平成20(ワ)14195 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年9月3日 大阪地方裁判所
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判決文本文27,308 文字)

主文 被告は,原告Aに対し,1億1781万0449円及びこれに対する平成17年5月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,220万円及びこれに対する平成17年5月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Cに対し,220万円及びこれに対する平成17年5月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,被告に生じた費用の3分の1と原告Aに生じた費用は,これを各10分し,その各3を原告Aの負担とし,その余を被告の負担とし,被告に生じたその余の費用と原告B及び原告Cに生じた費用は,これを各5分し,その各3を原告B及び原告Cの負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求 被告は,原告Aに対し,1億7116万9320円及びこれに対する平成17年5月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,550万円及びこれに対する平成17年5月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Cに対し,550万円及びこれに対する平成17年5月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,公立高校に在籍し体操部に所属していた原告Aが,被告職員である同校体操部顧問教諭の指導の下で,同校体育館で平行棒の技の練習中に着地の際に床で頭部を強打し傷害を負った事故(以下「本件事故」という。)につき,本件事故は顧問教諭が果たすべき注意義務を怠った結果起きたとして,原告らが,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,本件事故による各損害賠償金(原告Aにつき治療 (以下「本件事故」という。)につき,本件事故は顧問教諭が果たすべき注意義務を怠った結果起きたとして,原告らが,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,本件事故による各損害賠償金(原告Aにつき治療費・慰謝料等合計1億7116万9320円,同原告の両親である原告B及び原告Cにつき慰謝料及び弁護士費用として各550万円)並びにこれらに対する平成17年5月24日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の支払を求めた事案である。 前提事実(争いのない事実を除き,認定に用いた証拠は括弧内に示す。)(1)当事者等ア原告A(平成元年3月29日生。)は,平成17年5月当時,大阪市立D高等学校(以下「本件高校」という。)の2年生に在籍し,体操部に所属していた。 原告Bは原告Aの父であり,原告Cは,原告Aの母である。 イE(以下「E教諭」という。)は,被告の職員であり,平成17年5月当時,本件高校の教諭であり,体操部の顧問を務めていた。 (2)本件事故の発生本件事故が発生した平成17年5月24日は,本件高校の中間考査期間中ではあったが,大阪高校選手権大会兼全国・近畿大会予選会が迫っていたため,同大会に参加予定の原告Aを含めた体操部部員は,中間考査終了後,午後3時まで自主練習を行うこととなっていた。 そこで,原告Aは,午後2時ころ,本件高校の体育館において,E教諭の指導の下,平行棒でC難度の「後方抱え込み2回宙返り下り」(以下「本件技」という。)の試技を行ったところ,E教諭がマット上で着地を補助したものの,本件技自体は一連の流れとして成功した。E教諭は,成功の感覚を忘れないようにするため,直ちに再度の試技を行うことを勧め,原告Aもこれに同意して本件技の2回目の試技を行った。 本件技の2回目の試技中,倒 自体は一連の流れとして成功した。E教諭は,成功の感覚を忘れないようにするため,直ちに再度の試技を行うことを勧め,原告Aもこれに同意して本件技の2回目の試技を行った。 本件技の2回目の試技中,倒立時に原告Aの身体が背中方向に傾き,両手が前方に動いたが,E教諭は「試合ではよくあることだからいけ」と声をかけ,原告Aも姿勢を立て直して試技を続行したところ,身体が空中上方に浮かずに前方に飛び出す形となり,原告Aは,前のめりの体勢で足から着地したためマット上で静止することができず,そのまま前方に倒れて体育館の床で前頭部を強打し,その結果,原告Aが頚髄損傷の傷害を負った本件事故が発生した。 (3)本件事故時に使用していた平行棒は,高さ1.8メートル,長さ3.5メートル,支柱から支柱までの長さ2.3メートルであり,平行棒の左側(本件事故において原告Aが飛び出した方向を基準とする。以下同じ。)には,白色のセーフティマット2枚(縦3メートル・横2メートル・高さ30センチメートルのものと縦3メートル・横2メートル・高さ15センチメートルのもの)を重ねて設置していた。 平行棒の真下には,緑色のマット(縦3.7メートル・横44センチメートル・高さ5センチメートル)が縦に設置されており,その右側には青色のマット(縦2メートル・横1.25メートル・高さ8センチメートル)2枚を一部重ねたものが,上記緑色のマットに重ねる形で設置されていた。 (乙3の1ないし3,弁論の全趣旨) 争点及び当事者の主張(1)被告の責任ア原告Aの技量及び本件技の習熟度等(原告らの主張)原告Aは,平成17年4月以前は,平行棒の技としては,A難度の「後方抱え込み1回宙返り下り」を行っており,また,B難度の「後方抱え込み1回宙返り下り半分ひねり 及び本件技の習熟度等(原告らの主張)原告Aは,平成17年4月以前は,平行棒の技としては,A難度の「後方抱え込み1回宙返り下り」を行っており,また,B難度の「後方抱え込み1回宙返り下り半分ひねり」を試す程度であり,同年3月中旬ころに,ピット(床の開口部にスポンジ等の緩衝材を詰めたもの)設備を備えたF大学で練習を行った際にも,C難度の本件技を行ったことはなかった。 その後,原告Aは,同年4月中旬ころ,G高等学校(以下「G高校」という。)において,ピットを用いた練習をした際に初めて本件技に挑戦したところ,1回半程度回転してピットの上に後頭部から着地する程度のことができたため,その後の目標を本件技に設定し,これを練習するようになった。 しかしながら,本件高校での平行棒の練習は週に2回程度であり,本件高校にはピットの設備はなく,セーフティマットも不足していたため,原告Aは,箱の上にマットを載せ,その上に着地する方法で本件技の練習を行っており,また,縦と横に置いた箱の上に,後方を低くする形で斜めにマットを置き,その上に背中から着地して後転する方法(背落ち後転練習)で本件技のイメージをつかむ練習を行っていた。 以上のとおり,本件技はC難度の高度なものであるのに対し,本件事故時における原告Aの本件技の習熟度は,練習期間は1か月程度で,本件事故直前の試技で初めて本件技を成功させたばかりの極めて低い状況であった。 さらに,原告Aは,平行棒の演技で倒立からスイングに入る際,肩が前方に出る癖が原因で,しばしば着地で身体が前方に飛び出すことがあり,E教諭も原告Aの上記癖を認識していた。 (被告の主張)原告Aは,平成16年11月の大阪高校新人大会後に,平成17年5月開催の大阪高校選手権大会兼全国・近畿大会予選会に向けて本件技を目標に設定しており,E教諭は, 上記癖を認識していた。 (被告の主張)原告Aは,平成16年11月の大阪高校新人大会後に,平成17年5月開催の大阪高校選手権大会兼全国・近畿大会予選会に向けて本件技を目標に設定しており,E教諭は,本件技はC難度の下り技としてはポピュラーなもので,原告Aが中学時代にも体操クラブに所属し,平行棒に関して優れた技術を有しており,中でも体操の基本的な技術である「突き手」が非常に上手であって空中で身体をより高く位置することができたことから,本件技の習得が可能であり,安全上問題がないと判断し,これを目標とすることを承認した。 その後,原告Aは,本件技を6段階に分けて,週2回160分程度をその練習に当てた結果,平成17年3月中旬には第5段階までをほぼマスターし,同年4月中旬ころ,G高校で練習した際にも,ピットを着地地点として本件技を2回成功させた。その後,原告Aは,第5段階までの練習での失敗がほぼ見られなくなったことから,4月中旬にピットを着地地点とする本件技を成功させた後の早い段階から,試技をしてみることをE教諭と話し合っていた。 以上のとおり,本件技を目標とすることは原告Aの技術からは相当であったし,実際,原告Aは半年以上,段階的に練習を積んできており,本件事故の1か月前にはピットを使用して本件技を2回成功させ,さらに本件事故の直前には試技も成功させているのであり,本件事故当時の本件技の習熟度も高かった。 また,原告Aに原告らが主張するような癖があったこと及びそれをE教諭が認識していたとの事実は否認する。 イE教諭の注意義務違反の有無(原告らの主張)本件事故は,本件高校の部活動中に同校体育館内で起こったものであり,E教諭は,体操競技の実技訓練を行う部活動においては,生徒の試みる技が高度になるほど重大な事故につながる危険性を伴うのであるから )本件事故は,本件高校の部活動中に同校体育館内で起こったものであり,E教諭は,体操競技の実技訓練を行う部活動においては,生徒の試みる技が高度になるほど重大な事故につながる危険性を伴うのであるから,体操部顧問の教諭として,当該技の難度や生徒の習熟度などを考慮し,事故防止のための適切な指導監督を行うとともに,物的設備を整えて安全な空間を確保し,又は補助者を確保するなどの十分な事前措置を講ずるべき義務があったにもかかわらず,以下のとおり,その義務を怠った。E教諭が上記各義務を履行していれば,本件事故を未然に防止することができたのであるから,被告の公務員であるE教諭の上記義務違反は,その職務に関して,原告らに対する不法行為を構成し,被告は,国家賠償法1条1項に基づく責任を負う。 (ア)本件技の開始前の試技中止の指示義務E教諭は,上記のような原告Aの習熟度及び癖が存在する状況の下では,原告Aが平行棒上での倒立時に大きくバランスを崩した時点で,試技を続行することによる事故発生等の危険を予測し,試技のやり直しや倒立の中止を指示するなどの措置をとって,事故の発生を防止すべき義務を負っていたにもかかかわらず,漫然と不安定な姿勢からの試技の続行を指示するなどして上記義務を怠った結果,原告Aは肩が前方に出た不安定な体勢でスイングを行うことになり,本件事故が発生したのであるから,E教諭の行為は注意義務に違反するものである。 なお,原告Aは,少なくとも,本件技に関して,E教諭の指示に反して自ら演技を中止したことはなかったし,E教諭は,原告A自身の判断にかかわらず,顧問の教諭として上記の義務を負うのであるから,原告Aが自己の判断で試技を中止しなかったことは,E教諭の注意義務違反の有無とは無関係である。 (イ)本件技の開始後の試技中止の指示義務仮にバランス ,顧問の教諭として上記の義務を負うのであるから,原告Aが自己の判断で試技を中止しなかったことは,E教諭の注意義務違反の有無とは無関係である。 (イ)本件技の開始後の試技中止の指示義務仮にバランスを崩した時点で事故の発生が予測できなかったとしても,E教諭は,前記状況に加え,飛び出しの角度や回転速度を見れば,遅くとも原告Aがスイングに入った段階で,身体が前方に飛び出し,マットの端を越えて落下することは予測できたというべきであり,そうであれば,その段階で試技の中止を指示し,回転を緩めさせることで前方への飛び出し速度や距離を抑えることが可能であったのであるから,試技を続行させた行為が注意義務に違反するものであることは同様である。 (ウ)本件技の試技を行うに当たっての安全な環境整備義務本件事故時に使用されていたマットは摩耗により着地に使用するには危険な状態であり,E教諭自身も,器械体操の競技経験がなく,補助者としての十分な技能を有していなかった。 そして,E教諭は,前記ア(原告らの主張)の原告Aの本件技の習熟度や癖の存在を考慮すれば,本件技において,宙返り下りの際の勢いで身体が,少なくとも平行棒の高さ(1.8メートル)と同程度の距離は前方に飛び出すことが十分に予測できたのであるから,身体の落下が予想される前方方向にマットを敷き,又は補助者を置くなどの措置をとるべき義務を負っていたにもかかわらず,縦3メートル・横2メートルのマットを,平行棒(長さ3.5メートル)の左側に,その中心から前後1.5メートルを覆う程度に敷いた上で,E教諭が原告Aの左側横に補助者として位置したのみで,平行棒の前端部分の下にはマットがない状態のまま,前方方向に補助者を置くこともせずに,前記イのとおり不安定な姿勢からの試技の続行を指示したものである。また,摩耗したマットを 者として位置したのみで,平行棒の前端部分の下にはマットがない状態のまま,前方方向に補助者を置くこともせずに,前記イのとおり不安定な姿勢からの試技の続行を指示したものである。また,摩耗したマットを2枚重ね,マットの上面と床面との間に45センチメートルもの大きな高さの差を生じさせており,競技者がマットの端に落下して床面に転落した際には,重大な事故が発生する危険を孕んでいた。そうであるにもかかわらず,E教諭は,危険防止のための上記義務を怠った結果,本件事故を惹起したのであるから,E教諭の行為は注意義務に違反するものである。 (被告の主張)E教諭の注意義務違反に関する原告らの主張は,以下のとおり争う。E教諭は,危険防止のための考え得る措置を尽くしており,同人の行為に注意義務違反はない。 (ア)本件技の開始前の試技中止の指示義務について本件事故直前に,原告Aはバランスを崩したが,その程度は平行棒の演技において一般的によく見られる程度で,試技を続行するのに何ら支障が存しなかった。また,原告Aはその後,両手を戻してバランスを立て直し,通常どおり,両腕を上下に揺らしながらタイミングを計る動作を行っており,E教諭は上記事実を確認した上で試技の続行を指示したのである。そして,原告Aが,E教諭の指示があっても自己の判断で試技を中止することは十分にできたにもかかわらず,試技を続行したことは,原告A自身も何ら危険性を感じていなかったからであり,原告Aの技術,習熟度をも考慮すると,E教諭が本件事故が発生する危険を予測することは不可能であったのであり,その行為に何ら注意義務違反はない。 (イ)本件技の開始後の試技中止の指示義務について本件事故直前に,原告Aがスイングに入った時点では,同人の手は平行棒から離れておらず,試技の流れにも異常は見られなかったのであ 注意義務違反はない。 (イ)本件技の開始後の試技中止の指示義務について本件事故直前に,原告Aがスイングに入った時点では,同人の手は平行棒から離れておらず,試技の流れにも異常は見られなかったのであるから,原告Aの身体が前方に飛び出し,マットの端を越えて落下することは予測不可能であった。 前提事実にある本件事故の原因は,事後的な考察に基づくものにすぎず,これをE教諭が認識し得たものではないし,スイング中は,身体に回転の負荷がかかっており,その途中に中止を指示しても,演技者が瞬時に回転を緩めることはできないのであり,演技者を混乱させてより危険であるから,スイングに入った時点でE教諭が試技の中止を指示しなかったことについても注意義務違反はない。 (ウ)本件技の試技を行うに当たっての安全な環境整備義務について本件事故当時使用していたマットは,中央部分に自然損耗による摩耗が見られたものの,使用に問題がある程度ではなく,本件事故で原告Aが着地した部分にはほとんど摩耗は見られなかったし,E教諭は,本件高校の体操部を14年間にわたり指導しており,補助者としての技能も十分に有していた。 平行棒の演技では,平行棒の高さと前方への移動距離に物理的関連性はなく,また,原告Aに原告らの主張するような癖がなかったことは前記ア(被告の主張)のとおりである。そして,技の習熟度如何にかかわらず,平行棒の柱より前方に演技者が落下することは考えがたいのであり,本件事故以前に,そのような事態や平行棒の中央部に位置する補助者が補助できないような事態が発生したことはなく,また,他校においてもそのような事態が発生した事実や平行棒よりも前方にマットを設置している例を耳にしたこともなかった。加えて,原告Aからも平行棒より前方にマットを設置してほしいとの申し出を受けたこともなかった おいてもそのような事態が発生した事実や平行棒よりも前方にマットを設置している例を耳にしたこともなかった。加えて,原告Aからも平行棒より前方にマットを設置してほしいとの申し出を受けたこともなかった。 したがって,本件事故はE教諭にとって予測不可能なものであった。 また,平行棒の演技において競技者がマットに着地する際には,競技者自身の体重に加え,身体の落下・回転運動によって負荷された重力がかかってマットが大きく圧縮されるため,着地部分におけるマット上面と床面とは,実際の着地時には,原告らの主張するような45センチメートルもの大きな差は生じない。 したがって,E教諭は,本件技の試技において演技者が落下するおそれがあると考えられる場所には全てマットを設置し,補助者として平行棒の中央部に立っており,事前準備は十分なものであったから,この点に注意義務違反はない。 (2)原告Aの損害(原告Aの主張)本件事故と相当因果関係のある原告Aの損害は,別紙原告Aの損害計算書に記載したとおり合計1億7116万9320円であり,その内容は以下のとおりである。 ア原告Aは,本件事故により,頚髄損傷の傷害を負い,四肢不全麻痺の後遺障害が生じた。上記後遺障害は,独立行政法人Hに関する省令(平成15年文部科学省令第51号)第23号が規定する後遺障害別等級の第3級の3(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの)に該当するとの認定を受けた。 そして,原告Aは,上記傷害及び後遺障害のため,以下のとおり合計1億8862万8473円の損害を被ったところ,これらの損害は,いずれもE教諭の注意義務違反と相当因果関係のある損害である。なお,原告Aは,独立行政法人H及びI互助会から,本件事故による傷害及び後遺障害に関して,合計3302万円の給付( ころ,これらの損害は,いずれもE教諭の注意義務違反と相当因果関係のある損害である。なお,原告Aは,独立行政法人H及びI互助会から,本件事故による傷害及び後遺障害に関して,合計3302万円の給付(下記(ア)で治療費から控除するものを除く。)を受けているため,これを控除した1億5560万8473円が原告Aの損害となる。 (ア)治療費 15万3700円原告Aは,本件事故による傷害及び後遺障害の治療のため,以下の入院及び通院治療のために合計130万9147円の治療費を支払い又は支払予定である。このうち下記1,2の入院治療費として115万5447円を独立行政法人Hから支給を受けているため,これを控除した残額15万3700円(詳細は別紙原告Aの損害計算書(1)のとおりである。)が本件事故と相当因果関係のある損害となる。 J大学病院入院日数84日間 K病院入院日数88日間 L病院通院日数2日 M整形外科通院日数360日 N病院通院日数2日 O整形外科通院予定日数418日(イ)入院諸雑費 25万8000円J大学病院(入院84日間)及びK病院(入院88日間)における入院諸雑費は1日当たり1500円,172日間の合計25万8000円を下らない。 (ウ)通院交通費 20万5000円原告Aの症状の程度に鑑みれば,近親者による入院及び通院の付添いは不可欠であるから,その交通費も本件事故と相当因果関係のある損害となる。その詳細は別紙原告Aの損害計算書(3)のとおりであり,その額は以下のとおり合計20万5000円となる。 J大学病院 9万7680円 K病院 10万 損害となる。その詳細は別紙原告Aの損害計算書(3)のとおりであり,その額は以下のとおり合計20万5000円となる。 J大学病院 9万7680円 K病院 10万2860円 L病院 1420円 N病院 3040円(エ)付添看護費 336万9000円原告Aの症状の程度に鑑みれば,近親者による入院及び通院の付添いは不可欠であるから,その費用は本件事故と相当因果関係のある損害となる。その額は,入院付添費として1日当たり6000円,通院付添費として1日当たり3000円が相当であり,その合計額は336万9000円となる。 入院付添費(172日) 103万2000円 通院付添費(779日(M整形外科360日,N病院1日,O整形外科418日))233万7000円(オ)将来の介護費及び雑費4861万8584円原告Aは本件事故によって生じた四肢不全麻痺等の後遺障害により,日常生活に困難を来しており,また,補助器具の使用により歩行は可能であるものの,短い距離の歩行も困難であるなど,将来にわたり日常生活に介護を要する状態であり,その介護費用は1日当たり6000円を,必要な雑費は1日当たり1000円を下らない。 したがって,上記各日額の365日分に症状固定時の原告Aの年齢である17歳の男子の平均余命年数(62年)に対応するライプニッツ係数19.0288を乗じた額である将来の介護費用(4167万3072円)及び雑費(694万5512円)の合計4861万8584円は,本件事故と相当因果関係にある損害である。 (カ)装具・器具購入費 275万7374円原告Aは,本件事故による傷害及び後遺障害により,頚椎装具,コンフォートクラッチ,短 1万8584円は,本件事故と相当因果関係にある損害である。 (カ)装具・器具購入費 275万7374円原告Aは,本件事故による傷害及び後遺障害により,頚椎装具,コンフォートクラッチ,短下肢装具及び車いすが必要となり,これらを購入した。 その費用は,別紙原告Aの損害計算書(7)のとおり,将来の買い替え費用を含めて合計275万7374円を下らない。 (キ)家屋改造費等 821万6500円原告Aは,後遺障害により電車通学が困難であるため,大学への進学に際して下宿生活を余儀なくされ,また原告Aの両親が介護のために下宿宅を訪問せざるを得ないなど,別紙原告Aの損害計算書(8)のとおり,下宿費用及び交通費等の521万6500円の支出を要している。 また,原告Aが将来自宅で生活するためには家屋や自動車を改造する必要があり,その費用は300万円を下らない。 (ク)文書料 2万3100円原告Aは,本件事故による傷害や後遺障害に関して,別紙原告Aの損害計算書(9)のとおり,各病院に対する文書料として合計2万3100円を支払った。 (ケ)通学付添費 130万5000円原告Aは,本件事故による傷害及び後遺障害により,本件高校を卒業するまでの261日間は両親による通学付添を要したのであり,その費用は1日当たり5000円,合計130万5000円を下らない。 (コ)逸失利益 9372万2215円原告Aは,本件事故による後遺障害により終身労務に服することができない状態にあり,その逸失利益は,労働能力喪失率を100%として,平成17年度の大卒男子の平均賃金(672万9800円)に,症状固定時の原告Aの年齢である17歳から平均稼働年齢である67歳までの期間(50年)に相当するライプニッツ係数 力喪失率を100%として,平成17年度の大卒男子の平均賃金(672万9800円)に,症状固定時の原告Aの年齢である17歳から平均稼働年齢である67歳までの期間(50年)に相当するライプニッツ係数18.25592546から,大学卒業までの期間(5年)に相当するライプニッツ係数4.32947667を引いた値を乗じた額である9372万2215円となる。 (サ)入通院慰謝料 500万円原告Aは本件事故による傷害や後遺障害の治療のため,前記のとおり入院172日,通院期間3年以上を要しており,これに対する慰謝料は500万円を下らない。 (シ)後遺障害慰謝料 2500万円原告Aは本件事故によって生じた四肢不全麻痺等の後遺障害により,日常生活に困難を来すなど,その将来の社会生活に不安を抱えており,このような精神的苦痛による慰謝料は2500万円を下らない。 イ弁護士費用 1556万0847円前記アの損害額の合計の1割に相当する1556万0847円の弁護士費用を本件事故と相当因果関係のある損害として認めるのが相当である。 (被告の主張)ア原告Aの主張のうち,原告Aが本件事故により頚髄損傷の傷害を負い,後遺障害別等級の第3級の3の認定を受けたこと,J大学病院,K病院及びL病院に原告A主張の期間入院及び通院したこと並びに独立行政法人H及びI互助会から3302万円の支払を受けたことは認め,その余は不知又は争う。 イ個別の損害項目について(ア)交通費及び付添看護費原告Aは本件事故当時高校2年生であることや入院先の各病院が大規模な病院であること等を考慮すると,家族の付添が必要であったとはいえない。 (イ)将来の介護費及び雑費原告Aは現在一人暮らしをしており,家族が原告Aの居宅を訪問する回数も1週間から10日に1 大規模な病院であること等を考慮すると,家族の付添が必要であったとはいえない。 (イ)将来の介護費及び雑費原告Aは現在一人暮らしをしており,家族が原告Aの居宅を訪問する回数も1週間から10日に1回程度であるから,原告Aが日常生活に介護を要する状態であるとはいえない。 (ウ)家屋改造費等原告Aの自宅はバリアフリー設計であって,原告Aは高校卒業までの間,大きな改修をすることなく自宅で生活できていたのであるから,これを改造する必要はない。 また,原告Aが進学した大学は,本件事故後に原告A自らが志望校として選択して入学したのであるから,その下宿に要する費用を本件事故と相当因果関係のある損害ということはできない。さらに,仮に下宿までの交通費を算定するとしても,家族が原告Aの下宿宅を訪問する回数も1週間から10日に1回程度であるから,これを基に算定すべきである。 (エ)通学付添費通学付添費用が1日当たり5000円と算定される根拠は不明である。 (オ)逸失利益及び後遺障害慰謝料原告Aは,臨床心理士になることを目指して現在の大学に進学したのであり,前記のとおり,日常生活を1人で行っている上,パソコンの使用も可能であるなど,少なくとも終身労務に服することができない状態ではないことが明らかである。 (3)原告B及び原告Cの損害(原告B及び原告Cの主張)ア原告B及び原告Cは,原告Aが重大な後遺障害を抱えるに至ったことで,子の生命侵害にも比肩し得べき精神的苦痛を被ったのであり,また,原告Aの介護につき中心的役割を担い,将来に大きな不安を抱いていること等の事情も考慮すると,その慰謝料はそれぞれ500万円を下らない。 イ弁護士費用として慰謝料額の1割であるそれぞれ50万円が相当である。 (被告の主張)原告B及び原告Cの主張は争う。 (4)過失相殺に準じ 情も考慮すると,その慰謝料はそれぞれ500万円を下らない。 イ弁護士費用として慰謝料額の1割であるそれぞれ50万円が相当である。 (被告の主張)原告B及び原告Cの主張は争う。 (4)過失相殺に準じた減殺及び損益相殺(被告の主張)ア過失相殺に準じた減殺E教諭に注意義務違反が認められるとしても,体操競技の練習には高度の危険性が内在すること,原告Aは本件事故当時体操歴約3年を有する高校2年生であって,体操に関する基礎的知識及び技術を有しており,上記危険性を認識した上で自ら本件技の試技を行ったこと,補助者はあくまで受動的かつ補充的な危険防止策を講じることができるにすぎず,試技の進行自体を制御することはできないこと等の事情を考慮すると,原告らの損害額の算定に当たっては,過失相殺の場合に準じて相当の減殺を行うべきである。 イ損益相殺原告Aは,年額約70万円の障害基礎年金を受給しており,また,身体障害者手帳の交付により交通費については5割の割引を,その他の装具器具の購入や家屋改造,居宅介護等が必要な場合は,原則1割負担でサービスの受領が可能であるから,原告Aの損害額の算定に当たっては,これらの点を損益相殺として考慮すべきである。 (原告らの主張)ア過失相殺に準じた減殺について原告Aは,E教諭の指導の下で本件技の試技を行ったのであり,その行為に何らの過失も存在せず,過失相殺に準じた減殺が認められる余地はない。 イ損益相殺について障害基礎年金や交通費等の公的給付は,将来にわたって給付されるかどうかが未確定であるから,これを損益相殺の対象とすべきではない。 第3 判断 本件事故に係るE教諭の注意義務違反の有無(1)本件事故時の原告Aの習熟度についてア証拠(甲19の1ないし9,20,21,乙6,証人P,証人E,原告A本人)によれば きではない。 第3 判断 本件事故に係るE教諭の注意義務違反の有無(1)本件事故時の原告Aの習熟度についてア証拠(甲19の1ないし9,20,21,乙6,証人P,証人E,原告A本人)によれば本件事故に至る経緯について,以下の事実が認められる。 (ア)原告Aは,平成16年11月に開催された新人大会の平行棒の競技では,A難度の技である後方抱え込み1回宙返り下りを行っており,その後,平成17年3月に,本件高校の体操部員約15名とともに,E教諭の引率でF大学の設備を利用して練習を行った際や,同月中旬に,本件高校体操部員であるP及びQとともに,E教諭の引率でG高校のピット設備を利用した練習に行った際にも,本件技の練習を行わなかったが,同年4月中旬に,上記同様にG高校にピット設備を利用した練習に行った際には,本件技の練習を行った。 (イ)平成17年4月末ころに開催された平成17年度大阪高校春季大会においては,従前の大会における2部での成績が上位であった結果,本件高校は1部男子団体総合の部門に出場することとなり,原告Aも,1部男子個人平行棒の部門に出場して45人中43位という成績を得たが,同大会は規定演技のみを競技内容とする大会であったため,原告Aがこれに向けて本件技を練習するということはなかった。 (ウ)原告Aは,本件高校にはピット設備がないことから,平成17年5月24日に本件事故が発生するまでの間,着地地点にマットを複数枚重ねて設置し,宙返りの回転を大きくしていくなど段階的な練習を行っていたが,実際に競技を行う場合と同じ状況での試技を行ったことはなかった。 イこの点,被告は,上記新人大会直後から原告Aが本件技を目標に定めて練習を重ねており,平成17年4月のG高校における練習時までには段階練習の最終段階までほぼ失敗することなくこなせるよう かった。 イこの点,被告は,上記新人大会直後から原告Aが本件技を目標に定めて練習を重ねており,平成17年4月のG高校における練習時までには段階練習の最終段階までほぼ失敗することなくこなせるようになっており,同高校のピット設備を用いた練習では,足からの着地にも成功するなど試技が可能な習熟度に達していた旨主張し,E教諭もこれに沿う供述をする(証人E)。 しかしながら,仮に,原告Aが,被告の主張するような早い時期から本件技の練習を重ねていたのであれば,新たな技を練習する貴重な機会である二度のピット設備を利用した練習の際に本件技の練習を行わなかったことや,本件技の練習を行ったことが認められる平成17年4月のG高校の設備を利用した練習以降,本件事故時まで試技を行っていないことには合理的な理由がないといわざるを得ず(E教諭は,原告Aが試技を行う気持ちになるのを待っていた旨供述する(証人E)が,原告Aの習熟度が被告が主張する程度に達していたのであれば,次の段階である試技に早急に取り組むものと考えられるところであるから,上記のような理由は1か月もの間試技を行わない理由として合理的なものとはいえず,この点に関するE教諭の供述は信用できない。),被告の主張は採用することができない。 そして,本件技はC難度であって,それまで原告Aが行っていたA難度の技(後方抱え込み1回宙返り下り)やこれにひねりを加えた技(B難度)と比較して,技の難易度としては相当高いものであること(証人R)やピット設備における上記練習状況等の事情を考慮すると,原告Aの本件技の習熟度は,平成17年3月の段階ではピット設備においても試技を行うことができない程度の状態であったというべきである。そうであれば,本件高校における体操部の練習時間が1種目週2回,午後4時から午後7時であり,また 17年3月の段階ではピット設備においても試技を行うことができない程度の状態であったというべきである。そうであれば,本件高校における体操部の練習時間が1種目週2回,午後4時から午後7時であり,また練習環境もマット数が8枚程度であり,原告Aのみが大量にこれを独占して使用することは困難な状況であったこと(証人P,証人E,原告A本人)等の事情を前提とすると,その後も,本件事故時までに試技に至るまでの段階練習を尽くしていたといえるほどの十分な練習を重ねていたとは到底認めることはできない。 以上によれば,原告Aの本件技の習熟度は,少なくとも平成17年3月の段階ではピット設備においても試技を行うことができない程度の状態であったというべきであり,本件事故時においても未だ高い状態に達していたとはいえないものであったと推認される。 (2)E教諭の具体的注意義務違反の有無アE教諭は原告Aの所属する本件高校の体操部の顧問であるところ,部活動の顧問としては,部活動の内容である運動等に内在する危険性を十分に理解した上で,活動を行う部員の安全を確保するための十分な事前措置,指導をなすべき義務を負っているということができる。 これを本件についてみると,本件事故の原因である平行棒の演技は,空中での演技を内容としており,着地の際には身体を回転させるなどするため,失敗した場合には必然的に床等で身体を強打して傷害を負う高度の危険性を内在するものであるということができる。 そうであれば,顧問であるE教諭は,部員が新たに難易度が増した技に挑戦するような場合,当該生徒の技量,技の習熟度,失敗の可能性や危険性等を考慮して,仮に演技が成功しなくとも,最低限身体の強打等による傷害や後遺障害を負うことがないよう,十分な補助態勢やマット等の設備を整えた上で,自らの指導の下で演技を行わせ ,失敗の可能性や危険性等を考慮して,仮に演技が成功しなくとも,最低限身体の強打等による傷害や後遺障害を負うことがないよう,十分な補助態勢やマット等の設備を整えた上で,自らの指導の下で演技を行わせるべき注意義務を負っていると解するのが相当である。 イこの点,本件事故におけるE教諭の上記注意義務違反の有無を検討する前提となる具体的事情として,以下の事実が認められる。 (ア)原告Aの技量及び本件技の習熟度証拠(甲1,証人R,証人E)によれば,原告Aは,平行棒の演技において,A難度の技を安定してこなすことができ,本件事故直前には本件技の試技を一度は成功させるなど,相当程度の技量を有していたことが認められ,これは原告Aが平成17年の春季大会において1部の部門に出場したことからも裏付けられる。なお,原告らは,原告Aが平行棒の演技において,着地で身体が前方に飛び出す原因となる肩が前方に出る癖があった旨主張するが,これを認めるに足りる的確な証拠はない。 他方,原告Aの本件技の習熟度は,既に説示したとおり,少なくとも平成17年3月の段階ではピット設備においても試技を行うことができない程度の状態であったというべきであり,本件事故時においても未だ高いとはいえないものであった。 (イ)E教諭の指導状況E教諭は体操競技の経験を有しておらず,体操部の指導方法については民間の体操クラブの練習方法等を参考にするなどして独学で学んだのであるが,平行棒においてC難度の技を一から指導した経験はなく,体操部の練習への立会いは週2,3回,各1時間程度であった(証人E)。 また,証拠(証人E,原告A本人)によれば,E教諭は,体操部員が新たな技を行う場合には報告を義務づけていたものの,原告Aの本件技の練習を特別に指導することはなく,他の部員に対する指導と同様の指導を行う程度 拠(証人E,原告A本人)によれば,E教諭は,体操部員が新たな技を行う場合には報告を義務づけていたものの,原告Aの本件技の練習を特別に指導することはなく,他の部員に対する指導と同様の指導を行う程度であり,本件事故時の原告Aによる試技の際においても,事前の練習状況を確認することなく,立ち会った直後に試技を開始させたものと認められる。 (ウ)本件技の失敗による危険性次に本件技の失敗による危険性を検討するに,被告は,本件事故のように,本件技によって演技者が支柱を越えて前方に飛び出すことを予見することは困難であったと主張する。 しかしながら,証拠(証人P,証人R,証人E)によれば,本件技を含む平行棒の着地技において,前方へ飛び出すことが必ずしも稀な事態ではなく,演技者の習熟度や技の内容によっては支柱付近まで飛び出すこともあり得ることが認められるのであり,これらの点に加え,平行棒公式競技用マットが前後に相当長く設置される形態となっていること(甲30),高校の部活動においても設備が整っていれば前後の十分な範囲にマット等が設置されていること(甲17,26),本件技は倒立状態から前方に足をスイングさせ,回転力を突き手によって上方への飛び出す力とするものであり,スイング後の回転不足や姿勢,突き手の失敗によっては回転力が前方への推進力となることも十分にあり得るものであることなどを考慮すると,本件技を失敗した場合,演技者(本件事故時においては原告A)の身体が前方方向に支柱を越えて飛び出すことも十分に想定し得るところであり,このことを顧問であるE教諭も予見できたものと認められる。 ウ以上の点を前提に,原告らの主張するE教諭の具体的義務違反の有無を,以下検討する。 (ア)本件技の開始前の試技中止の指示義務について原告らは,本件事故の際,原告Aは演技 ものと認められる。 ウ以上の点を前提に,原告らの主張するE教諭の具体的義務違反の有無を,以下検討する。 (ア)本件技の開始前の試技中止の指示義務について原告らは,本件事故の際,原告Aは演技中にバランスを崩したのであるから,E教諭は,その時点で一旦演技を中止させるべきであったと主張する。 この点,証拠(甲1)によれば,本件事故の際,原告Aは本件技を開始する直前の倒立状態において,一旦バランスを崩しかけたことが認められる。しかしながら,原告Aは,その後,身体を揺らしながら体勢を改めて整えた上で自らタイミングを計りながら本件技を開始していることが認められ,その直前に一度試技を成功させていることも考慮すると,上記バランスを崩した点から直ちにその時点で試技を中止させるべき義務があったということはできず,この点に関する原告らの主張は採用することができない。 (イ)本件技の開始後の試技中止の指示義務についてまた,原告らは,本件事故の際,原告Aが本件技を開始した直後には,その姿勢等から前方への飛び出しが予想できたのであるから,その時点で,E教諭は試技を中止させるべき義務を負っていたと主張する。 そして,証拠(甲1,22,乙4,証人P,証人R,証人E)によれば,原告Aが倒立状態からスイングに入った直後には肩が前方に出ている姿勢となっていることから失敗の可能性が客観的に認められること,E教諭もその時点で1回目の試技とは明らかに異なる補助態勢をとろうとしていることから何らかの異常に気付いていたことが認められる。 しかしながら,既に動作を開始している状況でこれを中止させることは通常行われないこと(証人R)に加え,前掲証拠によれば,本件技の開始から突き手までの間隔は約1.5秒,姿勢の異常が見られてからの間隔は僅か0.5秒程度であり,E教諭が姿勢の異常 れを中止させることは通常行われないこと(証人R)に加え,前掲証拠によれば,本件技の開始から突き手までの間隔は約1.5秒,姿勢の異常が見られてからの間隔は僅か0.5秒程度であり,E教諭が姿勢の異常を発見したとしても,上記時点でE教諭が直ちに前方への飛び出しによる本件事故の発生を予見して,試技を中止させることは困難であったといわざるを得ず,この点ついてE教諭に注意義務違反があるとはいえない。 (ウ)本件技の試技を行うに当たっての安全な環境整備義務についてさらに,原告らは,E教諭は,原告Aに本件技の試技を行わせる際には,原告Aの習熟度や失敗の危険性を考慮すると,身体の落下が予想される前方方向にマットを敷き,又は補助者を置くなどの措置をとるべき義務を負っていたと主張する。 この点,前記イ記載の原告Aの技量及び本件技の習熟度並びに本件技の失敗の可能性及びその場合の危険性を考慮すれば,既に説示したとおり,E教諭は,原告Aに本件技の試技を行わせる際においては,原告Aが着地の宙返り下りを失敗して,回転の勢いで身体が支柱を越えて大きく前方に飛び出すことも十分に予見できたといえる。 そして,E教諭は,本件事故時において,1人で原告Aが着地する予定の方向で平行棒の中心付近で補助に備えていた(甲1,証人E)というのであり,このような補助態勢を前提とすると,着地の際に前方や後方に身体が飛び出した場合にはこれを補助者において受けとめることは困難であることが明らかであるから,そうであれば,身体の落下が予想される前方方向の広い範囲にわたってマットを敷くことで,仮に補助者が受けとめることができなくとも,着地の失敗による身体の打撲等を防止すべき注意義務を負っていたというべきである。 これに対し,本件事故時のマットの敷設状況は,前提事実のとおり,支柱から30センチメー が受けとめることができなくとも,着地の失敗による身体の打撲等を防止すべき注意義務を負っていたというべきである。 これに対し,本件事故時のマットの敷設状況は,前提事実のとおり,支柱から30センチメートルないし40センチメートルのみが出ている状態(乙3の1ないし4)であったのであり,前方に大きく飛び出した場合も想定したときには,安全確保のためには不十分な範囲での敷設であったといわざるを得ない。なお,証拠(証人E,原告A本人)によれば,本件事故以前にマットの劣化によって原告Aが足を骨折する事故が発生したことがあったと認められ,E教諭は当該事故後に特段の措置を講じることもなかったというのであるから,上記のような敷設方法に加え,マット等の設備そのものについての配慮が不十分であったことも否定できない。 そして,本件事故の態様(甲1)からして,原告Aが着地した部分を含む前方の十分な範囲にマットの敷設等を行っていれば,原告Aが着地した際に前頭部を床面に強打することはなく,本件事故の発生を防止することができたというべきであり,E教諭の本件事故時における指導監督は,この点に関する注意義務に違反していたというべきである。 エ以上によれば,本件事故の発生について,E教諭には,体操部の顧問として,部員である原告Aの練習活動の指導監督についての注意義務違反が認められ,本件事故はこれによって発生したということができるから,被告の公務員であるE教諭の上記義務違反は,その職務に関して,原告らに対する不法行為を構成し,被告は,国家賠償法1条1項に基づく責任を負う。 原告Aの損害証拠(甲2,3,20,27,28)によれば,原告Aは,本件事故によって頚髄損傷の傷害を負い,本件事故直後には身体が全く動かず,生命の危険も生じる状態であったが,その後の手術,入院及び通院 Aの損害証拠(甲2,3,20,27,28)によれば,原告Aは,本件事故によって頚髄損傷の傷害を負い,本件事故直後には身体が全く動かず,生命の危険も生じる状態であったが,その後の手術,入院及び通院による治療並びにリハビリテーションによって車いすを使用しての移動や杖を使用しての歩行が可能な程度に回復し,平成18年7月29日には症状の固定が確認されたこと,症状固定時において,原告Aには,後遺障害として,四肢に中等度の痙性麻痺と感覚障害(鈍麻,異常成覚,痛み)が生じており,両上肢は巧緻性障害が認められるとともに5キログラム以下の物しか持つことできず,また,両下肢は,支持,耐久性に乏しく,転倒しやすく,1キロメートル以下の歩行も困難であるという状況であることが認められる。 そして,原告Aは,上記後遺障害のため,日常生活においてもゆっくりとしか移動ができず,下肢の麻痺による転倒で全身に打撲を負うことがあり,入浴については時に介護が必要な状況となっている(甲2,3,25)。 そこで,以上のような原告Aの状況を前提に,本件事故と相当因果関係がある損害を,以下検討する。 (1)治療費(認定額2万1530円)原告Aは,本件事故によって生じた傷害及び後遺障害の治療のため,入院及び通院による治療を受け,その治療費として合計130万9147円を支払ったとし,既に支給を受けたJ大学病院及びK病院の入院治療費115万5447円を控除した15万3700円の請求をしている。 そして,証拠(甲2,3,5,6,8(枝番を含む。以下同じ。))及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,本件事故によって生じた傷害及び後遺障害の治療のため,上記入院治療費以外にL病院1万2030円,K病院(個室使用料)8万8200円,M整形外科1万7000円(1月当たり1000円×17 ,原告Aは,本件事故によって生じた傷害及び後遺障害の治療のため,上記入院治療費以外にL病院1万2030円,K病院(個室使用料)8万8200円,M整形外科1万7000円(1月当たり1000円×17か月),N病院500円及びO整形外科4万8000円(1月当たり1000円×48か月)の合計16万5730円を支払い又は支払予定である事実が認められる。 この点,上記治療費のうち,K病院における個室使用料8万8200円(甲6の1)については,その必要性を認めるに足りる証拠はなく,これを本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできない。また,通院治療に係る費用については,症状固定日である平成18年7月29日までに対応する2万1530円(L病院1万2030円,M整形外科平成17年11月から平成18年7月まで(9か月間)に相当する9000円,N病院500円)を本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 よって,原告Aが支払い又は支払予定である治療費16万5730円のうち上記個室使用料8万8200円及び症状固定費日以降の通院による治療費5万6000円(M整形外科中平成18年8月以降の合計8000円とO整形外科の合計4万8000円)を控除した合計2万1530円が,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 (2)入院諸雑費(認定額25万8000円)原告は,J大学病院(84日間)及びK病院(88日間)に合計172日間入院して治療を受けており,その間の入院諸雑費として1日当たり1500円を本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当であるから,その合計は25万8000円となる。 (3)交通費(認定額1900円)証拠(甲2,3,5,6,8)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故によって生じた傷害及び後遺障害の治療 のが相当であるから,その合計は25万8000円となる。 (3)交通費(認定額1900円)証拠(甲2,3,5,6,8)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故によって生じた傷害及び後遺障害の治療のため,別紙原告Aの損害計算書(3)記載のとおり,入院及び通院による治療のための交通費として,合計20万5000円を要した事実が認められる。 この点,原告Aの主張する入院及び通院による治療のための交通費のうち,原告A以外の家族に係る部分については,下記(4)の付添看護費として填補されるべき損害であって,それとは別にここで損害と認めることはできない。また,原告Aに係る交通費のうち,本件事故と相当因果関係のある損害と認められるのは,上記治療費と同様,症状固定日である平成18年7月29日までの部分というべきである。 よって,原告Aの主張する別紙原告Aの損害計算書(3)の交通費のうち症状固定日である平成18年7月29日までの原告A自身の交通費の合計1900円(L病院1420円,N病院480円)が,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 (4)付添看護費(認定額158万7000円)本件事故による原告Aの受傷状況や治療状況は既に認定説示したとおりであり,その内容を前提とすると,原告Aの入院及び通院による治療には家族等の介護が必要であったというべきであり,近親者の入院付添費として1日当たり6000円を,通院付添費として1日当たり3000円を本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 そして,証拠(甲2,3,5,6)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aの入院日数は172日であり,通院日数(治療費及び交通費と同様に,症状固定日までの費用を相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。)はK病院を退院した後症状固定日までの期間を考慮した ば,原告Aの入院日数は172日であり,通院日数(治療費及び交通費と同様に,症状固定日までの費用を相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。)はK病院を退院した後症状固定日までの期間を考慮した相当日数である185日(1週間当たり5日×37週間)と認められるから,付添看護費の合計は158万7000円(6000円×172日+3000円×185日)となる。 (5)将来の介護費及び雑費(認定額2083万6536円)本件事故による原告Aの受傷状況や治療状況を前提とすると,原告Aは将来にわたって日常生活に介護を要する状況にあると認められ,その介護費用としては,原告Aが1人暮らしが可能な程度には回復していることなどの事情も考慮すると,症状固定日から1日当たり3000円を本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 なお,原告Aの主張する将来の雑費については,その内容は将来の介護費用に含まれるべきものであり,別途その必要性を認めるに足りる的確な証拠はない。 よって,1年分の介護費用109万5000円(3000円×365日)に症状固定日における原告Aの年齢である17歳男子の平均余命年数(62年)に対応するライプニッツ係数である19.0288(小数点以下第5位を四捨五入。以下で示すライプニッツ係数の値について同じ。)を乗じた2083万6536円が,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 (6)装具及び器具購入費(認定額25万8497円)証拠(甲9ないし13)によれば,原告Aが,本件事故後に身体補助に利用するため,頚椎装具(1万9827円),コンフォートクラッチ(1万6286円),短下肢装具(4万4290円)及び車いす(介助用8920円,自走用2万3776円)を購入し,合計11万3099円を支払った事実が認められるところ,これらはい コンフォートクラッチ(1万6286円),短下肢装具(4万4290円)及び車いす(介助用8920円,自走用2万3776円)を購入し,合計11万3099円を支払った事実が認められるところ,これらはいずれも本件事故によって生じた傷害及び後遺障害を原因とした購入の必要性があるというべきであり,その支出は,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 また,弁論の全趣旨によれば,上記コンフォートクラッチの耐用年数は4年,車いすの耐用年数は5年と認められるところ,買い替えのための将来の費用は以下のとおり合計14万5398円と認められ,これらもまた,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 よって,装具及び器具購入費のうち本件事故と相当因果関係のある損害は,合計25万8497円となる。 アコンフォートクラッチ(7万1524円)原告Aは,本件事故後の平成17年10月27日に最初のコンフォートクラッチを購入しており(甲10),このときを基準とした原告Aの平均余命年数を前提とすると,少なくとも15回の買い替えが必要であると認められるから,単価1万6286円に本件事故後4年目(最初の購入時から耐用年数の4年が経過したとき)から60年目までの4年ごとのライプニッツ係数(4年目0.8227,8年目0.6768,12年目0.5568,16年目0.4581,20年目0.3769,24年目0.3101,28年目0.2551,32年目0.2099,36年目0.1727,40年目0.1420,44年目0.1169,48年目0.0961,52年目0.0791,56年目0.0651,60年目0.0535)の合計4.3918を乗じた7万1524円(1円未満切り捨て。 以下同じ。)イ車いす(7万3874円)原告Aは,本件事故から約2年が経過した平成19年3月29 0.0651,60年目0.0535)の合計4.3918を乗じた7万1524円(1円未満切り捨て。 以下同じ。)イ車いす(7万3874円)原告Aは,本件事故から約2年が経過した平成19年3月29日に最初の自走用車いすを購入しており(甲13),このときを基準とした原告Aの平均余命年数を前提とすると,少なくとも12回の買い替えが必要であると認められるから,自走用車いすの単価2万3776円(原告Aは電動車いすの利用も考慮した単価を主張するが,上記自走用車いすの購入費用を超える費用の必要性を認めるに足りる的確な証拠はない。)に本件事故後7年目(最初の購入時から耐用年数の5年が経過したとき)から62年目までの5年ごとのライプニッツ係数(7年目0.7107,12年目0. 5568,17年目0.4363,22年目0.3418,27年目0. 2678,32年目0.2099,37年目0.1644,42年目0. 1288,47年目0.1009,52年目0.0791,57年目0. 0620,62年目0.0486)の合計3.1071を乗じた7万3874円(7)家屋改造費等(認定額0円)原告Aが主張する損害のうち下宿負担費用については,原告Aは自ら選択した大学に通学していること(原告A本人)も考慮すると,本件事故により当該大学への進学及びそれに付随する下宿が必要不可欠であったような事情があれば格別,本件においてはその必要性を認めることは困難であり,これを本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 また,近親者の下宿までの交通費についても同様にその必要性は認められないし,そもそも,近親者の交通費は介護費用として考慮すべきものであり,それとは別に損害として認めることはできない。 さらに,将来の家屋改造費及び自動車改造費についても,原告Aはその必要性を められないし,そもそも,近親者の交通費は介護費用として考慮すべきものであり,それとは別に損害として認めることはできない。 さらに,将来の家屋改造費及び自動車改造費についても,原告Aはその必要性を主張するものの,現在までにこれに関する支出をした事実やその他将来にわたってこれが必要となる具体的事情を何ら主張立証しないから,これを本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 (8)文書料(認定額2万3100円)証拠(甲5ないし7)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,本件事故によって生じた傷害及び後遺障害に関する文書を作成するために,合計2万3100円を支出していることが認められるところ,本件事故の経緯並びに原告Aの傷害及び後遺障害の内容等を考慮すると,上記文書はいずれも作成の必要性があったというべきであり,その支出は,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 (9)通学付添費(認定額52万2000円)証拠(甲20,27,28,原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故後から本件高校卒業までの間,原告Aの通学には少なくとも261回にわたり原告Aの母(原告C)が付き添っていたことが認められるところ,上記原告Aの傷害及び後遺障害の状況を前提とすると原告Aは通学に付添いを要する状況にあったということができ,その付添費用としては,1日当たり2000円を本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 よって,原告Aの通学付添費として52万2000円(2000円×261日)が,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 (10)逸失利益(認定額9372万1886円)ア前記のとおり,原告Aには,本件事故によって頚髄損傷の傷害を負った結果,四肢不全麻痺の後遺障害が生じており,証拠(甲4)によれば,原告Aの後遺障害は,後 )逸失利益(認定額9372万1886円)ア前記のとおり,原告Aには,本件事故によって頚髄損傷の傷害を負った結果,四肢不全麻痺の後遺障害が生じており,証拠(甲4)によれば,原告Aの後遺障害は,後遺障害別等級の第3級の3(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの)に相当するものとして,逸失利益算定の基礎となる労働能力喪失率は100パーセントと認めるのが相当である(なお,被告は,原告Aが大学に進学し,就労の意欲を示している等と主張して労働能力喪失率を100パーセントとすることを争うが,原告Aの後遺障害の状況は,既に述べたとおり,一定の回復がみられるとはいえなお相当重度のものであり,被告の主張する事情は上記認定を左右するものではない。)。 イまた,原告Aは,症状固定当時満17歳の男子であり,その後大学に進学しているのであるから,逸失利益の算定に当たっては,平成17年度大卒男子労働者全年齢平均給与額である672万9800円に,17歳から67歳(平均稼働年齢)までの50年間に相当するライプニッツ係数(18.2559)から17歳から22歳(大卒者の就労可能年齢)までの5年間に相当するライプニッツ係数(4.3295)を控除した13.9264を乗じた金額を基礎として,これに前記アの労働能力喪失率を乗じて計算すべきである。 ウ以上の方法によって計算すると,本件事故と相当因果関係のある原告Aの逸失利益は,9372万1886円と認められる。 (11)入通院慰謝料(認定額360万円)原告Aの入院期間は172日間,通院期間は症状固定日まで約8か月半であり,その入院期間及び通院期間に加え,後遺障害の程度,通院治療の頻度等を考慮すると,入院及び通院によって生じた原告Aの精神的苦痛に対する慰謝料としては,360 通院期間は症状固定日まで約8か月半であり,その入院期間及び通院期間に加え,後遺障害の程度,通院治療の頻度等を考慮すると,入院及び通院によって生じた原告Aの精神的苦痛に対する慰謝料としては,360万円が相当である。 (12)後遺障害慰謝料(認定額2000万円)前記(10)アのとおり,原告Aの本件事故によって生じた後遺障害は後遺障害別等級の第3級に相当するものである。そして,原告A本人の供述によれば,原告Aは現在でも日常生活に支障が生じていることが認められ,その他本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,上記後遺障害によって生じた原告Aの精神的苦痛に対する慰謝料としては,2000万円が相当である。 (13)過失相殺及び損益相殺ア過失相殺について被告は,原告Aが本件技の危険性を認識した上で試技を行ったこと等を主張して過失相殺又はこれに準ずる損害の減額を主張する。 しかしながら,原告Aは本件高校の体操部に所属し,同部顧問のE教諭の指導の下,これまでよりも高難度の本件技の習得を目指して練習を行っていたのであり,原告Aが既に身につけている技量からさらに高度の技術を一つ一つ身につけながら,段階的に本件技を習得していくものと認められるから,その習得に至る過程においては,失敗をくり返すであろうし,それに伴う危険性も当然想定されるところである。そうであるからこそ,既に説示したとおり,E教諭において,本件技の危険性を前提とし,かつ,原告Aの習熟度等を考慮して,試技の失敗等も想定した上で安全な環境を整備すべき注意義務を負っていたと解されるのである。これらからすると,本件技が危険を伴うものであり,また,原告Aがそのことを認識していたからといって,そのことを理由に原告Aの過失ないしこれに準じるものとして損害額を減額すべき根拠とすることは相当ではない からすると,本件技が危険を伴うものであり,また,原告Aがそのことを認識していたからといって,そのことを理由に原告Aの過失ないしこれに準じるものとして損害額を減額すべき根拠とすることは相当ではないというべきである。 したがって,この点に関する被告の主張は採用することができない。 イ損益相殺について(ア)原告Aは,本件事故による傷害及び後遺障害に関して,独立行政法人H及びI互助会から合計3302万円の給付(前記(1)で治療費から控除するものを除く。)を受けており(当事者間に争いがない。),これにより原告Aの損害は一部填補されているから,上記給付金額は損害から控除されるべきである。 (イ)なお,被告は,原告Aが将来にわたって障害基礎年金を受給し,また,福祉行政のサービスが利用できることを損害額の算定において考慮して損益相殺をするべきであると主張するところ,証拠(原告A本人)によれば,原告Aは本件事故による後遺障害について,障害基礎年金の受給資格を有していることが認められる。しかしながら,上記のような給付を得たことによって受給者の損害賠償請求権が失われるのは,受給者が現実に年金等を受給して損害が填補されたときに限られ,未だ現実の給付がない以上,たとい将来にわたり継続して給付されることが確定していても,受給権者は損害賠償の請求をするに当たり,このような将来の給付額を損害賠償債権額から控除することを要しないと解するのが相当である。そして,本件においては,原告Aが現実に年金等を受給して損害が填補されたこと及びその金額等を具体的に認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって,将来の年金給付等を理由とする,被告の損益相殺の主張は採用することができない。 (14)以上によれば,本件事故による原告Aの損害額(損益相殺後の額)は合計1億0781万044 拠はない。 したがって,将来の年金給付等を理由とする,被告の損益相殺の主張は採用することができない。 (14)以上によれば,本件事故による原告Aの損害額(損益相殺後の額)は合計1億0781万0449円であり,同額等に照らすと,本件事故と相当因果関係がある原告Aの弁護士費用は1000万円が相当であると認められる。 原告B及び原告Cの各請求について(1)本件事故によって原告Aが負った傷害及び後遺障害は既に述べたとおり相当重度なものであって,治療やリハビリテーションの結果一定の回復は認められるものの,本件事故直後には生命の危険も生じたというのであるから,原告Aの両親である原告B及び原告Cは,子である原告AがE教諭の不法行為によって身体を害され,そのために同原告が生命を害された場合に比して著しく劣らない程度の精神上の苦痛を受けたものと認められるから,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,自己の権利として慰謝料を請求することができると解するのが相当である。 (2)そして,原告Aが負った傷害及び後遺障害の具体的状況等本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,本件事故によって生じた原告B及び原告Cの精神的苦痛に対する慰謝料としては,各自200万円が相当であり,同額等に照らすと,本件事故と相当因果関係がある原告B及び原告Cの弁護士費用は各自20万円が相当であると認められる。 なお,被告の過失相殺の主張を採用することができないことは,既に説示したとおりである。 結論 以上によれば,原告Aの請求は,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金1億1781万0449円及びこれに対する平成17年5月24日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,原告B及び原告Cの各請求は,各自国家賠償法1条1項に基づく 0449円及びこれに対する平成17年5月24日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,原告B及び原告Cの各請求は,各自国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金220万円及びこれに対する平成17年5月24日(同上)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で,それぞれ理由があるから,その限度で原告らの請求を各認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,65条1項本文,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第11民事部裁判長裁判官田中健治裁判官高原知明裁判官植田 類

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