- 1 -平成27年(し)第556号提出命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件平成27年11月19日第三小法廷決定 主文 本件抗告を棄却する。 理由 本件抗告の趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑訴法433条の抗告理由に当たらない。 所論に鑑み,刑訴法105条の押収拒絶権の行使に関し,職権で判断する。 1 原決定及び記録によれば,次の事実が認められる(被害者の氏名に代わる呼称は,原々審が第1審として定めたものによる。)。 (1) 申立人らは,強姦未遂,強姦,強制わいせつ被告事件の被告人によって選任された弁護人らである。本件で提出命令の対象となっているデジタルビデオカセット原本4点(以下「本件デジタルビデオカセット」という。)は,被告人が,被害者Bに対する強姦事件,被害者C,D,Eに対する各強制わいせつ事件の犯行状況とされるものを撮影し,録画したものであり,被告人の委託を受けた弁護士である弁護人らの下で保管されている。 (2) そのうち被害者Bに関するものは,主任弁護人が捜査段階で警察官に任意提出し(その後,還付を受けている。),捜査機関によって作成された複製DVDが,公判期日において,検察官請求証拠として,主任弁護人の異議なしとの意見を受け,取り調べられた。 また,被害者C,D,Eに関するものは,主任弁護人が検察官への証拠開示を経 - 2 -て証拠請求したが,機器の制約から法廷で再生できないとの理由で,その請求を撤回したものの,検察官から,その複製DVDが,捜査報告書に添付されて証拠請求され,主任弁護人の同意の意見を受け,取り調べられた。 上記の取調べについて,被告人が異議 きないとの理由で,その請求を撤回したものの,検察官から,その複製DVDが,捜査報告書に添付されて証拠請求され,主任弁護人の同意の意見を受け,取り調べられた。 上記の取調べについて,被告人が異議を述べたことはうかがわれない。 (3) 検察官は,本件デジタルビデオカセットにつき,公判期日で,没収相当との求刑をし,裁判所の職権により差押えをするよう申し立てた。これに対し,弁護人らは,被告人が,本件デジタルビデオカセットの所有権放棄,映像データの消去に応じる意向を示していないことを理由に,弁護人らが保管する本件デジタルビデオカセットの任意提出を拒否し,また,差押えの申立てに関して,主任弁護人は,複製DVDでは判明し得なかった会話が記録されている可能性があるから「秘密」に当たり,押収拒絶権を行使できるなどとして,反対する旨の意見を述べた。 (4) 原々審は,弁護人らに対し,本件デジタルビデオカセットを裁判所に提出するよう命じたところ,弁護人らは,これに抗告を申し立て,抗告が棄却されたために本件抗告に及んだ。 2 以上のとおり,本件デジタルビデオカセットは,主任弁護人により警察官への任意提出や検察官への証拠開示,その一部についての証拠請求がされ,更にその全部の複製DVDが公判期日で被告人及び弁護人らの異議なく取り調べられているから,被告人の意思に基づく訴訟活動の結果,本件デジタルビデオカセットに記録された情報の全ては,もはや「秘密」でなくなったことが明らかであって,本件デジタルビデオカセットは,刑訴法105条の「他人の秘密に関するもの」に当たらないというべきである。弁護人らに本件デジタルビデオカセットにつき押収拒絶権がないとした原決定は,正当である。 - 3 -よって,刑訴法434条,426条1項により,裁判官全員一致の意見で,主 ないというべきである。弁護人らに本件デジタルビデオカセットにつき押収拒絶権がないとした原決定は,正当である。 - 3 -よって,刑訴法434条,426条1項により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官山崎敏充裁判官岡部喜代子裁判官大谷剛彦裁判官大橋正春裁判官木内道祥)
▼ クリックして全文を表示