平成30年3月1日判決言渡平成29年(行コ)第187号損害賠償,損害賠償等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成26年(行ウ)第231号〔以下「甲事件」という。〕,平成28年(行ウ)第1号〔以下「乙事件」という。〕) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用(参加によって生じたものを含む。)は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,P6,参加人P2,参加人P3,参加人P4及び参加人P5に対し,5315万8000円及びこれに対する平成27年1月24日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 (3) 被控訴人は,P6,参加人P2,参加人P4及び参加人P5に対し,3827万2650円並びにうち1874万7300円に対する平成28年1月16日から及びうち1952万5350円に対する同年7月22日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 (4) 被控訴人は,平成28年度以降の重複された初診料相当分及び事務費を支払ってはならない。 (5) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人及び参加人らの負担とする。 2 被控訴人及び参加人ら主文同旨第2 事案の概要1(1) P1市は,参加人P2との間で年度ごとに保健医療事業委託契約(以下「本件各委託契約」といい,年度ごとに「平成20年度本件委託契約」な どという。)を締結し,参加人P2に所属する医師らに乳幼児に対する予防接種事業(以下「予防接種事業」という。)等を委託し,委託料(以下「本件各委託料」といい,年度ごとに「平成20年度本件委託料」などという。)を支払っていた。本件各委託契約では,予防接種事業に関し,接 事業(以下「予防接種事業」という。)等を委託し,委託料(以下「本件各委託料」といい,年度ごとに「平成20年度本件委託料」などという。)を支払っていた。本件各委託契約では,予防接種事業に関し,接種するワクチンの本数ごとに初診料又はこれに相当する費用(以下「本件各初診料」という。)及び事務費又はこれに相当する費用(以下,本件各初診料と併せて「本件各初診料等」といい,年度ごとに「平成20年度本件初診料等」などという。)を支払うものとされ,ワクチンの同時接種の場合に2本目以降のワクチンに係る本件各初診料等(以下「本件各同時接種分初診料等」といい,年度ごとに「平成20年度本件同時接種分初診料等」という。)が支払われた。 (2)ア本件のうち甲事件は,P1市の住民である控訴人が,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,以下の請求をした事案である。 (ア) P1市に平成20年度ないし平成25年度本件委託契約を締結させて上記各年度本件各同時接種分初診料等を支払わせたのは,参加人P2,参加人P2の会長であった参加人P3及び参加人P4並びに参加人P2の感染症対策委員会委員長であった参加人P5の共同不法行為であるところ,参加人らに対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っていると主張して,平成20年度分ないし平成25年度分の損害賠償請求権の行使を怠る事実の相手方である参加人らに対して上記各年度分の本件各同時接種分初診料等相当額合計5315万8000円及びこれに対する不法行為後であり被控訴人に対する甲事件訴状送達日の翌日である平成27年1月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求をすることの義務付け。 (イ) 本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるところ,平成2 送達日の翌日である平成27年1月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求をすることの義務付け。 (イ) 本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるところ,平成20 年度分ないし平成25年度分の本件各委託契約締結の当該職員であるP1市長P6及びその相手方である参加人P2並びにその余の参加人らに対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っていると主張して,平成20年度分ないし平成25年度分の損害賠償請求権の行使を怠る事実の相手方であるP6及び参加人らに対して上記各年度分の本件各同時接種分初診料等相当額合計5315万8000円及びこれに対する上記の平成27年1月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求をすることの義務付け。 イ本件のうち乙事件は,P1市の住民である控訴人が,被控訴人に対し,以下の請求をした事案である。 (ア) 地方自治法242条の2第1項4号に基づき,P1市に平成26年度及び平成27年度本件委託契約を締結させて上記各年度本件同時接種分初診料等を支払わせたのは,参加人P2,参加人P2の会長である参加人P4及び参加人P2の感染症対策委員会委員長であった参加人P5の共同不法行為であるところ,上記参加人らに対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っていると主張して,平成26年度分及び平成27年度分の損害賠償請求権の行使を怠る事実の相手方である上記参加人らに対して平成26年度本件同時接種分初診料等相当額1874万7300円及びこれに対する不法行為後であり被控訴人に対する乙事件訴状送達日の翌日である平成28年1月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金並びに平成27年度本件同時接種分初診料相当額1952万535 為後であり被控訴人に対する乙事件訴状送達日の翌日である平成28年1月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金並びに平成27年度本件同時接種分初診料相当額1952万5350円及びこれに対する不法行為後の日であり平成28年7月21日付け「請求の趣旨変更の申し立て」と題する書面送達の日である同月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求をすることの義務付け。 (イ) 地方自治法242条の2第1項4号に基づき,本件各委託契約の締結 が違法な財務会計行為であるところ,平成26年度分本件委託契約締結及び平成27年度分本件委託契約締結の当該職員であるP6及びその相手方である参加人P2並びに参加人P4及び参加人P5に対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っていると主張して,平成26年度分及び平成27年度分の損害賠償請求権の行使を怠る事実の相手方であるP6及び上記参加人らに対して平成26年度本件同時接種分初診料等相当額1874万7300円及びこれに対する不法行為後であり被控訴人に対する上記の平成28年1月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金並びに平成27年度本件同時接種分初診料相当額1952万5350円及びこれに対する上記の平成28年7月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求をすることの義務付け。 (ウ) 地方自治法242条の2第1項1号に基づき,平成28年度以降の本件各同時接種分初診料等の支出が違法であると主張して,その差止め。 2 原審は,控訴人の本件各訴えのうち,P1市と参加人P2との間の本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとして参加人P3,参加人P4及び参加人P5に対して損害賠償請求の ,その差止め。 2 原審は,控訴人の本件各訴えのうち,P1市と参加人P2との間の本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとして参加人P3,参加人P4及び参加人P5に対して損害賠償請求の義務付けを求める部分及び平成20年度から平成25年度までの本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとしてP6及び参加人P2に対して損害賠償請求の義務付けを求める部分を却下し,控訴人のその余の請求をいずれも棄却した。そこで,これを不服とする控訴人が控訴した。 3 関係法令等の概要,前提事実(当事者間に争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実),争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の2ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 4頁23行目の「定め」を「概要」と改める。 (2) 5頁10行目及び同頁13行目の「である」の次にいずれも「(同)」を加え,同頁17行目の「A類疾病及びB類疾病」を「A類疾病(一類疾病)及びB類疾病(二類疾病)」と改める。 (3) 6頁19行目の「使用することなど」を「使用すること等」と,同頁25行目の「定期接種」を「定期の予防接種」と各改める。 (4) 7頁4行目の「4条3項」を「3条ただし書,4条3項」と改め,同行目の「費用は」の次に「当面の間」を,同頁18行目の「弁論の全趣旨」の次に「〔現在事項全部証明書〕」を,同頁23行目の「参加人P5は,」の次に「平成21年度から平成26年度までの間,」を各加える。 (5) 8頁5行目の「3,」の次に「32,」を,同頁15,16行目の「初診加算相当分」の次に「(750円)」を,同頁16行目の「注射料」の次に「(180円 26年度までの間,」を各加える。 (5) 8頁5行目の「3,」の次に「32,」を,同頁15,16行目の「初診加算相当分」の次に「(750円)」を,同頁16行目の「注射料」の次に「(180円)」を,同行目の「生物製剤加算」の次に「(150円)」を,同行目の「BCG接種加算」の次に「(400円)」を,同頁19行目の「技術料」の次に「(3630円)」を,同行目の「ワクチン管理料」の次に「(150円)」を,同頁22行目の「弁論の全趣旨」の次に「〔被控訴人の平成28年2月23日付け答弁書2頁〕」を各加える。 (6) 9頁4行目の「弁論の全趣旨」の次に「〔被控訴人の平成28年2月23日付け答弁書3頁〕」を加える。 (7) 10頁2行目の「顕著な事実」を「記録上明らかな事実」と改める。 (8) 12頁24行目の「38)。」の次に「地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げる義務がある(地方自治法2条14項)のであるから,地方公共団体が住民福祉増進のため乳幼児の予防接種について公費を負担するのであれば,その負担額は,適正な金額でなされることが法の要請するところであり,医療報酬について広く認められ使用されている報酬点数表に準じて決定すべきものである。」を加える。 (9) 13頁10行目末尾の次に「同時接種については,特段に高度な専門的知識や技術を要するものではなく,また個別接種以上に高度な判断を要するものでもない。」を加える。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,原判決と同様に,控訴人の本件各訴えのうち,P1市と参加人P2との間の本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとして参加人P3,参加人P4及び参加人P5に対して損害賠 断 1 当裁判所は,原判決と同様に,控訴人の本件各訴えのうち,P1市と参加人P2との間の本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとして参加人P3,参加人P4及び参加人P5に対して損害賠償請求の義務付けを求める部分及び平成20年度から平成25年度までの本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとしてP6及び参加人P2に対して損害賠償請求の義務付けを求める部分はいずれも不適法であり,控訴人のその余の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 18頁18行目の「一致する」を「一致しており,厚生労働省が総務省に対する地方交付税要求時に用いている接種単価を参照するなどして適切な単価を設定し,毎年度,予防接種事業として予算を計上し,議会の議決を経て支出されている」と改め,同頁20行目の「合計額」の次に「(3930円)」を,同頁22行目の「弁論の全趣旨」の次に「〔被控訴人の平成27年3月17日付け答弁書8~10頁〕」を各加える。 (2) 19頁9行目の「ワクチン」の次に「(BCG,日本脳炎〔1期〕,日本脳炎〔2期〕,ヒブ,小児用肺炎球菌))」を,同行目の「0.25%」の次に「(ヒブ)」を,同頁10行目の「4.35%」の次に「(日本脳炎〔2期〕」を,同行目の「ワクチン」の次に「(麻しん〔1・2期〕,風しん〔1・2期〕,MR〔1・2期〕,DPT,DT,子宮頸がん,インフルエンザ)」を,同行目の「0.28%」の次に「(子宮頸がん)」を,同頁10,11行目の「11.62%」の次に「(麻しん(1・2期)」を各加 える。 (3) 19頁17行目末尾の フルエンザ)」を,同行目の「0.28%」の次に「(子宮頸がん)」を,同頁10,11行目の「11.62%」の次に「(麻しん(1・2期)」を各加 える。 (3) 19頁17行目末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「(カ) 参加人P5は,同時接種について,医科診療報酬点数表に掲載されている『初診料』に含まれている接種当日の予診と接種実施の最終確認などの接種日の業務にとどまらず,母子健康手帳での予防接種歴の確認,予防接種の必要性の説明といった接種日より前の業務や,接種後の副反応(特に急性期副反応)への対応(電話対応も含む。),市町村への実施報告書と予診票の提出といった接種日より後の業務から成るのであり,医師にとって最善かつ高度の医学的判断が求められる医療行為であるだけでなく,同時接種の要否の判断の誤りは被接種者に不利益を与えるからこそ,医師の結果責任を問われる可能性のある医療行為なのであるとの意見を述べている(丙4)。 (キ) 公益社団法人日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会の委員を務めており,長年にわたって予防接種業務に従事しているP7は,同時接種を正当に評価しない算定方法による契約が広がれば,結果的に同時接種は進まなくなり,本来であれば早期の的確な時期のワクチン接種により防ぐことが可能なVPD(ワクチンで予防できる病気)のために子供たちの健康が損なわれる事態に陥ることになるのではないかと心から憂慮して,できる限り多くの対象者に的確な時期に接種をし,高い接種率を維持し続けることが極めて重要である旨の意見を述べている(丙5)。」(4) 20頁17行目及び同頁20行目の各「とはいえない」をいずれも「であるとまではいえない」と,同頁21行目の「とは認められない」を「とまでは て重要である旨の意見を述べている(丙5)。」(4) 20頁17行目及び同頁20行目の各「とはいえない」をいずれも「であるとまではいえない」と,同頁21行目の「とは認められない」を「とまでは認められない」と各改める。 ⑸ 22頁2行目及び同頁8行目の各「とはいえない」をいずれも「とまではいえない」と改める。 ⑹ 22頁15行目の「主張する。」の次に,次のとおり加える。 「確かに,被控訴人らは,単独接種及び同時接種のいずれについても,本件通知及び定期接種実施要領に基づいて,高度な医学的知見を有する医師による専門的な判断及び技術を必要とする多岐にわたる業務であり,診療報酬点数表の初診料に対応する医療行為とは異なる性質の業務であり,同時接種の2本目以降のワクチンに関する業務内容は,単独接種と比べて簡略化されるものではない旨主張し,参加人P5は,その旨の意見を述べている(認定事実(カ))けれども,担当した医師による専門的な判断の結果,実際にどれだけの人数が同時接種は不相当であるとされたかは明らかでない。」⑺ 22頁21行目の「あるとはいえない」を「あるとまではいえない」と,同頁24行目の「あるとは」を「あるとまでは」と各改める。 ⑻ 24頁17行目の「あるとは認められず,」を「あるとまでは認められない。」と改める。 ⑼ 24頁19行目の「見当たらない」の次に,次のとおり加える。 「(P1市の平成25年度の予防接種事業の委託料として2億1360万8730円が支出されていること〔乙13の5〕,同年度の参加人P2の会員数が97人であったこと〔甲1の5〕,したがって,一人当たりの受取額が平均約220万円であったことが認められるところ,控訴人の主張を前提とすれば,上記会員の受取額が相当程度減額さ 人P2の会員数が97人であったこと〔甲1の5〕,したがって,一人当たりの受取額が平均約220万円であったことが認められるところ,控訴人の主張を前提とすれば,上記会員の受取額が相当程度減額されることが見込まれる。そして,仮に,上記会員が,受取額の確保のため,同時接種を回避するとすれば,医学的に有用な同時接種の推進が図られなくなり,被接種者の負担が増して接種率が低下し,ひいては感染症の防止という重要な社会的価値が大きく損なわれることにもなりかねない〔認定事実,弁論の全趣旨〈参加人らが,『経済的な理由から同時接種には対応しない医療機関が発生することは必然であ〈る〉』〈参加人らの平成27年6月1日付け準備書面14頁〉,『万が一,委託料の減額が一般化すれば,医療機関が同時接種を敬遠する事態となり,医学的に有用な同時接種の推進が図られなくなって,ひいては感 染症拡大防止という重要な社会的価値が大きく損なわれることにもなりかねない』〈参加人らの平成29年3月30日付け準備書面4頁〉などと主張していること〉〕。したがって,P1市が,平成26年度及び平成27年度に控訴人の主張するような内容で被控訴人P2と予防接種事業について委託契約を締結することが可能であったとは考えにくく,そのため,伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するために参加人P2と本件各委託契約を締結することはやむを得なかったものということができる。)」 2 よって,控訴人の本件各訴えのうち,P1市と参加人P2との間の本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとして参加人P3,参加人P4及び参加人P5に対して損害賠償請求の義務付けを求める部分及び平成20年度から平成25年度までの本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為である 法な財務会計行為であるとして参加人P3,参加人P4及び参加人P5に対して損害賠償請求の義務付けを求める部分及び平成20年度から平成25年度までの本件各委託契約の締結が違法な財務会計行為であるとしてP6及び参加人P2に対して損害賠償請求の義務付けを求める部分はいずれも不適法であるから,これを却下すべきであり,控訴人のその余の請求はいずれも理由がないから,これを棄却すべきであり,原判決は相当であって本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第7民事部 裁判長裁判官池田光宏 裁判官榊原信次 裁判官寺西和史__
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