昭和36(う)7 封印破棄被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和37年1月29日 広島高等裁判所 松江支部
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人両名はいずれも無罪。          理    由  被告人両名の弁護人中山淳太郎の控訴の趣意は記録編綴の控訴趣意書記載のとお りであるか

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判決文本文4,008 文字)

主文原判決を破棄する。 被告人両名はいずれも無罪。 理由被告人両名の弁護人中山淳太郎の控訴の趣意は記録編綴の控訴趣意書記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。 これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。 弁護人の事実誤認の論旨について。 記録によれば原判決は、その挙示の証拠により「申請人A外二名被申請人B間の鳥取地方裁判所昭和三五年(ヨ)第二八号土地立入並びに立木伐採禁止仮処分決定正本に基く申請人A外二名の代理人弁護士Cの委任により、同裁判所執行吏Dが昭和三五年八月四日鳥取県八頭郡a町大字b字cd番のe所在原野五畝(現況山林)上に生立する目通り周囲約二尺乃至三尺の杉立木約五〇本に対する被申請人Bの占有を解いて執行吏の占有保管に移し、公示札を設置し縄張を施していたところ、被告人Eは、同月二七日頃同所において右公示札及び縄張の存在を認識し趣旨を知悉しながら、右縄張内に生立する目通り約二尺乃至三尺の杉立木四本を人夫に伐採させ、次いで被告人E同Fは共謀の上、翌二八日頃同所において前同様公示札及び縄張の存在を認識し趣旨を知悉しながら、右縄張内に生立する目通り約二尺乃至三尺の杉立木一本を人夫に伐採させ、以て右執行吏の施した差押の標示を無効ならしめたものである」旨認定し、被告人両名の判示所為は刑法第九六条罰金等臨時措置法第二条第一項第三条第一項第一号に該当(被告人Eの所為は包括一罪、なお被告人両名共謀の点につき刑法第六〇条を適用)するものとし、所定刑中いずれも懲役刑を選択の上被告人Eを懲役一年に、同Fを懲役一〇月にそれぞれ処したものであることが認め得られる。 よつてその当否について審究するに、原判決挙示の、執行委任書の写、仮処分決定正本の写、仮処分執行調書謄本(証第一号)、並び 役一年に、同Fを懲役一〇月にそれぞれ処したものであることが認め得られる。 よつてその当否について審究するに、原判決挙示の、執行委任書の写、仮処分決定正本の写、仮処分執行調書謄本(証第一号)、並びに当審における証人Dに対する証人尋問調書の記載を綜合すると、申請人G、同H、同A、同I、被申請人B間の鳥取地方裁判所昭和三五年(ヨ)第二八号土地立入並びに立木伐採禁止仮処分命令申請事件につき、同裁判所は昭和三五年八月三日「一、被申請人Bは、申請人G同H同Aの共有に係る鳥取県八頭郡a町大字b字cd番e原野五畝歩(現況山林)、申請人G所有に係る同所d番f原野一反七畝二歩(現況山林)、申請人I所有の同所d番g原野二畝歩(現況山林)同所d番h原野一反五畝歩(現況山林)に立入り、同山林上に生育している杉立木を伐採してはならない。二、前記d番e原野五畝歩上に生育している目通り周囲約二尺より三尺位迄の杉立木約五〇本、並びに前記d番g原野二畝歩、d番h原野一反五畝歩上に生育している目通り周囲約二尺より四尺五寸位迄の杉立木約二〇〇本に対する被申請人Bの占有を解き、申請人等の委任する鳥取地方裁判所執行吏をしてこれを保管せしめる。三、右執行吏は前記命令の執行並びに公示につき適当の方法を執らなければならない。」旨の仮処分決定をなしたこと。右申請人等代理人弁護士Cが同日鳥取地方裁判所執行吏に対し、前記仮処分決定正本に基く執行委任をしたこと。同裁判所執行吏Dが同月四日前記仮処分執行のため、右申請人H同Iの案内により仮処分目的土地現場に臨み右仮処分の執行として、H、Iが仮処分の目的として指示するところに従い、申請人G、同H、同A共有の前記d番e原野五畝歩と、申請人I所有の前記d番g原野二畝歩及びd番h原野一反五畝歩を一括した全地域の周囲に縄張を施し、且つ右縄張地域外の附 的として指示するところに従い、申請人G、同H、同A共有の前記d番e原野五畝歩と、申請人I所有の前記d番g原野二畝歩及びd番h原野一反五畝歩を一括した全地域の周囲に縄張を施し、且つ右縄張地域外の附近二ケ所に仮処分執行調書謄本(証第一号)に記載の如き公示札を掲げたこと、右d番e原野五畝歩上に生立する目通り周囲約二尺より三尺位迄の杉立木五〇本につき目印をつける等これを特定する等のことはせず何本あるやを数えてもみなかつたこと、がそれぞれ認められるのである。 そして当審における証人Jに対する証人尋問調書の記載、仮処分点検調書(昭和三六年八月一日付の分)謄本、執行吏K作成の証明書、I作成の証明書、L作成の証明書を綜合すると、前記仮処分執行当時右d番e地上には目通り周囲二尺乃至三尺の杉立木は少くとも一二八本以上生育していたことが明らかである。 <要旨>以上認定事実によれば、鳥取地方裁判所執行吏Dは、申請人G、同H、同Aの</要旨>共有に係る前記cd番e原野五畝歩上に生育している目通り周囲約二尺より三尺位迄の杉立木約五〇本に対する被申請人Bの占有を解き、執行吏をしてこれを保管せしめる旨の本件仮処分決定の執行について、同地上には目通り周囲二尺乃至三尺の杉立木は少くとも一二八本以上存在するに拘らず、そのいずれの五〇本を執行吏の保管に移したかにつき何等特定することなきは勿論、右杉立木の生立する地盤たる前記d番e原野五畝歩の地域についてもこれを明確にせず、単に右地域とこれに接する申請人Iの申請に基く仮処分土地である同人所有の同所d番g原野二畝歩及びd番h原野一反五畝歩を一括した全地域の周囲に縄張を施し、その附近に前記公示札を掲げたに過ぎないことが明らかである。ところで、およそ仮処分の執行として被申請人の占有を解きこれを現状の侭その場所において執行吏が保管す 畝歩を一括した全地域の周囲に縄張を施し、その附近に前記公示札を掲げたに過ぎないことが明らかである。ところで、およそ仮処分の執行として被申請人の占有を解きこれを現状の侭その場所において執行吏が保管する場合においては、その目的物を明確にし、これが占有移転の事実を明らかにしなければならないことは当然であり、然らざれば仮処分の執行は不適法にして占有移転の効力を生じないものといわなければならないところ、本件においては前記のとおり仮処分目的物の特定明確を欠ぎ、いずれの杉立木を執行吏の占有に移したかが明らかでないのであるから、右の部分の仮処分の執行は不適法でその効力を生じないものというべきである。原判決は、本件d番e原野五畝歩上に生育する目通り周囲約二尺より三尺位迄の杉立木約五〇本というのは同地上に生育する目通り周囲約二尺より三尺位迄の杉立木中五〇本に制限するという趣旨ではなく、同地上に生育する該当の杉立木全部が仮処分の目的物であつて、約五〇本というのはその全部が約五〇本存在するという一応の目算を表示したに過ぎないものと解釈しているけれども、かかる解釈は、仮処分決定主文の文言より遊離すること甚しく、殊に該当の杉立木一二八本以上存在する本件の場合においては、不当な解釈といわなければならない。而して刑法第九六条に所謂差押とは公務員がその職務上保管すべきものを自己の占有に移す強制処分をいうものであるところ叙上の如く本件仮処分の執行によつては執行吏の占有に移つた杉立木が明確でなく占有移転の効力がないものというべきであるから、たとえ該地上の杉立木を伐採したとしても、それは執行吏の施した差押の標示を無効ならしめたものということはできない。そうだとすると、被告人E、同Fが原判示の如く該当杉立木を伐採した事実は原判決挙示の証拠によりこれを認めることができるけれど それは執行吏の施した差押の標示を無効ならしめたものということはできない。そうだとすると、被告人E、同Fが原判示の如く該当杉立木を伐採した事実は原判決挙示の証拠によりこれを認めることができるけれども、それは原判示の如き犯罪を構成しないものといわなければならない。従つて原判決がこれを執行吏の施した差押の標示を無効ならしめたものとし、これに対し刑法第九六条を適用して有罪の判決をしたのは事実を誤認し法令の解釈適用を誤つたものというべく、この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。 よつて弁護人の量刑不当の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三九七条に則り原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書により更に判決する。 本件公訴事実は、第一、被告人Eは、申請人A外二名の委任を受けた執行吏Dが鳥取地方裁判所昭和三五年(ヨ)第二八号仮処分決定正本に基き、同年八月四日右申請人の共同所有にかかる鳥取県八頭郡a町大字b字cd番のe所在の山林において、同所に生育する被申請人B占有の杉立木約五〇本の仮処分をなし、右杉立木を被申請人の占有を解いて執行吏Dの占有に移し、かつこれを公示するため該趣旨を記載した公示札を右立木が生育する個所に設置し、かつその周囲に縄張を施して執行したのに拘わらず同月二七日頃同所において、右仮処分にかかる杉立木五〇本中四本(時価七、四七九円相当)を伐採し、以て公務員の施した差押の標示を無効にし第二、被告人E同Fは共謀の上、同月二八日頃前記cd番e所在の山林において、仮処分にかかる杉立木五〇本中一本(時価二、三七六円相当)を伐採し、以て公務員の施した差押の標示を無効にしたものであるというのであるが、前記のとおり被告人等の右所為は罪とならないので刑事訴訟法第三三六条により無罪の言渡をな 一本(時価二、三七六円相当)を伐採し、以て公務員の施した差押の標示を無効にしたものであるというのであるが、前記のとおり被告人等の右所為は罪とならないので刑事訴訟法第三三六条により無罪の言渡をなすべきものとし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官高橋英明裁判官高橋文恵裁判官石川恭)

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