上によれば,被告Dについて,安全配慮義務及びその違反を認めることは困難である。 (2) 保育士の安全配慮義務違反に関する民法715条2項の監督者責任本件全証拠によっても,本件保育園の保育士らにつき,原告ら主張のごとき不法行為の原因となる過失(安全配慮義務違反)を認めることは困難である。したがって,被告Dに同法715条2項の監督者責任を認めることもできない。 (3) 債務不履行責任(危険防止に配慮すべき安全配慮義務)ア上記のとおり,被告Dは,被告法人の代表者理事として,被告法人が経営する本件保育園の業務について委任ないし準委任されていたこと及び原告らと被告法人との間にはFの保育について本件保育委託契約が締結されていたこ おり,被告Dは,被告法人の代表者理事として,被告法人が経営する本件保育園の業務について委任ないし準委任されていたこと及び原告らと被告法人との間にはFの保育について本件保育委託契約が締結されていたことが認められるところ,このような事実関係においては,被告Dは,信義則上,本件保育園の園児であるFに対し,安全配慮義務を負うものと解される。安全配慮義務は,「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触に入った当事者間において」存するものであり(最高裁第三小法廷昭和50年2月25日判決),同義務を認めるには,必ずしも配慮義務者と要配慮者との間に直接の契約関係がなければならないというものではないと解される。 しかしながら,そのような直接の契約関係のない者に対してまでも,安全配慮義務を信義則上認めるには,慎重に判断されるべきであり,安全配慮義務の内容が具体的で,義務違反が明確であることを要すると解される。 イ原告らは,被告法人らの安全配慮義務として,①本件駐車場の場所に本件駐車場を設置してはならない義務ないし本件駐車場の使用を本件駐車場2月事故以降は中止すべき義務,②本件駐車場柵の強度を十分なものにすべき義務,③本件園庭に安全帯を設ける等をすべき義務,④本件駐車場における事故の可能性が高くなる駐車許可等をしてはならない義務等を主張するものの,被告D個人に対する具体的義務の主張については必ずしも明確ではない。そこで,被告Dは代表者理事として被告法人と同じ事実に基づいて同等の安全配慮義務がある旨の主張と一応解して検討した結果は,上記第3,3(1)ウないしクのとおりである。 ウ以上によれば,被告Dについて,債務不履行責任(危険防止に配慮すべき安全配慮義務)も認められない。 4 被告Eの責任について(1) 不法行為責任(安全配慮義務違反)ア上記認定事実によ ある。 ウ以上によれば,被告Dについて,債務不履行責任(危険防止に配慮すべき安全配慮義務)も認められない。 4 被告Eの責任について(1) 不法行為責任(安全配慮義務違反)ア上記認定事実によれば,被告Eは,被告法人経営に係る本件保育園の園長であり,被告法人が経営する本件保育園の施設管理,人的管理等について委任ないし準委任されていたことが認められところ,このような事実関係においては,被告Eについて,抽象的な安全配慮義務が認められるところ,その具体的内容は,義務の主体及び客体の各性質,法律関係の内容,その具体的状況等によって定まるべきものであることは上記のとおりである。 原告らの,被告E個人に対する具体的義務及びその違反の主張についても明確ではない点があるが,上記原告らの被告Dに対する主張と同様にして検討することとする。 イすると,まず,本件駐車場の場所に本件駐車場を設置してはならない義務については,本件駐車場の設置は本件保育園園長の権限でも責任でもなく,被告Eが登記されていないが本件法人の理事であるとしても,本件駐車場の設置は多数の理事で構成される理事会で決められたものであり,被告E単独でしたことではないこと等に照らせば,被告Eに同義務及びその違反を認めることはできない。 ウ次に,本件駐車場の使用を本件駐車場2月事故以降中止すべき義務について見るに,上記のとおり,同事故後の本件駐車場については,多数の者が関与して対応したこと,I工務店により修理がされていること,前掲証拠によれば,同事故後も本件保育園の保護者や職員が引続き本件駐車場を使用する必要性があったこと及び当時本件駐車場から自動車が転落することまでも予測した者はいなかったことが認められること等に照らすと,被告Eについて,本件駐車場2月事故以降,本件駐車場の使用を中止すべき法 る必要性があったこと及び当時本件駐車場から自動車が転落することまでも予測した者はいなかったことが認められること等に照らすと,被告Eについて,本件駐車場2月事故以降,本件駐車場の使用を中止すべき法的義務があること及びこれを怠ったことまでも認めることは困難であるといわざるを得ない。 エさらに,本件駐車場柵の強度を十分なものにすべき義務について見るに,上記のとおり,本件駐車場の設置については,理事会において決められたことであり,被告Eが設置したものではない上,本件駐車場については一応建築基準法による建築許可を得て,専門業者がその設計及び工事を行っているものであり,被告Eが本件駐車場の設計,施工に具体的にかかわったことが窺えない本件においては,被告Eに本件駐車場の瑕疵を察知して,その強度を十分にすることを求めることはできないから,被告Eが本件駐車場柵の強度を十分なものにすべき義務がありこれを怠った旨の原告らの主張は採用できない。なお,本件駐車場2月事故後においても,上記のとおり多数の者が関与して対処したものであること,本件駐車場の設計,施工に具体的にかかわっていないと窺える被告Eは,建築基準法に従って設置された本件駐車場の強度について疑問を持っていなかったと考えられるところ,同事故後にI工務店により本件駐車場の修理がされたことから本件駐車場の強度についての認識は基本的に変更しなかったものと推察されること,被告Eにおける本件事故の予見可能性及び結果回避可能性の存在について断定し難い点があること等に照らすと,原告らの上記主張は採用できないというべきである。 オそして,本件園庭に安全帯を設ける等をすべき義務及び本件駐車場における事故の可能性が高くなる駐車許可等をしてはならない義務等について見るに,上記認定事実によれば,被告Eにおいて,これらの法 る。 オそして,本件園庭に安全帯を設ける等をすべき義務及び本件駐車場における事故の可能性が高くなる駐車許可等をしてはならない義務等について見るに,上記認定事実によれば,被告Eにおいて,これらの法的義務及びこれらの義務を怠ったものと認めることは困難である。 カ以上によれば,被告Eについて,安全配慮義務及びその違反を認めることは困難である。 (2) 保育士の安全配慮義務違反に関する民法715条2項の監督者責任本件全証拠によっても,本件保育園の保育士らにつき,原告ら主張のごとき不法行為の原因となる過失(安全配慮義務違反)を認めることが困難であることは上記のとおりであるから,被告Eに同法715条2項の監督者責任を認めることはできない。 (3) 債務不履行責任(危険防止に配慮すべき安全配慮義務)ア被告Eは,被告法人経営に係る本件保育園の園長であり,被告法人が経営する本件保育園の施設管理,人的管理等について委任ないし準委任されていたことが認められるところ,被告Eは,被告法人が原告らとの本件保育委託契約により預かったFに対し,信義則上,安全配慮義務を負うものと解される。 しかしながら,直接の契約関係のない者に対して,安全配慮義務を信義則上認めるには,慎重に判断されるべきであり,安全配慮義務の内容が具体的で,義務違反が明確であることを要すると解されることは上記のとおりである。 イ原告らの,被告E個人に対する具体的義務及びその違反の主張についても明確ではない点があるが,上記原告らの被告Dに対する主張と同様にして検討した結果は,上記第3,4(1)イないしオのとおりである。 ウ以上によれば,被告Eについて,債務不履行責任(危険防止に配慮すべき安全配慮義務)も認められない。 5 損害について(1) 治療費 のとおりである。 ウ以上によれば,被告Eについて,債務不履行責任(危険防止に配慮すべき安全配慮義務)も認められない。 5 損害について(1) 治療費 6230円甲27及び弁論の全趣旨によれば,Fの本件事故による治療費として上記金額が認められる(なお,原告らは,本件事故による治療費としては,上記金額以外請求していない。)。 (2) 葬儀費用 170万円甲28の1ないし6及び弁論の全趣旨によれば,原告らが葬儀費用として328万1564円を支出したことが認められるが,社会通念上許容される限度で損害と認められるものであるところ,本件のごとき悲惨な事故により死亡した者の冥福を祈るためにある程度手厚い葬儀を営むことは一般的であることにかんがみると,本件事故と相当因果関係のある葬儀費用としては170万円と認めるのが相当である。 ところで,原告らは,葬儀費用として328万1564円支出したが,これに対し被告Aから250万円を受領したため,残金が78万1564円である旨主張する。 しかしながら,被告Aは,原告らに250万円を支払ったことは認めるものの,本件事故による損害全般に対する支払であると主張しており,被告Aが葬儀費用のみに対して支払ったことを認めるに足りる証拠がないから,上記250万円は,後記本件損害に対する既払金として控除されることとなる。なお,原告らが葬儀費用として78万1564円のみを請求しているのが,上記のごとき理由によるものであるから,上記170万円の葬儀費を認めることは,処分権主義に抵触するものではない。 (3) Fの死亡逸失利益 2593万6913円Fは,本件事故により死亡した当時,3歳の女児であったと を認めることは,処分権主義に抵触するものではない。 (3) Fの死亡逸失利益 2593万6913円Fは,本件事故により死亡した当時,3歳の女児であったところ,Fのような幼女については,今後,多様な職業選択の可能性があるものといえ,かつ,本件事故当時幼女であった者たちが就労を開始する将来の社会状況も考慮すべきと考えられる。この点,日本において,過去に比して職業選択についての男女の差がなくなりつつあり,これに応じて収入額の差も減少している。この社会状況には,法制度上の裏付けもされ,将来においても進展していくと予想される。したがって,Fのような幼女が就労を開始する十数年後には,収入についての男女差は,現在よりもより小さくなっていると推認し得るから,Fの逸失利益を算定するに当っては,基礎収入について,特段の事情のない限り,全労働者平均賃金により算定するのが相当である。 そこで,特段の事情の窺えない本件においては,平成14年の賃金センサスにおける企業規模計・産業計・全労働者の年収額である494万6300円を基礎収入とする。そして,基礎収入を男女全体の年収額と考えることから,Fの生活費控除率については4割と認めるのが相当である。 すると,Fの逸失利益の算定に関しては,494万6300円を基礎収入とし,就労開始年齢の18歳から就労可能年齢の67歳までの49年間,生活費控除率を4割として,ライプニッツ式計算法により,年5分の割合の中間利息を控除して逸失利益の現価を算定すると2593万6913円となる。 4,946,300×(1-0.4)×(19.1191-10.3796)=25,936,913(小数点以下切捨)なお,原告らは,中間利息控除について,控除利率を裁判時の実質金利に従って計算するのが相当であり, 300×(1-0.4)×(19.1191-10.3796)=25,936,913(小数点以下切捨)なお,原告らは,中間利息控除について,控除利率を裁判時の実質金利に従って計算するのが相当であり,昭和31年から現在までの日本の経済状況を考えると,将来における変動率を考慮しても,利率は年2分ないし年3分を超えないと主張する。 しかしながら,中間利息を控除する場合に,一般にその利率を年5分としているのは,将来得べかりし収入が現在価格で一時に支払われる場合には様々な有利と思われる運用,利殖をすることができること,他方では支払う側の負担等を考慮し,民事法定利率を参酌したものであり,特に,本件は,就労可能年数が就労可能となる15年後から49年間と長期間に及ぶ事案であり,金利の変動は,世界的な政治,経済情勢や国内における政治的,経済的,社会的諸要因によって影響を受けるものであり,上記15年後から始まり49年間に及ぶ長期間に金利が変動し年5分を超える可能性も考えられること等にかんがみると,上記原告らの主張は採用できないといわざるを得ない。 (4) Fの死亡慰謝料 2400万円Fは,幼気ない春秋に富む3歳の幼児であり,原告らや兄,姉及び祖父らに可愛がられて順調に成長し,幸福な将来と限りない可能性を有していたにもかかわらず,何ら落度がなく,突然,安全で保護されているべき本件保育園において,本件事故に遭い,無惨にもA車の下敷きになって命を絶たれてしまったものである。Fの受傷の内容も,頭蓋骨陥没,左足大腿部・下腿部骨折という痛ましいものであった。 以上のごとき事情にかんがみると,Fの死亡慰謝料としては,2400万円を認めるのが相当である。 (5) 原告らの固有の慰謝料 腿部・下腿部骨折という痛ましいものであった。 以上のごとき事情にかんがみると,Fの死亡慰謝料としては,2400万円を認めるのが相当である。 (5) 原告らの固有の慰謝料各300万円ア上記第2,1の事実並びに証拠(甲1,39ないし42,45の1ないし3,46ないし49,60,61,65,66,68,69,乙23,原告C,被告D「本人兼被告法人代表者」,被告E)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) Fは,原告らの末っ子として生れ,兄や二人の姉,同居するFの祖父にも可愛がられ,祖父にはだっこやおんぶをせがみ,「おかち買ってー。ジューチュ買ってー。」とねだりながらも,祖父の肩たたき,原告Cの手伝いもしていた。 原告Bは,疲れて帰ってきても,Fに出迎えられると一日の疲れも吹き飛ぶ思いであった。 原告Cがただ一度見ることになった本件保育園での発表会でFは,先生に教えてもらったダンスをただ一人間違えずに踊ることができた。原告らにとって,Fは,可愛くひょうきんな物覚えの良い自慢の娘であった。 原告らは,一家の太陽であった愛するFを亡くし,家庭は一変し,真っ暗な闇夜に突き落とされたような日々を送っている。 (イ) 原告Cは,平成14年9月18日午後4時過ぎ,本件保育園の保育士から早く来るようにとの電話を受けた。そして,本件保育園に着いて,騒然とした中,本件保育園の本件園庭に行ったところ,大破したA車の手前に,おびただしい血で真っ赤に染まった布団の上に寝かされたFを見た。原告Cは,そこに座り込み,全身傷だらけのFに何度も呼びかけたが返事はなかった。 Fは,救急車で藤田保健衛生大学病院に搬送されたが,命だけは助かってほしいとの原告らの必死の願いも空しく,原告らの前で冷たくなって死亡した。 (ウ) 本件事 Fに何度も呼びかけたが返事はなかった。 Fは,救急車で藤田保健衛生大学病院に搬送されたが,命だけは助かってほしいとの原告らの必死の願いも空しく,原告らの前で冷たくなって死亡した。 (ウ) 本件事故の翌日,本件保育園で,保護者に対する説明会が開かれたが,原告らはそれを知らなかった。説明会の終わりに,被告Dはこれから原告ら宅へ行くと言って本件保育園を出た。原告らはその経緯をを後日聞き,原告らの名を出して,説明会を中断したものと感じた。 平成14年10月21日,原告らは,本件事故について被告法人側からの説明がないので,被告Eに対して,原告ら宅に来てほしいと言った。同日夜,被告E及び被告Dらが原告ら宅に来たが,具体的説明は特に聞けなかった。 原告Bは,平成14年10月30日ころ,「要望書」と題する書面(甲39)に「平成14年9月18日午後4時頃園舎屋上の駐車場に駐車しようとしていた自動車が落ち,運動場で遊んでいた私の子どもが死亡し,もう一名の園児が怪我をするという事故が発生しています。事故の翌日開催された保護者会でこの事故の説明があったそうですが,私はその保護者会に参加していませんし,まだ園より説明を十分に受けていませんので,私を含めた園児の保護者に対する事故に関する説明会の開催を要望します。園児の安全性に関する重要な問題でありますので,早急に開催をお願いします。また開催しないのであれば,その理由を私に文書で回答ください。」と記載し,原告らは,同年11月1日,これを本件保育園に提出した。 これに対し,同月5日,被告法人の代理人である弁護士から,原告ら宛てに,被告法人は事故原因の解明,責任の所在等についてできる限りの協力をしたいと思っているが,上記要望書記載の説明会については,同年9月19日に保護者説明会を開催しており,原告Bには個別に被告 ら宛てに,被告法人は事故原因の解明,責任の所在等についてできる限りの協力をしたいと思っているが,上記要望書記載の説明会については,同年9月19日に保護者説明会を開催しており,原告Bには個別に被告法人の知りうる情報を提供しているので,改めて開催する予定はないこと等が記載された内容証明郵便が届いた。 その後,本件事故に関する説明会は,行われていない。 (エ) 原告らは,被告法人らに対し,Fの葬儀を保育園葬にしてもらいたいという希望を伝えたが,受け入れられなかった。 (オ) Fの葬儀は同年9月21日に行われたが,翌22日,原告らは,被告Dに対し,本件事故現場に花壇を作ってほしいと要望したところ,被告Dは,前向きに検討すると回答した。 原告らが,同年9月末ころ,被告法人に花壇の件について問い合わせたところ,被告Dは,「忌明けまで待って下さい。」と答えた。 原告らは,同年11月5日の忌明けまで待ち,被告Dに連絡したが,積極的な回答はなかった。 その後,平成15年になって,原告らは,被告法人からの,学校健康センターからの供花料を受領するか否かの問い合わせに対して,被告法人に,それを寄付するので,Fが亡くなった場所に花壇を作ってほしい旨伝えた。 これに対し,被告法人らは,原告らに対して,平成15年10月27日,原告らから寄付を受ける意思がないこと,花壇の件は承諾しかねる旨の回答をした。 (カ) 本件保育園の運動会は,本件事故のため,開催を延期していたところ,平成14年11月9日,本件保育園において開催されたが,運動会に関して本件保育園側から原告らに対して連絡がなかった。そして,原告Cは,上記運動会が開催された日にパニック状態に陥り,同日,医療法人福智クリニックにおいて診察を受けたところ,T医師から,「病名心因反応」,「強いストレスにより,抑うつ状 連絡がなかった。そして,原告Cは,上記運動会が開催された日にパニック状態に陥り,同日,医療法人福智クリニックにおいて診察を受けたところ,T医師から,「病名心因反応」,「強いストレスにより,抑うつ状態となっている。就労は困難で,今後しばらくは,休養及び加療を必要とする。」との診断を受けた。 (キ) 原告らは,被告法人らから,本件事故について,原告らに対する謝罪や責任を感じると受取れるような言葉を聞くことはなかった。 (ク) 被告Aは,Fの初七日を迎えた日,初めて原告ら宅にお参りに来て,「一生かけても償っていきます。」と述べた。ところが,被告Aは,Fの一周忌後は,原告ら宅にお参りに来ることはなくなった。 イ以上のごとき事実によれば,原告らが,最愛の我が子の命を目を覆う惨事で奪われ,癒えることのない悲しみ,苦しみの極みに日々置かれていることが認められる。そして,本件事故後の被告法人の無理解と受取られる対応や被告Aの加害者としての反省が疑われる変貌に,深く心を傷つけられたことも認められる。 本件事故につき,Fの葬儀を保育園葬とすることやFの死亡した場所に花壇を作ること,あるいは延期した保育園の運動会を開催すること等について,被告法人の自由な裁量問題であり,被告法人において原告らの意向に沿うことがなかったこと自体を捉えて法的責任を問うことは妥当ではないと考えられるものの,被告法人の損害賠償責任が認められることは上記のとおりであり,上記第3,5(5)アの事実及びその経緯に照らすと,被告法人において,悲嘆にくれている原告らに対する配慮を欠いた対応が見受けられるというべきである。 また,被告Aにおいては,原告らにとってかけがえのないFの命を奪った者であるにもかかわらず,Fの一周忌後の対応の変化により,更に原告らの心を傷つけたことは,原告らに対するB意 るというべきである。 また,被告Aにおいては,原告らにとってかけがえのないFの命を奪った者であるにもかかわらず,Fの一周忌後の対応の変化により,更に原告らの心を傷つけたことは,原告らに対するB意を欠いたものといえる。被告Aの上記のごとき自動車を運転しなくなったことから足の便がなくつい遠ざかってしまった等の弁明は,容易には理解し難いところである。 何よりも,被告Aは,基本的注意義務を怠る重大な過失によって,Fを死亡させ,原告らに計ることのできない苦痛を与えたものである。 したがって,これらの事情を総合考慮すると,被告法人及び被告Aに対する原告らの本件事故による固有の慰謝料としては,各300万円を認めるのが相当である。 (6) Fの損害の相続甲1及び弁論の全趣旨によれば,原告らはFの父母であり,Fの本件損害賠償請求権を各2分の1の割合で相続したことが認められるから,原告らは,上記第3,5(1)ないし(4)の合計5164万3143円の各2分の1である2582万1571円(円未満切捨)を各相続した。 (7) 上記第3,5(6)の金額に上記同(5)の原告ら固有の慰謝料である各300万円を加えると,原告らについて,各2882万1571円となる。 (8) 既払金控除後の原告らの金額各2757万1571円被告Aから原告らに対し,250万円が支払われたことは当事者間に争いがないところ,この既払金の性質については上記のとおりであるから,これを控除した後の原告らの金額は各2757万1571円となる。 (9) 弁護士費用各180万円上記認容額及び本件事案の内容及び本件審理の経緯に照らすと,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては,原告ら各180万円と認めるのが相当 各180万円上記認容額及び本件事案の内容及び本件審理の経緯に照らすと,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては,原告ら各180万円と認めるのが相当である。 (10) 上記第3,5(8)の金額に上記同(9)の金額を加えた原告らの損害額合計は,各2937万1571円となる。 第4 結論以上によれば,原告らの被告らに対する本件損害賠償請求は,各原告が被告法人及び被告Aに対し,連帯して2937万1571円及びこれに対する本件事故の日である平成14年9月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第3部裁判長裁判官島田周平裁判官城内和昭裁判官宮崎雅子(別紙図面1から4省略)

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