主文 1(1) 原告Aが、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 (2) 被告は、原告Aに対し、令和4年3月から本判決確定の日まで、毎月25日限り30万6000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みま で年3パーセントの割合による金員を支払え。 (3) 被告は、原告Aに対し、13万7000円及びこれに対する令和3年12月14日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2(1) 原告Bが、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 (2) 被告は、原告Bに対し、令和4年3月から同年10月まで、毎月25日限り25万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 (3) 被告は、原告Bに対し、令和4年11月から令和5年12月まで、毎月25日限り15万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3 パーセントの割合による金員を支払え。 (4) 被告は、原告Bに対し、令和6年1月から本判決確定の日まで、毎月25日限り25万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、原告Aに生じた費用の10分の1と被告に生じた費用の20分の1を原告Aの負担とし、原告Bに生じた費用の10分の3と被告に生じた費用の20分の3を原告Bの負担とし、その余を被告の負担とする。 5 この判決は、上記1(2)、同(3)、2(2)、同(3)及び同(4)に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求1(1) 主文1(1)同旨。 (2) 主文1(2 決は、上記1(2)、同(3)、2(2)、同(3)及び同(4)に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求1(1) 主文1(1)同旨。 (2) 主文1(2)同旨。 (3) 被告は、原告Aに対し、98万6000円及びこれに対する令和3年12月14日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2(1) 主文2(1)同旨。 (2) 被告は、原告Bに対し、令和4年3月から本判決確定の日まで、毎月25日限り25万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 (3) 被告は、原告Bに対し、87万8400円及びこれに対する令和3年12月 14日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、被告に雇用されていた原告らが、被告に普通解雇されたことに関し、以下の請求をした事案である。 (1) 原告Aが、被告に対し、被告による原告Aの解雇(以下「本件解雇1」 という。)は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものであって、権利を濫用したものとして無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める(請求1(1))とともに、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下かかる改正前の民法を 「改正前民法」という。)536条2項前段に基づき、令和4年3月から判決確定日まで毎月25日限り賃金30万6000円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払(請求1(2))、並びに、労働契約に基づき、本件解雇1以前の令和3年の冬季賞与98万6000円及びこれに対する弁済期の 日の翌日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払(請求1(2))、並びに、労働契約に基づき、本件解雇1以前の令和3年の冬季賞与98万6000円及びこれに対する弁済期の翌日である令和3年 12月14日から支払済みまで上記同旨の遅延損害金の支払(請求1(3))を 求めたもの。 (2) 原告Bが、被告に対し、被告による原告Bの解雇(以下「本件解雇2」という。)は、原告Bが業務上の疾病にかかり療養するために休業する期間内になされたものであるから労働基準法(以下「労基法」という。)19条1項に反し、又は、権利を濫用したものとして無効であると主張して、労働契約上の権 利を有する地位にあることの確認を求める(請求2(1))とともに、改正前民法536条2項前段に基づき、令和4年3月から判決確定日まで毎月25日限り賃金25万円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで上記同旨の遅延損害金の支払(請求2(2))、並びに、労働契約に基づき、本件解雇2以前の令和3年の冬季賞与87万8400円及びこれに対する弁済期の翌日で ある令和3年12月14日から支払済みまで上記同旨の遅延損害金の支払(請求2(3))を求めたもの。 2 前提事実次の事実は、括弧内に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実のほか、当事者間に争いがない。 (1) 当事者ア原告Aは、平成11年5月22日、被告に雇用され、平成24年7月より製氷課係長として勤務していた者である。 原告Bは、平成26年11月10日、被告に雇用され、被告開設の市場食堂での勤務を経て、平成28年2月より販売課において勤務していた者であ る。 イ被告は、漁場の利用に関する事業等を事業目的とし、水産業協同組合法に基づき昭 被告に雇用され、被告開設の市場食堂での勤務を経て、平成28年2月より販売課において勤務していた者であ る。 イ被告は、漁場の利用に関する事業等を事業目的とし、水産業協同組合法に基づき昭和24年9月1日に設立された組合である。 被告には、組合長を含め理事が11名おり、常勤理事として専務理事が1名、非常勤理事の中に組合長1名及び副組合長2名がいる。また、被告には 約20名の職員がおり、参事が職員の中で最高位の役職である。 被告の業務部門は総務部と事業部に分かれており、事業部は販売課と製氷課で構成されていた。 (2) 原告Bの欠勤原告Bは、抑うつ状態にあるとして、令和3年2月4日に欠勤して以降、被告に出勤していない(甲22、甲31、甲50、原告B本人)。 (3) 被告による原告らの解雇ア被告は、原告Aに対し、令和4年1月23日、①原告Aが、週刊誌記者に、被告が茨城県作成の「しらす試験操業に係る漁獲物等の放射性物質分析結果について」と題する書面の記載を改ざんしたとして、上記書面に書き込みをした書面(以下「本件書面」という。)を提供し、その旨を週刊誌(令和3 年3月18日号)に掲載させたこと、②原告Aが、被告の書庫内の書類を無断撮影の上、これを証拠として、かねてから妬みを持っていた上司らに刑事処分を受けさせる目的で、茨城県警察に対し、被告が「がんばる漁業復興支援事業の事務補助金」(以下「本件補助金」という。)を不正に受給したとの虚偽の告発をしたことを理由に、同年2月22日限りで解雇するとの意思表 示をした(本件解雇1)(甲21)。 イ被告は、原告Bに対し、令和4年1月23日、原告Bが抑うつ状態により業務に耐えられない状態にあることを理由に、同年2月22日限りで解雇す との意思表 示をした(本件解雇1)(甲21)。 イ被告は、原告Bに対し、令和4年1月23日、原告Bが抑うつ状態により業務に耐えられない状態にあることを理由に、同年2月22日限りで解雇するとの意思表示をした(本件解雇2)(甲26)。 (4) 就業規則 被告の就業規則中には、職員の給与及び諸手当については別に定める規程による旨の規定(37条)があった。また、職員が「精神の障害により、業務にたえられないとき」には解雇されることがあるとの規定(47条2項)、「職員の対面を汚し、または秩序を乱し、若しくは本漁協の信用を失墜する行為のあったとき」を懲戒事由とする規定(64条2項)があった(甲1)。 (5) 給与規程 被告の給与規程中には、賞与は、原則として、6月1日から11月30日までの期間に在籍した職員に対し、被告の業績等を勘案して12月中旬に支給するとの規定があった(13条)(甲2)。 3 争点(1) 原告A関係 本件解雇1が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないものであったか否か(争点(1))(2) 原告B関係ア原告Bの抑うつ状態の業務起因性(争点(2))イ本件解雇2が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認め られないものであったか否か(争点(3))ウ原告Bの賃金請求権の有無(争点(4))エ原告Bの賃金に係る中間収入の控除(争点(5))(3) 原告ら両名関係本件解雇1、2以前の原告らの令和3年冬季賞与の請求権の有無及び額(争 点(6)) 4 争点に対する当事者の主張(1) 本件解雇1が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないものであったか否か(原告Aの主張) ア原告A 点(6)) 4 争点に対する当事者の主張(1) 本件解雇1が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないものであったか否か(原告Aの主張) ア原告Aが週刊誌に虚偽の情報をリークしていないこと被告は、茨城県から被告に送付された「しらす試験操業に係る漁獲物等の放射性物質分析結果について」と題する書面(被告を含む茨城県北部の漁業協同組合らが平成24年8月6日に実施したしらす試験操業で漁獲したしらすとその加工品についての放射性物質分析結果等が記載されたもの。)に ついて、本文中に記載された放射性物質分析結果の数値を手書きで変更して 茨城県に返送した。具体的には、しらす干しの検査結果が「2.1~24Bq/kg」とされていたところの「24」を「8.5」と書き換え、「かちり」の検査結果が「7.2~68Bq/kg」とされていたところの「68」を「24」と書き換えた。そして、かかる書き換え後の数値が、放射性物質分析結果として茨城県から公表された。このように、被告は、公表予定の放射 性物質検査結果を改ざんし、実際の数値よりも低い数値を公表させたものである。 原告Aは週刊誌から取材を受け、上記改ざんに係る情報提供をしたが、自ら情報を週刊誌にリークしたものではない上、原告Aが週刊誌に情報提供した内容は何ら虚偽ではない。 イ原告Aは虚偽の告発をしていないこと被告において、正規の出張がなされた場合、出張命令書には、出張者・命令(出張の期間)・用務・用務先・車区分・交通費・出張手当等が記載され、交通費・宿泊費の領収書が添付されるが、被告が本件補助金を受給した出張に係る出張命令書の多数について、その記載内容に疑義があり、本件補助金 の不正受給が強く疑われる。具体的には、高速道 され、交通費・宿泊費の領収書が添付されるが、被告が本件補助金を受給した出張に係る出張命令書の多数について、その記載内容に疑義があり、本件補助金 の不正受給が強く疑われる。具体的には、高速道路料金と鉄道普通券料金が二重に計上されているもの、飲食代が出張手当と別に計上されているもの、領収書がなく使途不明な支出が計上されているもの、交通費が計上されておらず空出張の疑いがあるものなどである。また、旅費精算書の一部には、同じ作成日付の他のものと異なる特徴があり、つじつま合わせのために後から 作成された疑いがある。 被告は、旅費規程(乙7)に従って適正に出張旅費等を処理していたと主張するが、同旅費規程は、上記各出張命令書に係る出張よりも後の令和2年3月27日に改訂されたものである(労基署届出済印は令和4年5月10日付け)。上記改訂前の旅費規程(甲39)では、高速道路料金は実費を支給す る、自家用車を使用した場合に鉄道費を支給するなどの規定はなく、被告は 出張当時の旅費規程に従った処理をしていたものではない。 以上のとおり、被告は本件補助金を不正受給した疑いがあり、原告Aの刑事告発は合理的なものであって、虚偽ではない。 ウ原告Aの解雇が相当性を欠くこと被告は、原告Aに対し、令和4年1月23日に解雇予告通知書(甲21) を送付するまで、解雇理由に該当する事実を示したことがなく、事情の聴取をしたり、弁明の機会を付与したりすることもなかった。 したがって、本件解雇1は相当性を欠く。 (被告の主張)ア虚偽情報のリーク 茨城県の送付にかかる書面の本文中、しらす干しの検査結果の最高値が「24」と記載されていたものを「8.5」に変更する書き込みは、被告のC参事(当時)がしたものである。しかし、出荷予定 ーク 茨城県の送付にかかる書面の本文中、しらす干しの検査結果の最高値が「24」と記載されていたものを「8.5」に変更する書き込みは、被告のC参事(当時)がしたものである。しかし、出荷予定のない業者に係る検査数値は公表しないというのが当時の茨城県の方針であったところ、出荷予定のない業者に係る検査数値である「24」が、しらす干しの検査結果の最高 値として本文中に記載されており、この記載を、出荷予定のある業者に係る検査結果のうち最高値であった「8.5」に訂正したものであって、何ら改ざんではない。 また、本文中、「かちり」の検査結果の最高値が「68」と記載されていたものを「24」と変更する書き込みは、被告に送信されてきた時点で既にさ れていたものである。 そして、被告は、令和2年9月29日の会議(以下「本件会議」という。)において、上記訂正についての説明をしており、原告Aを含む出席者全員が、本件書面が改ざんされたものではないことを納得していた。それにもかかわらず、原告Aは、週刊誌記者に対して、令和3年2月末頃、被告が放射性物 質分析結果を改ざんしたとの虚偽の情報をリークし、本件書面(乙1)を提 供して、令和3年3月11日発売の週刊誌にその旨の記事(以下「本件記事」という。)を掲載させた。 平成23年3月11日に発生した東日本大震災及びその後の福島第一原子力発電所での事故により、放射性物質に関する問題は、漁業関係者にとって極めて慎重に扱わなければならないものであって、原告Aの上記行為は、 被告が扱う海産物への信用を低下させ、関係する漁業者の経営を危うくする極めて危険な行為であり、就業規則64条2項の懲戒事由にも該当する。 イ虚偽の告発原告Aは、令和2年11月5日他に、捜査機関に対し、被告が本 の信用を低下させ、関係する漁業者の経営を危うくする極めて危険な行為であり、就業規則64条2項の懲戒事由にも該当する。 イ虚偽の告発原告Aは、令和2年11月5日他に、捜査機関に対し、被告が本件補助金を不正に受給している旨告発した。しかし、被告は、旅費規定や被告内部の 長年の旅費精算慣行に従って適正に出張旅費を精算しており、本件補助金の受給に当たって、何ら不正はない。そして、被告は、このことを本件会議において説明しており、不正がないことは原告Aを含む出席者全員が納得していた。それにもかかわらず、原告Aは、上記のとおり、被告が本件補助金を不正に受給しているとの虚偽の告発をしたものである。 原告Aは、平成24年以降、被告で人事を担当していた上司らに対する不満を募らせ、上司らと口をきかなくなり、いやがらせをするようになっていった。平成27年頃からは、原告Aは上司からの業務連絡の電話に出なくなった。また、原告Aは、令和2年11月9日、被告の前専務と会い、自身が処分を受け得ることへの対抗策として本件補助金の不正問題の訴えを起こ す予定であるなどと発言した。これらの事情に照らせば、原告Aの告発は、公益目的のものではなく、上司らに対する私憤を晴らす目的のものであったといえる。 原告Aの上記行為は、上司らへの私憤を晴らすために虚偽の事実を捜査機関に告発し、国家の司法作用を誤らせようとしたものであって、極めて悪質 な行為であり、就業規則64条2項の懲戒事由にも該当する。 (2) 原告Bの抑うつ状態の業務起因性(原告Bの主張)原告Bが抑うつ状態となったのは、次のとおり、被告での業務における精神的ストレスが原因であった。そのため、本件解雇2は、業務上の疾病の療養のための休業期間内にされた解雇として、労基 告Bの主張)原告Bが抑うつ状態となったのは、次のとおり、被告での業務における精神的ストレスが原因であった。そのため、本件解雇2は、業務上の疾病の療養のための休業期間内にされた解雇として、労基法19条1項に反し、無効である。 ア能力の否定原告Bは、平成27年1月頃、当時の配属先の責任者に対し、仕事をより与えてほしいと要望したが、「お前には無理だ」と能力を否定する発言を受けた。 イ過剰な業務 原告Bは、平成28年2月1日付けで販売課に異動となった。 販売課において、原告Bは、競りの際の記帳業務とその記帳したものを伝票に起こす入力業務を担当していた。これに加え、原告Bは、他の職員からシステム変更に伴うデータの移動作業や精算業務を行うようにも指示され、昼休みをとることができないほど過剰な業務に従事していた。 ウ上司からの不当な注意等原告Bは、周囲からあら探しをされ、1つの事務作業上のミスであっても、被告のD専務(当時)から直接に注意されていた。平成30年夏頃には、D専務から「お前を採用して失敗した」などと言われて説教をされた。 エ不正問題への対応 令和2年8月12日、原告Bは、原告Aを含む他の職員らと共に、被告組合長宅を訪問し、組合長の妻との間で、被告における不正等の問題について話し合いをした。これに関し、D専務及びC参事は、同月20日、原告Bを呼び出し、「自分の意思で行ったのか」と大声を出して詰問し、「もし自分の意思で行ったなら処分を考える」などと脅した。 また、被告は、職員らに対し、令和3年1月20日、「昨年の一部職員によ る、争議についてお尋ねいたします。」などと、被告内部での不正等を改善しようと活動していた原告らを非難する内容のアンケート(以下「本件 員らに対し、令和3年1月20日、「昨年の一部職員によ る、争議についてお尋ねいたします。」などと、被告内部での不正等を改善しようと活動していた原告らを非難する内容のアンケート(以下「本件アンケート」という。)を実施した。原告Bは、自身も非難されていると心理的圧迫を受けた。 オ出勤できなくなった日の前日に受けた叱責 令和3年2月3日午前8時30分頃、原告Bが市場の清掃を終えて休憩していたところ、C参事は、原告Bに対し、「お前何やってんだ。他港集計どうなっているんだ。」と叱責した。その後、原告Bと他の職員との間で、令和2年度分の他港集計業務は当該他の職員が行うこととなったことから、その旨をC参事に報告したところ、C参事は、原告Bに対し、「4月からお前何やっ ているんだ。」などと怒鳴った。 (被告の主張)ア判断枠組み労基法19条1項に規定する「業務上」の疾病とは、業務と相当因果関係のある疾病をいい、その発症が当該業務に内在する危険が現実化したもので あると認められることを要する。そして、かかる業務の危険性は、「ストレス-脆弱性」理論や労災保険制度が危険責任の法理にその根拠を有することなどに照らして、当該職場の平均的労働者を基準とすべきである。 したがって、平均的労働者にとって、当該労働者のおかれた具体的状況における心理的負荷が、一般に精神障害を発症させるに足りる程度のものであ るといえ、かつ、業務による危険性がその他の業務外の心理的負荷や個体側の要因に比して相対的に有力な原因となったと認められる場合に、当該精神障害を「業務上」の疾病であると認めるのが相当である。 イ原告Bの疾病に業務起因性がないこと原告Bが行っていた業務は、誰にでもこなせる業務であり、特段困難を伴 う業 る場合に、当該精神障害を「業務上」の疾病であると認めるのが相当である。 イ原告Bの疾病に業務起因性がないこと原告Bが行っていた業務は、誰にでもこなせる業務であり、特段困難を伴 う業務を任せていたわけではなく、長時間労働・過重労働を強いた事実もな い。C参事による叱責も、上司としての指導の範囲を逸脱するものではなかった。したがって、平均的労働者にとって、原告Bの置かれた具体的状況における心理的負荷が、一般に精神障害を発症させるに足りる程度のものであったとはいえない。 また、原告Bは、平成29年度から欠勤日数が多くなり、平成30年度以 降は有給休暇の日数を超えて欠勤するようになっていたのであるから、原告Bの抑うつ状態は、業務外の心理的負荷や個体側の要因が原因である可能性が十分に考えられ、業務による危険性がその他の業務外の心理的負荷や個体側の要因に比して相対的に有力な原因となったとは認められない。 以上のとおり、原告Bの疾病は「業務上」の疾病に当たらないから、本件 解雇2に労基法19条1項は適用されない。 (3) 本件解雇2が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないものであったか否か(原告Bの主張)ア原告Bが抑うつ状態のために療養せざるを得なくなったのは、上記(2)(原 告Bの主張)のとおり、被告がその優越的地位を利用して原告Bに不当な心理的圧迫を加え続けたことが原因である。 イ被告は、原告Bに対し、病状や復帰の見込みを十分に確認することなく、原告Bを解雇した。 (被告の主張) ア上記(2)(被告の主張)のとおり、原告Bの抑うつ状態は、被告の業務に起因するものではなく、業務外の心理的負荷や原告B自身が有していた要因によるものである。 イ原告Bが 告の主張) ア上記(2)(被告の主張)のとおり、原告Bの抑うつ状態は、被告の業務に起因するものではなく、業務外の心理的負荷や原告B自身が有していた要因によるものである。 イ原告Bが被告に提出した令和3年2月6日付けの診断書(甲22)には、加療期間や病気の原因等の記載は一切なく、その他、原告Bから病状に関す る説明はなかった。 ウ原告Bから被告職員に対し、令和3年2月21日に職場に顔を出すことができるかもしれないとの連絡があったが、原告Bは、同日、被告を訪れなかった。 エ被告は、原告Bに対し、令和3年3月17日付け通知書(乙6)を送付し、事情の説明を求めた。これに対し、原告Bは、同月23日付け回答書(乙9) を送付してきたのみで、診断書等を一切提出しなかった。 オ原告Bは、約1年欠勤を続けており、被告就業規則第47条第1項の「身体、精神の障害により、業務にたえられないとき」に該当する。 (4) 原告Bの賃金請求権の有無(原告Bの主張) 原告Bは、被告の責めに帰すべき事由により労務提供が不能となったから、改正前民法536条2項前段により、本件解雇2以降の期間についても、賃金請求権を失わない。 (被告の主張)原告Bは、疾病により令和5年2月まで被告での就労が不能だったのである から、本件解雇2から上記同月までの期間原告Bが労務提供できなかったことは被告の責めに帰すべき事由によるものではなく、仮に本件解雇2が無効であったとしても、改正前民法536条1項により、原告Bは、被告に対する同年1月分までの賃金請求権を有しない。 (5) 原告Bの賃金に係る中間収入の控除 (被告の主張)仮に本件解雇2が無効であり、被告が原告Bに対して本件解雇2以降の賃金を支払う義 する同年1月分までの賃金請求権を有しない。 (5) 原告Bの賃金に係る中間収入の控除 (被告の主張)仮に本件解雇2が無効であり、被告が原告Bに対して本件解雇2以降の賃金を支払う義務を負うとしても、原告Bは、本件解雇2の後に他所で稼働して収入を得ており、その収入は改正前民法536条2項後段により被告が支払うべき賃金の額から控除されるべきである。 (原告Bの主張) 本件解雇2より後に原告Bが他所で得た収入については、平均賃金の4割の限度でのみ賃金から控除することが許されるものである。 (6) 本件解雇1、2以前の原告らの令和3年冬季賞与の請求権の有無及び額(原告らの主張)被告は、令和3年の冬季賞与として、職員らに基本給の3.6倍の額の金員 を支給した。したがって、令和3年の冬季賞与として、原告Aは98万6000円(判決注・本給17万6000円、職務手当1万円、物価手当8万8000円の合計27万4000円の3.6倍に相当する額と解される。)、原告Bは87万8400円(判決注・本給15万9000円と物価手当8万5000円の合計24万4000円の3.6倍に相当する額と解される。)の支払を受け る権利を有する。 (被告の主張)争う。 被告は、原告Aの令和3年冬季賞与として13万7000円を支払う準備はしており、原告Aの令和3年冬季賞与は同額にとどまる。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実のほか、括弧内の証拠(枝番のあるものは、特に断らない限り枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (1) 原告らの申入れ及びその後の活動 ア原告Aは、D専務に対し、令和2年5月15日、被告を良くするための相談をしたいとして、若い 。)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (1) 原告らの申入れ及びその後の活動 ア原告Aは、D専務に対し、令和2年5月15日、被告を良くするための相談をしたいとして、若い職員らの意見を聞いて欲しいと申し入れた。その後、同月18日、D専務と、原告Aを含む被告の職員5名との間で話合いが持たれた。かかる話合いの中で、原告Aが、被告の販売課係長が魚の横流しをしている旨指摘したほか、C参事及び被告の幹部職員1名が本件補助金を不正 に使い込んでいる旨が話題となった(ただし、本件補助金に関しては、話合 いに参加していた者のうち、誰が話題としたのかは、本件の証拠上明らかでない。)(甲49、乙16、証人D専務、原告A本人)。 イ原告Aは、E課長(当時)及び他の職員1名と共に、同年7月11日、被告の書庫内において、本件補助金の不正受給の裏付けを目的として、保管されていた領収書等を調査し、その写真を撮影した(甲49、原告A本人)。 ウ原告Aは、同月30日、被告の当時の組合長の妻のもとを訪れ、上記魚の横流しの問題や本件補助金の不正受給の問題について相談した(甲49)。 エ原告らは、他の職員らと共に、同年8月12日、本件補助金の不正受給問題等について相談をするために、上記組合長の妻のもとを訪れた(甲49、甲50、原告A本人、原告B本人)。 オ同年9月8日、D専務、上記組合長の妻及びその親族1名、原告ら、他の職員4名が参集して、話合いの場が持たれた(甲49、乙16、証人D専務、原告A本人)。 (2) 本件会議(甲49、甲50、乙1、乙11、乙12、乙16ないし18、証人D専務、証人C参事、原告A本人、原告B本人) 令和2年9月29日、当時の被告の組合長及び副組合長、D専務、C参事、原 件会議(甲49、甲50、乙1、乙11、乙12、乙16ないし18、証人D専務、証人C参事、原告A本人、原告B本人) 令和2年9月29日、当時の被告の組合長及び副組合長、D専務、C参事、原告ら及び他の職員ら等が集まり、会議(本件会議)が行われた。本件会議においては、本件補助金及び本件書面に関し、概要、次のとおりの発言があった。 ア原告Aは、C参事の青森県への出張(本件補助金の支給対象)では、飲食代1万5000円が旅費計上されている旨を指摘した。これに対し、C参事 は、上記飲食代は、現地の関係者との会食費用であり、被告として必要経費と認めている旨説明した。 イ被告の幹部職員は、本件補助金は、各漁業協同組合の旅費規程に則って旅費として認められたものにつき、国の機関による査定を経て適正と認められた分が支給されるとの旨説明した。 ウ E課長は、本件書面を示し、放射性物質検査結果が改ざんされたのではな いかと指摘した。 なお、本件書面は、茨城県が作成し、平成24年8月10日頃、被告に送信した書面であり、生しらすと加工しらす製品の検査結果の一覧表及びそれを説明する本文とで構成された書面である。そして、本件書面の本文中、①「かちり」の検査結果の最高値である「68Bq/kg」との記載について、 数値「68」が丸で囲まれ、「24」と手書きで訂正がされ、②しらす干しの検査結果の最高値である「24Bq/kg」との記載について、数値「24」の部分に「8.5」と手書きで訂正がされていた。 C参事は、E課長からの上記指摘に対し、本件書面のうち、上記①の「かちり」の検査結果に関する本文中の書き込みは自己がしたものではないが、 当該訂正は、本件書面下部一覧表には「68Bq/kg」との記載がないにもかかわらず、本文に 、本件書面のうち、上記①の「かちり」の検査結果に関する本文中の書き込みは自己がしたものではないが、 当該訂正は、本件書面下部一覧表には「68Bq/kg」との記載がないにもかかわらず、本文には最高値として「68Bq/kg」と記載されていたため、本文と一覧表との整合性を保つべく、本文の最高値の数値を、一覧表中の最高値である「24Bq/kg」に一致させて訂正をしたものであろうとの旨、上記②のしらす干しの検査結果についての本文の数値「24」を「8. 5」と書き込んだ部分は自己がしたものであるとの旨説明した。 (3) 原告A及びE課長との面談等D専務及びC参事は、令和2年10月26日、原告A及びE課長を会議室に呼び、面談をし、書面の提出を求めた(甲49、乙16、乙17、原告A本人)。 E課長は、被告に対し、同年11月7日付けの「今回の事については、私の 責任ですので、処分は私一人でお願いします。」と記載した書面を提出した(乙2)。 (4) 原告Aによる告発原告Aは、水戸地方検察庁に対し、令和2年11月5日、本件補助金を含む被告の経費処理に関する告発状を提出した後、水戸地方検察庁検察官の示唆も あり、同月半ばないし同年12月頃、茨城県警察に対し、同年7月11日に撮 影した領収書等の資料を添付して、被告の本件補助金にかかる出張経費の処理が不適切であるとの旨申告した。(甲29、甲49、乙23、原告A本人)。 (5) 原告Aへの休職処分被告は、令和2年11月30日、原告Aにつき、理由を告げることなく、翌12月1日から無期限の休職処分とした(甲5ないし11、甲49、証人D専 務、原告A本人)。かかる休職処分の理由は、原告Aが、平成27年初め頃から、上司に対する不満を抱き、その命令に反発して、業務に関 1日から無期限の休職処分とした(甲5ないし11、甲49、証人D専 務、原告A本人)。かかる休職処分の理由は、原告Aが、平成27年初め頃から、上司に対する不満を抱き、その命令に反発して、業務に関する電話を受けない態度を示し、このような状態が約5年間継続したため、被告の業務に多大な支障をきたしたとのものであった。なお、後記(9)イのとおり、かかる処分理由が原告Aに伝えられたのは、令和3年11月30日であった(甲19)。 (6) 被告による職員へのアンケート被告は、令和3年1月末又は2月初め頃、職員らを対象としたアンケート(本件アンケート)を実施した。かかるアンケートには、冒頭部分に「昨年の一部職員による、争議についてお尋ねいたします。」と記載され、「上司に対する反感からの行為をどう思いますか?」「同僚・上司に対しての根拠のない誹謗中 傷をどう思いますか?」「確たる証拠のない事に対しての部外者への噂の流布をどう思いますか?」などの質問項目があり、「1.良いと思う・2.悪いと思う・3.どちらとも思わない」との回答の選択肢が設けられていた。また、「これ等の行為を長年に亘り繰り返す職員がいたとしたら」という質問項目には「1.これからも仲良く付き合いたい・2.付き合いたくない・3.どちらと も言えない」との回答の選択肢が設けられていた。なお、上記「一部職員」とは、原告A及びE課長を指すものであった(甲15、甲50、証人D専務、原告B本人)。 (7) 原告Bの休職等ア C参事は、原告Bに対し、令和3年2月3日、勤務態度について問い質し たところ、原告Bがゲームをしていたと申告したことから、相応の声量を上 げて叱責した(甲50、乙17、証人C参事、原告B本人)。 イ原告Bは、前記アの翌日から、抑うつ て問い質し たところ、原告Bがゲームをしていたと申告したことから、相応の声量を上 げて叱責した(甲50、乙17、証人C参事、原告B本人)。 イ原告Bは、前記アの翌日から、抑うつ状態を理由に被告に出勤しなかった(前提事実(2))。 ウ原告Bは、同月6日、医師の診察を受けた。かかる診察において、原告Bは、仕事の負荷を以前から感じていた、原告Aが休職処分を受けるなど不当 な扱いを受けており被告への不信感が増した、原告Aの行動を責める内容のアンケート(本件アンケート)が実施された、同月3日に上司から叱責を受けたなどの内容を述べ、医師は、職場でのストレスが強く抑うつ状態であり、休養を要すると診断した(甲22、甲31)。 エ原告Bは、被告に対し、同月8日、上記ウの診断に係る診断書を提出した。 これを受けて、被告の職員は、原告Bに対し、同日、病状の報告や療養日数を問い合わせた。これに対し、原告Bは、医師から2週間後に再受診するよう言われているとの旨、病状次第では同月21日に被告に顔を出すことができるかもしれないとの旨回答した(なお、原告Bは同日に被告に顔を出していない。)(甲50、乙9、原告B本人)。 オ被告は、原告Bに対し、同年3月17日頃、欠勤理由の説明を求めた(乙6)。これに対し、原告Bは、同月23日、医師からはまだ出勤しない方がよいと言われており、当面は診察毎に原告Bの上司であったE課長に病状を報告するとの旨、自身の抑うつ状態は業務過多と業務上のパワーハラスメント等を原因とするもので、労働災害に該当し得ると考えているとの旨回答した (乙9)。さらに、被告は、原告Bに対し、同月30日、E課長ではなく、D専務又はC参事に病状等を報告するよう求めた(乙20)。 (8) 週刊誌による取材等 得ると考えているとの旨回答した (乙9)。さらに、被告は、原告Bに対し、同月30日、E課長ではなく、D専務又はC参事に病状等を報告するよう求めた(乙20)。 (8) 週刊誌による取材等ア原告らは、令和3年2月26日、週刊誌記者から取材を受けた。このとき、原告Aは、同記者に対し、本件書面を見せ、本件会議の録音音声を聞かせた (甲49、原告A本人)。 イ週刊誌記者は、令和3年3月1日、被告に対し、茨城県沿岸の漁獲物の放射性物質の検査結果について取材を進めているため、事実関係を確認したいとして、本件会議や本件書面に関連し、具体的な質問を記載した取材依頼のファクシミリを送信し、その頃、C参事に電話連絡をした(乙5、17)。 ウ令和3年3月11日、「茨城県加工シラス放射能“基準超え”数値はなぜ消 えた」と題する記事(本件記事)を掲載した週刊誌が発売された。本件記事には、その題名脇に本件書面の写真が載せられるとともに、本件会議において放射性物質の検査結果が改ざんされた疑惑が生じたとの旨、本件書面に数値を修正する手書きの書き込みがされていたとの旨、かかる書き込みのとおりの数値を茨城県が公表したとの旨、本件会議において被告の幹部職員が本 件書面には間違いがあったから訂正したのであって改ざんではないと説明したとの旨、被告に取材を申し込んだところ、試験操業当時、安心安全を確保するために加工製品の測定も開始したところ、当初は高い数値が出たが、加工品を天日干しする網を洗浄するなどしたところ、低い値で落ち着くようになった、文書には最初の頃の数字が残っていたのだろうと参事が答えたと の旨、茨城県からも、試験操業当時、検査をしたところ、加工品のうち、高い数値が出たものがあり、工場設備の清掃が不十分で放射性物質が 、文書には最初の頃の数字が残っていたのだろうと参事が答えたと の旨、茨城県からも、試験操業当時、検査をしたところ、加工品のうち、高い数値が出たものがあり、工場設備の清掃が不十分で放射性物質が残っていたことが原因であると推測される、ただいずれも販売や市場流通する予定もないテストのようなものなので公表する必要がないという判断で、正式文書では削除したと回答が得られたとの旨、漁業経済学の大学教授の意見として、 公表の仕方は県によって差があった、結果の非公表はかえって消費者からの不信感を招く結果になりかねないとの旨が記載され、「茨城の数値は、健康に影響が出るレベルではなかった。むしろ数値を公表した方が、消費者の信頼につながったのではないだろうか」と締めくくられていた(乙4)。 (9) 労働組合への加入及び団体交渉 ア原告らは、令和3年3月末頃、労働組合に加入した。同労働組合は、被告 に対し、同月31日頃、原告らが同労働組合に加入した旨を通知するとともに、団体交渉の実施を申し入れた(甲30)。その後、同労働組合と被告は、同年5月13日、同年6月1日、同月23日(又は24日)、令和4年2月14日に団体交渉を行った。 イ被告は、原告Aに対し、令和3年11月30日、原告Aへの休職処分(上 記(5))の理由は、原告Aが平成27年初め頃から、上司に不満を抱き、業務に関する電話であることを知りながら当該上司からの電話をあえて受けない態度を示し、そのような状態を約5年継続して被告の業務に支障を来したことである旨告げた(甲19)。 (10) 原告らの解雇 被告は、原告らに対し、令和4年1月23日、同年2月22日限りで解雇するとの意思表示をした(前提事実(3))。 2 争点(1)(本件解雇1が客観的に合理的な理 。 (10) 原告らの解雇 被告は、原告らに対し、令和4年1月23日、同年2月22日限りで解雇するとの意思表示をした(前提事実(3))。 2 争点(1)(本件解雇1が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないものであったか否か)(1) 虚偽情報のリークについて ア認定事実(8)アのとおり、原告Aは、令和3年2月26日、週刊誌記者から取材を受け、同記者に対し、本件書面を提示するとともに、本件会議の録音音声を聞かせたことが認められる。 しかし、本件記事の内容は、「茨城県加工シラス放射能“基準超え”数値はなぜ消えた」との題名のもと、本件書面に数値修正の書き込みがあり、修正 後の数値を県が公表したこと、本件会議において放射性物質の検査結果が改ざんされた疑惑が生じたとの記載がある一方で、本件会議において被告の幹部職員が説明した内容、被告及び県に対する取材結果も同様に記載され、茨城県の数値は健康に影響が出るレベルではなかったと締めくくっているのであるから、これを読んだ一般読者においては、被告が何らの根拠なく隠蔽 目的で放射性物質分析結果数値を修正し、改ざんしたとの印象を抱くとまで はいえず、被告の信用低下は仮にあるとしても限定的なものにとどまる。 そして、上記のとおり、原告Aは週刊誌の取材を受けたものであるが、本件書面及び本件会議の録音音声を提供したほかに、原告Aが取材に応じた内容は本件の証拠上明らかでなく、上記のとおりの本件記事の内容に照らせば、原告Aが上記取材に際して被告の信用を大きく毀損し得る回答をしたこと は認められない。 イこの点、被告は、原告Aは、加工したしらす製品である「かちり」にも当時の茨城沿海地区漁業協同組合連合会の自主基準である「50Bq/kg 用を大きく毀損し得る回答をしたこと は認められない。 イこの点、被告は、原告Aは、加工したしらす製品である「かちり」にも当時の茨城沿海地区漁業協同組合連合会の自主基準である「50Bq/kg」が及ぶという誤った認識のもと、被告が本件書面の本文中かちりの検査結果の最大値「68Bq/kg」を上記基準内に収めるために「24Bq/kg」 に改ざんしたとの誤った筋を作り上げ、虚偽の事実を週刊誌記者に告げたと主張する。 しかしながら、認定事実(8)ウに認定したほか、本件記事(乙4)中には、当時の茨城県の出荷基準は、加工品については1kg当たりの放射性物質は100Bqであったとの旨、被告関係者が、元の数値(上記「68Bq/k g」)でも出荷は可能だが、風評被害を恐れ低くしたのではないかと発言したとの旨の記載部分があるにとどまり、上記自主基準が「かちり」にも及び、「68Bq/kg」との検査数値では「かちり」を出荷することができなかったとの旨や、上記自主基準内に収めるために「かちり」の検査数値を修正した可能性があるとの旨の記載はない。そうすると、本件記事の内容から、 原告Aが、「かちり」にも上記自主基準が及び、自主基準内に収めるために検査結果が改ざんされたとの事実を週刊誌記者に告げたとは認められず、その他これを認めるに足りる的確な証拠はない。 ウまた、認定事実(2)ウのとおり、本件書面の本文中「かちり」の検査結果の数値「68」部分に「24」と手書きの書き込みがされていた点については、 本件書面下部記載の一覧表の記載と本文中の記載との整合性を意識して茨 城県職員が訂正の趣旨で書き込んだものであった旨本件会議においても説明されていたのであるから、上記書き込みが数値の訂正の趣旨でなされたものであれば、原告Aもそ 記載との整合性を意識して茨 城県職員が訂正の趣旨で書き込んだものであった旨本件会議においても説明されていたのであるから、上記書き込みが数値の訂正の趣旨でなされたものであれば、原告Aもそのことを容易に認識し得たというべきである。 他方で、認定事実(2)のとおり、上記「かちり」に係る書き込みとは異なり、しらす干しに係る書き込みの理由については、本件会議内においても具体的 な説明はなかった。加えて、被告は、上記しらす干しに係る書き込みについて、出荷予定のない業者に係る検査結果は公表しないという茨城県の当時の方針に従った訂正であったと主張し、C参事の供述もこれに沿うが、そのような方針を原告Aが認識し、あるいは認識してしかるべきであったとの事情はうかがわれない。そうすると、原告Aが、本件書面の記載内容から、被告 あるいは茨城県が、漁獲物の流通を確保するために、実際の放射性物質検査結果の数値よりも低い数値を公表したのではないかとの疑念を抱くことは必ずしも不合理なことではないというべきである。 したがって、原告Aが、週刊誌記者からの取材に対して、本件書面及び本件会議の録音音声を提供し、実際の放射性物質分析結果とは異なる数値が公 表された可能性があるとの認識を回答していたとしても、それが、故意に虚偽の情報を提供したものであったということはできず、およそ合理的な理由なく被告の信用を毀損する行為であったということもできない。 エ以上に説示したところによれば、原告Aが取材に応じたことは、不合理に被告の信用を低下させるものであったとは認められず、解雇の有効性を基礎 付ける客観的合理的な理由たり得ないというべきである。 (2) 虚偽の告発についてア認定事実(4)のとおり、原告Aが、捜査機関に対して、被告が本件補助金を 認められず、解雇の有効性を基礎 付ける客観的合理的な理由たり得ないというべきである。 (2) 虚偽の告発についてア認定事実(4)のとおり、原告Aが、捜査機関に対して、被告が本件補助金を不正に受給している疑いがある旨の告発をしたことが認められる。 イそして、本件補助金に関連する、平成25年から平成30年までの被告に おける出張経費に関し、証拠(甲29)及び弁論の全趣旨によれば、①自家 用車で高速道路を使用した出張につき、鉄道普通券の費目に経費が計上されている出張命令書、②飲食代が出張手当と別に計上されている出張命令書、③所定の枠外に手書きで使途不明の金員の支払について記載された出張命令書、④交通費が計上されていない出張命令書が複数存在したこと、原告Aは、かかる出張命令書等を資料として、被告の本件補助金に係る出張経費の 処理が不適切であるとの旨茨城県警察に申告したことが認められる。 この点、被告は、上記①につき、個人の自家用車を使用したときはその区間に係る交通費を鉄道賃で支給する、高速道路料金は実費を支給するとの被告における長年の旅費慣行に従ったものであり、かかる旅費について本件補助金を不正に受給したものではないと主張する。しかし、証拠(甲39)及 び弁論の全趣旨によれば、令和2年3月以前の被告の旅費規程においては、上記取扱いは記載されていなかったことが認められ、仮に上記取扱いが慣例化していたとしても、本件の証拠上、原告Aがそのことを認識していたとの事情はうかがわれない。そうすると、上記①につき、原告Aが、被告における本件補助金の受給に不正な点があるのではないかと疑うことも不合理な ことではない。 次に、被告は、上記②につき、出張命令書上飲食代が誤って計上されたが、旅費精算の過程におい が、被告における本件補助金の受給に不正な点があるのではないかと疑うことも不合理な ことではない。 次に、被告は、上記②につき、出張命令書上飲食代が誤って計上されたが、旅費精算の過程において誤りが判明し、上記飲食代について本件補助金は支給されなかったと主張する。しかし、出張命令書の記載自体からは、計上された飲食代が最終的に本件補助金の支給対象とならなかったことを認識す ることはできない上、当該出張命令書(甲29の1)には「済」の印が押されていたこと、認定事実(2)アのとおり、本件会議において原告Aは上記②を指摘したが、被告から本件補助金の支給対象となっていないことの説明はなかったことから、原告Aが上記飲食代につき本件補助金が支給されたと認識したとしてもやむを得ないというべきである。 また、被告は、上記③につき、一定期間内に精算された旅費の合計額を記 載したものと主張する。しかし、出張命令書の記載自体からそのことを認識することはできず、原告Aがこれを認識していたとの事情もうかがわれないから、原告Aが、使途不明の費目につき被告が本件補助金の受給を受けたのではないかと疑うことも不合理ではない。 さらに、上記④につき、証拠(甲39)及び弁論の全趣旨によれば、出張 当時の被告の旅費規程において、被告所有の自動車等による出張については交通費を支給しないこととされていたことが認められ、原告Aにおいて、旅費規程を確認することで、出張命令書に交通費が計上されていない理由を把握すること自体は可能であったといえるが、現にそのことを原告Aが認識していたとの事情はうかがわれない。加えて、被告所有の自動車による出張で あることを理由に交通費が計上されていないのかは、出張命令書の記載自体からは明らかではなく、上記のとお とを原告Aが認識していたとの事情はうかがわれない。加えて、被告所有の自動車による出張で あることを理由に交通費が計上されていないのかは、出張命令書の記載自体からは明らかではなく、上記のとおり、他にも本件補助金を不正受給していると疑う契機があったことに照らせば、交通費の計上のない出張命令書の存在により、原告Aが空出張を疑うことも全く不合理なことであったとまではいえない。 以上に加え、本件会議において、被告は、本件補助金に関し、被告の旅費規程に則って認められる範囲内の旅費について支給を受けている旨の説明をしたのみであって、原告Aが格別反論や追加の説明を求めるなどしていないことを踏まえても、本件会議での被告の説明をもって、原告Aが、被告における本件補助金の受給が全て正当なものであると認識し、あるいは認識し てしかるべきであったということはできない。 以上のとおり、原告Aの認識していた事情を基礎とすれば、被告が本件補助金を不正に受給しているのではないかと疑問を抱くことがおよそ不合理であったとまでいえるものではなく、原告Aの告発が全く根拠を欠く不当なものであったとは認められない。また、原告Aが、本件補助金の不正受給の 事実はないと認識していたにもかかわらず、捜査機関に対して虚偽の告発を したとも認められない。 ウさらに、被告は、原告Aは平成27年頃から業務連絡の電話に出なくなるほど上司らに対する不満を募らせていたこと、原告Aは令和2年11月9日に被告の前専務に対して、自身が処分を受けることへの対抗策として本件補助金の不正受給問題の訴えを起こす予定であると発言していたことから、原 告Aは上司らに対する私憤を晴らす目的で告発をしたと主張する。 しかし、証拠(甲57、甲58)及び弁論の全趣旨によれ 本件補助金の不正受給問題の訴えを起こす予定であると発言していたことから、原 告Aは上司らに対する私憤を晴らす目的で告発をしたと主張する。 しかし、証拠(甲57、甲58)及び弁論の全趣旨によれば、C参事は、令和元年12月10日及び令和2年3月28日、原告Aに架電し、原告Aはこれに応答していることが認められるところ、これら以外に原告Aに対し上司らが架電したことやそれに原告Aが応答しなかったことを認めるに足り る的確な証拠はない。また、証拠(乙14、乙24、原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、令和2年11月7日から同月11日頃、被告の前専務と面会し、検察庁への告発を検討している旨告げたことが認められるが、原告Aが、自身が処分を受けることへの対抗策として告発する予定であると発言したことを認めるに足りる的確な証拠はない。加えて、認定事実 (3)のとおり、原告A及びE課長は、令和2年10月26日にD専務及びC参事と面談し、その後E課長が同年11月7日に「処分は私一人でお願いします。」と記載した書面を提出したことからすると、上記面談時に、D専務及びC参事が、原告A及びE課長に対する処分を検討していることを示唆する発言をしたことが推認される。しかし、認定事実(1)のとおり、被告内部での 不正等を調査、是正するための活動をしていた原告Aとしては、自己に対する処分を示唆されることで、最早被告内部のみでは問題の改善は期待できず、他の手段を検討する必要があると考えることもあり得るのであって、処分を示唆されたことをもって、それに対抗するために捜査機関への告発をしたものと推認することはできない。 エ以上に説示したところによれば、原告Aによる告発が、上司に対する私憤 を晴らすという個人的な目的によるもので 抗するために捜査機関への告発をしたものと推認することはできない。 エ以上に説示したところによれば、原告Aによる告発が、上司に対する私憤 を晴らすという個人的な目的によるものであったとはいえない。そして、原告Aによる告発がおよそ合理性を欠いていたということはできず、その内容においても公益通報としての側面を有していたことを併せ考慮すれば、原告Aによる告発が、解雇の有効性を基礎付ける客観的合理的な理由たり得ないというべきである。 (3) 小括したがって、本件解雇1は、客観的に合理的な理由を欠き、権利を濫用したものであるから、無効である。 3 争点(3)(本件解雇2が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないものであったか否か) (1) 序論本件解雇2が、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないものであった場合、本件解雇2は、原告Bの疾病が労基法19条1項に規定する業務上の疾病に当たるかを検討するまでもなく、権利を濫用したものとして無効となる。そこで、争点(2)に先行して、まず、争点(3)について検討 する。 (2) 検討ア認定事実(7)イ及び(10)のとおり、原告Bは、令和3年2月4日以降、解雇の意思表示がされた令和4年1月23日まで、11か月以上に亘って、抑うつ状態を理由に被告に出勤しなかったことが認められる。 そして、認定事実(7)ウのとおり、原告Bは、令和3年2月6日に医師の診察を受けた際、本件アンケートやC参事からの叱責(認定事実(7)ア)のほか、仕事の負荷を以前から感じていたことや、原告Aの休職処分により被告への不信感が増したことなどを述べ、医師は職場でのストレスが強く抑うつ状態にあると診断したことが認められる。かかる事実 )ア)のほか、仕事の負荷を以前から感じていたことや、原告Aの休職処分により被告への不信感が増したことなどを述べ、医師は職場でのストレスが強く抑うつ状態にあると診断したことが認められる。かかる事実に照らせば、原告Bの 抑うつ状態は、少なくとも被告での業務と無関係に生じたものであったとい うことはできない。その上で、認定事実(7)エ及びオのとおり、原告Bは、被告に対し、同月8日、診断書を提出し、同年3月23日、自身の抑うつ状態が業務上の理由によるものと考えているとの旨伝えたことに照らせば、被告においては、原告Bの欠勤の理由が抑うつ状態にあること、かかる抑うつ状態が被告での業務に起因するものである可能性があることを認識していた ものと認められる。そうすると、被告としては、原告Bの解雇を検討するに当たり、原告Bの病状の詳細を把握し、その状態に応じて配置可能な業務の有無も含め、原告Bの職場復帰の可能性を慎重に検討することが求められるというべきである。しかしながら、認定事実(7)オのとおり、被告は、令和3年3月17日に原告Bに対して欠勤理由の説明を求め、同月30日に原告B に対してD専務又はC参事に病状等を報告するよう求めたものの、証拠(証人D専務、証人C参事)及び弁論の全趣旨によれば、上記のほかに、被告が原告Bに対して病状の報告や診断書の提出を求めたことはなかったことが認められる。そして、認定事実(9)アのとおり、原告Bは、同月31日、労働組合に加入し、被告に対して、団体交渉を申し入れ、その後原告らと被告と の間で本件解雇2までに3回の団体交渉が行われており、被告としては、上記同日以降、原告Bの病状や復帰見込みについて、労働組合を通じて確認することは可能であったといえる。それにもかかわらず、被告は、同月30日 件解雇2までに3回の団体交渉が行われており、被告としては、上記同日以降、原告Bの病状や復帰見込みについて、労働組合を通じて確認することは可能であったといえる。それにもかかわらず、被告は、同月30日を最後に、原告Bが労働組合に加入して以降、病状等の報告を一切求めることなく、原告Bが精神の障害により業務に耐えられないとして解雇しており、 その判断は早急に過ぎるものといわざるを得ない。 以上によれば、原告Bが精神の障害により業務に耐えられない状態にあったか否かにかかわらず、本件解雇2は、社会通念上相当性を欠くものと解するのが相当である。 イこの点、原告Bは、認定事実(7)エないしオのとおり、令和3年2月8日に 被告に診断書を提出し、同年3月23日に医師からまだ出勤しない方がよい と言われている旨を被告に通知したが、原告Bが、これらのほかに、診断書の提出や具体的な病状、復帰時期の見込みの報告等をしたことを認めるに足りる証拠はない。しかし、抑うつ状態にある原告Bに対して、自発的な病状の報告等を求めることは酷な面もあり、上記のとおり、被告としても労働組合を通じるなどして病状等の報告を求めることも可能であった以上、原告B が自発的に報告等をしなかったことをもって、直ちに本件解雇2の相当性が基礎付けられるものではなく、このことは上記判断を左右しない。 (3) 小括したがって、本件解雇2は、社会通念上相当であるとは認められないものであり、権利を濫用したものとして無効である。 4 原告らの賃金請求権について(争点(4)(原告Bの賃金請求権の有無)を含む)(1) 原告らの賃金括弧内の証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告らの賃金は次のとおりであったと認められる。 ア原告Aが被告から支払を受けた令和4年1 )(原告Bの賃金請求権の有無)を含む)(1) 原告らの賃金括弧内の証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告らの賃金は次のとおりであったと認められる。 ア原告Aが被告から支払を受けた令和4年1月分の給与及び手当の額は、本 給が17万6000円、物価手当が8万8000円、家族手当が3万2000円、職務手当が1万円(以上合計30万6000円)であった(甲3の2)。 イ原告Bが被告から支払を受けた令和4年1月分の給与及び手当の額は、本給が15万9000円、物価手当が8万5000円、家族手当が6000円(以上合計25万円)であった(甲4の2)。 ウ原告らの本給及び上記各手当に係る賃金の計算期間は、各月1日から末日までであり、支給日は毎月25日(ただし、その日が休日の場合には、その前日)であった(甲1、甲2)。 (2) 原告Aの賃金請求権について上記(1)アのとおり、原告Aと被告との間の労働契約に基づき原告Aに支給 された令和4年1月分の本給の額が17万6000円、物価手当の額が8万8 000円、家族手当の額が3万2000円、職務手当の額が1万円であったことが認められる。本給は毎月定額が支払われる賃金である。また、物価手当は本給を基に物価情勢を勘案して定められるものであり、家族手当は職員の扶養親族の種別及び人数に応じて定額が毎月支払われるものであって、職務手当は職位に応じて毎月定額が支払われるものである(甲2)ところ、原告Aについ て、本件解雇後、これらが減額されあるいは不支給とされるべき事情は認められない。そして、原告Aが本件解雇より後の令和4年3月1日以降被告において就労できなかったのは、本件解雇により原告Aの提供する労務の受領を拒絶した被告の責めに帰すべき事由によるものというべきである。 い。そして、原告Aが本件解雇より後の令和4年3月1日以降被告において就労できなかったのは、本件解雇により原告Aの提供する労務の受領を拒絶した被告の責めに帰すべき事由によるものというべきである。 したがって、原告Aは、改正前民法536条2項により、上記同月以降も、 遅くとも毎月25日限り、上記同額の本給及び各手当の合計30万6000円の支給を受ける権利を失わない。 (3) 原告Bの賃金請求権についてア上記(1)イのとおり、原告Bと被告との間の労働契約に基づき原告Bに支給された令和4年1月分の本給の額が15万9000円、物価手当が8万5 000円、家族手当が6000円であったことが認められる。また、本給及び各手当の性質は上記(2)に説示したとおりであるところ、原告Bについて、本件解雇後、これらが減額されあるいは不支給とされるべき事情は認められない。 イ次に、認定事実(7)イのとおり、原告Bは、抑うつ状態により令和3年2月 4日以降被告に出勤しておらず、被告に対して労務を提供することが不能な状態にあった。また、証拠(原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告Bは、令和5年2月まで、被告における就労が不能な状態にあったことが認められる。そうすると、原告Bは、本件解雇2の有無にかかわらず、本件解雇2後の令和4年3月から令和5年2月まで、被告に対して労務を提供する ことが不能な状態にあったのであるから、原告Bが、改正前民法536条2 項前段に基づき、かかる期間分の賃金を請求するためには、原告Bが上記期間中労務提供不能となったことが、被告の責めに帰すべき事由によるものであることを要する。そこで、以下、この点について検討する。 認定事実(1)エ、オ及び(2)のとおり、原告Bは、原告Aを含む他の職員らと 提供不能となったことが、被告の責めに帰すべき事由によるものであることを要する。そこで、以下、この点について検討する。 認定事実(1)エ、オ及び(2)のとおり、原告Bは、原告Aを含む他の職員らとともに、令和2年8月頃から、被告の職場環境等を改善することを目的と した活動を行っていたところ、認定事実(5)及び(6)のとおり、令和2年11月30日には、原告Aが理由を示されることなく被告から休職処分を受け、その後、令和3年1月末から2月初め頃には、原告A及びE課長のことを指した本件アンケートが被告により実施された。そして、本件アンケートは、その内容に照らして、被告の業務や職場環境の改善等の正当な目的の下に行 われたものとはいい難く、原告A及びE課長を非難し、あるいは、他の職員らから孤立させるよう促す内容のものであったと評価されてしかるべきである。このように、原告Bにとっては、活動を共にしていた原告Aが休職とされ、その約2か月後には、原告Aを非難する内容のアンケートが実施されたのであるから、自らもなにがしかの処分を受けるかもしれないとの不安や、 被告に対する不信感を感じてもやむを得ないものであって、本件アンケートによる原告Bの精神的ストレスは小さくなかったものと解される。その上で、認定事実(7)ウのとおり、原告Bは、令和3年2月6日に医師の診察を受けた際に、原告Aの休職や本件アンケートについて述べていたことを踏まえると、本件アンケートによる精神的ストレスが、原告Bの抑うつ状態の発症に 相当程度寄与したものと考えられる。 また、認定事実(7)アのとおり、C参事は、原告Bが被告に出勤することができなくなった日の前日である令和3年2月3日、原告Bに対して大声を出して叱責したこと、その理由には、少なくとも、原告Bが勤務時間 た、認定事実(7)アのとおり、C参事は、原告Bが被告に出勤することができなくなった日の前日である令和3年2月3日、原告Bに対して大声を出して叱責したこと、その理由には、少なくとも、原告Bが勤務時間中にゲームをしていたことが含まれていたことが認められる。そして、原告Bの本人 尋問における供述中には、上記叱責を受けた際、他の職員2名と共にゲーム をしていたとの旨の供述部分があり、C参事の証人尋問における証言中にも、上記叱責をした際、同じ場に原告Bの他に2名の職員がいたとの旨、原告B以外の職員2名が何をしていたのかは覚えていない、わからないとの旨の証言部分があることからすると、上記叱責の際、原告Bは、他の職員2名とゲームをしていたものと考えられる一方で、C参事が、原告B以外の職員2名 に対しても同様に注意や叱責をしたとの事情はうかがわれない。そうすると、C参事による上記叱責は、原告Bに対して、自己のみが叱責を受けたとの不公平感を感じさせるものであったというべきであり、叱責の前提として、原告Bが職務に専念していなかったことを踏まえても、その方法及び態様が、全く相当性を欠くものではなかったとまではいえない。そして、上記叱責の 日の翌日から原告Bは出勤することができなくなったのであるから、上記叱責が、原告Bの抑うつ状態の発症に相当程度寄与したことは明らかである。 以上によれば、原告Bが、抑うつ状態により令和3年2月4日以降令和5年2月に至るまで被告での就労が不能であったのは、本件アンケートを実施し、上記叱責をした、被告の責めに帰すべき事由によるものと解するのが相 当である。 ウまた、原告Bは、令和5年2月以降被告での就労が可能な状態にあったが、原告Bが同月以降被告において就労することができなかったのは、本件解 帰すべき事由によるものと解するのが相 当である。 ウまた、原告Bは、令和5年2月以降被告での就労が可能な状態にあったが、原告Bが同月以降被告において就労することができなかったのは、本件解雇2により原告Bの提供する労務の受領を拒絶した被告の責めに帰すべき事由によるものというべきである。 エしたがって、原告Bは、改正前民法536条2項により、令和4年3月1日以降も、遅くとも毎月25日限り、上記アと同額の本給及び各手当の合計25万円の支給を受ける権利を失わない。 5 争点(5)(原告Bの中間収入の控除)証拠(甲59ないし72)及び弁論の全趣旨によれば、原告Bは、令和4年1 1月から他所で稼働して収入を得ていたことが認められる。そして、かかる収入 については、改正前民法536条2項後段により、中間収入として、原告Bが被告から支給を受けるべき賃金の額から控除することができるが、労基法26条により、その控除の範囲は平均賃金の4割を限度とするものと解される(最高裁昭和37年7月20日第二小法廷判決・民集16巻8号1656頁参照)。 上記4(1)イのとおり、原告Bの賃金は月額25万円であり、その4割に相当 する額は10万円である。そして、証拠(甲59ないし72)及び弁論の全趣旨によれば、原告Bは、令和4年11月から令和5年12月まで、毎月10万円以上の収入を得ていたことが認められるから、被告が原告Bに対して支払うべき賃金のうち、上記期間分については、毎月10万円が控除され、原告Bは、毎月15万円の賃金の支給を受ける権利を有する。 6 争点(6)(本件解雇1、2以前の原告らの令和3年冬季賞与の請求権の有無及び額)(1) 原告Aの賞与請求権について賞与は、それを支給するか否か、いくら支給するか る権利を有する。 6 争点(6)(本件解雇1、2以前の原告らの令和3年冬季賞与の請求権の有無及び額)(1) 原告Aの賞与請求権について賞与は、それを支給するか否か、いくら支給するかがもっぱら使用者の裁量に委ねられているときは、任意的恩恵的給付にすぎず、具体的権利性を欠くと ころ、被告の就業規則には職員に支給する給与については別に定める規程による旨定められ(前提事実(4))、被告の給与規程においても、賞与につき算定対象期間及び支給日が定められ、被告の業績等を勘案して支給する旨記載されているにとどまり(前提事実(5))、具体的な支給額又は算定基準は定められていないのであるから、賞与請求権は、被告が支給すべき金額を定めることにより 初めて具体的権利として発生する。 そして、証拠(甲20の3)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、原告Aに対し、令和3年12月23日、令和3年の冬季賞与の額は13万7000円である旨通知をしたことが認められ、これにより、被告は原告Aの令和3年冬季賞与の額を上記同額に定めたものというべきである。 この点、原告らは、被告においては基本給の3.6倍の額が令和3年の冬季 賞与として職員らに支給されたと主張するが、これを裏付ける証拠はない。その他、被告における令和3年の冬季賞与について、その算定基準や、原告Aにつき上記金額を超える金額が定められた事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって、原告Aは、被告に対し、令和3年の冬季賞与として、13万7000円を請求する具体的権利を有すると認められる。 なお、証拠(甲2、甲20の3)及び弁論の全趣旨によれば、かかる請求権の弁済期は、「冬期賞与手当支給計算書」作成日付である令和3年12月13日と認められる。 (2) 原告Bの賞与 られる。 なお、証拠(甲2、甲20の3)及び弁論の全趣旨によれば、かかる請求権の弁済期は、「冬期賞与手当支給計算書」作成日付である令和3年12月13日と認められる。 (2) 原告Bの賞与請求権について被告における令和3年の冬季賞与の算定基準を認めるに足りる証拠はない ことは上記のとおりである。また、証拠(甲20の3)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、原告Bに対し、令和3年12月23日、令和3年の冬季賞与の額は0円である旨通知をしたことが認められ、これにより、被告は原告Bの令和3年冬季賞与の額を上記同額に定めたものというべきである。 したがって、原告Bが、被告に対して、令和3年冬季賞与の請求権を有する とは認められない。 第4 結論よって、その余の点について判断するまでもなく、【原告Aの請求】は、①労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位の確認を求め、②改正前民法536条2項前段に基づき、本件解雇1の日の属する月の翌月である令和4年3月か ら本判決確定の日まで支払期日である毎月25日限り賃金30万6000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求め、③労働契約に基づき、令和3年の冬季賞与13万7000円及びこれに対する弁済期に翌日である令和3年12月14日から支払済みまで上記同旨の遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、 【原告Bの請求】は、①労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位の確 認を求め、②改正前民法536条2項前段に基づき、本件解雇2の日の属する月の翌月である令和4年3月から令和4年10月まで支払期日である毎月25日限り賃金25万円、令和4年11月から令和5年12月まで支払期日である毎月 法536条2項前段に基づき、本件解雇2の日の属する月の翌月である令和4年3月から令和4年10月まで支払期日である毎月25日限り賃金25万円、令和4年11月から令和5年12月まで支払期日である毎月25日限り賃金15万円(賃金月額25万円から中間収入10万円を控除した額)、令和6年1月から本判決確定の日まで支払期日である毎月25日限り賃金 25万円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで上記同旨の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限りにおいてこれらを認容し、原告らのその余の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法64条本文、61条を、仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 水戸地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官三上乃理子 裁判官西田祥平 裁判官田島敬太
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