- 1 -平成19年12月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成19年(ワ)第16458号損害賠償請求事件平成19年11月21日口頭弁論終結判決東京都港区〈以下略〉原告ソースネクスト株式会社同訴訟代理人弁護士村田珠美同藤勝辰博東京都新宿区〈以下略〉被告株式会社イーフロンティア同訴訟代理人弁護士中村勝彦同高原達広同山本麻記子同後藤一光主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告は,原告に対し,3億5033万0968円及びこれに対する平成19年7月5日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が,被告に対し,被告が標章の使用を取り止め,当該標章が付された製品の回収を合意したにもかかわらず,同合意を守らないと主張して,債務不履行に基づく損害賠償金及び商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めたのに対し,被告が,同合意は回収義務を含まないと主張して,争った事案であ- 2 -る。 前提事実( )当事者 ア原告は,ソフトウェアの製造・販売を主たる業務とする株式会社である。 イ被告は,ソフトウェアの製造・販売を主たる業務とする株式会社である。 (以上,争いのない事実)( )原告商品及び被告商品 ア原告は,コンピュータウィルス等に関するセキュリティー対策ソフト「ウイルスセキュリティZERO」を製造・販売している。 イ被告は,平成19年3月2日,セキュリティー対策ソフト「ウイルスキラーZERO(ゼロ」(以下「被告商品」という。)の発売を開始した。 )(以上,争いのない事実)( )本件合意 ア平成19年3月28日,被告代表取締役A(以下「A」という。)は,原告代表取締役B(以下 (ゼロ」(以下「被告商品」という。)の発売を開始した。 )(以上,争いのない事実)( )本件合意 ア平成19年3月28日,被告代表取締役A(以下「A」という。)は,原告代表取締役B(以下「B」という。)に対し,別紙誓約書記載の誓約書を差し入れた(以下「本件誓約書」といい,それに基づく合意を「本件合意」という。)。 イ回収義務を定める本件誓約書の第2項には,2本の斜め線で大きな×が付されているが,2本の斜め線上には「A」の署名がある。 ,(以上,争いのない事実)( )回収行為の有無 ア被告は平成19年4月1日以降次のイを除き被告商品の商品名につきZ,,,「ERO」というアルファベット表記を使用せず「ウィルスキラーゼロ」という表記で,被告商品を販売している。 イ同年4月当初においては被告の直販部門への指示が徹底されなかったためZ,,「ERO」という表記が使用された被告商品が21本販売された。 ウ被告は,平成19年3月31日までに出荷された「ZERO」という表記が使- 3 -用された被告商品につき,回収行為を行っていない。 (以上,争いのない事実,乙9,弁論の全趣旨) 争点 ( )争点1 回収約束の有無( )争点2 損害 争点1(回収約束の有無)についての当事者の主張( )原告の主張 ア被告は,本件合意により,平成19年4月1日以降「ZERO」を使用し,た被告商品を新たに出荷しないことだけでなく,それ以前に出荷した被告商品についても同月末日までに回収することを約束した。 イ(ア)すなわち,平成19年3月28日の晩,Bは,Aと,赤坂のイタリアンレストラン「C」という店で会食した。 (イ)Cでの会食中,Bは,Aに対し,被告商品の標章の件について,原告が作成した合意書案 ア)すなわち,平成19年3月28日の晩,Bは,Aと,赤坂のイタリアンレストラン「C」という店で会食した。 (イ)Cでの会食中,Bは,Aに対し,被告商品の標章の件について,原告が作成した合意書案(甲6)を示した。 (ウ)Aは,上記合意書案に対し「ZERO」は使用しないが「ゼロ」は使用,,させてほしいこと「ZERO」を使用した被告商品の回収指示を「4月6日」で,はなく,4月「中」にしてほしいこと,回収指示を出す店舗につき「その他ソースネクストが指定した販売店」の部分は,指示を出す店舗の範囲が広くなるので削除してほしいとの訂正を求めた。 (エ)Bは,会社で待機していた原告のD取締役に対し,合意書案にメモしたAの訂正申入箇所を伝えた。 (オ)そして,D取締役が,前記合意書案(甲6)に次の変更を加えて,誓約書(甲4の書き込み前のもの)を作成し,これをCに届けさせた。 ①表題を「合意書」から「誓約書」に変更した。 ,- 4 -②被告が使用しない標章を「ZERO」のみと記載した。 「」「」「」③ZEROを使用した被告商品の回収指示の期限4月6日を4月末日とした。 ④被告が店頭から回収した「ZERO」を使用した被告商品について,流通会社との間で返品が制限されていたとしても返品を受け付けなければならないという箇所は削除した。 ⑤被告からの「誓約書」としたので,合意書の義務が遵守された場合には,原告は法的措置をとらない旨の原告の義務条項は削除した。 (カ)誓約書案に対し,Aは,誓約書案(甲4)の第2項中の「その他ソースネクスト(注:原告)が指定した販売店」の部分について,回収指示の範囲が不明確になるので,確実に実施することができるか自信がないと主張した。 (キ)Bは,誓約書案(甲4)の第1項に「今後一切使用しませ スト(注:原告)が指定した販売店」の部分について,回収指示の範囲が不明確になるので,確実に実施することができるか自信がないと主張した。 (キ)Bは,誓約書案(甲4)の第1項に「今後一切使用しません」という記載が,,,ありこの記載に第2項にいう回収が包含されると考えたのでAともめるよりも必ず回収するというAの言葉を信じて第2項の削除に応じることとした。 (ク)その後,Aは,前提事実( )イのとおり2本の斜め線の上に署名をして,い ったん記載した2本の削除線を削除した。 ( )被告の主張 ア原告の主張アは否認する。 イ(ア)同イ(ア)は認める。 (イ)同イ(イ)は認める。 (ウ)同イ(ウ)は否認する。 (エ)同イ(エ)は不知。 (オ)同イ(オ)は,④は否認し,その余は認める。④の内容は合意書案(甲6)にも記載がない。 (カ)同イ(カ)は否認する。 (キ)同イ(キ)は否認する。 - 5 -(ク)同イ(ク)は否認する。 ウ会食の席上,Bが突如合意書案(甲6)を取り出し,Aに対して「これに署名してくれるまでは帰さないぞ」等と言い,社に持ち帰って検討したい旨申し出た。 Aに対して「この場で署名しろ」等と言って,執拗に署名を迫った。 ,。 Aは,合意書案の内容は被告商品の販売に多大な影響を及ぼし,また,現実に対応することが不可能であるので,何度か署名を拒んだところ,Bは,自ら本件誓約書(甲4)の第2項を削除した上で「これなら署名できるだろう」と言いながら,,。 更に署名を迫った。 被告は,原告に対して,平成19年3月23日,被告の保有していたソフトウェア「筆王」の著作権及び商標権を8億円で売却することに合意しており,この売却代金のうち7億円が同月末日までに入金される予定であった。 Aは「筆王」についての上記大型取引 ,被告の保有していたソフトウェア「筆王」の著作権及び商標権を8億円で売却することに合意しており,この売却代金のうち7億円が同月末日までに入金される予定であった。 Aは「筆王」についての上記大型取引の成立直後であり,またその入金日が目,,,前に迫っていたこともあり原告との関係をなるべく良好に保ちたいとの思いからアルファベットをカタカナ表記に変更するだけであれば,譲歩して受け入れることもやむを得ないと考え,本件誓約書(甲4)に署名したものである。 ,。 削除した第2項の斜め線上のAの署名は削除を確認する趣旨でしたものである,,削除線を更に削除することによって記載内容を復活させることは契約の実務では通常ではあり得ないことである。 争点2(損害)についての当事者の主張( )原告の主張 ア対策費用原告は,平成19年4月1日以降の「ZERO」を使用した被告商品の販売継続に関する対応策として,多数のラウンダーを販売店に派遣するとともに,販売店のリベート増額請求や仕切価格の見直請求等に応ぜざるを得なくなり,別紙対策費用明細に記載のとおり,2億0712万3782円の出費を余儀なくされた。 イ逸失利益- 6 -また,原告は,ウイルスキラーZEROの販売継続によって,ウイルスセキュリティーZERO5万3959個の販売機会を失い,逸失利益1億4320万7186円の損害を被った。 ウ合計よって,原告の被った損害額は,合計3億5033万0968円となる。 ( )被告の主張 原告の主張は否認する。 第3当裁判所の判断 争点1(回収約束の有無)について( )原告は,被告は本件合意により既に出荷済みの「ZERO」を使用した被告 商品を平成19年4月末日までに回収することを約束した旨主張し,それに沿うBの陳述書(甲7)を 収約束の有無)について( )原告は,被告は本件合意により既に出荷済みの「ZERO」を使用した被告 商品を平成19年4月末日までに回収することを約束した旨主張し,それに沿うBの陳述書(甲7)を提出する。 ,,,( )しかしながらBの陳述書(甲7)は次の理由により採用することができず 他に原告主張事実を認めるに足りる証拠はない。 ア反対趣旨のAの陳述書(乙9)がある。 イ(ア)ビジネス上の合意の解釈に当たっては,そこで取り決められた事項が大きな経済的影響を有し,さらに,合意事項を明確に書面化しておくことが可能であり,また,取引の実務においても重要事項は書面で明確に規定されていることが多いものであるから,合意内容の裁判上の認定においても,書面の有無及び規定内容が重視される。 (イ)本件では,回収義務を明示した本件誓約書(甲4)の第2項が2本の斜め線で削除されているから(前提事実( )イ),本件誓約書からは,回収義務は定められな かったと解釈する方が自然である。 (ウ)原告は,Aが2本の斜め線上に「A」の署名をしたことをもって,2本の削除線を削除した旨主張するが,そのように解することは到底できない。 結論 - 7 -,,,よって原告の請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官市川正巳裁判官大竹優子裁判官宮崎雅子
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