昭和29(ネ)77 慰藉料請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和29年9月15日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を取り消す。      被控訴人は控訴人に対し金十一万八千円を支払え。      控訴人その余の請求を棄却する。      訴訟費用は第一、二審を合してこれを二分し、その

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主文 原判決を取り消す。 被控訴人は控訴人に対し金十一万八千円を支払え。 控訴人その余の請求を棄却する。 訴訟費用は第一、二審を合してこれを二分し、その一を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。 本判決は、控訴人勝訴の部分に限り控訴人において金三万円の担保を供するときは仮に執行することがてきる。 事実 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対し金六十七万四千三百五十円を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに担保を条件となる仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において「(一)A教官の過失は、飛込台を陸上に揚げるべきにかかわらず、これを浅瀬に放置しておいたこと、水泳中の生徒を陸上に引き揚げしめるにあたつて、生徒全員を引卒して引き揚げなかつたことなど、生徒を陸上に引き揚げしめるにあたつてとつた処置が適当でなかつたことである。なお、A教官以外にも教官は数名いたが、A教官はその最高責任者として一切の責任を持つていたものである。(二)本件の場合飛込台を浅瀬に移動して設置したことは、飛込台の絶対安全性を著しく害するものであつて右は国家賠償法第二条にいわゆる営造物の設置管理の瑕疵である。(三)本訴請求金額はすべて慰籍料として請求する。慰籍料以外の損害賠償の請求はしない。」と述べ、被控訴代理人において「本件の場合飛込台は本来の目的のため使用てきない状態においたのであるから、飛込台の移動により飛込台の安全性を害したものでなく、その設置管理には瑕疵はなかつた。」と述べた外、原判決事実摘示記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。 証拠として、控訴代理人は あるから、飛込台の移動により飛込台の安全性を害したものでなく、その設置管理には瑕疵はなかつた。」と述べた外、原判決事実摘示記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。 証拠として、控訴代理人は、甲第一、第二号証、第三号証の一、二、第四号証の一ないし四、第五、第六号証を提出し、原審証人B、C、D、A、E、Fの各証言、原審における原告(控訴人)本人尋問の結果を援用し、乙第四号証の一、二の成立を認める、その余の乙号各証の成立は不知と述べ、被控訴代理人は、乙第一ないし第三号証、第四号詐の一、二を提出し、原審証人D、G、H、A、I、Jの各証言を援用し、甲第一、第二号証、第三号一証の一、二、第四号証の一ないし四の成立を認める、その余の甲各号証の成立は不知、甲第二号証を援用すると述べた。 理由 (一) 事実関係控訴人の末子Kが葛飾区立小松中学校三年生で同中学校経営の千葉県a町に設けられた臨海学校に参加し、昭和二十六年八月一日水泳中飛込台から海中に飛び込み、頸椎第五及び第六番を骨折し、千葉医科大学附属医院L外科に入院加療したが、同月八日呼吸麻痺のため死亡したことは当事者間に争のないところである。 控訴人は事故当日は風が強く、波が荒かつたため、定位置の飛込台を深さ一米程の浅瀬に移動していたものであり、Kは永年水泳の訓練を受けているので、当日のような波のあろ浅瀬に飛び込むような無謀な行為をする筈がなく、事故前陸上においてMなる友達と喧嘩をしている事実からしても同輩協力してKを飛込台から投げ込むか突き落したものではないかと推定せられると主張しているので考えるに、右控訴人主張事実中事故当日飛込台を深さ一米程の浅瀬に移動したこと、Kが事故前陸上でMと口喧嘩をしたことは当事者間争のないところであろけれども、本件一切の証拠を調べて ると主張しているので考えるに、右控訴人主張事実中事故当日飛込台を深さ一米程の浅瀬に移動したこと、Kが事故前陸上でMと口喧嘩をしたことは当事者間争のないところであろけれども、本件一切の証拠を調べても、Kが飛込台から海中に飛び込むに至つた原因が同輩協力してKを海中に投げ込むか、突き落したものと認められる証拠は何一つ存在しない。かえつて原審証人D、G、Hの各証言を綜合すればKは、昭和二十六年八月一日午後三時頃当時水深約一米の浅瀬に置いてあつた飛込台(全長約三米、海面上約二米)の台上に上り、先ず手にしていた長さ三尺位の竹棒を、「袴垂保輔なり」と言いながら海中に投じ、次いで自ら頭部を下にして海中に飛び込んだが、直ちに浮き上らず水中において泡を生じ、浮き上つた後も呼吸状態に変化を生じ、友人に対して陸上に上げてくれと依頼したため、当時飛込台にいたG、HがKをかかえて陸上に上げたことが認められる。 しかして成立に争のない甲第二号証、原審証人A、E、Fの各証言を綜合すれば、前示小松中学校臨海学校の引卒教員Aらは、Kを前記事故後リヤカーで宿舎に運び現地の医師二名を招いて診察せしめたところ、秀雄は頸椎骨折の傷害を受けていることが判明し、同日直ちに千葉医科大学附属医院L外科に入院せしめ、治療を受けしめたが頸椎第五番及び第六番の骨折により上肢肘関節以下及び胸部以下の運動性全麻痺を生じ、同月八日午後八時三十二分呼吸麻痺により死亡するに至つたことが認められる。しかして前記甲第二号証及び前段認定の諸事実を綜合すれば、Kが受けた右頸椎骨折は、同人が前段認定のように自ら飛込台上から水深約一米の浅瀬に飛び込んだ際同人の顔面及び胸部を海底に激突したため惹起されたものであつたと推定するのが相当てある。原審証人Fの証言中本件の場合水圧により頸椎骨折を生ずることもあり得るとの 上から水深約一米の浅瀬に飛び込んだ際同人の顔面及び胸部を海底に激突したため惹起されたものであつたと推定するのが相当てある。原審証人Fの証言中本件の場合水圧により頸椎骨折を生ずることもあり得るとの部分は、原審証人Aの証言中Kが海から救い出され一時砂浜に寝せたとき、右か左かの目の下、右か左かの乳下に「みみずばれ」ができていた旨の部分と対照するときに、これを採用し得ない。その他本件一切の証拠を調べても前段認定事実を左右するに足る資料を見出さない。 (二) 国家賠償法第一条に基く請求について。 控訴人は、Kについて発生した事故は、被控訴人の設立した小松中学校臨海学校教育にあたり、小松中学校教官Aの過失によつて生じたものであつて、A教官は被控訴人の公権力の行使にあたつたものであるから、被控訴人は、国家賠償法第一条に基き、仮に被控訴人に教員の任免、監督の権限がないとすれば同法第一条、第三条に基き費用の負担者として、控訴人にKの死亡に因る損害を賠償する責任があると主張して<要旨第一>いるので考えるに、いつたい学校教育の本質は、学校という営造物によつてなされる国民の教化、育成であつ</要旨第一>て、それが国又は公共団体によつて施行される場合でも、国民ないし住民を支配する権力の行使を本質とするものではない。このことは、学校を設置することができるものが、国又は地方公共団体だけに止まず、私立学校の設置を目的として設立された法人をも含む(教育基本法第六条、学校教育法第三条参照)ことから考えても判るであろう。従つて学校教育は、国又は公共団体によつてなされると、学校法人によつてなされるとを問わず、いわゆる非権力作用に属するものである。それ故学校教育に従事する公務員は公権力の行使に当るものではないから、本件の場合も小松中学校臨海学校教育に従事したA教官は被控訴 人によつてなされるとを問わず、いわゆる非権力作用に属するものである。それ故学校教育に従事する公務員は公権力の行使に当るものではないから、本件の場合も小松中学校臨海学校教育に従事したA教官は被控訴人の公権力の行使にあたつたものではない。被控訴人は国家賠償法第一条ないし第三条に基く損害賠償義務はないものというべく、右法条に基く控訴人の請求はその余の点につき判断するまでもなく失当である。 (三) 国家賠償法第二条に基く請求。 控訴人は、次に小松中学校臨海学校は、葛飾区の営造物である小松中学校の延長であるから、臨海学校に使用された飛込台も葛飾区の営造物である、しかして飛込台を浅瀬に移動して設置したことにおいて、設置管理に瑕疵があつた、よつて国家賠償法第二条に基き、右瑕疵のために、Kが死亡したことに因る慰籍料を請求すると主張するので、以下これにつき検討を加える。 (イ) 本件飛込台は被控訴人の営造物である。 原審証人Aの証言、同証言により真正に成立したと認める乙第一号証、原審証人Jの証言を綜合すれば、小松中学校当局は、葛飾区長の承認を受けて、昭和二十六年七月三十日から四日間千葉県安房郡a町N方を宿舎として臨海学校を開催し、N方で用意した飛込台を使用して水泳訓練を施行したことを認めることができる。いつたい小松中学校の設置者が被控訴人葛飾区であることは当事者間に争のないところであるから、小松中学校が被控訴人の代表者である葛飾区長の承認を得て開催した臨海学校もまた小松中学校の延長であり、結局において被控訴人葛飾区が設置したものといわなければならない。 <要旨第二>しかして本件飛込台は、右臨海学校の物的施設の一であり、国家賠償法第二条にいわゆる営造物とは広く公</要旨第二>の目的に供せられる物的施設を指称し必らずしも建物ないし土地の定着物に限らな <要旨第二>しかして本件飛込台は、右臨海学校の物的施設の一であり、国家賠償法第二条にいわゆる営造物とは広く公</要旨第二>の目的に供せられる物的施設を指称し必らずしも建物ないし土地の定着物に限らないと解するを相当とするを以て、本件飛込台は、まさに被控訴人の設備した営造物であるとなすのが相当てあつて、その一時的であると借入にかかるとは右に影響を及ぼすものでないというべきである。 (ロ) 本件飛込台の管理者は被控訴人である。 <要旨第三>学校の設置者はその設置する学校を管理するものであり(学校教育法第五条)小松中学校は、被控訴人の</要旨第三>設置し、管理するものである(地方自治法第二条、第二百八十一条参照)から、小松中学校の延長である臨海学校の物的施設である飛込台も、被控訴人葛飾区の管理に属するものであり右管理にあたつては、常に右飛込台に腐朽折損等があるかどうかにつき万全の注意を払うと同時に、その格納保管取扱についても細心の努力を尽し、常に飛込台が飛込台としての性能を保持するよう、又飛込台として使用しないときはこれが取扱にあたり不測の災禍を生ずることのないよう、注意すべく、もしこれを怠ろと旨は管理の上において瑕疵があつたとなすべきである。 (ハ) 飛込台の管理について被控訴人に瑕疵があつた。 <要旨第四>前記証人Aの証言によれば、飛込台自体には何の折損もなかつたことが明らかであるが、前段認定の</要旨第四>ように本件事故当時水深約一米の浅瀬におかれ、もし台上より海中に飛び込む場合には海底に激突して身体障害を生ずる虞れがあつた点において、飛込台管理上の瑕疵があつたものというべきである。 もつとも、前記証人Aの証言によれば、小松中学校教員Aは、本件事故当日午後生徒を引卒して海浜に赴いたところ、波が高かつたため沖に設置してあつた飛込台を 台管理上の瑕疵があつたものというべきである。 もつとも、前記証人Aの証言によれば、小松中学校教員Aは、本件事故当日午後生徒を引卒して海浜に赴いたところ、波が高かつたため沖に設置してあつた飛込台を陸上に引き上げるよう命じたが、生徒が途中においてくれと希望するので、休息用に途中に置くことを許し、飛込は固く禁じたこと、その後水泳中の生徒に対し陸上に対して引揚を命じたが一回の号令では徹底せず、三十四人の生徒中約半数は陸上に引き揚げたが、約半数はなお海中に残つていたが、その間本件事故が発生したことを認めることができる。右認定事実のように陸上引揚の号令も半数の生徒には徹底しない状況の下においては、飛込台から飛込を禁止する命令も一同に徹底したか否かは疑問といわなければならず、かかる命令を出したことの故を以て飛込台の安全性の保持にかくるところがなかつたということがてきないであろう。ひつ竟A教官が本件飛込台を異動しその使用を禁止するに当り周到な注意をかいたものというべく、これを以て本件飛込台の管理につき瑕疵があつたものということがてきるであろう。そしてA教官は当日生徒を引卒し、水泳指導の任に当つた教官ではあるが、本件飛込台は当日使用しなかつたのであるから、同教官の前記措置を教育活動の分野に属するものということができず又被控訴人は本件臨海学校における施設を管理するにつき特に人員を配置していなかつたのであるから、担当教官が被控訴人に代り施設を管理することは当然予想していたものと認めるを相当とすべく、従つて前示A教官の管理についての瑕疵はそのまま被控訴人の管理上の瑕疵ということができるであろう。 (ニ) Kの死亡は飛込台の管理の瑕疵に基いた。前段(一)で認定したようにKの死亡の原因は、飛込台から海中に飛び込んだ際海底に顔面及び胸部を激突して頸椎骨折の傷害 疵ということができるであろう。 (ニ) Kの死亡は飛込台の管理の瑕疵に基いた。前段(一)で認定したようにKの死亡の原因は、飛込台から海中に飛び込んだ際海底に顔面及び胸部を激突して頸椎骨折の傷害を受けたことにあることは明らかであり、かつ右事故は飛込台を深さ約一米の浅瀬においた管理上の瑕疵に基くこともまた前段認定のとおりであるから、Kの死亡の原因は飛込台の管理上の瑕疵に基くものというべきである。 (ホ) Kの死亡により控訴人の受けた損害。 Kの死亡により、その母たる控訴人が精神上多大の苦痛をこうむつたことはもとより当然のことであるから、控訴人は国家賠償法第二条第四条民法第七百十一条により被控訴人に対しこれが慰籍料の支払を請求する権利あるものというべきである。 よつて進んで慰籍料の額について考えるに、前記証人D、G、Hの各証言によれば、Kにおいても本件事故の原因をなした飛込をなすに当り、飛込台が正常の位置から浅瀬に移動していたことを熟知していたものと認められるから、かかる場合飛込をなすにおいては身体傷害の結果を生ずるやも知れねことを知り得べかりしものと認められるにかかわらす、Kが軽卒にも敢えて飛込をなしたKの過失もまた慰籍料の額を算定するにつき斟酌することを得るものというべきである。 よつてKの右過失を斟酌し、さらに前段認定の諸事実並びに原審における原告(控訴人)本人尋問の結果により認められるKが控訴人の四男で末子であること、Kの父は昭和二十年中に死亡したこと、控訴人がKの長兄Oと同居し同人に扶養せられている事実を考え合わせ、控訴人がKの死亡に因つて受けた精神上の損害に対する慰籍料は金十五万円が相当であると認める。 (ヘ) 結論よつて被控訴人は控訴人に対し、前段認定の慰籍料金十五万円から控訴人が被控訴人から支払を受けたことを自認 に因つて受けた精神上の損害に対する慰籍料は金十五万円が相当であると認める。 (ヘ) 結論よつて被控訴人は控訴人に対し、前段認定の慰籍料金十五万円から控訴人が被控訴人から支払を受けたことを自認し、かつ慰籍料に包含されるべき金員であることを認める見舞金二千円弔慰金三万円計三万二千円を差し引いた残額金十一万八千円を支払うべき義務あるものと判定する。 それ故控訴人の請求をすべて棄却した原判決を失当として取り消し、右金十一万八千円の支払の限度において控訴人の請求を認容し、その余の請求を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二条第九十六条を適用し主文のとおり判決する。 (裁判長判事大江保直判事岡咲恕一判事猪俣幸一)

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