令和2(ネ)221 ウイルス性肝炎患者の救済を求める全国B型肝炎訴訟広島訴訟損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年3月17日 広島高等裁判所 破棄自判 広島地方裁判所 平成24(ワ)1046
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判決文本文4,201 文字)

主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、1審原告番号482に対し、1300万円及びこれに対する平成24年7月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人は、1審原告番号641に対し、1300万円及びこれに対する平成24年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 5 この判決は、第2項及び第3項に限り、本判決が被控訴人に送達された日から14日を経過したときは、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要(以下、略称は特に断りのない限り原判決に従う。) 1 要旨本件は、B型慢性肝炎の患者である控訴人らが、乳幼児期に被控訴人(国)が実施した集団予防接種又は集団ツベルクリン反応検査(集団予防接種等)を受けた際、注射器(針又は筒)の連続使用によってB型肝炎ウイルス(he-patitisBvirus。略称HBV)に感染し、その後、成人になって慢性肝炎を発症し、一旦は沈静化した後に、更に慢性肝炎(HBe抗原陰性慢性肝炎)を再発したとして、従前の慢性肝炎の発症による損害とは区別される別個の損害が発生した旨主張して、上記再発後に発生した損害の包括一律請求として、国家賠償法(国賠法)1条1項に基づき、それぞれ損害金1300万円(弁護士費用相当額50万円を含む。)及びこれに対する不法行為 後の日である訴状送達日の翌日(1審原告番号482につき平成24年7月21日、1審原告番号641につき同年10月23日)から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延 1審原告番号482につき平成24年7月21日、1審原告番号641につき同年10月23日)から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。 原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、控訴人らがこれを不服として本件各控訴を提起したが、被控訴人が、当審において、原審での主たる争点であった控訴人らの損害賠償請求権に係る除斥期間の経過の有無について、除斥期間未経過を争わないとの態度を示したことから、当審における争点は、①被控訴人の集団予防接種等と控訴人らのHBV感染の因果関係の有無及び②損害額である。 2 前提事実、争点及びこれに対する当事者の主張は、次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の2及び3及びに記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決17頁13行目冒頭から20頁8行目末尾までを削る。 原判決37頁5行目の「治療のために、」の後に「会社経営の傍ら、」を加える。 原判決37頁16行目の「被った上、しかも、」を「被った。しかも、1審原告番号641は、慢性肝炎を再発したことについて、心配をかけたくないとの思いから家族にすぐに打ち明けることができず、異動や昇進への影響を回避したいとの思いから勤務先の人事関係部署にも伝えられず、症状の進行に対する不安と治療の負担に独り耐える日々を送った。そして、」に改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、控訴人らの請求をいずれも認容すべきものと判断する。その理由は、次のとおりである。 2 被控訴人の集団予防接種等と控訴人らのHBV感染の因果関係の有無につい てHBVは、血液を介して人から人に感染するものであり、その感染力の強さに照 理由は、次のとおりである。 2 被控訴人の集団予防接種等と控訴人らのHBV感染の因果関係の有無につい てHBVは、血液を介して人から人に感染するものであり、その感染力の強さに照らし、集団予防接種等の非接種者の中に感染者が存在した場合、注射器の連続使用によって感染する危険性があるところ、控訴人らは、遅くとも満7歳になる頃までに集団予防接種等を受け、それらの集団予防接種等においては注射器が連続使用されていた可能性が高いこと、控訴人らの母親はB型肝炎ウイルスの持続感染者ではなく、出産時の母子感染(垂直感染)以外の経路で感染(水平感染)したものと解されること、控訴人らについて、上記集団予防接種等のほかに感染の原因となり得る具体的事実の存在はうかがわれないこと、被控訴人もかかる事実の存在を指摘せず、かえって、控訴人らについて集団予防接種等によりHBVに感染した可能性があることを認めていることなどに照らすと、本件においては、被控訴人の集団予防接種等と控訴人らのHBV感染との間の因果関係を肯定するのが相当である(平成18年最判参照)。 3 除斥期間の経過の有無について前提事実及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らの主張する各損害のうち、乳幼児期に受けた集団予防接種等によってHBVに感染してHBe抗原陽性慢性肝炎を発症し、その鎮静化後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害については、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点になるというべきであるところ(最高裁令和元年(受)第1287号同3年4月26日第二小法廷判決・民集75巻4号1157頁参照)、1審原告番号482は平成11年1月頃、1審原告番号641は平成9年頃にそれぞれHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したものと認められ、控訴人らはいずれも 日第二小法廷判決・民集75巻4号1157頁参照)、1審原告番号482は平成11年1月頃、1審原告番号641は平成9年頃にそれぞれHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したものと認められ、控訴人らはいずれも平成24年に本件訴訟を提起したものであるから、控訴人らのいずれについても、本件訴訟の提起時において、上記のHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害に関して除斥期間が経過していなかったことは明らかである。 4 控訴人らの損害について1審原告番号482についてア前提事実、証拠(甲A482第22号証、1審原告番号482原審供述)及び弁論の全趣旨によれば、1審原告番号482は、平成6年頃までにHBe抗原セロコンバーションを起こしてHBe抗原陽性慢性肝炎が沈静化したが、平成11年1月頃にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症し、その後、ALT値は平成12年4月3日に185U/L、平成13年6月5日に121U/L、平成14年1月25日に128U/Lなどと間欠的に高い異常値を示し、同年4月8日に検査入院をして腹腔鏡下肝生検を受けて肝炎(線維化の程度F2、活動性の程度A1)の所見を示された後、同年6月から現在に至るまで、核酸アナログ製剤の投与による抗ウイルス治療を継続的に受け続けており、その間、概ね月1回の長距離の通院を継続し、肝硬変ないし肝がんを発症する可能性に対する不安を抱え続けていたものと認められる。 このようなHBe抗原陰性慢性肝炎の発症に至る経緯、治療経過及びその内容・期間等に加え、今後も1審原告番号482の不安や苦痛が継続することなど本件に顕れた諸事情を総合考慮すると、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症に係る1審原告番号482の肉体的・経済的損害及び精神的損害は甚大なものがあるというべきであって、その額は1250万円を下らな となど本件に顕れた諸事情を総合考慮すると、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症に係る1審原告番号482の肉体的・経済的損害及び精神的損害は甚大なものがあるというべきであって、その額は1250万円を下らないと認められる。 イまた、本件事案の内容、審理経過、請求額及び認容額等の事情を考慮すると、本件の国賠法上の違法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、50万円を下らないと認めるのが相当である。 1審原告番号641についてア前提事実、証拠(甲A641第24号証、1審原告番号641原審供述)及び弁論の全趣旨によれば、1審原告番号641は、平成3年頃にH Be抗原セロコンバーションを起こしてHBe抗原陽性慢性肝炎が沈静化したが、平成9年頃にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症し、ALT値は同年1月27日に646U/L、平成10年11月24日に320U/L、平成13年2月1日に490U/Lなどと間欠的に高い異常値を示し、同月2日から検査入院をして腹腔鏡下肝生検を受けて肝炎(線維化の程度F2、活動性の程度A3)の所見を示された後、同年4月頃から現在に至るまで、核酸アナログ製剤の投与による抗ウイルス治療を継続的に受け続けており、その間、概ね月1回ないし3か月に1回程度の通院を継続し、肝硬変ないし肝がんを発症する可能性に対する不安を抱え続けていたものと認められる。 このようなHBe抗原陰性慢性肝炎の発症に至る経緯、治療経過及びその内容・期間等に加え、今後も1審原告番号641の不安や苦痛が継続することなど本件に顕れた諸事情を総合考慮すると、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症に係る1審原告番号641の肉体的・経済的損害及び精神的損害は甚大なものがあるというべきであって、その額は1250万円を下らないと認められる。 イまた、本件事案の内容、審理経 陰性慢性肝炎の発症に係る1審原告番号641の肉体的・経済的損害及び精神的損害は甚大なものがあるというべきであって、その額は1250万円を下らないと認められる。 イまた、本件事案の内容、審理経過、請求額及び認容額等の事情を考慮すると、本件の国賠法上の違法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、50万円を下らないと認めるのが相当である。 5 結論以上によれば、控訴人らの請求はいずれも理由があり、本件各控訴は理由があるから、原判決を取り消して控訴人らの請求をいずれも認容することとし、仮執行宣言については、本件事案の性質に鑑み、本判決が被控訴人に送達された日から14日が経過したときに仮に執行することができるものとする限度で付し、仮執行免脱宣言については、相当ではないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第2部 裁判長裁判官 小池明善 裁判官 光岡弘志 裁判官 若松光晴

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