平成15年6月27日判決言渡平成11年(行ウ)第34号所得税更正処分等取消請求事件平成13年(ワ)第15229号国家賠償請求事件判決原告 A被告雪谷税務署長被告国 主文 1 被告雪谷税務署長が、原告に対し、平成10年2月3日付け及び翌4日付けでした各重加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 2 原告の被告雪谷税務署長に対するその余の請求及び被告国に対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用のうち、原告と被告国との間で生じた分は全部原告の負担とし、原告と被告雪谷税務署長との間で生じた分は、これを5分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告雪谷税務署長が、原告に対し、平成10年2月4日付けでした原告の平成8年分の所得税に係る更正処分のうち、課税長期譲渡所得金額5572万6444円、納付すべき税額548万4600円を超える部分並びに同日付け及び同月3日付けでした重加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 2 被告国は、原告に対し、金2532万2900円及びこれに対する平成9年3月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 第2項につき仮執行宣言第2 事案の概要本件は、原告の平成8年分の所得税について、被告雪谷税務署長(以下「被告署長」という。)が平成10年2月3日付け重加算税賦課決定処分(以下「第1賦課決定処分」という。)及び翌4日付け更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び重加算税賦課決定処分(以下「第2賦課決定処分」という。)をしたのに対し、原告が、原告のした確定申告の内容が虚偽であったのは、依頼したB税理士(以下「B税理士」という。)が自己の利益のために原告を騙し、原告に無断で虚偽 以下「第2賦課決定処分」という。)をしたのに対し、原告が、原告のした確定申告の内容が虚偽であったのは、依頼したB税理士(以下「B税理士」という。)が自己の利益のために原告を騙し、原告に無断で虚偽の申告を行ったためであって、その後必要書類を添付して修正申告を行ったことにより、原告は租税特別措置法(平成10年法律第23号による改正前のもの。以下「措置法」という。)31条の3、35条1項に規定する「居住用資産の譲渡所得の特別控除」及び「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用が受けられるはずであり、また、原告自身が仮装隠蔽行為をしたものではないから重加算税の要件を充足せず、過少申告加算税・無申告加算税の要件も満たさないと主張して、前記更正処分のうち原告が前記修正申告を行った額を超える部分及び前記各重加算税賦課決定処分の取消しを求めるとともに、B税理士による仮装隠蔽行為には、被告国の職員である当時練馬東税務署のC資産課税部門統括国税調査官(以下「C統括官」という。)が協力をしていたものであり、同人がその職務を行うに際し守るべき注意義務に故意に違反したものであると旨を主張して、被告国に対し、国家賠償法1条に基づく金2532万2900円の損害賠償及びこれに対する不法行為日である平成9年3月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 1 法令の定め(1) 居住用財産の譲渡所得の特別控除(措置法35条)ア個人が、その居住の用に供している家屋で政令で定めるものの譲渡(当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してするもの等一定のものを除く。)又は当該家屋とともにするその敷地の用に供されている土地の譲渡等をした場合等には、当該個人がその年の前年又は前々年におい 当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してするもの等一定のものを除く。)又は当該家屋とともにするその敷地の用に供されている土地の譲渡等をした場合等には、当該個人がその年の前年又は前々年において既に措置法35条1項、36条の2、36条の5、又は36条の6の規定の適用を受けている場合を除き、これらの全部の資産の譲渡に対する措置法31条の規定の適用につき、同条1項に規定する長期譲渡所得の特別控除額は、同条4項の規定にかかわらず、3000万円(措置法35条1項2号の規定により読み替えられた措置法32条1項の規定の適用を受ける場合には、同項の規定により控除される金額を控除した金額)と当該資産の譲渡に係る長期譲渡所得の金額とのいずれか低い金額とされている(措置法35条1項1号)。 イ措置法35条1項の規定は、その適用を受けようとする者の同項に規定する資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨及び同項の規定に該当する事情の記載があり、かつ、当該譲渡による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他大蔵省令で定める書類の添附がある場合に限り、適用する(同条2項)。 ウ税務署長は、確定申告書の提出がなかった場合又は措置法35条2項の記載若しくは添附がない確定申告書の提出があった場合においても、その提出又は記載若しくは添附がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類並びに同項の明細書及び大蔵省令で定める書類の提出があった場合に限り、同条1項の規定を適用することができる(同条3項)。 (2) 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例(措置法31条の3)ア個人が、その有する土地等又は建物等でその年1月1日において措置法31条3項に規定する所有期間が10年を超えるもののうち居住 2) 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例(措置法31条の3)ア個人が、その有する土地等又は建物等でその年1月1日において措置法31条3項に規定する所有期間が10年を超えるもののうち居住用財産(当該個人がその居住の用に供している家屋で政令で定める者のうち国内にあるものなど、措置法31条の3第2項所定のもの)に該当するものの譲渡(当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してするもの及び所得税法58条の規定又は措置法31条の2、33条から33条の3まで、36条の2、36条の5から37条まで、37条の4、37条の5(同条5項1号を除く。)、37条の6、37条の7若しくは37条の9の2の規定の適用を受けるものを除く。)をした場合(当該個人がその年の前年又は前々年において既にこの項の規定の適用を受けている場合を除く。 )には、当該譲渡による譲渡所得については、措置法31条1項(同条2項の規定により適用される場合を含む。)の規定により当該譲渡に係る課税長期譲渡所得金額に対し課する所得税の額は、同条1項各号及び同条2項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額に相当する額とする(措置法31条の3第1項)。 1 課税長期譲渡所得金額が6000万円以下である場合当該課税長期譲渡所得金額の100分の10に相当する金額 2 課税長期譲渡所得金額が6000万円を超える場合次に掲げる金額の合計額イ 600万円ロ当該課税長期譲渡所得金額から6000万円を控除した金額の100分の15に相当する金額イ措置法31条の3第1項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、同項の規定に該当する旨を証する書類として大蔵省令で定 イ措置法31条の3第1項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、同項の規定に該当する旨を証する書類として大蔵省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する(同条3項)。 ウ税務署長は、確定申告書の提出がなかった場合又は措置法31条の3第3項の記載若しくは添付がない確定申告書の提出があった場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類並びに同項の大蔵省令で定める書類の提出があった場合に限り、同条1項の規定を適用することができる(同条4項)。 (以下、措置法31条の3第1項及び35条1項に規定された特例を併せて「本件各特例」という。) 2 前提となる事実等(認定根拠を掲記した以外の事実は、当事者間に争いがない。)(1) 原告(大正9年7月13日生)は、昭和47年9月ころ、昭和28年9月から所有していた東京都練馬区ab丁目c番dの土地(以下「本件土地」という。)上に建物(以下「本件建物」といい、本件土地と併せて以下「本件物件」という。)を建て、それ以降夫とともに同所に居住し、特に職には就いていなかったが、平成8年11月15日、(2)のとおり長男方の近くに転居するため、同日付け売買契約書により、株式会社タイセイハウスに対し、本件物件を9600万円で譲渡した。 (甲5、12ないし14、乙4、5)(2) 原告は、平成8年11月15日付け売買契約書をもって、東京都大田区ef丁目g番h-i号所在のマンションをその敷地の共有部分と共に合計5780万円で購入し、同年12月14日、同所に転居した(以下この物件を「本件買換物件」という。)。 (甲21、22、乙4、5)(3) 原告は、本件物件の譲渡 ンションをその敷地の共有部分と共に合計5780万円で購入し、同年12月14日、同所に転居した(以下この物件を「本件買換物件」という。)。 (甲21、22、乙4、5)(3) 原告は、本件物件の譲渡に係る所得税の確定申告手続を原告の夫であるD(大正5年10月25日。以下「D」という。)に依頼し、Dは、この手続について相談するため、長男E(以下「E」という。)の妻F(以下、「F」といい、Dと併せて「Dら」という。)と共に、当時税理士であったB(B税理士)の事務所を訪れた。 その結果、Dは原告の平成8年分の譲渡所得に係る所得税の確定申告手続をB税理士に委任することとし、その旨を原告に対し伝えた。 (4) B税理士は、平成9年3月5日、練馬東税務署長に対し、原告の平成8年分の所得税について、原告を代理して、虚偽の取得費等を記載した上、課税長期譲渡所得金額及び納付すべき税額をいずれも0円とする確定申告書(乙7)を提出するとともに(この申告を以下「本件確定申告」といい、本件確定申告に係る申告書を以下「本件確定申告書」という。)、本件物件を平成2年6月15日に合計1億0600万円で取得したとの虚偽の記載をした「譲渡内容についてのお尋ね」(以下「本件お尋ね文書」という。)と題する書面(乙8)をこれに添付して提出した。 (5) 東京国税局査察部は、平成9年10月21日、原告に対する臨場調査に着手した。 原告は、平成9年11月14日、被告署長に対し、原告の平成8年分の所得税について、分離長期譲渡所得金額5572万6444円、納付すべき税額548万4600円とする修正申告をした(この申告を以下「本件修正申告」といい、本件修正申告に係る申告書を以下「本件修正申告書」という。)。 (6) 被告署長は、平成10年2月3日、原告に対し、本件修正申告により新たに納 する修正申告をした(この申告を以下「本件修正申告」といい、本件修正申告に係る申告書を以下「本件修正申告書」という。)。 (6) 被告署長は、平成10年2月3日、原告に対し、本件修正申告により新たに納付すべきこととなった税額分に対する重加算税を191万8000円課する旨の賦課決定処分を行った(第1賦課決定処分)。 (7) 被告署長は、平成10年2月4日、原告に対し、課税長期譲渡所得金額を8472万6444円、納付すべき税額を1925万3800円とする旨の更正処分(本件更正処分)及び本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額分に対する重加算税を481万6000円課する旨の賦課決定処分を行った(第2賦課決定処分、以下、第1次賦課決定処分と併せて「本件各賦課決定処分」という。)。 (8) 原告は、平成10年2月9日、被告署長に対し、本件更正処分及び本件各賦課決定処分(これらの処分を併せて以下「本件各処分」という。)を不服として、異議申立てを行った。しかし、この異議申立てに対する決定がなされないまま、3か月が経過した。 (9) 原告は、国税通則法(以下「通則法」という。)75条5項に基づき、異議決定を経ないで、平成10年6月26日付けで、国税不服審判所長に対し、審査請求を行った。しかし、この審査請求に対する裁決がなされないまま、3か月が経過した。 (10) 原告は、通則法115条1項ただし書1号に基づき、裁決を経ないで、平成11年2月24日、当裁判所に対し、本件各処分の取消しを求める本件訴えを提起した。 (当裁判所に顕著な事実)(11) 国税不服審判所長は、平成12年3月8日、前記(9)記載の審査請求に対し、これを棄却する旨の裁決をした。 (弁論の全趣旨) 3 争点(1) 本件更正処分は違法であるか否か、具体的には、原告の平成8年分の所得 審判所長は、平成12年3月8日、前記(9)記載の審査請求に対し、これを棄却する旨の裁決をした。 (弁論の全趣旨) 3 争点(1) 本件更正処分は違法であるか否か、具体的には、原告の平成8年分の所得税につき、本件各特例の適用があるか否か。 (争点1)(2) 本件各賦課決定処分は違法か否か。 (争点2)(3) 原告の国家賠償請求の可否 (争点3) 4 当事者の主張(1) 争点1(原告の平成8年分の所得税につき、本件各特例の適用があるか否か)ア原告(ア) 原告のB税理士に対する依頼の内容aDらは、平成9年2月18日、居住用財産の譲渡に関する特別控除を受けることを前提にEが税金関係の本等を調べ納税額やその積算の内容等を記載したメモ(以下「Eメモ」という。)及び本件物件の登記簿謄本、権利証、売買契約書、転居前と後の住民票など一式書類のコピーを持参し、B税理士の事務所へ行った。 Eメモには、「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」との文字が記載され、当該特例に基づいた納税額算出の数式が記載されていた。 b 上記事務所において、Fは、B税理士に対し、Eメモを見せながら「主人がタックスアンサーなど聞いたりして一応試算してみたものの、書き方など初めてのことなので、税理士さんに正確な申告をお願いしたいのですが。」と話すと、B税理士は、「書類等を見せてくれ。」と言い、Dらが持参した書類等を見ながら計算機を使い計算した後、「ざっと計算して、だいたいこの位でしょう。」と話し、Eメモに加筆したり自ら計算したりしながら「この位になるでしょう。」と計算機に550万円と打ち出された数字を見せた。 そして、B税理士は、「550万円で税金はあがるでしょう。その他に10万円を手数料と モに加筆したり自ら計算したりしながら「この位になるでしょう。」と計算機に550万円と打ち出された数字を見せた。 そして、B税理士は、「550万円で税金はあがるでしょう。その他に10万円を手数料として事務員に渡してくれ、全部で560万円。」と言いながら、同税理士が作成したメモ(以下「Bメモ」という。)にその旨記載した。 cDらは、このような経緯の末、原告の平成8年分の所得税の確定申告手続についてB税理士に依頼することとし、「税金はどのように納めればよいか。」と聞いたところ、同税理士は、「なるべく早い方がいいから。」「印鑑を預けてくれ。」などと答えた。そこで、Dは、「早い方がいいなら、明日560万円持って来ます。」と述べた。 dDらは、翌日、再びEメモ及び一式書類を持参してB税理士の事務所を訪れ、前日話したとおり、同税理士に対し560万円を渡した。これに対し、同税理士は、550万円の預り証(以下「本件預り証」という。)を作成し、Dに交付した。 Dらは、Eメモ及び一式書類を同税理士の事務所に預け、Bメモを持ち帰った。 (イ) B税理士による本件確定申告の効力a 前記(ア)記載の経緯によれば、原告のB税理士に対する委任の内容は、以下のとおりであった。 ① 一式書類を前提に、居住用財産を譲渡し、居住用財産を取得した場合に、最も納税額が少なくなるような確定申告をすること② 納税額は550万円であり、その納付手続をB税理士が行うこと③ 確定申告の手続費用は10万円であることb したがって、B税理士が原告から与えられた確定申告に係る代理権の範囲は、前記a記載の内容のものに限定されていたのであり、それを超えた包括的な代理権等は与えられていなかった。 c しかるに、本件確定申告書及び本件お尋ね文書には、原告の住所、長期譲渡所得に係る所得の生ずる場所 a記載の内容のものに限定されていたのであり、それを超えた包括的な代理権等は与えられていなかった。 c しかるに、本件確定申告書及び本件お尋ね文書には、原告の住所、長期譲渡所得に係る所得の生ずる場所、必要経費、本件物件の購入先、購入価格、購入年月日及び購入代金等について全くの虚偽の事実が記載されていた。 dB税理士は、平成9年の確定申告が始まったころ、練馬東税務署資産税部門統括国税調査官のC統括官に対し、自分のところに譲渡所得の申告をすべきものが4、5件あり、これらについて「面倒を見てほしい」という申入れをしたところ、C統括官はこれを承諾した。 その後、C統括官は、積極的にB税理士と接触し、2、3度一緒に食事をしたり、コーヒーを飲んだりした。同税理士は、その都度C統括官に対し、同税理士が行う譲渡所得の申告をごまかすことへの協力を申し入れ、C統括官はこれを承諾していた。 平成9年3月5日、B税理士は、本件確定申告書及び本件お尋ね文書を他の数件の確定申告書と共にC統括官の下に持参した。 C統括官は、B税理士を自己の席のところに待たせたまま、これらの申告書等を受付に持っていき、収受印を押して席に戻り、B税理士に本件確定申告書の控えを交付した。そして、原告名義の確定申告書表面の検算欄に「C」の印を押し、さらに裏面の分離長期譲渡所得記載欄の欄外に「C」の印を押した。 このやり方は、税務署内部において、納税者が納税相談を受け、税務署員が行った計算金額で納税者が申告した場合に採られるやり方であり、しかも、C統括官は資産税部門の統括国税調査官であるから、他の税務署員がたやすく申告内容に疑問を持つようなことはないのである。つまり、C統括官は、B税理士が持参した原告名義の確定申告書が内容虚偽のものであることを承知しており、かつ原告名義の確定申告が虚偽 の税務署員がたやすく申告内容に疑問を持つようなことはないのである。つまり、C統括官は、B税理士が持参した原告名義の確定申告書が内容虚偽のものであることを承知しており、かつ原告名義の確定申告が虚偽であることが簡単には発見されないような手段を採ったのであり、B税理士の虚偽の記載内容の申告行為に積極的に荷担したものである。 e 以上のとおり、本件確定申告手続は、B税理士に与えられた代理権を逸脱した無権代理行為であり、無効である。 また、仮に代理権を逸脱していないとしても、B税理士は、与えられた代理権を濫用したものであり、被告らの下僚であるC統括官がそれを知っていたから、民法93条ただし書の類推適用により、本件確定申告は無効というべきである。 したがって、B税理士の本件確定申告行為の効力は、原告には及ばないものである。なお、確定申告行為に対しては、表見代理の適用はない。 (ウ) 本件修正申告の効力について以上述べたとおり、B税理士によってされた本件確定申告は無効と解すべきであり、本件修正申告書の提出をもって、原告の真意に基づく原告の平成8年分の所得税の確定申告行為があったものと考えるべきである。 (エ) 本件各特例の適用の可否についてしかして、原告は、本件修正申告書において、措置法31条の3及び35条の適用を受けようとする旨記載し、かつ、同法31条の3第4項及び同施行規則13条の4各号、同法35条2項及び同法施行規則18条の2が規定する書類を提出しているのであるから、原告につき、本件各特例の適用があるというべきである。 仮に、本件確定申告が有効であるとしても、措置法31条の3第4項、同法35条3項にいう「やむを得ない事情」とは、自らの影響を及ぼすことの出来ないいわば不可抗力と同視できるような事情をいうものと解されるところ、Dらは居住用財 であるとしても、措置法31条の3第4項、同法35条3項にいう「やむを得ない事情」とは、自らの影響を及ぼすことの出来ないいわば不可抗力と同視できるような事情をいうものと解されるところ、Dらは居住用財産の譲渡に関する特別控除の適用を受けることを前提にBに対する依頼をしたが、その後B税理士及び練馬東税務署内における共謀者が原告の意思等と全く無関係に本件確定申告を行ったもので、原告にはその防止措置を講ずることが不可能であったから、原告につき、上記「やむを得ない事情」があったというべきである。 (オ) 結論そうすると、原告の平成8年分の所得税については、本件各特例が適用になるから、これを基に計算すると、原告の課税長期譲渡所得金額は5572万6444円、納付すべき税額は548万4600円となる。 したがって、本件更正処分のうち、これを超える部分は違法である。 イ被告署長(ア) 本件確定申告に至る経緯等aDは、原告から確定申告書の作成等を任されていたところ、平成9年2月ころ、雪谷税務署に相談に行き、税額が800万円程度であると言われたほか、Eからも所得税及び都民税・区民税を併せて800万円程度となる旨の説明を受けたが、計算方法や申告書の記載方法が分からなかったので、Fの母親が確定申告を依頼しているB税理士に相談することとなった。 bDらは、平成9年2月18日、本件物件の売買契約書及び譲渡費用に係る領収書、原告が購入した本件買換物件の契約書及び権利証などの写し並びにEメモを持参して、B税理士事務所に行き、同税理士に対し、本件物件の譲渡に係る原告の税金の申告の件で来訪した旨を伝え、持参した各書類を見せながら、その内容を説明した。 B税理士は、Dらに対し、Eメモに記載された税額である804万円について、「大体、そんなものでしょう。」と述べ、自 金の申告の件で来訪した旨を伝え、持参した各書類を見せながら、その内容を説明した。 B税理士は、Dらに対し、Eメモに記載された税額である804万円について、「大体、そんなものでしょう。」と述べ、自らBメモを作成し、本件物件の譲渡に係る税金が、国税と地方税の合計で806万円となることを説明した。 その後、B税理士は、「実は、税務署に知っている人がいるので、これだけ私にくれれば何とかうまくやってあげますから」、「正しい税金高は806万円ですよ。ただし、私が、役所にも勤めていましたし、話せばできるから。」などと述べ、同税理士が、以前税務署に勤めていて、税務署に知合いがいるから、国税と地方税とを併せた額が正しくは806万円かかるところ550万円で済ませてあげる旨告げた。 さらに、B税理士は、Dらに対して、上記550万円の金額に同税理士に対する手数料を含むことを告げるとともに、この550万円とは別に事務員に対し10万円のお礼をしてほしい旨要請した。 Dは、本来約800万円税金がかかるところ、手数料込みで550万円で済むという話を聞いてうれしくなったが、B税理士がいったん806万円という数字を出しておきながら、550万円で済ませるというのは不自然で、何か不正の方法を使うのかなという不安もあった。しかし、税金が安くなるならそれでいいと思い、同税理士に確定申告書を作成して提出してもらうことを頼むこととした。 cDは、自宅に戻り、原告に「800万円かかるけど、550万円と、あと事務員さんに10万円お礼をすれば、それでいいんだってさ。」と言って、本来なら国税と地方税とを併せて800万円かかるところをB税理士に550万円と事務員に謝礼分として10万円渡せば、それで済むという話をしたところ、原告は「ああ、そう良かったね。」と言った。 d その翌日、Dは、 と地方税とを併せて800万円かかるところをB税理士に550万円と事務員に謝礼分として10万円渡せば、それで済むという話をしたところ、原告は「ああ、そう良かったね。」と言った。 d その翌日、Dは、Fとともに、銀行の封筒に入れた550万円とお祝い用の封筒に入れた事務員への謝礼10万円とをB税理士の事務所に持参し、同税理士に渡したところ、同税理士は、それを受け取り、「分かりました。これで引き受けました。私は、元税務署に勤めていて、後輩を知っているから安心して任せなさい。今後、大丈夫ですが、もし税務署から何か言ってきたら、私にすぐ連絡してください。」と言い、さらに、都民税及び区民税に関するDの質問にも、同税理士は「それも、全部面倒見ますから任せなさい。」と言って、書類作成に必要な印鑑を貸すよう求めた。Dは、同税理士に「A」の印鑑を預け、上記550万円のみについて本件預り証の交付を受けた。 B税理士は、550万円の受領に際し、Dに「領収書」を交付せずに本件預り証を交付したが、それは、もし後で原告が損害を受けたときには、この金員を返還する場合もあるためであり、また、10万円の謝礼については、同税理士が受領すべきものではなく、事務員に対するものであることから、この受領に係る領収書等は交付しなかった。 eDは、B税理士には550万円でいいといわれたものの、あまりにも金額が少ないことから、「おかしいな」と思いながら帰宅したところ、区民税の申告書が自宅に置いてあり、これを出さないから、B税理士が550万円と勘違いしているのではないかと思い、すぐにそれを持参して、B税理士事務所に赴き、事務員にそれを渡した。すると、その事務員は、これは昼間のものと別でありさらに3万円が必要であると述べたので、Dはその事務員に3万円を渡したが、その3万円が税金であるのか て、B税理士事務所に赴き、事務員にそれを渡した。すると、その事務員は、これは昼間のものと別でありさらに3万円が必要であると述べたので、Dはその事務員に3万円を渡したが、その3万円が税金であるのかどうかの確認はしなかった。 fB税理士は、もともと正規の税額が約800万円という計算をしておきながら、550万円以内の納税しかせずに済まそうというのであるから、これがいわゆる脱税行為であることは明らかであって、そのことはDも当然承知しているものと認識し、また、原告自身もDから依頼状況を聞くことによってこれが脱税であることを分かるものと認識していた。 そして、B税理士は、架空の必要経費を計上し、申告所得税を0円とした内容虚偽の本件確定申告書及び本件お尋ね文書を作成して練馬東税務署長に提出し、原告が本来納めなければならない譲渡所得税の納付を免れさせた。 (イ) 本件確定申告の効力についてDらは、B税理士に依頼をする前から、本件物件の譲渡に係る税金の額が国税と地方税とを併せて800万円程度になることを十分に認識しており、同税理士に対する相談の際にも、正しい税金の額が806万円であることをいったんは告げられながらも、税務署に知合いがいるなどという不合理な理由によって、550万円で申告手続をうまくやってあげる旨の不正申告の誘いを受け、何ら550万円についての算定根拠等につき具体的な説明等を受けることも、依頼内容に何らの限定を付することもしないままに、この誘いに安易に乗って、同税理士に申告を依頼したものであって、Dらは、本件物件の譲渡に係る申告手続の一切を同税理士に任せたものというほかなく、また、原告自身も、これらの経緯をDから報告を受けて知っていたのである。 このことは、原告において、申告手続を依頼してから8か月以上も経過した平成9年10月21日 理士に任せたものというほかなく、また、原告自身も、これらの経緯をDから報告を受けて知っていたのである。 このことは、原告において、申告手続を依頼してから8か月以上も経過した平成9年10月21日に行われた国税局査察部の調査があるまで、同税理士に対して本件確定申告書の控えや納税に係る領収書(領収済通知書等)等の交付を要求せず、また、申告について税務署に問い合わせることもしないで放置していたことに照らしても明らかである。 (ウ) 本件各特例の適用についてa 原告は、①本件確定申告は無効であり、本件修正申告書の提出をもって、原告の真意に基づく原告の平成8年分の所得税の確定申告行為があったものと考えるべきところ、本件修正申告書において、必要事項を記載し、かつ、所定の書類を提出をしているから、原告につき、本件各特例の適用があるというべきである、②仮に、本件確定申告が原告の申告として無効でないとしても、原告には措置法31条の3第4項及び同法35条3項に規定する「やむを得ない事情」があるから、本件各特例が認められるべきである旨主張する。 b しかしながら、前記のとおり、原告のB税理士に対する本件確定申告の依頼は、Dらが同税理士から正しい税金の額が806万円であることをいったんは告げられながらも、算定根拠等を何ら示すこともせずに550万円で申告手続をうまくやってあげる旨の同税理士からの不正申告の誘いを受け、それに対し何らの限定を付することもしないまま、この誘いに安易に乗って、申告手続の一切を同税理士に任せっぱなしにしたものであるから、本件確定申告が原告のあずかり知らぬところで同税理士によってなされたものであるなどとする原告の主張は全く根拠のないものである。 しかも、原告が、申告手続を依頼してから8か月以上も経過した国税局査察部の調査があるまで、同 かり知らぬところで同税理士によってなされたものであるなどとする原告の主張は全く根拠のないものである。 しかも、原告が、申告手続を依頼してから8か月以上も経過した国税局査察部の調査があるまで、同税理士に対し本件確定申告書の控えや納税に係る領収書等の交付を要求したり、申告について税務署に問い合わせることもしないで放置していたことをも併せ考えると、本件確定申告行為に関する原告の管理・監督に不十分性等がないなどとは到底認められない。 そうすると、本件において、「やむを得ない事情」はなく、本件修正申告において本件各特例に係る要件が具備していたとしても、その申告により本件各特例の適用を認める余地はないというべきである。 (エ) 本件処分の適法性について被告署長が本訴において主張する原告の平成8年分の課税長期譲渡所得金額及び納付すべき税額並びにその算定根拠は別紙記載のとおりであるところ、本件更正処分はこれと同額であるから、本件更正処分は適法である。 (2) 争点2(本件各賦課決定処分は違法か否か)についてア被告署長(ア) 本件各賦課決定処分の適法性についてa 争点1(被告署長の主張)で述べたとおり、本件確定申告は、Dらが、550万円で申告手続をうまくやってあげる旨のB税理士からの不正申告の誘いに安易に乗り、同税理士に原告の申告手続の一切を任せっぱなしにすることによってされたものにほかならず、他方、上記依頼を受けた同税理士においても、D及び原告が不正申告を行うものであることを承知の上で自分に申告手続の一切を任せたものと認識し、同税理士が申告所得税額を0円とする虚偽の本件確定申告書及び本件お尋ね文書を練馬東税務署長に提出して、原告が本来納めるべき所得税を免れさせたものであり、この虚偽記載等の事実が通則法68条1項に規定する「その国税の課税標 を0円とする虚偽の本件確定申告書及び本件お尋ね文書を練馬東税務署長に提出して、原告が本来納めるべき所得税を免れさせたものであり、この虚偽記載等の事実が通則法68条1項に規定する「その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当することは明らかである。 b したがって、被告署長は、通則法68条1項の規定に基づき、過少申告加算税に代えて、本件修正申告により原告が新たに納付すべきこととなった所得税額548万円(通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に100分の35の割合を乗じて算出した金額191万8000円を重加算税の額として第1賦課決定処分をしたものであるから、同処分は適法である。 また、被告署長は、通則法68条1項の規定に基づき、過少申告加算税に代えて、本件更正処分により原告が新たに納付すべきこととなる所得税額1376万円(通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に100分の35の割合を乗じて算出した金額481万6000円を重加算税の額として第2賦課決定処分をしたものであるから、同処分は適法である。 (イ) 原告の主張に対する反論a 原告は、B税理士に対して確定申告手続を依頼したとの一事をもって、本件各賦課決定処分が適法であるとの結論は導かれない旨主張する。原告のこの主張は、確定申告手続の依頼者が不正申告をおよそ認識していなかったような場合を前提とするもののようであるが、仮に、このような場合であったしても、次に述べるとおり、原告の依頼のもとにされた申告の効果は原告に帰属するとともに、本件確定申告に仮装・隠ぺいがある以上、本件各賦課決定処分は適法である。 す るが、仮に、このような場合であったしても、次に述べるとおり、原告の依頼のもとにされた申告の効果は原告に帰属するとともに、本件確定申告に仮装・隠ぺいがある以上、本件各賦課決定処分は適法である。 すなわち、納税者は、納税申告手続を自らの判断と責任において、第三者にゆだね、納税者に代わって行わせることが許されているものであるが、納税者が自らの判断と責任において第三者を選任し、申告手続を委任した以上、第三者が納税者に代わって行った申告行為は、納税者が行ったのと同様に扱われるものであるから、これに付随する重加算税の責任も、納税者が不適正な申告について認識していたか否かにかかわらず、当然負うべきものと解されるのである。 したがって、原告が自己の判断と責任により、B税理士に対し申告・納税手続を委任し、その委任の下に同税理士によって不正な本件確定申告が行われたものである以上、これによって生ずる責任を原告が負うことは当然のことである。 b なお、仮に、納税者が自らの判断と責任において第三者を選任し、申告手続を委任した以上、第三者が、納税者に代わって行った申告行為は、納税者が行ったと同様に扱われるものであるから、これに付随する重加算税の責任も、納税者が不適正な申告について認識していたか否かにかかわらず、当然負うべきであるとの立場に立ち得ないとしても、本件において、Dは、いったん正しい税額が806万円であることを示されながら、税務署に知合いがいるからなどという不合理な理由により、550万円で申告手続をうまくやってあげる旨のB税理士の誘いに乗り、550万円となる根拠やこの金額のうちに含まれる同税理士の手数料の額、国税及び地方税の各金額を確認することもなく、申告手続の一切を任せたものであり、D自身税額が安すぎるのではないかと不安になって再び同税理士事務所に区 やこの金額のうちに含まれる同税理士の手数料の額、国税及び地方税の各金額を確認することもなく、申告手続の一切を任せたものであり、D自身税額が安すぎるのではないかと不安になって再び同税理士事務所に区民税の申告書を持参したというのに、そこでも趣旨不明の3万円を支払ったにすぎず、800万円と550万円との差額である250万円もの違いについては、結局確認することなく済ませ、原告及びDは、依頼から8か月以上も経過した査察部の調査があるまで、同税理士に対し本件確定申告書の控えや納税に係る領収書等の交付を全く要求することも、申告について税務署に問い合わせることもせずに放置しているのであって、原告には、同税理士の選任、監督について、極めて重大な落ち度があったというほかないのである。 原告は、専門家である税理士に依頼したことを強調するが、依頼相手が税理士であったとしても、本件各賦課決定処分の適法性に何ら影響を及ぼすものではない。 c ところで、原告は、本件確定申告行為の効力が原告には及ばないことを前提に、本件修正申告書の提出をもって原告の真意に基づく確定申告行為があったと解すべきであるとした上、本件修正申告書が法定申告期限後に提出されているとしても、本件確定申告が期限までに提出できなかったことについて、通則法66条1項ただし書に規定する「正当な理由」があるから、原告に対し無申告加算税も課されない旨主張する。 しかしながら、前記(2)イで述べたとおり、本件確定申告が原告の申告として有効であり、原告にその効力が及ぶことは明らかである以上、本件修正申告書の提出を確定申告行為と解する余地はなく、これを前提として無申告加算税の是非を論ずること自体失当である。 イ原告(ア) 争点1(原告の主張)で述べたとおり、本件確定申告は無効と解すべきであり、本件修正申 定申告行為と解する余地はなく、これを前提として無申告加算税の是非を論ずること自体失当である。 イ原告(ア) 争点1(原告の主張)で述べたとおり、本件確定申告は無効と解すべきであり、本件修正申告書の提出をもって、原告の真意に基づく平成8年分の所得税の確定申告行為があったものとみるべきである。 (イ) このように解した場合、本件修正申告書が申告期限後である平成9年11月14日に提出されているところから、原告に対し無申告加算税が課されるのではないかが問題となる。 しかしながら、①税理士は大蔵大臣(現財務大臣。以下同じ。)、国税庁長官の強い監督下にあること、②B税理士は税務署のOBであり、申告時期には税務署に応援に行くなど税務署と密接な関係にあり、原告ら一般納税者が信頼すべき事情があったし、本件確定申告当時、原告は別件に関して東京国税局査察部から調査を受けていたにもかかわらず、このような事情は全く原告ら一般納税者の知り得る立場になかったこと、③本件がB税理士による詐欺事案として評価されるべきものであること、④本件確定申告行為は無権代理行為としてその効力が原告に対して及ばないこと、⑤原告にとって、平成9年10月末に国税局からの調査が入るまで本件確定申告が問題視されていることを全く知り得なかったことを考えると、原告がB税理士に平成8年分の所得税の確定申告手続を委任したことをもって法定申告期限内に適切な確定申告がされたと確信し、法定申告期限内に修正申告書を提出できなかったことには、無理からぬ事情があり、通則法66条1項ただし書が適用されるべきである。 (ウ) 仮に、B税理士による本件確定申告が有効であるとしても、以下に述べるとおり、本件確定申告はB税理士が自身の利益のみを目的として、原告と無関係に行ったものであり、原告には仮装・隠蔽の故意はな (ウ) 仮に、B税理士による本件確定申告が有効であるとしても、以下に述べるとおり、本件確定申告はB税理士が自身の利益のみを目的として、原告と無関係に行ったものであり、原告には仮装・隠蔽の故意はなく、また、原告には代理人の選任・監督にも過失がないから、通則法68条は適用されるべきではなく、本件各賦課決定処分は違法というべきである。 a 通則法68条1項は、所得税法238条1項が違反行為の主体を納税者自身としていることと同様、重加算税が課されるのは、仮装隠ぺい行為の主体が納税者自身である場合であることを明示しているところ、納税者である原告自身にB税理士又はDとの所得税法238条1項違反について共謀がないのであるから、原告に通則法68条を適用するのは誤りである。 b 仮に、原則として納税者本人に故意がない場合でも重加算税を課することができ、代理人の選任監督について納税者に過失がないとか、納税者が正当な税額の納税をする意思でそれに相当する額の金銭を受任者に現実に交付したのに受任者がこれを着服横領して自分の利益を図ったという特段の事情がある場合には、例外的に重加算税を課することは相当でないとの見解を採るとしても、本件の場合、原告はDを通じて税務の専門家である税理士に申告を依頼しており、税理士が不正申告をするということはおよそ予測不可能であるから、原告にはB税理士の選任監督について過失はなく、しかも、B税理士は不正な申告をして、560万円を騙取しこれを利得しているのであるから、これらの点からみて上記見解のいう特段の事情があるというべきである。 なお、被告署長は、原告がB税理士に対して確定申告書の控えを要求しないこと等を捉えて、原告の過失を主張するが、本件はB税理士による詐欺事案であり、同税理士は、ほとんどの案件について、確定申告書の控えを事務 被告署長は、原告がB税理士に対して確定申告書の控えを要求しないこと等を捉えて、原告の過失を主張するが、本件はB税理士による詐欺事案であり、同税理士は、ほとんどの案件について、確定申告書の控えを事務所で保管していたというのであるから、仮にDらが本件確定申告書の控えの交付を求めたとしても、同税理士がこれを交付していたとは考え難く、Dらがその交付を求めなかった点を捉えて同税理士に対する監督の過失とみることは、実態を無視した議論にすぎない。 (エ) 仮に、Dが不正申告の認識があったとしても、B税理士が税額0円という申告をしたのに対し、Dは正当税額約800万円と550万円の差額約250万円を脱税するという認識しかないから、約550万円の脱税については責任を負わないというべきである。 ところで、約800万円という税額はあくまでも国税と地方税とを併せた税額であり、550万円という税額も国税と地方税とを併せたものであるから、Dの認識も、国税と地方税とを併せて約250万円を脱税するという認識ということになる。しかしながら、課税処分取消訴訟において、課税要件事実及び課税標準については被告署長である課税庁が立証責任を負うとされているところ、約250万円の脱税額のうち、国税がいくらであるかについて被告署長の立証はないから、結局、この部分についても、原告に対し重加算税を課すことはできないはずである。 3 争点3(原告の国家賠償請求の可否)についてア原告(ア) C統括官による違法行為aC統括官は、平成9年3月5日当時、練馬東税務署の資産課税部門統括国税調査官として、土地・建物等の譲渡所得税に関する納税者からの相談に応じ、また、土地・建物等の譲渡所得税の申告が適正にされるよう指導し、適正にされたか否かを調査する職務を行っていたものである。 bB税理士は、 て、土地・建物等の譲渡所得税に関する納税者からの相談に応じ、また、土地・建物等の譲渡所得税の申告が適正にされるよう指導し、適正にされたか否かを調査する職務を行っていたものである。 bB税理士は、昭和49年ころから、いずれも税務職員であるG、H、Iに対し、賄賂を送り脱税工作を行っていた。その態様は、いずれも、B税理士が虚偽の取得費、譲渡費用を架空計上し譲渡損失が発生したかのように仮装した所得税の確定申告書を作成してGらに提出し、Gらは受領した所得税の確定申告書あるいはその他の課税資料を隠ぺいするというものであった。ところが、このような方法による脱税及び贈収賄について、平成8年12月ころから東京国税局査察部の調査を受けるようになったので、B税理士は、Iらに協力を求めることを断念し、不正申告に協力してくれそうなC統括官に話を持ち込むことにした。 c そして、上記第2、4(1)ア(イ)d記載のとおり、C統括官は、上記(ア)の職責にあるにもかかわらず、B税理士からの請託を受けて、上記確定申告書を虚偽であることを知りながら受領し、確定申告書の検算欄や裏面の分離長期譲渡所得記載の欄外に自己の押印をして適正な確定申告書であるかのような体裁を整えるなどして、虚偽の記載のある確定申告書を虚偽であることを知りながら受け取り、適正な確定申告書であるかのごとき体裁を整え、虚偽の確定申告書であることが簡単には発見できない手段を講じたのである。 (イ) 違法行為の存在を基礎付ける事実a 本件申告書及び納税相談の特異性本件申告書には、虚偽の住所が記載され、また、電話番号や作成税理士欄の記載がないなど、申告審理や調査を行えば容易に虚偽であることが判明するであろう記載がされており、また、譲渡収入が9600万円と高額であり、調査対象に選定されることが明らかなものであ や作成税理士欄の記載がないなど、申告審理や調査を行えば容易に虚偽であることが判明するであろう記載がされており、また、譲渡収入が9600万円と高額であり、調査対象に選定されることが明らかなものであり、にもかかわらず、B税理士がこのような申告書を提出したことは、C統括官がB税理士と意を通じていたことを基礎付ける事実といえる。 また、何らの共謀がないのであれば、B税理士は、申告書を持参した際、収受事務担当職員に確定申告書を提出すれば足りるし、C統括官としても、資産税部門の収受印を押し、収受をすれば足りるものである。資産税部門の統括官が自ら納税相談を担当することは通常あり得ないし、税務署では、確定申告期には管内の税理士にも応援を求め納税相談を行っているのに、本件での被告の主張によれば、税理士の申告のためにわざわざ統括官が納税相談をしたことになり、繁忙期にそのようなばかげたことをするはずがない。さらに、本件申告書には、作成税理士名の記載がなく、しかも、Cの押印があるということは、Cが通常の確定申告における納税相談を受けた上で、申告書が作成されたという外形を作出したものと考えられる。 b 申告審理の不自然さ本件では、練馬東税務署資産課税第2部門のJ統括国税調査官(以下「J統括官」という。)が申告審理を行っているところ、申告相談事務等の整理チェックシートによれば、本件は、照会等を行うべき事案であったにもかかわらず、J統括官は、申告審理において調査対象としない旨の判断をしており、その理由は不明であるが、同統括官が、C統括官により既に譲渡所得の計算が行われていると誤信していたならば、上記のような判断をする可能性もあり得ると思料される。 cB税理士の供述内容B税理士の証言によれば、B税理士とC統括官は、平成9年の2月ころから2、3度会い、B税理 ていると誤信していたならば、上記のような判断をする可能性もあり得ると思料される。 cB税理士の供述内容B税理士の証言によれば、B税理士とC統括官は、平成9年の2月ころから2、3度会い、B税理士が「4、5件あるから面倒みてくれますか」との申入れをしたのに対し、C統括官が「いいよ」と返答し、脱税を認める旨の返答をしたため、虚偽内容の本件確定申告書及び本件お尋ね文書を練馬東税務署のC統括官の下に直接持参した事実が認められる。 dC統括官の証言(以下「C証言」という。)の信用性C証言は、自らが立川税務署時代に関与したKと称する者の申告に係る事案(以下「K事案」という。)について、脱税にB税理士が深く関与しているとは思わなかったとする点で措信し難いものであるし、B税理士との面談の場所が喫茶店であることや、話の内容等において不自然なものであって、これを採用することはできないというべきである。 (ウ) 損害原告は、本件訴訟において本件更正処分のうち総所得金額5572万6444円、税額548万4600円を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求めているところ、仮に、被告署長に対する上記請求が認められない場合には、C統括官の故意によるその職務上違法な行為によって、原告には既に支払済みの所得税本税等を含め、下記の各損害が発生する。 合計 2532万2900円所得税本税 1376万9200円延滞税分 123万9900円重加算税分 673万4000円住民税 357万9800円(エ) 小括したがって、被告国は、被告国の職員であるC統括官がその職務を行うに際して守るべき注意義務に故意に反したことによって生じた上記損害につき、国家賠償法1条に基づき、賠償する義務を負うものである。 イ したがって、被告国は、被告国の職員であるC統括官がその職務を行うに際して守るべき注意義務に故意に反したことによって生じた上記損害につき、国家賠償法1条に基づき、賠償する義務を負うものである。 イ被告国(ア) C統括官の不正行為の不存在aC統括官は、B税理士の提出した確定申告書が虚偽のものであるとの認識は全く有していなかったものであるし、B税理士に協力して、原告の不正申告の発覚を免れさせる意図もなかった。同人の行為は、確定申告書の収受手続に伴い通常行われるものにすぎず、原告及びB税理士の行った不正申告行為の発覚を免れさせるような効果を持つ余地はない。 C統括官は、B税理士の関与した脱税に係る刑事事件において、逮捕はもとより、被疑者として立件さえされておらず、何らの処分も受けていない。C統括官が何らかの関与をしていたのであれば、当然、上記刑事事件の捜査の過程で明らかになっていたはずであり、違法な行為をしたとする根拠が何ら見いだせなかったからこそ、同人は処分を受けなかったのである。 b 本件確定申告書における各押印の意味確定申告書一面(表面)には、所得金額のほか、所得控除額、課税所得金額、源泉徴収税額、納付すべき税額等が記載されることとなるが、納税相談を担当した職員は、これらの計算過程の数額に誤りがないことを確認(検算)する。検算は、納税者が持参した関係資料に基づき、一面の数額が記載され、一面の数額はコンピューター処理の入力項目となっていることから、一面の計算過程に誤りがあれば入力処理ができないため、納税相談担当者は、納税相談を了した時点で、検算欄に押印することにより、申告書記載の数額をそのまま入力することが可能であることを、後のコンピューター処理の入力担当者に知らせるのである。つまり、検算欄は、上記の確認が済んでいることや検算 で、検算欄に押印することにより、申告書記載の数額をそのまま入力することが可能であることを、後のコンピューター処理の入力担当者に知らせるのである。つまり、検算欄は、上記の確認が済んでいることや検算をした職員が誰かといったことを後の入力担当者に知らしめる意味を持つものにすぎないのであり、所得金額が真正であるとか、後の税務調査は必要ない旨を確認済であるということを意味するものではない。 そして、納税相談を了した場合、相談を担当した職員は、事前に物件を譲り受けたものから提出される法定調書や、税務署が同時に収集した不動産登記資料等に基づき作成される「譲渡所得〔納税相談・申告審理〕事績書」に、譲渡内容についてのお尋ね(以下「お尋ね文書」という。)に記載されている譲渡価額や取得費の額等の金額を転記するとともに、確定申告書二面(裏面)の譲渡所得欄の欄外に押印することにより、自身が相談を担当した旨及びお尋ね文書から所定の金額等を事績書に転記した旨を明らかにし、確定申告期間終了後に税務調査を担当する職員が行う申告審理の際に、相談を担当した職員が誰であるかが判別できるようにすることとなっている。 c 申告審理事務申告審理事務とは、申告内容が正しいか否かを部内の資料等とも対象の上、調査の要否を検討する事務であり、譲渡所得に係る確定申告書を提出した納税者ごとに、事績書と整理票が合体された上で行われる。そして、当該事務は、資産課税部門の調査を担当する職員及び調査を担当する統括官により行われ、調査対象とすべきか否かの判断結果について調査担当統括官の決裁を受けることとなる。 d 不正申告に対する協力行為がないこと以上によれば、C統括官は、練馬東税務署に来署したB税理士から原告分を含む3件の確定申告書に納税相談を受け、確定申告書の記載事項がすべて記載されてい なる。 d 不正申告に対する協力行為がないこと以上によれば、C統括官は、練馬東税務署に来署したB税理士から原告分を含む3件の確定申告書に納税相談を受け、確定申告書の記載事項がすべて記載されているか、金額が正確か、添付書類が添付されているかといった形式的な事項を確認し、これらの確定申告書が提出可能な状態になっていることを確認し、これを収受した。そして、確定申告書に記載された内容に間違いがなかったことから、検算の上、一面の納付すべき税額までの計算過程は正しいこと、自らが確認したことを明らかにする意味で検算欄に押印し、収受した確定申告書の内容に従い事績書に所定事項を記載し、二面の欄外に押印をしたにすぎない。 そして、本件の申告審理は、担当統括官である練馬東税務署資産課税第二部門のJ統括官が行い、C統括官は、この審理に何ら関与していない。すなわち、C統括官の押印行為は、「適正な確定申告書であるかのごとき体裁を整え、虚偽の確定申告書であることが簡単には発見できない手段を講じた」などと評価されるものではないし、調査担当統括官でない以上、その権限で税務調査の対象から外すなどといったことも不可能なのである。 e 譲渡所得における調査の頻度等について譲渡所得は、事業者の事業所得や法人の所得と異なり、継続性ないし連続性は一般に予定されていない。それ故、譲渡所得における調査は、その年中の限られた期間(正味2ヶ月間くらいである)にしか行われておらず、しかも資産課税部門の調査担当の職員数も少人数であり、さらに、同部門においては相続税の調査も担当しているという事情から、その調査割合は極めて低率であり、平成12年事務年度(平成12年7月から平成13年6月まで)の東京国税局管内全署における調査割合は約1.7パーセントである。とすると、本件申告書の提出の事実のみ から、その調査割合は極めて低率であり、平成12年事務年度(平成12年7月から平成13年6月まで)の東京国税局管内全署における調査割合は約1.7パーセントである。とすると、本件申告書の提出の事実のみから、税務署内に協力者がいたのではないかとの推論をすることは経験則に反するものといわざるを得ない。 (イ) B供述の信用性B税理士の刑事事件における供述中にも、C統括官との間で不正申告に関する具体的な交渉が存在していなかったことが前提とされており、しかも、その交渉の結果、C統括官が現実に隠ぺい工作を行うかどうかさえ確信を持っていなかったことをうかがわせる部分がある。そして、本件の証人尋問においては、「4、5件あるから面倒みてくれますか」と要請をしたかのような証言をするが、その要請の内容は明らかではないし、C統括官との会話の内容も具体的な内容は不明なままである。そして、同尋問においては、C統括官への見返りについては全く話をしていないと述べており、C統括官は、見返りなく重大な犯罪行為に関したこととなり、全く不自然と言わざるを得ない。 第3 当裁判所の判断 1 原告及びDらの脱税の意思の有無(1) 証拠(甲5、7ないし14、20、28ないし34、乙1、2、4ないし6、証人D、同F及び同B(ただし、後記認定に反する部分は採用しない。))及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。 ア B税理士への委任の経緯(ア) D(当時81歳)は、原告から原告の確定申告の作成等を任されていたところ、確定申告時期が近づいた平成9年2月ころ、本件物件の譲渡に係る所得税に関し、税額の計算方法や申告書の作成方法について雪谷税務署に相談に行ったが、その際、税務署職員から、原告の上記譲渡に係る税額が800万円程度であると言われた 年2月ころ、本件物件の譲渡に係る所得税に関し、税額の計算方法や申告書の作成方法について雪谷税務署に相談に行ったが、その際、税務署職員から、原告の上記譲渡に係る税額が800万円程度であると言われた。 Dは、以前から練馬区の区民相談などを通じて、税額が800万円程度となることは分かっていたので、税務署職員の示した税額について、特に高いとか安いとかいった印象は持たなかった。 (イ) Dは、この相談の後、Eに納税額について相談したところ、同人から所得税及び都民税・区民税を併せて800万円程度となるとの説明を受けたが、計算方法や申告書の記載方法が分からなかったので、Fの母親が確定申告を依頼しているB税理士に相談することとなった。 (ウ) Dらは、平成9年2月18日、本件物件の売買契約書及び譲渡費用に係る領収書、原告が購入した本件買換物件の契約書及び権利証等の写し並びにE作成のメモ(甲28のEメモ)を持参して、雪谷税務署近くにあるB税理士の事務所に行った。 (エ) Dらは、B税理士に対し、原告の本件物件の譲渡に係る税金の申告の件で来訪した旨を伝え、持参した前記各書類を見せながら、本件物件を9600万円で売却した上で本件買換物件を5760万円で購入したこと及び本件物件の譲渡費用等を説明し、さらにEメモを見せながら、Fが、「主人がタックスアンサーなど聞いたりして一応試算してみたものの、書き方など初めてのことなので、税理士さんに正確な申告をお願いしたいのですが。」と話した。これに対し、同税理士は、Dらが持参した書類等を見ながら自ら計算した上、Dらから納税のために預かる金員を全額騙取しようと考えていたが、そのような意図を隠したまま、Dらに対し、Eメモに記載された税額である804万円について「大体、そんなものでしょう。」と述べた上、自らメモ(甲29号証 に預かる金員を全額騙取しようと考えていたが、そのような意図を隠したまま、Dらに対し、Eメモに記載された税額である804万円について「大体、そんなものでしょう。」と述べた上、自らメモ(甲29号証。Bメモ)を作成しながら、「550万円で税金はあがるでしょう。 その他に10万円を手数料として事務員に渡してくれ、全部で560万円。」と言った。 Dは、B税理士から示された税額が予想以上に安かったことから、同税理士に対しどうしてそんなに安くなるのかと聞いたところ、同税理士は、「私は、長いこと税務署に勤めていたから、素人と計算が違う。ちゃんと計算ができるからこれで間違いありません。」と答えた。Dらは、この点についてさらに質問をすることはなかった。 (オ) Dらは、B税理士の意図に気付かないまま、原告の平成8年分の所得税の確定申告手続についてB税理士に依頼することとし、「税金はどのように納めればよいか。」と聞いたところ、同税理士は、「なるべく早い方がいいから。」「印鑑を預けてくれ。」などと答えた。そこで、Dは、翌日560万円を持って来ることとした。 Dらは、この依頼に当たり、合法的な範囲で可能な限り納付すべき税額が低廉となればいいとは思っていたものの、虚偽の内容を確定申告書に記載するなど、不正手段を使ってまで税金を逃れようとは考えていなかったし、税額が当初考えていたように800万円を超えるものであったとしても、その支払に困る事情もなかった。そして、本件各特例の適用については、Eメモに「所得税居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」との文字が記載され、当該特例に基づいた納税額算出の数式が記載されていたものの、DらとB税理士との間で、本件各特例の適用について明示かつ具体的な説明や質問はなかった。 Dらは、B税理士の事務所からの帰り道、 記載され、当該特例に基づいた納税額算出の数式が記載されていたものの、DらとB税理士との間で、本件各特例の適用について明示かつ具体的な説明や質問はなかった。 Dらは、B税理士の事務所からの帰り道、「やっぱり本職は申告のやり方とか計算の方法が違うのかね。」「税金は素人の計算より、やはり専門家に頼んでこれで間違いないだろうし、安心だ。」等と話し合っていた。 (カ) Dらは、翌日、Eメモ及び一式書類と共に銀行の封筒に入れた550万円とお祝い用の封筒に入れた事務員への謝礼10万円とを持参して再びB税理士の事務所を訪れ、前日話したとおり、同税理士に対し560万円を渡した。これに対し、同税理士は、550万円の預り証(甲30。本件預り証)を作成し、Dに交付した。 Dらは、B税理士に対し、「A」の印鑑、Eメモ及び一式書類を預け、Bメモを持ち帰った。 (キ) Dは、B税理士には550万円でいいといわれたものの、あまりにも金額が少ないことから、「おかしいな」と思いながら帰宅したところ、区民税の申告書が自宅に置いてあり、これを出さないから、B税理士が550万円と勘違いしているのではないかと思い、すぐにそれを持参して、B税理士事務所に赴き、事務員にそれを渡すと、事務員がこれは昼間のものと別であり3万円必要であると述べたので、事務員に3万円を渡したが、その3万円が税金であるのかどうかは確認しなかった。 (ク) 原告及びDらは、本件確定申告手続をB税理士に対し依頼した後、平成9年10月に東京国税局査察部による調査があるまで、同税理士に対し本件確定申告書の控えや納税に係る領収書(領収済通知書等)等の交付を要求したり、申告について税務署に問い合わせたりはしなかった。 イ本件確定申告(ア) B税理士は、後記(イ)記載のとおり虚偽の本件確定書(乙7)及び本件お尋ね文 領収書(領収済通知書等)等の交付を要求したり、申告について税務署に問い合わせたりはしなかった。 イ本件確定申告(ア) B税理士は、後記(イ)記載のとおり虚偽の本件確定書(乙7)及び本件お尋ね文書(乙8)を原告本人の名前で作成した上、平成9年3月5日、練馬東税務署を訪れ、同税務署のC調査官に対し、他の数件の確定申告書と共に提出した。 C調査官は、これら申告書に収受印を押し、B税理士に本件確定申告書の控えを交付した。 そしてC調査官は、本件確定申告書表面の検算欄に「C」の印を押し、さらに裏面の分離長期譲渡所得記載欄の欄外に「C」の印を押した。 (イ) 本件確定申告書において、①原告の住所として「東京都練馬区jk-l-m」、②長期譲渡所得に係る所得の生ずる場所として「練馬区no-p」、必要経費として「109,113,620」、差引金額として「△13,113,620」、所得金額として「0」との虚偽記載があり、この申告書と共に練馬東税務署長に提出された本件お尋ね文書にも、①原告の住所として「東京都練馬区jk-l-m」、②土地の購入先、購入価格等として住所は「新宿区qr-s-t」、氏名「L」、購入年月日「2・6・15」、購入代金「101,600,000」、③建物の購入先、購入価格等として、土地と同様の住所、氏名及び購入年月日が記載され、購入価格として「4,440,000」との虚偽記載があった。 なお、上記各書面の作成税理士欄は空欄となっており、これらの書面上、原告本人が作成したかのような体裁となっていた。 ウ本件各処分に至る経緯等東京国税局査察部は、平成9年10月21日、原告に対する臨場調査に着手し、原告は、同年11月14日、被告署長の指導に基づき、被告署長に対し、本件修正申告書を提出した。 被告署長は、平成10年2月3日、原告に対し 部は、平成9年10月21日、原告に対する臨場調査に着手し、原告は、同年11月14日、被告署長の指導に基づき、被告署長に対し、本件修正申告書を提出した。 被告署長は、平成10年2月3日、原告に対し、本件修正申告により新たに納付すべきこととなった税額分に対する重加算税を課する旨の第1賦課決定処分を行い、さらに、翌日、原告に対し、本件更正処分及びこれにより新たに納付すべきこととなった税額分に対する重加算税を課する旨の第2賦課決定処分を行った。 なお、B税理士の事務所で事務員として働いていたMは、平成9年11月1日、原告宅を訪れ、「私の父親のような歳のあなたを騙して申し訳なかった。」などと言って原告及びDに対し謝罪し、さらに、翌10年1月6日、Mは、再度原告宅を訪れ、550万円の一部として300万円を原告に対し返金した。 (2) 被告署長は、Dらは、B税理士に申告の依頼をする前から、本来支払うべき税額が国税と地方税とを併せて800万円程度になることを十分認識しており、同税理士からも正しい税金の額が806万円であることをいったんは告げられながらも、税務署に知合いがいるなどという不合理な理由によって、550万円で申告手続をうまくやってあげる旨の不正申告の誘いを受け、この誘いに安易に乗って、同税理士に申告を依頼したものであり、また、原告自身も、Dから報告を受けて、これらの事情を知っていた旨主張しているところ、乙4ないし6及び証人B税理士の証言にはこれに沿う部分がある。 しかしながら、B税理士は、前示のとおり、原告に対して詐欺行為を行ったものであるから、これらの供述をするに当たり、自己の刑責を軽くしようとしてDらを共犯に仕立てようとする意図が働いても不思議ではないところ、実際にそのような意図が働いていたことは、同税理士が、Dから550万円を受領する れらの供述をするに当たり、自己の刑責を軽くしようとしてDらを共犯に仕立てようとする意図が働いても不思議ではないところ、実際にそのような意図が働いていたことは、同税理士が、Dから550万円を受領するに際し、Dに「領収書」を交付せずに本件預り証」を交付したことについて、この550万円には納付する税金のほか、同税理士への報酬も含まれているが、もし後で原告が損害を受けたときには、上記金員を返還する場合もあるためであると述べるなど、税理士の通常の業務形態や同人のした虚偽の申告行為等に照らし極めて不自然かつ不合理な供述をしていることからも窺われるところである。しかも、同税理士の証言からは、同税理士がDらに税額が少なくなるのは節税によるものと説明した可能性のあることは認められるが、それ以上に不正な手段を用いる旨の説明をしたことは認められず、Dらの脱税の認識について同税理士が述べるところは、つまるところ、現行の申告納税制度が始まって30年余り経っているのだから、Dらは正しい申告納税額を認識し得たはずであり、同税理士がこれを下回った額での申告・納税を行う以上、それは脱税によるものとの認識が当然あったはずだということに尽きるものであるが、一般人の租税に対する認識がそのようなレベルにあるとは考えられず、むしろ、一般人においては、租税関係は素人には理解し得ない難解なものであって、専門家の助言に従うほかない分野であると考えられるのが通常であるから、同税理士の述べるところは、誤った認識を前提とした誤った推論というべきである。その上、本件で認定した事情にかんがみれば、Dらにおいて基本的な税務知識があったかすら疑わしいというべきであり、同人らは、納付すべき税額には一定の幅があり、その認定において税務署長に裁量権があるのではないか、あるいは、本件各特例以外の特例を Dらにおいて基本的な税務知識があったかすら疑わしいというべきであり、同人らは、納付すべき税額には一定の幅があり、その認定において税務署長に裁量権があるのではないか、あるいは、本件各特例以外の特例を適用したり異なる計算方法を用いたりしたことにより納付すべき税額が当初の予想よりも低くなったのではないかなどと誤解していたことが強く推認されるのである。したがって、同税理士の上記証言部分は、直ちに採用することはできず、むしろ、事件発覚後に同税理士が納税者の方たちに謝りたいと述べたこと(甲10号証)や、Dらが当時自分のことを信用していたのではないかと証言したこと(同人の証人尋問の結果)に、同税理士が原告ら納税者を騙してきたことが窺われるというべきである。 また、Dは、刑事事件の捜査段階において、B税理士が「いったん、自分で806万円という数字を出しておきながら、550万円で済ませるというのは不自然で、何か不正な方法を使うのかなという不安もありましたが、税金がやすくなるならそれでいいと思」ったというDの供述調書(乙6号証)があるが、Dは、当裁判所における証人尋問において、このような供述をしたことを明確に否定しており、前記1で認定した経緯や同人の年齢等に照らせば、B税理士を安易に信じ十分な監督を行わなかったことからくる自責の念のために、このような趣旨の発言をしたことも十分考えられるから、この供述をそのまま字義どおりに受け入れるには慎重な姿勢で臨まなければならない。そして、Fが原告の確定申告に当たりB税理士を紹介したのは、それまでFの母や知人が同税理士に納税申告の依頼をしてきて特段問題がなかったためであること、原告やDがこれまできちんと申告をしてきたこと、DやEが同税理士への依頼に先立ち、区民相談や税務署への問い合わせ等を行っていたが、そのことは、 税申告の依頼をしてきて特段問題がなかったためであること、原告やDがこれまできちんと申告をしてきたこと、DやEが同税理士への依頼に先立ち、区民相談や税務署への問い合わせ等を行っていたが、そのことは、彼らにおいて、正しい納税額を知り、適切な申告をしようとの考えがあったと窺われること、同税理士の事務所を訪れた時点でも、税額が800万円余りであったとしても支払いに困る事情はなく、その考えに特段変化があったとは認められないことなどからすれば、Dらが、同税理士から突然脱税行為をほのめかされてこれに安易に応じたとか、Dが帰宅後原告に対し「800万円かかるけど、550万円と、あと事務員さんに10万円お礼をすれば、それでいいんだってさ。」と報告したところ、原告が「ああ、そう良かったね。」と答えたことによって原告がDと脱税の認識を共有したとかいう被告署長の主張は、唐突で不自然なものと評価せざるを得ない。 しかも、前示のとおり、Dは、B税理士に550万円でいいといわれたものの、あまりにも金額が少ないことから、「おかしいな」と思いながら帰宅したところ、区民税の申告書が自宅に置いてあり、これを出さないから、B税理士が550万円と勘違いしているのではないかと思い、すぐにそれを持参して、B税理士事務所に赴き、事務員にそれを渡したということが認められるのであって、そのことは、Dが脱税の意図ないし認識を有していなかったことの表れというべきである。 そして、Dが当時既に80歳を超える高齢であったこと、本件後の時間の経過を併せ考慮すれば、その後の陳述書や証人尋問の結果において、いくつかの点において食い違いがあったとしても、そのことによって、B税理士に対し脱税を頼んでいないという本件における同人の証言の核心部分の信用性が直ちに低下するということにはならないというべきであ いくつかの点において食い違いがあったとしても、そのことによって、B税理士に対し脱税を頼んでいないという本件における同人の証言の核心部分の信用性が直ちに低下するということにはならないというべきである。 (3) 以上によると、原告及びDらには、B税理士への申告の委任に当たって脱税の意思は認められず、適正な申告をするよう依頼したと認めるのが相当である。 2 争点1(原告の平成8年分の所得税につき、本件各特例の適用があるか否か)について(1) 措置法31条の3第3項及び35条2項によれば、本件各特例は、確定申告書にその適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、譲渡所得の金額の計算に関する明細書及び大蔵省令で定める書類が添付されている場合に限り適用されるものであるところ、本件物件が本件各特例の定める実体的要件を満たしてはいるものの、本件確定申告書には本件各特例の適用を受けようとする旨の記載はなく、所定の書類が添付されていなかったことは、当事者間に争いがない。 したがって、原告の平成8年分の所得税につき、本件各特例の適用があるか否かを考えるに当たっては、まず、措置法31条の3第4項及び35条3項に定める「やむを得ない事情」が認められるか否かを検討する。 措置法が本件各特例の適用の要件として確定申告書にその適用を受けようとする旨の認識を要求しているのは、本件各事例が例外的な減税措置であることにかんがみ、特にその適用を自ら積極的に希望する者のみに適用を許すという趣旨によるものであって、確定申告の際に適用を求めることを明示しなかった以上、たとえ通常の更正の請求の要件を満たしていても、これに応じない趣旨と解するのが相当である。すなわち、本件特例は、その要件を満たす納税者すべてにあまねく適用しようと意図されたものではなく、自らの努力によってその適用を求め 求の要件を満たしていても、これに応じない趣旨と解するのが相当である。すなわち、本件特例は、その要件を満たす納税者すべてにあまねく適用しようと意図されたものではなく、自らの努力によってその適用を求める者にのみ適用することが意図されているのである。このことは、法的素養もなく専門家の助言を得ることも困難な者の多くに減税措置の恩恵を与えない結果を招きかねないが、後記3において問題となる加算税のように申告義務の懈怠等に対して負担を課することとは異なり、原則的な課税に対する例外的な減税措置であることからすると、このような立法政策を採ることも、その当否についてはともかくとして、許されないとはいえないのである。 このような立法政策に照らすと、自ら確定申告せずに税理士等の他人にこれを委任した者は、たとえその受任者が委任の趣旨に反した申告を行うことにより、本件特例の適用を受けられなくなったとしても、委任者の適切な選任監督にかかわらず、受任者において巧妙に委任者の目を逃れて悪意を働いたといった特段の事情がない限り、自ら努力をしなかった点において、その結果に甘んずるほかなく、上記「やむを得ない事情」があったとは認められないのである。 (2) これを本件についてみると、前記1で認定したとおり、Dは、原告の代理人として、B税理士に対し、原告の平成8年分の所得税に係る確定申告手続を依頼したこと、本件確定申告手続を同税理士に依頼した後は、同税理士に対し、本件確定申告書の控えや納税に係る領収書の交付を求めることもなく、同税理士に対し具体的には何らの監督行為も行っていなかったことは、前記1で認定したとおりであるから、本件各特例の適用を受けられないこともやむを得ないというべきであり、措置法31条の3第4項及び35条3項にいう「やむを得ない事情」があるものと解することは ことは、前記1で認定したとおりであるから、本件各特例の適用を受けられないこともやむを得ないというべきであり、措置法31条の3第4項及び35条3項にいう「やむを得ない事情」があるものと解することはできない。 (3) これに対し、原告は、①本件確定申告はB税理士に与えられた代理権の範囲を逸脱したもの又は濫用して行われたものであって無効であり、本件修正申告書の提出をもって確定申告行為があったと見るべきであるところ、原告は、本件修正申告書において、法令の定める各書類を提出をしているのであるから、原告につき、本件各特例の適用があるというべきである、②仮に、本件確定申告が有効であるとしても、Dらは居住用財産の譲渡に関する特別控除の適用を受けることを前提にBに対する依頼をしており、その後にB及び練馬東税務署内における共謀者が、原告の意思等と全く無関係に本件確定申告を行い、原告はその防止措置を講ずることが不可能であったから、原告につき、措置法31条の3第4項、35条3項にいう「やむを得ない事情」があるというべきである旨主張する。 しかしながら、原告において、B税理士の選任・監督に過失があったこと、したがって、本件確定申告書に本件各特例の適用を受けようとする旨並びに措置法31条の3第3項及び35条2項に規定する必要事項の記載及び書類の添付がなかったことについて、原告の責めに帰すべき事由がないとはいえないことは前示のとおりであり、そのことは、本件確定申告自体の効力とは直接関係がないし、また、原告にはB税理士のした本件確定申告を防止する措置を講ずることが不可能であったとは必ずしもいえないから、原告の上記主張はいずれも失当である。 また、原告は、本件はB税理士による詐欺事案である上、同税理士は、受任した事件のほとんど全てにつき、確定申告書の控えを事務所で あったとは必ずしもいえないから、原告の上記主張はいずれも失当である。 また、原告は、本件はB税理士による詐欺事案である上、同税理士は、受任した事件のほとんど全てにつき、確定申告書の控えを事務所で保管していたというのであるから、仮にDらが本件確定申告書の控えの交付を求めたとしても、同税理士がこれを交付していたとは考え難く、Dらがその交付を求めなかった点を捉えて同税理士に対する監督の過失とみることは実態を無視した議論にすぎない旨主張する。 しかしながら、DらによるB税理士の監督方法はこの点に限られるものではないから、原告の上記主張を直ちに採用することはできない。 (4) そうすると、原告の平成8年分の所得税の課税に関し、本件各特例の適用はないというべきところ、これを基に課税長期譲渡所得金額及び納付すべき税額を計算すると、別紙記載のとおりとなる。 本件更正処分は、これと同額であるから、適法である。 3 争点2(本件各賦課決定処分は違法か否か)について(1) 重加算税賦課の可否ア重加算税(通則法68条1項)の制度の趣旨は、課税要件事実を隠ぺいし、又は仮装するという不正手段を用いたという特別の事由が存する場合に、過少申告加算税(同法65条1項)等より重い負担を課すことによって、隠ぺい又は仮装したところに基づく過少申告等による納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度の信用を維持し、その基礎を擁護するところにあるものである。 ところで、納税者の意を受けて第三者が申告事務を行った場合において、当該第三者が、隠ぺい、仮装行為を行ったときは、当該第三者が納税者の使用人である場合や納税者自身がこれを明示又は黙示に認めていたときは格別、納税者から委任を受けて申告手続をした者が、専ら自己又は第三者の利益を図るため、納税のためと称して納税者から金員を が納税者の使用人である場合や納税者自身がこれを明示又は黙示に認めていたときは格別、納税者から委任を受けて申告手続をした者が、専ら自己又は第三者の利益を図るため、納税のためと称して納税者から金員を騙取しようと企て、虚偽の書類を作成する等の隠ぺい、仮装行為を行ったようなときには、通則法68条1項の適用に当たり、受任者の行為を納税者自身のそれと同視することは妥当でない。受任者は、納税者の家族や使用人のように単なる履行補助者の立場にとどまるものではなく、納税者の意図や監視・監督を離れ、独自に行動したものというべきであって、納税者自身が隠ぺい又は仮装行為を行った場合とはその責任非難の程度が大きく異なるし、このような受任者の行為を委任者の行為と同視することは、委任という法律関係の性質に反するばかりか、受任者の公法上の義務違反を理由に委任者に重い負担を負わせることは近代法の責任主義の原則にも反することになるからである。 これに対し、被告署長は、納税者が自らの判断と責任において第三者を選任し、申告手続を委任した以上、第三者が、納税者に代わって行った申告行為は、納税者が行ったと同様に扱われるものであるから、これに付随する重加算税の責任も、納税者が不適正な申告について認識していたか否かにかかわらず、当然負うべきである旨主張するが、前示のとおり、重加算税制度の趣旨や委任者と受任者の法律関係等にかんがみれば、かかる主張を採用することはできない。 イかかる観点から本件をみるに、前記1で認定したとおり、B税理士は、原告から適正な税務申告の委任を受けたにもかかわらず、その趣旨に反し、専ら自己の利益を図る目的で、原告から納付のための金員を騙取しようと企て、虚言を弄してDらを騙した上、虚偽の本件確定申告書及び本件お尋ね文書等を原告本人の名前で作成して、被告署長で その趣旨に反し、専ら自己の利益を図る目的で、原告から納付のための金員を騙取しようと企て、虚言を弄してDらを騙した上、虚偽の本件確定申告書及び本件お尋ね文書等を原告本人の名前で作成して、被告署長ではなく、練馬東税務署長に対し、これらの書類を提出したのであるから、これらのB税理士の行為をもって、原告自身のそれと同視することはできないと認めるのが相当である。 ウこれに対し、被告署長は、申告・納税手続の委任を受けた者が隠ぺい又は仮装行為を行った場合、納税者において、受任者の選任、監督について過失がないと認められる場合を除き、受任者による申告の効果は納税者に帰属するとともに、納税者について重加算税の賦課要件を充たすと主張し、本件において、Dは、いったん、正しい税額が806万円であることを示されながら、税務署に知合いがいるからなどという不合理な理由により、550万円で申告手続をうまくやってあげる旨のB税理士の誘いに、550万円となる根拠やこの金額のうちに含まれる同税理士の手数料の額、国税及び地方税の各金額を確認することもなく、申告手続の一切を任せたものであり、D自身税額が安すぎるのではないかと不安になって再び同税理士事務所に区民税の申告書を持参したというのに、そこでも趣旨不明の3万円を支払ったにすぎず、800万円と550万円との差額である250万円もの違いについては、結局確認することなく済ませ、原告及びDは、依頼から8か月以上も経過した査察部の調査があるまで、同税理士に対し申告書の控えや納税に係る領収書等の交付を全く要求することも、申告について税務署に問い合わせることもせずに放置しているのであって、原告には、本件確定申告手続を行う者の選任、監督について、極めて重大な落ち度があったというべきであるから、B税理士のした行為は原告に帰属する旨主張 に問い合わせることもせずに放置しているのであって、原告には、本件確定申告手続を行う者の選任、監督について、極めて重大な落ち度があったというべきであるから、B税理士のした行為は原告に帰属する旨主張する。 しかしながら、受任者たる税理士の法律行為の効果が委任者である納税者自身に帰属することと、受任者の行った仮装隠ぺいという事実行為を委任者の行為と同視できるか否かということは、本来別個の事柄であり、また、隠ぺい又は仮装行為とは、納税者の故意による行為を想定したものであって、前述した重加算税制度の趣旨にかんがみれば、納税者の受任者に対する選任・監督行為の過失の有無という納税者の過失を捉えて、隠ぺい又は仮装行為と同様の責任非難の根拠とするのは相当ではないから、被告署長の上記主張が前提とする立場自体がそもそも失当といわざるを得ない。 エそして、他に、原告又はDらにおいて、隠ぺい又は仮装行為を行ったと認めるに足りる証拠はないから、原告につき、通則法68条1項に定める重加算税の賦課要件を欠くものといわざるを得ない。 (2) 過少申告加算税賦課の可否ア通則法65条の規定による過少申告加算税と同法68条1項の規定による重加算税とは、ともに申告納税方式による国税について過少な申告を行った納税者に対する行政上の制裁として賦課されるものであって、同一の修正申告又は更正に係るものである限り、その賦課及び税額計算の基礎を同じくし、ただ、後者の重加算税は、前者の過少申告加算税の賦課要件に該当することに加えて、当該納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出するという不正手段を用いたとの特別の事由が存する場合に、当該基礎となる税額に対し、過少申告加 べき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出するという不正手段を用いたとの特別の事由が存する場合に、当該基礎となる税額に対し、過少申告加算税におけるよりも重い一定比率を乗じて得られる金額の制裁を課することとしたものと考えられるから、両者は相互に無関係な別個独立の処分ではなく、重加算税の賦課は、過少申告加算税として賦課されるべき一定の税額に前記加重額に当たる一定の金額を加えた額の税を賦課する処分として、上記過少申告加算税の賦課に相当する部分をその中に含んでいるものと解するのが相当である(最高裁昭和56年(行ツ)第139号第一小法廷判決同58年10月27日・民集37巻8号1196頁参照)。 したがって、重加算税の賦課決定に対する取消訴訟においては、上記の加重事由の存否のみならず、過少申告加算税の賦課要件の存否も当然に審理の対象となり、審理の結果、過少申告加算税賦課の要件の全部又は一部が否定された場合には、加重事由の存否を問うまでもなく当然にその限度で重加算税賦課決定の全部又は一部が取消しを免れないこととなるものの、過少申告加算税賦課の要件の存在が認められ、加重事由の存否の点についてのみ原処分庁の認定判断に誤りがある場合には、加算税額中、過少申告加算税額を超える部分についてのみ原処分を取り消し、その余については取消請求を棄却すべきものであって、このように解しても、もとより裁判所がその権限に属さない税の賦課決定権を行使したことになるものではない。 そして、重加算税の賦課決定に対する取消訴訟における審理の対象及び内容が前記のとおりである以上、原告において過少申告加算税の賦課要件の存否についての原処分庁の判断にも不服があるときは、前記取消訴訟において通則法65条4項に規定する「正当な における審理の対象及び内容が前記のとおりである以上、原告において過少申告加算税の賦課要件の存否についての原処分庁の判断にも不服があるときは、前記取消訴訟において通則法65条4項に規定する「正当な理由」の有無の点等を主張することができ、原告の主張は明確でないものの、これを主張しているものと理解できる。 イ被告は、この点について、原告には、B税理士に対し平成8年分の所得税に係る納税申告手続を委任するに際し、その選任・監督に過失があったというべきであるから、原告に「正当な理由」があると認められないことは明らかというべきであると主張する。 しかし、過少申告加算税も、前記の重加算税と同様、申告という公法上の義務が十分に履行されなかったこと、すなわち公法上の義務違反を理由として、当該納税者に課される特別の負担なのであるから、この「正当な理由」の有無は、当該公法上の義務違反について納税者に責任を問うのが正当か否かという観点から検討されるべきである。そして、税理士制度は、「納税義務の適正な実現を使命とする」(税理士法1条)税理士という資格を国家の資格として公認し、法の定める者にのみその資格を与えるとともに(同法3条)、これに税理士事務を独占させる一方(同法52条)、財務大臣がその懲戒権を有することによりこれを監督することとしているのであるから、このような国家の制度とその制度の下に資格を付与された税理士を信頼して、特定の税理士に申告手続を委任した納税者については、当該税理士のした申告が過少なものであったとしても、そのことが納税者の指示に基づくものである場合や受任に当たっての当該税理士の言動等から不当な申告を行うことが明らかにうかがわれた場合などの特段の事情がない限り、当該納税者は、その公法上の義務を十分に履行したものと評価すべきであり、上記「正当 や受任に当たっての当該税理士の言動等から不当な申告を行うことが明らかにうかがわれた場合などの特段の事情がない限り、当該納税者は、その公法上の義務を十分に履行したものと評価すべきであり、上記「正当な理由」が認められるというべきである(以上の説示は、前記2(1)における本件特例適用の可否についての説示と原則と例外が逆転している観があるが、過少申告加算税を賦課するか否かは、公法上の義務違反に対する負担の賦課であるのに対し、本件特例の適用があるか否かは、例外的に減税の恩恵を受けられるか否かという問題であるから、後者について、前者とは反対に納税者に厳しい要件を課することは、事柄の性質上やむを得ないことである。)。 以上を前提として本件をみるに、前記1で認定説示したとおり、原告は、正規の国家資格を有するB税理士を全面的に信頼して適正な申告手続をするよう依頼したのであり、上記のような特段の事情は認められない。被告は、原告が委任以降何ら報告を求めず、申告書の控えの交付を受けていないことなどを指摘し、税理士の監督に過失があったと主張するが、原告やDらに何ら税務上の素養がなく、原告及びDともに高齢であることにかんがみると、国家資格を有する専門家たる税理士に委任した以上、その事務のすべてをまかせ、先方から連絡がない以上は、催促がましく連絡をとらないことこそがエチケットにかなうと考えることにも無理からぬ面があり、少なくとも、原告及びDについては、このような態度をとったことをとらえて公法上の義務違反に対する負担の賦課を正当化することは困難である。 ウそうすると、本件各賦課決定処分は過少申告加算税の部分を含めてすべて違法であり、取り消されるべきである。 (3) なお、原告は、本件申告が無効であることを前提に、過少申告加算税ではなく、無申告加算税が課されるべ 本件各賦課決定処分は過少申告加算税の部分を含めてすべて違法であり、取り消されるべきである。 (3) なお、原告は、本件申告が無効であることを前提に、過少申告加算税ではなく、無申告加算税が課されるべき事案であり、かつ、通則法66条1項ただし書の適用がある旨を主張するところであるが、上記のように本件各賦課決定処分のすべてを取り消すべきものと判断した以上、この点についての判断は不要というべきである。 4 争点3(原告の国家賠償請求の可否)について(1) 原告は、C統括官がB税理士からの請託を受け、本件確定申告書が虚偽であることを知りながら受領し、適正な確定申告書であるかのごとき体裁を整え、虚偽の確定申告書であることが簡単には発見できない手段を講じた旨の主張をするところ、この主張を基礎付ける事実としては、①本件申告及び納税相談の特異性、②本件申告審理の不自然さ、③B税理士の供述内容を述べるため、以下、それぞれについて検討する。 (2) B税理士の供述内容の信用性ア検察官面前調書(乙第6号証)における供述内容B税理士は、平成9年12月8日、東京地方検察庁検事Nに対し、C統括官との関係について要旨以下のとおりの供述をしている。 (ア) 私(B税理士、以下同じ。)が、練馬東税務署に原告を含む3名名義の確定申告書を提出しようと考えたのは、平成9年の確定申告の当時、同署にC統括官がいたからである。 (イ) 私は、C統括官が前任地である立川税務署に勤務していた当時の平成8年5月ころ、私方事務所で扱ったKさんの平成7年分の譲渡所得税の不正申告について、C統括官から問い合わせがあったことなどをきっかけとして、C統括官と知り合うようになった。 (ウ) その後、C統括官が平成8年7月の異動で立川税務署から練馬東税務署へ転勤したが、その後時折電話するなどしてつ から問い合わせがあったことなどをきっかけとして、C統括官と知り合うようになった。 (ウ) その後、C統括官が平成8年7月の異動で立川税務署から練馬東税務署へ転勤したが、その後時折電話するなどしてつながりを保っていた。 (エ) 私は、平成6年ないし8年の各確定申告時期に引き受けた譲渡所得税の不正申告の案件に関する確定申告書をIが資産税担当の統括国税調査官として勤務していた緑税務署及び玉川税務署に提出するとともに、同人に賄賂を渡して私の提出した不正申告の案件が実地調査にかかったりすることのないようにしていた。そのため、本来であれば、平成8年分の3名の譲渡所得税の不正申告についても、Iのいる税務署に提出したいところであったが、平成8年12月ころから、私が平成6年3月に緑税務署に平成5年分の譲渡所得税の不正申告を行った案件で、私自身が東京国税局査察部から調査を受けており、平成9年の確定申告時期に、また、Iのいる税務署に不正申告の案件をもって行くことには、少々二の足を踏まざるを得ない状況だった。 (オ) 一方、C統括官は、それまでの付き合いの中で、融通の利きそうな人だなという印象を持っており、私がC統括官のいる練馬東税務署に不正申告の事案を持ち込んだ上で、お金を上げて便宜を図って欲しいと頼み込めば、同人も私の言うことを聞いてくれるのではないかと思い、そのような可能性に賭けて、いわばやむを得ず3名の名義の平成8年分の譲渡所得税に関する確定申告書やお尋ね文書を練馬東税務署に提出することとした。 (カ) 私は、平成9年3月はじめころ、右の3名の平成8年分の譲渡所得税に関する事実に反する内容の確定申告書やお尋ね文書などを、多分郵送だったと思いますが、練馬東税務署に提出した。 イ証人尋問における供述内容B税理士は、本件証人尋問において、要旨以下のとおり 得税に関する事実に反する内容の確定申告書やお尋ね文書などを、多分郵送だったと思いますが、練馬東税務署に提出した。 イ証人尋問における供述内容B税理士は、本件証人尋問において、要旨以下のとおり証言をしている。 (ア) Dらの相談に対して550万円とか560万円という数字を提示したのは、担当の税務職員が担当の職員、すなわち、練馬東税務署のC統括官が脱税を確実に認めてくれるということだったからである。 (調書179項ないし186項)(イ) C統括官に対しては、平成9年の2月、3月ころに、個人の名前は挙げていなかったが、4、5件脱税を認めて欲しい旨申し出ており、申告書を4件C統括官に直接持っていった。 (調書187項ないし197項)(ウ) C統括官とは、立川税務署にいた際に2、3回行って話したことがあり、五反田あたりでお茶を飲んだことがある。 (調書249)(エ) 申告書を持参するに当たっては、事前に脱税の話をし、よろしくお願いしますと説明し、私としてはC統括官は承知の上で受け取ったとと思っている。申告書の内容はでたらめであるが、C統括官が認めてくれると言ったので、絶対に認めてくれると思った。 (調書253項ないし260項)(オ) Cへの報酬は、五反田であげようと思ったが、終わってからというようなことだったもので、あげていない。五反田で会ったのは申告が終わってからであり、報酬がいくらかという話はまだしていない。 (調書265項ないし268項)(カ) C統括官には、平成9年の申告が始まってから「4、5件あるから面倒みてくれますか」との話をし、これに対しC統括官は「いいよ」と答えた。その後、2度、3度食事をしたり、コーヒーを飲んだりし、確定申告が終わった後には、C統括官の方から五反田に来て話をしたことがある。 (調書400項ないし409項) に対しC統括官は「いいよ」と答えた。その後、2度、3度食事をしたり、コーヒーを飲んだりし、確定申告が終わった後には、C統括官の方から五反田に来て話をしたことがある。 (調書400項ないし409項)ウ各供述内容の評価B税理士は、検察官面前調書においては、C統括官と意を通じているか否かについて明言をしていないが、同統括官も「私の言うことを聞いてくれるのではないかと思い、そのような可能性に賭けて、いわばやむを得ず」申告書を提出したとの供述内容によれば、むしろ、C統括官との間で、事前に意を通じていないことを前提とした供述内容であると理解できる。 他方、当裁判所の行った証人尋問においては、事前にC統括官に対し、脱税を認めて欲しい旨の申入れをし、同人から了承を得ていたため、本件申告書等を同人に直接提出した旨述べるが、事前に依頼をした時期、場所等については明確な証言をしておらず、また、C統括官と五反田において面会した時期については、申告等が終わった後であるとの証言をする一方で、報酬について「終わってから」ということで渡していないと、申告との前後すらあいまいな供述をしている上、依頼の内容についても、平成9年の申告が始まってから「4、5件あるから面倒みてくれますか」との話をし、これに対しC統括官は「いいよ」と答えたというものであり、その文言のみからは申告そのものの面倒をみて欲しいとの内容とも理解できないこともない。 以上によれば、B税理士の供述内容中には、原告の指摘するとおり、C統括官が事前にB税理士の依頼を受け、虚偽の確定申告書であることが発見できないように取りはからう旨約束していたことをうかがわせる部分はあるものの、その供述には核心である部分において不明確な点があり、検察官面前調書とは明らかに反する内容となっているのであり、B税理士がC統 いように取りはからう旨約束していたことをうかがわせる部分はあるものの、その供述には核心である部分において不明確な点があり、検察官面前調書とは明らかに反する内容となっているのであり、B税理士がC統括官の承諾を得ていたと認識していたというところまでは認められるものの、その供述のみから、C統括官が明確に便宜を図る旨の約束をしたかについてまで認定することは困難といわざるを得ない。 (3) C証言の信用性他方、C統括官は、その陳述書及び証言において、B税理士と初めて出会ったのは、立川署に勤務していた際、Kという者の申告事案を第一統括官として個別管理した際であること、平成8年8月にK事案の件で五反田の喫茶店で待ち合わせ、Kの件について20分ほど話をしたこと、その後は、平成9年3月に、B税理士から関与している譲渡所得の申告書の提出のためうかがいたい旨の電話があったので、いいですよと返事をし、B税理士が持参した3件の譲渡所得の申告書を収受し、所定の事務処理を行ったこと、確定申告期間終了後、B税理士から1、2度電話があったが、その電話は譲渡所得の申告書に関するものではなく、その電話以外にB税理士と話したり、会ったりしたことはない旨を明確に述べている。 その供述内容は、五反田での面会に至る経緯、面会での会話の内容、時期等についてもB税理士の証言よりははるかに詳細に述べられており、また、その内容も、申告書、事績書等の客観的資料と符合しており、特に不明確な点、矛盾する点は認められない。 そして、原告は、C統括官が、前任地の立川でKという納税者の件でB税理士が脱税事案に関与しており、それによれば、B税理士が脱税に関与していると考えて当然であるのに、全く気付かなかったとする点など、C統括官の供述に不自然な点、矛盾点がある旨の指摘をするが、それらの指摘は、い 税事案に関与しており、それによれば、B税理士が脱税に関与していると考えて当然であるのに、全く気付かなかったとする点など、C統括官の供述に不自然な点、矛盾点がある旨の指摘をするが、それらの指摘は、いずれも、重要な部分とはいいがたく、その指摘の前提についても評価が分かれる事項であると考えられることからすると、それによりC統括官の証言が全体として信用性を失うとまでは言い難いし、少なくとも、B税理士の証言の内容を減殺するには十分な内容であるというべきである。 (4) 本件申告及び納税相談の特異性との主張について原告は、本件申告書に虚偽であることが容易に判明するような事実が記載されていること、B税理士がわざわざ統括国税調査官であるC統括官に申告書を提出し、統括官自らが相談に応じた外形を作出するかのように押印を行っている点を述べ、このような事実は、C統括官がB税理士と意を通じていたことを基礎付ける事実といえる旨の主張をする。 しかし、被告は、平成12年度における譲渡所得に係る要処理件数(譲渡所得の申告件数に、申告義務を有すると認められる納税者として各税務署が把握している者のうち、無申告であるため申告義務の有無等の確認を要する者の件数を加算した件数)に対する調査件数の比率は、約1.7パーセントである旨主張し、原告もこれを明確に争わず、これに反する証拠もないところ、法人税などと異なり、継続性や連続性のない譲渡所得においては、その体制や期間が限定されていることから、極めて低率の調査しかできないとの事実を前提に考えれば、仮に、B税理士の提出した申告書が申告審理や調査により虚偽であることが容易に判明するものであったとしても、極めて低率の調査しか行われておらず調査を免れることや、あわよくば、自分のことを知っているC統括官が気を利かせて配慮をしてくれると 理や調査により虚偽であることが容易に判明するものであったとしても、極めて低率の調査しか行われておらず調査を免れることや、あわよくば、自分のことを知っているC統括官が気を利かせて配慮をしてくれるといったことを一方的に期待して申告書を提出した可能性も否定することはできず、申告書の内容が明らかに虚偽であったことから、C統括官が協力者であったことが認められるというのは困難といわざるを得ない。 また、統括官が自ら面接を行っている点についても、C統括官の証言によれば、当時の練馬東税務署の資産税部門では14名の職員がおり、申告期間中は、部屋の真ん中に納税者が座り、両側に職員が座る形で納税相談を行っており、14名の職員のうち、第1、第2の両統括官、データを管理する職員1名、調査を担当する職員2名の計5名を除いた9名が常時納税相談を行っているものの、第1統括官の自席においても納税者との面接が可能であるレイアウトがされており、待合室が混雑した場合には統括官が面接をする場合もあるなど、第1統括官はフリーの立場の職務を行い、場合によっては納税相談を行っていたと認められる。よって、第1統括官が自ら納税相談を行ったことを特別視し、そのことから、B税理士とC統括官との間で意思を通じていて、特別に相談を行ったとの評価をすることには無理があるといわざるを得ない。 さらに、乙第7号証及びC統括官の証言によれば、納税相談の上で収受された申告書の事務処理について、職員が内容等の面接の際、形式的なチェックをした上、記入項目の数字を検算し誤りがなければ申告書一面の検算印を押し、さらに、事前に法定調書や不動産登記資料等に基づき作成された譲渡者名簿をもとに各納税者ごとに作成された事績書と申告書とともに提出されたお尋ね文書の添付資料を申告書から分離して一緒に綴り、事績書に相談 らに、事前に法定調書や不動産登記資料等に基づき作成された譲渡者名簿をもとに各納税者ごとに作成された事績書と申告書とともに提出されたお尋ね文書の添付資料を申告書から分離して一緒に綴り、事績書に相談を了している旨を表示するとともに所定の事項を記載し、申告書二面の譲渡所得欄に確認印を押印することにより、確定申告期間終了後に税務調査を担当する職員が申告審理を行う際に相談を担当した職員が誰であるかを判別できるようにし、お尋ね文書から所定の金額を事績書に転記した旨を明らかにするとの方法が行われていることが認められる。これによれば、一面検算欄の押印は、形式的なチェックを行い、後のコンピューター処理の際に数額をそのまま入力可能であることを表すために押されるものであり、申告書二面の譲渡所得欄の押印は、相談者が誰であるかを明確にし、お尋ね文書から所定の金額を事績書に所定事項を記載したことを表すものにすぎないと認められ、これらの押印がされていることにより、これが適正な確定申告書であることを示すものとまではいえず、これらの押印により、C統括官が虚偽の確定申告書であることが簡単には発見できない手段を講じたとする原告の主張は採用し得ない。確かに、原告も指摘するとおり、資産税部門の第1統括国税調査官であるC統括官が押印を行うことにより、他の職員がこれを信頼することで、不正な申告書が調査を経ずに処理される可能性は全く否定できないといえるが、それはあくまで可能性の問題にとどまり、そうである以上、C統括官がB税理士に協力を約束していたことを基礎付ける事実とはなり得ないと考えられる。 そのほか、練馬東税務署は、本件申告の所轄税務署ではなく、B税理士の事務所からもかなり遠方であることに照らすと、B税理士が原告の住所地について虚偽の記載をしてまで本件申告書を練馬東税務署 られる。 そのほか、練馬東税務署は、本件申告の所轄税務署ではなく、B税理士の事務所からもかなり遠方であることに照らすと、B税理士が原告の住所地について虚偽の記載をしてまで本件申告書を練馬東税務署に提出していたことは不自然といわざるを得ないが、この点は、B税理士がC統括官と事前に意思を通じないまま、同人がこれを認めてくれる可能性に賭けたとの同税理士の検察官面前調書(乙6)の内容を前提としても説明がつくものといわざるを得ず、両者の間に意思の連絡があったことをうかがわせるものと断定することはできない。 以上によれば、原告が、C統括官の不正行為の存在を基礎付ける事実として主張した、申告書の記載や納税相談について不自然さについては、これが認められないか、又は、仮に認められるとしても、それがC統括官の不正行為を基礎付ける事情とはいえないものといわざるを得ない。 (5) 申告審理の不自然さ原告は、本件申告審理において、調査を省略するとの結論がされていることをもって、C統括官の不正工作が功を奏し、C統括官が譲渡所得の計算を行っていると誤信している旨の指摘をする。 確かに、本件申告書に添付された本件お尋ね文書には、原告が本件物件を取得した時期につき平成2年と虚偽の記載がされており、このような事項は登記簿(甲13)を確認すれば虚偽であることが容易に判明するにもかかわらず、このことが看過されたまま調査が省略されるに至ったことには、奇異な印象が生じないでもない。その上、上記の結論は本件物件の譲渡によって譲渡損が発生したとしても不自然ではないとの判断に基づくものと考えられるが、その判断は、結局、本件物件の取得時期が平成2年といういわゆるバブル期に当たることを前提とするものと考えられるところ、そのように結論を導く重要な前提事実につき、客観的な資料によって と考えられるが、その判断は、結局、本件物件の取得時期が平成2年といういわゆるバブル期に当たることを前提とするものと考えられるところ、そのように結論を導く重要な前提事実につき、客観的な資料によって確認することなく、本件お尋ね文書の記載のみを信頼して判断したことについても、調査不足の感がないでもない。しかし、乙第9号証及び第14号証に弁論の全趣旨を総合すると、不動産の譲渡に伴う譲渡所得の申告審理に当たっては、譲渡の事実及びその内容については、譲受人の提出する法定調書等により申告の適否が審査されるものの、取得費算定の前提となる取得の事実及びその内容については、登記簿謄本等の裏付け資料を徴さないまま、納税者の申告内容を前提とした審査がされることが一般的であると認められる。このような申告審理のあり方は、容易に調査しうる事項(法務局から譲渡の事実について情報提供を受ける際に、登記簿から判明する限りにおいての取得の日と登記原因についても情報提供を受けることは、法務局の負担もそれほどのものではなく、容易に実現するものと考えられる。)についての調査を怠り、不正な申告を助長するものと思われないでもないが、現にこのような取扱いがされている以上、上記の疑問点から本件申告審理が不自然なものであったと認めることはできない。また、乙第9号証、乙第14号証及びC統括官の証言によれば、一般に、資産課税部門における調査事務は、第2部門が担当することとされており、通常、確定申告終了後の3月下旬から4月の中旬ないし下旬まで行われ、その責任者は第二部門統括官とされているのであり、その結論が不自然であることから直ちにC統括官が不正工作を行ったとするのは論理に飛躍があるといわざるを得ない(単にJ統括官がC統括官の相談を信頼して、自己の判断により調査が不要とされた可能性や、相談 その結論が不自然であることから直ちにC統括官が不正工作を行ったとするのは論理に飛躍があるといわざるを得ない(単にJ統括官がC統括官の相談を信頼して、自己の判断により調査が不要とされた可能性や、相談者が上記(2)の程度の処理しか行わないことによればC統括官自体も申告書が虚偽であることに気付いていなかった可能性も否定できない。)し、乙第10号証の1の事績書、第11号証の整理票の記載によれば、平成9年4月11日にJ統括官が、整理票を自ら作成した上、申告審理の決裁を行っていることが認められるところ、仮に、C統括官が何らかの不正工作を画策しているのであれば、何らかの方法でJ統括官による申告審理を経ずに、本件申告書を処理する方法を採っていたはずであり、実際に、特定の団体に所属したもの等の申告については第1統括官が自ら事件を処理する場合もないわけではないにもかかわらず、そのような方法は採られていない。 (6) 小括以上によれば、C統括官がB税理士からの請託を受けて、本件申告書が適正なものであるかのような体裁を整え、虚偽の確定申告書であることが簡単には発見できない措置を講じたことを基礎付けるものは、B税理士の証言程度であり、確かにその供述内容は、C統括官への請託やC統括官の不正行為をうかがわせるものとはなっているが、上記のとおりその信用性は限定的なものといわざるを得ず、他の間接事実は、それが認められないか、上記事実を基礎付けるに足りないものといわざるを得ない以上、原告主張のC統括官の上記の不正行為を認めることはできないというべきである。したがって、その余の点を判断するまでもなく、原告の国家賠償請求は認められないこととなる。 第4 結論以上によれば、原告の請求は、本件第1賦課決定及び本件第2賦課決定の取消しを求める限度で理由があるから、これ の点を判断するまでもなく、原告の国家賠償請求は認められないこととなる。 第4 結論以上によれば、原告の請求は、本件第1賦課決定及び本件第2賦課決定の取消しを求める限度で理由があるから、これを認容することとし、その余の部分は、理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条本文を適用して主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官廣澤諭裁判官加藤晴子・(別紙)被告署長が本訴において主張する原告の平成8年分の課税長期譲渡所得金額及び納付すべき税額の算定根拠は以下のとおりである。 (1) 長期譲渡所得金額 8572万6444円この金額は、後記アからイ及びウを控除した金額であり、本件物件の譲渡に係る長期譲渡所得金額である。なお、本件物件の譲渡に係る所得及び税額の計算には措置法31条が適用される。 ア収入金額 9600万0000円この金額は、本件物件を原告が平成8年11月15日に株式会社タイセイハウスに譲渡した金額であり、原告が本件修正申告書に記載した収入金額と同額である。 イ取得費 648万9856円この金額は、後記(ア)及び(イ)の合計額である。 (ア) 本件土地の取得費 471万1060円この金額は、措置法31条の4の規定に基づき、前記アの収入金額から後記(イ)の金額を控除した金額に100分の5を乗じて算出した額であり、原告が本件修正申告書に添付して提出した「譲渡所得計算明細書」の本件土地の取得費 法31条の4の規定に基づき、前記アの収入金額から後記(イ)の金額を控除した金額に100分の5を乗じて算出した額であり、原告が本件修正申告書に添付して提出した「譲渡所得計算明細書」の本件土地の取得費の欄に記載されている金額と同額である。 (イ) 本件建物の取得費 177万8796円この金額は、本件建物の取得価額450万1000円から所得税法38条2項及び同法施行令85条(ただし、平成10年政令第104号による改正前のもの)の規定に基づいて求めた本件建物の減価の額を控除した後の金額であり、前記「譲渡所得計算明細書」の本件建物の取得費の欄に記載されている金額と同額である。 ウ譲渡費用 378万3700円この金額は、本件物件の譲渡に要した費用の合計額であり、前記「譲渡所得計算明細書」の譲渡に要した費用の欄に記載されている金額と同額である。 (2) 課税長期譲渡所得金額 8434万6444円この金額は、前記(1)の長期譲渡所得金額8572万6444円から、措置法31条3項に規定する特別控除額100万円及び所得税法72条以下に規定する所得控除の合計額38万円(この合計額は本件修正申告に係る額と同額である。)を差し引いた額である。 (3) 納付すべき税額 1925万3800円この金額は、後記アからイを控除した金額である(ただし、通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)。 ア課税長期譲渡所得金額に対する税額 1930万3800円この金額は、措置法31条1項3号に基づき、前記(2)の課税長期譲渡所得金額8434万6000円(ただし、通則法118条1項の規定に基づき、1000円未満の る税額 1930万3800円この金額は、措置法31条1項3号に基づき、前記(2)の課税長期譲渡所得金額8434万6000円(ただし、通則法118条1項の規定に基づき、1000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)から8000万円を控除した金額に100分の30を乗じて算出した金額に1800万円を加算した金額である。 イ特別減税額この金額は、平成8年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条に基づく金額であり、本件修正申告における金額と同額である。
▼ クリックして全文を表示