平成15(わ)4999 殺人,殺人未遂被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年3月10日 大阪地方裁判所
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判決文本文39,432 文字)

事件番号  :平成15年(わ)4999号事件名 :殺人,殺人未遂被告事件裁判年月日 :H16.3.10裁判所名  :大阪地方裁判所担当部 :第7刑事部 主文 1 次の各供述調書のうち,下記の部分を証拠として取り調べる。 (1) 被告人の警察官に対する弁解録取書〔乙27〕の全部(2) 被告人の検察官調書〔乙23〕のうち,3丁7行目から4丁15行目までを除くその余の部分 2 次の各供述調書のうち,下記の部分につき検察官の証拠調べ請求を却下する。 (1) 被告人の警察官調書12通〔乙5,9~13,15~20〕の全部(2) 被告人の検察官調書〔乙23〕のうち,3丁7行目から4丁15行目までの部分 3 次の各供述調書のうち,下記の部分を証拠から排除する。 (1) 被告人の警察官調書〔乙22〕のうち,ア 11丁16行目から同丁最終行目までイ 13丁16行目から同丁21行目までウ本調書末尾添付の写真35枚目(「Aのむねにとどめをさしたときのじょうきょうをせつめいしているしゃしんです」との説明文の付されているもの)エ本調書末尾添付の写真41枚目(「Aのむねにトドメさしたときをせつめいしました」との説明文の付されているもの)オ本調書末尾添付の写真42枚目(「Aのむねにトドメさしたときナイフの」から始まる説明文の付されているもの)(2) 被告人の検察官調書〔乙25〕のうち,ア 6丁5行目から7丁2行目までイ 19丁8行目から20丁4行目までウ 20丁最終行目から21丁5行目までエ本調書末尾添付の資料2の自供書の写し2枚(「Aをころしたときつかったナイフ」と題するものと「Aをさしたナイフ」と題するもの)オ本調書末尾添付の資料6の写真14号か ら21丁5行目までエ本調書末尾添付の資料2の自供書の写し2枚(「Aをころしたときつかったナイフ」と題するものと「Aをさしたナイフ」と題するもの)オ本調書末尾添付の資料6の写真14号から同20号までとその各説明文カ本調書末尾添付の資料8の写真108号から同115号までとその各説明文 理由 第1 争点と当事者の主張検察官は,被告人の供述調書として,警察官調書22通〔乙1~22〕,検察官調書3通〔乙23~25〕,警察官及び検察官に対する各弁解録取書〔乙27,28〕,勾留質問調書〔乙29〕の証拠調べを請求しているのに対し,弁護人は,このうち相当数の供述調書の取調べに同意し(但し,その一部については信用性を争っている。),これらについては既に取り調べ済みであるものの,その余の供述調書の多く,すなわち警察官調書12通〔乙5,9~13,15~20〕及び検察官調書1通〔乙23〕については供述の任意性を争い,他方,警察官に対する弁解録取書〔乙27〕については,同書面の作成の真正自体を争っている。 弁護人の主張の骨子は,(1) 任意性については,被告人が自宅を出るときから殺意があったとする点,犯行に使用したナイフを自宅から持ち出したとする点,被告人にはA被害者に対し「とどめを刺す」という行為も認識もないのにその認識と行為を認めている点につき,それぞれ捜査官から供述を押し付けられたというものであり,(2) 上記警察官に対する弁解録取書については,弁解録取時ではなく,別の機会に作成されたか,他の調書と合体させて作成された疑いがあるというものである。 これに対し,検察官は,本公判期日に至るまで,上記弁護人の主張に対する明示的な反論は行っていないが(なお,当裁判所は,本決定に先立ち,当事者双 合体させて作成された疑いがあるというものである。 これに対し,検察官は,本公判期日に至るまで,上記弁護人の主張に対する明示的な反論は行っていないが(なお,当裁判所は,本決定に先立ち,当事者双方に対し,改めて,任意性に関する補充的な主張がある場合には平成16年2月末日までに書面で提出するように促した次第である。),被告人質問や取調官の証人尋問等の過程を通じ,上記弁護人の主張を争う趣旨を看取することができる。 よって,以下,弁護人が証拠能力を争う上記各供述調書の採否について検討を行う一方,既に取調べ済みの被告人の供述調書についても,その関連で証拠能力に疑いを生じないか再検討を行うこととする。 (なお,以下の判断中においては,日時はすべて平成15年のそれを指すものとする。また,被告人が本件犯行に使用したナイフ〔平成15年押第770号の2〕を「本件ナイフ」と,7月4日に被告人の元の勤務先から発見・領置された,本件ナイフと酷似するナイフ〔同押号の1〕を「酷似ナイフ」と略称する。)。 第2 当裁判所の判断 1 被告人の捜査供述の任意性現段階で取り調べ済みの証拠に基づく当裁判所の認定・判断は,以下のとおりである。 (1) 任意性に関する被告人と取調官双方の各供述内容そこでまず,捜査段階における被告人の供述の変遷過程及びその点に関する取調べ状況等に関し被告人と取調官の双方の言い分を見るに,本件において特にポイントになると思われる,① 本件ナイフの入手先(なお,弁護人は,自宅を出るときから殺意があったとする点も供述を押し付けられた旨主張しているが,これは本件ナイフの入手先の問題と連動する問題なので,ここで一緒に取り上げることにする。),② A被害者に対するとどめ刺突の存否,③ 識字能力・表現能力に劣る被告人から多数の供述調 主張しているが,これは本件ナイフの入手先の問題と連動する問題なので,ここで一緒に取り上げることにする。),② A被害者に対するとどめ刺突の存否,③ 識字能力・表現能力に劣る被告人から多数の供述調書が作成されていく経緯等に関する両者の供述の概要は,それぞれ以下のとおりである。 ア被告人の公判供述の概要私はA被害者やB被害者を殺すつもりはなかったし,そのようなことは取調官であるC刑事には一切言っていない。しかし,特に強調したいのは,① 本件ナイフは自宅から持ち出したものではなく,犯行当日自宅を出発して徒歩でA被害者宅に向う途中のD公園で拾った(具体的には,同公園の出口にある数段の階段の脇のコンクリート部分に鞘に納まった状態で落ちていたのを,最初一瞬櫛か何かなと思って拾ったが,鞘を抜いてナイフであることが判ったので,自分の趣味であるミニチュア小物作りに使えるのではないかと思い,自然と自分のポケットに入れた。)ものである,犯行当日は,前夜A被害者を殺害するために用意したサバイバルナイフも持たず,とにかくもう一度A被害者と話し合うために手ぶらで自宅を出たということであり,さらに,② B被害者を刺突した後に,A被害者にとどめ刺突を行ったことはなく,B被害者を刺した後はいったんA被害者の方に戻ったものの,その瞬間に次女が玄関の方にいたため,私もその直後に玄関から外に出ていった,確かに,A被害者の胸を刺したのは事実だが,それはB被害者を刺突する前のことであり,しかも,その刺し方は,A被害者を壁に追いつめ,同被害者が壁にもたれて立っている状態からずるずると下にずり落ちて尻餅をついていく間に本件ナイフを順手に持ったまま正面から同被害者の右胸に垂直に近い形で刺したということである。そして,① 7月4日の取調べまでは,C刑事も私の話をよ 態からずるずると下にずり落ちて尻餅をついていく間に本件ナイフを順手に持ったまま正面から同被害者の右胸に垂直に近い形で刺したということである。そして,① 7月4日の取調べまでは,C刑事も私の話をよく聞いてくれて,本件ナイフは公園で拾ったという供述も調書に残してくれたこともあった。ところが,7月4日は,警察も何か自分が前に勤務していた会社に調べに行ったらしく,同日昼頃の取調べで,C刑事は,取調室に入ってくるや否や,開口一番,「おまえ,うそついたろう。」「前に勤めていたところにこれ同じものがあるやないか,これ,どういう弁解すんねん。」などと強い口調で言ってきた。私は,それは知りませんと言ったが,「そんなもん通るもん違う。見えるうそつくな。」などと言われた。それはもう一方的で,C刑事は,机を拳で4,5回叩いたり,私の左肩を右掌で押さえたりするなど,暴力に近く,すごい恐怖を感じた。そのため,やむをえず最後に,「どうしたらええんですか。」と尋ねたところ,C刑事も,最初のうちは「こんなん詳しくはわしから言えるもん違う。」などと言っていたが,そのうち,「わしから堂々と言われへんけども,わしの言うたようにやったらちゃんとやったる。」などと小さい声で耳移ししてきた。それで,自宅から本件ナイフを持ち出したという調書ができた。② とどめ刺突の関係も,私は「とどめ」という言葉すら知らずC刑事に教えてもらったくらいであったが,C刑事から,B被害者が最後に私が刺してるところを見たって言っていると聞かされ,自分はそれは違う,そんな余裕はなかったと言ったものの,「刺された本人が言うてんねんから確実や。」「押し込んで入れんと絶対入らへんから。」などと押し切られ,本件ナイフの入手先の件でC刑事に恐怖を覚えていたこともあって,その旨の調書の作成に応じざるを得なかった。そし が言うてんねんから確実や。」「押し込んで入れんと絶対入らへんから。」などと押し切られ,本件ナイフの入手先の件でC刑事に恐怖を覚えていたこともあって,その旨の調書の作成に応じざるを得なかった。そして,C刑事から「おまえ手が器用やから,本件ナイフを順手から逆手に持ち替えることもできるはずやから。」などと言われ,取調室内でとどめを刺す練習のようなことまでさせられた結果,検証調書や再現実況見分調書でのとどめ刺突の再現が行われることとなった。③ 私は,中卒後ずっと工場で力仕事ばかりしていたこともあって,もともと漢字を書くことや物事を上手に表現することが苦手であり,自供書もC刑事の言うがままに書いた。供述調書にはいろいろ凝った表現が出てくるが,そういうものは一切話したことはなく,すべてC刑事が自分で書いた言葉である。それで,私も,「そういう言い方はあんまり知らんですよ。」などと言ったこともあったが,C刑事は「もうわしに任せ。」と一方的だった。私は,今まで警察沙汰や逮捕を経験したことがなく,取調べを受けたのも火事の第一発見者として1回調書をとられただけであったため,警察というところは,こういうふうに言い分を聞いてもらえないところなのかと怖くなり小さくなってしまった。検察官の取調べにおいても,警察官も検察官も同じだという意識であったし,もし違うことを言うと,それがC刑事に分かって,おまえ何であんなことを言うたなどと後で責められるのが怖く,恐怖心が一杯であったこともあって,もうしゃべらんほうがええわと思い,警察での調書と同じ内容を供述した。 イ C刑事の証言の概要以上のような被告人供述に対し,逮捕の際の弁解録取以来終始被告人の取調べを担当していたC刑事は,当公判廷における証人尋問において,概要,次のとおり供述している。 ① の証言の概要以上のような被告人供述に対し,逮捕の際の弁解録取以来終始被告人の取調べを担当していたC刑事は,当公判廷における証人尋問において,概要,次のとおり供述している。 ① 被告人は,逮捕当初,殺害に使用した本件ナイフをA被害者宅に来る途中のD公園で拾ったという弁解をしていたが,その弁解は,不合理であり,全く信用していなかった。したがって,公園のどこで拾ったかなどということも尋ねていない。7月4日は,被告人の生い立ちや趣味等の取調べを行う一方,それと併行して「どこに落ちてるねん。そんなもん,落ちてるわけないじゃないか。」などと追及を行っていたが,被告人は,追及を受けると,そんなん言われてもと黙り込むような状態であった。その後,被告人に休憩で食事させている間に,捜査本部の捜査班長に呼ばれ,「元稼働先に同じようなナイフがあるんじゃないか。その辺をちゃんと追及しとかなあかんぞ。」というヒントのような指示を受けた(この段階で,班長は,酷似ナイフ発見の情報を得ていたが,なぜ私にその情報を与えなかったのかはよく分からない。)ことから,その言葉に,私は,同じようなナイフがあったんだなとピンときて,同日午後6時前からの取調べでは,被告人に対し,「実際に殺そうと思って自宅を出たというのに,本件ナイフを公園で拾ったというのはつじつまがあわない。おかしい。」など追及する一方,「元の勤め先にこれと同じようなナイフはないか」「あったら,あんた,どないするんや。うそついてることになるで。あるん違うんか。」などと追及していくと,最初は否定していた被告人も次第に黙り込んでしまった。そこで,「現にあるん違うか。うちの捜査員はあるような感じのことをちらっと言うとるぞ。」などと更に追及していくと,最後に被告人は「自宅にありました。」と供述を変えた。 告人も次第に黙り込んでしまった。そこで,「現にあるん違うか。うちの捜査員はあるような感じのことをちらっと言うとるぞ。」などと更に追及していくと,最後に被告人は「自宅にありました。」と供述を変えた。そのため,さらに,「自宅にあるんやったら,どこから持ってきたんや,どこで買うたんや。」などと尋ねたが,それについては被告人は触れようとしなかった(なお,4日の取調べ終了後,班長から「ほらみてみ。同じようなのがあるねん。」と言って初めて酷似ナイフを見せられた。)。そして,その後の取調べで,被告人は,Eほか2箇所の名前を挙げて,そのどこかから,勤務先に置いてあった本件ナイフを家に持ち帰ったと供述した。② 実行行為については,A被害者に対するとどめ刺突も含め,被告人は,すらすらと供述した。A被害者にとどめで胸を刺したときは,最後はとにかくこぶしを振り下ろすように刺したという説明だった。しかし,それまでナイフを順手に持っていたのだから,そのまま振り下ろして刺すという動作は不自然である,「死体はうそつかへんねんから。何回も考えて思い出してくれな,わしは困る。」などと言って追及すると,被告人は,「夢中だったから,ぱっと逆手に持ち替えたんですかね。」などという供述をするようになった(なお,被告人がA被害者にとどめを刺したという供述を始めた時期,A被害者に対しこぶしを振り下ろすという供述を始めた時期,順手に持った本件ナイフを逆手に持ち替えたという供述を始めた時期,さらには,それぞれの供述変更の契機・理由,また,なぜその供述変更の理由を供述調書に残さなかったのかなどについては,証言中でも変遷があり,すこぶる曖昧な内容にとどまっている。)。③ 被告人は,おとなしく,物事を伝えるのが下手な様子で,「わあっと思ったんですわ」とか「ぱっと思ったんですわ」などという, ついては,証言中でも変遷があり,すこぶる曖昧な内容にとどまっている。)。③ 被告人は,おとなしく,物事を伝えるのが下手な様子で,「わあっと思ったんですわ」とか「ぱっと思ったんですわ」などという,ちょっと文章にならないような表現が多かったことから,いろいろ表現上のヒントを与え,気の利いた言葉でまとめながら,一つ一つ間違いないか確認しつつ,供述調書を作成していった。被告人は字を書くのも苦手な様子であった。 (2) 被告人の警察官調書の任意性両者の供述の概要は,以上見たとおりである。両者ともかなり具体的な供述をしており,その子細な検討は後に行うこととするが,まずその全体的な供述の信用性を見ると,上記のとおり,C証言は重要部分において変遷や曖昧な部分,納得できる説明がなされていない部分があるのに比し,被告人の供述は具体的かつ迫真的で,概ね一貫しており,現に経験していなければ語り得ない説得力を有している。関係証拠によれば,被告人は,子供のときから気が弱く,寡黙で,勉強も全くできなかったが,非常に真面目な男で,長じてからもこの点は変わらず,温厚で物静かな優しい性格であり,機転が利かず要領が悪いものの,生真面目で仕事熱心,職場でも私的な面でも他人と問題を起こしたことがない(もとより,前科前歴もない。)という点で,親族や職場の者,交友のあった者の間で供述が一致している。このような性格ゆえに,逆にその反動として本件のような犯行に一気に突っ走ってしまった面は否定し難いが,その反面,被告人は,本件犯行後も,基本的に自己の責任を回避するような行動はとっておらず,本件犯行後一昼夜行方が分からない状態にあったとはいえ,これはA被害者との思い出の地で自殺したいがための行動であって,自殺を思いとどまった後は,自ら警察と連絡をとって出頭に応じているばかり おらず,本件犯行後一昼夜行方が分からない状態にあったとはいえ,これはA被害者との思い出の地で自殺したいがための行動であって,自殺を思いとどまった後は,自ら警察と連絡をとって出頭に応じているばかりか,逮捕以来自己の責任を素直に認めているのであって(なお,当公判廷において,被告人は被害者両名に対する殺意を否定しているが,激情犯においては,犯罪者自身,特に自己弁護的な態度に出なくとも,殺意を否定する傾向にあることは周知の事実である。),このような性格・態度を有する被告人が,自己の刑責を少しでも軽くするため,凶器の入手先を偽ったり,実行行為の一部につき順序を変えて供述したりするということがあり得るものか,にわかに信じ難いところである。被告人が当公判廷でもこの2点について特に強くこだわっているのも,上記のような被告人の性格等からして,ある程度理解し得るところであり,この被告人のこだわりが根拠のないものでないことは,以下の判断においても支持され得るところと思われる。 そこで,以下,前記①~③の3点について,個別に両者の供述内容の信用性につき検討を加え,任意性の存否につき判断を行うこととする(なお,別紙「捜査段階における被告人の供述経過一覧表」は,被告人の捜査段階での供述をその供述時点の時系列に従って整理すると共に,関係する他の証拠や事実も時系列に従って組み入れたものであるが,以下では,「一覧表」の略称を用いて,適宜これを引用することとする。)。 ① 本件ナイフの入手先について(ア) そこでまず,被告人の公判供述について見るに,同供述は,前記のとおり,「7月4日の取調べまでは,C刑事も被告人の話をよく聞いてくれて,本件ナイフは公園で拾ったという供述も調書に残してくれたりしたが,同日昼頃の取調べで,C刑事は,取調室に入ってくる は,前記のとおり,「7月4日の取調べまでは,C刑事も被告人の話をよく聞いてくれて,本件ナイフは公園で拾ったという供述も調書に残してくれたりしたが,同日昼頃の取調べで,C刑事は,取調室に入ってくるや否や,開口一番,『おまえ,うそついたろう。』『前に勤めていたところにこれ同じものがあるやないか,これ,どういう弁解すんねん。』などと一方的に強い口調で言う傍ら,それを否定する被告人に対し,机を拳で4,5回叩いたり,その左肩を右掌で押さえたりするなど,暴力に近い振る舞いに出たため,これに強い恐怖を感じた被告人は,やむをえず最後に,『どうしたらええんですか。』と尋ねたところ,C刑事も,最初のうちは『こんなん詳しくはわしから言えるもん違う。』などと言っていたが,そのうち,『わしから堂々と言われへんけども,わしの言うたようにやったらちゃんとやったる。』などと小さい声で耳移ししてきたためついに,自宅から本件ナイフを持ち出したという調書ができた。」というものであるが,(a) 上記の被告人供述は,一覧表記載の供述経過(確かに,警察官に対する弁解録取書〔乙27〕には,本件ナイフを公園で拾った旨の記載が残されているが,酷似ナイフが発見された直後に,初めて本件ナイフを自宅から持ち出したこと認める警察官調書〔乙5〕が作成されていること)とよく符合するものである。しかも,(b) C刑事は,当初から,「本件ナイフは公園で拾った」旨の被告人の弁解には一切耳を貸さず,全く信用できないものと勝手に決めつけていたものであって,当公判廷においても,「私としては,とにかく公園でまず拾ったという話が一番大前提で違う話だということで,必死,ある意味必死でした。で,それは絶対おかしいということで,かなり自分自身,集中していたというか,それは絶対,刑事として割らなあかんと,こんな矛盾な たという話が一番大前提で違う話だということで,必死,ある意味必死でした。で,それは絶対おかしいということで,かなり自分自身,集中していたというか,それは絶対,刑事として割らなあかんと,こんな矛盾な話はないという気持ちでおった」〔同証言調書56丁〕旨供述しており,異常なまでの執念を燃やしていたことを認めているのであるから,そのような同刑事が,7月4日,酷似ナイフが被告人の元勤務先から発見された(又は発見されたらしい)旨の情報に接して,被告人の上記供述にあるような態度に出たとしても何ら不思議ではなく,むしろ誠に自然なことと理解されるのである。(c) この点は,同じ日に作成された乙4号証の警察官調書との対比で考えても明らかである。乙4号証の警察官調書はワープロ書きの長文の調書であるが,その中の趣味の紹介の中で,一覧表にもあるとおり,被告人は切り出しナイフを所持していることを自ら認めていながら,これを犯行に用いたなどとは全く供述していないのに,その後作成されたと考えられる(なお,この点に関するC証言には変遷がある。)乙5号証の警察官調書は手書きの調書であって,その場で時を置かずに作ったという体裁になっている上,この中では,一転して,「本件ナイフは自宅から持ち出した」旨の記載がされているのである。同じ日に作成された両調書の内容・体裁を対比すると,両調書がそれぞれ成立する間には,かなり重要な捜査上の変動があったことが窺われるのであり,この点も被告人供述を裏付けるものである。 (イ) もっとも,本件ナイフと被告人の元の勤務先から発見された酷似ナイフが酷似していることは事実であり,他方,被告人が本件ナイフを公園で拾ったというのも,一見すると,あまりにも話がうますぎるように思われることから,客観的証拠や情況証拠等から,本件ナイフは元の勤務先から が酷似していることは事実であり,他方,被告人が本件ナイフを公園で拾ったというのも,一見すると,あまりにも話がうますぎるように思われることから,客観的証拠や情況証拠等から,本件ナイフは元の勤務先から被告人が持ち出したものであると確実に認定することができ,他方,本件ナイフを公園で拾った旨の被告人の弁解が明らかに虚偽であると断定することができるのであれば,これとほぼ一体の関係にある前記取調べ状況に関する被告人の供述も虚偽であるという推定が成り立ち得るように思われる。そこで,以下,被告人の弁解(すなわち,本件当日は,手ぶらで自宅を出たが,A被害者宅に向う途中のD公園で本件ナイフを拾ったというもの)の合理性について若干検討を加える。 まず,証拠物として取調べ済みの本件ナイフと酷似ナイフとを子細に対比検討すると,両ナイフは確かに同種・同型(握り部分が真鍮性で,かつ,偏平)の小型ナイフではあるが,本件ナイフは鞘付きであるのに対し,酷似ナイフには鞘がないこと,本件ナイフには「ビジネスナイフ」という刻印があるのに対し,酷似ナイフには「GINP(注-R?)O ノーリツナイフ」という刻印があること,以上の2点に差異があることを見て取ることができる。そして,捜査報告書〔甲72,73,75,77,78〕及びFの警察官調書〔甲82〕によれば,(a) 両ナイフは,いずれも岐阜県関市所在のG株式会社(老舗の刃物会社であり,彫刻刀の生産量が全国の80%を占める。)が製造し,業界では「真鍮ナイフ」と通称されているものであるが,この種のナイフは,かつて鉛筆削りが普及していなかった当時は小中学校等で鉛筆を削るのに筆箱に入れて使用されていたものであり,最近では,工場でプラスティック・ゴム等の成型をする時に「バリ取り」として使用されているものであること,(b) この いなかった当時は小中学校等で鉛筆を削るのに筆箱に入れて使用されていたものであり,最近では,工場でプラスティック・ゴム等の成型をする時に「バリ取り」として使用されているものであること,(b) この種の「真鍮ナイフ」は,G株式会社において40年前から製造しており,刻印の違いに応じて,「ペナントナイフ」,「ビジネスナイフ」,「ノーリツナイフ」の3種類があるが,そのうち,「ペナントナイフ」が最も数が多く,年間13万本を製造して,現在でもG自らが全国の金物問屋等に卸していること,(c) これに対し,「ビジネスナイフ」については,40年位前から,専ら株式会社H(名古屋市a区b所在)からの受注でGが生産していたものであり,以前は年間2~3万本納めていたが,5年前ころから7~8000本に減り,3年半前にHが廃業したことに伴い,生産を中止した(なお,F警察官調書では,平成10年11月まで製造とのことである。)ものであるが,上記株式会社Hは,さらに,これを株式会社I(岐阜市所在。30年前から仕入れて販売しており,販売量は1か月に20本入り5箱位だったが,大阪の業者等には販売していないとのことである。)や名古屋の現金問屋に卸したりしていたものであり,大阪に販売ルートを持つ会社としては,少なくとも後記Jが-仕入れ先が不明ながらも-20年くらい前にはこれを販売していたこと,(d) 他方,「ノーリツナイフ」は,やはりGが受注生産していたものではあるものの,上記「ペナントナイフ」,「ビジネスナイフ」とは異なり,全てK株式会社(名古屋市a区c所在)に納入していたこと,以上の事実が認められるのであって,これらを総合すれば,本件ナイフを含む「ビジネスナイフ」と酷似ナイフを含む「ノーリツナイフ」とは,同じGが生産したものであるとはいえ,両者は卸先を全く異にしており,しか 事実が認められるのであって,これらを総合すれば,本件ナイフを含む「ビジネスナイフ」と酷似ナイフを含む「ノーリツナイフ」とは,同じGが生産したものであるとはいえ,両者は卸先を全く異にしており,しかも「ビジネスナイフ」自体,数年前までは,プラスティック・ゴム等の成型用に,40年くらい前から年間2~3万本販売されていて,大阪に販売ルートを持つ会社もこれを扱っていたことから,大阪府内にも工場関係者を中心に以前から相当数出回っていたものと推認することができる。 一方,被告人が以前勤務していたEの経営者L〔甲38〕,その妻M〔甲80〕,その関連会社社長N〔甲81〕,同じくO〔甲83〕の各警察官調書を総合すれば,(a) 被告人の元勤務先であるEでは,いわゆる「バリ除り」作業(パイプやプラスティックの突起物を滑らかにするための作業)用に約10年位前から酷似ナイフやこれと同型のナイフを用いていたが,これらは約10年位前に,経営者の妻であるMが,外注先であるP株式会社(大阪府八尾市所在)の先代社長Qから5,6本位まとめてもらったものであって,その後新たに購入したものはないところ,そのうち現在でも残っているのは,今回上記Lが7月4日に警察に任意提出した酷似ナイフともう1本のナイフだけであるが,これらはいずれも鞘無しの「ノーリツナイフ」であること,(b) 他方,Mに上記ナイフを贈与したQは,同じく関連企業であるR株式会社(八尾市所在)のN社長からそのナイフをもらったものであり(上記Qの子息Oによれば,QがNからもらってきたのは「ノーリツナイフ」であったように覚えているとのことである。),上記RはさらにJ(名古屋市d区所在)からこれを1箱20本入りで1回20箱くらい注文して購入していたものであるところ,そのときのナイフの一部で現在上記N社長の下に残 うに覚えているとのことである。),上記RはさらにJ(名古屋市d区所在)からこれを1箱20本入りで1回20箱くらい注文して購入していたものであるところ,そのときのナイフの一部で現在上記N社長の下に残っているナイフ4本はいずれも「ノーリツナイフ」であること,(c) Jは「ビジネスナイフ」を約20年前から取り扱っていないこと,以上の事実が認められるのであって,これらを総合すれば,本件証拠上,被告人がEに勤務していた当時酷似ナイフ等を用いる作業に従事していたことを窺わせる証拠はない(被告人自身否定しているし,前記Lも,その点については記憶が定かでないとのことである。)が,仮に何らかの理由で,被告人がEに勤務していた当時,仕事場からナイフを持ち帰ることがあったにしても,それは「ノーリツナイフ」であって,本件ナイフのような「ビジネスナイフ」ではなかった可能性が極めて濃厚であると認められる。 以上要するに,被告人が元の勤務先であるEから本件ナイフ(「ビジネスナイフ」)を持ち帰ったことを認めるに足る証拠は何もないばかりか,むしろ積極的に,持ち帰ったことはなかった可能性が極めて強いことが認められる(なお,他の元勤務先にも同型のナイフがなかったことは,C刑事自身が,乙17号証の中で,被告人に「自白」させている。)のであり,他方,「ビジネスナイフ」や「ノーリツナイフ」が「バリ除り」作業のため大阪の中小企業の間でかなり一般的に用いられていたことにも照らすと,被告人の供述にあるように,D公園に本件ナイフがたまたま落ちていたとしても,それは決してあり得ないことではないと認められるのであって,これらの事実は被告人の前記弁解を弾劾するどころか,むしろそれを側面から裏付けるものであると言える。 (ウ) 以上に加え,被告人は,逮捕当初や当公判廷において ではないと認められるのであって,これらの事実は被告人の前記弁解を弾劾するどころか,むしろそれを側面から裏付けるものであると言える。 (ウ) 以上に加え,被告人は,逮捕当初や当公判廷において,「犯行前夜,A被害者を殺害の上自殺しようと考え,その殺害の凶器として,自宅にあったサバイバルナイフを用意する一方,遺書として持参するため『Aニダマサレタ』と記載した遺書をしたためたものの,本件当日の朝になって,考えを改め,もう一度A被害者と話し合いをするため,上記サバイバルナイフと遺書とを自宅においたまま,手ぶらで自宅を出発した」などと弁解・供述しているが,(a) 確かに,客観的事実としても,上記サバイバルナイフと遺書とは,自宅の机の引出しに入れられたままの状態で発見されているのであって,乙5号証以下の自白調書にあるように,仮に被告人が本件犯行当時の朝,前夜からの強固な確定的殺意を維持したまま,凶器のみをサバイバルナイフから本件ナイフに変更して出発したというのであれば,自殺の意志自体は依然持ち続けているのであるから,その際遺書については計画どおり持参するのが筋であって,上記のとおり,サバイバルナイフとともに遺書も自宅に置いたまま自宅を出発したという客観的事実は,上記被告人の弁解を裏付けるものと解されるのである。(b) また,本件ナイフは,その形状からも明らかなとおり,刃体の長さがわずか約5.1cmであって,刃の部分は実質約4cm程度しかなく,強固な確定殺意をもって殺害を実行するにはいかにも不向きな刃物であり,仮に犯行当日の朝も確定殺意を依然有していたとすれば,前夜に殺傷能力抜群のサバイバルナイフを用意していながら,何故このような本件ナイフに凶器を変更したのか不可解というほかない。案の定,この点に関する被告人の自白供述は揺れており,一覧表の たとすれば,前夜に殺傷能力抜群のサバイバルナイフを用意していながら,何故このような本件ナイフに凶器を変更したのか不可解というほかない。案の定,この点に関する被告人の自白供述は揺れており,一覧表のとおり,① 最初に本件ナイフを自宅から持ち出したことを認めた7月4日付け警察官調書〔乙5〕や同日付けの自供書では,「携帯に便利」だからと供述していながら,② 7月7日付けの自供書では,「つかいなれたほうにしようとおもってきりだしにしたサバイバルわ大きいですがつかったことがないのでふあんになってサバイバルやめたのです」と供述し,③ さらに7月8日付けの警察官調書〔乙9〕では,「サバイバルナイフを持ち出そうとしたが,これだと目立ってすぐA被害者に気付かれてしまうので,もう少し小さくてポケットに入れることのできる位の大きさをした刃物がないかと考え」たと供述しているのであって,変遷著しい上,いずれの理由も説得力に欠ける(殊に,サバイバルナイフは携帯に不便だという点は,被告人は当時リュック等を持っていたのであるから〔当公判廷供述〕,それに入れて持参すれば足りるのであって,理由にならないというほかない。この点,C刑事は,被告人は当時いつも持ち歩いていないリュックを担いでいると,A被害者に警戒されるから,リュック持参も断念した旨被告人は供述していたと証言しているが,A被害者に警戒されるという点では,不倫相手である同被害者の自宅をいきなり訪問すること自体がはるかに大きな警戒要因であって,これに比べるとリュック持参などという事実は些末な事柄に過ぎず,これまた説得力に欠けるというべきである。)。以上のとおり,前夜殺害用に用意したサバイバルナイフをあえて持参しなかったことは,被告人の公判供述のとおり,犯行当日の朝には一旦殺意を放棄して出かけたことを裏付けるも に欠けるというべきである。)。以上のとおり,前夜殺害用に用意したサバイバルナイフをあえて持参しなかったことは,被告人の公判供述のとおり,犯行当日の朝には一旦殺意を放棄して出かけたことを裏付けるものであり,この点でも被告人の上記弁解には理由があるというべきである。 よって,以上によれば,被告人の公判での弁解は十分裏付けを有するものと考えられ,この点は,この弁解とほぼ一体の関係にある取調べ状況に関する前記被告人供述の信用性を補強するものであると解される。 (エ) 以上に対し,C刑事は,前記のとおり,「本件ナイフを公園で拾った旨の弁解は,不合理であり,全く信用していなかったが,7月4日被告人に休憩で食事させている間に,捜査本部の捜査班長に呼ばれ,『元稼働先に同じようなナイフがあるんじゃないか。その辺をちゃんと追及しとかなあかんぞ。』というヒントのような指示を受けたことから,その言葉に,私は,同じようなナイフがあったんだなとピンときて,同日午後6時前からの取調べでは,被告人に対し,『実際に殺そうと思って自宅を出たというのに,本件ナイフを公園で拾ったというのはつじつまがあわない。おかしい。』など追及する一方,『元の勤め先にこれと同じようなナイフはないか』『あったら,あんた,どないするんや。うそついてることになるで。あるん違うんか。』などと追及していくと,最初は否定していた被告人も次第に黙り込んでしまった。そこで,『現にあるん違うか。うちの捜査員はあるような感じのことをちらっと言うとるぞ。』などと更に追及していくと,最後に被告人は『自宅にありました。』と自白するに至った。」などと証言している。 しかしながら,(a) まず,上記取調べを行う段階で,既に酷似ナイフが発見された事実が捜査本部の捜査班長の下に届いていた事実は にありました。』と自白するに至った。」などと証言している。 しかしながら,(a) まず,上記取調べを行う段階で,既に酷似ナイフが発見された事実が捜査本部の捜査班長の下に届いていた事実はC刑事自身が証言中で認めるところであるが,そうであるとすれば,班長が何故C刑事にその事実を知らせず,上記のような仄めかしめいた指示を与えて取調べを行わせたのか,まずもって不可解というほかない(もし取調べの技法として,いきなり発見の事実を被疑者にぶつけず,最初はその点を仄めかしつつ自白を引き出そうというのであれば,情報は情報としてC刑事に与えた上,そのような取調べ技法を指示すれば足りよう。)。(b) しかも,前記のとおり,当時同刑事は,「とにかく公園でまず拾ったという話が一番大前提で違う話だということで,必死,ある意味必死でした。で,それは絶対おかしいということで,かなり自分自身,集中していたというか,それは絶対,刑事として割らなあかんと,こんな矛盾な話はないという気持ちでおった」ものであるが,このように強い執念を燃やしていたC刑事が,酷似ナイフが発見されたらしき情報を得ていながら,上記のような微温的な取調べに終始していたとは,にわかに信ずることができない上,前記認定のとおり,本件ナイフ(=「ビジネスナイフ」)は客観的事実として被告人の元の勤務先に存在しなかった可能性が極めて濃厚であるにもかかわらず,被告人が,C刑事が供述するようなやり取りだけで,虚偽の疑いの強い前記自白に至るとは到底考えられないのであって,被告人が供述するような相当強圧的な言動があったものと推認せざるを得ない。 (エ) そこで,これら諸事情に鑑みると,この点に関するC証言は信用性に乏しく,前記被告人供述を排斥するには到底足りないと言わざるを得ず,本件ナイフの入手先を たものと推認せざるを得ない。 (エ) そこで,これら諸事情に鑑みると,この点に関するC証言は信用性に乏しく,前記被告人供述を排斥するには到底足りないと言わざるを得ず,本件ナイフの入手先をめぐる取調べ経過は,被告人の前記公判供述に沿って認定すべきところ,これによれば,C刑事は,7月4日の取調べにおいて,実は本件との関連性が極めて希薄であるにもかかわらず,単に形状が本件ナイフと酷似しただけの酷似ナイフが被告人の元の勤務先から発見されたことの一事をもって,被告人に対し前記のような強圧的な言動に及び,その結果,取調べ経験も初めてで性格穏和な被告人に,「本件ナイフは自宅から持ち出した」旨の虚偽の自白調書の作成に応じることを余儀なくさせたものであって,少なくとも本件ナイフの入手先に関する乙5号証以降の被告人の警察官調書の供述部分は,すべて任意性に欠ける疑いがあると言わざるを得ない。 ② とどめ刺突の存否について(ア) この点に関する被告人の公判供述は,前記のとおり,「私は,『とどめ』という言葉すら知らずC刑事に教えてもらったくらいであったが,C刑事から,B被害者が最後に私が刺してるところを見たって言っていると聞かされ,自分はそれは違う,そんな余裕はなかったと言ったものの,『刺された本人が言うてんねんから確実や。』『押し込んで入れんと絶対入らへんから。』などと押し切られ,本件ナイフの入手先の件でC刑事に恐怖を覚えていたこともあって,その旨の調書の作成に応じざるを得なかった。そして,C刑事から『おまえ手が器用やから,本件ナイフを順手から逆手に持ち替えることもできるはずやから。』などと言われ,取調室内でとどめを刺す練習のようなことまでさせられた結果,検証調書や再現実況見分調書でのとどめ刺突の再現が行われることとなった。」というも ら逆手に持ち替えることもできるはずやから。』などと言われ,取調室内でとどめを刺す練習のようなことまでさせられた結果,検証調書や再現実況見分調書でのとどめ刺突の再現が行われることとなった。」というものである。以上のうち,(a) まず,当時被告人がC刑事にある種の恐怖感を覚え,自己の正しい言い分を聞いてもらえないという無力感を覚えていたであろうことは,既に①において詳細に認定・判断した本件ナイフの入手先をめぐるやりとりから推しはかっても,十分頷けるところである。(b) さらに,一覧表記載の供述経過は上記被告人の供述を裏付けるものである。すなわち,被告人は,犯行態様につき,まずA被害者を刺突し,次いでB被害者を刺突した後,2階から降りてきたA被害者の次女と会ってしまったため,次女に引き続いてA被害者宅から外に走り出た旨,警察官に対する弁解録取書〔乙27〕,7月2日付け警察官調書〔乙3〕,7月3日付け自供書など,初期の段階では供述していたのであるが,7月8日にB被害者の犯行再現が病院内で実施され(その結果がまとめられたのが,実況見分調書〔甲16〕であり,とどめ刺突を再現した場面を撮影した写真が別紙写真(1)〔同調書写真20号〕である。),翌9日に同女の警察官調書〔甲18〕が作成されて,その中で同女が初めて被告人のとどめ刺突を再現・供述するや否や,同日付けの警察官調書〔乙10〕中で,被告人は,突如として,とどめ刺突状況につき詳細極まる供述(とどめ刺突を決意してから刺突を終えてナイフを抜き去るまで,延々5丁にわたって供述が展開されている。)を行うに至っているのである。 これはB被害者によるとどめ刺突供述の出現が被告人の上記供述変更に強く影響を及ぼしたことを窺わせるものであり,この点は,被告人の上記公判供述を裏付けるものである。 (イ) も いるのである。 これはB被害者によるとどめ刺突供述の出現が被告人の上記供述変更に強く影響を及ぼしたことを窺わせるものであり,この点は,被告人の上記公判供述を裏付けるものである。 (イ) もっとも,ここでも,被告人のとどめ刺突供述が客観的証拠等に合致するもの(少なくとも,B被害者の上記再現や供述調書とは符合している。)であって,それが真実と認められる一方,被告人が公判で供述するような刺突態様が客観的証拠等と相容れず,虚偽であると断定し得るのであれば,ほぼこれと一体の関係にあると解される被告人の上記取調べ状況に関する弁解についてもその信用性を否定すべきであると思われる。 そこで,被告人の公判供述と捜査段階でのとどめ刺突供述のいずれが客観的証拠に合致するかが問題となる。まず,被告人の公判供述は,前記のとおり,「B被害者を刺突した後に,A被害者にとどめ刺突を行ったことはなく,B被害者を刺した後はいったんA被害者の方に戻ったものの,その瞬間に次女が玄関の方にいたため,私もその直後に玄関から外に出ていった。確かに,A被害者の胸を刺したのは事実だが,それはB被害者を刺突する前のことであり,しかも,その刺し方は,A被害者を壁に追いつめ,同被害者が壁にもたれて立っている状態からずるずると下にずり落ちて尻餅をついていく間に本件ナイフを順手に持ったまま正面から同被害者の右胸に垂直に近い形で刺した。」というものであり,他方,捜査段階でのとどめ刺突供述は,乙10号証の警察官調書によれば,次のようなものである。長文ではあるが,その記載内容も後に問題となるので,そのまま引用すると,「『次に,A(注-A被害者の愛称。以下同様)にトドメを刺し確実に殺してやろう』と思いました。…(Aは)上半身だけを起こして,壁に背中というか首の後ろの辺りをもたれさせ るので,そのまま引用すると,「『次に,A(注-A被害者の愛称。以下同様)にトドメを刺し確実に殺してやろう』と思いました。…(Aは)上半身だけを起こして,壁に背中というか首の後ろの辺りをもたれさせているような状態でした。おしりは床について,両足を玄関の方に伸ばして座っている状態です。私は,Aにトドメの一撃を刺そうと,…Aが伸ばしている両足を跨いで,Aに正対して,再び,仁王立ちに立ちました。そして,Aとの楽しかった,幸せだった幻を一瞬思い出しました。Aは苦しそうにしており,『ウー,ウー』と虫の息になっていました。…(そのようなAを見つめていると)Aとの出会った時のことから,2人で行った桜の綺麗な,河内長野の『名前も知らない公園』でのこと,2人で飲んで歌ったことや,年老いた母親と3人で楽しく笑ったことなどを走馬燈のように頭の中を駆けめぐり思い出しました。私は,右手で握りしめているナイフを持ったまま,一瞬,Aのことを頭の中で回想していた」。そのとき,次女が降りてきて,目が合い,次女は逃げ出した。 しかし,「『Aにトドメを刺すのが先だ』と咄嗟に判断した私は,右手に持っているナイフをそのままの状態では,Aの心臓に力一杯突き刺すことが出来ないと思い,右手の持ち手を変えました。今度は,小指に近い方からナイフの刃が出る様な握り方に持ち替えたのです。日頃から,このような『切り出しナイフ』を使い慣れているので,ナイフを手先だけで持ち替えるなんて,私にとっては,いとも簡単なことでした。私は,手の中でクルリッとナイフの握り手を変えて持ち直しました。ようするに,一番,力が込められるようにナイフを握ったのです。私は,Aの上半身に近づき,密着するように立ちました。そして,Aに正対しながら,Aを跨いだまましゃがみ込みました。…私は,Aにトドメを刺す為,ナイフを持つ手に が込められるようにナイフを握ったのです。私は,Aの上半身に近づき,密着するように立ちました。そして,Aに正対しながら,Aを跨いだまましゃがみ込みました。…私は,Aにトドメを刺す為,ナイフを持つ手に最後の力を振り絞って渾身の力を込めました。そして,『楽にしてやるからな。Aのことを,どんなに恨んでいても,俺にはお前が最後の女やからな。あの世であおう。』と心の中でつぶやいてナイフを持っている右手を自分の目線くらいの高さまで上げて,Aの胸の中心めがけて,力一杯,突き刺しました。私が,Aの胸にトドメの一突きを刺したときは,手に『ガクンッ』というような,少し堅いものに刺さった感触がありました。」というものである。これに基づき,被告人は犯行再現を行っているが,7月13日に事件現場で行った犯行再現におけるとどめ刺突の状況に関する写真が別紙写真(2)(検察官調書〔乙25〕添付のもの)であり,翌14日S警察署の柔道場で行った再現における同状況に関する写真が別紙写真(3)(警察官調書〔乙22〕添付のもの)である。なお,被告人は,上記事件現場での犯行再現に基づき,再現当日の警察官調書〔乙15〕中で,「(以前の取調べで)『Aは,上半身だけを起こして,壁に背中というか首の後ろの辺りをもたれさせているような状態でした』と調書にして貰いましたが,本日,当日の状況を再現して,『もたれさせていたのは,首の後ろの辺りでなく,やっぱり背中をもたれさせていた』のを思い出した。」旨供述するとともに,刺突した部位はA被害者の胸の中心ではなく少し右にずれている旨述べて,上記乙10号証の供述を訂正している。 そこで検討するに,まず,その信用性判断に資する客観的証拠としては,最良のものとして,① A被害者の司法解剖鑑定書〔甲10〕と,② 司法解剖を担当したT大学医学部法医学 を訂正している。 そこで検討するに,まず,その信用性判断に資する客観的証拠としては,最良のものとして,① A被害者の司法解剖鑑定書〔甲10〕と,② 司法解剖を担当したT大学医学部法医学教室助教授Uの第4回公判における公判証言があり,これに次ぐものとして,③ 上記司法解剖に立会した警察官作成の解剖立会報告書〔甲8〕がある。本来ならば,①証拠が第一次的証拠になるはずであろうが,同鑑定書には,右胸部刺創については刺創の上下の向きに関する記述がない(左右の向きに関しては,「少しく内方向」,すなわち身体の中心部の方に少し向っているとの記載がある。)ため,第4回公判において上記U助教授の証人尋問を実施する以前は,③の解剖立会報告書が主たる客観的証拠と言ってよい状況にあった。そして,その内容を見ると,右胸部刺創に関しては,「体を垂直として考察した場合,胸部の前方向から後下方向に刺入」「第2肋間(第2と第3の間)に刺入し,右上肺外側縁を刺入,心のうを貫通した後,大動脈起始部に刺入して後壁に当たり止まる」という記載があるため,第3回公判までの段階では,被告人の捜査段階でのとどめ刺突供述の方が,被告人の公判供述(同公判期日で実施の被告人質問におけるもの)より,同報告書には整合的であったと言えよう。ところが,これに疑問を持った当裁判所が検察官に証人申請を促した結果行われた第4回公判のおける上記U助教授の証言によれば,致命傷となった右胸部刺創は,第2肋間からほぼ水平に(胸部に対してはほぼ垂直に)刃物が刺入された(多少の上下方向への誤差があったとしても,せいぜい5度未満)ことによって発起されたものであり(したがって,解剖立会報告書の上記記載は誤りである。),別紙写真(1),(2)のような刺突の仕方では本件刺創は生じず,逆に,被告人の公判供述のよう いぜい5度未満)ことによって発起されたものであり(したがって,解剖立会報告書の上記記載は誤りである。),別紙写真(1),(2)のような刺突の仕方では本件刺創は生じず,逆に,被告人の公判供述のような刺突態様であれば十分発起可能であることが判明するに至った。しかも,同証人によれば,上記刺創に関しては,いずれも組織の柔らかい筋肉・血管等に刃物が刺入されているため,本件ナイフで刺突すればかなりスムーズに刺入が可能であることも判明した。 以上によれば,被告人の公判供述は,法医学的知識など皆無の被告人が上記U証言に先立ち行ったものであって,供述当時は一見客観的証拠(解剖立会報告書)と矛盾するかのごとくであったが,U証言の結果,その供述の核心部分が強固に裏付けられるに至ったものであって,「秘密の暴露」にも比すべき高度の信用性の担保が生じたものと評価することができよう。これに対し,被告人の上記とどめ刺突供述やB被害者のとどめ刺突目撃供述は,明らかに客観的事実に反するものであって,到底信用することができないと言わざるを得ない。 何故このような事態が生じたのか若干推察するに,被告人のとどめ刺突供述は,B被害者の供述や解剖立会報告書の影響をもろに受けて行われたものであることが明白であるが,B被害者のとどめ刺突目撃供述についても,同女は,一覧表記載のとおり,7月5日付け警察官調書(これは父親も立会いの上で行われた取調べにより作成されたものである。)の段階では,「(被告人に刺された後,廊下に倒れ,両手でお腹を押さえて死んだふりをした。その後,被告人はすぐ母の方に行くのがわかった。)ここまでははっきり覚えています。その後,男から刺されたようにも思いますが,はっきりとした記憶がありません。私が起き上がった時には犯人の男はまた,母の所に行って,母の足をま の方に行くのがわかった。)ここまでははっきり覚えています。その後,男から刺されたようにも思いますが,はっきりとした記憶がありません。私が起き上がった時には犯人の男はまた,母の所に行って,母の足をまたぐようにして立っていたのです。その状況が見えたので,私も母や男の所に行って,母を刺したりしないように止めたようにも思いますが,その辺りもはっきりした記憶がないのです。その時に妹のVが2階からおりて来て,玄関から外に逃げたそうですが,その事も私は記憶がないのです。男が玄関から小走りに逃げていくのは分かりました。」などと記憶のままに正直に供述していたことに照らすと,その後の客観的事実に反するとどめ刺突目撃供述(7月9日付けの警察官調書〔甲18〕,同月17月付けの検察官調書〔甲20〕と順次,目撃内容が断定的なものに変遷している。)は,警察官から前記のとおり誤った内容を含む解剖立会報告書に基づく何らかの強い誘導を受けて行われたものと考えざるを得ないのである。この種の強い誘導の跡は,被告人のとどめ刺突供述の他の部分にも残っているのであって,例えば,前記被告人のとどめ刺突供述中には「私が,Aの胸にトドメの一突きを刺したときは,手に『カクンッ』というような,少し堅いものに刺さった感触がありました。」とあるが,これなども上記U証言と相容れないと言わざるを得ず,これは,おそらく前記解剖立会報告書の「大動脈起始部に刺入して後壁に当たり止まる」という疑問のある記載を鵜呑みにして供述させたものと理解されるのである。 そして,改めて顧みれば,乙10号証における被告人のとどめ刺突供述は,前記のとおり,被告人が多数回A被害者を刺突した後,B被害者をも刺突し,再びA被害者にとどめ刺突を行おうという切迫した状況の下で,「Aとの楽しかった,幸せだった幻を一瞬思い出 人のとどめ刺突供述は,前記のとおり,被告人が多数回A被害者を刺突した後,B被害者をも刺突し,再びA被害者にとどめ刺突を行おうという切迫した状況の下で,「Aとの楽しかった,幸せだった幻を一瞬思い出しました。(苦しそうにしており,『ウー,ウー』と虫の息のAを見つめていると)Aとの出会った時のことから,2人で行った桜の綺麗な,河内長野の『名前も知らない公園』でのこと,2人で飲んで歌ったことや,年老いた母親と3人で楽しく笑ったことなどを走馬燈のように頭の中を駆けめぐり思い出しました。私は,右手で握りしめているナイフを持ったまま,一瞬,Aのことを頭の中で回想していた」ばかりか,その後次女にも見つかってしまうという更に緊迫した状況に至ったにもかかわらず,「『楽にしてやるからな。Aのことを,どんなに恨んでいても,俺にはお前が最後の女やからな。あの世であおう。』と心の中でつぶやいて」刺突に至ったなどと,異様なばかりに悠長な展開となっているのであって,被告人自身は,当時も公判供述のように正しい認識をもっていたにもかかわらず,供述調書上は,明らかに客観的事実に反する供述がかくも不自然なまでに克明に展開されている事実は,取調官であるC刑事が被告人の任意の供述に基づくことなく,勝手に作文を行っていたことを指し示すものにほかならないと考えられる。 以上によれば,刺突状況に関する被告人の公判供述は高度の信用性を有するのであって,これは一体の関係にある取調べ状況に関する前記被告人供述の信用性をも担保するものであると評価することができる反面,捜査段階での前記とどめ刺突供述は到底信用することができない。 (ウ) 以上のような被告人の説得力ある公判供述に比べると,C刑事の前記証言は,惨憺たる有様であると評せざるを得ない。前記のとおり,本件ナイフの入 どめ刺突供述は到底信用することができない。 (ウ) 以上のような被告人の説得力ある公判供述に比べると,C刑事の前記証言は,惨憺たる有様であると評せざるを得ない。前記のとおり,本件ナイフの入手先に関しかくも執念を燃やしていた同刑事が,A被害者の致命傷を引き起こしたとどめ刺突に関しても強い関心を持たないはずがないと思われ,それゆえにこそ,延々5丁にわたってその供述を残している思われるのに,証人尋問の場で,当裁判所が,前記のように被告人が供述を変更した理由やそれを供述調書に残さなかった理由,被告人がとどめ刺突供述を始めた時期,供述調書を作成しなかった理由等につき尋ねても,しどろもどろの供述に終始するだけで,何ら説得力ある説明を行っていないのであって,このような同証人の供述態度や先に検討した諸事情を併せ考えるなら,縷々説明をおこなうまでもなく,とどめ刺突供述に関するC刑事の証言内容は到底信用できないと言わざるを得ない。 (エ) 以上によれば,乙10号証のとどめ刺突に関する供述部分は,本件ナイフの入手先に関するやり取りからC刑事に対し恐怖感を抱くとともに,自己の言い分は聞いてもらえないとのあきらめを持つようになった被告人に対し,客観的事実に反するB被害者のとどめ刺突目撃供述や再現実況見分調書,更には解剖立会報告書をもとに,強圧的に自白を迫り,B被害者に対しても負い目のある被告人をして,これに応じることを余儀なくさせたものであって,少なくともとどめ刺突に関する乙10号証以降の被告人の警察官調書の供述部分についても,すべて任意性に欠ける疑いがあると言わざるを得ない。 ③ 識字能力・表現能力に劣る被告人から多数の供述調書が作成されていく経緯等(ア) 以上のとおり,本件ナイフの入手先やとどめ刺突という重要な問題に関しC刑事 あると言わざるを得ない。 ③ 識字能力・表現能力に劣る被告人から多数の供述調書が作成されていく経緯等(ア) 以上のとおり,本件ナイフの入手先やとどめ刺突という重要な問題に関しC刑事が,被告人の供述の任意性を損なうような取調べや供述調書作成を行った事実は,当然のことながら,被告人の警察官調書中の他の供述部分の任意性にも疑問を抱かせるものがある。現に,被告人も,前記のとおり,「私は,中卒後ずっと工場で力仕事ばかりしていたこともあって,もともと漢字を書くことや物事を上手に表現することが苦手であり,自供書もC刑事の言うがままに書いた。供述調書にはいろいろ凝った表現が出てくるが,そういうものは一切話したことはなく,すべてC刑事が自分で書いた言葉である。それで,私も,『そういう言い方はあんまり知らんですよ。』などと言ったこともあったが,C刑事は『もうわしに任せ。』と一方的だった。私は,今まで警察沙汰や逮捕を経験したことがなく,取調べを受けたのも火事の第一発見者として1回調書をとられただけであったため,警察というところは,こういうふうに言い分を聞いてもらえないところなのかと怖くなり小さくなってしまった。」などと当公判廷で供述しているが,これは前記①②において認定・判断したところからすれば,頷ける内容である。 これに対し,C刑事は,前記のとおり,供述調書作成に当たっては,被告人にヒントを与えただけであるなどと供述しているが,一覧表の【脚色の疑いのある供述例】に記載のとおり,C刑事が作成に関わった警察官調書には,今時珍しく漢字の読み書きもろくにできないため国語力・表現力が著しく低い(それがどの程度であるのかは,一覧表の自供書の欄を見れば一目瞭然である。)被告人には到底供述することができないような「供述」記載があまた存在している きもろくにできないため国語力・表現力が著しく低い(それがどの程度であるのかは,一覧表の自供書の欄を見れば一目瞭然である。)被告人には到底供述することができないような「供述」記載があまた存在しているのであって,これらはもはや,C刑事のヒントによってできた被告人の供述ではなく,C刑事の作文そのものであると言わざるを得ない。 (イ) もとより,警察官調書のすべてがC刑事の作文であるとまではいえず,事柄によっては被告人自身の供述をそのまま録取してある部分もないわけではないと思われる。そのため,当裁判所も,公判の初期の段階では,弁護人に対し,任意性を争う部分と同意してもよい部分とを区別できないか打診したこともあったが,結局のところ,被告人は,弁護人が漢字に振り仮名をふった供述調書をやっと読める状態であり,しかも,被告人にとっては自分が言っていないとする部分が,あまりに多くの警察官調書のあまりに多数にわたるため,弁護人においてもその区別を行うことを断念せざるを得ないという状態に立ち至った。 このような事情にある以上,被告人自身が自分の言い分をよく聞いてくれたとする7月3日以前に作成された警察官調書を除く,その余の警察官調書(弁護人が取調べに同意した調書を除く。)については,どの部分がC刑事の作文でどの部分が被告人自身の供述なのかを判然と区別することが困難であるので,その全部につき任意性に疑いがあると判断せざるを得ない。 エ小括よって,以上により,(a) まず,乙5号証以下の任意性が争われている警察官調書については,その全部につき任意性に疑いが残るので,証拠能力が否定される。(b) 次に,乙5号証以下の警察官調書のうち,弁護人が取調べに同意したため既に取り調べ済みの警察官調書の中でも,乙22号証の警察官調書の主 全部につき任意性に疑いが残るので,証拠能力が否定される。(b) 次に,乙5号証以下の警察官調書のうち,弁護人が取調べに同意したため既に取り調べ済みの警察官調書の中でも,乙22号証の警察官調書の主文第3項(1)ア~オに記載した部分は,とどめ刺突に関する供述及び再現写真を含んでおり,この部分は特に任意性に疑いがあるので,証拠排除すべきであると判断した。 (3) 被告人の検察官調書における供述の任意性ア検察官の取調べに関しては,特に強圧的な言動が行われたという証跡は存在しない。しかしながら,前述のとおり,警察段階で,被告人の供述の任意性を害するような違法な取調べが行われている場合には,その後行われた検察官の取調べ自体に特に任意性を疑わしめるような事情がなかったとしても,検察官において,警察官による違法な取調べの影響を排除するような措置を講じた等特段の事情が認められない限り,その取調べによって作成された検察官調書の任意性には疑いが残るというべきである。 イ本件の場合,各検察官調書には,C刑事によって作成された警察官調書ほど脚色に満ちた表現は見当たらず,その意味では,警察官調書のようにその全部を任意性に疑いがあるとして排除することは不適当であると解される(後日,信用性について慎重に判断すれば足りよう。)。ただ,前記本件ナイフの入手先に関する部分ととどめ刺突に関する部分に関しては特に強く任意性に疑いが生じているのであり,この点に関しては,検察官においてその影響を遮断した形跡もない(被告人の前記公判供述によれば,「検察官の取調べにおいても,警察官も検察官も同じだという意識であったし,もし違うことを言うと,それがC刑事に分かって,おまえ何であんなことを言うたなどと後で責められるのが怖く,恐怖心が一杯であったこともあって,もうしゃ も,警察官も検察官も同じだという意識であったし,もし違うことを言うと,それがC刑事に分かって,おまえ何であんなことを言うたなどと後で責められるのが怖く,恐怖心が一杯であったこともあって,もうしゃべらんほうがええわと思い,警察での調書と同じ内容を供述した。」とのことである。)ので,検察官調書中の両部分については,依然,任意性に疑いが残ると言わざるを得ない。 ウよって,以上により,(a) 任意性が争われている乙23号証については,上記両部分(主文第2項(2)の部分)について証拠能力を否定し,その余については刑訴法322条1項により証拠能力を肯定することとし,(b) 他方,弁護人が取調べに同意したため既に取り調べ済みの検察官調書の中でも,乙25号証の検察官調書の主文第3項(2)ア~カに記載した部分は,本件ナイフの入手先やとどめ刺突に関する供述及び再現写真を含んでおり,この部分は特に任意性に疑いがあるので,証拠排除すべきであると判断した。 2 被告人の警察官に対する弁解録取書〔乙27〕の作成の真正弁護人は,乙27号証の作成の真正を争っているが,全証拠を通覧しても,C刑事が弁護人主張のような作成方法をとったことを疑わせるような証跡は存せず,むしろ,被告人の初期供述を被告人の言い分のままに録取したものであると認められる(被告人もこの点は認めている。)ので,この点に関する弁護人の主張は理由がない。刑訴法322条1項により,その全部につき証拠能力が認められると判断する。 第3 結論よって,主文のとおり決定する。 平成16年3月10日大阪地方裁判所第7刑事部 裁判長裁判官杉田宗久 日大阪地方裁判所第7刑事部 裁判長裁判官杉田宗久裁判官飯島健太郎 裁判官菅野昌彦捜査段階における被告人の供述経過一覧表(任意性と殺意の関係を中心に記載)※ 自供書は多数存するが,重要なものに限り,表に記載した。 ※ 以下,「PS」は検察官調書,「KS」は警察官調書,ゴシック体は重要供述,アンダーラインは供述変遷部分を指す。 供述日時等事件に関する供述内容 VKS(7/1)〔甲24〕「階段を下に降りていくと,お母さんは,階段を降り切ったところの廊下に頭を奥に向け,足を玄関は,右手に包丁のような刃物を持った状態で,仰向きに倒れたお母さんの顔の方に向いて,足の膝あたりをまたぐよ7月2日午前0時55分緊急逮捕。同日午前10時~午後0時0分までAの司法解剖実施警察官に対する弁録(7/2AM1:30頃)〔乙27〕-任意性争う 【事実の認否】「(逮捕された事実は)その通りで間違いありません。」【犯行動機等について】「(男女の関係にあったAから最近冷たくされ)私がいくら携帯電話で連絡を取っても無視され会いに行ってもろくに話すらしてくれず逃げるばかりだったのです。前日であります6月30日の夜中にいつまでも私に対して無視を続けるのであれば彼女を殺してやろうと思い,殺すことを本気で考えました。 しかし,朝になってみますとその気持ちも若干ゆらいでしまい,もう一度話し合いに行こうと思って自宅を午前9時30分ころ出ました。」【凶器のナイフの入手方法について】「途中の公園 本気で考えました。 しかし,朝になってみますとその気持ちも若干ゆらいでしまい,もう一度話し合いに行こうと思って自宅を午前9時30分ころ出ました。」【凶器のナイフの入手方法について】「途中の公園を通った時にたまたまペラペラに薄いナイフを見付けて拾ったのです。そのナイフをズボンの後ポケットに入れて隠し,もし,話がこじれて別れるとでも言われたらこれで刺し殺してやろうと考えました。」【犯行態様について】「私は,彼女のその言い方と言われた内容にたまらなく腹が立ち,こいつ殺したると考えて持ってきていたナイフでおなかと胸の辺りを殺してやる気で刺しました。ちょうど,その時に私が彼女を殺そうとしているのを止めに入ろうとした娘さんも殺すつもりでおなかの辺りを刺しました。」KS(7/2)〔乙1〕 KS(7/2)〔乙2〕 【犯行動機等について】「(6月10日にAが被告人宅に泊まりに来たのを最後に,Aが被告人に急激に冷たくなり,避けて分かれようとしていることが判ったことから)私は,そんな彼女の態度に腹が立ち,『このまま別れるのだったら,いっそ殺してやる。』と思い,彼女と会って話をし,それでも別れると言うのであれば殺してやろうと決意したのです。本気で殺してやろうと思ったのは,前日の6月30日のことです。」【犯行態様について】〔ほぼ従前の供述どおり〕「(Bの腹を突き刺したが)それでも娘は暴れるようにして抵抗してきたので,胸か腹の辺りを突き刺しました。娘は,一旦後ろに下がり,私と少し距離が開いた時でした。2階から,もう1人娘が降りてきて,私の後ろをすり抜け走って表に出て行ったのです。私は,『このままじゃヤバイ,捕まってしまう』と咄嗟に思って,玄関から走って逃げたのでした。」7月2日付け捜査報告書〔甲68〕には,「本件被疑者『W』は,殺害し をすり抜け走って表に出て行ったのです。私は,『このままじゃヤバイ,捕まってしまう』と咄嗟に思って,玄関から走って逃げたのでした。」7月2日付け捜査報告書〔甲68〕には,「本件被疑者『W』は,殺害した凶器(手工用切出鞘入)については,『近所のとの記載あり。 自供書【『Aをころしたこと』】「(Aが人が変わったように冷たくなったので)ころしてやろうと思ったさいごのはなしあいにいった(7/3)〔乙19添付〕 もとのようにもどってくれたらころさなかったかもしれないしかしAわおれをばかにしたようないいかたであそびやろといった。すごくはらがたった。 ころすつもりがまえからあったのでカーッとなってころしてやろをとをもいナイフではらとむねをさした」自供書(7/3)〔乙19添付〕 【『Aのむすめをころそうとしたこと』】「Aをころそをとしてナイフではらをさしたら AのむすめがAをたすけようとしてとめにはいったおれわAをころそうとしているのにAをかばっておれのじゃまをしやがったおれをうらぎったAもAをかばっておれにおおきなこえでどなってきたむすめもころしてやりたくなってむすめのはらにもナイフでつきさしたAとむすめがしんだかまでわからなかったさしてすぐにげたのでわからなかったつかまって,Aがしんでむすめわしななかったときいた」検察官に対する弁録(7/3PM2:15頃)〔乙28〕 【犯行態様について】「私は,今回,恋人であり,『A』と呼んでいたAさんを殺す目的で,ナイフを持ってAの家に入り,そこでAの胸や腹を持っていたナイフで思い切り何度も突き刺して殺し,さらに,私がAを殺すのを止めようとしてきたAの娘さんに対しても,腹が立って,邪魔をする奴は殺してやろうと思い,娘さんの腹もそのナイフ こでAの胸や腹を持っていたナイフで思い切り何度も突き刺して殺し,さらに,私がAを殺すのを止めようとしてきたAの娘さんに対しても,腹が立って,邪魔をする奴は殺してやろうと思い,娘さんの腹もそのナイフで刺しました。」【犯行動機等について】「私がAを殺してやろうと思った理由は,6月に入ってから急にAの態度が冷たくなって,その理由が分からなかったために,一度Aに会ってその理由をはっきり聞きたいと思っていたのに,事件当日,Aに会ったところ,Aから,私のことは遊びだったとか,私との付き合いに本気になるはずがないとか言われ,私自身のことも無茶苦茶にののしられたためであり,Aのことが許せないと思い,殺してやろうと決めたのでした。」勾留質問調書(7/3)〔乙29〕(勾留請求書記載の被疑事実につき)「事実はそのとおり間違いありません。」 7月3日勾留KS(7/3)〔乙3-勾留後の調書〕 【犯行動機等について】「私が,Aを殺そうと思ったのは,Aから冷たくされ相手にされなくなって10日位した6月20日頃のことです。本気で,殺してやろうと思ったのは,Aを殺す前日になります6月30日のことになります。」「私は,Aを殺そうと思って,殺すなら,自宅にあるサバイバルナイフを使って刺し殺してやろうと考えたのです。…私は,Aを殺したら自分も死のうと言う気持ちでした。…Aを殺しに行くときは,このサバイバルナイフと,この紙(注-被告人の住所・氏名と「Aニダマサレタ」と書かれたもの)を持って行くつもりでした。」KS(7/4)〔乙4〕【ナイフ類の使用状況】日頃から,趣味の小物作りのため,カッターナイフ2本をしょっちゅう使っており,ナイフは使い慣れている。 カッターナイフ以外にも切り出しナイフも使う。 【被告人の生い立ち,職歴,家ついて 】 日頃から,趣味の小物作りのため,カッターナイフ2本をしょっちゅう使っており,ナイフは使い慣れている。 カッターナイフ以外にも切り出しナイフも使う。 【被告人の生い立ち,職歴,家ついて 】【被告人の知的水準】小中学校当時,全く勉強しなベッタ」だった。だから,字を覚ど漢字は知らない。書くことはほはできる。ひらがなとカタカナはとで無口になって人と喋れなく 7月4日,刑事が被告人の元の勤務先であるE八尾工場を訪ねて行き,凶器である本件ナイフの写真を示したので,意提出〔甲80,63〕。 KS(7/4)〔乙5〕-任意性争う 【本件ナイフの入手先等について】「取調べが始まって刑事さんに私がAを刺したナイフのことを厳しく聞かれました。逮捕された時は,弁解を聞くといって私の言いなりに弁解を聞いてくれてそのまま私の言うとおりに書類を書いて貰いました。そのときは,Aを刺し殺した時のナイフを途中の公園で拾ったと言ってしまいました。しかし,本当はそのナイフは元々私が持っていて自宅に置いていたものです。そのナイフは私の趣味のミニチュアの小物を手作りで作る時に便利だと思って会社から持って帰った物です。」「本当は,殺しに行く時は,大きなサバイバルナイフで一突きで殺そうと思って準備していたのですが今回殺すのに使ったナイフは携帯に便利で,もしも話がこじれてどうしてもとっさに殺さなくてはいけない状態になった時に使おうということでポケットに入れて持っていった物です。」【犯行態様について】〔Aから小馬鹿にされたような言い方をされたので,そのナイフで刺殺した旨従前同様の供述〕自供書(7/4)〔乙19添付〕【『Aをころしたときつかったナイフ』】〔上記KS〔乙5〕の内容とほぼ同じ〕 BKS(7/5)〔甲17〕(被 フで刺殺した旨従前同様の供述〕自供書(7/4)〔乙19添付〕【『Aをころしたときつかったナイフ』】〔上記KS〔乙5〕の内容とほぼ同じ〕 BKS(7/5)〔甲17〕(被告人に刺された後,廊下に倒れ,両手でお腹を押さえて死んだふりをした。その後,被告人は「ここまでははっきり覚えています。その後,男から刺されたようにも思いますが,はっきりとした記憶がありません。私はまた,母の所に行って,母の足をまたぐようにして立っていたのです。その状況が見えたので,私も母や男の所に行止めたようにも思いますが,その辺りもはっきりとした記憶がないのです。その時に妹のVが2階からおりて来て,玄関事も私は記憶がないのです。男が玄関から小走りに逃げていくのはわかりました。」自供書(7/5)〔乙19添付〕 【『Aをころそうとをもったのわ』】「(Aが避けるようになり,指輪を馬鹿にされたり,ほかにも仕事がないことなどを馬鹿にされたため)「Aニダマサレタころしたくなったさいごにはなしてダマサレタことたしかめたらナイフでさしてころすことかんがえた」KS(7/5)〔乙6〕【Aと知り合った経緯・交際状況について】 KS(7/6)〔乙7〕 【Aとの交際状況について】【6月11日以降Aが冷淡になってきた経過】 【脚色の疑いのある供述 】「もう,私の心の風船は,限界まも入ったら,一瞬のうちに破裂てつもなく大きく膨れあがってい KS(7/7)〔乙8〕【Aの態度の急変と被告人の殺意発生に至る経過】【殺意について】「私の心を切り刻んできたAに,同じ刃物の痛みを味わいさせたいと思ったので,『刃』でAを殺したいと考えたのです。私は,Aを刃物で殺 【Aの態度の急変と被告人の殺意発生に至る経過】【殺意について】「私の心を切り刻んできたAに,同じ刃物の痛みを味わいさせたいと思ったので,『刃』でAを殺したいと考えたのです。私は,Aを刃物で殺すことを考えると,私が,・~・歳の頃から持っていた『サバイバルナイフ』がテレビ台の引き出しに入っているのを思い出しました。」 【脚色の疑いのある供述例 】「(Aの)言葉は,私の胸の中心の中で,『そんなに胸を切ら葉が頭に浮かぶたびに,私の胸私は,無言で襲ってくるAの『刃心しました。…Aを殺さなければ切り刻むと思いました。」「私が,Aを殺すことを決めてに,X線の通過する『カタンコトえました。その電車の音が,私最後の最終電車』の様に思えま 自供書(7/7)〔乙19添付〕 【『Aをさしたナイフ』】「ころしにいくときサバイバルナイフにするかきりだしナイフにするかまよったつかいなれたほうにしようとおもってきりだしにしたサバイバルわ大きいですがつかったことがないのでふあんになってサバイバルやめたのですきりだしでもころせるとおもってそれにしたのです」KS(7/8)〔乙9〕-任意性争うKS(7/8)〔乙9〕-任意性争う【A殺害を決意した経過】「(Aのために心を込めて作った手作りの指輪を冷たくあしらわれたことから)私の耳の中には,Aから言われた『なにこれ,しょうむない』という言葉だけが,木霊するように聞こえて止みませんでした。聞きたくないと思って,耳を閉じても,聞こえてくるのです。私は,Aの『無言の言葉』に,心の中がズタズタに切り刻まれました。Aからの…貶された言葉からは逃れることが出来ませんでした。…無視しての『無言の答え』ほど 思って,耳を閉じても,聞こえてくるのです。私は,Aの『無言の言葉』に,心の中がズタズタに切り刻まれました。Aからの…貶された言葉からは逃れることが出来ませんでした。…無視しての『無言の答え』ほど,私の心を切り刻むものはありませんでした。…Aは,俺の心を,見えない『刃(やいば)』」で切り刻んでズタズタにしたんだから,同じように『刃』を持って,あいつの心臓を切り刻んでやりたいと言う気持ちが沸き上がり,…Aを殺すことにしたのです。」【事前の殺害計画について】Aの家族が仕事や学校に出払った後,A宅を訪れてチャイムを鳴らし,冷静な風を装って優しく言えば,Aも出てきてくれ,玄関の中くらいまでは入れてくれるだろうと思った。玄関まで入れれば ,『こっちのものや』と思った。「Aを絶対に逃がさない為に,できれば,Aに気付かれないように,ソッと玄関の鍵を掛けることが出来れば完璧だと思いました。2人きりになったとこで,Aの口から直接,『遊びだった。ゴメン。』と言う言葉を聞いて,自分が思い過ごしでなかったことを確認してから殺そうと考えました。…A自身の口から,私とのことは遊びだったし,妊娠して子供が出来たと言うことも,私の気を引くためについた嘘だったと言うことを確認してから,Aを殺そうと思いました。…Aと少しだけ話して,Aの口から真実を聞いてから殺すことにしたのです。」。 【本件ナイフを持ち出した経緯について】サバイバルナイフを持ち出そうとしたが,これだと目立ってすぐAに気付かれてしまうので,もう少し小さくてポケットに入れることのできる位の大きさをした刃物がないかと考え,自宅の1階の階段下に置いてある道具入れの中から,本件ナイフを出してきた。このナイフは2~3年前位から家にあるもので,EかY,Zから持ってきたものだと思う。「このナイフやったら ,使 ないかと考え,自宅の1階の階段下に置いてある道具入れの中から,本件ナイフを出してきた。このナイフは2~3年前位から家にあるもので,EかY,Zから持ってきたものだと思う。「このナイフやったら ,使い慣れているので使いやすいと思い,また,この『切り出しナイフ』でしたら,色が金色で,鞘の部分を付けていると,知らない者が見ただけでは ,『物差し』か『櫛』のようにしか見えないと思ったので,この『切り出しナイフ』を使うことに考え直した」 【脚色の疑いのある供述例 】左欄に記載の各供述のほかナイフを引き出しに閉まったとき音が寂しく聞こえた。)私は,自通過する電車の音を聞きながらい』という思いを込めたので,そえているのです。」「私は,Aの胸を『刃』を持ってしました。Aを殺すときには,胸た。ようするに,息の根を止めると考えました。そして,『心臓』を幻の幸せ全てを一瞬にして頭心の中で叫びながら,一気にナのです。」「私は,家を出て歩き出すと,かれる思いだったのですが,『生最後の最終電車は出発した人旅に出たんや。』と自分に言家へと向かって歩ませたのですなんてことは,できないと考えてていました。…私が大好きだっ一人旅』の歌の歌詞を,無意識こで一緒に死ねたらいいと…(前が最後の女』と言う歌詞を何「(途中,川で鯉が跳ねているの鯉を眺めながら,『魚にも命がから命を取りに行く自分がやる「(再び迷いを断ち切り,途中の「鬼」 Aの家は「戦場」 目の前のに,情けは無用邪魔をする供であっても容赦しない Aを殺罵られて死ぬまで辛い思いをす言うことを自分に言い聞かせまが最後になりました。」「戦場に向かう足取りは,非常情け無用で容赦のない「鬼」』とす。」 7月8日,B立会の上,病院内で犯行再現実況見分実施〔甲16 いをす言うことを自分に言い聞かせまが最後になりました。」「戦場に向かう足取りは,非常情け無用で容赦のない「鬼」』とす。」 7月8日,B立会の上,病院内で犯行再現実況見分実施〔甲16〕。Bが,とどめ刺突の場面を初めて再現。 BKS(7/9)〔甲18〕「(被告人はBを刺した後再びA〔納戸のドアに背を向けて,手はだらんと垂れ下がった状態〕のと足を跨ぐようにして,中腰で立っていた。Bは,廊下の面に顔を付けて見上げる感じで見ていた。)男の左肩や腕が死えなかったのですが男はさっきよりもお母さんに近付,右手を前方に出した位置付近から,お母さんの胸にめがけての右手にはナイフが握られてたということは十分に分かっていますから右手に持ったナイフで,お母さんを刺したのでKS(7/9)〔乙10〕-任意性争うKS(7/9)〔乙10〕-任意性争う【殺害に至る直前に電話をかけた状況】【A殺害の状況】玄関の中に入った瞬間くらいに,Aが右の部屋から出て,「何しに来たん?」と言ってきた。「おい,A約束はどないなってんの。」などと言いながら廊下に上がったところ,Aは,「お姉ちゃんがお風呂に入ってるのよ。人の家,勝手に上がらんといて。」と言ってきた。そして,「どういうつもりで,俺と付き合ってたんや」「やっぱり遊びでつき合っていたんか。」などと言ったが,Aは何も答えなかった。さらに,「お前,俺のブレスレットもはめてないやないか。もう,いらんのやったら返してくれよ。」と言ったところ,Aはバッグからブレスレットを取り出し,何も言わず,ポンっと下手で投げた。手にはめていた自作の指輪をAに見せ,「これも,Aの娘にと思って,必死で作ったんやぞ。…俺はお前に遊ばれていたんかい?ちゃんと答えてくれよ。」と言ったところ,Aは,「なんやの,しょうむない。そんな安物,い めていた自作の指輪をAに見せ,「これも,Aの娘にと思って,必死で作ったんやぞ。…俺はお前に遊ばれていたんかい?ちゃんと答えてくれよ。」と言ったところ,Aは,「なんやの,しょうむない。そんな安物,いらんわ。子供も生理があったんやから,出来てないことくらい当たり前やろ。」と初めて言い返してきた。そのため,「やっぱり俺のことは遊びやったんやな。悪かったと思わんのか。」と聞くと,Aは,すごい剣幕で,「何言うてるのよ!…遊びに決まってるやろ!…私かて,あんたに遊ばれてたんやで!」と言い返してきた。心の中で,怒りが爆発し,本件ナイフを取り出し,鞘を抜いて,Aの腹を刺した。最初の傷は,臍の高さくらい。その後,何回も突き刺した。 【Bに対する刺突の状況】【Aへのとどめ刺突の状況】長女が倒れ動かなくなったので死んだと思った。それで,「『次に,Aにトドメを刺し確実に殺してやろう』と思いました。…(Aは)上半身だけを起こして,壁に背中と言うか首の後ろの辺りをもたれさせているような状態でした。お尻は床について,両足を玄関の方に伸ばして座っている状態です。私は,Aにトドメの一撃を刺そうと,…Aが伸ばしている両足を跨いで,Aに正対して,再び,仁王立ちに立ちました。そして,Aとの楽しかった,幸せだった幻を一瞬思い出しました。Aは苦しそうにしており,『ウー,ウー』と虫の息になっていました。…(そのようなAを見つめていると)Aとの出会った時のことから,2人で行った桜の綺麗な,河内長野の『名前も知らない公園』でのこと,2人で飲んで歌ったことや,年老いた母親と3人で楽しく笑ったことなどを走馬燈のように頭の中を駆けめぐり思い出しました。私は,右手で握りしめているナイフを持ったまま,一瞬,Aとのことを頭の中で回想していた」。そのとき,次女が降りてきて,目が合い,次女は逃げ出した などを走馬燈のように頭の中を駆けめぐり思い出しました。私は,右手で握りしめているナイフを持ったまま,一瞬,Aとのことを頭の中で回想していた」。そのとき,次女が降りてきて,目が合い,次女は逃げ出した。しかし,「『Aにトドメを刺すのが先だ』と咄嗟に判断した私は,右手に持っているナイフをそのままの状態では,Aの心臓に力一杯突き刺すことが出来ないと思い,右手の持ち手を変えました。今度は,小指に近い方からナイフの刃が出る様な握り方に持ち替えたのです。日頃から,このような『切り出しナイフ』を使い慣れているので,ナイフを手先だけで持ち替えるなんて,私にとっては,いとも簡単なことでした。私は,手の中でクルリッとナイフの握り手を変えて持ち直しました。ようするに,一番,力が込められるようにナイフを握ったのです。 私は,Aの上半身に近づき,密着するように立ちました。そして,Aに正対しながら,Aを跨いだまましゃがみ込みました。…私は,Aにトドメを刺す為,ナイフを持つ手に最後の力を振り絞って渾身の力を込めました。そして,『楽にしてやるからな。Aのことを,どんなに恨んでいても,俺にはお前が最後の女やからな。あの世であおう。』と心の中でつぶやいてナイフを持っている右手を,自分の目線くらいの高さまで上げて,Aの胸の中心をめがけて,力一杯,突き刺しました。私が,Aの胸にトドメの一 突きを刺したときは,手に『カクンッ』というような,少し堅いものに刺さった感触がありました。」 PS(7/10)〔乙23〕-任意性争う 【ナイフ入手先について】「私は,当初は,このナイフを,犯行当日にAの家に向かう途中,公園で拾ったものだとお話していましたが,これは,全くの嘘でした。本当は,このナイフは,元々私の家に置いていたものであり,私は,このナイフでAを刺して殺してやろうという 犯行当日にAの家に向かう途中,公園で拾ったものだとお話していましたが,これは,全くの嘘でした。本当は,このナイフは,元々私の家に置いていたものであり,私は,このナイフでAを刺して殺してやろうという考えの下に,このナイフを自宅から持ち出してAの家に行き,その考え通りに,このナイフでAの身体を何度も突き刺して殺したのです。私が,このナイフを途中の公園で拾ったなどという嘘をついたのは,やはり,自分の責任を少しでも軽くしたいという思いが,自分の頭の中に出てしまったからでした。…しかし,これも,全くの思い付きのような出任せであり,Aの家に行く途中にたまたまナイフを拾うことなど,不自然極まりない話であって,刑事さんからその点は厳しく追及されました。」※「もう,私にとっては,隠したり嘘をついたりしていることはありません。」と供述していながら,前日の警察官調書中で初めて供述したとどめ刺突に関する供述はない。 KS(7/10)〔乙11〕-任意性争う 【ナイフの入手先について】〔従前同様の供述-自宅から持ち出した〕「取調べが始まってからは,刑事さんが,私の辻褄の通らない嘘について,『Aを殺そうと思って自宅を出たのに,偶然,Aを殺すための,携帯に便利な,ちょうど都合のいい大きさのナイフが落ちていたなんて常識で通る訳がない』と厳しく追求されて,言い訳ができなくなり,本当のことを話しました。」【ティッシュをA宅の郵便受けに入れたことについて】 【計画性,長女への殺意について】 KS(7/11)〔乙12〕【事件に関連する場所への引き当たりについて】-任意性争う KS(7/12)〔乙13〕-任意性争う 【犯行後の逃走状況について】 【脚色の疑いのある供述例】「人を殺すと言う罪の重さは判っているつもりで たりについて】-任意性争う KS(7/12)〔乙13〕-任意性争う 【犯行後の逃走状況について】 【脚色の疑いのある供述例】「人を殺すと言う罪の重さは判っているつもりですが,その時すことは,自分を傷付けた人間を殺すことしかないと思って,す。」「できれば,このような自分の内面的なことは言いたくありませの件でも刑事さんに,公園で拾ったと嘘を付いてしまって,見隠さず刑事さんに話す』のだと自分に誓ったので,言わなかっさんに話しをしているのです。」「私は,パトカーのサイレン音を耳にしてから,違った意味で…サイレンの音が私を追い駆けているようにも錯覚しました。 「(逃走中,ベンチで休憩をとりながら)記憶を逆にたどって行めてデートした桜の綺麗な,河内長野の名前も知らない公園閉じると,満開の桜,桜の木からヒラヒラと落ちてくる桜の花びれたピンクの絨毯が,はっきり見えました。私は,『行かなあかん,あの公園まで行かなあかん』と思うと,ハッと目が覚めたよ「(逮捕された当時)私は,この時には既に,Aはもちろんのっていました。ですから,私を逮捕した刑事さんには,『Aの娘怪我はさせていないと思います。』と言ったのは,Aの娘の方う事にすれば,少しでも自分の罪が軽くなると思ったからです行く途中も,私の方から刑事さんに『娘さんの容態はどうですAにはトドメを刺しているので,死んだ事は判っていたのですで,本当に死んだのかどうかが気に掛かったのです。娘にはますので,娘が生きていれば,自分の都合のいい事ばかりは「Aを殺そうと決めてからの私は,『人を平気で殺せる殺人鬼KS(7/12)〔乙14〕【被告人がAと関係を持ったホテルについて】 KS(7/13)〔乙15〕-任意性争う【長女に対する刺突の状況】【とどめ刺突の状況に関 を平気で殺せる殺人鬼KS(7/12)〔乙14〕【被告人がAと関係を持ったホテルについて】 KS(7/13)〔乙15〕-任意性争う【長女に対する刺突の状況】【とどめ刺突の状況に関する供述の訂正】「(以前の取調べで)『Aは,上半身だけを起こして,壁に背中と言うか首の後ろの辺りをもたれさせているような状態でした』と調書にして貰いましたが,本日,当日の状況を再現して,『もたれさせていたのは,首の後ろの辺りでなく,やっぱり背中をもたれさせていた』のを思い出したので,そのように,取調べとは別の刑事さんに話して,その時の状況を写真に撮って貰いました。」「(以前の取調べで,Aにトドメを刺したとき,『右手に持っていたナイフを持ち替えた後,Aに正対しながら近づき,しゃがんでAの胸の中心を目がけて,力一杯,突き刺しました』と供述していたが)本日,実際にAを殺した現場でやてみたところ,私から見て右側が壁であり,その壁が邪魔だったので,胸を刺したときには,私から見て若干左にずれたことを思い出しました。ようするにAの胸の中心を目がけて刺したのですが,私の右の肘が,右側の壁で邪魔になってしまったので,刺したときには若干中心からずれたと言うことです。ですから,Aの胸の傷は,Aの胸の中心から,少しだけ右側にずれている事になります。」 KS(7/14)〔乙17〕-任意性争う 【本件ナイフの入手先の訂正について】「本日,刑事さんから,『E』,『Y』,『Y』について捜査したところ,あの切り出しナイフと同じ物は『E』にしかなかったとお聞きしました。そうなると,私が以前勤めていた『E』から持って帰ったとしか考えられません。」また,勤めていた期間を警察の方で調べて貰ったところ,平成12年6月1日から平成14年6月27日の間だったと聞いた。本件ナ そうなると,私が以前勤めていた『E』から持って帰ったとしか考えられません。」また,勤めていた期間を警察の方で調べて貰ったところ,平成12年6月1日から平成14年6月27日の間だったと聞いた。本件ナイフは,Eをやめる1年前から家にあったということは絶対に言い切れるので,本件ナイフを持って帰ったのは,平成12年6月1日から平成13年6月頃までの間になる。 KS(7/14)〔乙16〕-任意性争う【証拠品の説明】【本件ナイフの入手先について】〔〔乙17〕とほぼ同様の供述〕 KS(7/14)〔乙18〕-任意性争う【Aへの刺突状況-刺突場所と刺突順序】〔ほぼ従前の供述どおり〕【Aの長女への刺突状況-刺突場所と刺突順序】〔ほぼ従前の供述どおり〕 KS(7/14)〔乙19〕-任意性争う 【被告人がこれまで作成した書面,図面等の説明】【「Aをころしたこと」と題する図面〔7/3付け〕について】「この時には,逮捕された事で,少しでも自分が有利になればと思って,所々,自分の事を庇った文章にしました。この紙に書いている,『最後の話し合いに行った。元のように戻ってくれたら殺さなかったかもしれない。』と書きましたが,刑事さんの取調べを受けて,そのような自分を庇うような言い方も通じなくなり,その後は本当の気持ちを話して調書にして貰いました。私は,最初からAを殺すつもりで,ナイフまで持って家を出たのです。」【「Aのむすめをころそうとしたこと」と題する書面〔7/3付け〕について】「『Aの娘が死んだかまではわからなかった』とも書きましたが,実際のところは,『Aの娘も殺した』と思い込んでいました。私は,逮捕された後,S警察署に向かう警察の車の中で,『Aは死んだけども,Aの娘は重傷を負ったが生きている』と言うことを聞いたの 書きましたが,実際のところは,『Aの娘も殺した』と思い込んでいました。私は,逮捕された後,S警察署に向かう警察の車の中で,『Aは死んだけども,Aの娘は重傷を負ったが生きている』と言うことを聞いたのでした。だから,S警察署に着いたら,『Aの娘は死んだかまでは判らなかった』と言った方が,ちょっとでも自分が有利になると思ったので,紙に嘘を書いてしまったのです。」KS(7/15)〔乙20〕-任意性争うKS(7/15)〔乙20〕-任意性争う【脚色の疑いのある供述例】「(今日の調書では)冷静になって事件の事や自分自身の事を振り返えり,汚れた心を真っ開いて,心の隅に隠れている膿を1滴残さずに出しきります。」「あの場,つまり私にとっての戦場に居た人間は,誰であろうとも『全部が敵』だと思っていまに行っていたはずです。…あの場の私は,鬼になっておりました。人を平気で殺せる『殺人鬼るも同じだと思って,長女を刺し殺そうとしたのです。…ただ,Aの命を確実にとって殺したか人間は,皆殺しでした。Aを殺すためには自分を鬼に化せなければ出来ないと思っていましな人間かと,いちいち判断することも出来ない』状況になっていたでしょうし,それこそ迷ってに殺すことはできなかったはずです。」 PS(7/16)〔乙24〕【Aとの交際状況,殺害を決意するに至る経緯について】〔ほぼ従前の供述どおり〕 KS(7/17)〔乙21〕【以前交際していた女性について】 PS(7/20)〔乙25〕 【Aの長女への殺意について】〔ほぼ従前の供述どおり〕【A殺害の動機について】〔ほぼ従前の供述どおり〕【本件ナイフについて】〔ほぼ従前の供述どおり〕「多少,ナイフの刃は短かったのですが,私は,このナイフであっても,手に握りしめて思い切りA 〕【A殺害の動機について】〔ほぼ従前の供述どおり〕【本件ナイフについて】〔ほぼ従前の供述どおり〕「多少,ナイフの刃は短かったのですが,私は,このナイフであっても,手に握りしめて思い切りAの心臓目掛けて突き刺せば,Aの心臓を刺して殺すこともできると思いました。」【本件当日の犯行に至る経緯,犯行態様について】〔ほぼ従前の供述どおり〕【とどめ刺突の状況】〔ほぼ従前の供述どおり〕とどめ刺突の状況は,7月4日付け検証調書の写真108~115のとおり※ Bの再現写真とほぼ同様,写真112では,Aの胸に対しかなり斜めから刺している。被告人がA役を演じている写真114(とどめ刺突によりAが首を左横にうなだれる状況を被告人自ら再現したもの)では,Aはかなり寝そべった状態にはなっているが,それでも,ナイフはAの胸に対し斜めに刺突している。 7月22日起訴KS(7/23)〔乙22〕 【7月11日引当り,犯行再現した写真についての説明】※ 41,42枚目の写真は,7月14日S警察署の柔道場でとどめ刺突の状況を再現した写真〔乙18による。〕だが,自宅で犯行再現した写真〔乙25添付の写真112〕よりはAの身体はやや斜めになっているものの,それでもナイフはAの胸に対し斜めに刺突している。

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