主文 1 被告は、原告に対し、34万9470円及びうち2万6000円に対する平成29年5月25日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち8万4000円に対する平成30年8月25日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち4万円に対する平成31年1月25日から支払済みまで年6分の割合による 金員、うち19万3542円に対する令和2年3月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを20分し、その3を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告に対し、43万3905円及びこれに対する平成31年1月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告に対し、20万7434円及びうち19万3542円に対する令和2年3月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告に対し、29万2465円及びこれに対する平成29年5月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告に対し、117万8320円及びこれに対する平成30年8月2 5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は、原告に対し、21万4908円及びこれに対する令和元年6月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告は、原告に対し、5万1116円及びこれに対する令和2年11月27日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、生命保険会社である被告の営業職員である原告が、被告に対し、被 及びこれに対する令和2年11月27日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、生命保険会社である被告の営業職員である原告が、被告に対し、被告が原告の賃金から業務上の経費を控除したことは労働基準法24条1項の賃金全額払の原則に反し許されないなどと主張して、次の(1)の各金員の支払を求めるとともに、被告の業務のために携帯電話を使用したと主張して、次の(2)の各金員の支払を求めた事案である。 (1)賃金控除に係る請求ア控除された経費は未払賃金であるとして雇用契約上の賃金請求権に基づき、(ア)平成29年5月分(賃金控除に係る請求に関しては、経費が控除された賃金支払月を指す。以下同じ。)から平成30年12月分までの控除額合 計43万3905円及びこれに対する賃金支払日の後である平成31年1月25日から支払済みまで平成29年法律第45号による改正前の商法514条所定の商事法定利率(以下、単に「商事法定利率」という。)年6分の割合による遅延損害金の支払(請求1項)(イ)平成31年1月分から令和2年3月分までの控除額合計19万3542 円及び令和2年3月24日までの確定遅延損害金1万3892円並びに上記控除額に対する令和2年3月分の賃金支払日の翌日である令和2年3月25日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払(請求2項)イ控除された経費は賃金債権に対する侵害であるとして不法行為に基づく 損害賠償請求権に基づき、又は控除された経費は不当な賃金の控除による利得であるとして不当利得返還請求権に基づき、平成28年4月分から平成29年4月分までの控除額合計29万2465円及びこれに対する最終控除日の後である平成29年5月25日から支払 な賃金の控除による利得であるとして不当利得返還請求権に基づき、平成28年4月分から平成29年4月分までの控除額合計29万2465円及びこれに対する最終控除日の後である平成29年5月25日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割 合による遅延損害金の支払(請求3項) ウ控除された経費は不当な賃金の控除による利得であるとして、不当利得返還請求権に基づき、平成24年10月分から平成28年3月分までの控除額合計117万8320円及びこれに対する最終利得日の後である平成30年8月25日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求4項) (2)携帯電話料金に係る請求雇用契約上の費用償還請求権、立替払契約に基づく立替金請求権、不当利得返還請求権又は事務管理による有益費償還請求権に基づき、ア平成24年10月分(携帯電話料金に係る請求に関しては、当該料金の支払月を指す。以下同じ。)から平成30年12月分までの携帯電話料金合計 21万4908円及びこれに対する催告日の翌日である令和元年6月25日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求5項)イ平成31年2月分から令和2年4月分までの携帯電話料金合計5万1116円及びこれに対する請求の趣旨変更申立書送達の日の翌日である令和 2年11月27日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払(請求6項) 2 前提事実(争いのない事実並びに後掲の各証拠(枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1)当事者等 ア原告は、被告との間で、平成5年1月12日、同月末まで原告を研修試補見 並びに後掲の各証拠(枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1)当事者等 ア原告は、被告との間で、平成5年1月12日、同月末まで原告を研修試補見習い(一般課程試験に合格し、その後所定の条件を満たした場合に営業職員となることを前提とした身分)とする旨の委嘱契約を締結して被告に入社し、その後、一般課程試験に合格して、同年2月1日、同月末まで原告を研修試補とする旨の委嘱契約を締結し、さらに、所定の条件を満たしたことか ら、同年3月1日、期間の定めのない雇用契約(以下「本件雇用契約」とい う。)を締結し、同日以降、営業職員として被告の京都支社a営業部において勤務している労働者である(乙1、13、14、弁論の全趣旨)。 なお、被告における営業職員とは、被告の営業職員資格規程に基づいて採用された者をいい、営業職員の業務内容は、営業職員就業規則付属細則第1条に定めるとおりであり、支部長や所長等の役職のない営業職員(原告もこ れに該当する。)の業務は、主として、生命保険の新契約募集、既契約者サービス活動、保険料の集金等である(乙16、50参照)。 イ被告は、生命保険業等を行う保険業法上の相互会社である。 ウ被告には、原告を含む被告の全従業員(管理監督者等の一部の従業員を除く。)が加入する労働組合である住友生命労働組合(以下「組合」という。) が存在する。 エ住生物産株式会社(以下「住生物産」という。)は、被告の100%子会社であり、被告の販促品や贈答品、記念品の販売窓口会社である(甲19、63)。 (2)営業職員の賃金からの費用控除 ア原告を含む被告の営業職員の賃金は、月末締め、翌月24日払である。本件請求に係る期間中、営業職員 品の販売窓口会社である(甲19、63)。 (2)営業職員の賃金からの費用控除 ア原告を含む被告の営業職員の賃金は、月末締め、翌月24日払である。本件請求に係る期間中、営業職員の毎月の賃金からは、「携帯端末使用料」、「機関控除金」及び「会社斡旋物品代」との費目による費用(以下、これらを併せて「本件費用」という。)が控除されていた。 イ 「携帯端末使用料」とは、被告において使用されていた「Vite」又は 「Lief」と呼ばれる機器(以下、これらを併せて「本件携帯端末」という。)の使用料である。本件携帯端末は、被告の営業職員が、顧客に保険商品の内容を説明したり、保険契約のシミュレーションをしたりする際に用いられるもので、平成18年7月頃から平成24年7月頃までは「Vite」が、それ以降は、順次、後継機である「Lief」が使用されていた。 なお、本件携帯端末の使用料は、平成30年7月分から無償化された。 ウ 「会社斡旋物品代」とは、住生物産及び住生物産以外が提供者である物品について、営業職員が本件携帯端末を用いて各自で直接個別注文するか、又は、拠点事務担当者に代理で個別注文するよう依頼して注文することとなる物品購入にかかる費用である。例えば、「SUMITOMOLIFE」 のロゴ入りのチョコレート・飴等の販促品代がこれに該当する。 エ 「機関控除金」とは、上記ウの会社斡旋物品の注文方法以外の方法により毎月支部単位で注文を取りまとめるものにかかる費用である。例えば、被告が週1回発行するチラシであるスミセイウィークリー代がこれに該当する。 なお、募集資料コピー用紙トナー代は、営業職員が営業活動で使用する提案書類や申込書等に関する印刷費用であり、営業職員が注文するものにかか る あるスミセイウィークリー代がこれに該当する。 なお、募集資料コピー用紙トナー代は、営業職員が営業活動で使用する提案書類や申込書等に関する印刷費用であり、営業職員が注文するものにかか る費用ではないが、機関控除金の費目の中に含まれていたところ、平成31年1月からは無償化された。 (3)賃金控除に関する協定ア被告は、平成2年12月10日、組合との間で、営業職員の毎月24日に支給される給与から、「募集資料等有料物品購入代金」、「市場対策・販売 促進経費個人負担金」、「通信教育経費および各種受験経費個人負担金」、「会社設備使用時の個人負担金」、「会社が認めた諸研修会費」など、所定の費目を控除することができる旨を定めた「賃金控除に関する協定」を締結した(乙18。以下「旧協定」という。)。同協定の有効期間は、締結の日から3年とされ、期間満了1か月前までに被告又は組合から文書をもって改 廃の意思が表示されないときは、その効力は順次1年延長されると定められた。 イ被告は、平成24年1月26日、組合との間で、上記アと同様に、営業職員の毎月24日に支給される給与から、「募集資料等有料物品購入代金」、「市場対策・販売促進経費個人負担金」、「通信教育経費および各種受験経 費個人負担金」、「会社設備使用時の個人負担金」、「会社が認めた諸研修 会費」など、所定の費目を控除することができる旨を定めた「賃金控除に関する協定」を締結した(乙9。以下「本件協定」という。)。同協定の有効期間は、締結の日から3年とされ、期間満了1か月前までに被告又は組合から文書をもって改廃の意思が表示されないときは、その効力は1年延長されると定められた。 その後、本件協定は、平成24年4月1日から実施され、改廃されることなく現在に 月前までに被告又は組合から文書をもって改廃の意思が表示されないときは、その効力は1年延長されると定められた。 その後、本件協定は、平成24年4月1日から実施され、改廃されることなく現在に至っている(乙9、弁論の全趣旨)。 (4)原告の被告に対する支払請求ア原告は、被告に対し、令和元年6月20日付けの内容証明郵便により、賃金から控除された本件費用の合計191万1640円(平成24年10月分 ないし平成30年12月分)及び自己負担させられた被告の業務に使用した携帯電話の料金7万0347円(上記期間の当時判明分)の合計198万1987円の支払を求め、同内容証明郵便は、同月24日に被告に到達した(甲3の1及び2)。 イ原告は、令和元年7月31日、被告を相手方として、当裁判所に、本件請 求1項、3項、4項及び5項と同じ対象月分について支払を求める労働審判手続を申し立てた(当庁令和元年(労)第44号)。同労働審判事件は、同年9月20日、労働審判法24条1項により終了した。 ウ原告は、本件請求1項、3項、4項及び5項のとおりの支払を求める令和元年10月1日付け訴状に代わる準備書面を提出し、同書面は、同月4日に 被告に送達された。 エ原告は、令和2年11月18日、同月17日付け「請求の趣旨変更申立書」により本件請求2項及び6項を追加し、同書面は、同月26日に被告に送達された。 3 争点 (1)賃金控除に係る請求関係 ア賃金控除に関する本件協定の有効性(争点1)イ賃金から経費を控除する合意の存否及びその有効性(争点2)ウ未払賃金額(争点3)エ経費控除に関する不法行為の成否及び損害額(争点4)オ経費控除に関する不当利得の成否及び利得額(争点5 除する合意の存否及びその有効性(争点2)ウ未払賃金額(争点3)エ経費控除に関する不法行為の成否及び損害額(争点4)オ経費控除に関する不当利得の成否及び利得額(争点5) (2)携帯電話料金に係る請求関係ア雇用契約上の費用償還請求権の存否(争点6)イ原告と被告との間の立替払契約の成否(争点7)ウ携帯電話料金に関する不当利得の成否(争点8)エ携帯電話料金に関する事務管理の成否(争点9) 4 争点に関する当事者の主張(1)賃金控除に関する本件協定の有効性(争点1)ア被告の主張被告と組合との間では、原告を含む営業職員の給与から本件費用を控除することができる旨を定めた本件協定(乙9)が締結されており、これは労働 基準法24条1項ただし書にいう「協定」に該当するから、原告の賃金から本件費用を控除したことは同項違反になるものではない。 同項ただし書にいう「協定」は、「事理明白なもの」であることが必要であるところ、ここでいう事理明白なものとは、労働者が当然に支払うべきことが明らかなものであることを意味しており、合意が可能な程度に賃金から 控除すべき項目が具体化していれば足りる。 本件協定については、本件費用として控除されたもののうち、広報誌等の購入費用は「募集資料等有料物品購入代金」として、異業種交流会兼名刺交換会の参加代金は「市場対策・販売促進経費個人負担金」として、本件携帯端末使用料は「会社設備使用時の個人負担金」として特定されており、事理 明白であったから、本件協定は有効である。 イ原告の主張本件協定は「事理明白なもの」ではなく、本件協定を根拠に本件費用を賃金から控除することは違法である。 ここでいう事理明 であったから、本件協定は有効である。 イ原告の主張本件協定は「事理明白なもの」ではなく、本件協定を根拠に本件費用を賃金から控除することは違法である。 ここでいう事理明白なものとは、購買代金、社宅、寮、その他の福利、厚生施設の費用、社内貯金、組合費等のように、本来的に労働者が負担すべき ことが明白な費用についての控除でなければならず、また、労使協定書には、控除の対象となる具体的な項目と、控除を行う賃金支払日が記載されていなければならない。 本件協定は、労働者が負担すべきではなく、使用者が負担すべきものを負担させ、かつ、その具体的費目や金額が特定されていないから、事理明白な ものであるとはいえず、無効である。 (2)賃金から経費を控除する合意の存否及びその有効性(争点2)についてア被告の主張原告と被告との間では、本件雇用契約において本件費用を含む営業活動費を原告の負担とする旨の合意(以下「本件合意」という。)が成立しており、 また、都度、個別具体的な営業活動費を原告の負担とする旨の個別合意も成立していた。被告は、これらの合意に従って、原告の賃金から当該営業活動費を控除したものである。 (ア)本件合意の成立被告は、本件雇用契約締結に先立つ平成5年2月1日の委嘱契約締結時 に、原告に対し、営業職員の勤務時間、休日、有給休暇、本件費用の負担等の基本的な労働条件等を記載した「勤務のしおり」と題する冊子(以下「勤務のしおり」という。)を交付し、勤務のしおり記載の労働条件を雇用契約の内容とすることを説明し、本件雇用契約締結日である同年3月1日、原告との間で、営業活動費を原告の負担とする旨の本件合意が内容に 含まれる本件雇用契約を締結した。営業活動費の範囲は、営業 用契約の内容とすることを説明し、本件雇用契約締結日である同年3月1日、原告との間で、営業活動費を原告の負担とする旨の本件合意が内容に 含まれる本件雇用契約を締結した。営業活動費の範囲は、営業職員がその 営業活動のために要することとなる費用全般を意味し、被告が特に負担することとした費用を除いた費用である。また、被告は、毎年、勤務のしおりを作成の上、原告を含む全営業職員に対してこれを交付し、全営業職員との間で、その労働条件の内容を相互に確認している。 したがって、本件合意が成立していることは明らかである。なお、原告 は、営業活動費が給与から控除されていることを認識していたが、本件訴訟提起まで、被告に対し、営業活動費の負担について異議の申出をしたことはなかった。 (イ)本件費用を構成する各費用に係る個別合意の成立原告は、被告との間で、本件費用を構成する各費用について、以下のと おり、それぞれ原告が負担する旨の個別合意を締結した。このことは、本件合意の成立を裏付けるものでもある。 a 本件携帯端末使用料(平成24年10月分から平成30年6月分まで)被告は、各営業職員から、本件携帯端末の月額使用料及び当該月額使用料が当該営業職員の給与から控除される等の貸与条件が明記された 貸与申込書の提出を受けて、各営業職員との間で、本件携帯端末を貸与する旨の合意を締結している。 原告は、被告に対し、平成18年7月頃に月額使用料を3100円とするVite貸与申込書を、平成24年7月頃に月額使用料を2950円とするLief貸与申込書を提出し、被告との間で、本件携帯端末の 月額使用料を給与引去りの方法により支払う旨の個別合意を締結した。 b 機関控除金に係る費用(平成24 用料を2950円とするLief貸与申込書を提出し、被告との間で、本件携帯端末の 月額使用料を給与引去りの方法により支払う旨の個別合意を締結した。 b 機関控除金に係る費用(平成24年10月分から令和2年3月分まで)(a)機関控除金に係る物品機関控除金に係る物品は、各営業職員が、所定の注文書等を用いて注文するところ、当該注文書又は当該物品のチラシには、当該物品の 単価が明記されており、当該営業職員は、予め自らが負担することと なる物品購入代金を把握した上で注文することができ、かかる注文により、被告と当該営業職員との間で、当該注文書に記載の物品について、当該営業職員の費用負担にて、当該物品を購入する旨の合意が成立する。 原告は、被告に対し、当該機関控除金に係る物品について、当該物 品を購入等すれば、原告の給与から当該物品の代金が引去りされることを承知の上、所定の注文書等により注文をしたのであるから、原告と被告との間で、機関控除金に係る物品について、当該物品を原告の費用負担で購入し、当該購入代金を原告の給与から引き去る旨の個別合意が成立した。 機関控除金の対象となる費目は、花代、絵画コンクールの応募作品をカレンダーに仕立てる費用、オーナーズ通信代、スミセイウィークリー代金、レタスクラブ代(注文主体が支部となる場合)、異業種交流会兼名刺交換会の参加代金などである。 (b)募集資料コピー用紙トナー代 営業職員が保険商品を提案する場合、顧客1人について、1プラン当たりカラーで20頁程度の提案書を複数プラン分印刷する必要があり、印刷費用が膨大になることから、被告は、各営業職員との間で、営業職員において印刷費用の一部を月額2000円の定額で負担する旨の ン当たりカラーで20頁程度の提案書を複数プラン分印刷する必要があり、印刷費用が膨大になることから、被告は、各営業職員との間で、営業職員において印刷費用の一部を月額2000円の定額で負担する旨の合意をしていた。当該額は、支部が負担することとなる費用に 比して著しく低額に設定されたものであった。 c 会社斡旋物品代(平成24年10月分から令和2年3月分まで)会社斡旋物品代は、本件携帯端末を用いて注文する物品の代金であるところ、本件携帯端末による注文システムは、各営業職員が物品リストから注文すべき物品を選択し、その数量を決定すると、各物品ごとの単 価、注文数量に加えて、総合計額が「給与引去金額・控除金額」として 本件携帯端末上の画面にポップアップにて表示され、「OK」ボタンを選択することによって注文が確定される仕組みである。このように、本件携帯端末を用いて注文をすることにより、被告と当該営業職員との間で、本件携帯端末により注文した物品について、当該営業職員の費用負担にて、当該物品を購入する旨の合意が成立する。 原告は、被告に対し、本件携帯端末を用いて物品を注文していたのであるから、原告と被告との間で、会社斡旋物品代を原告の給与から引き去る旨の個別合意が成立した。 会社斡旋物品代の対象となる費目は、ファミリーショットカレンダー代、営業先に配布するカレンダー代、ロゴ入りの飴・チョコレート代、 レタスクラブ代(営業職員が直接注文する場合)、ワッグル代、絵画コンクールの参加商品代、月額宛名シール代、名前シール代などである。 (ウ)本件費用を原告の負担とする合意の有効性本件費用を営業職員の給与から控除することは、以下のとおり、法によって禁止されておらず、かつ合理的であり、違法無効ではない。 ール代などである。 (ウ)本件費用を原告の負担とする合意の有効性本件費用を営業職員の給与から控除することは、以下のとおり、法によって禁止されておらず、かつ合理的であり、違法無効ではない。 a 法によって禁止されていないこと使用者が、労働者に対し、一定の営業活動に関する費用を負担させることは、労働基準法16条の禁止する賠償予定や同法17条の禁止する前借金相殺に該当するものではなく、これを禁止する法令はない。むしろ、労働基準法89条5号は、労働者に食費、作業用品その他の負担を させる場面のあることを想定している。 原告は、使用者が労働者に費用を負担させることは労働基準法及び民法に違反するなどと主張するが、独自の見解を述べるものにすぎない。 労働者の賃金請求権を肯定する代わりに、労働の成果が使用者に帰属するということから、労働によって生じる費用を使用者が負担すべきであ るとの原則を導くことには飛躍があるし、使用者責任の根拠となる報償 責任原則及び危険責任原則は、業務遂行費用負担の場面で問題になるものではない。また、委任契約における受任者の費用償還請求は、あくまでも委任契約に関する任意規定にすぎず、使用者の費用負担の根拠になることはない。 b 本件費用に係る物品の使用は強制されておらず、営業職員ごとに使用 状況に差異があること本件携帯端末は、平成30年7月から保険契約締結手続の電子化に伴い、その使用が義務付けられるまでは、使用するか否かは営業職員の任意であった。また、機関控除金及び会社斡旋物品代に係る広報誌等の各物品についても、営業職員に対して使用が義務付けられたことはなく、 物品の利用状況は、営業職員によって大きく差が生 営業職員の任意であった。また、機関控除金及び会社斡旋物品代に係る広報誌等の各物品についても、営業職員に対して使用が義務付けられたことはなく、 物品の利用状況は、営業職員によって大きく差が生じる。原告は、物品を使用するよう被告が業務指示をしていたかのように主張するが、被告がそのような業務指示を行ったことはなく、営業の際に物品を使用しなかったとしても何らかの処分をすることもない。 営業職員の自律的・効率的な営業活動を促すために、本件費用を負担 させることは合理的であり、仮に、本件費用を被告の負担とすると、営業成績が乏しいにもかかわらず、多額の本件費用を支出する営業職員が出現する可能性があり、その経費負担を営業職員全体で負担することとなって公平性を欠くとともに、営業職員の営業成績に応じた給与体系を維持することも困難になる。 c 募集手当等の支給被告が営業職員に対して支給する手当には、営業職員の本件費用の負担を緩和する性格のものがある。すなわち、募集手当、活動手当及び奨励金は、営業職員による生命保険の募集活動を評価して支給されるものであり、リセール貢献保有手当は、既存顧客との生命保険契約の保全活 動を評価して支給されるものであって、本件費用の負担を緩和している。 d 本件費用の税法上の取扱い営業職員の給与は、税務上事業所得として扱われており、営業活動費を所得控除することができるから、営業職員は課税負担の軽減を受けられる。 e 他の生命保険会社と同様の取扱いであること 被告以外の他の生命保険会社でも、営業職員との間で、本件費用のような営業活動費を営業職員の負担とする合意をし、当該合意に基づいて営業職員の給与から控除 と同様の取扱いであること 被告以外の他の生命保険会社でも、営業職員との間で、本件費用のような営業活動費を営業職員の負担とする合意をし、当該合意に基づいて営業職員の給与から控除することが一般的である。 f 就業規則について従前の被告の就業規則には、営業職員が本件費用を負担する旨の定め がなく、被告は、労働基準監督署からの是正勧告を受けたことから、組合との協議を経て、令和2年2月20日に営業活動費の負担に関する定めを加えて就業規則を改定した。この点、労働基準監督署から指摘を受けたのは営業活動費の負担に関する定めがなかった点のみで、営業職員に営業活動費を負担させていることや本件協定の事理明白性について の指摘は受けていない。 原告は、本件合意が最低基準効に違反するとか就業規則の改定が不利益変更であり無効であるなどと主張する。しかし、就業規則に記載がなかった場合には最低基準効は問題にならず、就業規則の改定についても、被告と営業職員との間の雇用契約に営業職員が営業活動費を負担する ことが含まれていることを前提に、従前の取扱いを明文化したものにすぎず、不利益変更には当たらない。 イ原告の主張(ア)本件合意の成立について被告は、原告に対し、勤務のしおりを、本件雇用契約締結に先立って交 付しておらず、締結後に配布したものであるから、本件雇用契約締結時に、 勤務のしおりの内容を労働条件とする本件合意が成立する余地はない。 また、本件雇用契約に先立って締結された原告と被告との間の委嘱契約に係る契約書や勤務のしおりには、勤務のしおりの記載事項を労働条件とするとは明示されていないこと、勤務のしおりの記載事項は、「営業活動 た、本件雇用契約に先立って締結された原告と被告との間の委嘱契約に係る契約書や勤務のしおりには、勤務のしおりの記載事項を労働条件とするとは明示されていないこと、勤務のしおりの記載事項は、「営業活動費(企業への交通費等)は個人負担」との不明確な記載にとどまることか らすれば、本件合意が有効に成立しているとはいえない。 (イ)各費用に係る個別合意の成立について原告と被告との間で、本件費用を構成する各費用について原告が負担する旨の個別合意が成立した事実はない。原告は、以下のとおり、被告の業務指示により各費用を負担させられていたにすぎず、合意によって負担し たものではない。 a 本件携帯端末使用料について本件携帯端末は、設計書を作成の上、画面上で顧客に設計書を示したり、会話のきっかけとなるツールを使用したり、電子メールで顧客や上司との連絡をしたりするもので、本件携帯端末なしでの営業活動は事実 上不可能であった。このように業務上の必要性が高かったからこそ、原告自身が作成していない貸与申込書(乙19、20)が作成されているのであり、原告と被告との間で貸与契約を締結することなく、本件携帯端末の使用料が勝手に控除されていた。 b 機関控除金に係る費用について (a)スミセイウィークリー顧客訪問する際に毎週配布するチラシとして、被告から使用を指示されたものである。最初は、スミセイウィークリーの費用は支部負担とされていたが、平成10年から1枚当たり5円を負担させられることとなった。 (b)オーナーズ通信、京都カレンダー オーナーズ通信は保険契約者に毎月送付する情報誌、京都カレンダーは1か月分が記載されたカレンダ れることとなった。 (b)オーナーズ通信、京都カレンダー オーナーズ通信は保険契約者に毎月送付する情報誌、京都カレンダーは1か月分が記載されたカレンダーであり、これらを契機として保険契約の締結に結びつけようとするものである。京都カレンダーは、平成29年及び平成30年は無償で配布されていたが、平成31年になって突然購入させられることとなった。また、オーナーズ通信及び 京都カレンダーは、被告から一方的に値上げされた。 (c)絵画コンクールカレンダー被告が、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、フランスのルーブル美術館と提携して毎年開催しているこども絵画コンクールの参加者にカレンダーを作成するように勧め、原告を含む営業職員 に費用負担を強要している。 (d)花被告では、花一輪活動と称して、中小企業への訪問の際に、生花を花瓶に生けて担当者とのコミュニケーションを活発にし、保険契約を獲得することが目的とされていた。平成17年当初は被告負担で花が 配布されていたが、平成18年頃から営業職員の負担にされた。 (e)年賀状、暑中見舞いのはがき費用ふぉーゆークラブ代という費目で、営業職員が負担させられている。 (f)タオル、ハンドクリーム、冷えピタ、常備薬等既契約者への訪問時の手土産に使うよう指示され、購入させられて いる。 (g)JAIFA年会費、オール住生会会費JAIFA(生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)は、各生命保険会社のファイナンシャルプランナーの資格を有する営業職員が加入して研修を受けられる団体である。原告は、被告の強い勧め JAIFA(生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)は、各生命保険会社のファイナンシャルプランナーの資格を有する営業職員が加入して研修を受けられる団体である。原告は、被告の強い勧め で加入し、年会費を負担させられている。 オール住生会は、主要な保険会社によって構成される一般社団法人生命保険協会が実施する研修課程である生保大学の6教科を合格した者が加入できる被告内部の会である。原告は、被告の勧めで加入し、年に一度の研修会の会費を負担させられている。 (h)異業種交流会費用 令和元年8月、原告の担当する顧客の欠席分の費用を負担させられた。また、平成30年までは、原告が担当する顧客の欠席分のみならず、出席分の費用も負担させられた。 (i)保全用封筒、郵便切手代保全業務(入院給付金、契約変更、名義変更、解約等に係る業務) について、営業職員から顧客に書類を送付する費用は、返信用の切手代も含めて全て営業職員の負担とされていた。 (j)募集資料コピー用紙トナー代営業に用いる募集資料の印刷に係るトナー代、用紙代及びコピー代として毎月2000円が徴収されているが、実際には会食を伴う会合 の費用として支出されており、使用量との対価関係すらない費用であった。 c 会社斡旋物品代について(a)ゴルフ誌ワッグル、レタスクラブワッグルはゴルフが趣味の既契約者に新規契約者を紹介してもら うために、レタスクラブは既契約者やその配偶者等を営業職員として採用するために、それぞれ被告から、10冊単位で購入し、多数配布するように厳しく指導されていた。 (b)毎年12月に顧客に配布するカレンダー スクラブは既契約者やその配偶者等を営業職員として採用するために、それぞれ被告から、10冊単位で購入し、多数配布するように厳しく指導されていた。 (b)毎年12月に顧客に配布するカレンダー原告は、顧客から被告のロゴ入りの卓上カレンダーを家族人数分欲 しいと要望され、これを断ったところ、被告に苦情が入り、上司から 顧客の要望に応じるよう厳しく指示されたことがあった。原告は、それ以降、被告のロゴ入りの卓上カレンダーを顧客に配布せざるを得なくなった。 (c)こども絵画コンクール参加賞のキャラクターグッズ原告は、こども絵画コンクールの参加賞として、被告がグッズ製作 のライセンスを有するキャラクターグッズを配布するように指示され、その費用を負担させられている。当該グッズ費用は、同コンクールが新型コロナウイルス感染症の感染拡大により中止されても返品が認められず、費用負担を強要された。 (d)飴とチョコレート 飴は職域訪問時にアンケートを書いてもらうために、チョコレートはバレンタインデーに義理チョコをプレゼントして新規契約につなげるために、購入させられている。 (ウ)本件費用を原告の負担とする合意が違法無効であることa 労働者に費用負担をさせるべきではないこと (a)労働契約においては、労働者が生み出す成果を全て使用者に帰属させつつ、その対価として賃金請求権を肯定する原則が採用されており、その代わり、労働者が使用者の指揮命令に従い業務を遂行するために要した費用については、業務遂行に伴う成果が全て使用者に帰属する以上、使用者が負担すべきである。 (b)労働契約においては、使用者は事業遂行のために労働者の 揮命令に従い業務を遂行するために要した費用については、業務遂行に伴う成果が全て使用者に帰属する以上、使用者が負担すべきである。 (b)労働契約においては、使用者は事業遂行のために労働者の労働力を利用し、そこから生じる成果や事業活動上の利益を全て取得するのであり、報償責任原則及び危険責任原則から、事業遂行費用については、特段の事情がない限り、使用者が負担すべきである。使用者責任における使用者の求償制限や労働者の逆求償権が認められていることと の均衡の観点からも、このように解すべきである。 (c)労働契約には、委任契約のような費用償還規定が存在しないが、労務供給者に労務を供給させる者は、労務供給者に経済的負担を掛けず、損失を被らせないようにする義務を負うという費用償還規定の法思想は労働契約にも及び、使用者は費用償還義務を負うと解すべきである。 (d)使用者に何らかの損害が発生した場合に備えて損害賠償の予約契約を締結することが労働基準法16条により禁止されている以上、使用者に何らかの損失が発生した場合にその補填を労働者に求める契約を締結することは、同条により禁じられている。また、使用者の業務遂行によって生じた費用を労働者に負担させることは、労働基準法2 4条1項の定める賃金全額払の原則に反する。 被告は、労働基準法89条5号を挙げて、労働者への費用負担を正当化しようとするが、同号の定める「作業用品」は、労働給付に一体不可分に結びついた道具に限るべきである。 (e)被告の労働者のうち、営業職員のみが種々の費用を負担させられ、 賃金からの控除を受けていることは、社会的身分による差別であり、憲法14条1項違反、労働基準法3条違反、公序良俗違反である。また、被告の営業職員のほぼ100%は が種々の費用を負担させられ、 賃金からの控除を受けていることは、社会的身分による差別であり、憲法14条1項違反、労働基準法3条違反、公序良俗違反である。また、被告の営業職員のほぼ100%は女性であるから、営業職員に対する差別は、構造的な女性差別であり、憲法14条1項違反、労働基準法3条及び4条違反、公序良俗違反である。 b 本件費用に係る物品の使用は強制されていること営業職員から顧客に贈与する物品については、被告における入社時の研修や日々の研修、朝礼等によって、明示的に繰り返し使用するように業務指示が出されていた。被告の指揮命令下において物品を購入させられていたのであるから、原告を含む営業職員には物品を購入する自由意 思や裁量はなかった。 c 募集手当等と費用負担に対価性は認められないこと被告の主張する募集手当等は、純然たる歩合給であり、営業活動費との対価性は認められないから、本件費用を原告の負担とすることを根拠づけるものではない。 d 税法上経費控除可能であることは適法性の根拠とならないこと 税法上の経費控除が可能であることと、経費控除が労働基準法や民法に違反していないかは別問題である。また、経費控除を伴う確定申告をすることは、原告を含む営業職員にとって、本来受けられるはずの給与所得者控除を受けられなくなったり、申告所得が低くなるなどの不利益を伴うものであり、給与からの経費控除を正当化できるものではない。 e 他の生命保険会社と同様の取扱いであることも根拠にならないこと被告独自の取扱いであっても、他の生命保険会社と同様の取扱いであっても、違法なものは違法であって、違法性が変わるも e 他の生命保険会社と同様の取扱いであることも根拠にならないこと被告独自の取扱いであっても、他の生命保険会社と同様の取扱いであっても、違法なものは違法であって、違法性が変わるものではない。 f 就業規則に定めがなければ本件合意はできず、就業規則の改定も無効であること 労働者に費用を負担させる場合には、就業規則の相対的必要記載事項となるから、本件費用の控除について就業規則に定めがない場合には、就業規則の最低基準効により、これに反する本件合意は無効である。 被告は、令和2年2月20日に就業規則を改定して営業職員に本件費用を負担させる旨の定めを置いたと主張するが、それ以前に本件合意が 有効に成立し得ないことに加えて、当該改定は労働条件の不利益変更であり、変更の必要性、合理性、相当性を欠いているから無効である。 (3)未払賃金額(争点3)についてア原告の主張 上記(1)イ及び(2)イのとおり、原告の給与から本件費用を控除することは、労働基準法24条1項違反で無効であり、控除された本件費用相当額は未払賃金となる。 被告の平成29年5月分から平成30年12月分までの未払賃金額は、別紙1のとおり43万3905円であり、平成31年1月分から令和2年 3月分までの未払賃金額は、別紙2のとおり19万3542円である。 イ被告の主張否認ないし争う。 (4)経費控除に関する不法行為の成否及び損害額(争点4)についてア原告の主張 上記(1)イ及び(2)イのとおり、原告の給与から本件費用を控除することは、労働基準法24条1項に違反しており、原告の賃金債権を侵害する不法行為である。 原告は、平 原告の主張 上記(1)イ及び(2)イのとおり、原告の給与から本件費用を控除することは、労働基準法24条1項に違反しており、原告の賃金債権を侵害する不法行為である。 原告は、平成28年4月分から平成29年4月分までの控除された本件費用相当額について、被告の不法行為に基づく損害賠償請求が可能であ り、その額は、別紙1のとおり29万2465円である。 イ被告の主張否認ないし争う。 (5)経費控除に関する不当利得の成否及び利得額(争点5)についてア原告の主張 上記(1)イ及び(2)イのとおり、被告は、労働基準法24条1項に違反して、原告の給与から本件費用相当額を控除することにより、法律上の原因のない利得を得て、原告に同額の損失を被らせている。 原告は、平成24年10月分から平成28年3月分までの控除された本件費用相当額について、悪意の不当利得の返還請求が可能であり、その額 は、別紙1のとおり117万8320円である。 また、平成28年4月分から平成29年4月分までの控除された本件費用相当額(前記(4)アの29万2465円)については、悪意の不当利得としても返還請求が可能である。 イ被告の主張否認ないし争う。 (6)雇用契約上の費用償還請求権の存否(争点6)についてア原告の主張(ア)携帯電話の業務上の必要性原告が、被告の営業職員として業務を行う際には、被告への連絡、顧客や営業先への連絡、被告からの連絡への応答、顧客や営業先からの連 絡への応答などのために携帯電話を使用する必要があり、原告は、私用のスマートフォンとは別に業務用の携帯電話を使用していた。また、被告の営業拠点では、固定電話 絡への応答、顧客や営業先からの連 絡への応答などのために携帯電話を使用する必要があり、原告は、私用のスマートフォンとは別に業務用の携帯電話を使用していた。また、被告の営業拠点では、固定電話が削減されており、私物の携帯電話を使用することが当然の前提とされていた。さらに、被告の業務上、ラインワークスというスマートフォン用アプリを使用しなければ、社内でのコミ ュニケーションや顧客への営業活動ができないにもかかわらず、スマートフォンの貸与が行われないことからも、私物のスマートフォンを被告の営業上使用すべき必要性が高かったことが裏付けられる。 (イ)営業活動費を被告が負担すべきであること上記(2)イ(ウ)aのとおり、労働者である原告は、使用者に費用 償還請求権を有するから、被告の業務に使用した携帯電話料金は、業務上の必要経費に該当し、被告が負担すべきである。 平成24年10月分から平成30年12月分までの携帯電話料金は、別紙3のとおり21万4908円であり、平成31年2月分から令和2年4月分までの携帯電話料金は、別紙4のとおり5万1116円であ る。 イ被告の主張否認ないし争う。原告は、個人用のスマートフォンも業務に使用しており、業務用と主張する携帯電話が実際に専ら業務の用にのみ使用されているかは疑わしい。また、営業職員は、固定電話を使用するよりも私物の携帯電話を使用するほうが便利であるから、私物携帯電話を業務に使用して いるにすぎないし、ラインワークスの使用も義務付けられていない。 (7)原告と被告との間の立替払契約の成否(争点7)についてア原告の主張労働者が使用者の明示又は黙示の業務指示に基づいて事務の処理をする過程で費用を立て替えた場合 ない。 (7)原告と被告との間の立替払契約の成否(争点7)についてア原告の主張労働者が使用者の明示又は黙示の業務指示に基づいて事務の処理をする過程で費用を立て替えた場合に、使用者が労働者による費用の立替の可能 性を抽象的にでも知っていれば、通常は当事者間で立替払契約が成立していると解すべきである。 本件では、上記(6)アのとおり、原告が業務に使用する携帯電話料金を立て替えており、その全額について被告が支払義務を負う。 イ被告の主張 否認ないし争う。原告の主張は、労働者個人が私的に利用契約を締結している携帯電話に使用者が業務連絡をすれば、労働者と使用者との間に当該携帯電話の利用契約にかかる料金について立替払契約が成立すると主張するものであり、暴論である。 (8)携帯電話料金に関する不当利得の成否(争点8)について ア原告の主張原告のような労働者が業務上の必要性に基づいて携帯電話を使用することは業務遂行行為であり、業務遂行行為により労働者が財産を費消した場合、使用者が労働者の財産を侵害しているといえ、使用者の利得と労働者の損失との間に相当因果関係が認められ、使用者の不当利得となる。 本件では、上記(6)アのとおり、原告が業務に携帯電話を使用することで、原告が携帯電話料金の出費を強いられる一方、被告が通信費用の出費を免れる利得を不当に得ているから、その全額について被告が返還義務を負う。 イ被告の主張 否認ないし争う。 (9)携帯電話料金に関する事務管理の成否(争点9)についてア原告の主張原告が業務上の必要性に基づいて携帯電話を使用することは、使用者の事業にかかる事務の管理と し争う。 (9)携帯電話料金に関する事務管理の成否(争点9)についてア原告の主張原告が業務上の必要性に基づいて携帯電話を使用することは、使用者の事業にかかる事務の管理となる。本件では、上記(6)アのとおり、原告 が業務に使用する携帯電話料金は、被告の意に沿う有益費の支出となり、その全額について被告が返還義務を負う。 イ被告の主張否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え、証拠(甲1、2、12、13、22、25、36~39、49、50、52~56、58~60、62、64、70、73、75~77、89、97、100、乙1、3~5、10~17、19~21、28~32、35~38、40、49~52、54、57~59、62~64、66、69、7 1~75、82~90、92、95、98、99(いずれも枝番を含む。)、証人A、原告本人(ただし、いずれも以下の認定に反する部分は除く。))及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1)本件雇用契約締結の際の経緯等ア原告は、平成5年1月12日、被告との間で、同月末まで原告を研修試補 見習い(一般課程試験に合格し、その後所定の条件を満たした場合に営業職 員となることを前提とした身分)とする旨の委嘱契約を締結した。同契約締結の際、原告は、被告から、営業活動費が営業職員の個人負担になる旨の説明はされず、同契約に係る契約書にもその旨の記載はなく、勤務のしおりも交付されなかった(乙13、原告本人)。 イ原告は、一般課程試験に合格し、平成5年2月1日、被告との間で、同月 末まで原告を研修試補とする旨の委嘱契約を締結した。同契約締結の際、原告は、被告から、営業活動費が 3、原告本人)。 イ原告は、一般課程試験に合格し、平成5年2月1日、被告との間で、同月 末まで原告を研修試補とする旨の委嘱契約を締結した。同契約締結の際、原告は、被告から、営業活動費が営業職員の個人負担になる旨の説明はされず、同契約に係る契約書にもその旨の記載はなく、勤務のしおりも交付されなかった(乙14、原告本人)。 ウ原告は、その後所定の条件を満たしたことから、平成5年3月1日、被告 との間で、本件雇用契約を締結し、営業職員として勤務を開始した。原告は、本件雇用契約締結時には、被告と契約書を交わしておらず、また、被告から勤務のしおりを受領しておらず、原告が後記エの勤務のしおりを受領したのは、本件雇用契約締結後のことであった(乙1、99、原告本人)。 エ平成4年度版の勤務のしおりには、「1.勤務の基本」として、「勤務時 間」、「休日」、「有給休暇」、「その他」の4項目が記載されており、「その他」には、「収入はすべて事業所得となります。営業活動費(企業への交通費等)は個人負担ですが必要経費となり、確定申告時に年収から控除して申告することができます。尚、申告に際して、必要経費の支出記録を求められることがありますので「必要経費ノート」に発生の都度記帳する習慣を身 につけましょう。」と記載されている(乙15・1頁)。 オ勤務のしおりは、毎年4月に全営業職員に交付される。勤務のしおりの記載内容については、変更時に説明されることがあるが、交付の際に改めて説明されることはない。平成30年度版の勤務のしおりには、「1.勤務条件概要」の中に「賃金」の項目があり、同項目には「12.その他」として、 「収入はすべて事業所得となる。営業活動費(営業活動時の交通費、物品代、 携帯端末使用料お には、「1.勤務条件概要」の中に「賃金」の項目があり、同項目には「12.その他」として、 「収入はすべて事業所得となる。営業活動費(営業活動時の交通費、物品代、 携帯端末使用料および募集資料代等)は自己負担とするが、必要経費となり確定申告時に年収から控除して申告することができる。」、「※申告に際しては、「必要経費ノート」等の整備が必要となる。」、「※家事仕様部分については必要経費にはならない。」、「※支出の相手方や支出理由等からみて、業務上必要と認められるものだけが必要経費となる。」との記載のほか、 「必要経費として認められる支出の具体例」として、「営業活動時の交通費、業務用のガソリン代、駐車場代」、「業務用自動車・バイクの自動車税・自動車取得税・損害保険料」、「業務上の電話代、年賀状・暑中見舞い等の印刷代・郵送料」、「お客さまや紹介者に対する①接待のための喫茶・食事代、②訪問手土産代、③中元・歳暮等贈答品代、④香典、餞別、お見舞金」、「携 帯端末使用料、募集資料代、文具代、カバン購入代、印鑑代、名刺代、コピー代」、「業務上使用する物品代・各種イベント自己負担費用等の会社を経由して支出した経費」と記載されている。なお、2019年度版の勤務のしおりにも同様の記載があるが、「携帯端末使用料」、「募集資料代」、「コピー代」の記載がなくなっている(乙16・2頁、乙17・2頁、乙99、 証人A)。 (2)被告の就業規則ア被告の就業規則には、後記ウの令和2年2月20日付け改正がされるまでは、営業職員の営業活動費を自己負担とし、所定の営業活動費を賃金から控除することができる旨の規定は存在していなかった。 被告は、令和元年12月26日、京都下労働基準監督署から、常時10名以上の労働者を使用して 動費を自己負担とし、所定の営業活動費を賃金から控除することができる旨の規定は存在していなかった。 被告は、令和元年12月26日、京都下労働基準監督署から、常時10名以上の労働者を使用しているにもかかわらず、法定事項(労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合における関係する事項)について、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届出を行っていないことを理由に是正勧告を受けた(乙49)。 イ上記是正勧告を受けて、被告は、令和2年1月29日、組合との団体交渉 において、組合に対し、営業職員の営業活動費については、所得税法上、事業所得とすることが認められているとの取扱いも踏まえて、従来から個人負担としており、また、本件協定に基づき賃金控除を行ってきており、その現状を変えるものではないものの、就業規則に明文化したいとの趣旨を説明の上、営業活動費について営業職員の負担とし、賃金控除する旨の定めを設け る就業規則の改正を行うことの提案をした。組合は、同年2月19日、被告の提案を了承した(乙52)。 ウ被告の営業職員就業規則について、令和2年2月20日付け改正により、下記の内容の条項が追加された(乙50、73。以下、改正前の就業規則を「旧就業規則」、改正後の就業規則を「新就業規則」、この条項を追加する 改正を「本件改定」ともいう。)。 記「(営業活動費の取扱い)第11条営業職員は、会社が特に認めた場合を除いては、自己の費用負担にて営業活動を行うものとし、会社は、当該営業活動にて生じた費用(第 2項に定める費用を含むが、これに限られない。)を支給しない。なお、営業職員の費用負担の範囲は、実費を超えないものとする。 ② 営業職員が営業活動にお 会社は、当該営業活動にて生じた費用(第 2項に定める費用を含むが、これに限られない。)を支給しない。なお、営業職員の費用負担の範囲は、実費を超えないものとする。 ② 営業職員が営業活動において使用等した以下の物品等の代金または費用については、賃金から控除することができる。 1.募集資料等有料物品購入代金 2.市場対策・販売促進経費個人負担金3.通信教育経費および各種受験経費個人負担金4.会社設備使用時の個人負担金5.会社が認めた諸研修会費6.所属長と部下職員の間で引き去り合意のあるもの ただし、次に該当するものは除く ・個人的なもの・強制的なもの・公序良俗に反するもの」エ被告の営業職員給与規程について、令和2年2月20日付け改正により、営業職員の給与について、「ただし、法令および労働組合との協定で定められたものについては、これを控除する。」と定める第3条③ただし書が追加された(乙51、74)。 (3)本件携帯端末ア営業職員は、本件携帯端末を用いて、保険商品の設計書作成、顧客とのメールのやり取り、保全書類の作成、保険契約の締結手続、顧客の必要保障額を掲示する未来診断、星占いやバイオリズムといった顧客との話題を提供するための訪問ツールの作成を行うことができる。営業職員には、パソコンが 貸与されておらず、このような作業を行うためには、本件携帯端末を用いる必要がある(原告本人、証人A)。 もっとも、後記ウのとおり、平成30年7月に保険契約締結手続自体が電子化され、本件携帯端末にて行われるようになる前は、保険契約締結のための書類は紙ベースで準備されており、営業職員は、本件携帯端末を用いなく ても営業活動を行うこと 月に保険契約締結手続自体が電子化され、本件携帯端末にて行われるようになる前は、保険契約締結のための書類は紙ベースで準備されており、営業職員は、本件携帯端末を用いなく ても営業活動を行うことが可能であった(証人A)。 イ登録翌月以降、月額3100円を給与引去りすることに同意することを内容とする原告名義の記名押印のある「Vite 貸与申込書」(処理日は平成18年7月1日付け)と、登録翌月以降、月額2950円を給与引去りすることに同意することを内容とする原告名義の署名押印のある「Lief 貸与申込書」がそれぞれ存在しており、これらの貸与申込書の原告名下の各印影は、いずれも原告の印章によるものである(乙19、20、原告本人)。 ウ被告は、従前は「極力Liefを使う」という推奨的な取組をしていたが、平成30年7月からは保険契約手続を含めた総合端末としての新機能を搭載した新Liefを導入し、本件携帯端末を常時必携として営業職員にその 使用を義務付けることとし、それに伴い、同月から本件携帯端末の使用料を 無償化した(乙3)。 原告の給与からは、携帯端末使用料として、平成24年6月分までは毎月3100円が、同年7月分から平成30年6月分までは毎月2950円が、それぞれ控除されていたが、同年7月分以降は控除されなくなった(甲1)。 エ原告は、本件携帯端末の使用開始後、自身の給与から本件携帯端末使用料 が控除されているのを確認したが、その後も本件携帯端末を使用して業務を行っていた(原告本人)。 (4)機関控除金ア機関控除金の対象費目機関控除金として、実際に原告の給与から控除されていたものは、①機関 控除金に係る物品等の費用(スミセイウィークリー代、オーナーズ通信代、花代、封 4)機関控除金ア機関控除金の対象費目機関控除金として、実際に原告の給与から控除されていたものは、①機関 控除金に係る物品等の費用(スミセイウィークリー代、オーナーズ通信代、花代、封筒代、切手代、ふぉーゆークラブ代、常備薬代、京都おすすめスポットカレンダー代、カレンダー袋代、こども絵画コンクールオリジナルカレンダー代、JAIFA年会費、オール住生会会費、異業種交流会費用等)と、②募集資料コピー用紙トナー代である(甲49、55、乙69の1・2、乙 75)。 イ機関控除金に係る物品等の注文・精算方法営業職員は、機関控除金に係る物品等を注文する際には、各物品等に係る単価の記載されたチラシを見て、各支部の拠点事務担当者に自分の注文数を伝えるか、又は所定の注文用紙に注文数を記入する方法で注文する。拠点事 務担当者は、支部単位で注文数を取りまとめ、システムに給与からの控除金額を入力し、被告本社のコンピューターに伝送する。被告本社では、システムにより処理を行い、各営業職員の賃金台帳等に控除が反映される。控除結果の一覧は、各支部へ回送され、拠点事務担当者が内容を確認し、問題がなければ、これを基に控除金額と同額が各物品等を提供した第三者に支払われ る。そして、これら一連の処理の過程で、給与・報酬支給明細書、機関控除 金・斡旋物品代明細リスト及び個人別課税明細書が自動的に作成され、営業職員は、毎月給与支給日に本件携帯端末の画面上で給与明細書・成績リスト照会を行うことによって、これらを確認又は印刷することができ、機関控除金の金額や内訳を確認できる(乙10~12、29、30、58、59、66、87、99)。 ウ機関控除金に係る物品等の具体的内容(ア)スミセイウィークリー ことができ、機関控除金の金額や内訳を確認できる(乙10~12、29、30、58、59、66、87、99)。 ウ機関控除金に係る物品等の具体的内容(ア)スミセイウィークリー代スミセイウィークリーは、ニュース、コラム、星占い等を掲載した被告が週1回発行するチラシである。被告が使用する初期教育研修用テキストには、スミセイウィークリーなどのチラシを使用した顧客の新規開拓方法 が記載されている。スミセイウィークリーは、所定の新規注文書兼部数変更届にて注文することとされ、令和元年9月納品分までは、1部5.0円であったが、同年10月納品分からは、消費税増税に伴い、1部5.1円に値上げされた。このとき、支社の負担する情報提供料も、月額8300円から8500円に値上げされた(甲12、60、乙82)。 (イ)オーナーズ通信代オーナーズ通信とは、訪問先企業の経営者の宛名入り封筒に、支社長名挨拶状、税務・法務等の経営お役立ち情報チラシ、オーナーズi・ベストブック等の定期刊行物、各支社にて行っている異業種交流会・セミナー等の案内文書など、時期に応じた様々な情報を封入することができる法人向 けの定期訪問ツールで、月1回発刊されているものである。被告が使用する初期教育研修用テキストや教育用チラシには、オーナーズ通信を使用した顧客の新規開拓方法が記載されている。毎月5日までにオーナーズ通信の届け先企業を本件携帯端末に登録することとされている。オーナーズ通信に係る費用は、宛名窓あき封筒が10円、宛名差込チラシが5円、オー ナーズiが50円、ベストブックが70円とされている(甲12、13、 乙5)。 (ウ)花代被告の営業職員には、花一輪活 筒が10円、宛名差込チラシが5円、オー ナーズiが50円、ベストブックが70円とされている(甲12、13、 乙5)。 (ウ)花代被告の営業職員には、花一輪活動が推奨されている。花一輪活動とは、オーナーズ通信を使用した定期訪問を断られた際に、企業の受付等に一輪挿しの花瓶を置かせてもらい、毎週曜日を決めて生花を届けることで、定 期訪問をしやすくするためのものである(甲12)。 花一輪活動に用いる生花については、支部ごとに使用した花の本数のとりまとめを行い、機関控除金として花代を控除して、花代をまとめて花屋に支払うこととされている(乙11、31、32)。 (エ)封筒代、切手代 顧客への郵送代を営業部が一時的に立て替える場合の取扱いについて、営業職員としての業務の遂行上必然的に送付すべきこととなる書類等の郵送代については、当該営業職員の確認を得られなくても、当該営業職員の負担とし、必然的に送付すべきではない書類か、明確でない場合の郵送代については、支部長が支社総務部長に判断を仰ぎ、当該営業職員の了解 を取ったうえで郵送代を給与から控除することとされている(甲58)。 (オ)ふぉーゆークラブ代ふぉーゆークラブは、既契約者へのアフターフォローに役立つツールを提供するサービスであり、年賀状、暑中見舞い、誕生日カードを注文して作成できる。年賀状は、1通76円又は68円、誕生日カードは1通20 円又は15円、オリジナル封筒・アドレスシールセットは1セット2000円と設定されている(甲59、乙54)。 (カ)京都おすすめスポットカレンダー代、カレンダー袋代京都おすすめスポットカレンダーは、1か月分のカレンダーに、京都 は1セット2000円と設定されている(甲59、乙54)。 (カ)京都おすすめスポットカレンダー代、カレンダー袋代京都おすすめスポットカレンダーは、1か月分のカレンダーに、京都府内の観光地の写真8枚と当月京都府内で開催されるイベントのスケジュ ールが記載されたカレンダーである。同カレンダーは、令和元年12月納 品分までは1部48円であったが、令和2年1月納品分以降は、消費税増税に伴い、1部54円に値上げされた。ビニール製のカレンダー袋は、1つ1.2円である(甲52、62)。 (キ)こども絵画コンクールオリジナルカレンダー代こども絵画コンクールは、幼児・小学生・中学生を対象にした絵画コン クールであり、特別賞、金賞、銀賞を受賞した105作品をルーブル美術館に展示させるというものである。被告は、同コンクールをCSR活動として主催しており、同コンクール出展のために配布した画用紙1枚につき1円、応募作品1点につき10円を公益財団法人日本ユニセフ協会に寄付している。こども絵画コンクールのオリジナルカレンダーは、絵画コンク ールの応募作品をプリントした1年分のカレンダーであり、A4版が235円、A3判が275円である(甲36~39、乙10、57)。 (ク)常備薬代住友生命健康保険組合の実施する家庭用常備薬の斡旋は、メーカー希望小売価格よりも安い価格で医薬品の購入を斡旋するもので、対象となる医 薬品には被告のロゴ等は付されていない(乙87)。 (ケ)JAIFA年会費、オール住生会会費JAIFA(生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)とは、生命保険会社の枠を超えて、各社の生命保険営業職員が集まり、互いに研鑽しながら生命保険の役割を国民に分か 、オール住生会会費JAIFA(生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)とは、生命保険会社の枠を超えて、各社の生命保険営業職員が集まり、互いに研鑽しながら生命保険の役割を国民に分かりやすく伝え、併せて広く社会に貢献 するための活動を行う団体とされ、保険会社の営業職員が研修を受けるために加入できるものである(弁論の全趣旨)。 オール住生会は、主要な保険会社によって構成される一般社団法人生命保険協会が実施する研修課程である生保大学で6科目合格し、かつ、社内成績基準を満たした者で、支社の推薦を受けて一般社団法人生命保険協会 に認められたトータル・ライフ・コンサルタントとなった者が任意で加入 できるTLC会の被告社内の部会である(弁論の全趣旨)。 (コ)異業種交流会費用異業種交流会兼名刺交換会については、参加する顧客の人数に応じて、営業職員の負担が変動する場合がある。平成27年度においては、原告の負担額は0円であり、平成29年度においては、キャンセルした顧客の人 数に3000円を乗じた額とされ、平成30年度においては、参加した顧客1人当たり3000円(顧客4人までは1人当たり1500円)とされた。営業職員の参加費は、支部負担額として、異業種交流会兼名刺交換会の費用の一部に充当され、残額は支社が負担していた。平成30年度開催の異業種交流会兼名刺交換会では、総額412万3248円の費用がかか り、支部負担額はそのうちの85万8000円であった(乙35の1~乙38、58、89、90の1・2)。 エ募集資料コピー用紙トナー代原告を含む営業職員の給与からは、平成30年12月まで、毎月2000円の定額の募集資料コピー用紙トナー代が引き去られていた。営 9、90の1・2)。 エ募集資料コピー用紙トナー代原告を含む営業職員の給与からは、平成30年12月まで、毎月2000円の定額の募集資料コピー用紙トナー代が引き去られていた。営業職員が印 刷する募集資料としては、保険設計書があり、1プラン当たり10ないし25頁程度のカラー印刷が必要であった。本件携帯端末の使用が義務付けられる前、原告は月平均30人程度の顧客に対して設計書を示して提案をしていた。募集資料コピー用紙トナー代は、休職中などのコピーを行う余地のない営業職員からは控除されておらず、例えば、個人コード497614の営業 職員は、平成29年12月11日から平成30年9月27日まで介護休暇を取得していたところ、平成29年12月分及び平成30年9月分には2000円の募集資料コピー用紙トナー代を負担しているものの、その間の平成30年1月分から同年8月分までの間は同額の引去りが行われていない(乙88の1~12、原告本人、証人A)。 (5)会社斡旋物品代 ア会社斡旋物品代の対象費目会社斡旋物品代として、実際に原告の給与から控除されていたものは、本件携帯端末注文分としては、こども絵画コンクール参加賞のキャラクターグッズ(PスケッチブックB4、P文具用ポーチ、Pクリアケース等。Pとはアニメーションキャラクターであるピングーのこと。)、レタスクラブ、ゴ ルフ誌ワッグル、ロゴ入りのチョコレート・飴等に係る代金であり、本件携帯端末注文分以外としては、ファミリーショットカレンダー、名刺、名前シール、名前スタンプ等に係る代金である(甲49、乙28、69の1・2、乙75)。 イ会社斡旋物品の注文・精算方法 住生物産の提供する販促品等で、住友生命販促品総合カタログに ル、名前スタンプ等に係る代金である(甲49、乙28、69の1・2、乙75)。 イ会社斡旋物品の注文・精算方法 住生物産の提供する販促品等で、住友生命販促品総合カタログに掲載されている物品は、本件携帯端末の斡旋注文システムを用いて注文することができる。営業職員は、上記物品について、自ら又は拠点事務担当者に当該営業職員の個人コードを使わせて、本件携帯端末を用いてオンラインで注文を行う。注文数等を入力して送信すると、給与引去金額・控除金額がポップアッ プで表示されるので、これを確認し、出力された注文入力リストに押印してから事務担当者に交付して注文する(甲22、乙21、40、63の1~8、乙99)。 住友生命販促品総合カタログに掲載されている物品のうち、名刺、名前シール、名前スタンプ等を含む用度品の注文については、住生物産注文用ウェ ブサイトであるスミブツドットコムを利用してその注文画面により、又は所定の注文用紙を用いてファクシミリにより、注文する(以下「物産個人注文物品代」という。甲22、乙40、63の8、乙64、71、72の1~3、乙99)。 各営業職員の上記注文内容は、被告本社のコンピューターに注文データと して集約され、システムにより処理されて、各営業職員の給与から控除が行 われる。各営業職員の給与から控除された金額は、被告本社に集約され、それぞれの所管から控除金額と同額が各物品を提供した第三者に支払われる。 各営業職員は、注文時に控除予定金額を確認できるようになっているとともに、毎月給与支給日に、上記一連の処理の過程で自動的に作成された給与・報酬支給明細書や機関控除金・斡旋物品代明細リストにより、会社斡旋物品 代(物産個人注文物品代を含む。)を確認す ているとともに、毎月給与支給日に、上記一連の処理の過程で自動的に作成された給与・報酬支給明細書や機関控除金・斡旋物品代明細リストにより、会社斡旋物品 代(物産個人注文物品代を含む。)を確認することができる(乙40、99)。 ウ会社斡旋物品の具体的内容(ア)こども絵画コンクール参加賞のキャラクターグッズこども絵画コンクールの参加賞として、ピングーのキャラクターグッズの斡旋が行われており、本件携帯端末を用いて注文する。令和2年度は、 こども絵画コンクールの開催が中止され、同年に購入した参加賞は、来年度も使用できること、参加賞としてお菓子を購入した場合には買取対応がされることが通知された(甲37、39、乙57、85、86、証人A)。 (イ)レタスクラブ、ゴルフ誌ワッグル定期刊行物については、注文用紙に注文数を記入するか本件携帯端末を 使用し、拠点事務担当者に伝えて、支部で取りまとめの上で注文することとされている。レタスクラブ及びゴルフ誌ワッグルには、支部取扱い単位が10冊であるとはされていたものの、営業職員個人が10冊単位で購入しなければならないという決まりはない(甲25、49、73、乙62、95の1・2、原告本人)。 (6)原告と被告との交渉経緯ア賃金控除に対する異議原告は、平成30年11月27日、被告京都支社総務部長に対し、平成31年1月から封筒代、京都おすすめスポットカレンダー代及びオーナーズ通信代について、給与から一方的に控除する旨を通知されたが、同意できず、 給与から控除しないよう求めること、賃金から何らかの金員を控除するに当 たり、朝礼で説明したことをもって営業職員が同意したとは認められないこと、営業職員が同意しないことも自由 ず、 給与から控除しないよう求めること、賃金から何らかの金員を控除するに当 たり、朝礼で説明したことをもって営業職員が同意したとは認められないこと、営業職員が同意しないことも自由である旨を明示した上で同意した者のみから控除を行うことを説明する必要があることを内容とする通知をした。 これに対し、被告京都支社総務部長は、平成30年12月3日、オーナーズ通信等について、営業職員が個人負担で購入すべき物であり、活動推進支援 を行ってきたが、支援を終了することにしたこと、オーナーズ通信等の代金控除について、営業職員から個別に同意を得ることは不要であることを回答した(甲53)。 イ賃金控除に関わる質問原告は、平成30年12月25日、被告京都支社総務部長を経由して、コ ンプライアンス推進室長に対し、「個人負担とされる運営費について」と題する通知書を提出し、封筒代及び募集資料コピー用紙代の賃金からの控除に関わる質問をした。これに対し、被告京都支社総務部長からは、平成31年1月4日、何のために必要な質問であるか不明であり、可能な範囲での回答となると前置きした上で、募集資料コピー用紙代に余剰が生じていないこと 等を回答した(甲54)。 ウ扱者変更に係るやり取り(ア)被告には、「著しいサービス不履行によるA(B)扱者解除処理」という定めがあり、契約者からの手続依頼を担当者である営業職員が長期間放置するなど著しいサービス不履行があり、かつ、それによって契約者から 苦情があり、担当者変更を明確に希望された場合には、支社処理にて扱者を解除することができるとされている。その際には、扱者解除とされる者から、必ず扱者終了に関する確認書を取り寄せ、苦情受付票兼報告書を準備することとされている(乙83)。 場合には、支社処理にて扱者を解除することができるとされている。その際には、扱者解除とされる者から、必ず扱者終了に関する確認書を取り寄せ、苦情受付票兼報告書を準備することとされている(乙83)。 (イ)令和3年1月5日、原告の顧客の子から、被告に対し、原告による保険 金請求に必要な診断書の説明がおかしい旨の苦情があり、同年2月1日、 さらに同じ原告の顧客の子から、原告が再度郵送すると言っていた書類が届かず、原告の上司からあるはずの連絡もなく、被告京都支社が信用できない旨の苦情があった。被告京都支社a営業部のB支部長は、同月8日、原告に対し、原告の顧客の子から担当者を変更してほしいとの強い要望が出されているため、扱者終了に関する確認書に署名押印して提出するよう 伝えるメールを送信した。これに対し、原告は、扱者終了に関する確認書に署名押印しなかったが、特に処分等は受けず、現在も同顧客の担当になっている(甲64、70、乙84の1・2、原告本人、証人A)。 (7)営業職員の営業活動ア営業職員の業務は、主として、生命保険の新契約募集、既契約者サービス 活動等であり、そのうち新契約募集については各営業職員の社会生活上の基盤やコミュニティ(家族、友人関係等)を利用したり、各営業職員が継続的に訪問している既契約者や企業を訪問したりして行っていくことがスタンダードな方法であるところ、上記社会生活上の基盤やコミュニティは各営業職員によって様々であることから、営業活動強化キャンペーンは定期的に行 われているものの、個別具体的な活動内容は各営業職員に任されている。また、営業職員の業務のうち既契約者サービス活動(主に契約内容の確認、最新情報の案内等のアフターフォロー活動)についても、活動結果の日報への入力は行われて 体的な活動内容は各営業職員に任されている。また、営業職員の業務のうち既契約者サービス活動(主に契約内容の確認、最新情報の案内等のアフターフォロー活動)についても、活動結果の日報への入力は行われているものの、営業職員と顧客との人的関係等を踏まえて、個別具体的な活動内容は各営業職員に任されている(乙99、証人A)。 イ営業活動において、機関控除金に係る物品や会社斡旋物品を利用するか否かは、被告からの推奨はあるものの、何をどれだけ購入するかが一律に定められているわけではなく、例えば、顧客に対して卓上カレンダーを配布するか否かなども、最終的には各営業職員の判断である。被告において、機関控除金又は会社斡旋物品代に係る物品を営業に使用しなかったことをもって 何らかの処分を受けた営業職員は存在しない(原告本人、証人A)。 原告の所属する京都支社においては、スミセイウィークリーについては各月平均して1割程度の営業職員しか利用しておらず、オーナーズ通信についても、中小企業の社長向けの内容であるため、中小企業を顧客として有する営業職員が利用するにすぎず、5割程度の利用にとどまっている(乙4、5)。 原告自身も、訪問する月によって顧客に持っていく物品を選んでおり、ア プローチ商品を使って顧客を訪問することもあれば、使わずに訪問することもあり様々である。飴や義理チョコを配布するか否か、配布するとして誰に配布するかは、原告が判断している(原告本人)。 (8)原告が負担していた費用及び携帯電話に係る事情ア原告の給与から、携帯端末使用料、機関控除金及び会社斡旋物品代が、平 成24年10月分から平成30年12月分までは別紙1のとおり、平成31年1月分から令和2年3月分までは別紙2のとおり、控除された。ただし ら、携帯端末使用料、機関控除金及び会社斡旋物品代が、平 成24年10月分から平成30年12月分までは別紙1のとおり、平成31年1月分から令和2年3月分までは別紙2のとおり、控除された。ただし、平成27年1月分の機関控除金は1万0511円であり、令和元年12月分の会社斡旋物品代5万7118円は、正確には会社斡旋物品代との費目で控除された4万7178円と物産個人注文物品代との費目で控除された99 40円の合計額である(甲1、49)。 イ原告は、携帯電話を2回線(電話番号080で始まるスマートフォンと、電話番号090で始まるいわゆるガラケー。以下、前者を「原告スマホ」といい、後者を「本件携帯電話」という。)契約して使用している。原告が、被告での営業に使用していると主張する本件携帯電話の電話料金は、平成2 4年10月分から平成30年12月分までは別紙3のとおり、平成31年2月分から令和2年4月分までは別紙4のとおりである。ただし、平成27年4月分は3856円であり、平成29年12月分は3464円である(甲2、50)。 ウ本件携帯電話での令和元年11月から令和2年3月までの通話及びショ ートメール送信の相手は、ほとんどが被告、顧客又は原告が営業活動をして いた未加入者であるが、中央郵便局、消費者センター、京都下労働基準監督署、三井住友カード等、原告の営業活動との関連性が必ずしも明らかではない相手も含まれている(甲97、100)。 エ被告において、令和2年9月24日から、営業職員の希望者に対し、私物スマートフォンにラインワークス(スマートフォン用アプリ)を被告の費用 負担で導入することが通知された。ラインワークスを介して業務連絡がされたり、ラインワークスを用いた営業目標が掲げられ 、私物スマートフォンにラインワークス(スマートフォン用アプリ)を被告の費用 負担で導入することが通知された。ラインワークスを介して業務連絡がされたり、ラインワークスを用いた営業目標が掲げられることもあった。原告は、私物スマートフォンの業務上利用に関する誓約書を提出の上、ラインワークスを使用していたこともあったが、令和4年2月、京都支社のコンプライアンスオフィサー及び支部長に申告の上、原告スマホからラインワークスを削 除した(甲56、75の1~甲77、89、乙92、98、原告本人)。 2 争点1(賃金控除に関する本件協定の有効性)について(1)被告は、組合との間で、営業職員の給与から、「募集資料等有料物品購入代金」、「市場対策・販売促進経費個人負担金」、「通信教育経費および各種受験経費個人負担金」、「会社設備使用時の個人負担金」、「会社が認めた諸研 修会費」など、所定の費目を控除することができる旨を定めた本件協定を締結しており、これが労働基準法24条1項ただし書の「協定」に該当すると主張するのに対し、原告は、本件協定は、使用者が負担すべきものを労働者に負担させており、かつ、その具体的費目や金額が特定されていないから、事理明白なものであるとはいえず、無効であると主張する。 そこで、本件協定が事理明白なもので有効といえるかについて検討する。 (2)賃金は、直接労働者に、その全額を支払わなければならず(賃金全額払の原則。労働基準法24条1項本文)、使用者が賃金支払の際に適法に控除を行うためには、書面による協定が必要である(同項ただし書)。賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もっ て労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのな である(同項ただし書)。賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もっ て労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのな いようにしてその保護を図ろうとするものである。 同項ただし書については、購買代金、社宅、寮その他の福利、厚生施設の費用、社内預金、組合費等、事理明白なものについてのみ、労使協定によって賃金から控除することを認める趣旨であるとされ、少なくとも①控除の対象となる具体的な項目、②各項目別に定める控除を行う賃金支払日が記載される必要 があると考えられている(昭和27年9月20日基発675号、平成11年3月31日基発168号。甲20)。そして、ここでいう事理明白であることについて、厚生労働省は、社宅や寮の費用など、労働者が当然に支払うべきことが明らかなものを意味するとし、例えば、労働者が自主的に募金に応じる場合にはその募金額はこれに該当すると考えられる一方で、募金に応じる意思がな い労働者の賃金から義援金として一律に控除することは認められないと解している(乙27参照)。 以上を踏まえると、事理明白なものとは、労働者が当然に支払うべきことが明らかなものであり、控除の対象となることが労働者にとって識別可能な程度に特定されているものでなければならないが、労働者がその自由な意思に基づ いて控除することに同意したものであれば、労働者が当然に支払うべきことが明らかなものに該当すると認めることができ、上記規定に違反するものとはいえないと解するのが相当である。 (3)これを本件についてみるに、機関控除金に係る物品代及び会社斡旋物品代は本件協定に定める項目のうち「募集資料等有料物品購入代金」に該当し、異業 種交流会兼名刺交換会の費用は「市 である。 (3)これを本件についてみるに、機関控除金に係る物品代及び会社斡旋物品代は本件協定に定める項目のうち「募集資料等有料物品購入代金」に該当し、異業 種交流会兼名刺交換会の費用は「市場対策・販売促進経費個人負担金」に該当し、本件携帯端末使用料は「会社設備使用時の個人負担金」に該当し、JAIFA年会費及びオール住生会会費は「会社が認めた諸研修会費」に該当するとみることができ、控除の対象となることが労働者にとって識別可能な程度には特定されているものと認められ、また、控除される賃金支払日も「毎月24日」 と定められている(乙9)。 そうすると、上記控除対象項目が、労働者がその自由な意思に基づいて同意したものであれば、労働者が当然に支払うべきことが明らかなものとして、上記規定に違反するものではないといえる。 (4)したがって、本件協定は、労働者がその自由な意思に基づいて同意したものに適用する限りにおいては、事理明白なものであり、有効であると認められる。 3 争点2(賃金から経費を控除する合意の存否及びその有効性)について本件協定は、労働基準法24条1項ただし書の協定として、同項本文の原則違反を免れさせるものであるが、労働契約上、賃金からの控除を適法なものとして認めるためには、別途、労働協約又は就業規則に控除の根拠規定を設けるか、対象労働者の同意を得ることが必要である。 被告は、原告との間の合意の存在を主張するので、以下においては、上記2で判示したところを踏まえて、原告と被告との間で、原告の賃金から本件費用を控除することについての合意の存否及びその有効性について検討する。 (1)本件合意の存否についてア被告は、本件雇用契約締結に先立ち、原告に対し、勤務のしおりを交付し て勤務の 費用を控除することについての合意の存否及びその有効性について検討する。 (1)本件合意の存否についてア被告は、本件雇用契約締結に先立ち、原告に対し、勤務のしおりを交付し て勤務のしおり記載の労働条件を雇用契約の内容とすることを説明し、本件雇用契約締結日である平成5年3月1日、原告との間で、営業活動費を原告の負担とする旨の本件合意をその内容に含む本件雇用契約を締結したと主張する。 イしかしながら、被告が、本件雇用契約に先立って原告との間で締結した平 成5年1月12日付け及び同年2月1日付け各委嘱契約に係る契約書には、営業活動費が営業職員の個人負担になる旨の記載はなく、また、同年3月1日の本件雇用契約締結の際には、契約書が交わされていない(前記認定事実(1)アないしウ)。そして、勤務のしおりが原告に交付されたのは、本件雇用契約の締結後であった(前記認定事実(1)ウ)。この点、証人Aは、 本件雇用契約締結前の委嘱契約の段階で、支部長又は拠点事務担当者が原告 に勤務のしおりを手交して説明していたと供述するが、証人Aは、京都支社やa営業部で勤務したことはなく、平成5年当時の原告採用時に係る状況を具体的に認識しているとはいい難いため、同人の供述を直ちに採用することはできない。 また、当時の平成4年度版の勤務のしおりを見ても、「勤務の基本」の「そ の他」の項目に、営業活動費が個人負担である旨の抽象的な記載があるにすぎず(前記認定事実(1)エ)、仮に勤務のしおりが本件雇用契約締結時に交付されたとしても、上記記載をもって、営業活動費が全て原告の負担となり、かつ、それを賃金から控除することについて原告が同意したことになるとはいい難い。 さらに、勤務のしおり自体は、毎年全営業職 ても、上記記載をもって、営業活動費が全て原告の負担となり、かつ、それを賃金から控除することについて原告が同意したことになるとはいい難い。 さらに、勤務のしおり自体は、毎年全営業職員に交付されているものの、交付される際にその内容について改めて説明はされておらず(前記認定事実(1)オ)、毎年の勤務のしおりの交付によって、本件雇用契約時の本件合意の存在が直ちに裏付けられるとするのも困難である。 ウ以上によれば、本件雇用契約締結時に、原告と被告との間で本件合意が成 立したとはいえず、被告の上記主張は採用できない。 (2)費用負担に関する個別合意についてア原告は、労働契約において労働者に費用負担をさせることは、憲法、民法、労働基準法に反するものであって許されず、違法であると主張し、これに沿う意見書(甲101)を提出するので、以下検討する。 まず、上記意見書は、営業職員に対し、事業遂行上発生する営業活動費を原則として全額負担させることの適法性をその検討事項とするものであるところ、本件においては、前記(1)で判断したとおり、営業活動費を原告の負担とする旨の本件合意が成立したとは認められず、問題となるのは、各物品の購入等に係る個別合意の適法性ということになる。 イ原告は、労働契約上、労働者が生み出す成果を使用者に帰属させつつ、そ の対価として労働者に賃金請求権を肯定する一般雇用原則が存在することを根拠に、使用者の指揮命令下における事業遂行のために生じた費用は使用者が負担すべきであると主張する。 しかしながら、上記原則をもって使用者と労働者の個別合意により事業遂行上の費用の一部を労働者の負担とすることが直ちに排斥されるとまでは いえず、むしろ労働基準法89条5号の 主張する。 しかしながら、上記原則をもって使用者と労働者の個別合意により事業遂行上の費用の一部を労働者の負担とすることが直ちに排斥されるとまでは いえず、むしろ労働基準法89条5号のように、就業規則によって労働者に費用負担をさせる場合があることを定めた条項が存在することからすれば、使用者と労働者との間の合意によりこれを定めることも許容されているというべきである。 ウ原告は、報償責任原則及び危険責任原則からすれば、特段の事情がない限 り、業務遂行費用は使用者が負担すべきであると主張する。 しかしながら、上記アと同様に、これらの原則をもって使用者と労働者の個別合意により事業遂行上の費用の一部を労働者の負担とすることが直ちに排斥されるとまではいえないと解される。 エ原告は、委任契約における費用償還規定(民法650条1項)の法思想が 労働契約に及ぶことを主張の根拠に挙げるが、同規定は任意規定であり、当事者間の合意による排除も可能であるから、同規定の存在により、費用負担に関する個別合意がおよそ違法になるとはいえない。 オ原告は、被告が業務遂行費用を営業職員に負担させることは、労働基準法16条及び24条1項に違反するものであり、同法89条5号の適用範囲は 制限すべきであると主張する。 しかしながら、業務遂行費用の負担に関する個別合意は、違約金を定め、損害賠償額を予定する契約とは異なり、必ずしも労働者を身分的に拘束したり、労働者に過度な負担を負わせるともいえないから、個別合意をすることが直ちに同条の趣旨に反するとまではいえない。 また、労働基準法24条1項については、前記2で判示したとおり、労働 者がその自由な意思に基づいて同意したものであれば、労働者 が直ちに同条の趣旨に反するとまではいえない。 また、労働基準法24条1項については、前記2で判示したとおり、労働 者がその自由な意思に基づいて同意したものであれば、労働者に費用負担をさせても同項違反となるものではない。 カ原告は、営業職員にだけ費用負担をさせるのは社会的身分に基づく差別又は性差別であり、公序良俗に反して無効であると主張する。 しかしながら、本件において、原告を含む営業職員の負担とされている費 用は、保険契約の締結及び保全に向けた営業活動に伴い生じる費用であって、営業職員以外の職員とは、その職務の内容に応じて違いを設けているものであるから、社会的身分又は性別に基づく不合理な差別であるとは認め難い。 キ以上によれば、原告の主張はいずれも採用できず、本件費用の負担に関する個別合意の締結が、直ちに憲法、民法、労働基準法に違反し、無効となる とはいえないと解される。 クもっとも、賃金全額払の原則の趣旨とするところに鑑みれば、賃金からの控除が適法に認められるためには、労働者がその自由な意思に基づいて合意したものである必要があるというべきである。そして、本件においては、被告は、原告を含む被告の全従業員(管理監督者等の一部の従業員を除く。) が加入する組合との間で、本件協定を締結しているものではあるが、そのような経緯があっても、控除の対象が、使用者から義務付けられ、労働者にとって選択の余地がない営業活動費である場合には、自由な意思に基づく合意とはいえず、賃金からの控除は許されないものと解される。 (3)各費用に係る個別合意の存否及びその有効性について そこで次に、原告の賃金から控除されている本件費用の各費目について、上記(2)クの観点を踏まえながら、原告 されないものと解される。 (3)各費用に係る個別合意の存否及びその有効性について そこで次に、原告の賃金から控除されている本件費用の各費目について、上記(2)クの観点を踏まえながら、原告と被告との間でその旨の個別合意が有効に成立しているといえるかについて検討する。 ア本件携帯端末使用料(平成24年10月分から平成30年6月分まで)について 前記認定事実によれば、本件携帯端末は、保険商品の設計書作成、顧客と のメールのやり取り、顧客との話題を提供するための訪問ツールの作成を行うことができるものであり、パソコンが貸与されていない営業職員にとっては、これらの作業を行うためには本件携帯端末を用いる必要があったが、平成30年7月に保険契約締結手続自体が電子化されて本件携帯端末にて行われるようになる前は、本件携帯端末を用いなくても営業活動を行うことが 可能であり(前記認定事実(3)ア)、同年6月までは、本件携帯端末は常時必携ではなく、その使用も義務付けられているものではなかった(前記認定事実(3)ウ)。 原告は、平成18年7月頃から「Vite」を、平成24年7月頃からその後継機である「Lief」を使用していたところ(前記前提事実(2)イ、 前記認定事実(3)ウ)、その使用時期に照らせば、原告名義の「Vite貸与申込書」(乙19)は平成18年7月頃に、原告名義の「Lief 貸与申込書」(乙20)は平成24年7月頃に、それぞれ作成されたものであると考えられる。そして、原告の請求期間との関係では、乙第20号証の成立の真正が問題になる。 原告は、上記各申込書はいずれも自ら作成した書面ではないと主張するところ、乙第20号証の署名は、原告の陳述書(甲100)の署名と比較する 、乙第20号証の成立の真正が問題になる。 原告は、上記各申込書はいずれも自ら作成した書面ではないと主張するところ、乙第20号証の署名は、原告の陳述書(甲100)の署名と比較すると、字体がかなり異なり、原告自身の署名であるとは認め難い。 しかしながら、上記各申込書の原告名下の各印影が原告の印章によることは争いがないところ、原告は、その本人尋問において、押印した記憶がない と供述するものの、作成時期が約6年異なる各申込書のいずれにも原告の印鑑が用いられている理由については、執務机の鍵のかからない引出しに印鑑を入れていたと説明するのみである。一方で、原告の賃金から本件携帯端末使用料として、平成24年6月までは月額3100円が、同年7月から平成30年6月までは月額2950円が控除されていたこと、原告は、平成18 年7月頃から長年にわたり、上記月額使用料が月々の賃金から控除されてい ることを認識しつつ、本件携帯端末を使用し続けていたことが認められる(前記認定事実(3)ウ、エ)。 そうすると、乙第20号証の貸与申込書の成立の真正について、これを否定するに足りる十分な反証があるとはいえず、原告は、平成24年7月頃、被告との間で、本件携帯端末(Lief)の貸与及びその月額使用料を給与 引去りの方法により支払う旨の合意をしたものと認められ、平成24年10月分から平成30年6月分までの本件携帯端末使用料については、この合意に基づいて賃金から控除されたものといえる。 イ機関控除金に係る費用(平成24年10月分から令和2年3月分まで)について ①機関控除金に係る物品等の費用と、②募集資料コピー用紙トナー代とに分けて検討する。 (ア)機関控除金に係る物品等の費用機関控除金に係る物 ら令和2年3月分まで)について ①機関控除金に係る物品等の費用と、②募集資料コピー用紙トナー代とに分けて検討する。 (ア)機関控除金に係る物品等の費用機関控除金に係る物品等は、各営業職員が、所定の注文書等を用いて注文するところ、当該注文書又は当該物品のチラシには、当該物品等の単価 が明記されており、当該営業職員は、予め物品等の購入代金を把握した上で注文するものである。各営業職員は、本件携帯端末の画面上で、給与・報酬支給明細書や機関控除金・斡旋物品代明細リストを確認することにより、賃金から控除される機関控除金の金額や内訳を確認できる(前記認定事実(4)イ)。 原告は、平成5年3月に被告の営業職員となって以降、営業活動費は自己負担である旨が記載された勤務のしおりを毎年4月に交付され(前記認定事実(1)オ)、原告の請求期間の始期である平成24年10月に差し掛かるまでの約20年弱の間、機関控除金に係る物品等について、当該物品等を注文すれば、原告の給与から当該物品等の代金が引き去られること を承知の上、所定の注文書等により注文をしてきており、その状況下で、 上記請求期間中も引き続き注文をしていたのであるから、原告と被告との間で、その注文の都度、機関控除金に係る物品等について、当該物品等を原告の費用負担で購入し、当該購入代金を原告の給与から引き去ることについての個別合意が成立したといえる。 この点、原告は、機関控除金に係る物品は被告から自己負担での利用を 強制されていたもので、合意はしていない旨主張するが、営業活動において機関控除金に係る物品を利用するか否かについては、被告からの推奨はあるものの、最終的には各営業職員の判断であり(前記認定事実(7)イ)、その利用が義務付けられてい ない旨主張するが、営業活動において機関控除金に係る物品を利用するか否かについては、被告からの推奨はあるものの、最終的には各営業職員の判断であり(前記認定事実(7)イ)、その利用が義務付けられていたことまでを認めるに足りる証拠はない。 もっとも、原告は、平成30年11月27日、被告京都支社総務部長に 対し、平成31年1月から、封筒代、京都おすすめスポットカレンダー代及びオーナーズ通信代が給与から控除されることについて同意できない旨、賃金から何らかの金員を控除するに当たり、朝礼で説明したことをもって同意したとは認められない旨を通知しており(前記認定事実(6)ア)、同月からの賃金控除について明示的に異議を述べたことが認められる。ま た、原告は、平成30年12月25日、被告京都支社総務部長を経由してコンプライアンス推進室長に対し、封筒代及び募集資料コピー用紙代の賃金控除に関して疑問を呈して質問する通知書を提出している(前記認定事実(6)イ)。これらの事実によれば、少なくとも平成31年1月分以降については、原告の賃金から控除することについて原告が同意していたと 認めることは困難であるといわざるを得ない。 以下においては、個別合意が成立したと認められる期間(平成24年10月分から平成30年12月分まで)について、原告が主張するような原告の真意性を否定すべき事情が存するか、機関控除金の各費目ごとに検討する。 a スミセイウィークリー代は、被告において新規開拓の際に使用が推奨 されているチラシ代である。情報料を除いて1部5円という金額が不相当であるとはいえず、値上げの理由も消費税増税に伴うものである(前記認定事実(4)ウ(ア))。 b オーナーズ通信代は、被告において新規開拓の際に試用が推奨 を除いて1部5円という金額が不相当であるとはいえず、値上げの理由も消費税増税に伴うものである(前記認定事実(4)ウ(ア))。 b オーナーズ通信代は、被告において新規開拓の際に試用が推奨されている月1回発刊される定期訪問ツールの費用である。オーナーズ通信の 単価について特に不合理な点は認められない(前記認定事実(4)ウ(イ))。 c 花代は、被告において推奨されている花一輪活動に使用する花の代金であり、当該花の代金は、花屋から請求されている金額と一致しており、不相当ともいえない(前記認定事実(4)ウ(ウ))。 d 封筒代、切手代については、原告が疑義を呈した結果、どのような場合に営業職員から控除されるかが明示されることとなった(前記認定事実(4)ウ(エ)、(6)イ)。 e ふぉーゆークラブ代は、既契約者に対する年賀状代等に係るものであり、その代金に不合理な点は見当たらない(前記認定事実(4)ウ(オ))。 f 京都おすすめスポットカレンダー代は、毎月顧客に配布するカレンダーの代金であり、1部当たりの単価も不相当とはいえず、値上げの理由も消費税増税に伴うものである(前記認定事実(4)ウ(カ))。 g こども絵画コンクールオリジナルカレンダー代は、こども絵画コンクール参加者の応募作品をカレンダーにする際にかかる費用で、被告にお いて作成が推奨されているものの、作成が強制されたとまで認めるに足りる証拠はない(前記認定事実(4)ウ(キ))。 h 常備薬代は、被告の営業職員が日常生活で使用する常備薬となるものの斡旋にすぎず、被告において購入が強制されているものではない。常備薬代として支出した費用は、原告の私的利用のための費用であると解 される(前記認 営業職員が日常生活で使用する常備薬となるものの斡旋にすぎず、被告において購入が強制されているものではない。常備薬代として支出した費用は、原告の私的利用のための費用であると解 される(前記認定事実(4)ウ(ク))。 iJAIFA年会費、オール住生会会費は、被告の勧めで加入した外郭団体の会費であり、原告の費用で会費を負担すべきものであり、特段不合理な点は見当たらない(前記認定事実(4)ウ(ケ))。 j 異業種交流会費用は、被告の開催したイベントに参加した顧客の参加費又はキャンセル費用である。平成30年度以外は、キャンセル費用以 外の費用負担はなく、同年度も一部負担にとどまっていたのであることに加え、異業種交流会に係る実費を踏まえると、営業職員の負担が過度であるとまではいえない(前記認定事実(4)ウ(コ))。 以上検討したところによれば、いずれの費目についても、原告の自由な意思に基づく個別合意であったことを否定するまでの事情は認められな い。 (イ)募集資料コピー用紙トナー代募集資料コピー用紙トナー代については、平成30年12月まで、休職中などコピーを行う余地のない営業職員を除き、原告を含む全営業職員の給与から、毎月定額2000円が控除されていた(前記認定事実(4)エ)。 そうすると、募集資料コピー用紙トナー代は、上記(ア)の物品等の費用とは異なり、各営業職員がその判断に応じて注文するものではなく、印刷量の多寡にかかわらず、休職中などでない限りは、全営業職員に一律に定額で課される負担金であるといえる。 このような負担金について、原告と被告との間で個別合意があったこと を認めるに足りる証拠はなく、また、前記の賃金全額払の原則の趣旨からすれば、その有効性を認めることも困 担金であるといえる。 このような負担金について、原告と被告との間で個別合意があったこと を認めるに足りる証拠はなく、また、前記の賃金全額払の原則の趣旨からすれば、その有効性を認めることも困難であるといわざるを得ない。 ウ会社斡旋物品代(平成24年10月分から令和2年3月分まで)について会社斡旋物品代には、本件携帯端末を使用して斡旋注文システムを利用して注文する定期刊行物等の代金と、スミブツドットコム又はファクシミリを 使用して注文する用度品の代金があるところ、いずれの方法を用いても、住 友生命販促品総合カタログ又は注文の際に使用するシステムにおいて、物品の単価を各営業職員において把握することができ、その上で各営業職員において注文するものである(前記認定事実(5)ア、イ)。また、各営業職員は、機関控除金の場合と同様に、本件携帯端末の画面上で、給与・報酬支給明細書や機関控除金・斡旋物品代明細リストを確認することにより、賃金か ら控除される会社斡旋物品代の金額や内訳を確認できる(前記認定事実(5)イ)。 そうすると、前記イ(ア)で認定した機関控除金と同様に、原告は、平成5年3月に被告の営業職員となって以降、営業活動費は自己負担である旨が記載された勤務のしおりを毎年4月に交付され、原告の請求期間に差し掛か るまでの約20年弱の間、会社斡旋物品について、当該物品を注文すれば、原告の給与から当該物品の代金が引き去られることを承知の上で注文をしてきており、その状況下で、上記請求期間中も引き続き注文をしていたのであるから、原告と被告との間で、その注文の都度、会社斡旋物品について、当該物品を原告の費用負担で購入し、当該購入代金を原告の給与から引き去 ることについての個別合意が成立したと をしていたのであるから、原告と被告との間で、その注文の都度、会社斡旋物品について、当該物品を原告の費用負担で購入し、当該購入代金を原告の給与から引き去 ることについての個別合意が成立したといえる。 この点、原告は、会社斡旋物品は被告から自己負担での利用を強制されていたもので、合意はしていない旨主張するが、営業活動において会社斡旋物品を利用するか否かについては、被告からの推奨はあるものの、最終的には各営業職員の判断であり(前記認定事実(7)イ)、その利用が義務付けら れていたことまでを認めるに足りる証拠はない。 また、原告は、定期刊行物であるレタスクラブやゴルフ誌ワッグルについて、10冊単位での購入が義務付けられており、購入を強制されていたと主張するが、令和元年7月及び8月に、原告は、レタスクラブ11冊、ゴルフ誌ワッグル3冊を注文していること(乙95の1・2)、令和3年6月には、 原告は、レタスクラブ7冊、ゴルフ誌ワッグル2冊を注文し、支部での取り まとめで10冊単位となっているから「OK」とされていること(甲73)などを踏まえると、営業職員個人で10冊単位で注文することが義務付けられていたとはいえない。 もっとも、前記イ(ア)で判示したとおり、原告は、平成31年1月からの賃金控除について明示的に異議を述べたことが認められるから、少なくと も同月分以降については、機関控除金に係る費用と同様に、会社斡旋物品代についても、原告の賃金から控除することにつき原告が同意していたと認めることは困難であるといわざるを得ない。 エ以上によれば、本件費用については、募集資料コピー用紙トナー代を除き、平成30年12月分までは、いずれも有効な個別合意が成立していると認め られるが、平 難であるといわざるを得ない。 エ以上によれば、本件費用については、募集資料コピー用紙トナー代を除き、平成30年12月分までは、いずれも有効な個別合意が成立していると認め られるが、平成31年1月分以降については、個別合意の存在を認めることはできない。 (4)被告の就業規則についてア原告は、被告の旧就業規則には、本件費用を控除することを定めた規定がなかったこと(前記認定事実(2))から、旧就業規則が改正される令和2 年2月20日までは、就業規則の最低基準効により、本件費用を控除する旨の合意は無効であると主張する。 しかしながら、就業規則に記載がないという本件の場合には、最低基準効の問題ではないと解され、原告の上記主張は採用できない。 イ次に、原告は、新就業規則への本件改定は労働条件の不利益変更であるか ら無効であると主張するので検討する。 前記(1)で判示したとおり、本件雇用契約締結時に、原告と被告との間で本件合意が成立したとはいえないから、本件改定は原告との関係では不利益変更に当たるものと認められる。 この点、被告は、本件改定について、被告と営業職員との間の雇用契約に 営業職員が営業活動費を負担することが含まれていることを前提に、従前の 取扱いを明文化したものにすぎないから不利益変更に当たらない旨を主張するのみで、本件改定の不利益変更としての有効性については十分な主張立証をしていないことに加えて、新就業規則の施行日は証拠上不明であるところ、令和2年2月20日以降の日であると考えられることからすれば、同月に係る本件費用の控除がされる同年3月分(原告の請求期間の終期)までは、 いずれにしても本件改定に係る規定の適用はないものと認めるのが相当である。 (5)以上によれば、 ことからすれば、同月に係る本件費用の控除がされる同年3月分(原告の請求期間の終期)までは、 いずれにしても本件改定に係る規定の適用はないものと認めるのが相当である。 (5)以上によれば、本件費用については、募集資料コピー用紙トナー代を除き、平成30年12月分までは、いずれも原告と被告との間で有効な個別合意が成立していると認められるが、平成31年1月分以降については、個別合意の存 在を認めることはできない。 4 争点3(未払賃金額)について(1)募集資料コピー用紙トナー代を除く本件費用について前記2及び3で判断したところによれば、原告の請求期間のうち、平成30年12月分までについては、本件協定が存在し、かつ、原告と被告との間で有 効な個別合意が成立していると認められるから、原告の賃金から本件費用を控除したことは適法である。 一方で、原告の請求期間のうち、平成31年1月分以降については、本件協定が存在するものの、原告と被告との間で本件合意及び個別合意がいずれも存在するとは認められず、新就業規則の適用があるともいえない以上、原告の 賃金から本件費用を控除したことは、労働基準法24条1項に反し許されない。なお、被告は、本件協定が労働協約であることについて、本件合意及び個別合意とは別に、労働契約上の賃金控除の根拠としては主張していない(本件第3回口頭弁論調書参照)。 したがって、被告は、原告に対し、別紙2のとおり、平成31年1月分から 令和2年3月分までの控除額である合計19万3542円の賃金支払義務が ある。 なお、原告は、上記控除額について、各賃金支払日の翌日からの年6分の割合による遅延損害金をも併せて請求しているところ、その計算は正しくは、別紙5のとおりであり、令和2年3月24日まで ある。 なお、原告は、上記控除額について、各賃金支払日の翌日からの年6分の割合による遅延損害金をも併せて請求しているところ、その計算は正しくは、別紙5のとおりであり、令和2年3月24日までの確定遅延損害金は5928円である(原告の請求額は前記第2の1(1)ア(イ)参照)。 (2)募集資料コピー用紙トナー代について平成24年10月分から平成30年12月分まで(平成31年1月からは無償化された。)、原告の賃金から月額2000円ずつ控除したことは、労働基準法24条1項に反し許されない。 したがって、被告は、原告に対し、上記期間のうち、未払賃金請求に係る期 間である平成29年5月分から平成30年12月分までの控除額の合計4万円(月額2000円×20か月)の賃金支払義務がある。 なお、遅延損害金については、最終賃金支払日の後である平成31年1月25日から支払済みまで年6分の割合でこれを認める。 5 争点4(経費控除に関する不法行為の成否及び損害額)及び争点5(経費控除 に関する不当利得の成否及び利得額)について(1)募集資料コピー用紙トナー代を除く本件費用について以上判断したところによれば、原告の請求期間のうち、平成30年12月分までについては原告の賃金から本件費用を控除したことは適法であるから、この控除を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求及び不当利得に基づく利 得金返還請求は、いずれもその余の点について判断するまでもなく理由がない。 (2)募集資料コピー用紙トナー代について一方で、募集資料コピー用紙トナー代については、前記認定事実によれば、原告と被告との間で本件合意及び個別合意があったとは認められず、また、会社設備使用に伴う経費であって本来は使用者である被 一方で、募集資料コピー用紙トナー代については、前記認定事実によれば、原告と被告との間で本件合意及び個別合意があったとは認められず、また、会社設備使用に伴う経費であって本来は使用者である被告が負担すべきもので ある。そうすると、原告が賃金からの控除によりこれを負担したことについて は法律上の原因がないと認められる。 したがって、被告は、原告に対し、不当利得に基づき、不当利得返還請求に係る期間である平成24年10月分から平成29年4月分までの控除額の合計11万円(月額2000円×55か月)の利得金返還義務がある。 なお、募集資料コピー用紙トナー代を賃金から控除することは労働基準法2 4条1項に違反するものであることから、被告は悪意の受益者として、遅延損害金については、上記期間のうち平成28年4月分から平成29年4月分までの控除額の合計2万6000円(月額2000円×13か月)については最終利得日の後である平成29年5月25日から、平成24年10月分から平成28年3月分までの控除額の合計8万4000円(月額2000円×42か月) については最終利得日の後である平成30年8月25日から各支払済みまで年5分の割合でこれを認める。 6 争点6(雇用契約上の費用償還請求権の存否)について原告は、労働契約には委任契約における費用償還規定(民法650条1項)の法思想が及び、労働者である原告は、使用者に費用償還請求権を有するから、被 告の業務に使用した携帯電話料金は、被告が負担すべきであると主張する。 しかしながら、前記認定事実によれば、原告が被告の営業職員として勤務するに際し、私用の携帯電話を利用する必要性があったことは否定できないものの(前記認定事実(8)ウ、エ)、原告が、個人用のスマートフォン(原告 ら、前記認定事実によれば、原告が被告の営業職員として勤務するに際し、私用の携帯電話を利用する必要性があったことは否定できないものの(前記認定事実(8)ウ、エ)、原告が、個人用のスマートフォン(原告スマホ)に加えて、業務専用の携帯電話を別個に契約して使用することが必要不可欠であ ったとまでは認められない。また、本件携帯電話の通話先には、京都下労働基準監督署など、被告の業務のためとは直ちに認め難いものも含まれており(前記認定事実(8)イ)、本件携帯電話が被告の業務のためにのみ使用されたと認めることもできない。 そうすると、費用償還請求権に基づく本件携帯電話の料金請求は認められない。 7 争点7(原告と被告との間の立替払契約の成否)について 本件携帯電話の料金に関し、原告は、労働者が使用者の業務指示に基づいて事務の処理をする過程で費用を立て替えた場合に、使用者が労働者による費用の立替の可能性を抽象的にでも知っていれば、立替払契約が成立していると解すべきであると主張する。 しかしながら、業務上の経費について、使用者が労働者による費用の立替の可 能性の認識を有していたことのみをもって、当然に使用者と労働者との間に立替払契約が成立したとみることは困難であり、原告の上記主張は採用できない。 8 争点8(携帯電話料金に関する不当利得の成否)について原告は、業務に携帯電話を使用することで、原告が携帯電話の料金の出費を強いられる一方で、被告が通信費用の出費を免れる利得を不当に得ているから、被 告はその全額について不当利得返還義務を負うと主張する。 しかしながら、前述のとおり、原告が、原告スマホとは別に、業務専用の携帯電話を契約して使用することが必要不可欠であったとまでは認められず、また、本件携帯電話が被 利得返還義務を負うと主張する。 しかしながら、前述のとおり、原告が、原告スマホとは別に、業務専用の携帯電話を契約して使用することが必要不可欠であったとまでは認められず、また、本件携帯電話が被告の業務のためにのみ使用されたと認めることもできないから、本件携帯電話のプラン利用料等も含まれていると思われる原告主張の携帯電 話料金について、被告が不当に利得したとして、これを返還すべきとは直ちに認めることができない。 9 争点9(携帯電話料金に関する事務管理の成否)について原告は、業務上の必要性に基づいて携帯電話を使用することは使用者の事業にかかる事務管理となり、本件携帯電話の料金は被告の意に沿う有益費の支出であ るから、被告はその全額について返還義務を負うと主張する。 しかしながら、前述のとおり、原告が、原告スマホとは別に、業務専用の携帯電話を契約して使用することが必要不可欠であったとまでは認められず、また、本件携帯電話が被告の業務のためにのみ使用されたと認めることもできないから、原告主張の本件携帯電話の料金について、被告のための有益な費用として、 その償還をすべきと認めることはできない。 10 結論以上によれば、原告の請求は主文第1項記載の限度で理由があるからこれを認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第6民事部 裁判長裁判官池田知子 裁判官児玉禎治 裁判官堀田康介 禎治 裁判官堀田康介
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