平成15年3月26日高知地方裁判所判決平成13年(わ)第186号,第210号背任被告事件 主文 1 被告人A1を懲役1年2月に,被告人A2を懲役1年に処する。 被告人A1及び被告人A2に対し,未決勾留日数中各100日を,それぞれその刑に算入する。 この裁判が確定した日から,被告人A1及び被告人A2に対しいずれも2年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 訴訟費用のうち,証人B1に支給した分は被告人A1及び被告人A2の連帯負担とする。 平成13年5月31日付け起訴に係る公訴事実については,被告人A1及び被告人A2はいずれも無罪。 2 被告人A3は無罪。 理由 第1 本件公訴事実の要旨本件公訴事実の要旨は,次のとおりである。すなわち,「被告人A1は,B県(以下,単に「県」ともいう。)副知事として,県知事を補佐し,県の予算の調製及び執行を含め,県の事務全般を統括し掌理していたもの,被告人A2は,県商工労働部長として,被告人A3は,同部商工政策課長として,それぞれ,県の中小企業対策事業に係る貸付け等の事務を分掌していたものであるが,県内企業に対して貸付けを行うに当たっては,県議会の議決を経た予算の定めるところに従って行わなければならず,さらに個々の貸付けを実行するに当たっても,貸付先の資産,経営状態の確実性などを十分調査して貸付けの当否を慎重に検討するとともに,確実かつ十分な担保を徴求するなど貸付金の安全確実な回収のための適切な措置を講じ,県に損害を加えることがないようその職務を遂行すべき任務があったところ,第1(被告人3名に対する各背任の公訴事実として)高知県南国市ab丁目c番地dに主たる事務所を置く協業組合C(代表理事C1,以下「C’」ともいう。)に対して の職務を遂行すべき任務があったところ,第1(被告人3名に対する各背任の公訴事実として)高知県南国市ab丁目c番地dに主たる事務所を置く協業組合C(代表理事C1,以下「C’」ともいう。)に対しては,既に中小企業事業団法に基づく中小企業高度化事業(特定)資金(以下「高度化資金」という。)として,平成7年4月10日に4億9100万円,平成8年5月30日に9億5250万円を貸し付け,その際,前記C1らが,同事業計画において必要とされる自己資金の調達をせず,借入金による見せ金増資によりこれを仮装するなどし,県から高度化資金を詐取したことが判明していたばかりか,C’の業績は悪化するばかりで回復の見込みもなく,自己資金の不足などから資金繰りに窮して破綻の危機にあり,高度化資金の償還のめども立たず,県が新規貸付金の担保として徴求する物件の担保価値もなかったのであるから,このような状況下,C’に新規貸付けを実行すれば,その債権の回収の見込みのないことを十分認識していながら,被告人3名は,共謀の上,自己らの保身及びC’の利益を図り,県に損害を加える目的をもって,前記任務に背き,本件貸付けに係る予算につき県議会の議決を受けず,かつ,貸付債権の回収のための確実かつ十分な担保を徴求せず,他に確実な回収をするための適切な措置を講じることもなく,同年9月25日,ことさらC’だけを貸付け対象とする内容の「平成8年度地域産業高度化支援資金制度要綱」を定めた上,C’に対し,同年9月27日に6億1900万円,同年11月15日に1億円,同月29日に1億円,同年12月13日に1億8450万円の合計10億350万円の貸付けを実行し,よって,同貸付金の回収を著しく困難にさせ,もって,県に同額の財産上の損害を加え<平成13年5月31日付け起訴に係る公訴事実>,第2(被告人A1及 50万円の合計10億350万円の貸付けを実行し,よって,同貸付金の回収を著しく困難にさせ,もって,県に同額の財産上の損害を加え<平成13年5月31日付け起訴に係る公訴事実>,第2(被告人A1及び同A2に対する背任の公訴事実として)県は,C’に対し,前記のとおり,平成7年4月10日に4億9100万円,平成8年5月30日に9億5250万円を貸し付け,続いて「平成8年度地域産業高度化支援資金」として同年9月27日から同年12月13日までの間に計10億350万円を貸し付けており,さらに高度化資金貸付けの際,C1らが,その事業計画において必要とされる自己資金の調達をせず,借入金による見せ金増資によりこれを仮装するなどし,県から高度化資金を詐取したことが判明していたばかりか,C’の業績は悪化するばかりで回復の見込みもなく,自己資金の不足などから資金繰りに窮して破綻の危機にあり,前記各貸付金の償還のめども立たず,県が新規貸付金の担保として徴求する物件の担保価値もなかったのであるから,このような状況下,C’に新規貸付けを実行すれば,その債権の回収の見込みのないことを十分認識しながら,被告人A1及び同A2は,共謀の上,自己らの保身及びC’の利益を図り,県に損害を加える目的をもって,前記任務に背き,本件貸付けに係る予算につき県議会の議決を受けず,かつ,貸付債権の回収のため確実かつ十分な担保を徴求せず,他に確実な回収をするための適切な措置を講じることなく,「平成9年度産業パワーアップ融資資金」として,平成9年12月25日,C’に対し,2億円の貸付けを実行し,よって,同貸付金の回収を著しく困難にさせ,もって,県に同額の財産上の損害を加えた<平成13年6月21日付け起訴に係る公訴事実>。」というものである。 なお,第13回公判期日冒頭において,検察官は,① って,同貸付金の回収を著しく困難にさせ,もって,県に同額の財産上の損害を加えた<平成13年6月21日付け起訴に係る公訴事実>。」というものである。 なお,第13回公判期日冒頭において,検察官は,①第1における「自己らの保身及びC’の利益を図り」の実質的内容は,C’が破たんする事態になれば,県民,県議会,D同盟幹部らにより,C’に対する高度化資金貸付けに際しての行政組織としての県の調査,指導内容等を行政上の大失態として厳しく批判され,被告人3名を含む,県の関係職員の責任問題に発展することが必至であると見込まれるため,C’に更なる融資を行って経済的利益を得させ,その破たんを防止して前記責任問題の発生を回避することである旨を,②第2における「自己らの保身及びC’の利益を図り」の実質的内容は,C’が破たんする事態になれば,県民,県議会,D同盟幹部らにより,前同様の高度化資金貸付けに際しての県の調査,指導内容等に加え,その後の貸付けを含めた県の対応等を行政上の大失態として厳しく批判され,被告人A1及び同A2を含む,県の関係職員の責任問題に発展することが必至であると見込まれるため,前同様にC’に経済的利益を得させ,その破たんを防止して前記責任問題の発生を回避することである旨を釈明した。 第2 事案の概要と訴訟経緯等 1 事案の概要本件事案の概要は,次のとおりである。すなわち,県下に本拠をおき,400名を超える従業員を擁していわゆる同和縫製業を営んでいたC’は,高度化資金貸付制度を利用して,県から,平成8年5月末までに,二度にわたって総額14億4350万円もの貸付けを受けていたものであるが(以下,この二度の貸付けを総称して「本件高度化資金貸付け」,平成7年4月の貸付けを「第1次高度化資金貸付け」,平成8年5月の貸付けを「第2次高度化資金貸付け」と もの貸付けを受けていたものであるが(以下,この二度の貸付けを総称して「本件高度化資金貸付け」,平成7年4月の貸付けを「第1次高度化資金貸付け」,平成8年5月の貸付けを「第2次高度化資金貸付け」という。),もともと財務状態が悪化して資金繰りに窮し,民間金融機関からの新規融資を断られ,第2次高度化資金貸付けにより,かろうじて倒産を免れるといった状況であった上,その背景には,C’の母体となった組合員5社を経営していたC1が,高度化資金貸付けを受け終わるまでの一連の手続において,県担当者らとの間で,C’が吸収合併することによって協業化する組合員5社の債務は承継しない,高度化事業に必要とされる設備投資等の資金のうち,概ね2割に相当する分は組合員5社の資金を増資し,これを基に調達する旨を約し,B県の診断業務等を補助するE事業団に対してもその旨を説明し,これを前提にして高度化事業計画の作成及び診断が行われて高度化資金貸付けを受けていたのに,実際には,組合員5社の債務を承継し,かつ,組合員5社の各増資と,これに基づくC’の増資を,新工場の建築を請け負った建設会社の役員らと共謀して,同社からの一時的な借入金を原資として,現実に増資したかのように仮装するなどしていたため,高度化事業計画実施の前提を欠き,同計画に沿った円滑な事業の遂行がもともと困難な財務状態にあったことが大きく影響しており,第2次高度化資金貸付けを受けた後も,新工場が落成する一方で,第三者から運転資金の融通を受けることができなければ早晩倒産するというほどに資金繰りが逼迫し,民間金融機関による援助も直ちには期待できない事態に陥っていたところ,被告人A2及び同A3が在籍していた県商工労働部(以下「商工労働部」ともいう。)が中心となって,C’の倒産を回避するため,前記公訴事実記載の要綱等を制定 直ちには期待できない事態に陥っていたところ,被告人A2及び同A3が在籍していた県商工労働部(以下「商工労働部」ともいう。)が中心となって,C’の倒産を回避するため,前記公訴事実記載の要綱等を制定した上,副知事であり,同和対策本部長でもあった被告人A1の最終的な支出負担行為の決裁の後,出納部門による手続を経て,これに沿って,議会による個別的,具体的な承認を受けることなく,平成8年9月から同年12月にかけて総額10億350万円を貸し付けたものの(以下,この貸付けを「第1次貸付け」という。),なおもC’の業績が改善せず倒産の危機を迎えたため,平成9年12月に2億円を貸し付けたが(以下,この貸付けを「第2次貸付け」といい,第1次貸付けと総称して「本件貸付け」ともいう。),結局,C’は平成13年5月31日操業停止に至り,本件貸付分を含めて元金だけでも26億4700万円,金利を合わせれば,32億8529万円余りが回収不能に陥っているという事案である。 2 起訴に至る経緯等前記要綱については公開されず,C’が不採算工場を分離して事業規模を縮小しながらも経営を続け,直ちに倒産しなかったこともあって,本件貸付けは県民らが知るところではなかったが,平成12年3月1日,地元紙が「県が12億円やみ融資」,「制度隠し予算流用」等と大きく報道したことをきっかけとして,一連の外形的経緯が明らかになり,県の対応が非難の対象となり,同月25日には,県議会に,いわゆる百条委員会である,「特定の協業組合に対する融資問題等調査特別委員会」が設置され,C1や,被告人A1,同A2をはじめとする県関係者ら多数が次々に証人として尋問を受けるなど,事案の全貌について解明するべく努力が重ねられ,平成13年2月1日,百条委員会委員ら14名は,B県警察本部に対し,被告人3名他1名を背任 はじめとする県関係者ら多数が次々に証人として尋問を受けるなど,事案の全貌について解明するべく努力が重ねられ,平成13年2月1日,百条委員会委員ら14名は,B県警察本部に対し,被告人3名他1名を背任罪で告発した。B県警及びB地方検察庁の捜査の結果,同月中に,C1,C’副理事長のC2及び前記増資の仮装工作に関与した者ら2名が,県から第1次高度化資金4億9100万円を詐取したとして逮捕された。その後,被告人3名は,前記公訴事実第1に係る背任の容疑で,同年5月10日逮捕され,勾留を経て,同月31日に起訴され,更に被告人A1及び同A2は,前記公訴事実第2に係る背任の容疑で,同日逮捕され,勾留を経て,同年6月21日,起訴されるに至った。捜査段階では,被告人3名は,いずれも本件貸付けの目的が,議会や県民,同和団体からの責任追及を回避するという「自己保身」を図ることにあったことをはじめ,任務に違背したこと,損害の故意があったことを認める旨の供述をするに至っていた。被告人3名の他に,本件貸付けにより起訴された県関係者はいない。 3 第1回公判期日における被告人3名の認否について(1) 被告人A1は,平成13年10月12日付け認否書に基づき,本件各公訴事実について,いずれも客観的な事実経緯は認めつつ,公訴事実第1について,①債権回収のための確実かつ十分な担保を徴求していなかったことは間違いないが,貸付けの当否の判断や担保の徴求の程度については,民間金融機関が行う融資と行政が行う融資とで異なるものと考えている,②C1らが県から高度化資金を詐取したことが判明していたことは間違いないが,詐欺の被害があったとまでの認識はなかった,③C’の業績を好転させ,地域産業としての縫製業を育成し,400名の雇用の場を創出するとともに地域住民の自立を実現するため,10億350 ことは間違いないが,詐欺の被害があったとまでの認識はなかった,③C’の業績を好転させ,地域産業としての縫製業を育成し,400名の雇用の場を創出するとともに地域住民の自立を実現するため,10億350万円を貸し付けたものであり,業績が好転すれば民間金融機関が支援に乗り出すことも期待でき,C’の償還能力がゼロであるとは考えていなかったし,自己らの保身やC’の利益を図っておらず,県に損害を加える目的はなかった,④県議会の議決を受けていないが,融資の方法として妥当ではないと思ったものの,執行科目でもあり,違法とまでの意識はなかった,⑤結果として損害を加えることになったが,融資時には損害を加える認識はなかった旨を述べ,公訴事実第2について,前記①②④⑤の他,⑥赤字工場を分離し,リストラを図るなどしてC’を存続させ,長期的にではあるがこれまでの貸付金の回収を少しでも行い,県への損害を少なくしようと考えており,償還能力がゼロであるとは考えていなかった旨を各供述し,弁護人も同旨の意見を述べた。 (2) 被告人A2は,同月11日付け認否書に基づき,本件各公訴事実について,いずれも客観的な事実経緯は認めつつ,公訴事実第1について,①C’の業績の回復が不確実で,高度化資金や本件融資の回収が困難な事態となる可能性が大きいことの認識はあったが,「C’の業績は悪化するばかりで回復の見込みもなく」との点や「高度化資金の償還のめどもたたず」との点及び「その債権の回収の見込みのないことを十分認識しながら」との点は否認する,②「C1らが高度化資金を詐取したことが判明していた」との点は,自己資金が仮装されていたことの認識はあったが,詐取されていたとの思いまではなかった,③自己らの保身及びC’の利益を図り,県に損害を加える目的で融資に及んだものではなく,400名を超える従業員の は,自己資金が仮装されていたことの認識はあったが,詐取されていたとの思いまではなかった,③自己らの保身及びC’の利益を図り,県に損害を加える目的で融資に及んだものではなく,400名を超える従業員の雇用の場を確保し,同和対策事業を継続させるためには本件貸付けが必要であり,その回収ができない事態が生じても,また,任務に違背しても許されると思い,貸付けを承認した旨を述べ,公訴事実第2についても同旨を述べた。弁護人は,これに付加して,損害の発生については未必的な限度で認める,今後法律上の錯誤を主張する趣旨である旨の意見を述べた。 (3) 公訴事実第1のみ起訴されている被告人A3は,事実を認め,「ご迷惑をかけ申し訳ありません。」と述べ,弁護人は,公訴事実は争わないが,検察官の主張する「自己保身」,「C’の利益を図り」は従たる目的に過ぎず,「県に損害を加える目的をもって」とあるが,未必的な認識しかなかったものである旨の意見を述べた(なお,後記のとおり第13回公判期日において認否を変更した。)。 4 認否後の訴訟経緯について(1) 第1回公判期日においては,検察官の冒頭陳述及び証拠請求が行われ,被告人3名は,検察官請求証拠の全部の取調べに同意し,当裁判所はいずれも採用決定し,平成13年10月29日の第2回公判期日においてこれらを取調べ,これにより,検察官の立証は終了した(なお,当裁判所は,第1回公判期日終了後,被告人A1及び同A2について,県関係者34名他,一切の事件関係者との弁護人を介さない面談,連絡を禁止するなどした上,保釈を許可した。)。 (2) 同年12月10日の第3回公判期日において,被告人3名の各弁護人は,それぞれ,要旨以下のとおりの冒頭陳述を行い(被告人A3の弁護人は,同A1の弁護人及び同A2の弁護人の各冒頭陳述を援用した。),被告人A 12月10日の第3回公判期日において,被告人3名の各弁護人は,それぞれ,要旨以下のとおりの冒頭陳述を行い(被告人A3の弁護人は,同A1の弁護人及び同A2の弁護人の各冒頭陳述を援用した。),被告人A1の弁護人は,同和問題を避けては,本件貸付けの真相は明らかにならないのに,検察官が同和問題について捜査,検討した形跡は皆無であり,検察官の本件貸付けに対する認識は一面的で,かつ,皮相的であるとした上で,①同和問題解決の重要性と国の法整備,②県における同和問題と同和対策審議会の動き,③県における同和対策事業の残された課題,④県のC’に対する融資の可否決定における考慮要素,⑤C’の償還可能性などについて詳細な主張をし,被告人A2の弁護人は,骨格をなす客観的事実については大きな争いがあるわけではなく,もっぱら被告人の主観や,これらに対する評価が問題であると総括しつつ,本件貸付けの同和対策事業としての側面を詳細に主張した上,「やみ融資問題の責任を事件の当事者だけに押しつけるべきではないし,県政改革をひとり県庁内部の問題に矮小化すべきでない。県組織と関連のある金融機関,県議会,各種団体等が相互に絡み合った問題と捉えなければ,改革の道筋は見えてこまい。」とする地元紙の記事を援用して,論を結んだ。 (3) 以降,当裁判所は,県関係者等の証人尋問と,弁護人らの主張を基礎づける書証の取調べを行ったが,出廷した県関係者は,ひとしく,捜査段階における供述とは異なり,本件貸付けの目的等について,被告人3名に有利とみられる内容を含む供述をし,第13回公判期日においては,被告人A3が,「かつての部下の勇気ある証言を聞き,真実を話して自分の判断の誤りが,犯罪として断罪されるべきものであるか否かを明確にすることが,被告人A1をはじめ多くの県職員に対する責務であると考え,また 3が,「かつての部下の勇気ある証言を聞き,真実を話して自分の判断の誤りが,犯罪として断罪されるべきものであるか否かを明確にすることが,被告人A1をはじめ多くの県職員に対する責務であると考え,また,県政への信頼の回復の一助にでもなればと思い,①C1らが,見せ金により増資を仮装して県から高度化資金を詐取していたことを知っていたという点,②債権の回収の見込みのないことを十分認識していたという点,③自己の保身及びC’の利益を図り,県に損害を加える目的をもって任務に背いて融資に及んだという点については,事実と異なるので,従前の認否を変更する。」旨を述べ,第1回公判期日における認否を変更し,弁護人もこれに沿う意見を述べた。以降,順次施行した被告人質問において,被告人3名は,前記のとおり本件貸付けの動機や任務違背の有無,損害の認識等を,基本的な事実経過にまで一部さかのぼりながら具体的に争い,捜査段階において検察官の主張に沿う内容の供述をしたのは,厳しい取調べや,他の職員をおもんぱかったからであるなどという点を含め,取調べの状況等についても詳細に供述して,無罪を主張している。 第3 検察官の主張の特徴及び当裁判所の検討方針 1 第1次貸付けの実行が開始された平成8年9月ころ,及び,第2次貸付けが実行された平成9年12月ころ,民間金融機関による,C’に対する支援は期待できず,仮に,県が本件貸付けをそれぞれ実行しなければ,ほぼ間違いなくC’が倒産すると見込まれる状況にあったことは,証拠上明らかであるところ,C’が現実に倒産するに至った場合,反射的に,ことに第1次貸付けの際においては,400名を超える従業員が失業し,詳細な内容は後記第9のとおりであるが,かねてより同和対策審議会等が県行政に対し要請してきた指針及び同和対策審議会やB県工業振興計画が従前より県行 付けの際においては,400名を超える従業員が失業し,詳細な内容は後記第9のとおりであるが,かねてより同和対策審議会等が県行政に対し要請してきた指針及び同和対策審議会やB県工業振興計画が従前より県行政に対して提示し,要請してきた,同和地域における就労の場の確保,県下における地場産業の振興等の政策目的の実現が損なわれ,その復元が容易でない情勢に陥るという結果が確定的に生じ,それまでに貸し付けた高度化資金の償還を受けることも困難な状況に陥ることをたやすく予測できる状況にあり,同時に,このような結果を生じたことや,従前の高度化資金貸付手続における県の審査等の対応について,県民や県議会から非難され,同和対策事業の推進を高唱していた特定の同和団体幹部から,正当なものであるかどうかはともかくとして,批判を免れない事態になることも,県の幹部職員である被告人3名からすれば,容易に予測できる状況にあったと思われる。そうすると,各被告人の主観面はさておき,客観的にみて,県がC’に対し,明白かつ現在している倒産の危機を当面回避するために必要な運転資金を貸し付けることにより,前記の批判が回避される結果になるというだけでなく,将来にわたる雇用の場の維持,確保,地場産業の振興といった,同和対策審議会や工業振興計画が県行政に提示してきた方向性を維持し,時機をみて民間金融機関による支援に引き継ぐに足りるまでに業績を改善させるという効果を期待する余地がなかったものとは,とくに第1次貸付けにおいてはたやすく断言できず,このような状況下で行われた貸付けは,本来的に,政策的な緊急援助というべき性格を有している可能性を考慮に入れるべきである。第2次貸付けにおいても,C’が倒産した場合に生じる結果の重大さを考えると,当初から,同様の性格が皆無だったと考えることはできない。なお,関 というべき性格を有している可能性を考慮に入れるべきである。第2次貸付けにおいても,C’が倒産した場合に生じる結果の重大さを考えると,当初から,同様の性格が皆無だったと考えることはできない。なお,関係者の供述中には,単なる一企業に対する貸付けには公益性がないとか,中立性に問題があるという見解が示されているけれども,公益性の有無等は,貸付けの対象が一企業であるか否かによって直ちに決せられるべき問題ではなく,その企業が果たしている社会的役割等によって総合的に判断されるべき事柄であり,仮に,公平性ないし中立性の点に問題があったとしても,それ自体は,政治的な次元において批判の対象となり得ることは格別,直ちに背任罪の成立と結びつくものとはいえない。 2 公務員が,行政裁量に名を借りて,もっぱら,自己の財産的利益や保身といった純然たる個人的利益あるいは第三者の個人的利益を追求していることが客観的に明白な事案であれば,政策的側面を格別考慮に入れるまでもないといえるかもしれないけれども,本件では,被告人3名を含め県関係者には何らの経済的利得が生じておらず,貸付対象もC1個人ではなく,C’がC1の個人会社という実質も備わっておらず,C’に仮託してC1ら特定の個人の利益を図っていたともみられないことなどに照らすと,本件がそのような事案でないことは明らかである。また,回収不能になった金額は高額であるが,第1次貸付けから操業停止までには4年以上が経過しているのであり,当時,C’の事業が存続する見込みや償還の見込みが全くなかったなどという,政策性を一概に否定できるような前提に当然に立てるわけでもない。そして,民間金融機関による私企業に対する倒産回避を図った救済的な融資を考えた場合,その倒産に伴い,既存債権を回収する見込みが断たれる結果となるけれども,新規融資の回 提に当然に立てるわけでもない。そして,民間金融機関による私企業に対する倒産回避を図った救済的な融資を考えた場合,その倒産に伴い,既存債権を回収する見込みが断たれる結果となるけれども,新規融資の回収見込みが乏しいのに,融資先の私企業の倒産という事態を回避して,危険を冒してまで既存債権の回収を図ろうとするのは,自身の営利,経済的利潤の追求を本来的な目的とする民間金融機関の任務として重要視するのは相当でなく,その回収が危ぶまれるような融資に及んだ場合には,担当者において既存債権回収を意図して倒産回避等の効果を期待していたとしても,そのことから,直ちに主として「本人である民間金融機関の利益を図ったもの」とみるのは困難である場合が多いといってよい。 これに対し,地方公共団体が介入する場合には,民間金融機関には必ずしも期待できず,また,期待すべきでもない領域にわたって,多様かつ無形的な地域住民全体の福祉を増進することが期待ないし要請されていることなどに照らし,経済合理性の観点のみから,民間金融機関における場合と同列に論じることは相当でない。以上の点を考慮すると,被告人3名に背任罪が成立するか否かを検討するに際しては,政策的な側面と,責任追及の回避という,自己保身という言葉で表現するのが適切であるかどうかは疑問があるにしても,利己的な保身のための貸付けという側面の双方にわたって配慮することが不可欠である。 3 ところで,前記公訴事実をはじめ,冒頭陳述,検察官調書の内容,検察官の証人や被告人らに対する尋問内容等に照らすと,検察官は,被告人3名が本件貸付けに及んだ動機について,もっぱらC’が倒産するに至った場合に生じるであろう,被告人3名自身やその他の県関係者に対する責任追及を回避することにあったとみて,本件貸付けを,いわば全く利己的な動機を決定的なもの だ動機について,もっぱらC’が倒産するに至った場合に生じるであろう,被告人3名自身やその他の県関係者に対する責任追及を回避することにあったとみて,本件貸付けを,いわば全く利己的な動機を決定的なものとしつつ,行政機関としての県の組織防衛の意図にも基づくものとして捉える一方,政策面を何ら考慮していないことが明らかであって,論告においても,「本件については(自己保身等の)不法な目的以外,例えば政策達成のためなどの目的はいっさい認められない。」と断じ(論告要旨21頁),被告人3名はじめ弁護人らがひとしく主張する,同和対策事業の一環としての側面には何の言及もなく,被告人3名の各公判供述を,刑事責任を回避するための虚偽の弁解として一蹴している。また,県関係者の公判供述のうち,当該関係者の検察官調書と,相反したり実質的に異なる供述部分は,今もなお県に奉職している立場を考え,かつての自己の判断,行動を正当化するための,虚偽のものと断定している。被告人A2の弁護人は,検察官が政策目的がなかったと断定したことを受けて,弁論において,「なぜここまで頑なに断定するのか。その見識を疑わざるを得ない。」と論じたが,検察官が,政策目的を徹底して排斥する背景には,政策面を考慮する余地があるとすれば背任罪の成立に疑問が生じる可能性があるという一般論だけでなく,①本件貸付時の状況下においても,公訴事実の要旨に記載したとおりの職務遂行上の任務があったことを所与の前提として,②被告人3名はC1らが高度化資金を詐取していたことを知っていた,③利益ないし担保からの償還可能性はほぼ皆無であり,被告人3名はそれを知悉していた,という2点を揺るぎのない前提事実として据えた上で,民間の一企業に,償還可能性がないことが分かっていて,しかも,県に対する詐欺行為に及んだ者に対して,単なる延命 り,被告人3名はそれを知悉していた,という2点を揺るぎのない前提事実として据えた上で,民間の一企業に,償還可能性がないことが分かっていて,しかも,県に対する詐欺行為に及んだ者に対して,単なる延命策としかみられない不正融資を行ったという結論を導き,そこから,政策面を云々するまでもなく,本件貸付けには政策目的が全くなく,もっぱら自己や県関係者に対する県民らからの責任追及の回避に出たとみるべきである,との結論を導こうという,一貫した発想が見受けられる。確かに,①を前提とした場合に,②③の双方またはいずれか一方が明らかに認められれば,政策面を云々する必要性が乏しくなり,背任罪の成立を強く推認できるであろうことは,当裁判所も否定しない。 4 弁護人らの政策面に関する詳細な主張,立証が公判で展開された後においても,検察官の前記発想が何ら動揺していないことに照らすと,捜査段階での検察官のこのような発想は相当強固なものであったと考えられる。現に,捜査段階で収集された証拠を子細に検討すると,被告人3名の検察官調書は,程度の差こそあれ,「自己保身」で貸し付けたことをはじめ,前記①ないし③について検察官の発想に沿った供述で最終的に整合され,400名の雇用を維持する重要性であるとか,県行政に対する,同和対策審議会答申や工業振興計画のもつ影響等については,具体的な記載に乏しい。また,本件貸付けに際しては,県関係者だけをみても,被告人3名以外に,商工労働部商工政策課(以下「商工政策課」という。),同部経営流通課(以下「経営流通課」という。),同部工業振興課(以下「工業振興課」という。),総務部財政課(以下「財政課」という。),出納室の職員ら多数が関与しており,被疑者として取調べを受けた者も多数であるところ,起訴されなかった県関係者の検察官調書の内容は,おしなべ 興課」という。),総務部財政課(以下「財政課」という。),出納室の職員ら多数が関与しており,被疑者として取調べを受けた者も多数であるところ,起訴されなかった県関係者の検察官調書の内容は,おしなべて,被告人3名は自己保身のために本件貸付けに及んだとか,単なる民間の一企業に対する貸付けに公益性があるはずもない,償還可能性は全くなかった,組織の一員として上司には逆らえなかった,執行部門の判断を信頼し尊重したなどという,被告人3名に不利益である反面,自己にとっては有利に働きうる内容になっており,しかも,被告人3名の内心を検察官の主張に沿う内容で忖度した部分など,やや誇張であるとも思われる供述が,前記①ないし③に結びつく箇所の供述部分になればなるほど目立っている。そして,被告人3名はじめ,出廷した県関係者らは,ひとしく捜査官による誘導や押しつけがあった旨を供述している。さらに,もともと県から高度化資金を詐取していたC1の検察官調書は,前記②③について,検察官の主張に沿っており,本件貸付けについて,被告人3名ら県関係者が責任追及を恐れて自己保身のために貸し付けてくれた,「公務員特有の性質が何よりも強く出た馬鹿げた貸付け」等と総括されているが,C1が取調べ時に置かれていた立場を考えると,仮に県関係者が実情を知らずに政策目的で貸し付けていたとなった場合には,逆にC1自身が,本件貸付けについて更に重い責任を問われかねなかったものと思われるのであり,責任転嫁を図っている可能性を考慮に入れる必要がある。加えて,C’の監事には,D同盟幹部が名を連ねていて,例えば被告人A2の検察官調書(乙17)では,D同盟B県連合会副委員長で,C’の監事でもあったD1の人物像として,「A1副知事へしょっちゅう電話を入れたり,事前のアポを入れることなく,副知事室を訪ねたりする人 人A2の検察官調書(乙17)では,D同盟B県連合会副委員長で,C’の監事でもあったD1の人物像として,「A1副知事へしょっちゅう電話を入れたり,事前のアポを入れることなく,副知事室を訪ねたりする人」である旨の供述記載や,被告人A2の下に,D1らD同盟幹部がC1とともに支援要請に訪ねてきた旨の供述記載があるのをはじめ,第2次貸付けに至る経緯においては,e町にあるC’のf工場の分離をめぐって,D1が強い抵抗を示し,これがC’の存続に悪影響を及ぼした節も窺われるのであり,被告人らが本件貸付けに及んだ背景に,当不当はともかく,同和団体ないし同和団体幹部の一定の関与があるとみられるのに,D1ら同和団体幹部の関係供述はいっさい公判廷に現れておらず(ちなみに,検察官が当裁判所に対し保釈請求等の判断資料として提出した捜査報告書をみても,同和団体幹部らに対する取調べが行われて調書が作成された形跡は見当たらない。),冒頭陳述や論告においても,事実経緯に関する記述中においてですら,同和団体幹部の関与はいっさい捨象されている。被告人A3の公判供述中,取調べ時における,警察官や検察官の対応に関する供述については相当に迫真性があって,概ね信用することができるところ,被告人A3は,平成13年1月から,任意での取調べの対象となり,当初は,同和団体からの圧力によって貸付けに応じざるを得なかったという捜査方針で,比較的穏やかに追及されていた旨を供述しており,捜査機関は,当初,同和団体幹部の影響を視野に入れて捜査を進めていたのではないかと考えられるが,同和対策事業に伴うある程度の問題性を考慮しても,本件は,同事業としての一面を考慮してよい事案であったはずであるのに,起訴段階では,同和対策事業としての側面や同和団体の影響等にはいっさい触れられておらず,捜査側の本件貸付けに 問題性を考慮しても,本件は,同事業としての一面を考慮してよい事案であったはずであるのに,起訴段階では,同和対策事業としての側面や同和団体の影響等にはいっさい触れられておらず,捜査側の本件貸付けに対する見方が,同和団体ないしその幹部の圧力による貸付けから,「被告人3名がもっぱら自己の保身を図った利己的な犯罪」へと,転回した形跡もないではない。 以上を考慮すると,捜査段階において,最終的に検察官の前記発想に沿ったかたちで事案が収斂するように,被告人3名はじめ,関係者多数の供述が導き出された可能性を念頭に置いた上で,それら各検察官調書の記載内容の信用性を十分吟味しなければならない。 5 本件貸付けには,被告人3名はもとより,多数の関係者が関与し,それまでの背景にも複雑な事情が窺えるところ,以上の点を踏まえ,当裁判所は,検察官調書の内容を検討するに際しては,第1回公判期日において同意されているとはいえ,その信用性を慎重に吟味しつつ,客観的なメモの記載及びそれから自然に導かれている供述を中心に,供述者の,自己以外の他人の内心を忖度した供述や,計画の内容についての評価等,誇張,歪曲等を含みうる供述部分を可能な限り除いた上で,C’に対する県の関与の由来及びその過程における被告人3名の位置づけをできるだけ明らかにするため,C’の設立経緯にまでさかのぼって,本件貸付けに至る基礎的な事実関係を認定し(後記第6,第7),とくに強く争われている事実経過中の争点について,認定の理由を示し(後記第8),以降,同和対策事業におけるC’や商工労働部の位置づけ(後記第9),被告人3名の刑法上の任務違背の有無,損害発生の認識の有無及び程度(後記第10,11),融資に及んだ動機ないし目的(後記第12)について,順次検討を加えることとする。 なお,以下の記載において ,被告人3名の刑法上の任務違背の有無,損害発生の認識の有無及び程度(後記第10,11),融資に及んだ動機ないし目的(後記第12)について,順次検討を加えることとする。 なお,以下の記載において,括弧内に甲乙等の別を付して記した番号は,当該事実等の認定に用いるなどした主な当事者請求証拠番号を指し,被告人3名はじめ関係者の供述は,捜査段階,公判段階のいずれを問わず「○○の供述」という。また,法人名,団体名,役職,姓名等はいずれも当時のものである。 第4の1 被告人3名の身上経歴 1 被告人A1について被告人A1は,旧制中学校を卒業後,昭和23年5月県職員に採用され,昭和42年4月から昭和53年3月まで総務部財政課に在籍し,同年4月から2年間,同部知事公室副参事として,議会と知事の連絡調整にあたり,昭和55年4月から昭和61年3月に県企画部長を最後に退職するまでの間,企画部に在籍し,その間の昭和60年4月からの1年間は,充職である県同和対策本部副本部長を務めた。退職後は,社団法人理事長に就任していたが,平成3年7月に県出納長に,平成4年7月に県副知事に選任され,平成8年7月11日に再任され,平成10年3月31日に辞職するまでその任にあり,予算の調製,執行を含めB県の事務全般を掌理し,B県事務処理規則に基づき,知事が不在の場合に知事に代わって決裁を行うべき代決権及び知事に代わってその権限に属する事務の処理を常時決裁するべき専決権を付与され,とくに平成7年7月以降は,1件3000万円以上の貸付けについて専決権を有していた。また,同時に県同和対策本部長でもあった。 2 被告人A2について被告人A2は,大学卒業後,昭和38年7月に県職員に採用され,昭和45年以降,主として総務,企画関連の部署に在籍し,平成8年4月1日から平成11年3月31 部長でもあった。 2 被告人A2について被告人A2は,大学卒業後,昭和38年7月に県職員に採用され,昭和45年以降,主として総務,企画関連の部署に在籍し,平成8年4月1日から平成11年3月31日までの間,県商工労働部長としてその任にあたっていた。 3 被告人A3について被告人A3は,大学卒業後,昭和43年4月に県職員に採用され,昭和52年3月まで,主に福祉関係の部署に在籍し,その後,昭和59年4月から平成元年3月まで,商工労働部工業課企業立地班長として,同年4月から平成3年3月まで同部商工振興課課長補佐として,商工行政に携わり,その間,F電機B工場の建設事業や,B中小企業団地の整備事業,B西南中核工業団地の開発整備事業等に関与した。そして,平成3年4月から企画部,地域改善振興局地域改善課長を経て,平成7年4月に商工政策課長となり,平成9年3月まで在任し,同年4月,海洋局次長として転出した。 第4の2 B県商工労働部について商工労働部は,B県部設置条例により設置され,同条例により,商業,鉱工業等に関する事項を分掌している。同部内には,B県行政組織規則により,中小企業に対する金融等を所管する商工政策課,経営流通課(平成8年3月までは「経営指導課」),地域産業の振興や地場産品の販路拡大等を所管する工業振興課(以下,この3課を総称して「商工3課」あるいは単に「3課」という。)等7課が置かれており,高度化資金貸付制度にあっては,商工政策課に置かれた金融班,経営流通課に置かれた工業診断班が中心となって手続が進められていた。 第5 高度化資金貸付制度及び協業組合の各概念について 1 「中小企業の企業規模の適正化,事業の共同化,工場,店舗等の集団化,事業の転換及び小売商業における経営形態の近代化を図ること」を中小企業構造の高度化と総称し(中 制度及び協業組合の各概念について 1 「中小企業の企業規模の適正化,事業の共同化,工場,店舗等の集団化,事業の転換及び小売商業における経営形態の近代化を図ること」を中小企業構造の高度化と総称し(中小企業基本法3条4号),この目的を達成するために実施される事業を総称して高度化事業と呼ぶ。高度化資金貸付けとは,中小企業事業団法21条1項により,中小企業者が協業組合等を設立して自ら高度化事業を実施する場合に,その用に供する土地,建物その他の施設を取得し,造成し,設置するのに必要な資金(高度化資金)の一部を,都道府県がE事業団(なお,E事業団は,本件融資の後である平成11年7月に他機構と統合されて,E総合事業団となっている。)からの借入金と都道府県の予算を原資として,長期間,低利で貸し付ける制度をいう。したがって,同制度は,設備投資の原資を融通する制度であり,運転資金を融通する通常の融資制度とは異なる。 したがって,高度化資金貸付制度においては,貸付対象施設及び貸付金の使途目的が限定され,貸付けを受ける中小企業者には,貸付対象施設の設置及び貸付金の支払状況等に関する検査を受けるべき義務が定められており,県やE事業団による当該中小企業者の事業等に対する診断指導,高度化事業検討会議における検討,貸付審査会による審査等の手続を経て貸付けが実行されることとなっており,本件高度化資金貸付けも,この手続を経て実行されている。 なお,C’に対する本件高度化資金貸付けは,構造改善等高度化事業(特定)として,いわゆる同和地区における産業振興等を目的としているため,地域改善対策事業の一環としての貸付けとなり,貸付対象は,C’が実施する高度化事業のための土地,建物,構築物又は設備に係る費用で,県が,当該貸付対象施設設置資金の80パーセント(一般の高度化資金貸 地域改善対策事業の一環としての貸付けとなり,貸付対象は,C’が実施する高度化事業のための土地,建物,構築物又は設備に係る費用で,県が,当該貸付対象施設設置資金の80パーセント(一般の高度化資金貸付けの際は65パーセント)を貸し付け,残る20パーセントが自己負担とされ,貸付条件は,一般の高度化資金貸付けが年利2.7パーセントであるのと異なり,無利子で3年間据置後の13年償還とされるなど,とくに有利な条件となっていた。 また,事業主が,都道府県から高度化資金貸付けを受けるのに先だって設備投資資金を必要とする場合には,金融機関からいったん相当額の融資を得ることもでき(中小企業組織強化資金制度),この制度を利用した融資を,以下「つなぎ融資」と称する。 2 協業組合とは,その組合員の生産,販売その他の事業活動についての協業を図ることにより,企業規模の適正化による生産性の向上等を効率的に推進し,その共同の利益を増進しようという趣旨に基づくもので,協同組合が「事業の共同化」を目的とするのに対し,協業組合は「経営の共同化」を目的とする点で異なり,また,協同組合においては,個々の会社が独立しているのに対し,協業組合においては,個々の会社は吸収合併され,合併された会社は廃業となり,従前の各会社の支店や工場は,合併した組合の支店や工場となり,企業としての営業は協業組合として行うこととなる。 第6の1 第1次高度化資金貸付契約締結に至る経緯関係証拠(主として,検甲18ないし24,31ないし38,40ないし42,44,45,53,55ないし63,67,75,76,81,82,84,87,89,134号証)によれば,以下の事実が認められる。 1 C1は,かつて大阪市内で縫製加工業を営んでいたものであるが,昭和43年9月ころ,高知県高岡郡e町の町会議員でもあったD 1,82,84,87,89,134号証)によれば,以下の事実が認められる。 1 C1は,かつて大阪市内で縫製加工業を営んでいたものであるが,昭和43年9月ころ,高知県高岡郡e町の町会議員でもあったD同盟g地区幹部の支援の下,同町に拠点を移し,昭和44年1月,縫製業を営む有限会社G1を設立し,その後,平成元年までの間に,県内のh町,i町及び中村市において,縫製業を営む株式会社1社,有限会社3社のほか,これらを組合員企業とするG2協同組合をh町に設立して,その後も,同町に所在する株式会社G3,i町に所在する有限会社G4及び同G5,e町に所在する有限会社G1,中村市に所在する有限会社G6を含め,事業グループ(以下,この5社を総称して「Hグループ」ともいう。)を形成し,同和縫製事業を営んでいた。平成3年3月から,他社で総務経験のあったC2が,C1の下で人事や労務管理,経理に従事するようになった。 2 平成2年ころから,一部の工場の業績不振がグループ全体に悪影響を及ぼすようになり,平成3年ころ,C1は,県の同和対策課職員から,同和縫製をどうやって守っていくか考えてくれなどと言われ,D同盟からも頑張ってやってくれなどと言われていたが,円高に伴う東南アジア,中国製品の大量流入による受注の激減,加工賃の低額化や,従業員の高齢化,技術力や機械設備の不足等のマイナス要因が重なり,平成5年ころまでには,グループ全体の固定負債が5億円を超え,短期借入金も併せると,総額6億円から7億円もの負債を抱えるに至り,グループの経営状態は急速に悪化し,民間金融機関からは支援を断られ,資金繰りに行き詰まりつつあった。このような状況下,C1は,かつて昭和54年,61年の2度にわたって,G2が高度化資金の貸付けを受けたことがあったことから,県から高度化資金の貸付けを受けて業務形態 ,資金繰りに行き詰まりつつあった。このような状況下,C1は,かつて昭和54年,61年の2度にわたって,G2が高度化資金の貸付けを受けたことがあったことから,県から高度化資金の貸付けを受けて業務形態を近代化することができれば,当面の資金難が回避できるだけでなく,Hグループの存続が期待できると考え,平成4年3月初旬ころ,深刻な経営危機の実情は明らかにしないで,県内の繊維業界の変革を訴えつつ,「Bニューソーイングマーケティングセンター構想」と名づけて,高度化資金を利用して最新鋭の設備等を備えたマーケティングセンターの建設(総予算額25億400万円)を県企画部同和対策課に働き掛けた。 これを受けて,県内中小企業に対する金融事業等を所管する商工労働部は,対象地域就労対策推進チームを中心として対応し,同年6月3日には,D同盟書記局次長D2やD同盟書記長D3の呼びかけで,「同和縫製に関する検討会」という名称で,同チームの面々とC1,D2らが会合し,C1が前記構想について説明し,D2が,この構想を県として推進しなければならないなどと述べていた。 打合せを重ねた同チームを中心に検討した結果,商工労働部は,同年9月3日までに,C1の前記構想は同和対策を活用したHグループの成長戦略であると位置づけ,県下の同和縫製全体の振興策としては,経費対効果の点で疑問があるとの部内意見をまとめ,同日,商工労働部長B2らは,C1及びD2らに対し,協業化,協同化の点の検討が不十分であること,新規生産機能が計画されていないこと,ソーイングスクール構想それ自体が高度化事業の対象外であることなどを告げ,前記構想に対する否定的見解を示したが,一方で,行政として支援するにはグループを協業化する必要があること,高度化資金制度について手続的な面を研究してほしいなどとも告げ,C1は,Hグ ことなどを告げ,前記構想に対する否定的見解を示したが,一方で,行政として支援するにはグループを協業化する必要があること,高度化資金制度について手続的な面を研究してほしいなどとも告げ,C1は,HグループのG2を組織変更して協業組合とすれば,高度化資金貸付けを受けることができると考えるようになり,E事業団と協議するなど,高度化資金貸付けに向けた調査や検討を始めた。 もっとも,その後もHグループの財政状態は悪化するばかりであったため,C1は,各工場を分離して合理化を図ろうとも考えていたが,平成5年5月ころ,D2から,もう一度書類を作って県に提出して高度化資金貸付けを受けるように勧められ,D同盟としても支援するなどと励まされ,あらためて県から高度化資金貸付けを受ける方向で,悪化する財政状態に対処することとした。 3 同年8月時点で,グループ全体の負債残高は6億円を超えていたが,C1は,そのころまでに,前記構想を基に共同施設計画として,「繊維業界変革に対応するセンター構想」をまとめ,商工労働部経営指導課に持ち込み,同部では,商工政策課金融班(高度化資金融資事務担当,以下「金融班」という。)及び経営指導課工業診断班(以下「診断班」という。)が対応し,高度化資金貸付けの適否を考慮する前提として,この事業構想が高度化事業として認定できるかどうかを検討した末,認定は可能であるとして,同構想を支援する方針を固めた。同月12日,金融班と診断班は合同でC1からヒアリングを行い,診断班長B3は,C1に,同構想が共同施設事業として高度化資金貸付けの対象となることを伝えるとともに,貸付け対象となる事業資金は土地や建物等の費用に限定されており,運転資金は対象から除かれること,貸付額は対象となる事業資金の80パーセントが限度であり,少なくとも20パーセントは自己の負 るとともに,貸付け対象となる事業資金は土地や建物等の費用に限定されており,運転資金は対象から除かれること,貸付額は対象となる事業資金の80パーセントが限度であり,少なくとも20パーセントは自己の負担において調達すべきことを説明し,その際,自己負担分は借入れにより調達してもいいが,償還の負担が大きくなるので,基本的には借入れによらずに準備してほしい旨をも述べた。 C1は,同年11月1日ころ,事業資金の総予算額を18億1500万円とし,うち14億5000万円を高度化資金貸付けによってまかない,残額3億6500万円を組合員の増資により調達する旨の共同施設事業実施計画を県に提出した。 4 同月ころ,県は,診断の結果次第で高度化資金貸付けが現実化することが見込まれたことから,平成6年度高度化事業の県の予算枠にC1の前記センター構想を入れ,平成6年1月より,E事業団によるヒアリングが開始され,商工労働部主導の下,県は,同年3月下旬ころ,E事業団に対し,県知事名で地域改善対策高度化事業(事業資金総予算額16億6074万2000円)の届出をするとともに,商工政策課長名で,地域改善対象地域における就労の場の確保を主たる目的としているとして,高度化事業にあっても,E事業団が内容について直接検討することになる繊維工業構造改善高度化事業(一般)としてではなく,地域改善対象地域の就労の場を確保することを主たる目的とする,地域改善対象地域中小企業者が実施し,県が内容についての検討を行うことができる地域改善対策高度化事業(特定)として進める方針を通告するなどの準備を進めた。 5 同年4月,財務分析を行っていたB3ら診断班は,G2他Hグループ5社の負債総額を把握したが,これをC’が全部承継することとなった場合,事業計画上の償還可能額に照らし,債務超過となって倒産し, 。 5 同年4月,財務分析を行っていたB3ら診断班は,G2他Hグループ5社の負債総額を把握したが,これをC’が全部承継することとなった場合,事業計画上の償還可能額に照らし,債務超過となって倒産し,貸付額の償還が著しく困難になるものと見込んだ。そこで,B3は,C1と協議した際,G2以外のHグループ5社の個別の負債はC’に承継させず,各社において清算時までに確実に処分するように指導したところ,C1が「大丈夫です。処分できます。」等と応じていたため,C1の発言に依拠しつつ,予備診断等の,高度化資金貸付けに際して必要な手続を,事業計画上の予定売上額や経費額の見直しを繰り返し指示しながら,事業計画上の収支見込みがより現実的なものになるように留意して,手続を進めていった。 県は,同年6月までに,C1の前記計画を構造改善等高度化事業(特定)として事業認定した上,E事業団とのヒアリングを開始するなどして対応し,同事業団においても,地域改善対策対象地域中小企業者による高度化事業であるため,融資計画課と特別助成課が対応した。 6 C1は,同月30日,県に対し,G2から協業組合Cへの組織変更の認可を申請し,同年7月27日に認可を受け,同年8月8日,G2からの変更登記手続をし,同月15日,C’の組合員として吸収合併された前記Hグループ5社の各工場がC’の工場として扱われるようになり,高度化資金の借入れに向けて準備が進められたが,他方で,同月30日時点のグループ全体の銀行からの負債残高は約5億8700万円余りに上り,その他の,個人からの短期借入金等を合わせると,総額7億円から8億円の負債を抱えるに至っていた。 C1は,同年8月1日ころ,C’の代表者として高度化資金貸付けの仮申請を行い,この際,県担当者から手続上の留意点について説明を受け,自己負担分は組合員 億円から8億円の負債を抱えるに至っていた。 C1は,同年8月1日ころ,C’の代表者として高度化資金貸付けの仮申請を行い,この際,県担当者から手続上の留意点について説明を受け,自己負担分は組合員が増資して確保する旨を述べていた。しかし,この当時,Hグループを形成するG2(C’)の出資金が3000万円,株式会社G3等5社の資本金合計が3600万円,同年中の各決算期におけるグループ企業間の取引も含めた売上高の合計が約22億円であるのに対し,約4500万円の損失を計上しており,長期借入金も計6億円を超え,その経営状況は急速に悪化しつつあった。 7 同年9月13日,商工労働部は,副部長以下10名が出席して中小事業高度化事業検討会を開催し,C’による高度化事業推進の適否を検討して,県やE事業団による診断手続を推進することを決めるとともに,県知事名で,南国市にある高度化事業用地の事前取得を承認した。なお,県は,E事業団に対し届け出た際と,新工場の立地予定場所が異なっており,土地取得額と建築費用が,当初の約16億6000万円から約19億円へと増大したため,事業計画に変更があった旨を,同月22日,県知事名でE事業団に報告した。 同月27日から30日にかけて,診断班にE事業団担当者を交えて,共同施設事業計画診断が実施されたが,その際,C1は,自己負担分の調達方法について,「貯金,資産を処分して用意する。」等と答えただけでなく,従来の負債については個人の資産を処分して処理する旨を答えていた。同事業団からは,C’が組合員から承継する資産内容等が不明確である,増資により自己負担分を調達する計画であるというが,組合員ごとの出資金額は定められているものの調達の時期,方法が不明確な組合員がいる,収益力を向上するための検討が不十分で償還に支障を来すおそれがある 資により自己負担分を調達する計画であるというが,組合員ごとの出資金額は定められているものの調達の時期,方法が不明確な組合員がいる,収益力を向上するための検討が不十分で償還に支障を来すおそれがある,アパレルセンターや寄宿舎が過大であるなどと,諸々の問題点が指摘された上,これに応じた対策をとるべきことが具体的に勧告され,この勧告は,同年10月13日商工労働部長あてにも送付され,診断班も,これを参考として,概ね同旨の改善策を講じるように指示する内容の「共同施設事業計画診断報告書」を作成し,同年11月10日ころ,C1に送付した。 ところで,C1は,I銀行h支店に対しても,19億5000万円の資金を基に,生地を裁断してデザイン加工し,製品を全国向けに販売することを計画しているなどと述べて,融資を依頼していたが,同銀行の審査部長I1は,同年10月27日ころまでに,C’に組合員として吸収合併された株式会社G3に対する,担保物件のない純与信貸付残高が4億5000万円を超えていたことや,全国に展開するという構想の先行きに不安を感じたことから,C1の描く新規プロジェクトに同調せず,C’に対しては新規融資は行わない方針を固めていた。 8 C1は,高度化資金貸付けに際して前提となっていた自己負担分相当額約3億6000万円余りについて,組合員からの出資により捻出することは無理だと考えたことから,自己負担分を増資により調達したように仮装しようと考え,同年11月ころ,株式会社J代表取締役J1に,増資する余裕がないので,すぐ返すから貸してほしいなどと頼み,当初は断っていたJ1も,すでにC’に5000万円を貸し付けていたり,同社がC’の新工場の建設工事を請け負う約束になっていたことから,計画が頓挫しては自社の利益に繋がらないと考え,自己負担分の資金の一時提供を承諾し J1も,すでにC’に5000万円を貸し付けていたり,同社がC’の新工場の建設工事を請け負う約束になっていたことから,計画が頓挫しては自社の利益に繋がらないと考え,自己負担分の資金の一時提供を承諾した。また,C1は,事業計画を拡大し,J1に工場建築代金の見積額を水増ししてもらって,実際の費用との差額を受け戻そうと考え,同月17日ころ,県がいくら出すか当たりをつけようとも考えて,必要な総予算額を約26億円とした事業計画を提出し,県担当者が却下する旨を伝えると,同月28日,D2,C1,C2に加え,さらにJ1も県庁を訪れ,建物建築費の増加を理由として,診断時の計画規模約19億円を約26億円に変更してほしいなどと強く申し入れたが,県担当者は,大幅な変更には対応できない,貸付審査会も通らないなどと回答して,これを拒絶した。C1は,同年12月初旬ころ,J1に対し,高度化資金貸付け対象外の設備購入資金を捻出できるよう,工場建設見積金額を水増しして請求し,その額の2割をC’に返還してもらいたい旨を頼み,J1の了承を得た。 9 同年12月15日付けの,共同施設事業計画診断書においては,自己負担分は組合員5社から合計3億7600万円の出資により調達する計画とされ,県からの勧告事項として,その増資の時期と,資金調達方法を明確にすることが掲げられ,C’からは,同日付けで,「各企業において検討し12月中に理事会を開催して具体的な出資の実行にとりつける」旨の回答があった。そして,同月26日決裁に係る貸付審査会調書においては,増資総額決定後,理事会を開催して,各組合員の出資額を決定し,出資口数,出資実行日を議事録に記載する,組合員は,その出資実行期限までに各組合法人において,資本金の増資手続を完了して,法人組合員として協業組合に出資することとされた。しかし,前記回答に 決定し,出資口数,出資実行日を議事録に記載する,組合員は,その出資実行期限までに各組合法人において,資本金の増資手続を完了して,法人組合員として協業組合に出資することとされた。しかし,前記回答に沿った対応を講じる意思がなかったC1は,理事会を招集するのはおろか,実質的に理事らと討議することもないまま,手続の進行が阻害されないように,組合員5社による出資について合意があった旨の,虚偽の内容が記載された,同月29日付け理事会議事録を作成し,平成7年1月に入ってからは,県担当者に対し,借入れによらずに増資し,Hグループの債務処理を適切に行う旨を説明するだけでなく,この議事録をC2を介して県に渡したり,別に金融機関からの借入れの担保に供する予定であった株券,ゴルフ会員証,不動産登記済権利証を担当者に示すなどしていた。 平成7年1月9日,B県中小企業高度化資金貸付審査会(以下「貸付審査会」という。)が開催され,商工労働部からは,同部部長以下4名,その他に,B県E団体中央会事務局長,K公庫B支店長,L公庫B支店長代理,M金庫(以下「M’」という。)B支店長,N協会専務理事の全委員計9名が出席し,必要事業資金を総額19億456万4000円とし,うち15億155万5000円を高度化資金で調達し,3億7591万4000円を組合員5社の増資により,その他を借入金により調達する旨の説明がされた上,前記理事会議事録に沿って,自己負担分の出資額につき,株式会社G3が1億8760万円,有限会社G1,同G5,同G4,同G6がそれぞれ4710万円,合計3億7600万円となっている旨の質疑応答がされ,民間委員からは,規模拡大よりも合理化を優先させた方が良いといった消極的意見も出たが,組合員5社の従前の負債の存否やその承継の有無等にわたる踏み込んだ議論はなく,各工 となっている旨の質疑応答がされ,民間委員からは,規模拡大よりも合理化を優先させた方が良いといった消極的意見も出たが,組合員5社の従前の負債の存否やその承継の有無等にわたる踏み込んだ議論はなく,各工場の雇用を守って,多品種,小ロット生産を可能にするといった方向で,最終的に満場一致で賛成の結論が得られ,同日,県知事名で高度化資金貸付仮内定通知が発出された。 11 ところで,同月5日ころ,I1は,I銀行審査部副部長とともに商工労働部を訪れたが,その際,B4金融班主監ほか商工労働部職員から,「C’が土地を購入するのに数億円融資してほしい。民間の融資を願いたい。官民一体となってC’をやっていきたい。」等と言われ,「たいへん重たい案件ですね。」等と婉曲に断ったが,後日,C1及びC2の来訪を受け,「土地の買収に数億円をつなぎでやってくれないか。県にも話をしている。」等と,つなぎ融資を依頼された。しかし,I1は,今の状態で規模を拡大するのでは絶対に駄目になる,全国に発進する商品販売を展開してもなかなか勝てない,既存の取引は継続するけれども,運転資金,設備資金の新規融資はできない,県から話がきたとしても融資は断るなどと説明した。C1は,「私どもに倒産しろというのか。」と語気を強めたが,I1の意向を変えることはできず,結局,O銀行からつなぎ融資を受けることとし,同月18日,県に対し,同銀行からのつなぎ融資4億9091万9000円(用地取得費として4億2021万9000円,造成費として6370万円,仲介料として700万円)として,中小企業組織強化資金制度の適用を申込み,県の承諾を得て,同月30日,同銀行から同額の融資を受けた。C1はこれを土地代金や造成費,仲介料等の支払いに充てつつ,一部は目的外に流用した。 12 さらにC1は,工場建設予定地である南国市内の土 ,県の承諾を得て,同月30日,同銀行から同額の融資を受けた。C1はこれを土地代金や造成費,仲介料等の支払いに充てつつ,一部は目的外に流用した。 12 さらにC1は,工場建設予定地である南国市内の土地造成費用についても,本来高度化資金貸付けの対象とならないはずの,高度化資金貸付仮内定決定前の費用まで含めて水増しして請求することとして準備を進め,このような経緯で,C1は,同月24日,多額の負債を抱え,県の指導に従って組合員の増資により自己負担分を調達する意思もなく,さらには前記造成費合計8724万1000円を水増し計上した内容虚偽の見積書を添付して,工場建設用造成費用を合計1億8704万8000円とし,土地取得,造成等の費用として,高度化資金4億9100万円の貸付けを県知事あてに申請した。 C1は,同年2月14日に実施された,E事業団を交えたヒアリングにおいても,借入れを起こしてスタートすると負担が大きくなるので増資する,C’はG2の負債のみを承継し,その他の組合員の負債は,会社資産や個人資産の処分で処理して承継しない,などと答えた。診断班は,C’に対し,組合員に自己負担分の調達方法等を具体化させるなどして,自己負担分を確実に調達するように勧告したところ,同年3月14日,C1は,県知事にあてて,勧告に関する措置として,「自己資金等については,早急に具体化させ,資金調達計画にそごを来さないようにします。」等と返答する書面を提出するなどした。その後,県の担当者は,高度化資金貸付けが2年度にわたって予定される案件であり,2回目の建物,設備向け貸付けが決定されるまでの間に増資手続が完了していたら良いといった考えもあって,とくに増資がされた裏付けをとることなく,増資の原資に充てるために処分する予定の資産の裏付けとして,ゴルフ会員権証,株券,不動 決定されるまでの間に増資手続が完了していたら良いといった考えもあって,とくに増資がされた裏付けをとることなく,増資の原資に充てるために処分する予定の資産の裏付けとして,ゴルフ会員権証,株券,不動産権利証の各写しの提出を受けたに過ぎず,同月20日,中間検査のためにC1とC2が県庁を訪れた際も,増資期限となっているのに実行されていなかったため,C1に対し,「早く増資してください。」と指示したが,裏付けまではとらなかった。もっとも,C1は,担当者から増資を催促されたこともあって,組合員5社による増資の事実を仮装することを決断し,C2やJ1との間で打ち合わせ,同月27日から,増資を仮装するための手続に入った。 なお,C1は,同月14日付けで,I銀行に対し運転資金として4000万円の手形貸付けを申し込み,I1審査部長は,商業手形を除き,支援はこれを最後にするとしつつ,ゴルフ会員権3銘柄(時価2900万円相当)を担保として徴し,貸付けに応じた。 13 小括このような経緯で,C’との交渉に臨んでいた県担当者をはじめ,商工労働部長B5,商工政策課長B6,同課課長補佐B7ら商工労働部幹部は,C1が増資により自己負担分を調達する意思がないことをはじめ,承継しないことになっている債務が承継されているなど,実際には事業計画の遂行が当初から困難な状況に陥りかねないこと,水増請求等の工作が行われていることなどを認識しないまま,第1次高度化資金貸付けに係る支出負担行為決議書を順次決裁し,高度化資金貸付けの決定権者である県知事の代決権限を有していた被告人A1も,副知事として,同様に,平成7年3月28日,貸付けに係る支出負担行為決議書を県知事に代わって代決し,こうして,県は,C’との間で,平成10年3月31日に金3777万2000円を第一次償還するなどの内容 事として,同様に,平成7年3月28日,貸付けに係る支出負担行為決議書を県知事に代わって代決し,こうして,県は,C’との間で,平成10年3月31日に金3777万2000円を第一次償還するなどの内容となっている高度化資金貸付契約を締結し,平成7年4月10日,C’に対し,土地分として,金4億9100万円の高度化資金の貸付けを実行した。 第6の2 第2次高度化資金貸付契約締結に至る経緯関係証拠(主として,検甲47ないし52,58,60,71,75,82,84,86ないし88,92,105,141,142号証,検乙43号証,弁59<不同意部分を除く>号証)によれば,以下の事実が認められる。 1 平成7年4月1日,被告人A3は,商工労働部商工政策課長に就任したが,前任者である前記B6からの引継ぎに際し,C’に関し「高度化事業を実施中なのでよろしく頼む。」と言われたものの,とくに懸案となるべき問題点等の説明は受けず,このころ既に内在していた,事業計画に不安があって注意が必要な状況にあることや,I銀行がメインバンクから撤退していること,その他とくに懸案となるべき問題点について認識しなかった。同年4月から5月ころ,被告人A3は,副部長室において,前記B6からC1を紹介され,初めて挨拶を交わした。 2 一方,C1らは,同年3月27日ころから同年6月上旬までの間,Jが3度にわたって順次提供した,合計額約3億3500万円を原資として,組合員5社の各代表者の預金口座に,その知人らの名義の預金口座を介在させて,それぞれ資金を振り込んだ後,それらを各社の別段預金に振り替え,金融機関の払込金保管証明書を得るなどして,順次,①株式会社G3が同年3月29日に6000万円,同年4月20日に1億1000万円を,②有限会社G4,同G5及び同G6が同年5月19日に各4710万円を 金融機関の払込金保管証明書を得るなどして,順次,①株式会社G3が同年3月29日に6000万円,同年4月20日に1億1000万円を,②有限会社G4,同G5及び同G6が同年5月19日に各4710万円を,③有限会社G1が同月25日に4710万円を,それぞれ増資したことを装い,払込金保管証明書を添付した上で各資本変更登記手続を行い,いずれも,各資本変更登記手続後間もなく,Jにそれぞれ前記相当額を返済するという手法を用いて,各社合計3億5840万円の増資を仮装するとともに,これに基づいて,これらが組合員として加入しているC’について,①同年3月31日に8000万円を,②同年4月11日に1億1000万円を,③同年6月1日に1億8840万円を,それぞれ増資したことを装って,その旨を証する内容の監事証明書を添付した上で各資本変更登記手続(変更後の払込済出資総額金4億840万円)をし,あたかも,県との約束に従って組合員5社からの増資金を原資として,自己負担分を調達したかのように装った。 またC1らは,同年5月には,Jが受け取ることとなっていた前記C’の新工場建築工事代金について,実際には同社との間で5億5519万3000円とする旨を合意していたのにもかかわらず,県に対しては,これを水増しして7億8032万8000円とすることとし,同金額が適正なものであると信用させるため,J1から紹介を受けた業者に依頼して作成させた過大な金額の見積書等を県の担当者に提出するなどし,引き続き,同年6月13日ころ,県に対し,C’の高度化資金貸付けの償還能力に疑問を抱かれないように,達成の見込みが乏しい過大な売上計画等を記載した事業計画書を提出した。 3 同年7月15日,B3らは,診断事後指導を行い,C’に対し,平成7年度内の事業開始に向けて,人材の確保や販路の拡大等に努め ,達成の見込みが乏しい過大な売上計画等を記載した事業計画書を提出した。 3 同年7月15日,B3らは,診断事後指導を行い,C’に対し,平成7年度内の事業開始に向けて,人材の確保や販路の拡大等に努めるように指示し,同月18日,B5商工労働部長,被告人A3他7名が出席して,第1次貸付額を除いた残金9億5768万2000円の貸付け(建物,設備分)に係る貸付審査会が開かれたが,その際の配付資料には,高度化事業の必要資金として合計18億4980万円,うち高度化資金貸付け分が14億4868万2000円,金融機関借入分2511万8000円,自己負担分3億7600万円が予定されている旨が記載されていた。この審議に先だって,金融班高度化資金担当のB8は,組合員5社の登記簿謄本等により,C’の増資が完了しているものと認識し,B9金融班長に対し,C’に対する指導の結果,自己負担分の増資が完了していることを登記簿謄本で確認済みであるなどと報告し,審議の際も,出席者からの,自己負担分の調達方法や時期に関する質問に対し,組合員5社の増資で対応して協業組合へ出資した,役員が資産を処分したり,その親族関係等からの借入れで捻出されており,現在すでに増資され,出資されていることを登記簿等で確認している,などと答弁し,満場一致で貸付けが決定され,同日付けで,C’に対し,県知事名で建物,設備分に係る平成7年度高度化資金貸付仮内定通知が発せられた。 これを受けて,C1らは,翌19日,県に対し,Jからの2億3484万円のC’宛請求書等を添えて,つなぎ融資の適用を申請し,県の承諾を得て,建物建築前渡金として,O銀行から,同年9月29日にそれと同額の融資を受け,さらに,同年12月6日,県に対し,同様にJからの2億6516万円のC’宛請求書等を添えて,つなぎ融資の適用を申請し,県の 建物建築前渡金として,O銀行から,同年9月29日にそれと同額の融資を受け,さらに,同年12月6日,県に対し,同様にJからの2億6516万円のC’宛請求書等を添えて,つなぎ融資の適用を申請し,県の承諾を得て,建物建築工事中間金として,同銀行から,同年12月15日にそれと同額の融資を受け,このように合計5億円のつなぎ融資を受けたが,本来設備投資に用途が限定され,本件ではJに対する建設工事の着手金等に充てるべきつなぎ融資の一部を,それまでの借入金の返済や運転資金等に充てた。 4 同年8月11日,N協会は,それまでにされていたC’からの3億円の信用保証委託申込につき,それに見合うだけの物的担保がなく借入依存体質である,株式会社G3等各個別企業の信用保証残高約1億2900万円が残っており,これらの処理について明確な回答がなく不透明であるなどとして,償還能力と今後の事業展開に不安があることを理由に,申込に応じない旨を決めたが,県職員や金融機関関係者からなる,同協会の諮問機関である審査委員会は,県が支援している中小企業施策であり,できる限り問題点を解決して,信用保証をする方向で検討するとして,「保留」の答申をし,これを受けたN協会は,C1と面接するなどして再調査を進め,同月30日,B7,B9及びB8は,N協会と協議の上,県が1番抵当権を設定しているC’の土地建物等について,N協会に対し同順位での担保権設定を認める方針を固め,あらかじめ同月4日にはその方針をB8から聞いていたN協会は,2億円の限度で信用保証に応じることとし,同年9月8日,同順位での担保権の設定につき,更に1億円を追加保証する可能性もあったことから3億円と決まり,同年9月14日,2億円について信用保証委託契約(借入先はO銀行)を締結し,C’はO銀行から2億円の融資を受けた。 5 平成8年 につき,更に1億円を追加保証する可能性もあったことから3億円と決まり,同年9月14日,2億円について信用保証委託契約(借入先はO銀行)を締結し,C’はO銀行から2億円の融資を受けた。 5 平成8年に入り,C1は,同年2月28日付けで,I銀行に対し,手形貸付1件残高2500万円の最終期限を5か月延長されたいとの変更申請を行い,I1は,新規融資はせずに回収一方とするなどの指示をして,承認の決裁をした。 また,同月下旬までにC’の新工場が完成し,同年3月12日,県土木部建築課が完成確認検査を実施し,合格と判定した。 同月25日,B8及び金融班のB10は,C’の検査(第1次高度化資金貸付けの完了検査及び第2次高度化資金貸付けの中間検査)に向かい,購入予定設備のうち,立体倉庫が足りないことを確認したが,納入が遅れているだけであるとし,また,大阪で経理をしている,帳簿類は大阪やhの事務所にあるなどと言われて支払関係を確認することができず,Jに対する新築工事代金についても,契約までの書類しか確認できなかったが,いずれも軽微な不備であって後日でも確認できるとして,手続を進行させた。 また,同月28日,B3と診断班のB11が,C1と面談し,機械設備等は充実したものの,運転資金や人材の確保ができなければ,安定経営は無理であるとして,立ち上がり時期から安定操業時期にかけての運転資金の確実な確保及び従業員教育の継続的な実施等について指導し,C1もこれを了解した。 6 小括C1らは,以上のような手段を講じて,平成8年3月25日ころ,県に対し,前記増資に係るC’の商業登記簿謄本,前記水増しに係る工場建築工事代金見積書等とともに建物,設備分の高度化資金の貸付申請書を提出し,被告人A3やB5,B県事務処理規則改正に伴い,3000万円以上の貸付けについて専決権を 商業登記簿謄本,前記水増しに係る工場建築工事代金見積書等とともに建物,設備分の高度化資金の貸付申請書を提出し,被告人A3やB5,B県事務処理規則改正に伴い,3000万円以上の貸付けについて専決権を付与されていた被告人A1らは,実情を認識することなく,同年4月2日ころ,第2次高度化資金貸付けに係る支出負担行為決議書を順次決裁し,同月24日ころ,県はC’との間で計9億5250万円の建物,設備分の高度化資金貸付契約を締結した。 第6の3 第2次高度化資金貸付けの実行に至る経緯関係証拠(主として,被告人A3,B12,B13及びB11の各公判供述,検甲50,97,101,105,112,119,131,133,143,149,151号証,検乙36号証,弁59<不同意部分を除く>号証)によれば,以下の事実が認められる。 1 平成8年4月1日,被告人A2は,商工労働部長に就任し,同月初旬,前任者のB5から,担当職務に関し,引継書を基に説明を受け,また,同月中には,被告人A3からも商工政策課の概要や事務分担,懸案事項等について説明を受けたが,C’に問題があるとの説明はなかった。 2 同月3日ころ,第2次高度化資金貸付けに係る支出負担行為決議書が決裁のため出納室に回った際,B14出納室審査班長は,C’の償還可能性に疑問を持ち,経費削減のためにも外壁にペンキ塗装など施す必要はないと考え,いったん同決議書を商工政策課に差し戻したところ,翌4日ころ,金融班のB13,B11,及び,同月1日付けで保険課に異動したB8が訪れた。B13やB8は,支出負担行為決議書を通してほしいなどと述べ,B14が,「本当に経営が成り立つのか。」等と事業の運営に懐疑的な発言をしたところ,B13らは,「土地分をすでに貸していて,建物,設備投資分についてもゴーサインが出ている。賃加工は安く などと述べ,B14が,「本当に経営が成り立つのか。」等と事業の運営に懐疑的な発言をしたところ,B13らは,「土地分をすでに貸していて,建物,設備投資分についてもゴーサインが出ている。賃加工は安くなっているから,デザイナーを雇って自社ブランドでやっていく。商工労働部では,経営指導など全力をあげて支え,貸しっぱなしはしない。」等と述べ,B8は,「経営診断を行い,貸付審査会を開いて貸付けを決定し,執行機関が決裁をしているのに,それに出納機関が口を出すのは僭越ではないか。」等とも述べた。 そこでB14も決裁したが,この支出負担行為決議書をB15出納長に持参した際,「経営が成り立っていくかどうか問題があります。しかし,商工労働部をあげて経営指導していくということです。」と報告したところ,B15は,「それなら,商工政策課の者を呼んでくれ,確認しておくから。」と命じ,B14は商工政策課に連絡を入れ,出納室を訪れたB10は,B15に対し,商工労働部をあげて経営指導をしていく旨を答えた。 3 同月23日,県庁を訪れたC1は,被告人A3とB16に対し,コンピュータを導入して型どりから裁断まで行えるよう取り組んでいるなどと述べた上,被告人A3に対し,「I銀行から融資を断られて困っており,メインバンクをM’に替えようと考えて,融資を依頼しています。大丈夫とは思いますが,念のため,県からも口添えしていただくと助かります。」等と言い,被告人A3は,検討しておくと返答した。 同年5月10日,C1は,C’の事務局長C3を伴って,M’を訪れ,16億円の融資を申し込んだ。 4 同月中旬,B10は,C2から提出された資料等を精査していた際,振込金受領書等により,株式会社G3からJに対し,平成7年4月20日1億1000万円が,C’からJに対し,同年5月25日1億円が,同 4 同月中旬,B10は,C2から提出された資料等を精査していた際,振込金受領書等により,株式会社G3からJに対し,平成7年4月20日1億1000万円が,C’からJに対し,同年5月25日1億円が,同年6月13日4500万円が,同年7月31日8000万円がそれぞれ送金されている事実を把握し,C2に「何のための送金なのか。」と尋ねたが,分からないと言われ,不審に思いつつ,B13に報告し,同人とともに,帳簿類を調査したところ,さしあたり,平成7年度のつなぎ融資が,目的外に流用されているのではないかとの疑いを持った。 B13らは,被告人A3に,つなぎ融資が目的外に流用されている疑いがあり,このままでは第2次高度化資金を貸せないなどと報告したところ,被告人A3は,「どうしてちゃんとチェックをしておかんかったのか。」等と尋ね,B13が,大阪などに帳簿や書類があったためであるなどと弁解すると,「なぜ大阪に行って確認するなどきちんとしたことをしないのか。」と詰問した上,高度化を貸さなかったらどうなると尋ね,同月末には手形が落とせずに倒産する旨を答えるB13に対し,もう土地分を貸しているし,第2次高度化資金をあてにして建物を建てており,倒産させるわけにはいかない,政治的な判断が必要なときもあるなどと述べ,C1を呼ぶなりして調査しておくように指示した。 B13とB10は,平成8年5月19日,C1らを訪ね,Jに対する支払等について事情を聴取し,C1は,I銀行から融資を断られ,金策もつかず,給料も払えない状況だったため,5億円のつなぎ融資の一部を運転資金などに使っていて造成代金の支払いが遅れている,経理の細かいことは家内に聞いてもらわないと分からないなどと述べ,B13は今度県庁に来てもらうなどと言って辞去した。 B13及びB10は,B16に対し,C’は ていて造成代金の支払いが遅れている,経理の細かいことは家内に聞いてもらわないと分からないなどと述べ,B13は今度県庁に来てもらうなどと言って辞去した。 B13及びB10は,B16に対し,C’は平成7年春に合計約3億円余りの増資を行っているが,株式会社G3は,同時期にほぼ同額をJに支払っている,C’は平成7年1月につなぎ融資を受けており,Jへの土地造成費約1億円は本来そのころ支払っているはずなのに,実際には,同年9月29日に支払っているなどと報告した。また,B13は,B12診断班長やB11に対しても,元帳のコピーを渡し,経理関係についての簡単な調査を依頼し,B12やB11は,経理の一本化ができていないと感じ,一本化しなければいけないなどと考えていた。一方,B10は,平成8年5月23日,第2次高度化資金貸付けに係る支出命令書を起案した。 5 同月24日,県庁にC1と経理を担当するその妻が来て,事情聴取が行われ,被告人A3は挨拶をしただけで退席し,金融班からB16,B13,B10,診断班からB12及びB11が出席して,C1夫妻から事情を聴取した(以下,この事情聴取の機会を「C1聴取」ともいう。)。C1は,I銀行から融資を断られて資金繰りに窮し,つなぎ融資を運転資金に充当している,増資した資金は運転資金に流用し,設備投資分は借入金でまかなっている,同月末の手形の支払いの手当てもできない状態であるなどと説明する一方,高度化事業は,誠意をもって対応する,M’に融資を依頼しており,何とかなるなどと述べた。B13らは,C1に対し,経理の一本化を急ぐこと,約束手形の決済等資金繰りの見込みについて報告するよう指示してC1を帰宅させ,金融班及び診断班としては,協業組合としての運営体制の確立,高度化資金の趣旨に沿った経理や資金運用をC1から書面を提出させて 手形の決済等資金繰りの見込みについて報告するよう指示してC1を帰宅させ,金融班及び診断班としては,協業組合としての運営体制の確立,高度化資金の趣旨に沿った経理や資金運用をC1から書面を提出させて確認すること,これまでの経理の処理については,再度県が指導に入って整理する旨を打ち合わせた。B12及びB11は,翌6月中旬ころまでの間に,C’の経理の一本化について,B県E団体中央会に協力を要請したり,C’の経理に通じた税理士に助言を求めるなどし,さらにC1らにも経理一本化の取組みについて問い質したりしたが,C1は,「いろいろと複雑なこともあるので,もうちょっと待ってほしい。」等と曖昧な対応をしていた。 なお,検察官は,C1聴取において,C1は,金融班らに対し,見せ金による仮装の増資をしたことを含め,県から高度化資金を詐取したことを詳しく説明した旨の主張をしているけれども,この主張を採用することができないのは,後記第8の1の3の(1)ないし(3)で説明するとおりである。 6 C1から事情を聴取した金融班は,被告人A3に対し,つなぎ融資を運転資金に流用していたことを確認した旨を報告した。被告人A3は,第2次高度化資金の支出命令に必要な書類の準備ができていることや資金繰りのめどが立っていることを確認し,C’にはすでに土地分として第1次高度化資金4億9100万円を貸し付けており,建物,設備分の第2次高度化資金9億5250万円についても,被告人A1の支出負担行為の決裁を経て貸付契約の締結にまで至っており,新工場も稼働間近であることなどを考慮し,貸付けを中止した場合,C’が前記つなぎ融資等の返済のために振り出した約束手形の支払いが不能となって,直ちに倒産することから,これを避けるため,同月27日ころ,前記第2次高度化資金貸付けに係る支出命令を,その専決 た場合,C’が前記つなぎ融資等の返済のために振り出した約束手形の支払いが不能となって,直ちに倒産することから,これを避けるため,同月27日ころ,前記第2次高度化資金貸付けに係る支出命令を,その専決権限を有する商工政策課長として決裁し,同月30日,C’に対する建物,設備分の計9億5250万円の第2次高度化資金貸付けが実行された。また,この間の同月28日,C1は,B13に対し,「資金繰りの結果,自己資金4億1025万7889円のうち,2億円がまだ不足している。O銀行のつなぎ融資の返済を待ってもらいたい。県から銀行に口添えしてほしい。」等と要請し,B13は,県からは言えないが,C1から直接O銀行に話をした後であれば,県から口添えすることはできる旨を返答し,C1は,B10に対し,翌29日,同月末に迫っていた約束手形の支払いを猶予してもらえることになった旨を連絡し,同月31日には,6月4日にM’が話にくるなどと連絡した。なお,同日,M’はC’に対する融資を断った。 第7の1 第1次貸付けに至る経緯関係証拠(主として,被告人3名並びにB12,B13及びB11の各公判供述,検甲94ないし96,98ないし100,103,104,106,107,109ないし116,118ないし130,132ないし138,144ないし146,149,151,152,154号証,検乙3ないし6,8,17ないし19,21ないし23,37ないし40,42号証,弁61ないし63,67ないし69,72<不同意部分を除く>号証)によれば,以下の事実が認められる。なお,本項において,とくに断らない限り,月日は平成8年のことである。 1 商工3課の対応M’から融資を断られ,C1は,県に支援を要請するため,6月26日,C3を伴って,県庁に被告人A2を訪ね,これから閑散期を迎えるので支 ない限り,月日は平成8年のことである。 1 商工3課の対応M’から融資を断られ,C1は,県に支援を要請するため,6月26日,C3を伴って,県庁に被告人A2を訪ね,これから閑散期を迎えるので支援してほしいなどと述べ(なお,被告人A2の検察官調書<乙17>には,C1から,「M’から融資を断られ,もう県にお願いするしかない。」と言われた旨の供述記載があるけれども,C1が被告人A2に対してのみ,この段階から実情を打ち明けたものとは前後の事情からみて考えがたく,後記のとおりの,被告人A2の,被告人A3からM’からの了解はほぼ得られていると聞いている旨の報告を受けた際の対応からしても,M’から既に融資を断られていることを認識していたものとは考えられない。同供述記載は信用することができない。),被告人A2は,C’の件に詳しい被告人A3らに対応させることとし,被告人A3に対し,商工労働部として,商工3課で連携して支援策を検討するように指示した。被告人A3は,B16に指示して,経営流通課長B17,工業振興課長に就任していたB7とともに7月4日にC1を交えて協議することとした。 C1は,6月28日,商工政策課に赴き,被告人A3とB16に対し,「実は,資金が10億ほど足りません。このままではC’は倒産です。地元選出の国会議員を通じてM’本店に融資を依頼していますが,県の方からM’にプッシュしてください。」等と述べて,倒産の危機にあることを訴えつつ,M’に対し,県からも働き掛けるよう要請した。被告人A3は,「担保の問題もあるし,ベンチャー企業なみの取り組みになるなあ。」等と述べつつ,M’に融資を依頼するに際しての参考にしようと考えて,C1に対し,7月4日の協議の際に,事業計画書と必要な資金額が分かる資料を持ってくるように指示した。 C1は,倒産防 るなあ。」等と述べつつ,M’に融資を依頼するに際しての参考にしようと考えて,C1に対し,7月4日の協議の際に,事業計画書と必要な資金額が分かる資料を持ってくるように指示した。 C1は,倒産防止のために約16億7000万円が必要であることを前提として,従前の取引先の他に,取引の交渉もしていない大規模スーパーや百貨店の名前が記載され,平成8年度から徐々に賃加工業から製造販売業に移行しつつ,売上げが毎年順調に増加し,既存の高度化資金を返済でき,これから受ける貸付金も十分に返済可能である内容の事業計画書(「平成8年度共同施設事業計画」)を,C2に指示して作成させた。 2 B県庁西庁舎における協議等(以下「西庁舎協議」という。)(1) 7月4日,県庁西庁舎会議室において,被告人A3は,B17,B7,B16,B10とともに,C1及びC2を交えて協議し,その際,C1は,前記「平成8年度共同施設事業計画」を基に,「自社製品の営業展開をやります。私はこの事業を是非とも成功させたいと考えています。」,「初年度は収支バランスが悪いため赤字ですが,これはやむを得ないと考えています。2年度目からは黒字に転じ,2年度目から4年度目が順調にいけば,あとは大丈夫です。」等と述べつつ,C’の倒産を防ぐために,同年内に運転資金,借入金返済資金等として,I銀行の借換え分5億円を除いて,11億7000万円の資金が必要である旨を説明した。なお,必要金額の内訳は,①「本計画以来,現状に至るまで不況条件の中で加工賃の低下に対応しながら工場の生産調整を実行し,其の間の営業実績の低下による計上損金」が約3億円,②「本計画による初年度の資金不足」が約3億円,③「高度化融資対象外となる設備・消耗備品等購入資金」が約2億9000万円,④「自社製品の材料及び製品在庫資金」が約2億8000 る計上損金」が約3億円,②「本計画による初年度の資金不足」が約3億円,③「高度化融資対象外となる設備・消耗備品等購入資金」が約2億9000万円,④「自社製品の材料及び製品在庫資金」が約2億8000万円,⑤「I銀行借入金返済」が約5億円とされていた。 さらにC1は,②③④の合計約8億7000万円は必要不可欠であり,遅くとも8月中旬までには調達したい,M’本店に地元選出の国会議員を通じて依頼しており,本店では,支店から話が上がってくれば対応するということなので,県からはM’B支店に側面支援をお願いしたいなどと述べた。被告人A3は,M’に担保を示して交渉したのかと尋ね,C1が,I銀行の5億の抵当に入っているので示していないと答えたので,担保を示して交渉すべきであり,I銀行の分を返済して担保を解除してもらい,M’を1番抵当にすればいいと示唆した上,県からのM’に対する融資依頼に備えて,M’に示せる担保の一覧表を作って県に提出すること,取引先の資料を付けて,売上計画を補強することを指示するとともに,県の方でも,地場産品等の全国的な販路拡大を図るべく,県主導で設立されていた第3セクターである,株式会社P(代表取締役P1,以下「P’」という。)を通じての製品販売を検討すべきであるなどと提案した。 (2) C1及びC2が退席した後,被告人A3は,県としてもC’が実際に必要とする資金や財務状態等を把握する必要を感じ,B17に対し,診断班にC’の経営状態,必要な運転資金の再調査を命じるよう依頼し,商工政策課がM’など金融機関への支援要請を,経営流通課がC’の再診断を,工業振興課がP’への協力要請をそれぞれ担当する方針が確認された。B17は,B12及びB11に対し,「高度化事業を行っているC’の資金繰りが行き詰まり,約16億円を必要としている。A3課長が部 断を,工業振興課がP’への協力要請をそれぞれ担当する方針が確認された。B17は,B12及びB11に対し,「高度化事業を行っているC’の資金繰りが行き詰まり,約16億円を必要としている。A3課長が部として対応しないといけないと言っているので,課長の指示を受けてC’の数字を見てほしい。」等と指示し,B12及びB11は,当面必要な支払額の調査と,経費や売上げを把握して収支計画を策定する準備を始め,C2に対し,調査のために必要な決算書等の書類を提出するように指示したが,C’の新工場の落成式が7月10日に迫っていることもあって,すぐには提出されなかった。 また,被告人A3は,同A2に対し,C’が業績悪化のために運転資金として約16億7000万円を必要としていること,C’から地元選出の国会議員を通じてM’本店に働き掛けており,支援についての本店の了解がほぼ得られているようであること,及び,前記3課の対応方針等について報告し,被告人A2は,そこまで話ができているのなら,県がC’の支援に乗り出している姿勢をはっきり示して,M’からの融資を実現できるよう,自ら出向いて支店長に依頼することとした。 一方,C1は,7月4日の協議の際に被告人A2が出席していなかったことから,被告人A2に対しても,支援を直接依頼しようと考え,D2にも口添えしてもらうため,同人とともに県庁に被告人A2を訪ね,D2がC’をよろしく頼む旨を述べ,被告人A2は,方策を検討中であるなどと答えた。 3 M’に対する支援依頼に至る経緯7月10日,C’の新工場の落成式が開催され,商工労働部から,被告人A2,同A3,B7,B17,B12及びB11が出席し,工場見学の後,ホテルで催された祝賀会では,D1が挨拶した。 同月17日,B12は,C2に対し,今後経理面の整理について,C’,県 ら,被告人A2,同A3,B7,B17,B12及びB11が出席し,工場見学の後,ホテルで催された祝賀会では,D1が挨拶した。 同月17日,B12は,C2に対し,今後経理面の整理について,C’,県及び関連機関で協議を実施していく予定であるとして,C’,各組合員の税務申告書,平成8年5月末の試算表,借入金明細書,直近決算期の資産台帳等を用意してもらいたい旨を依頼した。 C1が直ちに担保を明らかにしないために,B10は担保物件がどのくらいあるのか明らかにするように催促し,作成すべき一覧表の体裁等が分からなかったC1は,県庁を訪れ,B10らに対し,自宅やグループ会社の土地建物はあるが,I銀行等の担保が設定されており,新たに提供できる物件がない旨を述べたところ,B10は,それでも構わないから,資産総額が12億円となるようにリストアップするように指示して,一覧表に記載すべき項目をメモ書きにしてC1に渡し,C2がこれを参考にしながら,適宜坪換算を行うようにとのC1の指示を受けて,不動産29物件,時価総額が12億3054万6000円との記載のある,「不動産・ゴルフ会員券一覧表」と題する書面(以下,この書面を「担保一覧表」ともいう。)を作成し,同月22日,県に提出した。 C1は,同月18日付けで,I銀行に対し,手形貸付1件残高2500万円の最終期限の延期及び6000万円の手形貸付けを申請し,I1は,最終支援とする,業況に留意し,他行肩代わりを強力に推進し,肩代わりできなければゴルフ会員権売却にて期限内回収のことなどと指示して,承認した。 診断班は,同月末ころ,C1から,C’及びその組合員の貸借対照表等の提出を受け,各社の損益計算書の「当期利益」欄から,それぞれ平成6年度決算において,株式会社G3が43万1000円のプラス,G1が21万30 ,同月末ころ,C1から,C’及びその組合員の貸借対照表等の提出を受け,各社の損益計算書の「当期利益」欄から,それぞれ平成6年度決算において,株式会社G3が43万1000円のプラス,G1が21万3000円のプラス,有限会社G4が185万円のプラスになっている一方で,C’は平成7年度決算こそ45万1000円のプラスであるものの,平成8年度決算は989万8000円のマイナスを,有限会社G5は平成6年度決算で4856万7000円のマイナスを,同G6は平成6年度決算で2295万1000円のマイナスをそれぞれ計上していて,グループ全体でみれば相当なマイナス収益になっていることを把握した。さらに,グループ各社間で貸借関係が存在したり,各社とC1はじめ役員個人との間で貸借関係があったりするなど,経理が一本化されておらず,決算期がばらばらであることも把握した。そこで診断班は,取り急ぎ,グループ内部で早急に支払う必要のない,対内的な貸借関係や,銀行等からの長期的かつ固定的な借入金を除外する作業を進めながら,C1らから,負債内容についての聞取り調査を進めたが,必要書類が大阪の会計事務所に送られていたり,h町のG2で保管されていたりしたため手間取り,当座の倒産を回避するために必要な,緊急に支払うべき金額とその内訳を把握できたのは,M’への支援依頼の数日後となり,その金額は10億766万9000円と算出された。 4 P’とC’の契約締結P’の取締役P2は,かつて代表取締役P1とともに,大手百貨店に勤務してアパレル業界に精通していたことから,同機構の新機軸として,平成7年12月ころまでに,「シーセイズ事業」として,発注した商品はすべて百貨店側が買い受けるシステムによる婦人服のブランド事業の全国展開を構想し,平成8年3月ころから,前記システムの会員となる百貨店 7年12月ころまでに,「シーセイズ事業」として,発注した商品はすべて百貨店側が買い受けるシステムによる婦人服のブランド事業の全国展開を構想し,平成8年3月ころから,前記システムの会員となる百貨店の開拓を進め,株式会社Qを商品の製造委託先として交渉を進めていた。しかし,7月ころまでに,入会員が当初の見込みより少なくなって,全国でR百貨店,S百貨店等15店舗,年間の売上額が約8億円程度にとどまる見通しとなり,Qはシーセイズ事業から撤退することとなった。そこで,P2は,C1に対し,シーセイズ事業の製造委託契約の締結を持ちかけた。C1はこれを快諾し,8月1日,P’とC’は,製造委託取引に関して基本契約を締結し,C’はP’の売上額の3割を取得することとされた。 シーセイズ事業の立上げは,経済紙や地元紙により,「P’が全国の百貨店向けに展開する婦人服のブランドであり,20億円から30億円の売上げを目標にしている」,「その生産を最先端機器による生産物流システムを備えている協業組合Cに生産委託する」等と報道し,C’の新工場建設については,「南国市に最先端の機械設備を備えたアパレルセンターを整備」,「新工場は県内トップ,中四国でも有数の縫製工場であり,海外との競争で国内では空洞化が進んでいる賃加工型の下請けから脱却し,5年後の平成12年度には年商45億円達成を目指している」等と報道された。 5 M’に対する融資依頼等(以下「M’協議」という。)(1) C’とP’との基本契約が締結されたことから,被告人A3らは,M’に対する融資依頼に臨むこととし,被告人A3は,同A2に対し,あらかじめ金融班に作成させておいた資料を基に依頼内容について説明し,被告人A2は,担保一覧表,売上計画・工場生産能力,組合総合収支計画等が記載された一覧表をみて,これまでの状況から ,同A2に対し,あらかじめ金融班に作成させておいた資料を基に依頼内容について説明し,被告人A2は,担保一覧表,売上計画・工場生産能力,組合総合収支計画等が記載された一覧表をみて,これまでの状況から,貸付金に見合う担保がないとは予想したが,まずは,県として,C’が今後どれだけ現実的に実現可能な事業計画を有しているのかをM’に示す必要があると考えた。 8月9日午前,被告人A2及び同A3は,B16を伴い,前記平成8年度事業計画書や担保一覧表(写し)を携えてM’B支店に赴き,I銀行からのメインバンクの引継ぎを視野に入れて,同支店長らに対し,被告人A2が,C’に対する総額10億円(初年度資金不足分3億円,自社製品の材料,製品在庫資金2億円,I銀行に対する返済原資5億円)の融資を依頼し,P’とのタイアップによる自社ブランド商品の販売に関する説明をして,業況の改善が期待できる,同和の工業施設は公の予算でやっているが,業況は今一歩のところが多く,県としては協業化することが手本になることを期待しているなどと述べたが,同支店からは,①先だってC’から依頼を受け,本部の者も参加して連日集中的に検討した末,融資できないという結論に達し,全体の事業計画,資金繰り,償還財源の確保等からみて,事業の成功に自信が持てないので融資は断る旨を6月4日にC1に伝えてある,②C’や組合員の体力,累積債務による債務超過など,償還財源の確保には,根本的なところに問題があり,事業計画等に今後大幅な変更でもない限り再検討はできないなどとして融資を拒否され,結局,被告人A2らは,「今後支援を抜本的に見直し,再度お願いすることもあるので,その際はよろしくお願いしたい。」旨を述べ辞去した。M’B支店がC’に対し既に融資を断っていたことを知った被告人A3は,驚くとともに,C’とつながりの を抜本的に見直し,再度お願いすることもあるので,その際はよろしくお願いしたい。」旨を述べ辞去した。M’B支店がC’に対し既に融資を断っていたことを知った被告人A3は,驚くとともに,C’とつながりのあるI銀行の感触を探ることとし,同A2に対し,「I銀行に支援をお願いしてみましょう。」との意見を具申し,被告人A2も,他に考えられる支援策が見当たらない以上,I銀行による融資が可能になるよう,商工労働部として側面から支援する方策の検討を被告人A3に指示した。 (2) 被告人A3は,8月9日午後1時ころ,I銀行公務部長I2を訪れ,C’が10億円を必要としている,M’へ相談したが駄目であった,無理を承知でお願いにきた,メインバンクとして協力してほしいなどと支援を依頼し,I2は,「C’の現状を知りたいので貸借対照表を見せてほしい。審査部につなぎはする。」等と述べ,I1に被告人A3からの依頼について報告した。また,被告人A3は,同日午後5時ころ,C1を県庁に呼び出し,M’に断られていたのに黙っていたことを叱責し,今後の方針を問いただしたところ,C1から,資金繰りのめどはないが,工場が完成したばかりで成功させたい,力を貸してほしいなどと要請され,I2に挨拶しておくこと,同月末の支払いを猶予してもらうことなどを指示した。 また,被告人A2は,被告人A1に対し,M’からC’への融資を断られた旨を報告しておいた。 同月12日,被告人A3,B18商工政策課課長補佐,B16,B13,B12,B11に,工業振興課担当者を交えて,今後の協議が行われ,販路拡大を担当する工業振興課から,「P’としては,総売上10億円を見込んでおり,うち3億円がC’の売上げになる見込みである。翌9月20日に春物展示会を行い,具体的な受注はその後になる。」旨の説明がされた。 6 土佐寮に 興課から,「P’としては,総売上10億円を見込んでおり,うち3億円がC’の売上げになる見込みである。翌9月20日に春物展示会を行い,具体的な受注はその後になる。」旨の説明がされた。 6 土佐寮における協議(以下「土佐寮協議」という。)8月13日,被告人A3,B16,B13,B12及びB11が土佐寮において協議し,B16からの,M’から支援を断られ,早急に県としての支援策を検討する必要がある旨の概況報告がされ,続いて,B12から,C’と組合員5社の赤字が合わせて7億円になり,同月末に約3億円,翌9月末までに約2億円が必要であるなどと資金繰りの状況について報告され,被告人A3は,8月分を何とか乗り切らせるように指示した。さらにB12は,C’の今後の売上見込みとして,P’の売上げを10億円とみれば3億円程度と見込まれること,正式に受注するのは秋の展示会以降になるため,現段階では正確な売上見込みは分からないこと,P’以外の取引先への売上見込みは,現在調査中で判明していないことなどを報告した。被告人A3は,資料を作成してI銀行に支援を要請する旨を述べ,B12に対し,同月20日までに,I銀行に融資を依頼するに際して提出する計画案を作成するよう指示した。さらに,協議後,被告人A3は,B16及びB12に対し,診断に際して参考とできるよう,M’からC’の調査結果を資料として譲り受けて参考にするように指示したが,後にM’から公表できないとして断られた。また,被告人A3は,C’の債務を整理させて再始動させる方途も考え,B12に対し,会社更生法による再建の可能性を検討するように指示したが,これについては,後日,同法は協業組合には適用されないということで,断念した。 同月15日,I1の,C’自体を認知せず,支援依頼は断るとの意向を受けたI2は,被告人A を検討するように指示したが,これについては,後日,同法は協業組合には適用されないということで,断念した。 同月15日,I1の,C’自体を認知せず,支援依頼は断るとの意向を受けたI2は,被告人A3に現状ではC’への支援は無理である旨をあらためて伝えた。被告人A3は,組合員5社の企業分析をして,助成金の支出や県の制度融資の活用ができるかどうかを検討して,再び依頼に伺いたい旨を伝えた。 7 診断班による利益計画,償還計画策定の動きB12及びB11は,被告人A3の意向を確認して,必要資金約10億円のうち,1億5000万円をB県単独融資制度(以下「県単融資」という。)である「中核企業支援融資」を使って,I銀行がN協会の保証付きで貸し付け,残りの8億5000万円を同銀行が単独で融資し,10年で償還することを前提として,C’から入手した,平成8年5月末の試算表,平成7年3月の診断報告書,西庁舎協議の際に提出された共同施設事業計画書等の書類の分析と,7月中旬ころから行っていた,C1やC’の営業担当者C4に対する取引先や売上高見込みに関する聞取り調査(ヒアリング)を基本として,収支計画,償還計画の立案を本格化させた。 8月21日,診断班の指導を受けたC’から,事業計画書の内容を,自社製品の製造販売による売上高を比較的抑えめにし,全体としての売上高を低めに設定するなどの修正を加えた利益計画・償還計画が送付され,B11がこれに修正を加え,C’がそれに従って修正した利益計画・償還計画を再送付し,診断班は,この第1次修正を加えた計画案を基に,更に「利益計画・返済計画」,「償還計画」の策定を進めたが,ヒアリングで絞った売上高は一定に保ちつつ,経費を削減するなどして作成した当初案は,平成8年以降,返済財源の総額から返済総額を控除した額(以下「差引額」とい 済計画」,「償還計画」の策定を進めたが,ヒアリングで絞った売上高は一定に保ちつつ,経費を削減するなどして作成した当初案は,平成8年以降,返済財源の総額から返済総額を控除した額(以下「差引額」という。)がマイナスとなり,償還可能な内容とならなかったため(以下,この計画案を「パターン1」という。),第2次高度化資金の償還を3年繰り延べてみたところ,平成9年度から「差引額」がプラスに転換する内容となった(以下,この計画案を「パターン2」という。)。なお,パターン1から経費を更に削った計画(パターン3)も策定したが,償還できるような計画にはならなかった。 8 3課検討会8月23日,県庁西庁舎会議室で,被告人A3,B18,B16,B13,B10,B12,B11,工業振興課課長補佐B19及び同課振興第1班長のB20が出席して,3課合同の検討会が開かれた。その冒頭,被告人A3は,C’を潰すわけにはいかないと述べた上,倒産を回避するためには約10億円が必要であること,今後はI銀行に融資を依頼する方針であることを述べ,引き続き,B16が,資料を基に,これまでの経緯を説明し,事業が計画どおりに進行しておらず,メインバンクのI銀行から新規融資を断られて運転資金に不足を来しており,M’からも融資を断られていること,その理由として,債務超過であることや,事業計画の成功に自信が持てず,償還財源の確保に不安があるという説明を受けたこと,県としての支援策を早急に検討する必要があることなどを説明した。続いて,B12は,当面必要な資金の総額が10億766万9000円であること,うち1億5000万円は県単融資(中核企業育成対策特別資金貸付制度)を使い,8億5000万円はI銀行に融資を依頼する方針である旨を報告した上,パターン1とパターン2について,①C’は現状では賃加 ,うち1億5000万円は県単融資(中核企業育成対策特別資金貸付制度)を使い,8億5000万円はI銀行に融資を依頼する方針である旨を報告した上,パターン1とパターン2について,①C’は現状では賃加工が主であるが,将来は生地買いに重点を移す予定であり,売上高は,賃加工と生地買いを合計したものである,②賃加工の分は,実績データで見込みを立てたので,大きく狂うことはないが,生地買いの分は,実績データがなく,現段階では取引先からの発注もないので,しっかりした見込みは立たない,③経費等は可能な限り切り詰めているなどと説明した。このパターン2では,平成8年度の売上見込みが18億2474万6000円,平成9年度が26億8040万円,平成10年度以降も,26億3540万円から29億8904万5000円に向けて順調に増加する見込みとなっていた。さらにB12は,償還計画について,パターン1は差引額が平成10年度以降マイナスとなるけれども,パターン2では,差引額がプラスで維持される,I銀行に示す計画はパターン2になるが,差引額はかろうじてプラスとなっているだけで余裕はないなどと説明した。被告人A3は,「今説明があったように,計画はかなり危険がある。I銀行にはこの計画でお願いするが,難しいだろう。3課で知恵を出して,I銀行にオーケーを言わせるための方策を考えんといかん。」等と発言し,同銀行を説得する材料として,県や同銀行によるC’の再建支援策として,①経営改善計画の推進(平成8年9月から10月をめどとして経理処理の一本化を図った上,県と税理士の指導の下で管理体制を確立し,早期に実行予算による経営管理を実現する,平成9年度からは,経営や経理の透明性を確保するため,毎月事務報告を行わせる,I銀行に人材を派遣してもらう等),②工業振興課による売上増対策(P’からの発 し,早期に実行予算による経営管理を実現する,平成9年度からは,経営や経理の透明性を確保するため,毎月事務報告を行わせる,I銀行に人材を派遣してもらう等),②工業振興課による売上増対策(P’からの発注確保,E公社の下請けあっせん事業等の活用,県外事務所の活用等)が話し合われたほか,大手取引先からの資金援助,メインバンクをI銀行からO銀行へ全面的に切り替えること等についても話し合われ,今後の対応として,大枠,商工政策課が,金融機関等への支援のとりまとめ,高度化事業担当課としての指導育成を,工業振興課が販路拡大の支援,経営流通課が財政状態の把握,経営の診断と指導,経理一本化の指導に当たることとされた。 さらに,被告人A3は,I銀行から融資を拒絶された場合の対応策として,県から運転資金を直接貸し付けることも考えに入れて,財源確保の可能性や貸付策を講じた場合の影響等についての検討方を指示した。その際,B13が,他の企業への波及を案じて県による貸付けは止めるよう意見を述べたが,被告人A3は,「ほんなら,どうしたらえいがなや。どうせえと言うがなや。」と述べて取り上げなかった。また,この後,被告人A3は,金融班の県単融資担当のB21に対し,平成8年度当初予算として成立済みの県単融資枠から10億円を捻出できるかどうかを至急調査するように指示し,B21は,調査の上,可能であると報告した。 なお,B12の検察官調書(甲114)には,被告人A3から,「I銀行に見せるんやから,勝手につつくな。元に戻しちょけ。」等と,I銀行からの借入分の返済期限を勝手に延ばさずに,元に戻しておくように指示されたので,B11に指示して,パターン2に,I銀行の返済を約定どおりにするなどの修正を加えたもの(以下「パターン4」という。)を作成した旨の供述があるところ,被告人A3の ,元に戻しておくように指示されたので,B11に指示して,パターン2に,I銀行の返済を約定どおりにするなどの修正を加えたもの(以下「パターン4」という。)を作成した旨の供述があるところ,被告人A3の検察官調書(乙38)には,パターン2とパターン4の違いについて,B12から,保育料の計上等,記載が漏れていた部分を加えた旨の報告があった旨の供述があるに過ぎず,このあたりの経緯は必ずしも判然としない。 9 3課長会議等(1) 8月26日,被告人A2,同A3,B17,B7,B16,B12らが出席して3課長会議が開かれた。被告人A3が,これまで3課で対応策を練り,一応のめどがついたので報告する旨を述べ,B16が,C’設立の経緯,概要について説明した上,C’が従来の受注加工型の縫製業からの脱却を目指していること,現実的には計画どおりに事業が進捗しておらず,当面の運転資金にも不足を来すなど財務面が厳しく,金融機関からの融資の見通しが立たず,事業の継続が懸念される状況であることなどを説明した。被告人A3が,I銀行に対する融資の依頼は現状では厳しいけれども,県としては,引き続きC’を全面的に支援していくべきであるとの方針を述べ,前記8の3課検討会の際に話し合われた支援策を敷衍して,商工政策課による金融対策,経営流通課による経営改善対策,工業振興課による売上増対策等が討議されたほか,B12が,償還計画について,①総額10億766万9000円の融資が必要不可欠であること,②賃加工と生地買いから売上高を見込んでおり,生地買いについてはヒアリングに拠っていること,③経費を伸び率最低で算出し,材料比率も最低に抑えたことなどを説明し,償還計画について,パターン1とパターン4を対比しつつ,パターン1では平成10年から差引額にマイナスが生じるために,第2次高度化資金の償 を伸び率最低で算出し,材料比率も最低に抑えたことなどを説明し,償還計画について,パターン1とパターン4を対比しつつ,パターン1では平成10年から差引額にマイナスが生じるために,第2次高度化資金の償還を3年繰り延べたパターン4を採用せざるを得ない旨を説明し,取引先からの注文書の有無についての被告人A2の質問に対し,直前にならないと正確な受注量については分からないなどと返答した。被告人A2は,なおも「売上げは,どの程度大丈夫なんだ。」と尋ね,B12は,生地買い分はヒアリングのみに基づいており,これからの営業次第である旨を答えた。これらの説明を聞いた被告人A2は,「A3君,本当にこれやらんといかんのかな・・。どうしてもやらんと・・。」等と逡巡していたが,被告人A3は,「高度化入れたばかりですから。地域改善事業でもありますし。3課でチームを組んで支援していきますので。」等と述べ,さらに,「直貸しも検討する必要があります。」と述べた。 (2) 会議終了後,被告人A2は,退出しようとするB12及びB11を呼び止め,両名に対し,売上げの内訳や生地買いのシステム,売上げの将来的な伸び,人件費や製造原価,経費の伸び率等について質問し,B12が,生地買いは,展示会が終わってからの発注で,営業をかけている現段階では何とも言えないこと,経費はぎりぎりまで抑えてあり,伸び率も最低に設定していることなどを説明し,被告人A2がまたも「売上げはどの程度大丈夫かな。」と尋ねたのに対し,「大丈夫じゃないです。」等と返答した。その後も,被告人A2は,B12に対し,度々,「本当の話,売上げはどれくらい保障できるの。」等と質問していた。 翌27日,同和対策審議会が開かれ,被告人A2,商工労働部副部長B22,被告人A3,B17及びB7が出席し,D1が,同和地区の共同作業所につい 上げはどれくらい保障できるの。」等と質問していた。 翌27日,同和対策審議会が開かれ,被告人A2,商工労働部副部長B22,被告人A3,B17及びB7が出席し,D1が,同和地区の共同作業所について,これまで同和対策課が福祉対策として取り組んできたものの,これからは,商工労働部が企業育成の問題として取り組むべきである,C’が400名もの従業員を持つ有数の産業に成長したが,従業員と商工労働部が努力して育成したためであるなどと述べた。同会の終了後,被告人A3は,同A2に対し,I銀行の支援について,「厳しいですよね。」,「場合によっては直貸しも考える必要がありますね。」等と述べた。 同月30日,被告人A3,B13及びB17が集まり,支援に消極的なI銀行に対しては3課長が説得する,更なる保証に消極的なN協会に対しては,被告人A3が説得するなどと話し合った。 第1次I銀行協議9月3日,被告人A3は,B17,B7,B16,B12,B20,B10,B11,B13らとともに市町村共済会館に赴き,I銀行のI2,同銀行公務部主任調査役I3に対し,B12及びB11が起案したB県商工労働部長名義の支援依頼資料に基づき,「C’は,現状,深刻な事業資金不足に陥っております。約400人の従業員を抱えており,地域の雇用の場として極めて重要となっております。倒産しますと,重大な雇用問題が発生致します。地域の雇用の場を確保することは,県の重要な政策です。是非ともI銀行にご支援をいただき,10億円の融資をお願いしたい。」等と,C’に対する10億円の融資を要請し,B12が,パターン4に基づき,「C’は従来の賃加工に加え,新しく自社製品の製造・販売を計画しております。現在,営業活動を精力的に行って,取引先の確保を図っており,将来的には相当量の受注が見込まれます。そ が,パターン4に基づき,「C’は従来の賃加工に加え,新しく自社製品の製造・販売を計画しております。現在,営業活動を精力的に行って,取引先の確保を図っており,将来的には相当量の受注が見込まれます。そのため,C’の売上高は今後伸びる見込みです。10億円の償還に問題ないと考えております。」等と説明した。しかし,I2は,資料にある平成7年度をベースとしたC’及び組合員5社の合計決算表中の貸付金欄(約10億6900万円),当期損益欄(約1億1695万円の損失),負債合計欄(約37億円)等の記載や,平成8年度の経常利益が約3億6000万円の赤字なのに,平成9年度に2億2441万6000円と黒字に転換し,平成10年度以降も順調に黒字が伸び,平成14年度には4億9374万3000円の黒字を出す旨の計画内容には無理があると感じ,アパレル業界の不安定さ,違法な貸付けであるとして株主代表訴訟が提起されるおそれがあることなどを考えると頭取に無理は言えないなどと考え,大要,売上計画に無理がある,これまでの赤字借入れを凍結した上で事業を開始しないと,事業をやるだけ赤字が拡がるはずで,売上高と借入金のバランスを考えたら,10年で償還できるはずがなく,50年はかかる,当行ではC’に対する債権は「分類」扱いになっており,N協会の保証付きでないと融資できない,個人的な意見だが,一度きれいに清算して,やり直すべきではないか,今まで何度も収支計画を出してきたが,いまだかつて計画どおりにいったことがない,おそらくC’は資産が借入金の半分にも満たない,10億円あればこの企業がうまく成り立つか疑問であるなどとして,同行としての支援は拒絶した。被告人A3は,「地域の雇用確保がかかっています,400人もの従業員が失業しては,重大な社会問題に発展します。」等と述べたが,I2は,「審査部 つか疑問であるなどとして,同行としての支援は拒絶した。被告人A3は,「地域の雇用確保がかかっています,400人もの従業員が失業しては,重大な社会問題に発展します。」等と述べたが,I2は,「審査部に報告しておくので,あとは審査部と話をして下さい。」と回答するに止めた。協議の途中,I2が「しっかりした会社に貸してからの回し資金しかない。」,前記I3が「P’が肩代わりになるか,C’に県が出資するか。」等と言い,被告人A3が,「出資するよりは直貸しの方がまし。」と応じるなどのやりとりがあった。I銀行の支援をどうしても得たいと考えていた被告人A3は,県と同銀行でそれぞれ5億円ずつ貸し付けるという案も提示したが,賛同を得られなかった。 11 第1次貸付けに向けた準備(1) 被告人A2は,同A3らから後記のとおり報告を受けるのと相前後して,B17に対し,B17と診断班から話を聞きたい旨を連絡し,これを受けたB17は,B12及びB11から,C’が倒産の危機にあるのは,投資額が多すぎたこと,増資原資の全部を借入れにより調達したこと,業績が低迷していること,協業化する前の組合員5社の負債をそのまま持ち込んでいること,メインバンクがないままスタートしたことなどにあり,経理が一本化されていないという問題点もある旨の報告を受け,3名で,9月4日,被告人A2を訪ねて,B17が,倒産危機を招いた要因につき報告した。 (2) 第1次I銀行協議の日の翌日である9月4日,被告人A3は,B13とともに,被告人A2に対し,B13が作成した,「C’ I銀行との協議」と題する,前日I2が述べた見解をまとめた文書を示して,協議の内容を報告するとともに,「新制度要綱を作成して直貸しします。地域改善事業費の執行残がでるので,財源に充てていきます。」等との意見を具申した。被告人A2は,「 べた見解をまとめた文書を示して,協議の内容を報告するとともに,「新制度要綱を作成して直貸しします。地域改善事業費の執行残がでるので,財源に充てていきます。」等との意見を具申した。被告人A2は,「担保はあるのか。」,「銀行が見放したところに,どうして直貸しして貸さないかんのか。貸付けに当たって必要な手順だけは踏んどいたということを示しとかないかん。」,「シビアにみるべきだ。」,「県がもしやるなら,役員個人も破産するくらいのことはさせんといかん。」等と述べるとともに,「もし(直貸しを)やるとしたら,どういうことになるか調べておくように。」,「副知事に説明する場を設けるように。」等と指示した。被告人A3は,副知事の秘書と連絡をとって,同月9日午後が空いているということだったので,秘書に,商工労働部の部長以下が,高度化資金を貸し付けているC’の件で副知事に説明に行きたい旨を伝えた。 その後,被告人A3は,金融班との協議で,県が10億円を調達しなければC’が倒産する,手形が落とせなければ,今月末に倒産する,県単の予算で10億円を貸し付けるなどと述べ,B21に対し,貸付要綱の作成や貸付けに関する事務を担当するよう命じた。B21は,高度化事業計画で成功するといって県から14億円余りも借りた企業が,借りた直後に倒産するから助けてくださいというのは虫がよすぎる,何で10億円もの融資が必要なのか,倒産しかかっているからといって県が一企業に直接融資するのはおかしいなどとして反対したが,被告人A3は,「倒産したら400人の従業員はどうなる。路頭に迷わすがか。」等と反論し,なおもB21が,過去の倒産処理事例を引き合いに出して,いったん倒産させて,新たに再建するときに貸し付ける方法を提案したのに対し,「お前に他にえい方法があるがか。それならえい案をもってきてみ 反論し,なおもB21が,過去の倒産処理事例を引き合いに出して,いったん倒産させて,新たに再建するときに貸し付ける方法を提案したのに対し,「お前に他にえい方法があるがか。それならえい案をもってきてみい。」等と叱りつけた。 また,被告人A3,B17及びB12は,県庁を訪れたC1及びC2に対し,I銀行の感触が悪いことを告げた上で,県による貸付けを前提として,今後は県との約束を守るように注意し,従業員の給料を減らせ,経理の一本化を急げ,取引先から発注書を取り寄せるようにせよなどと指示し,この折に,C1から,8月末が支払期日の約束手形の支払猶予を得られなかったこと,賞与の支払いを遅らせることなどの報告を受けた。 9月5日,被告人A3は,B13に対し,「C’が倒産した場合の処理を検討しちょけ。」等と指示した。また,前記の指示を受けたB21は,同日ころから貸付要綱案の起案を始め,同月6日ころには平成8年度歳出予算見積書等を作成した。 (3) 同月6日午前,被告人A2,同A3及びB12はI銀行を訪ね,被告人A2から,第1次協議の際と同様の資料をI1に渡し,「従来の賃加工からアパレルメーカーに転換を目指しており,県としては同和縫製の生残り策としてC’の事業をモデルケースと位置づけている。全体で約400人もの従業員を抱えている。」,「官民一体となって支援をお願いしたい。」等と述べた上,B12が資料に基づき説明を加えるなどし,あらためて融資を依頼したが,I1は,県において高度化事業貸付制度を利用するなりして運転資金を支援することはできないのか,当行が単独で融資することになった場合の債権保全措置はどうしてくれるのかなどと,N協会の保証付きであれば協力するが,単独での融資はできない旨を答えた。そこで,被告人A3は,県が特定財源を利用して貸し付けた場合に,歳 ることになった場合の債権保全措置はどうしてくれるのかなどと,N協会の保証付きであれば協力するが,単独での融資はできない旨を答えた。そこで,被告人A3は,県が特定財源を利用して貸し付けた場合に,歳入欠陥を防ぐために必要不可欠となる,年度末一日だけのC’に対する融資を依頼したが,I1は,上司と相談の上回答する旨を答えるにとどめ,被告人A2らが退席した後,直ちに審査部担当役員や頭取に口頭で報告し,N協会の保証付き融資以外は行わない旨の方針に了解を得た上,さらに年度末の一日融資についても報告したところ,確実に返済されるのであれば,一日融資まで断る必要はない旨の返答を得た。 被告人A3は,同A2とともに県庁に戻ると,被告人A2に対し,「やはり直貸ししかありませんね。」,「組合(C’)が資金繰りに窮して倒産する危機に至っているのは,組合にも責任がありますが,不十分な指導をしていた県の担当者にも責任があります。ここでもし組合が倒産してしまえば,県の責任が追及されることは必至です。組合には400人の従業員がいますから,県が不十分な指導をしたことで組合が倒産したとなれば,同対審(同和対策審議会)では県が同和地区の就労対策に真剣に取り組むと言っていましたから,D同盟が怒って県の責任を追及し,同対審が大混乱になって審議がストップするかもしれません。」等と述べ,これを聞いた被告人A2は,「仕方がないんかな。」等と答えた。 (4) 同日午後,被告人A3は,B16とともにN協会を訪れ,限度額一杯の1億8500万円の保証を依頼し,さらに限度枠を超える保証をも要請したが,N1同協会保証部長から,限度額一杯の保証については検討するが,それを超える部分は,業務方法書を改正する必要があり,それには大蔵大臣の認可がいることからすぐにはできないとの説明を受けた。 同日 N1同協会保証部長から,限度額一杯の保証については検討するが,それを超える部分は,業務方法書を改正する必要があり,それには大蔵大臣の認可がいることからすぐにはできないとの説明を受けた。 同日午後3時ころ,I1は,県庁に被告人A2を訪ね,「プロパー融資はお断りするしかありません。N協会の保証があれば協力できます。期末一日融資については検討させてください。」等と,I銀行として単独では融資できない方針に変わりがない旨を告げた。これを聞いた被告人A2は,「トップを入れた話ですか。」と尋ね,I1は,「そのように理解してもらって結構です。」と返答した。さらに被告人A2は,「来週同対本部長である副知事にも説明しなければならない。P’を推進している知事にも説明しなければならない。I銀行のトップへの話があるかもしれない。」等と,暗に知事や副知事から直接頭取に話をすることになるかもしれない旨を述べたが,I1の姿勢は変わらなかった。そこで被告人A2は,I銀行がC’に対する債権の取立てに及ぶと,県が貸し付けても資金繰りに窮してしまうので,従前からの貸付金約6億円について急な取立てに回らないでほしい旨をI1に依頼した。I1が帰った後,被告人A2は,B12に対し,「売上げはどの程度保障できるの。」と尋ね,B12も,それまで同様に,「どの程度と言われましても,とにかく大きく動く可能性が非常に高いです。ヒアリング中心で,詰め切れていませんので。」と答えると,被告人A2は,「どうしてもこれやらんといかんろうか。」と困った様子を見せていた。 (5) 同日,被告人A2を含めて行われた部内協議において,県が直接貸し付けるとの方針で副知事に意見を具申することとなり,被告人A3は,同A2からの「副知事に説明するための資料をまとめてほしい。」との指示を受けて,基本文書は自ら作成 われた部内協議において,県が直接貸し付けるとの方針で副知事に意見を具申することとなり,被告人A3は,同A2からの「副知事に説明するための資料をまとめてほしい。」との指示を受けて,基本文書は自ら作成し,添付資料は金融班に作成させ,また,利益償還計画はB12やB11に作成させることとし,同月8日に内容の検討をすることとした。 一方,被告人A2は,同A1に対し,I銀行から融資を断られたが,それは頭取の意向でもあるようだと報告し,同A1は,「どのような処理が考えられるか,とにかく商工労働部で検討するように。」,「潰せないなら,もう少し考えてみろ。」等と述べた。 12 副知事に対する説明の準備9月8日,被告人A1との協議に備えて,被告人A3,B16,B13,B10,B12,B11及びB19が出席し,被告人A3が作成した素案を基に検討を進めたが,被告人A3は,県による貸付けについて,「やり方としては議会の承認をもらうのが本当だが,議会にかけたら反対が出るやろうから,産経(産業経済委員会)委員にだけ説明する。」等と議会対策の方針を説明した。 なお,この段階で,B12やB11が作成した償還計画では,県が直接貸し付ける額は8億1500万円として計画されており,N協会の保証付きでのI銀行の融資分と合わせて,10億円をC’に貸し付けることとなっていた。 同日,B12らが,副知事協議に向けて準備作業を進め,パターン4を修正しつつあった際,被告人A3は,B12らに対し,「この10億円で余裕はどれくらいある。」と尋ね,B12は「ぎちぎちの計算でやってます。余裕はありません。」と答え,被告人A3は,「足らんなったらどうする。困るろうが。もういっぺん調べちょけ。」と指示し,B12が「このままやってください。」と言うのに対し,「ぎりぎりやったら,すぐ資金ショ はありません。」と答え,被告人A3は,「足らんなったらどうする。困るろうが。もういっぺん調べちょけ。」と指示し,B12が「このままやってください。」と言うのに対し,「ぎりぎりやったら,すぐ資金ショートする。調べちょけ。」とあらためて指示した。これを受けて,B12とB11は,C’に対し電話をかけるなどして,倒産防止のために当座必要な金額について調査したところ,必要資金の計上漏れや未払金があることが把握できたため,B12は,翌9日朝,更に2億円必要である旨を被告人A3に報告し,被告人A3は,融資総額を12億円とする償還計画を,午後からの副知事に対する説明に間に合うように作成するよう指示した。 13 副知事との協議(以下「副知事協議」という。)(1) 9月9日午前中,被告人A2,B22,被告人A3,B12及びB16が集まって,被告人A1に対する説明内容について協議した。なお,B22は,商工労働部労働4課(企業立地課,労働政策課,職業安定課,雇用保険課)担当の副部長で,通産省から出向中の商工3課担当の副部長は出席しなかった。B22は,この場において,案件の概要を知ったが,すでに被告人A2らにおいて県が貸し付ける方針を固めていたこともあって,異を唱えなかった。 この協議において,C’の倒産防止のために必要とする資金が,12億円に増加したため,被告人A3は,その旨を報告し,既存の県単融資として1億8500万円をN協会の保証付きでI銀行に融資させ,残額の10億1500万円を県が直接貸し付ける旨の方針が確認され,被告人A3が説明用資料に記載しておいた損失保証案(後記の案1)の提示については,被告人A3から,一応載せるだけであるとの説明がされた。被告人A2は,融資額が突然増えた理由について説明を求め,B12が,「当初考えていた内訳は,本年9月に6億8 案(後記の案1)の提示については,被告人A3から,一応載せるだけであるとの説明がされた。被告人A2は,融資額が突然増えた理由について説明を求め,B12が,「当初考えていた内訳は,本年9月に6億8000万円,10月に6000万円,11月に2億6000万円でしたが,運転資金がかなり窮屈になるので,余裕を持たせて12億円は必要です。」等と答え,被告人A2はC’はあてにならないなどと不満を表しながらも,被告人A3が,「ここまできて潰すわけにはいきませんから,仕方ありません。」等と答えたこともあって,異論を述べるには至らなかったものの,「あとに続くものがある,歯止めがきかなくなるおそれがあるので,気をつけるように。」等と,このような貸付けが他に波及することへの懸念を示すとともに,「役員全員を連帯保証人にしろ。資産も全部,担保に出させろ。」等と述べた。被告人A3は,400名の失業に伴う影響の大きさ,同和縫製の試金石であることを強調し,また,産業経済委員会の委員に個別的に根回しをする方針を説明した。 一方,午前中の協議を受けて,B12及びB11は,融資金額を12億円とする償還計画の作成を進めたが,突然の増額のため,経費を切り詰めるなどの対処だけでは各年度の償還が可能となるものが作成できなかったことから,被告人A3の了承を得て,高度化資金の土地分について,返済の始まる平成9年度分の約3777万円については償還させるものの,その後3年間は償還を据え置くとともに,貸付利率を,パターン4の4パーセントから,1.875パーセントに減額することで,平成9年から差引額がプラスとなる内容の利益計画・償還計画(最終)と,借入計画・返済計画(最終)を後記の副知事協議が始まる約20分前までに作成し(ただし,副知事説明の際の最終案では,手違いにより,貸付利率は4パーセ がプラスとなる内容の利益計画・償還計画(最終)と,借入計画・返済計画(最終)を後記の副知事協議が始まる約20分前までに作成し(ただし,副知事説明の際の最終案では,手違いにより,貸付利率は4パーセントのままであった。),パターン4と比べ,「新規借入」が8億5000万円から10億1500万円に,「中核企業育成対策特別資金」が1億5000万円から1億8500万円にそれぞれ増加した内容となった。 (2) 同日午後2時30分ころ,被告人A2,B22,被告人A3及びB12は,副知事室に被告人A1を訪ねた。あらかじめ被告人A3は,「副知事から数字について聞かれたら,簡潔に短く答えろ。」とB12に指示していた。 副知事室での協議において,被告人A2は,同A3が自ら起案するなど中心となって作成した「協業組合Cへの対応について」と題する書面を同A1に手渡し,まず同A3が,これに基づいて,C’が,出資金が4億円余りで,従業員が400名を超えていること,売上高は20億円台だが,8000万円近くの赤字になっていることなど,C’の概略を説明した上,C’が必要とする資金は,平成9年3月末までに12億230万円で,うち6億9230万円を平成8年9月末までに調達しないと倒産するとして,C’が倒産の危機に直面していること,その原因として,設備投資の自己負担分として予定していた増資資金を運転資金に回さざるを得なくなり,結果的に,設備投資の自己負担分約3億6000万円を一時的な借入金に頼らざるを得なくなっていたこと,協業組合設立前のHグループの各社が有していた長期負債合計約6億5000万円をC’が承継していて,この事実を県として把握していなかったこと,メインバンクを確保できないままに高度化事業を開始したため,運転資金の確保に苦労する状況が続いており,リース方式での導入を予定 0万円をC’が承継していて,この事実を県として把握していなかったこと,メインバンクを確保できないままに高度化事業を開始したため,運転資金の確保に苦労する状況が続いており,リース方式での導入を予定していた設備も,支援金融機関が存在していないという状況を見越されて購入を迫られたことなどを述べた上,C’の財務状態,売上見込み,事業見通しなどについて商工政策課,工業振興課,経営流通課により調査した後,商工労働部からM’や協業化前のメインバンクであったI銀行に対し,融資を依頼したが,いずれも断られたことなどを説明した。また,金融機関に断られた理由等として,M’については,多額の債務を整理せずに高度化事業を開始しており,財務状況が極めて脆弱であることや,協業化前のメインバンクであったI銀行に支援を拒否されていることなどが理由であると推測されるなどと,I銀行については,C’の高度化事業を危ぶんで,支援はしない旨の役員会決定をしており,N協会の保証がない限りは,融資できないと説明された旨を報告した。 被告人A3は,このようにC’の厳しい現状を説明する一方で,倒産の危機に至った要因について,C1の見通しの甘さなど,C’の事業運営にあるとしつつ,メインバンクが確保できていないことを把握できなかった商工労働部の指導の不十分さや,縫製業を取り巻く環境の悪化等,C’のみにその責めを負わすことができない要因もある旨を述べた。さらに,C’の倒産を防止して就労の場を確保,維持するとともに,C’を今後の県内縫製業が歩むべきモデル事業として成功させるという方針や,①倒産により400名を超える失業者が生まれるだけでなく,対象地域の重要な就労の場が失われ,現在審議中の同和対策審議会の審議にも大きな影響を与え,その円滑な運営にも支障が生じることが懸念される,②従前より県の り400名を超える失業者が生まれるだけでなく,対象地域の重要な就労の場が失われ,現在審議中の同和対策審議会の審議にも大きな影響を与え,その円滑な運営にも支障が生じることが懸念される,②従前より県の工業振興施策の推進につき,県外からの企業誘致よりも県内の既存企業の振興策の充実を求める意見が根強くみられるが,今回倒産防止策を講じなければ,こうした意見が一度に噴出し,今後の企業誘致施策の推進にも大きな悪影響を与えることが推測されるなどと,倒産防止策を講じないまま倒産に至った場合に生じる影響について述べた。そして,県内の縫製業界が今後生き残る途は,C’が目指すような,企画デザイン力の強化によるオリジナル商品の開発や多品種・小ロット,短納期化に対応できる体制への転換によるアパレルメーカーや小売店との連携強化,安定的な受注量の確保といった方向であり,C’の取組みは,今後県内の縫製業が生き残れるかどうかの試金石であり,高度化資金という国の制度と併せて県が上乗せの単独施策を講じたとしても,何ら県民の批判を受けるものではないなどと,積極的に支援すべき理由を説明した上,結論として,「診断士の資格を持つ県職員の調査分析と,担当課長の職責をかけてのC1理事長ほかC’の役員等の反省とこの事業にかける熱意の確認により,ここで運転資金を確保すれば,C’の事業は必ずや成功すると確信するものであり,これまでの県の指導に対する県議会等の批判をあえて受けてでも,県としては積極的な事業推進策を創設し,C’の事業を成功させ,もって,県内の縫製業界に希望の光を灯すべきである。」と述べた。先行きの見込み等については,「県の対応策を実施するに当たっての条件」として,売上増に向けて,P’が計画している婦人服ブランド「シーセイズ」の生産をC’が受託しており,P’からの受注を確保するほか 。先行きの見込み等については,「県の対応策を実施するに当たっての条件」として,売上増に向けて,P’が計画している婦人服ブランド「シーセイズ」の生産をC’が受託しており,P’からの受注を確保するほか,E公社や県外事務所を活用した新規受注確保に対する支援を講じる方針であること,経営管理の強化対策として,金融機関のOBなど,経営管理に優れた人材の登用あっせんを図るほか,各月ごとの事務報告の提出を義務づける方針であることなどを説明した。 また,被告人A3は,細かな数字については,担当の者から説明させるとして,B12から,被告人A3,同A2を介して,利益計画・償還計画(最終)及び借入計画・返済計画(最終)が記載された書面が被告人A1に手渡され,B12は,賃加工が従来からの加工賃収入で,生地買いは生地を仕入れて製品に仕上げ,これを販売する方法であること,生地買いの売上げが伸びることが売上高が伸びる前提であること,生地買いについてはこれから新規にやることで実績がなく,ヒアリングに基づく数字であること,経費について抑えてあることなどを説明したが,被告人A1は,「詳しいことはええから。 お尻の数字だけ説明してくれ。」と述べ,B12は税引き後利益の説明に移り,利益が伸びているのは生地買いの営業が順調に進んで,経費もぎりぎりに抑えられることが前提になっているなどと説明し,更に償還計画を説明しようとした際,被告人A1が,「細かなことはえいわね。」,「やらんといかんろうがえ。」,「それでいけ。」等と述べたため,協議内容は,具体的な貸付方法に移った。なお被告人A1は,「数字を紙に書いたからといって,その数字を実現できるわけじゃあないよ。」等とも述べていた。 被告人A3は,同A1のC’を支援する旨の意向を受け,具体的な支援策の説明に移り,まず,N協会に対し,議会 字を紙に書いたからといって,その数字を実現できるわけじゃあないよ。」等とも述べていた。 被告人A3は,同A1のC’を支援する旨の意向を受け,具体的な支援策の説明に移り,まず,N協会に対し,議会で損失保証のための予算の議決を得る旨の念書を出した上で,I銀行のC’に対する融資について同協会に保証してもらい,代位弁済の場合には,その額を限度として県が損失保証を行う案(案1)を提示したが,債務負担行為について議会の承認を要することから,被告人A1は,これを即座に却下した。被告人A3は,次いで,県単融資制度を活用して,10億1500万円を直接貸し付ける案(案2)について,「県単独融資制度の貸付金を活用し,C’に単年度運用で運転資金の貸付けを行う方法です。融資総額12億円のうち,10億1500万円については県が直貸しする方法をとり,1億8500万円については,N協会の保証枠の残りを使って銀行から貸付けを行います。」,「財源は,特定財源のうちの諸収入を使い,単年度融資として『転がし』を行います。」,「すでに予算計上済みの県単融資制度の貸付金のうち,地域改善対策関連貸付金等の原資を充当します。」等と説明し,被告人A1の了承を得た。さらに,被告人A3が,産業経済委員に対する事前説明の当否について判断を仰いだところ,被告人A1は,産経委員に説明したら,結局は議会全体に知れ渡ってしまい,直貸しによる支援ができなくなると考え,産経委員会への事前の根回しも含めて,議会側への説明を控えるように指示した。なお,「転がし」の内容については,後記第10の1(3)で述べるとおりである。 さらに,被告人A3はB12に制度運用期間について説明するように指示し,B12が,「順調に償還できれば,金融機関からの借入れも減っていきますので,5年をめどに,県の貸付け分を金融機関 りである。 さらに,被告人A3はB12に制度運用期間について説明するように指示し,B12が,「順調に償還できれば,金融機関からの借入れも減っていきますので,5年をめどに,県の貸付け分を金融機関から借り受けてもらえればと考えています。」等と説明したところ,被告人A1は,「計画どおりいくわけないろうが。もっと延ばいちょけ。」と述べた。 この協議で,県がC’に対して直接貸し付ける方針が固まり,被告人A2は商工労働部としても全力をあげて支援に取り組む旨を述べ,被告人A1は,N協会を媒介させる協調融資と,ベンチャー融資(平成7年度から商工政策課が始めた,ベンチャービジネスを支援するため,基金を設立して,5000万円まで無担保,無保証で貸付けを行う制度)との中間的な制度について検討して,平成9年以降の支援策を改善するように指示した。さらに被告人A1は,同A3に対し,財政課に説明して,説得しておくように指示した。 なお,被告人A1は,公判廷で,副知事協議の段階では,最終的決断には至っておらず,財政課が再度検討して,反対意見があれば,その段階で再考するつもりだった,反対であれば徹底して意見を具申するのが部下の責務であるなどと述べているが,副知事協議の際の,被告人A2や同A3とのやりとり,同被告人ららに対する指示内容に加えて,後記のとおり,翌日ころに財政課長B23から反対意見を具申された後に,被告人A2や同A3に対して,再検討を指示した形跡がいっさい窺えないことなどに照らせば,副知事協議が終了するまでには,被告人A1は貸付けについて実行を決断していたものとみるのが自然である。 14 財政課長に対する説得等(1) 被告人A3は,副知事協議に先立って,財政課を訪れて,貸付けに向けての協力を依頼していたが反対されており,副知事協議を受けて,あらためて のとみるのが自然である。 14 財政課長に対する説得等(1) 被告人A3は,副知事協議に先立って,財政課を訪れて,貸付けに向けての協力を依頼していたが反対されており,副知事協議を受けて,あらためてB23を訪れ,同人に対し,「調査の結果,12億円を融資すればC’を再建できる。絶対的な自信がある。 地域改善事業でもあり,従業員の雇用の確保は重要だ。商工労働部としては,異例のことではあるが,制度を作ってバックアップしたい。銀行やP’などにも協力を求めている。」等と述べた。B23は,「長年の背景があるらしいが,特定の一企業に対してやりすぎである。他にも倒産している企業があるのにバランスがとれず,疑問である。債権者として十分に管理できず,担保もない。」等と述べてまたも反対したが,被告人A3は,一般地域における400名の雇用ではなく,就業機会も少なく,働き口も少ない同和地域における雇用であることを主張して譲らず,両者の主張は平行線をたどったため,被告人A3は,副知事に決断を仰ごうと提案した。 同月11日ころ,B23が副知事室を訪れると,すでに被告人A3が在室しており,B23は,被告人A1に対し,「貸付けには問題があります。特定の一企業にこれほど多額の融資をしてよいのですか。担保もないのに融資してよいのですか。直貸しなんてしてよいのですか。補正予算も組まずに他の予算を流用してよいのですか。財政課としては以上のとおり意見を申し上げます。」等と述べた。これに対し被告人A1は,同和対策事業として支援したい,財政課として反対もあろうが,県が貸し付ける方向で検討してほしい旨を述べた。B23はやむなく,被告人A1の意向に沿うことにし,財政課として問題点をできるだけ解消する方向で商工政策課と議論していくこととした。 (2) 被告人A3は,同月11日,C’の必要資金 ほしい旨を述べた。B23はやむなく,被告人A1の意向に沿うことにし,財政課として問題点をできるだけ解消する方向で商工政策課と議論していくこととした。 (2) 被告人A3は,同月11日,C’の必要資金を約12億円とする資料を持参の上,I銀行のI2と面談し,うち約6億9200万円が同月末までに必要である旨を述べ,県が直接貸し付ける方針を説明し,I銀行からの側面支援を依頼した。 財政課の動向等(1) B12は,財政課に提出する書類として,売上げが安定して受注が順調に拡大し,平成13年度からの高度化資金の償還が可能であるなどとの内容が記載された「新規借入金(12億円)の条件設定」と題するB11作成の書面を,資料を添付して,9月10日金融班に提出した。 (2) 同月11日から14日にかけて,財政課予算第1班長B24は,上司の指示を受けて,C’に関する資料を見せてもらい,被告人A3やB21から,県が直接貸し付ける意向であること,被告人A1から産業経済委員に対する説明を控えるように指示があったことなどについて説明を受け,財政課内で検討するための資料の作成を進めた。 同月13日,B15は,財政課主幹のB25に対し,「直貸しする際の公共性は何なのか。直貸ししても従業員がそのままでは県民の理解は得られない。リストラ等の再建計画が必要である。直貸しは邪道であり,雇用対策の方が県として必要な施策だ。」等と述べつつも,貸付けに見合うだけの担保を徴求した体裁を整える必要がある旨を述べ,B25は,B23ら財政課4役に伝えた。 同月18日,財政課4役(B23,課長補佐B26,同B27及びB24)とB25が協議したが,財政課では,なお県による貸付けには反対である旨の意見が出されていた。翌19日,被告人A3を中心とする商工労働部職員と,B23以下財政課職員が出席し B26,同B27及びB24)とB25が協議したが,財政課では,なお県による貸付けには反対である旨の意見が出されていた。翌19日,被告人A3を中心とする商工労働部職員と,B23以下財政課職員が出席して合議した際,商工労働部は,売上高の平成7年度分が24億5400万円と記載されているが,これは組合員相互の取引高が含まれているためであり,対外的な売上高は実質的には12億円であること,経常利益は,平成6年度はマイナス4500万円と記載されているが,実質はマイナス1億円,平成7年度はマイナス7800万円と記載されているが,実質はマイナス1億5000万円であるなどと説明した。さらに,同月27日に約束手形の支払いができなければ不渡りとなることや,担保力が高度化資金貸付分に対し,7億円が限度であることなどを説明した。B23は,C’側から何の再建策も上がってきていないことを問題視し,被告人A3は,C’側からも再建策を出させる旨を答えていた。 翌20日,B21は,財政課に対し,C’は恒常的に5億円ないし6億円の長期借入金が継続しており,売上高が減少し,営業利益段階で赤字幅が拡大しつつあること,本来高度化事業の自己負担分として増資に当てるべき内部留保金の確保ができず,関連取引先等からの一時借入金で自己負担分を調達したことなどを書面で報告した。 また,同日ころまでに,B12は,8月21日に提出されていた明細表記載の取引先について,契約書か注文書を提出するようにC4に指示し,これを受けたC1は,商談が必ずしも成立するに至っておらず,契約書もなかったことから,C4に対し,「県から貸付けを受けるための資料だから,目一杯膨らまして書いてくれ。」等と指示し,C4は,明細表に記載した取引先との取引状況の説明に,取引先担当者の名刺を添付した文書を作成し,これを9月2 対し,「県から貸付けを受けるための資料だから,目一杯膨らまして書いてくれ。」等と指示し,C4は,明細表に記載した取引先との取引状況の説明に,取引先担当者の名刺を添付した文書を作成し,これを9月20日,B12にあてて提出したが,この文書は,先の明細表に記載した予定売上高を上回る売上高見込みが記載されるなど齟齬のあるもので,その余も,受注が確定していた取引先は1社のみで,残り5社については,その時点での見込みを記載したに過ぎないものであった。 (3) 同月24日,被告人A3は,財政課と協議し,B23に対し,B12の指導を受けてC1らが作成し,同月20日ころまでに提出されていた県知事宛の「経営改善への支援について(依頼)」と題する書面を基にC’の再建策について説明したが,B23は当たり前の話ばかりであると苦言を呈し,役員報酬を凍結し,人員を削減して人件費を減らすなど,より具体的な経営再建策を出させること,P’との取引について十分に詰めて販路を拡大していくことを要求した。さらにB23は,B12による資金繰表についての説明に対して,金融機関の支援もないまま県だけで支援しても独り相撲であり,1回目の直貸しは必要な資金のみに絞って暫定的に貸し付け,もう少し時間をかけてI銀行と協力体制を整えるべきであるなどと述べ,結局,①現時点の担保価値に注目して,緊急に必要な資金を貸し付ける,②次回以降は3者(債権者,県,銀行)の認識を一致させて貸し付ける旨の方針が確認された。さらに,従前の担保一覧表について,I銀行の質権が設定されているゴルフ会員権についての見直しと,C1以外の理事らからの担保徴求を行うこととなった。 これを受けて,被告人A3は,診断班に対し,「必要な時期に必要な分だけ出すことになった。とりあえず,9月分を確認してきてくれ。」と指示し,診断班は 以外の理事らからの担保徴求を行うこととなった。 これを受けて,被告人A3は,診断班に対し,「必要な時期に必要な分だけ出すことになった。とりあえず,9月分を確認してきてくれ。」と指示し,診断班は,資金繰表等に基づき,B11がC’に出向くなどして,C1らとヒアリングを行い,一部の手形の支払いを11月末まで猶予してもらえることが判明するなどしたため,9月分に必要な額として5億8865万4000円を算出し,その端数を切り上げて,9月には5億8900万円が必要になる旨を被告人A3に報告し,若干の余裕を持たせるため,翌10月に必要とされる分の6032万5000円のうちの約半額にあたる3000万円を加算して,最初に必要な貸付額として金6億1900万円を算出した。また,被告人A3は,B10に対し,担保一覧表に記載された物件からゴルフ会員権を除いて,新たにC’の理事のC5とC6が各所有する不動産を入れた担保一覧表を作成するように指示し,B10は,担保提供について理事の承諾はもらっていないなどと言うC1に対し,後で承諾をもらうように指示し,C1は,同月25日,前記担保一覧表を引き写しつつ,C5所有の土地及び建物,C6所有の土地及び建物が担保物件として掲げられた,担保額が8億5086万6000円と記載された担保物件一覧表を提出した。 (4) 同日,B21は,財政課に対し,必要額を見直して検討した結果,1回目の貸付けに必要な金額が6億1900万円となった旨を報告するとともに,平成8年度地域産業高度化支援資金制度要綱案を提示したが,財政課から条項を一部修正するように指示され,これを受けて,指示部分について修正を加えた上,被告人A3を起案者として,「平成8年度地域産業高度化支援資金制度要綱」の制定について回議書を作成し,同日中に,被告人A2の最終決裁を経て同要 示され,これを受けて,指示部分について修正を加えた上,被告人A3を起案者として,「平成8年度地域産業高度化支援資金制度要綱」の制定について回議書を作成し,同日中に,被告人A2の最終決裁を経て同要綱が制定され,C’に対する貸付けは,同要綱に基づいて実行されることとなった。なお,同要綱では,第1条において,「地域改善対策高度化事業を実施する協業組合の安定に要する資金を貸し付けることにより,その事業の円滑な推進と育成を図るとともに,その発展に寄与する。」とその目的が規定され,第3条において,「融資対象者は,地域改善対策高度化事業を実施し県内縫製工場の発展に大きな効果をもたらす協業組合であって,知事が認めた者」と規定されてその対象が限定されており,その当時,対象となりうる県内の協業組合は事実上C’のみであった。さらに,他の県単融資制度の扱いと異なり,貸付制度の広報も行われなかった。 同日,被告人A3,B22,被告人A2及び同A1が,貸付けに係る支出負担行為決議書を順次決裁したが,出納機関の決裁に回った際,B28副出納長が,担保について疑義を呈したため,被告人A3は,支出負担行為決議書に「根抵当権設定契約証書の被担保物件の評価については,登記簿,固定資産台帳,路線価等により審査し,申込書に添付された一覧表の評価額が妥当であることを確認した。」旨の一筆を添え,副出納長決裁を得るに至り,同日中に支出命令書を決裁し,同月27日,C’に対し,6億1900万円の貸付けが実行された。 16 第2次I銀行協議9月27日,I銀行から,I1,I2らが,商工労働部から被告人A3,B13,B21,B19,B20らが出席し,被告人A3は,I銀行からC’に運転資金を融資してもらいたい,N協会から1億8500万円の保証については了解をもらっている,C’はP’が入っ から被告人A3,B13,B21,B19,B20らが出席し,被告人A3は,I銀行からC’に運転資金を融資してもらいたい,N協会から1億8500万円の保証については了解をもらっている,C’はP’が入って大都市への売込みも行う,人材等のあっせんも行い,県職員をつけて毎月決算報告をさせるなどと商工労働部の姿勢を説明した。I1は,あらためて新規融資は断ったが,被告人A3は,1億8500万円は保証付きなのでI銀行で実行してもらいたい,県で貸し付ける分は,年度末に10億円を目途として一日融資を願いたいなどと述べて,転がし融資への協力を依頼した。I1は,I銀行と県との将来的な関係を考慮した上,条件付きで協力することを伝えた。さらに被告人A3は,I銀行の行員ないしはOBにC’の経理を見てもらいたいなどと,行員の派遣も要請したが,深入りを恐れたI1はこれを断った。 なお,この協議の終了時に,被告人A3は,これでC’も銀行に認知されて官民一体で事業が進む,有意義な会合となった,次回はC1社長も呼んで前に進めたいなどと述べて締めくくろうとしたため,慌てたI1は,「ちょっと待ってください。認知したわけではない。次回の会合には私は出席しない。」等と述べた。 10月3日から4日にかけて,I2は,I銀行頭取ほか幹部に,被告人A3の説明を報告したが,N協会の保証付き融資以外は断る方針が維持された。同銀行が保証付き融資に応じたのは,県庁支店の出店を控えていた背景や,第2地銀として,第1地銀のO銀行との間の競争力の増加,県に貸しをつくることでの将来的な利益の確保等を考慮した結果であった。 17 その後の動向(1) I1は,10月7日,第2次I銀行協議を受けて,I2に対し,C’自体の認知は保留とすること,今後の取引窓口を本店営業部にすることを検討中であること,期末一日融資 あった。 17 その後の動向(1) I1は,10月7日,第2次I銀行協議を受けて,I2に対し,C’自体の認知は保留とすること,今後の取引窓口を本店営業部にすることを検討中であること,期末一日融資は県の意向どおりとすること,N協会の保証付きであれば融資していくこと,C1同席の上の会合については,自分をはじめ審査部は欠席としたい意向であることを伝えておいた。なお11月1日,C1はI銀行を訪れ,1億8500万円の融資を受け入れてもらえたことに対する謝意を述べ,I2は,黒字収益を計上できるように努力してほしい旨を述べ,その際,C1は,一度工場を見に来てもらいたい旨を告げ,I2は,本店融資担当職員らと,同月11日,C’の前記新工場を見学した。 診断班は,11月上旬にC’から送付された,同月中に必要とする資金が記載された「平成8年11月分資金計画」に基づき,資金繰りについてC1やC3らからヒアリングを行った。 同月上旬,C1は,B10に対し,理事に対する担保提供の説得に失敗し,C6は畑のみの,C5は宅地のみの担保提供にしか応じない旨を報告したところ,B10は今後も説得を続けるように指示した。しかし,結局両名の承諾は得られなかった。 また,C1が,県が当初貸し付けた6億1900万円のうち,約5700万円を,県が予定していた支払先とは別のところに払っていたことが判明し,同月8日,被告人A3はC1を県庁に呼び付けて叱責した。C1は,計画上5年間で均等返済することにしていたI銀行の短期借入金2500万円を一括返済し,予定していた売上金の未回収や経費の増加により資金不足となり,県が予定していた支払先とは違う取引先に支払った旨を説明し,今後は報告漏れがないようにする旨を述べた。 (2) 県では,当初,11月15日と同月29日にそれぞれ1億円,同年12 加により資金不足となり,県が予定していた支払先とは違う取引先に支払った旨を説明し,今後は報告漏れがないようにする旨を述べた。 (2) 県では,当初,11月15日と同月29日にそれぞれ1億円,同年12月13日に1億9600万円をC’に貸し付ける予定にしており,C1にその旨の契約書を渡していたが,11月上旬,被告人A3及びB12は,財政課の意向を受けて,C1に対し,「役員の報酬をカットせよ。従業員のボーナスも減額せよ。不況であえいでいるところはどこでもある。我々公務員だって何かしでかせば減給になる。このような事態になったのは,役員の責任なんだから,報酬カットくらい当たり前だ。」等と述べ,結局,同月15日,29日に各1億円を貸し付け,同年12月分の貸付けについては,役員報酬と従業員給料の各減額を確認してからその額を決めることとなった。C1は,理事会で役員報酬の削減と従業員の賞与の減額を提案したが,理事らから,「もらうべきものを減らされたら生活できない。」として反対され,結局,C1とC2の報酬につき計62万6000円を削減し,従業員の賞与は合計1089万円を減額するに止まった。 11月11日,2億円の支出負担行為決議書が決裁され,同月13日の支出命令を経て,県はC’に対し,同月15日,同月29日にそれぞれ1億円を貸し付けた。 (3) 同月27日ころ,C1は,県の指示に従い,高度化資金対象外の設備を担保として提供する旨を誓約する「担保差し入れに関する念書」を提出したが,それには担保物件は購入時の金額を基準として合計2億4113万7008円と記載されていた。 12月2日,I銀行はN協会の保証の下,1億8500万円をC’に貸し付けた。同月5日,C1は,先の役員報酬の一部削減と,従業員賞与の一部減額を記載して,県に「経営改善への対応策について」と題する書 12月2日,I銀行はN協会の保証の下,1億8500万円をC’に貸し付けた。同月5日,C1は,先の役員報酬の一部削減と,従業員賞与の一部減額を記載して,県に「経営改善への対応策について」と題する書面を提出して回答し,これに基づき,当初予定されていた1億9600万円の貸付けは,報酬等1151万6000円が減額されることになったことから,概ね相当額を控除し,1億8450万円に減額され,同月10日,支出負担行為決議書が決裁され,翌11日の支出命令を経て,同月13日,県はC’に対し同額を貸し付けた。経営改善の対応策には,「新たに別添の通り担保を提出いたします。」と記載され,別添資料の一部として,「物件担保の表示」中に評価額合計1億6302万7905円との記載があるが,県担当者が,一覧表は県のほうで作成するから,「別添の通り」と記載するように言われ,C3がその指示に従って作成したものであった。 第7の2 第2次貸付けに至る経緯関係証拠(主として,B1,B12及びB11の各公判供述,検甲124,126,136,139,195ないし199,201ないし224,226ないし229,231,232,234,235,237号証,検乙12ないし14,25ないし30号証)によれば,以下の事実が認められる。なお,本項において,とくに断らない限り,月日は平成9年のことである。 1 知事査定と産業パワーアップ融資制度の創設平成9年に入り,知事査定に先立って開かれた,財政課長から知事らに対する予算説明において,商工労働部の予算要求として,細目事業を中小企業金融対策事業費とする,「新人にやさしいまちづくり融資」制度と「新産業パワーアップ融資制度」の説明がされた。B23は,産業パワーアップ融資制度の事業目的として,県の工場出荷額の向上に大きく寄与すると認められる とする,「新人にやさしいまちづくり融資」制度と「新産業パワーアップ融資制度」の説明がされた。B23は,産業パワーアップ融資制度の事業目的として,県の工場出荷額の向上に大きく寄与すると認められる中核企業,県内産業の活性化につながる起業化等を積極的に支援し,県内企業等の経営安定と産業の振興を図るために,その事業活動に必要な資金を円滑に調達できるように,国及び金融機関と協調融資を行うものである旨を説明した上,具体的な貸付先として,C’等が想定されていることなどを述べた。 この予算説明の数日後の2月初めころ,B29知事,被告人A1,B15出納長,B30総務部長,B23,被告人A2,同A3らが出席して,平成9年度予算の知事査定が行われた。被告人A2は,産業パワーアップ融資制度に関する知事への説明について,事前に被告人A1と打ち合わせていなかったため,自分なりに,銀行からの融資が受けられない企業で,立ち直る可能性がある場合であってリーディングケースのものについて,中長期支援を行うものであり,具体的な貸付対象は,C’とUである旨を説明しようと考えていたが,知事に対して説明を始めたところ,間もなく,被告人A1に,「ごちゃごちゃいうことはないわや。つけないかんじゃろうが。えいわや。」と言われて制止されたため,産業パワーアップ融資制度の説明を打ち切り,別の案件の説明に移ったが,この際,知事をはじめ他の出席者からは何の発言もなかった。結局,同制度についての20億円の予算要求が認められ,同制度は中小企業金融対策事業費という細目事業の中に設けられることとなり,3月24日,同制度要綱が,被告人A2の最終決裁を経て制定された。 2 再建支援会議2月21日,商工労働部から被告人A3,B16,B21,B12,B11及びB19が,I銀行からI2他2名,N協会 月24日,同制度要綱が,被告人A2の最終決裁を経て制定された。 2 再建支援会議2月21日,商工労働部から被告人A3,B16,B21,B12,B11及びB19が,I銀行からI2他2名,N協会からN1他1名が,C’からC1,C5及びC3が出席して,「再建支援会議」が開かれ,C’の受注確保の状況や,生産管理体制,労務対策,財務管理等にわたって協議されたほか,C1からh町所在のh工場等を売却したいとの意向が示され,県側は,既にC’の土地建物等の物件を担保に徴していたことから,「10億円の融資条件として過大評価し全物件を担保としているので,売却すると(転がしに伴う)10億円の貸出しが(担保割れのために)できなくなるのでどうかと思う。」等と難色を示したが,N協会側は,「負債整理のためには処分が必要で,良い買い手があれば売却価格を確認して,担保権者と協議したい。」等と積極的な意向を示した。 3 転がし融資の実施本件貸付けは,特定財源を利用して単年度貸付けの形式をとるため,放置すれば歳入欠陥が発生することから,商工労働部は,「転がし」の一環として,I銀行に年度末一日融資を依頼していたが,同銀行の要望に沿って,口頭で新年度予算による貸付けを確約するだけでなく,被告人A2が,同銀行に対し,「平成9年度におきましても融資事業をして継続して執り行います。つきましては,当制度の融資先であります下記の法人(C’)に係るつなぎ融資につきまして,貴行に格段のご配慮をお願いします。」等と記載された商工労働部長作成名義の3月18日付け念書を交付し,同銀行もこれに応じることとした。 前記のとおり産業パワーアップ融資制度要綱が制定された日の翌日である3月25日,被告人A2,同A3,B17,B7及びB12らが出席して,C’に対する貸付けの当否を審査する,産業パワ こととした。 前記のとおり産業パワーアップ融資制度要綱が制定された日の翌日である3月25日,被告人A2,同A3,B17,B7及びB12らが出席して,C’に対する貸付けの当否を審査する,産業パワーアップ融資支援審査会が開かれ,「転がし」の一環として,同制度の予算枠から10億350万円を4月1日付けでC’に貸し付けることの当否が話し合われ,被告人A2の質疑に対する回答というかたちで,B12から,平成8年度の決算見込みについて,単年度赤字は当初見込んでいた数字に止まる旨の,平成9年度売上見込み等について,当初見込んでいた売上高26億円は,現時点で21億円に止まり,2億3000万円を見込んでいた利益は,1億7000万円に止まる旨の説明がされ,売上高の減少に比して利益の減少幅が小さい点については,利益率の向上と経費の抑制によるものである旨の説明がされた。結局,反対者はなく,積極的推進の結論が得られた。 同月31日,I銀行がC’に対し10億350万円を貸し付け,C’は,県に対し,その貸付金で第1次貸付けに係る同額を返済し,歳入欠陥は発生することなく,県は,翌4月1日,C’に対し,産業パワーアップ融資資金として同額を貸し付け,C’がこれをI銀行に返済した。 4 会計事務所による調査等4月1日付けの人事異動により,被告人A3は海洋局次長に転出し,B18が商工政策課長に,同課課長補佐にB31が,経営流通課長にB17に替わってB32がそれぞれ就任し,工業振興課長のB7は留任した。 第1次貸付けの後も,C’の業況は改善せず,平成9年3月期にも4億1000万円余りの損失を計上し,平成9年度になっても倒産の危機から脱することができず,4月2日には,C1はe町役場を訪れ,①欠勤等が多く,これらを解消するための意識改革の支援と,②高齢者が多く,能率が 0万円余りの損失を計上し,平成9年度になっても倒産の危機から脱することができず,4月2日には,C1はe町役場を訪れ,①欠勤等が多く,これらを解消するための意識改革の支援と,②高齢者が多く,能率が落ちているため,若年者の雇用に対する支援を同町に依頼した。一方,B18は,部内に,B31,B21,B12,B11他,工業振興課からB33課長補佐及びB20を加えてC’支援チームを作り,本格的な財務調査に着手し,複雑化しているC’の経理の一本化を図って全部協業化を進めるため,V会計事務所に調査を依頼し,同月23日には,県庁西庁舎会議室において,被告人A2,B18,B31,B32,B12及びB11らが,同会計事務所長らから,C’の経理全般や,C1らが講じた,Jからの借入れによる増資の際の金の流れの細部にわたって説明を受け,有限会社G1及び有限会社G5が債務超過であり,有限会社G4,株式会社G3及び有限会社G6が資本金に欠損金が生じている欠損会社であり,C’自体も,資本金に欠損金が生じていることが判明した。 5月15日,被告人A2,B18,B32,B7及びB12らが出席して3課長会議が開かれ,B12は,平成9年度の単年度黒字転換はほぼ確実で,問題は黒字幅である,受注額は将来に向かって伸びていくものと予想される,商工労働部をあげて支援体制を強化することが必要で,この1年が正念場であるなどと報告した。 5 C1は,現状のままでは倒産を免れないと考え,業務を大幅に縮小し,人件費を抑えて事業の延命を図るため,県内各地の不採算工場をC’から分離することや中国人研修生の雇用等を考えるようになっていたが,まず,同月下旬から,商工労働部に対し,当面の資金難を解消するために,前記h工場の売却及びそのための同工場に対する県の担保権の解除を相談するようになった。同部ではB1 用等を考えるようになっていたが,まず,同月下旬から,商工労働部に対し,当面の資金難を解消するために,前記h工場の売却及びそのための同工場に対する県の担保権の解除を相談するようになった。同部ではB18,B31が中心となって対応し,被告人A2は,B18からの,C’が資金繰りに困ってh工場の売却を希望しており,第1次貸付けの際に県がh工場に設定した抵当権を解除してほしいと要求している旨の報告を受け,h工場には,県よりも先順位でI銀行やN協会が担保権を設定しており,県にとって実質的な担保価値がなかったことから,C’の資金繰りの便宜を優先させることとし,6月17日,県の根抵当権解除を決裁した。 6 7月に入り,B18らは,C’が翌8月にも倒産しかねないほど資金繰りが悪化しており,ここを凌げたとしても,12月には再度倒産の危機を迎えかねないことを把握し,N協会に対して支援を要請し,被告人A2にも事情を報告して,h工場等の物件は売り値を下げてでも売却し,売却代金は優先的にN協会に対する返済に充て,県は余剰がなければ返済(売却代金からの回収)を求めない旨の方針を打ち出し,8月11日,N協会は,これが最後であるとしつつも保証に応じ,I銀行がC’に対しN協会の保証付きで4500万円の融資を実行した。B18は,被告人A2に対し,C1はどこまで真剣にやっているのかわからない,真剣に経営に取り組むように言っても受け流すだけである,部長の方からもきちんと経営に取り組むように念押ししてほしいなどと依頼し,被告人A2は,C1を呼んで,二度と資金ショートを起こさないように指導しようと考え,翌12日,C1及びC3を県庁に呼んで協議し,できるだけ高額でh工場を売却しようと考えているC1に対し,同工場を売却しない限り資金繰りがつかないのだから,少々安く売ってでも生き残ることを うと考え,翌12日,C1及びC3を県庁に呼んで協議し,できるだけ高額でh工場を売却しようと考えているC1に対し,同工場を売却しない限り資金繰りがつかないのだから,少々安く売ってでも生き残ることを真剣に考えてほしいと述べて県の意向を示し,また,不採算部門の安芸工場は分離せよ,金融機関からの支援を得られるような姿勢を示して,高度化事業と工場の分離独立,地域の雇用と外国人の雇用は矛盾するが,まずは企業として生き残ってほしいなどと述べた。さらに,被告人A2は,B18から,今後はN協会の支援が期待できず,h工場の売却ができなければ,12月にもまた資金ショートして倒産する危険がある旨の説明を受けていたことから,「12月も危ないぞ。厳しく捉えている。」とも述べ,同席していたB18も,「再建計画が2,3か月で変わるので信用できない。もっと危機感を持ってやってほしい。12月までにh工場を売却して資金調達しないと,今回の4500万円も返すことができなくなる。」等と,C1に対し危機意識を持つように促した。 被告人A2は,またも資金ショートが発生したことから,被告人A1に対し,C’の資金繰りが厳しく,N協会の支援で4500万円の調達はできたが,これで最後だと言われており,工場の売却や切離しを検討している旨を報告した。 7 8月18日,C1はe町役場を訪れ,f工場をいったん閉鎖して,従業員を整理し,あらためて優秀な社員のみを雇用して2,3か月後に再開したい意向を述べ,同町側は,町としては工場の廃止は認められないが,工場が生き残る方法としてはやむを得ない旨を述べ,これを受けたC1は,同工場の閉鎖に向けてD1を説得し,B18らも,C1に対し,就労の場は重要だが,それは企業が成り立っての話であるから,経営の責任者として決断するように促した。しかし,9月中には,D1 を受けたC1は,同工場の閉鎖に向けてD1を説得し,B18らも,C1に対し,就労の場は重要だが,それは企業が成り立っての話であるから,経営の責任者として決断するように促した。しかし,9月中には,D1の強い意向で同工場は閉鎖しない方針となった。他方,閉鎖することが予定されていたため,すでに新規の受注がなくなっていた同工場は,販売先が確保されないまま操業に臨まざるを得ず,生地購入,人件費等に新たな資金需要が発生することが見込まれ,当初,同町長ら同町役場関係者も交えた連帯保証の下に融資を受けることも検討されたが,結局,D1が個人的に資金を調達して,操業を続けていくこととなった。 また,被告人A2は,C1に任せていては再建はできないと考え,県出身者がアパレル業界の大手企業の社長に就任したことから,同社のつてで経営者を紹介してもらいたいと考え,9月末ころ,同社の本社に出向き,生産本部長に面会して,受注の増加や経営者の紹介を依頼した。その後,同社のC’への発注は増えたが,経営者の紹介は受けられなかった。 8 11月に至り,翌12月のC’の運転資金の手当てのめどが全くたたない状況となり,11月17日,商工労働部からB31,B21,B12,B11が,C’からC3が,N協会からN1,N2らが出席して,県,C’及びN協会の3者協議が行われ,商工労働部から,平成9年度の売上げについて20億8000万円を見込んでいたが,最大でも17億円に止まること,経常利益は1億6800万円の黒字を予定していたのが,1億2100万円の赤字が見込まれること,その要因として,シーセイズの売上げが見込みの半分程度に止まるなど不振であること,不採算工場の操業停止が実現できていないこと,アパレルセンターの受注後早期生産体制の構築が遅れていることなどを報告するとともに,同協会に保証を要 売上げが見込みの半分程度に止まるなど不振であること,不採算工場の操業停止が実現できていないこと,アパレルセンターの受注後早期生産体制の構築が遅れていることなどを報告するとともに,同協会に保証を要請したが,N1からは,「h工場が売却できなければ今後の支援はできない。」等として拒絶された。被告人A2も,翌18日の部内協議の際,3者協議の内容等について報告を受け,「親を生き残らすためには,子を切るしかない。雇用の確保はもう言わん。」等と述べるようになった。 同日,N協会は保証を行わない旨を決定し,被告人A2に対しその旨が伝えられた。 9 同月26日,商工労働部は,B18,B32,B7,商工3課の各課長補佐にB10,B21らが出席の上,C’に対する支援について協議し,現状では,C’には12月に1億円,翌平成10年1月に5000万円,同年6月に1億円のそれぞれ資金不足が見込まれること,その倒産を回避するためには,県が貸し付けるほかなく,銀行の借入金の元金支払いを最低1年は凍結することが必要であることなどが報告されたほか,かつての倒産処理事例を参考にして,株式会社にして再建する,経営者を替えるといった話も出た。被告人A2は,平成9年11月分は手形の支払猶予で凌がせる,大義名分がないと県から金は貸せない,返済が不確実なものに追貸しすることは,もはや自分では判断しかねる,再建計画案を立てて被告人A1の判断を仰ぐとの意向を述べ,工場分離後2工場体制となった場合の生残り策と切り離した工場の雇用対策について検討するように指示した。 同月,P’はシーセイズ事業からの撤退を決定して,知事に報告した。結局,平成9年度15億円を見込んでいたP’の売上げは,6億5000万円に止まった。 12月2日ころ,B31は,被告人A2の指示を受けてなおもN協会に保証を依 らの撤退を決定して,知事に報告した。結局,平成9年度15億円を見込んでいたP’の売上げは,6億5000万円に止まった。 12月2日ころ,B31は,被告人A2の指示を受けてなおもN協会に保証を依頼してみたが,N1から,「先行きの見通しの立たない現状では背任になりかねず,これ以上対応できない。」としてあらためて拒絶され,被告人A2は,C’の倒産を防ぐためには,県が再度貸し付けるのもやむなしと判断し,同月4日には,B18とともに,D1を訪れて面談し,県としてはf工場など一部の赤字工場を分離独立させてC’の倒産危機を回避する意向である旨を伝え,それまで,分離案に反対していたD1も反論しなかった。 同月10日,被告人A2は,部内協議において,C’の再建に必要な経営者の招へい,工場独立に際しての法的問題点やh工場の売却見込み等について協議するとともに,B18らに対し,2億円の貸付けについて被告人A1の判断を仰ぐにしても,それまでに,前年度,強硬に反対した財政課を説得しておくように指示した。 さらに,このころ,被告人A2の指示により,従前の高度化資金貸付け及び第1次貸付けの際に県が担保として徴求していた担保物件について,B21が,路線価等を基に,初めてその価格を算定してみたところ,第1次貸付けに相当する金額分について無担保状態であることが判明し,この報告を受けた被告人A2は,対外的な説明に苦慮し,前記担保物件の価格が全貸付金額を担保するのに十分であるとの内容の資料を作成するよう指示し,B21は,設備近代化資金の担保評価基準を借用して,前記担保物件の評価額が県の貸付金額をわずかに上回るとする,適切な時価評価とはかけ離れた内容の担保物件調書を作成し,これが第2次貸付けの際の決裁添付資料とされた。 同月12日,C1から,C’の6工場を分離独立させ 額が県の貸付金額をわずかに上回るとする,適切な時価評価とはかけ離れた内容の担保物件調書を作成し,これが第2次貸付けの際の決裁添付資料とされた。 同月12日,C1から,C’の6工場を分離独立させる方向で各理事,各工場長から了解を得たこと,取引先の生産部長を通じ,経営管理者の派遣を依頼する予定であることが記載された文書が提出された。 11 同日,被告人A2らは,部内協議において,被告人A1に対する説明を視野に入れて,今後赤字が出ないことを説明しないと被告人A1に納得してもらえないなどと話し合うとともに,県とI銀行のC’に対する既存の債権を含め,今回貸し付ける2億円の回収を最優先とする,独立した工場には営業担当がいないので,C1の人脈で受注を確保させることとする方針などを協議し,この方針を受けたB18らは,同日から同月14日にかけて,財政課に対し,これまでの経過を説明するとともに,年末に400名を超える失業者が発生しかねない,資金繰りについては細かくシミュレーションしているなどとして,それまでに作成されていた再建計画や償還計画を基に2億円の貸付けについて承諾するように説得し,倒産をやむなしとして,「高齢者には生活給付で対応しよう。」等と主張する財政課に対し,「給付事業からの脱却を目指してやってきた同和対策事業を元に戻すのか,同対交渉でそんなことは言えないだろうが。」等と商工労働部の見解を主張した。しかし,同課長B1らは,「バケツの底に穴が空いているのに金を突っ込むようなものである。今回2億円を出したとしても,再度資金ショートが起こる。」,「2億円を貸し付けるくらいなら,雇用対策に使え。」等として,前年度にもまして強硬に反対した。なお,B12が作成した償還計画は,従前の各金融機関及び県からの貸付金の元本の支払いを繰り延べるなどしたもので,平 を貸し付けるくらいなら,雇用対策に使え。」等として,前年度にもまして強硬に反対した。なお,B12が作成した償還計画は,従前の各金融機関及び県からの貸付金の元本の支払いを繰り延べるなどしたもので,平成25年において,県の第1次,第2次貸付金合計12億350万円のうち6億3000万円が,高度化資金貸付合計14億4350万円のうち12億3341万円がそれぞれ償還未了となっているもので,その内容に合理性はなかった。 12 同月15日,被告人A2は,B18らから,財政課が反対している旨の報告を受けるとともに,アパレル業界の動向について専門家から聴取してきた担当者から,平成9年度以上に翌10年度は厳しくなる模様である,クイックレスポンス(受注後早期納入)態勢が構築できなければ生き残れないなどと報告を受けたが,2億円を貸し付ける意向であったため,被告人A1の了承を受けて財政課を説得することとし,同日ころ,被告人A2,B18,B7及びB32が副知事室を訪れ,被告人A1に対し,N協会から支援をはっきり断られている,2億円を貸し付けない限りC’は年内にも倒産する,今の状況からすると,追加で貸し付けたからといって,翌年から立ち直るとは考えられないが,C’側が,県の提示した条件である工場の売却や分離等を行えば,本社工場だけでも延命させることができ,そうすれば貸付金を少しでも回収できるかもしれないなどと説明するとともに,財政課が,2億円を貸すくらいなら失業対策をしろなどと反対していることも告げ,その判断を仰いだ。被告人A1は,それまでにも,同A2から,C’の危機的状況が続いて支援を求められていること,N協会からも支援を拒否されたことなどについて報告を受けていたが,C’本体だけでも生き残らせて,わずかながらでも従前の貸付金等の回収を図ろうと考え,「2億の追貸しをや 続いて支援を求められていること,N協会からも支援を拒否されたことなどについて報告を受けていたが,C’本体だけでも生き残らせて,わずかながらでも従前の貸付金等の回収を図ろうと考え,「2億の追貸しをやれとはいわんが,個人的には,どうせ2億出すなら,失業対策よりも,追貸しの方がええと思う。それでもう一度財政課と話せ。」等と述べた。 13 B18らは,再開した財政課との協議において,被告人A1がC’に対する2億円の貸付けを行う意向である旨を伝えたところ,財政課も,今後の資金支援は行わないこと,理事による増資を行うこと,条件を実行しない場合には直ちに2億円を繰上償還すること,今後これ以上の資金支援を要請しないことを全理事に文書で確約させることなどを条件として,貸付けを承諾し,B18らがC’の理事会に出席し,理事全員に対し,条件を承認することがC’に2億円の貸付けをするための条件である,承認するのであれば,理事全員の名前で確約書を作成して県に提出するよう指示し,同月18日,産業パワーアップ融資支援審査会において,2億円を貸し付ける旨が決定され,翌19日,被告人A2及びB7は,被告人A1に対し,財政課から条件付きで貸付けの了承を得た旨を報告した。 このような経緯で,12月22日,被告人A2,同A1らが第2次貸付けに係る支出負担行為決議書を順次決裁し,これに基づく支出命令を経て,同月25日,県は2億円をC’に貸し付けた。 第8の1 事実経過上の争点に対する判断<高度化資金を詐取されたとの認識の有無について>本項では,基礎的な事実経過のうち,検察官の主張の根幹に関わる争点の一つと考えられる,被告人3名の,高度化資金をC1に詐取されたとの認識(以下「詐取被害の認識」という。)の有無について,第1次貸付けに至る経緯を中心に検討を加える。なお,被告人A 根幹に関わる争点の一つと考えられる,被告人3名の,高度化資金をC1に詐取されたとの認識(以下「詐取被害の認識」という。)の有無について,第1次貸付けに至る経緯を中心に検討を加える。なお,被告人A1は,公判廷で,C’の資金繰りが窮していることを認識した時期について,平成8年9月9日の副知事協議の際である旨を供述しているところ,検察官の主張や,被告人A2及び同A1の捜査段階における供述によれば,被告人A1がC’の資金ショートを認識した経緯と,「見せ金」なり「増資の仮装」なりを認識した経緯とはほぼ一致しているので,便宜上,本項において検討を加える。 1 構造改善高度化事業(特定)は,同和地区に対する産業振興等を目的としており,国や県として,同和地区住民の雇用対策等を講じる必要があるため,一般の高度化資金貸付けと比較すると,年利2.7パーセントのところが無利子,貸付資金額について,対象設備資金の65パーセント以内であるところが80パーセント以内ということにされており,事業主側がより優遇された条件となっている。一方,安易,恣意的な公金の流出を防ぎ,事業の確実な推進と貸付金の償還とが両立できるよう,各種の手続,制約が設けられている。県やE事業団から,自己負担分については借入金に頼らず組合員の出資に基づく増資によって捻出するように繰り返し指摘され,これを前提として,事業計画等の立案を含め一連の手続きが進行していた本件高度化資金貸付手続の下では,C1が巧妙な手口を用いて,各組合員の増資及びこれに基づくC’の増資を仮装した点は,欺罔行為の中核的要素をなすというべきである。また,これを含め,高度化資金貸付けを受ける一連の経緯におけるC1の言動は,一方で新工場の建設を含め,縫製業の構造転換に向けられてはいるものの,他方で高度化資金貸付制度を運転資金を捻出す きである。また,これを含め,高度化資金貸付けを受ける一連の経緯におけるC1の言動は,一方で新工場の建設を含め,縫製業の構造転換に向けられてはいるものの,他方で高度化資金貸付制度を運転資金を捻出するために用いていた節も窺われ,県を体よく利用していた面は否定できない。要するに,C1が,見せ金等の手段を弄して本件高度化資金を詐取したものであることは明らかである。このような事情は,C1を経営者とするC’の将来にわたる償還の意欲や能力に重大な疑問を投げかけるものであり,県がC’の再建に向けて救済策を講じ,経営指導体制をいくら整えても,C1が経営者としての地位にあり続ける限り,誠意ある対応が期待できず,かえって県に依存するだけで,業況が改善するとは思えない要因である。また,県から金員を詐取した者が経営する企業に対し,救済融資を行うことの公益性が低下することも確かである。もっとも,C’の倒産による不利益は,従業員や,県の同和対策事業,モデル事業等にも及ぶものであり,C1による「見せ金」等を講じた上での詐取行為は,貸付先がC1が経済する企業であることを考慮しても,C1の個人的犯罪の域を出ない面があり,企業ぐるみの犯罪とまではいえず,これに対する救済融資につき,その公益性がいっさい否定されるとまではいえない。しかし,刑事告発等の手続きをとって,その責任を明確にし,経営者を交代させて,経営態勢を抜本的に改善した上で,財務体質そのものの健全化を図らない限り,県との約束に従った誠意ある返済がされることはおろか,事業の存続すらも合理的に期待することができないものというべきであって,C1による経営の下では,償還可能性や事業存続の可能性が低いままであることは,客観的にみて明らかである。そうすると,被告人3名が,仮に詐取被害の認識を有していたとすれば,この認識は, べきであって,C1による経営の下では,償還可能性や事業存続の可能性が低いままであることは,客観的にみて明らかである。そうすると,被告人3名が,仮に詐取被害の認識を有していたとすれば,この認識は,償還可能性を云々する以前に,事業が存続する可能性までもが乏しいこと,公益性が低いことの各認識があったことの重要な徴表になるとみることができ,ひいては,C1の刑事責任はおろか,経営責任さえも追及することなく,高度化資金を詐取した犯罪者が経営する企業に,ことさら有利な条件で,議会に諮ることもなく,10億円を超える公金を貸し付けることに政策遂行としての合理性は存在しないといわなければならない。それにもかかわらず多額の公金を支出したというのであれば,それは,本件貸付けが,検察官がいうような自己保身等の動機に基づくものであるというべきであって,検察官が,論告において,被告人3名が見せ金増資等の不正行為を認識しており,詐取被害の認識があった旨の主張を,主として,「被告人らの任務違背行為の経過,認識等(平成8年度県単融資)」及び「本件県単融資の目的」の項で展開していることは,検察官の見解に立てば,十分理解することができる。 2 被告人3名は,公判段階で,最終的に,C1らの「見せ金」行為を認識しておらず,当時の認識は,「設備投資用の資金に充てるためにいったん増資したが,これを運転資金に流用してしまったため,設備投資のための資金を借入金により調達した」というものであったと供述しているところ,捜査段階の供述をみると,被告人A3の検察官調書(乙36)に,C1聴取の後に金融班から,「増資を一時借入れで行っていたということです。」という報告を聞いて「県をだましていたことがわかってびっくりした。」旨の供述記載が,被告人A2の検察官調書には,被告人A3から,資料中のC’の負債 ら,「増資を一時借入れで行っていたということです。」という報告を聞いて「県をだましていたことがわかってびっくりした。」旨の供述記載が,被告人A2の検察官調書には,被告人A3から,資料中のC’の負債について,「増資分を借入れによって賄わねばならなかったことによって生じた借金であるとの説明を受けた。」(乙17),「自己資金分を借入金によって賄うという県との約束に違反する行為,つまりは見せ金を行っていた」ことを知っていた(乙20),「増資を一時借入れで行う,いわゆる見せ金を行っていたことは,被告人A3から報告を受けて知っていた」(乙22)旨の各供述記載が,被告人A1の検察官調書(乙6)には,被告人A2から,「自己資金は一時的に借入れをして,それで増資してごまかしてたんです。」との報告を受けた,「副知事協議の前に,既にC’が高度化資金を県からだまし取るなどしていたことを認識していた。」旨の各供述記載がある。しかし,被告人3名の各検察官調書によっても,同被告人らは,C1らが実際に講じていた巧妙な「見せ金」による増資の仮装の詳細について把握していなかったものと認められる。 ところで,検察官は,起訴状記載の公訴事実に,「(C1らが,)借入金による見せ金増資によりこれを仮装するなどし,県から高度化資金を詐取したことが判明していた」と記載し,冒頭陳述では,「被告人A3は(中略)自己資金の調達を仮装されるなどして詐欺被害に遭った経緯が明らかとなれば,(中略)厳しい批判を受けることとなり,この結果,担当課長の自己や関係者の責任は免れ得ないものと考えた。」,「被告人A2は,同A3から報告を受け,(中略)増資が見せ金によるものであるなど県が詐欺被害に遭っていたことを知るに至り」,「被告人A2は,同A1に対して,C1らから高度化資金を詐取されたこと(中略)など A2は,同A3から報告を受け,(中略)増資が見せ金によるものであるなど県が詐欺被害に遭っていたことを知るに至り」,「被告人A2は,同A1に対して,C1らから高度化資金を詐取されたこと(中略)などを随時報告しており」と述べ,更に論告では,「被告人A1が,同A2から数次にわたり,自己資金を仮装されて高度化資金を詐取されたこと,副知事協議においても,被告人A3から同様の説明を受けていたことは明らかであり,見せ金増資,すなわち自己資金の仮装による詐欺被害について気づかなかったとする弁解は虚偽である。」(論告要旨31頁),「被告人A2が見せ金増資による自己資金仮装の認識がなかったとする点等は,明らかに虚偽の供述であり,単に,他の被告人と歩調を合わせるため弁解したものに過ぎない。」(同34頁),「被告人A3は,捜査段階では,同A2に見せ金増資のことを報告したこと,副知事協議において,被告人A1に対して,見せ金増資の点も含めて資料に基づき詳細に報告したことなどをむしろ積極的に認めている。」(同37頁)等と主張している。これらによれば,検察官が,①被告人3名は,C1らが,「見せ金」により増資を仮装したことを知っていた,②ゆえに,被告人3名は高度化資金を詐取されたことを知っていた,という前提に立っているものと解され,「見せ金」の認識は,検察官の立論による限り,被告人3名の「詐取被害の認識」を基礎づける,中核的な事情であると考えられるが,被告人A3の検察官調書をはじめ,県関係者らの検察官調書をみると,「C1らが見せ金で県をだました」という趣旨の記載が頻繁に現れているけれども,ここにいう「見せ金」なる概念が,「C1が,当初から真実増資をする意図がないのに,高度化資金貸付けの前提となっていた増資をごく短期的な借入れによって仮装して登記手続を行い,その後まもな いるけれども,ここにいう「見せ金」なる概念が,「C1が,当初から真実増資をする意図がないのに,高度化資金貸付けの前提となっていた増資をごく短期的な借入れによって仮装して登記手続を行い,その後まもなく返済していること」を意味しているのか,「手続の一過程である増資を,ごく短期的な借入れによって実行し,登記手続後まもなく返済していること」を意味しているのか,単に「増資の原資を第三者からの借入れによってまかなったこと」を意味しているのか,容易に判別することができない。そこで,いたずらに「見せ金」という言葉に流されることなく,被告人3名の,具体的事実に対する認識内容とその程度を吟味する必要がある。 3 被告人3名の見せ金に関する認識について検察官は,①平成8年5月24日に,被告人A3が金融班からの報告を受けて,「見せ金」により高度化資金を詐取されたことを知り,②同年7月4日ころ,被告人A3の報告によって,同A2が,高度化資金の詐取被害を認識し,③その後まもなく,被告人A2の報告によって,同A1が同様に詐取被害を認識し,④同年9月9日の副知事協議の際,C1が「見せ金」により高度化資金を詐取したものであるという事実が前提の一つとなって,貸付けの当否が検討された旨を主張している。その主張からすると,「見せ金による増資の仮装」の情報が,金融班から被告人A3,同A2,同A1へと伝わった経緯は明快であるが,情報の伝達経緯を検討するのに先立ち,被告人3名の増資に関する認識を窺わせる,客観的なメモ等についてひととおり検討した後,情報の伝達経緯,内容に関する具体的な供述の信用性について検討を加える。 (1) 残存しているメモ等の資料には,被告人3名はじめ県関係者らが,いわゆる「見せ金」による「増資の仮装」を認識していたことを端的に指し示す記載は見当たらない。 供述の信用性について検討を加える。 (1) 残存しているメモ等の資料には,被告人3名はじめ県関係者らが,いわゆる「見せ金」による「増資の仮装」を認識していたことを端的に指し示す記載は見当たらない。 ア副知事協議において配布された,被告人A3が作成した文書(乙40の添付資料1)中,増資に関する問題として,C’が資金繰りに窮した理由の一つとして,「設備投資の自己負担分として予定していた増資資金を運転資金に回さざるをえず,結果的に設備投資の自己負担分(約3億6千万円)を一時的な借入金に頼らざるを得なかったこと」という記載があり,検察官は,これがC1による増資の仮装を意味するものであると主張し,被告人A3の検察官調書(乙40)中には,「この文章の記載は,C’が貸付けの自己資金がなく一時借入金で見せ金増資をしていた,県はこの仮装行為にひっかかって高度化資金をだまし取られたということを意味している。」旨の供述記載がある。しかし,被告人3名の主観をさておいて,この文言自体を客観的に考察した場合,必ずしもそのように一義的に解釈できるものではない。被告人A3の検察官調書(乙39)中には,「今回のような重大な案件で,副知事に嘘をついてごまかしたりすれば,それだけで私のくびがとんでしまう。このような意味では,私にとっては,議会などより副知事の方が恐ろしい存在であり,被告人A1には全てをありのまま説明して理解してもらった上で決断してもらうつもりでおり,ずばり『詐欺に遭った』とは格好悪くて書けないものの,見れば『見せ金』だとすぐ分かるように,あえて『一時的な』という文言を挿入した。」旨の供述記載がある。しかし,そうであれば,端的に,「設備投資に充てるべき増資金を一時的な借入金によりまかなって増資し,返済した」と記載すれば足りるともいえ,「見せ金」であることが被 言を挿入した。」旨の供述記載がある。しかし,そうであれば,端的に,「設備投資に充てるべき増資金を一時的な借入金によりまかなって増資し,返済した」と記載すれば足りるともいえ,「見せ金」であることが被告人A1に分かるように記載した旨の前記説明は,にわかにその言葉どおりに了解することができない。かえって,被告人A3が公判廷で述べるように,いったん増資したが,資金繰りに窮して設備投資ではなく運転資金に流用したため,増資金を用いるべきであった設備投資の原資を借入金により調達し,その返済が間近に迫っているという認識を反映しているものとみる余地がある。少なくとも,見せ金による増資の仮装を意味しているものと一義的に理解することには無理があり,この記載それ自体をもって,被告人3名らが「見せ金」の認識を有していたものと認めることはできない。 イ平成8年8月9日のI銀行との協議の際,I2が,配付資料中の「高度化事業の初年度資金不足 3億円」との趣旨が印刷された部分のすぐ右側に「自己資金不足」と記載していること(甲136の添付資料1-2),同月13日の土佐寮での会合の際,B16が,配付資料中の「高度化事業の初年度資金不足」と印刷された部分の側に,「本来自己資金として増資すべきであった分」と記載していること(甲99の添付資料①-1),B17が作成したメモに「自己資金が全部借入金」との記載があること(甲111の添付資料7),B25がB21から受け取ったメモ中に,「本来高度化事業自己資金として増資に当てるべき内部留保金の確保ができず,関連取引先等からの一時借入金で自己資金分を調達したこと。」と記載されていること(甲130の添付資料7)などに照らし,関係者の中には,増資に用いた原資が第三者からの借入れにより調達されていたものと認識していた者がいることは明らかであ 資金分を調達したこと。」と記載されていること(甲130の添付資料7)などに照らし,関係者の中には,増資に用いた原資が第三者からの借入れにより調達されていたものと認識していた者がいることは明らかである。しかし,増資金を第三者からの借入れにより調達するという事情は,C1が県に対し述べたことに反しているにしても,これが「見せ金」あるいは「増資の仮装」に直結するわけではなく,これらの記載をもって,そのような事実が存在したことを指し示すものと解するにはやや無理がある。すなわち,①被告人A2や同A3らが,増資が仮装されているとの認識を有していたとすると,そのような,C1の信用性を決定的に損なうべき事情を,これから融資を依頼しようとするI銀行関係者に説明するとは考えがたいのであり,それにもかかわらず,I2が「自己資金不足」と記載したことからすると,端的に「自己資金が不足していること」についての説明があり,反面,その不足の原因が,当初から自己資金があるように仮装していたものであるというような説明があったものとは考えられないから,これらの記載をもって,「見せ金」や「増資の仮装」を前提として手続が進行していったものと認める根拠とはできないし,②B17は,診断班からの報告を受けて,前記メモを作成したものであるが(甲111),診断班のB12は,「運転資金の借入れに対する借金としては,多額と思われるW他3社に対する総額3億7700万円の負債を発見し,これが自己資金分3億6000万円余と極めて近い金額であった」ことにより,「自己資金の全額が一時借入れでまかなわれたことがあらためて,しかも,はっきりと確認できた」等と供述し(甲113),B11も同旨を述べているところ(甲120),「見せ金」であれば債務は残っていないはずであるから,債務が現存していることから,第三者 あらためて,しかも,はっきりと確認できた」等と供述し(甲113),B11も同旨を述べているところ(甲120),「見せ金」であれば債務は残っていないはずであるから,債務が現存していることから,第三者から借り入れて増資をして,その第三者に対する返済のために他者から更に借入れをしてそれが債務として現に残っているという認識を超えて,「見せ金」や「増資の仮装」まで認識するというのはやや不自然であり,実際にも,診断班が着目した債務は,C1らが講じた見せ金における金の流れと直接には関連しないものであるから,その存在を認識したために,直ちに「見せ金」や「増資の仮装」という認識を有するに至ったものとは考えがたい。そうすると,債務の総額と「見せ金」により仮装された増資総額との類似性を根拠として,診断班が,「見せ金」や「増資の仮装」まで把握していたものとは考えられず,「第三者からの借入金で増資したものの,返済が迫っている」という程度の認識しかなかったものとみるのが自然である。したがって,B17のメモも,「第三者からの借入金で増資原資を調達した」という程度の意味を有しうるに過ぎないというべきである。 ウまた,複数回にわたって重ねられた商工労働部内の協議内容をみても,「見せ金」や「増資の仮装」に関連する事項について協議がされた形跡はなく,ひたすら運転資金不足が問題とされており,平成8年7月4日の西庁舎協議に際しC1が持参した資料にも,「見せ金」や「増資の仮装」というような趣旨を窺わせる記載はなく,添付資料には,4億840万円増資済みと記載されているのである。 (2) 以上のとおり,客観的な資料として残存しているメモ等の記載や部内の協議内容からは,被告人3名が「見せ金」や「増資の仮装」の認識を有していたものとは直ちに認定できず,情報の流通過程及び内容等に関係する 以上のとおり,客観的な資料として残存しているメモ等の記載や部内の協議内容からは,被告人3名が「見せ金」や「増資の仮装」の認識を有していたものとは直ちに認定できず,情報の流通過程及び内容等に関係する供述を吟味する必要がある。検察官の立論は,①平成8年5月24日に,C1が金融班に見せ金によって増資を仮装した旨を説明し,②これを金融班が被告人A3に説明したことをもって,被告人3名が見せ金を認識するに至った第一歩として捉えていることは明らかであり,その主張において,本件高度化資金貸付けから第1次貸付けに至る経緯において,C1の「見せ金」等の詐欺行為を知らず,被害者に類する立場にあった被告人3名が,背任の加害者へと転化するきっかけと位置づけられているのが,この①②であるから,とくに詳細に順次検討する。 (3) 被告人A3が受けた報告等についてア被告人A3の平成13年5月24日付け検察官調書(乙36)には,①平成8年5月中旬,出納閉鎖期間が近づいているので支出命令書を早く出納室に提出するようにとの庁内放送があった際,金融班の席から,「回してないのがある。困った。」という声があり,「高度化資金の貸付けについて,大阪に書類があるということで確認ができません。つなぎ融資が別に使われている疑いがあります。」と言われ,金融班の者に,「C1を呼ぶなりしてチェックするように。」と指示し,C1が県庁に説明に来ることになった,②同月24日夕方,金融班の者が,C1の来訪を伝えてきたので,副部長室で,C1とその妻に対して,「書類をきちんと確認せんといかんので正直に話してください。」と言って軽く挨拶をして,詳しい事情聴取は,B16,B13,B10などに任せて,自分の席に戻った,副部長室を出るとき,ちょうど入って来ようとするB12とすれ違った,③席に戻って,同月27日 ださい。」と言って軽く挨拶をして,詳しい事情聴取は,B16,B13,B10などに任せて,自分の席に戻った,副部長室を出るとき,ちょうど入って来ようとするB12とすれ違った,③席に戻って,同月27日に開かれる予定の会合で挨拶する文章について,部下が作った案をチェックしていたところ,B16,B13,B10が来て,彼らから,「実は,つなぎ融資は別に使っているということでした。増資も一時借入れで行っていたということです。困りました。課長,どうしましょうか。このままでは高度化資金は貸せません。」と報告を受け,見せ金,すなわち一時借入れで増資をしたように見せかけて県をだましていたことが分かり,びっくりした,との供述記載がある。 なお,同月24日前後の金融班やC1とのやりとりに関する供述が具体的に記載された被告人A3の検察官調書は,これのみである。 これに対し,被告人A3は,公判廷では,④C1を県庁に呼ぶ前には,B13らから,単に書類が足りないという手続面の問題があるために第2次高度化資金の貸付けができないという報告を受けていたに過ぎず,5月24日にC1夫妻を県庁に呼んだのも,もっぱら書類の形式的な確認をするためである,⑤B16らがC1夫妻と面談した後も,金融班から,C1がつなぎ融資を目的外に流用していた旨の報告は受けたが,それ以外の,見せ金の事実をはじめとする,増資をめぐる不審な事情についてはいっさい報告を受けておらず,同年8月23日ころに,B12から,いったん増資したが運転資金不足に陥り,相当額を運転資金に回している旨の報告を受けたことがあるに過ぎない,⑥つなぎ融資の目的外流用をさほど大きな問題とは考えずに,第2次高度化資金貸付けを専決した,などと述べている。 イ平成8年5月24日前後の金融班と被告人A3とのやりとりや,同日のC1との協議 い,⑥つなぎ融資の目的外流用をさほど大きな問題とは考えずに,第2次高度化資金貸付けを専決した,などと述べている。 イ平成8年5月24日前後の金融班と被告人A3とのやりとりや,同日のC1との協議に関する,県関係者及びC1の各検察官調書は,いずれも前記被告人A3の検察官調書(乙36)よりも後日に作成されており,これらは被告人A3の供述を基に,更に県関係者を取り調べた上で作成されたものと考えられるところ,その内容は前記検察官調書(乙36)に比べ,被告人A3にとって不利益に働きうる事情について詳細な記載になっているが,これを受けた被告人A3の検察官調書は見当たらず,被告人A3にとって不利益に働きうる事情についての再度の吟味は,意図的なものかどうかはともかく,十分でないといわざるを得ない。そして,この点に関する関係者の供述をみると,以下の(ア)ないし(カ)のとおりであるが,その内容に照らすと,細部はさておいても,①被告人A3が,平成8年5月24日のC1聴取に先立って認識していた内容と,その際の「政治的決断」という発言に反映された専決に向けた意思の表明の有無,②C1がB13ら金融班,診断班に対して説明した内容,③C1との協議の後,B13らが被告人A3に対してした報告の内容について,軽視できない供述の不一致が存在していることが分かる。 (ア) B13の平成13年5月25日付け検察官調書(甲101)には,①C1を呼ぶ前に,被告人A3及びB18に対し,「C’からJに対し不自然な送金があります。つなぎ融資も目的外に使用されています。これでは,次の高度化資金は貸せません。」とはっきり問題点を報告した,②その際,被告人A3から,なぜいい加減な経理なのかと言われ,帳簿類がhにあったり,経理を大阪でやっていたため確認ができなかった旨を弁解したところ,金融班と せません。」とはっきり問題点を報告した,②その際,被告人A3から,なぜいい加減な経理なのかと言われ,帳簿類がhにあったり,経理を大阪でやっていたため確認ができなかった旨を弁解したところ,金融班としてもっと毅然として調べないかんとか,なぜ大阪へも行かんのかと言われた,③C’の現状を質問され,もう建物は立ち上がっているんだろう,貸さなかったらどうなるか,などと言われ,倒産する旨を答えたところ,被告人A3は,しばらく考えたのち,「もう6年度に土地分を貸しちゅう。高度化資金をあてにして建物も建てちゅう。ここで倒産さすわけにはいかんろうが。政治的な判断が必要なときもある。」と言った旨の供述記載があり,B13は公判でも,概ね同旨の供述を維持している。C1から聴取した内容については,B13の同調書には,④C1は,自己資金20パーセントが確保できず,Jからの一時借入金で増資を仮装したことをはっきり認め,金の流れまで詳しく説明した,資金繰りが苦しくて,つなぎ融資を運転資金に流用したことをはっきり言っていた旨の供述記載があり,⑤被告人A3への報告については,具体的な供述記載はなく,「自己資金2割が確保できていなかったとか,つなぎ融資の目的外使用があったということは,貸付けの条件違反であり重大問題ですから,私たちから報告し,理解してもらっていることは間違いありません。C’が深刻な経営危機に陥っていることも同様,報告しました。」との,前記①の事前の報告に関する供述記載に比べればやや漠然とした供述記載がある。 そしてB13は,公判廷では,前記⑤について,「私として報告したという記憶はありません。」,「出資金のことについて,もし私が報告したとしても,見せ金増資というニュアンスではなくて,資金繰りのやりくりというか,一時借入金というか,そういう認識だったと思います たという記憶はありません。」,「出資金のことについて,もし私が報告したとしても,見せ金増資というニュアンスではなくて,資金繰りのやりくりというか,一時借入金というか,そういう認識だったと思いますし,それをどういうふうに,具体的に課長に説明したか,自分の中では思い出せません。」等と供述している。 (イ) C1の平成13年5月25日付け検察官調書(甲143)には,C1聴取について,①被告人A3は,妻を紹介した際,しっかりしろよと言った,すぐにはお詫びのうまい言葉がみつからず,申し訳ありませんと言うのが精一杯だった,②Jへの支払等について尋ねられ,「株式会社G3の増資については,私が実姉のXから借り入れた金で増資をしたことにしていただけで,実は,JからXの口座に現金合計1億9000万円を振り込んでもらい,増資の手続をし,2,3日ほどしてJに返済しております。他の4社につきましても,各理事が知人らから工面した金で増資したことにしてありますが,実はJから知人などの口座に合計1億4500万円を振り込んでもらった上,それを各理事の口座に入金した上増資の手続をし,2週間ほどしてJに返済しております。」などと詳しくお話しした,③つなぎ融資の流用については,資金繰りに窮して仕方なく流用させてもらったなどと言った旨の供述記載がある。 (ウ) B12の平成13年5月26日付け検察官調書(甲112)には,①B13から,A3課長がB12も呼んでこいと言っているので,副部長室まで来てほしいと言われ,C1との協議に参加した,②話し合われた内容については,いきなり呼ばれて参加したことから,詳しく理解できなかったが,少なくとも,C1から,「高度化融資のうち,自己資金で増資をする予定であったが,経営状態が悪くなって運転資金に回してしまった。このため,自己資金分については したことから,詳しく理解できなかったが,少なくとも,C1から,「高度化融資のうち,自己資金で増資をする予定であったが,経営状態が悪くなって運転資金に回してしまった。このため,自己資金分については,一時借入金でまかなった。」などの話が出たことはよく覚えている,③資料中,「これまでの経理の処理については,もう一度商工,経営が指導に入ることとし,整理することとした(6月の会検後)」とあるのは間違いなく,自分とB11は経理の一本化の作業に当たることになった旨の供述記載がある。しかし,B12は,公判廷では,②について,「これはC1がはっきり言ったんですけども,自己資金はいったん増資したんだけども,経営状況が悪化して,その資金を運転資金に流用せざるを得なくなりましたと。増資はしましたけども,その資金は運転資金に消えましたと。で,建設用の自己資金分は,一時借入金で行いましたと。そういうふうに,C1ははっきり申しました。」(第6回公判),「私は,C1が,先日申し上げたようなことを言いましたので,増資した後に,その資金が運転資金に使われたと。で,設備の自己資金分,その分を,一時借入金で賄ったと。 (平成8年)5月時点はそういう認識です。」(第7回公判)等と供述している。 (エ) B11の平成13年5月27日付け検察官調書(甲119)には,①自分とB12は,B13から「A3課長が呼んでいる。はっきりさせたいから診断班も一緒に入ってほしい。」と頼まれて同席することになった,②C1は,はっきりと,高度化資金貸付けの際,自己資金20パーセントが確保できず,Jからの一時借入れで賄った,つなぎ融資を運転資金に流用した,という意味のことを言った,③被告人A3の指示を受けて,B12とともに,経理の一本化作業に当たることになったなどとの供述記載がある。しかし,B11は, 入れで賄った,つなぎ融資を運転資金に流用した,という意味のことを言った,③被告人A3の指示を受けて,B12とともに,経理の一本化作業に当たることになったなどとの供述記載がある。しかし,B11は,公判廷では,②について,C1夫妻から話を聞いて,「まあ,資金繰りが詰まって,本来あった出資金が資金繰りのほうへ流用されて,建設費に充てる部分がJから一部借入れになってたということは分かりました。」,「借りたにしろ,借入れは継続しているという感じですので,見せ金という思いはしてないです。」等と供述している。 (オ) B16の平成13年5月28日付け検察官調書(甲97)には,①B12とB11は,被告人A3の指示でB10が呼んできて加わってもらった,②協議の際,C1は,見せ金増資の際の資金の流れを記載したメモを持ってきており,資金の流れを細かく説明して,説明内容をノートに記載した(甲97の添付資料③),C1の説明により,C’は増資を一時借入金による見せ金で行っており,その増資は架空であることや,つなぎ融資による借入金を運転資金に流用したことがはっきり分かった,③ここまで状況がひどくては,とても自分やB13らだけの判断では処理できず,とにかく被告人A3に報告して指示を仰ぐことにし,ひとまずC1とその妻に帰ってもらった,④B13やB10とともに,被告人A3のところに行き,B10が,「つなぎ融資は,やはり運転資金に流用していました。増資も,Jからの一時借入れでした。C1理事長は県をだましていました。このまま高度化資金を貸すわけにはいきませんが,今月末の手形の決済資金がありません。高度化資金を貸さないと,不渡りを出して倒産してしまいます。課長,困りました。どうしましょうか。」と報告し,被告人A3は,しばらく考えた末,「支出命令に必要な書類の準備はできている 資金がありません。高度化資金を貸さないと,不渡りを出して倒産してしまいます。課長,困りました。どうしましょうか。」と報告し,被告人A3は,しばらく考えた末,「支出命令に必要な書類の準備はできているか。」と尋ね,準備はできていたので,B10が「できています。」と答え,またしばらく考えていたが,この場で指示はしなかった旨の供述記載がある。 (カ) B10の平成13年5月29日付け検察官調書(甲105)には,①自分とB13は,被告人A3とB18に対し,「増資は嘘で,Jからの一時借入金によって増資したように見せかけて,その後,Jに返済しているみたいです。つなぎ融資も高度化事業以外の目的で使用されています。このまま貸付けをするわけにはいきません。」と報告した,②被告人A3は,このまま貸さなかったらどうなるのかと言ってきて,B13が,手形が落ちず,倒産となる旨を答えたのに対し,「ここまできたので貸さん訳にはいかんろう。」と言った,③協議の際,C1は,Jからの一時借入金で増資をしたことを,個々の金の流れを含めて詳しく説明し,自分は手帳に書いていたが,手帳には書ききれなくなり,途中で止め(甲105の添付資料9),一緒に話を聞いていたB12は,C1が言った金の流れをB4サイズの紙に書き込んでいたので,後は任せた,④つなぎ融資の目的外使用について聞いたところ,C1は,平成6年8月ころ,メインバンクであったI銀行に手を引かれ,資金繰りが苦しくなり,運転資金に使用した,と言っていた,⑤C1から事情を聞いて判明した,自己資金20パーセントが確保できていなかったこと,及び,つなぎ融資の目的外使用は,高度化資金の条件違反で,重大な問題であることから,事情を聞いた直後に,B13が被告人A3に報告した旨の供述記載がある。 ウ平成8年5月中旬に,B13やB10が客観 び,つなぎ融資の目的外使用は,高度化資金の条件違反で,重大な問題であることから,事情を聞いた直後に,B13が被告人A3に報告した旨の供述記載がある。 ウ平成8年5月中旬に,B13やB10が客観的な資料に基づいて,C’の増資手続とつなぎ融資の使途先に不審を抱き,C1を訪ねるなどして,資金の流れなどについて調査を進め,つなぎ融資の目的外流用の他に,Jへの3億3500万円の送金が借入金の返済であると考え,不審の念を抱いていたことは,B13が同月21日に作成した資料(甲101の添付資料6,7)から認められるところ,B13の前記(ア)の供述中,被告人A3から「政治的判断」という言葉が発せられるに至った経緯には相応の迫真性があり,実際に被告人A3が「政治的判断」云々という発言をしたものと認められる。そうすると,B13らが単に書類の形式的な不備のみを報告したものだとすれば,C1を呼んで確かめることで足りると考えられ,あえて「政治的判断」というような発言をする必要はないから,被告人A3の検察官調書(乙36)にあるように,少なくとも「つなぎ融資の目的外流用」の件については,C1聴取に先立って報告があったものと認めるのが相当である。なお,後述するように,被告人A3は,「C1を呼んでチェックするように。」との概括的な指示を出したほかには,その後専決するに至るまでの間,金融班らに対し,何らの具体的な指示を出した形跡がなく,財務状況を調査しようとする姿勢すら示していないのであって,このような態度は,平成8年7月4日の西庁舎協議において,必要資金が実質的に11億7000万円である旨を認識するまで変わっておらず,被告人A3が,第2次高度化資金貸付手続には,審査会への出席程度で深く関与しておらず,特段の引継ぎを受けていなかったことも手伝って,つなぎ融資の目的外流 0万円である旨を認識するまで変わっておらず,被告人A3が,第2次高度化資金貸付手続には,審査会への出席程度で深く関与しておらず,特段の引継ぎを受けていなかったことも手伝って,つなぎ融資の目的外流用を深刻な問題と受け取ることができず,単なる約束違背といった程度の認識しか有していなかったに過ぎないものとみられ,およそ,検察官が主張するような,「だまされたと分かった」とか,発覚すれば県の責任が問われるといった切実な事情を認識していたものとは考えられない。 エしかし,B13やB10が,①つなぎ融資の目的外流用だけでなく,増資の仮装の疑いについてC1聴取よりも前に被告人A3に報告したという点,②C1から「見せ金」で増資をしていた旨を詳細に聴取したという点,③その結果を被告人A3に報告したという点については,いずれも,以下のとおり,疑問を差し挟む余地がある。 (ア) 前記①の点について,これに対応する被告人A3の供述は,捜査,公判を通じて見当たらず,B13やB10の検察官調書によれば,つなぎ融資の目的外流用等を報告した際に,B18もその場にいたとされるものの,B18の検察官調書は,第1次貸付けに関しては請求されていない。被告人A3が,B13のいう「Jに対する不自然な送金」の疑いや,B10のいう「増資は嘘で,増資したように見せかけてその後返済している」という事情についてまで,C1聴取の前に報告を受けていたとすれば,被告人A3がC1と挨拶程度の会話を交わしただけで,実質的な事情聴取がされる前に,退席するのは不自然であるし,「政治的判断」として専決するつもりであったとしても,まだ専決には及んでいないのであるから,C1を県庁に呼ぶに際して,金融班に対し,C1から確認すべき事項や,その後の報告について,何らかの具体的な指示をするはずであると考えられるの であったとしても,まだ専決には及んでいないのであるから,C1を県庁に呼ぶに際して,金融班に対し,C1から確認すべき事項や,その後の報告について,何らかの具体的な指示をするはずであると考えられるのに,そのような指示をした形跡は窺われない。 B13が作成したメモ(甲101の添付資料8)によれば,協業組合としての運営体制の確立,高度化資金の趣旨に沿った経理及び資金運用をC1からの書面で確認すること,これまでの経理の処理については,再度県が指導に入って整理することなどが打ち合わせられたものと考えられるが,この点に関する被告人A3の関与は,全く窺われない。また,B12やB11の前記各検察官調書によれば,B13から,被告人A3が呼んでるから,ということで参加したことになっているが,被告人A3の検察官調書(乙36)には,そのような供述記載はなく,単に,出ていくときにB12とすれ違った旨の供述記載があるだけであり,B12及びB11の参加は,被告人A3の指示というよりも,金融班サイドの要請とみる余地があり,増資の仮装まで事前に報告を受けていたので,被告人A3がとくに診断班を参加させたとみることはできない。 (イ) 前記②の点について,金融班らは,C1聴取の際に,資金繰りについて報告するようにC1に指示したり,B12らが経理の一本化に向けて作業を進めることなどを打ち合わせており,高度化資金を予定どおり貸し付けることを前提としてC1夫妻と相対したものと認められ,また,被告人A3に対し,その内容はともかく,事情聴取の結果について報告するよりも前にC1夫妻を帰宅させているのである。しかし,金融班らに対し,C1から,同人の検察官調書(甲143)にその旨の供述記載があるような,増資を仮装するなどして高度化資金を県からだまし取ったものであるということについて,詳細な るのである。しかし,金融班らに対し,C1から,同人の検察官調書(甲143)にその旨の供述記載があるような,増資を仮装するなどして高度化資金を県からだまし取ったものであるということについて,詳細な説明がされたとすると,そのような事実を聴取した金融班及び診断班の職員らは,それら背信性の高い事実を明確に認識したものということになる。それなのに,それら職員が,上司である被告人A3の意向を確かめもせずに,そのままC1夫妻を帰宅させるなどということはおよそ考えがたいのであって,C1夫妻がそのまま帰宅しているだけでなく,後日においても,増資の仮装等によって高度化資金を詐取したことに関し,C1が前記職員や被告人A3から特段の追及を受けていないことにも照らすと,当時,C1が前記同人の検察官調書に記載されているような説明を金融班らに対してしたものとは考えがたい。 また,B16がその際にノートに記載したとされるチャート図(甲97の添付資料③)や,B10が手帳に記載したメモ(甲105の添付資料9)によると,C1は,Jからの金の流れを詳細に説明しているけれども,その金員が増資を仮装するためのものであることを示すような記載は,それらのチャート図やメモには存在していないから,これらを根拠として,C1が増資の仮装について説明したものとみることはできない。また,C1の前記検察官調書に記載された内容は,ことさら詳細で,取調時までの5年の経過を感じさせないが,県関係者のメモ等,客観的な証拠によって事後的に明らかになっていた事情がなぞられただけのものともいえ,詳細だからといって,とくに信用すべきものであるともいえない。かえって,C1が取調時において置かれていた状況を考えると,その検察官調書の文脈に現れているように,被告人A3の専決処分に先立って,県関係者に対し見せ金に ,とくに信用すべきものであるともいえない。かえって,C1が取調時において置かれていた状況を考えると,その検察官調書の文脈に現れているように,被告人A3の専決処分に先立って,県関係者に対し見せ金についての詳細を説明し,自分としては貸してもらえないだろうと諦めていたのに,予想外に県が貸してくれた,ということにしたほうが,第2次高度化資金の借入れについての責任が軽くなるという状況下にあったものと思われる。それらの諸点を併せ考慮すると,C1の前記検察官調書の信用性はさほど高いものとはいえない。 また,B10はB12がB4用紙にメモしていたなどと供述するが,そのようなメモの存在は不明であり,当のB12は,そのような供述をしていない。B10は,途中で手帳へのメモ書きをやめた理由として,手帳の余白がなくなった旨を述べているが,下方に続けて別の事項を記載しており,かえって途中でC1の説明が終わったとでも考える方が自然である。 以上の諸点を総合して考慮すると,C1が,県に対する決定的な背信行為である「見せ金」や「増資の仮装」について平成8年5月24日に説明したものとは直ちに考えがたい。B12やB11が公判廷で述べるように,増資したが,運転資金に使ってしまい,設備投資分は借入金で賄っている旨の説明がされたにとどまるとみるべき余地は多分にあり,そうみるほうが事後の経過に照らしても自然である。 (ウ) また,前記③の点については,もともと前記(イ)のとおりC1が見せ金について詳細に報告したという点自体に疑問がある上,B13(前記イ(ア)⑤),B16(前記イ(オ)④),B10(前記イ(カ)⑤)の各供述記載の間に,報告内容や報告者の点に齟齬があるのに加えて,B16の,B10から「このままでは貸せません。課長,どうしましょうか。」と言った旨の供述記載は (オ)④),B10(前記イ(カ)⑤)の各供述記載の間に,報告内容や報告者の点に齟齬があるのに加えて,B16の,B10から「このままでは貸せません。課長,どうしましょうか。」と言った旨の供述記載は,当のB10の検察官調書には自ら報告した旨の供述記載はなく,誰が報告したかという点をさておいても,C1をそのまま帰したり,席上で,月末に向けての資金繰り等についてまで指示を出している金融班員が口に出すというのは,それまでの事実経過からみて不自然であり,捜査段階において,最後の決断を被告人A3に委ねたことにしてしまおうという捜査側の意図すら窺えなくはなく,この点は信用することができない。かえって,C1聴取の後の報告を覚えていない旨のB13の公判供述は,同女が,被告人A3から「政治的判断」という発言がされたという,被告人A3にとって不利益になりかねない事項についても供述していて,被告人A3をことさら庇っているとも思われないことに照らし,証言時の記憶に忠実に供述しているものと考えられるが,「見せ金」による「増資の仮装」という高度に背信的な事情の報告や,これに伴う被告人A3の反応等がそもそもなかったがために,記憶にないものと考えるのが自然である。 これらに,前記(イ)で述べたところを併せ考慮すると,およそ被告人A3に対し「見せ金」増資について報告がされたとは考えがたく,つなぎ融資を目的外に流用していたことの報告があったに止まったものと認めるのが相当である。 (エ) また,証拠上,被告人A3の,C1聴取の後に金融班から内容はともかく報告を受けた際の対応や,その後約1か月程度の期間における対応をみる限り,B13やB12といった部下に対してですら,C’の財務状態の調査や,今後の監督方針等について具体的な方針を示しておらず,この点は,後に,11億円余りが その後約1か月程度の期間における対応をみる限り,B13やB12といった部下に対してですら,C’の財務状態の調査や,今後の監督方針等について具体的な方針を示しておらず,この点は,後に,11億円余りが当面必要であると判明した西庁舎協議の際には,3課対応を決め,B17を介して診断班に再診断を命じたり,M’から融資を断られた後には,土佐寮協議,3課検討会,3課長会議等,部内協議等を積み重ね,そのなかで積極的に方針を打ち出していったのと対照的であり,そのような被告人A3の対応からすると,被告人A3は,C1聴取によってはC’の基本的な問題点を何ら把握するに至らなかったことを示しているものといってよい。被告人A3の平成13年7月31日付け検察官調書(乙43)には,第2次高度化資金専決の際には,C1が見せ金増資でだましていたことが分かっていたけれども,自分自身に対する責任追及を免れたく,被告人A1に報告すれば怒られるのが明らかで,決裁してしまったなどとの記載があるが,他方,被告人A3は,公判廷では,C1聴取によって見せ金増資の事実が判明したとすれば,支出命令の専決はせずに,副部長や部長等上司と相談して決めたと思うと述べているところ,被告人A3は,平成7年4月に商工政策課長に就任し,第1次高度化資金の貸付金交付以降についてC’の高度化資金貸付事務に関与しているとはいえ,平成8年5月下旬まで見せ金増資を見抜けなかったとしても,それはC1の相当に巧妙な詐欺行為によるものであるから,被告人A3や高度化資金貸付けに関与した県職員らの責任は,C1が追及されるべき責任と比較すれば雲泥の差があるところ,C1の詐欺行為を認識していながら,専決に及んで9億5250万円もの公金をC’に交付することは,支出負担行為決議が既にされていて第2次高度化資金貸付けが予定されており 較すれば雲泥の差があるところ,C1の詐欺行為を認識していながら,専決に及んで9億5250万円もの公金をC’に交付することは,支出負担行為決議が既にされていて第2次高度化資金貸付けが予定されており,また,これが同和対策事業として有意義なものであるとしても,被告人A3において,県が被害者となるC1の犯罪行為に,他の県職員の関与もなく,被告人A3だけの独断で加担することを意味することになるが,被告人A3において,当時,そのような決断をせざるを得ない状況にあったとは思われず,前記検察官調書にいうような,「自分自身に対する責任追及を免れたく,被告人A1に報告すれば怒られる。」というような理由で専決に及ぶものとは考えがたい。この点は,被告人A3が公判廷で述べるように,その対処方法について,当然上司と相談するはずであると思われるのであり,前記検察官調書の供述記載は信用することができず,その公判供述を信用すべきものである。被告人A3は,つなぎ融資の目的外流用は認識しつつ,これをさほど重大な問題であると捉えずに,専決したとみるのが自然である。 (4) 被告人A3から同A2に対する報告について被告人A3の平成13年5月29日付け検察官調書(乙37)には,平成8年6月中に同A2に対し「借入れによる増資」の件を報告しなかった理由として,「一時借入れで装うなどの詐欺行為を知っていながら,勝手な判断で支出命令を決裁したことに後ろめたさを感じていたので報告できなかった。」旨の供述記載がある。これを前提とすると,同調書中の,同年7月4日ころ,西庁舎協議の後に「増資をする分として予定していたものを運転資金に回してしまったようです。」と述べて被告人A2への報告に及んだ旨の供述との整合性が不可解となるが,この点の理由について,同調書には,「高度化事業の初年度資金不足」 として予定していたものを運転資金に回してしまったようです。」と述べて被告人A2への報告に及んだ旨の供述との整合性が不可解となるが,この点の理由について,同調書には,「高度化事業の初年度資金不足」が3億円に上っていることを説明するなかで,C’が高度化事業の自己負担分について調達していなかったことも伝えなければと思った,という供述記載がある。しかし,同日の西庁舎協議をみるに,当日に配布され,被告人A2も後日間もなく同A3から見せられた資料(乙17の添付資料③)中に「本計画による初年度の資金不足約3億円」という記載はあるが,仮装増資に係る金3億5840万円と額が異なるだけでなく,資料中には,4億840万円が増資済みであることを示す資料が添付されており,C1は協議において増資の件には触れていない。そうすると,被告人A3が,同A2から尋ねられてもいないのに,わざわざ増資が仮装によって行われていたことを報告する必要はなかったものと考えられ,前記理由についての供述部分は不自然であり,これに依拠して,被告人A3が「見せ金」はじめ増資の問題点を認識していたものとは考えがたい。 また,被告人A2の平成13年5月27日付け検察官調書(乙17)には,平成8年6月ころ,被告人A3から,C’が資金ショートを起こして倒産しそうなこと,I銀行が新規融資を断った模様であることなどについて報告を受けた旨の供述記載があるが,時期が判然とせず,被告人A3の検察官調書にはそのような供述記載はなく,むしろ,同年7月4日の西庁舎協議の後に,協議内容の事後報告として,同旨の報告を行ったとみるのが自然であるところ,その際に,被告人A3が,「見せ金」をはじめ,増資に関する問題点について報告をしたとは考えがたいことは前述したとおりである。したがって,被告人A2の,同年7月4日ころ,被 みるのが自然であるところ,その際に,被告人A3が,「見せ金」をはじめ,増資に関する問題点について報告をしたとは考えがたいことは前述したとおりである。したがって,被告人A2の,同年7月4日ころ,被告人A3から,資料中にある「本計画の資金不足として約3億円」とある点について,「本来C’が高度化資金の貸付けを受けるに当たって,貸付希望額の2割を自己資金で賄わなければならず,その2割は増資によって確保すると約束していたのに,実際には業績の悪化のため運転資金が不足し,増資分を借入れによって賄わなければならなかったことによって生じた借金である。」旨の説明を受けた旨の供述記載もまた,にわかに信用することができない。なお,この供述によると,「3億円が借金である」というのであるが,「見せ金」は仮装増資の資金を他から借り入れて増資の手続を行った後,直ちに同金額を借入先に返済するものであって,同金額が借金として残るはずがない性質のものであるから,「見せ金」による「増資仮装」の報告を受けたものとはもともと考えがたい。 被告人A2は,公判廷では,M’に融資を依頼するのに先立ち,「一度増資はしたが,その増資資金を資金繰りに窮して他へ流用したため,その穴を埋めるべく借入れをした。」旨の報告を受けていた旨を供述しているところ,その時期や,報告の場所,相手方等に関する供述は漠然としており,その信用性は必ずしも高くなく,M’に融資を依頼する前であったかは定かではないけれども,被告人A2が,第1次貸付けに至るまでの間において,関係者から,増資金が運転資金に流用されていたことを聞いたことは認められるが,いわゆる「見せ金」による増資を認識していたものとは認められない。 (5) 被告人A2から同A1に対する報告について検察官の主張によれば,被告人A1に対する「見せ金」の いたことは認められるが,いわゆる「見せ金」による増資を認識していたものとは認められない。 (5) 被告人A2から同A1に対する報告について検察官の主張によれば,被告人A1に対する「見せ金」の報告は,同A2を通じて平成8年7月4日の後に行われ,さらに,被告人A1は副知事協議の際に,あらためてこれを認識したということになるが,すでにみたとおり,被告人A3及び同A2のいずれも,「見せ金」による増資の仮装を認識したものとは認められず,副知事協議の際の文書からも,被告人A1が「見せ金」による増資の仮装を認識したものとは認められない。なお,本項目についての判断は次のとおりである。 ア被告人A2は,同A1に対する報告について,捜査段階で,①被告人A3からC’が資金ショートを起こしていることの報告を受けた後,その旨を報告した(乙17),②同年8月9日にM’から融資を断られた後,その旨を報告した(乙19),③同年9月6日にI銀行から明確に融資を断られた後に,決定的に断られた旨を報告した(乙22)などと供述し,その理由として,被告人A1は同和対策の最高責任者でもあるから,C’に関する問題については,その都度報告して商工労働部と同じ問題意識を持っておいてもらった方がよいと考えていたなどと供述していたが(乙20),公判廷では,よく覚えていない,取調官に合わせて調書ができたなどと供述する。一方,被告人A1は,捜査段階では,当初は明確に供述していなかったものの,最終的に,被告人A2から副知事協議の前に報告を受けていた旨を供述するに至っていたが(乙6),公判廷では,C’に資金繰り上の問題が発生していることを知ったのは,平成8年9月9日の副知事協議において被告人A3から説明を受けた際で,それ以前に被告人A2から報告を受けていた記憶はないなどと述べている。 ,C’に資金繰り上の問題が発生していることを知ったのは,平成8年9月9日の副知事協議において被告人A3から説明を受けた際で,それ以前に被告人A2から報告を受けていた記憶はないなどと述べている。 イまず,平成8年7月4日ころ,被告人A2から報告があったとされる点については,被告人A2の前記検察官調書(乙17)には,被告人A1の反応について漠然とした供述記載しかなく,当時,被告人A3はM’による支援が期待できるものと信じ,被告人A2もこれを前提としていたものとみられることからすると,被告人A2が,同A3の報告を受けて直ちに同A1に報告したとみることには疑問がある。しかし,被告人A1の前記検察官調書(乙6)中の,同A2からM’への依頼を断られた旨を聞いて,「政府系のM’も渋くなった。」等と考え,地元の銀行なら県の頼みということで,多少の無理は聞いてくれると思い,「M’だけが金融機関ではないので,その他の金融機関に対しても融資を頼んでみなさい。」と述べた旨の供述記載は,被告人A2が,報告に対する被告人A1の返答について覚えていない,とくに何らかの指示を受けた記憶はない旨を供述しているのと対照的に具体的であり,この部分までもが検察官の誘導や押しつけによるものとは考えがたく,被告人A1は,M’から融資を拒絶されたのち間もないころまでには,M’に依頼を断られたこと,その前提として,C’が資金ショートに陥っていることについて,被告人A2から報告を受けていたとみるのが自然である。まして,同年9月3日I銀行のI2らと折衝した後に,同銀行から明確に単独融資を断られた同月6日以降には,いよいよ県による貸付けが現実化しており,問題の重要性に照らし,被告人A2が同A1にその旨の報告をしなかったものとは考えがたい。実質的にみても,①第1次貸付けは,総額10億円を れた同月6日以降には,いよいよ県による貸付けが現実化しており,問題の重要性に照らし,被告人A2が同A1にその旨の報告をしなかったものとは考えがたい。実質的にみても,①第1次貸付けは,総額10億円を超える規模で,その合法違法の別,妥当性の如何を問わず特異な案件であるのは間違いなく,N協会が保証した上での協調融資ではなく,県が償還のリスクを直接負担する点において,かつて県議会から追及され,当時の商工労働部長が陳謝する事態となったY商銀に対する融資案件とも事案を異にする。すなわち,同案件も,中小企業対策費からの支出である点,対象が一企業である点,議会への報告がなかったという点において共通するものの,県が無利子若しくは低金利で銀行に預託し,その資金を銀行がY商銀に貸し付け,同商銀はそれを運転資金として運用するという形式をとった迂回融資であって,元本保証という形態を採っていたものであり,県が負担するリスクの点に限定すれば,本件よりもはるかに問題が小さいものである。このような,これまでにない性格を有する特異な案件について,平成8年4月に商工労働部長になったばかりで,総務系統の役職が長く,商工労働関係の方面には知識,経験ともに乏しかった被告人A2が,主要な同和対策として高度化資金を貸し付けたC’が事業を開始して間もなく多額の資金難に陥り,県はいわば泣きつかれるかたちで援助要請を受けておりながら,同和対策本部長でもある被告人A1に,事前に説明をしなかったとは考えがたい。②また,同年9月9日の副知事協議に費やされた時間は約45分間に過ぎないのであり,この間に被告人A1は,同A3からの報告を受け,償還計画についてのB12の説明を受けて,途中で話を遮り,形式的とはいえ,直接貸付けの他にも掲げられていた支援案のうちから,迷わず直貸し案を選択し,産業経済委員 告人A1は,同A3からの報告を受け,償還計画についてのB12の説明を受けて,途中で話を遮り,形式的とはいえ,直接貸付けの他にも掲げられていた支援案のうちから,迷わず直貸し案を選択し,産業経済委員への報告を控えるように指示し,さらには,次年度以降の貸付けを視野に入れて,現行の協調融資制度とベンチャー融資制度との中間のような融資制度を検討するようにも指示しているのであるが,いかに被告人A1が同和対策本部長の職にあり,財政の経験が長く,直貸しの問題点を容易に把握する能力を有していたとみられることを考慮しても,副知事協議の際に初めて問題を知らされたにしては,指示,決断に至る経緯がいかにも唐突すぎるものと思われる。被告人A1は,同A2からC’の危機的状況や,これに対する商工労働部の支援方針について報告を受けていたから,当日の協議の際,速やかな指示決断が可能であったとみるのが自然である。そして,後日,B23財政課長から,直貸しに際しての,担保の欠如等に関する厳しい指摘を受けても,再度検討するように指示するだけで,自らがB23の反対意見を受けて逡巡した形跡が何ら窺われないことからも,副知事協議に臨むまでの間に事態をある程度認識した上で,本件貸付けに際しての決裁権者として,然るべき意見を述べ,指示を出していたものとみることができる。 ウもっとも,被告人A2や同A1の検察官調書によっても,被告人A1が同A2から報告を受けたその都度,指示と評するに足りるほどのとくに具体的な意思表明をしていたものとは窺われないのであって,事実経過について簡略な報告を受けていたに過ぎず,同和対策本部長の職にあったとはいえ,具体的な対策については,商工労働部職員の裁量的判断に委ねていたものとみるのが相当である。 (6) 認否との関係ところで,被告人A1は,第1回公判期日 に過ぎず,同和対策本部長の職にあったとはいえ,具体的な対策については,商工労働部職員の裁量的判断に委ねていたものとみるのが相当である。 (6) 認否との関係ところで,被告人A1は,第1回公判期日における罪状認否の際には,前記のとおりの供述をしており,第16回公判期日において,前の供述は誤りであり,その理由として,起訴の段階でC’による見せ金や工事費の水増しがすべて明らかになっていたため,貸付け当時に分かっていたことと,起訴当時に分かっていたこととが混在して整理がつかずに勘違いしたために,前記のような認否供述になってしまった,というのである。一方で,取調べの段階では,C’の経過についてすべて判明しており,貸付け当時はそういうことを全然知らなかったのだから,その点は区別して,貸付け時点での判断ということで供述調書に書いてもらいたいなどと何度も言っていた旨も供述している。仮に,取調べ段階でそのような申入れを何度もしていたとすれば,貸付け時と取調べ時との間における認識の差異を理解していた被告人A1が,第1回公判期日において,身柄拘束中だったとはいえ,弁護人との打ち合わせを経て書面化されたとみられる認否書において,勘違いを起こすとは考えられず,被告人A1の説明には,不合理な面が残る。 また,被告人A2も,第1回公判期日における罪状認否の際には,前記のとおり,「借入金による見せ金増資の仮装」について知っていた旨を供述していたのに,第15回公判期日では,それは「増資した後に,運転資金に流用されたことは知っていた。」という趣旨であると説明しているが,見せ金による増資の仮装という事実と,増資後の運転資金への流用という事実との間には,事実そのものにも,そして本件事案における重みにも大きな相違があるのであって,認否書に基づいた認否であったことに照らすと, よる増資の仮装という事実と,増資後の運転資金への流用という事実との間には,事実そのものにも,そして本件事案における重みにも大きな相違があるのであって,認否書に基づいた認否であったことに照らすと,この説明にも不合理な面は残る。 しかし,実質的な証拠に基づき検討する限り,第1次貸付けの際に被告人3名が「見せ金」や「増資の仮装」という認識を有していたものとは認めがたい。それにもかかわらず,このような認否に至っている背景を考えてみると,第1回公判期日において,被告人A3はともかく,被告人A1及び同A2はいずれも前記のとおり,全体として背任罪の成立を否認する趣旨の供述をしている反面,検察官請求証拠の全部の取調べに同意していること,逮捕以来,接見禁止が付された状態で約5か月間にわたり勾留されていたことなどに照らし,認否の内容と証拠意見について,その当否はさておき,ある程度譲歩した上で保釈を得るという弁護方針が選択されたのではないかとも考えられる。第1回公判期日における前記のような認否は,このような弁護方針に由来するのではないかと考えることができ,前記のような各罪状認否に,被告人らに不利益な方向で固定した意味づけをするのは相当でない。なお,被告人A3は事実を全面的に認める供述をしていたが,これに信を措きがたいことは,すでに述べたとおりである。 (7) 以上のとおりであって,被告人3名は,第1次貸付け当時に,いずれもC1が講じたいわゆる「見せ金」によって,「増資が仮装されていた」こと(以下「見せ金工作」という。)の認識があったものとは認められず,かえって,被告人らが公判廷において供述しているように,いったんは増資されたが,増資金が運転資金に流用されたため,増資金を充てるべきであった設備資金が一時的な借入金でまかなわれていたという認識を有していたものと 人らが公判廷において供述しているように,いったんは増資されたが,増資金が運転資金に流用されたため,増資金を充てるべきであった設備資金が一時的な借入金でまかなわれていたという認識を有していたものと認めるのが相当である。なお,前記(1)イで取り上げたメモの記載等に照らすと,被告人3名が,「増資の原資が借入金によって賄われていた」という事実を認識していたのではないかと推測する余地はあるけれども,以上でみたとおり,前記各検察官調書によれば,増資をめぐる問題点に関する被告人A2及び同A1の認識は,同A3が金融班から「見せ金工作」の報告を受けたことをそもそもの出発点として導かれているところ,その点からしてすでに,前記各検察官調書の信用性が乏しい上,副知事協議の際に用いられた前記「協業組合Cへの対応について」と題する書面中の「結果的に,設備投資の自己負担分(約3億6千万円)を一時的な借入金に頼らざるを得なかった」との記載からは,「結果的に」という文言が挿入されているだけに,借入れが増資の後にされたことを意味しているとみる余地がある。そうすると,前記メモ等の記載が存在するからといって,被告人3名の公判廷における各供述を排斥することはできない。 4 ところで,検察官の主張を前提としても,被告人3名は,C1の講じた諸々の不正な工作や,組合員5社の債務をC’が承継しないことが前提となっていたことなど,C’が資金繰りに窮した背景の全貌を把握していたというものではないのであって,「詐取被害の認識」を中核に据える検察官の発想は,「見せ金工作」は,すなわち詐欺行為であり,「見せ金工作」を知っていた以上,詐欺の被害にあったということも分かっていたはずであるという論理に基づくものと考えられる。しかし,C1が,他の工作とも併せて,Jからの一時借入等の策を講じ,高度化資金 「見せ金工作」を知っていた以上,詐欺の被害にあったということも分かっていたはずであるという論理に基づくものと考えられる。しかし,C1が,他の工作とも併せて,Jからの一時借入等の策を講じ,高度化資金貸付けの前提条件を充たす意図がないのに,これがあるかのように装うなどして違法に貸付けを得たものであって,これが高度化資金の詐取に当たるのは当然であるにしても,県関係者の側からすれば,「見せ金工作」だけを認識した場合,このことから,直ちに詐欺の被害に遭ったという認識まで有するに至るものとは必ずしもいえないのであって,被告人3名が,その当時,仮に「見せ金工作」の疑いをもっていたとしても,C1が弄した不正な諸工作の全貌を把握していたわけではないこともあって,それを単なる約束違背という程度にしか認識しなかったものとみる余地が多分にある。それにもかかわらず,詐取被害の認識が強調されていることからすると,検察官の,県関係者に「見せ金工作」の事実認識があった場合には,同時に「詐取被害の認識」もあったことになるとの,やや偏りのある,法的評価も多分に含んだ見解の下に,この点に関する県関係者らの認識が供述調書としてまとめられた可能性が強く,これらの点に関する供述記載は,にわかに信用しがたい。実質的にみても,「詐取被害の認識」があれば,C1らに対する刑事告発にまで及ぶかどうかはともかく,少なくとも,被告人らが本件のような直接貸付けに及ぶことの合理的な理由は見いだせない。すなわち,そのような状況下で県がC’に対し直接貸し付けることは,詐欺の犯人に対し,まさに「盗人に追銭」のかたちで高額の公金を直接支出することになるのであるから,そのようなことが発覚すれば,公平性,中立性の観点や,償還不能に陥る危険性,議会への何らの報告も伴わないという予算執行上の重大な不透明性等に対 たちで高額の公金を直接支出することになるのであるから,そのようなことが発覚すれば,公平性,中立性の観点や,償還不能に陥る危険性,議会への何らの報告も伴わないという予算執行上の重大な不透明性等に対する,それまでの対応等に対するものとは比較にならないほどに厳しい批判が必至と見込まれるばかりか,公務員としての見識や人間性まで疑われかねず,住民訴訟の提起も十分に考えられるなど,余りに危険が大きい貸付けとなるのであり,一方,貸し付けずに,C’を倒産させたとしても,もともとC1が犯罪行為によって高度化資金を詐取していたのであって,自業自得であるという見方ができるから,高度化資金貸付けに際しての指導や審査が不十分であったことへの批判はあろうけれども,同和政策としての雇用の場を失ったことに対する県への批判はさほど大きなものにはならないと思われるのであり,前記のような危険を冒してまでも被告人3名が本件のような貸付けに及ぶものとは考えがたいからである。なお,その前の本件高度化資金貸付けに至る経緯において,県担当者が,C1らの口約束に依存して,ともすれば手続の形式を整えることばかりに意を用いていたうらみはあるが,県担当者とC1らの側に「増資したことにする」という形式を整えるために,その旨の内容虚偽の増資の登記を行うことにするなどという暗黙の了解があり,仮にこれが幹部間では了解事項として引き継がれていたといった特別の事情でも存在するというのであれば,本件のような貸付けに及んででもことの真相が発覚することを防ぐという意図があったとみても不自然ではないけれども,そのような事情を窺わせるような証拠は皆無であり,検察官もC1の行為が詐欺に当たることを前提として立論しているのである。 5 結論以上述べたところを総合すると,被告人3名は,第1次貸付けの際,詐取被 な事情を窺わせるような証拠は皆無であり,検察官もC1の行為が詐欺に当たることを前提として立論しているのである。 5 結論以上述べたところを総合すると,被告人3名は,第1次貸付けの際,詐取被害の認識を有していなかったものと認められ,また,第2次貸付けの際には,被告人A2については,会計事務所による調査結果を聞いているけれども,なおC1が講じた工作の全貌は把握していなかったものであって,詐取被害の認識があったものとまでは認められないし,被告人A1については,C1が講じた見せ金工作に関する情報自体を把握した形跡が認められず,詐取被害の認識があったものとは認められない。 第8の2 第1次貸付けにおける診断班の計画策定と報告 1 平成8年7月4日ころの,被告人A3とB12のやりとりについてB12の検察官調書(甲112)中には,①平成8年7月4日ころ,B17からC’ の財務状況等を調査するように言われた後,被告人A3に,「本当に支援するんですか。診断ベースでいけば,債務超過で倒産状態ですよ。金額も運転資金としては大きすぎます。」との意見を具申したが,被告人A3から,「高度化でできたばかりで潰すわけにいかん。おまえは診断班長やからそういう見方しかできんと思うけど,これは高度な政治的判断を要する案件だ。」と言われ,②なおも翌日ころ,「単に金を入れれば済むという問題じゃないです。」などと反対したが,経営計画についても調査するように指示を受け,2,3か月を要する旨を答えたところ,「そんなに待てん。おまえも分かっちゅうろう。時間がないからもっと早くやれ。」と言われ,「そんな短期間では,今ある負債をつかんで,手元にある資料から経営計画をたてるだけで精一杯です。」と述べたところ,「それでもええ。できる範囲でいいから早うせい。」と指示された旨の供述記載が と言われ,「そんな短期間では,今ある負債をつかんで,手元にある資料から経営計画をたてるだけで精一杯です。」と述べたところ,「それでもええ。できる範囲でいいから早うせい。」と指示された旨の供述記載があり,B12は公判廷でも,概ね同旨の供述をしている。他方,被告人A3の検察官調書(乙37)には,このころ,B12に対し直接,「今,C’にどれだけの資金が必要なのか,財務状況がどうなっているのか,今後の見込みについて調べてほしい。」等と指示した旨の供述記載はあるが,B12から反対意見を具申された旨の供述記載はなく,被告人A3は,公判段階でもB12から反対された記憶がない旨を述べている(公判供述,弁61)。B12が供述する被告人A3とのやりとりは,相当に具体的であり,中小企業診断士として,もっぱら財務面から中小企業を診断する立場に照らすと,政策目的以前に,財務面から支援に反対したという点にとくに不自然さはないといえる。しかし,「本当に支援するんですか。」,「金を入れれば済むという問題じゃない。根本的にC’の経営を見直す必要があります。」というB12の問題提起は,県が直接貸し付けてまで支援するとの段階に至った時点であれば自然なものとして了解できるけれども,それが,県がM’への支援要請に向けて,3課で対応する方針が固まっていたに過ぎず,直接公金を投入して支援する方針が全く検討されていないこの時期にされたものとはにわかに考えがたい。また,B12の検察官調書(甲113)中には,M’への依頼後に,約10億円が必要であると判明した際にも,具体的に県が直接貸し付けることには考えが至らなかったとか,どうやって調達するか考えることは金融班の役目であって,診断班の領分ではなかったなどという,県が被りかねない危険について無関心であったかのような供述記載もあり,県からの には考えが至らなかったとか,どうやって調達するか考えることは金融班の役目であって,診断班の領分ではなかったなどという,県が被りかねない危険について無関心であったかのような供述記載もあり,県からの直接貸付けが検討される前に被告人A3に対し反対意思を表明していたとの前記供述記載との間で,B12のスタンスが一貫しないうらみがあるが,これについての合理的な説明はない。また,B11の検察官調書(甲119)には,B12は,被告人A3から指示を受けた当初,度々自分を連れて被告人A3のもとに赴き,「本当に支援するんですか。金額も大きすぎます。」などと訴えていたが,被告人A3は「高度化でできたばかりで潰すわけにはいかない。おまえがごちゃごちゃ言うな。」等と怒り,決まったことに逆らうことは許さないといった様子だったなどという供述記載があるが,やはり時期的な点で不自然であるとともに,B11は公判廷で,そのような場面にはいなかった,「おまえがごちゃごちゃ言うな。」というのは聞いていないなどと供述していることも併せ考慮すると,B11の前記検察官調書をもって,B12の供述を補強するに足りる信用性を認めることはできない。 以上のとおりであって,平成8年7月初旬に,B12が前記のような意見を被告人A3に対して具申したものとは認められない。 2 平成8年8月13日の土佐寮での協議における,被告人A3の指示内容及び診断班の発言について検察官は,被告人A3がB12に対し,平成8年8月13日,「償還できるような計画を作成しろ。」と指示したとして,このような指示のために,診断班がでたらめな計画を策定した旨を主張し,他方,被告人A3は公判段階でこれを否定する(公判供述,弁61)。 この点につき,指示を受けたとされるB12は,公判廷で,「I銀行に融資を頼むについての収支計画 がでたらめな計画を策定した旨を主張し,他方,被告人A3は公判段階でこれを否定する(公判供述,弁61)。 この点につき,指示を受けたとされるB12は,公判廷で,「I銀行に融資を頼むについての収支計画を作れということです。」,「償還計画が実際と違ってもいいという意味ではないと理解しているが,明確な記憶はない。M’が駄目になって,メインバンクであるI銀行へ融資の協力をせんといかんということは言われていたが,はっきりした記憶はない。」との趣旨を供述している。また,B11は,公判廷で,「銀行への償還計画ですので,銀行が納得できるような償還計画というふうなとらえ方をしたと思う。」との趣旨を供述している。 (1) 土佐寮協議に出席した県関係者(被告人A3,B16,B13,B12及びB11)の検察官調書をみると,次のとおりである。①B13の検察官調書(甲103)には記載がない。②B16の検察官調書(甲99)には,被告人A3がB12とB11に対し,「8月20日までに資料を作成しろ。利益償還できるような計画を作成しろ。」等と指示し,これらの指示をメモに記載した(甲99の添付資料2,以下このメモを「B16メモ」という。),被告人A3は,「いわば嘘でもいいからというような内容の計画を作るように指示した」,という供述記載がある。③B12の検察官調書(甲113)には,被告人A3から,「I銀行に融資をお願いしていくので,そのための説明資料に,償還計画を早くあげろ。」と指示されたことを覚えている旨の供述記載がある一方で,「B16メモをみると,『利益償還できるような計画の作成』,『8月20日までに資料作成のこと』との記載がありますが,これもA3課長の発言をメモしたものです。」とか,「A3課長としても,C’について,まともに償還計画を組むと,到底,償還など無理だと分かってい 『8月20日までに資料作成のこと』との記載がありますが,これもA3課長の発言をメモしたものです。」とか,「A3課長としても,C’について,まともに償還計画を組むと,到底,償還など無理だと分かっていたので,どうにかして形だけでもマイナスが出ないようにして,数字の上だけでも,まるで償還可能な計画を組むように診断班に指示した。」ことに間違いない旨の供述記載がある。④B11の検察官調書(甲120)には,被告人A3は「I銀行にC’への融資を頼まないといけないから,利益償還できるような償還計画を作成してくれ。」と言った,B16メモに「利益償還できるような計画の作成」と記載されており,被告人A3が自分とB12にI銀行向けの償還計画を作成するよう指示したことが明らかである旨の供述記載がある。そして,⑤被告人A3の検察官調書(乙38)には,B12に「I銀行がC’に必要資金を貸し付けても利益償還ができるような計画を作るように」と指示した,B16メモ中をみると右側に「利益償還できるような計画の作成」と記載されているが,これは,自分がB12にI銀行がC’に必要資金を貸し付けても利益償還ができるような計画を作るように指示したことを記載したものと思う旨の供述記載がある。 (2) このように,捜査段階における関係者の供述は,B16メモを基軸として,ことごとく,被告人A3が「利益償還できるような計画を作成しろ,と診断班に命じた。」とする点で整合している。 しかし,それらが整合しているからといって,そのような被告人A3の指示があったものと直ちに認めることはできない。すなわち,B16メモ中の,見出しとみる余地もある「利益償還できるような計画の作成」と記載された行のすぐ下の行には「利益率10パーセント確保できれば償還可能と見ている」との記載があり,これは出席者の発言を書 B16メモ中の,見出しとみる余地もある「利益償還できるような計画の作成」と記載された行のすぐ下の行には「利益率10パーセント確保できれば償還可能と見ている」との記載があり,これは出席者の発言を書き取ったものとみられるが,その内容からみて,これが被告人A3の発言を記載したものとは解しがたく,むしろ診断班サイドの発言とみるのが自然である。さらにその下,数行の箇条書きの記載が続いた後に,※として,□の枠で囲まれた「8月20日までに資料作成のこと」等と明らかに被告人A3の指示をピックアップしたとみられる記載があることなどに照らすと,B16メモの記載から,被告人A3が,「償還できるような計画を作成しろ。」という指示を明言したものであると一義的にみることはできず,むしろ,その発言は診断班サイドのものだと思う旨の被告人A3の公判供述を容れる余地がある。そして,「利益率10パーセント確保できれば償還可能と見ている」といった,メモ中の診断班サイドのものとみられる発言については,前記(1)の各検察官調書にはいっさい記載がない。これは,「利益償還できるような計画の作成」というB16メモの記載を媒介として,各検察官調書において前記のとおりの供述が展開されているのと対照的である。検察官が,メモの記載を選別し,これを基にして県関係者の供述を導き出し,整合を図ったのではないかとみる余地が多分にある。 (3) また,B13が作成したメモ(甲103の添付資料1)に,「現時点で県ができることは限られている。」と記載されているとおり,土佐寮での協議においては,もっぱらI銀行への支援方針が確立されており,この段階では,I銀行にとって,もっとも有利な,融資を是とするに足りる資料を提示することが前提となって議論が展開されていたものとみられるから,このような見地に立って,「償還でき 方針が確立されており,この段階では,I銀行にとって,もっとも有利な,融資を是とするに足りる資料を提示することが前提となって議論が展開されていたものとみられるから,このような見地に立って,「償還できるような」という文言をみれば,B12が公判で供述するように,「返済関係の優先順位を考慮に入れた上で」という趣旨であるとみる余地も一概には排斥することができない。 (4) もっとも,当時の情勢をみるに,支援を期待できると見込んでいたM’からあっけなく断られ,方針を変更してI銀行に融資を依頼しなければならなくなり,C’が毎月の資金繰りにも窮して倒産の危機に瀕しているという状況下で,すでにメインバンクをおりて,C’の支援に消極的であると推測することができるI銀行に対し,その支援を依頼するため,償還計画を早期に準備すべきことは,動機の如何を問わず,C’を倒産させないという強い決意を有していた被告人A3の立場からすれば当然であり,かつ,計画の内容が,償還不能の結論であれば,もとよりI銀行等への依頼,説得に際し意味をなさないことは自明であるから,被告人A3の指示であるか否かを問うまでもなく,同協議の場で,償還可能な結論に達するように計画を策定した上でI銀行に支援を依頼することが共通認識として形成され,その後のB12ら診断班による償還計画の策定に際しての指針となったとみることはできる。しかし,前記(1)の各検察官調書には,「利益率10パーセントが見込めれば償還可能である。」という診断班サイドのものとみられる発言に関する説明が欠落しており,どのような見地に立って,このような発言がされるに至ったのか,ここに「償還可能」とは,あくまで数字の上で帳尻があっていれば足りるという形式的結論を指すのか,あるいは,診断班によるそれまでの検討結果を踏まえた上での,一定程度の専 うな発言がされるに至ったのか,ここに「償還可能」とは,あくまで数字の上で帳尻があっていれば足りるという形式的結論を指すのか,あるいは,診断班によるそれまでの検討結果を踏まえた上での,一定程度の専門性,合理性を伴った推測的判断を指すのかすら判然としない。少なくとも,診断班において引き続いて行った償還計画の作成が,被告人A3の「実質の伴わない数字上だけ償還できるような計画を作れ。」との指示によって,診断班の調査,検討がおざなりにされ,その内容がことさら実情とかけ離れたものに歪められたといった見方をするのは一面的に過ぎるというべきである。 3 診断班が策定した売上計画,償還計画の策定経過及び関係者への報告について(1) 検察官は,論告において,B12やB11が,被告人A3から表面上だけ貸付金の償還が可能となる内容の事業計画を至急作成するように指示したことを前提として,さらに,①調査期間もないことから,それまでC’側から提供されていた事業計画書等を基にすることとし,実際の調査は,C1やC4らに対する聴取程度しか行わず,その結果,B12らが作成した事業計画は,売上げについては,C’側が主張する不確実かつ過大な見込額を採用し,経費や材料費等についてもC’の実情を無視して殊更低く見積もっているものであり,高度化資金の返済を繰り延べる操作まで行って,辛うじて償還が可能となっているものであって,B12及びB11も事業計画の達成はほぼ不可能であると認識していた,②B12は,平成8年8月23日,同月26日ころの部内協議において,被告人A2及び同A3に対し,利益償還の可能性が見込めないことについて詳細に説明し,③副知事協議の際にも,楽観的なことを述べて,後日C’が破たんした際に自己の責任となることを回避するため,計画上は貸付金の償還が可能となっているものの, 可能性が見込めないことについて詳細に説明し,③副知事協議の際にも,楽観的なことを述べて,後日C’が破たんした際に自己の責任となることを回避するため,計画上は貸付金の償還が可能となっているものの,実際にはその達成がほぼ不可能であることを説明した,と主張する。捜査段階におけるB12及びB11の各検察官調書には同旨の供述があり,概ね,償還計画は「大嘘」であるとか「でたらめ」であるといった表現がされている。また,同月23日,26日の各部内協議及び副知事協議の参加者も,捜査段階で同旨の供述をしている。他方,公判廷においては,被告人3名は,異口同音に,B12から償還がほぼ不可能であるというような報告は聞いておらず,むしろ償還は可能である旨の報告を受けていたと述べ,B12及びB11も,大要,C1とC4に対するヒアリングを繰り返して,売上見込みを絞り込んで作成しており,経費についても,ことさら低く見積もってはいない,償還計画どおりの償還は厳しいが,平成8年度に必要な資金を賄うことができれば,平成9年度には単年度黒字に転換し,事業体として認知されるであろうと思っていたなどと,事業計画の達成がほぼ不可能であると認識していた点を否定する。もっとも,B12は,副知事に対する報告について,償還計画はすべて説明し,売上げが最大限の数字で,生地買いについて相当動く可能性が高いということははっきり申し上げた,表について単純な足し算,引き算の世界ですから,それが動いていって償還も相当厳しいというのは,ご理解いただけておると思ったなどとも供述している。 (2) 診断班による計画の策定は,経営流通課による再診断が方針化された西庁舎協議の後,短期間のうちに結論を出すことが事実上要求され,厳しい条件下で実施されており,また,信頼できる客観的資料に乏しく,診断班が,高度化資金の償 策定は,経営流通課による再診断が方針化された西庁舎協議の後,短期間のうちに結論を出すことが事実上要求され,厳しい条件下で実施されており,また,信頼できる客観的資料に乏しく,診断班が,高度化資金の償還を繰り延べるなどシミュレーションを繰り返しながら,何とか償還可能である内容の計画を立案したという面があることは否定できない。また,C1の背信的,計画的な見せ金等は判明していなかったとしても,C’の不健全な経営状態や不透明な経理状態,そこから窺われるC1の経営者としての自覚,資質の欠如等を考慮すれば,常識的に考えて,抜本的な債務整理等を講じないで経営体質,財務体質そのものを放置したまま,将来を見据えた確実性の高い計画を立案することは,客観的には極めて困難な状況にあったと考えられる。P’との契約も,平成8年8月1日に締結されたばかりで,受注の見込みは9月以降の展示会と,それに続く発注の段階にならないと判然としないという不安定な状態であって,その余の取引先について,C1らの述べる見込みの程度を確かめようにも,県が取引先に照会することによりC’の信用不安を引き起こすおそれがあって,客観的に確実な手法によって売上げ見込みを見極めることができない状態にあった。このような点に照らし,客観的に高度の信頼性が担保された償還計画の策定は,もともと困難であったとみるのが相当である。 しかし,B12やB11の各検察官調書には,同人らが策定した償還計画を評して,「C’の言いなりになったでたらめなもの」という表現がされているが,当初の高度化事業における共同施設事業計画においては,売上高が14億7840万円とされていたところを,6億5500万円にまで絞り込むなどしており,B12が公判廷で述べるとおり,診断班は,見込みのなさそうな取引先は計画には上げないとする方針をもっ ては,売上高が14億7840万円とされていたところを,6億5500万円にまで絞り込むなどしており,B12が公判廷で述べるとおり,診断班は,見込みのなさそうな取引先は計画には上げないとする方針をもって,相対的に確実性の高い取引先を選別するために,C1やC4に対するヒアリング調査を繰り返し行ったものと認められる。そして診断班は,ヒアリングによる絞り込みの後は,パターン1から最終案まで,年度ごとの売上高推移を一定させているところ,将来にわたる売上高の見込みは,もともと確実な裏付けを得づらい点を逆に利用すれば,その見込額を操作することによって,比較的容易に,償還可能である旨の結論を導くこともできるのであるが,診断班はそのような手段は用いていない。また,検察官は,平成8年度から2億円,5億円,4億円と推移するシーセイズの売上見込額について,公判廷で,B12に対し,「嘘の数字を並べたのではないか。」等と追及しているが,B11が公判廷で述べるように,ブランド事業のピークを考慮に入れて,平成10年度の額を前年度より下げていること,B12は,P’からの情報を基にした旨を明言しているところ,当時の新聞が,5年後に45億円の売上げを狙うなどと報道していることや,P’が知事の公約で誕生した株式会社で,当時,全国15の百貨店と販売契約の締結にこぎつけており,更に販路を拡大することがシーセイズ事業の課題だったと考えられることを考慮すると,P’から,工業振興課を介して,前記の売上高の推移について,一応の期待を抱かせるに足りる報告が診断班に寄せられていたと考えるのが自然である(この点について,B20は,公判廷において,曖昧な供述をしているが,償還計画がでたらめであるとして非難されている状況下で,工業振興課の情報提供が診断班の判断を誤らせたとされることに対する不安感が (この点について,B20は,公判廷において,曖昧な供述をしているが,償還計画がでたらめであるとして非難されている状況下で,工業振興課の情報提供が診断班の判断を誤らせたとされることに対する不安感が働いているとみる余地がある。)。また,償還計画では,人件費の増加や,I銀行による償還の繰延べ等を念頭においた内容となっている。これらの諸点に照らすと,策定された償還計画は,検察官が主張するような「C’の言いなり」になったものであるとはいいがたく,診断班は,それなりに収支の合理性を確保するという視点をもって計画を策定していたものとみるのが相当である。B12及びB11の各検察官調書では,売上高を絞り込んだ上で一定させたことなど,そのような意を用いた点についての記載がほとんどなく,「言いなり」とか「大嘘」等,一見分かりやすい反面,一面的な見方に流された記載が目立つのであるが,以上述べたところと前記2(2)とを併せ考慮すると,この点に関する前記各検察官調書の信用性は乏しいものというべきであり,検察官の,被告人A3の「数字だけでもいいから償還可能な計画を作るように」との指示に従わざるを得なくなった診断班が,「裏付けを伴わないでたらめな償還計画」を作成することを余儀なくされた,という見方は採用しがたい。 (3) 償還計画に関する報告について検討すると,診断班は,客観的には不十分な方法であったとはいえ,できるだけ合理的な内容の償還計画が策定できるように意を用いていたとみることができるのであり,「利益率が10パーセント確保できれば償還可能と見ている」という発言の真意は定かでないが,このような発言は,比較的前向きな見込みを持っていたことを推測させること,被告人A2が,B12に対し,「本当のところ売上げはどの程度大丈夫なの。」と融資することへの不安を隠せない様子で 定かでないが,このような発言は,比較的前向きな見込みを持っていたことを推測させること,被告人A2が,B12に対し,「本当のところ売上げはどの程度大丈夫なの。」と融資することへの不安を隠せない様子で尋ねているだけに,かえって,聞いただけで償還がほぼ不可能と分かるような報告がされていたとは考えがたいこと,直接貸し付ける方針を打ち出した被告人A3に対して,B13が異論を唱えたのも,主として他の企業への波及をおそれたからであって,参加者から,「貸し倒れになることが分かっているのに,なぜ貸し付けなければならないのか。」といった疑問等が出された形跡がないことなどをも併せ考慮すると,診断班が,償還がほぼ不可能であるといった論調で,3課長会議等で報告していたものとは認められない。B12はじめ,県関係者がそのように判断していたとすれば,I銀行への依頼は,まさに嘘を嘘と知りつつされたことになるが,その点について,本音と建前を使い分けた形跡も見当たらない。 また,副知事協議における協議内容について,捜査段階における出席者の供述は,概ね,B12の説明によれば,売上げは最大限で変動する見込みが大きく,償還がほぼ不可能である旨の内容であったなどとする点で整合しているところ,これも,前記のとおりの採用できない検察官の見方を前提として導かれている可能性の高い供述であって,整合しているからといって直ちに信用することはできない。被告人A1の検察官調書(乙4)中には,B12からの説明を受けて,事業計画に対する感想として,「数字を紙に書いたからといって,その数字を実現できるわけじゃあないよ。」という趣旨の発言をした旨の記載があり,これが検察官による誘導や押しつけによるものとは考えられないが,このような趣旨の発言は,検察官が主張するような,償還がほぼ不可能であるとの説明を ゃあないよ。」という趣旨の発言をした旨の記載があり,これが検察官による誘導や押しつけによるものとは考えられないが,このような趣旨の発言は,検察官が主張するような,償還がほぼ不可能であるとの説明を受けてされたものとは考えがたく,むしろ楽観的ともいうべき論調の報告があり,これに対し,被告人A1が率直な感想を言葉にしたものとみるのが自然である。また,被告人A3や診断班は,民間金融機関による借換えに安易に期待していた節があり,被告人A1は,「そんなにうまくいくわけがない。もっと借換え期限を延ばしとけ。」という趣旨の発言までしているのであり,これらからすれば,副知事協議の際に,診断班が償還はほぼ不可能である旨の報告をしたとは考えがたい。また,被告人A3が,自己の職責をかけつつ,診断班の計画策定も経ていることを根拠としながら,自ら作成したメモに基づいて説明をしたのにもかかわらず,B12が,それと抵触するような内容の意見を述べたとすれば,面前で意見が食い違っていることとなり,被告人A1は,その不一致について追及するなり問い質すなりするはずであると考えられるのに,そのような形跡は全くない。また,被告人A3の検察官調書(乙39,40)には,B12との間で,被告人A1には全てをわかってもらった上で判断を仰ごうという話になっていた旨の供述記載があるのに,被告人A3とB12が食い違う意見を述べたというのも不自然である。 (4) 以上の諸点を併せ考慮すると,診断班による償還計画の策定経緯や報告内容等に依拠して,被告人A3,同A2が償還能力が全くないなどと認識したものとはにわかに考えがたく,検察官がいうような,「被告人A1は,それまで同A2からC’の状況について逐次報告を受けていたこともあり,副知事協議の際のB12の説明を聞いて,C1らに高度化資金を詐取された経 にわかに考えがたく,検察官がいうような,「被告人A1は,それまで同A2からC’の状況について逐次報告を受けていたこともあり,副知事協議の際のB12の説明を聞いて,C1らに高度化資金を詐取された経緯があること,C’に債務の償還能力がないことなどを認識した」旨の主張も採用することができない。検察官は,償還が可能ということを前提としたというのであれば,B12の報告は当を得ていなかったこととなり,B12の報告,判断が副知事以下県幹部の判断を誤らせたという結論になって,B12に対する非難があったはずであるのに,後日,B12が叱責されたり,責任を追及されたりした形跡は全く窺われず,第2次貸付けの際にも,B12に償還計画の策定を委ねていることなどを根拠として,もともと償還が極めて困難である旨の説明があったのであると主張しているけれども,B12が非難された形跡がないとしても,立案のプロセスに関するB12の説明や当時C’が置かれていた状況を考えれば,償還計画のとおりに実現するにはC’側において相当な努力を要することが前提とされており,今後の見通しが予断を許さないものであることは,副知事協議に参加した者にとって,説明を待つまでもなく容易に推察できたものと考えられるのであって,検察官のこの点の主張は,以上の認定,判断を左右するものではない。 第9 同和対策事業におけるC’の位置づけ当裁判所は,前記第6,第7のとおり事実経過を認定したが,これを前提として背任罪の構成要件該当性を検討するのに先立ち,弁護人らの詳細な主張を踏まえ,国や県が行政に提示してきた同和対策,工業振興計画の方向性や,そのなかにおける,C’及び商工労働部の位置づけについて言及する。 1 就労対策についての国の指針昭和40年8月の同和対策審議会(以下「同対審」という。)答申(弁4)において, 業振興計画の方向性や,そのなかにおける,C’及び商工労働部の位置づけについて言及する。 1 就労対策についての国の指針昭和40年8月の同和対策審議会(以下「同対審」という。)答申(弁4)において,同和問題は,「日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造に基づく差別により,日本国民の一部の集団が経済的,社会的,文化的に低位の状態におかれ,現代社会においても,なおいちじるしく基本的人権を侵害され,とくに,近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという,もっとも深刻にして重大な社会問題である。」と位置づけられた上,同和地区住民に対して完全には保障されていない市民的権利,自由のうち,とりわけ「職業選択の自由,すなわち就職の機会均等が完全に保障されないことが特に重要である。」として,「同和地区住民に就職と教育の機会均等を完全に保障し,同和地区に滞留する停滞的過剰人口を近代的な主要産業の生産過程に導入することにより生活の安定と地位の向上を図ることが,同和問題解決の中心的課題である。」と指摘されている。また,国の地域改善対策協議会(以下「地対協」という。)は,昭和61年12月の「全国水準と比べれば,依然同和地区における不安定就労者や小規模零細企業の割合は高い」旨の指摘を経て(弁6),平成3年12月の意見具申(弁7)では,「物的事業が相当進捗し,これからは就労対策,産業の振興,教育,啓発等非物的な事業に重点をおいた施策の積極的な推進が重要な課題である」と述べ,さらに,平成8年5月の意見具申(弁8)においても,「実態調査の結果からみて,これまでの対策は生活環境の改善をはじめとする物的な基盤整備がおおむね完了するなど着実に成果をあげ,様々な面で存在していた較差は大きく改善された。しかし,高等学校や大 ても,「実態調査の結果からみて,これまでの対策は生活環境の改善をはじめとする物的な基盤整備がおおむね完了するなど着実に成果をあげ,様々な面で存在していた較差は大きく改善された。しかし,高等学校や大学への進学率にみられるような教育の問題,これと密接に関連する不安定就労の問題,産業面の問題など,較差がなお存在している分野がみられる。」との見解を示した。 2 B県同和対策審議会(以下「県同対審」という。)の答申等県同対審は,昭和45年3月に示した本答申(弁12)において,同和問題を「もっとも深刻にして重大な社会問題」として捉え,「その差別は,現在までの政治,経済,社会,教育等各般の行政体制が温存し,助長してきたものである。」,「B県のもつ地理的条件,産業経済等の条件の後進性も作用して本県の同和地区は,全国関係府県の同和地区の経済水準に比べて,きわめて低い状況にある。」等と指摘した上,諸々の事業項目について具体的な建言を述べ,「同和地区住民の市民的権利の完全な保障と,同和地区社会の社会的権利の保障が確立されることは,本県の政治史上,画筆されるべき大事業であるが,あらゆる困難を克服して,完成をしなければならない責務がある。そのためには,本答申に述べた事項を具体的に,各行政の部門別に明確な同和対策の目標のもとに位置づけ,県政の最重要施策として安定した方向で,しかも強力に迅速に計画的にすすめられるように,各種の措置を完了することが必須の要件であり,この点について本審議会は,今後も重大な関心を持つものである。」と述べたのをはじめ,昭和53年3月以降,平成8年12月までの間に4回にわたって意見表明や答申を重ね,就労対策と産業振興が県政の重要課題であるとの意見を繰り返し表明し(弁13ないし16),昭和63年10月に示した答申(弁15)において,地域商 年12月までの間に4回にわたって意見表明や答申を重ね,就労対策と産業振興が県政の重要課題であるとの意見を繰り返し表明し(弁13ないし16),昭和63年10月に示した答申(弁15)において,地域商工業の概要について,「本県の商工業の現況は,商品販売高で全国第44位,製品出荷額で第47位,製造工業生産指数でも最下位と,全国に比べて極めて低位な状況にある。(中略)なかでも,対象地域の現況は,雇用従事者の無い自営業主が多く,総体的に零細,小規模で,従事者の高齢化が進み,経営基盤の脆弱な状況となっている。(中略)対象地域住民の就労の場の確保,雇用の拡大,そして職業の安定を図るため,同和対策事業として共同作業場を作り,条件づくりに努めてきたところである。これら共同作業場は,県下25市町村,54箇所に設置され,縫製品のほか地場産品である硯や竹製品を生産し,対象地域の婦人を中心に1300名を超える従事者を数え,地域住民の生活の安定,向上に寄与しているところである。しかしながら,共同作業場において経営する企業は,そのほとんどが賃加工であり,更に経営体質は脆弱で,そのため景気変動の影響を受けやすく,経営は極めて不安定なものが多い。」,「従事者の85パーセントが縫製関係であり,女性向け就労対策に大きな効果を上げているが,今後においては対象地域内に失業者及び就労希望者がなお存在するという現状から,幅広い業種の誘致により,働く場の確保に努めるべきである。」とした上で,共同作業場については,県は市町村と一体となって産業の振興及び職業の安定対策を強力に推進すべきものとし,一層きめ細かな従業員研修の実施,各種就職援護制度のより積極的な活用,新規業種の企業誘致の実現等に努めるべきであるとされたほか,企業の振興のため,経営指導の充実強化を図るとともに,融資制度の効率的 一層きめ細かな従業員研修の実施,各種就職援護制度のより積極的な活用,新規業種の企業誘致の実現等に努めるべきであるとされたほか,企業の振興のため,経営指導の充実強化を図るとともに,融資制度の効率的な活用等による企業経営の近代化に向け,なお一層指導に努めるべきである,既存共同作業場の製品の販路の拡大に向け,なお一層企業を指導すべきである,同和縫製企業等の経営の安定と健全な発展を推進するため,共同作業場の県下的な組織活動をより促進していく必要がある,地域産業の育成対策の推進にあたっては,行政全般の中で対象地域の施策を正しく位置づけるとともに,共同作業場が地場産業として定着するよう,なお一層積極的な取り組みをすべきであるなどと指摘した。さらに,同答申は,就業の現状について,「本県の雇用失業情勢は,産業基盤が脆弱であることに加えて,今後,産業構造の転換,労働力の高齢化等,労働力需給を取巻く構造的変化が進展する中で,有効求人倍率が全国平均より相当低位な状況にあるなど,相変わらず厳しい状況下で推移しているが,とりわけ対象地域住民の就業実態は非常に厳しく,(中略)なお県下全体の平均的状況に比べて低位な状況に置かれている。」とした上で,対象地域住民の就業の機会そのものが著しく不足していると指摘して,「対象地域住民の雇用就業の場の拡大を図るためには,本県の脆弱な労働市場,特に対象地域住民の厳しい雇用就業の実態を十分に認識し,積極的な求人開拓等に努めるとともに,県の各種施策の積極的展開はもちろん,市町村の施策も踏まえた地域の産業振興対策との密接な連携等を図るなど,市町村をはじめ関係機関との協力が必要である。」と指摘した。平成8年12月に示した答申においても(弁16),商工業部門の振興について,とくに共同作業場を取り上げ,「共同作業場は,対象地域住民の働く 市町村をはじめ関係機関との協力が必要である。」と指摘した。平成8年12月に示した答申においても(弁16),商工業部門の振興について,とくに共同作業場を取り上げ,「共同作業場は,対象地域住民の働く場を確保することにより,その生活の安定に寄与することを目的に設置されたものである。(中略)平成8年4月現在約1150名が就労する場となっているが,中でも縫製関係の共同作業場には約830名が就労しており,対象地域の女性の安定就労の場として大きな役割を果たしている。」と述べつつ,現状について,「これらの縫製工場は経営規模が零細であることや,経済変動の影響を受けやすいこと等に加え,低廉な労働力を求めてのアパレル業界の海外進出に伴う廉価な輸入品の増加,加工賃に頼る経営基盤の脆弱性,従業員の減少と高齢化といった課題を抱え,取りまく環境は極めて厳しい状況にあり,縫製関係の38共同作業場のうち11共同作業場が閉鎖中である。」と分析し,今後の課題として,「就労の場の少ない本県にとっては,共同作業場は対象地域住民の雇用の場として重要な役割を担っていることから,現在推進されている経営指導,巡回相談事業や経営改善事業等の施策を,同和対策という視点だけでなく地域の産業おこしと雇用の場の確保という県政上の課題として位置づけて取り組むことが必要である。民間企業への行政の関与という問題もあるが,共同作業場は,その設立の経緯や目的など一般の民間企業とは性格が異なる側面もあることなどを配慮し,行政として積極的な支援を行うべきであると思慮される。」等とした上,「共同作業場の指導にあたっては,企業として育成するという観点に立ち,商工労働部門の管轄とすることが適当であると考えられる。なお,縫製工場の新たな動きとして,平成6年度に県内の5企業(うち,3企業が共同作業場を利用する企業) は,企業として育成するという観点に立ち,商工労働部門の管轄とすることが適当であると考えられる。なお,縫製工場の新たな動きとして,平成6年度に県内の5企業(うち,3企業が共同作業場を利用する企業)がその体質強化を目指して協業組合を設立し,国の地域改善対策高度化資金を活用して新しく生産,物流の拠点となる共同施設の建設を行っている。この協業組合では従来の加工賃に頼る下請けだけではなく,自社ブランドの開発と販売も目指しているが,この取組みは今後の縫製工場のあり方のモデルとして評価すべきものであり,注視していく必要がある。」,「縫製関係以外も含め,現在閉鎖中の13共同作業場への対応については,設置者である市町村とともにその閉鎖に至る経緯や地域の実情を的確に把握し,再開に向けて最大限の努力を払うべきである。」等と述べている。 3 B県工業振興計画平成5年,県議会の産業経済委員のほか,産業界の代表者や学識経験者等で構成される,B県中小企業基本対策審議会の答申を受けて,県は,平成12年までを計画期間とする「B県工業振興計画」を策定し(平成8年3月一部改訂),「基本計画」(弁55)において,今後の県における工業発展の基本方向を示し,その目標を達成するために必要な施策を明らかにした。そのなかで,「競争力のある企業の誘致」や「ベンチャー企業等成長性の高い新たな産業の創出」等のほか,「県内企業の競争力を強化する」という指針の下で,地域中小企業について,「多くの企業は生業的な中小零細企業であり,しかも経営基盤が脆弱で下請けを主とした経営形態であり,自社製品,技術を持ち独自の販売体制を確立している企業は少ない。しかしながら,様々な分野や段階において本県工業を支えている基盤であり,工業の振興の発展を図るうえで重要な役割を担っていることから,今後ともその振興は不 持ち独自の販売体制を確立している企業は少ない。しかしながら,様々な分野や段階において本県工業を支えている基盤であり,工業の振興の発展を図るうえで重要な役割を担っていることから,今後ともその振興は不可欠である。」とした上で,振興に必要な条件の一つである経営体質の改善を図るため,経営の近代化の促進,資金力の強化,企業自立化の促進が必要であるとし,資金力の強化に際しては,新技術への対応,高付加価値製品の生産や省力化設備の導入など設備の近代化を促進するため,金融機関等と連携しながら長期,低利の資金の調達等を通じて企業の経営体質の強化を促進するものとし,具体的には中小企業高度化資金の貸付けの実施,企業ニーズに応じた県単独融資制度の拡充を図っていくことが示されている。さらに,「推進のための具体的方策」(弁56)においては,産業別ごとに課題として目指すべき方向及び主要な施策が示されているが,「繊維,衣服その他の繊維製品製造業」の項において,「繊維,衣服産業では普及量産品を中心に生産の海外シフトが進む一方,消費の多様化,流行に迅速に対応できる生産供給体制の構築を進め,また機能性繊維などの新素材や新加工技術の開発が活発化しており,製品の企画機能をもたない下請体質の企業には厳しい状況である。」と分析した上で,目指すべき方向として,「技術の高度化への取り組みや生産設備の充実による生産性の向上を図り,共同受注の促進により安定的な受注量を確保するとともに,企画,デザイン力の強化によりオリジナル商品の開発など企業の自立化,特色づくりを促進することが重要である。」,「多品種,小ロット,短納期化に対応できる体制に転換し,アパレルメーカーや小売との連携を強化し,ファッションの流れに即時に対応できる体制の構築を図る。」等とされている。 4 以上のような答申等の動向に照ら 種,小ロット,短納期化に対応できる体制に転換し,アパレルメーカーや小売との連携を強化し,ファッションの流れに即時に対応できる体制の構築を図る。」等とされている。 4 以上のような答申等の動向に照らすと,県行政に対し,対象地域の就労対策と産業振興が施策遂行上の義務として位置づけられていただけでなく,同和縫製業に対し,また,直接的表現こそ避けられているものの,賃加工型の下請け企業から,多品種,小ロット,短納期化等に対応可能な高付加価値型縫製業への体質転換を図るという方向性を掲げるC’の構想に対し,積極的な支援を行うべきことが,公的に要請されており,中小企業を所管する商工労働部には,C’を積極的に支援すべきことが求められていたものとみることができる。また,被告人A1の公判供述にもあるとおり,県による同和対策は,従前の物的給付事業から,就労環境等の整備事業へと方針の転換が図られており,物的給付に代えて,就労環境整備を促進するとの動きになっていたものと認められる。被告人A1の弁護人がいう,「雇用の場の創出のための施策は個人給付事業廃止の受け皿としても不可欠のものであった。」との主張は十分理解することができる。これに加え,B県工業振興計画においても,平成5年以降,前記のとおりの指針が提示されていたことを併せ考慮すれば,県下において,大規模な就労の場を提供し,産業力の強化を図ることに資する企業を保護育成することには,就労の場を確保し,地場産業を育成するとの目的を達成するという面において高度の公益性があるというべきであり,そのような行政上の施策を講じることは,経済面での支援というかたちをとる場合でも,直ちに行政の公平性や中立性に反するということにはならないものと考えられる。 本件各貸付けの性格を検討するに際しても,同和対策事業や工業振興対策におけ 経済面での支援というかたちをとる場合でも,直ちに行政の公平性や中立性に反するということにはならないものと考えられる。 本件各貸付けの性格を検討するに際しても,同和対策事業や工業振興対策におけるC’の位置づけと,商工労働部に対して公的に要請されていた社会的な情勢の推移を重視する必要があるというべきであり,単なる一民間企業に対する貸付けである,という側面だけを強調して捉えることは相当でないというべきである。なお,C1らは,県に依存する体質から脱却できず,むしろ安易な依存を深め,県から高度化資金を詐取するまでに至っており,結局のところC’の経営陣には,このような理念を達成するに足りる経営能力がほとんど備わっていなかったものであって,今になってみれば,県内縫製業の保護育成に関し,C’を念頭において示された答申や工業振興計画に対し,実態にそぐわないものがあったとの批判は可能であるが,その当時においては,権威ある機関により,答申等のかたちをとって前記のような指針が公にされていたのであり,このことは,商工労働部のC’に関する対応を検討するに際し,基本的な方向性を示すものとして,十分に重視しなければならない。 第10 任務違背について以上のとおりの事実経緯等を前提として,本項では,背任罪の成立要件の一つである任務違背の有無について検討を加える。 1 本件貸付けの予算執行上の適法性について本件貸付けは,「中小企業金融対策費」という目のなかの細目事業である「中小企業対策事業費」から支出したもので,本件貸付けそれ自体については,事前にも事後にも議会の議決ないし承認,議会への報告を経ていない点は証拠上明らかであるが,検察官は,これが議会の議決を潜脱するものとして違法である旨を主張するのに対し,被告人A1及び同A3並びに各弁護人らは,議会の議決が 議決ないし承認,議会への報告を経ていない点は証拠上明らかであるが,検察官は,これが議会の議決を潜脱するものとして違法である旨を主張するのに対し,被告人A1及び同A3並びに各弁護人らは,議会の議決が要求されるのは,歳出予算の款及び項であり,目以下は議決科目ではなく(地方自治法216条),流用が禁止されるのは,各款の間又は各項の間においてである(同法220条2項),本件で流用した中小企業対策事業費は,目に区分されているから,違法の問題は生じないと主張している。予算執行上違法の点があるからといって直ちに背任罪における任務違背が肯定されるわけではないが,これを基礎づける一つの重要な事情とはなり得るので,以下検討を加える。なお,被告人A2の弁護人は,議会の議決を受けることは背任罪における任務を構成しない旨をも主張しているところ,議会の議決さえ受ければ,どのような場合でも背任罪は成立しない,ということができないのはそのとおりであるけれども,行政機構において公的財産の支出に関与する者には,適正な財産支出のために議会の議決を要求した趣旨に則り,議会の議決を経た予算の定めるところに従いこれを支出すべき義務があるというべきであり,これがおろそかになれば,議会財政主義の理念に背馳するというだけでなく,恣意的な公金流出を招いてそれだけ県に財産的損失が及びかねないのであるから,その義務は,背任罪における任務の構成要素となり得るものと解するのが相当である。 (1) 地方自治法96条1項2号は,「普通地方公共団体の議会は予算を議決しなければならない」と,同法211条1項は,「普通地方公共団体の長は,毎会計年度予算を調製し,年度開始前に議会の議決を経なければならない」とそれぞれ規定し,その趣旨が,住民の租税負担を基礎とする公金の支出について,議会の統制下におくことで, 「普通地方公共団体の長は,毎会計年度予算を調製し,年度開始前に議会の議決を経なければならない」とそれぞれ規定し,その趣旨が,住民の租税負担を基礎とする公金の支出について,議会の統制下におくことで,公金支出について民意を反映させるとともに,行政裁量名下の濫用的な公金支出を大局的見地から抑止しようというものであることは多言を要しない。本件予算流用の適法性を検討するに際しても,議会財政主義の理念に即して行わなければならない。 (2) 検察官は,中小企業対策事業費は,県内中小企業の安定と産業の振興を図る趣旨の下,必要な事業資金の融資原資の一部を県がN協会に貸し付け,同協会はそれを金融機関に預託し,国及び金融機関と協調して長期,低利な資金を供給する制度(以下「協調融資」という。)に基づいて支出されることが前提となっていた旨を主張しているところ,関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。 ア予算議決過程において,本議会に先立つ委員会において,執行部局から説明があり,そこにおいては,執行部局からの配付資料,これに基づく担当部局長からの説明のほかに,予算の実質的な内容を把握する方途がないことに照らすと,事前の配付資料の記載内容や担当部局長の説明が,議会が予算を適切に議決するために有する意義は大きいというべきところ,平成8年2月21日に開かれた,平成8年度当初予算等に関する,産業経済委員会での事前説明会において,商工労働部が作成し提出した「平成8年2月B県議会定例会提出予定議案事前説明会説明資料」には,目に区分された「中小企業金融対策事業費」に260億5178万円が計上され,説明部分には,「中核企業育成,起業化等県内企業に必要な事業資金の融資原資の一部を金融機関に預託し,国及び金融機関と協調して長期・低利な資金を供給し,経営の安定と産業の振興を図る 8万円が計上され,説明部分には,「中核企業育成,起業化等県内企業に必要な事業資金の融資原資の一部を金融機関に預託し,国及び金融機関と協調して長期・低利な資金を供給し,経営の安定と産業の振興を図る。」と記載されており,同説明会においてこれに反する説明がされた形跡はない。そして,定例議会後である同年3月13日に開催された産業経済委員会においても,B5商工労働部長が,前記事前説明会で報告した内容に沿って,あらためて出席者に対し説明した上,被告人A3が,委員からの,平成8年度の県単独融資制度の当初予算が減額になっていることを危惧し,不足した場合には補正予算で臨機応変に対応するのかという趣旨の質問に対し,「制度そのものを緩和するというわけにはいかないが,N協会ともども,制度の範囲内で積極的にやっていきたい。」と答弁しており,これはN協会の介在する協調融資制度を前提としつつ,積極的支援を進める方針を示したものと考えるのが相当である。被告人A3は,他方で,議員からの,弾力的に運用しないと銀行と同じで制度存在の意味がない旨の指摘に対しては,「現在は資金力や担保力がなくても将来は伸びてくるということなら,無担保でも貸すことにしている。」旨を答弁しているが,これは,担保徴求の程度に関する答弁であり,協調融資が前提となっていることに変わりはない。また,平成8年度当初予算中の目に区分された「中小企業金融対策事業費」にも,260億5178万円(うち一般財源は60億8320万円)が計上され,これにつき,前同様の説明がされている(甲7,9ないし15)。 また,平成9年2月20日に議会定例議案事前説明会が開かれ,被告人A2及び同A3らが出席した際には,中小企業金融対策事業費に関して新規事業の「(新)・人にやさしいまちづくり融資(予算額1億6666万7000円)」の説 20日に議会定例議案事前説明会が開かれ,被告人A2及び同A3らが出席した際には,中小企業金融対策事業費に関して新規事業の「(新)・人にやさしいまちづくり融資(予算額1億6666万7000円)」の説明には,地域産業パワーアップ制度に関する説明がなく,「平成9年度当初予算主要項目」中の中小企業対策事業費の説明では,主要項目欄に「中小企業金融対策事業費新人にやさしいまちづくり融資」の説明に,同制度の説明は掲げられていない。同年3月13日に開催された産業経済委員会では,被告人A2,同A3らが出席して,県単独融資制度について,被告人A2から協調融資である旨の簡単な総括説明がされた後,被告人A3は,産業経済委員会資料に基づいて,商工労働部の新規,重点事業として,人にやさしいまちづくり融資を説明したにとどまり,地域産業パワーアップ制度に関する詳しい説明は行っておらず,中小企業対策事業費の枠内に,同制度が新規事業として創設されている旨は何ら明らかにされていない(甲187ないし193)。 イまた,平成10年1月20日に開催された平成8年度決算特別委員会で,被告人A2は,配付資料に基づき,「中小企業対策事業ですが,これは,県単独の融資制度の実施に要した経費で,(中略),この制度は,県から貸付原資をN協会に貸し付け,N協会がその原資を金融機関に預託し,金融機関の貸付利率の低減を図る仕組みとなっております。」等と説明し,平成10年3月17日の産業経済委員会でも,「中小企業者を対象にしました県単の融資制度に係る予算です。」と説明している上,平成11年1月20日に開催された平成9年度決算特別委員会においても,被告人A2は,配付資料に基づき,「中小企業金融対策事業費でございますが,これは県単独の融資制度の実施に要した経費でございまして(中略)この制度は,県 に開催された平成9年度決算特別委員会においても,被告人A2は,配付資料に基づき,「中小企業金融対策事業費でございますが,これは県単独の融資制度の実施に要した経費でございまして(中略)この制度は,県から貸付原資をN協会に貸付けを行いまして,N協会がその原資を金融機関に預託して,金融機関の貸付利率の低減を図る仕組みとなっております。」,「N協会を通じて金融機関に融資原資を預託し民間金融機関及び政府系金融機関による融資を補完する低利,長期の設備資金及び運転資金を供給するなど,事業者の経営の安定と産業の育成に努めました。」との報告をしている(甲194)。 ウ以上の客観的事実に加え,複数の年度にわたって産業経済委員の経歴を有する県議会議員らが,ひとしく中小企業金融対策事業費は,予算の範囲内でN協会に資金を貸し付け,同協会が金融機関に資金を預託した上,金融機関が企業に融資する際の同協会に対する貸付原資であるとの説明を受けていた旨を供述していること(甲7ないし11,14,15,187ないし189,191ないし193)などにも照らすと,中小企業金融対策事業費は,協調融資の原資として用いられることを前提として,議会の議決を経て予算化されていたとみるのが相当である。被告人A3の弁護人は,中小企業金融対策費という目には,細目事業として,直接融資の形態の貸付原資となるべき「中小企業近代化資金助成事業特別会計繰出金」等も含まれていることを根拠として,この目には,間接融資か直接融資かを問わず,県の中小企業を対象とした金融対策に係る予算を計上するほか,主として個人向けの消費者金融である貸金業対策に至るまで,幅広い金融対策関連の予算を計上し,執行するものとして区分されているなどと主張するが,前記のとおりの商工労働部の事前説明等に照らしても,260億円余りが計上さ 消費者金融である貸金業対策に至るまで,幅広い金融対策関連の予算を計上し,執行するものとして区分されているなどと主張するが,前記のとおりの商工労働部の事前説明等に照らしても,260億円余りが計上されている中小企業金融対策事業費を,全面的に執行部の裁量的判断で協調融資以外の貸付けに使用できるものとして議会が議決しているとは考えられず,直接融資の形態を採る他の細目事業が存在しているからといって,このような形式論に左袒することはできず,採用の限りでない。 (3) さらに,協調融資の場合であれば,県はN協会に対して貸付けを実行し,年度末にいったんその返済を受け,次年度予算に再度貸付けを実行するかたちをとる一方で,金融機関が中小企業との間で長期償還を前提とした融資に及ぶにしても,県の相手方はあくまでN協会であり,県に対する返済はほぼ確実である。しかし,県が企業に対し直接に貸し付ける場合においては,県が直接負担する貸倒れの危険は,協調融資の場合に比して格段に大きいことが明らかであって,中小企業金融対策事業費の直接貸付けへの流用は,事後に速やかに議会に対して報告されることを前提として,特段の必要性があり,補正予算を組む時間的余裕がないことなど特別の事情がある例外的な場合に限って,合法的な財務会計行為とみる余地があるにしても,本件貸付けは,①資金ショートを起こすほど財務状態が悪化している団体に対するものである上,貸付額が10億円余り(第1次),2億円(第2次)という高額であること,②形式的には翌年3月31日を償還期限とする短期貸付けの形態をとっているものの,実質的には同日における償還が予定されていない上,年度毎の抜本的見直しも格別想定されていないことに照らし,実質は純然たる長期貸付けというほかなく(この点につき,被告人A1及びその弁護人は,「転がし」は 的には同日における償還が予定されていない上,年度毎の抜本的見直しも格別想定されていないことに照らし,実質は純然たる長期貸付けというほかなく(この点につき,被告人A1及びその弁護人は,「転がし」は単年度融資であって,長期貸付金契約ではなく,県が対象企業の将来に見切りをつければ,歳入欠陥が発生することもやむなしとして,金融機関に一日融資を要請しないだけのことで,対象企業にとっては,毎年償還期日が到来する上,融資を受けられなくなったり,融資を減額される危険があるだけ,経営意欲が増し,県による経営指導等の効果が上がるのだから,むしろ長期貸付契約に比べて効果的であるなどと主張するが,一般論としてはともかく,本件貸付けにおいて,そのような効果を期待していた節は見受けられず,長期貸付けとしての性格を否定することはできない。),債権管理の面や担保価値の変動等の点にわたって,不安定な要素をはらむこと,③一般財源が必ずしも潤沢でない県財政を考慮すれば,毎年度ごとの償還が前提となる特定財源によらざるを得ず,年度末に償還されなかった場合,歳入欠陥に直結し,一般財源による欠陥填補を余儀なくされるのであり,それを回避するためには,「転がし」と称される,毎会計年度末,金融機関の協力を求め,これにC’に対する1日限りの融資を実行させ,これを基にC’がいったん県に返済し,翌会計年度初めに新年度予算をもって,直ちにC’に対する新規貸付けを行う一方で,C’が金融機関に融資金を返済するという手法を用いざるを得ないこと,以上のような特徴を有しており,これらを考慮すると,公金保全の見地からみて余りにも問題が多く,C’の倒産を回避することの必要性,緊急性を考慮しても,議会による審査の機会が失われている点は看過することができず,流用が許容される特別な事情があるとはいいがたい。 ( からみて余りにも問題が多く,C’の倒産を回避することの必要性,緊急性を考慮しても,議会による審査の機会が失われている点は看過することができず,流用が許容される特別な事情があるとはいいがたい。 (4) そうすると,本件貸付けに係る予算の執行は,議会の統制のらち外にあり,地方公共団体の長の予算執行権の範囲に属する財務会計行為とみることはできず,違法の瑕疵を帯びるというべきであって,地方自治法の形式的解釈により合法視できるものではない。予算上問題がない旨の被告人らの主張は採用の限りでない。 なお,被告人A1は,供述書において,かかる措置を違法とすることは,行政を不当に束縛する旨を主張するが,その見解は,行政を優越視して,公金支出過程における議会の果たすべき審査機能を不当に軽視し,ひいては住民意思をも軽視するもので,多様な行政目的を実現するために,いかに民意を反映しつつ公金を適正に支出するかという点についての配慮を欠いたものであるといわざるをえない。また,被告人A3は,本件流用がどのような法令に違反しているのか未だに分からない,中小企業金融対策事業費という細目事業に県が企業に直接貸す予算を計上してはいけないなどという取決めは全くないなどと供述するが,議会による予算審査の重要性にかんがみれば,明示的に禁止されていないから許容されるという理屈は成り立たず,積極的に許容されたものを支出することができる,と解するのが相当である。 2 もっとも,議会の統制のらち外にある貸付けに及んだ場合であっても,これをもって直ちに背任罪における任務違背が認められるわけではなく,実質的に,県との信任関係に違背したとみられるべき事情について,更に考察を加える必要があるけれども,検察官は,被告人3名には「十分な調査をした上で」,「確実かつ十分な担保を徴求して」貸付けに及ぶ ,実質的に,県との信任関係に違背したとみられるべき事情について,更に考察を加える必要があるけれども,検察官は,被告人3名には「十分な調査をした上で」,「確実かつ十分な担保を徴求して」貸付けに及ぶべき任務があった旨を主張し,弁護人らは,地方公共団体による中小企業に対する貸付けの際には,民間金融機関における場合と異なり,ある程度償還可能性についての判断が緩やかに運用され,徴求すべき担保の審査も緩やかに運用されてきた実情がある,形式的に「確実かつ十分な」担保を徴求していては,地方公共団体による中小企業に対する融資制度の存在意義が失われる,検察官の見解は,民間金融機関と地方公共団体との性格的相異を等閑視するものであって不当であるなどと主張するので,この点に関する判断の前提として,地方公共団体の職員が金員を貸し付けるに際しての一般的な任務についてまず検討を加える。 (1) 地方自治法240条2項は,普通地方公共団体の長は,債権について,政令の定めるところにより,その督促,強制執行その他の保全及び取立てに関し必要な措置をとらなければならないと定め,これを受けて地方自治法施行令171条の4第2項は,「普通地方公共団体の長は,債権を保全するため必要があると認めるときは,債務者に対し,担保の提供(保証人の保証を含む。)を求め,又は仮差押え若しくは仮処分の手続をとる等必要な措置をとらなければならない。」と規定する。さらに,B県財産規則113条は,「債権の管理に関する事務は,法令の定めるところに従い,債権の発生原因及び内容に応じて,財政上最も県の利益に適合するように処理しなければならない。」と規定し,B県財産規則の施行について(依命通達)第4の3(1)は,債権管理の基準として,とくに留意すべき点の一つとして,「債権の保全,取立て,内容の変更及び消滅に関する 処理しなければならない。」と規定し,B県財産規則の施行について(依命通達)第4の3(1)は,債権管理の基準として,とくに留意すべき点の一つとして,「債権の保全,取立て,内容の変更及び消滅に関する事務は,法令の定めるところに従い,債権の発生原因及び内容に応じて財政上もっとも県の利益に適合するよう処理すべきことを明定し,他の行政上の利益ないし他の行政上の配慮に優先して,考慮すべきものであるとされていること。」と規定している。加えて,「制度資金等貸付契約書の標準書式について(通達)」中の「資金貸付契約に係る標準書式の取扱要領」8項には,「貸付金債権を保全するため必要があると認めるときは,確実な担保(保証人の保証を含む。)を提供させるものとし(以下略)」と規定されている。 地方公共団体の行う貸付けであれば,公益性,政策性が付随するのが通常であると解されるが,これらの規定に照らす限り,地方公共団体の行う貸付けといえども,補助金と異なり貸付金として公金を支出する以上,貸付先の資力等を調査した上,担保を徴求するなどして,償還を確実にするに足りる措置を講じるべきことが当然の前提とされていると解するのが相当であり,その職員に対して,償還が合理的に期待できる措置を講じるべき義務が課せられているものと解される。そして,地方公共団体の貸付財源がひとしく租税負担等に由来する公金であることの重みを考えると,この理が貸付時に妥当しないと解すべき理由はない。なお,実質的内容が同和対策である場合の高度化資金貸付けにあっても,関係法規によって,債権の適切な回収が図られるように,担保価値の算定,審査等の様々な対策が規定されていて,そこに同和対策名下に公金が安易に流出することを防止する趣旨を読み取ることができる上,「地域改善対策高度化事業の運用について」と題する中小企業 に,担保価値の算定,審査等の様々な対策が規定されていて,そこに同和対策名下に公金が安易に流出することを防止する趣旨を読み取ることができる上,「地域改善対策高度化事業の運用について」と題する中小企業長官通達(甲25)でも,事業の要件として「現に高度化資金の不正使用,返済の延滞等が生じている者の参加する事業でないこと」とされており,貸付けに際しては,債権の保全を確実にするように努め,そのために講じるべき措置として,B県中小企業高度化資金貸付規則6条において,「申請者は,貸付けを受けるに当たっては,知事が適当と認める連帯保証人を立て,及び担保を提供しなければならない。」と規定されており(甲27),同和対策事業の一環として実行される貸付けであるからといって,償還能力についての調査義務や担保徴求義務が軽減されているわけではない。 (2) しかし,弁護人らが主張するとおり,利潤の追求を本旨とする民間金融機関と,公益の多元的な確保を本旨とする地方公共団体が行う貸付けとの間では,団体の存立理由の相違に由来する性格の違いがあることは否定できず,貸付けの性格を考慮せずに,貸付担当者に対して,常に前記のとおりの厳格な義務が課され,これに少しでも違背すれば背任罪における任務違背を構成するとすれば,行政作用の萎縮効果を招き,民間金融機関の融資を受けられない社会的弱者を救済できなくなるなど,大局的な政策的見地からして,かえって相当でない結果を招くおそれもある。そこで,個々の貸付けが背任罪における任務違背に該当するか否かを検討するに際しては,①公益性の強弱,②担保徴求の有無,程度を含めた上での回収困難に陥る蓋然性の大小,③当該貸付け行為の必要性,緊急性等をも相関的に考察して,個別的,具体的に判断する必要がある。倒産を回避するための貸付けについてみれば,貸付けの対象 ,程度を含めた上での回収困難に陥る蓋然性の大小,③当該貸付け行為の必要性,緊急性等をも相関的に考察して,個別的,具体的に判断する必要がある。倒産を回避するための貸付けについてみれば,貸付けの対象となる事業が存続することについて,一企業の便益に止まらない公益性があり,かつ,倒産を回避するための手段として,地方公共団体が貸し付ける他に,適切な手段がなく,放置すれば公益性の強い事業が廃止になることが予測される場合においては,例外的に県による直接の貸付けが許容されることがあるというべきである。このような場合には,貸付先の財務状態や倒産の危機に陥った理由等について可能な限りの調査をした上で,その財務状態を改善するために県が直接貸し付けること以外に講じることのできる方策の有無,内容等も踏まえて十分,事業が存続する可能性について検討する必要がある。そして,そのような検討の結果,地方公共団体の貸付けによって企業が現在の倒産の危機を脱し,その事業が存続していくことを合理的に期待できる場合には,事業の改善発展に伴う貸付金回収の蓋然性にある程度の困難が見込まれ,また,貸付け時点において必ずしも確実かつ十分な担保を徴することができなかったとしても,その貸付けは,背任罪における任務違背に該当しないものとするのが相当である。なお,検察官が任務違背の根拠として援用する意見書(甲185)及び元Z県知事の見解(甲186)は,一般的な法規の解釈のかたちをとっているとはいえ,被告人3名がC1らによる詐取行為を認識していたことや償還可能性がないことを知悉していたことなど,検察官が主張する事実関係を所与の前提とし,政策的な緊急支援融資としての性格が考慮されていないものであり,また,必ずしも背任罪における任務違背の有無にまで詳細に踏み込んで検討されたものではないから,一般論と 張する事実関係を所与の前提とし,政策的な緊急支援融資としての性格が考慮されていないものであり,また,必ずしも背任罪における任務違背の有無にまで詳細に踏み込んで検討されたものではないから,一般論としての当否はともかく,本件貸付けにおける任務違背を考えるに際して,これらを絶対的なものとみるのは相当でない。 (3) 本件では,前記のとおり,同対審等が繰り返し提示してきた指針を考慮すれば,C’の事業が継続されることにつき,同和縫製事業を維持して,地域における就労の場を確保する,地域産業の振興を図るといった相当に大きな公益性があったものと認められ,県が貸付け策を講じなければ,C’は倒産し,事業が廃止に追い込まれて,同和地域において400名を超える大量の失業者が発生することが見込まれる状況下にあったものといえ,そのような事態は,前記指針に明らかに反するものと考えられる。 ところで,C’は,二度にわたって総額14億円余りもの高度化資金の貸付けを受けていながら,事業開始後間もなく資金ショートを起こしており,財務体質に相当問題のあることは明らかであり,倒産の危機に直面するに至った重大な要因として,再三にわたる県やE事業団の指導や勧告を無視して,巧妙な手口を用いて増資を仮装するなどしたために,事業計画の円滑な実施を可能にするに足りる財務状態に初めからなかったことを指摘することができる。そのような背信行為に及んだC1が,約束に従って誠実に償還する意思があったとは考えられず,このような,C1の放漫ともいえる経営態度を抑止することができなかったC’の理事や監事らがその地位に止まることを含め,従前の経営体制が維持される限りは,高額の融資を実行しても,それは自転車操業の一環として目前の運転資金に充当され続けるだけのことであって,財務状態の抜本的な建直しは相当に困 地位に止まることを含め,従前の経営体制が維持される限りは,高額の融資を実行しても,それは自転車操業の一環として目前の運転資金に充当され続けるだけのことであって,財務状態の抜本的な建直しは相当に困難な状況にあったことは,事後的に振り返ってみれば,客観的に明らかである。また,縫製業の実態を直視すれば,新工場が完成し,最新鋭の設備が導入されていたにしても,従業員には,これに対応するに足りる技術力がなく,従業員の高齢化や受注管理能力の乏しさに由来する納期の遅れといった諸々の問題点を抱えており,従業員の勤労意欲の点からも,欠勤が多く,生活保護費の受給要件を充たすために労働時間を減らす従業員もいるという実情があるなど,その財務体質,運営能力に伏在していた多くの問題点を指摘することができる。これらを考慮すると,すでに第1次貸付けを検討していた時点において,C’の経営再建のためには,単に資金を投入すれば足りるというものではなく,経営体制の刷新や債務の整理等の抜本的な対応策を講じる必要があったというべきである。事後的に,かつ,客観的にみれば,そのような措置が講じられないままに,C’に対して10億円を貸し付けたからといって,償還計画が前提とする10年間での償還が可能になるという見込みはほとんどなく,民間金融機関による支援を期待できる程度に至るまで業績が浮揚する可能性にも乏しく,C’の事業の存続を合理的に期待できるような状況にはなかったものといえ,回収が困難になる蓋然性が大きかったものと認めるのが相当である。これらを考慮すると,C’が平成9年にも資金ショートを起こし,その後も業績が改善することなく,操業停止に追い込まれ,県による貸付金の回収が著しく困難となっていることも,特異な事情によるものではなく,自然の成り行きであったとみるのが相当である。 なお し,その後も業績が改善することなく,操業停止に追い込まれ,県による貸付金の回収が著しく困難となっていることも,特異な事情によるものではなく,自然の成り行きであったとみるのが相当である。 なお,被告人3名は,償還計画を根拠として,償還は可能であった旨を主張しているけれども,診断班が確実性を高めるべく一定の努力をしたこと自体は認められるものの,それは主観的なものに止まり,時間の余裕がなかったこともあって,C’が陥っている危機的状況の原因についての十分な検討を経ないまま,もっぱら将来にわたる収支を中心とする計数的側面に着目して策定されたものであり,P’によるシーセイズ事業の売上げに依存するところが大きい上,診断班が意識したかどうかはともかくとして,売上高の経常利益率が,平成8年度はマイナス19.71なのに,翌平成9年度にプラス8.7,平成14年度にはプラス16.52と全国平均を遙かに上回る数値になっていたり,経常利益が赤字から黒字に劇的に変化するといった内容になっているのであって,不合理な点をはらんでいることは否定できず,このような償還計画に依拠して,客観的な償還可能性を認めることはできない。被告人3名の供述中には,償還計画に沿った償還が「絶対不可能ではない」とか,「ゼロではない」とかという言葉が登場するが,もとより将来にわたる計画である以上,絶対に達成不可能であるとか,絶対に大丈夫だなどということができないのは当然のことであって,今現在資金繰りに窮している企業が,そのままの経営体制を維持して,10億円を超える長期貸付金を計画に沿って償還することができるようになるものとは常識的にも考えがたい。また,B12が,公判廷で,「計画は,原則,利益償還でやっていくということですけども,5年か6年たったら,順次減らした場合は金融機関のほうへ借換えを とができるようになるものとは常識的にも考えがたい。また,B12が,公判廷で,「計画は,原則,利益償還でやっていくということですけども,5年か6年たったら,順次減らした場合は金融機関のほうへ借換えをさしていくという,基本的な考え方を持っておりました。」と述べ,副知事協議においても,借換えの方針についてB12から言及されており,その他,商工労働部のI銀行に対する働きかけの経緯に照らすと,被告人3名は,ひとまず同銀行に転がし融資を継続するのに不可欠な一日融資を依頼し,いずれ業績の改善をまって,同銀行に借換えをさせて県として償還を受けることを意図していたものと考えられる。しかし,いかに県のI銀行に対する強い影響力の下に,同銀行がなるべく県の意向に沿う方向で対応しつつあったとはいえ,県による貸付けがC’の業績に与える効果を十分把握することができないこの段階では,同銀行の積極的協力が得られる蓋然性が見込まれるような状況にはなかったものと認められるのであり,将来的には同銀行のある程度の協力が期待できたとしても,客観的には,C’が従前の経営体制を基本的に維持するという前提では,その業績が順調に改善される見込みは高いとはいえず,貸付金を約定どおり回収することは相当困難であったものとみるべきである。 (4) さらに,第2次貸付けの際には,第1次貸付けにもかかわらず,C’の資金繰りは一向に改善されず,早くも資金繰りに窮し,N協会とI銀行の協力で平成9年8月の倒産危機は凌いだものの,もはやその月々を乗り切ることも困難な自転車操業に陥っており,シーセイズ事業の業績も向上しないまま撤退が決まり,N協会の保証なしにはI銀行が協力しないことが明らかであり,同協会まで保証を拒否するに至っており,第1次貸付けの際にも増して,C’の事業の存続が期待できる状況になく,その償還 しないまま撤退が決まり,N協会の保証なしにはI銀行が協力しないことが明らかであり,同協会まで保証を拒否するに至っており,第1次貸付けの際にも増して,C’の事業の存続が期待できる状況になく,その償還能力は減退し,もはや2億円だけでなく,従前の高度化資金や第1次貸付分を含めた全体が償還不能というべき状態に陥っていたと認めるのが相当である。 以上によると,本件各貸付け時において,客観的には,C’が事業体として今後も存続することを合理的に期待できる状況になかったものと認めるのが相当である。 (5) なお,担保の徴求についてみるに,平成8年7月22日ころにC1から県側に提出された担保一覧表記載の物件の担保価値は十分でなく,いわゆる「担保割れ」であったことは明らかであって,貸付けを求めるC1が,担保として提供する財産を過大に評価する傾向にあることは当然に警戒すべきであり,また,担保順位等が明らかにされていないことからみて,その内容を信用することができないはずであるのに,先順位担保権の有無,内容等,担保設定の可否や担保価値の把握に際して不可欠な事項について,実質的な担保価値確認作業は何ら行われておらず,担保があるという体裁を整えることに終始した面があることは否定できない。徴求できる限りの担保を徴求したことは認められるが,C’が事業体として存続することが期待できない状況下にあったことを考慮すると,これをもって,客観的な任務違背を否定すべき事情であるとは考えられない。被告人A2の弁護人は,第1次貸付けに際し,新規に32筆の不動産を担保として徴求しており,これらの鑑定評価額は,平成13年2月現在においても,合計金5億3599万円であり,先順位担保権者の被担保債権の合計残高は,鑑定評価額を下回っているから,担保余力がなかったとはいえない,新規に96の機械や備品 定評価額は,平成13年2月現在においても,合計金5億3599万円であり,先順位担保権者の被担保債権の合計残高は,鑑定評価額を下回っているから,担保余力がなかったとはいえない,新規に96の機械や備品に担保を設定し,C1以下5名の人的担保を徴求しているから,できる限りの担保を徴求したなどと主張するが,担保価値の算定にあたっては,当該順位のみから抽象的に捉えることは相当でなく,換価可能性も考慮すべきであり,貸付額が高額に上っていることを考慮すると,政策的側面を重視しても,十分な担保を徴求したものとは認められない。 3 結論以上のとおりであって,被告人ら3名は,C’は,その財務状態が悪化し,今後の事業の存続が合理的に期待できない状況下にあったのにもかかわらず,議会による予算の議決を経ずに,十分な担保も徴求しないで,C’に対し,10億350万円,2億円をそれぞれ貸し付けたものであり,第1次貸付けの際には,後記のとおり,同和縫製事業の維持促進を図って従業員の雇用を確保し,地場産業の振興を図るという観点から,当面の倒産危機を回避して,将来における,民間金融機関による支援が期待できるようになるまでの過渡的な措置であるということを十分考慮しても,本件各貸付けは,客観的には背任罪における任務違背に該当するものと認めるのが相当である。 第11 任務違背等の認識について被告人3名は,公判廷で,ひとしく償還可能性があると思っていた,大丈夫だと思っていたなどと供述して,任務違背や損害の認識について争い,弁護人らも同旨の主張をしているので,以下検討する。 1 被告人3名は,公判廷において,第1次貸付けの際,償還計画に沿った償還は確実だと思った旨を供述しているが,資金ショートを起こし,M’やI銀行から支援を断られてきた経緯や,償還計画が確実な裏付けを伴わない 人3名は,公判廷において,第1次貸付けの際,償還計画に沿った償還は確実だと思った旨を供述しているが,資金ショートを起こし,M’やI銀行から支援を断られてきた経緯や,償還計画が確実な裏付けを伴わない将来の売上増に依存するところが大きいこと,債権管理能力に長けているわけでもない県による,第1次貸付けは,少なくとも償還期間を10年とした長期貸付けであり,第2次貸付けも,実質的には,明確な償還期限が定まっていないもので,不確定要素が大きいことなどに照らすと,償還計画に沿った償還の可能性について,単なる期待の域を超えてそれなりに信用することができる程度の域に達していたものとは到底考えることができず,担保の徴求が十分でなく,もともと担保価値を精査した上で貸付けの当否を判断しようという姿勢がなかったことなどにもかんがみると,被告人3名において,第1次貸付けの段階から,新規貸付金の回収が困難になるおそれがあること自体は念頭に置いていたものと認めるのが相当である。また,第2次貸付けに至ると,第1次貸付けが失敗に終わり,シーセイズ事業の失敗も明らかになった後のことであり,業況の好転を合理的に予測させるに足りる事情はもはやなく,被告人A1及び同A2において,いよいよ新規貸付金の回収が著しく困難になることを認識していたものと認めるのが相当である。なお,被告人3名は,担保について特段問題がないと思っていた旨を供述しているが,すでに述べたとおりの担保についての取扱いをみる限り,財政課の意向を受けて,当初予定していた担保に加え,可能な限りの担保を徴求したことは認められ,殊更に無担保で,便宜供与にも等しい貸付けを実行しようという意図を持っていたものとはいえないにしても,担保から回収を図るという発想は強くなかったものとみられ,むしろ担保が不十分であっても,この際貸し付 更に無担保で,便宜供与にも等しい貸付けを実行しようという意図を持っていたものとはいえないにしても,担保から回収を図るという発想は強くなかったものとみられ,むしろ担保が不十分であっても,この際貸し付けるという姿勢が明らかである。 なお,検察官は,公訴事実中,「損害を加える目的をもって」と主張し,論告においても,損害の故意についてとくに触れていないが,「償還能力がないことを明確に認識していた」旨を主張しており,確定的故意を前提としているものと考えられるところ,少なくとも第1次貸付けの際には,副知事協議及びそれに至るまでの何回もの協議において,関係金融機関との連携方針が打ち出され,現に,平成8年9月や,翌9年2月にN協会やI銀行等を交えて,継続的な支援策について実質的な協議をしていること,県の大阪事務所等を介した売上拡大に向けた策を講じていること,金融機関からの役員派遣やOBの紹介などの,財務経営管理,経営指導の実施策等も,十分であったとはいえないが講じた形跡があり,C’の倒産を回避しつつ,何とかして,これまでの分も含め,貸付金を回収したいとの意図を有していたものと認められることなどに照らすと,損害の発生を認容していたものとは認めることができない。しかし,第2次貸付けは,すでに述べた状況に照らし,もはや平成9年末の倒産をとりあえず回避する意味合いしかなく,C’がそれまでにI銀行に対する負債等を合わせて30億円を超える債務を負担しているなかで自転車操業に陥り,財務体質の抜本的な向上を期待できるような要素もなかったのであるから,被告人A1及び同A2は,県に損害が発生することを認識し,かつ,認容していたものと認めるのが相当である。 2 もっとも,先に述べたところから,事業存続の可能性に対する被告人3名の認識を検討するに,第1次貸付けに際して,被告 県に損害が発生することを認識し,かつ,認容していたものと認めるのが相当である。 2 もっとも,先に述べたところから,事業存続の可能性に対する被告人3名の認識を検討するに,第1次貸付けに際して,被告人らに対し,B12ら診断班が,償還がほぼ不可能である旨を報告していたと認めることができないことは前記のとおりであるが,逆に,増資した資金を運転資金に充当せざるを得ないほど資金繰りが悪化していることなどを,債務の把握等の調査を踏まえ,財務状況を調査する過程で具体的に把握していた診断班が,計画に沿った償還は十分に達成可能である旨の報告をしたということも,直ちには考えがたい。しかし,前記のとおり,診断班が具体的にどのような報告をしていたかは必ずしも判然としないけれども,被告人3名が公判廷で述べているように,診断班から,「確定したものではないが,組合の努力と県の側面支援により達成可能である。」との報告がされた可能性を排斥することはできず,また,以下の事情に照らすと,被告人3名において,当時,そのように期待したとしても,必ずしも不自然ではない。すなわち,償還計画の内容は,一方では前記のとおり不合理な内容を含んでおり,これを根拠として,客観的な業績の改善や約定どおりの償還の可能性が高いものと認めることはできないけれども,他方で,被告人3名は,第1次貸付けに際して,償還計画の信頼性を動揺させる重大な要因である,C1が県から高度化資金を詐取したものであるという事情を認識していなかった上,①診断後の売上高と利益額が,C’が当初想定した計画額に比して,平成9年度から平成12年度までの4年間の平均値として,それぞれ66パーセントないし64パーセントまで低減されていること,売上内容についても,見込まれる取引先ごとに製品の内容,種類,数量,単価,決済条件等が記載された 2年度までの4年間の平均値として,それぞれ66パーセントないし64パーセントまで低減されていること,売上内容についても,見込まれる取引先ごとに製品の内容,種類,数量,単価,決済条件等が記載された具体的なものであり,支出面においても,人件費の上昇が想定されていたことなどに照らし,診断班による専門的判断が相応に加味されているものと信頼しても不合理ではなく,②売上げに関しては,全国15の百貨店と販売契約を締結していたP’との基本契約が締結され,5年後に45億円(C’の売上高はその3割)を見込んでいるなどという新聞記事が発表されていたこと,その他,新規に若い従業員80名が確保されたこと,最新式の機械設備を備えた工場が落成していたことなど,C’の業績の向上を期待させる諸事情が認められ,被告人3名はこれらを認識していたものである。 また,被告人3名は,長期貸付けに及ぶに際し,後のI銀行による借換え等についても視野に入れているところ,県と同銀行関係者との交渉経緯や,同銀行関係者が作成した,「OBの再就職の場となり,成功(協力)することで県側に対し貸しを作るチャンスでもある。」等と記載されたメモ(甲137の添付資料9-1)等に照らし,第1次貸付けの際には,同銀行としても,必ずしもC’の事業の存続が期待できないとは考えておらず,自らが貸倒れの危険を負担することについての抵抗があったにとどまり,当時県庁支店の出店を計画していたこともあって,できるだけ県の意向に沿い,いわば県に対して「貸し」を作っておきたいという思惑もあったことが窺われ,被告人3名がI銀行による近い将来における支援を期待したことも,あながち不合理であるとはいえない。加えて,副知事協議の際には,資金投入に付随して,その経営改善策等も話し合われている。 以上の諸点を併せ考慮すると,少な る近い将来における支援を期待したことも,あながち不合理であるとはいえない。加えて,副知事協議の際には,資金投入に付随して,その経営改善策等も話し合われている。 以上の諸点を併せ考慮すると,少なくとも,被告人3名が,第1次貸付けに及ぶに際し,これによりC’の当面の倒産を回避した上で,後々の民間金融機関の支援を得て,C’の財務状況の改善を図れば,その事業の存続は今後も可能であるものとの認識を有していたものと認めるのが相当である。 しかし,第2次貸付けの際には,第1次貸付けが失敗に帰し,N協会も更なる保証の意向を明確に拒否する方針を示しており,ひいてはI銀行による協力も限界となっていたこと,シーセイズ事業が失敗に帰したことなどをも考慮すると,償還計画を云々するまでもなく,C’の今後の事業の存続はかなり危うい状況に陥っていたものと認められ,被告人A1及び同A2に,その旨の認識に欠けるところはなかったものと認めるのが相当である。 3 なお,本件貸付けは議会の統制のらち外にあるが,第1次貸付けの際,被告人A3及び同A2は,産業経済委員の一部にのみ説明を行えば足りると認識していたものと認められ,県の行政部門と議会との関係については,証拠上必ずしも明らかではないが,いわゆる「根回し」をすれば,相当程度行政部門の意向が通るという認識を被告人A3や同A2らに対し与えるような実態があったことが窺われる。被告人A1の検察官調書(乙5)の,「議会対策は中途半端ではだめで,知れるとまずい事情があったり,迅速にことを運ぶ必要がある場合には,徹底的に隠さねばならず,産業経済委員の一部にだけ説明するという生ぬるいやり方では,C’に対する直貸しはできなくなると思った。」という供述記載からは,県の行政部門において,政策遂行に際し,とくに少数派ないし反対派の意見表明の 経済委員の一部にだけ説明するという生ぬるいやり方では,C’に対する直貸しはできなくなると思った。」という供述記載からは,県の行政部門において,政策遂行に際し,とくに少数派ないし反対派の意見表明の機会をあらかじめ封じることに意を用いることが常態化していたことが窺われる。この点は,背任罪における任務違背に直接結びつくものではないが,少なくとも,議会に対して秘密裏に実行しようという発想の根底には,本件貸付けを,議会での実質的審査の対象にはしないという認識があったものと認めるのが相当である。このような発想や手段は,行政部門が必要性ありと判断した施策を実現することに執着する余り,議会の意思を不当に軽視するものであって,政治的な次元において批判の対象になることはもちろんであるが,貸付先企業の倒産を回避したいという場合,信用問題が惹起することを防ぐことの必要性も理解することができ,被告人3名が,そのような必要性を考慮していたことを否定することはできない。 しかし,第2次貸付けの際の産業パワーアップ融資制度は,もともと知事査定の場において,被告人A1が別件のUに対する直貸し事案を周囲に知られたくなかったという意向もあって,被告人A2による具体的な内容に関する説明をあえて遮るなど,知事の査定すら軽視する措置がとられている上,当初から議会に対して何らの説明を行わずに予算化させた制度融資であり,信用問題が惹起することを防ぐ必要性を全く考慮しないわけにはいかないとはいえ,このような制度を利用している点は,問題をはらむ貸付けを秘密裏に実行しようとするものであって,適正な制度運用とみることはできない。 4 以上の諸点を併せ考慮すると,被告人3名は,貸付金の回収が困難に陥る蓋然性を念頭に置きつつ,かつ,確実かつ十分な担保を徴求せずに第1次貸付けに及んだもので 適正な制度運用とみることはできない。 4 以上の諸点を併せ考慮すると,被告人3名は,貸付金の回収が困難に陥る蓋然性を念頭に置きつつ,かつ,確実かつ十分な担保を徴求せずに第1次貸付けに及んだものであるが,これは,C’の事業の存続を図ることが可能であるという判断の下に行われたものであり,その判断は前記第9で述べたところにも照らし,とくに常軌を逸しているとは考えられないことを併せ考慮すると,第1次貸付けに際しては,被告人3名に刑法上の任務違背の認識がなかったものと認めるのが相当である。他方,第2次貸付けの際には,被告人A1及び同A2は,貸付金の回収が困難になることを認容し,かつ,確実かつ十分な担保を徴求しないまま,C’の事業の存続がかなり危うい状況に陥っていることを認識しつつ,貸付けに及んでいるもので,利用する融資制度の前記制定経緯等にも照らし,任務違背の認識に欠けるところはなかったものと認められる。 第12 目的について 1 被告人3名が第1次貸付けにおいて,被告人A1及び同A2が第2次貸付けにおいて,有利な条件で貸付けを行ってでも第三者であるC’を倒産させまいとする明確な意思をもっており,これがC’の利益を図ったものであること自体は明らかである。そして,これまで述べた状況下で,ことさら有利な条件で貸付けを実行すれば,反面,県による債権の回収に危険が生じること,すなわち県に財産上の損害が生じることがあり,前記のとおり,第1次貸付けの際には,被告人3名が,第2次貸付けの際には,被告人A1及び同A2が,貸倒れに終わる危険があることを認識して,これをも考慮した上で貸付けに臨んでいたことも認められる。 しかし,背任罪について,図利加害目的を犯罪成立要件として規定したのは,事務処理者が,多種多様にわたる経済活動において,本人に損害を与えることがあ 慮した上で貸付けに臨んでいたことも認められる。 しかし,背任罪について,図利加害目的を犯罪成立要件として規定したのは,事務処理者が,多種多様にわたる経済活動において,本人に損害を与えることがあるかもしれないことを認識しながら,なお「本人の利益」を図って,その考量の末に任務違背行為に及ぶ場合が少なからず存在することが想定でき,このような場合にまで背任罪の成立を認めると,経済活動をはじめ,事務処理者による積極的な活動を停滞させ,かえって本人の利益を妨げる結果となるおそれがあることに着目し,そのような場合には背任罪として処罰しないという趣旨に基づくものであると解するのが相当である。任務違背と損害の認識があるという点において,不正な融資であるとされる案件が背任罪に問われる場合,事務処理者には融資先が経済的利益を得ることの認識認容は常に存在するものといってよく,このような融資に伴い融資先に当然生じるべき利益についての認識認容があったからといって,直ちに背任罪にいう第三者図利目的ないし本人加害目的の存在を肯定するのは相当でない。本件においても,更に「主として本人の利益を図る目的」の有無について検討を加える必要があるというべきである。 2 第1次貸付けの際の目的についてみるに,前提として,まず,被告人3名が回避しようとしたとされる「責任」について検討するに,一般論として,14億円を超える公金を貸し付けていながら,高度化事業開始後間もなく貸付先の企業が倒産するということには,高度化資金貸付手続が,県の診断等を通じ,県の介入の基に行われているだけに,検察官調書にみられる表現を借りれば,「前代未聞の不祥事」という側面があることは否定できず,そうなった場合,県の対応について,県民や県議会等から批判されることとなるのは,被告人3名にも容易に予想されたであ 調書にみられる表現を借りれば,「前代未聞の不祥事」という側面があることは否定できず,そうなった場合,県の対応について,県民や県議会等から批判されることとなるのは,被告人3名にも容易に予想されたであろうことは,前記第3で述べたとおりである。個別的にみれば,被告人A1については,高度化資金貸付けの際に支出負担行為を決裁しており,同和対策本部長でもあったから,C’の倒産等により,貸付経緯等が発覚した暁には,厳しい政治的批判を浴び,自身を含み,知事を含む周囲の責任問題にまで発展することがあり得ることは想定していたものと考えられる。被告人A2については,商工労働部長として着任したのが平成8年4月であって,その後の同年5月下旬に被告人A3が9億5250万円の建物,設備分の高度化資金貸付けを専決しているから,商工労働部のその際の対応について,同部の責任者として批判されることは想定したものと思われる。被告人A3については,自ら専決処分に及んでいることに照らし,同様に批判されることを想定したものと考えられる。 しかし,以下のような事情を考慮すると,被告人3名らが,政策としての妥当性については様々な見方があったとしても,少なくとも,自己や県関係者の保身をはかることに汲々としながら,第1次貸付けに及んだものであるとみるべき事情には乏しいものといえる。 ア被告人A3及び同A2が,C’が資金繰りに窮して倒産の危機に瀕していることを切実に認識したのは,西庁舎協議が行われた平成8年7月4日ころであると認められるが,その後,同年8月9日にM’から融資を断られるまでの間の対応は,3課対応のかたちはとっているものの,その後の対応ぶりに比べれば,例えば部内協議の頻度をとってみても,余裕があり,P’とC’が基本契約を締結した後に融資依頼を行うことにした点に照らしても,C1 は,3課対応のかたちはとっているものの,その後の対応ぶりに比べれば,例えば部内協議の頻度をとってみても,余裕があり,P’とC’が基本契約を締結した後に融資依頼を行うことにした点に照らしても,C1からの,M’本店には地元選出の国会議員から融資依頼がされていて,後はB支店から話があれば,本店として融資に応じる意向である旨の説明を信じ,当初は,商工労働部として,もっぱらB支店に対して働きかけ,また,P’を通じて,販路の拡大を図るといった程度の側面支援を行うことで,M’からの融資により,倒産の危機を回避して事業の存続を図ることができるのではないかと期待していたものと認められる。それだけに,M’から融資を断られた際には,資金繰りが悪化している状態に変わりはないものの,かえって,P’とC’の契約が締結済みで,P’による,全国15の百貨店を会員とするシーセイズ事業の展開が現実化するに至っており,C’が倒産すれば,P’の対外的信用にも大きな影響が生じるおそれもあり,前記のとおりの,商工労働部に課されていた同和対策事業遂行に際しての指針をも考慮すると,政策的にみて,いわば「潰すに潰せない」状況に追い込まれていたものということができ,そのような状況下において,商工労働部が「倒産させない」方向で対処することは,その当否はさておき,政策の遂行としては自然な流れであるといえるのであって,これが検察官が主張するような「自己保身」を主たる目的とするものとみることは相当でない。 イまた,取調べ済みの検察官調書には全く記載がないが,被告人A3は,M’から融資を断られた後,B12に対して,会社更生法の適用を検討するように指示しており,再建型の倒産処理をも選択肢として考慮していたことが認められるのであり,被告人A3は,公判廷で,その意図として,債務を整理して一からスタ B12に対して,会社更生法の適用を検討するように指示しており,再建型の倒産処理をも選択肢として考慮していたことが認められるのであり,被告人A3は,公判廷で,その意図として,債務を整理して一からスタートさせることを考えたものである旨を述べているが,会社更生手続が,裁判所が介入し,従前の資金管理や経済状態等を明らかにした上で,更生管財人の管理の下で再建を図る手続であることにかんがみると,このような手続の利用を考慮していたということは,自己保身の目的でC’の支援に及んでいたとみることと矛盾する事実であるといえる。また,被告人A3及び同A2は,副知事協議において被告人A1から説明を控えるように指示されるまで,産業経済委員の一部に対しては事前に説明をする方針であったものと認められるところ,これも自己保身とは整合しないものである。 ウ前記のとおり,議会に広まった場合,C’の信用問題を惹起するおそれがあることも否定できないから,議会に秘密裏に事を運ぼうとしたからといって,それが手続的な不透明性の点から非難されることはともかく,これが自己保身の目的に直結するものとはいえない。 エさらに,本件貸付けに際しては,部内協議をはじめとして,協議が繰り返されるなかで,出席した関係者によって,ノートや関係書類等に多くのメモ書きが残されており,現に,副知事協議において,商工労働部の産業経済委員に対する説明方針について,線を引いて削除していることなどが残されており,検察官調書は,そのメモ書き等を手がかりとして,検察官の主張を支える多くの供述が導かれているが,裏を返せば,メモ書きの禁止,メモの事後消却等にわたる,協議内容の秘密の保持に意が用いられた形跡がなく,また,あえて虚偽の内容のメモを残すといった工作が講じられた形跡も窺われず,その都度,協議の内容が素直に残 ,メモ書きの禁止,メモの事後消却等にわたる,協議内容の秘密の保持に意が用いられた形跡がなく,また,あえて虚偽の内容のメモを残すといった工作が講じられた形跡も窺われず,その都度,協議の内容が素直に残されているものとみられるのである。メモ書きの中には,協議に関係した者の間に,責任追及の回避という意図があったことを推測させる類の記載はなく,また,後日の弁解のために積極的にメモを作成して残すといった意図を窺わせるような記載もない。 オ被告人A3は,部下から第1次貸付けに賛成できない趣旨の進言を受けて,気色ばんでいた様子が窺われるが,その際にも,部下の言うとおりにしていては事態が明らかになって自分らの責任が追及されてしまうといった心情は現れておらず,むしろ,同和縫製事業の構造転換や地域産業の振興という政策の重要性について部下から理解を得られないという歯がゆさに由来するものとみるほうが自然である。 また,被告人A2は,貸付けに不安を隠せない様子で,診断班に何度も先行きの見通しについて尋ねたりしているけれども,これとても,前記のとおり政策的に「潰すに潰せない」状況に直面していながら,期待した効果が生じずに,救済策が失敗する危険をも考慮に入れざるを得ない被告人A2の立場を考えれば,高度化資金の貸付けに伴う責任追及の回避を図っていたためであるとみるよりも,そのまま倒産させるという策と直接貸し付けるという策との間で,政策的な価値考量に悩んでいたためであるとみるのが,前述した事実経緯に照らして自然である。 3 被告人3名は,第1次貸付けの際には,詐取被害を認識していなかった上,前記のとおり,C’の事業の存続が可能であると認識していたものと認められるのであって,物的給付から就労対策,産業振興へと政策転換しつつあった同和対策事業のなかで,その重要な一翼を担う部 なかった上,前記のとおり,C’の事業の存続が可能であると認識していたものと認められるのであって,物的給付から就労対策,産業振興へと政策転換しつつあった同和対策事業のなかで,その重要な一翼を担う部署として商工労働部が位置づけられていたことに照らすと,前記のとおり,客観的には任務違背が肯定でき,また,被告人3名において,貸付金の回収が困難になるおそれがあることを認識していたものと認められるけれども,一方では貸付けにより事業を存続させることが可能であるという認識も有していたのであって,被告人3名は,C’が倒産することにより確実に生じる同和対策としての政策面における不利益と,これを回避したときに生じかねない主に経済的な不利益とを比較考量した上,C’の事業の存続を図ることが県行政に課せられた使命であるとして,第1次貸付けの途を選択したと考えても不自然ではない。政策的な価値判断に誤りがあったことを事後に指摘することはたやすいことである。しかし,その誤りは,政治的非難あるいは民事上ないし行政上の手段を通じて是正されるべきものである。検察官は,政策目的をいっさい否定するが,詐取被害の認識,診断班による報告,あるいは,任務違背の認識等について,すでにみたとおり採用できない見解に立脚しており,被告人3名の各検察官調書中の,自己保身を認める旨の供述記載に依拠して,被告人らが,そこにいう自己保身の目的を有していたものと認めることはできない。かえって,主として,前述したとおりの同和対策,地域産業振興の見地から公益を図る目的で第1次貸付けに及んだものと認めるのが相当である。なお,検察官は,被告人らは自己保身の目的で第1次貸付けに及んだ旨の県関係者の捜査段階の供述が信用できるとして,これらを援用して,被告人3名の自己保身目的を根拠づけようともしているけれども,こ る。なお,検察官は,被告人らは自己保身の目的で第1次貸付けに及んだ旨の県関係者の捜査段階の供述が信用できるとして,これらを援用して,被告人3名の自己保身目的を根拠づけようともしているけれども,これらは,もともと第三者が,取調官の意向に沿うかたちで被告人らの主観的意図を忖度して供述したものに過ぎず,信用性に乏しいものというべきである。 4 しかし,第2次貸付けの際には,前記のとおり,第1次貸付けをしてもC’の業況は改善せず,N協会の保証の下にI銀行が更に融資を行うなどしていたにもかかわらず,またもや倒産の危機を迎え,C’の経営は,自転車操業が恒常化した状況になっていたこと,県の要請にもかかわらず,N協会が支援を拒否し,I銀行の支援も期待できなくなっていたこと,シーセイズ事業が失敗に帰して売上げが向上する見込みも失われたこと,各工場を分離するなどの事業規模の縮小を余儀なくされていたことなどに照らし,資金を投入しても,C’を再建してその事業の存続を図ることはできない状況にあったものといえるのであり,第2次貸付けに,同和対策としての政策的意味が全くないとはいえないけれども,第1次貸付けにおけるのと同様の,ないしはそれに近い程度の同和対策,地域産業振興策の一環としての救済的な貸付けという側面を見出すことはできない。それにもかかわらず,被告人A1及び同A2は,あえて貸付けに及んでいるのであり,前述したような基本的な事実経緯に即して考察する限り,もはや主として県の利益を図ったものとみるべき余地に乏しい。被告人A2の弁護人は,第2次貸付けについては保身の目的が全くないとは言い切れないが,できるだけ就労人員を確保し,事業を継続させてその回復につなげていくとの目的の存在が認められると主張するけれども,これまで述べたところに照らし,被告人A2において,C’ が全くないとは言い切れないが,できるだけ就労人員を確保し,事業を継続させてその回復につなげていくとの目的の存在が認められると主張するけれども,これまで述べたところに照らし,被告人A2において,C’の事業が今後も継続してその業績が回復するであろうとの認識を有していたものとは考えられず被告人A2が主として県の利益を図ったものであるとみることはできないといわざるをえない。また,被告人A1及びその弁護人は,第2次貸付けは,C’の倒産を防止して,それまでの貸付金を少しでも回収し,県の損失を少なくしようとしたものであって,県の利益を考慮したものである旨を主張しているところ,そのような意図が全くなかったとまではいえないけれども,それまでの情勢からみて,C’が倒産すれば,担保が十分でない以上,第2次貸付金の回収は期待できなくなるし,かといって,C’の倒産を回避しようとすればするほど,県が運転資金を追加で貸し付ける必要が生じるという矛盾をはらんだ状況に陥っており,もはや県に新たな損失が生じないようにしつつC’から貸付金を回収するという方途を考えることは容易でない状況下にあったものと認められるのであり,第2次貸付けは,単に目前の倒産を先延ばしにするという近視眼的な弥縫策であったものとみるほかない。そのことを,財政に明るい被告人A1が認識していなかったものとは考えられず,県の財産的利益をおもんぱかって,第2次貸付けをすれば,それまでの貸付金の回収を図ることが可能であると考えたものと認めることはできない。被告人A1及び同A2の弁解を十分に考慮しても,第2次貸付けは,主として県の利益を図る目的に出たものではないというべきである。なお,背任罪の加害目的の存在を肯定するには,本人を害する旨の意欲ないし積極的認容まで要するものではないから,被告人A1及び同A2におい 主として県の利益を図る目的に出たものではないというべきである。なお,背任罪の加害目的の存在を肯定するには,本人を害する旨の意欲ないし積極的認容まで要するものではないから,被告人A1及び同A2において,客観的に貸付金回収の見込みがなく,貸倒れにより県に損害を与える蓋然性が高いことを認識していたという点だけを捉えれば,県を害する目的があったものと認める余地があるけれども,同被告人らが,第2次貸付けに際し,同和対策としての政策的意図を主観的にも全く有していなかったものとまで認めることはできず,この点を併せ考慮すれば,第2次貸付けに際して,同被告人らが,県を害する目的を有していたものとは認められない。 結局,被告人A1及び同A2は,本人である県以外の利益を図って第2次貸付けに及んだものとみられるところ,C’に有利な条件で運転資金を支出することでその経済的利益を図る目的があったことは貸付け行為自体から明らかである。また,第2次貸付けに及ぶに至ったのは,従前の高度化資金貸付手続における県の対応やその後の指導,及び,第1次貸付けが失敗に帰したことに対する県民や議会からの,知事を頂点とする県行政そのもの,あるいは自分をはじめ関与した県職員らに対する批判を回避したいという意図が背景にあったものと認めるのが自然である。被告人A1及び同A2は,自己及び他の県関係者のそのような非財産的利益を図る目的をも有していたものと認めるのが相当である。この点,被告人A1の弁護人は,自己保身を考えていたのなら,第2次貸付けはとることのできない選択であると主張しているところ,確かに,事後的に振り返ってみれば,発覚の危険等を考慮すると,自己をはじめ県職員や県行政そのものに対する批判を回避するという見地からはかえって不合理な選択であるとみる余地はあるけれども,被告人A1は,平 に,事後的に振り返ってみれば,発覚の危険等を考慮すると,自己をはじめ県職員や県行政そのものに対する批判を回避するという見地からはかえって不合理な選択であるとみる余地はあるけれども,被告人A1は,平成9年12月中旬に至って,被告人A2らから,放置すれば同月末にも倒産するという事実を前提として,直接貸付けの意見を具申されたもので,副知事として,さらには同和対策本部長として,事実上最終的な判断を委ねられるなかで,苦渋の決断を迫られるという状況下に追い込まれ,合理的な大局的判断をするだけの余裕がなかったものともみられるのであり,このような,当時被告人A1が置かれていた立場を考えると,先に述べたような意図を背景にして,とにかくC’の倒産を先送りしようと考えたとしても,不自然ではない。 第13 小括以上のとおりであって,被告人3名の第1次貸付けについては,任務違背の認識及び図利加害目的があったものと認めることはできないので,結局,本件公訴事実第1については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人3名に対し無罪の言渡しをする。 また,被告人A1及び同A2に対する本件公訴事実第2については,これを敷衍して,次のとおり背任罪の成立を認定する。 第14 罪となるべき事実,証拠の標目及び法令の適用(被告人A1及び同A2の罪となるべき事実)被告人A1は,B県副知事として,県知事を補佐し,県の予算の調製及び執行を含めて県の事務全般を統括,掌理していたもの,被告人A2は,県商工労働部長として,県の中小企業対策事業に係る貸付等を分掌していたものであるが,県は,高知県南国市ab丁目c番地dに主たる事務所を置く協業組合C(代表理事C1)に対して,中小企業事業団法に基づく中小企業高度化事業(特定)資金として,平成7年4月10日に4億910 であるが,県は,高知県南国市ab丁目c番地dに主たる事務所を置く協業組合C(代表理事C1)に対して,中小企業事業団法に基づく中小企業高度化事業(特定)資金として,平成7年4月10日に4億9100万円,平成8年5月30日に9億5250万円をそれぞれ貸し付け,さらに,民間金融機関等からの新規融資が受けられず,早晩の倒産を免れないほど財政的に危機的状況に陥った同組合に対し,同和対策事業等の一環として,当面の倒産を回避して再建を図るべく,同年9月27日から同年12月13日までの間,前後4回にわたり,「平成8年度地域産業高度化支援資金」として,議会の議決した予算に基づかずに,計10億350万円を貸し付けていたところ,被告人両名は,同組合は,平成9年に入っても倒産の危機から脱することができず,同年12月には,その財務状況は運転資金を投入しても回復の見込みが立たないほどに悪化していて,新規貸付金の担保として徴求する新たな物件の担保価値もなく,同組合に貸付けを実行しても,同月末に差し迫った倒産を回避することができるだけで,将来にわたる業績の改善が見込まれず,新規貸付金の回収の見込みが立たないことを認識していながら,同組合をそのまま倒産させることを避けて,同組合が倒産した場合,同組合に対する高度化資金貸付けに際しての県の調査,指導内容等をはじめ,その後の前記10億350万円の貸付けを含めた県の対応等に関する,県民や県議会あるいはD同盟関係者らから被告人両名を含む県関係職員に対してされるであろう責任の追及を先送りにして回避しようとの意図を背景にして,共謀の上,県議会の議決を経た予算の定めるところに従い,確実かつ十分な担保を徴求するなど貸付金の安全確実な回収のための適切な措置を講じ,県に損害を加えることのないようその職務を遂行すべき任務を有していたのに,こ 会の議決を経た予算の定めるところに従い,確実かつ十分な担保を徴求するなど貸付金の安全確実な回収のための適切な措置を講じ,県に損害を加えることのないようその職務を遂行すべき任務を有していたのに,これに違背して,前記組合の利益を図り,併せて自己及び関係職員に対する責任追及を回避するなど自己らの利益をも図る目的で,本件貸付けに係る予算について県議会の議決を受けず,かつ,貸付債権の回収のための確実かつ十分な担保を徴求することなく,「平成9年度産業パワーアップ融資金」として,同年12月25日,県から同組合に対し,2億円を貸し付け,よって,同債権の回収を著しく困難にさせ,もって,県に同額の財産上の損害を加えたものである。 (証拠の標目)中略なお,弁護人らは,「自己らの保身」目的について,具体的に認定するには訴因の変更が必要であるのに,それがされずに検察官が第13回公判期日において釈明したような認定がされるとすれば不意打ちとなるから,そのような認定はできない旨を主張するが,起訴状記載の各公訴事実にはいずれも「自己らの保身」とあること,冒頭陳述において,検察官は,「県のずさんな調査,指導内容が行政上の大失態として,県民,県議会,C1を支援しているD同盟幹部らによって厳しい批判を受けることとなり」,「県幹部も含めた関係者の責任問題に発展することは容易に予想される」,あるいは「県担当者の失態が露見することによる自己らの責任を回避するため」等と述べている上,被告人質問が実施される前にその具体的内容を釈明により明らかにしていることなどに照らし,争点として顕在化され,かつ,防御の対象となっていたものであるから,弁護人らの主張は採用の限りでない。 (法令の適用)被告人A1及び同A2の判示所為は,いずれも刑法60条,247条に該当するので,所定刑中いずれ され,かつ,防御の対象となっていたものであるから,弁護人らの主張は採用の限りでない。 (法令の適用)被告人A1及び同A2の判示所為は,いずれも刑法60条,247条に該当するので,所定刑中いずれも懲役刑を選択し,その各所定刑期の範囲内で,被告人A1を懲役1年2月に,同A2を懲役1年にそれぞれ処し,いずれも同法21条を適用して未決勾留日数中各100日をそれぞれその刑に算入し,いずれも情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から2年間それぞれその刑の執行を猶予し,訴訟費用のうち,証人B1に支給した分は,刑事訴訟法181条1項本文,182条により被告人A1及び同A2に連帯して負担させることとする。 第15 総括当裁判所は,第1次貸付けについて,被告人3名は無罪との結論に達し,第2次貸付けについては,被告人A1及び同A2を有罪と認定したものであるが,この点にしても,検察官が,政策的側面をいっさい否定して,もっぱら自己保身の目的に出た貸付けである旨を主張しているのに対し,「主として県の利益を図ったものである」とみる余地がないことを重視しており,必ずしも,自己保身の動機にのみ基づく利己的犯罪であるとの前提に立つものではない。以下では,当裁判所が,検察官による事案の捉え方に対して疑義を呈するに至った理由について若干付言した上,被告人A1及び同A2に対し主文の刑を量定した理由等について述べる。 1 本件は,県職員,D同盟関係者,C’関係者,金融機関関係者ら多数が関わり合っている上,貸付時から捜査に至るまでの間に数年が経過しており,客観的な事実経緯それ自体を確定することも容易でなく,また,貸付け自体に同和政策としての側面も否定できないなど,真相の解明は相当に困難であると見込まれる類の複雑な事案である。貸付けのかたちをとって支出された多 経緯それ自体を確定することも容易でなく,また,貸付け自体に同和政策としての側面も否定できないなど,真相の解明は相当に困難であると見込まれる類の複雑な事案である。貸付けのかたちをとって支出された多額の公金が回収不能になっていることや手続が不透明だったことなどに照らすと,客観的な事情が相当程度判明している現状に立って,被告人ら県関係者を批判することは容易であるが,それらの刑事責任の有無及び程度にわたる判断は,相当な困難を伴うものである。すなわち,事実経緯全般にわたって供述に依存せざるをえないところ(メモの記載等は,存在及び形状は客観的であるが,その記載内容については,結局具体的な供述によらなければ意味内容が判然としないものである。),時の経過により記憶が希薄になることは否定できないし,C1と県関係者,県内部における上司と部下をはじめとして,利害が対立しやすい状況が想定でき,責任を軽減させて起訴を免れる,あるいは道義的な非難を少しでも回避するという思惑から,虚偽あるいはそれに近い,誇張や歪曲,単なる意見や憶測を含んだ供述が混じりやすく,これらに安易に依拠すると,法的評価の前提となる基本的な事実関係について誤りを生じかねず,被告人らの刑事責任の有無,程度についてまで誤った判断を導きかねない。 このような見地から,多数の検察官調書を検討した結果,すでに述べたとおりの理由で,検察官の主張を支える骨格となっている供述部分の一部について,その信用性を否定したわけであるが,「見せ金」という,法律用語としても一義的に捉えがたい概念が,その意味内容が特定されないまま,関係者の供述中に用いられており,全体として,「県関係者は,C1が見せ金で県をだましていたことを知っていた。」という方向で各供述が整合され,微妙な事実であるはずの県関係者の複雑な心情が関係者 いまま,関係者の供述中に用いられており,全体として,「県関係者は,C1が見せ金で県をだましていたことを知っていた。」という方向で各供述が整合され,微妙な事実であるはずの県関係者の複雑な心情が関係者の各供述調書に十分に反映されているとはいえず,結局,関係者の事実認識が判然としなくなっていることや,捜査官においてメモの記載を取捨選択し,捜査官の思惑を前提としたやや偏りのある供述記載が見受けられること,その他これまで指摘した供述記載の特徴等に照らすと,あるいは検察官の側に,事実の積み重ねの上に結論を見出すという発想ではなく,被告人3名は背任罪を犯したものであり,処罰されなければならないという結論を前提として,これに沿う事実経緯を想定し,関係者の供述がこれに沿うように導かれ,他方,その過程において,検察官の想定に反する供述やメモの記載が不当に軽視された可能性を現実的なものとして指摘せざるをえない。 本件は,報道機関等により「やみ融資」と名付けられているように,多額の公金を秘密裏に有利な条件で貸し付けるという態様自体からして,被告人3名はじめ,県行政の対応に,県民らからまことに厳しい非難の目が向けられており,元金だけでも26億円余りという高額の公金が回収不能に陥っていることからしても,その非難が,被告人らに対する刑事制裁の要求にまで高まることも,自然の流れであるということができる。検察官が,公益の代表者として,その使命感に基づき,県行政において高い地位にあり,支出負担行為の決裁者でもある被告人らを訴追し,有罪判決を得ようとした点には無理からぬものがある。しかし,検察官としては,自らの想定した方向に沿って関係者から供述を求めるにしても,そこにおいては,その想定した方向が,偏っていないか,誤った事実を前提としていないか,という点について自ら虚心坦 る。しかし,検察官としては,自らの想定した方向に沿って関係者から供述を求めるにしても,そこにおいては,その想定した方向が,偏っていないか,誤った事実を前提としていないか,という点について自ら虚心坦懐に検討する姿勢が必要不可欠であり,本件においては,そういう観点からの検討がやや不十分であったのではないかと思われ,この点は誠に遺憾である。 2 被告人A1及び同A2の量刑の理由(1) 被告人A1及び同A2は,平成8年に10億350万円もの貸付けを実行したものの,一向にC’の業績が改善されないことから,更に2億円を貸し付けたものであるが,すでに述べたとおり,この貸付けに,正当な同和対策,地域産業振興策の一環としての救済融資としての側面を見出すことはできず,単に目前の倒産を先延ばしにするだけの,将来にわたる政策的,発展的な要素を欠いた不正な貸付けといわざるをえない。 それまでの背景事情を考慮に入れても,C’の一時的な利益を図ることに偏しており,県全体の利益を顧みたものとはいえず,多様多岐にわたる行政需要にバランスよく応えるべき県行政に関与する幹部として,大局的な政策的配慮を欠いたものであり,県に生じさせた財産的損失は大きい。また,その結果,C’に対する,倒産も視野に入れた上での,より民意を反映させた,適切な施策を検討する方途をも失わせるに至っており,この点も軽視することができない。貸付けの態様自体を捉えても,議会の統制のらち外で違法に予算を流用し,財政課の強い反対など周囲の諫言にもかかわらず実行しており,県との信任関係に違背するところが大きい。とくに,県行政が直面する深刻な問題について,秘密裏に公金を投入することにより解決しようという発想は,県議会や県民の意思を軽視するものであり,公金の支出に関与する者として安易に過ぎる。被告人A1は,3000万 政が直面する深刻な問題について,秘密裏に公金を投入することにより解決しようという発想は,県議会や県民の意思を軽視するものであり,公金の支出に関与する者として安易に過ぎる。被告人A1は,3000万円以上の貸付けに際し専決権を有する副知事として,第2次貸付けを最終的に決定しており,被告人A2は,商工労働部長の重職にあり,内心で不安を抱え逡巡しながらも,主体的な判断を示すことができずに,最終的には被告人A1の判断に逃げ場を求めるかたちで依存しており,被告人A1及び同A2の刑事責任を軽くみることはできない。 しかしながら,被告人A1及び同A2に対する刑を量定するに際しては,以下の事情も考慮する必要がある。 (2) C1は,Hグループの業績が悪化し,金融機関からの融資を断られるなかで,高度化資金貸付制度に着目して,運転資金を捻出するために同制度を利用していた面が強く,他方,県の対応は,同和対策事業としての側面も影響して,同事業の実績を上げるために,形式を整えることに意を配りすぎたうらみがあり,その内実を主体的,積極的に分析しようという姿勢に乏しかったものと窺われる。高度化資金貸付直後からC’が倒産の危機に直面するに至った背景として,C1の放漫な経営姿勢や,見せ金工作をはじめ,巧妙な諸々の手段が弄されるなどしたため,事業計画遂行のそもそもの前提が欠けていたことを指摘することができるけれども,当時の県担当者において,C1を繰り返し指導して,過大な事業計画を相当絞り込んだ事情も認められるのであって,県の対応の不十分さを殊更あげつらって非難することは躊躇される。また,C1は,高度化資金を詐取した後も,M’からの融資について楽観的な見通しを説明し,これを県関係者が信頼して,その後の第1次貸付けに至った事情があり,その後もC1は,県関係者の心配をよそに る。また,C1は,高度化資金を詐取した後も,M’からの融資について楽観的な見通しを説明し,これを県関係者が信頼して,その後の第1次貸付けに至った事情があり,その後もC1は,県関係者の心配をよそに安易な対応に終始していたもので,県関係者は,C1の,苦しくなれば県頼みという,同和対策事業の理念を逆手にとった安易な思惑に翻弄されたものとも認められ,第2次貸付けもその延長線上にあるといえる。加えて,当時,同和対策事業の目指す方向が,物的給付から,就労環境の整備へと転換するに至る過渡期にあり,実態の如何を問わず,倒産を是認するような対応を選択することは,時として強硬な政策要求が展開される同和団体との交渉等にも配慮しなければならない県幹部にとって,現実問題として相当に困難であったものと推察される。第2次貸付けにおいても,これらの背景を全く考慮に入れないというわけにはいかず,被告人A1及び同A2は,同和対策事業という,時には大胆な政治的決断を迫られる上,特定の政策を遂行しても,あるいは遂行しなくても,批判にさらされやすい行政事務を担当する者として,苦渋の選択を迫られたものとみるのが相当であり,第2次貸付けを,全面的に自己保身の動機に基づく利己的な犯罪とみるのは,皮相的な見解である。また,被告人A1及び同A2は,約5か月にわたって身柄を拘束され,今日に至るまで,報道等を通じて強い非難を浴びており,相当の社会的制裁を受けている。 (3) 以上の諸点を併せ考慮すると,被告人A1及び同A2に対し,主文の刑にそれぞれ処するのが相当である。 3 振り返って,同和対策事業が,崇高な国家的事業として位置づけられ,県行政に対しても,その方向に沿った政策の遂行が要求されていた反面,現実の制度運用にあっては,県担当者の側において,問題点を十分検討した上で主体的な判断をする が,崇高な国家的事業として位置づけられ,県行政に対しても,その方向に沿った政策の遂行が要求されていた反面,現実の制度運用にあっては,県担当者の側において,問題点を十分検討した上で主体的な判断をするという意識が乏しくなり,事なかれ主義に陥り,同和団体等の県に対する過度の依存体質を助長するような対応になっていたのではないかという問題点を指摘することができる。長年にわたり,いわれなき差別が展開されてきたという,余りにも重い歴史的事実を背景としているだけに,このような問題点の是正を図ることには容易ならざるものがあるということができるが,本件を受けて,真にあるべき同和対策事業までもが萎縮するようなことがあってはならず,県職員,同和団体関係者らの良識ある対応を通じ,広く県民の理解を得られるかたちで同和対策事業が推進されることが期待される。また,県行政一般の在り方として,手続の透明性を確保した上での,政策の積極的実現と公金の保全との調和の在り方も厳しく問われており,複雑多様な行政需要に対応すべき行政部門と,これに対し是々非々の態度をもって臨むべき県議会との関係等における,これまでの政治過程において存在した悪弊を除去すべき努力が積み重ねられる必要があることも明らかである。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑被告人A1に対し懲役4年,同A2及び同A3に対しそれぞれ懲役3年)平成15年3月31日高知地方裁判所刑事部裁判長裁判官佐野哲生裁判官三上孝浩裁判官井野憲司 井野憲司
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