主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一控訴人ら 1 控訴人A主文と同旨の判決を求める 2 控訴人B(一) 原判決を取り消す。 (二)(本案前の答弁)本件訴えを却下する。 (本案に対する答弁)被控訴人の請求を棄却する。 (三) 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。 との判決を求める。 二被控訴人 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 との判決を求める。 第二当事者の主張一被控訴人の請求の原因 1 当事者被控訴人は東京都渋谷区の住民、控訴人Aは渋谷区長の職にある者、控訴人Bは渋谷区の収入役の職にある者である。 2 第3ブロック区議会議員野球大会運営費分担金の支払(一) 東京都特別区の第3ブロック(渋谷区、品川区、目黒区、大田区及び世田谷区)は、平成9年5月7日、区議会議員野球大会(以下「本件野球大会」という。)を開催し、渋谷区議会議員野球部もこれに参加したところ、同野球部が支払うべき本件野球大会運営費分担金10万円のうち3万円は、同年4月22日、渋谷区長の同年4月分に係る区長交際費から支払われた(以下「本件支払(一)」という。)。 (二) 本件野球大会の参加議員の多くは、各区議会の同好会というべき議員野球部に所属している議員らであり、本件野球大会は、私的な趣味的嗜好を共有する特定の議員たちによる行事にすぎず、他区の議員から野球に関する情報の収集はできても、渋谷区の行政に活かすことができる情報の収集は期待されるものではない。 本件野球大会は、平日に開催されたにもかかわらず、渋谷区の管理職3名も選手として出場したほか、議会事務局職員も随行していると ても、渋谷区の行政に活かすことができる情報の収集は期待されるものではない。 本件野球大会は、平日に開催されたにもかかわらず、渋谷区の管理職3名も選手として出場したほか、議会事務局職員も随行しているところ、そもそも、区長交際費は、区長が渋谷区を代表して渋谷区の行政の円滑な運営を図るために、外部との交際を目的として使われるものであるにもかかわらず、渋谷区のいわば身内ともいうべき職員や渋谷区の議員が勤務を離れて参加する本件野球大会の運営費分担金のために区長交際費を使うことは、交際費の性格から箸しく逸脱するものであるから、本件支払(一)は違法である。 3 渋谷区議会野球部納会出席費用の支出(一) 渋谷区議会議員野球部は、平成9年11月21日午後6時から同野球部総会兼納会(以下「本件納会」という。)を開催したところ、同会に渋谷区長である控訴人A、助役、収入役である控訴人B及び教育長が出席し、同日、控訴人Aが支払った3万円の出席費用は、渋谷区長の同月分に係る区長交際費から支払われた(以下「本件支払(二)」といい、本件支払(一)と併せて「本件各支払」という。)。 (二) 本件納会は、要するに、区長に対して監視の役割を担うべき区議会の議員のうち、野球という私的な趣味的嗜好を共にする特定の議員らによる懇親会であって、渋谷区の行政とは全く無縁のいわば身内同士の親睦会にすぎず、このような宴会の出席費用のために区長交際費を使うことは、交際費の性格から著しく逸脱するものであり、まして、区長以外の出席者の費用のためにこれを使うことは許されないから、本件支払(二)は違法である。 4 控訴人らの責任(一) 控訴人Aの責任区長交際費の支出命令権者は総務課長に委任されているが、渋谷区長である控訴人Aは、その本来的権限者であり、当時の総務課長事務取扱総務部参事であったC る。 4 控訴人らの責任(一) 控訴人Aの責任区長交際費の支出命令権者は総務課長に委任されているが、渋谷区長である控訴人Aは、その本来的権限者であり、当時の総務課長事務取扱総務部参事であったCに対し、直接、本件各支払の指示したものであるから、C参事に対する指揮監督義務を怠ったことは明白であり、違法な本件各支払に基づく渋谷区の損害を賠償すべき責任がある。 (二) 控訴人Bの責任区長交際費は、毎月、C参事の支出命令を受け、収入役から総務課長に資金前渡の方法で支出され、総務課長は、翌月、前渡金支払清算書を作成して収入役に提出し、前渡金の残額があればこれを戻入し、収入役はこれを審査する清算手続がされているところ、収入役である控訴人Bは、C参事の支出命令及び清算手続の確認を怠り、あるいは、東京都渋谷区会計事務規則(昭和39年渋谷区規則第9号、平成11年12月28日付けの全部改正前のもの。以下「旧会計事務規則」という。)82条1項3号に基づく協議によって、同清算手続において総務課長が領収証等の証拠書類を収入役に提出することを免除したため、総務課長から提出を受けた区長交際費に係る前渡金支払清算書の審査によっても、本件各支払のような違法な支払を阻止することができなかったもので、収入役である控訴人Bは、控訴人A及びC参事による違法な本件各支払を幇助し、これを隠蔽したというべきであるから、本件各支払に基づく渋谷区の損害を賠償すべき責任がある。 5 監査請求被控訴人は、渋谷区長(控訴人A)に対し、平成8年度及び平成9年度における区長交際費の支出に係る一切の書類について情報公開請求を行ったところ、渋谷区長は、平成12年5月11日、平成10年8月7日に非公開とした決定を変更してこれを公開する旨の決定をした(ただし、平成9年度のみ)。そこで、被控訴人 の書類について情報公開請求を行ったところ、渋谷区長は、平成12年5月11日、平成10年8月7日に非公開とした決定を変更してこれを公開する旨の決定をした(ただし、平成9年度のみ)。そこで、被控訴人は、平成12年7月21日、渋谷区監査委員に対し、本件各支払が違法であるとして、地方自治法242条1項に基づく監査請求をしたところ、監査委員は、同監査請求は、本件各支払のあった日から1年以上経過してされたものの、地方自治法242条2項ただし書所定の正当な理由があるとして同監査請求を受理した上で、被控訴人に対し、同年9月18日付けで同監査請求は理由がないものと認める旨の通知を発出し、被控訴人は、同月20日に同通知を受け、同年10月19日本件訴えを提起した。 6 結論よって、被控訴人は、控訴人らに対し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、本件各支払によって渋谷区が被った損害の賠償として、渋谷区に代位して6万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成12年11月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 二控訴人Bの本案前の主張 1 住民訴訟の対象となる財務会計上の行為とは、違法な公金支出のように、当該地方公共団体に財産的損害を発生させ、あるいはその客観的可能性があることが必要というべきところ、本件の区長交際費のように、資金前渡による支払がされた場合には、資金前渡受者から債権者に対する現実の支払がされた時点で公金の支出は完了しており、収入役又はその専決権者である副収入役による前渡金支払清算書の審査は、公金の支出行為が完結した後の別個の行為であり、また、それ自体、資金前渡受者が債権者に対して行った支払額に変動を及ぼすものではなく、当該地方公共団体に財産的損害を発生させるものでも、その客観的可能性があるものでも が完結した後の別個の行為であり、また、それ自体、資金前渡受者が債権者に対して行った支払額に変動を及ぼすものではなく、当該地方公共団体に財産的損害を発生させるものでも、その客観的可能性があるものでもないから、財務会計上の行為には該当しない。被控訴人は、控訴人Bの責任として、区長交際費の清算方法につき、旧会計事務規則82条1項2号の方法を採用せず、同項3号の方法によることとし、資金前渡受者からの協議に応諾したことを挙げるが、この協議に対する収入役の応諾も、それ自体は、当該地方公共団体に財産的損害を発生させるものでも、その客観的可能性があるものでもないから、これをもって、財務会計上の行為ということもできない。 したがって、本件各支払について、収入役である控訴人Bは、地方自治法242条の2第1項4号にいう「当該職員」には該当せず、同控訴人に対する訴えは却下されるべきである。 2 仮に、収入役による前渡金支払清算書の審査が財務会計上の行為であるとしても、本件訴えの提起に先立ってされた地方自治法242条1項に基づく監査請求の趣旨は、区長交際費から支払われた本件各支払が違法不当であるというものであって、収入役の上記審査が違法ないし不当である旨の監査請求はされていない。したがって、本件訴えにおいて、控訴人Bによる前渡金支払清算書の審査が違法であるとして控訴人Bに対する損害賠償請求は、監査請求を経ていないものというべきであり、控訴人Bに対する本件訴えはいずれにしても不適法である。 三請求原因に対する控訴人らの認否 1 請求原因1の事実は認める。 2 同2及び3の名(一)の事実は認める。 3 同2及び3の各(二)の主張は争う。 区長交際費は、渋谷区の代表者としての区長が、渋谷区の行政の円滑な運営や渋谷区の社会的役割を果たすために社会通念上必要とされる費用 の名(一)の事実は認める。 3 同2及び3の各(二)の主張は争う。 区長交際費は、渋谷区の代表者としての区長が、渋谷区の行政の円滑な運営や渋谷区の社会的役割を果たすために社会通念上必要とされる費用に充てることが予定されたものであるから、住民や各種地域団体との交流、懇談会等への出席、慶弔に関わる経費、区にとって必要な情報収集のための費用等幅広い範囲で支出することが許容されているものである。 我が国において最も身近なスポーツの一つであり老若問わず共に参加できる野球をきっかけとして各区の議員が集まり、議員相互間の親睦を図るとともに、区政に関する情報の収集、交換を行うための場として、23区の全議員を対象とする「特別区議会議員野球大会」が昭和30年ころから行われてきたが、渋谷区の属する第3ブロックでは、ブロック内の議員相互の親睦や区政に関わる種々の情報の収集、交換等を図ることを目的として、第3ブロック区議会議員野球大会が昭和35年ころから実施されており、各区が順次幹事区となって同大会を運営しており、渋谷区議会議員らは、本件野球大会及びその後に予定されている懇親会への参加を通じ、第3ブロック内の他区の議員から種々の情報等を収集することができ、これらを渋谷区の行政に生かすことができることから、本件支払(一)は、本件野球大会の運営費分担金への一助として区長交際費から支払われたものであり、その目的、支払金額等を総合的に判断すれば、本件支払(一)が違法であるとはいえない。 本件支払(二)は、渋谷区長等が本件納会に参加した費用に充てられたものであるが、渋谷区長等は、本件納会において議員から直接情報等を収集することができ、これを渋谷区の行政に活かすことができることから、その目的、支払金額等を総合的に判断すれば、本件支払(二)についても違法であるとはいえない は、本件納会において議員から直接情報等を収集することができ、これを渋谷区の行政に活かすことができることから、その目的、支払金額等を総合的に判断すれば、本件支払(二)についても違法であるとはいえない。渋谷区においては、区長部局の他の職には交際費を予算化していないため、区長が必要と認める区長以外の職に関して必要とされる費用の支払にも区長交際費を使うことが許されるべきである。 4 同4の主張は争う。 5 同5の事実は認める。 第三証拠関係本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。 理由 一本件各支払に至った経緯請求原因1の事実、同2及び3の各(一)の事実は、当事者間に争いがなく、証拠(甲第1及び第2号証、第8ないし第10号証の各1ないし14、第11号証、丙第1及び第2号証、第7及び第8号証)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 1 東京都23特別区は、各区の連携と相互の発展を目的として、区議会議長による特別区議会議長会を組織しているところ、同議長会は、23区を地域ごとに5つのブロックに分けた下部組織を有し、渋谷区は、品川区、目黒区、大田区、世田谷区とともに第3ブロックに属している。 特別区議会議長会は、昭和30年ころから相互の親睦と体位の向上を図ることを目的として、毎年1回、特別区議会議員野球大会を開催していたところ、第3ブロックにおいても、昭和35年ころからブロック内の議員相互の交流を図ることを目的として、毎年1回、区対抗による第3ブロック区議会議員野球大会を実施していたもので、その運営は、ブロック内の各区が順次幹事区となり、その運営費を各区の参加野球チームが分担金を支払って行われていた。 2 渋谷区議会議員は、野球を通じて、議員相互の親睦と元気回復を図るとともに、他区議 その運営は、ブロック内の各区が順次幹事区となり、その運営費を各区の参加野球チームが分担金を支払って行われていた。 2 渋谷区議会議員は、野球を通じて、議員相互の親睦と元気回復を図るとともに、他区議会との交流を目的とする渋谷区議会野球部を組織し、同野球部は、第3ブロック区議会議員野球大会の主催及び参加、特別区議会議員野球大会への参加、親善試合の主催及び参加等を行っており、同野球部の経費は、会員の納入する会費その他をもって支弁することとされていた。 3 総務課長事務取扱総務部参事であったC参事は、平成9年4月1日、収入役である控訴人Bに対し、区長交際費の支出命令権者として、同年4月分60万円の支出命令をし、控訴人Bは、同支出命令に対する審査を行って、同日、同審査を完了し、4月分の区長交際費60万円を前渡金受者であるC参事に対して支出し、C参事名の領収印を徴した。 4 控訴人Aは、平成9年4月21日、渋谷区議会議長本人から平成9年度の第3ブロック区議会議員野球大会である本件野球大会の実施要項を受け取り、本件野球大会の幹事区である渋谷区の区長として挨拶することを要請されてこれを承諾し、同実施要項をC参事に渡した。第3ブロック区議会議員野球大会の運営費分担金は、各区10万円であったところ、渋谷区においては、同分担金について従前からその一部を区長交際費から支出しており、平成7年度及び平成8年度においては、同分担金の一部として区長交際費から3万円を支出していた。そこで、C参事は、これと同様に平成9年度においても3万円を支出することについて、控訴人Aの了承を得て、同月22日、渋谷区議会議長に対し、渋谷区議会野球部が負担すべき本件野球大会の運営費分担金の一部を補助する趣旨で保管中の区長交際費に係る前渡金から3万円を渡し、同議長名の領収書を受け取った。 て、同月22日、渋谷区議会議長に対し、渋谷区議会野球部が負担すべき本件野球大会の運営費分担金の一部を補助する趣旨で保管中の区長交際費に係る前渡金から3万円を渡し、同議長名の領収書を受け取った。 5 本件野球大会は、通算第37回目に当たり、渋谷区が幹事区となって、杉並区αの東京電力総合運動場において、同年5月7日水曜日に開催されたもので、同日午前9時から開会式が行われ、渋谷区長である控訴人Aも幹事区の区長として挨拶をし、試合終了後は、球場管理事務所2階のクラブハウスで懇親会を兼ねた閉会式が行われたもので、閉会式では、挨拶、表彰、乾杯及び閉会の挨拶のほかには特に式次第はなかった。分担金による本件野球大会の運営費50万円のうちの約半額が閉会式における飲食代金に、その余は、消耗品費代、審判謝礼費、傷害保険料費等に使われた。 6 C参事は、平成9年5月6日、同年4月30日付けの交際費支払済調書を添付した上、同年4月分の区長交際費にかかる前渡金支払清算書を収入役室に提出し、戻入額10万7232円を返納して、同年4月分の区長交際費の清算をした。 7 C参事は、平成9年10月21日、収入役である控訴人Bに対し、区長交際費の支出命令権者として、同年11月分の60万円の支出命令し、控訴人Bは、同支出命令に対する審査を行って、同年10月27日、同審査を完了し、同年11月4日、同月分の区長交際費60万円を前渡金受者であるC参事に対して支出し、C参事名の領収印を徴した。 8 渋谷区議会野球部は、平成9年11月ころ、C参事に対し、同月21日に開催が予定されていた本件納会に、区長、助役、収入役及び教育長の出席を希望している旨の意向を伝え、その旨の依頼を要請した。C参事は、控訴人Aを筆頭に4名全員がこれに出席することを確認し、4名の出席費用として3万円を区長交際費から 区長、助役、収入役及び教育長の出席を希望している旨の意向を伝え、その旨の依頼を要請した。C参事は、控訴人Aを筆頭に4名全員がこれに出席することを確認し、4名の出席費用として3万円を区長交際費から支出することにつき控訴人Aの了解を得た上、平成9年11月21日、保管中の区長交際費に係る前渡金から3万円を控訴人Aに渡し、控訴人Aは、東京都渋谷区議会野球部の会計を担当する議員に対し同3万円を支払った。C参事は、上記支出に当たって領収書を徴することは相当でないと判断し、旧会計事務規則81条に基づき、議員野球経費として3万円を支払った旨の支払済調書を作成した。 本件納会は、平成9年11月21日、渋谷区βのγにおいて開催され、渋谷区長である控訴人A、助役、収入役である控訴人B及び教育長がこれに参加した。 9 C参事は、平成9年12月4日、同年11月30日付けの交際費支払済調書を添付して、同年11月分の区長交際費に係る前渡金支払清算書を収入役室に提出し、戻入額10万0281円を返納して、同年11月分の区長交際費の清算をした。 二渋谷区における区長交際費の取扱い渋谷区において、区長交際費は、総務課長の請求に基づき資金前渡することができ、毎月必要とする交際費は、毎月分の所要額を予定して、その範囲内において前渡することができるとされ(旧会計事務規則79条1項23号、3項2号)、総務課長が、毎月、収入役又は副収入役(副収入役は、東京都渋谷区収入役室の組織に関する規則(昭和39年渋谷区規則第15号)5条2号により1件50万円以下のものについて支出命令の審査に係る専決権者とされている。)に対し、区長が必要とする交際費について支出命令をし、収入役又は副収入役は、同支出命令の審査完了後、総務課長宛に区長交際費に係る前渡金の支出をする扱いとされ、資金前渡受者であ 決権者とされている。)に対し、区長が必要とする交際費について支出命令をし、収入役又は副収入役は、同支出命令の審査完了後、総務課長宛に区長交際費に係る前渡金の支出をする扱いとされ、資金前渡受者である総務課長は、その受けた資金の範囲内で処理する売買、貸借、請負その他の契約に関する権限が委任されているため(渋谷区契約事務規則(昭和39年渋谷区規則第22号、平成10年3月31日付けで改正前のもの。)3条2項本文)、区長による交際費の支出が必要であると判断されたときは、その都度保管中の現金から支払をすることが許されている。総務課長は、前渡金から支払をしたときは、支払の相手方から領収書を徴するか、領収書を徴し難いときは支払済調書を作成しなければならないとされているとともに(旧会計事務現則81条)、前渡金支払清算書を作成し、証拠書類を添えて、その支払期間経過後5日以内に収入役に提出して前渡金の支出の清算をし、清算残金があれば、原則としてこれを戻入することが義務付けられているが(旧会計事務規則82条1項2号、2項)、これによる清算が困難な前渡金にあっては、収入役と協議の上、別に定める方法によりその清算をすることができるとされているところ(旧会計事務規則82条1項3号)、証拠(甲第9及び第10号証の各1ないし14)及び弁論の全趣旨によれば、総務課長は、毎月の区長交際費の清算については、10数年来、同号に基づいて、毎月、分類された項目ごとに支出額の合計額を記載した交際費支払済調書を作成し、これを前渡金支払清算書に添付して収入役室に提出する方法によって上記清算を行っており、個々の領収証等の証拠書類が収入役に提出されることはなかったことが認められる。 渋谷区は、渋谷区の区行政を円滑に運営するに当たり、区長がその交際に要する経費の適正かつ公平な執行を図るた っており、個々の領収証等の証拠書類が収入役に提出されることはなかったことが認められる。 渋谷区は、渋谷区の区行政を円滑に運営するに当たり、区長がその交際に要する経費の適正かつ公平な執行を図るため、交際費の支出基準として渋谷区区長交際費支出基準(甲第3号証の2、平成2年3月31日区長決裁により定められ、これを改正して平成9年4月1日から施行されたもの。)を定め、交際費は、別に定める支出細則に基づいて支出し、支出額は社会通念上認められる範囲でかつ必要最小限でなければならないとしているところ、上記支出細則は、支出の種別が①儀礼的経費(社会的慣習に基づく儀礼を行うために要する経費)、②接遇経費(国、都及び区政関係機関の関係者又は区長表敬者等に対する接遇並びに区政執行上の対外折衝等に要する経費)、③賛助的経費(行事、事業、刊行物等に対する賛助を目的とする経費)及び④諸費の4つに大別され、さらに②を除く各種別の中で支出の内容がいくつかの項目に区分されており、①には、「区議会、行政委員会、区政関係機関、区政関係団体及びこれらの構成員の主催又は参加する行事への儀礼」との項目が、④には「区長の職務上生ずる臨時的行事経費」、「その他区長が特に必要と認める経費」との項目がある(甲第3号証の2)。 三控訴人Bに対する本件訴えの適法性控訴人Bは、本件訴訟においてその適否が問題となっている控訴人B(収入役)の行為は、財務会計上の行為ではなく、仮に、財務会計上の行為であるとしても、控訴人Bの行為は、被控訴人が行った監査請求の対象とはされていなかったとして、本件訴えは不適法である旨を縷々主張する。 しかしながら、収入役である控訴人Bは、前記のとおり、毎月一月分の区長交際費を一括して資金前渡の方法で支出しているのであり、これが財務会計上の行為に当たることはお は不適法である旨を縷々主張する。 しかしながら、収入役である控訴人Bは、前記のとおり、毎月一月分の区長交際費を一括して資金前渡の方法で支出しているのであり、これが財務会計上の行為に当たることはおよそ異論がないところ、本件各支払も平成9年4月分及び同年11月分の区長交際費の資金前渡を前提とするものであるから、収入役による前渡金支払清算書の審査の財務会計行為該当性を論ずるまでもなく、本件訴えが地方自治法242条の1の第1項4号所定の「当該職員」に対する損害賠償請求であることは明らかである。また、被控訴人は、本件各支払の適法性を監査請求の対象としているところ、収入役である控訴人Bも、本件各支払の前提となった資金前渡による支出を行っており、控訴人Bに対する本件訴えも、要するに、本件各支払が違法であるとした場合に収入役としても責任を負うべきか否かが問われているすぎないのであるから、監査請求を経たものと解すべきである。 したがって、控訴人Bの上記主張は、いずれも採用することができない。 四本件各支払の適法性 1 地方公共団体の長は、行政の円滑な運営を図るため、その代表者として外部の関係者と対外的折衝を行うだけではなく、信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として、住民や議会、行政委員会等の関係者と交流し、折衝することもその重要な職務というべきであり、長も、社会的な実体を有するものとして活動している以上、その過程において、公人として社会通念上相当と認められる必要かつ最小限度の範囲内の儀礼を尽くし、そのような儀礼の範囲にとどまる程度の接遇や、懇談、慶弔に関わる行為、賛助的行為をすることは、長の事務に随伴する公的な活動として許容され、そのための経費として交際費を予算計上し、これを支出することが認められるというべきところ、渋谷区区長交際費支出基準は、交 わる行為、賛助的行為をすることは、長の事務に随伴する公的な活動として許容され、そのための経費として交際費を予算計上し、これを支出することが認められるというべきところ、渋谷区区長交際費支出基準は、交際費の支出額を社会通念上認められる範囲でかつ必要最小限でなければならないものと定め、同支出細則は、支出の内容を儀礼的経費、接遇経費、賛助的経費及び諸費と定めていることは前記のとおりであって、同支出基準及び支出細目は、上記交際費の趣旨に沿うものであって、不合理なものとはいえない。 2 前記認定した事実関係によれば、控訴人Aは、年に一度、5つの特別区の区議会議員らが集い、野球というスポーツを通じて交流する本件野球大会の開催実施要項を渋谷区議会議長本人から受け取り、その要請で本件野球大会の幹事区である渋谷区の区長として招かれ、開会式において挨拶することも予定されていたため、その開催の趣旨に賛同し、渋谷区議会野球部が負担すべき本件野球大会の運営費分担金の一部を補助する趣旨で区長交際費から3万円が渋谷区議会議長に支払われたものであって、凖公的な行事に対して賛助したものにほかならず、その支払額も3万円と常識の範囲内のものであるから、儀礼的行為以外の何物でもなく、本件支払(一)が、区長が区議会議員に対し、社会通念上相当と認められる必要かつ最小限度の範囲内の儀礼を尽くすためにされたものであることは明らかというべきである。 また、控訴人Aは、その後、渋谷区議会野球部からこれまた年に一度の同部の納会に、助役、収入役及び教育長と共に出席してほしいとの招待を受けたものであり、その趣旨から飲食を伴うものであることは当然予想されるものであるところ、本件支払(二)は、このような飲食を伴う会合へ招待された場合に一定の現金を寸志や寄附などとして手渡す世情の例の如く、儀礼とし り、その趣旨から飲食を伴うものであることは当然予想されるものであるところ、本件支払(二)は、このような飲食を伴う会合へ招待された場合に一定の現金を寸志や寄附などとして手渡す世情の例の如く、儀礼として区長交際費から3万円が同野球部に支払われたものであって、その支払額も3万円と常識の範囲内のものであるから、本件支払(一)と同様、儀礼的行為以外の何物でもなく、本件支払(二)が、区長が区議会議員に対し、社会通念上相当と認められる必要かつ最小限度の範囲内の儀礼を尽くすためにされたものであることも明らかである。 3 被控訴人は、本件野球大会や本件納会が特定の議員による私的な行事あるいは懇親会にすぎず、行政にとって何ら有益ではなく、このような行事の運営分担金、出席費用のために区長交際費を使うことは、交際費の性格を逸脱する旨を主張するが、そもそも、交際費は、行政の円滑な運営を図り、信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として、関係者に対する儀礼を尽くすために必要最小限度の範囲内において許容されたものであるから、儀礼を尽くす契機となった行事や出来事自体に公務性や行政上の有益性があることが要求されるものではなく、儀礼的行為を行うことによって、行政の円滑な運営を図ることができるという公益に資するものであれば足りるというべきである。本件野球大会及び本件納会自体には、公務性や行政上の有益性が乏しいことは明らかであっても、本件各支出は、区長交際費から前記のような趣旨に鑑みてされたものであるから、被控訴人の上記主張は、採用することができない。 被控訴人は、本件支払(一)について、平日に開催されたにもかかわらず、渋谷区の職員や議員が勤務を離れて参加した本件野球大会の分担金のために区長交際費を使うことは、交際費の性格から著しく逸脱する旨を主張するが、本件野球大会が平 ついて、平日に開催されたにもかかわらず、渋谷区の職員や議員が勤務を離れて参加した本件野球大会の分担金のために区長交際費を使うことは、交際費の性格から著しく逸脱する旨を主張するが、本件野球大会が平日に開催されたことの当否は別にして、そのことと、区長が議員の行事である本件野球大会の運営分担金を補助し、議長を筆頭とする区議会議員に儀礼を尽くすこととは、直接には関わりのないことであるから、被控訴人の上記主張も採用することができない。 さらに、被控訴人は、本件支払(二)について、区長以外の出席者の費用のために区長交際費を使うことは許されず、本件支払(二)は違法である旨を主張するところ、本件支払(二)に係る支払金額が3万円とされたことについては、区長以外にも助役、収入役及び教育長の3名が本件納会に参加したことが考慮されたことは否定できないものの、本件支払(二)は、区長を筆頭とする渋谷区の執行機関の主要な地位にある者が渋谷区の区議会議員と懇談することに鑑み、区長から区議会議員にその費用が支払われたもので、その金額自体、前記のとおり、必要最小限度の範囲内のものであり、区長の議員に対する儀礼的行為の範囲内のものというべきであるから、被控訴人の上記主張も採用することはできない。 4 以上のとおり、本件各支払は、渋谷区議会野球部に属する特定の区議会議員との間ではあるものの、その信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として、区長が区議会議員に社会通念上相当と認められる必要かつ最小限度の範囲内の儀礼を尽くしたもので、区長交際費の支出基準及び支出細目にも適合するものであって、これをもって、地方公共団体の経費の支出として支出事務担当者に認められるというべき裁量権の逸脱ないし濫用があるとは到底考え難く、本件各支出が違法であるとはいえない。 五結論以上の次第で って、これをもって、地方公共団体の経費の支出として支出事務担当者に認められるというべき裁量権の逸脱ないし濫用があるとは到底考え難く、本件各支出が違法であるとはいえない。 五結論以上の次第で、その余について判断するまでもなく、被控訴人の請求はいずれも理由がないから、当裁判所の判断と異なる原判決を取り消し、被控訴人の請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部裁判長裁判官村上敬一裁判官水谷正俊裁判官永谷典雄
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