平成21(ネ)10020 職務発明の対価請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成21年11月26日 知的財産高等裁判所 2部 判決 原判決変更 大阪地方裁判所 平成18(ワ)7529
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判決文本文246,638 文字)

判決言渡 平成21年11月26日 職務発明の対価請求控訴事件 平成21年(ネ)第10020号判決 一審原告X 一審被告マルコ株式会社 知的財産高等裁判所第2部 目次 当事者 主文 第1当事者の求めた裁判 一審被告マルコ株式会社 一審原告X 第2事案の概要 第3当事者の主張 当審における一審被告の主張 (1)争点(1)(本件発明1の発明者は一審原告のみか)について (2)争点(2)(本件発明2の発明者は一審原告のみか)について (3)争点(3)(HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合)について (4)争点(4)(独占の利益が発生する時期)について (5)争点(5)(HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法)について (6)争点(6)(本件各特許の無効理由の存否とその相当対価の額への影響の有無・程度)について (7)争点(7)(仮想実施料率)について (8)争点(8)(一審被告の貢献)及び争点(9)(一審原告の処遇)について (9)当審における争点(10)(当審における請求拡張の適否)について (10)当審における争点(11)(中間利息控除の可否)について (11)当審における争点(12)(遅延損害金の起算日)について 当審における一審原告の主張 (1)争点(1)(本件発明1の発明者は一審原告のみか)について (2)争点(2)(本件発明2の発明者は一審原告のみか)について (3)争点(3)(HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合)について (4)争点(4)(独占の利益が発生する時期)について (5)争点(5)(HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法)について 争点(3)(HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合)について 争点(4)(独占の利益が発生する時期)について 争点(5)(HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法)について 争点(6)(本件各特許の無効理由の存否とその相当対価の額への影響の有無・程度)について 争点(7)(仮想実施料率)について 争点(8)(一審被告の貢献)について 争点(9)(一審原告の処遇)について 当審における争点(10)(当審における請求拡張の適否)について 当審における争点(11)(中間利息控除の可否)について 当審における争点(12)(遅延損害金の起算日)について 第4当裁判所の判断 当裁判所の判断の大要 争点(1)(本件発明1の発明者は一審原告のみか)について (1)はじめに (2)本件発明1の発明に至る経緯等 (3)本件発明1の技術的思想 (4)本件発明1の発明者 争点(2)(本件発明2の発明者は一審原告のみか)について (1)はじめに (2)本件発明2の発明に至る経緯等 (3)本件発明2の技術的思想 (4)本件発明2の発明者 争点(3)(HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合)について 争点(4)(独占の利益が発生する時期)について 争点(5)(HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法)について (1)HMS商品の売上実績と販売促進活動につき (2)HMSメジャーないしHMS商品の「根本的欠陥」につき 争点(5)(HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法)について (1)HMS商品の売上実績と販売促進活動につき (2)HMSメジャーないしHMS商品の「根本的欠陥」につき (3)HMS商品の利益率につき (4) 結論 争点(6)(本件各特許の無効理由の存否とその相当対価の額への影響の有無・程度)について 争点(7)(仮想実施料率)について 争点(8)(一審被告の貢献)及び争点(9)(一審原告の処遇)について (1)本件各発明の完成に対する一審被告の貢献の程度 (2)本件各発明完成後の一審被告の貢献の程度 (3) 結論 当審における争点(10)(当審における請求拡張の適否)について 当審における争点(11)(中間利息控除の可否)及び争点(12)(遅延損害金の起算日) 相当対価の額 結論 - 5 -平成21年(ネ)第10020号職務発明の対価請求控訴事件(原審・大阪地裁平成18年(ワ)第7529号。以下,マルコ株式会社控訴に係る部分(大阪地裁平成21年(ワネ)第138号)を「A事件」,X控訴に係る部分(大阪地裁平成21年(ワネ)第147号)を「B事件」という。)口頭弁論終結日平成21年11月17日判決A事件控訴人・B事件被控訴人マルコ株式会社(一審被告)訴訟代理人弁護士奥田孝雄同池下利男A事件被控訴人・B事件控訴人X(一審原告)訴訟代理人弁護士東野修次同飯島歩同生沼寿彦同中山務同栗山貴行補佐人弁理士横井知理主文 A事件控訴人マルコ株式会社の控訴を棄却する。 B事件控訴人Xの控訴及 次同飯島歩同生沼寿彦同中山務同栗山貴行補佐人弁理士横井知理主文 A事件控訴人マルコ株式会社の控訴を棄却する。 B事件控訴人Xの控訴及び当審における請求拡張に基づき,原判決を次のとおり変更する。 (1)一審被告マルコ株式会社は,一審原告Xに対し,5537万円及びこれに対する平成18年8月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)一審原告Xのその余の請求を棄却する。 - 6 - 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを4分し,その1を一審被告マルコ株式会社の負担とし,その余を一審原告Xの負担とする。 この判決の第2項(1)は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 一審被告マルコ株式会社(控訴の趣旨[A事件])(1)原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 (2)一審原告の請求を棄却する。 (3)訴訟費用は,第1,2審とも,一審原告の負担とする。 一審原告X(控訴の趣旨[B事件]と当審で拡張した請求)(1)原判決を次のとおり変更する。 (2)一審被告は,一審原告に対し,2億円及びこれに対する平成13年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3)訴訟費用は,第1,2審とも,一審被告の負担とする。 (4)仮執行宣言なお,当審における請求拡張は,(2)の附帯請求の起算日を,「平成14年2月17日」から「平成13年6月1日」に繰り上げた部分である。 第2事案の概要【以下,略称は原判決の例による。】 一審被告は,体型補整用婦人下着の製造販売等を事業内容とする株式会社である。 一審原告は,平成12年6月に一審被告に入社し,平成18年7月まで在職した者である。その間,平成14年11月から平成17年11月まで ,体型補整用婦人下着の製造販売等を事業内容とする株式会社である。 一審原告は,平成12年6月に一審被告に入社し,平成18年7月まで在職した者である。その間,平成14年11月から平成17年11月まで一審被告の取締役を務めている。 本件訴訟は,原審においては,一審原告が一審被告に対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条(以下,同条について「旧35条」とい- 7 -う。)3,4項に基づき,一審原告が一審被告に承継させた下記の特許権(本件特許権1及び本件特許権2。これらを併せて「本件各特許権」という。また,その特許発明をそれぞれ「本件発明1」,「本件発明2」といい,これらを併せて「本件各発明」という。)について,相当対価の内金5億円及びこれに対する平成14年2月17日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 〈注〉平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3,4項は,次のとおりである。 3項:従業者等は,契約,勤務規則その他の定により,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ,又は使用者等のため専用実施権を設定したときは,相当の対価の支払を受ける権利を有する。 4項:前項の対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。 記(1)本件特許権1①登録番号第3652251号②出願日平成13年1月16日③公開日平成14年7月31日④登録日平成17年3月4日⑤発明者X(一審原告)⑥出願人マルコ株式会社(一審被告)⑦発明の名称カップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式ただし,上記特許権は,一審被告の取締役であったZが X(一審原告)⑥出願人マルコ株式会社(一審被告)⑦発明の名称カップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式ただし,上記特許権は,一審被告の取締役であったZが請求人としてなした特許無効審判請求により無効審決がなされ,平成21年1月9日に確定し- 8 -た。 ( )本件特許権2 ①登録番号第3692084号②出願日平成14年2月13日③公開日平成15年8月27日④登録日平成17年6月24日⑤発明者X(一審原告)⑥出願人マルコ株式会社(一審被告)⑦発明の名称衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式ただし,上記特許権は特許料未払いのため平成20年6月24日消滅した。 原審の大阪地裁は,平成21年1月27日,要旨「本件各発明を使用したHMS商品の売上げのうち本件各発明が寄与した額は,37億5502万3672円であるところ,仮想実施料率は3%,本件各発明に関する一審被告の貢献度は80%と認めるのが相当であるから,本件各発明についての特許を受ける権利承継の相当対価の額は,2253万0142円と認められる。」として,一審原告の請求を,2253万0142円及びこれに対する平成18年8月2日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容した。 これに対し,一審被告は,一審原告の請求の棄却を求めて控訴を提起し(A事件),一方,一審原告も,上記判決を不服として控訴を提起した(B事件)。 なお,一審原告は,当審係属中の平成21年9月24日に至りその請求を拡張し,上記2億円に対する年5分の割合による遅延損害金の起算日を「平成14年2月17日」から「平成13年6月1日」に繰り上げた。 - 9 - 当審における争 平成21年9月24日に至りその請求を拡張し,上記2億円に対する年5分の割合による遅延損害金の起算日を「平成14年2月17日」から「平成13年6月1日」に繰り上げた。 - 9 - 当審における争点は,原審における争点(1)ないし(9)のほか,(10)一審原告のなした当審における請求拡張の適否(11)中間利息控除の可否(12)遅延損害金の起算点である。 第3当事者の主張当事者双方の主張は,次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」中の「第2事案の概要」及び「第3争点に関する当事者の主張」記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における一審被告の主張(1)争点(1)(本件発明1の発明者は一審原告のみか)について原判決は,本件発明1の発明に至る経緯を認定した上で,本件発明1の発明者を一審原告のみであるとしている。しかし,以下のとおり,原判決で認定された発明に至る経緯は,事実認定を誤っており,それを前提とした本件発明1の発明者が一審原告のみであるという認定も不当なものである。 ア採寸表の作成につき原判決は,一審被告において使用されていたオーダー表について,「…原告は,…平成11年8月,被告のオーダー表を元にブラジャーの採寸表の原案(甲33の1・2)を作成した。なお,当時,被告では,バージスサイズの計測が行われていなかったため,オーダー表の採寸項目にバージスサイズは入っておらず,したがって,原告が作成した採寸表の原案にも同サイズは入っていない。」と認定している(59頁7行~12行)。 しかし,平成11年8月当時,一審被告においてバージスサイズの計測が行われていなかったという点については,事実ではない。バージスサイズについては,カップくりという名称(バージスという名称で呼ばれる以前は,業界ではカップくりといわ 被告においてバージスサイズの計測が行われていなかったという点については,事実ではない。バージスサイズについては,カップくりという名称(バージスという名称で呼ばれる以前は,業界ではカップくりといわれるのが一般的であった。)で計測を行- 10 -っていた。これは,例えば平成11年8月18日付けの生産依頼書における①の「カップとカップくりはF95」との記載(乙126),平成11年8月31日付け生産依頼書における「アンダー85サイズ,E90のわくで…」との記載(「E90のわくで」とは,「バージスをE90のサイズで」という意味である。乙127),平成11年9月2日付け生産依頼書における「1.カップくりE85OK」との記載及び「9/27CtelカップくりはC80」との記載(乙128),平成11年9月4日付け生産依頼書における「1)カップのみBとする。カップくりC80でOKアンダー75とする」との記載(乙129)等に表れている。そもそもオーダー表(甲33~35・枝番を含む)を作成したのは一審原告ではなく,当時一審被告の社員であったC(以下「C」という。)である(乙130[Cの陳述書])。 一審原告は,一審被告のオーダーメイド事業に深く関与していたかのように主張しているが,入社前においては,旭化成のCAD(ComputerAidedDesign)のインストラクターとして週に1,2回程度,1日2~3時間程度に来ていただけであり,CADのルール化を行う作業を行っていたに過ぎない。平成11年12月には一審原告が一審被告に入社するということになっていたため(実際の入社は平成12年6月であるが,これは一旦一審原告が一審被告への入社を断ったためである),会議への出席等により知識の共有化を図ってはいたが,採寸を行っている現場の者とのやりとりや,そこか め(実際の入社は平成12年6月であるが,これは一旦一審原告が一審被告への入社を断ったためである),会議への出席等により知識の共有化を図ってはいたが,採寸を行っている現場の者とのやりとりや,そこからどのようにして採寸について共通化していくかといったことは,主としてCが試行錯誤しながら行っていた。Cは,同人が作成したブラジャーチェック方法という文書で平成11年12月16日に第二生産部の会議において,ブラジャーのオーダーの手順の統一化を図る方法を説明している(乙131)。また,この際にバージスサイズ(カップくり)から測るために,ブラジャーに使用されているワイヤーがどのサイズ- 11 -で使われているかを一覧表にした〈ワイヤー寸法一覧表〉を作成して配布している(乙132)。 イ「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の提案につき原判決は,一審原告が,出来上がり商品を体感することができないこと,ボディメイク(体型補整)の効果も十分発揮できないことなどの問題があることを認識し,下着のオーダーメイドのあるべき方向性として,単に身体に合わせるだけではなく,ボディメイクが必要であると考え,これを自ら「メジャー・アンド・メイク・オーダー」と呼び,平成11年8月に,CADの効率的な利用のための対策について一審被告役員から意見を求められた際に,甲37(「AGMS-CADシステムでの協力とお願い」)を用いて,採寸項目の選定,グレーディングルールの作成等について説明するとともに,目指すべきオーダーメイドの方向性について,「メジャー・アンド・メイク・オーダー」という言葉を用いて上記のような考え方を伝えた,と認定している(59頁14行~下1行)。 しかし,この認定を支える証拠は甲37に記載された「2,メジャー・アンド・メイク・オーダー」という一語と一審原告の陳 言葉を用いて上記のような考え方を伝えた,と認定している(59頁14行~下1行)。 しかし,この認定を支える証拠は甲37に記載された「2,メジャー・アンド・メイク・オーダー」という一語と一審原告の陳述書しか存在しない。そもそも甲37を用いて当該時期に一審被告の役員に説明を行ったという主張自体が疑わしいものであるが,甲37全体の記載を詳細にみればこの認定が誤りであることが理解できる。すなわち,甲37は,それまで行っていたメジャー=テープメジャーでの採寸では,採寸ミスが多くなることから,オーダーを二つに分けたシステムの提案を行うというものであって,「メジャー・アンド・メイクオーダー」とは,従来から行っていたテープメジャーでの採寸を行って,補整下着をオーダーする方法を指していると考えるのが妥当である。甲37は,「パターンを作成するシステム作りの提案」であり,「AGMS-CADシステムでの協力とお願い」であって,当時納品遅れが問題となっていて,それを解消するためにCA- 12 -Dをどのように有効活用すべきかを聞かれた一審原告が,それを説明する場で,「出来上がり商品を体感することができないこと,ボディメイク(体型補整)の効果も十分発揮できないことなどの問題があること」を指摘し,下着のオーダーメイドのあるべき方向性として「単に身体に合わせるだけではなく,ボディメイクが必要であること」を,一審被告の役員に対して説明するというのは不自然極まりない。 ウ「バージス」の重要性についての認識につき原判決は,一審原告が平成11年9月22日に一審被告第二生産部の部内会議に出席し,甲62を用いてバージスの重要性の説明を行い,その後一審被告のオーダー表に「カップくりサイズ」の項目が加えられたと認定している(60頁7行~下5行)。 しかし,上記アで述べたと の部内会議に出席し,甲62を用いてバージスの重要性の説明を行い,その後一審被告のオーダー表に「カップくりサイズ」の項目が加えられたと認定している(60頁7行~下5行)。 しかし,上記アで述べたとおり,一審被告においては,それ以前からカップくり(バージス)を計測しており,その重要性は認識されていたし,平成11年9月9日に一審被告の社員であるD(以下「D」という。)がデューブルベのバージスメジャーを体験しており,同月13日付けで報告書を作成している(乙54の1)。Cの陳述書(乙130)によれば,Dが平成11年9月21日の第二生産部会議でデューブルベの体験発表をしたと記憶しているとのことであり,一審被告の費用でセミオーダーシステムであるデューブルベを体験しに行った社員のDが,オーダーメイドを行っていた第二生産部の会議においてその体験を説明するのは自然である。 これに対し,一審原告の主張によれば,バージスの重要性に全く気づいていなかった一審被告の第二生産部員に対して,部内会議でその重要性を説明し,それがいきなり採用されてオーダー表に「カップくり」という欄がトップ項目に持ってこられ,「カップくり」を計測することが手順として確立されたということになる。一審原告は,顧客相手に実際に採寸してオーダーをとることも,出来上がったオーダーメイド下着のフィッティング- 13 -をすることも行っていないし,実際の個々のパターンを作成することもしていなかった。このような一審原告がいきなり「カップくり」から測りなさいと主張したからといって,直ちにそのとおりになるものではない。現場で実際に採寸し,オーダー表に記入し,そのオーダー表について問合せを行い,確認の上でパターンを作成し,それでもサイズ違いや不具合が起こるという現実の中で,どのような手順で採寸していけば はない。現場で実際に採寸し,オーダー表に記入し,そのオーダー表について問合せを行い,確認の上でパターンを作成し,それでもサイズ違いや不具合が起こるという現実の中で,どのような手順で採寸していけば顧客の満足が得られるか,採寸ミスが減少することにより作り直しを減らせるかを試行錯誤する中で,「カップくり」から測るという手順が確立され,この項目がオーダー表のトップに記載されるようになったのである。 エ本件発明1に至る着想及びその具体化につき本件発明1に至る経緯について原判決の認定は,経験則に反する不合理な一審原告の主張に則っており,このような誤った前提事実に基づいてなされた本件発明1に至る着想及びその具体化についての認定も誤ったものである。 この点,原判決は一審被告の主張を退けているが,上記のとおり,①一審被告では,カップくり(バージス)を,サンプルのブラジャーを当てて計測することが確立されていたこと,②一審被告の社員であるDがデューブルベの体験に行き,計測器具を用いて計測していることを説明していること(バージスメジャーだけでなくゲージブラを用いての計測についても説明している),③当時一審被告では採寸する者の個人差をなくし,採寸ミスを減らすということが大きな課題となっていたこと(特にオーダーメイド事業を立ち上げるために招聘され当時担当部長であったEにとっては大きな課題であった)からすれば,デューブルベの体験を聞いた一審被告の第二生産部において,計測器具を作ろうという意識が生まれるのは自然な流れである。そして,一審被告のオーダーメイド事業の立ち上げから協力し,オーダーメイドのパターン作成にも指導を行った上に製品を作成し- 14 -ていた広瀬工業のFが,当時すでにオーダーメイド商品の一つである膝下ガードルではパーツの作り置きを行っていた げから協力し,オーダーメイドのパターン作成にも指導を行った上に製品を作成し- 14 -ていた広瀬工業のFが,当時すでにオーダーメイド商品の一つである膝下ガードルではパーツの作り置きを行っていたこと(乙67の1・2)も踏まえて,ブラジャーについてもサイズがある一定の幅に集中していることに気づき作り置きを提案することも十分にあり得ることである。そして,同人が一審被告の第二生産部においてデューブルベの体験から計測器具を作るべきとの意見が出たことについて,一審被告独自のものを作らないといけないというアドバイスを行ったことも,それまでの同人の協力からすればごく自然なこととして首肯できるものである。さらに,平成12年11月16日に一審原告が大島特許事務所に赴いた際に持参した一審原告作成の「明細書」と題する書面(乙135)によれば,一審原告が実用新案登録請求程度のものであると考えていたこと,及び,実際にはどのような発明かを一審原告自身把握しておらず,箇条書き程度の記載しかできなかったことが分かる。そして,一審原告が作成したこの書類には,【考案が解決しようとする課題】に「(A)計測場所へ計測サンプルをたくさん運ぶ必要がある。」,【考案の効果】に「(A)計測サンプルのコンパクト化により移動が容易になる。」との記載がある。これは当時一審被告において,実際にオーダーメイドの計測を行っていた第二生産部員の問題意識,すなわち部員が運ぶ計測サンプルはコンパクトなものの方がよいという要望(原審におけるG証人の尋問調書8頁)が反映された記載であり,この点でも本件発明1が一審被告が当時置かれていた状況から開発されたものであって,一審原告が独自に行ったものではないことが分かる。 なお,原判決は甲26,27を一審原告が作成し,検討したと認定している。甲26(サンプ 1が一審被告が当時置かれていた状況から開発されたものであって,一審原告が独自に行ったものではないことが分かる。 なお,原判決は甲26,27を一審原告が作成し,検討したと認定している。甲26(サンプル分布表),27(サイズ表)の作成時期,作成意図については一審被告としては不明ではあるが,仮にこれが一審原告の着想に寄与していたとした場合,この表の作成の元となった数字は,一審被告におけるオーダーメイドの受注人数に他ならない。 - 15 -また,原判決はCADを用いてグレーディングを行い,試作品を作成したとしているが,甲63(パターンファイルシート)が一審原告の作成したものであったとしても,その元となるCADデータは一審被告が有していたものであり,試作品についても一審被告の商品をもって行ったものに他ならない。 このように,本件発明1は,一審被告におけるオーダーメイド事業が存在し,その試行錯誤の中で,カップくり(バージス)から計測するという手順が確立され,他方,採寸する者の個人差による採寸ミスをなくし,また,計測用のサンプルの少量化,軽量化という必要性から,オーダーメイドの延長線上で生み出されたものに他ならないのである。 オ本件発明1の技術的思想の本質的部分につき原判決は,本件発明1の技術的思想の本質的部分について,「…顧客のバージスサイズ及びカップ高さにフィットしたカップ受部とカップ部を容易に選定することができ,あらかじめそのフィット感を確認できる構成,すなわち『バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップサイズを変えた複数のカップ受部との組合せ』からなる構成とした点にあるものと認められる。」としている(69頁9行~14行)。 しかし,本件発明1がこのような構成をとるのは,このような構成の計測用サンプルを 変えた複数のカップ受部との組合せ』からなる構成とした点にあるものと認められる。」としている(69頁9行~14行)。 しかし,本件発明1がこのような構成をとるのは,このような構成の計測用サンプルを試着することによって,着用者にフィット感を確認した上で注文することができるということを目的とし,作用効果にもこの点が明記されている(本件特許1の明細書[甲1]段落【0008】,【0018】,【0019】,【0036】~【0038】)。とすれば,本件発明1の技術思想の本質的部分は,上記構成に加えて,試着可能で着用者においてフィット感を確認可能な計測用サンプルであること又はそのような計測用サンプルで計測することによるオーダーメイド方法であると解すべ- 16 -きである。HMSメジャーの試作品を最初に作ってきたのは一審原告である。しかし,それは試着可能で着用者においてフィット感を確認可能な計測用サンプルではなかった。一審原告が作成した試作品は,カップと前身がスナップで,前身と後ろ身がマジックテープで接合されたものであり,いずれも外れたり,はがれたりして,着用者においてフィット感を確認できるような計測用サンプルではなかった(乙72[Gの陳述書])。この点,一審原告は,自宅で試作を行い,カップと前身,前身と後ろ身をそれぞれマジックテープで留めたものを作成し,自分の子供(男の子)に着用させて試験を行い,前身と後ろ身の接合が外れるのでフックに変えたと陳述している(甲79[一審原告の陳述書])。しかし,一審原告の陳述は,全てを一人で行ったといういわば手柄を独り占めするという傾向が顕著であり,信用することができないものである。乳房がなく,体型も異なる男性で着用感を試したとすること自体,その主張の信用性を欠くものである。そして,一審原告は,自分が作った試作 めするという傾向が顕著であり,信用することができないものである。乳房がなく,体型も異なる男性で着用感を試したとすること自体,その主張の信用性を欠くものである。そして,一審原告は,自分が作った試作品については第二生産部員には特許出願まで見せていないようにしたと主張しているが,平成12年10月20日付け一審原告作成の「第1回オーダー研究会報告書」(乙59の1の1)に「A既存サンプルの修正方式からBオーダーサイズ組み合わせ方式の考え方の説明」との記載がある。この当時,オーダーサイズ組み合わせ方式とは,一審原告が作ってきた試作品以外にはあり得ない。 このときに出された提案を元にカップ部と前受部をマジックテープとし,前受部と後ろ身の接合をフックとすることが第二生産部員から提案され,着用者においてフィット感を確認できるような計測用サンプルとして構成されていくのである。 カ本件発明1の発明者につき以上のように,本件発明1は,一審原告が単独で着想し,完成させたものではなく,バージスサイズを基本として計測するというコンセプトが一- 17 -審被告において既に確立しており,バージスサイズ計測後,アンダーバスト,カップ高さと順に決めていくという手順が決まっていたこと,計測器具を作成しなければならないという必要性が存在していたこと,納期遅れ解消のためにブラジャーの各パーツを作り置きしておけばどうかという広瀬工業のFの提案がなされていたことという事実が存在し,パーツを切って取り替えられるようにした,いまだ実用にはほど遠い一審原告の試作品について,経験豊富な第二生産部員が試着の上で,フィット感を確認できるようなものとすることによって,本件発明1が完成したのである。 このような本件発明1が実現可能なものとして出来上がっていく経緯からすれば,本件発明1の発 二生産部員が試着の上で,フィット感を確認できるようなものとすることによって,本件発明1が完成したのである。 このような本件発明1が実現可能なものとして出来上がっていく経緯からすれば,本件発明1の発明者を一審原告のみとした原判決の認定は誤りであり,一審被告が従前主張していた広瀬工業のFのみならず,オーダー研究会に出席していたH,I,J,K,G(G),L,M,N,O,P,Q,S(S),Tらも本件発明1の完成に寄与したものであり,これらのものも発明者に他ならない。 (2)争点(2)(本件発明2の発明者は一審原告のみか)についてア本件発明2の発明に至る経緯につき原判決は,本件発明2の発明に至る経緯につき,一審原告が単独でガードルについて検討を行い,「ヒップカップという考えに思い至」り,「…このヒップカップという考え方を応用した技術を実現するためには,ヒップトップ部と大腿部の差を調節できるようにする必要があるところ,原告は,大腿部のサイズを調節することにより,これを実現できること,そして,ヒップカップの調節・採寸のためには,大腿部の調節がもっとも重要であることを認識するに至った。そこで,原告は,このような調節を可能にするため,大腿部に切り替え線(切り込み)を入れ,この部分にマジックテープを付けて,スライドさせることにより,ヒップカップサイズを調節すること,この切り込み部分に目盛りを付けることを考えついた。そし- 18 -て,このようにしてヒップカップサイズを計測した後,ウエストの計測も同様の方法により行うこととした。」(74頁16行~下2行)とし,「原告は遅くとも平成13年8月8日までに,以上の考えを盛り込んだ甲71号証のパターン(品番Y-GのLパターン)を作成した…。」(74頁下1行~75頁2行)と認定し,その上で必要となる部材の選 し,「原告は遅くとも平成13年8月8日までに,以上の考えを盛り込んだ甲71号証のパターン(品番Y-GのLパターン)を作成した…。」(74頁下1行~75頁2行)と認定し,その上で必要となる部材の選定についても一審原告が単独で行った,と認定している。 しかし,以下に述べるとおり,この認定は誤りである。 (ア)一審原告が単独でガードルについて検討を行ったという点について,原判決は,「まず,原告は,JIS規格ではウエストを基準としてサイズ設定がされており,また,ガードルのヒップ部が十分な体型補正効果が発揮できていないという既存のガードルに対する前記問題意識に基づき,JIS規格のサイズ表示を利用せず,ヒップを中心とした独自の規格を採用した。」(74頁2行~5行)と認定している。 しかし,オーダーメイドは,そもそもJIS規格を基準とはしていない。JIS規格を基準とするのであれば,個々人のサイズを測ってそれに合わせたオーダーメイドを作るということは,無意味である。さらに,一審被告では,オーダーメイドのガードルの採寸の際には,ヒップを基準にガードルの試着サンプルを選んでおり(平成11年12月16日の第二生産部の部内会議の資料[乙133]),ウエストを基準とするというJIS規格の考え方をとっておらず,一審原告がヒップサイズを基準とすべきと考えたとすれば,それは一審被告で行われていたことをそのまま採用したに過ぎない。 (イ)原判決は,「…原告は,…ウエスト部の体型についてX体型,H体型,O体型,また,ヒップカップ部についてW体,I体,M体等という独自の分類を創作し,これに従ってアルファベット表記した『体型分類』という考え方を考案した。原告は,本件発明1に関して弁理士に特許- 19 -出願の相談をした平成12年11月16日までにこの『体型』の考え方 を創作し,これに従ってアルファベット表記した『体型分類』という考え方を考案した。原告は,本件発明1に関して弁理士に特許- 19 -出願の相談をした平成12年11月16日までにこの『体型』の考え方をまとめたノート(甲29)を作成し,同日これを弁理士のもとに持参した。」と認定している(73頁17行~24行)。 しかし,この認定の前提となる証拠は,一審原告の陳述書しか存在せず,このような陳述書を基に行った事実認定は誤りである。 一審原告が平成12年11月16日に大島特許事務所に赴いた際に甲29(ガードルオーダー表)を持参した事実はない。当日,一審原告とともに一審被告の社員であるU(以下「U」という。)が担当者として大島特許事務所に赴いており,当時の資料を保管しているが,当日持参したものは,乙135(明細書)のみであって,甲29は存在せず,また,大島特許事務所にも甲29は保管されていない。当日はブラジャーに関しての話がなされただけであって,ガードルやそれに関する体型の話など出ていない。さらに,乙136(明細書)は,平成13年11月16日に本件発明2の出願を大島特許事務所に依頼に行く際に持参した一審原告が作成した「明細書」と題する書面と添付資料であるが,当日持参したのはこれのみであって,このときにも甲29のような書類は提出されていない。 甲29は,本件発明2が出来上がり,HMSガードルのマニュアルを作成する段階で体型についてどのように説明するかということを検討していく際に出来上がったものであって,本件発明2の開発とは全く関係のないものである。 (ウ)一審原告の考えを盛り込んだという甲71(パターンファイルシート)のパターン図から,原判決が認定しているヒップと大腿部の切り込みやそれに付けるマジックテープ,ウエスト部分の切り込みやそれに付け )一審原告の考えを盛り込んだという甲71(パターンファイルシート)のパターン図から,原判決が認定しているヒップと大腿部の切り込みやそれに付けるマジックテープ,ウエスト部分の切り込みやそれに付けるマジックテープを読み取ることはできない。この点,一審原告がブラジャーにおいてCADでパターンを作成したと主張する甲63にマジ- 20 -ックテープと思われる記載があるのとは好対照である。そして,一審原告は,平成13年8月2日に広瀬工業に赴いてサンプルの作成依頼を行って,甲71を送付したとしている(原審における原告本人尋問調書56頁)。ところが,一審原告によれば,広瀬工業はせっかく送付を受けた甲71でサンプルを作らずに,Fが独自にこれまで一審被告が作っていたガードルとはコンセプトの異なるガードルのパターンを作成して送ってきたという(同調書59頁)。そして,それについて問いただすこともなく,怒ることもなく唯々諾々と自分が送付したパターン図を無視して作成されたパターン図をもとに第二生産部の部員がHMSガードルの検討を行うことを,黙って見ていたというのである(同調書60頁)。しかも,その原因は,特許出願を行うので秘密にしなければいけないと思ったからということなのであるが,他方で一審被告以外のものと取引を行っているセイブ繊維の担当者には,本件発明2の出願前に使用方法を説明した上でマジックテープの注文を行っていたというのであって(同調書60頁),矛盾だらけの説明を行っている。また,甲71のY-GLなるパターン図では,そもそもサンプルを作成することができない図面にすぎず,このような図面でサンプルの作成を依頼することはあり得ない。 (エ)さらに,①経験豊富な広瀬工業のFが送付されてきた図面の意図を読み取れないということ自体が考えられず,②当時一審被 い図面にすぎず,このような図面でサンプルの作成を依頼することはあり得ない。 (エ)さらに,①経験豊富な広瀬工業のFが送付されてきた図面の意図を読み取れないということ自体が考えられず,②当時一審被告のHMSブラジャーの生産を行っていた広瀬工業のFが,第二生産部においてHMSガードルの開発を行っているということが分からないということも考えられないし,③当時一審被告のHMS開発責任者であった一審原告から,パターン図を渡されてサンプルの製作を依頼された広瀬工業が,そのパターン図を使ってサンプルを作ることができるにもかかわらず,異なる図面をわざわざ手書きで引いて返してくるということも考えられな- 21 -い。 (オ)これに対し,一審被告は,本件発明2の開発経緯について,当時HMSブラジャーの開発が一段落した後の平成13年6月ころからガードルの開発にかかったもののどのように開発していったらよいかがわからずに,平成13年8月2日に広瀬工業に依頼し,その後同社のFからパターン図の提供を受けてサンプルを作成し,それを一審被告の社内で検討を行って,そのサンプルのウエストの部分に切り込みを入れ,面テープを付けて調節可能にして平成13年10月23日に試着会を行い,さらにパターンを改良し,また,脚口の切れ込み部位についても検討した上で,ウエスト部と脚口に切れ込みを入れて面テープで調整可能としたサンプルを作成して平成13年11月19日に試着会を行い,開発を進めたということを主張している。この一審被告の主張は,①平成13年6月には,既にHMSブラジャーが発売開始されており,体型補整にはブラジャーだけではアイテムとしては足りず,次にはガードルが必要であったこと,②これに開発を担当している第二生産部が全員で取り組むことは自然であったこと,③他方,原判決が認 されており,体型補整にはブラジャーだけではアイテムとしては足りず,次にはガードルが必要であったこと,②これに開発を担当している第二生産部が全員で取り組むことは自然であったこと,③他方,原判決が認定している平成13年8月8日に脚口からヒップにかけて切り込みを入れて,ヒップカップサイズの調節を行うことが一審原告の発案で完成しており,図面まで作成されているのであれば,それに従って開発を進めればよく,もっと早期に開発ができていたと考えられること,④実際には,まず切り込み部分が明確であったウエスト部分から試作し,共通認識ではあっても検討を要する脚口からヒップにかけてはウエスト部分の試作後としたこと,⑤サンプルでテストを行いながらパターンを修正しつつ部材選定を行うのは,ごく当たり前の開発過程であること等からしても,一審被告の主張は妥当なものである。そして,この主張は,証拠として提出している第7回オーダー研究会報告書(乙59の5),各パターン図面(乙19~- 22 -23,32~35),平成13年10月23日の試着会の写真(乙26)等に合致しており,通常の開発過程として合理的なものであるイ本件発明2の技術的思想の本質的部分につき原判決は,本件発明2の本質的部分は「ヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けた」との点であり,「該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みいれて分割され,分割された一片と他片とが」着脱自在に止着可能で「ヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップ計測用の目盛りが記された」構成にした点にあると認定している。 この点,本件発明1について主張したのと同様に,「着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することがで の連結位置にヒップカップ計測用の目盛りが記された」構成にした点にあると認定している。 この点,本件発明1について主張したのと同様に,「着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができる」計測サンプル及びオーダーメイド方式であることも,本件発明2の技術的思想の本質的部分である(本件特許2の明細書[甲3]段落【0007】,【0008】,【0032】,【0060】)。そして,このように試着ができ,フィット感を確認することができるものとするために,上記のとおり,一審被告においては,試着会を行い,パターンに修正を行い,マジックテープの形状について検討するといったことを行っており,このような過程も本件発明2を完成させるために必要なものであった。 ウ本件発明2の発明者につき原判決は,平成13年8月8日には一審原告が本件発明2の技術的思想の本質的部分を完成させたと認定している。 しかし,上記ア(ウ)のとおり,甲71(パターンファイルシート)には本件発明2の技術的思想の本質的部分が明示されているとはいい難い。原判決の認定によっても,甲71において,ヒップ部にヒップカップサイズ- 23 -を調節可能なヒップカップ計測手段を設けたということは明示されていないし,ましてや「分割された一片と他の一片が着脱自在に止着可能」とされる構成は全く示されておらず,また,「一片の他片との連結位置にヒップカップ計測用の目盛りが記された」構成についても全く示されていない。現実に,HMSメジャー(ガードル)について,甲71を用いてサンプルが作成されたこともなく,一審被告において当該図面が検討されたことすらないことは,一審原告自身も認めるところである(原審における原告本人尋問調書56頁)。そして,HMSメジャ 甲71を用いてサンプルが作成されたこともなく,一審被告において当該図面が検討されたことすらないことは,一審原告自身も認めるところである(原審における原告本人尋問調書56頁)。そして,HMSメジャー(ガードル)は,実際には広瀬工業のFが作成した図面(乙19~23)に基づいて開発され,止着部の製作,改良を進めながら,図面を改良していったのであり(原審におけるS証人の尋問調書7頁以下),開発の過程で第二生産部の中の議論で最終的な切り込み位置を現実化していったものに他ならない。そして,さらに実際に試着ができ,フィット感を確認できるように構成するために,試着会を行い,パターンの修正・変更,マジックテープの形状についての検討等を行っている(原審におけるS証人の尋問調書7頁以下)。 本件発明2の発明を完成させたのは,広瀬工業のF,一審被告の社員であった一審原告,S(S),T,G(G)の5名である。 (3)争点(3)(HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合)についてア原判決は,本件各発明の売上げに対する寄与割合について,2分の1と判断しており,この点でも一審原告の主張をそのまま認めている。 しかし,その前提となるHMS商品の売上げ実績及び販売促進活動,HMS商品の売上げ実績に対する一審被告の販売促進活動の寄与については,HMS商品の売上げ実績が,本件各発明の競争優位性ないし顧客誘因力のみによって達成されたものということはできず,キャンペーンの実施等,一審被告の販売促進活動によるところが相当程度寄与しているものということができると認定している。 - 24 -一審原告は,HMS商品の販売促進活動については,売上げの増大とは関係ないと主張しつつ,本件各発明の売上げに対する寄与割合については2分の1を下らないと主張していた。 しかるに,原判決の 24 -一審原告は,HMS商品の販売促進活動については,売上げの増大とは関係ないと主張しつつ,本件各発明の売上げに対する寄与割合については2分の1を下らないと主張していた。 しかるに,原判決の認定は,HMS商品の売上げは,キャンペーンの実施等による一審被告の販売促進活動が相当程度寄与しているとしながら,本件各発明の売上げに対する寄与割合を2分の1としている点で,いわば一審原告の主張を上回る形で本件各発明の寄与割合を認めており,極めて不当である。 イ第25期(平成13年9月1日から平成14年8月31日まで)については,HMS商品の売上げ102億円は,①多色展開という付加価値を付けたカラーフィット商品が顧客の支持を得たこと,②販売促進活動によるものであるとの一審被告の主張に対して,原判決は「…カラーフィット(夏カラー)A柄が発売された平成14年6月におけるHMS商品の売上げは21億円であり,第25期のそれまでの期間におけるHMS商品の売上げが2億円から9億円台で推移していたのと比較すると,売上げの伸びには著しいものがあり,カラーフィットが顧客の一定の支持を得たということは容易に推測できる。しかし,そもそも,当時HMS商品の売上げの大部分を占めていたのは,後染めのされていない…HMS商品…であり,カラーフィット商品の売上げはHMS商品全体の1割程度にすぎない。」(92頁18行~93頁1行)として,25期のHMS商品の売上げ増の主たる理由をカラーフィット商品に求める一審被告の主張は採用できないとしている。 しかし,平成13年9月1日から平成14年5月までの9か月のHMS商品の売上げ合計は,48億9349万5000円であり,月額平均にすれば約5億4370万円である。カラーフィット商品が販売された平成14年6月には約20億6000万円, 4年5月までの9か月のHMS商品の売上げ合計は,48億9349万5000円であり,月額平均にすれば約5億4370万円である。カラーフィット商品が販売された平成14年6月には約20億6000万円,7月には約18億円,8月には約1- 25 -4億1000万円を売り上げており,それまでの売上げの3倍から4倍の売上げが出ている(第25期月次推移表[乙116])。カラーフィット商品の比率は1割程度であるとの原判決の認定に基づいて計算すると,従来のHMS商品は,平成14年6月に18億5400万円,同年7月に16億2000万円,同年8月に12億6900万円を売り上げたことになるが(それぞれの数字は月次の売上げに0.9を掛けたものである),カラーフィット商品が出る前の従来のHMS商品の平均月額約5億4000万円強から,このように売上げに増加したことを合理的に説明することは不可能である。第25期の売上げ増は,本件各発明とは関係のない多色展開というカラーフィットの発売によるところが大きいと考えるのが相当である。 ウ本件各発明の実施とHMS商品の売上げとの関係について,原判決は,「…被告は,HMS商品の受注・販売の手順について,HMSメジャーによる採寸・試着から始まり,採寸表・オーダー表・購入申込書への記入等の過程を経て,生産指図処理,工場受付処理,商品縫製,工場出荷処理,営業店出荷作業,顧客への納品という一連の流れを『ハイブリッドメジャーシステム』として構成しており,新規の顧客に対しては,必ずHMSメジャーを使用して採寸し,その採寸結果に基づいてHMS商品を製造して販売し,また,既存の顧客に対しても,従前の採寸時からの当該顧客の体型変化に対応するため,改めてHMSメジャーを使用して採寸をし直した上で,その採寸結果に基づいてHMS商品を製造して販 品を製造して販売し,また,既存の顧客に対しても,従前の採寸時からの当該顧客の体型変化に対応するため,改めてHMSメジャーを使用して採寸をし直した上で,その採寸結果に基づいてHMS商品を製造して販売している。」(100頁9行~18行)として,本件各発明の実施なくしてHMS商品の売上げは発生しないとする。 しかし,この点は,本件各発明の実施品がHMSメジャーであって,HMS商品でないことを認めながら,HMS商品の売上げ自体を本件各発明の売上げと同視するものであり,極めて不当である。さらに,HMS商品- 26 -を販売する際には,HMSメジャーのみで採寸するわけではなく,最初にテープメジャーで採寸を行い,それを元にHMSメジャーを利用して,サイズを決めていく(原審におけるG証人の尋問調書2頁)。また,全てのサイズのHMSメジャーが備えられているわけではなく,端のサイズについては,大きめのサイズを着用してもらい,摘まんだりして採寸をしており,この部分については本件各発明の実施はなされていない。そして,実際には本件各発明の実施による寸法がそのままHMS商品の製造に利用できるのではなく,実際の商品は,その生地等によって寸法を調整して製造している(乙109~110の2。逆にいえばHMSメジャーで計測した寸法どおり作るとサイズ違いとなる。)。このようにHMSシステムと称していたものの,本件各発明の実施によってそのまま完全な商品ができるわけでもなく,HMSメジャーと出来上がり商品が完全に対応していたわけでもない。 原判決は,特定の発明を使用していると宣伝し,それを使用した上で最終製品が出来上がっていれば,最終製品自体に当該発明が使われていなくとも最終製品の売上高について当該発明なくして売上げはないとしているのと同様であって,不当である。 エ上 し,それを使用した上で最終製品が出来上がっていれば,最終製品自体に当該発明が使われていなくとも最終製品の売上高について当該発明なくして売上げはないとしているのと同様であって,不当である。 エ上記に加えて,本件各発明を実施してオーダーを取るためには,HMSメジャーを使用する全店舗に各パーツを全て備え置かなくてはならず(しかも肌に直接つけるものであるから頻繁に洗濯を行う必要があり,痛んだパーツについては取り替えが必要である),それを用いる社員全てに対して研修を行い,適切な使用方法,採寸の仕方,HMSメジャーを利用した場合のボディメイクの仕方(レディメイドと同じようにボディメイクをすればカップの部分が外れてしまい,ガードルの脚口はマジックテープがはがれてしまう。)について教育を行う必要がある。これらの多大な投資を行って初めてHMSメジャーを利用することができるのであり,本件各発- 27 -明があることで直ちに売上高の2分の1もの売上げを得ることができるわけではない(もっとも,この点は,一審被告の本件各発明の実施の際の貢献度として考えるべきものとも考えられる)。 オ原判決は,HMS商品の売上高の形成が多額の販売促進費用によるものであることを認めつつ,本件各発明による超過売上高をHMS商品の売上高の2分の1と認定している(101頁1行~8行)。そして,販売促進費用については,一審被告の貢献度として捉えるべきとしながら,両当事者が売上げに対する寄与度を巡って主張立証していることを理由に,この点で判断し,一審被告の貢献度では判断しないとしている(101頁8行~13行)。 この点,原判決は本件各発明における一審被告の貢献度は80%と判断しており,異例ともいえる高率の従業者貢献度を認定している。他方,本件各発明による独占的利益の額としては,2 01頁8行~13行)。 この点,原判決は本件各発明における一審被告の貢献度は80%と判断しており,異例ともいえる高率の従業者貢献度を認定している。他方,本件各発明による独占的利益の額としては,2分の1と認定しており,これは従来の裁判例における一部の例外を除きもっとも高い認定割合と同列といえる。この割合は,売上げの形成について何ら譲受会社が特段の努力も行わなかった場合の認定に相当するものであり,原判決が認めている多額の販売促進費用の支出といったものが全く考慮されていない認定に他ならない。そして,上記のとおり,本件各発明が最終製品そのものに使われているものではないこと,本件各発明によるHMSメジャーのみで計測がなされているわけではないこと,HMS商品の売上高は多額の販売促進費用をかけた通常では考えられない施策によるものであること,また,本件各発明によるものよりもカラーフィットや相次ぐ新商品の発売で顧客にアピールを行ったという側面が非常に強いこと,HMSメジャーをもって計測した数値をそのまま最終商品に使用することはできず,商品によって数値の調整を要すること,HMSメジャーを全店舗に配置し,それに対応する人員を教育する必要があり,それを行って初めて販売が可能となること,- 28 -後述するとおり本件各特許には無効理由があり(本件発明1はすでに無効が確定している)他の第三者の実施を禁止することはできないこと等からすれば,HMS商品における本件各発明の寄与度は多く見積もっても10%を上回ることはないものである。 カ一審原告の主張に対する反論(ア)「本件各発明の競争優位性,顧客誘引力についての評価の誤り」につき一審原告は,ワコールやシャルレの売上げは長期低迷傾向にあるのに対して,HMS商品に強い顧客誘引力や競争優位性があったため一審被 )「本件各発明の競争優位性,顧客誘引力についての評価の誤り」につき一審原告は,ワコールやシャルレの売上げは長期低迷傾向にあるのに対して,HMS商品に強い顧客誘引力や競争優位性があったため一審被告に3期連続の増収をもたらし,平成16年度のレディスインナー小売売上高ランキングで1位に躍り出たというが,そもそもワコールやトリンプはデパートやスーパーへの卸売りが中心の会社であり,小売部門の売上げ自体は非常に少ない会社であるから,比較の対象に誤りがある。 HMS商品の顧客吸引力や競争優位性だけで第25期から第27期の売上げが形成されたのではなく,一審被告によるキャンペーン活動をはじめとする営業関連施策が相当程度(キャンペーン活動については相当に大きく)影響していると考えるべきであり,HMS商品に強い顧客吸引力や競争優位性があったという一審原告の主張は妥当性を欠く。 シンクタンクによるキャンペーンの見直し提言も,キャンペーン自体を否定しているものではないし,このような見直し提言も一審被告において行われたキャンペーンの効果を否定することはできない。HMS商品が顧客層のナチュラル志向に合致したという証拠はない。 一審原告は,一審被告のように口コミによる広報に依存している企業の場合,新商品の浸透スピードが遅いため,新商品の発売と売上げとの間にタイムラグが生じるし,HMS商品の販売終了後も数年程度は,HMS商品によって一審被告製品に魅力を感じた顧客がさらに魅力的な新- 29 -商品を求めて再来店する状態が継続するともいうが,口コミによる場合とマスコミのコマーシャルを利用する場合とで,新商品の浸透に差は認められない(口コミの方がより早く浸透するともいえる。)。レディメイドの新商品「デコルテ」が発売された平成16年6月以降もHMS商品の販売は継続して ーシャルを利用する場合とで,新商品の浸透に差は認められない(口コミの方がより早く浸透するともいえる。)。レディメイドの新商品「デコルテ」が発売された平成16年6月以降もHMS商品の販売は継続していたにもかかわらず,平成17年8月度にはレディメイド商品の売上構成比が80%を超えており,HMS商品を購入しに来た顧客がレディメイド商品を購入したという関係性は認められない。 (イ)「営業施策関連費用についての評価」につきa信販手数料の会社負担や商品券及び景品のプレゼントを事前にアピールすることにより,顧客にHMS商品を購入してもらおうとしたわけであるから,これらは,売上げ増加に貢献している。 一審原告は,第29期以降もレディメイド商品の販売促進のため,従前と同様の販売施策関連費用を支出しているにもかかわらず,第27期の業績に遠く及ばないが,これは一審被告の販売促進政策が売上を向上させる力を持っていないこと,HMSに高い競争優位性・顧客吸引力を備えていたことを認める根拠となると主張する。しかし,第29期においてもHMS商品の販売は継続していたにもかかわらずHMS商品の売上高が約13億円しかない(乙119)ことは,HMS商品に競争優位性・顧客吸引力がなかったことの証左であるし,第29期の販売施策関連費用は第27期の約3分の1にまで大幅に減縮されており(乙117),販売促進政策の内容は似ていても,それに要する費用の額は大きく異なっており,比較して論ずることの妥当性を欠いている。 b一審原告は,平成14年2月と3月のわずか2か月間の売上高と販売促進費用との関係をもって,第25期のHMS商品の売上増加原因が平成14年6月以降の「カラーフィットデビューキャンペーン」の- 30 -効果に関係ないと結論付けているが,これには論理の飛躍がある。仮 費用との関係をもって,第25期のHMS商品の売上増加原因が平成14年6月以降の「カラーフィットデビューキャンペーン」の- 30 -効果に関係ないと結論付けているが,これには論理の飛躍がある。仮に平成14年3月のHMS商品の売上げ増加が新商品発売による部分があったとしても,そのことから,その後平成14年6月の売上げ増加までの3か月間を新商品が売上げ増加につながるタイムラグであったと考えることはできず,むしろ平成14年6月以降の「カラーフィットデビューキャンペーン」に基づく販促費用の著しい増加が原因でHMS商品の売上げ増加が達成されたと考えるのが素直である。 一審原告は,平成15年3月から7月までの4か月間及び平成15年12月から平成16年2月までの3か月間についても,HMS商品の売上増加の理由がHMS商品自体によるものであることを端的に示しているという。確かに,平成15年3月から5月までの販売促進費用は少なくなっているが,それは12か月間のわずか3か月間に過ぎず,残り9か月間はやはり多額の販売促進費用が投入されているし,平成15年12月から平成16年2月までの3か月間は多額の販売促進費用が投入されている(乙118)。したがって,これらの期のHMS商品の売上げ増加の原因は,一審原告がいうようにHMS商品自体によるのではなく,多額の販売促進費用の投入によるものであるというべきである。 さらに,一審原告は,平成15年9月から11月までは,キャンペーンを行っていないにもかかわらず売上げが増加していることから,HMS商品の売上げはキャンペーンに依存するものではないというが,わずか3か月間の事実関係をもってHMS商品の売上はキャンペーンに依存するものではないと結論付けることには,やはり論理の飛躍がある。 (4)争点(4)(独占の利益が発生 するものではないというが,わずか3か月間の事実関係をもってHMS商品の売上はキャンペーンに依存するものではないと結論付けることには,やはり論理の飛躍がある。 (4)争点(4)(独占の利益が発生する時期)についてア原判決は,使用者等が受けるべき利益は,当該発明の独占的実施による- 31 -利益(いわゆる独占の利益),あるいは第三者に当該発明を実施許諾して得た実施料収入による利益であるとし,使用者等が独占の利益を受けることができる期間の始期は,原則として当該発明を排他的独占的に実施することができるようになった時期,すなわち特許登録時であるとしており(101頁18行~102頁3行),この点は正当な判断である。 その上で,原判決は,出願公開以降は,出願者は補償金請求権が存在することを理由にある程度の独占力が発生しないものとはいえないとして,出願公開から登録時までは超過売上高の10分の1の割合をもって相当としている(102頁3行~103頁2行)。しかし,補償金請求権は,出願公開による出願人の不利益を回避するために置かれた法定請求権に過ぎず,しかも原判決が指摘するように補償金請求権を行使するには特許法65条1項の要件(警告)を満たす必要がある。この要件が具備されない限りは補償金請求に基づく金銭請求は行えないのであって,権利が存在することを理由に具体的に補償金請求を行使しうる状況にない使用者等について,独占の利益があるとはいい得ない。 したがって,使用者等に独占の利益が発生する時期については原則とおり特許登録時からと考えるべきである。 イ仮に,出願公開時からある程度の独占的利益を考えるとしても,本件特許1は,出願公開後の平成14年9月2日付けで拒絶理由通知を受け(甲9),同年11月22日付けで拒絶査定を受けており(甲23),一審被告は, 願公開時からある程度の独占的利益を考えるとしても,本件特許1は,出願公開後の平成14年9月2日付けで拒絶理由通知を受け(甲9),同年11月22日付けで拒絶査定を受けており(甲23),一審被告は,同年12月26日付けで拒絶査定不服審判請求及び補正を行い(甲15,16),平成17年1月26日に拒絶査定取消し審決を得て(甲17),同年3月4日に登録に至っているものであり,また,登録はされたものの結局無効審判請求によって無効審決が出され(乙123),審決取消訴訟においても無効審決が維持され(乙124),無効が確定している(乙125)。 - 32 -拒絶理由通知を受けた後,拒絶査定がなされ,それに対する拒絶査定不服審判を提起した場合においても,将来の補償金請求を担保するため通知を行うことは理論上可能ではあるが,例えばそのまま拒絶査定が維持された場合には,審決取消訴訟において補正を行うのが一般的であり,このような場合に補償金請求を行うことはほとんど行われないのが実情である。 とすれば,本件発明1のような経緯を辿った特許については,登録時まで独占的利益は発生しないと考えるのが妥当である。 また,本件発明2についても,出願公開前である平成14年11月20日付けで拒絶理由通知を受け(甲18),同じく出願公開前である平成15年2月12日付けで拒絶査定を受け(甲24),これに対し,一審被告は,同年3月1日付けで拒絶査定不服審判請求と補正を行い(甲19,20),平成15年8月27日に公開され,平成17年5月23日に拒絶査定取消審決を得て(甲21),同年6月24日登録に至っている。平成21年3月27日に無効審判請求がなされており(乙137),無効となる可能性の高いものである。このように出願公開前から拒絶査定がなされているような特許出願については,なおさら補 録に至っている。平成21年3月27日に無効審判請求がなされており(乙137),無効となる可能性の高いものである。このように出願公開前から拒絶査定がなされているような特許出願については,なおさら補償金請求を行うための通知を行うことは事実上考えられないのであるから,使用者等が独占的利益を得ることができるのは特許登録時以後であると考えるのが妥当である。 ウしたがって,出願公開時から一定の独占的利益を認めた原判決は不当であり,拒絶査定がなされている本件各発明については,特許登録時以後について使用者が独占的利益を得ることができるものと考えるべきである。 エ一審原告の主張に対する反論(ア)ノウハウとして秘匿した場合であっても,特許法35条の(類推)適用を認めた裁判例は存在しているが,そもそも本件発明1及び2の場合には,ノウハウとして秘匿することが不可能な発明であって,これらの裁判例を引用すること自体が誤っている。すなわち,本件発明1及び- 33 -2はこれを実施する場合には,実際にサンプル(HMSメジャー)を試着する不特定多数の顧客に対し,ブラジャー部分の場合には各々複数のカップ受部・カップ部・バック部を組み合わせて試着サンプルを作る過程を開示して行うのであり,ガードル部分の場合にも,ウエスト部分と脚口及びヒップ部が分割され,計測用の面テープが装着された試着用サンプルを装着して面テープの部分を着脱するわけであるから,本件発明1及び2については,営業秘密として保持することは到底不可能であり,独占的利益を発生させようとすれば特許出願若しくは実用新案出願を行う他はないのである。 (イ)ある発明をノウハウとして管理するのか,特許出願を行うのかということは,当該発明の内容,特許出願を行って登録を受けることとノウハウとして管理することのメリット 出願を行う他はないのである。 (イ)ある発明をノウハウとして管理するのか,特許出願を行うのかということは,当該発明の内容,特許出願を行って登録を受けることとノウハウとして管理することのメリット・デメリットを比較考慮して当該発明の譲渡を受けた使用者等が決定するものである。当該発明の実施がノウハウとして管理することが可能であり,特許登録による独占よりもノウハウとして管理していくことの方がメリットがあると使用者等が判断し,ノウハウとして秘匿された場合には,使用者等に独占の利益を観念することができる。 これに対し,特許出願がされた場合には,法律上その内容は公開されることが決められており,その内容を秘匿することによる独占を行うことができない代わりに,特許権によって当該発明の実施を独占しうることになるのである。 そして,旧35条4項の「使用者等が受けるべき利益」は,同条1項により使用者等に通常実施権が認められていることから,当該発明の実施を独占することができることによる利益であることは異論を見ないところであって,原判決が本件のように特許出願がなされた発明について独占の利益を受けることができる期間の始期を,原則として特許登録時- 34 -であるとした点は,旧35条の文言にも合致した正当な解釈である。 (ウ)一審原告は,補補償金請求権の存在は,職務発明の対価の計算において完全な独占の利益の存在を認めるに必要十分な実質を有しているといえると主張する。 しかし,この点は,補償金請求権が独占の利益をその請求内容とするものであるという前提自体が誤っている。補償金請求権は,独占の利益を請求の内容とするものではなく,独占権が付与されないにもかかわらず特許発明の内容が公開され,第三者が利用しうるという特許出願人の不利益を補填するために法定されたものに他な 償金請求権は,独占の利益を請求の内容とするものではなく,独占権が付与されないにもかかわらず特許発明の内容が公開され,第三者が利用しうるという特許出願人の不利益を補填するために法定されたものに他ならない。補償金請求権は,あくまで特許権が登録された場合において,登録され独占権を与えられるべき価値のある特許発明について,その内容を公開することにより第三者が利用可能となることを前提に,その不利益を補填するための規定なのであるから,第三者の実施を差し止めることができる又は第三者に実施させるか否かを決定できることを内容とする独占から得られる利益とは,全く異なる概念なのであり,補償金請求権が認められているから完全な独占の利益が観念できるという一審原告の主張は,明らかに誤りである。 さらに,一審原告は,補償金請求権の存在は第三者に対して当該出願公開にかかる特許発明の実施を抑止させるには十分な効果があり,実際上の独占力において特許登録前後で有意の差はないという。 しかし,このような見解は,一審原告の独自のものであり,かかる見解によれば,特許法は,出願してから1年半後の出願公開の時点で登録と同様の効果を発生させるために補償金請求権を置いたことになってしまい,事実上公開が特許登録による独占権付与と同義ということになってしまう。実際に,出願公開された後,審査請求が行われずに放置され,権利化されないもの,拒絶査定を受け権利化されないものは,非常- 35 -に多くの数が存在しており,また,補正によって権利範囲が減縮されることは通常行われているところであって,出願公開の際の請求の範囲と登録の際の権利範囲が異なっていることは数多く見られるところである。このような実情を無視して,補償金請求権が存在するから実際の独占力において特許登録後と同様であるという主張は実 開の際の請求の範囲と登録の際の権利範囲が異なっていることは数多く見られるところである。このような実情を無視して,補償金請求権が存在するから実際の独占力において特許登録後と同様であるという主張は実際の特許出願の実情を無視した空論であって妥当でない。 加えて,一審原告は,使用者が特許を受ける権利を取得したことそのものにより強力な威嚇力を有すると主張する。 しかし,特許を受ける権利というからには,当該発明は当然非公知のものであり,それを維持しなければならないのに威嚇力など発生するはずがない。そして,使用者が特許を受ける権利を取得しただけであれば,出願を行うか否か並びに権利成立の可否及びその範囲は流動的であって,補償金請求の可否及び範囲(金額)は勿論,差止請求の可否や範囲についても不明確な状態なのであって,このような段階において,登録後と同様の独占力が認められるとする一審原告の主張は不当である。 (エ)特許登録前においては,使用者等に法律上の独占の利益は存在しておらず,法律上の独占に基づく利益を観念することができない。旧35条1項では,使用者等は特許登録後に法定通常実施権を有するとされており,発明者が特許出願して登録を受けた場合にも,使用者等は法定通常実施権を有して自己実施できることが定められているが,これは裏返せば発明者が出願し特許登録をなされる前には使用者等のみならず第三者であっても実施できることが前提となっている。 また,一審原告は,ライセンス交渉は特許登録前から行われることが多いところ,一般に登録の前後で実施料の額に変化が生じることはないとするが,これも実態と異なっている。特許登録前にライセンスを行う場合には,特許登録がなされることを前提としており,登録の前後で実- 36 -施料について差異を設けることはよく行われているところで とするが,これも実態と異なっている。特許登録前にライセンスを行う場合には,特許登録がなされることを前提としており,登録の前後で実- 36 -施料について差異を設けることはよく行われているところである。 (5)争点(5)(HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法)についてア原判決が,HMSメジャーを使える人材の育成に要する費用・労力について,熟練を要するとはいえないとした点(111頁12行~112頁下6行)は,正当ではない。HMSメジャーでは,いわゆるボディメイクを完全に行うことはできず,いわば加減をしながら行うことになり(原審におけるG証人の尋問調書4頁),そのことによって計測にばらつきがでること,多数あるパーツを組み合わせてフィッティングするものであるから,ヌードの体型をみてパーツの組み合わせを考慮しつつ判断していくことが必要であること(同調書16頁),ボディメイクの程度によってもサイズが異なってくるし,HMSメジャーで完全にはできないボディメイクを出来上がり商品では完全に行うことが可能であるから,出来上がり商品を想定してサイズの組み合わせを決めていく必要があること等から,単にHMSメジャーを組み合わせてフィッティングするのみならず,出来上がり商品を想定しながら,顧客とコミュニケーションを取りつつ,できるだけ採寸ミスが出ないように,出来上がり商品との体感差がでないように配慮しつつパーツを組み合わせる(ブラジャーの場合),若しくは,重ね合わせの量を調整する(ガードルの場合)といった作業が必要となるのであり,熟練を要するものである。したがって,HMSメジャーを使いこなすためには,使用者はその適切な使用方法も含め,顧客の体型等に合わせた適切な計測についてのノウハウを積み重ねた上で,これらを使いこなせるよう教育し,育成していく必要 がって,HMSメジャーを使いこなすためには,使用者はその適切な使用方法も含め,顧客の体型等に合わせた適切な計測についてのノウハウを積み重ねた上で,これらを使いこなせるよう教育し,育成していく必要があり,その点に費用と労力を要する。 イ一審原告の主張に対する反論(ア)「HMS商品のデメリットにつき」につきa一審原告は,HMS商品が,業績の低迷していた一審被告に莫大な利益を与えたと主張するが,HMS商品の売上げが増加したのは,一- 37 -審被告によるキャンペーンなどの販売促進政策が相当程度寄与しているためであり,また,HMS商品の利益率はレディメイド商品のそれに著しく劣っているのであって,HMS商品が一審被告に莫大な利益を与えたという事実はない。このように,一審原告のHMS商品の売上増加原因及び利益率に対する認識は誤っている。 HMS商品に対する顧客の支持が失われたのは,平成16年6月に発売されたレディメイド商品の新商品「デコルテ」に対する顧客の絶大なる支持が原因であり,それ故,一審被告は販売の力点をレディメイドに移さざるを得なかったのである。その後は,HMS商品とレディメイド商品とを併売しているにもかかわらず,HMS商品は販売減少の一途を辿り,根本的欠陥の存在も相まって,ついに平成20年2月に販売中止となった次第である。 したがって,顧客の支持を得ていない(平成19年8月期においてわずか8億7000万円余りの売上しかない)HMS商品について,改良しようと思ってもできない根本的欠陥が存在していることを一つの理由としてHMS商品の販売を中止した判断は,正当である。 b「HMSメジャーを全店舗に備え維持する費用・労力について」について(a)一審被告は素材ごとに異なるHMSメジャーを用意していなかったが,そのことと顧客が出来 を中止した判断は,正当である。 b「HMSメジャーを全店舗に備え維持する費用・労力について」について(a)一審被告は素材ごとに異なるHMSメジャーを用意していなかったが,そのことと顧客が出来上がった商品に対して満足しているかどうかは別問題であり,着用感に関する顧客からの不満が上がっていたことは事実である。特にHMS商品は,当初,ジャストフィットを謳っていたため,作り直しが多発していた。一審原告は,HMSメジャーは本質的に計測手段であるというが,他方で,適切なサイズの部品を組み合わせることによって得られるフィット感を体感できることが大きな魅力であるともいい,単なる計測手段ではな- 38 -く着用感を確認できる点にも力点があるとするが,そうであれば,顧客は着用感の違いにも敏感になるはずであり,顧客が素材の伸縮率の差異による体感の違いに無頓着であったという主張は成り立たないはずである。 (b)また,ある商品に対応するメジャーの部品を他の商品に対応するメジャーに流用することは,理論上は可能かもしれないが,例えばHMSメジャー(ブラジャー)について,そのような流用を行おうとすると,どのメジャーの部品が別のメジャーに流用できるのかについて,極めて複雑なマトリックスを作成しなければならず,販売現場において著しい混乱が発生し,部品の選び間違いが多発するのは目に見えているし,作業効率が著しく悪化することも明らかである。これに対し,レディメイドの場合は,すべての商品群についてサンプルを用意しなければならないが,出来上がり商品を試着しているわけであるから,サンプルの選び間違いは生じようがないし,サンプルと出来上がり商品との間の着用感の相違は生じない。 (c)さらに,HMSメジャーは,サンプルをコンパクトにまとめることができるが,素材や部材 るから,サンプルの選び間違いは生じようがないし,サンプルと出来上がり商品との間の着用感の相違は生じない。 (c)さらに,HMSメジャーは,サンプルをコンパクトにまとめることができるが,素材や部材の違いに基づく着用感の相違という課題は克服することができず,それを克服しようとすれば,すべてのHMS商品に対応する部品を用意しなければならなくなり,実現不可能となってしまう。 c「工場における生産管理が難しいことについて」について(a)一審原告は,個々のオーダーごとにサイズが変わるのは,オーダーメイド一般の問題であり,レディメイドと比較して問題視することには意味がないと主張する。 しかし,オーダーごとにサイズが変わるのがオーダーメイド一般の問題であったとしても,レディメイド商品との比較において製造- 39 -コストがかかることは間違いなく,HMS商品がレディメイド商品に比べて生産管理が難しいことは事実であって,一審原告の反論は当を得ていない。 (b)一審原告は,生産管理が難しくとも,それに見合う利益が得られれば,企業にとってそれは合理的な管理コストであるしと主張する。 しかし,HMS商品が大して儲からなかったことは上記のとおりである。また,本件で問題となっているのは,HMS商品からレディメイド商品に販売の軸足を移したことに対する当否であるから,レディメイド商品と対比して論じることは当然であって,HMS商品自体の利益を論じてもあまり意味がない。HMS商品よりレディメイド商品の方が利益率が高く,かつHMS商品の販売額が著しく低迷していたために,製造コストがかかるHMS商品の販売を中止したことには合理性がある。 (c)一審原告は,HMS商品の納期とレディメイド商品の納期を比較して論じた原判決に対し,このようなことは問題にする必要がな ,製造コストがかかるHMS商品の販売を中止したことには合理性がある。 (c)一審原告は,HMS商品の納期とレディメイド商品の納期を比較して論じた原判決に対し,このようなことは問題にする必要がないと主張する。 しかし,HMS商品が爆発的なヒット商品ではなく,レディメイドに比して利益率の低い商品であったことは上記のとおりであるし,レディメイド商品でも対応できる顧客にとっては,納期が著しく長いHMS商品よりも納期が短いレディメイド商品のほうが適当なのであるから,HMS商品の納期の点を問題とする意味は十分にある。 d「体型補整効果が限定されていることについて」について(a)商品が最も訴求する効果を前面に押し出して当該商品のアピールを行うのが通常であることからすれば,商品コンセプトとして体- 40 -型補整が二次的なものであるということは,HMS商品は体型補整において大した効果は認められないということになる。 (b)一審原告は,HMSによってもゴールデンプロポーションの下着を作成することは容易であるし,ゴールデンプロポーションに近付けるという体型補整を求めない顧客にとっては,HMS商品のほうが高い体型補整効果が得られると主張する。 しかし,HMS商品でゴールデンプロポーションの下着を作成することは至難の業である。すなわち,レディメイドの場合は試着サンプルが出来上がり商品(これはゴールデンプロポーションのバランスの下に設計されている。)そのものであるから,テープメジャーでサイズを測り,それに合ったサンプルを選んで試着してもらい,ボディメイクを施せば足りるが,HMSの場合は試着サンプルとなるHMSメジャーの組み立てが必要であり,どのサイズの部品を選べばゴールデンプロポーションの試着サンプルが出来上がるのかは,熟練者でも判断がつかない を施せば足りるが,HMSの場合は試着サンプルとなるHMSメジャーの組み立てが必要であり,どのサイズの部品を選べばゴールデンプロポーションの試着サンプルが出来上がるのかは,熟練者でも判断がつかない。したがって,HMSでもゴールデンプロポーションの下着を作成することは容易であるというのは誤りである。また,ゴールデンプロポーションに近付けるという体型補整を求めない顧客(乳癌などの理由により片方の乳房を切除したような女性を指すのであろう。)は,一審被告の主要顧客ではなく,そのような極めて例外的な顧客を念頭に置いて論じることは妥当ではない。 (c)一審原告は,HMS商品は,完成品に限りなく近い着用感を予め体感できる点で,他のオーダーメイド製品にはない,大きな強みを有すると主張する。 しかし,HMSメジャーには,HMS商品には使用されていないマジックテープやフック,ファスナーが装着されており,それらは- 41 -ほとんど伸縮性がないにもかかわらず,出来上がり商品には,マジックテープやフック,ファスナーの部分に伸縮性に富む身生地が使用されている。このためHMSメジャーで得られる着用感と出来上がり商品で得られる着用感との間には大きな違いが生じており,完成品に限りなく近い着用感を予め体感できるという一審原告の主張は誤りである。むしろ,出来上がり商品と同等の着用感を謳ってHMSメジャーを使用するため,出来上がり商品の着用感の違いがクローズアップされてしまい,顧客からのクレームに繋がってしまったのである。 (d)一審原告は,HMSメジャーとHMS商品との間に生じる誤差は,レディメイド商品がJIS規格に定められた範囲での大雑把な寸法しか把握できないことに比較すればごく微小なものであると主張する。 しかし,一審原告のこの主張は,HMSメジャーが計 の間に生じる誤差は,レディメイド商品がJIS規格に定められた範囲での大雑把な寸法しか把握できないことに比較すればごく微小なものであると主張する。 しかし,一審原告のこの主張は,HMSメジャーが計測器であり,本来的にはHMSメジャーで計測した寸法を使ってHMS商品を製造することに意味があるという,原判決の説示に対する反論にはなっておらず,失当である。レディメイド商品のサイズ展開がどのようなものであれ,HMSメジャーで計測した寸法を使ってHMS商品が製造されていない限り,計測器としての存在意義はないに等しいのである。 (イ)「HMS商品の利益率につき」につきaHMS商品は大きな利益を生んでおらず,平成16年6月にレディメイドの新商品「デコルテ」が発売されるや,第27期には●●●●●もあったHMS商品の売上額が,第28期にはたった●●●●●●にまで減少し,第29期は●●●●,第30期は●●●にまで大幅に減少し(乙116),営業利益も,第27期には●●●●●●●●●- 42 -もあったものが,第28期には●●●●●●●●,第29期には●●●●●●●●●,第30期は●●●●●●と大幅に減少している(乙119)のであって,「現に大きな利益を生んでいるHMS商品」という前提に大きな誤りがある。勿論,HMS商品が大きく売上を減少させたのは,顧客がレディメイド商品を支持したからであって,一審被告が意図的に販売を抑制したものではないし,そのようなことができるはずもない。 そもそも利益の額だけを単純に比較することは妥当ではない。というのも,売上額が大きくなれば,通常は利益の額も大きくなるのであり,当該事業を継続するか否かを判断するに当たっては,利益の額だけを比較して決定することはナンセンスなのであって,必然的に利益率という指標も加味せざるを きくなれば,通常は利益の額も大きくなるのであり,当該事業を継続するか否かを判断するに当たっては,利益の額だけを比較して決定することはナンセンスなのであって,必然的に利益率という指標も加味せざるを得ないのである。 以上のように,そもそもHMS商品は大した利益を生み出していなかったし,しかもレディメイド商品に比べて利益率も悪かったため,一審被告がHMS商品の販売を中止したことには何ら不合理なものはなかった。 b一審被告はHMS商品を主力商品として位置付けて,ありとあらゆる販売促進施策を行ってきたが,レディメイドの新商品「デコルテ」が大ヒットし,多額の販売促進費用を投入しなくても多額の売上げが達成されたため,レディメイド商品を主軸に販売していくことになったのである。一審原告の指摘する有価証券報告書は第25期から第27期までのものであるが,「デコルテ」が発売された期(第27期)の翌期である第28期の有価証券報告書の業績欄には,HMS商品のことは一切記載されておらず,「デコルテ」が売上げや利益に貢献したことだけが記載されている(甲8[一審被告・有価証券報告書(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで))]6頁)。この- 43 -ような有価証券報告書の記載の変遷からも,主力商品として位置付けていたHMS商品が,レディメイド商品に主力商品の座を取って代わられたことが容易に理解できる。 一審被告が,HMS商品の販売を中止したのは,HMS商品の売上額が低迷し,事業継続の必要性が失われたからであって,後付けの議論であるという一審原告の主張は当を得ていない。 c乙117の第25期と第26期におけるレディメイドの経費がほとんど零なのは,レディメイド商品だけの販促費用がほとんど存在しなかったからであり,レディメイド商品とHMS商品の両者に共通す いない。 c乙117の第25期と第26期におけるレディメイドの経費がほとんど零なのは,レディメイド商品だけの販促費用がほとんど存在しなかったからであり,レディメイド商品とHMS商品の両者に共通する販促費用(乙117では色掛けされていない部分)は当然発生していたのである。このように第25期から第27期の間においてレディメイド商品だけの販促費用がほとんどなかったことをもって,乙117が不正確,不自然とは決していえないし,乙116の上段と下段との差額分が専らレディメイド商品に関連する経費がかなり含まれていると考えることもできない。 一審原告は,乙116下段の営業施策販促費用が,上段の同じ費目の金額よりも高額になることは考えられないと主張するが,上記のような差額が生じる原因は,いずれもいわゆる決算修正がなされているからである。すなわち,各月の売上げや経費等は発生ベースで集計計上しているが,決算においては,企業会計原則に則った処理が求められるため,いわゆる決算修正がなされ,翌期以降の売上げや経費等に回されるのである。一審原告が指摘する乙116の上段と下段の差額はかかる決算修正が原因で生じたものであり,恣意性を有するものではない。 d一審原告は,乙119の売上原価の欄に多額の「オーダー廃棄金額」が計上されていることを問題とするが,HMSは採寸ミスやフィ- 44 -ット感の違いによる返品,再生産,キャンセルが多発していたのであり,没品やキャンセル品が大量発生していた(Vの陳述書[乙88]8頁にも没品やキャンセル品の合計枚数が2万3000枚にも達していたという記載がある。)。このような没品やキャンセル品の廃棄に多額の費用を要したのであり,オーダーメイドという商品の性質上売れ残り在庫が大量に発生することはないというのは,空理空論に過ぎない ていたという記載がある。)。このような没品やキャンセル品の廃棄に多額の費用を要したのであり,オーダーメイドという商品の性質上売れ残り在庫が大量に発生することはないというのは,空理空論に過ぎない。 一審原告は,第27期の有価証券報告書において,製品廃棄損1億6175万2000円を特別損失に計上しているが,この製品廃棄損は,ほぼレディメイド商品に関するものであると主張する。しかし,第27期はHMS商品の廃棄に●●●●●●●●●●●●も要している(乙119)が,このうち,特別損失に該当するものが製品廃棄損1億6175万2000円であり,特別損失に該当しないもの,つまり当期の経常的な損失として計上すべきもの(会計上は製造原価に含まれる。)が●●●●●●●●●●●●であったところ,一審被告は,HMS商品とレディメイド商品との利益率を厳密に比較するために,HMS商品に関する特別損失の額(1億6175万2000円)と製造原価に含まれている損失額●●●●●●●●●●●●●●とを合算して「オーダー廃棄金額」として,乙119に計上した次第である。 一審原告は,信販手数料は,商品と費用との関係が直接的かつ明確であるから,それぞれの販売に直接要した金額を計上すべきであると主張する。しかし,ある商品の売上が増加すれば,その分だけその商品の販売経費も増加すると考えることには合理性があるから,一審原告の上記批判は当てはまらない。 一審原告は,商品券はレディメイド商品の購入のためにも使用でき- 45 -たのであるから,「販促費(商品券)」をHMS製品限定施策とすることは恣意的であると主張する。しかし,「販促費(商品券)」はHMS商品の販売促進のために配布したものだけを集計して計上しており,HMS商品の販促に限定していない商品券については,共通経費として計 ことは恣意的であると主張する。しかし,「販促費(商品券)」はHMS商品の販売促進のために配布したものだけを集計して計上しており,HMS商品の販促に限定していない商品券については,共通経費として計上されている(例えば乙117の第25期の平成13年10月や平成14年5月)。したかって,一審原告の批判は当を得ていない。 (ウ)「一審原告に対する相当の対価の支払を免れる目的につき」につき一審被告が主体的にHMS商品の販売抑制政策を取ったことは一度もなく,顧客がレディメイド商品を支持したために,必然的にHMS商品の販売が振るわなくなっただけであり,ましてやWのEに対する憎悪や嫉妬などという個人的感情によってHMS商品の販売が抑制されたなどということは有り得ない。 (エ)「一審被告の不合理な行動と相当対価の算定」につき一審被告のHMSに関する経営判断には何ら不合理な部分はなく,したがって,一審被告のHMSに関する経営判断には不合理性があるといことを前提として論ずる一審原告の相当対価の算定に関する主張は,全く当を得ていない。 (オ)「一審被告の海外進出と本件各発明の再実施の可能性」につき一審原告は,一審被告が本件各発明の実施を中国,台湾において開始させる可能性は高いから,今後,HMS商品は,再び爆発的な売上げを一審被告にもたらす可能性が高いと主張するが,中国や台湾のファミリー特許は,いずれも年金未納付を理由に権利が消滅しており,致命的欠陥を有するHMS商品を展開することなど考えられない。 (6)争点(6)(本件各特許の無効理由の存否とその相当対価の額への影響の有無・程度)について- 46 -ア原判決は,各特許の無効理由について,無効審決が確定するまではたとえ特許に無効理由があるとしても特許権は一応有効なものであって,事実上の独占力 の額への影響の有無・程度)について- 46 -ア原判決は,各特許の無効理由について,無効審決が確定するまではたとえ特許に無効理由があるとしても特許権は一応有効なものであって,事実上の独占力を有するものとして取り扱われるとし,本件では販売打ち切りまでに無効審決が確定していないことを挙げ,ライセンス交渉において無効理由が存在することが当事者双方の共通の認識となっている場合にはライセンス料が低率化することは考えられるものの,本件各特許において無効理由として主張されているものがいずれも進歩性欠如を理由とするものであり,一見して進歩性欠如が明らかとはいえないとして,ライセンス料の低廉化は認められないと判断している(128頁下2行~129頁下1行)。 しかし,このような認定は公平の理念に反するし,ライセンス交渉の実態を無視するものであり,また,従前の裁判例において無効理由の存在が相当対価の額に影響を及ぼしていることとも明らかに反しており不当な判断である。 イ進歩性欠如という事由が無効理由とされているのは,当業者が公知のものから容易に推考できるものは,独占権をもって保護されるべきではなく,誰もが自由に使える技術とすべきと考えられているからである。そして,このような観点をも考慮して,最高裁平成12年4月11日判決以降,無効審判において無効となるべき特許については権利行使が許されないものとされている。このように進歩性欠如の無効理由が存する特許は,誰もが自由に利用できるべき技術を取り込んだものに他ならず,絶対的にみれば価値はなく,相対的に見ても価値が低いものといわなければならない。このような保護に値しない発明について,偶々特許出願において審査が過誤により特許査定となったからといって,無効理由の存しない発明と同等の保護を与え,使用者等が従業者 低いものといわなければならない。このような保護に値しない発明について,偶々特許出願において審査が過誤により特許査定となったからといって,無効理由の存しない発明と同等の保護を与え,使用者等が従業者等に無効理由のない発明と同等の対価を相当対価として支払わなければならないとするのは不当である。 - 47 -また,原判決では,進歩性欠如の理由があるからといって,無効理由の存在を当事者が了知しているか,一見して進歩性欠如が明らかでなければ,ライセンス料の低廉化をもたらすものではないと認定しているが,このような認定はライセンス交渉の実態に反するものである。相手方が特許を持っているからといって,そのいいなり通りにライセンス契約を結ぼうと考えるのは,特許法について知識のないものくらいしかあり得ない。仮に,原判決を前提として,ライセンス契約を締結したとすれば,仮想ではあるものの,一審被告は,自己実施による売上高の50%について,3%を乗じた高額のライセンス料が得られることになる。このような高額のライセンス料の支払を伴う契約において当事者が無効理由を調査しないなどということはあり得ず,また,進歩性欠如が一見して明らかでないからという理由で,ライセンス料率の引き下げを求めることはないと考えるのはライセンス交渉の実態に反するし,さらに,無効理由となる公知資料を呈示された場合に全くそれを考慮せずにあくまで当初のライセンス料を押し通すには,特許の有無だけではなく,別の事情が存在しなければ,そのようなことはできないものである。 ウ本件発明1については,平成21年1月9日に審決取消訴訟による無効審決維持判決が確定しており,無効が確定している(乙125)。したがって,このような無効理由を有していた本件発明1に基づく相当対価請求は認めるべきではなく,仮に認められ 9日に審決取消訴訟による無効審決維持判決が確定しており,無効が確定している(乙125)。したがって,このような無効理由を有していた本件発明1に基づく相当対価請求は認めるべきではなく,仮に認められるとしても低廉なライセンス料率によって計算されるべきである。 なお,一審原告は,上記無効審判請求は,実質的に特許権者自身が請求したものであるから,独占の利益の算定に当たっては,上記の無効になった事実は無視されるべきであると主張するが,上記無効審判請求を行ったのは,Z(以下「Z」という。)であって一審被告ではないし,上記無効審判において一審被告が応答しなかったのは,本件特許1については価値- 48 -のないものと判断していたし,本件訴訟において無効理由の存在を主張し,そもそも独占的利益が存在しないことを主張していたことから,無効審判において特許の有効性を主張することは自らの行動に矛盾が生じてしまうので,応答しなかったにすぎない。 また,一審原告は,HMS商品は,実質的に,本件発明2のみによっても独占可能であるといえるから,本件特許1が無効とされたとしても,本件における対価の算定には影響しないというべきであると主張するが,本件発明2のみをもってブラジャーの売上げについて相当対価の請求が可能であるという主張とすれば,特許発明の実施品でないものについても相当対価算定の基礎となる売上げに含ませるべきであるという主張であって,旧35条の相当対価請求が,当該特許発明を独占的に使用できる地位を使用者等に与えたことによって支払われる対価であることからすると,根拠のない主張である。 エ本件特許2については,平成21年3月27日に再度の無効審判請求がなされているところ,本件特許2は,次のとおり無効とされるべきものである。 (ア)先行技術a本件特許2の出 ない主張である。 エ本件特許2については,平成21年3月27日に再度の無効審判請求がなされているところ,本件特許2は,次のとおり無効とされるべきものである。 (ア)先行技術a本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙138(特開平8-260206号公報,発明の名称「イージオーダー化を可能にしたファンデーションおよびその縫製方法」,出願人株式会社ダッチェス,公開日平成8年10月8日)には,以下の記載がある。 ①「【産業上の利用分野】本発明は,サイズ調節によるイージオーダー化を可能にしたガードル,ボディスーツ,ウェストニッパー,水着等のファンデーションおよびその縫製方法に関する。」(段落【0001】)。 ②「【従来の技術】従来,図4に示したように,ガードル,ボディ- 49 -スーツ,ウェストニッパー,水着等のファンデーション等においては,それらを構成する素材自身の伸縮性によって僅かな寸法上の柔軟性はあるものの,着用者の体格の個体差や着用者自身の体格の変化に適応させるためには数種類の寸法(ボディスーツ等においては図中Fなる寸法が適否を決する。)のものを揃える必要があった。 …」(段落【0002】)。 ③「【発明が解決しようとする課題】本発明では,時間と労力をさほど要することなく安価で簡単に縫製できて,さらにはデザイン的な組合せ変化をも楽しめるイージオーダー化を可能にしたファンデーションおよびその縫製方法を提供するものである。」(段落【0003】)。 ④「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために,本発明は,少なくともトップ部,ウェスト部およびボトム部の3つの部片からなるボディスーツ等のファンデーションにおいて,前記ファンデーションは未縫製の横切断部にて少なくとも前記3つの部片に分割されて形成されるとともに,こ ップ部,ウェスト部およびボトム部の3つの部片からなるボディスーツ等のファンデーションにおいて,前記ファンデーションは未縫製の横切断部にて少なくとも前記3つの部片に分割されて形成されるとともに,これら部片間の対向する前記各横切断部に隣接して該横切断部の重合度合いを選択して調節自在に重合する横縫製代を形成したことを特徴とし,また,前記各部片のそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部をさらに設け,これら各縦切断部に隣接して該縦切断部の重合度合いを選択して調節自在に重合する縦縫製代を形成したことを特徴とするもので,これらを課題解決のための手段とするものである。また本発明は,未縫製の横切断部にて少なくともトップ部,ウェスト部およびボトム部の前記3つの部片に分割されたボディスーツ等のファンデーションの縫製方法において,これら部片間の対向する前記各横切断部に隣接して形成された該横切断部の重合度合いを選択して調節自在な横縫製代を- 50 -重合させて縫製することを特徴とし,また,前記少なくとも3つのトップ部,ウェスト部およびボトム部の各部片に形成された人体の縦方向に沿う縦切断部に隣接して形成された該縦切断部の重合度合いを選択して調節自在な縦縫製代を重合させて縫製することを特徴とするもので,これらを課題解決のための手段とするものである。」(段落【0004】)。 ⑤「【作用】本発明では,少なくともトップ部T,ウェスト部Wおよびボトム部Bの3つの部片からなるボディスーツ等のファンデーション1において,前記ファンデーション1は未縫製の横切断部4,5にて少なくとも前記3つの部片T,W,Bに分割されて形成されるとともに,これら部片T,W,B間の対向する前記各横切断部4,5に隣接して該横切断部4,5の重合度合いを選択して調節自在に重合する横縫製代T4,W とも前記3つの部片T,W,Bに分割されて形成されるとともに,これら部片T,W,B間の対向する前記各横切断部4,5に隣接して該横切断部4,5の重合度合いを選択して調節自在に重合する横縫製代T4,W4およびW5,B5を形成したことにより,未縫製の横切断部4,5にて少なくともトップ部T,ウェスト部Wおよびボトム部Bの前記3つの部片に分割されて形成された対向する前記各横切断部4,5に隣接して形成された該横切断部4,5の重合度合いを選択して調節自在な横縫製代T4,W4およびW5,B5を重合させて縫製することができるので,ボディスーツ1の丈(F)を着用者の背丈に応じて適切に適合させると同時に,前記横縫製代T4,W4およびW5,B5を人体の前後および左右にて各別にその重合度合いを選択して調節して縫製するならば,人体の個体差による体形の曲がりや肉付きに対しても,きめ細かに適応させることができる。」(段落【0005】)⑥「また,本発明では,前記各部片T,W,Bのそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部6をさらに設け,これら各縦切断部6に隣接して該縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重合する縦縫- 51 -製代T6,W6,B6を形成したことにより,これら縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在な縦縫製代T6,W6,B6を重合させて縫製することができるので,着用者のバストやウェストおよびヒップ毎の個体差に応じて,さらにきめ細かに対応することができる。このように,本発明によれば,既成の半製品である分割形成された各部片を準備するだけで,まるで高価なオーダーメイドによって縫製したかのごとく着用者に適合したファンデーションを安価に得ることができる。しかも,異なった生地や色彩の各部片を組み合わせてデザイン的な組合せ変化をも楽しめる他,例えば,生理用 ーメイドによって縫製したかのごとく着用者に適合したファンデーションを安価に得ることができる。しかも,異なった生地や色彩の各部片を組み合わせてデザイン的な組合せ変化をも楽しめる他,例えば,生理用のパンツ部との機能的な組合せ等によってその利用範囲をさらに拡大することもできる。」(段落【0006】)。 ⑦「…さらに,上記各部片T,W,Bはそれら自体を製品として着用者に供することもできる他,各部片T,W,Bを試着パーツとして着用者の寸法取りのみに供する場合には,上記した試着時の各縫製代をマークしたり,読取り記録をした後,これを製品としての各部片の縫製代に転記してこれらを縫製することになる。」(段落【0008】)。 ⑧「…本実施例では,図1の第1実施例のものに加えて,前記各部片T,W,Bのそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部6をさらに設け,これら各縦切断部6には前記実施例の横切断部と同様に,各縦切断部に隣接して該縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重合する縦縫製代T6(トップ部),W6(ウェスト部),B6(ボトム部)を形成したものである。」(段落【0009】)。 ⑨「…本実施例によれば,ファンデーションの縦寸法および体形の曲がりや肉付きに対応させることができるばかりでなく,個体差によるバスト,ウェストおよびヒップの各サイズに対してもきめ細か- 52 -に適応させて縫製することができるので,各部片T,W,Bについて,あまり多数のサイズのものを揃える必要がなく,経済的である。」(段落【0010】)。 ⑩「以上,本発明の各実施例を説明してきたが,本発明の趣旨の範囲内において,横あるいは縦切断部の位置,形状,数や,横および縦の縫製代の幅,形状,材質については適宜採用できる他,縫製代の縫製形態についても,例えば縫製に代えて高周波接合 きたが,本発明の趣旨の範囲内において,横あるいは縦切断部の位置,形状,数や,横および縦の縫製代の幅,形状,材質については適宜採用できる他,縫製代の縫製形態についても,例えば縫製に代えて高周波接合,熱溶着等が採用できる。また可能ならばマジックテープ(登録商標)等による接合が各縫製代に採用できること言うまでもない。」(段落【0011】)。 b上記aの記載及び乙138の図面の記載からすれば,乙138のファンデーション1は,従来のガードル,ボディスーツ,ウエストニッパー,水着等のファンデーション等においては,着用者の体格の個体差や着用者自身の体格の変化に適応させるために数種類の寸法のものを揃える必要があるという課題を解決するために,少なくともトップ部,ウエスト部及びボトム部の三つの部片からなるボディスーツ等のファンデーションにおいて,上記ファンデーションは未縫製の横切断部にて少なくとも上記三つの部片に分割されて形成されるとともに,これら部片間の対抗する上記各横切断部に隣接して該横切断部の重合度合いを選択して調節自在に重なり合わせる横縫製代を形成し,また,上記各部片のそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部をさらに設け,これらの各縦切断部に隣接して該縦切断部の重合度合いを選択して調節自在に重なり合わせる縦縫製代を形成して,イージオーダー化を可能にしたものと考えられる。そして,乙138のファンデーション1は,その各部片T,W,Bが試着パーツとして着用者の寸法取りのみに供することが予定されており,この試着パーツを用いた寸法取- 53 -りによってイージオーダー化が可能とされていると考えられる。 また,ボトム部片Bには,身頃に縦切断部6が設けられ,この縦切断部6に隣接して該縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重なり合わせる縦縫製代B6が ージオーダー化が可能とされていると考えられる。 また,ボトム部片Bには,身頃に縦切断部6が設けられ,この縦切断部6に隣接して該縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重なり合わせる縦縫製代B6があるから,ボトム部片Bは,ヒップサイズ及び足の付け根の水平方向における周長寸法を調節可能とするものであり,ヒップカップサイズを調節可能としているものと考えられる。また,試着時には,各縫製代をマークしたり,読み取り記録したりするのであるから,縫製代B6は計測手段として機能しているものであり,マジックテープ等による接合が各縫製代に採用できるとされており,縦切断部6を挟んだ両片(すなわち「分割された一方と他片」)は,接合部材を介して互いに着脱自在に止着可能であると考えられる。さらに,上記試着パーツはイージオーダー用の寸法取りに供されるとされており,カスタムサイズの計測を行うものと考えられる。 以上からすると,乙138には,次の引用発明1及び2が記載されていると考えられる。 【引用発明1】「身頃のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能な縦縫製代B6(ヒップカップ計測手段)を設けたイージオーダー(オーダーメイド)用ボトム試着パーツ(計測サンプル)で,該縫製代B6(ヒップカップ計測手段)は,前記ヒップ部が縦切断部(切り込み)を入れて分割され,分割された一片と他片とが接合部材(連結部材)を介して着脱自在に試着可能でヒップカップサイズ調節可能とされたことを特徴とするイージオーダー(オーダーメイド)用ボトム試着パーツ(計測サンプル)」【引用発明2】- 54 -「引用発明1の試着パーツ(計測サンプル)を用意し,カスタムサイズの計測をする衣類のオーダーメイド方式」c本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙139(国際公開99/58007号,発明 -「引用発明1の試着パーツ(計測サンプル)を用意し,カスタムサイズの計測をする衣類のオーダーメイド方式」c本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙139(国際公開99/58007号,発明の名称「人体の支持・補正機構及びこれを備えた衣服機構」,出願人a,国際公開日1999年[平成11年]11月18日)には,以下の記載がある。 ①「…本発明は,伸縮素材を用い,正中位の形に即して左右身頃の裁断線を設け,左右身頃の正中位を挟む股間部付近は,接合前の状態で互いに遊離した形状とし,前記左右身頃の接合によって股間部と左右大腿部との間の形状に準じた形成をなし,臀突位上の臀突部より臀部下辺に至る部位に切替えダーツ部を設けて臀部形状に準じた形状とし,着用時に機構全体に引張(緊張)関係が生じ,臀列部を含めボトム各部に密接すると共に,腹部及び臀部下辺に補正を促す面圧力が加わるボトム機構を提供するものである。」(13頁下2行~14頁5行),②「…臀位53上の臀突部54の下辺には臀部の丸みに準じた形状を達成するために,ダーツ65が設けられている。」(28頁3行~4行)③図20,図21及び図22には,臀突部54の下辺に設けられたダーツ65が図示されている。 d本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙140(実公昭51-9368号公報,考案の名称「イージーオーダー用採寸合せ基本ズボン」,出願人大賀株式会社,公告日昭和51年3月12日)には,以下の記載がある。 ①「1はイージーオーダー用採寸合せ基本ズボン体であってその上縁部2に沿って右側前合せ身頃部3の外側に,ウエスト寸法4を表- 55 -示し且つ中央にベルベット式ファスナーの一片5を取付けた寸法表示票6を固着してある。7は左側前合せ身頃部であってその上縁部2に沿って裏側にベルベット 頃部3の外側に,ウエスト寸法4を表- 55 -示し且つ中央にベルベット式ファスナーの一片5を取付けた寸法表示票6を固着してある。7は左側前合せ身頃部であってその上縁部2に沿って裏側にベルベット式ファスナーの他片8を設けた布地9を固着してある。この右側前合せ身頃部3と左側前合せ身頃部7とを重ね合せて両者に設けたベルベット式ファスナー片5,8を係脱して,止外しができるようにしてある。一応人体に合致したイージーオーダー用採寸合せ基本ズボン1を着用させた後フイッターは左右の前合せ身頃部3,7を重ね合せてベルベット式5,8ファスナーを係合してウエスト寸法4の73~82cmまでの何れかを実測により正確に読み採ることができる,即ち第3図に示すように布地9の端部を開いてウエスト部の適合寸法4をよみとるものである。」(2欄1行~19行)。 ②図3には,イージーオーダー用採寸合せ基本ズボンの使用状態の一部が示されている。 e本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙141の1(米国特許第3763866号明細書,1973年[昭和48年]10月9日発行)には,以下の記載がある。 ①「この発明は,女性用ガードル,パンティガードルおよび男性用ブリーフのような,調整可能な身体支持用衣料に関する。」(1欄3行~5行,抄訳[乙141の2]1頁3行~4行),②「衣料は,その前面の中央で,上方端10aから二つに裂けて,裂け目の対向側にフラップ10eおよび10fを形成しており,種々の調整された重ね合わせ角度で重ね合わせることができる。」(3欄52行~55行)③「図1および図2を再度参照すると,右太もも用調整可能サポート50a(調整位置)および左太もも用調整可能サポート50b- 56 -(非調整位置)が示される。」(3欄12行~15行,抄訳[乙1 「図1および図2を再度参照すると,右太もも用調整可能サポート50a(調整位置)および左太もも用調整可能サポート50b- 56 -(非調整位置)が示される。」(3欄12行~15行,抄訳[乙141の2]2頁7行~8行)④図1及び図2には,調整可能な身体支持用衣料の正面図及び背面図が示されている。 f本件特許2の出願前に頒布された刊行物である甲13(乙142,特開平8-158111号公報,発明の名称「ファウンデーション」,出願人株式会社ダッチェス,公開日平成8年6月18日)には,「アンダーバスト(女子の乳房直下における胸部の水平周囲長)毎に用意され,各カップ部(2a)の周縁と適合する一対のカップ用凹部(1a)及びそのカップ用凹部(1a)の周縁に形成されたカップ係着部(1b)を有する装着手段(1)と,収容する乳房のサイズを変えた複数のカップ部材(2)との組合せからなり,装着手段(1)に対しカップ部材(2)を着脱可能に設けてなるブラジャー。」が記載されている。 g本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙143(「Dublev(デューブルベ)」と称する株式会社ワコールのセミオーダéーシステムに関するカタログ,平成12年8月1日発行)には,以下の記載がある。 ①「本来ブラの役割は,バストラインを美しくととのえて下垂を防ぐこと。でも,バストのかたちやサイズに合っていないとブラの機能が活かせず,うつくしくととのえられないばかりか,肩こりなど不快感の原因にもなりかねません。美しいバストラインのためには,ジャストフィットのブラを選ぶことが大切です。」(2頁右欄左側),②「デューブルベではコンサルタントがあなたのバストを測定。…しかも,トップとアンダーだけの採寸だけでなく,オリジナル測定- 57 -器(バージスメジャー)でバスト です。」(2頁右欄左側),②「デューブルベではコンサルタントがあなたのバストを測定。…しかも,トップとアンダーだけの採寸だけでなく,オリジナル測定- 57 -器(バージスメジャー)でバストの底面周径サイズ(バージスサイズ)の測定や,ゲージブラでのフィット感の確認等を行ったうえで,コンサルタントがブラの「フィット診断」を行い,全1248サイズのブラの中から最適なブラをご提案。あなたのバストのためだけのブラをおつくりします。」(2頁右欄左側)h本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙144(特開平2-259102号公報,発明の名称「着脱自在のブラジャー」,出願人b,公開日平成2年10月19日)には,以下の記載がある。 ①「この発明は,ブラジャーフロントとバックベルトとを着脱自在に出来るようにしたブラジャーに関するものである。」(1頁左欄10行~12行),②「ブラジャーフロントとバックベルトが別々になっており,カップもアンダーバストも体に合ったサイズのものを着用することが出来る。」(1頁右欄下2行~2頁左上欄2行)i本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙145(「手作りランジェリー」レディブティックシリーズ通巻1404号,1999年[平成11年]3月20日発行)には,「ブラジャーが,胸布A,Bと,胸布A,Bと’組み合わされるベルトと,ベルトAと連結される,背中部分のベルトBとで構成されること」が図示されている(52頁,53頁のイラスト)。 j本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙146(近藤れん子「近藤れん子の立体裁断と基礎知識」,1998年[平成10年]12月15日五版株式会社モードェモード社発行)には,ダーツを用いて乳房に応じた衣服形状を調整していることが図示及び記載されている。 k本件特許2 の立体裁断と基礎知識」,1998年[平成10年]12月15日五版株式会社モードェモード社発行)には,ダーツを用いて乳房に応じた衣服形状を調整していることが図示及び記載されている。 k本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙147(実願昭5- 58 -0-21222号[実開昭51-104125号]のマイクロフィルム),考案の名称「ヒップ部にダーツを有するガードル」,出願人株式会社ワコール,公開日昭和51年8月20日)には,以下の記載がある。 ①「…股布付け位置附近の下方よりヒップの山に向ってダーツを形成したので着用時のアウター部を美麗に保持すると同時に所謂ヒップの山附近にダーツによるゆとり部5が招来し,着用時のヒップが押圧されない自然な丸味が期待できるのである。」(明細書3頁1行~6行)②図1及び図2には,下方よりヒップの山方向に向かって左右同長に切欠したダーツ3が図示されている。 l本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙148(特開平9-209203号公報,発明の名称「ガードル」,出願人グンゼ株式会社,公開日平成9年8月12日)には,以下の記載がある。 ①「後身頃3における臀部4の部位で,且つ裾部10付近にダーツ12を形成されることにより,臀部4の部位に立体的な膨らみ部が形成されて臀部の包み込み効果並びに補正や造形効果が向上し,着用感の優れたガードルが得られるのである。」(段落【0006】)②図1及び図2には,裾部付近に設けられたダーツ12が図示されている。 m本件特許2の出願前に頒布された刊行物である乙149(実願昭50-84855号[実開昭52-3835号]のマイクロフィルム,考案の名称「X字形基本によるブラジャー用パターン」,出願人g,公開日昭和52年1月12日)には,以下の記載がある。 ①「 (実願昭50-84855号[実開昭52-3835号]のマイクロフィルム,考案の名称「X字形基本によるブラジャー用パターン」,出願人g,公開日昭和52年1月12日)には,以下の記載がある。 ①「この実用新案は,X字形パターンにより着用者の体型,大小に- 59 -それぞれ適応できるブラジャーの製造に用うるものである。…これを図面について説明すれば,接合点2(2’)を曲線部3~4(3’~4)に沿って接合させるとき円錐状の立体が得られる。曲線部分上の2(2’)の位置により,円錐の大きさが変えられる。」(「考案の詳細な説明」)②第1図及び第2図には,重なり部が図示されている。 (イ)本件発明2と先行技術との対比a請求項1の発明につき本件特許2の明細書(甲3)には,「本発明の目的とするところは,着用者の体型にフィットしたカスタムサイズの衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供するところにある。また,着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができる衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供することを目的とする。」(段落【0008】)と記載されており,この記載からすると,本件発明2は,着用者の体型にフィットしたカスタムサイズの衣類を提供し得,着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができる,オーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供することを課題とするものであり,この課題を解決するために,本件発明2の請求項1に記載された発明特定事項を採用したものであると考えられる。 他方,前記引用発明1は,上記のとおり,着用者の体格の個体差や着用者自身の体 るものであり,この課題を解決するために,本件発明2の請求項1に記載された発明特定事項を採用したものであると考えられる。 他方,前記引用発明1は,上記のとおり,着用者の体格の個体差や着用者自身の体格の変化に適応させるようにした試着パーツを提供するとともに,この試着パーツによる寸法取りによって,イージオーダー化を可能とし,カスタムサイズの計測を行うことを課題とするもの- 60 -であり,この課題を解決するために,上記引用発明1の構成を採用したものである。 そうすると,本件発明2と引用発明1とでは,カスタムサイズの計測が行うことができ,オーダーメイドを可能とするという点で,解決すべき課題を同じくしている。 そこで,本件発明2のうち請求項1の発明と引用発明1とを対比すると,後者における「ボトム試着パーツ」は,着用者の寸法取りのみに供され得るものであるから,前者における「計測サンプル」に他ならず,また,後者における「該縦縫製代B6」,「縦切断部」は,その機能からみて,前者における「ヒップカップ計測手段」,「切り込み」に相当するものである。さらに,後者における「イージーオーダー」は,前者における「オーダーメイド」の一態様である。 そうすると,両者は,「(a)身頃のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能な縦縫製代B6(ヒップカップ計測手段)を設けたイージオーダー(オーダーメイド)用ボドム試着パーツ(計測サンプル)で,該縦縫製代B6(ヒップカップ計測手段)は,前記ヒップ部が縦切断部(切り込み)を入れて分割され,分割された一片と他片とが接合部材(連結部材)を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされたことを特徴とするイージオーダー(オーダーメイド)用ボトム試着パーツ(計測サンプル)」である点で一致し,「(A)切り込みが,請求項1 )を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされたことを特徴とするイージオーダー(オーダーメイド)用ボトム試着パーツ(計測サンプル)」である点で一致し,「(A)切り込みが,請求項1の発明においては,股口からヒップカップ部の略中央に向かっているのに対し,引用発明1においては,人体の縦方向に沿う縦切断部である点」及び「(B)請求項1の発明においては,一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されているのに対し,引用発明1においては,目盛が記されていない点」で相違する。 - 61 -そこで,相違点(A)についてみると,上記乙139には,ボトム機構の臀突部54の下辺にダーツ65(裁断線)を設けて,ボトム機構を臀部形状に準じた丸みのある形状とすることが記載されているところ,図20,図21及び図22の記載を参照すると,このダーツ65は,臀部下辺57から臀突部54に亘っており,「股口からヒップカップ部の略中央に向かっている」ものに相当するものである。 ところで,衣類にダーツを設けることは,丸みを帯びた体の部位において,「(あ)その丸みに応じた衣服形状となすため」,「(い)ダーツの開き角度ないしは重なり量の調整による衣服の丸み形状の調整のため」に,本件特許2出願前から慣用されている。上記(あ)に関しては,例えば,ブラジャーにおいて,乳房の形状に応じたカップ部を形成するためにダーツが用いられており(乙139の図10及び図11並びに8頁19行~22行及び請求項3の記載,乙146の記載),ガードルにおいて,臀部形状に応じたヒップ部を形成するためにダーツが用いられている(乙147,148の記載)。また,上記(い)に関しては,例えば,乙146,149に,ダーツの開き角度ないしは重なり量の調整によって,衣服,ブラジャーの丸み 部を形成するためにダーツが用いられている(乙147,148の記載)。また,上記(い)に関しては,例えば,乙146,149に,ダーツの開き角度ないしは重なり量の調整によって,衣服,ブラジャーの丸み形状を調整することが記載されている。これらの慣用技術を考慮すると,乙139に記載された,「股口からヒップカップ部の略中央に向かっている」ダーツ65(裁断線)が,上記(あ),(い)のために形成されているものであることは,当業者に自明のことといえるから,乙139には,「股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割」することにより,臀部の丸みに準じた丸みのある形状とすること,すなわち,あるヒップサイズを有するボトム機構において脚の付根の水平方向における周長寸法を調整可能とすることにより,ヒップカップサイズを調節することが開示されているといえる。 - 62 -引用発明1も,「着用者のバストやウェストおよびヒップ毎の個体差に応じて,さらにきめ細かに対応することができる」ようにしたものであり,ヒップカップサイズを調節するものといえるところ,乙137には,「本発明の趣旨の範囲内において,横あるいは縦切断部の位置,形状,数や,横および縦の縫製代の幅,形状,材質については適宜採用できる」(前記(ア)a⑩)と記載されているし,股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割することによってもヒップカップサイズを調整可能なことが乙137に記載されているのであるから,乙137における,人体の縦方向に沿う縦切断部に代えて,または,これに加えて,乙138における,股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れることを採用することは,当業者ならば容易に想到できることである。 次に,相違点(B)についてみると,乙140には,イージー ,乙138における,股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れることを採用することは,当業者ならば容易に想到できることである。 次に,相違点(B)についてみると,乙140には,イージーオーダー用採寸合せ基本ズボン体において,左右の前合せ身頃部3,7の重ね合せ部分に寸法を表示した寸準表示票6を固着することが記載されており,この寸法表示票6は,サイズ計測用の目盛に他ならない。 引用発明1においても,「各部片T,W,Bを試着パーツとして着用者の寸法取りのみに供する場合には,上記した試着時の各縫製代をマークしたり,読取り記録をした後」(前記(ア)a⑦)と記載されており,サイズの計測が必須のものであるところ,乙140には,サイズ計測用の目盛を設けることが記載されており,この記載からサイズ計測用の目盛を設けておくことにより計測が簡便に行えることが容易に理解できるから,引用発明1において,一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛を記すことは,当業者ならば容易に想到できることといえる。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項1の発明と引用発明1との- 63 -上記相違点(A)及び(B)は,いずれも当業者が容易に想到できるものであり,したがって,請求項1の発明は,乙138~140に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 b請求項2の発明につき本件発明2のうち請求項2の発明と引用発明1とを対比すると,両者は,上記aの請求項1の発明と引用発明1との一致点(a)で一致し,上記aの請求項1の発明と引用発明1との相違点(A),(B)で相違するほか,さらに,「(C)請求項2の発明においては,ヒップ部の切り込みの内端位置が,ヒップトップの高さよりも下とされているのに対し,引用発明1においては,そのよ 明1との相違点(A),(B)で相違するほか,さらに,「(C)請求項2の発明においては,ヒップ部の切り込みの内端位置が,ヒップトップの高さよりも下とされているのに対し,引用発明1においては,そのようにされていない点」で相違する。 相違点(A),(B)が容易想到であることは,上記のとおりであるので,上記相違点(C)についてみると,請求項2の発明において,上記相違点(C)の構成を採用するのは,本件特許2の明細書(甲3)に,「切り込み(又は折返し)の内端位置は,ヒップトップの高さよりも下としたほうが好ましい。この位置をヒップトップの高さよりも高い位置とすると,ヒップカップサイズの調節時にヒップサイズまでもが変わってしまうからである。」(段落【0020】)と記載されているとおり,ヒップトップの下方においてサイズを調整するためと考えられる。 乙139の発明においては,切り込みの内端位置は臀突部(ヒップトップに相当する。)とされているものの,切替えダーツ部は,「臀突位上の臀突部より臀部下辺に至る部位」に設けるのであるから,ヒップトップよりも下方のサイズを調整することを意図していることは明らかである。切り込みの内端位置を,ヒップトップの高さよりも下- 64 -とするか否かは,上記意図に合致する範囲において当業者が適宜設定できることにすぎない。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項2の発明と引用発明1との上記相違点(A)~(C)は,いずれも当業者が容易に想到できるものであり,したがって,請求項2の発明は,乙138~140に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 c本件発明2のうち請求項3の発明につき乙138において,ボトム部Bはその上端から縦切断部6によって左右に分割されており,この縦切断部6の重合によって が容易に発明をすることができたものである。 c本件発明2のうち請求項3の発明につき乙138において,ボトム部Bはその上端から縦切断部6によって左右に分割されており,この縦切断部6の重合によって,ウエストサイズが調節可能とされているとともに,重合部分は,「マジックテープ等」により接合できるとされており,また,縫製代は,「計測手段」として機能するものであると認められる。 そうすると,乙138には,引用発明1に,「(b)身頃のウエスト部にウエストサイズを調節可能なウエスト計測手段を設け,該ウエスト計測手段は,前記ウエスト部がその上端から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でウエストサイズ調節可能とされている」点を加えた発明(引用発明1’)が記載されているといえる。 本件発明2のうち請求項3の発明と引用発明1’を対比すると,両者は,上記aの請求項1の発明と引用発明1との一致点(a)及び上記(b)で一致し,上記aの請求項1の発明と引用発明1とは,上記相違点(A),(B)で相違するほか,さらに,「(D)請求項3の発明においては,ウエスト計測手段における一片の他片との連結位置にウエストサイズ計測用の目盛が記されているのに対し,引用発明1においては,かかる目盛が記されていない点」で相違する。 - 65 -相違点(A),(B)が容易想到であることは上記のとおりであるので,上記相違点(D)についてみると,上記相違点(B)について検討したとおり,乙140には,サイズ計測用の目盛を設けることが記載されており,この記載からすると,ウエスト計測手段における一片の他片との連結位置にウエストサイズ計測用の目盛を記すことは当業者ならば容易に想到できることといえる。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項3の おり,この記載からすると,ウエスト計測手段における一片の他片との連結位置にウエストサイズ計測用の目盛を記すことは当業者ならば容易に想到できることといえる。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項3の発明と引用発明1との上記相違点(A),(B)及び(D)は,いずれも当業者が容易に想到できるものであり,したがって,請求項3の発明は,乙138~140に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 d請求項4の発明につき本件発明2のうち請求項4の発明と引用発明1とを対比すると,両者は,上記aの請求項1の発明と引用発明1との一致点(a)で一致し,上記aの請求項1の発明と引用発明1との相違点(A),(B)で相違するほか,さらに,「(E)請求項4の発明においては,身頃の脚囲部にその下端の脚ロサイズを調節可能な脚口計測手段を設け,該脚口計測手段は,前記胸囲部が脚口から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で脚ロサイズ調節可能とされているのに対し,引用発明1においては,かかる脚口計測手段を備えていない点」,「(F)請求項4の発明においては,脚口計測手段における一片の他片との連結位置に脚ロサイズ計測用の目盛が記されているのに対し,引用発明1においては,かかる目盛が記されていない点」で相違する。 相違点(A),(B)が容易想到であることは上記のとおりである。 - 66 -そこで,相違点(E)についてみると,乙141の1には,身体支持用衣料(いわゆる,ロングガードルと称されるものと認められる。)の脚口に裂け目を入れ,脚ロサイズを調整すること,すなわち,「身頃の脚囲部にその下端の脚ロサイズを調節可能な脚口調整手段を設け,該脚口調整手段は,前記脚囲部が脚口から略縦方向に切 のと認められる。)の脚口に裂け目を入れ,脚ロサイズを調整すること,すなわち,「身頃の脚囲部にその下端の脚ロサイズを調節可能な脚口調整手段を設け,該脚口調整手段は,前記脚囲部が脚口から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で脚ロサイズ調節可能とされている」点が記載されていると認められる。引用発明1の試着パーツを,いわゆるロングガードルに適用することは,当業者が容易に想到することであるところ,ロングガードルに適用した場合には,脚ロサイズの調整,計測が必要になることは当業者に明らかであるから,引用発明1において,乙141の1に記載された脚口調整手段を採用し,これを,ヒップカップ計測手段と同様に,計測手段として用いることは,当業者が容易に想到できることである。 次に,相違点(F)について検討すると,上記相違点(B)について検討したとおり,乙140には,サイズ計測用の目盛を設けることが記載されており,この記載からすると,脚口計測手段における一片の他片との連結位置に脚ロサイズ計測用の目盛を記すことは当業者ならば容易に想到できることといえる。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項4の発明と引用発明1との上記相違点(A),(B),(E)及び(F)は,いずれも当業者が容易に想到できるものであり,したがって,請求項4の発明は,乙138~141の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 e請求項5の発明につき本件発明2のうち請求項5の発明と引用発明1とを対比すると,両- 67 -者は,上記aの請求項1の発明と引用発明1との一致点(a)で一致し,上記dの請求項4の発明と引用発明1との相違点(A),(B),(E),(F)で相違するほか,「(G)請求項5の発明 両- 67 -者は,上記aの請求項1の発明と引用発明1との一致点(a)で一致し,上記dの請求項4の発明と引用発明1との相違点(A),(B),(E),(F)で相違するほか,「(G)請求項5の発明においては,脚口計測手段が,前記ヒップカップ計測手段と連続して形成されているのに対して,引用発明1においては,そのように形成されていない点」で相違する。 相違点(A),(B),(E),(F)が容易想到であることは,上記のとおりであるので,上記相違点(G)についてみると,脚口計測手段もヒップカップ計測手段も,切り込みを入れて分割したものであるし,乙138においても,1本の縦切断部によって,ウェスト部,ヒップトップ部,股口部のサイズ調整が可能であることを考慮すると,脚口計測手段とヒップカップ計測手段とを連続して形成することは,当業者ならば適宜行うことにすぎない。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項5の発明と引用発明1との上記相違点(A),(B),(E),(F)及び(G)は,いずれも当業者が容易に想到できるものであり,したがって,請求項5の発明は,乙138~141の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 f請求項6の発明につき乙138において,ウェスト部W(請求項6でいう「胴部」に相当する。)は,その上端から縦切断部6によって左右に分割されており,この縦切断部6の重合によって,サイズが調節可能とされているとともに,重合部分は,「マジックテープ等」により接合されており,また,縫製代は,「計測手段」として機能するものであると認められる。 そうすると,乙138には,引用発明1に,「(c)身頃の胴部に- 68 -胴部サイズを調節可能な胴部計測手段を設け,該胴部計測手段は1前記胴部がその上端から略縦方向に切り のであると認められる。 そうすると,乙138には,引用発明1に,「(c)身頃の胴部に- 68 -胴部サイズを調節可能な胴部計測手段を設け,該胴部計測手段は1前記胴部がその上端から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で胴部サイズ調節可能とされている点を加えた発明」(引用発明1'')が記載されているといえる。 本件発明2のうち請求項6の発明と引用発明1''とを対比すると,両者は,上記aの請求項1の発明と引用発明1との一致点(a)及び上記(c)で一致し,上記aの請求項1の発明と引用発明1との相違点(A),(B)で相違するほか,さらに,「(H)請求項6においては,胴部計測手段における一片の他片との連結位置に胴部サイズ計測用の目盛が記されているのに対し,引用発明1''においては,かかる目盛が記されていない点」で相違する。 相違点(A),(B)が容易想到であることは上記のとおりであるので,上記相違点(H)についてみると,上記相違点(B)について検討したとおり,乙140には,サイズ計測用の目盛を設けることが記載されており,この記載からすると,胴部計測手段における一片の他片との連結位置に胴部サイズ計測用の目盛を記すことは当業者ならば容易に想到できることである。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項6の発明と引用発明1''との上記相違点(A),(B)及び(H)は,いずれも当業者が容易に想到できるものであり,したがって,請求項6の発明は,乙138~140に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 g請求項7の発明につき乙138において,ボトム部Bにはトップ部Tが付設されている。 そうすると,乙138には,引用発明1に,「(d)カップ部を有す- 69 -る することができたものである。 g請求項7の発明につき乙138において,ボトム部Bにはトップ部Tが付設されている。 そうすると,乙138には,引用発明1に,「(d)カップ部を有す- 69 -るトップが付設された点を加えた発明」(引用発明1''')が記載されているといえる。 本件発明2のうち請求項7の発明と引用発明1'''とを対比すると,上記aの請求項1の発明と引用発明1との一致点(a)及び上記(d)で一致し,上記aの請求項1の発明と引用発明1との相違点(A),(B)で相違する。 相違点(A),(B)が容易想到であることは上記のとおりであるから,本件発明2のうち請求項7の発明と引用発明1'''との上記相違点(A)及び(B)は,いずれも当業者が容易に想到できるものであり,したがって,請求項7の発明は,乙138~140に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 h請求項8の発明につき乙138において,トップ部Tに横縫製代が形成されており,この横縫製代は,「マジックテープ(登録商標)等」により,ウェスト部Wに接合される(ウェスト部Wは,ボトム部Bに接合される。)ようにされている。そうすると,乙138には,引用発明1に,「(e)トップは,前記ボトム計測サンプルに着脱可能に付設された点を加えた発明」(引用発明1'''')が記載されていると認められる。 本件発明2のうち請求項8の発明と引用発明1''''とを対比すると,上記aの請求項1の発明と引用発明1との一致点(a)及び上記(e)で一致し,上記aの請求項1の発明と引用発明1との相違点(A),(B)で相違する。 相違点(A),(B)が容易想到であることは上記のとおりであるから,本件発明2のうち請求項8の発明と引用発明1''''との上記相違点(A)及び(B)は 用発明1との相違点(A),(B)で相違する。 相違点(A),(B)が容易想到であることは上記のとおりであるから,本件発明2のうち請求項8の発明と引用発明1''''との上記相違点(A)及び(B)は,いずれも当業者が容易に想到できるもので- 70 -あり,したがって,請求項8の発明は,乙138~140に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 i請求項9の発明につき本件発明2のうち請求項9の発明と引用発明1'''とを対比すると,上記gの請求項7の発明と引用発明1との一致点(a)及び(d)で一致し,上記aの請求項1の発明と引用発明1との相違点(A),(B)で相違するほか,「(I)請求項9の発明においては,前記トップは,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けてなるのに対し,引用発明1'''においては,トップは,そのようなものではない点」で相違する。 相違点(A),(B)が容易想到であることは上記のとおりであるので,上記相違点(I)についてみる。 まず,上記相違点(I)に係るトップについて検討すると,前記甲13には,サイズを変えた複数のカップ用凹部と,一つのサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部材との組み合わせからなり,カップ用凹部に対してカップ部材を着脱可能に設けた発明が記載されている。そして,バストの底面周径サイズ(バージスサイズ)を測定して,各人のバージスサイズに適合したブラジャーを作ることが,乙143に記載されているのであるから,前記甲13記載の発明において,装着手段の左右のカップ用凹部それぞれにつき凹部湾曲形状を変えたもの(すなわち,バージスサイズを変えた たブラジャーを作ることが,乙143に記載されているのであるから,前記甲13記載の発明において,装着手段の左右のカップ用凹部それぞれにつき凹部湾曲形状を変えたもの(すなわち,バージスサイズを変えたもの)及びそれに適合した高さを変えたカップ部材を複数用意することは,当業者が容易に想到できるものである。 - 71 -そうすると,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,一つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けてなるブラジャー(「トップ」に相当するもの)は,前記甲13,乙143に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 上記容易想到とされるトップも,引用発明1'''のトップと同様に,サイズ調整に用いられるものであるから,引用発明1'''に記載のトップに代えて,上記容易想到とされるトップを用いることは,当業者が適宜行えることである。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項9の発明と引用発明1'''との上記相違点(A),(B)及び(I)は,いずれも当業者が容易に想到できるものであり,したがって,請求項9の発明は,乙138~140,甲13,乙143に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 j請求項10の発明につき本件発明2のうち請求項10の発明と引用発明1'''とを対比すると,上記gの請求項7の発明と引用発明1との一致点(a)及び(d)で一致し,上記aの請求項1の発明と引用発明1との相違点(A),(B)で相違するほか,「(J)請求項10の発明においては,前記トップは,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,一つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部と,一つのカップ受部に B)で相違するほか,「(J)請求項10の発明においては,前記トップは,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,一つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部と,一つのカップ受部において寸法の異なる複数のバック部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部及びバック部を着脱可能に設けてなるのに対し,引用発明1'''においては,トップがそのようなものではない点」で相違する。 - 72 -相違点(A),(B)が容易想到であることは上記のとおりであるので,上記相違点(J)について検討する。 「前記トップは,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けてなる」点が容易想到であることは,上記相違点(I)で検討したとおりである。 また,乙144には,ブラジャーフロントとバックベルトとを着脱自在にして,体に合ったサイズのブラジャーとなすことが記載されており,寸法の異なるバックベルトを用いたサイズ調整手法が公知であるから,引用発明1'''のトップにおいて,寸法の異なる複数のバック部を用意し,カップ受部に対してバック部を着脱可能に設けることも当業者ならば容易に想到できることといえる。さらに,乙145の52頁,53頁のイラストには,ブラジャーが,胸布A,Bと,胸布A,Bと組み合わされるベルトAと,ベルトAと連結される,背中部分のベルトBとで構成されることが図示されている。前記甲13に記載された発明の装着手段1は,アンダーバスト毎に用意されているものであるところ,乙145記載の発明を参酌すると,当業者は,装着手段1を,請求項10の発明のカップ受け部に相当するベルトAと,バック部に相当するベルトBから構成し, ンダーバスト毎に用意されているものであるところ,乙145記載の発明を参酌すると,当業者は,装着手段1を,請求項10の発明のカップ受け部に相当するベルトAと,バック部に相当するベルトBから構成し,寸法の異なる複数のバック部を有することによって,アンダーバストサイズ毎にブラジャーを用意することを容易に想到することができたというべきである。そうすると,「一つのカップ受部において寸法の異なる複数のバック部」を有することは,当業者は容易に想到できることといえる。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項10の発明と引用発明1'''との上記相違点(A),(B)及び(J)は,いずれも当業者が- 73 -容易に想到できるものであり,したがって,請求項10の発明は,乙138~140,甲13,乙143~145に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 k請求項11の発明につき本件発明2のうち請求項11の発明と引用発明1とを対比すると,上記aの請求項1の発明と引用発明1との一致点(a)で一致し,上記aの請求項1の発明と引用発明1との相違点(A),(B)で相違するほか,「(K)請求項11の発明においては,衣類が体型補正機能を有する衣類であるのに対し,引用発明1においては,衣類が体型補正機能を有するか否か明らかでない点」で相違する。 相違点(A),(B)が容易想到であることは上記のとおりであるので,上記相違点(K)について検討する。 本件特許2の明細書(甲3)には,体型補正機能に関して,「体型に合わず,身体に適度にフィットしないものを着用してしまうと体型補正機能等の目的を達成できないばかりか,適度なフィット感が得られず不快感を感じてしまう。特に,きつすぎる場合には圧迫により苦痛を感じ,血流が悪くなる等して,身体に悪影響が及ぼ 着用してしまうと体型補正機能等の目的を達成できないばかりか,適度なフィット感が得られず不快感を感じてしまう。特に,きつすぎる場合には圧迫により苦痛を感じ,血流が悪くなる等して,身体に悪影響が及ぼされる。」(段落【0004】),「ボトム計測サンプル1は,実際の製品としてのショートガードルと同じく,ヒップアップ等の体型補正機能を有するように,伸縮性のある編地素材や非伸縮性の素材等を用いて周知の技術により形成される。」(段落【0039】),「なお,本実施の形態では,体型補正を目的としたガードルを例示したが,これに限らず,体型補正機能を有しないショーツ等のアンダーウエアやパンツなどのアウターウエアに本発明を適用してもよい。」(段落【0061】)と記載されている。これらの記載からすると,請求項11の発明において,体型補正機能を有する衣類とは,身体に適度にフィット- 74 -し,ヒップアップ等を実現できるガードルのような衣類を指すものであると考えられる。 引用発明1の計測サンプルはガードル用のものであるし,計測サンプルを用いて縫製された製品は,「肉付きに対しても,きめ細かに適応」(乙138,段落【0005】)可能なものであるから,引用発明1に係る試着パーツも,体型補正機能を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプルであるといえ,上記相違点(K)は,そもそも,引用発明1が有する構成といえる。 また,仮に,引用発明1の試着パーツが体型補正機能を有する衣類の範疇に入らないものであるとしても,そもそも,体型補正機能を有する衣類は,様々な型の既製品が市販されている(本件特許2の明細書[甲3],段落【0002】)のであるし,これらの衣類においても,着用者の体格の個体差や着用者自身の体格の変化に適応させることが必要であることは明らかであるから,引用発明 ている(本件特許2の明細書[甲3],段落【0002】)のであるし,これらの衣類においても,着用者の体格の個体差や着用者自身の体格の変化に適応させることが必要であることは明らかであるから,引用発明1の試着パーツを体型補正機能を有する衣類用のものとすることは,当業者ならば容易に想到できることである。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項11の発明と引用発明1との上記相違点(A),(B)及び(K)は,いずれも当業者が容易に想到できるものであり,したがって,請求項11の発明は,乙138~140に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 l請求項12の発明につき本件発明2のうち請求項12の発明と引用発明2とを対比すると,両者は,「計測サンプルを用意し,カスタムサイズの計測をする衣類のオーダーメイド方式。」である点で一致し,「(L)請求項12の発明においては,請求項1の計測サンプルを用意するのに対し,引用- 75 -発明2においては,引用発明1の計測サンプルを用意する点」,「(M)請求項12の発明においては,ヒップサイズを変えたものを,複数用意し,着用者のヒップサイズに応じて計測サンプルを選択して着用させるようにしているのに対し,引用発明2においては,そのようにしているかどうか不明な点」で相違する。 そこで,相違点(L)について検討すると,請求項1の計測サンプルは,引用発明1に,乙139,140に記載された発明を適用することにより,当業者が容易に発明することができたものであることは上記のとおりであるから,引用発明2において,引用発明1の計測サンプルに代えて,請求項1の計測サンプルを用意することは当業者が容易に想到できることである。 次に,相違点(M)について検討すると,引用発明1の計測サンプルにおいて, 2において,引用発明1の計測サンプルに代えて,請求項1の計測サンプルを用意することは当業者が容易に想到できることである。 次に,相違点(M)について検討すると,引用発明1の計測サンプルにおいて,縫製代の幅には限度があり,全ての着用者に対応させることができないことは容易に理解できることであるし,前記甲13には,サイズを変えた複数の計測サンプルを用意しておくことが示されているのであるから,引用発明1の計測サンプルにおいて,サイズの異なる計測サンプルを複数用意し,その中から着用者のヒップサイズに応じたものを選択して着用するようにすることは,容易に想到できることである。 以上のとおり,本件発明2のうち請求項12の発明と引用発明2との上記相違点(L)および(M)は,いずれも当業者が容易に想到できるものであり,したがって,請求項12の発明は,乙138~140に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ウ)一審原告の主張に対する反論a一審原告は,乙138に記載されている発明は,ヒップカップサイ- 76 -ズが調節可能となっているとはいえないと主張しているが,以下に記載するとおり,乙138に記載されている発明も,ヒップカップサイズが調節可能となっているものである。 (a)本件特許2の特許請求の範囲の請求項1には,「身頃のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とす を入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。」と記載されている。この記載からでは,「ヒップカップサイズ」,「ヒップカップ部」の意味については一義的に明らかではないため,明細書の記載を参照すると,本件明細書2(甲3)には,「…ヒップカップサイズとは,(ヒップサイズ)-(脚の付根の水平方向における周長寸法)で表され,脚の付根の水平方向における周長が短い程,ヒップの膨らみの具合は大きくなり,ヒップカップサイズは大きくなる。また,ヒップ部とは,後身のうち左右一対のヒップカップ部と,その間の臀裂部とを含む概念であり,ヒップカップとは,臀部の膨らみを包み込む部位を意味する」(段落【0018】)と記載されていることから,「ヒップカップサイズ」とは,「(ヒップサイズ)-(脚の付根の水平方向における周長寸法)」で表されるものであり,「ヒップカップ部」とは,左右一対ないしは左右それぞれの臀部の膨らみを包み込む部位であると考えられる。また,「ヒップサイズ」に関しては,本件明細書2(甲3)に「ガードルは,前身,後身,股下部及び必要に応じて股口に- 77 -連設される脚囲部を備えており,ヒップ部頂部の周長であるヒップサイズ,ヒップ部の膨らみ具合であるヒップカップサイズ及びウエストの最もくびれた部分の周長であるウエストサイズが重要である。」(段落【0002】)と記載されている。これらの記載からすると,本件発明2において,ヒップカップサイズの調整とは,左右一対ないしは左右それぞれの臀部の膨らみを包み込む部位を調節可能として,「(ヒップサイズ)-(脚の付根の水平方向にお 。これらの記載からすると,本件発明2において,ヒップカップサイズの調整とは,左右一対ないしは左右それぞれの臀部の膨らみを包み込む部位を調節可能として,「(ヒップサイズ)-(脚の付根の水平方向における周長寸法)」を割り出すことに他ならない。なお,ヒップカップサイズとは,左右それぞれのヒップカップ部の膨らみ具合ではなく,ヒップ全体の膨らみ具合を示すものであると解されるから,「脚の付根の水平方向における周長寸法」とは,左右一対の臀部の膨らみの下方部分における周長を指すものと考えられる。 (b)乙138に記載されている発明において,ボトムBの縦切断部6が股口の縁に達するものではないとしても,ボトム部Bの縦切断部6は,ボトム部Bの後面上縁から下方の股間部近傍まで延びるものである。股間部近傍は少なくともヒップ部頂部より下方に位置し,縦切断部6を挟んだ左右の後身頃が,左右それぞれの臀部の膨らみを包み込んだ状態にある。そして,縦切断部6においては,「分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能」とされているのであるから,縦切断部6においては,「分割された一片と他片とを止着することで,ヒップ部頂部から股間部近傍(脚の付根)にかけての周長の調整が可能であるといえ,「(ヒップサイズ=ヒップ部頂部の周長)-(脚の付根の水平方向における周長寸法)」(ヒップカップサイズ)を割り出すことは可能であるといえる。また,脚の付根付近の周長を調整して,ボトム衣類を,ヒップカップ部の膨らみに沿った立体形状とすることは周知のこと- 78 -である(特開2001-49503号公報[発明の名称「ボトム衣類及びその製造方法」,出願人グンゼ株式会社,公開日平成13年2月20日],乙159)。そうすると,乙138において,縦切断部6の重合度合いを調整すること 1-49503号公報[発明の名称「ボトム衣類及びその製造方法」,出願人グンゼ株式会社,公開日平成13年2月20日],乙159)。そうすると,乙138において,縦切断部6の重合度合いを調整すること自体は当業者が普通に行うことというべきである。仮に,乙138に記載されている発明において,股間近傍の周長の調整が可能でないとしてもヒップサイズの調整は可能であるから,乙138に記載されている発明のボトム部Bを試着する際に股間部近傍の周長が体型に合ったものを選択することにより,上記周長の差を割り出すことができる。 (c)したがって,乙138に記載されている発明も,ヒップカップサイズが調節可能となっているものである。 bまた,乙138に記載されている発明が,仮に,ヒップサイズを調節,計測するものであり,ヒップカップサイズを調節,計測するものではなかったとしても,本件特許2の請求項1は,以下のとおり,乙138~140に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (a)本件特許2の請求項1の記載からすると,ヒップカップサイズの調節は,「前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能とされ」ることにより,また,ヒップカップサイズの計測は,「前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記され」ることにより可能となっているものと解される。 (b)これに対して,乙138に記載されている発明においては,「ボトム部Bの縦切断部6は,後面の上縁から下方の股間部近傍まで延びる」のであるから,本件発明2と乙138に記載されている- 79 -発明とは,「ヒップ部が切り込みを入れて分割され」ている点でも一致し,また,乙13 部6は,後面の上縁から下方の股間部近傍まで延びる」のであるから,本件発明2と乙138に記載されている- 79 -発明とは,「ヒップ部が切り込みを入れて分割され」ている点でも一致し,また,乙138に,「また可能ならばマジックテープ(登録商標)等による接合が各縫製代に採用できること言うまでもない。」(段落【0011】)と記載されていることからすると,乙138に記載されている発明においても,「分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で」あるから,請求項1の発明と乙138に記載されている発明とは,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で」ある点でも一致する。 (c)そうすると,請求項1の発明と乙138に記載されている発明とは,「身頃のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。」で一致し,(A’)切り込みが,前者においては,ヒップカップサイズを調整可能とするために,股口からヒップカップ部の略中央に向かっているのに対し,後者においては,ヒップサイズを調整可能とするために,人体の縦方向に沿う縦切断部である点,(B’)前者においては,一片の他辺との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されているのに対し,後者においては,目盛が記されていない点で相違することになる。 (d)相違点(A’)についてみると,ボトムにおいては ,一片の他辺との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されているのに対し,後者においては,目盛が記されていない点で相違することになる。 (d)相違点(A’)についてみると,ボトムにおいては,ヒップカップサイズを含めて,種々の部位において,調整可能部分を設ける- 80 -ことが知られている(乙139,乙141の1,乙147,乙148)。そして,上記のとおり,乙138には,縦切断部の位置,形状を変更できる旨が記載されているのであるから,乙138に接した当業者であれば,乙138に記載されている発明において,調整可能部分を変更すれば,その部位のサイズの計測サンプルとすることができることは,容易に理解できることである。上記のとおり,乙139には,ヒップカップサイズの調整手段が記載されているのであるから,この調整手段を,乙138に記載されている発明に適用して,ヒップカップサイズを計測可能な計測サンプルとすることは当業者が容易に想到できることというべきである。 (e)相違点(B’)についてみると,上記のとおり,乙138に記載されている発明においても,サイズの計測が必須のものであるところ,乙140には,サイズ計測用の目盛を設けることが記載されており,乙138に記載されている発明において,乙140記載の発明を適用してヒップカップサイズを調整可能な計測サンプルとするに当たり,一片の他辺との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛を記すことは,当業者が容易に想到できることといえる。 (f)以上のとおり,乙138に記載されている発明が,仮に,ヒップサイズを調節,計測するものであり,ヒップカップサイズを調節,計測するものではなかったとしても,当業者が容易に発明をすることができたものである。 c一審原告は,乙139について,「切り込み(ダーツ サイズを調節,計測するものであり,ヒップカップサイズを調節,計測するものではなかったとしても,当業者が容易に発明をすることができたものである。 c一審原告は,乙139について,「切り込み(ダーツ)によって分割された一片と他片を着脱自在に止着することや,ヒップカップサイズの計測のために用いられることについては,乙139には記載も示唆もされていない。また,乙139のダーツ65は,個体差に応じて設計されるものではなく,人の標準的な臀部の丸みを想定し- 81 -て設計され,縫製されるものというべきである。」と主張している。 しかし,そもそも人体の丸みを帯びた部分について立体形状とするためにダーツを入れるということは周知の技術であり,丸みに個体差があることからダーツを入れる長さや量を変化させるということも,ファンデーション業界にとどまらず,服飾業界一般で周知のことである(乙146~148,乙139)。 そして,乙139は,従来の製品について「これらの製品を調べてみると,大半の製品はガードル本体そのものが,股間部や臀部や臀裂部の形状にマッチせず,平面的な設計構造となっていることが知れる。」(明細書4頁15行~18行)とし,「伸縮性芯材をどのように配列しても,ガードル本体の設計裁断内容が,従来製品のようにボトム各部にフィット性を欠いている限り,ズレや弛みや喰込みが発生してしまい,所望の補正効果は望めない。」(明細書6頁17行~19行)との問題点を記載し,この問題の解決(ボトム各部にフィット性を有するガードルを提供する)のために,「臀突位部上の臀突部より臀部下辺に至る部位に切り替えダーツ部を設けて臀部形状に準じた形状と」することが記載されている(明細書14頁2行~3行)。 上記の記載からすれば,乙139には,少なくとも製品サイズ毎に臀部にフ より臀部下辺に至る部位に切り替えダーツ部を設けて臀部形状に準じた形状と」することが記載されている(明細書14頁2行~3行)。 上記の記載からすれば,乙139には,少なくとも製品サイズ毎に臀部にフィット性を持たせるべく切り替えダーツ部が設けられ,ダーツの合わせ量を調整することによりヒップカップサイズを調整することが開示されていることになる。そして,乙138には,切り込み(ダーツ)が,ヒップサイズの計測のために用いられること,切り込み(ダーツ)が,個体差に応じて設計されるものであること,切り込み(ダーツ)によって分割された一片と他片を着脱自在に止着することが記載されている。しかも,乙138には,縦切断部の位置,形状を- 82 -変更できる旨が記載されている。したがって,乙138に記載されている発明の縦切断部に代えて乙139記載のダーツを用いて,請求項1の発明をすることは容易であるというべきである。 (7)争点(7)(仮想実施料率)についてア原判決は仮想実施料率を3%と認定している。しかし,本件発明1について無効理由が存在することは既に確定しているし,本件発明2についても無効理由が存在することは前述したとおりであるから,仮想実施料率は高く見積もっても1%以下に過ぎないというべきである。 イ原判決は,一審被告の営業利益率は合算すると,●●●●●と認定している(127頁24行)。 一審被告は,補整下着の販売を本業としており,HMSを実施するまでにオーダーメイド商品の販売を行っていたのであり,従来製品の製造を委託している製造メーカーが存在し,その協力が得られたのであるが,そのような一審被告ですら,このような営業利益率しか上げられない。とすれば,通常のファンデーションメーカーにおいてはさらに低い利益率となることは容易に想定できる。そして の協力が得られたのであるが,そのような一審被告ですら,このような営業利益率しか上げられない。とすれば,通常のファンデーションメーカーにおいてはさらに低い利益率となることは容易に想定できる。そして,原判決においても認定されているようにHMSには根本的欠陥というべき欠点が存在しており,第二生産部という開発部隊を置き,その実施に向けて多額の投資を行った一審被告でも継続を断念せざるをえなかったように,長期の実施は困難であること,結局はHMS商品について顧客離れが生じ,一審被告もレディメイドに回帰することになったこと等の事情を考慮すると,仮想実施料率は上記のとおり高く見積もっても1%以下と考えるのが相当である。 (8)争点(8)(一審被告の貢献)及び争点(9)(一審原告の処遇)について以下のとおり,本件各発明の実施により一審被告が得た利益に対する一審被告の貢献度が80%という判断は低すぎるものといえる。 ア総論- 83 -HMS商品の売上が多額となり,その結果,本件各発明により使用者である一審被告が受けるべき利益の額が37億5502万3672円という高額になったのは,一審被告が多額の販売促進費用を投入したことが相当程度寄与しているからであるが,このことは,本件各発明自体の価値がさほど大きくないことを意味する。 本件各発明のうち,本件発明1は無効理由の存在によって特許自体が無効であることが確定しているし,本件発明2についても無効理由の存在が認められるから,このような無効理由が存在している本件各発明に客観的な価値があるとは考えられない。 このように本件各発明にさしたる価値が認められないにもかかわらず,一審被告の多額の販売促進費用の投入という営業努力等によって使用者の受けるべき利益の額が高額になるような場合には,公平の見地から,本件各発明の 本件各発明にさしたる価値が認められないにもかかわらず,一審被告の多額の販売促進費用の投入という営業努力等によって使用者の受けるべき利益の額が高額になるような場合には,公平の見地から,本件各発明の実施により一審被告が得た利益に対する一審被告の貢献度は高く見積もらなければならない。このような立場からすると,原判決の80%という一審被告の貢献割合は,そもそも相当性を欠く判断といわざるを得ないものである。 また,原判決の80%という一審被告の貢献割合は,近年の職務発明対価請求事件において認定される使用者等の貢献割合の数値から見ても突出した値である。 イ本件各発明の完成に対する一審被告の貢献につき(ア)本件各発明は一審原告単独の発明ではない。 原判決は,本件各発明が一審原告単独の発明であると認定しているが,この認定が誤りであることについては,前記(1)(2)のとおりであり,本件各発明は一審原告を含む発明者による共同発明である。 (イ)一審原告が個人的に購入した市販の下着類を用いたとは考えられない。 - 84 -原判決は,本件各発明の開発に際し,一審原告が個人的に購入した市販の下着類を用いたと認定しているが,この認定は経験則に反する。 すなわち,本件発明1について,一審原告は,個人的に購入した市販の下着類をハサミで切って各部分を面ファスナーで接合したものが試作品第1号であったと述べ,それ以外にも試作品は存在したと述べている(甲79の22頁2行~5行,原審における原告本人尋問調書47頁)が,これらの試作品は法廷に提出されていない。これらの試作品は,本件発明1の開発過程で生まれたものであり,開発過程を解明する上で極めて重要な意味を有する物件であり,しかも一審被告が発明者性を争っているにもかかわらず,試作品は法廷に提出されなかったし,提出でき 件発明1の開発過程で生まれたものであり,開発過程を解明する上で極めて重要な意味を有する物件であり,しかも一審被告が発明者性を争っているにもかかわらず,試作品は法廷に提出されなかったし,提出できない理由の説明もなされていない。したがって,原判決が,本件発明1の開発において,一審原告が個人的に購入した市販の下着類を用いたと認定したことは経験則に反するものである。 (ウ)本件各発明に至る基本的な着想を,一審被告の業務とは関係なく一審原告が取得したとはいえない。 原判決は,本件各発明に至る基本的な着想は,一審被告の業務とは関係なく一審原告が取得したものであると認定するが,この認定も経験則に反する。すなわち,一審原告は,本件各発明の開発経緯において,一審被告入社のはるか以前から,体感できるオーダーメイドの下着というものが必要であると考えていたと述べていたが(甲79の5頁3行~19行,28頁下12行~下10行),一審原告に対する反対尋問において,体感できるオーダーメイドの下着が必要だと考えるに至ったのは,一審被告のフルオーダーでは事前に着用感が確認できないという問題点があり,それを認識することによって,体感できるオーダーメイドの下着が必要であると考えるに至ったと供述している(原審における原告本人尋問調書40頁)。このように,仮に一審原告の供述に従ったとして- 85 -も,本件各発明は,一審原告が一審被告のフルオーダー事業の問題点を解決するために開発されたものであり,本件各発明に至る基本的着想は,まさに一審被告の業務に関連していたといわざるを得ない。にもかかわらず原判決は,本件各発明に至る基本的な着想は一審被告の業務とは関係なく一審原告が取得したものであると認定しており,このような認定は経験則に違反する。本件発明1の出願を依頼する際に,一 。にもかかわらず原判決は,本件各発明に至る基本的な着想は一審被告の業務とは関係なく一審原告が取得したものであると認定しており,このような認定は経験則に違反する。本件発明1の出願を依頼する際に,一審原告が作成の上,大島特許事務所に持参した「明細書」と題する書面(乙135)において,【考案が解決しようとする課題】に「(A)計測場所へ計測サンプルをたくさん運ぶ必要がある。」,【考案の効果】に「(A)計測サンプルのコンパクト化により移動が容易になる。」との記載がなされている。これは当時一審被告において,実際にオーダーメイドの計測を行っていた第二生産部員が多数のサンプルを持ち運んでおり,サンプルの軽量化が課題とされていたことが反映されたものであり,この点でも本件発明1が一審被告の当時置かれていた状況から業務に関連して開発されたものであることが理解できる。 (エ)一審原告は一審被告のCADを利用した。 原判決は,一審原告が一審被告のCADを用いて本件各発明の開発を進めた点について,CADが本来研究用の機器ではないという一事をもって,本件各発明の完成に対する一審被告の貢献事由には該当しないとの判断をしている(130頁下5行~下4行)。しかし,研究用に購入されたわけではない機器であっても,そのような機器を利用して開発行為がなされることは職務発明の性質上よく見られることであるから,研究用に購入されていない機器を利用した場合であっても,使用者等の貢献事由として考慮しない理由はないはずである。 本件の場合,一審原告は,平成12年6月,第二生産部のCAD主任として一審被告に入社し,6万円の職務手当を含む月額40万円もの給- 86 -与を支給されており(乙58の1),CADを使用して一審被告の業務に貢献することが期待されていたし,実際,自由に一審被告の して一審被告に入社し,6万円の職務手当を含む月額40万円もの給- 86 -与を支給されており(乙58の1),CADを使用して一審被告の業務に貢献することが期待されていたし,実際,自由に一審被告のCADを利用していた。このような一審原告への給与の支給及びCAD利用の実態から見て,一審原告が一審被告のCADを用いて本件各発明の開発を進めた点は,本件各発明の完成に対する一審被告の貢献事由に該当すると判断すべきである。 (オ)一審被告は研究開発費や研究設備費を出捐し研究開発のための特別の時間を与えた。 原判決は,一審被告が本件各発明の完成に至る経過において,研究開発費や研究設備費を出捐していないことや,一審原告に対して研究開発のための特別の時間を与えていないことを指摘している(130頁下4行~下1行)。しかし,本件各発明の技術的思想の本質的部分が,着脱可能で,着用時にフィット感を確認できる計測用サンプルを構成する点にあると考えるべきことからすると,一審被告の新大阪BG店内において,HMSメジャー開発に必須のフィッティングを行わせたり,オーダー研究会の開催を認め,その会において,一審被告の社員らが試作品の着用感や耐久性の改善点を指摘していることなど(原審におけるG証人の尋問調書9頁~15頁,乙59の1~6)は,一審被告において研究開発費や研究設備費を支出していると評価できる。また一審原告については,オーダーメイド事業における納期遅れの解消及び効率化ということを目的に一審被告に入社しており,入社後においても自らCADを用いて個々のオーダーに応じたパターン図を作成していたわけではなく,オーダーメイド事業の推進をどのように行っていくかということを検討していたのであり,オーダー研究会に参加して,勤務時間中にGやSと本件各発明について協議したり パターン図を作成していたわけではなく,オーダーメイド事業の推進をどのように行っていくかということを検討していたのであり,オーダー研究会に参加して,勤務時間中にGやSと本件各発明について協議したり(原審におけるG証人の尋問調書8頁以下,S証人の尋問調書3頁~6頁),広瀬工業への出張をしており(乙- 87 -18),一審被告は本件各発明の開発について特別に時間を与えたといえる。 このように,一審被告は,本件各発明の開発に対して,研究開発費や研究設備費を出捐し,また一審原告に対しても,研究開発のための特別の時間を与えていたから,これらの点も,本件各発明の完成に対する一審被告の貢献事由に該当すると判断すべきである。 (カ)デューブルベ試着に基づく計測器具開発という一審被告による目標設定があった。 原判決は,一審被告の社員Dがワコールのデューブルベを体験試着し,その報告に基づき一審被告においても計測器具を開発すると目標設定したことについて,デューブルベで採用されていたバージスの計測方法は,それ自体独立したバージスメジャーを使用するものであり,着用感を確かめるために着用するゲージブラはカップと一体となって切り離せないものであったことが認められるから,デューブルベ試着が本件各発明の技術的思想に何らかの寄与をしたとは認められないと判断している(131頁6行~13行)。 確かに,デューブルベのバージスメジャー及びゲージブラと本件各発明の技術的思想には相違する部分があるが,そもそも計測器具を開発するという目標設定は本件各発明の完成の動機となるものであり,このような目標設定がなければ本件各発明そのものがなされなかったか,開発されたとしても相当な時間を要したはずである。 原判決は,一審原告が平成11年9月に本件各発明を独自に着想し開発を進めたものであ のような目標設定がなければ本件各発明そのものがなされなかったか,開発されたとしても相当な時間を要したはずである。 原判決は,一審原告が平成11年9月に本件各発明を独自に着想し開発を進めたものであると認定するが,Dがデューブルベの体験試着をしたのが平成11年9月9日であり,その結果を一審被告の第2生産部の会議で報告したのが同月21日であり(乙129),そこでワコールとは異なる計測器具の開発が決定されたのである(乙72,原審における- 88 -G証人の尋問調書7頁)。このような時系列からすると,一審被告独自の計測器具の開発という目標設定がなされ,それを認識した一審原告が本件発明1の開発に着手したと理解するのが自然である。 このように,一審被告独自の計測器具を開発するという目標設定は,本件発明1の開発を可能にしたか,あるいは開発に要する時間を短くしたという点において,本件各発明の完成に貢献したといえる。 (キ)フルオーダーの納期遅延及び採寸ミス解消という一審被告による課題解決の付与があった。 原判決は,本件各発明の解決課題は,着用時にフィット感のある衣類を提供し,フィット感を確認した上で注文することができるオーダーメイド用計測サンプルを提供することであり,納期遅延や採寸ミスの解消とは異なるとする(131頁14行~132頁6行)。 しかし,本件各発明の解決課題は,一審被告におけるフルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という課題があって初めて生まれたものである。すなわち,一審被告のフルオーダー事業は,当初よりフルオーダーであるにもかかわらずフィット感が悪いというクレームが発生しており,また納期遅延の原因の一つに採寸者ごとに採寸方法がバラバラで統一された採寸方法が採用されていなかった点があったことから,フィット感を事前に確認し,かつ統一さ ト感が悪いというクレームが発生しており,また納期遅延の原因の一つに採寸者ごとに採寸方法がバラバラで統一された採寸方法が採用されていなかった点があったことから,フィット感を事前に確認し,かつ統一された採寸方法を確立しなければならないという課題が生まれ,その課題を解決しようとしたのがまさに本件各発明なのであった。 このようにフルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という課題を解決するべく本件各発明が開発されたわけであり,一審被告の付与した解決課題が,本件各発明の開発に寄与したといえるから,本件各発明の完成に至る経過における一審被告の貢献として考慮されるべきである。 (ク)一審被告はフルオーダー事業のノウハウやデータ利用を許容した。 - 89 -原判決は,フルオーダー事業におけるノウハウやデータを一審被告が蓄積し,その利用を許容したことについて,そのノウハウやデータが本件各発明にどのように寄与したのか不明であると判断している(132頁7行~8行)。 しかし,一審原告自身が本件各発明の開発に際して,一審被告のオーダーメイド事業で得られたデータを検討したということを認めている。 また,本件各発明の技術的思想の本質的部分は,着用可能で,着用時にフィット感を確認できる計測用サンプルを構成する点にあるとすれば,オーダー研究会において,第二生産部のメンバーがHMSメジャーの試作品に対して,着用感や耐久性の改善点を指摘し,これらの指摘に基づいて着用可能なものへと試作品の改善がなされていることは,まさに一審被告が保有していたノウハウが本件発明1の開発に寄与していたものと評価することができる。また,本件発明2は,一審被告の協力工場である広瀬工業のFが作成した図面(乙19~23)に基づき,試作品を製作し,着用テストを行った上で,第二生産部が広瀬工業と連携し たものと評価することができる。また,本件発明2は,一審被告の協力工場である広瀬工業のFが作成した図面(乙19~23)に基づき,試作品を製作し,着用テストを行った上で,第二生産部が広瀬工業と連携しながら,図面を改良し,止着部の製作・改良を行っていくという流れで開発されており,やはり一審被告のノウハウ(一審被告に対する広瀬工業のノウハウの提供)が本件発明2の開発に寄与していたものと評価することができる。 ウ本件各発明の完成後の一審被告の貢献につき(ア)原判決は一審被告が多額の販売促進費用を投入したことについて,一審被告の貢献として全く考慮しておらず,この点で不当である。すなわち,原判決は,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合の判断において,一審原告の2分の1を下らないという主張をそのまま採用しているが,そもそも一審被告は本件各発明に対する法定の通常実施権を有している(特許法35条1項)。原判決の判断は,一審被告の法- 90 -定の通常実施権による控除を認めただけということになり,一審被告による多額の販売促進費用の投入(その投入による売上高増加との因果関係については原判決も認めている)という重要な事実については,全く考慮していないということになる。一審被告がHMS商品の販売において多額の販売促進費用を投入したことは,本件各発明の寄与割合については勿論,本件各発明の完成後の一審被告の貢献としても考慮されなければならない。 (イ)原判決は,HMS商品の実用化,本件各発明の特許出願に当たり,一審被告の役割を認定しているものの,一審原告が特許出願に当たり出願書類のチェックを行っており,主導的な役割を果たしたとして一審原告の貢献が大きいかのような認定を行っている。 しかし,一審原告が本件発明1について出願を担当した大島特許事務 原告が特許出願に当たり出願書類のチェックを行っており,主導的な役割を果たしたとして一審原告の貢献が大きいかのような認定を行っている。 しかし,一審原告が本件発明1について出願を担当した大島特許事務所に赴いた際に持参したのは,乙135(明細書)であり,いわばこの程度の書類を作成する能力しかなく(このような記載内容では出願しても権利とならないことは明らかである。),また,実用新案登録出願を想定していた程度のものに過ぎなかった。本件発明1については,一審被告が出願を依頼したh弁理士から特許出願をしたらという示唆があって特許出願に切り替えたものである。そして,出願及びその後の手続については,一審被告の法務担当であったUを中心に対応しており,出願書類及びその後手続書類のチェックについても同人が行っていた。そして,一審被告は早期に特許化すべく早期審査を特許庁に申し出ている。 その後,平成14年9月2日付けで拒絶理由通知が出され(甲9),一審被告は,意見書を提出し補正を行ったものの,同年11月22日付けで拒絶査定がなされた(甲23)。これに対して,大島特許事務所を通じて平成14年12月26日付けで拒絶査定不服審判請求を申立て(甲15),平成17年1月26日に拒絶査定取消審決がなされて登録に至- 91 -った(甲17)ものであり,これらの特許庁に対する早期審査の請求,拒絶理由通知への対応,拒絶査定に対する審判請求は全て一審被告が費用を負担して行ったものであるから,一審被告が本件発明1に関して特許権を取得するに当たり行った貢献は非常に大きいといえる。 また,本件発明2についても,出願依頼の際に一審原告が大島特許事務所に持参した「明細書」と題する書面(乙136)には,簡単な内容が記載されているのみであり,出願に耐えられるようなものではなかった。本件 ,本件発明2についても,出願依頼の際に一審原告が大島特許事務所に持参した「明細書」と題する書面(乙136)には,簡単な内容が記載されているのみであり,出願に耐えられるようなものではなかった。本件発明1と同様に,出願及びその後の手続については,一審被告の法務担当であったUを中心に対応しており,出願書類及びその後の手続書類のチェックも同人が行っていた。一審原告が出願書類をチェックして本件発明2についての特許化について主導したということはない。 そして,一審被告は早期に特許化すべく早期審査を特許庁に申し出ている。その後,平成14年11月20日付けで拒絶理由通知が出され(甲18),一審被告は,意見書を提出し補正を行ったものの,平成15年2月12日付けで拒絶査定がなされた(甲24)。これに対して,大島特許事務所を通じて平成15年3月19日付けで拒絶査定不服審判請求を申立て(甲19),平成17年5月23日に拒絶査定取消審決がなされて登録に至った(甲21)ものであり,これらの特許庁に対する早期審査の請求,拒絶理由通知への対応,拒絶査定に対する審判請求は全て一審被告が費用を負担して行ったものであるから,一審被告が本件発明2に関して特許権を取得するに当たり行った貢献は非常に大きいといえる。 このような一審被告の本件各発明に対する権利化における貢献を原判決は十分に評価せず,一審原告が権利化を主導したかのように認定し,一審原告の貢献を課題に評価している点で原判決は不当である。 (ウ)また,原判決は,一審原告がHMS商品のサイズの決定や資材選- 92 -び,製造工場との調整,販売員の研修について主導的役割を果たしたと認定している(132頁下4行~下2行)。 一審原告は商品企画室の室長として,そのような仕事を行うべき立場にはあったが,実際には,部下である 造工場との調整,販売員の研修について主導的役割を果たしたと認定している(132頁下4行~下2行)。 一審原告は商品企画室の室長として,そのような仕事を行うべき立場にはあったが,実際には,部下であるSに任せているところが大きく,販売員の研修についてはGが主導的な役割を担っており,原判決が認定するような全てについて一審原告が主導的な役割をしていたわけでは全くなく,それぞれが仕事を分担しつつ自らが担当する仕事について主導的な役割を果たしていたのである。 (エ)HMSメジャーその他関連器具の製作費の支出製造部門を持たない一審被告の場合,本件各発明の実施品であるHMSメジャーの製作も外部の協力工場に依頼しており,製作費の支払がなされている。主要なものを拾い上げると,HMS商品の試験販売を開始した第24期(平成12年9月1日から平成13年8月31日まで)に,当初370セット分として1億2700万円もの費用が発生し,次の第25期(平成13年9月1日から平成14年8月31日まで)には,HMS補充交換用300セット分として850万円,HMSメジャー(ガードル)450セット分として1700万円,第26期(平成14年9月1日から平成15年8月31日まで)はHMSメジャー(ショートガードル)として2995万円,HMSメジャー(ロングガードル)200セット分として540万円,第27期(平成15年9月1日から平成16年8月31日まで)は,HMSメジャー(ボディスーツ)として3024万2000円,HMSメジャー(ロングガードル)として262万2000円,HMSメジャー(4/5カップ)用として119万円,HMSメジャーとして2890万円,GLメジャーとして745万円,第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)はメジャー(補充分)として492万 ー(4/5カップ)用として119万円,HMSメジャーとして2890万円,GLメジャーとして745万円,第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)はメジャー(補充分)として492万円,HMSメジャー(ボディ- 93 -スーツ拡張)分として1863万円などが発生している(乙151)。 これ以外にも,HMSメジャーの修理代や協力工場へのPC設置費用,ソフト開発費,サーバー費用などが発生している。 このように,一審被告はHMSメジャーの製作費,その他ハイブリッドメジャーシステムを維持運営して行く上で必要な機器の費用を負担しており,これらは本件各発明の完成後の一審被告の貢献として考慮されるべきである。 (オ)HMSメジャーの品質管理HMSメジャーは,その使用及び洗濯によって,身生地部分が伸長したり,劣化したりするが,HMSメジャーは着用感が体感できる計測サンプルであり,かつ,お客様の肌に直に接触するものであるため,伸長したり汚れたりしているHMSメジャーを使用し続けることはできず,必然的に,定期的な交換やメンテナンスが必要となる。定期的な交換やメンテナンスは,ハイブリッドメジャーシステムを継続していく上で不可欠な品質管理業務である。 このHMSメジャーの品質管理業務については,平成16年1月26日,一審被告社内において「ハイブジッドメジャー管理ミーティング」が開催され(乙152の1),平成15年12月に実施されたアンケート調査の結果報告がなされるとともに,HMSメジャーの設計面での強化や品質維持のための定期的な交換等が課題として指摘された。平成16年2月5日,商品管理部のSを中心として,HMSメジャーの問題点の洗い出しがなされ(乙152の2),同年3月5日,HMSメジャーの消耗試験の打ち合わせが実施されている(乙152の 摘された。平成16年2月5日,商品管理部のSを中心として,HMSメジャーの問題点の洗い出しがなされ(乙152の2),同年3月5日,HMSメジャーの消耗試験の打ち合わせが実施されている(乙152の3)。そして,3月初めから6月中旬にかけて,一審被告の9店舗で消耗試験が実施され,同年7月15日,その調査結果の報告がなされ,HMSメジャーの問題点とその対策が検討された(乙152の4)。そして,洗濯の仕方- 94 -や設計上の変更,定期検査の段取りなどが取り決められた(乙152の4)。 このように,一審被告はHMSメジャーの品質管理業務を積極的に行っており,かかる業務は本件各発明の完成後の一審被告の貢献として考慮されるべきである。 (カ)一審被告による全国300店舗以上の販売店の開設,2000名以上の営業社員の確保HMS商品は第24期の期中である平成13年6月から試験販売が開始されたが,第25期には年間100億円以上の多額の売上げを計上している。このようにHMS商品の売上額が,発売開始後わずか1年余りで年間100億円を超える売上を達成することができたのは,一審被告が,全国に300店舗以上の店舗網を既に有しており,2000名近くの営業社員を確保していたからであり,一審被告によってこのような基礎的営業基盤が確保されていなかったならば,短期間に100億円を超える巨額の売上を計上することはできなかったはずであるし,第26期以降の売上も達成することはできなかったはずである。 一審被告は,直営店舗の運営のために,年間20億円前後の賃借料を継続的に負担し,かつ営業社員の人件費として年間45億円から52億円程度を継続的に負担してきており,基礎的営業基盤の確保に多額の投資を行っている。各店舗ではレディメイド商品も販売しており,営業社員もHMS商品だ ,かつ営業社員の人件費として年間45億円から52億円程度を継続的に負担してきており,基礎的営業基盤の確保に多額の投資を行っている。各店舗ではレディメイド商品も販売しており,営業社員もHMS商品だけを扱っているわけではないが,一審被告による継続的な賃借料と営業社員人件費の負担があったからこそ,HMS商品の巨額の売上が達成されたという事実は明らかである。 このように一審被告が基礎的営業基盤として,多額の賃借料及び営業社員の人件費を継続的に負担しているという事実は,本件各発明の完成後の一審被告の貢献として考慮されるべきである。 - 95 -(キ)会員組織の設立一審被告は,第25期の期中に愛用者組織として「マルコビューティクラブ」という会員組織を立ち上げている。この組織は顧客の囲い込みを目的とし,そのために会員には割引などの特典を付与している。一審被告が自社製品の愛用者を組織化することにより,リピート率を高める効果が見込まれるから,HMS商品の売り上げにもかかる愛用者組織の立ち上げは一定の寄与があったものと推認できる。よって,「マルコビューティクラブ」という愛用者組織の立ち上げも本件各発明の完成後の一審被告の貢献として考慮されるべきである。 (ク)新製品の開発HMSメジャーは計測器具に過ぎないから,HMSメジャーだけではHMS商品が作れないことは明らかであるが,出来上がったHMS商品はレディメイド商品と外形的には同じである。したがって,新製品を次々に開発し販売しなければ,陳腐化する運命にある。 平成13年6月のHMS商品(ブラジャー)の試験発売後,一審被告は数々の新製品を発売しており,概ね2~3か月に一度の割合でHMS商品の新製品を発売している。 このような一審被告によるHMS商品の新製品開発に要する費用,時間,労力の投下は,HMS 売後,一審被告は数々の新製品を発売しており,概ね2~3か月に一度の割合でHMS商品の新製品を発売している。 このような一審被告によるHMS商品の新製品開発に要する費用,時間,労力の投下は,HMS商品の売上げ増加に寄与するものであり,本件各発明の完成後の一審被告の貢献として考慮されるべきである。 エ一審原告の処遇原判決は,一審被告による一審原告の処遇について,取締役の報酬は取締役の職務執行の対価であるから,その中に職務発明の対価を観念することはできないとして,一審被告の主張を採用しなかった(133頁6行~11行)。 しかし,発明とその実施に向けた貢献がなければ,取締役には就任でき- 96 -ず,それに伴う地位も報酬も得られなかったということは,その地位と報酬は当該発明の創出と実現化に対する報償に他ならない。 一審原告は平成12年6月21日に一審被告に途中入社をしており,入社時の処遇としては,CAD室長として第二生産部の実務責任者という立場であった。基本給は21万円であり,職務給,能力給,特別給を合わせて月額40万円と多額ではあるが,基本給自体は年齢と比較すればさほど多額というわけでもない。ところが,本件特許1を出願し,HMSブラジャーを発売することが決定した平成13年4月の翌月である5月から業績給が7万円から12万円に上がって月額給与額は45万円となり,実際にHMSブラジャーが発売された平成13年6月から約2か月後の同年9月の給与から,特別給が6万円から11万円へと増額されて,月額給与が50万円となっており,平成14年2月に本件特許2が出願され,HMSガードルが発売されたわずか半年後の平成14年9月からは,100万円の報酬を受けることとなっている(取締役就任は同年11月)。上記のような経緯からすれば,一審原告の給与の増額が本件各 願され,HMSガードルが発売されたわずか半年後の平成14年9月からは,100万円の報酬を受けることとなっている(取締役就任は同年11月)。上記のような経緯からすれば,一審原告の給与の増額が本件各発明と直接関係しており,入社からわずか2年という短期間にCAD室長という立場から取締役に昇進するという異例の昇進と報酬を得ることができたのは,本件各発明と直接関係していることは明らかである。 オ一審原告の主張に対する反論(ア)一審被告の社内には独自の研究開発部門はなかったが,本件各発明の開発に当たっては,社内に「オーダー研究会」なる研究会を設けて,定期的にHMSメジャーの検討会が開かれており,事実上,本件各発明の研究部門的な役割を担っていたし,社内に蓄積されていたパターン図の利用やオーダー研究会に出席していた熟練営業社員による改善点の指摘などは,まさに社内のノウハウが本件各発明の開発に寄与していたといえる。 - 97 -また,一審原告の入社当初の業務がフルオーダーの納期遅れの解消にあったとしても,そこから得られたフルオーダーシステムの問題点や営業社員からの要望が,本件各発明の開発動機に繋がっているのであり,フルオーダーの納期遅れの解消作業は,まさに本件各発明の開発に寄与したといえる。 さらに,本件各発明が,一審原告が入社前から温めていたアイデアをもとに開発されたものでないことは上記のとおりであり,フルオーダー事業の問題点の改善が本件各発明の開発動機となっていたわけである。 また本件各発明の開発は,オーダー研究会での検討や一審被告の社員らとの意見交換の中で行われたものであり,一審原告から試作品すら提出されていない本件においては,開発に当たって使用された資材も個人的に所有しているものではないと推測されるところである。一審原告は,特許出願 見交換の中で行われたものであり,一審原告から試作品すら提出されていない本件においては,開発に当たって使用された資材も個人的に所有しているものではないと推測されるところである。一審原告は,特許出願における弁理士との調整も1回目こそ同席したものの,2回目以降は会社の法務部員であるUが主として執り行っており,補正手続や審判請求などの法的対応には関与していないし,商品化においてもどの程度貢献したのかは不明である。 (イ)旧35条の規定が,使用者等と従業者等との利害調整規定であることからすれば,「使用者の貢献」に発明完成に至る経緯における貢献だけではなく,発明完成後の貢献,すなわち発明を出願し権利化したり,特許を維持するための貢献や,実施製品の売上げを得るための貢献,発明者への処遇その他諸般の事情が含まれると解するのが相当かつ公平であり,裁判例の主流もそのように判断している。 (ウ)一審原告は,原判決が認定した一審被告の貢献事由は,いずれも営利を目的とする会社であれば当然に行うものに過ぎないと主張するが,「オーダー研究会」を社内に設けることを認め,集中的にHMSメジャー及びHMS商品の実用化に向けての検討を行わせたり,第二生産部と- 98 -いう専属の部署の設置や外部協力工場への協力要請及びその費用負担や権利化に当たって補正手続や審判請求まで行ったりしたことは,営利企業であれば当然行われるものに過ぎないと評価される行為を大きく超えるものといえる。また,HMSメジャーを全店舗に配置し,販売社員にHMSメジャーの計測方法についての研修を行ったり,多額の販売促進費用を投じたりした点についても,全営業店舗の賃料額(年間約20億円)や営業社員の人件費額(年間約34億円から52億円),そして販売促進費用の額(最も少ない第25期で年間21億円,最も 額の販売促進費用を投じたりした点についても,全営業店舗の賃料額(年間約20億円)や営業社員の人件費額(年間約34億円から52億円),そして販売促進費用の額(最も少ない第25期で年間21億円,最も多い第27期で年間34億円)が,いずれも多額であることからすれば,営利企業が負担すべき費用の額を大きく上回るものであるといえる。このように,原判決が認定した本件各発明完成後の一審被告の貢献事由については,営利企業であれば当然に行うものに過ぎないとはいえないものばかりである。 (エ)一審原告が取締役を退職した際に役員慰労金が支給されていない点については,一審被告においては,取締役に対する退職慰労金規程が存在しないため,一審原告だけでなく,同時期に退任した他の取締役に対しても,退職慰労金は支給されていないし,また,社員に対する退職金規程では,「勤続3年以上」が支給要件となっており,このような要件に該当しなかったために支給されなかったに過ぎない。したがって,一審原告に対して退職慰労金や退職金が支給されていないことをもって,本件職務発明の相当対価の増額要素と認めることはできない。 カまとめ以上のとおり,本件各発明により一審被告が受けるべき利益の額に対する一審被告の貢献割合が80%であるとした原判決は誤りであり,一審被告の貢献割合は95%を下回るものではない。 (9)当審における争点(10)(当審における請求拡張の適否)について- 99 -一審原告は,平成21年9月24日付けで附帯請求の起算日を「平成14年2月17日」から「平成13年6月1日」に繰り上げる旨の請求の拡張を行った。しかし,この請求の拡張は,これにより著しく訴訟手続を遅滞させることになるので,民訴法297条,143条1項ただし書により,許されない。その理由は,以下のとおりである 上げる旨の請求の拡張を行った。しかし,この請求の拡張は,これにより著しく訴訟手続を遅滞させることになるので,民訴法297条,143条1項ただし書により,許されない。その理由は,以下のとおりである。 ア一審原告は,一審被告が中間利息の控除の主張を行ったことを受けて,請求の拡張を行うと主張しているが,一審被告が中間利息の控除の主張を行ったことと,一審原告が職務発明の対価請求権の弁済期が平成13年6月1日に到来していると主張することの間には,論理的な関連性はない。 なぜなら,遅延損害金の起算日は,当該債務の性質に従い,かつ法律上の障害事由がない限り,権利者が任意に選択できるからである。 イまた,一審原告は,当審第2回口頭弁論期日において,裁判所より,次回期日(本期日)をもって弁論を終結すると言い渡されていたにもかかわらず,控訴提起から7か月経過した平成21年9月24日の第3回口頭弁論期日になって,突如,請求拡張の申立てを行ってきた。一審原告に請求の拡張を認めなければならないようなやむを得ない事情はない。 ウそして,仮に一審原告による請求の拡張が認められると,本件において,職務発明の対価請求権の弁済期が何時なのか,すなわち,原判決が認定した,本件職務発明の対価請求権は債務の履行について期限の定めのない債務なのか否か,という論点について,更に主張反論を尽くさねばならず,その結果,本件訴訟手続が著しく遅延する。 (10)当審における争点(11)(中間利息控除の可否)について職務発明における相当対価請求権は,従業者が使用者に特許を受ける権利を承継させたことにより発生する権利であるから,その金額の算定も権利が承継された時点において行うべきものであると解される。そして,中間利息の控除は,相当対価を算定する際の「使用者が受けるべき利益の額」の算定 たことにより発生する権利であるから,その金額の算定も権利が承継された時点において行うべきものであると解される。そして,中間利息の控除は,相当対価を算定する際の「使用者が受けるべき利益の額」の算定- 100 -の問題であるから,中間利息控除の始期は,特許を受ける権利が承継された時点である。 なお,最高裁昭和55年12月18日第一小法廷判決・民集34巻7号888頁は,安全保証義務違反による損害賠償を請求した事案において,安全保証義務違反による損害賠償債務は期限の定めのない債務であり,民法412条3項により債権者から履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥ると判示したが,債権者(被害者)の逸失利益の算定においては,権利発生時からの中間利息控除を認めた原審判断をそのまま是認している。また,従業者は,職務発明における相当対価請求権が発生した後直ちに使用者に対し請求を行い,遅滞に陥らせることが法的に可能なのであるから,権利発生と同時に,使用者が将来受けるべき利益について中間利息控除を認めても不当ではない。さらに,使用者が履行遅滞に陥っていない限り中間利息控除はなしえないとすると,発明者の請求の有無やその時期によって,中間利息控除がなされず,あるいは中間利息控除がなされる時期が異なるため,相当対価請求権の額に変動が生じることになる。これは承継の時点をもって一義的に金額が確定すべき相当対価請求権の法的性質とは相容れない結果である。 ①特許登録時から独占の利益が発生すると判断された場合,②特許を受ける権利の承継時から独占の利益が発生すると判断された場合の,それぞれにおける中間利息控除後の相当対価の額は,下記表1(①の場合)及び同2(②の場合)のとおりである(なお,各表における「寄与度」「仮想実施料率」「原告の貢献度」は,いずれも一審被告の主張割合によ ぞれにおける中間利息控除後の相当対価の額は,下記表1(①の場合)及び同2(②の場合)のとおりである(なお,各表における「寄与度」「仮想実施料率」「原告の貢献度」は,いずれも一審被告の主張割合による。)。 記- 101 -〈表1〉- 102 -〈表2〉- 103 -(11)当審における争点(12)(遅延損害金の起算日)について一審原告は,一審被告が中間利息を控除すべきであることを主張したことから平成13年6月1日に弁済期が到来したことを認めたかのように主張するが誤っている。なぜなら,一審被告は,主位的主張として,独占の利益の発生時期が特許登録時であると解する場合には,登録時以後の将来分の売上について中間利息の控除がなされるべきであると主張し,また予備的主張として,特許を受ける権利の承継時から独占の利益が発生すると判断された場合には,承継時以後の将来分の売上げについて中間利息の控除がなされるべきであると主張しているのであって,平成13年6月1日に本件発明1に関する職務発明の対価請求権の弁済期が到来していることを認めているわけではないからである。 中間利息控除の主張と職務発明の対価請求権の弁済期との間には何らの論理的関連性がなく,中間利息控除を認める始期と職務発明の対価請求権の弁済期を違えても何ら問題はない。 当審における一審原告の主張(1)争点(1)(本件発明1の発明者は一審原告のみか)についてア「採寸表の作成につき」につき(ア)一審被告は,平成11年8月当時,一審被告において,バージスサイズは「カップくり」という名称で計測されていたと主張する。 しかし,平成11年当時の一審被告においては,オーダー表の記載について統一されたルールが定められておらず,その方法は採寸者各人により区々であって,カップくりのサイズを重要 計測されていたと主張する。 しかし,平成11年当時の一審被告においては,オーダー表の記載について統一されたルールが定められておらず,その方法は採寸者各人により区々であって,カップくりのサイズを重要視して必ず計測をしていたなどという状況にはなかった。これは,乙126~129のいずれにも,「カップくり」を記載する欄が予め設けられていないことからも明らかである。むしろ,G証人が証言しているとおり,「バージスは計れない」(原審におけるG証人の尋問調書35頁)というのが当時の一審- 104 -被告における認識であり,カップくりのサイズを計測することが一審被告において明確な方針として実施されていたわけではない。 (イ)一審被告は,オーダー表(甲33~35)を作成したのは,一審原告ではなくCであると主張する。 しかし,甲33の1・2は,一審原告が平成11年8月27日の第二生産部部内会議においてカップサイズとアンダーバストの寸法とを分離する提案をするために作成したオーダー表を,一審被告社員のcがそのままの形でエクセル用ファイルに加工したものである。当時,一審原告は,ブラジャーのオーダールールを策定するため,パターンナーの起こした標準寸法の型紙をもとに大小のサイズの型紙を作る際の決まりごとである「グレーディングルール」を作成しようとしていた。グレーディングルールを作成するに当たっては,サイズピッチ項目を決定する必要があるところ,従来の一審被告のオーダーメイドの方法では,アンダーバストのサイズとカップに使用するワイヤのサイズが連動していたため,アンダーバストサイズを変更するとカップの大きさも変化し,体型に合わなくなっていた。そこで,一審原告は,アンダーバストサイズとカップサイズを独立したサイズピッチ項目とすることを提案することとし,そのための資料 トサイズを変更するとカップの大きさも変化し,体型に合わなくなっていた。そこで,一審原告は,アンダーバストサイズとカップサイズを独立したサイズピッチ項目とすることを提案することとし,そのための資料として甲33の1・2を作成したのであり,これが後にバージスから計測するという考え方につながった。他方,甲34の1・2は,Cがエクセルで作ったものではあるが,原案は一審原告が考えたものである。甲34の1・2の採寸項目の左側には,「1」や「50」という数字が付されている。これは,グレーディングルールを定める際に,調整されるべき部位のCAD画面上の位置(座標)を表すために使用される番号であり,一審原告が作成したグレーディングルールにおいて用いた番号を記載したものである。このグレーディングルールの番号は旭化成において使用されているものと同一であり,一審原告も旭- 105 -化成に勤めていたころからこの番号を使用してきた。一審原告は,一審被告のためのオーダールールを,平成11年8月にすでに完成させ,CADの画面に表示されるようにしていたところ,Cは,グレーディングルールを作成,理解する能力を有していなかったので,左の番号が何を意味するかを理解できず,ベースとなった甲104の文字式に記載されていた番号をそのまま転記したのである。また,甲35も一審原告が作成したものである。一審原告は,甲34の1・2を用いて採寸のルール化を提案したが,Cら一審被告の社員たちは,グレーディングルールを使わずにパターンメイクを続けたため,ルール化を進めることができなかった。そこで,グレーディングルールについて熟知していた一審原告が,オーダーメイド商品の処理速度を促進するため,難易度を分け,甲35記載の許容範囲を加えたものを作成したものである。この許容範囲の設定は,グレー ,グレーディングルールについて熟知していた一審原告が,オーダーメイド商品の処理速度を促進するため,難易度を分け,甲35記載の許容範囲を加えたものを作成したものである。この許容範囲の設定は,グレーディングルールを理解している者でなければ理解できない事項であり,グレーディングルール作成能力を欠いていたCが作成することはできない。 (ウ)一審被告は,Cが,乙132に基づき,平成11年12月16日に,第二生産部の会議において,ブラジャーのオーダーの手順の統一化を図る方法を説明していることが認められるから,これに先立って一審原告がオーダー表の作成に深く関わっていたということはないと主張する。 しかし,乙132には,「Newフルカップショート・ロングブラジャー」と記載されており,「New」の文字が記載されている。平成11年当時,一審被告においては,「あこがれ」を試着品として利用してオーダーを取っていたため,商品を「BF6000-」,「BLF6000-」等の番号によって特定していた。しかし,「あこがれ」商品のラインアップには存在しない大きなサイズについて,試着のみに用いる- 106 -目的で作成した試着サンプルが試着者の体型に全く合わないといった問題が生じたため,一審被告は,新たに試着サンプルを作ることになり,その際,番号付けのルールを,「NewNBF6000」,「NBLF6000」に変更したのである。このような事情から,「New」の文字が付されたものよりも,それが付されていないものの方が先行していたオーダー商品となっており,それゆえ,「New」の付されている乙132よりも甲62の方が先に作成されたことが認められる。したがって,一審原告は,Cが乙132を作成するよりも前に甲62を作成していたのである。 イ「『メジャー・アンド・メイク・ の付されている乙132よりも甲62の方が先に作成されたことが認められる。したがって,一審原告は,Cが乙132を作成するよりも前に甲62を作成していたのである。 イ「『メジャー・アンド・メイク・オーダー』の提案につき」につき一審被告は,甲37は,それまで行っていたメジャー=テープメジャーでの採寸では採寸ミスが多くなることから,オーダーを二つに分けてシステムの提案を行ったものと解するのが妥当であるとし,一審原告が,目指すべきオーダーメイドの方向性としての「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の考え方を提案したと認定した原判決は誤りであると主張する。 しかし,一審原告が一審被告の役員に「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の考え方を説明したのは以下のような経緯によるものであり,原判決の認定は正当である。 (ア)従前,一審被告においては,顧客の身体の24箇所の採寸を行うオーダーメイドを行っていたが,一人ひとりのパターンを1から作るのは大変な手間と時間がかかることであり,また,当時の一審被告では採寸者とパターン作成者が異なることによる認識のずれが生じることもあったため,パターン作成に大きな困難を伴っていた。さらに,当時の一審被告においては,そもそも採寸時に試着するサンプルもない状態であったところ,これでは一審被告の商品の魅力である体型補正を実現することが困難であった。しかも,創立以来販売会社であった一審被告には,- 107 -製造に関するノウハウを有する者がいなかった。 (イ)他方,一審原告は,女性としての自身の経験や身体を美しく整えるというファンデーションの性質,一審被告が体型補正を重視していること等に鑑み,体型補正ができ,かつ,採寸段階で装着感を体感することができるメジャー(採寸手段)を備えたオーダーのシステムが必要であると強く ファンデーションの性質,一審被告が体型補正を重視していること等に鑑み,体型補正ができ,かつ,採寸段階で装着感を体感することができるメジャー(採寸手段)を備えたオーダーのシステムが必要であると強く感じていた。 (ウ)そのような状況にあって,一審被告におけるCADをシステム化する仕事を担っていた一審原告は,一審被告の役員から,CADが十分に稼動していない理由を聞かれたため,一審原告は,これを良い機会と考え,システム構築の説明をした。そのために平成11年8月8日に作成した資料が甲37である。 このとき,一審原告は,試着サンプルを作り,生地を摘んだり開いたりすることによって補正する仕組みのサイズオーダーをしてはどうかと提案し,甲31及び33の基礎となった考えを説明するとともに,一審被告のオーダーメイド事業がより良いものとなるためにはどうしたらよいかについて考えた上で,女性の視点から職務経験に基づいて「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の考え方を提案した。 (エ)一審原告が一審被告の役員に「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の考え方を説明したのは以上のような経緯によるものであり,いささかも不自然なことはない。 ウ「『バージス』の重要性についての認識につき」につき(ア)一審原告が平成11年9月22日に第二生産部の部内会議に出席して甲62によってバージスの重要性を説明し,その後一審被告のオーダー表に「カップくりサイズ」の項目が加えられたとの原判決の認定につき,一審被告は,経験則に反し不合理であると主張する。 この点に関し,一審被告は,一審被告においてバージスの重要性は以- 108 -前から認識されており,また,一審被告の社員であるDがデューブルベのバージスメジャーを体験し,平成11年9月21日の第二生産部会議で体験発表をしたと主張す おいてバージスの重要性は以- 108 -前から認識されており,また,一審被告の社員であるDがデューブルベのバージスメジャーを体験し,平成11年9月21日の第二生産部会議で体験発表をしたと主張する。 しかし,同日の第二生産部の会議議題には,Dの体験発表の記載は存在しないこと(甲108),E証人も,「(Dが)他の第2生産部というか,フルオーダーをやっている部内会議とかでは発表してない。」との一審被告代理人の質問に対し,「聞いていませんね」と返答していること(原審におけるE証人の尋問調書33頁)から明らかなように,同日にDがデューブルベの体験報告を行ったということはない。 (イ)また,一審被告は,一審被告においてバージスの重要性が認識されていたと主張するが,一審被告における会議の議事録(甲110の1~14)や,Eが作成した株主総会提出資料(甲111)などの,どこにも計測器のことは書かれていない。また,平成12年3月14日時点においても,オーダー表にカップくりサイズの未記入が存在している(甲112)し,また,平成12年8月25日付け資料(甲113)の「4.カップとくりを違うサイズで記入しないでください。」との記載から分かるとおり,平成12年8月の段階でも,一審被告及び第二生産部の部員達は,バージスについて,その重要性を全く理解していなかった。 (ウ)さらに,一審被告は,一審原告が「カップくり」から計測することを提案したからといって一審被告においてそれが採用されることは不自然であるなど主張している。 しかし,一審被告の社員が作成した平成11年8月27日の部内会議の報告書に「サイズピッチ表の作成はX氏が担当する」との記載があり(甲109),また,そこに詳細な手順が記載されていること,甲62が平成11年9月16日までには作成されているとこ 月27日の部内会議の報告書に「サイズピッチ表の作成はX氏が担当する」との記載があり(甲109),また,そこに詳細な手順が記載されていること,甲62が平成11年9月16日までには作成されているところ(甲114),- 109 -一審原告の平成11年9月度月間スケジュール(甲105)において,同年8月~9月には,一審被告以外にブラジャーのルール化に関する業務を行っているクライアントが存在しなかったことに照らせば,一審被告において一審原告の提案が受け入れられ,バージスから計測する手順へと変更されたことが認められる。 エ「本件発明1に至る着想及びその具体化につき」につき(ア)一審被告は,本件発明1に至る着想及びその具体化についての原判決の認定が誤っていると主張する。 この点に関し,まず,一審被告は,一審原告において,①サンプルのブラジャーをあてることによってカップくりを計測する手法が確立されていたこと,②一審被告の社員であるDがデューブルベの体験に行き,計測器具を用いて計測していることを説明したこと,③当時,一審被告においては,採寸ミスを減らすことが大きな課題となっていたことから,第二生産部において計測器具を作ろうという意識が生まれるのは自然な流れであったことを主張する。 しかし,上記①が事実でないことはすでに述べたとおりであるし,②についても,平成11年9月21日に体験報告がなされたことがないことは,すでに述べたとおりである。③については,だからこそCADを用いたオーダーメイドを行うことになり,一審原告が指導に当たったものであるが,上記ウ(イ)で述べたところから明らかなように「第二生産部において計測器具を作ろうという意識が生まれた」ということもない。 (イ)また,一審被告は,広瀬工業のFが当時すでにオーダーメイド商品の一つであっ イ)で述べたところから明らかなように「第二生産部において計測器具を作ろうという意識が生まれた」ということもない。 (イ)また,一審被告は,広瀬工業のFが当時すでにオーダーメイド商品の一つであった膝下ガードルについてパーツの作り置きを行っていたことを踏まえて,ブラジャーについても作り置きを提案することも十分あり得るなどと主張する。 - 110 -しかし,乙67の1・2は,作成者であるE証人が証言するとおり,一定期間ごとの注文をまとめて生産を依頼した書面であって作り置きの資料ではなく(原審におけるE証人の尋問調書12頁),そもそも膝下ガードルにおいて作り置きを行っていたということはない。また,Fは,平成11年10月14日からパターン展開の技術指導をしていて手一杯であったため,受注を予測した上でパーツの作り置きをすることなどは,時間的にも広瀬工業のキャパシティ的にもできるような状況ではなかった。さらに,乙127(平成11年8月31日付け「生産依頼書」)のオーダーのように,カップ高さやトップを寄せるなどの修正によってオーダーに対応していた一審被告においては,出来上がりのパターンはそれこそ千差万別であり,作り置きなどできるはずがなく,縫製工場に勤めるFがそのような提案をすることもあり得ない。 (ウ)さらに,一審被告は,乙135の内容が乏しいと主張し,これを根拠に本件発明1は一審原告が独自に作成したものではないと主張する。 しかし,一審原告は弁理士でもなければ特許事務所で勤務した経験を持つ者でもなく,また,そもそも特許出願の経験も,特許制度に関する知識も有していなかった。 そのような一審原告が,向学心の強さから,見よう見まねで作成してみたのが乙135であって,当該発明が特許相当なのか実用新案相当なのかを適切に判断することを一審原告に期待す 知識も有していなかった。 そのような一審原告が,向学心の強さから,見よう見まねで作成してみたのが乙135であって,当該発明が特許相当なのか実用新案相当なのかを適切に判断することを一審原告に期待することにそもそも無理があるし,また,十分な内容が記載された明細書の作成を期待することにも無理がある。むしろ,ここで重要なのは,特許制度に関する知識を有していなかった一審原告が単独で明細書をまねた書類を作成したという事実である。このことは,一審原告が本件発明1を単独で発明したことの裏付けとなるものである。 オ「本件発明1の技術的思想の本質的部分につき」につき- 111 -(ア)一審被告は,一審原告が作成した試作品が,カップと前身がスナップで,前身と後ろ身がマジックテープで接合されたものであったと主張する。しかし,一審原告は,そのような構成の試作品を作成したことはない。一審原告が作成した試作品は,カップと前身を面ファスナーで接合したものである。 (イ)一審被告は,一審原告が,自宅で一審原告の子供に試作品を着用させて実験したことについて,乳房がなく,体形も異なる男性で着用感を試したとすることは信用性を欠くと主張する。 しかし,一審原告が,自分の子供に着用させて実験をしたのは,試着に耐えられる強度があるか否かを検証するためであり,一審被告の主張するような「試着可能であること」を確認する目的であった。 バージスの適合性については,CADの知識が豊富で,CAD上の図面から前身とカップ部の接合の状況を完全に予測することができる一審原告にとっては,CAD上でパターンの作成ができた時点ですでにクリアされた問題であったのである。 一審原告としても,これが製品化に向けた最終的な確認作業とは思っておらず,あくまで開発過程におけるエピソードのひとつである。 ( パターンの作成ができた時点ですでにクリアされた問題であったのである。 一審原告としても,これが製品化に向けた最終的な確認作業とは思っておらず,あくまで開発過程におけるエピソードのひとつである。 (ウ)一審被告は,平成12年10月19日の第1回オーダー研究会報告書の「A既存サンプルの修正方式からBオーダーサイズ組み合わせ方式の考え方の説明」との記載があることを根拠に,同オーダー研究会で一審原告が試作品を検討し,このときに出された提案を元にカップ部と前受部をマジックテープとし,前受部と後ろ身の接合をフックとすることが第二生産部から提案されたと主張する。 しかし,第1回オーダー研究会において,一審原告は本件発明1の考え方を説明しただけであり,試着サンプルを見せたというのは誤りである。一審原告が試着サンプルを第二生産部のメンバーに見せたのは,第- 112 -3回オーダー研究会である。一審原告は,平成12年10月12日に,すでに,「FUKKU」「TE-PU」と記載されたパーツが存在し,一つのバージス(W6)にカップが複数(3タイプ),後身が複数(3タイプ)存在するパターンファイル(甲63)を作成しているから,一審原告は,第1回オーダー研究会が開催される前に,すでにカップと前身はマジックテープで接合し,前身と後ろ身の接合をフックで行う構成を発案していたことが認められる。 カ「本件発明1の発明者につき」につき一審被告は,F外13名も本件発明1の発明者であると主張しているが,これら14名の者が,本件発明1の技術的思想の本質的部分のうち,具体的にどの部分につきどのような貢献をしたのかにつき,個別具体的な主張を全くしてきていない。一審被告がこの点を明確に主張できないということは,一審原告のみが発明者である事実を裏付けるものといえる。 (2)争 部分につきどのような貢献をしたのかにつき,個別具体的な主張を全くしてきていない。一審被告がこの点を明確に主張できないということは,一審原告のみが発明者である事実を裏付けるものといえる。 (2)争点(2)(本件発明2の発明者は一審原告のみか)についてア「本件発明2の発明に至る経緯につき」につき(ア)一審被告は,一審原告がJIS規格のサイズ表示とは異なる独自の規格を採用したことに対し,一審被告ではJIS規格の考え方を採用しておらず,一審原告がサイズピッチを基準とすべきと考えたとすれば,それは一審被告で行われたことをそのまま採用していたに過ぎないと主張する。 しかし,一審原告入社以前の一審被告のオーダーメイドは,JIS規格を参考にサイズ構成されたレディメイド商品である「あこがれ」を試着して採寸をしていたものである。したがって,一審被告においてヒップを基準にガードルの試着サンプルを選んだとしても,それは,元々ウエストを基準として構成されたJIS規格に基づくものを出発点としたものであり,あくまでも,JIS規格の枠組みを脱するものではない。 - 113 -これに対し,一審原告が採用したサイズ表示は,JIS規格とは完全に独立したものであり,この点で,一審原告において行われていた,レディメイド商品を試着サンプルとして使用するオーダーメイドとは明確に異なるものである。 (イ)一審被告は,Cが作成し,平成11年12月16日の第二生産部の部内会議で使用された乙133を根拠に,一審被告においては,ヒップサイズを基準としたことが現れていると主張する。 しかし,乙133は,<ロングガードル>の1.において,「ヒップ又は大腿部(一番大きい部分)に合わせて試着サンプルを選ぶ。」と記載されているのであり,ヒップサイズに着目し,基準とする本件発明2と明確に異 ,乙133は,<ロングガードル>の1.において,「ヒップ又は大腿部(一番大きい部分)に合わせて試着サンプルを選ぶ。」と記載されているのであり,ヒップサイズに着目し,基準とする本件発明2と明確に異なるものである。また,乙133が使用されたのは平成11年12月16日の部内会議のときであるが,一審原告は,上記部内会議に先立つ同年8月17日の会議までに,すでに乙133と同一の内容を説明している(甲115)。平成11年12月16日の部内会議で乙133により説明されたとする手順は,それよりも以前である同年8月の段階で一審原告により考案され,一審被告において採用されたものである。 (ウ)一審被告は,平成12年11月16日に大島特許事務所に赴いた際に一審原告が持参した資料は乙135のみであり,また,平成13年11月16日に本件発明2の出願を依頼する際に一審原告が持参した資料は,乙136のみであり,甲29は,HMSガードルのマニュアルを作成する段階で作成されたものであると主張する。 しかし,一審原告は,Uとともに大島特許事務所を訪れているが,本件発明1の出願の相談に行った平成12年11月16日には,ブラジャーのサンプルを,本件発明2の出願の相談に行った平成13年11月16日にはガードルのサンプルを,それぞれ持参している。大島特許事務- 114 -所からの一審被告宛ての「ご案内」(甲116)は,本件各発明につき特許を取得した後に大島特許事務所からサンプルの返還がなされた際の送付書であり,上記事実を裏付けるものである。このように,乙135及び136以外にも,出願時に大島特許事務所に持参され,すでに返還された資料が存在する。 (エ)一審被告は,甲29はマニュアルを作成する際に出来上がったものであると主張する。 しかし,甲29においては,ウエスト部の ,出願時に大島特許事務所に持参され,すでに返還された資料が存在する。 (エ)一審被告は,甲29はマニュアルを作成する際に出来上がったものであると主張する。 しかし,甲29においては,ウエスト部の体型についてX体型,R体型,H体型,O体型という分類がなされており(甲29の4枚目),また,一審被告が平成12年11月16日に大島特許事務所へ持参したことを認めている乙135においても,ウエスト部の体型について,同様にX体型,R体型,H体型,O体型という分類がなされている(乙135の5枚目)。ところが,一審被告が,平成13年11月16日に持参したと主張する乙136においては,ウエスト部の体型について,A体型,R体型,H体型,O体型という分類がなされており(乙136の3枚目),乙135に存在したX体型との表現が,A体型に変更されている。さらに,HMS総合マニュアルでは,ウエスト部分の体型について,V体型,R体型,H体型,O体型という分類に変更されている(甲91の20頁)。このように,元々X体型と表現されていた体型分類の呼称がA体型,V体型と変化していったのは,ウエストの細い体型をどのように表現するのが妥当かという検討の結果,より近い形状のアルファベットに置き換えられていったからである。このような体型表記の変遷から明らかなように,乙136が作成された段階では,すでに一審被告においてX体型という分類は使用されなくなっていたのであり,X体型という分類を用いている甲29が,すでに体型表記が「A体型」に変更された本件発明2の完成後に作成されたということはあり得ない。 - 115 -(オ)一審被告は,一審原告の考えを盛り込んだという甲71のパターン図面から原判決が認定しているヒップと大腿部の切り込みやそれに付けるマジックテープ,ウエスト部分の切り込 得ない。 - 115 -(オ)一審被告は,一審原告の考えを盛り込んだという甲71のパターン図面から原判決が認定しているヒップと大腿部の切り込みやそれに付けるマジックテープ,ウエスト部分の切り込みやそれに付けるマジックテープを読み取ることはできないとした上で,甲63と好対照であると主張する。 しかし,甲63は弁理士に持参するサンプルのパターンであるから,すでに構成や使用部材が確定した段階で作成された図面である。これに対し,甲71は,HMSガードルの構成を検討している途中で作成されたものである。HMSガードルの構成を検討していく中で,一審原告は,従来のガードルのようなモールド加工をしないものであって,かつ,大腿部が調節できるものを作らなければならないとの考えから,新たにマスターパターンの作成とメジャーの作成の双方の作業を同時進行させていたものであるが,甲71の図面を作成した当時は,未だ伸縮性のある面ファスナーが見つかっていない段階であり,マジックテープのパターンを作成する状況になかった。 (カ)一審被告は,一審原告が広瀬工業のFには秘密にしながらセイブ繊維の担当者には本件発明2の出願前に使用方法を説明した上でマジックテープの注文を行っていたことは,矛盾だらけの説明であると主張する。 しかし,一審原告は,本件発明2を実用化するために必要な伸縮性のある特殊なマジックテープの調達をセイブ繊維に行なってもらう必要があったため,その依頼のために必要な範囲で説明を行なったものであり,このこと自体は新規の商品が開発される際に通常行われる行為に過ぎない。これに対し,広瀬工業のFは,本件発明2の開発を進める上で何ら必要のない人物であったため,弁理士からの指示通り秘密を保持すべく,本件発明2の重要な部分である大腿部の切り込みについて,その- 。これに対し,広瀬工業のFは,本件発明2の開発を進める上で何ら必要のない人物であったため,弁理士からの指示通り秘密を保持すべく,本件発明2の重要な部分である大腿部の切り込みについて,その- 116 -意図を説明しなかったのである。そして,第二生産部の部員が,Fが変更した図面を元に検討している際も,これらの部員に大腿部の切り込みの意味を説明した場合には,そのことが本件発明2の開発において全くの部外者であるFに伝わってしまうことが確実であるから,秘密保持を徹底するために敢えて黙っていたものである。 (キ)一審被告は,経験豊富な広瀬工業のFが送付されてきた図面の意図を読み取れないということ自体が考えられないと主張するが,Fは,証人尋問の際の裁判所調査官からの補充尋問に対しても要領を得ない回答をしており,このようなFが,甲71を見た際に,そこに記載されている切り込み線の重要性に気づかなかったことは,本件発明2の発明者でない者の反応として,むしろ自然である。また,一審被告は,当時一審被告のHMSブラジャーの生産を行なっていた広瀬工業のFが,第二生産部においてHMSガードルの開発を行なっているということが分からないということも考えられないと主張するが,FがHMSブラジャーの生産を行なっているといっても,あくまでも一審被告の社外の者であり,第二生産部に常駐して作業していたわけではないから,HMSガードルの開発のことを知らなかったとしても不思議はない。さらに,一審被告は,一審原告から,パターン図を渡されてサンプルの製作を依頼された広瀬工業が,そのパターン図を使ってサンプルを作ることができるにもかかわらず,異なる図面をわざわざ手書きで引いて返してくるということも考えられないと主張するが,甲71の図面は,それまでの一審被告の商品とは異なる本件発 ーン図を使ってサンプルを作ることができるにもかかわらず,異なる図面をわざわざ手書きで引いて返してくるということも考えられないと主張するが,甲71の図面は,それまでの一審被告の商品とは異なる本件発明2に関する図面であり,これに従って縫製をするとなると,従前とは異なる手間と費用を要することは容易に想像がつく。図面の意味を知らされていなかったFは,その真意を理解することができず,従前の一審被告の商品と同様の図面にすべく修正を施し,その際,FはCADでパターンを作成することができないため,わ- 117 -ざわざ手書きの図面を返送してきたものである。 イ「本件発明2の技術的思想の本質的部分につき」につき本件発明2の技術的思想の本質的部分は,原判決(79頁16行~22行)認定のとおり,「ヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けた」との点であり,「該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みいれて分割され,分割された一片と他片とが」着脱自在に止着可能で「ヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップ計測用の目盛りが記された」構成にした点にあるものである。 ウ「本件発明2の発明者につき」につき(ア)甲72のサイズ表には,Aカップ,Bカップ等の記載があり,大きさの異なるヒップカップを調節するという考え方が示されている。また,甲71自体には記載がないものの,伸縮する面ファスナー部材さえ整えば,そこに目盛りを付すことで,「一片と他片との連結位置にヒップカップ計測用の目盛りが記された」構成とし得る程度まで完成しているものであり,この時点で本件発明2は完成していると認められる。したがって,原判決認定のとおり,平成13年8月8日には,本件発明2の本質的 プ計測用の目盛りが記された」構成とし得る程度まで完成しているものであり,この時点で本件発明2は完成していると認められる。したがって,原判決認定のとおり,平成13年8月8日には,本件発明2の本質的部分は完成していたのである。 仮に,本件発明2の本質的部分を,一審被告の主張するように解するとしても,伸縮性のある面ファスナーを構成に組み込んだ時点で本質的部分は完成したといえるものであるところ,大島特許事務所に持参するために作製したサンプルは,同年11月7日に縫製依頼(甲117)をしているものであるから,遅くともこの時点までに,本件発明2は完成していたと認められる。 (イ)一審被告は,HMSガードルのメジャーの大腿部の切り込み位置は広瀬工業のFが作成した図面(乙19~23)に基づいて開発され,止- 118 -着部の製作,改良を進めながら,図面を改良していったのであり,開発の過程で第二生産部の中の議論で最終的な切り込み位置を現実化していったものに他ならないと主張する。しかし,一審被告の主張によっても,第二生産部の中で具体的に誰が切り込み部分についての提案をしたのかが全く明らかになっていないし,議論の結果作成されたパターン図も存在しないのであって,一審被告の主張は全く裏付けのないものである。また,乙34から明らかなとおり,一審被告がモニターを行ったのは,一審原告が大島特許事務所に相談に赴いた日よりも後の平成13年11月19日である。 (ウ)一審被告は,一審原告の外に,Fら5名も本件発明2の発明者であると主張する。しかし,本件発明2に関しても,一審被告は,本件発明1におけると同様,これらの各人が具体的にどのような提案を行い,本件発明2の技術のどの部分を担当したのかについて,個別に明らかにしていない。Tに至っては,陳述書において,明確に自身 被告は,本件発明1におけると同様,これらの各人が具体的にどのような提案を行い,本件発明2の技術のどの部分を担当したのかについて,個別に明らかにしていない。Tに至っては,陳述書において,明確に自身は発明者ではないと供述している(甲46)。 (3)争点(3)(HMS商品の売上に対する本件各発明の寄与割合)についてア本件各発明の競争優位性,顧客誘引力についての評価の誤り原判決は,本件各発明の競争優位性,顧客誘引力について消極的な評価をするに止まっている(99頁下3行~100頁3行)。 しかし,以下に述べるとおり,本件各発明の競争優位性,顧客誘引力は極めて高いものであったのであり,その意味で原判決の上記評価は誤りである。 (ア)本件各発明の主要な効果本件各発明の主要な効果は,「着用時に体型に合った衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができ」,かつ,顧客の希望に応じて「体型補整を意図した修正なども実- 119 -際の着用感を伴って実施することができる」という点にある(本件各特許の明細書[甲1,3]の【発明の効果】欄)。 そして,一審被告における実施に際しても,採寸の初めの段階で,顧客と一審被告社員とが相談しながら,フィット感(着用感)を体感しつつ,体型補整効果の生じる度合いが細かく調節されていた(甲91[総合マニュアル]7頁)。これにより,顧客は,千差万別の体型に合致するHMS商品を着用することができ,その結果,無理なく効果的に体型補整を行うことができた。 (イ)本件各発明の作用効果と顧客誘引力と競争優位性上記のような本件各発明の効果は,多数の顧客のニーズに合致し,HMSは,主に体型補整を追求する既存顧客層のみならず,フィット感(着用感)をも追求するより広い新規顧客の獲得をもたらす大ヒット商 優位性上記のような本件各発明の効果は,多数の顧客のニーズに合致し,HMSは,主に体型補整を追求する既存顧客層のみならず,フィット感(着用感)をも追求するより広い新規顧客の獲得をもたらす大ヒット商品となり,一審被告の業績を劇的に好転させ,3期連続の増収をもたらした。その結果,一審被告は,レディスインナー小売売上高ランキングで,大手のワコールやトリンプ等を押さえて,1位に踊り出た(甲42の2[繊維白書2006年版400頁~401頁])。このようなフィット感と体型補整効果の両方を追求できるオーダーメイド下着は,この当時,本件各発明によって独占されるHMS商品以外に存在しなかった。 このように,本件各発明は,「着用時に体型に合った衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができ」,かつ,顧客の希望に応じて「体型補整を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる」という効果が顧客のニーズを捉えたため,その実施品であるHMS商品は,強い競争優位性,顧客誘引力を有し,現に一審被告の業績を劇的に好転させたのである。 (ウ)本件各発明の事業に占める重要性- 120 -aHMS商品が全国的に販売され始めた平成14年度において,平成15年のレディスインナーウェアー市場規模は7910億円と推計され,「98年をピークに減少し,依然厳しい状態が続いている」(甲53[繊維白書2002年版396頁])状況にあった。同様の状況は,平成18年時点からみた業界概況を述べた甲54[繊維白書2006年版403頁])にも見られる。ここでは,「レディスインナー類の2005年小売市場規模は7580億円で前年比98.8%となった」,「ボディファッション協会の集計によると金額ベースで前年比99.1%…となっている。平均単価で る。ここでは,「レディスインナー類の2005年小売市場規模は7580億円で前年比98.8%となった」,「ボディファッション協会の集計によると金額ベースで前年比99.1%…となっている。平均単価では,前年比102.5%となっており数量の落ち込みが目立つ。」と記載されている。 bこのようなレディスインナーの小売市場規模の縮小は,業界2強のワコール,トリンプなどについても同様であった。 また,訪問販売やホームパーティ形式でレディスインナーを販売するシャルレにおいては,売上高の長期低下傾向は,より著しい。 c以上の業界の傾向とは対照的に,一審被告は,平成14年以降のHMS販売期間中,その業績を急激に伸ばしている(甲43[一審被告・有価証券報告書(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで)]2頁,甲50[一審被告・有価証券報告書(平成12年9月1日から平成13年8月31日まで)]1頁ほか)。 d一審被告においては,平成9年度において大幅な売上げの低下が発生し,その後平成13年度まで,多少の上下はあるものの,業績は大きく落ち込んだままであった。ところが,HMSを発売開始し,全国規模の販売体制が整った平成14年度からは業績が大きく伸びており,売上高の長期低下傾向のみられた他社と際だった対照を示している。そして,当該時期は,一審被告の新商品はHMS商品に限られており,他の新商品を販売したり,新しい販売方法を採ったりしたわけ- 121 -でもない。このように,一審被告の売上げが劇的に向上した期間中,業界全体が業績を悪化させ,かつ,一審被告における事情の変化がHMSの販売以外にないのであれば,売上高の増加はHMS商品の発売によるものと考えられる。 加えて,一審被告においてHMS商品が正常に販売されていた当時の売上げ構成を見ると,従来のレデ 事情の変化がHMSの販売以外にないのであれば,売上高の増加はHMS商品の発売によるものと考えられる。 加えて,一審被告においてHMS商品が正常に販売されていた当時の売上げ構成を見ると,従来のレディメイド商品は若干の減少傾向にあるが,基本的には,従来商品にHMS商品の売上げが加算された状態になっている。この点でも,HMS商品が一審被告の当時の業績を支えていたものと認められる。 e一審被告はレディスインナー業界,特にファンデーション業界において,体型補整を売りとして業績を伸ばしてきた企業である。 しかし,ファンデーション業界は,新素材,新機能の開発も少なくなって飽和状態になるとともに,バブル崩壊後「…ナチュラル志向の影響で華美なランジェリーや締めつけるファンデーションが敬遠されるようになり,(ファンデーション業界は)苦戦が続いている」(甲53[繊維白書2002年版397頁])状態であった。華美なランジェリーの敬遠傾向はワコールやトリンプなどの売上げに影響し,「締め付けるファンデーション」の敬遠傾向は体型補整に特化した一審被告の売上げに大きな影響を与えた。このような状況にあって,一審被告の典型的顧客であった,締め付けてでも体型補整したい需要層が減少する中,キャンペーンなどのプロモーションのみでは顧客獲得の効果が期待できない状態であった。甲54(繊維白書2006年版404頁)は,「(業界2強が)新しい素材や機能面の特徴を打ち出したキャンペーンを展開し,市場を牽引してきた」と記載し,プロモーションは不可欠と認めながらも,新素材,新機能が生まれない市場において,キャンペーン活動の見直しを求めている。 - 122 -f従来の一審被告は体型補整を主眼とした商品訴求を行っており,提供商品もサイズが限られたレディメイド製品がほとんどであった。そ 市場において,キャンペーン活動の見直しを求めている。 - 122 -f従来の一審被告は体型補整を主眼とした商品訴求を行っており,提供商品もサイズが限られたレディメイド製品がほとんどであった。そのため,締め付けを嫌う顧客層や標準体型から逸れた顧客層は一審被告の顧客とは捉えられず,一審被告はいわばニッチの市場を狙った商品提供を行っていたといえる。これに対し,HMS商品は,従来の一審被告の思想とは異なり,フィット感をも追求した体型補整商品であった。その点で,上記のような顧客層のナチュラル志向に合致し,また,従来の顧客層から漏れていた標準体型でない顧客層もターゲットとすることができた。また,HMS商品は,採寸から縫製までをシステム化したものであるため,従来の完全オーダーの体型補整下着と比べ,生産効率が非常に高く,価格競争力があるのみならず,注文から提供までのレリーズタイムも大幅に短縮されている。このような競争優位性を武器とするHMS商品は,一審被告の対象顧客を大きく広げ,体型補整に抵抗のあった顧客まで取り込むことに成功したのである。このことが,平成14年度以降の一審被告の増収増益を決定付けた。 なお,一審被告はHMS商品のガードル発売開始時期(平成14年3月)と売上げ増が見られた時期(平成14年6月)が3か月ずれている点を捉え,売上げ増をキャンペーンによるものとし,HMS商品の貢献を認めようとしない。しかし,新製品の登場後,それが市場に浸透し,売上げ増に結びつくにはタイムラグが生じるのが当然であり,新製品が革新的であればあるほど,このタイムラグは大きくなるのが一般である。特に,一審被告のように,サロン形式の販売方式をとり,口コミによる広報に依存する企業の場合には,テレビコマーシャルや新聞,週刊誌でプロモーション活動をするワコールや ラグは大きくなるのが一般である。特に,一審被告のように,サロン形式の販売方式をとり,口コミによる広報に依存する企業の場合には,テレビコマーシャルや新聞,週刊誌でプロモーション活動をするワコールやトリンプなどの大手と比べ,商品浸透のスピードは遅い。しかも,上述のとお- 123 -り,HMS商品による売上げ増は新規顧客層の獲得によるところが大きいところ,従来の一審被告からさらに新商品の魅力が伝播するのに時間がかかったのは当然である。 また,一審被告はHMS商品廃止後も,直ちに売上げが低下したわけではないことをもって,HMS商品の販売と一審被告の増収増益とは連動していないと主張する。しかし,一審被告が販売する一式で10万円を超えるような高級下着は,さほど頻繁に買い換えられるものではなく,HMS商品の販売が終了した後であっても数年程度は,HMS商品によって一審被告製品に魅力を感じた顧客が,さらに魅力的な新商品を求めて再来店する状態が継続する。顧客としても,大ヒット商品であったHMS商品の販売を中止すれば,当然それ以上の魅力を有する商品が発売されていると期待するのが通常だからである。そのため,HMSの販売終了後直ちに売上げが低下しないのは当然であり,その後もしばらく好調な業績が継続したのは,むしろ,HMS商品が顧客に与えたインパクトの強さを示すものであるといえる。HMS商品によって急激に増加した顧客も,さすがにHMS商品販売終了の2~3年後には急速に一審被告から離れて売上げ低下を招いており,結果的に当時の売上げ増がHMS商品の影響であったことを裏付けている。 (エ)以上検討したところによれば,原判決が本件各発明の効果に基づく本件各発明の競争優位性,顧客誘引力については消極的な評価しか与えていないこと,及び,本件各発明の一審被告の事業 裏付けている。 (エ)以上検討したところによれば,原判決が本件各発明の効果に基づく本件各発明の競争優位性,顧客誘引力については消極的な評価しか与えていないこと,及び,本件各発明の一審被告の事業に占める重要性を軽視したことについては,誤りがある。 イ営業施策関連費用についての評価(ア)原判決は,HMS商品の売上実績は,一審被告の販売促進活動によるところが相当程度寄与しているとする(99頁下2行~100頁1- 124 -行)。そして,その主たる根拠を,一審被告がHMS商品の売上げ増加に対応して多額の営業施策関連費用を投入していることに求めている。 しかし,原判決が営業施策関連費用を認定するに当たって依拠した乙116の下段や乙117の各数値は,後記(5)ア(イ)bのとおり信頼性がない。 また,原判決の論理は,費用を掛けたから商品が売れたという面が相当程度ある,というものであるが,実際には,商品が売れたから費用が掛かった面がほとんどなのであり(原審におけるE証人の尋問調書21頁),原判決の論理は逆転している。このことは,一審被告がHMS商品を販売していた当時の営業施策関連費用のうち主要なものが①信販手数料,②商品券,③景品費であって(乙116の上段),いずれも商品が売れることにより初めて生ずる変動費であることからも認められる。 さらに,原判決の上記論理は,一審被告の第29期(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで)以降現在に至るまでの業績の低迷ぶりを合理的に説明できない。すなわち,一審被告は,第29期以降も,レディメイド商品の販売促進のため,従前と同様の営業施策関連費用(①信販手数料,②商品券に替わる値引券,③景品費支出による特典商品プレゼント)を支出している(乙117,甲80[一審被告・有価証券報告書(平成19年9月1日 進のため,従前と同様の営業施策関連費用(①信販手数料,②商品券に替わる値引券,③景品費支出による特典商品プレゼント)を支出している(乙117,甲80[一審被告・有価証券報告書(平成19年9月1日から平成20年8月31日まで)]の65頁注記表の下段)。それにもかかわらず,一審被告の業績は,HMS商品を販売していた第27期(平成15年9月1日から平成16年8月31日まで)の業績に遠く及ばない(甲99[一審被告・有価証券報告書(平成19年9月1日から平成20年8月31日まで),甲100[主要財務データ(一審被告ホームページ)])。その間市場に大きな変化があったわけではなく,唯一の変化は,一審被告がHMS商品の販売を中止したことである。このことは,一審被告の販売促進政策が一審- 125 -被告の売上げを劇的に向上させる力を持っていないことを端的に示しており,むしろ,本件各発明が高い競争優位性,顧客誘引力を備えていたことや,事業においても重要な位置を占めていたことを認める根拠となる。 そうである以上,HMS商品の売上実績は主として本件各発明の競争優位性,顧客誘引力によるものであり,一審被告の販売促進活動等は,売上実績との関係ではHMS商品の魅力を顧客に知らせる手段にすぎないという意味で,従たる要因にすぎないとみるのが自然である。 (イ)乙118の下段は,上記のとおり信用性に欠ける乙116の下段の内訳をグラフにしたものであるから,乙116同様,信用性に乏しい。 また,乙118の上段についても,不正確な点が存する。これを一審原告において修正したものが,甲81である。ここにも,以下のとおり,HMS商品の売上高の増加が主としてHMS商品の魅力によるものであることが表われているのであるが,原判決はこれを看過している。 a乙118上段においては,H ,甲81である。ここにも,以下のとおり,HMS商品の売上高の増加が主としてHMS商品の魅力によるものであることが表われているのであるが,原判決はこれを看過している。 a乙118上段においては,HMSロングガードル「あこがれ」・「ミーチュ」の販売開始時期が平成14年2月となっている。 しかし,上記各HMS商品の正確な販売時期は,平成14年3月である。そして,HMS商品の売上げは2月には●●●●●●●●であったのが,3月には●●●●●●●●と●●●●に増えている(甲81,2枚目のグラフ)。 他方,一審被告が同じ平成14年3月に行ったと主張するプレゼントのための費用は,乙117の数値によれば,●●●●●●●●●●であって,前月の●●●●●●●●●●から半減している。 ここに,平成14年3月にHMS商品の売上高が増加した理由が,販売促進費用を掛けたからではなく,同月に上記各HMS商品の新商品を販売したからであることが明確に認められる。 - 126 -そうであれば,平成14年6月までのさらなる売上高の増加までの3か月間についても,前記のとおり,新製品の登場が売上げ増に結びつくタイムラグと考えるのが自然である。 b同様に,HMSショートガードル「あこがれ」・「ミーチュ」等の販売を開始した平成15年3月から7月までの4か月間,HMS商品の売上げが増加している(甲81,3枚目のグラフ)。また,HMSエクリナボディスーツの販売を開始した平成15年12月から平成16年2月までの3か月間も,同様にHMS商品の売上げが増加している(甲81,4枚目のグラフ)。これらは,HMS商品の売上高増加の理由がHMS商品自体によるものであることを端的に示すものである。 cさらに,一審被告は第27期の平成15年9月から平成15年11月までキャンペーンを行っていない。 らは,HMS商品の売上高増加の理由がHMS商品自体によるものであることを端的に示すものである。 cさらに,一審被告は第27期の平成15年9月から平成15年11月までキャンペーンを行っていない。にもかかわらず,この期間の売上高は上昇している(甲81,4枚目のグラフ)。この事実も,HMS商品の売上高はキャンペーンに依存するものではなく,商品自体の魅力によるものであることを端的に示している。 ウ一審被告の主張に対する反論(ア)カラーフィット商品はHMS商品に後染め処理を施したものであり,その意味で,カラーフィット商品は本件各発明の実施品そのものである。そして,着色すれば下着が売れるというものではないことは社会常識といえるであろうから,本件各発明に魅力があったからこそ,カラーフィット商品が売れたことに大きな疑問はないはずである。これに反し,一審被告の主張の論拠は,カラーフィット商品を除くHMS商品の売上げの増加分をカラーフィットにより説明しようとするものであり,一見して不合理である。このことは,一審原告が,HMS商品の販売を差し控えた後,悪化した業績の回復を目指して多色展開自体をセールス- 127 -ポイントとする「リドル」,「デビュアランジェ」を販売したが,さしたる売上げ・利益の向上をもたらさなかった実績からも明らかである。 (イ)一審被告は,HMS商品についても最初にテープメジャーで採寸を行うとか,端のサイズについては大きめのサイズを着用してもらい,摘んだりして採寸をしており,この部分については本件各発明を実施していないと主張する。 しかし,最初にテープメジャーで採寸を行うのは,あくまでもHMSメジャーを選ぶ時の目安をつけたり,既存の顧客の体型変化を見るためにすぎない。また,摘んだりして採寸するのは,フルオーダーの場合であ しかし,最初にテープメジャーで採寸を行うのは,あくまでもHMSメジャーを選ぶ時の目安をつけたり,既存の顧客の体型変化を見るためにすぎない。また,摘んだりして採寸するのは,フルオーダーの場合であって,HMSメジャーを使用する際には,このようなことは行わない。HMSオーダーの場合には,そのシステムの構造上,HMSメジャーを用いなければ商品を製造できないため,必ずHMSメジャーを使用して採寸し,その採寸結果に基づいてHMS商品を製造して販売している。したがって,本件各発明の実施(使用)なくしてHMS商品の売上げが発生しないことに変わりはない。 (ウ)さらに,一審被告は,本件各発明の実施によってそのまま完全な商品ができるわけでもなく,HMSメジャーと出来上がり商品が完全に対応していたわけでもないと主張する。 しかし,仮にそのような例があるにしても,HMSメジャーを必ず使用して採寸し,その採寸結果に基づいてHMS商品を製造して販売している以上,本件各発明の実施(使用)なくしてHMS商品の売上げが発生しないことに変わりはない。そして,測定段階と製造段階の間の微小な誤差はどのような測定手段を用いても避けられないことであり,このような微小な誤差があるからといって,HMSメジャーを「使用しなかった」との評価をするとすれば,それこそ不合理な擬制である。 (エ)一審被告は,上記の他,寄与割合を算定するための事情として,H- 128 -MSメジャーを使用する全店舗において各パーツを備え置く等の必要があることや,HMSメジャーを用いる全社員に研修を行い,使用方法等につき教育をしなければならないことといった事実を挙げる。 しかし,これらは本件各発明の実施準備そのものであって,発明外の貢献とはいい難く,売上げへの寄与割合において消極的事情と位置づけるのは 法等につき教育をしなければならないことといった事実を挙げる。 しかし,これらは本件各発明の実施準備そのものであって,発明外の貢献とはいい難く,売上げへの寄与割合において消極的事情と位置づけるのは不当である。また,これらの事情は,いずれも,一審被告の発明に対する貢献度を算定するために主張されてきた事実であるから,控訴審に至って売上げに対する寄与割合を考慮するための事実として主張することは,二つの係数を混同し,同一事実の二重評価をしようとするものであるから,失当である。 (オ)原判決は,①HMS商品の売上げが本件各発明の実施なくしては発生しない事実,②HMS商品が本件各発明の競争優位性による顧客誘引力を有していた事実,③一審被告の販売促進活動を総合考慮した結果として,2分の1の寄与割合を認定しており(101頁1行~8行),判断手法に不合理な点はない。これに対し,一審被告の主張は,①②を無視して③のみをことさらに強調することを求めるものであって,相当の対価の算定手法としては独自の主張の域を超えず,不合理である。 また,本件特許に無効理由が存することは,寄与割合の考慮要素とすべきではない。 以上によれば,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合は,2分の1を下らず,4分の3を超える割合が認められるべきである。 (4)争点(4)(独占の利益が発生する時期)についてア原判決は,旧35条4項の「使用者が受けるべき利益」の意味について,誤った理解をしている。 「使用者が受けるべき利益」とは,特許を受ける権利を承継したことに- 129 -より,特許を出願して登録を受け,あるいはノウハウとして秘匿することにより法律上または事実上取得することができる,発明の実施を排他的に独占しうる地位により生じる利益を意味する。 これに対し,原判決は,特許 特許を出願して登録を受け,あるいはノウハウとして秘匿することにより法律上または事実上取得することができる,発明の実施を排他的に独占しうる地位により生じる利益を意味する。 これに対し,原判決は,特許登録時をもって独占的利益を得られる期間の始期とするものであるが,このような理解に立てば,出願しない限り独占の利益を観念する余地はないこととなり,上記の解釈に反する結果となる。 イ原判決は,出願公開後特許登録までの間の本件各特許の実施権を独占することができたことに起因する超過売上高の割合を特許登録後の10分の1をもって相当とした(102頁9行~103頁2行)。 しかし,上記判旨は,以下の諸点において法解釈を誤ったものであり,特許登録の前後で独占の利益の額に10倍の差異を設けた原判決の認定は失当である。 (ア)原判決のような考え方を採用すると,発明をノウハウとして秘匿されている間は独占の利益を観念することができるのに,出願して公開されると利益が失われ,または減殺されるということになる。これはいかにもバランスを欠いた解釈であり,不当である。 (イ)職務発明の承継に対する相当の対価は,独占の利益に対する実施料相当額を基礎に算出するものであり,現に本件においてもそのような計算式が採用されているところ,これは実施料相当額の請求を内実とする補償金請求権に通じる考え方である。 原判決は,特許法102条1項や同条2項において認められているような逸失利益の請求をすることができないことを問題とするものと考えられるが,これらの規定は,特許権侵害という病理的・個別的現象に対する対処の手段として設けられた強力な規定であって,これを職務発明の承継の対価の額の中で一般的に考慮することは想定されていないし,- 130 -そもそもそのような例外事象を計算上考慮することは 対する対処の手段として設けられた強力な規定であって,これを職務発明の承継の対価の額の中で一般的に考慮することは想定されていないし,- 130 -そもそもそのような例外事象を計算上考慮することは不可能であるから,特許法102条1項や同条2項のような規定の適用を受ける状態と比較して独占力が制限されているなどという議論をすることは意味がない。 また,補償金請求をするのに一定の要件を充足する必要があるといっても,要は警告書を送付すれば足りることであるから,これが取り立てて独占力を阻害することもない。 (ウ)原判決は,出願公開後登録までの期間は差止請求権がないことを指摘するが,補償金請求権の存在は,第三者に対して,当該出願公開にかかる特許発明の実施を抑止させるには十分な効果がある。常識的な事業主体であれば,将来補償金請求や差止等請求を受けることが予測される技術に投資などしないからである。 特許実務においては,各企業の知的財産部が他社の出願動向を把握しており,他社が出願している発明については,自社の製品開発に際し,これを回避するか,ライセンスを得るのが通常である。 したがって,実際上の独占力において特許登録前後で有意の差はなく,原判決が抽象的な法律効果の差異のみで独占力における優劣を論じるのは,観念論の域を出ない。 さらに,根本に翻って考えれば,補償金請求権の発生は,使用者が特許を受ける権利を取得したことの効果に過ぎない。ここで本来的に問題とされなければならないのは,使用者が補償金請求権しか行使できないということではなく,使用者が特許を受ける権利を取得したことそのもの,すなわち,将来特許権を取得して,補償金請求をするのみならず,差止等請求もなし得る地位を獲得しているということである。これは,法的に見ても強力な威嚇力を有する状態であり,ここ 取得したことそのもの,すなわち,将来特許権を取得して,補償金請求をするのみならず,差止等請求もなし得る地位を獲得しているということである。これは,法的に見ても強力な威嚇力を有する状態であり,ここに独占力を見い出さない原判決の判断は法制度に対する基本的理解を欠くものといわざる- 131 -を得ない。 (エ)特許ライセンスは特許登録前から行われることが多いところ,一般に登録の前後で実施料の額に変化が生じることはなく,また,市場における発明実施品の売り上げが特許登録の前後で変化をすることもない。 このように,特許登録の前後で,実施料も,実施によって得られる利益も変化しないにもかかわらず,登録前に得られた利益は法定通常実施権による利益であって,登録後は特許権に基づく独占の利益であるなどという議論をすることは,無益である。 また,そもそも,通常実施権による利益というものを観念すること自体に,法制度に対する誤解があるとしか考えられない。すなわち,第1に,原判決が問題とする特許登録前の時期には,いまだ特許権が存在しないから,これに対する法定通常実施権は論理的に存在することができず,原判決の判旨は理論的根拠を欠く。第2に,仮にこの場合にも通常実施権の存在を観念するとしても,法定通常実施権の内実は,単に発明者から差止等請求を受けないという地位に過ぎず,それ自体が利益を生み出すものではない。 (オ)以上のとおり,使用者の受けるべき利益の算定基準として算入される売上高について特許登録の前後で10倍の差異を設けた原判決の判断には法解釈の誤りが存在する。 ウ独占の利益の算定期間の始期が争点となり,発明者に対し職務発明の対価の支払いを認容した従前の裁判例においては,特許登録時や出願公開時はおろか,出願に先立つ特許を受ける権利の承継時まで遡って,売上げを 独占の利益の算定期間の始期が争点となり,発明者に対し職務発明の対価の支払いを認容した従前の裁判例においては,特許登録時や出願公開時はおろか,出願に先立つ特許を受ける権利の承継時まで遡って,売上げを独占の利益の計算根拠に算入しており,かつ,特許登録前の売上高について金額の減額等の調整は一切行っていない(東京地裁昭和58年12月23日判決・無体財産権関係民事・行政裁判例集15巻3号844頁,知財高裁平成20年5月14日判決・判例タイムズ1278号277頁,知財- 132 -高裁平成20年10月20日判決・裁判所ホームページ)。 本件における職務発明の対価請求における独占の利益は,上記裁判例と同様,権利の承継のときから算入されるべきであるから,HMS製品の売上げ全額を独占の利益の算定の基礎とすべきである。 エ一審被告の主張に対する反論(ア)「独占の利益」とは,特許を受ける権利を承継したことにより,特許を出願して登録を受け,あるいはノウハウとして秘匿することにより法律上または事実上取得することができる,発明の実施を排他的に独占しうる地位により生じる利益を意味する。そして,補償金請求権も,職務発明の対価請求権も,独占の利益をその請求権の内容とするものであり,かつ,いずれも仮想的な実施料を基礎に置くものであるから,補償金請求権の存在は,職務発明の対価の計算において完全な独占の利益の存在を認めるに必要十分な実質を有しているといえる。補償金請求をするのに一定の要件を充足する必要があるといっても,前記のとおり警告書を送付すれば足りることであるから,これが取り立てて独占力を阻害することもない。無効審判請求をされたからといって警告書の送付を躊躇する理由もない。むしろ,本件特許2のように一度審決取消訴訟で特許の有効性が確認された場合には,警告書を送 が取り立てて独占力を阻害することもない。無効審判請求をされたからといって警告書の送付を躊躇する理由もない。むしろ,本件特許2のように一度審決取消訴訟で特許の有効性が確認された場合には,警告書を送付することによって生じる実質的な独占力は高まる。 (イ)仮に,補償金請求の可能性の有無を問題とするとしても,本件各発明について,出願人である一審被告は,拒絶査定がなされた後に拒絶査定不服審判を請求していたのであるから,将来,特許登録された場合に備えて警告書を送付しておくといった措置を採ることは可能であるし,これは,実務的にもごく一般的な行動である。また,一審被告は,本件各発明の実施品であるHMS商品の発売当初から,それが特許出願中の発明を実施したものであることを商品パンフレット等にて公表していた- 133 -のであるから,競合他社が,本件各発明の内容について知り得る状況であったのであり,そもそも警告書を送付するまでもなく補償金請求をなし得る可能性があったといえる。 (5)争点(5)(HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法)についてア原判決は,一審被告がHMS商品の販売抑制策をとり,最終的にその販売を中止する措置をとった経営判断は,何ら不合理とはいえないと判断している。そして,その根拠として,①HMS商品がレディメイド商品との比較においてデメリットが存すること,②HMS商品の営業利益率がレディメイド商品の営業利益率に比べて低いこと,③一審被告がもっぱら一審原告に対する相当の対価の支払を免れる目的があったとは認められないことを挙げる(103頁5行~128頁16行)。 しかし,以下の(ア)~(ウ)で述べるとおり,上記判断は,いずれも理由のないものである。また,原判決は,経営判断の合理性で重要な要素として一審原告が主張した④HMS商品販売 5行~128頁16行)。 しかし,以下の(ア)~(ウ)で述べるとおり,上記判断は,いずれも理由のないものである。また,原判決は,経営判断の合理性で重要な要素として一審原告が主張した④HMS商品販売と一審被告の売上高との相関関係(前記(3)ア(ウ)のとおり,HMS商品が爆発的ヒットとなって,一審被告の売上げ激増に貢献したこと)を考慮しておらず,この点でも著しく不当である。以下の(エ)で述べるとおり,本件においては,一審被告の不合理な販売抑制の事実は存在しないものとして,従来の実績を基礎に,将来分も含む相当の対価を算定すべきである。 (ア)HMS商品のデメリットにつきaHMS商品が,業績の低迷していた一審被告に莫大な利益をもたらし,販売抑制の時点でまだまだ売上げが伸びる途上にあったことは,経営数値上明らかである。一審被告は,HMS商品によって,増収のみならず,大幅な増益も果たしているのであって,一審被告にとって救世主といっても良い商品である。このように大きな利益を生む商品に「欠陥」が見つかった場合,企業が単純に販売を中止するというこ- 134 -とはありえず,どのような企業でもその克服に最大限の努力をする。 しかし,一審被告は,HMSの販売を抑制・中止するに至るまで特段の改良もしておらず,単純に販売を継続し,単純に販売を抑制・中止している。原審における一審原告の同旨の指摘にもかかわらず,何らかの改良を行おうとした形跡は主張上も証拠上も一切現れない。これは,一審被告がHMSの販売期間中「欠陥」などというものを認識しておらず,本件訴訟が提起されてから無理やり作り上げた問題であることを示すものである。 S証人は,原審における証人尋問において,「…モニターの結果でHMSに対していろいろクレームが寄せられたとか,そういうふうな話を聞いたこ れてから無理やり作り上げた問題であることを示すものである。 S証人は,原審における証人尋問において,「…モニターの結果でHMSに対していろいろクレームが寄せられたとか,そういうふうな話を聞いたことはないですか。」との一審原告代理人からの質問に対し,「そのときはありません。」と返答し(原審におけるS証人の尋問調書40頁),一審原告代理人からの質問に対し,「正確な数字というのは把握してないですけれども,多いんじゃないかというところは聞いてました。」,「(社内でクレームを集計するような作業は)私はしてないです。」「(HMS商品の問題の話について誰から聞いたかについて)それ,ちょっと個人名は覚えてないです。」と述べるなど,曖昧な返答に終始している(同調書40頁~41頁)。このような,Sの証言からも,HMSの「欠陥」が本件訴訟提起後に,一審被告により捏造されたものであることは明らかである。 また,ここにいう「欠陥」には,顧客の安全に関わるなど,積極的に有害なものは含まれていない。その状態で,現に顧客がHMSを受け入れ,また,一審被告も大きな利益を得ていたのであるから,合理的企業においてはHMSの販売を中止する理由とはなるようなものではなく,原判決の指摘する事項は,そもそも問題となる余地がないか,あるいは,せいぜい改良検討事項とでも呼ぶべき程度のものであ- 135 -る。 そして,HMS商品の販売中止後,一審被告の業績は再び悪化し,HMS商品発売以前の状態に近付いている。 したがって,一審被告がHMS商品の販売を中止したのは不合理であることに疑いはなく,これに反する原判決の事実認定はあまりに非常識である。 bHMSメジャーを全店舗に備え維持する費用・労力(a)原判決は,HMSブラジャーについて「HMSの5種類すべてについてHMSメジャ なく,これに反する原判決の事実認定はあまりに非常識である。 bHMSメジャーを全店舗に備え維持する費用・労力(a)原判決は,HMSブラジャーについて「HMSの5種類すべてについてHMSメジャーを備え置こうとすれば,100に近い部材を前店舗に備え置くことが必要となるが,そのようなことは,資金面及び店舗のスペースから見てたやすいこととはいえない。」(108頁下8行~109頁2行),HMSガードルについて「1種類の素材から成るHMSメジャーがHMS商品全体に対する汎用性を有するものとは認められない。全ての種類の商品についてHMSメジャーを備え置くことは,資金面及び店舗のスペースから見てたやすいこととはいえないから,HMSメジャーを全店舗に備える費用・労力が大きい旨の一審被告の主張には理由がある。」(110頁13行~111頁3行)と判断している。 (b)原判決の上記判断において前提とされているのは,使用される素材ごとの伸縮率の差異による体感の違いである。 しかし,顧客はこのような体感の違いを問題にしておらず,そうであるからこそ,一審被告は,素材ごとに異なるHMSメジャーなど用意していない。一審被告は,HMS商品を販売するに当たって,顧客に対し,素材の違いまで体感できるなどということはアピールしておらず,そもそも顧客にはそのような期待もなかった。HMSメジャーは,本質的に,サンプル商品ではなく,サイズを計測- 136 -する手段なのである。 HMS商品の顧客に対する大きな魅力となったのは,適切なサイズの部品を組み合わせることによって得られるフィット感を体感できることであり,現に,素材ごとのメジャーを用意していなかったにもかかわらず,HMS商品は爆発的売上げを記録しており,また,素材の体感の差を問題にしたクレームも特になかった。 ( フィット感を体感できることであり,現に,素材ごとのメジャーを用意していなかったにもかかわらず,HMS商品は爆発的売上げを記録しており,また,素材の体感の差を問題にしたクレームも特になかった。 (c)確かにHMSメジャーに完成品と完全に一致する体感ができる機能を持たせようとすれば,当該商品で使用される素材に合わせてメジャーを作成する必要があるとはいえるが,その場合でも,必要となるのはあくまでも「使用される素材に合わせた」HMSメジャーであり,同一の素材が使用されている製品が複数種類ある場合には,その伸縮率も同一となるのであるから,1種類のメジャーで同一素材ないし感触が近い素材が使用されている商品の全てに対する試着サンプルとして使用することができる。この点で,HMSメジャーは,高い汎用性を有する。 具体例として,まずブラジャーを取り上げると,当時販売されていた「あこがれ」,「ヌディータ」,「ミーチュ」,「エクリナ」,「カラーフット」の五つの製品について,前身はすべて同じ素材であり,カップ部と後身はそれぞれ3種類の素材に分かれていた。したがって,それぞれのサイズについて,前身を1セット,カップ部と後身を3セットずつ用意すればよいこととなる(それぞれは部品であるから,製品のラインアップを超えて部品ごとに相互利用できる。)。そして,HMSメジャー1セットで,理論上8億通り,カップ部と後身を3つの素材ごとに分ければ,その9倍の216億通りもの計測が可能になる。また,HMSメジャーの場合,シリーズの入れ替えがあっても素材が同一である限りメジャー自体を- 137 -製造しなおす必要がなく,メジャーの寿命まで使い切ることができる。 これに対し,レディメイドであれば,五つのラインアップ全部について,すべてのサイズのサンプルを用意しなければなら を- 137 -製造しなおす必要がなく,メジャーの寿命まで使い切ることができる。 これに対し,レディメイドであれば,五つのラインアップ全部について,すべてのサイズのサンプルを用意しなければならず,また,シリーズ間の汎用性はないため,シリーズの入れ替えの都度全サンプルを用意し直さなければならないから,寿命まで使い切るのが困難である。また,そもそも,レディメイド製品のサンプルは,HMSメジャーのように体系的に整理されていないため,サンプルの管理自体が負担となる。 したがって,HMSブラジャーについて,HMSメジャーの備え置きが負担となるとする原判決の判断は誤りであり,むしろ,レディメイド製品よりも費用,労力ともに負担が大きく軽減されることが認められなければならない。 次に,HMSガードルについてみると,そのパーツは,レディメイドのサンプル1セットと同じ数量,同じ体積である。むしろ,上記のとおりレディメイドの場合にはシリーズごとにサンプルが必要になるので,HMSのパーツよりもはるかに大きな数量,体積になる。また,HMSガードルはシリーズを超えて利用できるのに対し,レディメイドのサンプルはシリーズの入れ替えの都度入れ替えなければならない。このように,ガードルについては,HMSメジャーを全店舗に備える費用よりも,レディメイドのサンプルをシリーズごとに備える費用の方が圧倒的に高額になるし,維持管理の労力もレディメイドのサンプルの方がはるかに大きいことは明らかである。 以上のとおり,HMSメジャーを利用するまでの準備に要する費用,労力は,レディメイドのサンプルに比べてはるかに小さいこと- 138 -は明白である。 (d)メジャーの準備に要する費用や労力は,商品の販売コストの問題であるところ,上記のとおり,HMSは,現に一審被告の業績を イドのサンプルに比べてはるかに小さいこと- 138 -は明白である。 (d)メジャーの準備に要する費用や労力は,商品の販売コストの問題であるところ,上記のとおり,HMSは,現に一審被告の業績を劇的に改善したヒット商品であり,増収のみならず,増益をもたらしたから,費用や労力を上回る収益力があったことは明らかである。 ある商品の販売コストは,その商品の生み出す利益との相関関係で適正かどうかが決定されるところ,このように企業の業績を劇的に向上させたのは,HMSのシステムとしての魅力であるから,仮に原判決が指摘するように,計測サンプルであるHMSメジャーを準備するのに費用や労力を要するとしても,それは適正なコストであったこととなる。 そもそも,HMSの販売コストが適正かどうかを比較するのに,商品の受注から製造,販売に至るシステムが全く異なるレディメイドとの間で,商品サンプルの部分だけを切り出して対比することには何の意味もない。 c工場における生産管理が難しいこと(a)原判決は,①レディメイド商品との比較でいえば,HMSメジャー商品では個々のオーダーごとにサイズが変わり,製造コストがかかるという意味で,生産管理が難しいということはできる,また,②レディメイド商品の納期は8日間であるのに対し,HMS商品の納期は,販売当初,注文時から30日ないし60日間とされていたことからすると,レディメイド商品で対応できる顧客にとっては,HMS商品の納期はレディメイドに比べて相当遅いといえる。 したがって,HMS商品について工場における生産管理が難しいことや納期の点を理由に,HMS商品からレディメイド商品に販売方- 139 -針の力点を移すことは,不合理な経営判断とはいえない,と判断している(113頁9行~下5行)。 (b)原判決の挙げる①の点 や納期の点を理由に,HMS商品からレディメイド商品に販売方- 139 -針の力点を移すことは,不合理な経営判断とはいえない,と判断している(113頁9行~下5行)。 (b)原判決の挙げる①の点について,原判決は,具体的な事実を挙げることなく,レディメイド商品と比較した場合のオーダーメイド商品一般の特徴を抽象的に問題として述べているのみである。個々のオーダーごとにサイズが変わるのは,HMS商品の問題ではなく,オーダーメイド一般の問題であるから,これをレディメイドと比較して問題視することに意味がなく,むしろ,個々のオーダーに応じた製品を作ることが商品の魅力なのである。これが問題だというのであれば,およそあらゆるオーダーメイドはビジネスとして不合理であることとなる。 また,一審被告の縫製工場の作業は,指示されたパーツを縫い合わせていくことに尽き,また,コンピュータシステムによる管理体制も構築されていたから,むしろ容易であった。このような合理的なオーダーメイドの総合システムを構築することを可能にするのがHMS商品の強みであったといえ,総合的に見れば,在庫負担の軽減など,一審被告にとって大幅な負担軽減をもたらした。 原判決は,このような点について何ら言及することなく,一般論のみからHMS商品の方がレディメイド商品よりも生産管理が難しいと安易に結論付けているにすぎない。 さらにいえば,生産管理が難しくとも,それに見合う利益が得られれば,企業にとってそれは合理的な管理コストであるから,これも結局コストの問題であり,その当不当は,商品の性質が異なるレディメイド製品との比較ではなく,収益との関係で考えなければならない。この点,上記のとおり,HMSは,単に売上げが伸びただけではなく,爆発的な利益を一審被告にもたらしているのであるか- 140 - ディメイド製品との比較ではなく,収益との関係で考えなければならない。この点,上記のとおり,HMSは,単に売上げが伸びただけではなく,爆発的な利益を一審被告にもたらしているのであるか- 140 -ら,「コストがかかる」ということを問題にすること自体非常識である。 (c)次に,原判決の挙げる②の点については,一審被告は,HMS商品販売期間中もレディメイド商品をも併売しており,HMS商品は,それと並ぶ商品ラインアップの一つである。レディメイドで足りる顧客はレディメイドを購入しており,現にレディメイド商品はHMS販売期間中も一定の売上げを維持している。顧客は,納期の短いレディメイド商品と納期のかかるHMS商品とがあることを知った上で商品を選択して購入しているのであり,その前提の下でHMSは爆発的なヒット商品となったのである。このような状況にあって,「レディメイドの商品で対応できる顧客にとってHMS商品の納期は長すぎる」ことなど,そもそも問題とする必要はないし,他商品との性質の違いから生じる相対的なデメリットを理由にこれを理由に現に大ヒットを維持している商品の販売を中止することなどあり得ない。 さらに,そもそも,原判決が問題としているのは,HMSの販売当初の納期であるが,販売開始から5年以上も経過した後の販売中止の判断の資料として,システムの確立途上にあった販売開始当初の納期を持ち出すことは,見当違いである。その後,受注から生産,納品にいたるシステムが改善され,HMS商品の納期は大幅に短縮されている。 d体型補整効果が限定されていること(a)原判決は,次のとおり判断している(114頁下8行~116頁4行)。 ・一審原告が主張する「①HMSメジャーは『体型補整を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる』(本- a)原判決は,次のとおり判断している(114頁下8行~116頁4行)。 ・一審原告が主張する「①HMSメジャーは『体型補整を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる』(本- 141 -件各発明の特許公報の【発明の効果】欄)という効果を有すること」,「②実際にも,まずボディメイクを行い体型補整をした状態での着用感を確認した上で採寸していること」の2点については,そもそもHMS商品は,当初,ジャストフィット商品であることをアピールして販売を開始したものであるが,しかしそれでは一審被告の強み,すなわち他の下着メーカーにない強みであるボディメイク(体型補整)をどのようにして行うか分からない販売員が続出し販売現場に混乱が生じたことから,第26期(平成14年9月から平成15年8月まで)の途中から,体型補整を前面に押し出すことに販売方針を転換したものである。したがって,HMS商品のコンセプトとしての体型補整効果は,二次的なものと認められる。 ・また,「③女性の体は柔らかいから,原理的にも体型にフィットした製品の方が高い体型補整効果が得られる」との一審原告の主張については,一審被告における体型補整とは,下着を着用してボディメイクを行うことにより,いわゆるゴールデンプロポーションと呼ばれる理想の体型に近づけていくことを指すものであり,この意味での体型補整効果を求める顧客の体型は,通常この理想的な体型とは異なるから,体型にフィットした製品の方が高い体型補整効果が得られるということはできない。 ・さらに,「④レディメイド商品の場合,自己の体型を標準規格に合わせなければならないため,体型補整効果はあるものの窮屈で着用感が悪くなるという問題がある」との一審原告の主張については,レディメイド商品は,ゴールデンプロポーションのバ ,自己の体型を標準規格に合わせなければならないため,体型補整効果はあるものの窮屈で着用感が悪くなるという問題がある」との一審原告の主張については,レディメイド商品は,ゴールデンプロポーションのバランスの下に設計されているから,体型補整効果を求める顧客にとっては,レディメイド商品を付けてボディメイクを行えば理想的- 142 -な体型を作ることができ,その目的を達することができる。レディメイド商品に体型補整効果があること自体は否定できないし,体型補整効果を求める以上多少の窮屈感が生じるのは当然のことである。 ・以上によれば,一審原告指摘の①ないし④はいずれも理由がなく,したがって,HMS商品については,体型補整効果がレディメイド商品に比べて限定されているものと認められ,これをHMS商品の販売抑制策をとることについての一つの理由とした判断が合理性を欠くものとはいえない。 (b)原判決は,一審原告主張の①,②の点に対し,「HMS商品のコンセプトとしての体型補整効果は,二次的なものと認められる。」と判断している。 しかし,商品コンセプトとして一次的なものであるか二次的なものであるかと,その効果の大小の問題は全く別問題であり,「コンセプト」として二次的な効果であるからといって,すなわち,一審被告が商品の魅力としてアピールする際の順位で劣後したからといって,必ずしも限定的な体型補整効果しか生じないわけではない。 したがって,体型補整効果が限定されていることの理由には全くならない。むしろ,新製品の魅力をアピールする際には,従来製品と同じ機能よりも,新しい機能を強くアピールするのは当然であるところ,このような新製品のアピール内容をもって技術レベルの効果の評価と混同する原判決の認定は非常識である。 (c)原判決は,一審原告主張③の点に対し, ,新しい機能を強くアピールするのは当然であるところ,このような新製品のアピール内容をもって技術レベルの効果の評価と混同する原判決の認定は非常識である。 (c)原判決は,一審原告主張③の点に対し,「いわゆるゴールデンプロポーション」に近づけていくという意味での体型補整を求める顧客に対しては,HMS商品の方が高い体型補整効果が得られることはできないと認定する。 - 143 -しかし,HMSによってゴールデンプロポーションの下着を作成することは容易である。HMSは,あくまで測定手段であり,またオーダーメイドの製品であるから,レディメイドで準備できる下着はすべて準備できるのであり,体を締め付けるような部品を組み合わせていけばゴールデンプロポーションの下着を作成できるのは当然である。 また,原判決の認定は,裏返せば,ゴールデンプロポーションに近づけるという体型補整を求めない顧客にとっては,レディメイド商品での体型補整は大した意味を持たないことになり,かえって,HMS商品を用い,顧客個々人の元々の体型を出発点として,補整したい部分について当該顧客の希望する体型補整効果を得られるファンデーションを提供する方が,むしろ高い体型補整効果を得られるということができる。 そして,一審被告の売上高の推移からすれば,一審被告の顧客は,ゴールデンプロポーションに近付けるという体型補整よりも,個々人の体型に合わせた体型補整の方をより支持していたことは明らかである。 とすれば,敢えてゴールデンプロポーションに近付ける顧客の視点のみを持ち出して体型補整効果の高低を論じたところで,意味はないし,少なくとも,HMSを支持する顧客がレディメイドを支持する顧客より多く,現にHMSによって一審被告が劇的な増収を果たしているのに,その販売を中止する理由とはならない。 ( たところで,意味はないし,少なくとも,HMSを支持する顧客がレディメイドを支持する顧客より多く,現にHMSによって一審被告が劇的な増収を果たしているのに,その販売を中止する理由とはならない。 (d)一審原告主張④の点についての原判決の認定も,ゴールデンプロポーションに近づける体型補整を望む顧客については,レディメイド製品の着用感の悪さが問題とならないと結論づけるものである。しかし,そのような体型補整を望む顧客のみを前提として判断- 144 -すること自体が不当であることは,上記のとおりである。 eあらかじめ体感することが不可能であること原判決は,HMS商品によって得られる体感がHMSメジャーによって得られる体感と異なることを,「HMSメジャーないしHMS商品のデメリット」とした上で,これを理由にHMS商品の販売を抑制することは不合理な経営判断とはいえないと認定するものであるが,これは,せいぜい改良検討事項とでも呼ぶべきものであってデメリットではない。 確かに,HMSメジャーとHMS商品が寸分たがわぬ全く同一の着用感を体感できるというものではない。 しかし,事前に着用感を体感できないのはオーダーメイド一般の問題であり,通常のオーダーメイドにおいては,テープメジャー等で計測するだけであるから,出来上がるまでは全くその着用感を体感することはできない。これとの比較において,HMSは,完成品に限りなく近い着用感を予め体感できる点で,他のオーダーメイド製品にはない,大きな強みを有する。 それにもかかわらず,体感が完全には同じでないから「デメリットだ」と認定する原判決は,およそ本件の対象技術を理解していないとしか思われない。 fHMSメジャーによる計測とHMS商品の寸法とが異なること原判決は,「…HMSメジャーは,計測器である以上,HM だ」と認定する原判決は,およそ本件の対象技術を理解していないとしか思われない。 fHMSメジャーによる計測とHMS商品の寸法とが異なること原判決は,「…HMSメジャーは,計測器である以上,HMSメジャーで計測した寸法を使ってHMS商品を製造することに意味があるから,HMSメジャーで計測した寸法とは別の寸法を使ってHMS商品を製造するのであれば,別の寸法を使って製造された商品のサンプル(レディメイド商品のサンプル)を試着してもらう方法で足りると考えることも,あながち不合理な判断とはいえない。」と判断する- 145 -(116頁下4行~117頁2行)。 しかし,HMSは,本来レディメイドでは吸収できない細かな体型のバリエーションにフィット感を体感しながら対応できる点にメリットがある。レディメイドの商品では,JIS規格に定められた範囲での大雑把な寸法しか把握できないのは当然であり,HMSメジャーとHMS商品との間に生じる誤差は,これと比較すればごく微小なものであるのみならず,そもそも前提となるフィットの次元が異なる。それにもかかわらず,誤差の内容について何ら具体的な事実認定もせずに両者を同一線上で扱う原判決の認定は,あまりに粗雑である。 また,本当に誤差を問題にするなら,HMSメジャーの寸法が実際の寸法と齟齬があることが判明した時点で,実際の寸法と一致するようHMSメジャーを改訂する作業をすれば足りることであり,実際上も,長さの差異を修正するだけであるから,それほど困難な作業が伴うとも思われない。 (イ)HMS商品の利益率につき原判決は,乙116~119がいずれも信用できることを前提に,HMS商品の営業利益率がレディメイド商品の営業利益率に比べて低いとし,そのことを理由の一つとしてHMS商品の販売を中止したことは,経営判断とし ,乙116~119がいずれも信用できることを前提に,HMS商品の営業利益率がレディメイド商品の営業利益率に比べて低いとし,そのことを理由の一つとしてHMS商品の販売を中止したことは,経営判断として何ら不合理とはいえないと判断している(117頁15行~128頁4行)。 しかし,以下に述べるとおり,営業利益率の比較自体,本件における立証命題との関係では無意味な検討手法であるのみならず,原判決が引用する乙116~119はいずれも信用性に欠けるものである。 a企業にとって最終的に重要なことは儲かっているかどうかであるのに対し,利益率は収益構造を知り,企業の有するリソースの配分を検討するための相対的な指標に過ぎない。利益率の良い商品は販売数量- 146 -当たりの儲けは大きいであろうが,通常は利益率の低い商品の方が多く販売することが可能であり(いわゆる薄利多売),また,一般に利益率の高いぜいたく品と異なり,コストパフォーマンスの高い商品は景気変動にも強いなど,メリットもある。このように,企業としては,商品の有する総合的な収益力や安定性等を考慮して最終的な経営方針の決定をするのであるが,利益率は,その際の指標の一つになるに過ぎない。 利益率の低い商品にかけているコストを他の利益率の高い商品に振り向け,最終的に収益が向上するのであれば,利益率の低い商品の製造販売を中止することによって限られたリソースを有効活用することができる。しかし,HMS商品は,一審被告の収益を支えていた基幹商品であり,その販売を中止し,経営資源を従来商品に振り向けたからといって,従来商品の収益性が向上するような状態ではなかった。 むしろ,HMS商品は,低迷していた従来の商品に取って代わりつつあったヒット商品であり,まさに企業資源を集中すべき対象であったといえる。 また, ,従来商品の収益性が向上するような状態ではなかった。 むしろ,HMS商品は,低迷していた従来の商品に取って代わりつつあったヒット商品であり,まさに企業資源を集中すべき対象であったといえる。 また,HMS商品を特徴付ける最大のポイントである測定手段については特許があり,単なる下着商品とは異なる強固な安定性も期待することができたし,高級品にも大衆向けの製品にも適用できる本件各発明は,汎用性が高く,陳腐化にも強かった。そのような商品の販売を中止すれば単純に売上げも利益も減少する結果となることは明白であったし,現にそのとおりの結果となっている。 以上のように,利益率が低いからという理由だけで,現に大きな利益を生んでいる商品の販売を中止する経営判断が不合理であることには何の疑問もない。 実際に,一審被告は,現に営業利益率の比較を行った上でHMS商- 147 -品の販売抑制策をとったわけではない。このことは,原審において一審被告が提出した証拠が,いずれも原審訴訟係属中に作成されたものであること,そして,HMS商品を正常に販売していた当時一審被告が一貫してHMS商品を主力商品と位置付けていたことからも明らかである。本件において問題となっているのは,事後的に見た経営判断の妥当性ではなく,HMS商品の販売を中止した動機であるから,一審被告や原判決がしているような事後的分析自体には意味はない。 b乙116は,上段で各期の月次推移表(実績)を示し,下段で営業施策販促費用を示している。しかし,乙116の下段の記載及び乙116の下段の内訳を記載した乙117は,以下の点で不正確,不自然であって,信頼性がない。 (a)通期とも,乙116の上段と下段に差額が生じているものの,この差額分の内訳が具体的に説明されていない。上記差額分には,専らレディメイド商品に関 の点で不正確,不自然であって,信頼性がない。 (a)通期とも,乙116の上段と下段に差額が生じているものの,この差額分の内訳が具体的に説明されていない。上記差額分には,専らレディメイド商品に関連する経費がかなりの金額で含まれていると考えるのが素直である。なぜなら,乙116の下段の内訳を記載した乙117においては,レディメイドの経費はほとんどの月で零であり,第26期に至っては年間を通じて零である。しかし,HMSが正常に販売されていた第25期から第27期までの間,レディメイド商品の売上構成比が,少なくとも●●●●●から●●●●●の間であったことからすれば,専ら同商品のための経費も相当程度発生していたと考えるのが常識的だからである。 (b)一審被告の説明によれば,乙116下段の営業施策販促費用は,乙116上段の各期月次推移表(実績)における経費のうち,営業関連費用を一覧表にまとめたものとのことである。そうであれば,同じ費目に関し上段の金額よりも下段の方が高額になることは考えられない。ところが,第25期の信販手数料に関し,上段より- 148 -も下段の方が●●●●●●●●増加している。また,第26期の景品費,信販手数料,商品券に関し,乙116の上段よりも下段の方が●●●●●●●●●●●●,●●●●●●●●●●●●,●●●●●●●●●●●●と,それぞれ著しく増加している。さらに,第27期の信販手数料に関し,乙116の上段よりも下段の方が●●●●●●●●●●増加している。 (c)他方で,HMS商品の販売が抑制された後の第28期以降では,乙116の上段の記載よりも下段の記載の方が高額になるようなことは一例もない。 (d)このように,乙116のうち下段の営業施策販促費用に関する記載及びこれを前提にした乙117は,不正確,不自然な点が多 16の上段の記載よりも下段の記載の方が高額になるようなことは一例もない。 (d)このように,乙116のうち下段の営業施策販促費用に関する記載及びこれを前提にした乙117は,不正確,不自然な点が多々存するから,信用性に欠ける。 c営業利益率の算定基礎となった乙119の記載は,以下の点で不正確,不合理であって,信頼性がない。 (a)オーダー廃棄金額乙119の売上原価の欄には,多額の「オーダー廃棄金額」が計上されている。しかし,HMS商品は,オーダーメイドという商品の性質上売れ残りの在庫が大量に発生することはなく,多額の廃棄が発生するようなことはなかった(甲75[「再生産状況比率」一審被告商品部])。また,一審被告は,第27期(平成16年8月期)に,製品廃棄損1億6175万2000円を特別損失に計上しているところ(甲7[一審被告・有価証券報告書(平成15年9月1日から平成16年8月31日まで)]50頁),乙119にはレディメイド商品に関する廃棄損は記載されていないから,この製品廃棄損は,ほぼレディメイド商品に関するものである。そうすると,一審被告は,HMS商品の売上高からは「オーダー廃棄金額」- 149 -を売上原価として控除する一方,レディメイド商品の売上高からは製品廃棄損を控除せずに,各営業利益率を比較して算出しているということになる。確かに会計上は特別損失は営業利益の後に控除されるものではあるが,本件において上記両商品を比較する上では,廃棄損の算入の有無の点で不均衡が生じている。この意味でも単純な「営業利益率」による比較の不合理性は明らかである。 (b)信販手数料原判決は,信販手数料を売上比により配賦する手法を容認している。しかし,信販手数料は,顧客がクレジットカードにより特定の商品を購入する際に必要になるものである 性は明らかである。 (b)信販手数料原判決は,信販手数料を売上比により配賦する手法を容認している。しかし,信販手数料は,顧客がクレジットカードにより特定の商品を購入する際に必要になるものである以上,商品と費用との関係が直接的かつ明確である。そうであれば,信販手数料は,実際にHMS商品又はレディメイド商品を販売するために直接要した分がそれぞれ計上されるべきである。 (c)商品券乙119には,「販促費(商品券)」が専らHMS商品限定施策として計上されている。 しかし,この商品券はレディメイド商品の購入のためにも使用できたのであり,かつ,現に当時レディメイド商品も相当の売上げを維持していたのであるから,これも恣意的にHMS商品にコストを割り当てたものである。 (ウ)一審原告に対する相当の対価の支払を免れる目的につき原判決は,HMS商品のデメリットやHMS商品の営業利益率に基づきHMS商品の販売を抑制する経営判断をしたのであるから,一審被告がもっぱら一審原告に対する相当の対価の支払を免れる目的をもっていたとは認められないと判断している(128頁6行~10行)。 確かに,販売抑制の主たる理由は,WのEに対する憎悪や嫉妬であ- 150 -り,「もっぱら」一審原告に対する相当の対価の支払を免れる目的をもっていたとはいえない。 しかし,本件訴訟提起後も依然特許製品としてHMS商品をラインアップに残していた一審被告が,最終的にHMS商品の完全な販売停止に踏み切り,特許無効審判の請求に踏み切ったのは,将来HMS商品を再度販売する可能性を残すことよりも,一審原告に対する相当の対価の支払を免れることを選択したものと考えられる。 Wとしては,E憎しの思いからHMS商品の販売抑制をしたものの,それによって業績が悪化することは予測しており,将来の保険と ,一審原告に対する相当の対価の支払を免れることを選択したものと考えられる。 Wとしては,E憎しの思いからHMS商品の販売抑制をしたものの,それによって業績が悪化することは予測しており,将来の保険としてHMS商品を残してはいたが,本件訴訟が提起され,ついで敗訴の可能性が高まると,相当の対価の支払いを免れるため,HMSの完全な中止に踏み切ったと考えられる。 既に述べたように,HMS商品には,およそデメリットはなかったのであり,業績の悪化を覚悟してまでその販売を中止する理由は,一審原告に対する相当の対価の支払を免れる目的をもっていた点に求めるほかない。 (エ)一審被告の不合理な行動と相当対価の算定a特許発明自体には実施における支障がなく,また,その実施品の収益力が認められるにもかかわらず,使用者が,経済合理性に反して意図的にそれを活用しない場合に,そのことを対価の計算において反映させるべきか,ということが問題となる。 この点につき,結論的には,以下のとおり,旧35条4項は,その発明の客観的な価値をもって「対価」とするものと解すべきであり,通常は,使用者が得た利益に基づいて算出するのが妥当であるが,使用者が常識的な経営判断の域を超える不合理な判断をしたことによって発明から得られるべき利益を得ることを中断した場合には,現に受- 151 -けた利益が発明の客観的な価値を反映したものとはいえないから,それを超える利益を認定することも可能であると考える。 (a)旧35条4項が規定する「受けるべき利益」の語義特許法の他の規定を見ると,例えば,利害関係人による特許料の納付を定める特許法110条2項は,「前項の規定により特許料を納付した利害関係人は,納付すべき者が現に利益を受ける限度においてその費用の償還を請求することができる。」と定め,現実の 人による特許料の納付を定める特許法110条2項は,「前項の規定により特許料を納付した利害関係人は,納付すべき者が現に利益を受ける限度においてその費用の償還を請求することができる。」と定め,現実の利益を問題とする場合に利益を「受けるべき」という表現を用いず,「現に受ける利益」という限定的表現を用いていることが認められる。また,通常の語義としても,「受けるべき利益」とは,現に受けた利益には限定されず,合理的・客観的に受けられるであろう利益が含まれると解される。さらに,旧35条3項は,「従業者等は,…職務発明について使用者等に特許を受ける権利…を承継させ…たときは,相当の対価の支払を受ける権利を有する。」と規定し,承継によって使用者等が利益を得たことは要件とされず,むしろ,承継のときに対価請求権が発生することとしているから,本来的に,未だ「現に」受けていない将来の利益が問題とされるべきことが認められる。 こうしてみると,法は,本来的に,対価の算定において,使用者等が「受けるべき利益」すなわち,将来得られるであろう利益を基準として考慮することを求めているものと解されるところ,このような考え方は従来の裁判例にも沿うものである。 (b)利益発生を阻害する事由と利益の算定本件では,さらに,ここにいう「将来得られるであろう利益」に関し,当該利益発生を阻害する具体的事情がある場合に,これをいかに評価すべきかが問題となる。 - 152 -確かに,利益発生を阻害する事情の存在は,「将来得られるであろう利益」の不存在を確定する事情ともいえる。 しかし,たまたま訴訟係属中に利益発生を阻害する事情が生じたからといって,直ちに将来の利益を算定の基礎から排斥することは相当でなく,当該阻害事由の性格いかんでは,将来分の利益が考慮されるべきであるといえる。 たま訴訟係属中に利益発生を阻害する事情が生じたからといって,直ちに将来の利益を算定の基礎から排斥することは相当でなく,当該阻害事由の性格いかんでは,将来分の利益が考慮されるべきであるといえる。 旧35条3項は,権利の承継の時点において対価の発生を認めるものである以上,当該時点においてその価値を客観的に評価することを前提としていると解される。これは,本質的には,使用者等が将来その権利を使用するに当たっての経営上の巧拙は考慮していないことを示すものである。 確かに,権利の利用状況について,権利者の置かれた具体的環境を離れて考察することはできないため,対価の額の算定に当たって,使用者等が当該権利を十分に利用できる事業環境にあるかどうかといった客観的事情については考慮の対象となるかもしれない。 しかし,一定の具体的環境を想定するとしても,法は,少なくとも,使用者等が合理的経済人として行動し,当該環境の中で権利の最大限の利用を図ることを前提としていると解される。 したがって,対価の額を算定するに当たっては,権利者の置かれた具体的環境において,権利者が経済合理性のある行動を採ることを前提とすべきである。 さらに考えると,特許法は,著作権法における職務著作とは異なり,職務中になされた発明であっても,その権利の一次的帰属主体が従業者であることを前提としつつ,「発明から生ずる権利や利益を,使用者と従業者との間で,どのように分配するのが発明奨励にとって最も効率的かつ公平にかなっているか」(中山信弘・工業所- 153 -有権法(上)特許法第2版増補版65頁)という観点から職務発明制度を設計している。この観点に立ち,権利の一次的帰属主体たる従業者から見ると,本来権利を有効に利用することができる者に承継させ,その対価を得るのが合理的であり,かつ,このよう いう観点から職務発明制度を設計している。この観点に立ち,権利の一次的帰属主体たる従業者から見ると,本来権利を有効に利用することができる者に承継させ,その対価を得るのが合理的であり,かつ,このような状態を確保するのが発明奨励にとって最も効率的かつ公平である。ここにいう権利を有効に利用することができる者としては,権利を最大限利用し,かつ,利益を最大化できる者であることが理想であろうが,職務発明制度は多種多様な「使用者等」と「従業者等」との個別具体的な関係の存在を前提とするものであるから,制度趣旨に照らした効率性及び公平性は,「最高の使用者等」を前提とするのではなく,使用者が経済的に合理的な行動をすること,すなわち,合理的経済人として振舞うことを前提としたものであると考えるべきである。 したがって,この点においても,旧35条4項の解釈として,少なくとも合理的経済人が権利の承継を受けることを想定して対価を算定することを要すると考えるべきである。 b本件において,一審被告は,一審被告社内の権力者の個人的嫉妬や本件訴訟への対抗目的から,会社の屋台骨というべき状態にあったHMS商品の販売を抑制し,最終的に中止しているのであって,一審被告が,その不合理な行動により,将来も安定的に得られたはずの売上げ及び利益を逸したことには疑いがない。また,一審被告は,この訴訟終了後にHMS商品の販売を再開することも可能である。 したがって,本件においては,一審被告の不合理な販売抑制の事実は存在しないものとして,従来の実績を基礎に,将来分も含む相当の対価を算定すべきである。 (オ)一審被告の海外進出と本件各発明の再実施の可能性- 154 -本件各特許については,中国及び台湾にファミリー特許が存在し,現在も存続しているところ,平成21年4月20日,伊藤忠商事 ある。 (オ)一審被告の海外進出と本件各発明の再実施の可能性- 154 -本件各特許については,中国及び台湾にファミリー特許が存在し,現在も存続しているところ,平成21年4月20日,伊藤忠商事株式会社が一審被告の筆頭株主となり,中国等に対する事業展開を進めることが明らかにされた(甲118[伊藤忠商事株式会社・ニュースリリース])。伊藤忠商事株式会社が,専ら経済合理性の観点から,本件各発明の実施を中国,台湾において開始させる可能性は高いから,今後,HMS商品は,再び爆発的な売上げを一審被告にもたらす可能性が高い。 イ一審被告の主張に対する反論HMSメジャーを使える人材の育成に要する費用は,信用性に疑問のある乙117を前提にしても,売上高の0.1%に充たない費用の支出が時折散見されるにすぎない。他方,HMSメジャーは全店舗に備え置かれて実際に使用され,これに基づいて製造されたHMS商品が全店舗で販売されていたのであるから,HMSメジャーを使って顧客の身体を計測できる社員は,販売開始後短期間のうちに多数存在していたことになる。そうであれば,HMSメジャーを使える人材の育成に要する費用・労力は,取るに足らないものであったことが容易に推認できるというべきである。 (6)争点(6)(本件各特許の無効理由の存否とその相当対価の額への影響の有無・程度)についてア無効理由の主張及び無効審判の結果を相当対価の額へ影響させることは不当である。 特に,本件においては,本件訴訟に至るまで,本件各特許の無効を主張する者は皆無であり,一審被告は,本件特許2のみならず本件特許1についても,出願以降その独占の利益を十分に享受してきたのである。 そして,一審被告は,特許が無効審判の結果無効となったとしても,それまでに当該特許を排他的に実施することにより得た利 ならず本件特許1についても,出願以降その独占の利益を十分に享受してきたのである。 そして,一審被告は,特許が無効審判の結果無効となったとしても,それまでに当該特許を排他的に実施することにより得た利益を返還ないし放棄する義務はないのであるから,事実上,独占的に本件各特許を実施して- 155 -いたという歴史及びその結果一審被告が得られた利益が無に帰するものではない。 それにもかかわらず,自ら独占の利益を得てきた特許を後日無効にすることによって発明者が受けるべき対価を否定し,または減額することができるのでは,使用者と発明者との間の公平を害する。 また,後日無効審判の結果特許が無効となった場合に相当対価の額がゼロないし低廉なライセンス料によって計算されるべきことを認めると,発明者の利益を不当に害することになり,発明に対するインセンティブを付与するという職務発明制度の趣旨に悖るものであし,「発明を奨励し,もって産業の発展に寄与する」という特許法の目的(特許法1条)そのものにも反することになる。 以上のとおり,後日無効審判の結果特許が無効になったからといって,過去の売上げに対する相当の対価へ影響はないとする原判決の判断は正当である。 イ一審被告は,進歩性欠如の場合には,相当対価額に影響を及ぼす事情となると主張する。 しかし,進歩性の要件は,同じ先行技術文献を前提としたとしても審査官によってその判断が区々となりうるものであり,現実に審判を経るまでは,真に進歩性が欠如しているといえるか否かが判別し難いものである。 加えて,本件各特許については,当初は進歩性欠如を理由として拒絶査定がなされたものであるが,その後,拒絶査定不服審判を経て登録されたという経緯を辿ったものであり,拒絶理由通知や拒絶査定を経ずに登録された特許に比べ,より綿密な審査を乗り越 性欠如を理由として拒絶査定がなされたものであるが,その後,拒絶査定不服審判を経て登録されたという経緯を辿ったものであり,拒絶理由通知や拒絶査定を経ずに登録された特許に比べ,より綿密な審査を乗り越えて登録に至ったものである。このような本件各特許については,進歩性の問題はないと考えるのがむしろ同業他社の通常の認識であるというべきである。 ウ一審被告は,最高裁平成12年4月11日判決以降,特許権侵害訴訟に- 156 -おいては特許無効の抗弁が出されることがほとんど確実であることをもって,ライセンス料の引き下げを求めることがないと考えるのは通常ではないと主張する。 しかし,仮にある程度高額なライセンス料の支払を伴うとしても,ライセンスを受けることにより,ライセンシーは,特許権者以外の競合他社が実施できない技術を実施することができ,それにより,競合他社の販売できない商品を販売して利益を得ることができるという大きなメリットがある。これは,当該特許が無効となることにより,誰もが使用できるようになってしまう場合に比べて,ライセンシーにとっては遥かに大きな利益となる。それゆえ,ライセンスを受けようとする者は,ごく簡単な調査で無効原因が判明するような場合でもない限り多くの時間と費用をかけて無効原因調査を行ったりしないのが実態であり,本件各特許に対して一審被告が行っているような執拗なまでの無効原因の調査を実施することは,実務の常態ではない。 また,ここで問題としている仮想実施料とは,使用者である一審被告が本件各発明を独占的に実施して現実に得た利益に基づいて,発明者に対して支払うべき対価の額を算定するためのものであるから,ここで考慮されるべきは,使用者が現実に当該職務発明にかかる発明を独占的に実施していたか否かであって,特許侵害訴訟を提起した場合に無 発明者に対して支払うべき対価の額を算定するためのものであるから,ここで考慮されるべきは,使用者が現実に当該職務発明にかかる発明を独占的に実施していたか否かであって,特許侵害訴訟を提起した場合に無効の抗弁がなされるか否かとは無関係である。 エ本件特許1の無効が確定したことに基づいて,以下のとおり主張する。 (ア)本件においては,実質的に特許権者自身であるといえる,一審被告の専務取締役の経歴を持つZが特許無効審判を行い,一審被告は何らの応答をせず,本件特許1が無効になったが,仮にそのような行動がなければ,本件特許1は,なお独占力を発揮し続け,一審被告に利益をもたらし続けたものと考えられる。そうすると,実質的に特許権者自身が特- 157 -許無効審判を請求したのは,正常な経営判断の領域を逸脱した不合理な行動であると認められるから,独占の利益の算定に当たっては,このような事実は無視されるべきである。 (イ)本件特許1は,HMS商品のうち,ブラジャーのみを対象とする発明である。これに対し,本件発明2は,主としてガードル及びボディスーツに関するものであるが,その請求項7ないし10は,トップ部(ブラジャー)を組み合わせたものであり,本件特許2の請求項9及び10の実施により,ガードル及びブラジャーが一体となったHMSメジャーを構成することが可能となる。一審被告において使用されていたHMSメジャーは,ガードルとブラジャーがセットになっていたものであり,また,市場における価値は両者が一体となって初めて十全に発揮されるものである。確かに,一審被告は,ブラジャーのみを先行的に発売し,それも画期的な売上げを記録するに至っているが,これは,未だ市場にHMSが存在しなかった時期のことであり,現時点においては,ガードルとのセットでなければ競争力はない。し ジャーのみを先行的に発売し,それも画期的な売上げを記録するに至っているが,これは,未だ市場にHMSが存在しなかった時期のことであり,現時点においては,ガードルとのセットでなければ競争力はない。したがって,HMS商品は,実質的に,本件発明2のみによっても独占可能であるといえる。 (ウ)したがって,本件特許1が無効とされたとしても,本件における対価の算定には影響しないというべきである。 オ本件特許2に無効理由が存する旨の主張に対し,次のとおり反論する。 (ア)一審被告は,Z名義で,平成21年3月27日特許庁に対し本件特許2について,本件訴訟と同じ無効理由を主張して無効審判請求を行ったが,特許庁は,平成21年7月7日,請求不成立の審決をした。 (イ)一審被告の無効理由の主張は,以下に述べるとおり失当である。 a一審被告は,乙138に記載されている発明に,ヒップカップサイズの調節という技術思想が開示されていると主張する。 しかし,乙138に開示されているのは,「少なくともトップ部- 158 -T,ウェスト部Wおよびボトム部Bの3つの部片からなるボディスーツ等のファンデーション1において,前記ファンデーション1は未縫製の横切断部4,5にて少なくとも前記3つの部片T,W,Bに分割されて形成されるとともに,これら部片T,W,B間の対向する前記各横切断部4,5に隣接して該横切断部4,5の重合度合いを選択して調節自在に重合する横縫製代T4,W4およびW5,B5を形成したことにより,未縫製の横切断部4,5にて少なくともトップ部T,ウェスト部Wおよびボトム部Bの前記3つの部片に分割されて形成された対向する前記各横切断部4,5に隣接して形成された該横切断部4,5の重合度合いを選択して調節自在な横縫製代T4,W4およびW5,B5を重合させて縫製するこ 部Bの前記3つの部片に分割されて形成された対向する前記各横切断部4,5に隣接して形成された該横切断部4,5の重合度合いを選択して調節自在な横縫製代T4,W4およびW5,B5を重合させて縫製することができるので,ボディスーツ1の丈(F)を着用者の背丈に応じて適切に適合させる」という垂直方向(縦方向)長さの調節と,「前記各部片T,W,Bのそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部6をさらに設け,これら各縦切断部6に隣接して該縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重合する縦縫製代T6,W6,B6を形成したことにより,これら縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在な縦縫製代T6,W6,B6を重合させて縫製する」という水平方向の円周長の調節をする手段のみであり,「ヒップカップ」という概念を示唆する記載は皆無である。 乙138の段落【0001】,【0002】,【0004】,【0005】,【0006】,【0007】,【0008】,【0009】,【0010】及び【0011】の記載及び図面の記載を総合すると,乙138には次の発明が記載されていると考えるべきである。 「試着パーツとして着用者の寸法取りに供し得る,トップ部T,ウェスト部W及びボトム部Bの3つの部片からなるファンデーションであって,前記3つの部片T,W,Bは,未縫製の横切断部4,5にて- 159 -分割して形成され,横切断部4,5の重合度合いを選択して調節自在に重合するマジックテープ等の横縫製代T4,W4及びW5,B5を形成することにより,着用者の背丈に適合させると同時に,個体差による体形の曲がりや肉付きに対してもきめ細かに適応させて縫製できるようにし,各部片T,W,Bのそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部6をさらに設け,縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重合するマジックテープ りや肉付きに対してもきめ細かに適応させて縫製できるようにし,各部片T,W,Bのそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部6をさらに設け,縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重合するマジックテープ等の縦縫製代T6,W6,B6を形成することにより,個体差によるバスト,ウェスト及びヒップの各サイズに対してもきめ細かに適応させて縫製できるようにした,イージオーダー化を可能にしたファンデーション。」b本件特許2の請求項1の発明と乙138に記載されている発明を対比すると,両者は,「身頃のヒップ部にサイズを調節可能な手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプル」の点で一致し,「本件特許2の請求項1は,ヒップカップサイズを計測するものであり,その具体的手段として,身頃のヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されるように構成されるのに対して,乙138は,ヒップサイズを計測するものであり,上記具体的手段を備えていない」点が相違点というべきである。 c乙139には,平面的に形成され臀列にフィットしなかった従来のガードル製品の問題を解消するため,臀突位上の臀突部の下辺に,ヒップカップサイズに相当する臀部の丸みに準じた形状を達成するためのダーツ65を設けることが記載されており,該ダーツ65は股口からヒップカップ部の略中央に向かう切り込みに相当する- 160 -と解することも不可能とまではいえない。 しかし,切り込み(ダーツ)によって分割された一片と他片を着脱自在に止着することや,ヒップカップサイズの計測のために用いられることについては,乙139には記載も 解することも不可能とまではいえない。 しかし,切り込み(ダーツ)によって分割された一片と他片を着脱自在に止着することや,ヒップカップサイズの計測のために用いられることについては,乙139には記載も示唆もされていない。 また,乙139のダーツ65は,個体差に応じて設計されるものではなく,人の標準的な臀部の丸みを想定して設計され,縫製されるものというべきである。 乙141の1には,右太もも用調整可能サポート50a,左太もも用調整可能サポート50b及び前面の中央の裂け目に形成されるフラップ10e,10fを備えたガードルが記載されているが,乙141の1には,ヒップカップの調整という思想は存在しないから,これらはいずれもヒップカップサイズを調整するために設けられるものではない。 乙147に記載されたダーツ3は,ガードル素材片1における股布付け位置附近の下方よりヒップの山に向かって二等辺三角形状に切欠したものであり,乙147の第1図の記載から明らかなように,該ダーツ3は股口から切り込まれるものではなく,また,切り込みによって分割された一片と他片を着脱自在に止着することや,ヒップカップサイズの計測のために用いられることについては,記載も示唆もされていない。 乙148には,ガードルの後身頃における臀部の部位で,かつ裾部付近にダーツ12を形成し,臀部に立体的な脹らみ部を形成することが記載されているが,切り込み(ダーツ)によって分割された一片と他片を着脱自在に止着することや,ヒップカップサイズの計測のために用いられることについては,記載も示唆もされていない。また,乙148のダーツ12も,乙139のダーツ65と同じく,個体差に応- 161 -じて設計されるものではなく,人の標準的な臀部の丸みを想定して設計され,縫製されるものというべきである。 乙14 た,乙148のダーツ12も,乙139のダーツ65と同じく,個体差に応- 161 -じて設計されるものではなく,人の標準的な臀部の丸みを想定して設計され,縫製されるものというべきである。 乙140はウエストの採寸に関するものであり,乙142~146及び乙149はブラジャーに関するものであって,これらはヒップカップに関するものではない。 以上のとおり,乙139~149のいずれにも,上記bの相違点に係る構成は記載も示唆もされていないから,乙138~149に記載された技術をいかに組み合わせても,本件特許2の請求項1の発明が,当業者にとって容易に想到し得るものであるということはできない。 d本件特許2の請求項2は請求項1を引用する従属項であり,以下同様に,請求項3は請求項1又は2を,請求項4は請求項1~3を,請求項5は請求項4を,請求項6は請求項1~5を,請求項7は請求項1~6を,請求項8は請求項7を,請求項9及び請求項10は請求項7又は8を,請求項11は請求項1~10を,そして,請求項12は請求項1~11を引用する従属項である。そうすると,請求項2~12は,いずれも請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項のすべてを含み,さらに新たな構成要件を発明を特定するために必要な事項として付加したものである。 したがって,上記のとおり,本件特許2の請求項1が,本件特許2出願前に乙138~149に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件特許2の請求項2~12も,乙138~149に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7)争点(7)(仮想実施料率)について原判決は,仮想実施料率は超過売上額の3%をもって相当と認めると判断- 162 -している いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7)争点(7)(仮想実施料率)について原判決は,仮想実施料率は超過売上額の3%をもって相当と認めると判断- 162 -している(130頁2行~10行)。 しかし,本件各発明は過去に類を見ないユニークなものであること,一審被告の劇的な業績向上に見られるように,技術的価値のみならず,その経済的価値が極めて高いものであることに鑑みれば,5%をもって相当とすべきである。 (8)争点(8)(一審被告の貢献)についてア原判決は,本件各発明の完成に対しては,一審被告に特別な貢献はないことを認定しつつ,本件各発明の完成後の一審被告の貢献をも総合考慮して,本件各発明の実施により一審被告が得た利益に対する一審被告の貢献度は,80%をもって相当と認める旨判示する(130頁13行~133頁4行)。 確かに,80%という数値は,職務発明の対価請求訴訟における判断としては発明者に有利な部類に属するが,依然として,標準的な割合の域を出ておらず,本件の特殊性が十分に反映されたものとはいえない。 すなわち,一般の職務発明の事例においては,発明者は企業の研究開発部門に専属し,過去の発明や実験データ,失敗事例など,企業が蓄積してきた膨大な経験を基礎に開発を進め,それを1段階推し進めることで発明を生み出すものである。そして,その後の商品開発や販売は,それぞれ他の部署が所管し,発明者は研究開発に専念できる環境に身を置き,これに対する報酬として給与や役員報酬を得ているのが通例である。 これに対し,本件においては,使用者である一審被告は,他社が開発した商品をエンドユーザに販売することを業としてきた会社であって,社内には研究開発部門を有さず,研究開発に必要となるノウハウも設備もなかった。 一審原告の入社当時の 用者である一審被告は,他社が開発した商品をエンドユーザに販売することを業としてきた会社であって,社内には研究開発部門を有さず,研究開発に必要となるノウハウも設備もなかった。 一審原告の入社当時の職務も,従来型のオーダーメイド製品の納期遅れの解消にあり,実質的にはCADの社内インストラクターであって,研究- 163 -開発に専従できるような環境にはなかった。 そのような状況にあって,一審原告は,入社前から温めていたアイデアをもとに,業務外のプライベートな時間と個人的に所有する機材や資材を利用することによって,HMS商品の開発を進めて発明をなし,特許出願における弁理士との調整等も自ら行い,商品化においても主導的な役割を果たし,その結果一審被告に劇的な増収増益をもたらしたのである。 一審原告は,この功績に基づき,入社後わずか2年6か月にして,一審被告の取締役にも抜擢されている。 いうなれば,本件発明は限りなく自由発明に近い性質を有するものであって,一審被告社内には発明の価値を正当に評価できる者もおらず,さらに,発明完成後の商品開発及び販売体制の確立も,多分に一審原告に負っている。 このように,本件は,使用者たる一審被告の貢献が極めて小さい,高度に特殊な事例であり,一審被告の貢献度を考えるに当たっては,過去の一般的先例に捉われることなく,上述の特殊性が十分に参酌されなければならない。 イ原判決は,本件各発明の完成後の一審被告の貢献について考慮要素としている。 しかし,旧35条4項は,「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」を発明者に対する対価を算定する際の考慮要素としており,明確に,発明行為自体に対する貢献に限定している。このことは,現行特許法35条5項が「その発明に関連して使用者等が行う負担,貢献」としていることの反対解釈か る対価を算定する際の考慮要素としており,明確に,発明行為自体に対する貢献に限定している。このことは,現行特許法35条5項が「その発明に関連して使用者等が行う負担,貢献」としていることの反対解釈からも導かれる。 また,使用者の売上げに対する寄与は,発明の売上げに対する寄与の消極的要素として考慮されるべき事項であり,使用者の貢献において改めて考慮すれば,同じ要素を二重に評価することとなり,不当である。現に本- 164 -件においても,売上げに貢献したのが本件各発明の魅力なのか,キャンペーンなのかということが独占の利益の計算において十分に議論されており,ここで再度一審被告の販売促進活動などを考慮するのは不当である。 したがって,原判決が,発明の完成後の一審被告の貢献を考慮したのは,法の解釈を誤ったものであり,上記アにおいて述べた事情を考慮すれば,本件における一審被告の貢献は,最大限見積もっても30%というべきである。 ウ仮に,発明完成後の一審被告の貢献を考慮するとしても,原判決が一審被告の貢献として挙げている事項(132頁12行~下4行)は,いずれも,営利を目的とする会社であれば当然に行うものに過ぎない。他方,原判決が一審被告の貢献として挙げている事項(132頁下4行~下1行)については,一審原告は,代替性のない重要な役割を果たしたのである。 本件訴訟において,一審被告は,HMS商品の「欠陥」について述べているが,一審原告が退職した後,それらの「欠陥」を改善する方策を全く打ち出せていないのであり,このことも,いかに本件各発明及びその実施品であるHMSの展開が,一審原告一人に依拠していたものであるかを示す事実である。 このように,発明完成後についても,一審原告の行った行為こそが,本件各発明の実施品であるHMS商品の売上げを増加させるために HMSの展開が,一審原告一人に依拠していたものであるかを示す事実である。 このように,発明完成後についても,一審原告の行った行為こそが,本件各発明の実施品であるHMS商品の売上げを増加させるために重要なものであったのであり,その貢献は極めて大きいものである。 したがって,発明完成後の一審被告の貢献を考慮したとしても,本件における一審被告の貢献は,最大限見積もっても30%というべきである。 エ一審被告の主張に対する反論(ア)一審被告は,本件発明1の開発過程で一審原告が作成した最初の試作品が提出されていないことを根拠に,原判決が,一審原告が個人的に購入した市販の下着類を用いたと認定したことは誤りであると主張す- 165 -る。 しかし,一審原告が最初のサンプルを作製したのは,本件訴訟提起よりも6年前の平成12年のことであって,これが残されているほうが異例であり,また,実際上,一審原告が作製した最初の試作品は,その後,前身頃と後身頃との接合部分が面ファスナーでははがれてしまうためフックに変更する等の修正を行ったりしたため,すでに廃棄されている。 (イ)一審被告は,本件各発明は一審原告が一審被告のフルオーダー事業の問題点を解決するために開発されたものであると主張する。 しかし,一審被告が行なっていた事業とは,フルオーダー事業であり,一審原告に期待されたのは,あくまでフルオーダーの納期遅れを解消することただ一つであり,当時,フルオーダー以外の新規の形式でのオーダーメイド商品の開発や,新たな計測方法の創出などは一審被告として取り組んでおらず,一審原告にも期待されていなかった。 一審原告は,フルオーダーの納期遅れという一審被告から命ぜられた業務と関係なく,独自に理想のオーダーメイド商品を作り上げたいとの考えの下での試行錯誤を経て本件各発明の 原告にも期待されていなかった。 一審原告は,フルオーダーの納期遅れという一審被告から命ぜられた業務と関係なく,独自に理想のオーダーメイド商品を作り上げたいとの考えの下での試行錯誤を経て本件各発明の基本的な着想を得たものであり,以前から一審被告が行っていたフルオーダー事業とは全く無関係にこれを取得したものである。 また,一審被告は,一審原告が作成した明細書に,計測サンプルのコンパクト化に関する記述があることをもって,一審原告の業務に関連してなされたことの根拠としている。 しかし,あくまでも本件各発明の主眼は,計測時に体感できるオーダーメイド方法を実現することにあり,その付随的効果として,当時一審被告において問題となっていたサンプルのコンパクト化も併せて実現できることとなったものである。一審原告作成の「明細書」と題する書面- 166 -(乙135)に,サンプルのコンパクト化に関する記載があるからといって,一審被告の職務命令の下,その業務に関連するものとして本件各発明の基本的着想が取得されたことにはなりえない。 (ウ)一審被告は,一審原告が一審被告のCADを利用した点を一審被告の貢献として考慮すべきであると主張する。 しかし,一審被告が,一審原告に対して,CADを用いて行わせていた業務は,従前からのフルオーダーの方式を維持したまま,納期遅れといった問題点を解消することであり,新規のオーダーメイド方式の研究・開発を命じたものではない。一審原告に支払われていた給与も,「CAD室長」として,CADを用いて納期遅れ対策を行うことに対して支払われていたものであり,それ以上の要求がなされていたものではない。 一審原告は,一審被告の業務に従事しつつ,一審被告入社前から身につけていた豊富なCADの知識・技術を用いて,独自に本件各発明に至る試行錯誤を行 のであり,それ以上の要求がなされていたものではない。 一審原告は,一審被告の業務に従事しつつ,一審被告入社前から身につけていた豊富なCADの知識・技術を用いて,独自に本件各発明に至る試行錯誤を行ったものであり,フルオーダーの問題解決のためのみに一審原告にCADを使用させていた一審被告に,格別の貢献を観念することは不可能である。 (エ)一審被告は,本件各発明の開発に対して,研究開発費や研究設備費を出捐し,一審原告に対しても研究開発のための特別の時間を与えていたと主張する。 しかし,一審被告が,研究開発費を出捐し,あるいは,一審原告に研究開発のための特別の時間を与えたとして述べている事情は,いずれも,一審原告が独力で本件各発明の着想を得た後の商品化に至る経緯に関するものである。 発明行為そのものに関しては,一審被告は一切経済的な出捐をしていないし,一審被告が一審原告に命じていたのは従前のフルオーダーの課- 167 -題解決のみであって,一審被告は,本件発明1の完成に至るまで,一審原告が研究開発活動をしていたこと自体認識していなかったのであるから,本件各発明のための特別の研究開発の時間を与えたということもない。 (オ)一審被告は,デューブルベ試着に基づく計測器具開発という一審被告による目標設定があったと主張する。 しかし,デューブルベ試着の報告に関する証拠(乙129)は提出されているものの,その後,一審被告において独自の計測具の開発をするという目標を設定したことに関する証拠は何ら存在しないから,この点に関する一審被告の主張も失当である。 (カ)一審被告は,フルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という課題を解消すべく本件各発明が開発されたと主張する。 しかし,本件各発明が,フルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という課題を解消す カ)一審被告は,フルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という課題を解消すべく本件各発明が開発されたと主張する。 しかし,本件各発明が,フルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という課題を解消するために開発されたとの主張自体が誤っている。本件各発明は,採寸時に完成品と同等の体感ができるオーダーメイドの実現を主眼としたものであり,フルオーダーの納期遅延等の問題点の解消は,上記のオーダーメイドの実現という大前提があった上で,併せて実現されたに過ぎないものである。これは,本件各特許の明細書(甲1,3)において,発明の効果として,上記の点についての記載が最初になされていることからも明らかである。 (キ)一審被告は,一審被告が保有していたフルオーダーのデータやノウハウが本件各発明に寄与していたと主張する。 一審原告が,一審被告におけるフルオーダーのデータを本件各発明の開発において用いたことは事実である。 しかし,これらのデータは,それを集計すれば誰でも本件各発明の着想に至るものではなく,それらのデータからどのような要素を抽出し,- 168 -そのように組み合わせ,そこからどのような情報を看取するか,といった作業こそが,本件各発明に至る上で極めて重要なステップとなるのであるところ,これらのデータの集計作業,分析作業には一審被告は全く関与しておらず,一審原告一人がこのような作業を行い,本件各発明の着想に至ったのである。 しかも,一審被告は,自らこれらのデータを一審原告に提供したりするような能動的な行為は一切しておらず,一審原告が自身の判断で,一審被告に蓄積された膨大なデータのなかから必要なものを取捨選択したのである。 このような事実からすれば,一審原告が本件各発明の開発過程において一審被告に蓄積されたデータを用いたことをもって一審被告の貢献と に蓄積された膨大なデータのなかから必要なものを取捨選択したのである。 このような事実からすれば,一審原告が本件各発明の開発過程において一審被告に蓄積されたデータを用いたことをもって一審被告の貢献とするのは妥当ではない。 (ク)一審被告は,原判決が,多額の販売促進費用を投入したことについて,一審被告の貢献として全く考慮していないことが不当であると主張する。 しかし,原判決は,当事者の主張に基づいて,本件各発明の寄与割合の認定において,一審被告が多額の販売促進費用を投入したことを考慮している。同一の事実を,異なる考慮要素において重複して考慮することは,発明者の利益を不当に害することにもなり,許されないことである。 (ケ)一審被告は,本件各発明の権利化の過程について,一審原告が主導したかのように認定した原判決に対し,不当であると主張する。 この点に関し,一審被告は,一審原告が作成した「明細書」と題する書面(乙135)に簡単な内容しか記載されていないことを,一審原告の関与が薄いことの根拠としている。 しかし,前記(1)エ(ウ)のとおり,乙135は,一審原告が唯一の発- 169 -明者であることを端的に示す資料であり,一審原告なくして本件各発明の出願作業を進めることが不可能であったことは明白である。 また,一審被告は,出願書類及びその後の手続書類のチェックについてはUが担当していたと主張する。 しかし,開発担当ではなく,現実に開発行為にも関与していないUでは,弁理士からの問い合わせに対して適切に返答することは不可能である。本件特許の出願手続において大島特許事務所に送付されたFAX文書(甲120)にあるとおり,大島特許事務所からの問合せに対して一審原告が対応していたことは疑いのない事実である。 さらに,一審被告は,本件各特許の出願において,早 大島特許事務所に送付されたFAX文書(甲120)にあるとおり,大島特許事務所からの問合せに対して一審原告が対応していたことは疑いのない事実である。 さらに,一審被告は,本件各特許の出願において,早期審査の申出,拒絶理由通知への対応,拒絶査定不服審判への対応を行ったことから,特許権を取得するために一審被告が行った貢献が非常に大きいと主張する。 しかし,これらの行為は,特許を取得する際に通常行われる事務作業の域を超えるものではなく,ここでも中心的役割を果たしたのは一審原告である。 (コ)一審被告は,原判決が,一審原告がHMS商品のサイズの決定や資材選び,製造工場との調整,販売員の研修について主導的役割を果たしたと認定したことについて,誤りであると主張する。 この点,SやGが,それぞれが仕事を分担しつつ自らが担当する仕事を行っていたことは事実であるが,Sが,「サイズ表(甲72)はXさんから渡された」旨証言していることからも明らかなように(原審におけるS証人の尋問調書27頁),各自の分担していた仕事は,いずれも一審原告の指示に基づいて行われていたものに過ぎず,実際,セイブ繊維のiからの資材に関する連絡も一審原告宛になされていた(甲121)。これらの事実から明らかなように,HMS商品のサイズの決定や- 170 -資材選び,製造工場との調整,販売員の研修についても一審原告が主導的な役割を果たしていたのである。 (サ)一審被告は,①HMSメジャーその他関連器具の制作費の支出,②HMSメジャーの品質管理,③全国における販売店の開設,2000名以上の営業社員の確保,④会員組織の設立,⑤新製品の開発等を,一審被告の貢献として考慮すべきと主張する。 しかし,①制作費の支出や⑤新製品の開発は,HMS商品に限らず,通常のオーダーメイド商品やレディメイド 業社員の確保,④会員組織の設立,⑤新製品の開発等を,一審被告の貢献として考慮すべきと主張する。 しかし,①制作費の支出や⑤新製品の開発は,HMS商品に限らず,通常のオーダーメイド商品やレディメイド商品においても必要となるものであるし,②HMSメジャーの品質管理については,レディメイドにおいても試着サンプルの品質管理は必要であり(ただし,一審被告においては,レディメイド商品において,顧客の肌に直接触れることになるにもかかわらず,試着サンプルの品質管理は特になされていなかったようである。),HMSメジャーのためのみに殊更に必要となる行為ではない。また,③,④は,HMSメジャーのみならず,一審被告の業務全般に関連するものであるから,これをもって特別の貢献と考慮することも妥当ではない。①ないし⑤の各事情を一審被告の貢献として考慮すべきとする一審被告の主張は,いずれも失当である。 (9)争点(9)(一審原告の処遇)についてア一審被告にWが復帰し,一審原告が取締役から退任した後,一審原告は閑職に異動させられた上,その功績にもかかわらず,退職時には一切の退職給付を受けていないから,一審原告に対する処遇は,むしろ対価の額を増額する要素として考慮されるべきである。 イ一審被告は,一審原告が取締役に昇進したのは,本件各発明の功績に基づくものであることは明らかであるから,このような一審被告による一審原告の処遇についても,一審被告の貢献として考慮されるべきと主張する。 - 171 -しかし,取締役の報酬は,取締役としての職務を執行することの対価として支払われるものであることは異論を差し挟む余地はなく,取締役の職務を執行しないのに報酬を受け取ることができるなどということはあり得ない。 一審原告が受領した取締役としての報酬は,その地位に基づく職務執行 れるものであることは異論を差し挟む余地はなく,取締役の職務を執行しないのに報酬を受け取ることができるなどということはあり得ない。 一審原告が受領した取締役としての報酬は,その地位に基づく職務執行の対価以外の何ものでもないのであるから,これを一審被告の貢献として考慮することは不当である。 そもそも,本来使用者の貢献度とは,発明がなされるについて使用者が貢献した程度を考慮すべきものであるところ,発明者を取締役に昇進させたとの事実は,すでに発明が完成した後のことであるし,それによって当該職務発明の実施品の売上げが伸びる要因となるものでもない。 とすれば,一審原告を取締役に昇進させた事実が,一審被告の貢献として考慮されると解する余地はないというべきである。 (10)当審における争点(10)(当審における請求拡張の適否)について一審原告の請求の拡張は,一審被告の平成21年9月3日付け準備書面における中間利息控除の主張を契機としてなされたものであり,同日以降になって初めて可能になったものである。また,遅延損害金の起算日に関する争点は,専ら法解釈に関するものであるから,著しく訴訟手続を遅滞させることはない。 (11)当審における争点(11)(中間利息控除の可否)についてア後記(12)のとおり中間利息控除の始期と遅延損害金の起算日は一致すると解すべきであるから,一審原告の,一審被告に対する職務発明の対価請求権は弁済期が平成18年8月2日とされる場合は,同日以前における中間利息控除が認められる余地はない。 イ一審被告は,中間利息を控除すべきとの主張において,売上げに対して中間利息控除をしている。しかし,一審被告が将来の売上げを前倒しで受- 172 -けるわけではなく,将来売上げに対する運用利益を観念する余地はないから,この考え方は誤りであり, て,売上げに対して中間利息控除をしている。しかし,一審被告が将来の売上げを前倒しで受- 172 -けるわけではなく,将来売上げに対する運用利益を観念する余地はないから,この考え方は誤りであり,現に早期に弁済期が到来する発明の対価に対して中間利息控除をすべきである。もっとも,乗算の計算式のみによって最終的な金額を求めることになるため,結論として導かれる数値に差異が生じるものではない。 ウ中間利息控除は運用利益の控除を目的とするものであるところ,昨今の経済情勢に照らし,個人である一審原告が年率5%で安定的に資金運用することは不可能である。預金金利よりも有利な運用の可能性が皆無でないこと,将来的にある程度の金利上昇の可能性があることを考慮しても,基礎とすべき年率は1%を超えないものと解すべきである。 (12)当審における争点(12)(遅延損害金の起算日)について一審被告は,独占の利益が発生する時点において,将来の売上げに対応する対価も発生したものと解する以上,年5パーセントの割合による中間利息控除がなされるべきであると主張する。 中間利息控除の根拠は,将来分の利益を,それ以前の時点で受領できる場合には,運用により生じるべき利益分を控除するというものである。このような控除が正当化されるのは,中間利息控除の始期となる時点で,現実に将来分の利益も含めて受領できる,すなわち,弁済期が到来していることが当然の前提となる。弁済期が到来せず,将来分の利益について運用利益が発生する余地がないのであれば,中間利息控除を要しないのは当然であるからである。 これを,一審被告の主張に当てはめると,一審被告は,独占の利益が発生する時点を基準として中間利息を控除すべきと主張しているのであるから,それは,独占の利益が発生する時期において,職務発明の対価請求債権の を,一審被告の主張に当てはめると,一審被告は,独占の利益が発生する時点を基準として中間利息を控除すべきと主張しているのであるから,それは,独占の利益が発生する時期において,職務発明の対価請求債権の弁済期が到来していることを認めていることを意味する。 一審原告は,本件発明1の実施品であるHMSブラジャー製品が発売され- 173 -た平成13年6月1日をもって独占の利益発生の始期とすべきであると主張しているところ,一審被告の主張によれば,この時点で,一審原告の,一審被告に対する職務発明の対価請求権は弁済期が到来していることになり,同日が遅延損害金の起算日となる。 仮に,一審原告の,一審被告に対する職務発明の対価請求権が期限の定めのない債権と判断されるとしても,一審原告による対価の請求は,特許を受ける権利の承継時点から可能であったから,その時点が遅延損害金の起算日となる。 第4当裁判所の判断 当裁判所の判断の大要当裁判所は,一審原告の本訴請求は,職務発明対価金5537万円及びこれに対する平成18年8月2日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないと判断する。その理由は,以下に述べるとおりである。 すなわち,一審原告が一審被告に対してなす本件発明報酬対価請求の根拠法条は,前記のとおり,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条(旧35条)3,4項であるところ,当裁判所の判断の大要は,次のとおりである。 まず,相当対価の算定は,本件各発明の独占の利益が生じた日以降のHMS商品の売上額のうち一審被告が有する通常実施権相当分2分の1を除いた額に仮想実施料率を乗じて一審被告の受けるべき利益の額とし,これから一審被告の貢献に基づく部分を控除し,共同発明者がいる場合には共同発明者間で一審 ち一審被告が有する通常実施権相当分2分の1を除いた額に仮想実施料率を乗じて一審被告の受けるべき利益の額とし,これから一審被告の貢献に基づく部分を控除し,共同発明者がいる場合には共同発明者間で一審原告が貢献した割合を乗じて算定すべきである。そして,本件各発明の発明者は一審原告のみであって,Fや他の一審被告社員は(共同)発明者であるとは認められない。次に,売上高算定の期間は,本件のような経緯を有する発明にあっては,本件各特許の出願公開日から特許期間の終了日までとすべきである- 174 -が,特許登録の前日までは独占力の程度に鑑み登録後の3分の2の額をもって計算するのが相当である。なお,一審被告がHMS商品の販売を抑制・中止した後は,実際の売上高をもとに算定するべきである。そして,売上高に乗ずるべき仮想実施料率は特許無効審決の確定した本件発明1については2%,特許無効事由の認められない本件発明2については3%とするのが相当である。このようにして算定された額に上記仮想実施料率を乗じ,一審被告の貢献割合は80%とするのが相当であるからこれを控除する。以上を上記算定式に当てはめ,期限の定めのない本件債務が訴状送達により弁済期が到来するその翌日たる平成18年8月2日以降につき年5分の中間利息を控除して一審原告が受けるべき対価の額を計算すると,5537万円となる。 争点(1)(本件発明1の発明者は一審原告のみか)について(1)はじめに一審原告が,少なくとも本件発明1の発明者の一人であることは当事者間に争いがない。一審原告は,本件発明1の発明者は一審原告のみであると主張するのに対し,一審被告は,Fのほか,一審被告の他の社員も発明者に含まれると主張する。 「発明」とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」(特許法2条1項 原告のみであると主張するのに対し,一審被告は,Fのほか,一審被告の他の社員も発明者に含まれると主張する。 「発明」とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」(特許法2条1項)から,旧35条が定める相当の対価を請求し得る発明者とされるためには,当該発明に係る技術的思想を,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づき,明細書の記載及び図面をも参酌して把握した上,その創作に具体的に加担し貢献したことが必要である。 そこで,以下ではまず,本件発明1の発明に至る経緯等について認定し(後記(2)),本件発明1の技術的思想が何であるかを検討し(後記(3)),その上で一審原告のみが本件発明1の技術的思想に具体的に加担し貢献したものであるか,あるいは,一審被告が主張するように,Fや他の社員もまた本件発明1の技術的思想の創作に具体的に加担貢献し,本件発明1の(共- 175 -同)発明者と認められるか否かを判断する(後記(4))。 (2)本件発明1の発明に至る経緯等ア証拠(甲1,9,15~17,23,25~27,33の1・2,34の1・2,35,37,39,47,62~64,79,120,乙72,154,155,原審におけるG証人・E証人・原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア)一審被告におけるオーダーメイド事業の立ち上げ一審被告は,女性用の体型補正用下着の販売等を業とする会社であり,従前はレディメイド商品(既製品)のみを取り扱っていたが,平成10年8月,当時一審被告の代表取締役であったdは,レディメイド商品が着用できない顧客層(例えば,バストの大きさに左右差がある女性,乳ガンによりバストを切除した女性,アンダーバストが極端に大きい又は小さい女性,バージスサイズ[バストの底面周径]が広く,レディメイ が着用できない顧客層(例えば,バストの大きさに左右差がある女性,乳ガンによりバストを切除した女性,アンダーバストが極端に大きい又は小さい女性,バージスサイズ[バストの底面周径]が広く,レディメイドのサイズが合わない女性等)に対しても対応できる補整用下着を提供して顧客層を拡大することを企図し,新たにオーダーメイド事業を立ち上げることを決めた。 これを受けて,一審被告社員cは,同月18日,同事業を展開するために旭化成のCADショールームを見学した。このとき,一審原告は旭化成の社員であり,見学に訪れたcに対してCADソフトのデモンストレーションを行った。 一審被告は,平成11年1月,dの幼馴染みであったEを一審被告に迎え入れ,Eを部長とするオーダーメイド事業を担当する部署として第二生産部を立ち上げた。 一審被告は,従前,レディメイド商品の企画及び製造を外部の業者に委託し,自らは商品の販売のみを行っていた。このような外部の業者を一審被告では「協力工場」と呼んでおり,広瀬工業は一審被告の「協力- 176 -工場」であった。一審被告は,新たに取り扱うオーダーメイド商品についても,広瀬工業に製造を委託すべく,平成11年2月,広瀬工業にその旨を伝え,了解を得た。 また,同じころ,一審被告では,dを始めとする役員がオーダーメイド商品の製作にCADを使用することの可否を検討するため旭化成を訪れた。その際も一審原告がデモンストレーションを行い,同年3月にも一審原告は再度デモンストレーションを行った。 (イ)一審被告における納期遅れ等の問題一審被告は,平成11年3月にオーダーメイド商品を初めて受注し,同年4月,オーダーメイド商品のパターン(型紙)作成のため新たにCADを導入した。一審原告は,これに伴い,旭化成において,一審被告におけるCAD導入の指導 年3月にオーダーメイド商品を初めて受注し,同年4月,オーダーメイド商品のパターン(型紙)作成のため新たにCADを導入した。一審原告は,これに伴い,旭化成において,一審被告におけるCAD導入の指導や社員へのトレーニングを担当することとなった。 一審被告は,平成11年6月,400名を超える顧客からオーダーメイド商品を受注し,オーダーメイド商品の受注が本格化した。 ところが,当時一審被告では,オーダーメイド商品のパターンの作成は,顧客1人1人の採寸データからCADによって顧客ごとにパターンを作成していた。そのため,パタンナー(パターンを作成する者)は,CADでパターンを作成するにしても,1人で1日5~7枚(乳ガン用では1日1枚),すなわち1日で顧客5~7名分のパターンを作成するのが限度であり,受注はしたものの,納品までに数か月を要するという事態が発生し,オーダーメイド商品の受注が本格化した直後から納期遅れの問題が深刻化し,その解消が重要な課題となっていた。 また,一審被告では,採寸する者の個人差をなくし,採寸ミスを減らすということも大きな課題となっていた。 (ウ)「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の提案- 177 -一審原告は,一審被告においてCADの指導を行うようになったころから,従来のオーダーメイドの方法では,採寸ミスが発生しやすいこと,顧客の立場に立てば,出来上がり商品を体感することができないこと,その結果,ボディメイク(体型補正)の効果も十分には発揮できないことなどの問題があることを認識するようになった。そして,ファンデーション(下着)のオーダーメイドのあるべき方向性として,単に身体に合わせるだけではなく,体型を美しく整えること(ボディメイク)が必要であると考え,これを自ら「メジャー・アンド・メイク・オーダー」と呼び,平 下着)のオーダーメイドのあるべき方向性として,単に身体に合わせるだけではなく,体型を美しく整えること(ボディメイク)が必要であると考え,これを自ら「メジャー・アンド・メイク・オーダー」と呼び,平成11年8月に,CADの効率的な利用のための対策について一審被告役員から意見を求められた際,「QRオーダーシステム」と題する書面(甲37)を用いて,採寸項目の選定,グレーディングルールの作成等について説明するとともに,目指すべきオーダーメイドの方向性について,「メジャー・アンド・メイク・オーダー」という言葉を用いて上記のような考えを伝えた。 もっとも,当時,一審原告においては,この「メジャー・アンド・メイク・オーダー」を具体化する方法を見出すには至っていなかった。また,一審原告から「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の考えを聞いた一審被告役員は,当時オーダーメイドの納期遅れの解消が最大の課題であったことから,一審原告の考えに注意を払うことはなかった。 (エ)「バージス」の重要性についての認識一審原告は,平成11年9月22日,一審被告第二生産部の部内会議に参加し,バージスの重要性を説明した。 このとき,一審原告は,説明用の資料として,一覧表(甲62)を作成した。この一覧表は,縦軸にアンダーバストサイズ,横軸がカップサイズが示されており,縦軸と横軸が交わる升には,そのアンダーバストサイズとカップサイズの組合せで構成される試着サンプルにおけるワイ- 178 -ヤーのサイズが色付きで記載されている。一審原告は,これを用いて,ある着用者の採寸をする際,大きめのサイズから縮めて適合させる方法と,小さめのサイズから伸ばして適合させる方法とが考えられるが,そこで調整できるのはアンダーバストサイズとカップサイズであり,バージスは最初に試着サンプルを選択 きめのサイズから縮めて適合させる方法と,小さめのサイズから伸ばして適合させる方法とが考えられるが,そこで調整できるのはアンダーバストサイズとカップサイズであり,バージスは最初に試着サンプルを選択した時点で決定してしまうことを指摘し,一番最初にバージスに適合した試着サンプルを選択することが重要であることを説明した。 その後,一審被告のオーダー表に「カップくりサイズ」の項目が加えられ,採寸時に着用した試着サンプルの種類(例:C70)を記載することでバージスサイズを表記することとし,アンダーバストサイズよりも前に計測すべき項目として最上段に記載されることとなった(甲34の1・2)。 (オ)デューブルベの試用一審原告は,バージスに着目したオーダーとして,ワコールからデューブルベという商品が登場したことを新聞報道により知り,平成12年4月17日,その試用を行った(甲39)。デューブルベで採用されていたバージスの計測方法は,専用の独立したメジャーを使用するものであり,着用感を確かめるために着用するゲージブラはカップと一体となって切り離せないものであった。 (カ)本件発明1に至る着想及びその具体化一審被告は,オーダーメイド商品の納期遅れ問題を解消する方策の一環として,CADを複数台導入することとした。第二生産部長であったEは,CADの効率的利用の促進を図るため,一審原告に対して一審被告への入社を要請した。他方,一審原告は,旭化成の社員として一審被告のオーダーメイド事業に関わるうちに,自らの手でファンデーション(下着)の新しいオーダーメイドを実現したいとの気持ちを強く持つよ- 179 -うになったことから,Eの勧誘を受け,旭化成を退社し,平成12年6月21日,一審被告に入社した。当時の一審被告は,dが会長,Wが社長であり,一審原告は,C たいとの気持ちを強く持つよ- 179 -うになったことから,Eの勧誘を受け,旭化成を退社し,平成12年6月21日,一審被告に入社した。当時の一審被告は,dが会長,Wが社長であり,一審原告は,CAD室主任の役職を与えられた。 一審原告は,d及びEの指示により,入社後約1か月間,納期遅れ対策に従事した。その後,納期遅れ解消に一定の目処がつき,一審原告は,自らの「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の考え方に基づき,新しいオーダーメイドのシステムを実現するための検討を1人で進めた。 一審原告は,まず,アウターウェアにおいて用いられる仮縫いを利用した洋服作成の手法を参考にした。すなわち,一審原告は,創美苑服飾専門学校において教師をしていた経歴を持ち,仮縫いと試着とを繰り返して着用者の体型に合った洋服を製作することを教えていた経験から,この方法がファンデーションに応用できないかと考えた。しかし,仮縫いは,着用者が衣類を着用したままの状態で針と糸とを用いるものであるから,ファンデーションのように,肌に直接着用する衣類にそのまま用いることは危険が伴うため,一審原告は発想を転換し,仮縫いにより寸法を変更して着用するのではなく,あらかじめパターンの違うパーツを用意し,これを着用者に組み合わせて着用させて採寸することにより,仮縫いと同様の効果を実現することを着想した。 そして,一審原告は,平成12年9月ころから,上記の考え方を具体化する方法,及びオーダーメイドにおいて特に重要であると考えていたバージスを重視した採寸を実現する方法の検討を始めた。 まず,一審原告は,簡易オーダー表により一審被告に蓄積されていた顧客のデータを分析し,一審被告のフルオーダーにおいて,試着サンプルからの修正がどのように分布しているのかを研究することとし,甲26の表を作成した 告は,簡易オーダー表により一審被告に蓄積されていた顧客のデータを分析し,一審被告のフルオーダーにおいて,試着サンプルからの修正がどのように分布しているのかを研究することとし,甲26の表を作成した。この表は,縦軸にアンダーバストサイズ,横軸にカ- 180 -ップサイズを記載し,縦軸と横軸の交わる部分に,フルオーダーの採寸において着用者がその組合せを基準サイズとして試着サンプルを着用した人数を青色ペンで記載したものであり,アイテムごとに作成されている(FSはフルカップショートブラジャー,FLはフルカップロングブラジャー,BSは4分の3カップショートブラジャー,BLは4分の3カップロングブラジャー,Vはボディスーツを意味する。)。この表により,どのような試着サンプルサイズを着用する顧客がオーダーに多く訪れているかが判明した。しかし,現実にどのような修正をしているのかということまでは分からず,具体的な成果には結びつかなかった。 次に,一審原告は,ブラジャーのJIS規格において,サイズ表記の基準となっているアンダーバストサイズとカップサイズのうち,アンダーバストサイズを切り離し,JIS規格においては考慮されていないバージスサイズとカップサイズとの組合せでサイズ表記ができないかを検討するため,甲27の1枚目の表を作成した。この表の縦軸に記載されているW1,W2…という記号は,ワイヤーの頭文字をとったWに,ワイヤーの長さの短いものから順番に1,2…という数字を組み合わせることにより,ワイヤーのサイズをもってバージスサイズを表記しようとしたものである。また,この表の横軸に記載されているC1,C2…という記号は,カップの頭文字のCに小さいサイズから順番に1からの数字を付したものである。ブラジャーにおいて通常用いられるA,Bといったカップサイズ表 また,この表の横軸に記載されているC1,C2…という記号は,カップの頭文字のCに小さいサイズから順番に1からの数字を付したものである。ブラジャーにおいて通常用いられるA,Bといったカップサイズ表記を使用しなかったのは,カップサイズがトップバストサイズとアンダーバストサイズの寸法の差により決定されるものであるところ,アンダーバストを切り離した場合には同様の表記をすることが適切ではないと考えたためである。しかし,甲27の1枚目の表による検討では,縦軸と横軸の交わるところに,レディメイドの場合と同じくアンダーバストサイズを記入してしまったため,アンダーバストを- 181 -切り離して考えるという試みは失敗に終わった。 そこで,一審原告は,甲27の2枚目の表を用いた検討を行った。ここで,一審原告は,アンダーバストサイズはバック部(後ろ身頃)の長さで調節することができるので,前身頃についてはどのようなアンダーバストサイズでも共通して使用することができること,その結果として,ブラジャーのサイズ表記について,アンダーバストサイズを切り離し,バージスサイズとカップサイズとの組合せで表記できることに想い到った。そして,カップサイズについては,水平方向の表面の寸法(渡り寸法)ではなく,下カップの高さ(下カップ丈)で表記できるのではないかと考え,それまで一審原告が試みていたカップ表面の寸法での表記をやめ,下カップの高さでカップサイズを表記することとし,甲27の2枚目の表を作成した。この表の横軸に記載されているW1,W2…という記号は,ワイヤーの頭文字をとったWに,ワイヤーの長さの短いものから順番に1,2…という数字を組み合わせることにより,ワイヤーのサイズをもってバージスサイズを表記しようとしたものであり,縦軸に記載されているC1,C2…という記号 Wに,ワイヤーの長さの短いものから順番に1,2…という数字を組み合わせることにより,ワイヤーのサイズをもってバージスサイズを表記しようとしたものであり,縦軸に記載されているC1,C2…という記号は,カップの頭文字のCに小さいサイズから順番に1からの数字を付したものであるが,表中,「W1」の列に「6.0」「6.5」と記載されているのが,下カップの高さである。そして,縦軸と横軸の交わる升には,そのワイヤーサイズとカップサイズ(下カップの高さによって表記されたサイズ)の組合せからなるレディメイド製品が一審被告において存在する部分に○印を入れ,どのようなサイズがレディメイドには存在しないかを検討した。 次いで,一審原告は,甲27の3枚目の表を用いた検討を行った。この表は,上から2行目に,W1,W2という記号による表記に対応するワイヤーの寸法が記載されており,W4の行には,下カップ丈の寸法である「7.0」「7.5」…「13.5」という数字が記載されてい- 182 -る。ここに至って,一審原告は,バージスが,アンダーバストとカップの組合せによって自動的に決定される付随的な寸法ではなく,単独の独立した寸法として計測できるものであることを確信した。その上で,C1,C2という記号で表していたカップサイズについても,下カップの高さを用いることにより,A,Bといった通常用いられる呼称で使用できると考え,改めて甲27の1枚目の表のC1,C2…という記号の横にA,B…というカップサイズを記入した。 そして,一審原告は,レディメイド商品では,カップ,カップ受け部,後ろ身頃を同時にグレーディングするものであるところ,上記の検討の結果,オーダーメイドにおいては,カップ,カップ受け部,後ろ身頃を別々に切り離すことができることを確信し,これらについて各々別々にグ 後ろ身頃を同時にグレーディングするものであるところ,上記の検討の結果,オーダーメイドにおいては,カップ,カップ受け部,後ろ身頃を別々に切り離すことができることを確信し,これらについて各々別々にグレーディングを行うことができることを認識した。 一審原告は,これらのパーツの組合せの仕方について,後ろ身頃が単独のパーツで構成できることを図(甲64)によって検証した。そして,市販のブラジャーのカップくりの部分にはさみを入れ,カップと前身頃を切り離して,カップ部を切り離した前身頃を顧客のバストに当てがうことにより,顧客のバージスに沿っているか否かがわかると考え,さらに,カップを切り取った前身頃に,同じバージスサイズでカップサイズの違うカップをミシンで縫いつけて,違うサイズの組み合わせができることを検証した。その結果,一審原告は,前身頃が単独で構成され得ること,バージスサイズを同一にしてカップサイズ(下カップの高さ)を変えた複数のカップ部を組み合わせることができることを確認した。 (キ)グレーディング及び試作品の作成その後,一審原告は,実際に商品展開するため,各パーツのサイズを用意すべく,CADを用いて,バージスを一定にしてカップの高さを変- 183 -化させる等のグレーディング作業を行った。その際,下カップと上カップ,カップ受け部とカップ部の境目が,いずれも曲線で立体的な構成となっていることから,サイズの違うパーツを組み合わせた場合につながりが滑らかに行くかどうかを検証するため,一審原告は,CADを使ったパターンの修正とグレーディングルールの修正,サイズピッチの修正を繰り返して行い,最初の試作品を製作した。この試作品は,カップ部と前身頃(カップ受け部),後ろ身頃の3つのパーツに分け,各々を面ファスナーでつなげたものであり,色は黒色であ 正,サイズピッチの修正を繰り返して行い,最初の試作品を製作した。この試作品は,カップ部と前身頃(カップ受け部),後ろ身頃の3つのパーツに分け,各々を面ファスナーでつなげたものであり,色は黒色であった。一審原告は,この試作品を自分の息子に着用させたところ,横に引っ張る力が強く働くため,前身頃と後ろ身頃の接合部分が面ファスナーでははがれてしまうことがわかり,この部分の接合部品をフックに変更した。 (ク)特許出願その後,一審原告は,上記試作品をEに見せ,その結果,特許出願のため弁理士に相談することとなった。一審原告は,自ら「明細書」と題する実用新案登録の願書の体裁を採った書面(乙135)を作成し,出願用のサンプル品を持参して,平成12年11月16日,一審被告の専務であったZ及び法務担当であったUとともに大島特許事務所に赴いた。出願用のサンプル品は,Eの指示により,一審被告の協力工場の一つである松田産業が縫製した。松田産業は,一審原告が作成した甲63(平成12年10月12日付け「パターンファイルシート」)に基づいてサンプル品を縫製した。甲63には「FUKKU」や「TE-PU」と書かれたパーツが存在し,特許出願用サンプル品にもフックやマジックテープといったパーツが存在しており,色はピンクであった。 大島特許事務所においては,実用新案ではなく特許として出願することとし,特許出願書類の原案を作成し,一審原告にファックス送信した。そして,一審原告から了解が得られたので,平成13年1月16日- 184 -に特許出願した。 なお,一審原告は,願書を提出するまで出願内容について口外しないよう弁理士から口止めされたため,具体的な構成については,出願まで第二生産部の部員に知らせなかった。 (ケ)特許出願後の手続上記特許出願は平成14年7月31日に公 るまで出願内容について口外しないよう弁理士から口止めされたため,具体的な構成については,出願まで第二生産部の部員に知らせなかった。 (ケ)特許出願後の手続上記特許出願は平成14年7月31日に公開されたが,平成14年9月2日付けで特許庁から拒絶理由通知(甲9)が発せられた。そこで,同月24日,E,U及び一審原告の3名が大島特許事務所に赴き,対応を協議した。そして,大島特許事務所では,手続補正書と意見書の原案を作成して,Uにファックス送信し,その了解を得て,特許庁に提出したが,平成14年11月22日付けで拒絶査定がなされた(甲23)。 これに対して,一審被告は,大島特許事務所を通じて平成14年12月26日付けで拒絶査定不服審判請求を行い(甲15),その後平成15年2月26日付けで請求の理由を補正した(甲16)。請求理由の補正についてのやり取りは,Uとの間で行われたが,それに先立って,大島特許事務所は,平成15年2月7日付けの一審原告が本件発明1について説明した書面を受け取っている。 そして,平成17年1月26日に拒絶査定取消審決がなされて,平成17年3月4日に本件特許1は登録に至った(甲17)。 なお,上記特許出願が公開されたのは平成14年7月31日である。 (コ)製品の販売開始一審被告は,平成13年6月に,ブラジャー用の計測サンプル(HMSメジャー[ブラジャー])によって寸法を計測して製作したオーダーメイドのブラジャー(HMS商品[ブラジャー])の販売を開始した。 イ上記アの認定について,一審被告が主張する点は,次のとおりである。 (ア)一審被告は,甲37の「メジャー・アンド・メイクオーダー」- 185 -は,従来から行っていたテープメジャーでの採寸を行って,補整下着をオーダーする方法を指していると考えるのが妥当であると主張す 一審被告は,甲37の「メジャー・アンド・メイクオーダー」- 185 -は,従来から行っていたテープメジャーでの採寸を行って,補整下着をオーダーする方法を指していると考えるのが妥当であると主張する。しかし,甲37の記載からそのような読み取るのが自然であるということまではできず,これに反する一審原告の陳述書(甲79)の記載及び原審における原告本人尋問の結果を総合すると,一審被告の上記主張を採用することはできない。 (イ)一審被告は,一審被告においては,以前からカップくり(バージス)を計測しており,その重要性は認識されていたし,平成11年9月9日に一審被告の社員であるDがデューブルベのバージスメジャーを体験し,同月13日付けで報告書を作成しており(乙51の1),同月21日の第二生産部会議でデューブルベの体験発表をしていると主張する。 一審被告における平成11年8月18日付けの生産依頼書における①の「カップとカップくりはF95」との記載(乙126),平成11年8月31日付け生産依頼書における「アンダーサイズ85サイズ,E90のわくで…」との記載(乙127),平成11年9月2日付け生産依頼書における「1.カップくりE85OK」との記載及び「9/27CtelカップくりはC80」との記載(乙128)並びに平成11年9月4日付け生産依頼書における「1)カップのみBとする。カップくりC80でOKアンダー75とする」との記載(乙129)に弁論の全趣旨を総合すると,一審被告においては,平成11年9月以前から,バージスサイズが「カップくり」という名称で測定されていたものと認められる。また,証拠(乙51の1・2,52,54)によれば,一審被告の社員であるDがワコールの「デューブルベ」のバージスメジャーによる測定を体験し,同月13日付けで報告書を 測定されていたものと認められる。また,証拠(乙51の1・2,52,54)によれば,一審被告の社員であるDがワコールの「デューブルベ」のバージスメジャーによる測定を体験し,同月13日付けで報告書を作成して提出したことが認められる。乙130(Cの陳述書)には,Dは,平成11年9月2- 186 -1日の第二生産部会議で,上記体験を発表し,バージスを測定する計測機器を一審被告でも作ることになったとの記載があるが,平成11年9月21日の第二生産部会議の「議題」(甲108)には上記体験発表の記載がないこと,E証人は原審における証人尋問において,Dが上記体験発表したことを否定していること(原審におけるE証人の尋問調書33頁)に照らすと,上記乙130の記載を直ちに採用することはできない。 一審被告において,「カップくり」がオーダー表のトップに記載されるようになったこと(上記ア(エ))については,上記のように従来からバージスサイズが「カップくり」という名称で測定されていたことやDが「デューブルベ」のバージスメジャーによる測定を体験し報告書を作成して提出したことが関係しているものと認められ,一審原告の平成11年9月22日の第二生産部会議での発表(上記ア(エ))のみによるものとは認め難いが,一審被告においてバージスの重要性が認識されるようになり「カップくり」がオーダー表のトップに記載されようになったことについては,一審原告の平成11年9月22日の第二生産部会議での発表(上記ア(エ))も貢献しているものと認められる。 なお,一審被告は,Cは,同人が作成したブラジャーチェック方法という文書で平成11年12月16日に第二生産部の会議において,ブラジャーのオーダーの手順の統一化を図る方法を説明しており(乙131),また,この際にバージスサイズ(カップくり) ジャーチェック方法という文書で平成11年12月16日に第二生産部の会議において,ブラジャーのオーダーの手順の統一化を図る方法を説明しており(乙131),また,この際にバージスサイズ(カップくり)から測るために,ブラジャーに使用されているワイヤーがどのサイズで使われているかを一覧表にした「ワイヤー寸法一覧表」を作成して配布している(乙132)と主張する。証拠(乙130~132)によれば,上記事実が認められるが,一審原告は,乙132と同様の文書である甲62を平成11年9月に作成している(上記ア(エ))から,Cが上記発表をしているか- 187 -らといって,Cが,一審被告においてバージスの重要性が認識されるようになり「カップくり」がオーダー表のトップに記載されようになったことに貢献しているということはできない。 (3)本件発明1の技術的思想ア本件明細書1の記載本件明細書1(甲1)には次の記載がある。 (ア)特許請求の範囲「【請求項1】バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けてなるカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル【請求項2】バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部と,一つのカップ受部において寸法の異なる複数のバック部とを有し,カップ受部に対してカップ部及びバック部を着脱可能に設けてなるカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル。 【請求項3】カップ受部の上端縁とカップ部の下端縁にそれぞれ設けた一対の面ファスナーによってカップ受部とカップ部を着脱可能とした請求項1又は2記載のカップ部を有する衣類のオーダーメイド サンプル。 【請求項3】カップ受部の上端縁とカップ部の下端縁にそれぞれ設けた一対の面ファスナーによってカップ受部とカップ部を着脱可能とした請求項1又は2記載のカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル。 【請求項4】カップ受部とバック部をかぎホックによって着脱可能とした請求項2又は3記載のカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル。 【請求項5】- 188 -バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けることにより,カスタムサイズのカップ部を有するオーダーメイド用計測サンプルの試着を可能としたことを特徴とするカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式。 【請求項6】バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部と,一つのカップ受部において寸法の異なる複数のバック部とを有し,カップ受部に対してカップ部及びバック部を着脱可能に設けることにより,カスタムサイズのカップ部を有するオーダーメイド用計測サンプルの試着を可能としたことを特徴とするカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式。 【請求項7】カップ受部の上端縁とカップ部の下端縁にそれぞれ設けた一対の面ファスナーによってカップ受部とカップ部を着脱可能とした請求項5又は6記載のカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式。 【請求項8】カップ受部とバック部をかぎホックによって着脱可能とした請求項6又は7記載のカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式。」(イ)発明が解決しようとする課題・「しかしながら,カップ部のフィット感は,バージスサイズ,すなわち乳房の下縁の半円状の輪郭線(バージスライン)の のカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式。」(イ)発明が解決しようとする課題・「しかしながら,カップ部のフィット感は,バージスサイズ,すなわち乳房の下縁の半円状の輪郭線(バージスライン)の曲率とカップ高さによって異なってくるものであり,このバージスサイズとカップ高さとの組合せは各個人により様々であるが,上記の例では両者の組合せを種々に変えた胸当て部が用意されているわけではないので,バージスサイズ及びカップ高さの両者を合わせることは難しく,カップ- 189 -部のフィット性は十分とはいえなかった。」(段落【0005】)・「そこで,仕上がり状態と寸法的に同様な計測用サンプルを試着して実際の着用感を体感でき,また体型補整を目的として,あるいは着用者の好みに合わせて細かい寸法調整のできるカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式が望まれていた。」(段落【0007】)・「したがって,本発明の目的とするところは,カップ部を有する衣類において,着用者の体型に対応したカスタムサイズのカップ部を有し,着用時にフィット感のある衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供するところにある。またさらに,着用者がカスタムサイズのカップ部を有する計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができるカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供することを目的とする。」(段落【0008】)(ウ)課題を解決するための手段・「上記目的を達成するために,本発明に係るカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプルは,請求項1記載のように,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせから ップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプルは,請求項1記載のように,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設ける構成としたものである。」(段落【0009】)・「このように構成すれば,顧客のバージスサイズ及びカップ高さにフィットしたカップ受部とカップ部を選定することが容易であり,顧客はカスタムサイズのカップ部を有する計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用時にフィット感のある衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文するこ- 190 -とができるオーダーメイド方式を提供することができる。」(段落【0010】)・「…本発明は上記のようなオーダーメイド用計測サンプルを用いたオーダーメイド方式も提供している。すなわち,本発明に係るカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式は,請求項5記載のように,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けることにより,カスタムサイズのカップ部を有するオーダーメイド用計測サンプルの試着を可能としたことを特徴とするオーダーメイド方式である。」(段落【0018】)・「…カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けたオーダーメイド用計測サンプルを利用するものであって,カップ受部についてはバージスサイズを変えたものを複数種類用意し,カップ部については1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えたものを複数種類用意して両者を着脱自在に組み合わせ可能とし,これらの組合せを種々に変えることにより,顧客のバージスサ 複数種類用意し,カップ部については1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えたものを複数種類用意して両者を着脱自在に組み合わせ可能とし,これらの組合せを種々に変えることにより,顧客のバージスサイズ及びカップ高さにフィットしたカップ部を有するオーダーメイド用計測サンプルの試着を可能としたものである。」(段落【0019】)(エ)発明の効果・「以上の説明から明らかな通り,本発明のオーダーメイド用計測サンプルを使用すれば,顧客のバージスサイズ及びカップ高さにフィットしたカップ受部とカップ部を選定することが容易であり,顧客はカスタムサイズのカップ部を有する計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用時にフィット感のある衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することがで- 191 -きる利点を有している。」(段落【0036】)・「また本発明のオーダーメイド方式によると,顧客はカスタムサイズのカップ部を有するオーダーメイド用計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用時にフィット感のある衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができるオーダーメイド方式となし得たのである。また,このようなオーダーメイド方式によれば,メジャー等での計測だけでは分からない素材収縮率の調整,体型補整を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる利点も有している。」(段落【0037】)・「また,各部材の組合せからなるオーダーメイド用計測サンプルを使用するものであるから,各部材ごとにサイズ順に重ね合わせればコンパクトに保管することができ,また,持ち運びも容易であり,しかも組合せ式であるから比較的少ない部材で多様な体型に対応し得るので,ブラジャー等を のであるから,各部材ごとにサイズ順に重ね合わせればコンパクトに保管することができ,また,持ち運びも容易であり,しかも組合せ式であるから比較的少ない部材で多様な体型に対応し得るので,ブラジャー等をオーダーメイド方式で店舗販売する場合の試着式採寸に限らず,出張採寸にも適したオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供し得たのである。」(段落【0038】)イ本件発明1の技術的思想の本質的部分上記アの記載によれば,本件発明1の技術的思想の本質的部分は,顧客のバージスサイズ及びカップ高さにフィットしたカップ受部とカップ部を容易に選定することができ,あらかじめそのフィット感を確認できる構成を有するオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式,すなわち,「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組合せからなる構成を有するオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式」という点- 192 -にあるものと認められる。 (4)本件発明1の発明者ア上記認定事実によれば,一審原告は,平成12年7月ころから,オーダーメイドのブラジャー用の計測サンプルの創作を開始し,アウターウエアにおいて用いられる仮縫いの手法から発想を転換して,あらかじめパターンの違うパーツを用意し,これを着用者に組み合わせて着用させて採寸することにより仮縫いと同様の効果を実現することを着想したが,これは,本件発明1の技術的思想の本質的部分である「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組合せ」の基本となる考え方ということができる。また,一審原告は,バージスラインを重視した採寸を実現することによって上記の考え方を具体化する方 ジスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組合せ」の基本となる考え方ということができる。また,一審原告は,バージスラインを重視した採寸を実現することによって上記の考え方を具体化する方法を検討し,甲27の1枚目ないし3枚目の各表を用いた検討の中で,平成12年9月ころには,JIS規格ではブラジャーのサイズ表記として採用されていなかったバージスサイズが単独の独立した寸法として計測できることを確認し,カップサイズについても,JIS規格がカップ表面の水平方向の寸法(渡り寸法)で表記していたものを,下カップの高さ(下カップ丈)によって表記することとし,前身頃が単独で構成され得ること及びバージスを同一にしてカップ高さを変えた複数のカップ部を組み合わせることができることを確認したことが認められるところ,この時点において一審原告は,「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせ」を着想したものと認められる。そして,一審原告は,試作品を製作して,息子に着用させて,必要な変更を行った上,一審被告の協力工場の一つである松田産業が特許出願用のサンプル品を,一審原告が作成した甲63(パターンファイルシート)に基づいて製作したものと認められるから,一審原告は,平成12年11月16日に大- 193 -島特許事務所に赴いたときまでには,「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組合せからなる構成を有するオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式」という,本件発明1の技術的思想の本質的部分を単独で完成させたものと認められる。 イ一審被告は,①一審被告では,カップくり(バージス)を,サンプルのブラジャーを当 サンプル及びオーダーメイド方式」という,本件発明1の技術的思想の本質的部分を単独で完成させたものと認められる。 イ一審被告は,①一審被告では,カップくり(バージス)を,サンプルのブラジャーを当てて計測することが確立されていたこと,②一審被告の社員であるDがデューブルベの体験にいき,計測器具を用いて計測していることを説明していること,③当時一審被告では採寸する者の個人差をなくし,採寸ミスを減らすということが大きな課題となっていたことからすれば,デューブルベの体験を聞いた一審被告の第二生産部において,計測器具を作ろうという意識が生まれるのは自然な流れであると主張する。 しかし,上記(2)イ(イ)のとおり,Dが平成11年9月21日の第二生産部会議でデューブルベの体験発表をしたとは認められない。もっとも,一審被告においてバージスの重要性が認識されるようになり「カップくり」がオーダー表のトップに記載されようになったことについては,上記(2)イ(イ)のとおり,従来からバージスサイズが「カップくり」という名称で測定されていたことやDが「デューブルベ」のバージスメジャーによる測定を体験し報告書を作成して提出したことが関係しているものと認められるが,そのことや当時一審被告では採寸する者の個人差をなくし採寸ミスを減らすということが大きな課題となっていたこと(上記(2)ア(イ))から,直ちに本件発明1の技術的思想の本質的部分を想起し得るということはないし,一審被告の第二生産部においてバージスサイズの計測器具の製作について具体的な検討がされたことを認めるに足りる証拠もなく,結局,一審原告以外の一審被告の社員が本件発明1の技術的思想の本質的部分を着想したことを認めるに足りる証拠はない。 - 194 -ウ一審被告は,広瀬工業のFが,当時すでにオーダーメイ 証拠もなく,結局,一審原告以外の一審被告の社員が本件発明1の技術的思想の本質的部分を着想したことを認めるに足りる証拠はない。 - 194 -ウ一審被告は,広瀬工業のFが,当時すでにオーダーメイド商品の一つである膝下ガードルではパーツの作り置きを行っていた(乙67の1,2)と主張する。 しかし,乙67の1・2は,作成者であるE証人の証言によれば,一定期間ごとの注文をまとめて生産を依頼した書面であって,作り置きに関する書面ではないと認められる(原審におけるE証人の尋問調書12頁)。 これに反するF証人の証言(原審におけるF証人の尋問調書8頁~9頁)は採用できない。 また,F証人は,平成11年10月ころ,あらかじめ部品の作り置きをしておいた上でそれを組み合わせるオーダーメイドをしてはどうか,一審被告独自の測定器具を作らないといけないなどというアドバイスを行なった旨供述する(原審におけるF証人の尋問調書7頁~8頁・24頁~25頁,同人の陳述書[乙5,70])。 しかし,Fが本件発明1の技術的思想の本質的部分である「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなる構成を有するオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式」を着想したことを認めるに足りる証拠はない。かえって,Fは,一審原告代理人からの「バージスサイズを基本として計測する器具を何か提案されたことありますか。こんな器具使ったら,バージスサイズが計測できるよって。」との質問に対し,「具体的にはありません。バージスというカップくりがありますけども,そういう具体的な話じゃなくて,飽くまでも作り置きすると,それを有効活用するための計測器といいますか,メジャーサンプルというか,ということで,具体的にバージスの スというカップくりがありますけども,そういう具体的な話じゃなくて,飽くまでも作り置きすると,それを有効活用するための計測器といいますか,メジャーサンプルというか,ということで,具体的にバージスのくりであるとか,そういうことは記憶にありません。」と供述しており(原審におけるF証人の尋問調書30頁),同供述からは,Fが本件発明1の発明の課題の解決手段を認識して- 195 -いたことはうかがえない。 エ一審被告は,①一審原告が作成した「明細書」と題する書面(乙135)によれば,実際にはどのような発明かを一審原告自身把握しておらず,箇条書き程度の記載しかできなかった上,その記載には,当時一審被告において実際にオーダーメイドの計測を行なっていた第二生産部員の問題意識,すなわち部員が運ぶ計測サンプルはコンパクトなものの方がよいという要望が反映されている,②甲26,27の作成の元となった数字は,一審被告におけるオーダーメイドの受注人数に他ならない,③甲63が一審原告の作成したものであったとしても,その元となるCADデータは一審被告が有していたものである,と主張する。 しかし,一審原告が作成した「明細書」と題する書面(乙135)には,本件発明1の技術的思想の本質的部分である「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組合せからなる構成を有するオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式」が十分に表れており,一審原告が自らこのような書面を作成したことは,一審原告のみが本件発明1の発明者であることを推認させるものということができる。 上記書面(乙135)の記載に第二生産部員の問題意識(部員が運ぶ計測サンプルはコンパクトなものの方がよい)が反映されており,また,上記(2)ア(カ) であることを推認させるものということができる。 上記書面(乙135)の記載に第二生産部員の問題意識(部員が運ぶ計測サンプルはコンパクトなものの方がよい)が反映されており,また,上記(2)ア(カ)のとおり,甲26の作成の基となった数字は一審被告におけるオーダーメイドの受注人数であり,甲27には,一審被告においてレディメイド製品が存在する部分に○印を付されており,さらに,甲63の元となるCADデータは一審被告が有していたものであるとしても,それらは,本件発明1の技術的思想の本質的部分を誰が着想したかということと直接関連するものではないから,一審原告のみが本件発明1の発明者であることを左右するものではない。 - 196 -オ一審被告は,一審原告が製作した試作品は,試着可能で着用者においてフィット感を確認可能な計測用サンプルではなかったのであり,平成12年10月19日の第1回オーダー研究会で,一審原告の試作品を検討し,このときに出された提案を基にカップ部と前受部をマジックテープとし,前受部と後ろ身の接合をフックとすることが第二生産部から提案されたと主張する。 本件発明1について製作された試作品・サンプル品(上記(2)ア(キ)(ク)のもの)は,上記(2)ア認定のような経過を経て製作されたものであって,これは,製品としては改良の余地があったとしても,「試着可能で着用者においてフィット感を確認可能な計測用サンプル」とさえいえないものであったとは考えられない。また,平成12年10月19日の第1回オーダー研究会報告書(乙59の1の1)には,「A既存サンプルの修正方式からBオーダーサイズ組み合わせ方式の考え方の説明」との記載があるが,この記載から直ちに第1回オーダー研究会において一審原告が試着品を見せ,それについて検討がされたとは認められない上 ルの修正方式からBオーダーサイズ組み合わせ方式の考え方の説明」との記載があるが,この記載から直ちに第1回オーダー研究会において一審原告が試着品を見せ,それについて検討がされたとは認められない上,上記(2)ア(ク)のとおり,一審原告は,本件発明1の具体的な構成については,出願まで第二生産部の部員に知らせなかったのであるから,一審原告が同日の研究会において試着品を見せたとは考え難い。G証人は,一審被告の上記主張に沿う供述(「同日の研究会において示された試作品は,前受部と後ろ身の接合部がマジックテープであり,カップ部と前受部の接合部はスナップであったので,前受部と後ろ身の接合部をフックアイに,カップ部と前受部の接合部をマジックテープにするよう提案した」旨の供述)をする(原審におけるG証人の尋問調書9頁~10頁・23頁,同人の陳述書[乙72])が,そもそも,上記のとおり同日の研究会において一審原告が試着品を見せたとは考え難い上,甲63(一審原告作成に係る平成12年10月12日付け「パターンファイルシート」)には,前受部と後ろ身の- 197 -接合部につき「FUKKU」,カップ部と前受部の接合部につき「TE-PU」と記載されたパーツが存在するから,これと矛盾するG証人の上記供述は,採用することができない。したがって,一審被告の上記主張を採用することはできない。 また,平成12年11月25日以降に開催された第2回以降のオーダー研究会(甲74,乙59の2~59の4[枝番を含む])において各パーツの接合方法等について何らかの検討,提案がされたとしても,既に認定したとおり,一審原告は,平成12年11月16日に大島特許事務所に赴いたときまでには,本件発明1の技術的思想の本質的部分である「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサ ,既に認定したとおり,一審原告は,平成12年11月16日に大島特許事務所に赴いたときまでには,本件発明1の技術的思想の本質的部分である「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組合せからなる構成を有するオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式」を完成しており,上記の接合方法等の検討,提案は,商品化するための検討,提案にすぎないと解されるから,一審原告のみが本件発明1の発明者であることを左右するものではない。 カ以上によれば,本件発明1の発明者は一審原告のみであると認めるのが相当である。 争点(2)(本件発明2の発明者は一審原告のみか)について(1)はじめに一審原告が本件発明2の発明者の一人であることは当事者間に争いがない。一審原告は,本件発明2の発明者は一審原告のみであると主張するのに対し,一審被告は,Fのほか,他の社員も発明者に含まれると主張する。前記2(1)で説示したとおり,旧35条が定める相当の対価を請求し得る発明者とされるためには,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて明細書の記載及び図面をも参酌して把握される当該発明の技術的思想の創作に具体的に加担し,貢献したことが必要である。 - 198 -そこで,以下ではまず,本件発明2の発明に至る経緯等について認定し(後記(2)),本件発明2の技術的思想が何であるかを検討し(後記(3)),その上で一審原告のみが本件発明2の技術的思想の創作に具体的に加担し貢献したものであるか,あるいは,一審被告が主張するように,Fや他の社員もまた本件発明2の技術的思想の創作に具体的に加担貢献し,本件発明2の(共同)発明者と認められるか否かを判断する(後記(4))。 (2)本件発明2の発明に至る経緯等ア証 するように,Fや他の社員もまた本件発明2の技術的思想の創作に具体的に加担貢献し,本件発明2の(共同)発明者と認められるか否かを判断する(後記(4))。 (2)本件発明2の発明に至る経緯等ア証拠(甲3,6,18~21,24,25,29,31,32,47,50,51,71,79,91,120,123の1,乙19~22,25~35,37の7・10,71,72,154,155,原審におけるF証人・G証人・E証人・S証人・原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア)既存のガードルに対する問題意識一審原告は,従来のガードルの問題点は,JIS規格ではウエストを基準としてサイズ設定がされていること,また,ガードルのヒップ部は生地を薄く延ばす加工が施されているため,ガードルにおいて最も体型補整効果を発揮することが期待されるヒップ部の形状を害することにあると考えていた。そのため,一審原告は,ガードルについて,ブラジャーと同様採寸時に体感できるオーダーメイド方法を実現しつつ,ヒップの体型補整を重視したオーダーメイドガードルを実現することが課題であると考えていた。 (イ)オーダー表の作成一審原告は,旭化成の社員として一審被告のCADの指導をしていた平成11年5月ころから,一審被告に対し,オーダー表の改訂の提案を行なっていた。まず,一審原告は,平成11年5月14日にショートガードルのオーダー表を作成した。これは,ガーメントリストの「MAG- 199 -S6000-TEST」(乙37の7)に具体化された。また,一審原告は,同年7月5日にロングガードルのオーダー表を作成した。これは,ガーメントリストの「GL6-64」(乙37の10)に具体化された。さらに,一審原告は,これをもとに,同月26日ころ,「ロングガードルオーダー表」 日にロングガードルのオーダー表を作成した。これは,ガーメントリストの「GL6-64」(乙37の10)に具体化された。さらに,一審原告は,これをもとに,同月26日ころ,「ロングガードルオーダー表」(甲31)を提案した。一審被告の社員は,これをもとにエクセルを使用して,「ロングガードルオーダー表」(甲32)を作成した。甲31において採寸項目に用いられているコード番号と,甲32のコード番号が一致しているのはそのためである。このように,オーダー表の作成のため,採寸箇所を検討したことが,本件発明2の創作において,いかなる箇所のサイズをいかにして調節して計測するかを検討する上での基礎となった。 (ウ)体型の考え方一審原告は,前記2(2)ア認定のとおり,一審被告入社から約1か月を経過した後に本件発明1の創作に取り掛かったが,その際,一審原告は,並行してガードルについても構想を練っていた。これは,ブラジャーの中でも,ロングブラジャーは裾がウエスト部に当たり,ガードルのウエストとロングブラジャーのウエストとが同じ位置にくることになるため,両者は,ウエスト部でのつながりを意識し,一体をなすものとして開発する必要があったからである。このような,ブラジャーとガードルの一体性を考える上で,一審原告は「体型」に着目していた。 婦人服におけるJIS規格は,「同一のバストサイズに対してヒップが大きいか小さいかということを体型で表し」ているのみで,「ウエストは年代別の範囲表示」になっているにすぎない。これに対し,一審原告の考える「体型」という概念は,ウエストを範囲表示にとどめるのではなく,各人の「ウエストも含めた体型」というものであった。すなわち,一審原告は,過去の勤務先等で重ねて来た職務経験や,一審被告の- 200 -採寸データの集計に基づき,ウエスト部の とどめるのではなく,各人の「ウエストも含めた体型」というものであった。すなわち,一審原告は,過去の勤務先等で重ねて来た職務経験や,一審被告の- 200 -採寸データの集計に基づき,ウエスト部の体型についてX体型,R体型,H体型,O体型,また,ヒップカップ部についてW体,I体,M体等という独自の分類を創作し,これに従ってアルファベット表記した「体型分類」という考え方を考案した。一審原告は,本件発明1に関して弁理士に特許出願の相談をした平成12年11月16日までにこの「体型」の考え方をまとめたノート(甲29)を作成し,同日これを弁理士のもとに持参した。 (エ)具体的な検討一審原告は,平成13年7月ころから,ガードルの計測サンプルについての具体的な検討を開始した。 まず,一審原告は,JIS規格ではウエストを基準としてサイズ設定がされており,また,ガードルのヒップ部が十分な体型補正効果を発揮できていないという既存のガードルに対する上記問題意識に基づき,JIS規格のサイズ表示を利用せず,ヒップを中心とした独自の規格を採用した。すなわち,ガードルのオーダーに際しては,まずヒップのサイズを計測した上で,ウエスト,大腿部を計測していくことになることから,一審原告は市販のガードルを購入し,これをもとにCADを駆使して,ヒップを固定した上でウエスト,大腿部を調節した場合におけるパターンの検討を行った。この検討において,一審原告は,「大腿部を変えることによって,ヒップトップと大腿部のところに角度がつくので,そこでAカップ,Bカップ,Cカップというふうに表現できるのではないか」と考え,ヒップカップという考えに思い到った。この「ヒップカップ」という考え方は,ヒップトップと大腿部の角度の差をもってAカップ,Bカップ・・・という大きさを表記する具体的指 現できるのではないか」と考え,ヒップカップという考えに思い到った。この「ヒップカップ」という考え方は,ヒップトップと大腿部の角度の差をもってAカップ,Bカップ・・・という大きさを表記する具体的指標としたものであった(甲91,24頁)。このヒップカップという考え方を応用した技術を実現するためには,ヒップトップ部と大腿部の差を調節できるよ- 201 -うにする必要があるところ,一審原告は,大腿部のサイズを調節することにより,これを実現できること,そして,ヒップカップの調節・採寸のためには,大腿部の調節が最も重要であることを認識するに至った。 そこで,一審原告は,このような調節を可能にするため,大腿部に切替え線(切り込み)を入れ,この部分にマジックテープを付けて,スライドさせることにより,ヒップカップサイズを調節すること,この切り込み部分に目盛りを付けることを考えついた。そして,このようにしてヒップカップサイズを計測した後,ウエストの計測も同様の方法により行うこととした。 一審原告は,遅くとも平成13年8月8日までに,以上の考えを盛り込んだ甲71のパターン(品番Y-GのLパターン)を作成した(乙38の142記載の9356番)。 次に,一審原告は,上記の考えを具体化するため,部材の選定作業に着手した。そして,まず,一審原告は,ガードル自体が伸縮性のあるものであるため,出来上がりを体感するためには,計測の機能を有する部分がこの伸縮性を阻害しないようにする必要があるところ,伸縮性のある面ファスナーを使用することによりこの問題を解決することができると考え,部材メーカーであるセイブ繊維にその調達を依頼した。また,一審原告は,大腿部の端部(股口)の調節部分については,ヒップの立体的な形状に適合した形状となるように連結部材を構成する必要があるとこ 考え,部材メーカーであるセイブ繊維にその調達を依頼した。また,一審原告は,大腿部の端部(股口)の調節部分については,ヒップの立体的な形状に適合した形状となるように連結部材を構成する必要があるところ,面ファスナーをペンシル型にカットした場合に谷になる方の部材を使用することで,立体的な形状を出すことができると考えた。このようにして,平成13年10月ころ,部材の選定が完了した。 なお,平成13年8月にWが一審被告の代表取締役社長を退任して,Eが一審被告の代表取締役社長に就任した。Wは,一審被告の相談役となったが,平成14年9月には相談役も退任した。 - 202 -また,一審被告の第二生産部は,生産管理部,商品企画部と名称が変わった。一審原告は,平成14年11月に一審被告の取締役となり,商品企画部を統括した。 (オ)特許出願用サンプル品の縫製一審原告は,平成13年8月2日,一審被告の社員であるS(S),T及びNとともに,Fを訪ね,ガードルの計測サンプルの縫製を依頼し,甲71のパターンを同月8日送付した。Fは,乙19のマスターパターン(ヒップサイズ88のもの)を作成し,同月23日これを一審被告に送付した。乙19のマスターパターンは,大腿部が1枚の布から構成されており,そのために切り込みを設けられないものであり,この点が甲71のパターンとは異なっていた。一審被告第二生産部のSは,Fから送付を受けた乙19のマスターパターンをもとにグレーディングを行い,広瀬工業は,一審被告から送付を受けたグレーディングパターンをもとに試着品を縫製した。一審原告は,その試着品のウエスト部分に切り込みを設け,その部分にマジックテープを付けて試着品を完成させた。 同年10月23日,一審原告らの一審被告社員のほか,Fも参加して,上記試着品の試着会が行われた。この試着 試着品のウエスト部分に切り込みを設け,その部分にマジックテープを付けて試着品を完成させた。 同年10月23日,一審原告らの一審被告社員のほか,Fも参加して,上記試着品の試着会が行われた。この試着会の後,Sは,マスターパターンを三つに分けるため,乙35のパターン縮図を作成して広瀬工業に送付し,Fにマスターパターンの修正を依頼した。これに応じてFは,乙20~22の3種類のマスターパターン(順にヒップサイズ88,108,100のもの)を作成し,これをもとに試着品を縫製した。一審原告が試着品の大腿部端部に切り込みを入れて,試着品を完成させた。 同年11月19日,一審原告らの一審被告社員のほか,Fも参加して,上記試着品の試着会が行われた。この後,Sは,乙34のパターン- 203 -図を作成してこれをFに送り,パターンの修正を依頼した。Fは,これを受けてパターンを修正し,このパターンに基づいて特許出願用のサンプル品を縫製した。 (カ)特許出願及びその後の手続一審原告は,本件発明2について,自ら「明細書」と題する実用新案登録の願書の体裁を採った書面(乙136)を作成し,出願用のサンプル品を持参して,平成13年11月16日,Uとともに大島特許事務所に赴いた。大島特許事務所では,その後,Uに連絡して,特許出願書類を作成し,平成14年2月13日,本件特許2の特許出願をした。 その後,一審被告は,大島特許事務所を通じて早期審査請求を行い,平成14年11月20日付けで特許庁から拒絶理由通知(甲18)が発せられたので,大島特許事務所では,手続補正書と意見書の原案を作成して,Uにファックス送信し,その了解を得て,特許庁に提出したが,平成15年2月12日付けで拒絶査定がなされた(甲24)。 これに対して,一審被告は,大島特許事務所を通じて平成15年3月 案を作成して,Uにファックス送信し,その了解を得て,特許庁に提出したが,平成15年2月12日付けで拒絶査定がなされた(甲24)。 これに対して,一審被告は,大島特許事務所を通じて平成15年3月19日付けで拒絶査定不服審判請求を行い(甲19),その後平成15年6月25日付けで請求の理由を補正し(甲20),特許請求の範囲の補正を経て平成17年5月23日に拒絶査定取消審決がなされて,平成17年6月24日に本件特許2は登録に至った(甲21)。同審判手続に関するやり取りは,同事務所とUとの間で行われた。 なお,上記特許出願が公開されたのは平成15年8月27日であった。 (キ)製品の発売開始一審被告は,平成14年3月,本件発明2の実施品であるガードル用の計測サンプル(HMSメジャー[ガードル])によって寸法を計測して製作したオーダーメイドのガードル(HMS商品[ガードル])の販- 204 -売を開始し,平成15年12月,本件発明2の実施品であるボディスーツ用の計測サンプルによって寸法を計測して製作したオーダーメイドのボディスーツ(HMS商品[ボディスーツ])の販売を開始した。 なお,Eは,平成14年11月に一審被告の代表取締役会長になったが,平成15年8月に代表取締役会長を退任した。Wが平成15年9月に一審被告に再度入社し,商品企画開発部長となった。 イ上記アの認定について,一審被告が主張する点は,次のとおりである。 (ア)一審被告は,オーダーメイドは,そもそもJIS規格を基準とはしておらず,一審被告では,オーダーメイドのガードルの採寸の際には,ヒップを基準にガードルの試着サンプルを選んでおり(平成11年12月16日の第二生産部の部内会議の資料[乙133]),ウエストを基準とするというJIS規格の考え方をとっていないと主張する。 平成11 ヒップを基準にガードルの試着サンプルを選んでおり(平成11年12月16日の第二生産部の部内会議の資料[乙133]),ウエストを基準とするというJIS規格の考え方をとっていないと主張する。 平成11年12月16日の第二生産部の部内会議の資料である「チェックマニュアル」(乙133)には,「ロングガードル」について,「1.ヒップ又は大腿部(一番大きい部分)に合わせて試着サンプルを選ぶ。」,「2.ボディメイクをする。」,「3.ウエストチェック」,「4.ヒップチェックほとんどはヒップに合わせて試着サンプルを選ぶ為,修正はないと思います…」と記載されているから,一審被告においては,平成11年12月当時,ヒップに合わせてガードルの試着サンプルを選んでいたものと認められる。しかし,平成11年8月17日の部内会議の資料(甲115)及び弁論の全趣旨によれば,一審原告は,平成11年8月17日の会議において,上記乙133と同一の内容を説明しており,そのことによりヒップに合わせてガードルの試着サンプルを選ぶようになったものと認められる。 (イ)一審被告は,一審原告が平成12年11月16日に大島特許事務所に赴いた際に甲29(ガードルオーダー表)を持参した事実はないと主- 205 -張し,それに沿う弁理士hの陳述書(乙154)を提出する。 しかし,この陳述書(乙154)は,資料が残っていないから甲29を持参した事実はないなどとするのみである。また,前記2(2)ア(ク)認定のとおり,大島特許事務所においては,本件発明1について特許出願書類の原案を作成し,一審原告にファックス送信し,一審原告から了解を得たことは,証拠(甲120)から明らかであるにもかかわらず,特許出願書類について一審原告とのやり取りは行っていないとの事実に反する供述(乙154,5頁下4行~下3 ックス送信し,一審原告から了解を得たことは,証拠(甲120)から明らかであるにもかかわらず,特許出願書類について一審原告とのやり取りは行っていないとの事実に反する供述(乙154,5頁下4行~下3行)をしているから,この陳述書(乙154)は信用性に乏しいといわざるを得ない。 これに対し,甲29においては,ウエスト部の体型についてX体型,R体型,H体型,O体型という分類がなされており(甲29の4枚目),また,前記2(2)ア(ク)認定のとおり,一審被告が平成12年11月16日に大島特許事務所へ持参した「明細書」と題する書面(乙135)においても,ウエスト部の体型について,同様にX体型,R体型,H体型,O体型という分類がなされている(乙135の5枚目)。 ところが,一審被告が,上記ア(カ)のとおり,平成13年11月16日に持参した「明細書」と題する書面(乙136)においては,ウエスト部の体型について,A体型,R体型,H体型,O体型という分類がなされており(乙136の3枚目),さらに,HMS総合マニュアルでは,ウエスト部分の体型について,V体型,R体型,H体型,O体型という分類に変更されている(甲91の20頁)。このことは,甲29を乙135とともに大島特許事務所に持参したことを推認させるものであって,その旨の一審原告の供述(原審における原告本人尋問調書21頁,一審原告の陳述書[甲79])を裏付けるものであるということができる。 したがって,一審原告は,平成12年11月16日に大島特許事務所- 206 -に赴いた際に甲29を持参したものと認められる。 (ウ)一審被告は,一審原告の考えを盛り込んだという甲71のパターン図から,原判決が認定しているヒップと大腿部の切り込みやそれに付けるマジックテープ,ウエスト部分の切り込みやそれに付けるマジック (ウ)一審被告は,一審原告の考えを盛り込んだという甲71のパターン図から,原判決が認定しているヒップと大腿部の切り込みやそれに付けるマジックテープ,ウエスト部分の切り込みやそれに付けるマジックテープを読み取ることはできないと主張する。しかし,甲71のパータンは,ヒップと大腿部やウエスト部分に切り込みを設けるために作成されたものであり(原審における原告本人尋問調書31頁~33頁),マジックテープの記載がないとしても,上記ア(エ)認定の一審原告の考えは反映されている。また,一審被告は,甲71のパターン図では,そもそもサンプルを作成することができないとも主張するが,そのような事情は認められない。 一審被告は,広瀬工業が,甲71でサンプルを作らずに,これとは異なる乙19のマスターパターンに基づいてサンプルを作成したのを一審原告が黙認したのは不自然であると主張する。しかし,一審原告は,本件発明1のときに弁理士から口止めされており,ヒップと大腿部の切り込みは発明の中心となるところであるので,特に指摘しなかったものと認められ(原審における原告本人尋問調書31頁),上記ア(オ)認定のとおり,最終的には,ヒップと大腿部に切り込みの存するサンプルが作成されているのであるから,一連の経過が不自然であるということはできない。なお,一審原告は,セイブ繊維の担当者には,本件特許2の出願前に使用方法を説明した上でマジックテープの注文を行っている(同調書60頁)が,上記ア(エ)認定のとおり,部材の調達は,本件発明2にとって重要な点であるから,そのために一審原告が使用方法を説明した上でマジックテープの注文を行ったとしても不自然ではなく,サンプルに関する一審原告の行動と矛盾するとまで認めることはできない。 一審被告は,①経験豊富な広瀬工業のFが送付されてきた図面 方法を説明した上でマジックテープの注文を行ったとしても不自然ではなく,サンプルに関する一審原告の行動と矛盾するとまで認めることはできない。 一審被告は,①経験豊富な広瀬工業のFが送付されてきた図面の意図- 207 -を読み取れないということ自体が考えられず,②当時一審被告のHMSブラジャーの生産を行なっていた広瀬工業のFが,第二生産部においてHMSガードルの開発を行っているということが分からないということも考えられないし,③当時一審被告のHMS開発責任者であった一審原告から,パターン図を渡されてサンプルの製作を依頼された広瀬工業が,そのパターン図を使ってサンプルを作ることができるにもかかわらず,異なる図面をわざわざ手書きで引いて返してくるということも考えられないと主張する。しかし,後記(4)イ認定のとおり,Fが本件発明2について正しく認識していたとは考えられず,そうすると,Fが,甲71の意図を理解できずに,それとは異なる乙19を作成したとしても不自然ではない。 (3)本件発明2の技術的思想ア本件明細書2の記載本件明細書2(甲3)には次の記載がある。 (ア)特許請求の範囲「【請求項1】身頃のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連絡部材を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。 【請求項2】前記ヒップ部の切り込みの内端位置は,ヒップトップの高さよりも下としたことを特徴とする請求項1記載の プサイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。 【請求項2】前記ヒップ部の切り込みの内端位置は,ヒップトップの高さよりも下としたことを特徴とする請求項1記載のオーダーメイド用ボトム計測サ- 208 -ンプル。 【請求項3】身頃のウエスト部にウエストサイズを調節可能なウエスト計測手段を設けた請求項1又は2記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該ウエスト計測手段は,前記ウエスト部がその上端から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でウエストサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にウエストサイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。 【請求項4】身頃の脚囲部にその下端の脚口サイズを調節可能な脚口計測手段を設けた請求項1~3のいずれかに記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該脚口計測手段は,前記脚囲部が脚口から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で脚口サイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置に脚口サイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。 【請求項5】前記脚口計測手段は,前記ヒップカップ計測手段と連続して形成されたことを特徴とする請求項4記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプル。 【請求項6】身頃の胴部に胴部サイズを調節可能な胴部計測手段を設けた請求項1~5のいずれかに記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該胴部計測手段は,前記胴部がその上端から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可- 209 -能で胴部サイズ調節可能 用ボトム計測サンプルで,該胴部計測手段は,前記胴部がその上端から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可- 209 -能で胴部サイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置に胴部サイズ計測用の目盛りが記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。 【請求項7】請求項1~6のいずれかに記載のボトム計測サンプルに,カップ部を有するトップが付設されたオーダーメイド用衣類計測サンプル。 【請求項8】前記トップは,前記ボトム計測サンプルに着脱可能に付設された請求項7記載のオーダーメイド用衣類計測サンプル。 【請求項9】前記トップは,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けてなる請求項7又は8記載のオーダーメイド用衣類計測サンプル。 【請求項10】前記トップは,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部と,一つのカップ受部において寸法の異なる複数のバック部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部及びバック部を着脱可能に設けてなる請求項7又は8記載のオーダーメイド用衣類計測サンプル。 【請求項11】前記衣装が体型補正機能を有する衣類である請求項1~10のいずれかに記載のオーダーメイド用計測サンプル。 【請求項12】ヒップサイズを変えた請求項1~11のいずれかに記載の計測サンプルを複数用意し,着用者のヒップサイズに応じて計測サンプルを選択し- 210 -て着用させ,カスタムサイズの計測をする衣類のオーダーメイド方式。」(イ)発明が解決しようとする課題「本発明の目的とすると 意し,着用者のヒップサイズに応じて計測サンプルを選択し- 210 -て着用させ,カスタムサイズの計測をする衣類のオーダーメイド方式。」(イ)発明が解決しようとする課題「本発明の目的とするところは,着用者の体型にフィットしたカスタムサイズの衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供するところにある。また,着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができる衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供することを目的とする。」(段落【0008】)(ウ)課題を解決するための手段・「また,ヒップの頂部(ヒップの最も太い部分)を通る水平方向の周長寸法で表されるヒップサイズが同じでも,ヒップの膨らみ具合,つまり,ヒップカップサイズが異なることが多い。ヒップサイズのみのオーダーメイド方式では,顧客のヒップ形状に合わせることができない。ヒップカップサイズは各種あるため,顧客に合ったヒップカップサイズのカスタムサイズにオーダーできるのが好ましい。」(段落【0016】)・「そこで,本発明は,後身のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたボトム計測サンプルを提供するものである。この構成によると,ボトム計測サンプルを顧客の身体に当ててヒップカップサイズを顧客のヒップカップサイズに調節できる。したがって,カスタムサイズのヒップカップサイズを有するボトム計測サンプルを試着させることができ,同時にその調節されたヒップカップサイズを計測することができる。」(段落【0017】)・「ここで,ヒップカップサイズとは,(ヒップサイズ)-(脚の付- 211 -根の水平方向における周長寸法)で表され,脚の付根の水平方向 カップサイズを計測することができる。」(段落【0017】)・「ここで,ヒップカップサイズとは,(ヒップサイズ)-(脚の付- 211 -根の水平方向における周長寸法)で表され,脚の付根の水平方向における周長が短い程,ヒップの膨らみの具合は大きくなり,ヒップカップサイズは大きくなる。また,ヒップ部とは,後身のうち左右一対のヒップカップ部と,その間の臀裂部とを含む概念であり,ヒップカップとは,臀部の膨らみを包み込む部位を意味する」(段落【0018】)・「ヒップカップ計測手段は,ヒップカップサイズを調節する機能と,その調節量を計測する機能とを併せ持っている。ヒップカップサイズを調節する機能は,前身の下端縁,後身の下端縁及び股下部の側縁によって囲まれた股口のうち,後身の下端縁からヒップカップ部側に切り込みを入れて分割し,分割した一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能とする態様で発現できる。また,身頃の股口の一部を錐形につまんで周方向に折返した折返部を形成し,この折返部を折返した側の股口に止着し,又は離反可能とする態様により,ヒップカップサイズを調節する機能を発揮できるようにしてもよい。この折返しの量を変えることにより,ヒップカップサイズを調節することができる。また,ヒップカップ調節量を計測する機能は,ウエスト計測手段と同様な構成によって発現される。」(段落【0019】)・「…ヒップサイズを変えたボトム計測サンプルを複数種類用意し,着用者のカスタムサイズに合ったヒップサイズのボトム計測サンプルを選択して着用させる。そして,ウエスト計測手段,ヒップカップ計測手段,脚口計測手段及び/又は胴部計測手段により,それぞれのサイズを顧客のサイズに調節することにより,カスタムサイズとなったボトム計測サンプルの試着させることができる。 ト計測手段,ヒップカップ計測手段,脚口計測手段及び/又は胴部計測手段により,それぞれのサイズを顧客のサイズに調節することにより,カスタムサイズとなったボトム計測サンプルの試着させることができる。同時に,調節されたそれぞれのサイズを計測することができる。」(段落【0031】)・「これにより顧客はカスタムサイズのボトム計測サンプルを試着し- 212 -た上で注文することができるので,着用者の体型に合った衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができるオーダーメイド方式を提供することができる。また,この方式によれば,メジャー等での計測だけでは分からない素材収縮率の調整,体形補正を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる。また,同時に,カスタムサイズを計測することができるので,それに従ってカスタムサイズの衣類を製造し,提供することができる。」(段落【0032】)・「また,ヒップサイズを変えたものさえ複数用意すれば,ウエスト,ヒップカップ等を調節して,多様な体型に対応することができる。したがって,ボトム計測サンプル点数が少なくてすみ,保管場所をとらず,持ち運びも容易となる。ボトムを有する衣類をオーダーメイド方式で店舗販売する場合の試着式採寸に限らず,出張採寸にも適したオーダーメイド用ボトム計測サンプル及びオーダーメイド方式といえる。」(段落【0033】)(エ)発明の効果・「…本発明の計測サンプルを使用すれば,顧客の体型にフィットした計測サンプルとすることが容易であり,顧客はカスタムサイズを有する計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用者の体型に合った衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができる利点を有している。」( ムサイズを有する計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用者の体型に合った衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができる利点を有している。」(段落【0080】)・「また本発明のオーダーメイド方式によると,顧客はカスタムサイズを有する計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用時にフィット感のある衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができるオーダーメイド方- 213 -式となし得たのである。また,このようなオーダーメイド方式によれば,メジャー等での計測だけでは分からない素材収縮率の調整,体形補正を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる利点も有している。」(段落【0081】)イ本件発明2の技術的思想の本質的部分上記アの記載によれば,本件発明2の技術的思想の本質的部分は,着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができる「ヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプル及びオーダーメイド方式」すなわち,「該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記された構成を有するオーダーメイド用ボトム計測サンプル及びオーダーメイド方式」にあるものと認められる。 本件発明2の発明者(4)ア前記(2)アの認定事実によれば,一審原告は,平成13年7月ころからガードル用の計測サンプルについて具体的な検討を始め 及びオーダーメイド方式」にあるものと認められる。 本件発明2の発明者(4)ア前記(2)アの認定事実によれば,一審原告は,平成13年7月ころからガードル用の計測サンプルについて具体的な検討を始め,JIS規格にはなかった「ヒップカップサイズ」という指標を採用することとし,甲71のパターン(品番Y-GのLパターン)を作成した遅くとも同年8月8日までには,この指標を用いて大腿部の端部からヒップカップ部中央にかけて切り込みを設け,この部分にマジックテープを付けて着脱自在とし,同部分をスライドさせることによりヒップカップサイズの指標に合わせてその調節が可能となるような仕組みを着想していたものであり,これは,本件発明2の技術的思想の本質的部分である「ヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイドのガードル- 214 -用計測サンプル及びオーダーメイド方式」すなわち,「該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されたオーダーメイド用ボトム計測サンプル及びオーダーメイド方式」を着想したものと認められる。そして,前記(2)アの認定事実によれば,一審原告は,部材の選定を行い,試着品も製作したものである。 なお,上記試着品の製作には,前記(2)ア認定のとおり,Fや他の社員が関与しているが,前記(2)ア認定の一連の経緯からすると,一審原告が着想した上記技術的思想を実現するために試着品の製作が行われたものと認められ,そこにおいて,これらの者によって,上記技術的思想を実現して,着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプル ると,一審原告が着想した上記技術的思想を実現するために試着品の製作が行われたものと認められ,そこにおいて,これらの者によって,上記技術的思想を実現して,着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができるようにするための何らかの発明に値する行為がされたことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件発明2は,一審原告が,平成13年11月16日に大島特許事務所に赴いたときまでには単独で完成させたものと認められる。 イ一審被告は,Fも本件発明2の発明者であると主張し,F証人は,広瀬工業は一審被告から本件発明2に関する開発を丸投げされたと供述する(原審におけるF証人の尋問調書15頁,同人の陳述書[乙5,70])。 しかし,Fが,本件発明2の技術的思想の本質的部分である「ヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイドのガードル用計測サンプルにおいて,該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが着脱自在に止着可能でヒッ- 215 -プカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されたオーダーメイド用ボトム計測サンプル及びオーダーメイド方式」を着想したことを認めるに足りる証拠はない。 かえって,F証人は,大腿部に切り込みがない理由を尋ねる一審原告代理人の質問に対し,「ちょっと意味が分かりません。」と答えるなど,質問の趣旨自体推し量りかねるという意味の返答を繰り返していること(原審におけるF証人の尋問調書20頁~21頁),大腿部からヒップ部にかけて切り込みを入れるアイデアは誰が着想したのかという裁判所調査官からの質問 推し量りかねるという意味の返答を繰り返していること(原審におけるF証人の尋問調書20頁~21頁),大腿部からヒップ部にかけて切り込みを入れるアイデアは誰が着想したのかという裁判所調査官からの質問に対し,F証人は「ガードルを開発依頼されたときに,当然,HMSのガードルですので,オーダーを取らなきゃいけませんので,パターン上,はぎを入れるというのは必要不可欠なんですね。で,当時の一審被告のあこがれというガードルは,ヒップのところにはぎがなかったんです。 それが一審被告の当時のガードルの特徴でしたので,今回,オーダーを作るという依頼があったときに,どうしてもヒップにはぎを入れなくてはいけませんので,今までの一審被告のコンセプトといいますか,そういうこととちょっと異なりますので,それは確認さしてもらいました。」と,ヒップ部に切り込みを入れた理由のみを述べ,裁判所調査官からの「はぎ」の意味を尋ねる質問に対し,「はぎって,切り替えですね。当時の一審被告の商品は,1枚をプレス加工で,モールド加工と言うんですけれども,それを膨らまして立体にしておったんですね。それを,はぎを中心に入れてパターンを2つにしたというふうに御理解いただいたら分かるんですけれども,それを張り合わせるということですね。」と答えるにとどまっていること(同調書35頁)からすると,Fは,この供述時点においてさえ,本件発明2の技術的思想の本質的部分について理解していたとは考えられない。 ウ以上によれば,本件発明2の発明者は一審原告のみであると認めるのが- 216 -相当である。 争点(3)(HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合)についてHMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与について,前記のとおり,一審被告は,同被告によるキャンペーンの実施後の販売促進活動による寄 (3)(HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合)についてHMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与について,前記のとおり,一審被告は,同被告によるキャンペーンの実施後の販売促進活動による寄与が大きく,本件各発明には無効理由があるから,その寄与度は大きく見積もっても10%を上回ることはない旨主張し,これに対し,一審原告は,本件各発明の競争優位性・顧客誘因力は極めて高く,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合を2分の1(50%)とした原判決は不当である等と主張する。 しかし,当事者双方の各主張は,競業他社との関係における独占力に関する主張ではなく,専ら本件各発明の譲渡人たる一審原告と譲受人たる一審被告との間における,HMS商品の売上高に占める本件各発明の影響力の程度に関する主張にすぎないから,これらは後記9の「一審被告の貢献」において検討すべきものである。 一方,使用者等は,従業者から職務発明について特許を受ける権利又は特許権を承継することがなくとも,当該発明について旧35条1項が規定する通常実施権を有することに鑑みれば,同条4項にいう「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは,自己実施の場合は,単なる通常実施権(法定通常実施権)を超えたものの承継により得た利益をもって,当該発明の独占的実施による利益(いわゆる独占の利益)と解すべきである。そして,本件においては,一審原告から本件各発明の譲渡を受けて特許権者となった一審被告は,自ら当該特許発明を実施しているが,他社に実施許諾をしているとは認められず,また,実際にも他社において実施していると認められないこと,及び前記2及び3で認定した本件各発明の内容をからすると,旧35条1項が規定する通常実施権を有することによる減価として,50%の減額をするのが相当であると認められ て実施していると認められないこと,及び前記2及び3で認定した本件各発明の内容をからすると,旧35条1項が規定する通常実施権を有することによる減価として,50%の減額をするのが相当であると認められる。 そうすると,原判決が争点(3)に関し,「HMS商品の売上げに対する本件- 217 -各発明の寄与割合(いわゆる超過売上げの割合)は2分の1と認めるのが相当である。」と判示したのは,その理由付けはともかく,結論において相当ということになる。 争点(4)(独占の利益が発生する時期)について(1)使用者等が職務発明について特許を受ける権利を承継して特許を出願した場合,これにより使用者等が独占の利益を受けることができる期間の始期については,権利承継時からとする説・出願公開時からとする説・特許登録時からとする説等が考えられ,一審原告は権利承継時からを主張し,一審被告は特許登録時からを主張するが,当裁判所は,以下に述べるとおり,前記のような経緯を有する本件各発明については,独占の利益が権利承継時から発生すると解することはできず,法的に補償金請求が可能となる出願公開時から限定的意味での独占の利益が発生し,差止請求権の行使も可能となる特許登録時からは完全な意味での独占の利益が発生すると解する。すなわち,権利承継時から出願公開時までについてみると,権利承継により使用者等は当該職務発明を直ちに利用できるようになるのであるから,上述した独占の利益は権利承継時から取得するのが原則であるが,譲受人たる使用者等が自らなす同発明の実施につき特段の秘匿をせず,その実施が特許法29条1項2号にいう「公然の実施」に該当すると解されるときは(ただし,上記29条の定める特許取得要件との関係で,上記公然実施は使用者等が特許出願した後であるのがほとんどと思われる。),こ が特許法29条1項2号にいう「公然の実施」に該当すると解されるときは(ただし,上記29条の定める特許取得要件との関係で,上記公然実施は使用者等が特許出願した後であるのがほとんどと思われる。),これを見た第三者(他社)は,上述した出願公開時までは,法的に全く自由に当該発明を利用することができるのであるから,自己実施との関係では,当該発明が特段の独占力を発揮しているということはできず,この公然実施期間は独占の利益算定期間から排除すべきものと解される。そして,前記2及び3で認定した本件各発明の内容をからすると,本件各発明を実施することによって,その内容は,顧客等に直ちに知られることは明らかであるから,特許登録時あるいは出願公開時- 218 -より前の権利承継時から独占の利益を有するということはできない。 次に,特許の出願公開がされてから登録までの間については,特許出願をした使用者等が補償金を請求するためには,原則として,当該発明の内容を記載した書面を提示して警告をすることを要し,かつ,その警告後に当該発明を実施した者に対してのみ請求し得るにすぎず(警告後に補正がされたような場合には再度の警告が必要になる場合もある[最高裁昭和63年7月19日第三小法廷判決・民集42巻6号489頁参照]),また,当該警告をしない場合においては,出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知って当該発明を実施した者に対してのみ請求し得るにすぎず,請求し得る金額も,当該発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額に限られている(特許法65条1項)。このように特許の出願公開後登録までの間について使用者等が行使し得る権利の内容は,登録後に行使し得る権利の内容と比べて限定されたものであるが,上記の補償金請求のための要件を具備することはそ 1項)。このように特許の出願公開後登録までの間について使用者等が行使し得る権利の内容は,登録後に行使し得る権利の内容と比べて限定されたものであるが,上記の補償金請求のための要件を具備することはそれほど困難なことではないと考えられ,そうすると,出願公開後特許登録までの間における独占の利益の額は,特許登録後における独占の利益の額の3分の2をもって相当と認める。 なお,特許登録後においては,譲受人たる一審被告が完全な意味での独占の利益を取得することにつき当事者間に争いがない。 (2)当事者双方の主張に対する判断ア一審被告は,①本件特許1は,拒絶理由通知,拒絶査定,拒絶査定不服審判請求及び補正,拒絶査定取消し審決を得て登録に至ったものであり,また,登録はされたものの結局無効審判請求によって無効審決が出され,審決取消訴訟においても無効審決が維持され,無効が確定している,②本件特許2は,拒絶理由通知,拒絶査定,拒絶査定不服審判請求及び補正,拒絶査定取消し審決を得て登録に至ったものであり,平成21年3月27日に無効審判請求がなされており,無効となる可能性の高いものである,- 219 -③したがって,このような経緯をたどった本件特許1,2については,登録時まで独占的利益は発生しないと考えるのが妥当であると主張する。 しかし,本件特許1の出願経過は,前記2(2)ア(ケ)のとおりであり,本件特許2の出願経過は,前記3(2)ア(カ)のとおりであるところ,拒絶理由通知や拒絶査定がされそれに対する拒絶査定不服審判を提起した場合においても,補償金請求の要件を具備するために警告を行うことは可能であるし,補正が必要になるとしても,補正によって特許請求の範囲が補正された場合において,その補正が,願書に添附した明細書・特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内 るために警告を行うことは可能であるし,補正が必要になるとしても,補正によって特許請求の範囲が補正された場合において,その補正が,願書に添附した明細書・特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において補正前の特許請求の範囲を減縮するものであって第三者の実施している物品が補正の前後を通じてその技術的範囲に属するときは,補正の後に再度の警告等により第三者が補正後の特許請求の範囲の内容を知ることを要しない(前記最高裁昭和63年7月19日判決参照)から,再度の警告を行う必要がない場合もある。これらのことからすると,本件特許1,2について登録時まで独占的利益が発生しないと解することはできない。なお,登録後に特許が無効になるかどうかは,上記で述べたところを左右するものではないと解される。 イ一審原告は,①使用者は,特許を受ける権利を取得したことによって,将来特許権を取得して,補償金請求をするのみならず,差止等請求もなし得る地位を獲得したのであるから,その時点から独占力が発生している,②特許ライセンスは特許登録前から行われることが多いところ,一般に登録の前後で実施料の額に変化が生じることはなく,また,市場における発明実施品の売り上げが特許登録の前後で変化をすることもないと主張するが,上記のとおり,特許の出願公開後登録までの間について使用者等が行使し得る権利の内容は,登録後に行使し得る権利の内容と比べて限定されたものであるから,その独占力に違いがあるものであるし,また,ライセンスの実態が一審原告主張のとおりであるとしても,法的な独占力に違い- 220 -がある以上,独占の利益の額を登録の前後で同じと解することはできない。 また,一審原告は,独占の利益の算定期間の始期が争点となり,発明者に対し職務発明の対価の支払を認容した従前の裁判例において -がある以上,独占の利益の額を登録の前後で同じと解することはできない。 また,一審原告は,独占の利益の算定期間の始期が争点となり,発明者に対し職務発明の対価の支払を認容した従前の裁判例においては,特許登録時や出願公開時はおろか,出願に先立つ特許を受ける権利の承継時まで遡って,売上げを独占の利益の計算根拠に算入しており,かつ,特許登録前の売上高について金額の減額等の調整は一切行っていない(東京地裁昭和58年12月23日判決・無体財産権関係民事・行政裁判例集15巻3号844頁,知財高裁平成20年5月14日判決・判例タイムズ1278号277頁,知財高裁平成20年10月20日判決・裁判所ホームページ)と主張するが,これらの裁判例はいずれも本件とは事案を異にするものである。 争点(5)(HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法)について(1)HMS商品の売上実績と販売促進活動につきアHMS商品の売上実績及び販売促進活動の状況証拠(甲6~8,43,50,51,99,100,乙90,116)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア)第24期(平成12年9月1日から平成13年8月31日まで)a第24期の売上げ等の実績は,次のとおりである。 全売上高153億円(単位未満四捨五入。以下同じ)(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●●●●レディメイド商品の売上高●●●●●売上総利益117億円- 221 -販売管理費合計144億円うち営業施策関連費用●●●営業利益△27億円b第24期の有価証券報告書(甲50)には,次の記載がある。 「当社グループは…特に,既にテスト販売を開始し好成績を上げている当社グループ独自のメジャーシステム,生産システムによるオーダーメードのブラジ 24期の有価証券報告書(甲50)には,次の記載がある。 「当社グループは…特に,既にテスト販売を開始し好成績を上げている当社グループ独自のメジャーシステム,生産システムによるオーダーメードのブラジャー(マイモード)を戦略商品として位置付け新市場を開拓し業績向上に邁進する所存であります。」(11頁)c販売促進活動の状況一審被告は,平成13年6月からHMS商品の試験販売を開始したが,その際には特段の販売促進活動は行っていない。 (イ)第25期(平成13年9月1日から平成14年8月31日まで)a第25期の売上げ等の実績は,次のとおりである。 全売上高209億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●●●レディメイド商品の売上高●●●●●売上総利益167億円販売管理費合計151億円うち営業施策関連費用●●●●営業利益16億円b第25期の有価証券報告書(甲51)には,次の記載がある。 「当連結会計年度は,当社グループ独自のメジャーシステムによるオーダーメードシステム(ハイブリッドメジャーシステム)のブラジャー・ガードルを戦略商品として位置付けし,『ヌディータ』『カラ- 222 -ーフィット』の新製品を相次いで発売いたしました。」,「これらの結果,当連結会計年度の売上高は208億72百万円(前年同期比36.6%増),経常利益15億97百万円…と大幅な増収増益となりました。」(8頁)。 c販売促進活動の状況一審被告は,第25期において,HMS商品を戦略商品として位置付け,HMSによる下着のオーダーメード市場の確立を目論み,レディメイドの新商品は発売せず,HMS商品の新商品だけを発売して,その売り込みを強化する方針をとった。しかし,上半期(平成13年9月から平成14年1月まで)におい ーダーメード市場の確立を目論み,レディメイドの新商品は発売せず,HMS商品の新商品だけを発売して,その売り込みを強化する方針をとった。しかし,上半期(平成13年9月から平成14年1月まで)においては,前年同月を下回る売上げしか達成できなかった月が大半であり,特に平成14年1月度は10億円を下回る売上げしか達成できず,売上高は73億600万円(前年同期比6.4%減)にとどまり,経常損失は8億2200万円を記録した(乙90)。 そこで,一審被告は,平成14年2月からキャンペーンと称する販売促進活動を始めるとともに,同年3月のHMS商品「ヌディータ」のブラジャーとロングガードルやHMS商品「あこがれ」「ミーチュー」のロングガードルの発売に合わせて,商品購入者には「ヌディータ」のブラジャーを,紹介者にはベーシックショーツを,それぞれプレゼントするというキャンペーンを始めた。 しかし,「ヌディータ」のブラジャーやロングガードルの売上げが芳しくなかったことから,一審被告は,当初平成14年秋ころから実施予定としていたHMS商品の多色展開を急遽6月に繰り上げ,「カラーフィット」の名称でHMSの新商品(完成したHMS商品を後染めして顧客の好みの色に染色したもの)を発売することとし,同年6月には夏カラーを,同年8月には秋カラーを販売した。また,これに- 223 -併せて,同年6月1日から8月11日までの間,新たなキャンペーンとして,「カラーフィットデビューキャンペーン(GO!GO!キャンペーン)」を全社挙げて実施した。このキャンペーンは,一審被告の支社・支部,営業店及び販売員に対するインセンティブの設定や初来店者に対する特典の付与を行うことに加えて,分割払金利手数料を一審被告が負担したり,セット購入者に対して累進的な自社製品の提供(例えば,35 支部,営業店及び販売員に対するインセンティブの設定や初来店者に対する特典の付与を行うことに加えて,分割払金利手数料を一審被告が負担したり,セット購入者に対して累進的な自社製品の提供(例えば,35万円以上の購入者に対して10万円相当の商品をプレゼントするなど)を行うなどして,売上げの大幅アップを目指したものである。 一審被告が第25期において投じた営業施策関連費用は●●●●に上るところ,これを平成14年4月の営業施策関連費用●●●●●●●●●と比べると,同年6月は●●●●●●●●●●●●●●,同年7月は●●●●●●●●●●●●●●●●であった。 (ウ)第26期(平成14年9月1日から平成15年8月31日まで)a第26期の売上げ等の実績は,次のとおりである。 全売上高212億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●●●レディメイド商品の売上高●●●●売上総利益171億円販売管理費合計156億円うち営業施策関連費用●●●●営業利益15億円b第26期の有価証券報告書(甲6)には,次の記載がある。 「当社グループは引き続き独自のハイブリッドメジャーシステムに- 224 -よるオーダー商品の優位性を活かし,新規顧客の拡大・拡充の為に積極的なマーケティング活動を行うと共に」,「ヨーロッパのジュエリーをイメージしたマイモード『エクリナ(ecrina)』等オーダーメード下着の新製品を発表してまいりました。」,「これらの結果,売上高は211億85百万円(前期比1.5%増)と増収となりました。」(7頁)c販売促進活動の状況一審被告は,第26期においても引き続き,HMS商品による下着のオーダーメード市場の確立を目論み,レディメイドの新商品は発売せず,HMS商品の販売に注力した。特に,カラー )c販売促進活動の状況一審被告は,第26期においても引き続き,HMS商品による下着のオーダーメード市場の確立を目論み,レディメイドの新商品は発売せず,HMS商品の販売に注力した。特に,カラーフィット商品については,季節毎に新色を展開し,平成14年11月には冬カラー,平成15年1月には新春カラー,同年3月及び4月には春夏カラーと,1年間で合計17色の商品を販売した。また,同年6月にはHMS商品の新商品「エクリナ」を発売した。 一審被告は,第26期においても引き続きキャンペーンを実施し(ただし,平成15年3月を除く。),上半期に投じた営業施策関連費用は●●●●と,第25期通期の●●●●に近い額に上り,第26期上半期において,5億4000万円の経常損失を計上した。なお,第26期下半期に投じた営業施策関連費用は●●●●であり,第26期通期では,15億円の経常利益を確保した。 (エ)第27期(平成15年9月1日から平成16年8月31日まで)a第27期の売上げ等の実績は,次のとおりである。 全売上高270億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●●●- 225 -レディメイド商品の売上高●●●●●売上総利益161億円販売管理費合計135億円うち営業施策関連費用●●●●営業利益27億円b第27期の有価証券報告書(甲7)には,次の記載がある。 「お客様には,独自のハイブリッドメジャーシステム(HMS)による試着体験により,体型補整効果を実体感して頂きながら,当社グループの製品の特徴とボディメイクの技術をアピールしてまいりました。」,「これらの結果,当連結会計年度の売上高は270億48百万円(前年同期比27.7%増)となり…経常利益は25億63百万円(前年同期比70.4%増)…となり イクの技術をアピールしてまいりました。」,「これらの結果,当連結会計年度の売上高は270億48百万円(前年同期比27.7%増)となり…経常利益は25億63百万円(前年同期比70.4%増)…となりました」(6頁),「独自のハイブリッドメジャーシステム(立体メジャー)による体型補整コンサルティング業務を重視した事業形態が定着化してきた」,「当社グループの研究開発は,独自のハイブリッドメジャーシステムによるオーダー製品の優位性を引き続き活用し」(11頁)c販売促進活動の状況一審被告は,平成15年9月から同年11月までの期間中はキャンペーンを行なっていない。 一審被告は,平成15年9月にカラーフィットのB柄を,平成16年3月にC柄を,それぞれ発売した。また,平成15年12月にHMS商品の新製品(エクリナ・ボディスーツ)を発売するとともに,キャンペーンを再開した。 しかし,平成16年7月に発売されたレディメイド商品の新商品(デコルテ)の販売が好調であったことなどから,一審被告は,同年か9月ころから,その販売政策の重点をHMS商品からレディメイド- 226 -商品へと転換することとし,これに伴い,以後,HMS商品については新商品の発売を行っていない。 (オ)第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)a第28期における売上げ等の実績は,次のとおりである。 全売上高313億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●●レディメイド商品の売上高●●●●●売上総利益175億円販売管理費合計137億円うち営業施策関連費用●●●●営業利益38億円b第28期の有価証券報告書(甲8)には,HMS商品に関する記載は,研究開発活動欄(12頁)を除き,存在しない。 c販売促進活動の状況 37億円うち営業施策関連費用●●●●営業利益38億円b第28期の有価証券報告書(甲8)には,HMS商品に関する記載は,研究開発活動欄(12頁)を除き,存在しない。 c販売促進活動の状況平成16年9月から平成17年4月までの期間中は,一審被告はキャンペーンを行なっていない。 一審被告は,平成17年5月にレディメイドの新商品(モンマリエ)を発売するとともに,「体型補整実践キャンペーン」と称するキャンペーンを開始した。キャンペーンを再開した理由は,前月の売上げが芳しくなかったからである。このキャンペーンは,顧客や社員のうち,一定基準をクリアーした者をパリ研修旅行に招待したり,国内旅行を贈呈したりするものであった。 (カ)第29期(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで)a第29期の売上げ等の実績は,次のとおりである。 - 227 -全売上高226億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●●レディメイド商品の売上高●●●●●売上総利益110億円販売管理費合計119億円うち営業施策関連費用●●●●営業利益△9億円b第29期の有価証券報告書(甲43)には,次の記載がある。 「新規顧客の拡大に向けた積極的な販売促進活動を実施してまいりました。」,「製品面においては,…『DECORTE/DEMONIAQUE(デコルテ/デモニーク)』(判決注:レディメイド商品及びHMSメジャーを活用しない簡易オーダーメード商品)のカラー展開3色を発売すると同時に,」,「『monmarierSUPER(モン・マリエシュペール)』を発売いたしました。…」,「しかしながら,その効果は十分に浸透せず,」,「…新規顧客に対する売上高が大幅に下回る状況となり,」,「当連結会計年度の業績は, UPER(モン・マリエシュペール)』を発売いたしました。…」,「しかしながら,その効果は十分に浸透せず,」,「…新規顧客に対する売上高が大幅に下回る状況となり,」,「当連結会計年度の業績は,売上高226億11百万円(前年同期比27.9%減)となりました。」,「また,利益面では,…不稼働製品在庫の削減を行い,値引販売を行ったことなどにより,粗利益率が低下…いたしました。」,「これらの影響により,経常損失は9億78百万円(前年同期は経常利益36億57百万円)…となりました。」(6頁)(キ)第30期(平成18年9月1日から平成19年8月31日まで)第30期の売上げ等の実績は,次のとおりである。 全売上高241億円- 228 -(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●レディメイド商品の売上高●●●●●売上総利益119億円販売管理費合計106億円うち営業施策関連費用●●●営業利益12億円(ク)第31期(平成19年9月1日から平成20年8月31日まで)第31期の売上げ等の実績は,次のとおりである。 全売上高218億円営業利益△4億円イHMS商品の売上実績に対する一審被告の販売促進活動の寄与(ア)第24期(平成12年9月1日から平成13年8月31日まで)第24期のHMS商品の売上げは●●●●●●であるが,この期間には,HMS商品の販売促進活動は行われていない。 平成13年6月からのHMS商品の販売は,ブラジャーのみの,しかも試験販売であって,マルコの店舗総数約320店舗のうち20前後の店舗の,しかも販売員全員でなく,HMS研修を終了した限られた人数の販売員によって販売されていたにすぎない(当事者間に争いがない。)。したがって,3か月という試験販売期間における売上げの推移か の店舗の,しかも販売員全員でなく,HMS研修を終了した限られた人数の販売員によって販売されていたにすぎない(当事者間に争いがない。)。したがって,3か月という試験販売期間における売上げの推移から直ちにHMS商品が顧客の支持を得ていなかったということはできない。かえって,試験販売の段階であるにもかかわらず一定の販売成績を上げていたこと,このことについて一審被告自身,第24期の有価証券報告書において,上記ア(ア)bのとおり記載し,HMS商品が「好成績」を上げていることを公表していたことからすると,HMS商品は,- 229 -試験販売期間において既に一定程度の顧客の支持を得ていたとみることができる。 (イ)第25期(平成13年9月1日から平成14年8月31日まで)第25期のHMS商品の売上げは●●●●●であるところ,営業施策関連費用は●●●●である。 カラーフィット(夏カラー)が発売された平成14年6月におけるHMS商品の売上げは●●●●であり,第25期のそれまでの期間におけるHMS商品の売上げが●●●●から●●●●で推移していたのと比較すると,売上げの伸びには著しいものがある。しかし,そもそも,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(弁論の全趣旨)。したがって,第25期におけるHMS商品の売上げ増の主たる理由がカラーフィット商品そのものの売上げによるということはできない。 「カラーフィットデビューキャンペーン」などの一審被告の販売促進活動が実施された期間のHMS商品の売上げは,平成14年6月が●●●●,同年7月が●●●●,同 のの売上げによるということはできない。 「カラーフィットデビューキャンペーン」などの一審被告の販売促進活動が実施された期間のHMS商品の売上げは,平成14年6月が●●●●,同年7月が●●●●,同年8月が●●●●であり,第25期のそれまでの期間におけるHMS商品の売上げが概ね●●●●から●●●●で推移していた(平成14年3月の●●●●を除く。)のと比較すると,格段の伸びを示している(乙116)ところ,同期間における営業施策関連費用は,平成14年6月が●●●●●●●●,同年7月が●●●●●●●●,同年8月が●●●●●●●●であり,第25期のそれまでの期間における営業施策関連費用が概ね●●●●●(平成14年2月の●●●●●●●●,同年5月の●●●●●●●●を除く。)である- 230 -(乙116)のと比べると,格段に多額の費用を投入していることが認められる。 この点について,一審原告は,キャンペーンは他の商品の販売に際しても行われる一般的な販売促進の手段であるから,むしろキャンペーンが行われることを前提としなければ本件各発明の貢献度を正確に評価することはできないとし,キャンペーンが功を奏したということは取りも直さずHMS商品に魅力があったことを示すものである旨主張する。確かに,一審原告が主張するように,顧客が全く魅力を感じない商品については,いくらキャンペーンを行なったとしても,通常の消費者であれば購入意欲が沸くことは少ないと考えられるから,キャンペーンが功を奏したということは顧客がHMS商品に対して魅力を感じていたものということはできる。しかし,上記キャンペーン実施前の売上げは,上記のとおり概ね●●●●から●●●●で推移していたところ,キャンペーン期間中には一挙に●●●●,●●●●,●●●●という極めて大幅な売上増を記録している しかし,上記キャンペーン実施前の売上げは,上記のとおり概ね●●●●から●●●●で推移していたところ,キャンペーン期間中には一挙に●●●●,●●●●,●●●●という極めて大幅な売上増を記録しているのであり,キャンペーンの前後における売上高のこのような極端な変動は,HMS商品に対するキャンペーン効果が通常の商品に比べて相当に大きかったを示すものというべきであり,キャンペーン自体の貢献を考慮しなければこれを合理的に説明し得ないものというべきである。 以上の事情を総合考慮すると,第25期におけるHMS商品の売上実績がHMS商品自体ひいては本件各発明に顧客吸引力が存するものの,それのみによってもたらされたものということはできず,一審被告によるキャンペーン等の販売促進活動も相当程度の寄与をしていたものと認めるのが相当である。 (ウ)第26期(平成14年9月1日から平成15年8月31日まで)第26期のHMS商品の売上げは●●●●●であるところ,営業施策- 231 -関連費用は●●●●である。 第26期における全売上高は212億円で過去最高であり,このうちHMS商品の売上げ●●●●●が占める割合は●●●を超え,過去最高となったことが認められる。しかし,一審被告は,第26期においてもキャンペーンを継続しており(ただし,平成15年3月を除く。),レディメイド商品の新商品の発売は見合わせる一方,HMS商品については,平成14年11月にカラーフィットの冬カラーを,平成15年1月には新春カラーを,同年3月及び4月には春夏カラーをそれぞれ発売し,同年6月にはHMS商品の新商品「エクリナ」を発売するなど,強力にHMS商品の売り込みを図っていた。そして,第26期におけるHMS商品の売上げは●●●●●で,第25期におけるHMS商品の売上げ●●●●●を●●●● S商品の新商品「エクリナ」を発売するなど,強力にHMS商品の売り込みを図っていた。そして,第26期におけるHMS商品の売上げは●●●●●で,第25期におけるHMS商品の売上げ●●●●●を●●●●上回るものであり,その増加率は●●●に上るものであったが,他方,営業施策関連費用を見ると,第26期のそれは●●●●で,第25期の営業施策関連費用●●●●を●●●●●上回るものであり,その増加率は●●●近くに上る。 以上の事情を総合考慮すると,第26期におけるHMS商品の売上実績についても,第25期におけるそれと同様,HMS商品自体,ひいては本件各発明の顧客吸引力が存するものの,それのみによってもたらされたものということはできず,一審被告によるキャンペーン等の販売促進活動が相当程度の寄与をしていたものと認めるのが相当である。 (エ)第27期(平成15年9月1日から平成16年8月31日まで)第27期のHMS商品の売上げは●●●●●であるところ,営業施策関連費用は●●●●である。 一審被告は,第27期においても,当初レディメイド商品の新商品の発売は見合わせる一方,HMS商品については,平成15年12月にHMS商品の新商品「エクリナ・ボディスーツ」を発売したほか,同年9- 232 -月にカラーフィットのB柄を,平成16年3月にC柄を,それぞれ発売するなどし,また,平成15年12月には,一時見送っていたキャンペーンを再開した。また,第27期におけるHMS商品の売上げは●●●●●で,第26期におけるHMS商品の売上げ●●●●●を●●●●●●上回るものであり,その増加率は●●●にも上るものであるのに対し,他方,営業施策関連費用を見ると,第27期のそれは●●●●で,第26期の営業施策関連費用●●●●と比べると,その増加率は●●●●●にとどまるものではあ その増加率は●●●にも上るものであるのに対し,他方,営業施策関連費用を見ると,第27期のそれは●●●●で,第26期の営業施策関連費用●●●●と比べると,その増加率は●●●●●にとどまるものではあるけれども,なお第26期の水準より●●●●●増加している。 以上の事情を総合考慮すると,第27期におけるHMS商品の売上実績についても,第25期及び第26期におけるそれと同様,HMS商品自体,ひいては本件各発明の顧客吸引力は存するものの,それのみによってもたらされたものということはできず,一審被告によるキャンペーン等の販売促進活動が相当程度の寄与をしていたものと認めるのが相当である。 (オ)第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)a第28期のHMS商品の売上げは●●●●であり,第27期の●●●●●から大きく落ち込んだ。他方で,全売上高は第27期の270億円から313億円に,営業利益は第27期の27億円から38億円に増加した。 b証拠(甲67~70,79,123の1~5,124)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a)一審被告においては,平成16年11月に,一審原告が統括していた商品企画部をWが統括していた商品企画開発部に吸収させ,その上に商品企画開発本部を新設した。他方,商品企画開発部から,それまで一審原告の指揮下にいた社員を他の部署に移した。 - 233 -(b)一審被告においては,平成16年12月16日までに,①標準サイズの顧客に「デコルテ」等のレディメイド商品を販売し,②標準サイズ外の顧客に対し「デコルテ・オーダー」(セミオーダー商品)を販売し,③それ以外のサイズの顧客にHMS商品を販売するという商品の位置付けを採用した。 (c)一審被告は,平成17年1月以降,「リドル」「デコルテ」「モ コルテ・オーダー」(セミオーダー商品)を販売し,③それ以外のサイズの顧客にHMS商品を販売するという商品の位置付けを採用した。 (c)一審被告は,平成17年1月以降,「リドル」「デコルテ」「モンマリエ」といったレディメイド商品を新たに発売したが,HMS商品については,以前から開発中であったものも含めて新たな商品が発売されることはなかった。 (d)平成17年2月,一審被告社長であったe(以下「e」という。)社長らは,一審原告に対し,HMSの研修の中止を指示した。さらに,同年3月には,一審被告のf常務取締役は一審原告に対し,HMSプロジェクト会議を中止する旨のファクス文書を流すよう強く指示したため,一審原告はプロジェクトのメンバーに対し,HMSプロジェクトを中止するとのファクス文書(甲70)を送信した。 (e)一審原告は,平成17年5月には,内部監査室を兼務し,同年11月にはお客様相談室室長に異動し,取締役を解任され,平成18年7月に一審被告を退職した。 c上記認定事実によれば,一審被告がその営業方針を転換し,HMS商品からレディメイド商品へと販売の力点を変更したことによって,HMS商品の売上げが減少したことは明らかである。しかし,HMS商品の売上げが減少したからといって,その理由をすべてHMS商品自体に顧客吸引力がないこと,ひいては本件各発明に競争優位性がないことに求めることはできない。 (カ)第29期(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで)- 234 -第29期のHMS商品の売上げは●●●●であり,第28期の●●●●からさらに落ち込んだ。また,全売上高も第28期の313億円から226億円に減少し,9億円の営業損失を計上した。 一審被告が販売政策を変更して販売の力点をHMS商品からレディメイド商品に変更した後に からさらに落ち込んだ。また,全売上高も第28期の313億円から226億円に減少し,9億円の営業損失を計上した。 一審被告が販売政策を変更して販売の力点をHMS商品からレディメイド商品に変更した後に,上記のとおり一審被告の業績が低下したことは,HMS商品自体に顧客吸引力があったことを推認させるものということができる。しかし,それより前の時期におけるHMS商品の売上げがHMS商品自体の顧客吸引力のみによって達成されたものではないことは,既に認定したとおりである。 (キ)第30期(平成18年9月1日から平成19年8月31日まで)第30期のHMS商品の売上げは●●●●●●●●であり,第29期の●●●●からさらに落ち込んだ。他方で,全売上高は第29期の226億円から241億円へと増加し,営業利益も第29期の9億円の営業損失から,12億円の黒字へと回復した。 第30期には全売上高は増加し,営業利益も黒字になったものの,その幅は小さく,この事実もHMS商品自体に顧客吸引力があったことを推認させるものということができる。 (ク)第31期(平成19年9月1日から平成20年8月31日まで)HMS商品の販売は,平成20年2月で終了した(弁論の全趣旨)。 第31期には全売上高が減少し,営業利益も赤字になったのであり,このことも,HMS商品自体に顧客吸引力があったことを推認させるものということができる。 (ケ)小括以上によれば,HMS商品の売上実績は,本件各発明の競争優位性ないし顧客誘因力によって達成されたという面がかなりあるものの,それのみで達成されたということはできず,キャンペーンの実施等一審被告- 235 -の販売促進活動によるところも相当程度寄与しているものということができる。 ウこの点について,一審原告は,HMS商品を販売していた当時の営業 とはできず,キャンペーンの実施等一審被告- 235 -の販売促進活動によるところも相当程度寄与しているものということができる。 ウこの点について,一審原告は,HMS商品を販売していた当時の営業施策関連費用のうち主要なものは,①信販手数料,②商品券,③景品費であって,いずれも商品が売れることにより初めて生ずる変動費であると主張する。しかし,上記ア認定のとおり,キャンペーンの実施に当たっては,手数料の負担,商品券や景品の配布をするとして顧客に購入を促しているのであって,これらが変動費であるからといって,キャンペーンの効果がなかったということはできない。 一審原告は,HMSロングガードル「あこがれ」・「ミーチュ」の販売開始時期は,平成14年3月であるところ,HMS商品の売上げは2月には●●●●●●●●であったのが,3月には●●●●●●●●と●●●●に増えており,他方,一審被告が同じ平成14年3月に行なったと主張するプレゼントのための費用は,●●●●●●●●●●であって,前月の●●●●●●●●●●から半減しているから,この平成14年3月にHMS商品の売上高が増加した理由は,同月に上記各HMS商品の新商品を発売したからであると主張する。確かに,平成14年3月の1か月については,そのようにいうことができるかもしれないものの,そのことが,直ちに長期間にわたってHMS商品の売上実績について考察している上記イの認定を左右するということはできない。 一審原告は,①HMSショートガードル「あこがれ」・「ミーチュ」等の販売を開始した平成15年3月から7月までの4か月間HMS商品の売上げが増加しており,②HMSエクリナボディスーツの販売を開始した平成15年12月から平成16年2月までの3か月間もHMS商品の売上げが増加していると主張する。しかし,上記ア 4か月間HMS商品の売上げが増加しており,②HMSエクリナボディスーツの販売を開始した平成15年12月から平成16年2月までの3か月間もHMS商品の売上げが増加していると主張する。しかし,上記ア(ウ)のとおり,一審被告は,第26期(平成14年9月1日から平成15年8月31日まで)において- 236 -も引き続きキャンペーンを実施し,上半期に投じた営業施策関連費用は●●●●と,第25期通期の●●●●に近い額に上っているのであるし,また,上記ア(エ)のとおり,一審被告は平成15年12月にキャンペーンを再開したのであるから,これらの売上げ増加が新商品の販売開始のみによるとは直ちにいい難いのであり,まして長期間にわたってHMS商品の売上実績について考察している上記イの認定を左右するということはできない。 一審原告は,一審被告は第27期の平成15年9月から平成15年11月までキャンペーンを行なっていないにもかかわらず,この期間の売上高は上昇していると主張する。上記ア(エ)のとおり,一審被告は平成15年9月から平成15年11月までキャンペーンを行なっていないところ,その期間の売上高は上昇している(甲81,4枚目のグラフ)が,この事実も,長期間にわたってHMS商品の売上実績について考察している上記イの認定を左右するということはできない。 (2)HMSメジャーないしHMS商品の「根本的欠陥」につき以下,HMSメジャーに一審被告主張の「根本的欠陥」が存在する否かについて検討する。 アHMSメジャーを全店舗に備え維持する費用・労力(ア)HMS商品(ブラジャー)証拠(乙101,105)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a素材の違いHMS商品(ブラジャー)には,素材の異なる商品が複数種類存在する。例えば,HMS商品(ブラジャ ラジャー)証拠(乙101,105)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a素材の違いHMS商品(ブラジャー)には,素材の異なる商品が複数種類存在する。例えば,HMS商品(ブラジャー)には,「あこがれ」,「ミーチュー」,「ヌディータ」,「カラーフィットA柄」,「カラーフィットB柄」,「カラーフィットC柄」及び「エクリナ」があり,各- 237 -商品の素材は,商品を構成する部位(たとえば,カップの表,カップの裏,脇接部等)が同じであっても,同一ではなく,たとえば,「あこがれ」のカップの表の素材は,●●●●●●●●●●●●及び●●●●●●●であるのに対し,「ヌディータ」の同部位の素材は,●●●●●●であるなど,商品によって使用されている素材が異なっている。これに対し,HMSメジャー(ブラジャー)は,各部位を構成する素材が1種類である。そのため,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●HMSメジャー(ブラジャー)及びHMS商品(ブラジャー)に用いられている素材は,それぞれ伸張回復性及び伸度が異なる。 b部材の違い●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●HMSメジャー(ブラジャー)には,カップと前身を接合するマジックテープ及び前身と後身頃を接合するファスナーが装着されているが,HMS商品(ブラジャ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●HMSメジャー(ブラジャー)には,カップと前身を接合するマジックテープ及び前身と後身頃を接合するファスナーが装着されているが,HMS商品(ブラジャー)にはこれらはいずれも装着されていない。 c体感の違い上記a,bの結果,HMSメジャー(ブラジャー)で得られる体感と,HMS商品(ブラジャー)で得られる体感との間には,違いが存在する。すなわち,素材が異なれば着け心地が異なり,体型補正効果- 238 -という面においても,素材の違いによる伸張回復性の違いから,体感の違いが生じる。 また,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(乙107),これは,両者の間に体感の違いがあることを示すものである。 (イ)HMSメジャー(ガードル)証拠(乙101,105)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a素材の違いHMS商品(ガードル)にも,「あこがれ」,「ミーチュー」,「ヌディータ」,「カラーフィットA柄」,「カラーフィットB柄」,「カラーフィットC柄」及び「エクリナ」があり,各商品の素材は,商品を構成する部位(たとえば,身頃,身頃大腿部等)が同じであっても,同一ではなく,例えば,「あこがれ」の身頃の素材は,●●●●●●●●●●であるのに対し,「ミーチュー」の同部位の素材は,●●●●●●●●●●●●●●●●●であるなど,商品によって使用されている素材が異なっている。これに対し,HMSメジャー(ガードル)は,各部位を構成する素材が1種類である。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 材が異なっている。これに対し,HMSメジャー(ガードル)は,各部位を構成する素材が1種類である。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●HMSメジャー(ガードル)及びHMS商品(ガードル)に用いられている素材- 239 -は,それぞれ伸張回復性及び伸度が異なる。 b部材の違いHMSメジャー(ガードル)には,前パネルと脚口にマジックテープが装着されているが,HMS商品(ガードル)には装着されていない。 c体感の違い上記a,bの結果,HMSメジャー(ガードル)で得られる体感と,HMS商品(ガードル)で得られる体感との間には,違いが存在する。ガードルは,伸縮性に富む生地が使用されている面積が大きく,かつ,マジックテープが使用されている面積が大きいことから,HMSメジャー(ガードル)とHMS商品(ガードル)の体感の違いは,HMSメジャー(ブラジャー)とHMS商品(ブラジャー)の体感の違いよりも大きい。 (ウ)上記(ア),(イ)認定のとおり体感に違いがあることは,証拠(甲66)及び弁論の全趣旨によれば,HMS商品は予め商品の着用感を体感できることを売り物としていたと認められることからすると,HMS商品の課題ということはできるものの,一審被告は,HMS商品に力を入れて販売していた時期には,前記(1)のとおり,売上げを伸ばし,利益を確保していたのであるから,上記のとおり体感に違いがあることをもって「根本的欠陥」ということはできない。 イHMSメジャーを使える人材の育成 いた時期には,前記(1)のとおり,売上げを伸ばし,利益を確保していたのであるから,上記のとおり体感に違いがあることをもって「根本的欠陥」ということはできない。 イHMSメジャーを使える人材の育成に要する費用・労力証拠(乙109)及び弁論の全趣旨によれば,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●- 240 -●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●そうであれば,体感という意味では,上記HMSメジャーはHMS商品と「同等の」サンプルということができ,これを身に付けさせて計測すること自体が特に熟練を要するものとは認められない。一審被告が引用する原審におけるG証人の証人尋問の結果によっても,上記認定が左右されるものではない。 もっとも,HMSメジャーによる計測が,HMS商品と同様の体感を得ることができることを謳い文句にしたために,顧客においてHMSメジャーによる体感どおりのHMS商品が完成するものとの期待が大きかったのに対し,実際に完成したHMS商品は,HMSメジャーとは素材が異なることや,女性の を謳い文句にしたために,顧客においてHMSメジャーによる体感どおりのHMS商品が完成するものとの期待が大きかったのに対し,実際に完成したHMS商品は,HMSメジャーとは素材が異なることや,女性の体が1か月の間でも変化することから,実際に完成したHMS商品ではHMSメジャーでの体感と異なる結果になることはあり得る。しかし,このことは,HMSメジャーによる計測自体が熟練を要するか否かとは別問題である。 ウ工場における生産管理が難しいことHMS商品は,個々のオーダーごとにサイズが変わるため,レディメイド商品と比較して,生産管理が難しいということができる。また,レディメイド商品の納期は8日間である(弁論の全趣旨)のに対し,HMS商品の納期は,販売当初,注文時から30日ないし60日間とされていた(乙114)ことからすると,HMS商品の納期はレディメイドに比べて相当- 241 -遅いといえる。 しかし,上記の各点は,HMS商品固有の問題というよりは,オーダーメイド商品一般がレディメイド商品一般に対して有する問題点というべきである。そして,オーダーメイド商品にはレディメイド商品にはない特徴(利点)があることは明らかであり,また,前記(1)のとおり,HMS商品は売上げを伸ばし,顧客の支持を得ていたのであるから,上記の各点をもってHMS商品の「欠陥」ということはできない。 エサイズ違いのクレームの発生一審被告は,HMSメジャーについて,未熟練者による採寸,生産管理の困難性,あるいは採寸時から納品までの間における顧客の体型変化などの理由からHMSメジャーによって体感したフィット感とHMS商品におけるフィット感に大きな差異が生じてしまうことが頻発し,顧客から返品あるいは作り直しの要求が続発した旨主張する。 しかし,「続発した」との主張自体具体性に ーによって体感したフィット感とHMS商品におけるフィット感に大きな差異が生じてしまうことが頻発し,顧客から返品あるいは作り直しの要求が続発した旨主張する。 しかし,「続発した」との主張自体具体性に欠ける上,一審被告が上記主張を裏付ける証拠として提出した乙83の4(作成者一審被告社員V,作成日平成15年6月24日のノート)には,「6/24(火)商品部会議」の欄に「・再生産23,000枚」との記載があるものの,この記載にある「23,000枚」がHMS商品そのものを指すのか,一つのHMS商品を構成する部材を指すのか明らかではない(乙88[Vの陳述書]を参照しても明らかでない)から,上記再生産枚数のみをもって顧客からの上記要請が「続発した」と評価することは困難である。かえって,前記(1)のとおり,一審被告は,平成15年6月にHMS商品の新商品である「エクリナ」を発売し,その後も平成16年3月までHMS商品の新商品の投入を続けていたことからすると,平成15年6月時点でHMS商品についてサイズ違いのクレームが発生したことをHMS商品の「欠陥」ということはできない。 - 242 -オ体型補正効果が限定されていること一審被告は,HMS商品はジャストフィットの商品であるが故に,レディメイド商品と比べて体型補正効果が限定されている旨主張する。これに対して,一審原告は,①HMSメジャーは「体型補正を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる」(本件各発明の特許公報[甲1,3]の【発明の効果】欄)という効果を有すること,②実際にも,まずボディメイクを行い体型補正をした状態での着用感を確認した上で採寸していること,③女性の体は柔らかいから,原理的にも体型にフィットした製品の方が高い体型補正効果が得られること,④これに対してレディメイド メイクを行い体型補正をした状態での着用感を確認した上で採寸していること,③女性の体は柔らかいから,原理的にも体型にフィットした製品の方が高い体型補正効果が得られること,④これに対してレディメイド商品の場合,自己の体型を標準規格に合わせなければならないため,体型補正効果はあるものの窮屈で着用感が悪くなるという問題があるとして,一審被告の主張を争う。 そこで検討すると,まず,上記①②については,弁論の全趣旨によれば,そもそもHMS商品は,当初,ジャストフィット商品であることをアピールして販売を開始したものであるが,第26期(平成14年9月から平成15年8月まで)の途中から,体型補正を前面に押し出すことに販売方針を転換したことが認められる。したがって,HMS商品のコンセプトとしての体型補正効果は,二次的なものと認められる。また,上記③については,弁論の全趣旨によれば,一審被告における体型補正とは,下着を着用してボディメイクを行うことにより,いわゆるゴールデンプロポーションと呼ばれる理想の体型に近づけていくことを指すものと認められ,この意味での体型補正効果を求める顧客の体型は,通常この理想的な体型とは異なるから,体型にフィットした製品の方が高い体型補正効果が得られるということはできない。さらに,上記④については,レディメイド商品は,ゴールデンプロポーションのバランスの下に設計されているから,体型補正効果を求める顧客にとっては,レディメイド商品を付けてボディメ- 243 -イクを行えば理想的な体型を作ることができ,その目的を達することができる。一審原告は,レディメイド商品は体型補正効果はあるものの窮屈で着用感が悪くなるという問題がある旨主張するが,レディメイド商品に体型補正効果があること自体は否定できないし,体型補正効果を求める以上多少 審原告は,レディメイド商品は体型補正効果はあるものの窮屈で着用感が悪くなるという問題がある旨主張するが,レディメイド商品に体型補正効果があること自体は否定できないし,体型補正効果を求める以上多少の窮屈感が生じるのは当然のことである。 以上によれば,一審原告指摘の①ないし④はいずれも理由がなく,したがって,HMS商品については,体型補正効果がレディメイド商品に比べて限定されているものと認められる。この点は,HMS商品の課題であるということができるものの,上記のとおり二次的なものであっても体型補正効果がないというものではない上,一審被告は,HMS商品に力を入れて販売していた時期には,前記(1)のとおり,売上げを伸ばし,利益を確保していたのであるから,上記のとおり体型補正効果が限定されていることをもって「根本的欠陥」ということはできない。 カあらかじめ体感することが不可能であることHMS商品によって得られる体感がHMSメジャーによって得られる体感と異なることについては,上記アのとおりである。 キHMSメジャーによる計測とHMS商品の寸法とが異なること一審被告は,HMS商品の仕上がり寸法とHMSメジャーにより計測した寸法との間に誤差があることを理由として,HMSメジャーは計測器として不正確である旨主張する。しかし,実際に計測する段階では,顧客の体型に細かく合わせて採寸しているから,誤差があったとしても,出来上がったHMS商品が顧客の体型と著しく異なることはないものと考えられる。したがって,HMSメジャーによる計測とHMS商品の寸法とが異なることのみをもってHMSメジャーないしHMS商品の「欠陥」ということはできない。 (3)HMS商品の利益率につき- 244 -ア一審被告は,HMS商品はレディメイド商品に比べて利益率が低いことを のみをもってHMSメジャーないしHMS商品の「欠陥」ということはできない。 (3)HMS商品の利益率につき- 244 -ア一審被告は,HMS商品はレディメイド商品に比べて利益率が低いことを主張し,これを裏付ける証拠として,乙116(月次推移表[実績]),乙117(経費内訳),乙118(売上高/営業施策関連費用を示すグラフ等)及び乙119(期別項目別損益比較表)を提出する。これに対し,一審原告は,乙116~119は信用できないと主張する。 当裁判所は,乙116~119は信用に値すると判断するものであり,その理由は以下のとおりである。 イ資料の内容証拠(乙116~119)及び弁論の全趣旨によれば,乙116~119には,次の内容が記載されていることが認められる。 (ア)乙116(期別月次推移表[実績])乙116は,一審被告の第24期から第30期までの各期における月次営業成績を一覧表にまとめたものであり,売上高については,①オーダーメイド商品(HMS商品を含む。)の売上高,②HMS商品の売上高,③レディメイド商品の売上高の三つに区分してある。 「営業施策販促費用」と題する表は,各期における経費のうち,営業関連費用を一覧表にまとめたものである。そのうち,「オーダー(HMS)関連費用」とは,HMS商品に固有の営業関連経費をまとめたものであり,「オーダーメイド以外関連費用」とは,レディメイド商品に固有の営業関連経費をまとめたものである。 (イ)乙117(経費内訳)乙117は,乙116の「営業施策販促費用」と題する表に記載されている各期の月別営業関連経費の内訳を記載したものである(ただし,10万円未満の経費については省略されている。)。「オーダー(HMS)関連費用」は黄色で表示され,「オーダーメイド以外関連費用」は水色で表示され,「オ 業関連経費の内訳を記載したものである(ただし,10万円未満の経費については省略されている。)。「オーダー(HMS)関連費用」は黄色で表示され,「オーダーメイド以外関連費用」は水色で表示され,「オーダーメイド以外関連費用」のうちレディメイド- 245 -商品に関連する費用は「ファンデーションランジェリー」として薄水色で表示されている(なお,第25期においては,「プレゼント(景品)」という項目が別途設けられている。)。 「科目」欄記載の各経費の内容は,次のとおりである。 a「景品費」従前,一審被告において実施していたスタンプ制度(アフタークラブ)の景品交換実績であり,第25期上半期までの「景品費」は,この意味の経費である。第25期下半期以降の「景品費」は,プレゼント特典商品の実績である。 b「信販手数料」顧客が商品購入時に割賦購入やクレジット購入を希望した場合に,一審被告が負担する手数料の実績である。無金利や金利半額という販促施策を行った場合の金利優遇分はこの科目に計上されている。 c「商品券」一審被告は,第25期から第27期にかけて,HMS商品の販売促進のため,あるいはHMS商品の納期遅延による顧客への謝罪として,自社商品券をプレゼントしていた。「商品券」にはこの合計額が計上されている。 d「販売促進費」,「会議費」,「旅費交通費」及び「広告宣伝費」上記各科目には,毎月発生する通常費用は計上されていない。営業施策に関連する経費が計上されている。 (ウ)乙118(売上高/営業施策関連費用)乙118の上段のグラフは,各期の月次売上高と営業施策関連費用及び新製品の発売との相関関係を示したものである。上段の棒グラフの「レディメイド」は,オーダーメイド商品以外の商品の売上額であり,ボディケア化粧品やストッキングなどの売上額が含ま と営業施策関連費用及び新製品の発売との相関関係を示したものである。上段の棒グラフの「レディメイド」は,オーダーメイド商品以外の商品の売上額であり,ボディケア化粧品やストッキングなどの売上額が含まれている。 - 246 -乙118の下段のグラフは,営業施策関連費用の月次内訳を示したものである。 (エ)乙119(期別項目別損益比較表)乙119の主な項目の内容は次のとおりである。 a「売上高」「売上高」の欄では,各期における①オーダーメイド商品(HMS商品を含む。)の売上げと②オーダーメイド商品以外の商品の売上げが区分されて示されており,①がさらにHMS商品の売上げとその他の売上げに区分され,②がさらにレディメイド商品(「ファンデーション・ランジェリー」と記載のあるもの)の売上げとその他の売上げに区分されて示されている。 「売上比」は,「年間①+②」の売上げ全体に対する比率である。 b「売上原価」,「販管変動費」,「販管固定費」上記各項目では,HMS商品に固有の経費は黄色で表示され,レディメイド商品(ファンデーション・ランジェリー商品)に固有の経費は水色で表示されている。HMS商品及びレディメイド商品に共通する経費については,各期の売上比に応じた数字が計上されている。 c「営業利益率」HMS商品とレディメイド商品(ファンデーション・ランジェリー商品)のそれぞれの営業利益額をそれぞれの売上高で除したものである。 ウ一審原告の主張に対する判断一審原告は,乙116~119が信用できない理由として,①営業関連経費に関する偽装があること,②販管費と営業利益率に関する偽装があること,③商品券と値引券・ポイント付与制度に関する偽装があること,④プレゼント商品と景品費に関する偽装があること,⑤売上高に関する偽装- 247 -があること, 管費と営業利益率に関する偽装があること,③商品券と値引券・ポイント付与制度に関する偽装があること,④プレゼント商品と景品費に関する偽装があること,⑤売上高に関する偽装- 247 -があること,⑥HMS商品(ガードル)の販売開始時期に誤りがあること,⑦営業関連経費の発生時期と金額の誤り等があること,⑧乙119の「オーダー廃棄金額」に関する偽装があること,⑨乙119に「販促費(商品券)」を恣意的に計上していること,以上9点を主張する。以下,順次検討する。 (ア)営業関連経費に関する偽装があるとの主張につき一審原告は,HMS商品の販売のために支出されたという「オーダー(HMS)関連費用」はレディメイド商品等の売上高形成のためにも支出されたと評価すべきであり,営業関連経費を「オーダー(HMS)関連費用」と「オーダーメイド以外関連費用」とに分類することは不可能であると主張し,その理由として,顧客はHMS商品とレディメイド商品を併せて購入していたこと,顧客は,HMS商品を購入した当時未発売であったアイテムについてはレディメイド商品を購入していたこと,HMS商品のみを対象とした販売促進活動はほとんどされていないことを指摘する。 そこで検討すると,弁論の全趣旨によれば,「景品費」については,HMS商品とレディメイド商品とを分け,HMS商品に要した経費のみを「オーダー(HMS商品)関連費用」に計上していること,「販売促進費」についても,HMS商品に関するパンフレットやポスターなどを「オーダー(HMS)関連費用」として計上していること,カラーフィットデビューキャンペーン(乙40の1~6)については,HMS商品の販売促進が主たる目的であったが,「オーダー(HMS)関連費用」に計上したのは,プレゼント品に要した経費のみを「景品費」として計上したに ビューキャンペーン(乙40の1~6)については,HMS商品の販売促進が主たる目的であったが,「オーダー(HMS)関連費用」に計上したのは,プレゼント品に要した経費のみを「景品費」として計上したにとどまることが認められる。これらの認定事実によれば,HMS商品の販売に要したことが明らかな営業関連経費のみが「オーダー(HMS)関連費用」に計上されていることが認められるから,一審原- 248 -告指摘事項を考慮しても,乙116及び117における「オーダー(HMS)関連費用」と「オーダーメイド以外関連費用」の区分及びそれぞれの経費の額は合理的なものであるというべきであり,営業関連経費に関する偽装があるとの一審原告の主張は採用できない。 (イ)販管費と営業利益率に関する偽装があるとの主張につき一審原告は,乙119において,「販管固定費」をHMS商品とレディメイド商品とで分けることは,事業部制を採用していない一審被告においては無意味である旨主張する。しかし,特定の商品の利益率及び利益額を算出するに当たって,固定費を各商品の経費として割り付けるのは当然のことであり,事業部制を採用しているか否かとは関係がない。 また,一審原告は,特定の商品に結びついた費用ではない固定費を割り付けたのでは,各商品の属性として利益率が求められず,分析の指標としての意味がない旨主張する。しかし,一審被告が乙119等によりHMS商品とレディメイド商品の利益率等を求めようとしている理由は,HMS商品の利益率がレディメイド商品の利益率と変わらず,HMS商品が,一審原告が主張するような高利益商品ではないこと,したがって,一審被告がその販売方針の力点をHMS商品からレディメイド商品に移し,最終的にHMS商品の販売を中止したことが合理的であることを立証するためである。このよう うな高利益商品ではないこと,したがって,一審被告がその販売方針の力点をHMS商品からレディメイド商品に移し,最終的にHMS商品の販売を中止したことが合理的であることを立証するためである。このような趣旨に照らせば,固定費を各商品の経費として割り付けることには問題はなく,分析の指標としての意味はある。 さらに,一審原告は,販管費を売上比によって配分することは合理的でない旨主張する。しかし,ある商品の売上げが増加すれば,その分だけその商品の販売等に要する経費も増加すると考えることは,何ら不合理ではなく,信販手数料を含む販管費を売上比によって配分することは- 249 -合理的である。 したがって,販管費と営業利益率に関する偽装があるとの一審原告の主張は理由がない。 (ウ)商品券と値引券・ポイント付与制度に関する偽装があるとの主張につき一審原告は,一審被告が平成17年3月より商品券を「値引券」に変更し,また第29期の平成17年11月よりポイント制度を導入しているにもかかわらず,乙116~119にはこれらが全く反映されておらず,利益率が偽装されている旨主張する。 しかし,弁論の全趣旨によれば,一審被告は平成17年3月より値引券を発行しているが,監査法人から指摘を受けたこともあり,商品券とともに平成17年3月以降はこれらを売上高から直接控除する方式に会計処理を変更したこと,したがって,これらについては,売上高ベースで既に反映されていることが認められる。 また,弁論の全趣旨によれば,ポイント付与制度については,第29期は導入初年度であることから,乙116の「第29期月次推移表(実績)」の「販売促進費」という科目に計上されていること(甲43,乙116。乙116の「第29期月次推移表(実績)」の「景品費」●●●●●●●●●と同「販売促進費」●● 16の「第29期月次推移表(実績)」の「販売促進費」という科目に計上されていること(甲43,乙116。乙116の「第29期月次推移表(実績)」の「景品費」●●●●●●●●●と同「販売促進費」●●●●●●●●●の合計額●●●●●●●●●●が,甲43(第29期の有価証券報告書)の注記事項(損益計算書関係)の「販売促進費」598,793千円と「ポイント引当金繰入額」32,000千円の合計額630,793千円と一致する。),第30期以降は,乙116の「第30期月次推移表(実績)」の(その他経費内訳)という科目の「紹介手数料・ポイント引当金繰入額」という項目に計上されていること,第29期及び第30期以降とも,ポイント引当金はHMS商品とHMS以外の商品の売上比に応じて- 250 -割り付けられていることが認められる。 したがって,商品券と値引券・ポイント付与制度に関する偽装があるとの一審原告の主張は理由がない。 (エ)プレゼント商品と景品費に関する偽装があるとの主張につき一審原告は,乙117の経費内訳において,第25期の販売促進費欄の「プレゼント商品」は,本来他の期と同様「景品費」の項目に挙げるべきであるにもかかわらず,別途の項目が設けられ,黄色が塗られているのは第25期に一審被告がプレゼントのキャンペーンを行ったことを殊更に強調するための偽装である旨と主張する。 しかし,弁論の全趣旨によれば,一審被告においてプレゼントをキャンペーンとして始めたのは第25期からであり,同期においてはプレゼント商品を販売促進費に含めて会計処理していたこと,ところが,プレゼント商品の総額が増加し始めたことから,経費に対する認識を明確にするべく,第26期から「景品費」の科目に計上するようになったことが認められる。 したがって,一審原告の上記主張は理由がない。 ,プレゼント商品の総額が増加し始めたことから,経費に対する認識を明確にするべく,第26期から「景品費」の科目に計上するようになったことが認められる。 したがって,一審原告の上記主張は理由がない。 (オ)売上高に関する偽装があるとの主張につき一審原告は,乙116の期別月次推移表の「レディ売上」の数値には,レディメイド商品だけでなく,ボディケア化粧品・ストッキング・アウターウェアなどの売上高を上乗せした金額となっているとして,この数値に基づいて作成された乙118の棒グラフは,故意に誤導的効果を狙ったものである旨主張する。 しかし,一審被告が乙116を作成したのは,HMS商品の利益率を求めるために,HMS商品の売上高と営業関連経費の関連性を示すことにあるから,HMS商品の売上高とそれ以外の売上高が区別できれば必要十分である。したがって,「レディ売上」の中にレディメイド商品- 251 -(ファンデーション・ランジェリー)以外の商品(ボディケア化粧品・ストッキング・アウターウェアなど)の売上げが含まれていても問題はなく,一審原告の上記主張は理由がない。 (カ)HMS商品(ガードル)の販売開始時期に誤りがあるとの主張につき一審原告は,乙118のグラフ上,HMS商品(ガードル)の「あこがれ」と「ミーチュー」が発売されたのは平成14年2月とされているが,これは3月の誤りである旨主張する。 確かに,HMS商品(ガードル)の「あこがれ」と「ミーチュー」が発売されたのは,平成14年2月ではなく,同年3月である(当事者間に争いがない。)。しかし,同年3月のプレゼント費用と売上高の関係については,前記(1)ウのとおりである。 (キ)営業関連経費の発生時期と金額の誤り等があるとの主張につき一審原告は,乙116~118の営業関連経費の発生時期や金額が一 プレゼント費用と売上高の関係については,前記(1)ウのとおりである。 (キ)営業関連経費の発生時期と金額の誤り等があるとの主張につき一審原告は,乙116~118の営業関連経費の発生時期や金額が一審被告の主張に平仄を合わせて設定入力されていたり,誤って記載されているおそれが多分にある旨主張し,その例として,①平成14年8月に「ハイブリッドメジャー償却」としてHMSメジャーの償却費が計上されているのに,レディメイド商品のサンプルの償却費が計上されていないこと,②HMSが正常に販売されていた第25期から第27期までの間,レディメイド商品の売上構成比が,少なくとも●●●●●から●●●●●の間であったことからすれば,専ら同商品のための経費も相当程度発生していたと考えるのが常識的であるところ,乙116の下段の内訳を記載した乙117においては,レディメイドの経費はほとんどの月でゼロであり,第26期に至っては年間を通じてゼロであること,③乙116下段の営業施策販促費用は,乙116上段の各期月次推移表(実績)における経費のうち,営業関連費用を一覧表にまとめたもので- 252 -あるにもかかわらず,第25期の信販手数料に関し,上段よりも下段の方が●●●●●●●●増加しており,また,第26期の景品費,信販手数料,商品券に関し,乙116の上段よりも下段の方が●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と,それぞれ著しく増加しており,さらに,第27期の信販手数料に関し,乙116の上段よりも下段の方が●●●●●●●●●●増加していること,④乙119の売上原価「染め加工料」欄において,カラーフィットの染め加工料は計上されているのに,第28期以降に販売された多色展開商品である「リドル」や「デビュアランジェ」の染め加工料が記 ること,④乙119の売上原価「染め加工料」欄において,カラーフィットの染め加工料は計上されているのに,第28期以降に販売された多色展開商品である「リドル」や「デビュアランジェ」の染め加工料が記載されていないことを指摘する。 しかし,上記①については,乙119の「売上原価」欄において「試着費償却(レディー関連)」としてレディメイド商品のサンプルの減価償却費が計上されている。 上記②については,乙117にレディメイド商品とHMS商品の両者に共通する販促費用(乙117では色掛けされていない部分)は計上されており,レディメイド商品だけの販促費用がほとんどなかったのであれば乙117のような記載になるから,その記載が不自然とはいえない。 上記③については,乙116の下段と上段を比べると,第25期の信販手数料に関し,上段よりも下段の方が●●●●●●●●増加しており,また,第26期の景品費,信販手数料,商品券に関し,上段よりも下段の方が●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●増加しており,さらに,第27期の信販手数料に関し,上段よりも下段の方が●●●●●●●●●●増加していることが認められる。しかし,弁論の全趣旨によれば,このように上段よりも下段の金額が大きいのは,各月の売上げや経費等は発生ベースで集計計上されて- 253 -いるが,決算においては,翌期以降の売上げや経費等に回されることがあるため,このような差異が生じたものと認められる。 上記④については,弁論の全趣旨によれば,一審被告は「リドル」や「デビュアランジェ」を染色された製品として商社経由で仕入れていること,したがって,これらの染め加工料は製造原価の中に含まれていることが認められる。 以上のとおり,一審原告指摘の例①ないし④はいずれも失当であり,乙116 色された製品として商社経由で仕入れていること,したがって,これらの染め加工料は製造原価の中に含まれていることが認められる。 以上のとおり,一審原告指摘の例①ないし④はいずれも失当であり,乙116~118の営業関連経費の発生時期や金額が一審被告の主張に平仄を合わせて設定入力されていたり誤って記載されているおそれが多分にある旨の一審原告の主張は理由がない。 (ク)乙119の「オーダー廃棄金額」に関する偽装があるとの主張につき一審原告は,①乙119の売上原価の欄には,多額の「オーダー廃棄金額」が計上されているところ,HMS商品は,オーダーメイドという商品の性質上多額の廃棄が発生するようなことはなかった,②一審被告は,第27期(平成16年8月期)に,製品廃棄損1億6175万2000円を特別損失に計上しているところ,乙119にはレディメイド商品に関する廃棄損は記載されていないから,この製品廃棄損は,ほぼレディメイド商品に関するものである,③そうすると,一審被告は,HMS商品の売上高からは「オーダー廃棄金額」を売上原価として控除する一方,レディメイド商品の売上高からは製品廃棄損を控除せずに,各営業利益率を比較して算出しているということになる,と主張する。 しかし,証拠(乙88)及び弁論の全趣旨によれば,HMS商品であるからといって,製品の廃棄が発生しないということはなく,採寸ミスやフィット感の違いによる返品等の製品の廃棄が発生していたと認められるから,乙119の売上原価の欄に「オーダー廃棄金額」が計上され- 254 -ていることは不自然ではない。そして,弁論の全趣旨によれば,第27期の上記「オーダー廃棄金額」●●●●●●●●●●●●のうち,特別損失に該当するものが製品廃棄損1億6175万2000円であり,特別損失に該当しないもの(会計上 そして,弁論の全趣旨によれば,第27期の上記「オーダー廃棄金額」●●●●●●●●●●●●のうち,特別損失に該当するものが製品廃棄損1億6175万2000円であり,特別損失に該当しないもの(会計上は製造原価に含まれるもの)が●●●●●●●●●●●●であったので,甲7(有価証券報告書[平成15年9月1日から平成16年8月31日まで]50頁)では,製品廃棄損1億6175万2000円を特別損失に計上していたものと認められる。 したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。 (ケ)乙119の「販促費(商品券)」に関する恣意的な計上があるとの主張につき一審原告は,乙119には「販促費(商品券)」が専らHMS商品限定施策として計上されているが,この商品券はレディメイド商品の購入のためにも使用できたと主張する。 しかし,弁論の全趣旨によれば,乙119に「販促費(商品券)」HMS製品限定施策として計上されている「販促費(商品券)」は,HMS製品の販売促進のために配布したものに限定して計上したものと認められるから,恣意的なものとは認められない。 (コ)以上のとおり,一審原告が,乙116~119を信用できない理由として挙げた9点は,HMS商品(ガードル)の「あこがれ」と「ミーチュー」の発売時期の点を除いては,いずれも理由がないものであり,その他に乙116~119の信用性を否定すべき事情は見当たらない。 エHMS商品の利益率証拠(乙116,117,119)及び弁論の全趣旨によれば,HMS商品とレディメイド商品の営業利益率は,次のとおりであったことが認められる。 HMS商品レディメイド商品差- 255 -第24期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第25期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第26期●●●●●●● められる。 HMS商品レディメイド商品差- 255 -第24期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第25期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第26期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第27期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第28期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第29期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第30期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●7期平均●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●7期通期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●オ以上のとおり,7期通期の営業利益率(7期の売上総利益の合計を7期の売上高の合計で除して得られる営業利益率)は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(4) 結論 以上の(1)~(3)認定の事実に基づき,一審被告がHMS商品の販売を抑制した後についても,HMS商品の実際の売上高をもとに算定すべきであるかどうかについて判断する。 ア従業者等は,契約,勤務規則その他の定めにより,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させたときは,相当対価の支払を受ける権利を取得する(旧35条3項)。 本件においても,前記のとおり,一審被告の従業員であった一審原告は,本件発明1については平成12年11月16日までに,本件発明2については平成13年11月16日までに,それぞれ各発明を行い,そのころ特許を受ける権利を使用者たる一審被告に譲渡し,譲渡を受けた一審被告は特許庁に特許出願をし,その結果,特許権(本件各特許権)を取得しているのであるから,一審原告は一審被告に対し,上記譲渡日時ころ本件- 256 -各特許につき「特許を受 渡し,譲渡を受けた一審被告は特許庁に特許出願をし,その結果,特許権(本件各特許権)を取得しているのであるから,一審原告は一審被告に対し,上記譲渡日時ころ本件- 256 -各特許につき「特許を受ける権利」を譲渡し,その譲渡契約の時点で「相当対価」の支払を求める債権を取得したことになる。 したがって,「相当対価」の支払を求める債権は,特許を受ける権利等が従業者等が使用者等に承継された時に客観的に算定可能なものとして発生しているというべきである。 ただし,その「相当対価」の算定資料となる「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」(同条4項)については,特許を受ける権利が,将来特許を受けることができるか否かも不確実な権利であり,その発明の独占的実施により使用者等が将来得ることができる利益の額をその承継時に算定することが極めて困難であることからすると,当該発明の独占的実施による利益を得た後の時点において相当対価の額を判断する場合に,これら独占的実施による利益の額を認定し,これをしん酌して,「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」を認定することは,旧35条4項の文言解釈としても許容し得る合理的な解釈であり,上記「利益の額」を「その発明により使用者等が実際に受けた利益の額」から算定することも,合理的な算定方法であるというべきである。 ところで,使用者等が,その時々の経済情勢,市場動向,競業者の動向等,経営状況の変化に対応していかなる経営方針をもって臨むかは,基本的に経営者としての使用者等の経営判断に委ねられた事項である。使用者等が従業者から譲り受けた職務発明を実施するか否かも,このような経営判断の一環として決定し得る事項であるから,当該発明を実施するか否か,実施するとしてどの程度の規模で実施するか,将来的にその規模を拡大していくか縮 り受けた職務発明を実施するか否かも,このような経営判断の一環として決定し得る事項であるから,当該発明を実施するか否か,実施するとしてどの程度の規模で実施するか,将来的にその規模を拡大していくか縮小していくかは,基本的に使用者等がその時々の具体的状況に応じて,その裁量により決定していくべきものである。したがって,使用者等がある職務発明の実施を抑制するような方針をとり,結果として,当該発明の独占的実施による利益が減少したとしても,それが使用者- 257 -等において,もっぱら発明者である従業者等に対する相当対価の支払を免れることを目的としたものであるなど発明者に対する信義に反するような特段の事情が認められない限り,「相当対価」の額の算定に際しては,上記方針を採用した結果として実際に使用者等が当該発明の独占的実施によって得た利益の額を基礎として算定すべきであって,販売抑制がなかった場合を想定し,その場合における当該発明の独占的実施によって得る利益の額を仮に想定してこれを基礎に相当の対価の額を算定するのは,日々変動する販売環境の中での仮定論であって算定自体は極めて困難であるのみならず,想定自体も相当でない。 この点について,一審原告は,法は,使用者等が権利の最大限の利用を図ることを前提としていると主張するが,既に述べたところから明らかなとおり,これを採用することはできない。 イそこで,以上の見地に立って本件についてみると,前記(1)認定のとおり,一審被告は,平成16年9月ころ販売政策を変更し,HMS商品からレディメイド商品へと販売の力点を移し,以後HMS商品の新商品の発売を中止し,最終的に平成20年2月をもってHMS商品の販売を打ち切ったことが認められる。 前記(1)認定のとおり,HMS商品は,顧客吸引力を有しているもので,一審被告に 以後HMS商品の新商品の発売を中止し,最終的に平成20年2月をもってHMS商品の販売を打ち切ったことが認められる。 前記(1)認定のとおり,HMS商品は,顧客吸引力を有しているもので,一審被告においてHMS商品を力を入れて販売していた時期には,売上げを伸ばし利益を確保していたのであり,また,前記(2)のとおり,HMS商品には一審被告が主張する「根本的欠陥」というようなものも存するとは認められないのであるから,販売を抑制する必要はなかったとの一審原告の主張にも肯認すべき点があるということができる。 しかし,前記(1)ア(エ)認定のとおり,一審被告の販売政策の変更は,平成16年7月に発売されたレディメイド商品の新商品(デコルテ)の販売が好調であったことがその一因となっているものである。また,前記3- 258 -(2)ア(キ)認定のとおり,Eは平成15年8月に代表取締役会長を退任し,Wが同年9月に一審被告に再度入社し商品企画開発部長となっており,このような一審被告の経営陣の交代が上記販売政策の変更に影響を与えているものと推認することができるが,経営陣が変われば経営方針が変わるのは,ある意味では当然のことであって,そのことを不当ということはできない。さらに,前記(2)のとおり,HMS商品には,一審被告が主張する「根本的欠陥」というようなものは存しないとしても,課題というべきものはあり,HMS商品といえども欠点がないというわけではなく,前記(3)のとおり,利益率もレディメイド商品と差がないものである。そうすると,一審被告が,経営者の交代に伴ないHMS商品の販売抑制策をとり,最終的にその販売を中止する措置をとったことについて,もっぱら発明者である従業者等に対する相当の対価の支払を免れることを目的としたものであるなど発明者に対する信義に反する S商品の販売抑制策をとり,最終的にその販売を中止する措置をとったことについて,もっぱら発明者である従業者等に対する相当の対価の支払を免れることを目的としたものであるなど発明者に対する信義に反するような事情があるとまで認めることはできない。 ウしたがって,本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当対価の額の算定に当たっては,一審被告がHMS商品の販売を抑制した後についても,HMS商品の実際の売上高をもとに算定すべきであり,一審被告がHMS商品の販売を終了した平成20年2月以降については,その売上げはないから,これを零として相当の対価の額を算定すべきことになる。 争点(6)(本件各特許の無効理由の存否とその相当対価の額への影響の有無・程度)について(1)特許に無効理由がある場合における職務発明報酬対価請求訴訟における対価の算定については,次のように解するのが相当である。 ア特許法は,登録により成立した特許権の消滅事由につき,特許権自体が内包する瑕疵に基づく事由としては,特許庁による無効審決の確定(特許法125条)しか定めておらず,それ以外の消滅事由はいずれも特許権の- 259 -瑕疵とは無関係な事由(存続期間の満了[67条],特許料の不納付[112条4項],相続人の不存在[76条],特許権の放棄[97条1項])にすぎないのであって,現実に無効審決が確定するまでは,その存続中,当該特許発明を実施(許諾又は禁止)する権利を専有することができる(68条)から,たとえ特許権に無効理由があったとしても,当該特許権の行使の結果生じる独占の利益を享受できることは当然のこととして許容されるのである。そして,旧35条3項及び4項の趣旨が,従業者等が,特許を受ける権利等の譲渡時において,当該権利を取得した使用者等が当該発明の実施を独占するこ を享受できることは当然のこととして許容されるのである。そして,旧35条3項及び4項の趣旨が,従業者等が,特許を受ける権利等の譲渡時において,当該権利を取得した使用者等が当該発明の実施を独占することによって得られると客観的に見込まれる利益のうち同条4項所定の基準に従って定められる一定範囲の金額について,これを当該発明をした従業者等において確保できるようにしたものであることに鑑みれば,当該特許権を実施して現に得た利益について,特許権に無効理由があるからといって上記使用者等が得るべき発明の独占実施による利益から殊更に除外し,これを使用者のみに留保・帰属させることを正当化できる理由はないというべきである。また,有効な特許を受ける権利等の存在を前提にこれの譲渡を受け,自ら特許権を取得して実施してきた使用者等が,職務発明報酬対価請求訴訟を提起されるに至って殊更に無効理由の存在を主張して当該利益の従業者等への配分を免れようとすることは,特許を受ける権利等を譲り受けたときにはおよそ予定していなかった事情を主張するもので,禁反言の見地からも容認できるものではない。したがって,職務発明報酬の対価額算定という場面においては,使用者等が特許権を現に実施して利益を得ている場合には,無効理由が存在するためおよそ独占の利益の発生を考慮できないような例外的な事情のない限り,当該利益には特許権に基づく上記利益を含むと認めるべきである。 イもっとも,特許権の通常実施権設定交渉(ライセンス交渉)を行う場面等においては,相手方から無効理由の存在を指摘されるなどして実施料が- 260 -減額されたり,ライセンス交渉自体が拒絶されることがあり得るところであり,したがって独占の利益を算定する前提としての仮想実施料率を決する場面においては,無効理由の存否がその多寡に影響を与 260 -減額されたり,ライセンス交渉自体が拒絶されることがあり得るところであり,したがって独占の利益を算定する前提としての仮想実施料率を決する場面においては,無効理由の存否がその多寡に影響を与えることがあり得るということはできる。しかし,ライセンス交渉等の場面における無効理由の主張は,いざ交渉が決裂した場合に双方から提起されるかもしれない特許権侵害訴訟ないし無効審判において無効判断がなされる可能性があることを指摘するという,いわば仮定的・暫定的なものにすぎず,しかも無効審判手続における訂正の手続等,制度的にも無効理由を回避する手段が留保されていること等を考慮すると,無効理由の指摘自体,その根拠が確定的とまではいい難い場合もあり得る。これらの事情に鑑みれば,無効理由の有無に関する事情は,仮想実施料率を認定するに当たり総合考慮すべき諸事情の中の一要素となり得るとしても,その影響を過大視することはできない。 (2)ところで,本件特許権1については,無効審判請求(請求人Z,被請求人マルコ株式会社[一審被告],被請求人補助参加人X[一審原告])によって無効審決が出され,無効審決が確定している(確定日平成21年1月9日,乙125)。この点は,後記8において仮想実施料率の算定に当たって考慮することとする。 (3)また,本件特許権2について一審被告は,無効理由を主張するが,次のとおり無効理由が存するとは認められない。 ア本件明細書2(甲3)の記載は,前記3(3)アのとおりであるところ,本件特許2の請求項1は,「身頃のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片 節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能- 261 -とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。」というものであり,この記載から,ヒップカップ計測手段は,股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能とされていることが認められるから,ヒップカップ計測手段は,左右の各臀部のヒップカップサイズを測定するものであり,ここで「調節可能」とされているヒップカップサイズも左右の各臀部のヒップカップサイズをそれぞれ意味し,ここでいう「ヒップカップサイズの調節」とは,左右の各臀部のヒップカップサイズをそれぞれ個別に調節することを意味することは明らかというべきである。そして,この「ヒップカップサイズの調節」が,個々人の体型に応じて調節するものであることも明らかというべきである。 そして,本件明細書2には,前記3(3)ア(ウ)のとおり,「…ヒップカップサイズとは,(ヒップサイズ)-(脚の付根の水平方向における周長寸法)で表され,脚の付根の水平方向における周長が短い程,ヒップの膨らみの具合は大きくなり,ヒップカップサイズは大きくなる。また,ヒップ部とは,後身のうち左右一対のヒップカップ部と,その間の臀裂部とを含む概念であり,ヒップカップとは,臀部の膨らみを包み込む部位を意味する」(段落【0018】)と記載されているが,これは,脚の付根の水平方向における周長とヒップサ ップカップ部と,その間の臀裂部とを含む概念であり,ヒップカップとは,臀部の膨らみを包み込む部位を意味する」(段落【0018】)と記載されているが,これは,脚の付根の水平方向における周長とヒップサイズ及びヒップカップサイズの大きさの一般的な関係について述べたにすぎず,本件特許2の請求項1の記載から認められる「ヒップカップサイズ」の意義に関する上記認定を左右するものではない。 イ乙138(特開平8-260206号公報,発明の名称「イージオーダー化を可能にしたファンデーションおよびその縫製方法」,出願人株式会社ダッチェス,公開日平成8年10月8日)には,以下の記載があ- 262 -る。 (ア)産業上の利用分野「本発明は,サイズ調節によるイージオーダー化を可能にしたガードル,ボディスーツ,ウェストニッパー,水着等のファンデーションおよびその縫製方法に関する。」(段落【0001】)(イ)従来の技術・「従来,図4に示したように,ガードル,ボディスーツ,ウェストニッパー,水着等のファンデーション等においては,それらを構成する素材自身の伸縮性によって僅かな寸法上の柔軟性はあるものの,着用者の体格の個体差や着用者自身の体格の変化に適応させるためには数種類の寸法(ボディスーツ等においては図中Fなる寸法が適否を決する。)のものを揃える必要があった。」(段落【0002】)。 ・「…本発明では,時間と労力をさほど要することなく安価で簡単に縫製できて,さらにはデザイン的な組合せ変化をも楽しめるイージオーダー化を可能にしたファンデーションおよびその縫製方法を提供するものである。」(段落【0003】)(ウ)課題を解決するための手段「上記課題を解決するために,本発明は,少なくともトップ部,ウェスト部およびボトム部の3つの部片からなるボディスーツ 法を提供するものである。」(段落【0003】)(ウ)課題を解決するための手段「上記課題を解決するために,本発明は,少なくともトップ部,ウェスト部およびボトム部の3つの部片からなるボディスーツ等のファンデーションにおいて,前記ファンデーションは未縫製の横切断部にて少なくとも前記3つの部片に分割されて形成されるとともに,これら部片間の対向する前記各横切断部に隣接して該横切断部の重合度合いを選択して調節自在に重合する横縫製代を形成したことを特徴とし,また,前記各部片のそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部をさらに設け,これら各縦切断部に隣接して該縦切断部の重合度合いを選択して調節自在に重合する縦縫製代を形成したことを特徴とするもので,これらを課題解決- 263 -のための手段とするものである。また本発明は,未縫製の横切断部にて少なくともトップ部,ウェスト部およびボトム部の前記3つの部片に分割されたボディスーツ等のファンデーションの縫製方法において,これら部片間の対向する前記各横切断部に隣接して形成された該横切断部の重合度合いを選択して調節自在な横縫製代を重合させて縫製することを特徴とし,また,前記少なくとも3つのトップ部,ウェスト部およびボトム部の各部片に形成された人体の縦方向に沿う縦切断部に隣接して形成された該縦切断部の重合度合いを選択して調節自在な縦縫製代を重合させて縫製することを特徴とするもので,これらを課題解決のための手段とするものである。」(段落【0004】)(エ)作用・「本発明では,少なくともトップ部T,ウェスト部Wおよびボトム部Bの3つの部片からなるボディスーツ等のファンデーション1において,前記ファンデーション1は未縫製の横切断部4,5にて少なくとも前記3つの部片T,W,Bに分割されて形成されるとともに,こ びボトム部Bの3つの部片からなるボディスーツ等のファンデーション1において,前記ファンデーション1は未縫製の横切断部4,5にて少なくとも前記3つの部片T,W,Bに分割されて形成されるとともに,これら部片T,W,B間の対向する前記各横切断部4,5に隣接して該横切断部4,5の重合度合いを選択して調節自在に重合する横縫製代T4,W4およびW5,B5を形成したことにより,未縫製の横切断部4,5にて少なくともトップ部T,ウェスト部Wおよびボトム部Bの前記3つの部片に分割されて形成された対向する前記各横切断部4,5に隣接して形成された該横切断部4,5の重合度合いを選択して調節自在な横縫製代T4,W4およびW5,B5を重合させて縫製することができるので,ボディスーツ1の丈(F)を着用者の背丈に応じて適切に適合させると同時に,前記横縫製代T4,W4およびW5,B5を人体の前後および左右にて各別にその重合度合いを選択して調節して縫製するならば,人体の個体差による体形の曲がりや肉付- 264 -きに対しても,きめ細かに適応させることができる。」(段落【0005】)・「また,本発明では,前記各部片T,W,Bのそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部6をさらに設け,これら各縦切断部6に隣接して該縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重合する縦縫製代T6,W6,B6を形成したことにより,これら縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在な縦縫製代T6,W6,B6を重合させて縫製することができるので,着用者のバストやウェストおよびヒップ毎の個体差に応じて,さらにきめ細かに対応することができる。このように,本発明によれば,既成の半製品である分割形成された各部片を準備するだけで,まるで高価なオーダーメイドによって縫製したかのごとく着用者に適合したファンデ にきめ細かに対応することができる。このように,本発明によれば,既成の半製品である分割形成された各部片を準備するだけで,まるで高価なオーダーメイドによって縫製したかのごとく着用者に適合したファンデーションを安価に得ることができる。 しかも,異なった生地や色彩の各部片を組み合わせてデザイン的な組合せ変化をも楽しめる他,例えば,生理用のパンツ部との機能的な組合せ等によってその利用範囲をさらに拡大することもできる。」(段落【0006】)(オ)実施例・「…さらに,上記各部片T,W,Bはそれら自体を製品として着用者に供することもできる他,各部片T,W,Bを試着パーツとして着用者の寸法取りのみに供する場合には,上記した試着時の各縫製代をマークしたり,読取り記録をした後,これを製品としての各部片の縫製代に転記してこれらを縫製することになる。」(段落【0008】)・「…本実施例では,図1の第1実施例のものに加えて,前記各部片T,W,Bのそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部6をさらに設け,これら各縦切断部6には前記実施例の横切断部と同様に,各縦切- 265 -断部に隣接して該縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重合する縦縫製代T6(トップ部),W6(ウェスト部),B6(ボトム部)を形成したものである。」(段落【0009】)・「…本実施例によれば,ファンデーションの縦寸法および体形の曲がりや肉付きに対応させることができるばかりでなく,個体差によるバスト,ウェストおよびヒップの各サイズに対してもきめ細かに適応させて縫製することができるので,各部片T,W,Bについて,あまり多数のサイズのものを揃える必要がなく,経済的である。」(段落【0010】)・「以上,本発明の各実施例を説明してきたが,本発明の趣旨の範囲内において,横あるいは 各部片T,W,Bについて,あまり多数のサイズのものを揃える必要がなく,経済的である。」(段落【0010】)・「以上,本発明の各実施例を説明してきたが,本発明の趣旨の範囲内において,横あるいは縦切断部の位置,形状,数や,横および縦の縫製代の幅,形状,材質については適宜採用できる他,縫製代の縫製形態についても,例えば縫製に代えて高周波接合,熱溶着等が採用できる。また可能ならばマジックテープ(登録商標)等による接合が各縫製代に採用できること言うまでもない。」(段落【0011】)ウ上記イの記載及び乙138の図面の記載からすれば,乙138記載のファンデーションは,従来のガードル,ボディスーツ,ウエストニッパー,水着等のファンデーション等においては,着用者の体格の個体差や着用者自身の体格の変化に適応させるために数種類の寸法のものを揃える必要があるという課題を解決するためのもので,少なくともトップ部,ウエスト部及びボトム部の三つの部片からなるボディスーツ等のファンデーションにおいて,未縫製の横切断部にて少なくとも上記三つの部片に分割されて形成されるとともに,これら部片間の対抗する各横切断部に隣接して該横切断部の重合度合いを選択して調節自在に重なり合わせる横縫製代を形成し,また,各部片のそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部をさらに設け,これらの各縦切断部に隣接して該縦切断部の重合度合いを選択して調- 266 -節自在に重なり合わせる縦縫製代を形成して,イージオーダー化を可能にしたものであると認められる。 また,上記イの記載及び乙138の図面の記載からすれば,乙138記載のファンデーションのボトム部片Bには,身頃に縦切断部6が設けられ,この縦切断部6に隣接して該縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重なり合わせる縦縫製代B6があるが, からすれば,乙138記載のファンデーションのボトム部片Bには,身頃に縦切断部6が設けられ,この縦切断部6に隣接して該縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重なり合わせる縦縫製代B6があるが,縦切断部6は,股開口部3まで達するものではなく,左右の各臀部のヒップカップサイズをそれぞれ個別に調節可能とするものではないから,本件特許2の請求項1における「ヒップカップサイズの調節」を可能とするものではない。 そうすると,本件特許2の請求項1の発明と乙138に記載されている発明とは,「見頃のヒップ部にサイズを調節可能な手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプル」の点で一致するにすぎないというべきであって,「本件特許2の請求項1の発明は,ヒップカップサイズを計測するものであり,その具体的手段として,身頃のヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記されるように構成されるのに対して,乙138に記載されている発明は,ヒップサイズを計測するものであり,上記具体的手段を備えていない」点で相違する。本件特許2の請求項1の発明と乙138に記載されている発明の一致点,相違点に関する一審被告の主張(前記第3,1(6)エ(イ)a及び(ウ)b)を採用することはできない。 なお,本件特許2の請求項1の発明と乙138に記載されている発明とは,一審被告が主張するとおり,①「ヒップ部が切り込みを入れて分割され」ている点で一致し,②「分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で」ある点でも一致するということができるが,これ- 267 -らは「身頃のヒップ部における 込みを入れて分割され」ている点で一致し,②「分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で」ある点でも一致するということができるが,これ- 267 -らは「身頃のヒップ部におけるサイズを調節可能な手段」ということができるから,上記の一致点の判断に含まれている上,身頃のヒップ部にサイズを調節可能な計測手段を設けたとはいっても,該計測手段は,本件特許2の請求項1の発明では,「ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連絡部材を介して着脱自在に止着可能」としたものであるのに対し,乙138に記載されている発明では,「各部片T,W,Bのそれぞれに人体の縦方向に沿う縦切断部6をさらに設け,縦切断部6の重合度合いを選択して調節自在に重合するマジックテープ等の縦縫製代T6,W6,B6を形成」したものであって,切り込みを入れて分割し,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能とされている具体的な態様は大きく異なるのであるから,上記一致点に加えて,「ヒップ部が切り込みを入れて分割し,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能である」という点を一致点とすることが相当であるとはいえない。 エまた,乙139(国際公開99/58007号,発明の名称「人体の支持・補正機構及びこれを備えた衣服機構」,出願人a,国際公開日平成11年11月18日)には,「…本発明は,伸縮素材を用い,正中位の形に即して左右身頃の裁断線を設け,左右身頃の正中位を挟む股間部付近は,接合前の状態で互いに遊離した形状とし,前記左右身頃の接合によって股間部と左右大腿部との間の形状に準じた形成をなし,臀突位上の臀突部より臀部下辺に至る部位に切替えダーツ部を設けて臀部形状に準じた形状とし, 状態で互いに遊離した形状とし,前記左右身頃の接合によって股間部と左右大腿部との間の形状に準じた形成をなし,臀突位上の臀突部より臀部下辺に至る部位に切替えダーツ部を設けて臀部形状に準じた形状とし,着用時に機構全体に引張(緊張)関係が生じ,臀列部を含めボトム各部に密接すると共に,腹部及び臀部下辺に補正を促す面圧力が加わるボトム機構を提供するものである。」(13頁下2行~14頁5行)及び「…臀突位53上の臀突部54の下辺には臀部の丸みに準じた形状を達成するために,ダーツ65が設けられている。」(28頁3行~4行)の記- 268 -載があり,図20,図21及び図22には,臀突部54の下辺に設けられたダーツ65が図示されているから,ダーツ65は,股口からヒップカップ部の略中央に向かう切り込みということができるが,分割された一片と他片とを連結部材を介して着脱自在に止着可能とすることや計測のために用いることは,記載も示唆もされていない。また,ダーツ65は,標準的な臀部の丸みに準じた形状とするためのものであると解される。そうすると,乙139には,個々人の体型に応じてヒップカップサイズを調節することは記載されておらず,示唆もされていない。 前記乙138には,前記イ(オ)のとおり,縦切断部の位置,形状を変更できる旨が記載されているが,具体的にどのような変更できるかについては,示唆さえされていない。また,乙138には,切り込み(ダーツ)がヒップサイズの計測のために用いられること,「ヒップ部が切り込みを入れて分割し,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能である」ことが記載されており,それは個々人の体型に応じて調節するものであるとしても,その具体的な態様は,上記ウのとおり本件特許2の請求項1の発明とは大きく異なるものであり,また乙13 在に止着可能である」ことが記載されており,それは個々人の体型に応じて調節するものであるとしても,その具体的な態様は,上記ウのとおり本件特許2の請求項1の発明とは大きく異なるものであり,また乙138にはそもそも本件特許2の請求項1における「ヒップカップサイズの調節」をすることは記載されていない。 そして,乙140(実公昭51-9368号公報,考案の名称「イージーオーダー用採寸合せ基本ズボン」,出願人大賀株式会社,公告日昭和51年3月12日)には,ウエスト寸法を測定するためのイージーオーダー用採寸合せ基本ズボン体に関する発明が記載されているが,個々人の体型に応じてヒップカップサイズを調節することが記載,示唆されているものではない。 そうすると,乙138~140に記載された発明に基づき,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が本件特許2- 269 -の請求項1の発明を容易に発明することができたと認めることはできない。 オなお,乙141の1(米国特許第3763866号明細書,1973年10月9日発行)には,右太もも用調整可能サポート50a,左太もも用調整可能サポート50b及び前面の中央上方端の裂け目に形成されて重ね合わせることができるフラップ10e,10fが記載されているが,個々人の体型に応じてヒップカップサイズを調節することが記載,示唆されているものではない。 甲13(乙142,特開平8-158111号公報,発明の名称「ファウンデーション」,出願人株式会社ダッチェス,公開日平成8年6月18日),乙143(「Dublevé(デューブルベ)」と称する株式会社ワコールのセミオーダーシステムに関するカタログ,平成12年8月1日発行),乙144(特開平2-259102号公報,発明の名称「着脱自在のブラジャー」,出願 evé(デューブルベ)」と称する株式会社ワコールのセミオーダーシステムに関するカタログ,平成12年8月1日発行),乙144(特開平2-259102号公報,発明の名称「着脱自在のブラジャー」,出願人b,公開日平成2年10月19日),乙145(「手作りランジェリー」レディブティックシリーズ通巻1404号,1999年[平成11年]3月20日発行),乙149(実願昭50-84855号[実開昭52-3835号]のマイクロフィルム,考案の名称「X字形基本によるブラジャー用パターン」,出願人g,公開日昭和52年1月12日)は,いずれもブラジャーに関するものであり,乙146(近藤れん子「近藤れん子の立体裁断と基礎知識」,1998年[平成10年]12月15日五版株式会社モードェモード社発行)は,ダーツを用いて乳房に応じた衣服形状を調整することが記載されたものであって,いずれも個々人の体型に応じてヒップカップサイズを調節することが記載,示唆されているものではない。 乙147(実願昭50-21222号[実開昭51-104125号]のマイクロフィルム,考案の名称「ヒップ部にダーツを有するガード- 270 -ル」,出願人株式会社ワコール,公開日昭和51年8月20日)には,「股布付け位置附近の下方よりヒップの山に向ってダーツを形成したので着用時のアウター部を美麗に保持すると同時に所謂ヒップの山附近にダーツによるゆとり部5が招来し,着用時のヒップが押圧されない自然な丸味が期待できるのである。」(明細書3頁1行~6行)との記載があり,図1及び図2には,下方よりヒップの山方向に向かって左右同長に切欠したダーツ3が図示されているが,このダーツ3は,股口から設けられたものでない上,分割された一片と他片とを連結部材を介して着脱自在に止着可能とすることや計測のために の山方向に向かって左右同長に切欠したダーツ3が図示されているが,このダーツ3は,股口から設けられたものでない上,分割された一片と他片とを連結部材を介して着脱自在に止着可能とすることや計測のために用いることは,記載も示唆もされていないのであって,個々人の体型に応じてヒップカップサイズを調節することが記載,示唆されているものではない。 乙148(特開平9-209203号公報,発明の名称「ガードル」,出願人グンゼ株式会社,公開日平成9年8月12日)には,「…後身頃3における臀部4の部位で,且つ裾部10付近にダーツ12を形成されることにより,臀部4の部位に立体的な膨らみ部が形成されて臀部の包み込み効果並びに補正や造形効果が向上し,着用感の優れたガードルが得られるのである。」(段落【0006】)との記載があり,図1及び図2には,裾部付近に設けられたダーツ12が図示されているが,分割された一片と他片とを連結部材を介して着脱自在に止着可能とすることや計測のために用いることは,記載も示唆もされていないのであって,個々人の体型に応じてヒップカップサイズを調節することが記載,示唆されているものではない。 したがって,乙138に記載された発明に上記の各発明を適用したとしても,個々人の体型に応じてヒップカップサイズを調節するという本件特許2の請求項1の発明を想到することができるものではない。 また,乙158(特開平8-311704号公報,発明の名称「ガード- 271 -ル」,出願人株式会社カドリールニシダ,公開日平成8年11月26日)及び乙159(特開2001-49503号公報,発明の名称「ボトム衣類及びその製造方法」,出願人グンゼ株式会社,公開日平成13年2月20日)から,本件特許2出願当時(平成14年2月13日)ヒップカップという概念が知られていた 49503号公報,発明の名称「ボトム衣類及びその製造方法」,出願人グンゼ株式会社,公開日平成13年2月20日)から,本件特許2出願当時(平成14年2月13日)ヒップカップという概念が知られていたことが認められ,また,上記乙159には,ギャザー8によってヒップカップ部28が前方に引っ張られることにより臀部の左右の膨らみを美しく整形できる点が記載されており,さらに,乙160(実開昭58-134701号公報,発明の名称「体型採寸用立体メジャー」,出願人日本訪販商事株式会社,公開日昭和58年9月10日)から,本件特許2出願当時,注文製作において臀突位部及び脚の付け根の水平方向における周長寸法を計測することが知られていたことが認められるとしても,既に述べたところからすると,本件特許2の請求項1は当業者が容易に発明をすることができたものということはできないとの上記判断を左右するものではない。 カ本件特許2の請求項2は請求項1を引用する従属項であり,以下同様に,請求項3は請求項1又は2を,請求項4は請求項1~3を,請求項5は請求項4を,請求項6は請求項1~5を,請求項7は請求項1~6を,請求項8は請求項7を,請求項9及び請求項10は請求項7又は8を,請求項11は請求項1~10を,請求項12は請求項1~11を引用する従属項であるから,上記のとおり,本件特許2の請求項1について,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件特許2の請求項2~12も,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)一審原告は,本件においては,実質的に特許権者自身であるといえる,一審被告の専務の経歴を持つZが特許無効審判請求を行い,被請求人たる一審被告は何らの応答をせず,そのために本件特許1につき無効審決が確定し- 272 -たが ,実質的に特許権者自身であるといえる,一審被告の専務の経歴を持つZが特許無効審判請求を行い,被請求人たる一審被告は何らの応答をせず,そのために本件特許1につき無効審決が確定し- 272 -たが,仮にそのような行動がなければ,本件特許1は,なお独占力を発揮し続け,一審被告に利益をもたらし続けたものと考えられると主張する。 しかし,本件特許1の無効審決が確定したのは前記のとおり平成21年1月9日であって,一審被告がHMS商品の販売を終了した平成20年2月より後であるから,無効審決が確定したことが本件における対価の算定の終期に影響することはない。もっとも,無効審決が確定したことによって本件特許1に無効理由があることになる(誰が特許無効審判請求を行なったかとは関係がない)から,このことは,後記8のとおり仮想実施率の算定には影響するというべきである。 (5)また,一審原告は,本件発明2は,主としてガードル及びボディスーツに関するものであるが,その請求項7ないし10は,トップ部(ブラジャー)を組み合わせたものであり,また,市場における価値は両者が一体となって初めて十全に発揮されるものであることを理由として,HMS商品は,実質的に,本件発明2のみによっても独占可能であると主張する。 しかし,本件特許2の特許請求の範囲は,前記3(3)アのとおりであって,その請求項7ないし10は,トップ部(ブラジャー)が構成に含まれているが,トップ部(ブラジャー)のみの請求項はなく,ボトム計測サンプルが必ず含まれているから,HMS商品のうち,ブラジャーのみのものは,本件発明2の実施品ということができない。したがって,HMS商品(ブラジャー)が本件発明2によっても独占可能であるとは認められない。 争点(7)(仮想実施料率)について(1)一審被告は,本件発明1に 明2の実施品ということができない。したがって,HMS商品(ブラジャー)が本件発明2によっても独占可能であるとは認められない。 争点(7)(仮想実施料率)について(1)一審被告は,本件発明1について無効理由が存在することは確定し,本件発明2にも無効理由が存在するから,仮想実施料率は1%以下とすべきであると主張し,これに対し一審原告は,本件各発明は過去に類を見ないユニークなもので,劇的な業績向上に見られるようにその技術的・経済的価値は極めて高いから,仮想実施料率は5%をもって相当とすべきであると主張す- 273 -る。 よって検討するに,前記2で認定した本件発明1の内容,前記6で認定したHMS商品の売上実績に,本件特許1については無効審決が確定しており無効理由があると認められること,その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると,本件特許1の仮想実施料率はHMS商品の売上額(通常実施権相当額50%を除いたもの)の2%をもって相当と認める。 また,前記3で認定した本件発明2の内容,前記6で認定したHMS商品の売上実績に,前記7のとおり本件特許2については無効理由があるとは認められないこと,その他本件に顕れた一切の事情を考慮して,本件特許2の仮想実施料率はHMS商品の売上額(通常実施権相当額50%を除いたもの)の3%をもって相当と認める。 (2)なお,一審被告は,①HMS商品を販売する際には,HMSメジャーのみで採寸するわけではない,②全てのサイズのHMSメジャーが備えられているわけではなく,端のサイズについては,大きめのサイズを着用してもらい,摘まんだりして採寸をしている,③実際には本件各発明の実施による寸法がそのままHMS商品の製造に利用できるのではなく,実際の商品は,その生地等によって寸法を調整して製造している,④したがって,本件各 摘まんだりして採寸をしている,③実際には本件各発明の実施による寸法がそのままHMS商品の製造に利用できるのではなく,実際の商品は,その生地等によって寸法を調整して製造している,④したがって,本件各発明の実施によってそのまま完全な商品ができるわけでもなく,HMSメジャーと出来上がり商品が完全に対応していたわけでもないと主張する。 しかし,①HMS商品を販売する際には,HMSメジャーのみで採寸するわけではないとしても,その採寸は準備的,付随的なものと認められ(弁論の全趣旨),②HMSメジャーで採寸する場合に,大きめのサイズを着用し,摘まんだりして採寸をすることがあるとしても,そのようなことがどの程度あるか本件全証拠によるも明らかではなく,③実際の商品は,その生地等によって寸法を調整して製造しているとしても,そのもととなるデータは,HMSメジャーによって採寸したものであるから,本件各発明によって- 274 -得られた独占の利益の額は,HMS商品の売上額(通常実施権相当額を除いたもの)に仮想実施料率を乗じて算定することができるのであり,そのほかに寄与率のようなものを考慮して更に減額する必要はないというべきである。 争点(8)(一審被告の貢献)及び争点(9)(一審原告の処遇)について(1)本件各発明の完成に対する一審被告の貢献の程度ア前記2,3認定の本件各発明に至る経緯によると,本件各発明は,一審原告が単独で完成したものと認められる。 そして,証拠(甲79,原審におけるE証人・原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,一審原告は,その開発に際し,個人的に購入した市販の下着類や,自宅の工業用ミシンを用いたこと,本件各発明の完成のためにはCADの利用が重要な要素となったものであるがCADに関する知識及び知見は一審被告における業務とは関係なく一 人的に購入した市販の下着類や,自宅の工業用ミシンを用いたこと,本件各発明の完成のためにはCADの利用が重要な要素となったものであるがCADに関する知識及び知見は一審被告における業務とは関係なく一審原告が得たものであることが認められる。 この点について,一審被告は,本件訴訟において,試作品が法廷に提出されなかったから,本件発明1の開発において一審原告が個人的に購入した市販の下着類を用いたと認定することは経験則に反するものであると主張するが,試作品が法廷に提出されていないからといって本件発明1の開発において一審原告が個人的に購入した市販の下着類を用いたと認定することが経験則に反するということができないことは明らかである。 また,一審被告は,一審原告が一審被告のCADを用いて本件各発明の開発を進めた点は本件各発明の完成に対する一審被告の貢献事由に該当すると判断すべきであると主張する。確かに,一審被告のCADを用いたという点は,一審被告の貢献と考えられなくはないが,それのみではその貢献を大きいものということはできない。 イそして,前記2,3認定の本件各発明に至る経緯によると,本件各発明- 275 -の着想は,基本的には一審原告が独自に得たというべきであると認められる。もっとも,①一審原告は,原審における原告本人尋問において,体感できるオーダーメイドの下着が必要だと考えるに至ったのは,一審被告のフルオーダーには事前に着用感が確認できないという問題点があり,それを認識することによって体感できるオーダーメイドの下着が必要であると考えるに至った旨の供述をしていること(原審における原告本人尋問調書40頁),②本件発明1の出願を依頼する際に,一審原告が作成の上,大島特許事務所に持参した「明細書」と題する書面(乙135)において,【考案が解決しよう をしていること(原審における原告本人尋問調書40頁),②本件発明1の出願を依頼する際に,一審原告が作成の上,大島特許事務所に持参した「明細書」と題する書面(乙135)において,【考案が解決しようとする課題】に「(A)計測場所へ計測サンプルをたくさん運ぶ必要がある。」,【考案の効果】に「(A)計測サンプルのコンパクト化により移動が容易になる。」との記載がなされており,また,本件発明2の出願を依頼する際に,一審原告が作成の上,大島特許事務所に持参した「明細書」と題する書面(乙136)において,【考案が解決しようとする課題】に「(A)計測サンプルがたくさん必要である。」,【考案の効果】に「(A)計測サンプルのコンパクト化。」との記載がなされているが,これらは,弁論の全趣旨によれば,当時一審被告において問題となっていた事項であると認められること,③前記2(2)イ(イ)のとおり,一審被告において「カップくり」がオーダー表のトップに記載されるようになったのは,一審被告において従来からバージスサイズが「カップくり」という名称で測定されていたことや,Dが「デューブルベ」のバージスメジャーによる測定を体験し報告書を作成して提出したことが関係しているものと認められることからすると,一審原告が本件各発明を着想するに当たって,一審被告の業務と全く関連がなかったとはいえないものの,それらの貢献が大きいとまでいうことはできず,結局,上記のとおり本件各発明の着想は基本的には一審原告が独自に得たというべきである。 ウ一審被告は,一審被告の新大阪BG店内においてHMSメジャー開発に- 276 -必須のフィッティングを行わせたり,オーダー研究会の開催を認めその会において一審被告の社員らが試作品の着用感や耐久性の改善点を指摘していることなどは,一審被告において研究 ャー開発に- 276 -必須のフィッティングを行わせたり,オーダー研究会の開催を認めその会において一審被告の社員らが試作品の着用感や耐久性の改善点を指摘していることなどは,一審被告において研究開発費や研究設備費を支出していると評価できるし,また一審原告は,オーダーメイド事業における納期遅れの解消及び効率化ということを目的に一審被告に入社して,入社してからもオーダーメイド事業の推進をどのように行っていくかということを検討していたのであり,その上,オーダー研究会に参加して勤務時間中にGやSと本件各発明について協議したり広瀬工業への出張をしているから,一審被告は本件各発明の開発について特別に時間を与えたといえる,と主張する。 しかし,一審被告がフルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という課題を一審原告に付与したということがあったとしても,このような「課題」は,本件各発明の課題とは異なる。すなわち,本件発明1の課題は,「カップ部を有する衣類において,着用者の体型に対応したカスタムサイズのカップ部を有し,着用時にフィット感のある衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供する」こと,また「着用者がカスタムサイズのカップ部を有する計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができるカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供すること」(本件明細書1[甲1]の【発明が解決しようとする課題】の段落【0008】)であり,本件発明2の課題は,「着用者の体型にフィットしたカスタムサイズの衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供する」こと,また「着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を ットしたカスタムサイズの衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供する」こと,また「着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができる衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供すること」(本件明細書2[甲3]の【発- 277 -明が解決しようとする課題】の段落【0008】)にあるから,一審被告が一審原告に対してフルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という課題を与えたとしても,それをもって一審被告の貢献とみることはできない。 また,前記2(4)オのとおり,本件発明1についてオーダー研究会が開催され,その会において一審被告の他の社員が試作品の着用感や耐久性の改善点を指摘しているとしても,前記2認定の本件発明1に至る経緯によると,それは,発明完成後の商品化のための検討,提案にすぎないと解される。また,前記3(4)アのとおり,本件発明2について,一連の試着品の製作がされ,それにはFや一審被告の他の社員が関与しているが,一審原告が着想した技術的思想を実現するために試着品の製作が行われたものと認められ,そこにおいてこれらの者によって,何らかの発明に値する行為がされたと認めることはできない。 さらに,証拠(乙150の1~7)によれば,一審原告は,平成12年8月から平成13年3月にかけて度々,新大阪BG店に出張したこと,その中にはオーダー研究会出席を目的としたものがあることが認められるが,オーダー研究会については上記のとおりであり,その他これらの出張と本件各発明との関係を認めるに足りる証拠はない。 エ一審被告は,一審原告に対しフルオーダー事業のデータ利用を許容したと主張する。 前記2ア(カ)のとおり,一審被告は,本件発明1の発明に当 らの出張と本件各発明との関係を認めるに足りる証拠はない。 エ一審被告は,一審原告に対しフルオーダー事業のデータ利用を許容したと主張する。 前記2ア(カ)のとおり,一審被告は,本件発明1の発明に当たり,一審被告に蓄積されていた顧客のデータを利用したことが認められる。この限度では,一審被告の貢献があるといえるが,それを利用して本件発明1の着想を得たのは一審原告であるから,一審被告の貢献を大きいものということはできない。 また,一審被告は,オーダー研究会において第二生産部のメンバーがH- 278 -MSメジャーの試作品に対して着用感や耐久性の改善点を指摘し,これらの指摘に基づいて着用可能なものへと試作品の改善がなされていることは,まさに一審被告が保有していたノウハウが本件発明1の開発に寄与していたものと評価することができるし,また,本件発明2は,一審被告の協力工場である広瀬工業のFが作成した図面に基づき試作品を製作し,着用テストを行った上で,第二生産部が広瀬工業と連携しながら図面を改良し,止着部の製作・改良を行っていくという流れで開発されており,やはり一審被告のノウハウが本件発明2の開発に寄与していたものと評価することができると主張するが,これらについては,上記ウのとおり本件各発明への一審被告の貢献と認めることはできない。 (2)本件各発明完成後の一審被告の貢献の程度ア旧35条4項は,従業者等が支払を受ける対価の額は,その発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めるものと規定するが,旧35条が,職務発明について特許を受ける権利等の帰属及びその利用に関して,使用者等と従業者等のそれぞれの利益を保護するとともに,両者間の利害を調整することを図った規定であることからすると,この「使用者等が貢献した程度」には,使用者等が「 利等の帰属及びその利用に関して,使用者等と従業者等のそれぞれの利益を保護するとともに,両者間の利害を調整することを図った規定であることからすると,この「使用者等が貢献した程度」には,使用者等が「その発明がされるについて」貢献した事情のほか,その後において使用者等がその発明により利益を受けるについて貢献した事情等も含まれるものと解するのが相当である。これに反する一審原告の主張を採用することはできない。 イ本件各発明の完成後の一審被告の貢献(ア)前記2(4)オのとおり,本件発明1についてオーダー研究会が開催され,その会において,発明完成後の商品化するための検討,提案がされた。 また,証拠(甲79,121,原審におけるE証人・G証人・S証人・原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,一審被告は,本件各発明の実- 279 -用化に当たって,オーダー研究会の開催に加えて,それ以外にも人員を配置しその費用負担をしたこと,その過程で一審原告は,HMS商品のサイズの決定,資材選び,製造工場との調整,マニュアルのたたき台作成,販売員の研修について主導的な役割を果たしたことが認められる。 (イ)一審被告は,前記6(1)のとおり,HMS商品の新製品を次々と出したほか,キャンペーン等の販売促進活動を行い,これらの販売促進活動は,売上げに相当程度の寄与をしたものと認められる。 (ウ)一方,本件各発明の特許出願の経緯は,前記2(2)ア(ク)(ケ)及び3(2)ア(カ)のとおりである。これらにおいて,一審原告は,最初に出願の依頼に大島特許事務所へ行く際には,法務担当のUに同行し「明細書」と題する書面(乙135,136)を作成して持参しており,本件特許1について同事務所では,一審原告から了解が得て出願している。 その後,同事務所と一審被告とのやり取りは,上記Uによ に同行し「明細書」と題する書面(乙135,136)を作成して持参しており,本件特許1について同事務所では,一審原告から了解が得て出願している。 その後,同事務所と一審被告とのやり取りは,上記Uによって行われているが,証拠(甲79,原告本人)によれば,一審原告は,特許庁への提出書類を検討するなど,その過程に関与していたものと認められる。 (エ)そして,証拠(乙151,152の1~4,153,原審におけるE証人)及び弁論の全趣旨によれば,①一審被告は,本件各発明の実施品であるHMSメジャーの製作を協力工場へ発注して製作費の支払をし,その他HMSメジャーの修理代や協力工場へのPC設置費用,ソフト開発費,サーバー費用なども負担していること,②一審被告は,HMSメジャーを全店舗に配置し,販売員にHMSメジャーによる計測方法についての研修を行うとともに,HMSメジャーの品質管理業務を行い,それらの費用を負担していること,③一審被告は,全国に300店舗以上の販売店を有し,2000名以上の営業社員を擁しており,それらの店舗の賃借料や営業社員の人件費を負担していること,④一審被告は,第25期(平成13年9月1日から平成14年8月31日まで)- 280 -に,愛用者組織として「マルコビューティクラブ」という会員組織を立ち上げたことが認められる。 しかし,これらは,一審被告における通常の事業活動の域を出るものとはいいがたく,一審被告の貢献とは認められるものの,それほど重視することはできない。 (オ)また,前記3(2)ア(エ)のとおり,一審原告は,平成14年11月に一審被告の取締役となり,前記6(1)イ(オ)bのとおり,平成17年11月に取締役を解任されたことが認められる。また,弁論の全趣旨によれば,一審原告は,平成14年9月から月額100万円の報酬 1月に一審被告の取締役となり,前記6(1)イ(オ)bのとおり,平成17年11月に取締役を解任されたことが認められる。また,弁論の全趣旨によれば,一審原告は,平成14年9月から月額100万円の報酬を受けており,これは取締役としての報酬であったものと認められる。一審原告は,平成12年6月に一審被告に入社後2年半で取締役に就任しており,それには,本件各発明をしたことが関係しているものと推認することができる。そうすると,一審被告がこのように一審原告を取締役に就任させ,取締役としての報酬を支払ったことは,一審被告の貢献として考慮できないものではないが,本来取締役の報酬は取締役の職務執行の対価であることからすると,このことをそれほど重視することはできないというべきである。 (3) 結論 上記(1)及び(2)で述べたところを総合考慮すると,①本件各発明は一審原告が単独で完成したものであって,発明の完成について一審被告の貢献として考慮すべきものもある程度認められるが,それらを大きく見ることはできない,②一審被告は,HMS商品の新製品を次々と出したほか,キャンペーン等の販売促進活動を行い,これらの販売促進活動は,売上げに相当程度の寄与をしたものと認められるほか,一審原告を取締役に就任させたなど,その他の点でも一審被告には発明完成後の貢献があったが,通常の事業活動の域を出るものとはいいがたいものも多い。これらに,本件に顕れた一切の事- 281 -情を考慮すると,本件各発明の実施により一審被告が得た利益に対する一審被告の貢献度は,80%をもって相当と認める。 当審における争点(10)(当審における請求拡張の適否)について一審原告は,当審係属中の平成21年9月24日に至り,その請求を拡張し,相当対価金2億円に対する遅延損害金の起算日を「平成14年 当審における争点(10)(当審における請求拡張の適否)について一審原告は,当審係属中の平成21年9月24日に至り,その請求を拡張し,相当対価金2億円に対する遅延損害金の起算日を「平成14年2月17日」から「平成13年6月1日」に繰り上げる旨の請求の拡張を行なったが,これに対し,一審被告は同拡張はこれにより著しく訴訟手続を遅滞させるので,民訴法297条,143条1項ただし書の適用により,許されない旨主張する。 しかし,この拡張された請求は,新たな証拠調べをすることなく判断することができるものであって,本件における職務発明の対価請求権の弁済期はいつかという論点について更に審理をしなければならないとしても,この点は既になされた証拠調べに基づいて当事者の主張のみで判断することができるから,著しく訴訟手続を遅滞させる(民訴法297条で準用する同法143条1項ただし書)ということはできない。したがって,一審被告の上記主張を採用することはできない。 当審における争点(11)(中間利息控除の可否)及び争点(12)(遅延損害金の起算日)について一審被告は,特許登録時又は特許を受ける権利の承継時からの中間利息を控除すべきことを主張する。 しかし,一審原告から一審被告に対して本件各発明の特許を受ける権利が承継がされたときには,一審被告には職務発明に関する勤務規則等の規定は全くなく,その履行期について定めはなかったものと認められるから,本件各発明に係る職務発明の対価請求権は,期限の定めのない債務として成立し,一審原告からの催告によって初めて遅滞に陥るものと認められる(民法412条3項)。そうすると,本件各発明に係る職務発明の対価請求権は,本件訴状の送- 282 -達によって遅滞に陥り,その翌日(平成18年8月2日)から遅延損害金が発生する ものと認められる(民法412条3項)。そうすると,本件各発明に係る職務発明の対価請求権は,本件訴状の送- 282 -達によって遅滞に陥り,その翌日(平成18年8月2日)から遅延損害金が発生するものと認められる。 そして,このような場合には,当該催告がされた時点を基準として,その将来の売上げについて中間利息を控除することが,旧35条は使用者等と従業者等との間の利害を調整することを図った規定であることに照らし,衡平の見地から相当であるというべきである。なお,被告が引用する最高裁昭和55年12月18日第一小法廷判決・民集34巻7号888頁は,本件とは事案を異にするものであるし,また,上記のように解すると,発明者の請求の有無やその時期によって中間利息控除がなされる時期が異なることになるが,職務発明の対価請求権が特許を受ける権利が従業者等から使用者等に承継された時点において発生するとしても,その額がその時点で一義的に確定しなければならないということはないから,上記のように解することが相当対価請求権の法的性質とは相容れないということもない。さらに,従業者は,職務発明における相当対価請求権が発生した後直ちに使用者に対し請求を行い,遅滞に陥らせることが法的に可能であるからといって,そのことにより上記判断が左右されることはないというべきである。 そこで,第30期(平成18年9月1日から平成19年8月31日まで)について1年分,第31期(平成19年9月1日から平成20年2月まで)について2年分の中間利息を控除することとする。 なお,控除すべき中間利息の利率については,民事法定利率である年5分とするが相当である(最高裁平成17年6月14日第三小法廷判決・民集59巻5号983頁参照)。 相当対価の額以上の検討に基づき,本件各発明の譲渡人である一審原 いては,民事法定利率である年5分とするが相当である(最高裁平成17年6月14日第三小法廷判決・民集59巻5号983頁参照)。 相当対価の額以上の検討に基づき,本件各発明の譲渡人である一審原告が譲受人である一審被告に対して取得する相当対価の額を算定すると,次のとおりとなる。 (1)HMS商品の売上高- 283 -本件特許1の公開日は平成14年7月31日,登録日は平成17年3月4日であり,本件特許2の公開日は平成15年8月27日,登録日は平成17年6月24日であるので,本件特許1については平成14年7月31日から,本件特許2については平成15年8月27日からの売上げが,相当対価の額算定の基礎となる。 (2)証拠(乙116,119)及び弁論の全趣旨によれば,HMS商品の売上高は次のとおりと認められる。 ア平成14年7月31日から平成17年3月3日までのHMS商品(ブラジャー)の売上高(ア)第25期(平成13年9月1日から平成14年8月31日まで)のうち平成14年7月31日から同年8月31日まで●●●●●●●●●●●●●●[平成14年7月におけるHMS商品の売上高,乙116]/●●●●●●●●●●+●●●●●●●●●●●●●[平成14年8月におけるHMS商品の売上高,乙116])×●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●[第25期におけるブラジャーとガードル及びボディスーツとの売上高(乙119)により案分]=●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(イ)第26期(平成14年9月1日から平成15年8月31日まで)●●●●●●●●●(乙119)(ウ)第27期(平成15年9月1日から平成1 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(イ)第26期(平成14年9月1日から平成15年8月31日まで)●●●●●●●●●(乙119)(ウ)第27期(平成15年9月1日から平成16年8月31日まで)●●●●●●●●●(乙119)-●●●●●●●●(乙119)×●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●[商品券の損失をブラジャーとガードル及びボディスーツとの売上げ(乙119)により案分]=●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●- 284 -●●●●●●●●●●●●●●●●●(エ)第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)のうち平成16年9月1日から平成17年3月3日まで●●●●●●●●●●●●●(第28期におけるブラジャーの売上高,乙119)-●●●●●●●●●●●●(下記ウ(ア))=●●●●●●●●●●●●●(オ)合計●●●●●●●●●●●●●●イ平成15年8月27日から平成17年3月3日までのHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高(ア)第26期(平成14年9月1日から平成15年8月31日まで)のうち平成15年8月27日から同年8月31日まで●●●●●●●●●●●●●(平成15年8月におけるHMS商品の売上高,乙116)●●●●●●×●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●[第26期におけるブラジャーとガードル及びボディスーツとの売上高(乙119)により案分]=●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(イ)第27期(平成15年9月1日から平成16年8月31日まで)●●●●●●●●●●●●●(乙119)●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●(イ)第27期(平成15年9月1日から平成16年8月31日まで)●●●●●●●●●●●●●(乙119)●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●[商品券の損失をブラジャーとガードル及びボディスーツとの売上げ(乙119)により案分])=●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(ウ)第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)のうち平成16年9月1日から平成17年3月3日まで●●●●●●●●●●●●●(第28期におけるガードル及びボディスーツの売上高,乙119)-●●●●●●●●●●●●(下記エ)-●●- 285 -●●●●●●●●(下記オ(ア))-●●●●●●●●●●●●(下記オ(イ))=●●●●●●●●●●●●●(エ)合計●●●●●●●●●●●●●●ウ平成17年3月4日以降のHMS商品(ブラジャー)の売上高(ア)第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)のうち平成17年3月4日から同年8月31日まで●●●●●●●●●●●●(平成17年3月以降の第28期の売上高,弁論の全趣旨)●●●●●●●●●●●●●●=●●●●●●●●●●●●(イ)第29期(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで)●●●●●●●●●●●●(乙119)(ウ)(ア),(イ)の合計●●●●●●●●●●●●●(エ)第30期(平成18年9月1日から平成19年8月31日まで)●●●●●●●●●●●●(乙119)(オ)第31期(平成19年9月1日から平成20年2月まで)●●●●●●●●●●(弁論の全趣旨)(カ)総合計●●●●●●●●●●●●●エ平成17年3月4日から同年6月23日までのHMS商品(ガ )第31期(平成19年9月1日から平成20年2月まで)●●●●●●●●●●(弁論の全趣旨)(カ)総合計●●●●●●●●●●●●●エ平成17年3月4日から同年6月23日までのHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高平成17年3月4日から同年8月31日までのHMS商品の売上高-平成17年3月4日から同年8月31日までのHMS商品(ブラジャー)の売上高-平成17年6月24日から同月30日までのHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高-平成17年7月1日から同年8月31日までのH- 286 -MS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高=●●●●●●●●●●●●●(平成17年3月以降の第28期の売上高,乙116)/●●●●●●●●●●●●●-●●●●●●●●●●●●(上記ウ(ア))-●●●●●●●●●●(下記オ(ア))-●●●●●●●●●●●●(下記オ(イ))=●●●●●●●●●●●●オ平成17年6月24日以降のHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高(ア)第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)のうち平成17年6月24日から同月30日まで2873万7000円(弁論の全趣旨)(イ)第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)のうち平成17年7月1日から同年8月31日まで2億3756万8000円(弁論の全趣旨)(ウ)第29期(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで)6億9310万9000円(乙119)(エ)(ア)~(ウ)の合計9億5941万4000円(オ)第30期(平成18年9月1日から平成19年8月31日まで)●●●●●●●●●●●●(乙119)(カ)第31期(平成19年9月1日から平成20年2月まで)●●●●●●●●●●●●(弁論の全趣旨 第30期(平成18年9月1日から平成19年8月31日まで)●●●●●●●●●●●●(乙119)(カ)第31期(平成19年9月1日から平成20年2月まで)●●●●●●●●●●●●(弁論の全趣旨)(キ)総合計●●●●●●●●●●●●●カ相当対価の額(ア)第29期までの相当対価の額相当の対価の額=〔平成17年3月3日までのHMS商品(ブラジャ- 287 -ー)の売上高×HMS商品の売上げに対する本件発明1の独占の利益の割合(50%×2/3)×本件発明1の仮想実施料率(2%)+{平成17年3月3日までのHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高+平成17年3月4日から同年6月23日までのHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高}×HMS商品の売上げに対する本件発明2の独占の利益の割合(50%×2/3)×本件発明2の仮想実施料率(3%)+平成17年3月4日以降平成18年8月31日までのHMS商品(ブラジャー)の売上高×HMS商品の売上げに対する本件発明1の独占の利益の割合(50%)×本件発明1の仮想実施料率(2%)+平成17年6月24日以降平成18年8月31日までのHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高×HMS商品の売上げに対する本件発明2の独占の利益の割合(50%)×仮想実施料率(3%)〕×一審原告の貢献度(20%)=●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(イ)第30期 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(イ)第30期の相当対価の額〔第30期のHMS商品(ブラジャー)の売上高×HMS商品の売上げに対する本件発明1の独占の利益の割合(50%)×本件発明1の仮想実施料率(2%)+第30期のHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高×HMS商品の売上げに対する本件発明2の独占の利益の割合(50%)×仮想実施料率(3%)〕×一審原告の貢献度(20%)×ライプニッツ係数=●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●- 288 -●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(ウ)第31期の相当対価の額〔第31期のHMS商品(ブラジャー)の売上高×HMS商品の売上げに対する本件発明1の独占の利益の割合(50%)×本件発明1の仮想実施料率(2%)+第31期のHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高×HMS商品の売上げに対する本件発明2の独占の利益の割合(50%)×仮想実施料率(3%)〕×一審原告の貢献度(20%)×ライプニッツ係数=●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(エ)相当対価の額の総合計以上のとおり,本件各発明に係る相当の対価の額は,上記(ア)~(ウ)の合計である5537万円(1万円未満四捨五入)と認められる。 結論 以上の次第で,一審原告の請求は,上記12の元本5537万円と 上のとおり,本件各発明に係る相当の対価の額は,上記(ア)~(ウ)の合計である5537万円(1万円未満四捨五入)と認められる。 結論 以上の次第で,一審原告の請求は,上記12の元本5537万円とこれに対する訴状送達の翌日である平成18年8月2日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 そうすると,A事件控訴人マルコ株式会社(一審被告)の控訴は理由がないから棄却し,B事件控訴人X(一審原告)の控訴及び当審における請求の拡張に基づき原判決を変更し,一審原告の本訴請求を上記の限度で認容し,その余は棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部- 289 -裁判長裁判官中野哲弘裁判官森義之裁判官澁谷勝海

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