- 1 - 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 本件は、被控訴人が、被控訴人が開催し運営する芸術祭である「あいちトリエンナーレ2019」について、地方公共団体である控訴人が被控訴人に対す る負担金を交付する旨の決定をしたにもかかわらず、その後、事情の変更により特別の必要が生じたとして一方的に負担金額を減額変更し、当初の決定に係る金額との差額分の支払いを拒んでいると主張して、控訴人に対し、負担金交付請求権に基づき、上記差額分である3380万2000円及びこれに対する支払期限の翌日である令和元年10月19日から支払済みまで平成29年法律 第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める事件である。 原審は、被控訴人の請求を全部認容する旨の判決(原判決)をしたところ、これを不服として控訴人が控訴した。 2 前提事実は、以下のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の 第2、1に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)原判決3頁10行目から11行目にかけての「思想に対する批評や」を「批評や思想の」と改める。 原判決3頁25行目に掲げる証拠に甲第22号証及び丙第5号証を加える。 原判決5頁19行目の「多岐にわたる」の次に「(甲11)」を加える。 - 2 -原判決6頁2行目の「展示された」の次に「(甲11)」を加える。 原判決6頁5行目の「その」及び「決算段階では」の次にいずれも「約」を加える。 原判決6頁8行目の「事業」を削る。 原判決8頁5行 6頁2行目の「展示された」の次に「(甲11)」を加える。 原判決6頁5行目の「その」及び「決算段階では」の次にいずれも「約」を加える。 原判決6頁8行目の「事業」を削る。 原判決8頁5行目の「生じたとき」は、」の次に「控訴人市長は」を加え る。 原判決8頁10行目の「開幕した。」の次に「同日以降、」を加える。 原判決10頁17行目に掲げる証拠に乙第25号証を加える。 原判決10頁18行目の「A1作」を「A2作」と改める。 原判決11頁9行目から10行目にかけて掲げる証拠に甲第15号証及び 乙第1号証を加える。 原判決11頁24行目に掲げる証拠のうち、甲第12号証を甲第13号証に改め、掲げる証拠に乙第1号証、第25号証、第56号証の1から13まで及び第58号証を加える。 原判決12頁13行目に掲げる証拠に乙第1号証及び第25号証を加える。 3 本件の争点は、控訴人は「事情の変更により特別の必要が生じたとき」に該当するとして本件負担金の未交付部分の支払いを拒むことができるか(原審における争点)である。なお、控訴人は、原審においては本案前の主張をして被控訴人の訴えの却下を求めていたが(原判決における争点及び)、当審においてその主張を撤回した。 争点についての当事者の主張は、以下のとおり補正し、下記4のとおり控訴人の当審における主張を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中の第2、 の「被告の主張」欄及び「原告の主張」欄に各記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) 原判決16頁17行目の「これは、」から22行目の「考えるべきであ - 3 -る。」までを削る。 原判決17頁4行目から8行目までを削り、9行目の「」を「」と、17行目の「」 原判決16頁17行目の「これは、」から22行目の「考えるべきであ - 3 -る。」までを削る。 原判決17頁4行目から8行目までを削り、9行目の「」を「」と、17行目の「」を「」とそれぞれ改める。 原判決17頁10行目から11行目にかけての「名古屋市芸術文化団体活動助成補助金交付要綱(」の次に「以下、単に「補助金交付要綱」という。」 を加える。 原判決21頁1行目の「違法であることは」を「著しく公益に反することは」と改める。 原判決21頁6行目の「地方公共団体である被告が、」を「地方公共団体の長である控訴人市長が、」と、7行目の「ことは、」から8行目末尾まで を「ことは地方自治法232条の2の規定に違反すると評価することは、控訴人市長に認められた合理的な裁量に基づくものである。」と改める。 原判決21頁22行目の「もとより、」から23行目の末尾までを「もとより、言論に対する制限と、言論に対する援助の場合とでは、公法的な規範の目的・範囲は全く異なる。」と改める。 原判決23頁20行目の「本件交付決定通知書(甲3)は、」から25行目の「また、」まで及び26行目の「それが直ちに上記の交付条件に該当しなくても、」をそれぞれ削る。 原判決24頁7行目の次に次を加える。 「 また、本件芸術祭は愛知県と控訴人が共催した公共事業であるから、その 事業活動は共通の目的を志向する合同行為としての性格を持つ。そして、合同行為においては、共同実施主体が相互に意思疎通を図り共通の利益のため協力・協調すべき義務があることは自明の前提である。このような義務は、合同行為の本旨に基づく被控訴人の控訴人に対する信義則上の付随義務である。」 原判決24頁10行目の「上記交付条件又は準委任契約 すべき義務があることは自明の前提である。このような義務は、合同行為の本旨に基づく被控訴人の控訴人に対する信義則上の付随義務である。」 原判決24頁10行目の「上記交付条件又は準委任契約上の善管注意義務 - 4 -に基づき、」を「実質的にみて準委任的な関係に基づく善管注意義務(民法644条準用)又は合同行為の本旨に基づく信義則上の付随義務に基づき、」と改める。 原判決24頁19行目の「政治性の強い」を「政治的中立性に反する」と改める。 原判決27頁1行目の「本件不自由展を」から3行目の「さらに、」までを削る。 原判決33頁12行目の「日本国人にとって」を「日本国民にとって」と改める。 原判決35頁8行目の「被告は、」から18行目の「また、」までを削る。 原判決35頁23行目の次に次を加える。 「 また、控訴人は、合同行為の本旨に基づく被控訴人の控訴人に対する信義則上の義務を主張するが、同義務については争う。」 4 控訴人の当審における主張は以下のとおりである。 本件芸術祭は、愛知県及び控訴人の共催によるものであり、愛知県が本件 芸術祭を愛知県の文化芸術政策全体を推進するための先導的役割を担う取組みとしての国際芸術祭と位置付けている上、文化庁に対し平成31年度文化資源活用事業費補助金の申請をしているのであり(この補助事業は地方公共団体が補助事業者であることを前提に地方公共団体が実施する事業に必要な経費を補助する制度となっている。)、愛知県も自身が実施主体と考えてい ることからすれば、本件芸術祭は公共事業にあたるというべきである。 本件負担金の減額変更の決定は、公益性・合目的性の観点からみて、合理的な判断であり有効である。控訴人市長が、本件負担金の減額変更決定をするにあた 、本件芸術祭は公共事業にあたるというべきである。 本件負担金の減額変更の決定は、公益性・合目的性の観点からみて、合理的な判断であり有効である。控訴人市長が、本件負担金の減額変更決定をするにあたって判断材料として重視したのは、前記3(引用に係る原判決の「事実及び理由」の第2、3の「被告の主張」欄のイからキまで(補正 後)。なお、同イについて上記の補充がある。)で主張した6の要素と以 - 5 -下のアからエまでの4の要素である。これらの事情に照らすと、控訴人市長が本件負担金を減額する決定をしたことについて、その判断内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとはいえないし、そのような決定については法律(地方自治法232条の2)上も、合目的的見地からも合理的な根拠がある。したがって、控訴人市長の上記減額の決定に、裁量権の逸脱、濫用 は認められず、有効である。 ア控訴人が本件負担金交付決定をした平成31年4月16日時点では、債務額が未確定であり、かつ、後日、債務額が確定した段階で精算を予定した「概算払」(地方自治法232条の5第2項、同法施行令162条)にすぎず、この意味では未だ「内定」額にすぎない。しかも、本件負担金交 付決定には、事情の変更により特別の必要が生じたときは負担金の全部又は一部を取り消すことができる旨の留保条件又は解除条件が付されていた。 したがって、交付条件の認定・変更に関する控訴人市長の裁量権の行使が、法的にも契約合意として制限されるものではないし、被控訴人において控訴人に対する負担金交付請求権が発生したりするものでもない。 イ本件不自由展は、B芸術監督の肝煎り事業であり、芸術監督自身、その執務の大半を本件不自由展の準備に費やしたものと合理的に推認できること、本件芸術祭についての 生したりするものでもない。 イ本件不自由展は、B芸術監督の肝煎り事業であり、芸術監督自身、その執務の大半を本件不自由展の準備に費やしたものと合理的に推認できること、本件芸術祭についてのマスコミの報道は本件不自由展の紹介についてのみであり、他の企画展については紹介されていないこと、本件芸術祭で社会的注目・関心が専ら本件不自由展に集中したことからすれば、本件不 自由展が本件芸術祭全体の中でも最も社会の注目・関心を集めた中核的な企画であり、かつ、最も印象に残る代表的・象徴的企画であった。 ウ本件負担金交付決定は、前記アのとおり解除条件付きの内定にすぎず、被控訴人としても減額の可能性を当然予期すべきであったこと、前記のとおり本件芸術祭の主たる主催者は愛知県であること、本件芸術祭の事業 収入について、実際の決算額は予算額から約7500万円の増収となった - 6 -こと、控訴人が支払いを拒んだ負担金の額は、総事業費(約12億円)の約2.8%にすぎないことからすれば、本件負担金の減額変更をしても被控訴人に生じ得る影響はほとんどないといえる。 エ ①本件芸術祭は、前記のとおり公共事業であり、本件不自由展は、前記イのとおり本件芸術祭全体の中でも最も社会の注目・関心を集めた中核 的な企画であること、②本件不自由展において中核的位置を占めたのはC作品、A3映像作品及びD作品であり、これらの3作品はハラスメントとなり得るものであること、③本件不自由展に対して批判及び抗議が殺到し、愛知県庁や控訴人の担当事務局等がその対応に追われ、地方公共団体としての本来の事務機能にも支障を来したこと、④本件不自由展を実質的に公 開展示できたのは開幕後わずか3日にすぎなかったこと、⑤本件不自由展を巡って被控訴人代表者(愛知県知事 れ、地方公共団体としての本来の事務機能にも支障を来したこと、④本件不自由展を実質的に公 開展示できたのは開幕後わずか3日にすぎなかったこと、⑤本件不自由展を巡って被控訴人代表者(愛知県知事)と控訴人市長とが対立するなどの事態を引き起こしており、本件芸術祭の趣旨・目的に著しく反するものであったこと、⑥被控訴人から控訴人に対して事前に開示されるべき情報が開示されず、本件不自由展を巡って問題が生じた後、控訴人市長の要求に も関わらず被控訴人の運営会議の召集、開催がされず、控訴人がいわば本件芸術祭の運営から排除されたに等しい状態に置かれたこと、⑦芸術監督がA3映像作品を主催者に秘匿して展示させたことが控訴人の補助金交付要領における「偽りその他不正な手段」に相当すると評価できることに照らすと、控訴人が、被控訴人に対し、本件負担金交付決定の内定どおりに 満額支給した場合、ハラスメント性のある上記3作品を中心とする本件不自由展に控訴人の市民から徴収された税金が使用されたことになり、その使途の在り方について問題が生じ得ること、控訴人市長が政治的中立性を欠くと批判される可能性が生じ得ること、本件不自由展が上記のとおり開幕後わずか3日しかまともに公開できなかったのに本件負担金を減額しな いことは社会通念上不合理であると社会的な非難がされる可能性が高いこ - 7 -と、控訴人市長の裁量権の行使による本件負担金の減額を認めないことは地方自治体の自主財産権を侵害するものであること、本件負担金を全額交付すると上記⑦のような不正を容認したことになることといった弊害や社会的な悪影響が生じるのであり、その結果、控訴人の市民から徴収された税金の使途の公益性、公正に対する市民の信頼を失う可能性が十分にある。 第3 当裁判所の判断 ことになることといった弊害や社会的な悪影響が生じるのであり、その結果、控訴人の市民から徴収された税金の使途の公益性、公正に対する市民の信頼を失う可能性が十分にある。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実認定事実は、以下のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第3、1に記載のとおりであるからこれを引用する。なお、引用する原判決の記載中、「A1」とあるのはいずれも「A2」と改め、証拠として掲げる「原 告事務局次長」、「被告室長」及び「被告市長」は、それぞれ原審における証人E(被控訴人事務局次長)及び同F(控訴人室長)の各証言並びに控訴人代表者(控訴人市長)の本人尋問の結果をいうものとする(以下、原判決の記載を引用する場合につき同じ。)。 (原判決の補正) 原判決43頁24行目の「前提事実」の次に証拠として甲第3号証を掲げる。 原判決49頁17行目及び20行目の各「供述」をいずれも「証言部分」と改める。 原判決53頁7行目の「強迫の」を「脅迫の」と改める。 原判決55頁16行目の「同年9月14日、」を「同年9月4日、」と改める。 原判決56頁3行目に掲げる証拠に甲第27号証を加える。 原判決56頁5行目の「詫びる旨の文書や、」を「詫び、」と改める。 原判決56頁10行目の「この保全処分の」を「この保全事件の」と改め る。 - 8 -原判決56頁15行目の「出展作家との」を「出展作家と」と改める。 原判決56頁21行目の「甲7・96、」の次に「甲8・」を加える。 原判決56頁26行目から57頁1行目にかけての「15組に」を「のべ15組に」と改める。 原判決57頁9行目から10行目にかけて掲げる証拠に乙第61号証を加 える。 原判決57頁1 原判決56頁26行目から57頁1行目にかけての「15組に」を「のべ15組に」と改める。 原判決57頁9行目から10行目にかけて掲げる証拠に乙第61号証を加 える。 原判決57頁19行目の「未払分の」を「令和元年10月18日交付とされている」と改める。 原判決58頁11行目の「記載されている。」の次に証拠として甲第16号証及び第27号証を掲げる。 原判決60頁7行目に掲げる証拠に甲第22号証を加える。 原判決61頁22行目の「本件不自由展において」から24行目の「などとして、」までを「上記ウの市の検証委員会の意見を尊重し、」と改める。 原判決62頁11行目の「与えなかった。」の次に証拠として甲第23号証を掲げる。 原判決62頁19行目の「非常事態に、」を「非常時に、」と、23行目の「評決で」を「表決で」とそれぞれ改める。 原判決63頁8行目の「記載されている。」の次に証拠として甲第23号証及び丙第2号証を掲げる。 2 争点に対する判断 争点に対する当裁判所の判断は、原判決の「事実及び理由」中の第3、4からまでの記載を、前記第2、3の控訴人の当審における主張に対する判断を含め、次のとおり補正して引用するとおりである。 原判決74頁11行目の「この点、」を「控訴人の主張する公共事業は、その主張内容から、地方公共団体が公共のために行う事業というものと解さ れるところ、」と改める。 - 9 -原判決74頁22行目から75頁2行目までを次のように改める。 「 しかし、被控訴人が主体的に本件芸術祭の準備及び開催運営を行っていると認められる。すなわち、被控訴人の運営会議は、被控訴人の委員が構成員となっており(本件規約13条1項)、被控訴人の委員は、会長(愛知県知事) 訴人が主体的に本件芸術祭の準備及び開催運営を行っていると認められる。すなわち、被控訴人の運営会議は、被控訴人の委員が構成員となっており(本件規約13条1項)、被控訴人の委員は、会長(愛知県知事)及び会長代行(名古屋市長)の外、名古屋商工会議所会頭を始めとする 13名と、若干名の学識経験者(本件芸術祭の時点では大学教授等9名が選任されていた。)の24名であり(本件規約5条)、そして、運営会議が本件芸術祭のテーマ及びコンセプトを決定し、芸術監督を選任し、芸術監督が上記テーマ及びコンセプトに沿って本件芸術祭の企画等をしていく仕組みとなっていることからすると(前記認定事実、甲1、8、22、丙5)、本 件芸術祭の準備及び開催運営は被控訴人が主体的に行っていると認められるのであり、上記のような本件芸術祭が愛知万博を継承する目的で始まったものであること等の事情を併せ考えても、本件芸術祭の準備及び開催運営の主体が、愛知県、あるいは愛知県と控訴人であるとはいえず、本件芸術祭を地方公共団体が行う公共事業であるということはできない。 これに対し、控訴人は、前記(原判決)第2、3「被告の主張」欄のイ及び本判決第2、4のように主張するが、上記で述べたとおり、本件芸術祭の準備及び開催運営の主体は被控訴人であり、愛知県が主催し、あるいは愛知県と控訴人が共催するものとは認められないから、控訴人の上記主張は採用できない。」 原判決75頁6行目の「違法性が」を「著しく公益に反することが」と改める。 原判決77頁9行目の「違法な程度に」を「著しく公益に反する程度に」と、13行目の「違法と」を「著しく公益に反するものと」とそれぞれ改める。 原判決78頁11行目の次に次を加える。 - 10 -「カ控訴人は、本件 「著しく公益に反する程度に」と、13行目の「違法と」を「著しく公益に反するものと」とそれぞれ改める。 原判決78頁11行目の次に次を加える。 - 10 -「カ控訴人は、本件不自由展における展示作品、特にA3映像作品、C作品及びD作品がハラスメント作品にあたるといえるところ、本件負担金の交付は地方自治法232条の2の寄附又は補助にあたり、これらの展示に対して負担金を交付することについて、控訴人市長が同条の「公益上必要がある場合」にあたらないと評価することは、控訴人市長に認められた合理 的な裁量に基づくものであると主張する。 上記「公益上必要がある場合」は、当該地方公共団体の長及び議会が個々の事例に即して認定するが、これは全くの自由裁量行為ではなく、客観的に公益上必要であると認められなければならないと解するべきである。 そして、「あいちトリエンナーレ」は、平成22(2010)年から3 年ごとに開催されている国際芸術祭であり、前提事実アのような目的の下でこれまで開催されてきたもので、本件芸術祭もこれを受け継ぐものである。そして、本件芸術祭は、前提事実イのような企画とされ、愛知県及び控訴人が支出する負担金が控訴人の活動の経費に充てられる(本件規約18条(甲1))。そして、本件芸術祭のテーマが「情の時代」と決め られ(認定事実イ)、プレスリリースには、本件芸術祭の各企画の紹介として、表現の不自由展の趣旨内容の説明とともに、2015年の不自由展で扱った作品のその後等を展示すると記載されている(認定事実キ)。 以上によれば、本件芸術祭の開催の目的、趣旨、本件芸術祭のテーマ及びコンセプト(本件不自由展の企画の目的、趣旨を含む。)からすると、 本件芸術祭開催に係る経費の執行のた 定事実キ)。 以上によれば、本件芸術祭の開催の目的、趣旨、本件芸術祭のテーマ及びコンセプト(本件不自由展の企画の目的、趣旨を含む。)からすると、 本件芸術祭開催に係る経費の執行のため本件負担金を交付することは、客観的にみても地方自治法232条の2の「公益上必要がある場合」にあたると認められる。そして、本件芸術祭の企画の一つである本件不自由展で展示されたものは、認定事実アのとおりであるが、これらの展示はいずれも本件不自由展の企画の目的、趣旨に沿うものであり、控訴人が指摘す る上記3作品についても本件不自由展の企画の目的、趣旨に反するもので - 11 -はない。そうすると、控訴人が指摘する上記3作品の展示を理由に、本件負担金の未交付部分の交付が地方自治法232条の2の公益性に反するという控訴人市長の判断は裁量権の範囲を逸脱していると認められる。したがって、同条違反を理由として控訴人市長が本件負担金の未交付部分を交付しないことは許されない。」 原判決80頁1行目から2行目にかけての「地方自治法244条」の次に「2項」を加える。 原判決81頁6行目から7行目にかけての「政治的に偏向した」を「全体的に強い政治性を帯びた」と改める。 原判決84頁13行目から85頁15行目までを次のように改める。 「 控訴人は、被控訴人が共同主催者である愛知県及び控訴人と実質的にみて準委任的な関係にあるなどとして、控訴人に対し、準委任契約に基づく報告義務があることを根拠に、被控訴人の報告義務違反を主張し、また、合同行為における信義則上の付随義務を根拠に、被控訴人の報告義務違反を主張する。 まず、準委任契約に基づく報告義務の点について、前記イ(補正後)のとおり、本件芸術祭が公的な側面を有する催物 為における信義則上の付随義務を根拠に、被控訴人の報告義務違反を主張する。 まず、準委任契約に基づく報告義務の点について、前記イ(補正後)のとおり、本件芸術祭が公的な側面を有する催物であることは否定できないが、被控訴人が主体的に本件芸術祭の準備及び開催運営を行っているのであり、本件芸術祭の準備及び開催運営の主体は、愛知県、あるいは愛知県と控訴人とみることはできない。愛知県が人的及び経済的に被控訴人に大きく寄与し、 また控訴人も一定程度寄与していることを考慮しても、被控訴人が愛知県及び控訴人と実質的にみて準委任的な関係にあるとまでは認められないから、それに基づく報告義務も認められない。 また、控訴人は、本件芸術祭が愛知県と控訴人とが共催した公共事業であるから、その事業活動は共通の目的を志向する合同行為としての性格を持つ とも主張するが、本件芸術祭が愛知県と控訴人とが共催した公共事業にあた - 12 -らないことは前記イ(補正後)で検討したとおりであり、主張の前提を欠くから採用できない。 したがって、本件不自由展の展示内容等について、被控訴人が控訴人に対して準委任契約に基づく報告義務又は合同行為による信義則上の付随義務といった、法的な報告義務に違反したとは認められない。」 原判決90頁16行目及び91頁24行目から25行目にかけての各「報告義務に違反したとか、」をいずれも削る。 原判決92頁3行目の次に次を加える。 「クなお、控訴人は、上記の判断は、地方自治法232条の2の「公益」に係る控訴人市長の裁量を否定するに等しいなどと主張する。しかし、上記 公益についての判断は、前記カ(補正後)で述べたとおりであり、控訴人の上記主張は採用できない。」原判決96頁10行目の「 控訴人市長の裁量を否定するに等しいなどと主張する。しかし、上記 公益についての判断は、前記カ(補正後)で述べたとおりであり、控訴人の上記主張は採用できない。」原判決96頁10行目の「15組に」を「のべ15組に」と改める。 原判決99頁5行目から17行目までを次のように改める。 「控訴人の補助金交付要綱に反する行為かについて ア控訴人は、前記第2、3(引用に係る原判決の「事実及び理由」中の第2、3の「被告の主張」欄のキ(補正後))のとおり、芸術監督がA3映像作品を主催者側に秘匿するという重大な背信的行為の下でこれの展示を敢行したことが、控訴人の補助金交付要綱16条3号に定める「偽りその他不正な手段」に相当する行為であると主張するので検討 する。 イそもそも、上記補助金交付要綱は、補助事業者(被控訴人)が「偽りその他不正な手段により補助金の交付を受けたとき」と定めているものであり(乙3の1)、芸術監督はここにいう補助事業者にあたらない。 ウもっとも、控訴人は、被控訴人の芸術部門に置かれる本件芸術祭の 学芸業務の最高責任者である芸術監督(前提事実ア)の背信的行為 - 13 -が、上記補助金交付要綱にいう「偽りその他不正な手段」に相当する行為であると主張するものと解されるから、以下検討する。 たしかに、認定事実タ及び前記ウのとおり、芸術監督は、A3映像作品の展示が決まった後もこれを本件不自由展の作品リストに掲載せず、被控訴人事務局、キュレーターチーム及び被控訴人会長に対し、A 3映像作品の存在を知らせず、本件不自由展開幕の前々日に被控訴人事務局次長がこれを視聴し、前日に控訴人室長がその一部を視聴したものである。 しかし、本件負担金の交付申請の書類(甲2、前提事実) 映像作品の存在を知らせず、本件不自由展開幕の前々日に被控訴人事務局次長がこれを視聴し、前日に控訴人室長がその一部を視聴したものである。 しかし、本件負担金の交付申請の書類(甲2、前提事実)には、目的が本件芸術祭開催に係る経費の執行のためであること、その内容と しては「国際現代美術展国内外の60組程度のアーティストのテーマに沿った作品を美術館やまちなかで展示」などと大まかな概要程度の記載しかないことが認められ、また交付申請の時点(平成31年4月1日)では、本件芸術展のプレスリリースが配付されたのみであり(配付は同年3月27日)、これには、表現の不自由展を開催すること、同展では 2015年の表現の不自由展(前提事実アで説明した内容の展示会)で扱った作品の「その後」に加え、同年以降、新たに公立美術館などで展示不許可になった作品と、不許可になった理由とともに展示する予定であることが記載されていたが、個別の展示作品については記載されておらず(認定事実キ)、平成31年4月16日に本件負担金交付決定 がされた(前提事実)。なお、A3映像作品の展示を芸術監督が決定したのは令和元年5月27日のことである(認定事実タ)。 そうすると、控訴人は、本件不自由展を含む本件芸術祭の概略は上記プレスリリースのとおり説明を受けていたといえる。そして、本件負担金の交付申請は、本件不自由展を含む展示等を内容とする本件芸術祭 の開催にあたっての必要な経費に充てるための負担金の支払いを求める - 14 -申請であり、本件負担金交付決定は、同申請に応じる旨の決定である。 そして、本件芸術祭は開催されており、本件不自由展も上記プレスリリースでの紹介に沿った内容で開催されている。また、既に交付された負担金は、本件芸術祭の開催 交付決定は、同申請に応じる旨の決定である。 そして、本件芸術祭は開催されており、本件不自由展も上記プレスリリースでの紹介に沿った内容で開催されている。また、既に交付された負担金は、本件芸術祭の開催にあたっての経費に充てられている(乙15の3)。したがって、「偽りその他不正な手段」で本件負担金交付決定 を受けていないことは明らかである。 これに対し、控訴人は、展示決定後に芸術監督がそのことを控訴人や被控訴人の担当者らに速やかに告知しなかったこと等を芸術監督の背信的行為とし、それが「偽りその他不正な手段」に相当するように主張するが、上記のとおり、負担金の交付申請において申請された内容で本件 芸術祭が開催され、その負担金が目的どおりその経費に充てられている以上、控訴人の主張は採用できない。 概算払について控訴人は、本判決第2、4アのように、本件負担金交付決定は後日精算が予定された概算払にすぎず、この意味で本件負担金交付決定の負担 金の額は内定額にすぎないなどと主張する。 概算払とは、その支払うべき債務金額の確定前に概算をもって支出することをいい、負担金については概算払をすることができることになっている(地方自治法233条の5第2項、同法施行令162条3号)。概算払は、その性質上、事後において必ず精算を行い、過渡しがあれば返 納をさせ、不足があれば追加支払いをすることを本質とする。 そして、たしかに、証拠(甲3)によれば、本件負担金交付決定の通知書の「2 交付年月」には、「概算払とし、次表のとおり交付する。」旨の記載がある。 控訴人は、概算払にすぎず、この意味で内定額にすぎないから変更する ことが可能であるように主張するが、概算払は上記のとおり過渡し又は - 15 -不足があればそれを精算しな 載がある。 控訴人は、概算払にすぎず、この意味で内定額にすぎないから変更する ことが可能であるように主張するが、概算払は上記のとおり過渡し又は - 15 -不足があればそれを精算しなければならないというものであり、控訴人が主張する事情は、過渡し又は不足の事情ではないし、そもそも本件負担金の未交付部分は概算払としての交付もされていない。そうすると、控訴人の主張は失当である。 本件不自由展が中核的企画であることについて 控訴人は、本判決第2、4イのように、本件不自由展が中核的企画であったことを主張する。 たしかに、本件不自由展が新聞報道の中心であったこと(認定事実ヒ)、本件不自由展の展示を巡って抗議等がされ、展示の一時中止に至ったこと(同、)など、本件芸術祭において、本件不自由展が大き く注目されたことは既に見たとおりである。 しかし、本件不自由展は本件芸術祭の一部であって中核的企画ではないし、それが大きく注目されたからといって、そのことが「事情の変更により特別の必要が生じたとき」にあたる事情ということができないことは明らかである。控訴人の上記主張は採用できない。 被控訴人に生じる不利益について控訴人は、本判決第2、4ウのように、本件負担金を減額変更したとしても、被控訴人に生じる影響はほとんどない旨主張する。 しかし、被控訴人に生じる影響がほとんどなければ控訴人の裁量で「事情の変更により特別の必要が生じたとき」にあたるとして減額決定がで きるようになるわけでもなく、被控訴人に生じる影響の大小を論じるまでもなく、控訴人の上記主張は採用できない。 減額変更をしない場合の社会に及ぼす影響の内容及び程度について控訴人は、本判決第2、4エのように主張する。 控訴人が主張する の大小を論じるまでもなく、控訴人の上記主張は採用できない。 減額変更をしない場合の社会に及ぼす影響の内容及び程度について控訴人は、本判決第2、4エのように主張する。 控訴人が主張する①(本件芸術祭が公共事業であり、本件芸術祭が中核 的企画であること)は、前記イ及び(いずれも補正後)のとおりで - 16 -あって採用できない。②(C作品、A3映像作品及びD作品の3作品がハラスメント作品となり得ること)については、前記ウ及びエで検討したとおりであり採用できない。③(抗議等により地方公共団体の本来の事務機能に支障を来したこと)は、認定事実ア及びオのとおりである。④(本件不自由展の実質的な公開は3日間であること)について は、認定事実及びス、セのとおりであり前提を欠く。⑤(被控訴人代表と控訴人市長とが対立する等の事態を引き起こしたこと)は、これが「事情の変更により特別の必要が生じたとき」にそもそもあたる事情とは認められない。⑥(事前の情報開示等)については、前記及びで判断したとおりであり採用できない。⑦(控訴人の市民からの非難可 能性)について、その前提となっているのは芸術監督が偽りその他の手段により本件負担金交付決定を受けたことであるが、その前提がないことは前記(補正後)で判断したとおりである。以上のとおり、控訴人の上記主張は採用できない。」原判決99頁18行目の「」を「」と改める。 原判決99頁19行目の「前記からまでに」を「前記からまで(いずれも補正後)に」と改める。 原判決99頁21行目の「上記の」を「前記(補正後)の」と改める。 原判決100頁22行目から101頁21行目までを次のように改める。 「総括 以上の検討のとおり、控 原判決99頁21行目の「上記の」を「前記(補正後)の」と改める。 原判決100頁22行目から101頁21行目までを次のように改める。 総括 以上の検討のとおり、控訴人は、本件負担金交付決定の「事情の変更により特別の必要が生じたとき」に該当するとして、本件負担金の未交付部分の支払いを拒むことはできない。 したがって、被控訴人の請求は理由があるから認容すべきである。 第4 結論 よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部 裁判長裁判官松村徹 裁判官入江克明 裁判官溝口理佳
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