令和2(ネ)342 開門請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年3月28日 福岡高等裁判所 棄却 長崎地方裁判所 平成22(ワ)207
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判決文本文34,405 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人らとの関係で、国営諫早湾土地改良事業によって建設された潮受堤防の北部及び南部に設置されている各排水門の開門に関し、諫早湾の海水を調整池内に流入させ、海水交換できるように開門操作をせよ。 第2 事案の概要(以下、特に断らない限り、略称は原判決の例による。) 本件は、諫早湾内において漁業権を有する漁業協同組合の組合員である控訴人らが、被控訴人の行う国営諫早湾土地改良事業(本件事業)としての諫早湾の湾奥部に諫早湾干拓地潮受堤防(本件潮受堤防)を設置する事業により、諫早湾内の漁場環境が悪化し、控訴人らの有する漁業法(平成30年法律第95号〔以下「平成30年法」という。〕による改正前のもの。以下、平 成30年法による改正前の漁業法を単に「漁業法」といい、改正後のそれを「改正漁業法」という。)8条1項所定の「漁業を営む権利」(改正漁業法105条にいう組合員行使権。以下、平成30年法による改正の前後を通じて「漁業行使権」ということがある。)が侵害されたなどと主張して、被控訴人に対し、上記の「漁業を営む権利」に基づく妨害排除請求又は妨害予防請求 として、本件潮受堤防の北部及び南部に設置されている各排水門(本件各排水門)につき、本件潮受堤防により締め切られた調整池(本件調整池)に海水を流入させ、海水交換できるように本件各排水門の開門操作をすること(本件開門操作)を求める事案である。 原審は、本件潮受堤防の締切りにより、諫早湾内の潮流速が低下して、成 層化が多少なりとも進行し、諫早湾内の湾奥部及び湾央部における貧酸素化 及び底層における浮泥の める事案である。 原審は、本件潮受堤防の締切りにより、諫早湾内の潮流速が低下して、成 層化が多少なりとも進行し、諫早湾内の湾奥部及び湾央部における貧酸素化 及び底層における浮泥の堆積の進行の一因となっているといえ、湾奥部においては、これに加えて硫化水素が発生しているといえるが、これらの環境変化が、控訴人らの営むアサリ養殖業、タイラギ漁業、カキ養殖業、漁船漁業及びノリ養殖業の漁場環境を悪化させたとはいえず、本件潮受堤防の締切りにより、控訴人らの漁業行使権が侵害されているとはいえないとして、控訴 人らの請求を棄却し、控訴人らは、これを不服として控訴を提起した。なお、控訴人らの一部は、当審において、その訴えを取り下げた。 2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第2章事案の概要等」の第2から第4まで(原判決2頁10行目から88頁25行目まで)に記載のとおりであるから、 これを引用する。 原判決2頁17行目から18行目にかけての「別紙4漁業行使権等目録のとおりである」を「原判決別紙4の「所属漁協」、「組合員の種類」、「加入時期」及び「正組合員から准組合員への異動日」の各欄に記載のとおりである(本件3漁協は令和2年4月1日に合併して諫早湾漁業協同組合となり、同 年10月9日受付で組合合併による漁業権の持分の取得を原因とする登録がされた。)」に、19行目の「甲A1」を「甲A1、182」にそれぞれ改める。 原判決4頁20行目から5頁15行目までを次のとおり改める。 「 改正漁業法105条は、団体漁業権(区画漁業権〔その内容たる漁業を 自ら営まない漁協等が免許を受けたものに限る。〕又は共同漁業権)若しくは入漁権(以下、団体漁業権と併せて とおり改める。 「 改正漁業法105条は、団体漁業権(区画漁業権〔その内容たる漁業を 自ら営まない漁協等が免許を受けたものに限る。〕又は共同漁業権)若しくは入漁権(以下、団体漁業権と併せて「団体漁業権等」ということがある。)を有する漁業協同組合(以下、単に「漁協」ということがある。)の組合員又は団体漁業権等を有する漁業協同組合連合会(以下「連合会」といい、漁協と併せて「漁協等」ということがある。)の会員たる漁協の組合員(い ずれも漁業者又は漁業従事者であるものに限る。)であって、当該団体漁業 権等に係る漁業権行使規則又は入漁権行使規則(以下、併せて「漁業権行使規則等」ということがある。)で規定する資格に該当するものは、当該漁業権行使規則等に基づいて当該団体漁業権等の範囲内において漁業を営む権利(組合員行使権)を有する旨を定める(なお、平成30年法施行の際、現に漁業法8条6項の認可を受けている漁業権行使規則等は、平成30年 法の施行日〔令和2年12月1日〕において改正漁業法106条7項の認可を受けたものとみなされる〔平成30年法附則12条〕。)。 小長井漁協は、原判決別紙6の№1から21までの各漁業権を有し、漁業権行使規則を定めている。 漁業権の内容たる漁業の免許を受けようとする者は、都道府県知事に申 請しなければならない(改正漁業法69条1項。平成30年法施行の際、現に漁業法10条の免許を受けている者は、平成30年法施行日において改正漁業法69条1項の免許を受けたものとみなされる〔平成30年法附則9条〕。)。 小長井漁協が各漁業権の免許を受けた日は、原判決別紙6の「設定日」 欄に記載のとおりであり、漁業権の期限は、同別紙6の「免許期限」欄に記載のとおりである。 共同漁業権とは、第一種、第二 。 小長井漁協が各漁業権の免許を受けた日は、原判決別紙6の「設定日」 欄に記載のとおりであり、漁業権の期限は、同別紙6の「免許期限」欄に記載のとおりである。 共同漁業権とは、第一種、第二種、第三種、第四種及び第五種共同漁業であって一定の水面を共同に利用して営む権利をいい(改正漁業法60条2項、5項)、① 第一種共同漁業は、藻類、貝類又は農林水産大臣の指定 する定着性の水産動物を目的とする漁業を(同条5項1号)、② 第二種共同漁業は、海面のうち農林水産大臣が定めて告示する湖沼に準ずる海面以外の水面において網漁具(えりやな類を含む。)を移動しないように敷設して営む漁業であって定置漁業以外のものをいう(同項2号)。 また、区画漁業権とは、第一種、第二種及び第三種区画漁業を営む権利 をいい(改正漁業法60条2項、4項)、① 第一種区画漁業は、一定の区 域内において石、瓦、竹、木その他の物を敷設して営む養殖業を(同条4項1号)、② 第三種区画漁業は、一定の区域内において営む養殖業であって、第一種区画漁業及び第二種区画漁業(土、石、竹、木その他の物によって囲まれた一定の区域内において営む養殖業)以外のものをいう(同項3号)。」 原判決5頁16行目から18行目までを削り、19行目の「原告らが有する」を「控訴人らに係る」に改める。 原判決6頁4行目から5行目までを削り、6行目の「国見漁業に」を「国見漁協に」に改める。 原判決6頁15行目の「原告らのうち」から17行目の「なお、」までを削 る。 原判決7頁2行目の「海水の流入を止めるとともに」を「海水の流入を止めて、海面の一部を本件調整池とするとともに」に、3行目の「本件調整池を造成し」を「干拓地を造成し」にそれぞれ改める。 原判決14頁20 頁2行目の「海水の流入を止めるとともに」を「海水の流入を止めて、海面の一部を本件調整池とするとともに」に、3行目の「本件調整池を造成し」を「干拓地を造成し」にそれぞれ改める。 原判決14頁20行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 また、評価委員会は、令和4年3月、関係機関が令和3年度に実施した有明海及び八代海の再生方策の実施状況等を整理し、平成29年委員会報告の再生方策等と照らし合わせて、その進捗状況や課題を整理し、令和8年度委員会報告に向けて必要となる検討事項等に係る中間の取りまとめを公表した(乙E245。以下、これを「令和4年委員会中間取りまとめ」 という。)。」原判決17頁26行目の「本件被告の」を「国の」に、18頁2行目の「判決をした」を「判決をし、差戻審である福岡高等裁判所は、令和4年3月25日、原判決中控訴人ら(漁協の組合員のうち、前訴判決により本件各排水門の開門請求が一部認容された者)に関する部分を取り消し、国の請求を認 容する旨の判決をした」にそれぞれ改める。 原判決21頁6行目を次のとおり改める。 「1 控訴人らの有する組合員行使権の範囲、組合員行使権に基づく物権的請求権行使の可否」原判決21頁10行目を次のとおり改める。 「3 本件事業ないし本件潮受堤防の締切りによる組合員行使権侵害の有無」 原判決21頁17行目から22頁1行目までを次のとおり改める。 「1 控訴人らの有する組合員行使権の範囲、組合員行使権に基づく物権的請求権行使の可否(控訴人ら)控訴人らの有する組合員行使権の範囲について 控訴人らは、本件3漁協の各漁業権行使規則で規定する資格に該当する限り、当該漁業権行使規則に基づき、当該漁協の漁業権の範囲内において、組合員行使権 訴人らの有する組合員行使権の範囲について 控訴人らは、本件3漁協の各漁業権行使規則で規定する資格に該当する限り、当該漁業権行使規則に基づき、当該漁協の漁業権の範囲内において、組合員行使権を有する(改正漁業法105条)。したがって、控訴人らは、原判決別紙6、10及び11の各「資格要件」欄に記載の要件を充足する限り、現に上記漁業権の内容たる漁業を営んでいる か否かにかかわらず、その資格に応じた組合員行使権を有するというべきである。 組合員行使権に基づく物権的請求権行使の可否について漁業権は、物権とみなされ(改正漁業法77条1項)、漁業権を有する者は、当該漁業権に基づき、物権的請求権を行使することができる。 そして、改正漁業法105条によれば、組合員行使権は、漁業権と不可分であり、これが具体化された権利というべきであるから、組合員行使権も漁業権と同様に物権的性格を有し、組合員行使権を有する者は、これが侵害された場合、物権的請求権として、妨害排除請求及び妨害予防請求をすることができるというべきである。」 原判決22頁2行目の「」を「」に改める。 原判決22頁5行目から6行目にかけての「漁業権に基づく」を「控訴人らは、組合員行使権に基づき」に改める。 原判決22頁22行目を次のとおり改める。 「控訴人らの有する組合員行使権の範囲について控訴人らの有する組合員行使権は、本件3漁協の各漁業権行使規則で 規定する資格に該当する者の一部に限られる。 組合員行使権に基づく物権的請求権行使の可否について」原判決23頁18行目の「」を「」に改める。 原判決23頁19行目から20行目にかけての「長崎県漁業調整規則6条サ」を「長崎県漁業調整規則4条1項16号」に改める。 可否について」原判決23頁18行目の「」を「」に改める。 原判決23頁19行目から20行目にかけての「長崎県漁業調整規則6条サ」を「長崎県漁業調整規則4条1項16号」に改める。 原判決25頁12行目を次のとおり改める。 「3 本件事業ないし本件潮受堤防の締切りによる組合員行使権侵害の有無」原判決25頁15行目の「妨害排除請求権」を「妨害排除請求権又は妨害予防請求権」に改める。 原判決26頁18行目の「前記③はそれ自体が漁場環境の悪化に当たる」 を「前記③は、本件事業ないし本件潮受堤防の締切りによる直接の結果である」に改める。 原判決27頁13行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「干潟の消失による影響について軟泥干潟における最も重要な一次生産者は、底生珪藻である。諫早湾 においては、干潮時、干潟表面の底生珪藻が貝類等に捕食され、満潮時には、軟泥と共に底生珪藻が海中に巻き上げられて、魚介類に捕食されていたのであり、底生珪藻は様々な魚介類を支えていた。 また、干潟は、様々な魚類の産卵場所になっていたほか、稚魚の成育のためにも重要な場所であった。 さらに、干潟は、陸から流入する栄養物質を吸収し、これが沖合に移 流するのを抑制して、湾内の富栄養化を抑制し、水質を浄化する機能も有する。 しかるに、本件事業ないし本件潮受堤防の締切りにより、広大な干潟が消失し、これに伴い、干潟が担ってきた上記の役割や機能も消失するに至った。」 原判決28頁22行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「d 干潟の消失による影響水質浄化機能を有する干潟の消失により、陸から流入する栄養物質が増大し、これが本件調整池から恒常的に排出されることにより、諫早湾内において、赤潮の発生、増 り加える。 「d 干潟の消失による影響水質浄化機能を有する干潟の消失により、陸から流入する栄養物質が増大し、これが本件調整池から恒常的に排出されることにより、諫早湾内において、赤潮の発生、増加しやすい環境が形成されている。」 原判決28頁23行目の「d」を「e」に改める。 原判決47頁2行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「干潟の消失による影響について干潟の消失により諫早湾の環境が悪化したというのは、科学的、合理的根拠に乏しい。」 原判決47頁3行目の「」を「」に改める。 原判決68頁17行目から18行目にかけての「本件潮受堤防の締切りによって」を「本件事業ないし本件潮受堤防の締切りにより、広大な干潟が消失し、干潟が担ってきた役割や機能も消失したこと、また、本件潮受堤防の締切りにより、」に改める。 原判決70頁11行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「e 観光振興本件開門操作の実施によって諫早湾の再生を図ることは、観光振興にもつながる。」原判決71頁5行目から10行目までを次のとおり改める。 「 湾内漁業補償契約は、本件潮受堤防外に位置する漁協に所属する漁業者 が漁業を継続することを前提とするものであるから、湾内漁業補償契約を締結し、補償金の支払を受けたことによって、控訴人らの組合員行使権に基づく妨害排除請求権又は妨害予防請求権の行使は妨げられない。いずれにせよ、被控訴人は、本件事業が控訴人らの組合員行使権に与える影響は、湾内漁業補償契約に基づく漁業権等の一部放棄及び制限により生ずる損失 の範囲を超えるものではない旨の主張をしないというのであって、本件においては、湾内漁業補償契約の締結、補償金の支払の事実を考慮すべきではない。」第3 当 の一部放棄及び制限により生ずる損失 の範囲を超えるものではない旨の主張をしないというのであって、本件においては、湾内漁業補償契約の締結、補償金の支払の事実を考慮すべきではない。」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、 次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第3章当裁判所の判断」の第1から第3まで(原判決89頁1行目から181頁15行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決89頁1行目を次のとおり改める。 「第1 争点1(控訴人らの有する組合員行使権の範囲、組合員行使権に基 づく物権的請求権行使の可否)について 1 控訴人らの有する組合員行使権の範囲について改正漁業法105条は、団体漁業権等を有する漁協の組合員又は団体漁業権等を有する連合会の会員たる漁協の組合員(いずれも漁業者又は漁業従事者であるものに限る。)であって、当該団体漁業権 等に係る漁業権行使規則等で規定する資格に該当するものは、当該漁業権行使規則等に基づいて当該団体漁業権等の範囲内において漁業を営む権利(組合員行使権)を有する旨を定めるのであり、そうすると、団体漁業権等を有する漁協の組合員(漁業者又は漁業従事者)で、当該漁協の漁業権行使規則で規定する資格に該当するもの は、当該組合員が組合員行使権に係る漁業を現に営んでいるか否か にかかわらず、組合員行使権を有するものと解するのが相当である。 ア小長井漁協の漁業権行使規則で規定する資格が、原判決別紙6の「資格要件」欄に記載の、① 共同漁業権(同別紙6の№1から№4まで)につき、漁協の個人である組合員であること、② 区画漁業権(同別紙6の№5から№21まで)につき、漁協の正組 が、原判決別紙6の「資格要件」欄に記載の、① 共同漁業権(同別紙6の№1から№4まで)につき、漁協の個人である組合員であること、② 区画漁業権(同別紙6の№5から№21まで)につき、漁協の正組 合員であることは、前記前提事実のとおりである。そして、小長井漁協に所属する控訴人らがいずれも正組合員であることは、前記前提事実のとおりであるし、証拠(甲B1の1、甲B2の1、2、甲B3の1、甲B4の1、甲B5の1、甲B7の1、甲B9の1、甲B10の1、甲B11の1、甲B12の1、甲B13の 1、控訴人甲本人、平成31年3月27日付け調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば、小長井漁協に所属する控訴人らはいずれも漁業者であると認められ、そうすると、上記控訴人らは、同別紙6記載の小長井漁協の有する漁業権の範囲において組合員行使権を有するというべきである。 イ国見漁協の漁業権行使規則で規定する資格が、原判決別紙10の「資格要件」欄に記載の、① 共同漁業権(同別紙10の№1から№8まで)のうち、⒜ 南共第1号(№1、№2)、第5号(№5)及び第79号(№7、№8)につき、漁協の個人である組合員であって、雲仙市国見町土黒地区(以下「土黒地区」という。) 内(№1、№2については、土黒地区又は雲仙市国見町神代地区〔以下「神代地区」という。〕内)に住所を有する者であること、⒝ 南共第5号(№6)につき、土黒地区内に住所を有する漁業の組合員であって、雑魚磯刺網漁業の経験を有する者であること、⒞ 南共第4号(№3、№4)につき、漁協の個人である組合員 であって、神代地区内に住所を有する者であること、② 区画漁 業権(同別紙10の№9)につき、漁協の正組合員であって、土黒地区又は神代地区内に住所を有する者である 個人である組合員 であって、神代地区内に住所を有する者であること、② 区画漁 業権(同別紙10の№9)につき、漁協の正組合員であって、土黒地区又は神代地区内に住所を有する者であることは、前記前提事実のとおりである。そして、国見漁協に所属する控訴人(原審原告番号8)が国見漁協の正組合員であることは、前記前提事実のとおりであるし、証拠(甲B42の1、平成26年2月18日 付け及び同年9月25日付け各調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば、上記控訴人は、土黒地区内に住所を有し、雑魚磯刺網漁業の経験を有する漁業者であることが認められ、そうすると、上記控訴人は、同別紙10記載の国見漁協の有する漁業権(南共第4号を除く。)の範囲において組合員行使権を有するというべき である。 ウ瑞穂漁協の漁業権行使規則で規定する資格が、原判決別紙11の「資格要件」欄に記載の、① 共同漁業権(同別紙11の№1から№4まで)につき、漁協の個人である組合員であること、②区画漁業権(同別紙11の№5から№11まで)につき、漁協の 正組合員であることは、前記前提事実のとおりである。そして、瑞穂漁協に所属する控訴人らのうち、原審原告番号10以外の控訴人らがいずれも瑞穂漁協の正組合員であること、原審原告番号10の控訴人が瑞穂漁協の准組合員であることは、前記前提事実のとおりであるし、証拠(甲B15の1、甲B16の1、甲B1 7の1、甲B19の1、甲B20の1、2、甲B22の1、甲B27の1、甲B28の1、2、甲B32の1、甲B33の1、甲B36の1、平成31年3月27日付け調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば、瑞穂漁協に所属する控訴人らはいずれも漁業者であると認められ、そうすると、上記控訴人らは、同別紙1 1記 1、甲B36の1、平成31年3月27日付け調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば、瑞穂漁協に所属する控訴人らはいずれも漁業者であると認められ、そうすると、上記控訴人らは、同別紙1 1記載の瑞穂漁協の有する漁業権(原審原告番号10の控訴人に ついては、同別紙11の№1から№4までの共同漁業権)の範囲において組合員行使権を有するというべきである。」原判決89頁2行目から17行目までを次のとおり改める。 「2 組合員行使権に基づく物権的請求権行使の可否について改正漁業法77条1項は、漁業権は、物権とみなし、土地に関する 規定を準用する旨を定めるのであり、そうすると、漁業権を有する者は、これが侵害された場合には、当該漁業権に基づき、その妨害の排除を請求し、又は、妨害の予防を請求することができるというべきである。そして、改正漁業法105条が、団体漁業権等を有する漁協の組合員又は団体漁業権等を有する連合会の会員たる漁協の組合員(い ずれも漁業者又は漁業従事者であるものに限る。)であって、当該団体漁業権等に係る漁業権行使規則等で規定する資格に該当するものは、当該漁業権行使規則等に基づいて当該団体漁業権等の範囲内において漁業を営む権利(組合員行使権)を有する旨を定めて、組合員行使権が団体漁業権等から派生した権利であることを明らかにしていること や、組合員行使権が漁業権と同様に法的保護の対象となっていること(改正漁業法195条)に照らすと、漁業権と同様、組合員行使権についても、物権的効力を有し、組合員行使権を有する者は、これが侵害された場合、その妨害の排除を請求し、又は、妨害の予防を請求することができると解するのが相当である。」 原判決90頁1行目から5行目までを削る。 原判決90頁1 有する者は、これが侵害された場合、その妨害の排除を請求し、又は、妨害の予防を請求することができると解するのが相当である。」 原判決90頁1行目から5行目までを削る。 原判決90頁10行目から91頁8行目までを次のとおり改める。 「しかしながら、タイラギ潜水器漁業は、改正漁業法60条5項1号所定の第一種共同漁業(貝類を目的とする漁業)であり、そうである以上、タイラギ潜水器漁業についても、組合員行使権が侵害された場合、その 妨害の排除を請求し、又は、妨害の予防を請求し得るというべきである。 長崎県漁業調整規則4条1項16号は、潜水器漁業を営もうとする者は、改正漁業法57条1項の規定に基づき、知事の許可を受けなければならない旨を定めるが、これは漁業調整(改正漁業法57条2項)及び水産資源の保護培養(水産資源保護法4条1項)のため、潜水器漁業という特定の方法により営む漁業につき、知事の許可を受けなければならない とするもので、これにより、タイラギ潜水器漁業につき、漁業権ひいては組合行使権に基づく物権的請求権は発生しないなどと解することはできない。」原判決91頁20行目から26行目までを削る。 原判決92頁4行目から93頁23行目までを次のとおり改める。 「 被控訴人は、本件3漁協の漁業権はいずれも本件締切り後である平成25年9月1日以降に当時の漁場環境等を前提に免許されたものであり、本件事業や本件締切りによる漁業権ひいては組合員行使権の侵害を観念することはできない旨の主張をするが、本件全証拠によるも、本件3漁協の漁業権が免許された当時の漁場環境等を前提とするものであるとは認められ ない。被控訴人の上記主張は、前提を欠く。」原判決93頁24行目から96頁5行目までを次のとおり よるも、本件3漁協の漁業権が免許された当時の漁場環境等を前提とするものであるとは認められ ない。被控訴人の上記主張は、前提を欠く。」原判決93頁24行目から96頁5行目までを次のとおり改める。 「第3 争点3(本件事業ないし本件潮受堤防の締切りによる組合員行使権侵害の有無)について 1 組合員行使権の侵害 漁業権及びこれから派生した組合員行使権が物権的効力を有することは、前記のとおりである。そして、漁業権が一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営むことのできる権利であることや、本件事業が公共性、公益性を有することを踏まえると、本件事業ないし本件潮受堤防の締切りにより、漁場環境が悪化し、漁業の目的であ る水産動植物の成育、来遊等が阻害されて、その量的又は質的な減少 を来す状態が将来にわたり継続することが具体的に予想され、かつ、本件事業の公共性、公益性等の対立する諸利益を総合的に考慮しても、被侵害利益に対する救済を損害賠償にとどめるのでは足りない場合には、組合員行使権の侵害について妨害の排除又は予防を請求することができると解するのが相当である。 被控訴人は、前記のとおり、組合員行使権に基づき妨害の排除又は予防を請求することができるのは、漁業権に基づく排他的支配を侵害するような態様での直接的かつ具体的な侵害又は侵害のおそれがある場合に限られる、本件事業により控訴人らの組合員行使権が侵害されているといえるためには、控訴人らが現に従事する漁業につき漁獲量 が減少していることを個別に具体的数値をもって証明しなければならない旨の主張をするが、組合員行使権に基づく物権的請求権が認められる場合を上記のように限定すべきとはいえないこと、また、団体漁業権等を有する漁協の組合員(漁業者又は漁 数値をもって証明しなければならない旨の主張をするが、組合員行使権に基づく物権的請求権が認められる場合を上記のように限定すべきとはいえないこと、また、団体漁業権等を有する漁協の組合員(漁業者又は漁業従事者)で、当該漁協の漁業権行使規則で規定する資格に該当するものは、当該組合員が組 合員行使権に係る漁業を現に営んでいるか否かにかかわらず、組合員行使権を有することは前記のとおりであって、被控訴人の主張は採用できない。」原判決96頁6行目を次のとおり改める。 「2 本件事業ないし本件潮受堤防の締切りと漁場環境の悪化との因果関係 の有無」原判決96頁15行目から97頁2行目までを削る。 原判決103頁24行目の「あり得るとしている」から25行目末尾までを「あり得るとの指摘をする。また、上記報告書は、有明海における表層と底面近傍の2地点の塩分データを対象として、その塩分差を成層度の指標と 捉え、その経年変化の傾向につき検討した結果に基づき、夏季における塩分 差の平均値は、年平均値に比して顕著に高いとの指摘もする。 (甲E1〔25、35頁、53頁から55頁まで、106、132頁〕)」に改める。 原判決104頁18行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 また、上記の観測データにより、本件締切り前後の7月時点(6月から9月までの期間は、降水量及び陸域からの淡水の流入量が増加して、海水 の表層の塩分が低下する。)における表層と中層の塩分の平均値を比較すると、本件締切り前の表層と中層の塩分差は3.1psu、本件締切り後のそれは3.8psu である。本件締切り前の7月時点における表層と中層の塩分差は0.2ないし4.3psu の範囲で推移しているが、本件締切り後の平成9年7月時点のそれは9.8psu、平 件締切り後のそれは3.8psu である。本件締切り前の7月時点における表層と中層の塩分差は0.2ないし4.3psu の範囲で推移しているが、本件締切り後の平成9年7月時点のそれは9.8psu、平成12年7月時点のそれは7.4psu、 平成15年7月時点のそれは5.2psu、平成17年7月時点のそれは5. 8psu、平成18年7月時点のそれは5.6psu、平成23年7月時点のそれは12.0psu、平成24年7月時点のそれは12.4psu、平成28年7月時点のそれは5.8psu、平成30年7月時点のそれは20.0psu である。(甲E173〔9頁から11頁まで、附表1〕)」 原判決105頁14行目の「傾向が表れていること」の次に「、前記のとおり、本件締切りの前後において表層と中層の塩分差(7月時点における平均値)が0.7psu 拡大するのみならず、平成9年以降、夏季に大きな塩分差が頻回に生ずるようになっていること」を加え、16行目の「その程度は別として、」を削る。 原判決106頁4行目から10行目までを削り、同行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 被控訴人は、成層化は、閉鎖性海域においては、夏季に、大雨による河川流入量の増大、水温の上昇等の気象条件が重なることにより発生するもので、諫早湾に限って発生する現象ではない旨の主張もするが、前記の事 情に照らすと、被控訴人の主張は採用できない。」 原判決107頁6行目の「排水後には」を「排水が終了すると」に、16行目の「恣意的であるとはいえず」を「不適切であるとはいえず」にそれぞれ改める。 原判決108頁11行目から14行目までを削る。 原判決110頁17行目の「推測されるとし」から19行目末尾までを「推 測されるとの指摘をする。 適切であるとはいえず」にそれぞれ改める。 原判決108頁11行目から14行目までを削る。 原判決110頁17行目の「推測されるとし」から19行目末尾までを「推 測されるとの指摘をする。」に改め、同行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 また、平成18年委員会報告は、佐賀県、諫早湾で赤潮が増加していることから、赤潮の増加により植物プランクトン由来の有機物の沈降、堆積が増えて、湾奥西部(鹿島沖)及び諫早湾の底質中の有機物の増加につな がった可能性がある、諫早湾調整池の排水拡散に伴う浮泥量の調査結果によれば、浮泥は諫早湾湾奥部で沈降し、湾央から湾口にかけての沈降はほとんど見られず、潮流速の低下が認められる海域において、有機物を含むより微細な粒子が沈降、堆積しやすい状態が生じたことが推察される、有明海奥部の干拓やその他の要因により湾奥部を中心に流速低下が生じたと 推測され、諫早干拓により諫早湾内で流速低下が生じていることから、流速の低下が推測若しくは認められる海域において、有機物を含むより微細な粒子が沈降、堆積しやすい状態が生じたことが推察されるとの指摘をする。(乙E5〔69頁、70頁〕)」原判決111頁23行目から112頁1行目までを次のとおり改める。 「 平成29年委員会報告は、諫早湾は一部を除き泥質で、有明海の中では有機物や硫化物が多い、諫早湾湾口部では1ないし4mにわたって泥が堆積している、環境モニタリングの結果では、諫早湾の原判決別紙14(甲E148、乙E26〔3-2-61頁〕)のB3地点における底質のCODは、本件締切り後増加傾向にあったものの、平成14年頃から平成23 年頃までは減少傾向にあったとした上、底泥中に含まれる有機物や硫化物 の増減には、流動や水質及び生物が 底質のCODは、本件締切り後増加傾向にあったものの、平成14年頃から平成23 年頃までは減少傾向にあったとした上、底泥中に含まれる有機物や硫化物 の増減には、流動や水質及び生物が複雑に関与しているが、一般的には植物プランクトン由来の有機物の沈降、堆積が最たる支配要因と考えられているとの指摘をする(乙E197〔109頁、113頁、346頁、505頁〕)。」原判決112頁3行目の「前記のとおり」から5行目の「限定されてい ること、」までを削る。 原判決112頁25行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「ウ本件事業による干潟消失とその影響について前記前提事実に加え、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 有明海は、全国の干潟面積の約4割に相当する約207k㎡の広大な干潟を有するところ、本件事業により、有明海の干潟面積の約7. 55%に相当する約15.5k㎡の干潟が消失した。 令和4年委員会中間とりまとめは、藻場、干潟は、水質浄化、生物多様性の維持、魚類の産卵場所及び成育場所の提供等の多様な機能を 有し、良好な水環境を維持する上で重要な役割を果たすとの指摘をする(乙E245〔65頁〕)。 また、鹿児島大学名誉教授の乙は、干潟の水質浄化機能は、閉鎖的な内湾の富栄養化を抑制してきたとの指摘をする(甲E174、E181、証人乙)。」 原判決114頁7行目の「同報告書は」を「専門委員報告書は、長崎県では、従前、赤潮の発生は少なかったが、平成9年以降、著しく発生頻度が増加した、赤潮は、主に夏期の渦鞭毛藻及びラフィド藻によるもので、その大半は諫早湾内で発生しているとの指摘をする。また、専門委員報告書は」に、17行目の「(甲E1[129頁])」を「(甲E1〔90、1 加した、赤潮は、主に夏期の渦鞭毛藻及びラフィド藻によるもので、その大半は諫早湾内で発生しているとの指摘をする。また、専門委員報告書は」に、17行目の「(甲E1[129頁])」を「(甲E1〔90、129頁〕)」にそ れぞれ改める。 原判決116頁25行目の「平成29年委員会報告」を「平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめ」に、26行目の「同報告は」を「平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめは」にそれぞれ改める。 原判決118頁8行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 有明海では、全期間を通じて珪藻による赤潮の発生頻度が全体の半数程度を占め、渦鞭毛藻やラフィド藻による赤潮がこれに続く。ラフィド藻による赤潮は、昭和63年頃まではほとんど確認されなかったが、その後、徐々に増加し、平成10年頃から、渦鞭毛藻による赤潮と匹敵するまでに増加した。珪藻や渦鞭毛藻による赤潮も、平成10年頃から発生件数が増 加している。全体の構成割合は、1970年ないし1980年代と比較してラフィド藻による赤潮が増加したが、基本的に構成種の大きな変化は見られない。有明海では、夏期にラフィド藻等による有害赤潮が頻発しており、特に有害なシャットネラ属については、平成10年、平成16年、平成19年から平成22年まで、平成27年、平成28年、平成30年にお いて、赤潮の発生規模が大きくなっている。また、諫早湾の平成23年から令和2年までの赤潮の発生件数は、10月から4月にかけてのそれが9件であるのに対し、5月から9月にかけてのそれは40件であり、有明海の他の海域と比較しても、夏期における発生件数の割合が高い。 八代海では、平成10年ないし平成12年頃から赤潮の発生件数が増加 しているものの、渦 から9月にかけてのそれは40件であり、有明海の他の海域と比較しても、夏期における発生件数の割合が高い。 八代海では、平成10年ないし平成12年頃から赤潮の発生件数が増加 しているものの、渦鞭毛藻やラフィド藻による赤潮の割合は6割程度と大きな変化はなく、構成種の長期的変動もほとんど見られない。内湾域における過度の魚類養殖業の展開は、残餌や糞尿により海域の栄養塩負荷の原因となる。八代海における魚類養殖(平成21年から平成25年度までの平均)の負荷量は、T-Nでは全体の27ないし31%程度、T-Pでは 全体の34ないし48%程度であり、陸域からの流入負荷と共に大きな負 荷源となっている。これに対し、有明海においては、ノリ養殖の負荷量は、T-Nでは全体の1.2%以下、T-Pでは全体の5.9%以下であり、魚類養殖の負荷量は、T-N、T-Pとも全体の1%未満である。」原判決118頁9行目の「(乙E197[147ないし164頁])」を「(乙E197〔15、16頁、147頁から164頁まで、398頁から403 頁まで、468頁から470頁まで〕、乙E245〔70頁から91頁まで〕)」に改める。 原判決119頁18行目から125頁13行目までを次のとおり改める。 「 諫早湾における赤潮の発生件数は、平成9年から平成10年にかけて著しく増加し、その後も、高い発生頻度を示していること、本件潮受堤防の 締切りにより、潮流速が低下し、成層化が進行していることは、前記のとおりであり、また、本件潮受堤防の締切りにより、諫早湾の湾奥部及び湾中部において貧酸素化が進行していることは、後述するとおりである。かかる事実に加え、① 専門委員報告書において、長崎県では、平成9年以降、著しく赤潮の発生頻度が増加した、赤潮は主に夏期の渦 部及び湾中部において貧酸素化が進行していることは、後述するとおりである。かかる事実に加え、① 専門委員報告書において、長崎県では、平成9年以降、著しく赤潮の発生頻度が増加した、赤潮は主に夏期の渦鞭毛藻及びラ フィド藻によるもので、その大半は諫早湾内で発生している、本件潮受堤防の締切りによる潮流速の低下、成層度の上昇、鉛直的に安定した水塊の存在等が、諫早湾における夏期の鞭毛藻赤潮の増加の理由と考えられるとの、② 平成18年委員会報告において、諫早湾湾奥部の底層環境の悪化が推測され、同海域では貧酸素水塊の形成がシャットネラ属による赤潮の 増加の一因となっているとの、③ 平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめにおいて、赤潮の発生頻度や規模は、海域の富栄養化の進行に伴って変化する、諫早湾では赤潮の発生頻度や規模が顕著であり、諫早湾における夏期の赤潮の発生頻度は、有明海の他の海域と比し高いとの指摘がされ、松岡論文において、渦鞭毛藻類やラフィド藻類は成層化し た環境で優勢となるとの指摘がされていることに照らすと、本件潮受堤防 の締切りによる潮流速の低下や、成層化、貧酸素化の進行が、諫早湾における赤潮の発生件数の増加要因となっているというべきである。 被控訴人は、① 本件事業に着手した時点や本件締切りの時点で、諫早湾の赤潮発生件数に著しい増加は見られず、本件締切り後、これが減少に転じたこともあること、② 八代海においても、赤潮の発生件数が増加傾 向を示していることからすると、諫早湾における赤潮の発生件数の増加は、本件潮受堤防の締切りによるものではない旨の主張をする。 しかしながら、前記のとおり、諫早湾における赤潮の発生件数が、平成9年(本件締切り時点)から平成10年にかけて著しく増加し、その後も、 加は、本件潮受堤防の締切りによるものではない旨の主張をする。 しかしながら、前記のとおり、諫早湾における赤潮の発生件数が、平成9年(本件締切り時点)から平成10年にかけて著しく増加し、その後も、高い発生頻度を示していることに加え、① 専門委員報告書において、長 崎県では、従前、赤潮の発生は少なかったが、平成9年以降、著しく発生頻度が増加した、赤潮は、主に夏期の渦鞭毛藻及びラフィド藻によるもので、その大半は諫早湾内で発生しているとの指摘がされ、平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめにおいても、有明海において、ラフィド藻による赤潮は、昭和63年頃までほとんど確認されなかった が、その後、徐々に増加し、平成10年頃から、渦鞭毛藻による赤潮と匹敵するまでに増加した、有明海では、夏期にラフィド藻等による有害赤潮が頻発しており、特に有害なシャットネラ属については、平成10年以降、赤潮の発生規模が大きくなっている、諫早湾の夏期における赤潮の発生件数の割合は、有明海の他の海域と比較しても高いとの指摘がされているこ と、② 平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめにおいて、八代海における魚類養殖の負荷は、陸域からの流入負荷と共に大きな負荷源となっているのに対し、有明海においては、魚類養殖の負荷はほとんど見られないとの指摘がされていて、同じ閉鎖性海域であるとはいえ、諫早湾と八代海とでは状況を異にすることに照らすと、被控訴人の主張は 採用できない。 また、被控訴人は、赤潮の発生件数の増加原因は未解明であり、降雨、日射量等の自然現象、諫早湾外からの栄養塩の流入等がその要因として指摘されていることからすると、諫早湾における赤潮発生件数等の増大が本件潮受堤防の締切りの影響によるものであるとはい 明であり、降雨、日射量等の自然現象、諫早湾外からの栄養塩の流入等がその要因として指摘されていることからすると、諫早湾における赤潮発生件数等の増大が本件潮受堤防の締切りの影響によるものであるとはいえない旨の主張をする。そして、磯部論文において、赤潮、貧酸素化等の水環境を支配するの は気象条件であるとの指摘がされ、平成29年委員会報告において、赤潮発生と増殖に係る各種要因の解明が今後の課題であるとの指摘されていることは、上記主張に沿うものではある。 しかしながら、平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめにおいて、有明海における、成層化、富栄養化、貧酸素水塊の発生件数 の増大、大規模化等と赤潮の発生件数の増加、大規模化とが関連する可能性があるとの指摘がされる一方、日照、風、降雨、淡水の流入、水温の上昇と赤潮の発生件数の増加、大規模化とが直接関連する可能性があるとの指摘はされていないこと(乙E197〔211頁〕、乙E245〔142頁〕)に照らすと、磯部論文等の指摘をもって、前記判断は左右されない。 さらに、被控訴人は、赤潮の発生件数の増加は、平成10年頃、着色の確認されないものでも赤潮として報告するよう赤潮検知の運用が変更されたことによるものである旨の主張をし、平成29年委員会報告も「赤潮発生は原則として海域における着色現象を集計したものであるが、1998年~2000年以降は、着色を伴わないものであっても被害(特にノリ の色落ち被害)に応じて赤潮発生として扱われるため、過去と比較する場合、同じ微細藻類の出現状況であっても発生件数が多く計上されている可能性があることに留意する必要がある」との指摘をする。 しかしながら、諫早湾における赤潮の発生件数が、平成9年から平成10年にかけて著しく増加し、その後も 況であっても発生件数が多く計上されている可能性があることに留意する必要がある」との指摘をする。 しかしながら、諫早湾における赤潮の発生件数が、平成9年から平成10年にかけて著しく増加し、その後も、高い発生頻度を示していることは、 前記のとおりである。かかる赤潮の発生件数の増加が赤潮検知の運用の変 更によるものであるとは考えにくく、被控訴人らの主張は採用できない。」原判決126頁12行目から13行目にかけての「結果を整理しており」を「結果が整理されていて」に、127頁4行目の「別紙30のとおり」を「原判決別紙31のとおり」に、5行目の「年間最低値についても」を「年間最低値につき」にそれぞれ改める。 原判決127頁15行目の「各8月末に行った」を「諫早湾において各8月末に実施した」に改める。 原判決128頁26行目の「平成29年委員会報告」を「平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめ」に改め、130頁25行目の「135頁]」の次に「、乙E245〔51頁から63頁まで〕」を加える。 原判決132頁8行目から134頁23行目までを次のとおり改める。 「 本件締切り後、諫早湾において、頻繁に貧酸素水塊の発生が確認されていること、本件潮受堤防の締切りにより、潮流速が低下し、成層化が進行していること、そして、これらが要因となって赤潮の発生件数が増加していることは、前記のとおりである。かかる事情に加え、① 専門委員報告 書において、有明海水質等状況補足調査の結果を踏まえ、諫早湾内では本件締切り後に貧酸素化が進行した可能性が大きいとの指摘がされていること、② 平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめにおいて、成層化の進行により表層から躍層以深への酸素供給が減少し、躍層の上で赤 に貧酸素化が進行した可能性が大きいとの指摘がされていること、② 平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめにおいて、成層化の進行により表層から躍層以深への酸素供給が減少し、躍層の上で赤潮が発達する、赤潮終息後、大量の有機物が底層に供給され、底泥、 底層水の酸素消費が増大し、底生動物が斃死することで、底質悪化及び貧酸素化が進行するとの指摘がされ、木元論文においても、有明海における貧酸素水塊の発生機構として、湾奥部の干潟縁辺域で、成層の形成される夏季の小潮期に、潮流が低下して成層が強化され、滞留した水中の有機懸濁物と底泥の酸素消費により急速に貧酸素化する型と、成層の形成される 夏季に、表層からの酸素供給が低下して底層で徐々に酸素消費が進行して 貧酸素化する型がある、貧酸素水塊の発生には、有機懸濁物を生産する赤潮の発生も大きく関わっているとの指摘がされていることに照らすと、本件潮受堤防の締切りによる、潮流速の低下や成層化、さらには赤潮の発生件数の増加が、諫早湾の貧酸素化の進行要因となっているというべきである。 被控訴人は、貧酸素水塊の発生機序や原因は未解明であり、日射量、降雨、風向、風量等の自然現象が重要な要因となるとの指摘があることや、有明海湾奥部において本件潮受堤防の締切りと無関係に発生した貧酸素水塊が諫早湾に移流し、諫早湾内において貧酸素水塊を形成することが確認されていることからすると、本件潮受堤防の締切りにより貧酸素水塊が発 生しているとはいえない旨の主張をするが、前記の事情に加え、平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめにおいて、有明海における主要な貧酸素水塊は、夏期に有明海湾奥部と諫早湾の2か所で別々に発生するとの指摘がされていることにも照らすと、上記主張は採用で 年委員会報告及び令和4年委員会中間取りまとめにおいて、有明海における主要な貧酸素水塊は、夏期に有明海湾奥部と諫早湾の2か所で別々に発生するとの指摘がされていることにも照らすと、上記主張は採用できない。」 原判決135頁6行目から136頁1行目までを次のとおり改める。 「b 本件潮受堤防の締切りにより、諫早湾において、潮流速が低下し、成層化、貧酸素化が進行していること、そして、これらが要因となって、赤潮の発生件数が増加していることは、前記のとおりである。かかる事情に加え、① 平成18年委員会報告において、赤潮の増加により植物 プランクトン由来の有機物の沈降、堆積が増えて、諫早湾の底質中の有機物の増加につながった可能性がある、本件調整池からの排水に含まれる浮泥は諫早湾湾奥部で沈降し、湾央から湾口にかけての沈降はほとんど見られず、潮流速の低下が認められる海域において、有機物を含むより微細な粒子が沈降、堆積しやすい状態が生じたことが推察されるとの 指摘がされ、② 平成29年委員会報告及び令和4年委員会中間とりま とめにおいて、成層化の進行により表層から躍層以深への酸素供給が減少し、躍層の上で赤潮が発達する、赤潮終息後、大量の有機物が底層に供給され、底泥、底層水の酸素消費が増大し、底生動物が斃死することで、底質悪化及び貧酸素化が進行する、底泥中に含まれる有機物や硫化物の増減には、流動や水質及び生物が複雑に関与しているが、一般的に は植物プランクトン由来の有機物の沈降、堆積が最たる支配要因と考えられているとの指摘がされていることにも照らすと、諫早湾の湾奥部及び湾央部の底層に堆積する浮泥(有機物)には、河川水に由来するものも含まれることを考慮しても、本件潮受堤防の締切りによる潮流速の低下や、赤潮の発生 指摘がされていることにも照らすと、諫早湾の湾奥部及び湾央部の底層に堆積する浮泥(有機物)には、河川水に由来するものも含まれることを考慮しても、本件潮受堤防の締切りによる潮流速の低下や、赤潮の発生件数の増加が要因となって、諫早湾の底層に浮泥(有 機物)が堆積し、底質の泥化が進行したことを否定するのは困難である。」原判決136頁5行目の「有毒な硫化水素を発生させる」を「底質中に硫化物が増加して、有毒な硫化水素を発生させる」に改める。 原判決137頁9行目から10行目にかけての「その程度は大きなものではないとしても」、及び、14行目の「もっとも」から17行目末尾までを いずれも削る。 原判決137頁18行目から24行目までを次のとおり改める。 「エ前記の事情を考慮すると、本件においては、本件事業による干潟の水質浄化等の機能の喪失に加え、本件潮受堤防の締切りによる潮流速の低下、成層化、貧酸素化の進行、赤潮の発生件数の増加、底質環境の悪化 (浮泥の堆積、硫化水素の発生)等の要因が複合して、諫早湾の漁場環境の悪化を招来した高度の蓋然性があると認めるのが相当である(なお、控訴人らは、本件調整池からの排水が諫早湾の漁場環境を悪化させている旨の主張もするが、本件調整池からの排水による影響が重大なものであるとまでいえないことは、前記のとおりである。)。被控訴人は、赤潮、 貧酸素水塊の発生、増加、底質環境の悪化は、他の閉鎖性海域において も確認されている上、温暖化に伴う海水温の上昇に起因する可能性も否定できない旨の主張をするが、前記の事情を考慮すると、上記判断は覆らない。」原判決137頁25行目から26行目までを次のとおり改める。 「本件事業ないし本件潮受堤防の締切りによる各漁業の漁獲量の減少に 主張をするが、前記の事情を考慮すると、上記判断は覆らない。」原判決137頁25行目から26行目までを次のとおり改める。 「本件事業ないし本件潮受堤防の締切りによる各漁業の漁獲量の減少に ついて」原判決138頁18行目の「原告目録の」を「控訴人らは、アサリ養殖業について組合員行使権を有するところ、原判決原告目録の」に、22行目の「B7及び8の各1」を「B7の1」にそれぞれ改め、18行目の「25、」を削る。 原判決142頁16行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 令和4年中間取りまとめは、アサリ資源の減少について、平成20年以降、アサリの漁獲量が低迷していて、秋期に発生したアサリの浮遊幼生や着底稚貝の減少による再生産の縮小が大きく影響しているとの指摘があるとする(乙E245〔153頁〕。)。」 原判決142頁18行目の「前記bのとおり」から20行目の「因果関係の有無に関し」までを「控訴人らはアサリ養殖業について組合員行使権を有することから」に、23行目の「アサリの斃死事例の要因について」を「アサリ養殖業の漁場環境の悪化について」にそれぞれ改める。 原判決145頁18行目の「考えられないこと」を「考えにくいこと」に 改め、同行目の「前記c⒜のとおり」から26行目の「また、」までを削る。 原判決146頁11行目から147頁20行目までを次のとおり改める。 「 かかる事情に加え、本件3漁協のアサリの漁獲量は、平成8年以降、減少傾向を示しているものの、本件締切り後、大幅に漁獲量が増加したときもあること、本件締切り後のアサリの漁獲量は、昭和57年から平成3年 までのそれに比し、明らかに少ないとまではいえないこと、アサリの漁獲 量は、昭和60年以降、諫早湾のみならず、 きもあること、本件締切り後のアサリの漁獲量は、昭和57年から平成3年 までのそれに比し、明らかに少ないとまではいえないこと、アサリの漁獲 量は、昭和60年以降、諫早湾のみならず、全国、瀬戸内海区、有明海区及び八代海区においても減少傾向を示していること、そして、アサリ資源の減少の要因については、赤潮の発生や、これに伴う貧酸素化、水温、硫化水素の発生のほか、漁場の縮小、底質の変化、過剰な漁獲圧、ナルトビエイによる食害、マンガンの影響等も指摘されていることにも照らすと、 前記のとおり、平成16年のアサリ斃死の主たる要因が、赤潮に由来する貧酸素化に高水温の影響が加わったことにあると推認し得ることや、控訴人らにおいてアサリの斃死対策を講じているのに(甲B1の1、甲B2の1、甲B4の1、甲B36の1、控訴人甲本人)、アサリの斃死が発生し、その漁獲量が減少傾向を示していることを考慮しても、本件潮受堤防の締 切りにより、諫早湾のアサリ資源が減少し、その漁獲量が減少したとまで認めるのは困難である。」原判決148頁7行目の「原告目録の」を「控訴人らは、タイラギ漁業について組合員行使権を有するところ、原判決原告目録の」に、同行目の「4ないし9」を「4、5、8」にそれぞれ改め、12行目の「甲B39及び4 0の各1、」及び同行目の「甲B43の1及び2、」をいずれも削る。 原判決149頁23行目の「以後、」の次に「昭和61年、平成3年、平成8年及び平成9年には、3000tないし4000tに達するなど、」を加える。 原判決152頁2行目から5行目までを次のとおり改める。 「 平成29年委員会報告は、タイラギ資源の減少について、次のとおりの指摘をする。 諫早湾においては、夏期に貧酸素水塊が発生しているが、底層 52頁2行目から5行目までを次のとおり改める。 「 平成29年委員会報告は、タイラギ資源の減少について、次のとおりの指摘をする。 諫早湾においては、夏期に貧酸素水塊が発生しているが、底層溶存酸素量については、平成13年以前の、底質については、平成元年以前のデータがなく、1970年代以降の長期的なタイラギ資源の減少と貧酸素水塊 や底質との関係は不明であり、平成13年以降、長崎県において生息調査 が実施されているものの、原因の特定には至っていない。 原判決別紙29記載のA3海域では、平成21年、1980年代の豊漁期に近い密度で成貝の成育が見られ、平成21年12月から平成22年4月にかけて漁獲量の回復が見られたが、平成22年夏期に、継続時間の長い貧酸素水塊の発達に伴って大量斃死が生じ、以降、再び漁獲量は低迷し ている。上記A3海域では、調査を開始した平成13年以降、毎年貧酸素水塊の発生が確認されているものの、平成21年夏期の上記A3海域における貧酸素化は比較的軽微であり、タイラギの立ち枯れ斃死等も見られなかった。原判決別紙29記載のA1海域で小潮期に発生した貧酸素水塊が、大潮期に向かう過程で、水深が深く鉛直混合を受けにくい上記A3海 域まで拡大し、これが維持、強化されることから、同海域では貧酸素水塊がタイラギ資源の変動に影響を与えていることが推定される。貧酸素水への曝露によってタイラギの斃死が生ずることは、室内実験によっても確認されている。」原判決152頁6行目の「また」を「また、平成29年委員会報告は」に、 153頁3行目を「(乙E197〔298頁から303頁まで、308頁から309頁まで、348頁、366頁から369頁まで〕)」にそれぞれ改める。 原判決153頁9行目から10行目まで に、 153頁3行目を「(乙E197〔298頁から303頁まで、308頁から309頁まで、348頁、366頁から369頁まで〕)」にそれぞれ改める。 原判決153頁9行目から10行目までを次のとおり改める。 「⒜ 有明海におけるタイラギの漁獲量は大きく変動していて、タイラギ資源は、環境条件の影響を受けやすいといえる。しかしながら、平成5年 度以降、諫早湾で見られたように、操業できない程度にまで資源水準が低下し、これが長年にわたり継続した例はなく、近年の諫早湾におけるタイラギ資源の減少は、従前のものとは性質を異にする現象ではないかと考える。」原判決156頁4行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「h 令和4年委員会中間取りまとめは、タイラギ資源の減少について、次 のとおりの指摘をする。 平成20年以降の諫早湾におけるタイラギの浮遊幼生の出現状況を見ると、平成20年及び平成22年には、120個体/㎥程度の出現があったが、平成24年以降は、多くの年度で10個体/㎥以下の出現となっている。 タイラギの立ち枯れ斃死の多くは春期から秋期にかけて発生し、その原因として、貧酸素水塊、基礎生産力(特に浮遊珪藻)の低下による餌不足、濁りによる摂食障害、底質中の有害物質(硫化水素等)、ウイルスの影響等が示されているが、いまだ特定には至っていない。同一地点における異なる器材、手法による移植試験の結果を比較すると、浮泥層厚 と餌料環境との関係が示唆されるとともに、海底から1m程度離すことで立ち枯れ斃死が見られなくなったことから、海底近傍の環境が立ち枯れ斃死に影響している可能性がある。(乙E245〔152頁〕)」原判決156頁6行目の「前記bのとおり」から9行目の「関し」までを「控訴人らはタイ れなくなったことから、海底近傍の環境が立ち枯れ斃死に影響している可能性がある。(乙E245〔152頁〕)」原判決156頁6行目の「前記bのとおり」から9行目の「関し」までを「控訴人らはタイラギ漁業について組合員行使権を有することから」に改 める。 原判決156頁11行目から160頁24行目までを次のとおり改める。 「b 諫早湾においては、本件潮受堤防及び本件各排水門に係る工事に着手し、これが本格化した平成3年から平成5年にかけて、タイラギの漁獲量が急減し、同年以降、漁獲がほとんどない状況が継続していること、 そして、本件事業による干潟の水質浄化等の機能の喪失に加え、本件潮受堤防の締切りによる潮流速の低下、成層化、貧酸素化の進行、赤潮の発生件数の増加、底質環境の悪化(浮泥の堆積、硫化水素の発生)等の要因が複合して、諫早湾の漁場環境の悪化を招来した高度の蓋然性があることは、前記のとおりである。かかる事情に加え、① 平成18年委 員会報告において、有明海北部海域におけるタイラギ資源の長期的な減 少は、泥化の進行、有機物、硫化物の増加、貧酸素化等の底質環境の悪化により、タイラギの着底期以降の生息場が縮小したことが主な要因と考えられるとの指摘がされていること、② 平成29年委員会報告において、長期的なタイラギ資源の減少と貧酸素水塊や底質との関係は不明であるとする一方、貧酸素水塊がタイラギ資源の変動に影響を与えてい ることが推定されるとの指摘や、貧酸素水への曝露によってタイラギの斃死が生ずることは、室内実験により確認されているとの指摘がされていること、また、上記報告において、タイラギ資源の減少要因として、エイ類による食害、浮遊幼生の減少のほか、貧酸素水塊、底質の泥化(浮泥の堆積)等が挙げられているこ より確認されているとの指摘がされていること、また、上記報告において、タイラギ資源の減少要因として、エイ類による食害、浮遊幼生の減少のほか、貧酸素水塊、底質の泥化(浮泥の堆積)等が挙げられていること、③ 令和4年委員会中間とりまと めにおいて、タイラギの立ち枯れ斃死の原因として、貧酸素水塊、基礎生産力の低下による餌不足、濁りによる摂食障害、底質中の有害物質(硫化水素等)、ウイルスの影響等が示されていて、いまだ特定には至っていないものの、海底近傍の環境が立ち枯れ斃死に影響している可能性があるとの指摘がされていることに照らすと、諫早湾において、タイラギの 漁獲量が急減し、平成5年以降、ほとんど漁獲がない状況が継続しているのは、本件事業ないし本件潮受堤防の締切りにより招来された漁場環境の悪化がその要因となっている高度の蓋然性があるというべきである。 c この点、被控訴人は、従前から、有明海におけるタイラギの漁獲量が 急増と急減を繰り返してきたことや、平成3年から平成5年にかけて、有明海の他の海域におけるタイラギの漁獲量が急減し、八代海においてもタイラギの漁獲量が激減していることからすると、本件潮受堤防の締切りにより諫早湾におけるタイラギの漁獲量が減少したとはいえない旨の主張をする。 しかしながら、① 九州農政局諫早湾干拓事務所が平成5年から平成 8年にかけて実施した調査により、諫早湾において、タイラギの浮遊幼生が佐賀県海域での調査結果以上の密度で観察され、広範囲での着底も確認されたのに、また、有明海の他の海域におけるタイラギの漁獲量は、平成5年以降も一時的とはいえ何度か増加したことがあるのに、諫早湾におけるタイラギの漁獲量は、平成3年から平成5年にかけて、急減し、 同年以降、漁獲がほとんどない 域におけるタイラギの漁獲量は、平成5年以降も一時的とはいえ何度か増加したことがあるのに、諫早湾におけるタイラギの漁獲量は、平成3年から平成5年にかけて、急減し、 同年以降、漁獲がほとんどない状況が継続していること、② 諫早湾漁場調査結果報告書において、平成5年度以降、諫早湾で見られたように、操業できない程度にまで資源水準が低下し、これが長年にわたり継続した例はなく、近年の諫早湾におけるタイラギ資源の減少は、従前のものとは性質を異にする現象ではないかと考えるとの指摘がされていること は、前記のとおりであって、被控訴人の主張する事情をもって、前記判断は覆らない。 被控訴人は、タイラギ資源の減少は、ナルトビエイの捕食圧が大きな要因である旨の主張をし、平成29年委員会報告においても、エイ類の捕食圧が資源変動に無視できない影響を与えていると推定されるとの指 摘がされているが、有明海におけるタイラギの漁獲量とナルトビエイによる食害量(推定値)の経年変化(平成20年から平成26年まで。乙E197〔367、368頁〕)を見るに、その漁獲量と食害量は必ずしも相関関係になく、ナルトビエイの捕食圧が、タイラギの漁獲量とタイラギ資源の減少の大きな要因であるとまでいうのは困難である。」 原判決163頁8行目から165頁4行目までを次のとおり改める。 「 証拠(乙E47〔2頁〕、乙E196〔3頁〕)及び弁論の全趣旨によれば、本件3漁協におけるカキ養殖業の漁獲量は、原判決別紙41のとおり、平成15年から平成16年にかけて、及び、平成18年から平成19年にかけて減少したものの、その後急増し、また、平成21年から平成24年 にかけて急減したものの、同年から平成26年にかけて急増していること、 小長井町漁協におけるカキ類 ら平成19年にかけて減少したものの、その後急増し、また、平成21年から平成24年 にかけて急減したものの、同年から平成26年にかけて急増していること、 小長井町漁協におけるカキ類の漁獲量も、原判決別紙35(下図)のとおり、平成15年から平成16年にかけて減少したほかは、一貫して増加傾向を示していることが認められ、かかる事実に照らすと、本件潮受堤防の締切りにより、諫早湾におけるカキの漁獲量が減少したというのは困難である。」 原判決165頁5行目の「漁船漁業」から6行目末尾までを「漁船漁業について」に改める。 原判決165頁14行目の「原告目録の番号1ないし12」を「控訴人らは、漁船漁業について組合員行使権を有するところ、原判決原告目録の番号1から5まで、8、10から12まで」に、同行目の「16ないし18」を 「17、18」に、18行目から19行目にかけての「甲B26及び27の各1」を「甲B27の1」にそれぞれ改め、14行目の「25、」、17行目の「甲B8の1、」、20行目の「甲B39及び40の各1、」、同行目から21行目にかけての「甲B43の1及び2、」及び同行目の「原告丙本人、」をいずれも削る。 原判決166頁9行目の「平成14年以降は」から10行目の「状態にある」までを「平成11年に192tまで回復したものの、平成14年には92tに減少し、近時は40t前後で推移している」に、16行目の「呈しており、平成8年頃からは」を「示し、平成5年から平成8年にかけて漁獲量が急減し、同年以降、」にそれぞれ改める。 原判決167頁10行目の「平成19年から増加し」を「平成18年以降、増加し」に改める。 原判決172頁25行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「d 令和4年委員会中 改める。 原判決167頁10行目の「平成19年から増加し」を「平成18年以降、増加し」に改める。 原判決172頁25行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「d 令和4年委員会中間取りまとめは、有明海における主要な底生魚類の減少要因の一つに初期減耗の増大が挙げられる、平成29年委員会報告 では、初期減耗が大きくなる要因として、感潮域、河口域、干潟、浅海 域の減少、底質や底層環境の変化、成育場の環境変化、卵仔魚の輸送に関わる流れの変化等の影響の可能性が挙げられたが、特定はできていないとの指摘をする(乙E245〔126頁〕)。」原判決173頁1行目の「前記⒜のとおり」から3行目の「関し」までを「控訴人らは漁船漁業について組合員行使権を有することから」に改める。 原判決173頁6行目から175頁18行目までを次のとおり改める。 「b 八代海区の漁獲量は、平成18年以降、増加傾向を示しているのに、本件3漁協の漁獲量は、平成11年以降、減少傾向を示していること(小長井町漁協の漁獲量は、平成5年から平成8年にかけて急減し、同年以降、漁獲量がほとんどない状況である。)、本件事業により、有明海の干 潟面積の約7.55%に相当する約15.5k㎡の干潟が消失し、干潟の有する水質浄化や、生物多様性の維持、魚類の産卵場所及び成育場所の提供等の機能が失われたこと、そして、本件事業による干潟の水質浄化等の機能の喪失に加え、本件潮受堤防の締切りによる潮流速の低下、成層化、貧酸素化の進行、赤潮の発生件数の増加、底質環境の悪化等の 要因が複合して、諫早湾の漁場環境の悪化を招来した高度の蓋然性があることは、前記のとおりである。かかる事実に加え、① 平成18年委員会報告において、仔稚魚の育成場である干潟や藻 境の悪化等の 要因が複合して、諫早湾の漁場環境の悪化を招来した高度の蓋然性があることは、前記のとおりである。かかる事実に加え、① 平成18年委員会報告において、仔稚魚の育成場である干潟や藻場、感潮域の消滅、縮小、沈降有機物の増加等による貧酸素水塊の発生、底質の泥化によるベントスの減少、潮流、潮汐の変化が魚類資源の減少の一因になり得る との指摘がされ、平成29年委員会報告においても、感潮域、河口域、干潟、浅海域の減少や環境悪化が初期減耗を高め、魚類資源の減少を引き起こしている可能性があるとの指摘がされていること、② 丁が、本件事業により、魚類の産卵場所、初期育成場が一部消滅し、仔魚の成育場への移送、季節回遊をする魚種の移動が阻害されることになるとの指 摘をし、乙も、本件事業により、生物生産力、水質浄化能力、魚介類の 産卵、成育の場が失われたとの指摘をすること(甲E174、証人乙)に照らすと、本件事業ないし本件潮受堤防の締切りにより招来された漁場環境の悪化が、諫早湾における漁船漁業の漁獲量の減少要因となっている高度の蓋然性があるというべきである。 被控訴人は、本件3漁協の漁獲量が、昭和50年以降、長期的な減少 傾向を示していること、上記漁獲量が、平成9年(本件締切り時点)から平成11年にかけて増加していること、一部の魚種については、本件締切り後も漁獲量が減少していないことからすると、本件潮受堤防の締切りにより諫早湾における漁船漁業の漁獲量が減少したとはいえない旨の主張をするが、前記のとおり、八代海区の漁獲量は、平成18年以降、 増加傾向を示しているのに、本件3漁協の漁獲量は、平成11年以降、減少傾向を示していることに加え、魚類資源の成育期間等を踏まえると、その初期減耗が漁獲量に反映されるまでに 、平成18年以降、 増加傾向を示しているのに、本件3漁協の漁獲量は、平成11年以降、減少傾向を示していることに加え、魚類資源の成育期間等を踏まえると、その初期減耗が漁獲量に反映されるまでには一定の時間を要すると解されること、有明海においては、感潮域、河口域、干潟、浅海域の減少や、底層環境の悪化の影響を受けやすい底生種の漁獲量が顕著に減少してい ることに照らすと、採用できない。」原判決175頁25行目の「「原告目録の」を「控訴人らは、ノリ養殖業について組合員行使権を有するところ、原判決原告目録の」に改める。 原判決178頁11行目の「前記⒜のとおり」から13行目の「関し」までを「控訴人らはノリ養殖業について組合員行使権を有することから」に 改める。 原判決178頁15行目から181頁2行目までを次のとおり改める。 「b 証拠(甲A151〔7頁〕、乙E197〔179頁〕)及び弁論の全趣旨によれば、有明海におけるノリの漁獲量は、原判決別紙46のとおり、増減を繰り返しつつも、全体としては増加傾向を示していること、また、 控訴人戊のノリの収穫量は、原判決別紙47のとおり、平成15年度か ら平成21年度までは、約26万枚から約78万枚までの範囲で増減を繰り返し、平成22年度には約154万枚と大幅に増加したものの、平成23年度には約53万枚まで激減し、平成24年度には約120万枚と再度大幅に増加していることが認められ、かかる事実に照らすと、本件潮受堤防の締切りにより、諫早湾におけるノリの漁獲量が減少したと いうのは困難である。」原判決181頁3行目の「本件潮受堤防の締切り」を「本件事業ないし本件潮受堤防の締切り」に改め、5行目から15行目までを次のとおり改める。 「 以上によれば、本件事 いうのは困難である。」原判決181頁3行目の「本件潮受堤防の締切り」を「本件事業ないし本件潮受堤防の締切り」に改め、5行目から15行目までを次のとおり改める。 「 以上によれば、本件事業ないし本件潮受堤防の締切りによる漁場環境の悪化により、諫早湾におけるタイラギ漁業及び漁船漁業の漁獲量が減少し、 かかる状態が将来にわたり継続することが具体的に予想され、控訴人らの組合員行使権が一部侵害されているというべきである。」原判決181頁15行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「第4 争点4(組合員行使権侵害に基づく妨害排除又は妨害予防請求の可否)について 1 本件事業ないし本件潮受堤防の締切りによる漁場環境の悪化により、諫早湾におけるタイラギ及び漁船漁業の漁獲量が減少し、控訴人らの組合員行使権が一部侵害されていることは、前記のとおりである。 そこで、控訴人らにおいて、妨害の排除又は予防を請求し得るか否かについて検討する。 2 この点、前記前提事実に加え、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 本件事業は、本件潮受堤防を築造して諫早湾湾奥部を締め切り、海水の流入を止めて、海面の一部を本件調整池とするとともに、内部堤防を設置して干拓地を造成し、本件各排水門を操作し本件調整 池の水位を管理することにより、背後低平地における高潮、洪水、 常時排水不良等に対する防災機能を強化し、併せて本件調整池を淡水化してかんがい用水を確保し、大規模で平坦な優良農地を造成し、生産性の高い農業を実現することを目的とする土地改良法87条の2第1項1号、2条2項4号所定の土地改良事業である。本件事業により、新干拓地(合計約9.42㎢)が造成され、平成20年4月、 干拓地における営農が開 実現することを目的とする土地改良法87条の2第1項1号、2条2項4号所定の土地改良事業である。本件事業により、新干拓地(合計約9.42㎢)が造成され、平成20年4月、 干拓地における営農が開始し、本件調整池の水は、新干拓地におけるかんがい用水として使用されている(平成20年度の取水量は約23万3800㎡、平成23年度のそれは39万5700㎡である。 乙C75の1)。 被控訴人(九州農政局長)は、昭和62年3月19日、長崎県知 事を通じて、湾内12漁協(本件3漁協を含む。)との間で、本件事業等の実施について、湾内漁業補償契約を締結し、湾内12漁協は、同契約に基づき補償金(小長井町漁協につき15億2573万5000円、瑞穂漁協につき13億0062万6000円、国見漁協〔国見神代漁協及び国見土黒漁協〕につき13億2563万9000円) の支払を受けた。湾内漁業補償契約には、① 本件事業等の実施に伴う湾内12漁協及びその組合員に対する漁業補償の対象は、本件潮受堤防外に位置する本件3漁協及びその組合員については、諫早湾内における漁業権等(共同漁業権、区画漁業権、許可漁業、自由漁業及びこれらの行使権の全てを含む。)の一部放棄及び制限により 生ずる全ての損失である、② 湾内12漁協及びその組合員は、この契約締結をもって、本件事業等に伴う漁業補償については、全て解決したものとし、長崎県に対し、今後一切異議、求償等を行わないものとする旨の定めがある。 本件潮受堤防を築造し、本件各排水門からの排水により本件調整 池の水位を管理することにより、高潮被害、洪水被害等を防止ない し軽減し、背後地からの排水不良を改善することが期待される。現に、本件潮受堤防の締切り前の昭和60年8月に台風13号が通過した際、最高 管理することにより、高潮被害、洪水被害等を防止ない し軽減し、背後地からの排水不良を改善することが期待される。現に、本件潮受堤防の締切り前の昭和60年8月に台風13号が通過した際、最高潮位が標高+3.21mに達して、高潮被害が発生したのに、本件潮受堤防の締切り後の平成11年9月に台風18号が通過した際は、最高潮位が標高+3.22mに達したにもかかわら ず、高潮被害は発生しなかった。また、昭和57年7月のいわゆる長崎大水害の際、最大時間雨量が99㎜、総雨量が492㎜に達し、湛水被害が4ないし5日間継続して、農産物の被害額は約1億0700万円に上ったのに、平成11年7月の降雨の際は、最大時間雨量が101㎜、総雨量が342㎜に達したにもかかわらず、湛水は 1日でほぼ解消し、農産物の被害額も300万円にとどまっている。 (乙C1、10)。 開門アセスにおける、本件各排水門を常時開門した場合(ケース1)の予測、評価(乙C75の1)は、次のとおりである。 ア本件調整池の水位は、諫早湾の潮位に連動して、標高-1.8 4m程度から2.37m程度までの間で変化する。本件調整池の水位の変動や塩水化により、背後地の既設堤防の老朽化、劣化部分から、堤防材料が吸出されたり、背後地へ塩水が浸入したりして、上記既設堤防の構造維持や防護機能の確保が困難となる可能性がある。 突発的な洪水が生じた場合に想定される本件調整池の最高水位は、標高2.8mであり、この場合、既設排水門本体部と周辺堤防の接合部に段差、目地開きが確認された10施設では、同部及び樋門本体と取付堤防部の不同沈下により発生した樋門基礎下等の空洞部から塩水が浸入したり、堤防盛土が吸出されたりする可 能性がある。また、ゲートの劣化が確認された12施設、止水 設では、同部及び樋門本体と取付堤防部の不同沈下により発生した樋門基礎下等の空洞部から塩水が浸入したり、堤防盛土が吸出されたりする可 能性がある。また、ゲートの劣化が確認された12施設、止水、 水密部の不良等が確認された12施設では、樋門、樋管の敷高が標高2.8m以下となる箇所から塩水が浸入する可能性がある。 イ本件各排水門の開門により、本件各排水門周辺の潮流速が増加し、これにより底泥の過剰な巻上げ、洗掘等が発生して、周辺環境や周辺施設の維持に影響を及ぼす可能性がある。 ウ本件各排水門の開門により、本件調整池が塩水化し、新干拓地においてかんがい用水として使用することができなくなるのみならず、潮遊池にポンプを設置して循環かんがいを実施している本件調整池周辺の背後地においても、本件調整池からの塩水の浸入により潮遊池の塩分濃度が上昇し、循環かんがいを実施すること ができなくなる。 また、本件各排水門の開門により、旧干拓地の一部において、土壌中の塩化物イオン濃度が上昇し、野菜等に係る塩化物イオン濃度の下限値(210㎎/L)を上回ることや、飛来塩分の発生量が増加し、潮風害が発生する可能性がある。 エ本件各排水門の開門により、潮流、水環境(濁り)等が変化し、諫早湾におけるカキ類、ノリ類の養殖業に影響を及ぼす可能性がある。 オ本件各排水門の開門後、1年目は、本件調整池の南側では潟土が堆積するが、中央干拓地前面水域については、海水導入時の流 れが速く、侵食が進行して、干潟地形は発達しないことが予測される。 ア本件各排水門の開門に伴い、常時排水ポンプ、洪水時排水ポンプの設置、既設堤防や樋門の補修等の工事(以下、併せて「事前対策工事」という。)を実施する必要があるほか、代替となるかん れる。 ア本件各排水門の開門に伴い、常時排水ポンプ、洪水時排水ポンプの設置、既設堤防や樋門の補修等の工事(以下、併せて「事前対策工事」という。)を実施する必要があるほか、代替となるかん がい用水を確保する必要が生ずる(乙C75の1、C75の2)。 イ被控訴人は、前訴判決の確定を受け、長崎県、諫早市及び雲仙市(以下「関係自治体」という。)、干拓地及び背後地の営農者や住民(以下「地元関係者」という。)と意見交換を行い、本件各排水門の開門に向け、事前対策工事の実施案を策定するなどしたが、関係自治体及び地元関係者から、事前対策工事の実施及び本件各 排水門の開門につき、強い懸念と反対の意向が表明されるなどしたことから、事前対策工事に着手するのを断念した。現時点において、事前対策工事に着手する目途は立っていない。(乙C106の1から3まで、乙C108の1から13まで、乙C141から147まで) 被侵害利益である組合員行使権は、組合員である控訴人らの生活の基盤にかかわる権利であり、十分に尊重されるべきものであるとはいえ、その性質は基本的に財産的権利であり、その侵害は必ずしも人格権等の非財産的権利の侵害を伴うものではない。 そして、① 本件事業は、背後低平地において、高潮、洪水、常 時排水不良等に対する防災機能を強化し、併せて本件調整池を水源とするかんがい用水が確保された、大規模で平坦な優良農地を造成し、生産性の高い農業を実現することを目的とするもので、高い公益性、公共性を有すること、② 本件事業の実施に当たっては、湾内漁業補償契約が締結され、本件3漁協及び組合員の漁業権等(共 同漁業権、区画漁業権、許可漁業、自由漁業及びこれらの行使権の全てを含む。)の一部放棄及び制限により生ずる全て 施に当たっては、湾内漁業補償契約が締結され、本件3漁協及び組合員の漁業権等(共 同漁業権、区画漁業権、許可漁業、自由漁業及びこれらの行使権の全てを含む。)の一部放棄及び制限により生ずる全ての損失に対する補償として、補償金が支払われていて、本件潮受堤防外の漁業も含め、一定の損失填補が図られていること、③ 開門アセスにおいて、事前対策工事をせずに、本件各排水門を常時開門した場合、本件潮 受堤防の防災機能が損なわれることのほか、かんがい用水を確保す ることができなくなることや、湛水及び塩害による農業上の被害、潮流速、水環境の変化による漁業環境への影響が予測されるとの指摘がされる一方、本件各排水門を常時開門することによる干潟の再生効果は限定的との指摘がされていること、また、本件各排水門を開門する場合、事前対策工事を実施するほか、代替となるかんがい 用水を確保する必要があるところ、現状、事前対策工事に着手する目途さえ立っていないことは、前記のとおりである。そして、漁獲量の減少の程度、本件潮受堤防の災害防止機能の必要性等は、自然環境や社会環境にも関わる可変的、流動的な性質を有することをも踏まえ、上記の被侵害利益の性質と内容、本件事業の公共性、公益 性といった対立する利益等を総合して利益衡量をすると、本件において、被侵害利益に対する救済を損害賠償にとどめるのでは足りず、控訴人らは、妨害の排除又は予防を請求することができると解するのは困難である。 この点控訴人らは、① 本件潮受堤防による防災効果は限定的 であり、本件各排水門を常時開門することにより防災上支障は生じない、② 本件調整池の水質は劣悪であり、元々農業用水としての使用には制約があるし、海水淡水化施設を造設することなどにより、代替水源を確保 あり、本件各排水門を常時開門することにより防災上支障は生じない、② 本件調整池の水質は劣悪であり、元々農業用水としての使用には制約があるし、海水淡水化施設を造設することなどにより、代替水源を確保することができる、また、短期開門調査の結果によれば、本件各排水門を常時開門することにより農業上の被害は生じ ない、③ 漁業環境への影響も、本件各排水門からの導排水量を徐々に増加させることにより防止できるなどとの主張をするが、開門アセスにおいて、事前対策工事をせずに、本件各排水門を常時開門した場合、本件潮受堤防の防災機能が損なわれ、農業用水を確保することができなくなるとの指摘や、湛水及び塩害による農業上の被害、 潮流速及び水環境の変化により漁業環境への影響が生じることが予 測されるとの指摘がされていること、現状、被控訴人において、代替水源の確保を含む事前対策工事に着手する目途は立っていないことは、前記のとおりであって、上記主張は採用できない(短期開門調査は、本件調整池に海水を1か月程度流入させたもので、この結果のみから本件開門操作によって上記各被害が生じない、又は被害 が限定的であるなどと評価することはできない。)。 また、控訴人らは、① 本件各排水門を常時開門することにより、干潟が回復し、漁場環境が改善されて、漁業資源の回復につながる、また、これにより、カモによる農作物の食害等も防止することができる、② 海水淡水化施設等を造設することにより、良質なかんが い用水を確保することができる、③ 本件各排水門を常時開門し、自然環境を改善することにより、観光振興にもつながる旨の主張をし、証人乙は、本件各排水門を開門し、本件調整池内に海水の出入り(潮汐)を復活させることにより、汽水域の環境が改善して、限定的ではある 自然環境を改善することにより、観光振興にもつながる旨の主張をし、証人乙は、本件各排水門を開門し、本件調整池内に海水の出入り(潮汐)を復活させることにより、汽水域の環境が改善して、限定的ではあるものの干潟が再生し、干潟生態系の機能が徐々に回復 する旨の陳述(甲E174)及び供述(証人乙)をするが、かかる事情を考慮しても、前記判断は覆らない。」 2 以上によれば、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官森冨義明 裁判官野 々 垣隆樹 裁判官伊賀和幸

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