平成27年10月8日判決言渡平成24年(行ウ)第799号所得税更正処分等取消請求事件主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 渋谷税務署長が平成23年6月29日付けで原告P1に対してした同原告の平成20年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額1億4693万1000円,納付すべき税額1635万9000円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 2 目黒税務署長が平成25年1月25日付けで原告P2に対してした同原告の平成20年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額1億0282万2000円,納付すべき税額711万4900円を超える部分及び平成23年2月28日付けでした過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 3 渋谷税務署長が平成23年6月29日付けで原告P3に対してした同原告の平成20年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額7086万2000円,納付すべき税額599万1300円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 4 杉並税務署長が平成24年2月28日付けで原告P4に対してした同原告の平成20年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額1億1362万4000円,納付すべき税額1277万1100円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定のうち加算税額5万3000円を超える部分を取り消す。 5 芝税務署長が平成24年2月28日付けで原告P5に対してした同原告の平成20年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額1億5263万 6000円,納付すべき税額1719万8600円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 6 麻布税務署長が平成23年5月31日付けで原告P6に対してした同原告の平成 63万 6000円,納付すべき税額1719万8600円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 6 麻布税務署長が平成23年5月31日付けで原告P6に対してした同原告の平成20年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額2億9859万円,納付すべき税額4871万5700円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 7 目黒税務署長が平成23年4月27日付けで原告P7に対してした同原告の平成20年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額3億6956万円,納付すべき税額5812万2800円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 8 玉川税務署長が平成23年6月29日付けで原告P8に対してした同原告の平成20年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額6121万6000円,納付すべき税額401万5000円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 9 佐久税務署長が平成24年3月9日付けで原告P9に対してした同原告の平成20年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額3億1749万4000円,納付すべき税額2464万5600円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 渋谷税務署長が平成23年2月28日付けで原告P10に対してした同原告の平成20年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額1億3798万1000円,納付すべき税額1446万1700円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 第2 事案の概要本件は,アメリカ合衆国の法人であるP11(以下「P11社」という。)の関連会社に勤務する原告らが,それぞれ,P11社の株式報酬制度に基づき,所定の転換日に同社の普通株式(以下「P11株式」という。)に転換される 「ストック・ユニット」の付与 社」という。)の関連会社に勤務する原告らが,それぞれ,P11社の株式報酬制度に基づき,所定の転換日に同社の普通株式(以下「P11株式」という。)に転換される 「ストック・ユニット」の付与を受けた後,平成20年9月8日の転換日が到来したことにより,P11株式を取得(以下,同取得に係るP11株式を「本件各P11株式」という。)したことから,同年分の所得税の確定申告に際し,本件各P11株式に係る経済的利益(以下「本件各株式報酬」という。)について,社内規則に基づく株式の譲渡制限が解除された同月18日におけるP11株式の高値と安値の単純平均値に基づいて算定した金額を給与等の収入金額として申告したところ,各処分行政庁が,本件各株式報酬に係る給与等の収入金額は,本件各P11株式を取得できる権利が確定した同月8日におけるP11株式の終値に基づいて算定すべきであるとして,原告らに対し,同年分の所得税の各更正処分(原告P2については平成25年1月25日付け再更正処分。 以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(原告P2については平成23年2月28日付け賦課決定処分。以下「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をしたことから,原告らが,本件各更正処分等は,本件各株式報酬に係る給与等の収入金額を不当に算定した違法な処分であると主張して,本件各更正処分のうち一定額を超える部分(なお,上記第1の各請求にある「総所得金額」は,課税総所得金額を指すものと解される。)及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め(1) 所得税法28条は,給与所得とは,俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下「給与等」という。)に係る所得をいう旨定め を求める事案である。 1 関係法令等の定め(1) 所得税法28条は,給与所得とは,俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下「給与等」という。)に係る所得をいう旨定めている。 (2) 所得税法36条1項は,その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には,その金銭以外の物又は権利その他経済的な 利益の価額)とする旨定め,同条2項は,1項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は,当該物若しくは権利を取得し,又は当該利益を享受する時における価額とする旨定めている。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告ら原告らは,平成20年当時,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)の法人であるP11社の関連会社(以下,P11社及びその子会社等を併せて「P12グループ」という。)であるP13株式会社(以下「P13社」という。)やP14証券株式会社(現在のP15証券株式会社。以下「P14証券」という。)などの内国法人に勤務していた者である。 (2) P12グループにおける株式報酬制度ア報酬プランP12グループは,主要な従業員に対する精勤の動機付けとすることなどを企図して,P11株式を取得する権利等を「アワード」として付与する次の①から③までの株式報酬制度(以下,併せて「本件各報酬プラン」という。)を設けている。なお,本件各報酬プランにおいて,アワードに関する諸条件は,報酬証書に規定するものとされている。(乙2~4)① 「P16 INC. 1995 EQUITY 各報酬プラン」という。)を設けている。なお,本件各報酬プランにおいて,アワードに関する諸条件は,報酬証書に規定するものとされている。(乙2~4)① 「P16 INC. 1995 EQUITYINCENTIVECOMPENSATIONPLAN」(以下「EICP」という。)② 「P12 EMPLOYEES' EQUITYACCUMULATIONPLAN」(以下「EEAP」という。)③ 「P12 TAXDEFERREDEQUITYPARTICIPATIONPLAN」(以下「TDEPP」という。)イ報酬証書(ア) EICPに準拠した平成15年から平成17年の報酬証書は,下記 ①から③までのとおりであり,EEAPに準拠した平成18年の報酬証書は,下記④のとおりであり,TDEPPに準拠した同年の報酬証書は,下記⑤のとおりである(以下,下記①から⑤までの各報酬証書を併せて「本件各報酬証書」という。)(乙12~16)。 ①「P12, EQUITYINCENTIVECOMPENSATIONPLAN, 2003DISCRETIONARYRETENTIONAWARDS, AWARDCERTIFICATE」(以下「2003EICP」という。)②「P12, EQUITYINCENTIVECOMPENSATIONPLAN, 2004DISCRETIONARYRETENTIONAWARDS, AWARDCERTIFICATE」(以下「2004EICP」という。)③「P12, EQUITYINCENTIVECOMPENSATIONPLAN, 2005DISCRETIONARYRETENTIONAWARDS, AWARDCERTIFICATE」(以下「2005EICP YINCENTIVECOMPENSATIONPLAN, 2005DISCRETIONARYRETENTIONAWARDS, AWARDCERTIFICATE」(以下「2005EICP」という。)④「P12, EMPLOYEES' EQUITYACCUMULATIONPLAN, 2006DISCRETIONARYRETENTIONAWARDS, AWARDCERTIFICATEFORSTOCKUNITS」(以下「2006EEAP」という。)⑤ 「P12, TAXDEFERREDEQUITYPARTICIPATIONPLAN, 2006DISCRETIONARYRETENTIONAWARDS, AWARDCERTIFICATEFORSTOCKUNITS」(以下「2006TDEPP」という。)(イ) 本件各報酬証書の概要本件各報酬証書には,要旨,①ストック・ユニットとは,転換日にP11株式1株を被付与者に支払う支払保証のないP11社の約束から成るものであり,被付与者の各ストック・ユニットは,P11株式1株に相当するものであること,②ストック・ユニットは,原則として,「予定確定日」に確定し,「予定転換日」にP11株式1株に転換されること,③ストック・ユニットの転換に基づいて引き渡された株式は,証券 取引法又はP12グループの従業員取引ポリシーから生じる可能性のある制限を除き,あらゆる譲渡制限を受けず,取り消されないこと,④被付与者の雇用が死亡等以外の理由で終了した場合,未確定のストック・ユニットは取り消されること,⑤被付与者が「予定転換日」前に「競業」等に及んだ場合は,確定したストック・ユニットでも取り消されること,⑥被付与者は,ストック・ユニットの転換後,被付与者 のストック・ユニットは取り消されること,⑤被付与者が「予定転換日」前に「競業」等に及んだ場合は,確定したストック・ユニットでも取り消されること,⑥被付与者は,ストック・ユニットの転換後,被付与者に発行されるP11株式の受益所有権者となり,議決権及び現金,株式配当金又は株式に支払われるその他の分配金を受け取る権利を含む,あらゆる所有者としての権利を与えられることなどが定められている(乙12~16)。 (3) 有価証券の取引に係る社内規則P12グループは,P12グループの全ての従業員本人及びその家族等(以下「P12従業員等」という。)が行う有価証券又はその他の金融商品の個人的取引に関する規則として,グローバル従業員取引ポリシーを定めている(乙8)。また,P14証券は,P12グループの全ての従業員の個人証券取引及びその取引口座に対して適用される日本特有の規制として,コンプライアンス通知(以下,グローバル従業員取引ポリシーと併せて「P12取引方針」という。)を定めている(乙9)。 P12取引方針には,要旨,①従業員は,原則として,P12グループ内において,全ての従業員証券口座(共同口座,家族口座,子供の口座等のP12従業員等に係る口座をいう。以下同じ。)を保有しなければならないこと,②個人証券取引の発注は,全て従業員取引デスクを通して,Eメールによって依頼しなければならないこと,③従業員は,P12グループの法人が発行した普通株式,優先株式及び債券を含むあらゆる有価証券(以下「P12有価証券」という。)について,所定のウインドウ・ピリオド内に限り,取引することができること(以下「本件譲渡制限」という。),④P12取 引方針に違反した場合,本人の費用負担による取引の取消し,取引特権の停止及び解雇を含む懲戒処分を受け ピリオド内に限り,取引することができること(以下「本件譲渡制限」という。),④P12取 引方針に違反した場合,本人の費用負担による取引の取消し,取引特権の停止及び解雇を含む懲戒処分を受ける可能性があることなどが定められている(乙8,9)。 (4) 原告らに対するストック・ユニットの付与原告らは,平成15年から平成18年までに,それぞれ,本件各報酬プラン及び本件各報酬証書(以下,併せて「本件各報酬プラン等」という。)に基づき,P11社から,別表1-1から1-10までに記載のとおり,ストック・ユニットの付与を受けた(以下,原告らに付与された各ストック・ユニットを併せて「本件各ストック・ユニット」という。)(乙17の1~17の10)。 (5) 予定確定日及び予定転換日の繰り上げに関する決議P11社の報酬委員会は,平成19年12月11日,それまでに確定していない一定のストック・ユニットの予定確定日及び予定転換日を繰り上げることとし,①付与済みのストック・ユニット(平成16年及び平成17年に付与されたストック・ユニット,並びに,平成18年に付与されたストック・ユニットの50%)は,各アワードの他の条件に従って,平成20年9月8日(以下「本件転換日」という。),ストック・ユニット数に応じたP11株式の引渡しにより支払われること,②同日現在において確定していない付与済みのストック・ユニットは,同日をもって確定すること,③上記の決議に伴うストック・ユニットの転換によって引き渡されるP11株式は,証券取引法又はP12グループのポリシーから生じる制限を除き,あらゆる譲渡制限を受けず,取消条項の対象にもならないことなどを決議した(乙5)。 (6) 本件各ストック・ユニットの転換及び本件各P11株式の引渡しア本件各ストック・ユニッ じる制限を除き,あらゆる譲渡制限を受けず,取消条項の対象にもならないことなどを決議した(乙5)。 (6) 本件各ストック・ユニットの転換及び本件各P11株式の引渡しア本件各ストック・ユニットは,平成20年9月8日(本件転換日),本件各P11株式への転換が生じた。 本件転換日のニューヨーク証券取引所(以下「NYSE」という。)におけるP11株式の株価の終値は,43.27米国ドルであり,また,同日の1米国ドルに対する円の対顧客直物電信売買相場の仲値の金額(以下「TTMレート」という。)は,1米国ドルにつき108.50円であった(乙10,11)。 イ本件各P11株式のうち,原告P10が取得したものは,平成20年9月8日,その余の原告らが取得したものは,同月11日,P14証券の原告らの各証券口座(以下「本件各証券口座」という。)に入庫された(甲2の2,5の5~5の7,5の10,乙35の1~35の5)。 (7) 本件各P11株式に係る本件譲渡制限の解除本件各P11株式については,本件各証券口座に入庫された後も,P12取引方針に基づき,本件譲渡制限の適用があったが,ウインドウ・ピリオドが平成20年9月18日(以下「本件制限解除日」という。)から開始されたことにより,本件譲渡制限は解除された。 本件制限解除日のNYSEにおけるP11株式の株価の高値と安値の単純平均値(以下「日平均株価」という。)は,18.21米国ドルであり,また,同日のTTMレートは,1米国ドルにつき104.85円であった(乙18,30)。 (8) 本件訴えに至る経緯ア原告らの平成20年分の所得税に係る確定申告,修正申告,更正処分(再更正処分を含む。),過少申告加算税の賦課決定処分,異議申立て,異議決定,審査請求及び審査裁決の経緯は,別表 件訴えに至る経緯ア原告らの平成20年分の所得税に係る確定申告,修正申告,更正処分(再更正処分を含む。),過少申告加算税の賦課決定処分,異議申立て,異議決定,審査請求及び審査裁決の経緯は,別表2-1から2-10までに記載のとおりである。 なお,原告らは,上記確定申告において,本件各株式報酬について,本件各P11株式の合計株数に,平成20年9月18日のNYSEにおけるP11株式の日平均株価18.21米国ドルを乗じて得られる金額につ き,同日の為替レートにより円に換算した金額を,本件各株式報酬に係る給与等の収入金額として申告していた。 これに対し,各処分行政庁は,原告らの平成20年分の所得税について,①本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日は,同年9月8日(本件転換日)であり,また,②当該給与等の収入すべき金額は,本件各P11株式の株数に,同日のNYSEにおけるP11株式の株価の終値及びTTMレートを乗じて算定した金額であるとして,本件各更正処分等をしたものである。 (以上につき,甲1~6(枝番を含む。ただし,甲2の4及び3の4は欠番。),乙1)イ原告らは,平成24年11月22日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 ウ目黒税務署長は,原告P2の平成20年分の所得税に関し,翌年へ繰り越す株式等の譲渡損失の金額に誤りがあったことから,平成25年1月25日付けで,同金額について再更正処分をした(乙1)。 3 被告の主張する本件各更正処分等の根拠及び適法性本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張は,別紙2-1から2-10までのとおりである。なお,同別紙に記載した略語は,以下でも用いることとする。 4 争点本件の争点は,本件各更正処分等の適法性であり,具体的には,本件各株式報酬に係る給与等の収入す 2-10までのとおりである。なお,同別紙に記載した略語は,以下でも用いることとする。 4 争点本件の争点は,本件各更正処分等の適法性であり,具体的には,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金額等について,次の点が争われている。 (1) 本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日は,本件転換日(平成20年9月8日)か,本件制限解除日(同月18日)か(2) 本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金額の算定方法 ア本件各P11株式の時価の算定は,NYSEの終値によるべきか,日平均株価によるべきかイ採用すべき為替レート(3) 過少申告加算税に係る正当な理由の有無 5 争点に対する当事者の主張の要旨(1) 争点(1)(本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日)について(被告の主張の要旨)ア所得税法36条1項は,現実の収入がなくても,その収入の原因たる権利が確定的に発生した場合には,その時点で所得の実現があったものとして,その権利発生の時期に属する年度の課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解される。この権利確定主義の考え方は,金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合にも当てはまるものであり,収入の原因となる権利等が具体的に実現する可能性が客観的に認識できるまで高い状態,換言すれば,収入実現の蓋然性が高い時点をもって同項の「収入すべき日」と解すべきである。 イ本件各報酬プラン等に基づき付与されるストック・ユニットは,その予定転換日に,1ストック・ユニットにつきP11株式1株を被付与者に支払うP11社の契約であり,被付与者は,P11社の一般的な無担保債権者の権利のみを保有し,ストック・ユニットがP1 ニットは,その予定転換日に,1ストック・ユニットにつきP11株式1株を被付与者に支払うP11社の契約であり,被付与者は,P11社の一般的な無担保債権者の権利のみを保有し,ストック・ユニットがP11株式に転換されるまで,配当相当額の支払を受けるものの,P11株式に関して株主にはならず,株主としてのいかなる権利も持たないとされる。そして,被付与者のストック・ユニットは,予定確定日までの間,被付与者がP12グループにおいて勤務を継続し,かつ,一定の取消事象に該当しない場合に,当該予定確定日に確定し,その後,確定したストック・ユニットは,予定転換日までの間,被付与者に競合他社への就職等や機密情報の漏えい等の一定 の事由が生じた場合には,たとえ確定しているストック・ユニットであっても取り消されるが,当該事由が生じなかった場合には,当該予定転換日に,1ストック・ユニットにつき1株のP11株式に転換され,付与されたストック・ユニットに対応したP11株式が被付与者に引き渡される。 そして,ストック・ユニットのP11株式への転換によって,被付与者は,付与されたストック・ユニットに対応するP11株式の実質的所有者(beneficialowner)となり,売却処分権,同株式の議決権,現金,株式配当金又は株式に支払われるその他の分配金を受け取る権利を含む,あらゆるP11株式の所有者としての権利を取得するとともに,当該P11株式については,証券取引法又はP12取引方針による制限を除き,あらゆる取引制限を受けず,また,本件各報酬証書において規定された取消原因となる一定の事象によって取り消されることもないとされている。 ウ P11社の報酬委員会は,平成19年12月11日,それまで確定していないストック・ユニットの予定確定日及び予定転換日を繰り上げ 原因となる一定の事象によって取り消されることもないとされている。 ウ P11社の報酬委員会は,平成19年12月11日,それまで確定していないストック・ユニットの予定確定日及び予定転換日を繰り上げることなどを決議し,同決議は同日をもってその効力が発生したことから,原告らが保有していた本件各ストック・ユニットは,本件転換日(平成20年9月8日)に確定することになった。 そして,本件各ストック・ユニットは,本件転換日において,ストック・ユニットがP11株式に転換されるための諸条件を満たしたことによって,本件各P11株式に転換され,その転換によって,原告らは,本件各P11株式の実質的所有者となり,売却処分権,同株式の議決権,現金,株式配当金又は株式に支払われるその他の分配金を受け取る権利を含む,あらゆるP11株式の所有者としての権利を取得することになり,その後に転換前であれば取消原因となった一定の事象が生じても,その転換自体が取り消されることがなくなった。そうすると,本件転換日において,P11社の原告らに対する本件各P11株式の支払債務が確定し,他 方,原告らにおいては,本件各P11株式を取得できる権利が確定したのであるから,所得税法36条1項における権利確定主義の考え方により,本件転換日が,収入たる本件各P11株式の取得が具体的に実現する可能性が客観的に認識できる状態にまで高められた時点,すなわち,収入実現の蓋然性の高い時点といえる。 したがって,本件転換日において,原告らの「収入」に相当する「物又は権利その他経済的な利益」である本件各P11株式の「収入の原因となる権利」が確定したものであるから,原告らが現実に本件各P11株式を取得した日いかんにかかわらず,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日は,本件転換日である。 本件各P11株式の「収入の原因となる権利」が確定したものであるから,原告らが現実に本件各P11株式を取得した日いかんにかかわらず,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日は,本件転換日である。 エなお,株式などの金銭以外のものを取得した場合において,当該金銭以外のものについて,現実に売却して金銭化できるという意味での具体的な売却可能性がなくとも,市場が形成され,金銭的に測定可能であるという意味での一般的な金銭的評価可能性があれば,担税力を増加させる経済的利得を取得したといえ,所得税法36条1項の収入すべき金額に該当する。この点,P12取引方針によるP12有価証券の一定期間の取引制限は,その規定内容から明らかなとおり,それ自体は,インサイダー取引ルールの遵守及び実効性を担保するための,P12従業員等の人に対するP11社の社内規制であり,本件各P11株式について特別に制限を加えるものではなく,本件各P11株式は,NYSEで一般に取引されるP11社の普通株式であるから,本件各P11株式自体に市場性(金銭的に測定可能な経済的価値)があることに何ら変わりはない。 また,P12取引方針によるP12有価証券の一定期間の取引制限により,ウインドウ・ピリオド以外の期間において,本件各P11株式の売却が事実上できないことと,本件各P11株式に係る売却処分権の帰属とは直ちに結び付くものではない。本件各報酬プラン等によれば,原告らは, 本件転換日に,P11株式の所有者としてのあらゆる権利を取得しているのであって,売却処分権のみがP11社に留保されているとは解されない。すなわち,P12取引方針によるP12有価証券の一定期間の取引制限をもって,本件各P11株式に売却処分権がないとすることはできないのであり,換言すれば,本件転換日において,いわ いるとは解されない。すなわち,P12取引方針によるP12有価証券の一定期間の取引制限をもって,本件各P11株式に売却処分権がないとすることはできないのであり,換言すれば,本件転換日において,いわば物権的に,売却処分権を含めたP11株式の所有者としてのあらゆる権利が原告らに移転しており,P12取引方針は,いわば債権的に,P11社との関係において,原告らに帰属する売却処分権を制約するものにすぎないものである。 したがって,P12取引方針は,P11社における主要従業員の株式等取引に係る一般的行動指針というべきものに過ぎず,ストック・ユニットの被付与者の株主としての権利の帰属や権利の内容を制約するものではなく,権利確定主義の観点からみた場合の権利の確定的取得を認定するに際しての障害になるものではない。 オ以上より,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日は,「収入の原因となる権利」である「本件各P11株式を取得できる権利」が確定した本件転換日(平成20年9月8日)である。 (原告らの主張の要旨)ア所得税法は,23条ないし35条において,所得をその源泉ないし性質によって10種類に分類し,それぞれについて所得金額の計算方法を定めているところ,これらの計算方法は,個人の収入のうちその者の担税力を増加させる利得に当たる部分を所得とする趣旨に出たものと解される。そして,所得の該当性を判断するに当たっては,所得が担税力を増加させるものでなければならないという前提の下に,経済的利得の換価可能性に着目した上で,納税の容易性まで考慮すべきである。 してみれば,本件各株式報酬は所得税法36条1項の「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」に該当するものであるところ,同条2項に定 める「当該利益を享受する時」とは,担税力を増加させる経済的 みれば,本件各株式報酬は所得税法36条1項の「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」に該当するものであるところ,同条2項に定 める「当該利益を享受する時」とは,担税力を増加させる経済的利益の原因となる権利を確定的に取得する時をいうべきであるから,本件各株式報酬に関して収入金額とすべき金額は,原告らの担税力を増加させる経済的利益の原因となる権利として本件各P11株式を確定的に取得した時点での当該株式の時価となる。 イそして,金銭的に測定可能な経済的価値を有するということとそれが人の担税力を増加させる経済的利得に該当するということとは全く別次元の問題であるところ,株式などの金銭以外のものについて,現実に売却して金銭化できるなど現実にその価値に相当する利益を取得する手段が全くなければ,仮に市場価格が形成されていたとしても,「外部からの経済的価値の流入」が認められず,「収入」たる担税力を増加させる経済的利益を取得したということはできない。また,処分可能性のない所得を獲得してもその所得が実現したとは認められない以上,所得の処分可能性は所得の本質的要素というべきである。 そのため,本件各株式報酬については,現実にその価値に相当する利益を取得する手段が存在する状態の本件各P11株式が「収入」たる「物又は権利その他経済的な利益」に該当し,当該状態の本件各P11株式を受領することができる権利が「収入の原因となる権利」に該当する。換言すれば,本件における「現実の収入」とは,所得の実現の本質的要素である処分可能性を有する状態の本件各P11株式の受領をいい,「収入の原因となる権利」とは,処分可能性を有する状態の本件各P11株式を受領する権利をいうと解すべきである。 ウこの点,米国法上,原告らが本件各P11株式上の権利を取得するには, 受領をいい,「収入の原因となる権利」とは,処分可能性を有する状態の本件各P11株式を受領する権利をいうと解すべきである。 ウこの点,米国法上,原告らが本件各P11株式上の権利を取得するには,少なくとも本件各P11株式が本件各証券口座に移管されることが前提となっており,換言すれば,原告らは,本件各証券口座に本件各P11株式が移管される前においては,いかなる意味においても,本件各P11 株式上の権利を取得することができなかった。 また,人事部作成の確認書(乙7)において,P11株式の証券口座への移管は,通常の場合,転換日後5営業日以内に完了する見込みであるとされているように,転換日は,P11株式をストック・ユニットの被付与者の証券口座に移管するための手続を履践する債務の履行期限ではないから,被付与者は,P11社に対し,本件転換日に直ちに自己の証券口座へP11株式を移管するよう請求することができるわけではない。 そうすると,原告らが本件転換日に本件各P11株式上の権利を取得することは不可能であったのであり,当然ながら本件各P11株式を換価できる可能性は全くなかったというほかない。 したがって,本件転換日においては,原告らは,本件各P11株式を受領する権利を取得したものの,その時点における本件各P11株式については所得の実現の本質的要素である処分可能性が具備されておらず,当該権利を行使することが全く不可能であった以上,当該権利が確定したということはできない。 エまた,本件各報酬プラン等とP12取引方針とは,相互に参照されており,密接に関連した制度として構築されている。このP12取引方針の下では,原告らは,本件各P11株式について直接取引注文を入力することができず,P11社又はP14証券の担当者を経由して取引注文をしなけ ,密接に関連した制度として構築されている。このP12取引方針の下では,原告らは,本件各P11株式について直接取引注文を入力することができず,P11社又はP14証券の担当者を経由して取引注文をしなければならないところ,当該担当者がウインドウ・ピリオド以外の期間に取引注文を受け付けることはあり得ないため,本件制限解除日に至るまで,保有する本件各P11株式を売却する方法は存在しなかった。仮にP12取引方針に反して当該取引を行った場合には,P11社により当該取引を従業員等の費用負担で事前通知なしに解約される可能性があるのみならず,取引停止や解雇等の処分を受けるとともに,不正取引から発生した損失を負担しなければならず,利益については没収されるものとされてい た。このように,原告らは,本件制限解除日に至るまでは,本件各P11株式を譲渡することができず,その換価可能性が奪われていた状況にあったのであり,P12取引方針に違反した場合には,利益が没収されるなど,ストック・ユニットが取り消されたのと同様の状態になったのである。 してみれば,本件制限解除日に至るまでは,本件各P11株式が市場で一般に取引されているP11株式と経済的に同等なものであるとはいえなかったのであり,原告らの担税力が増加するなどということはおよそあり得ない以上,原告らがその担税力を増加させる経済的利益の原因となる権利として本件各P11株式を確定的に取得したということはできず,現実にその価値に相当する利益を取得する手段が存在する状態の本件各P11株式を受領することができる権利が確定的に発生したということもできない。 オ他方,原告らは,本件制限解除日以後になってようやく本件各P11株式を譲渡することが可能となったのであるから,同日に至って初めて,その担税力を増加させ 確定的に発生したということもできない。 オ他方,原告らは,本件制限解除日以後になってようやく本件各P11株式を譲渡することが可能となったのであるから,同日に至って初めて,その担税力を増加させる経済的利益の原因となる権利として本件各P11株式を確定的に取得し,また,処分可能性を有する状態の本件各P11株式を受領する権利が確定したということができる。 カ以上より,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日は,本件制限解除日(平成20年9月18日)である。 (2) 争点(2)(本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金額の算定方法)についてア争点(2)ア(本件各P11株式の時価の算定は,NYSEの終値によるべきか,日平均株価によるべきか)について(被告の主張の要旨)所得税法36条は,金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって 収入する場合の収入すべき金額は,その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額(同条1項)とし,当該価額は,当該物若しくは権利を取得し,又は当該利益を享受する時における価額とする(同条2項)として,いわゆる時価による旨規定している。ここにいう時価とは,ある時点における当該資産の客観的交換価値を指すものであり,それぞれの財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額であって,いわゆる市場価格をいうものと解するのが相当である。 そして,いわゆる時価が事後的な判断基準として用いられるため,課税の公平を確保する観点からは,一定の客観的な基準によって認定された価額であることが要請されるところ,上場株価の終値は,単に証券市場の「一定時点における取引価格」を示すものではなく,証券市場を通じて,不特定多数の当事者間において,経済情勢や企業の財務情 認定された価額であることが要請されるところ,上場株価の終値は,単に証券市場の「一定時点における取引価格」を示すものではなく,証券市場を通じて,不特定多数の当事者間において,経済情勢や企業の財務情報などの種々の情報をも反映した自由競争原理によって最終的に形成された価格であり,当該株式の客観的交換価値を示すものであって,裁判例や金融実務において,重要な基準として一般に時価として広く認識・利用されており,また,所得税基本通達でも,上場株式の評価として終値による旨規定されているなど(所得税基本通達23~35共―9及び同36―36),株式の時価として最も合理性を有している。 このように,証券取引所に上場されている株式の公表されている終値は,一般に時価として広く認識され利用されているのであり,本件各P11株式の1株当たりの価額(時価)を,本件転換日のNYSEにおけるP11株式の株価の終値としない特段の事情も認められないことから,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金額は,収入すべき日である本件転換日のNYSEにおけるP11株式の株価の終値を用いて算定することが相当である。 (原告らの主張の要旨)終値のみならず,高値も安値も,一般投資家が経済情勢や企業の財務状況などの種々の情報を踏まえた市場における売買の結果の価格であることには相違ないのであるから,取引時間の最終時点における価格である終値だけを時価とすることには根拠がない。 所得税法上の「所得」が担税力を増加させる経済的利得であることや,課税の公平性の観点に照らせば,可能な限り異常値が排除されなければならないというべきであるところ,証券取引所において取引される有価証券の一時点のみにおける価格は偶然に大きく左右されざるを得ないのであり,特定銘柄の株価が想定外の下落をしたり 常値が排除されなければならないというべきであるところ,証券取引所において取引される有価証券の一時点のみにおける価格は偶然に大きく左右されざるを得ないのであり,特定銘柄の株価が想定外の下落をしたり乱高下したりしたときには,特定の値を抽出するよりも複数の値の平均値の方が,その異常性や偶然性をある程度捨象でき,担税力を増加させる経済的利得の価値を公正に把握することができる以上,日平均株価を用いることに強い合理性が認められるというべきである。特に,本件転換日以降は,NYSEにおけるP11株式の売買高が短期間で急上昇し,P11株式の株価が急降下するなどの特異な状況が発生していたことに鑑みれば,日平均株価をもって客観的交換価値とするのが最も合理的である。 イ争点(2)イ(採用すべき為替レート)について(被告の主張の要旨)本件各株式報酬に係る円換算においても,合理的な方法により画一的に取り扱うことが要請されるところ,課税庁は,租税要件の公平性・明確性を担保するため,所得税基本通達57の3-2において,外貨建取引の円換算方法について明らかにし,所得税法57条の3第1項(外貨建取引の換算)の規定に基づく円換算(同条第2項の規定の適用を受ける場合の円換算を除く。)は,その取引を計上すべき日における対顧客直物電信売相場(以下「TTSレート」という。)と対顧客直物電信買相場(以下「T TBレート」という。)の仲値による旨定めて,いわゆるTTMレートを用いることとされている。 円換算は外貨と円貨との翻訳であると解されるところ,為替相場に用いるTTBレートとTTMレートとの差額又はTTSレートとTTMレートとの差額は金融機関の手数料及びリスク料としての性質を有していることからすれば,外貨建取引の円換算については,金融機関の手数料等相当額 TTBレートとTTMレートとの差額又はTTSレートとTTMレートとの差額は金融機関の手数料及びリスク料としての性質を有していることからすれば,外貨建取引の円換算については,金融機関の手数料等相当額を含まないTTMレートによるべきであるとする当該通達は,外貨建取引の換算について規定する所得税法57条の3に係る取扱いとして合理性を有するというべきであり,その基準に何ら不合理な点はない。 したがって,本件各株式報酬に係る円換算は,TTMレートによることが相当である。 (原告P2,原告P3及び原告P7の主張の要旨)原告P2,原告P3及び原告P7(以下「原告P2ら」という。)が本件各株式報酬の円換算に当たってTTBレートを用いたのは(なお,その余の原告らはTTMレートを用いている。),平成20年分の所得税の確定申告時において,本件各P11株式が米ドル建ての資産であることから,その円換算に当たっては,外国為替公認銀行が顧客から外国為替を買い入れる場合の為替相場であるTTBレートを用いることが合理的であると考えたからである。 そして,所得税法57条の3第1項は,外貨建取引の邦貨換算について,「当該外貨建取引の金額の円換算額(外国通貨で表示された金額を本邦通貨表示の金額に換算した金額)」と規定するのみで,何らTTMレートを用いることは記載されておらず,また,そのように解釈しなければならない理由も見当たらない以上,TTMレートを用いるか否かは納税者の選択に委ねられていると解すべきである。 (3) 争点(3)(過少申告加算税に係る正当な理由の有無)について (原告らの主張の要旨)仮に,本件各株式報酬に係る給与等の収入金額の収入すべき日が本件転換日であり,その価額が同日のNYSEにおけるP11株式の株価の終値及びTTMレートを用 いて (原告らの主張の要旨)仮に,本件各株式報酬に係る給与等の収入金額の収入すべき日が本件転換日であり,その価額が同日のNYSEにおけるP11株式の株価の終値及びTTMレートを用いて計算されるべきであったとしても,①本件各株式報酬に係る給与等の収入金額とすべき金額について,いつの時点のP11株式の時価を基準として算定した上で申告すべきか,専門的な知識がなければ判然としないものであったこと,②原告らが平成20年分の所得税について確定申告を行った当時,ストック・アワードに係る課税上の取扱いに関して,法令上特別の定めはおかれておらず,上記取扱いについて定めた通達等もなかったこと,③P11社が,平成21年2月13日付け「2008 JapanIndividualTaxReturnFiling」と題する文書(甲7)において,税務及び法律の専門家と協議した上,原告らを含む同社の従業員に対し,所得申告について本件制限解除日のP11株式の時価を用いる旨表明していたことなどの事情に鑑みれば,本件各株式報酬に係る給与等の収入金額とすべき金額を本件制限解除日での当該株式時価として申告したことは当然といわざるを得ない。 したがって,本件は,過少申告が真にやむを得ない理由によるものであり,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当若しくは酷になる場合であって,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」に該当することは明らかである。 (被告の主張の要旨)国税通則法65条4項に定める「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することができない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうのであり,納税者 れる」場合とは,真に納税者の責めに帰することができない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうのであり,納税者側の主観的な事情や法の不知や解釈の誤りは含まれず,納税者において,申告時に過少申告とならな い申告をする契機が客観的に与えられていなかったような場合に限られると解すべきである。 そもそも,全ての経済事象や個々の事案に係る収入すべき日や収入すべき金額を全て法令に規定し,あるいは通達に定めることなどは不可能であるところ,ある所得の収入すべき日がいつであるか,また,その収入すべき金額がいくらであるかは,所得税法36条の規定及びその解釈を基に,それぞれの所得の発生原因や性質等を考慮し決定されるべきものである。 また,原告らは,P11社から「会社は納税に関するアドバイスをする立場にありません。申告にあたっては,個々の責任において,事前に税理士と相談の上,確定申告を行うことを強く奨励します。国税当局から株式転換日の価格とすべきとの見解が出た場合には,税額の増差分及び加算税,延滞税の負担が生じますが,そのリスクは各社員でお取りいただくことになります。」(甲7)との強い注意喚起をも受けている。 そうすると,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金額を本件制限解除日のP11株式の時価を用いて算定するなどし,本件各申告において,その納付すべき税額を過少に申告したことは,原告らの税法の不知や法令解釈の誤解に基づくものといえるのであって,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があるといえず,過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるような事情があるとも認められない。 したがって,原告らが各確定申告においてその納付すべき税額を過少に申 ることのできない客観的な事情があるといえず,過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるような事情があるとも認められない。 したがって,原告らが各確定申告においてその納付すべき税額を過少に申告したことについて,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」はない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件各報酬プラン等及びP12取引方針につき,以下の事実を認めることができる(書証中の英文は,基本的には,被告提出の訳文によっている。)。 (1) EICPの概要EICPは,要旨,次のとおりの内容を定めている(乙2)。 アこのプランの目的は,P11社及びその子会社の発展及び利益に貢献した主要な従業員に対し,報奨を与え,P11株式の所有を勧奨することで,従業員を惹き付け,雇用を継続させ,そのモチベーションを高めることにある(1条)。 イ 「アワード」とは,このプランの規定に準拠して付与される報酬をいう(2条)。 ウ 「委員会」とは,P11社の取締役会の下にある報酬委員会,その全ての後継者又はこのプランを管理する目的で当該取締役会が任命するその他の委員会をいう。委員会は,2名以上の者から構成され,P11社の取締役会の意向に従って任務を遂行する。(2条)エアワードには,ストック・アワード,ストック・ユニット・アワード,オプション・アワード,SARアワード及びその他のアワードがある(7~11条)。 このうち,ストック・ユニット・アワードは,一つ以上のストック・ユニットから構成され,委員会が定めるもののほか,報酬契約書又は報酬証書が規定する諸条件に従うものとする。1ストック・ユニットは1P11株式に相当し,報酬契約書又は報酬証書が規定する確定及び支払の条件を ットから構成され,委員会が定めるもののほか,報酬契約書又は報酬証書が規定する諸条件に従うものとする。1ストック・ユニットは1P11株式に相当し,報酬契約書又は報酬証書が規定する確定及び支払の条件を満たすと,委員会により,P11株式又は支払時の1株当たりの公正価格に相当する現金が支払われる。(8条)オこのプランは委員会によって管理される。委員会は,所定の規定に従い,①適格者の中から参加者(アワードの付与を受ける者をいう。)を選ぶこと,②このプランに沿ってアワードを付与すること,③各アワードの対象となる株式数等を決定すること,④各アワードに関し,確定,没収,支払及び権利行使等の諸条件を定めること,⑤報酬契約書又は報酬証書の記載 事項を決定することなど,このプランの運営に必要なあらゆる決定や手順を策定する全ての権限を有する(5条(a))。 カアワードに関する確定,権利行使,支払及びその他の制限は,委員会が決定し,報酬契約書又は報酬証書に規定される。もっとも,委員会は,アワードの確定又は支払等を早めることができる。(12条(f))(2) EEAPの概要EEAPは,要旨,次のとおりの内容を定めている(乙3)。 アこのプランの目的は,P11社及びその関連会社を主要従業員にとって魅力あるものとし,彼らを定着させ,動機付けるとともに,エクイティ・ベースの報酬と株式所有機会の拡大を通じ,主要従業員と株主の利益の方向を同じくすることにある(1条)。 イ 「アワード」とは,委員会がこのプランに沿って決定した諸条件に基づいて付与される株式若しくは現金又はこれらを取得する権利をいう(2条(2.3))。 ウ 「委員会」とは,P11社の2人以上の役員から成る委員会をいい,3条1項に定められている(2条(2.8))。 エ 「スト る株式若しくは現金又はこれらを取得する権利をいう(2条(2.3))。 ウ 「委員会」とは,P11社の2人以上の役員から成る委員会をいい,3条1項に定められている(2条(2.8))。 エ 「ストック・ユニット」とは,P11社が会計帳簿への記入により記録したアワードにより,また,8条により委員会が決定した条件に従って,1株(又はその価額)を加入者に引き渡すというP11社の一般的な無担保債務をいう(2条(2.34))。 オこのプランは委員会が管理する(3条(3.1))。委員会は,①このプランに基づき付与されたあらゆる権限を行使すること,②このプラン及びプランに基づくアワードの条件を定めた文書を作成,解釈,実施すること,③プランに関係する規則を規定し,修正し,廃止すること,④プランの管理に必要な又は望ましい決定をすることなどの権限を有する(3条(3.2))。 カ委員会は,リストリクテッド・ストック又はストック・ユニット・アワードを,単独で又はこのプランに基づき他の賞与と共に,若しくは当社の他のプラン又は取り決めに基づき行われる他のアワードと共に,委員会が随時専らその裁量で決定し,報酬証書に定める金額と条件において付与することができる(8条(8.1))。 (3) TDEPPの概要TDEPPは,要旨,次のとおりの内容を定めている(乙4)。 アこのプランの目的は,優れた能力を有する従業員を惹き付け,その雇用を継続させるとともに,参加者と株主の利害関係の更なる一致をP11社が促進することを助けることにより,P11社の長期的な発展及び財政的成功を促進することにある(1条)。 イ 「委員会」とは,このプランを運営するためにP11社の取締役会が指名する2名以上の者から構成される委員会をいう(2条(j))。 ウ 「アワー 発展及び財政的成功を促進することにある(1条)。 イ 「委員会」とは,このプランを運営するためにP11社の取締役会が指名する2名以上の者から構成される委員会をいう(2条(j))。 ウ 「アワード」とは,第7条に準拠して参加者(委員会がこのプランに参加する適格があると決定した重要な従業員をいう。2条(u))に付与される報酬をいう(2条(d))。 エ委員会は,このプランの規定に従ってこれを管理するための全ての権限を有し,その権限には必要又は適切と思われる規則及び規制等を採用するなどの権限が含まれる(5条(a)(b))。 オ委員会は,参加者にアワードを与える全ての権限を有する。アワードは,所定の株式数によって計上される。1998年(平成10年)1月1日以降に有効になる各アワードについては,委員会が定め,所定の報酬証書に記載される諸条件に従い,その諸条件その他の規定は,当該報酬証書に記載されるものとする。(7条(a)(i))(4) 本件各報酬証書の概要P11社は,本件各報酬プランに準拠してアワードに関する諸条件を規定 するものとして,要旨,次のとおりの内容の本件各報酬証書を定めている(乙12~16)。 ア前文(ア) P11社は,1年間の勤務に対する任意の長期インセンティブ報酬,及び,継続してP12グループの雇用下に留まり,予定確定日までP12グループに勤務し続けることの動機付けとして,ストック・ユニットを付与した。この報酬証書は,アワードの一般条件を規定している。 (イ) アワードは,本件各報酬プランに準拠して決定される。 (ウ) アワードの目的は,P12グループの利益と被付与者の利益を調整すること,将来におけるP12グループへの継続的な雇用やサービスに対して報酬を与えること,非公開,極秘,あるいは機密情 される。 (ウ) アワードの目的は,P12グループの利益と被付与者の利益を調整すること,将来におけるP12グループへの継続的な雇用やサービスに対して報酬を与えること,非公開,極秘,あるいは機密情報,製品,企業秘密,取引先との関係及びその他の合法的な業務利益において,P12グループの利益を保護することなどにある。 イストック・ユニットの概要被付与者の各ストック・ユニットは,P11株式1株に相当する。ストック・ユニットとは,ストック・ユニットの転換日にP11株式1株を被付与者に支払う支払保証のないP11社の約束から成るものである。被付与者は,ストック・ユニットが株式に転換されるまで,ストック・ユニットの基礎となるP11株式に関し,株主にはならないものとする。(1条)ウ確定と転換(ア) 確定(ベスト)被付与者のストック・ユニットの50%は,「第1予定確定日」に確定し,残りの50%は,「第2予定確定日」に確定する。 別途規定されている場合を除き,ストック・ユニットの上記各部分は,予定確定日まで継続してP12グループの雇用下に留まること,かつ, P12グループに対して付加価値的なサービスを提供することによって,将来も引き続きP12グループに勤務する場合にのみ,確定する。 (以上につき,2条(a))(イ) 転換(コンバージョン)被付与者に付与された各々のストック・ユニットは,別途規定されている場合を除き,「予定転換日」にP11株式1株に転換される。 ストック・ユニットの転換に基づいて引き渡された株式は,証券取引法又はP12グループの従業員取引ポリシーから生じる可能性のある制限を除き,あらゆる譲渡制限を受けず,又は,所定の状況(2003EICP及び2004EICPの各13条(c),2005EICP,20 法又はP12グループの従業員取引ポリシーから生じる可能性のある制限を除き,あらゆる譲渡制限を受けず,又は,所定の状況(2003EICP及び2004EICPの各13条(c),2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各8条(c))において取り消されないものとする。 (以上につき,2条(b))(ウ) 加速的転換P11社は,ストック・ユニットの一部又は全部の転換を早める権利を留保する。予定転換日に先立ってストック・ユニットがP11株式に転換された場合でも,これらの株式を譲渡することはできず,ストック・ユニットが転換されなかった場合と同様に,確定に関する規定及びこの報酬証書に記載された取消し及び源泉徴収に関する規定に従うものとする。(2003EICPの2条(c))エ配当相当額の支払P11社が普通株式の配当金を支払う場合は,被付与者のストック・ユニットが株式に転換されるまで,確定及び未確定のストック・ユニットの配当相当額が被付与者に支払われるが,取り消されたストック・ユニットについての配当相当額は,支払われない(4条)。 オ死亡,身体障害及び定年退職 以下の特別な確定及び支払条件は,被付与者のストック・ユニットに適用される(2003EICP及び2004EICPの各10条,2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各5条)。 (ア) 雇用期間中の死亡被付与者の雇用が,死亡により終了した場合,被付与者の未確定ストック・ユニットの全ては,直ちに確定し,P11社が被付与者の死亡通知を受領した後,管理能力上実行可能なできるだけ早い時期に,P11株式に転換され,規定に従って被付与者が指名した受益者又は遺産の法定代理人に引き渡される。 (イ) 雇用期間後の死亡被付与者が,雇用期間 した後,管理能力上実行可能なできるだけ早い時期に,P11株式に転換され,規定に従って被付与者が指名した受益者又は遺産の法定代理人に引き渡される。 (イ) 雇用期間後の死亡被付与者が,雇用期間後,予定転換日前に死亡した場合,被付与者が死亡時に保有していた確定ストック・ユニットは,P11社が被付与者の死亡通知を受領した後,管理能力上実行可能なできるだけ早い時期に,P11株式に転換され,規定に従って指名された受益者又は遺産の法定代理人に引き渡される。 (ウ) 身体障害(2003EICPの定め)被付与者の雇用が,身体障害によって終了した場合,被付与者の未確定のストック・ユニットの全ては,直ちに確定し,被付与者は,雇用終了の日から1年後の月の最終取引日(予定転換日前に限る。)にP11株式に転換されることを選択することができる。 (2004EICPの定め)被付与者の雇用が,身体障害によって終了した場合,被付与者の未確定のストック・ユニットの全ては,直ちに確定し,予定転換日にP11株式に転換される。 (2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの定 め)被付与者の雇用が,身体障害によって終了した場合,被付与者の未確定のストック・ユニットの全ては,当該雇用の終了の日に確定し,予定転換日にP11株式に転換される。 (エ) 定年退職(2003EICP及び2004EICPの定め)被付与者の雇用が,定年退職で終了した場合,被付与者の未確定のストック・ユニットの全ては,直ちに確定し,被付与者は,雇用終了の日から1年後の月の最終取引日(予定転換日前に限る。)にP11株式に転換されることを選択することができる。 (2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの定め)被付与者の雇用が,定年退 1年後の月の最終取引日(予定転換日前に限る。)にP11株式に転換されることを選択することができる。 (2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの定め)被付与者の雇用が,定年退職で終了した場合,被付与者の未確定のストック・ユニットの全ては,当該雇用の終了の日に確定し,予定転換日にP11株式に転換される。 カ人員削減,P12グループによる会社都合の解雇(2003EICP及び2004EICPの定め)人員削減に関連し,P12グループが被付与者を解雇した場合,被付与者の未確定のストック・ユニットは,被付与者がP12グループの合意書及び権利放棄証書に署名することを条件に,雇用を継続していた場合と同視して予定確定日に確定するものとし,予定転換日にP11株式に転換される。この報酬証書が定める取消し及び源泉徴収の規定は,被付与者のストック・ユニットがP11株式に転換されるまで,継続して適用される。(11条)(2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの定め)「事由」(21条(b)所定のP12グループに対する義務不履行等の 事由)及び8条(c)所定のその他の取消事象に該当しない状況の下で,P12グループが被付与者を解雇した場合,被付与者の未確定のストック・ユニットは,被付与者がP12グループの合意書及び権利放棄証書に署名することを条件に,P12グループとの雇用の終了の日に確定し,予定転換日にP11株式に転換される。この報酬証書が定める取消し及び源泉徴収の規定は,被付与者のストック・ユニットがP11株式に転換されるまで,継続して適用される。(6条)キ雇用の終了と報酬の取消し(2003EICP及び2004EICPの各13条,2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各8条 に転換されるまで,継続して適用される。(6条)キ雇用の終了と報酬の取消し(2003EICP及び2004EICPの各13条,2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各8条)(ア) 未確定報酬の取消し被付与者の雇用が,死亡,身体障害,定年退職又は人員削減(会社都合の解雇)というこの報酬証書に記載された状況以外の何らかの理由で終了した場合,未確定のストック・ユニットは取り消される。 (イ) 確定報酬の一般的扱いこの報酬証書に別途規定されている場合を除き,被付与者の(雇用が終了した時点で)確定したストック・ユニットは,予定転換日にP11株式に転換される。 (ウ) 一定の状況の下でのアワードの取消し被付与者のストック・ユニットは,たとえ確定していても,予定転換日までは取得されず,下記のいずれかに該当する場合,予定転換日前に取り消される。 a 競業被付与者が雇用終了後等の所定の期間中に「競業」ないし「競業する活動」に及んだ場合,その時点に応じて,ストック・ユニットの全部又は50%が取り消される。 (「競業」ないし「競業する活動」とは,「競合他社」の従業員,役員,パートナー,メンバー,所有者,取締役,請負業者,コンサルタント,アドバイザー,代理人又は代理店となること等をいう。2003EICP及び2004EICPの各26条(g),2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各21条(f))b その他の事象以下の全ての事象が,予定転換日前のどの時点で生じた場合でも,被付与者の全てのストック・ユニットは,確定又は未確定にかかわらず,直ちに取り消される。 (a) 被付与者の雇用が,業務違反,義務の不履行,不正行為又は法令違反などの事由のために終了する場合(b) 被付与 てのストック・ユニットは,確定又は未確定にかかわらず,直ちに取り消される。 (a) 被付与者の雇用が,業務違反,義務の不履行,不正行為又は法令違反などの事由のために終了する場合(b) 被付与者の雇用期間終了後,P12グループが,被付与者の雇用が上記(a)の事由のために終了した可能性があると判断する場合(c) 被付与者が,P12グループ外の権限のない者に機密情報を開示し,又はP12グループの業務関係以外で,機密情報を利用又は利用しようと試み,その開示,利用又は利用の試みが,P12グループに不利益をもたらす場合,又は,P12グループの行動規範に基づく義務若しくは機密情報における権利の譲渡,獲得,施行に関して,被付与者とP12グループとの間で別途存在する義務に,雇用期間中又はその後において従わない場合(d) 被付与者が不正教唆に関わった場合(e) 被付与者が越権発言を行った場合(f) 被付与者が,一定期間内に,書面による事前の辞職届けを行わずに辞職した場合ク譲渡不可能性被付与者は,所定の場合を除き,被付与者のストック・ユニットを売却, 担保,抵当,譲渡又はその他の方法で移転することはできない。この禁止規定は,法の運用又はその他の方法で生じるとされる,あらゆる譲渡又はその他の移転を含む。(2003EICP及び2004EICPの各16条,2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各11条)ケ所有権と所有(2003EICP及び2004EICPの各18条,2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各13条)(ア) 一般的に,被付与者は,ストック・ユニットの転換前に,当該ストック・ユニットに対応するP11株式の株主としてのいかなる権利も持たない。ただし,ストック・ユニ 2006TDEPPの各13条)(ア) 一般的に,被付与者は,ストック・ユニットの転換前に,当該ストック・ユニットに対応するP11株式の株主としてのいかなる権利も持たない。ただし,ストック・ユニットの転換前に,被付与者は,この報酬証書に規定された配当相当額の支払を受け取る。 (イ) 転換後被付与者は,ストック・ユニットの転換後,被付与者に発行されるP11株式の受益所有権者となり,議決権及び現金,株式配当金又は株式に支払われるその他の分配金を受け取る権利を含む,あらゆる所有者としての権利を与えられる。 コ予定確定日及び予定転換日本件各報酬証書による本件各ストック・ユニットの予定確定日及び予定転換日は,別表3記載のとおりである(2003EICP及び2004EICPの各26条,2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各21条)。 (5) グローバル従業員取引ポリシーの概要P12グループは,全てのP12従業員等が行う有価証券又はその他の金融商品の個人的取引に関する規則として,要旨,次のとおりの内容のグローバル従業員取引ポリシーを定めている(乙8)。 アはじめにこのポリシーは,法律上,ビジネス上及び倫理上の利益相反の回避,秘密情報の不正使用の防止,並びに,従業員の個人取引に関連した不正の発生の回避を目的として定められている。 このポリシーは,従業員の全ての取引活動に関連して遵守されるべき総則,特定の種類の取引及び口座に適用される個別の規則から構成される。 また,従業員は,所属部署,部門及び地域に適用されるあらゆる規則を遵守しなければならず,事前承認が必要とされる場合もある。 イ適用範囲このポリシーは,全ての「従業員証券 の規則から構成される。 また,従業員は,所属部署,部門及び地域に適用されるあらゆる規則を遵守しなければならず,事前承認が必要とされる場合もある。 イ適用範囲このポリシーは,全ての「従業員証券口座」に適用される。このポリシーにおける「従業員」とは,従業員本人だけではなく,その配偶者又は同居人及び未成年の子供を含む。 ウ P12グループ内における口座の保有従業員がこのポリシーを遵守しているかを監視するため,従業員は,P11社への入社時及びその後も定期的に要請のあるたびに,すべての従業員証券口座を完全に開示し,その他の証明を行わなければならない。また,従業員は,原則として,(所属地域の法律に従って)P12グループ内に全ての従業員証券口座を保有しなければならない。 エ個別の制限(ア) 取引注文の入力従業員証券口座における取引注文は,直接入力することは許されず,P17のファイナンシャル・アドバイザー,投資担当者又は従業員取引のために指定されたデスクを通じて行わなければならない。 (イ) 保有期間及び事前承認従業員は,原則として,投資商品を購入後,30日以上保有しなければならない。関連保有期間の終了前にポジションを売る必要がある場合 には,指定管理者及びコンプライアンス本部から事前に承認を得なければならない。P12有価証券を取引する際の保有期間については,別に定める。 (ウ) 制限銘柄リスト制限銘柄リスト上の銘柄を従業員証券口座で取引することは,原則として禁止されている。 オ P12有価証券の取引その他の有価証券の場合と同様に,従業員は,P11社について内部情報又は重大な未公開情報を保有している場合には,いかなる時点でも,P12有価証券の取引を行うことが禁止されている。また,従業員は,P12有価証券 証券の場合と同様に,従業員は,P11社について内部情報又は重大な未公開情報を保有している場合には,いかなる時点でも,P12有価証券の取引を行うことが禁止されている。また,従業員は,P12有価証券について,長期的な投資目的で保有すべきであり,短期的かつ投機的な投資目的で保有すべきではない。 従業員は,P12有価証券を所定のウインドウ・ピリオド内に限り,取引できる。この期間は,P12グループのイントラネットに掲載される。 下記の制限は,別途定める場合を除き,全ての従業員,並びに,P12グループが発行した普通株式,優先株式及び債権などを含む全ての有価証券に適用される。 (ア) ウインドウ・ピリオド従業員は,P12有価証券を所定のウインドウ・ピリオド内に限り,取引できる。この期間は,P12グループのイントラネットに掲載される。 アクセス・パーソンである従業員の場合,ウインドウ・ピリオドは,P11社の決算発表の翌営業日から始まり,その日から20営業日目に終了する。 アクセス・パーソンでない従業員の場合,ウインドウ・ピリオドは,P11社の決算発表の翌営業日から始まり,各財務四半期の最終営業日 に終了する。 (イ) 保有期間アクセス・パーソンでない従業員の場合,P12有価証券については,最低30日間保有しなければならない。アクセス・パーソンである従業員の場合,P12有価証券については,6か月間保有しなければならない。 所定の期間保有したストック・ユニットの転換の結果として株式を取得した場合には,当該株式を更に一定の期間保有する必要はない。 カ従業員取引ポリシーに違反した場合の結果このポリシーに違反した場合,取引の取消しや取引特権の停止,解雇,民事又は刑事手続などの制裁を受けることになる可能性がある。P12グループ 要はない。 カ従業員取引ポリシーに違反した場合の結果このポリシーに違反した場合,取引の取消しや取引特権の停止,解雇,民事又は刑事手続などの制裁を受けることになる可能性がある。P12グループは,事前の通知なしに,従業員の費用負担でポジションを凍結し,取引を取り消し,又は,P12グループ外の口座で行った取引を取り消すよう従業員に指示する権利を留保する。許可されていない取引から生じた一切の損失は従業員に請求され,当該取引から生じる利益は全て没収される。 (6) コンプライアンス通知の概要P14証券は,P12グループの全ての従業員の個人証券取引及びその取引口座に対して適用される日本特有の規制として,要旨,次のとおりの内容のコンプライアンス通知を定めている(乙9)。 ア日本特有の制限事項以下の従業員取引に関する制限事項は,日本のP12グループの全従業員に対して適用される。 (ア) 社外の口座について所定の例外を除き,P12グループ外に個人証券取引口座を保有することは禁止されている。グローバル従業員取引ポリシーにより,従業員 は,P12グループ内に従業員取引口座を開設することが義務付けられている。 従業員は,日本証券業協会の規則により,書面による事前承認を受けずに,他の金融商品取引業者に有価証券取引を発注することが禁止されている(いわゆる「地場出しの禁止」)。 (イ) 金融商品取引業者以外を通しての取引金融機関(銀行等)に有価証券取引を発注することは,「地場出し」に当たる。 (ウ) デリバティブ取引従業員は,上場及び店頭デリバティブ取引(先物,オプション,店頭デリバティブ,先渡し取引,クレジット・デリバティブ等)を行うことを禁止されている。 (エ) 信用取引従業員が信用取引を行うことは禁止さ は,上場及び店頭デリバティブ取引(先物,オプション,店頭デリバティブ,先渡し取引,クレジット・デリバティブ等)を行うことを禁止されている。 (エ) 信用取引従業員が信用取引を行うことは禁止されている。 (オ) 空売り信用取引が禁止される結果,従業員は有価証券の空売りを行うことも禁止されている。 (カ) 取引所ファンド(ETF)国内のETF(金融庁に届け出られている海外のETFを含む。)をP12グループ内の従業員取引口座で取引することは認められている。 イ部署別の方針所定の部署には,個別の従業員取引ポリシー及び事前承認要件が定められている。当該部署に所属している者は,適用される全ての要件を理解し,遵守する責任がある。 これらの要件を遵守しない場合,P12グループは規制法令違反に問われるリスクにさらされ,また,従業員自身も,本人の費用負担による取引 の取消し,解雇を含む懲戒処分を受ける可能性がある。 2 争点(1)(本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日)について(1) 本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日について,被告は本件転換日(平成20年9月8日)である旨主張し,原告らは本件制限解除日(同月18日)である旨主張している。 そこで,以下,所得税法が採用するいわゆる権利確定主義についてみた上で,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日について検討することとする。 (2) いわゆる権利確定主義について所得税法は,一暦年を単位としてその期間ごとに課税所得を計算し,課税を行うこととしているところ,所得税法36条1項は,その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な 法36条1項は,その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には,その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする旨定めている。そして,所得税法36条1項が,上記期間中の収入金額又は総収入金額の計算について,「収入すべき金額」とする旨定め,「収入した金額」としていないことから考えると,同法は,現実の収入がなくても,その収入の原因となる権利が確定した場合には,その時点で所得の実現があったものとして,同権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解される。このように,所得税法がいわゆる権利確定主義を採用したのは,課税に当たって常に現実収入の時まで課税することができないとしたのでは,納税者の恣意を許し,課税の公平を期し難いので,徴税政策上の技術的見地から,収入の原因となる権利の確定した時期を捉えて課税することとしたものである。(最高裁昭和39年(あ)第2614号同40年9月8日第二小法廷決定・刑集19巻6号630頁,最高裁昭 和43年(オ)第314号同49年3月8日第二小法廷判決・民集28巻2号186頁,最高裁昭和50年(行ツ)第123号同53年2月24日第二小法廷判決・民集32巻1号43頁参照)そして,ここにいう収入の原因となる権利が確定する時期は,それぞれの権利の特質を考慮し決定されるべきものであるところ,給与等に係る債権については,法律上当該債権を行使することができるようになる時期,すなわち,その履行期が到来すれば,特段の事情のない限り,収入実現の可能性が高度であると認められるから,所得税法36条1 等に係る債権については,法律上当該債権を行使することができるようになる時期,すなわち,その履行期が到来すれば,特段の事情のない限り,収入実現の可能性が高度であると認められるから,所得税法36条1項にいう「収入すべき金額」に当たるものとして,課税の対象となるべき所得を構成すると解するのが相当である。なお,所得税基本通達36-9(給与所得の収入金額の収入すべき時期)は,給与所得の収入金額の収入すべき時期は,契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等についてはその支給日,その日が定められていないものについてはその支給を受けた日によるものとする旨定めているが(顕著な事実),これも上記権利確定時期を踏まえて課税実務上の取扱いを定めたものと解されるところであり,合理性を有するということができる。 (3) 本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日について以下,まず,ストック・ユニットの内容についてみた上で,上記(2)で述べたところを踏まえつつ,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日について検討する。 アストック・ユニットの内容について前記前提事実及び上記認定事実のとおり,P12グループは,主要な従業員に対する精勤の動機付けとすることなどを企図して,P11株式を取得する権利等を「アワード」として付与する本件各報酬プランを設けているところ,本件各報酬プランに準拠して定められた本件各報酬証書は,アワードの一つであるストック・ユニットについて,要旨,次のとおり定め ている。 すなわち,ストック・ユニットとは,転換日にP11株式1株を被付与者に支払う支払保証のないP11社の約束から成るものであり,被付与者の各ストック・ユニットは,P11株式1株に相当する(1条)。ストック・ユニットは,原則として,予 ,転換日にP11株式1株を被付与者に支払う支払保証のないP11社の約束から成るものであり,被付与者の各ストック・ユニットは,P11株式1株に相当する(1条)。ストック・ユニットは,原則として,予定確定日に確定し,予定転換日にP11株式1株に転換されるところ(2条),被付与者は,ストック・ユニットが株式に転換されるまでは,ストック・ユニットの基礎となるP11株式に関し,株主となるものではなく(1条),配当相当額の支払を受けることができるにすぎない(4条)。そして,被付与者の雇用が死亡等以外の理由で終了した場合,未確定のストック・ユニットは取り消されることになり,また,被付与者が予定転換日前に競業に及んだ場合や,被付与者の雇用が業務違反等によって終了し又は被付与者が機密情報の漏えい等をした場合には,確定したストック・ユニットであっても取り消されることになる(2003EICP及び2004EICPの各13条,2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各8条)。さらに,被付与者は,一定の場合を除き,ストック・ユニットを売却,担保,抵当,譲渡又はその他の方法で移転することはできないものとされている(2003EICP及び2004EICPの各16条,2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各11条)。 他方,被付与者に付与された各々のストック・ユニットは,別途規定されている場合を除き,予定転換日にP11株式1株に転換されるところ,ストック・ユニットの転換に基づいて引き渡された株式は,証券取引法又はP12グループの従業員取引ポリシーから生じる可能性のある制限を除き,あらゆる譲渡制限を受けず,又は,所定の状況においても取り消されないものとされている(2条(b))。そして,被付与者は,ストック・ユニットの転換後,被 取引ポリシーから生じる可能性のある制限を除き,あらゆる譲渡制限を受けず,又は,所定の状況においても取り消されないものとされている(2条(b))。そして,被付与者は,ストック・ユニットの転換後,被付与者に発行されるP11株式の受益所有権者となり, 議決権及び現金,株式配当金又は株式に支払われるその他の分配金を受け取る権利を含む,あらゆる所有者としての権利を与えられることになる(2003EICP及び2004EICPの各18条,2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各13条)。 イ本件各株式報酬に係る給与等支払の履行日について以上に鑑みると,本件各報酬プラン等がアワードの一つとして定めるストック・ユニットは,P11社に対してP11株式の支払を求めることのできる権利であるということができる。そして,転換日が到来した後は,ストック・ユニットが取り消されることがなくなるものである。 そこで,取り消されることのなくなったストック・ユニットに基づきP11株式の支払を求めることができるようになる日についてみるに,前記認定事実のとおり,EICPは,1ストック・ユニットは1P11株式に相当し,報酬契約書又は報酬証書が規定する確定及び支払の条件を満たすと,委員会により,P11株式又は支払時の1株当たりの公正価格に相当する現金が支払われる旨定めている(8条)。そして,先に述べたとおり,本件各報酬証書は,ストック・ユニットとは,転換日にP11株式1株を被付与者に支払う支払保証のないP11社の約束から成るものである旨定めており(1条),転換日にP11株式が支払われるものであることを明らかにしている。また,本件各報酬証書は,被付与者に付与されたストック・ユニットは,別途規定されている場合を除き,予定転換日にP11株式1株 1条),転換日にP11株式が支払われるものであることを明らかにしている。また,本件各報酬証書は,被付与者に付与されたストック・ユニットは,別途規定されている場合を除き,予定転換日にP11株式1株に転換され,ストック・ユニットの転換に基づいて引き渡された株式は,証券取引法又はP12グループの従業員取引ポリシーから生じる可能性のある制限を除き,あらゆる譲渡制限を受けず,又は,所定の状況において取り消されないものとしているところである(2条(b))。 このように,本件各報酬証書が,転換日にP11株式が支払われるものであることを明らかにしている規定を置いていることなどに加え,ストッ ク・ユニットは転換日においてP11株式に転換され,P11株式は当該転換に基づいて引き渡される旨定めている一方,P11株式の支払日について,転換日と異なる日とする旨の規定を設けていないこと(乙2~4,12~16)からすれば,本件各報酬証書は,転換日をもってP11株式支払の履行日としていると解するのが相当であり,ストック・ユニットの付与を受けた者は,同日以降,P11株式の支払を求めることができるものといえる。 そして,前記前提事実のとおり,P11社の報酬委員会は,平成19年12月11日,それまでに確定していない一定のストック・ユニットの予定確定日及び予定転換日を繰り上げることとし,所定のストック・ユニットについて,平成20年9月8日(本件転換日)に,ストック・ユニット数に応じたP11株式の引渡しにより支払われることを決議したものである。 ウ以上検討したところによれば,本件各ストック・ユニットは,P11社に対して本件各P11株式の支払を求めることのできる権利であるところ,同権利は本件転換日が到来した以降は取り消されることがなくなるとともに,同権利に ろによれば,本件各ストック・ユニットは,P11社に対して本件各P11株式の支払を求めることのできる権利であるところ,同権利は本件転換日が到来した以降は取り消されることがなくなるとともに,同権利に基づく本件各P11株式の支払日は本件転換日とされ,原告らは同日以降その履行を求め得ることとなったのであるから,本件各株式報酬については,本件転換日に収入の原因となる権利が確定したというべきである。 したがって,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日は,本件転換日(平成20年9月8日)である。 (4) 原告らの主張についてア権利確定主義について原告らは,株式などの金銭以外のものについて,現実に売却して金銭化できるなど現実にその価値に相当する利益を取得する手段が全くなければ, 仮に市場価格が形成されていたとしても,「外部からの経済的価値の流入」はなく,「収入」たる担税力を増加させる経済的利益を取得したということはできず,また,所得の処分可能性は所得の本質的要素であり,処分可能性のない所得を獲得してもその所得が実現したとは認められないため,本件各株式報酬については,現実にその価値に相当する利益を取得する手段が存在する状態の本件各P11株式が「収入」たる「物又は権利その他経済的な利益」に該当し,当該状態の本件各P11株式を受領することができる権利が「収入の原因となる権利」に該当するのであり,換言すれば,本件における「現実の収入」とは,所得の実現の本質的要素である処分可能性を有する状態の本件各P11株式の受領をいい,「収入の原因となる権利」とは,処分可能性を有する状態の本件各P11株式を受領する権利をいうと解すべきである旨主張する。 しかしながら,所得税法36条1項が,金銭とは別に,金銭以外の物又は権利その他経済的な となる権利」とは,処分可能性を有する状態の本件各P11株式を受領する権利をいうと解すべきである旨主張する。 しかしながら,所得税法36条1項が,金銭とは別に,金銭以外の物又は権利その他経済的な利益それ自体をもって収入の対象としていることは明らかであるから,かかる経済的価値がその価額を確定し得る状況の下で個人に流入したといえるだけの具体的事情がある場合には,当該個人に現実の収入があるものというべきであり,その時点において,何らかの制約により当該経済的価値を直ちに金銭に換価し得なかったとしても,そのことのみにより収入のあることが否定されることにはならないと解するのが相当である。上記の制約には,その生じる根拠,目的,内容,収入実現に係る他の事情との関係等において様々なものがあり得るところであり,それらのいかんによって,収入実現過程における当該制約の意味合いやそれが収入の対象たる利益の内容に与える影響等も異なり得るのであるから,収入の有無を判断するに当たっては,それらの諸事情を考慮した上で,当該制約により上記経済的価値の流入を否定すべき特段の事情があるといえるかどうかが検討されるべきである。そして,先にもみたとおり,権利確 定主義とは,現実の収入がなくても,その収入の原因となる権利が確定した場合には,その時点で所得の実現があったものとして,同権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという建前であるから,上記経済的価値を得るための権利行使が可能になった段階で,収入の原因となる権利が確定するものと解するのが相当である。なお,原告らは,上記主張を裏付けるものとして,ストック・オプションの支給に係る裁判例や株式による給与支給に係る裁判例を引用するが,それぞれの事案に照らすと,ストック・オプションに関しては,そもそも,これを取引 ,上記主張を裏付けるものとして,ストック・オプションの支給に係る裁判例や株式による給与支給に係る裁判例を引用するが,それぞれの事案に照らすと,ストック・オプションに関しては,そもそも,これを取引の対象とする市場が存在せず,市場価格がないことを前提とするものであるということができるから,市場価格を有するP11株式を収入の対象とする本件とは事案を異にするものであるし,株式に関しては,当該株式の譲渡制限解除がされたことのみを根拠として収入の発生時期を判断しているといえるものではないから,上記主張を根拠付けるに足りるものとは解されない。 イ本件転換日において原告らが取得する権利及びP11株式の移管時期について原告らは,米国法上,本件各証券口座に本件各P11株式が移管される前においては,いかなる意味においても,本件各P11株式上の権利を取得することができなかったのであり,また,人事部作成の確認書(乙7)において,P11株式の証券口座への移管は,通常の場合,転換日後5営業日以内に完了する見込みであるとされているように,転換日は,P11株式をストック・ユニットの被付与者の証券口座に移管するための手続を履践する債務の履行期限ではなく,被付与者は,P11社に対し,本件転換日に直ちに自己の証券口座へP11株式を移管するよう請求することができるわけではないから,原告らが本件転換日に本件各P11株式上の権利を取得することは不可能であったのであり,当然ながら本件各P11株式を換価できる可能性は全くなかったというほかなく,したがって,本件 転換日においては,原告らは,本件各P11株式を受領する権利を取得したものの,その時点における本件各P11株式については所得の実現の本質的要素である処分可能性が具備されておらず,当該権利を行使することが全 おいては,原告らは,本件各P11株式を受領する権利を取得したものの,その時点における本件各P11株式については所得の実現の本質的要素である処分可能性が具備されておらず,当該権利を行使することが全く不可能であった以上,当該権利が確定したということはできない旨主張する。 しかしながら,先に述べたとおり,給与等に係る債権については,法律上当該債権を行使することができるようになる時期をもって収入の原因となる権利の確定があったものとみるべきところ,原告らの上記主張や引用する証拠によるも,本件転換日以降一定期間経過後にはじめて原告らがP11株式の移管を請求し得るとする合意があったとか,P11社は本件転換日後の任意の時期にP11株式の移管をし得るとする合意があったなどとは認められず,本件転換日到来により,原告らはP11社に対して株式の移管を請求でき,P11社は速やかにこれに応じる義務を有していたものと解されるから,本件転換日が権利の確定日であるとする前記判断は左右されないものというべきである。原告らは,人事部作成の上記確認書の記載からすれば,本件転換日において直ちにP11株式の本件各証券口座への移管を請求し得たわけではない旨を主張するが,上記確認書の記載から直ちにかかる主張を導き得るとは解されないし,更にいえば,P11社の人事部の担当者が,アワードの被付与者に対し,報酬委員会の決議によって予定転換日が本件転換日に繰り上げられた旨を通知した際に,ストック・ユニットについて,P11株式の引渡日は本件転換日である旨通知しており(乙6),実際にも,原告P10が取得したP11株式が本件転換日に移管されていること(争いがない)に照らすと,転換日とは別の日を移管日とする旨の合意があったとみることはできないものというべきである。 したがって,この点に関す が取得したP11株式が本件転換日に移管されていること(争いがない)に照らすと,転換日とは別の日を移管日とする旨の合意があったとみることはできないものというべきである。 したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。 ウ本件譲渡制限及び担税力について(ア) 原告らは,本件各報酬プラン等とP12取引方針とは,相互に参照されており,密接に関連した制度として構築されているところ,このP12取引方針の下では,本件制限解除日に至るまでは,本件各P11株式を譲渡することができず,その換価可能性が奪われていた状況にあったのであり,P12取引方針に違反した場合には,利益が没収されるなど,ストック・ユニットが取り消されたのと同様の状態になったのであるから,本件各P11株式が市場で一般に取引されているP11株式と経済的に同等なものであるとはいえなかったのであり,原告らの担税力が増加するなどということはおよそあり得ない以上,原告らがその担税力を増加させる経済的利益の原因となる権利として本件各P11株式を確定的に取得したということはできず,現実にその価値に相当する利益を取得する手段が存在する状態の本件各P11株式を受領することができる権利が確定的に発生したということもできない旨主張する。 (イ) しかしながら,これについては,前記アで述べたとおり,本件譲渡制限の生じる根拠,目的,内容,収入実現に係る他の事情との関係等をはじめとする諸事情を考慮した上で,本件譲渡制限により本件各P11株式の支払による経済的価値の流入を否定すべき特段の事情があるといえるか否かについて検討すべきである。以下,この点について検討する。 前記認定事実のとおり,本件各報酬プランに準拠して定められた本件各報酬証書は,ストック・ユニットの転換に基づい 段の事情があるといえるか否かについて検討すべきである。以下,この点について検討する。 前記認定事実のとおり,本件各報酬プランに準拠して定められた本件各報酬証書は,ストック・ユニットの転換に基づいて引き渡される株式について,2003EICPの2条(c)に基づく制限(加速的転換がされた場合の制限。前記1(4)ウ(ウ)参照。)を除き,何ら制限を設けていない。すなわち,本件各報酬証書は,被付与者は,ストック・ユニットの転換後は,被付与者に発行されるP11株式の受益所有権者となり,議決権及び現金,株式配当金又は株式に支払われるその他の分配金を受 け取る権利を含む,あらゆる所有者としての権利を与えられる旨定めているのであって(2003EICP及び2004EICPの各18条,2005EICP,2006EEAP及び2006TDEPPの各13条),上記制限を除き,当該P11株式の売却処分権等を制限するような規定を設けていない(乙2~4,12~16)。 ところで,本件各報酬証書には,ストック・ユニットの転換に基づいて引き渡された株式について,証券取引法又はP12グループの従業員取引ポリシーから生じる可能性のある制限を除き,あらゆる譲渡制限を受けない旨定められており(2条(b)),P12グループの従業員取引ポリシーに基づく制限が生じる可能性があることが定められている。しかしながら,上記「P12グループの従業員取引ポリシー」に当たると認められるP12取引方針は,前記認定事実(5)及び(6)においてみたとおり,法律上,ビジネス上及び倫理上の利益相反の回避,秘密情報の不正使用の防止,並びに,従業員の個人取引に関連した不正の発生の回避を目的として,ストック・ユニットの付与対象者であるか否かに関係なく,P12グループにおける全てのP12従業員等が行 避,秘密情報の不正使用の防止,並びに,従業員の個人取引に関連した不正の発生の回避を目的として,ストック・ユニットの付与対象者であるか否かに関係なく,P12グループにおける全てのP12従業員等が行う有価証券又はその他の金融商品の個人的取引に関する社内規則として定められているものであり,本件譲渡制限も,飽くまで,当該制限がされている時点でP12従業員等であるという原告らの属人的事情ないし地位に基づくいわば「人」に対する制限であって,法令に基づく所定の者に対するインサイダー取引規制等と同様の趣旨に出たものというべきである。ストック・ユニットに基づきP11株式を受け取るためには転換時に従業員である必要はなく,当該株式の権利移転の最終局面である転換の段階で本件譲渡制限が当然に伴うわけではないし,ウインドウ・ピリオドは,転換の時期とは関係なく定められているものであり,ウインドウ・ピリオドが過ぎれば再びP11株式の取引ができなくなるのでもあるから,本 件譲渡制限をもって,ストック・ユニットに基づくP11株式の支払履行過程の一環を成す要素として設けられたものと解することはできない。 そして,転換日以降,上記の属人的かつ時期的な要件に該当する事情があるために,本件譲渡制限により,P11株式を得た者がこれを自ら直ちに処分することが困難な場合であっても,例えば,その者に相続が生じたり,差押えがされたりした場合には,P11株式はその者の所有に係る市場価値を持つ財産として相続や差押えの対象となるし,それによってP11株式を得た者がこれを処分することは妨げられないのであるから,つまるところ,本件譲渡制限は,属人的事情に着目して,P11株式の処分に時期的な制限を加えるものにすぎず,P11株式の権利内容自体を変更するものではないのであって,ストック・ られないのであるから,つまるところ,本件譲渡制限は,属人的事情に着目して,P11株式の処分に時期的な制限を加えるものにすぎず,P11株式の権利内容自体を変更するものではないのであって,ストック・ユニットを受けた者が,上記のような市場価値を有するP11株式を転換によって得るものであることは,本件譲渡制限による制限がされていることにより否定されないというべきである。 なお,仮に,P12取引方針に基づく本件譲渡制限をストック・ユニットの転換に基づいて引き渡されるP11株式に付着する制限として本件各報酬プラン等に取り込むのであれば,本件譲渡制限とP11株式の売却処分権との関係について具体的な規定が設けられてしかるべきところ,本件各報酬プラン等にかかる規定は設けられておらず,かえって,一般法である証券取引法と従業員取引ポリシーを並列的に列挙し,制限が生じる可能性があることを抽象的に規定しているにすぎない。そうすると,上記2条(b)の定めは,ストック・ユニットの転換に基づいてP11株式を取得する従業員に対し,既に存在する証券取引法又はP12グループの従業員取引ポリシーにより一定の制限が生じる可能性があることを確認的に注意喚起するものにすぎないというべきである。 以上検討したところに照らすと,本件譲渡制限により,当該制限の内 容や収入実現に係る他の事情に照らして本件各P11株式の支払による経済的価値の流入を否定すべき特段の事情があるとはいえないから,本件転換日が権利確定日というべきである。 (ウ) なお,原告らは担税力の点について述べるので付言すると,所得税法は,いずれの所得についても,その金額を収入金額又は総収入金額として規定し(23条~35条),所得を「収入」,すなわち,経済的価値の外部からの流入と捉えている。この経済的価値 で付言すると,所得税法は,いずれの所得についても,その金額を収入金額又は総収入金額として規定し(23条~35条),所得を「収入」,すなわち,経済的価値の外部からの流入と捉えている。この経済的価値の外部からの流入は,必ずしも金銭に限られず,金銭以外の物又は権利その他の経済的利益による場合もあることは,所得税法36条1,2項の定めからも明らかであり,債務免除益のような金銭の流入を予定していない経済的利益も含まれるところであって,同法は,かかる金銭以外の物又は権利その他の経済的利益が流入した場合にも,それにより担税力が増加したものとして課税する趣旨と解されるところである。そして,先に述べたとおり,本件各株式報酬については,本件転換日に収入の原因となる権利が確定したというべきであるから,これに着目して課税したからといって,直ちに担税力を無視することになるわけではない。 また,先に述べたとおり,所得税法がいわゆる権利確定主義を採用したのは,課税に当たって常に現実収入の時まで課税することができないとしたのでは,納税者の恣意を許し,課税の公平を期し難いので,徴税政策上の技術的見地から,収入の原因となる権利の確定した時期を捉えて課税することとしたものであり,現実の収入がなくても,その収入の原因となる権利が確定した場合には,その時点で所得の実現があったものとして,同権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算することとしているものである。そのため,所得の実現があったものとみることができる限り,これに対する課税をなし得るのであって,当該所得に係る所得税についての納税資金の取得ないし取得可能性が課税の要件とされ るものではない。なお,NYSEに上場されているP11株式は,これを売却するまでの間に,株価が下がる可能性も,上がる可能性もあると いての納税資金の取得ないし取得可能性が課税の要件とされ るものではない。なお,NYSEに上場されているP11株式は,これを売却するまでの間に,株価が下がる可能性も,上がる可能性もあるところ,所得の実現があったものとされる本件転換日後の特定の時点でP11株式が処分可能となったとしても,同時点での処分が義務付けられるわけではなく,その後の株価の動向を見ながらP11株式を処分することは可能なのであるから,同時点においてたまたま株価が下がっていたからといって,それによりストック・ユニットによってP11株式を得た者に対して当然に納税資金調達上の不利益を与えることになるともいい難い。 (エ) したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。 (5) 以上より,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき日は,本件転換日(平成20年9月8日)である。 3 争点(2)(本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金額の算定方法)について(1) 争点(2)ア(本件各P11株式の時価の算定は,NYSEの終値によるべきか,日平均株価によるべきか)についてア本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金額の算定方法について,被告は,本件各P11株式の時価の算定はNYSEの終値によるべきである旨主張し,原告らは,本件各P11株式の時価の算定は日平均株価によるべきである旨主張する。 イこの点,所得税法36条2項は,1項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は,当該物若しくは権利を取得し,又は当該利益を享受する時における価額とする旨定めているところ,同条2項は,金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額について,時価によることを定めたものであると解される。この時価とは,財産の客観的な交換価値をいうも のと解され , ているところ,同条2項は,金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額について,時価によることを定めたものであると解される。この時価とは,財産の客観的な交換価値をいうも のと解され ,それぞれの財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうものと解される 。 そして,時価は,事後的な判断基準として用いられるため,課税の公平を確保する観点からは,一定の客観的な基準によって認定された価額であることが要請されるところ,証券取引所に上場されている株式の公表されている価額は,市場を通じた不特定多数の当事者間の自由な取引によって成立した客観的なものであり,当該取引日の終値は一般に時価として広く認識され利用されていることから,これを時価とみるのが合理的である。 したがって,株式が証券取引所に上場されている場合には,その株式の価額(時価)は,特段の事情がない限り,同取引所の終値によるのが相当である。 ウ原告らの主張について(ア) 原告らは,終値のみならず,高値も安値も,一般投資家が経済情勢や企業の財務状況などの種々の情報を踏まえた市場における売買の結果の価格であることには相違ないのであるから,取引時間の最終時点における価格である終値だけを時価とすることには根拠がない旨主張する。 しかしながら,時価は,事後的な判断基準として用いられるため,課税の公平を確保する観点からは,一定の客観的な基準によって認定された価額であることが要請されるのであり,終値によって時価を算定することが合理性を有することは,先に述べたとおりである。そして,P11株式の時価を日平均株価によって算定することに一定の合理性があるとしても,これをもって,終値によって算定することの合理性が否定されるものではないと することは,先に述べたとおりである。そして,P11株式の時価を日平均株価によって算定することに一定の合理性があるとしても,これをもって,終値によって算定することの合理性が否定されるものではないというべきであり,他に本件各P11株式の価額(時価)をNYSEの終値によって算定すべきでないとする特段の事情を見出すことはできない。 したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。 (イ) 原告らは,所得税法上の「所得」が担税力を増加させる経済的利得であることや,課税の公平性の観点に照らせば,可能な限り異常値が排除されなければならないというべきであるところ,証券取引所において取引される有価証券の一時点のみにおける価格は偶然に大きく左右されざるを得ないのであり,特定銘柄の株価が想定外の下落をしたり乱高下したりしたときには,特定の値を抽出するよりも複数の値の平均値の方が,その異常性や偶然性をある程度捨象でき,担税力を増加させる経済的利得の価値を公正に把握することができる以上,日平均株価を用いることに強い合理性が認められるというべきであり,特に,本件転換日以降は,NYSEにおけるP11株式の売買高が短期間で急上昇し,P11株式の株価が急降下するなどの特異な状況が発生していたことに鑑みれば,日平均株価をもって客観的交換価値とするのが最も合理的である旨主張する。 しかしながら,証券取引所に上場されている株式の公表されている価額が,市場を通じた不特定多数の当事者間の自由な取引によって成立した客観的なものであり,当該取引日の終値が一般に時価として広く認識され利用されていることは先に述べたとおりである。また,本件転換日において,NYSEにおけるP11株式の売買高が急上昇し,P11株式の株価が急降下するなどの特異な状況が発生 一般に時価として広く認識され利用されていることは先に述べたとおりである。また,本件転換日において,NYSEにおけるP11株式の売買高が急上昇し,P11株式の株価が急降下するなどの特異な状況が発生していたとは認められない(乙30)。 したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。 エ以上より,原告らが本件各ストック・ユニットの転換に基づいて取得した本件各P11株式の1株当たりの価額については,本件転換日のNYSEにおけるP11株式の株価の終値である43.27米国ドルとするのが相当であり,これに基づいて本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金 額を算定すべきである。 (2) 争点(2)イ(採用すべき為替レート)についてア本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金額を算定するに当たって採用すべき為替レートについて,被告はTTMレートによるべきである旨主張し,原告P2らはTTBレートによるべきである旨主張する。 イこの点,所得税法36条2項は,金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は,当該物若しくは権利を取得し,又は当該利益を享受する時における価額とする旨定めているのであって,当該利益を処分して換価するに当たって必要な諸費用を差し引いた額をもって当該価額としているわけではない。このことは,外国通貨によって表示される経済的利益についても同様と解されるから,円貨に換金するための手数料等相当額を差し引いた額であるTTBレートをもって当該利益の価額と解することはできない。実際にも,外国通貨によって表示される経済的利益は円貨に換金されなくとも取引の対象となり得るし,納税資金捻出のために当該利益を円貨に換金することが必ず必要になるというわけでもないから,換金のための諸費用を差し引いた額が担税力に見合うこと 的利益は円貨に換金されなくとも取引の対象となり得るし,納税資金捻出のために当該利益を円貨に換金することが必ず必要になるというわけでもないから,換金のための諸費用を差し引いた額が担税力に見合うことになるというものでもないのであって,本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金額を算定するに当たって採用すべき為替レートはTTMレートによるべきである。 ウ原告P2らの主張について原告P2らは,本件各株式報酬の円換算に当たってTTBレートを用いたのは,平成20年分の所得税の確定申告時において,本件各P11株式が米ドル建ての資産であることから,その円換算に当たっては,外国為替公認銀行が顧客から外国為替を買い入れる場合の為替相場であるTTBレートを用いることが合理的であると考えたからであり,また,所得税法57条の3第1項は,外貨建取引の邦貨換算について,「当該外貨建取引の金額の円換算額(外国通貨で表示された金額を本邦通貨表示の金額に換算 した金額)」と規定するのみで,何らTTMレートを用いることは記載されておらず,そのように解釈しなければならない理由も見当たらない以上,TTMレートを用いるか否かは納税者の選択に委ねられていると解すべきである旨主張する。 しかしながら,所得税法57条の3第1項については,既にみた同法36条2項の解釈と整合的に解釈されるべきであるし,同法57条の3第1項は「当該外貨建取引の金額の円換算額(外国通貨で表示された金額を本邦通貨表示の金額に換算した金額)」と規定しており,「外国通貨で表示された金額を本邦通貨表示の金額に換算した金額」という文言は,基本的に外国通貨を円貨に換金するための手数料等を含まないTTMレートを想定しているものと理解するのが自然であるから(所得税基本通達57の3-2参照),この点に関 金額に換算した金額」という文言は,基本的に外国通貨を円貨に換金するための手数料等を含まないTTMレートを想定しているものと理解するのが自然であるから(所得税基本通達57の3-2参照),この点に関する原告P2らの主張を採用することはできない。 (3) 以上より,原告らが本件各ストック・ユニットの転換に基づいて取得した本件各P11株式の1株当たりの価額については,本件転換日のNYSEにおけるP11株式の株価の終値である43.27米国ドルに同日のTTMレートである1米国ドル当たり108.50円を乗じた金額とするのが相当であり,これに基づいて本件各株式報酬に係る給与等の収入すべき金額を算定すべきである。 4 争点(3)(過少申告加算税に係る正当な理由の有無)について(1) 過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則としてその違反者に対し課されるものであり,これによって,当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば,通則法65条4項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記の ような過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁,最高裁平成16年(行ヒ)第86号,第87号同18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1728頁,最高裁平成17年(行ヒ)第20号同18年10月24日第三小法廷判 ・民集60巻4号1611頁,最高裁平成16年(行ヒ)第86号,第87号同18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1728頁,最高裁平成17年(行ヒ)第20号同18年10月24日第三小法廷判決・民集60巻8号3128頁参照)。 (2) 原告らは,①本件各株式報酬に係る給与等の収入金額とすべき金額について,いつの時点のP11株式の時価を基準として算定した上で申告すべきか,専門的な知識がなければ判然としないものであったこと,②原告らが平成20年分の所得税について確定申告を行った当時,ストック・アワードに係る課税上の取扱いに関して,法令上特別の定めはおかれておらず,上記取扱いについて定めた通達等もなかったこと,③P11社が,平成21年2月13日付け「2008 JapanIndividualTaxReturnFiling 」と題する文書(甲7)において,税務及び法律の専門家と協議した上,原告らを含む同社の従業員に対し,所得申告について本件制限解除日のP11株式の時価を用いる旨表明していたことなどの事情に鑑みれば,本件各株式報酬に係る給与等の収入金額とすべき金額を本件制限解除日での当該株式時価として申告したことは当然といわざるを得ず,本件は,過少申告が真にやむを得ない理由によるものであり,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当若しくは酷になる場合であって,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」に該当する旨主張する。 しかしながら,上記(1)で述べたところに照らすと,税法上の要件を個別の事実関係に適用するに当たり,同種の先例がなく,解釈上又は事実認定上採用すべき見解が確定している状況にないために,納税者が相応の根拠を有すると考える見解の下に申告をしたが結果的に課税処分において当該見解が に適用するに当たり,同種の先例がなく,解釈上又は事実認定上採用すべき見解が確定している状況にないために,納税者が相応の根拠を有すると考える見解の下に申告をしたが結果的に課税処分において当該見解が 採用されなかったとしても,それだけでは上記「正当な理由」があるということはできない。そして,本件において,原告らが申告において前提とした見解(P11社の見解を含む。)が,課税実務上支配的な見解から当然に導き出されるものであったとか,処分行政庁側において原告らが採用したものと同様の見解を採用する旨の説明等がされていたといった事情があるともうかがわれない。なお,原告らが引用するP11社の文書(甲7)には,「しかしながら,会社は納税に関するアドバイスをする立場にありません。申告にあたっては,個々の責任において,時前に税理士と相談の上,確定申告を行うことを強く奨励します。国税当局から株式転換日の価格とすべきとの見解が出た場合には,税額の増差分及び加算税,延滞税の負担が生じますが,そのリスクは各社員でお取りいただくことになります。」と記載されているところである。 そうすると,本件の過少申告につき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があったということはできない。 5 本件各更正処分等の適法性以上に述べたところに加えて,弁論の全趣旨によれば,本件各更正処分等の根拠及び適法性は,別紙2-1から2-10までに記載するとおりであると認められるから,本件各更正処分等はいずれも適法というべきである。 第4 結論以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官小林宏司 裁判官 主文 いずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官小林宏司 裁判官徳井真 裁判官堀内元城
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