主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人木村康則、同機谷文明、同本橋一樹の上告理由第一点、第二点及び第三点について所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するに帰し、採用することができない。 同第四点について原審の適法に確定した事実関係の概要は、(1) 被上告人は、平成三年当時、D送電工事株式会社の代表取締役を務める四三歳の男性で、E証券F支店で一億円を超える株式の取引をしていた者であり、Gは、上告人の本店営業部所属の従業員であった、(2) Gは、平成三年一月一九日、かつて上告人のH支店における株式等の取引により損失を被ったことなどを理由に取引の開始を渋る被上告人に対し、上告人として法令により禁止されている利回り保証が可能であるかのように装い、まとまった金を預ければ、高利回りの保証で資金運用ができるとした上、年一五パーセントの利回り保証の約束をして株式投資の勧誘をし、その旨信用した被上告人に原判決末尾添付の「売買取引計算書」番号3以下のとおりの取引をさせた、(3)右取引の多くは、Gが自己の裁量で行い、被上告人には事後に報告していたものであり、被上告人は、本件一連の取引により、八〇〇〇万円を超える損失を被った、(4) 被上告人は、本件利回り保証の約束が成立した後に約束の書面化や履行を求- 1 -めてはいるが、自ら要求して利回り保証の約束をさせたわけではなく、Gの申出にひかれて取引を開始したにすぎない、(5) 右 上告人は、本件利回り保証の約束が成立した後に約束の書面化や履行を求- 1 -めてはいるが、自ら要求して利回り保証の約束をさせたわけではなく、Gの申出にひかれて取引を開始したにすぎない、(5) 右取引の過程で、上告人のI本店営業部長は、被上告人に対し、Gによる利回り保証の約束を確認するとともに、右約束ができる理由を具体的に説明し、また、J本店営業議長も、Gの右約束を前提に利回り保証の率を修正の上、取引を継続させた、というのである。 右事実関係の下においては、被上告人の不法性に比し、上告人の従業員の不法の程度が極めて強いものと評価することができ、上告人は不法行為に基づく損害賠償責任を免れないというべきであって、このように解しても、民法七〇八条の趣旨に反するものではない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右判断は、所論引用の各判例に抵触するものではない。 論旨は採用することができない。 同第五点について被上告人の過失割合を三割としたなど所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官高橋久子裁判官小野幹雄裁判官遠藤光男裁判官井嶋一友裁判官藤井正雄- 2 - 男 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄
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