主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求別紙請求の趣旨一覧表記載のとおり第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,自転車競技法に基づいて日本自転車振興会に登録された競輪選手である原告らが,同法に規定する自転車競技の施行に関する事務を共同処理するために地方自治法284条2項に基づき被告らによって設立された一部事務組合である脱退被告兵庫県市町競輪事務組合(以下「本件組合」という。)が,やむを得ない事由がない限り競輪競技を継続して開催すべき契約上の義務を原告らに対し負っていたところ,平成14年3月31日に,正当な理由なく,また,事業継続のための努力をすることなく競輪事業を廃止したため,各原告が廃止から2年間における賞金等を受給できず,賞金等総額を平等に分割した額の損害を被った等と主張して,本件組合に対し,債務不履行責任に基づく損害賠償請求訴訟を提起したところ,本件訴訟係属後に本件組合が解散し,その債務が本件組合の解散に関する規約で定められた比率で被告らに承継(分賦)されたため,被告らが訴訟引受をなした事案である。 2 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,各項末尾掲記の証拠によって容易に認められる。 (1) 当事者原告らは,平成14年9月1日現在で自転車競技法に基づいて日本自転車振興会に登録された競輪選手であり,本件組合は,自転車競技法に規定する自転車競技の施行に関する事務を共同処理するために被告らによって設立された地方自治法284条2項に基づく一部事務組合であり,昭和48年4月に設立された後,平成14年3月31日に廃止されるまで,西宮競輪場及び甲子園競輪場において競輪を 理するために被告らによって設立された地方自治法284条2項に基づく一部事務組合であり,昭和48年4月に設立された後,平成14年3月31日に廃止されるまで,西宮競輪場及び甲子園競輪場において競輪を開催してきた。(弁論の全趣旨)(2) 競輪事業及び競輪選手に支払われる賞金額本件組合の競輪事業は,1開催あたり前節3日,後節3日の6日間を単位として,1競輪場あたり年間12開催をする72日間の事業であり,2競輪場を合計すると,年間24開催,144日間になり,1節3日間は同一選手が出場するので,1年間に出場する競輪選手は4320名(24開催×2節×10競走×9選手)である。(弁論の全趣旨)本件組合の競輪事業による収益は,自転車競技法1条に規定する競輪競技の目的に従って,被告らにおける社会福祉の増進,医療の普及,教育文化の発展,体育の振興,その他住民福祉の財源に充てるなどされてきた。(争いがない)他方,競輪選手に対しては,西宮競輪場及び甲子園競輪場に出場することにより賞金が支払われてきたところ,その賞金総額(本賞金等)の平成11年度から平成13年度までの3年間における合計は,別紙賞金表記載のとおり,西宮競輪場で31億8162万7000円,甲子園競輪場で35億1786万1000円である。(争いがない)なお,競輪事業は,経済産業省の所管であるところ,同省によって施行者の数,全国の競技場の数が勘案され,各施行者及び1競輪場の年間開催回数が自転車競技法施行規則(以下「施行規則」という。)によって法定されている。(争いがない)(3) 本件組合による競輪事業の廃止本件組合は,平成13年11月2日,本件組合を構成する被告らの首長による会議である管理者・副管理者 よって法定されている。(争いがない)(3) 本件組合による競輪事業の廃止本件組合は,平成13年11月2日,本件組合を構成する被告らの首長による会議である管理者・副管理者会を開催し,「競輪事業を取り巻く環境は厳しく,今後の車券売上の確保は極めて厳しい状況にあり,西宮・甲子園両場開催はもとより,甲子園1場へ統合して開催することは将来黒字に転換する見込が立たないことなど総合的に判断して,平成13年度末で西宮・甲子園競輪事業から撤退する。」と決定した。(争いがない)そして,本件組合は,同年11月9日,競輪選手全員で組織する社団法人日本競輪選手会理事長である原告A(以下「原告A」という。)に対し,「兵庫県市町競輪事務組合の競輪事業からの撤退について」と題する書面(甲1)により,平成13年度末で西宮競輪場及び甲子園競輪場から撤退する旨通知した。(争いがない)これに対し,日本競輪選手会は,本件組合に対し,競輪事業の撤退が選手の生活権を奪うもので容認し難く,本件組合が挙げる撤退理由が近視眼的視野に基づくもので合理性に乏しいことなどを理由として,競輪事業再建に向けた努力を求めた。(甲2)しかしながら,平成14年3月31日,本件組合は競輪事業を廃止するに至った。(争いがない)(4) 本件組合と原告らとの関係本件組合は,昭和48年から西宮競輪場及び甲子園競輪場において競輪事業を開催してきたが,平成14年3月31日に廃止されるまでの間,原告らの相当数が上記競輪に出場した。(争いがない)(5) 競輪事業の関係者競輪事業は,経済産業省の監督下に,主として日本自転車振興会,自転車競技会及び競輪選手,競輪場設置者あるいは競輪施行者等が相 出場した。(争いがない)(5) 競輪事業の関係者競輪事業は,経済産業省の監督下に,主として日本自転車振興会,自転車競技会及び競輪選手,競輪場設置者あるいは競輪施行者等が相互に各種手続を履践することによって成り立っている。(争いがない)ア日本自転車振興会(以下「日自振」という。)日自振は,自転車競技法12条の2によって認められた特殊法人であり,競輪の公正かつ円滑な実施を図ることを目的とし,その業務内容は,同法12条の16で規定するとおり,競輪の審判員及び出場選手の検定,登録や,出場選手のあっせん,審判員,選手等の養成,訓練等である。(甲6,弁論の全趣旨)イ自転車競技会自転車競技会は,競輪の実施に関する事務を公正かつ円滑に行うことを目的として,自転車競技法の一部を改正する法律(昭和37年法律84号)による改正後の自転車競技法13条以下の規定に基づいて設立された特殊法人であり,施行者から委託を受けて,出場選手及び使用自転車の検査等,競輪競技に必要な事務を行う団体である。(甲6,弁論の全趣旨)ウ競輪場設置者(以下「設置者」という。)設置者は,自転車競技法及び施行規則に定める競走場の基準に従って設置され,総務大臣の指定を受けた施設(競輪場)を競輪開催のために提供する者である。したがって,施行者が競輪場を所有している場合は,施行者と設置者は同一となり,施行者が民間所有の競輪場を使用して競輪を開催するときは,施行者と設置者との間で,通常,賃貸借契約を締結する等の対応がなされる。(甲6,弁論の全趣旨)なお,西宮競輪場の設置者は阪急電鉄株式会社であり,甲子園競輪場の設置者は甲子園土地企業株式会社であっ 間で,通常,賃貸借契約を締結する等の対応がなされる。(甲6,弁論の全趣旨)なお,西宮競輪場の設置者は阪急電鉄株式会社であり,甲子園競輪場の設置者は甲子園土地企業株式会社であった。(甲19ないし21,弁論の全趣旨)(6) 競輪選手の出場手続ア開催の範囲と日取り施行者が行う競輪の開催回数(1競輪場あたり年間12回,月間1回),開催日数(1回4日以上8日以内),競走回数(1日10回以上12回以内)及び日取りは自転車競技法5条の2第1項に基づく施行規則4条の4によって定められているところ,同法5条の2第2項によれば,各施行者間における競輪開催の日取りの調整については,経済産業大臣が必要な指示をすることができる旨規定されている。 この点,近畿地区における日程調整は,半期ごとに近畿経済産業局長の主催により,施行者である地方公共団体,近畿自転車競技会,日自振,全国競輪施行者協議会,設置者,近畿経済産業局等の出席の下,競輪開催日程調整等会議において調整が行われる。(弁論の全趣旨)イ開催要項と開催届兵庫県市町競輪事務組合自転車競走実施規則4条,31条によれば,施行者は日程調整を経て,開催の日時,場所,選手の参加申込の締切日,参加申込を受け付ける選手の範囲及び資格等,開催に必要な事項を開催要項として定め,経済産業大臣に開催届を提出し,公表する旨規定されており,施行規則2条によれば,施行者は,開催日の2か月前までに,開催の日時その他の事項を,所轄経済産業局長を経由して経済産業大臣に届け出なければならない旨規定されている。 ウ出場選手のあっせん依頼手続施行者は開催要項に基づく出場選手の参加を求めるため,当該 経済産業局長を経由して経済産業大臣に届け出なければならない旨規定されている。 ウ出場選手のあっせん依頼手続施行者は開催要項に基づく出場選手の参加を求めるため,当該競輪の開催日の属する2か月前(特別競輪にあっては6か月前,記念競輪にあっては3か月前)までに,出場選手あっせん依頼書に競輪場名,級別,番組,競技ごとのクラス,距離等の情報を添えて,選手のあっせん機関である日自振に出場選手のあっせんを依頼する。(乙1,弁論の全趣旨)エ日自振によるあっせん手続日自振は,選手出場あっせん調整基準(乙5)に従って,出場あっせん依頼書により算出した出場選手数,地域ごとの居住選手数,競輪の開催内容,希望選手及び選手の交流等を勘案して出場選手あっせん計画を作成し,この出場選手あっせん計画に基づき,競輪の種類,開催日程,出場選手数,実働選手数,選手の出場回数,出場条件,同一競輪にあっせんする同一級別選手の能力等を考慮して,公正にあっせんを行うこととされている。(乙5,弁論の全趣旨)日自振が出場あっせん選手を決定したときは,あっせん依頼をした施行者に出場あっせん選手一覧表を送付し,当該選手に対しては出場あっせん通知書を送付する。(弁論の全趣旨)オ出場あっせん選手の検討自転車競技会は,日自振から出場あっせん選手の通知を受けたときは,出場あっせん選手一覧表に基づき,あっせんすべきでない選手やあっせん辞退選手があっせんされた選手の中に含まれていないかどうかを調べ,含まれていた場合には当該選手のあっせんの取消しとこれに代わる選手の追加あっせんを日自振に依頼するなどの措置を取る。(弁論の全趣旨)カ参加申込出場 どうかを調べ,含まれていた場合には当該選手のあっせんの取消しとこれに代わる選手の追加あっせんを日自振に依頼するなどの措置を取る。(弁論の全趣旨)カ参加申込出場あっせんを受けた選手に対しては,競輪場や出場する節等の情報が記載された「競輪参加申込書」と題する通知書が送付され,競輪選手は,出場希望回答の締切日までに当該競輪の施行者宛ての同申込書を日自振に送付することになるが,同申込書には,参加を希望する場合には,「標記競輪の開催要項並びに競輪選手の出場に関する約款を承知して参加を申込みます」「開催執務委員長殿」と予め印字された欄内に,住所,電話番号,級班,登録番号,氏名,年齢を記載して返送し,出場を希望しない場合には,府県,級班,登録番号,氏名を記載し,押印の上,不参加理由として予め印字された「家事都合」「病気」「負傷」「日競選校務」「その他」の中から該当するものに「○」を付けて,返送することとされている。(乙2,弁論の全趣旨)キ参加通知日自振は,前記「競輪参加申込書」の参加希望欄に記載した上,返信してきた競輪選手について取纏めを行った上,自転車競技会に対し,選手からの参加希望の状況を伝える。(乙3,弁論の全趣旨)そこで,選手の参加希望の有無を確認した施行者は,競輪名や前日検査集合日時,節区分等が記載された開催執務委員長名義の「参加通知書」を当該選手宛てに発送する。(乙4,弁論の全趣旨)ク出場に関する約款昭和47年5月18日,競輪施行者を代表する全国競輪施行者協議会と日本競輪選手会は,施行者と競輪選手とが競輪の開催ごとに締結する競輪出場契約の内容に関して合意し,これを「競輪選手の出場に関する約款」(以下「本件約 8日,競輪施行者を代表する全国競輪施行者協議会と日本競輪選手会は,施行者と競輪選手とが競輪の開催ごとに締結する競輪出場契約の内容に関して合意し,これを「競輪選手の出場に関する約款」(以下「本件約款」という。)として定めており,これは,平成12年4月17日に,賞金適用基準別・級別制裁金の規定,特別事故見舞金の解釈が変更されたものの,現在まで有効に存続している。(甲4,弁論の全趣旨)(7) 出場資格を有する競輪選手自転車競技法5条1項は,競輪に出場する選手は,命令の定めるところにより日自振に登録されたものでなければならないと定め,同項に基づく「競輪審判員,選手および自転車登録規則」(昭和32年9月14日通商産業省令第39号,以下「登録規則」という。)15条は,日自振は,身体,技能,学力及び人物について,選手資格検定に合格した者を,競輪選手として登録する旨を規定している。 (8) 本件組合の債務を被告らが承継したこと本件組合は,平成15年3月31日に解散し,解散の当時本件組合に帰属していた債務は,本件組合の解散に関する規約によって定める以下の比率に従い,被告らに分賦された。(弁論の全趣旨)被告姫路市 6.5784% 被告赤穂市 2.1140%被告尼崎市 6.5784% 被告西脇市 2.0127%被告明石市 6.5784% 被告宝塚市 3.0552%被告西宮市 44.1567% 被告三木市 1.7178%被告洲本市 1.8290% 被告高砂市 1.7178%被告伊丹市 7.2749% 被告川西市 1.7178%被告相生市 1.7178% 被告小野 被告洲本市 1.8290% 被告高砂市 1.7178%被告伊丹市 7.2749% 被告川西市 1.7178%被告相生市 1.7178% 被告小野市 1.7178%被告豊岡市 2.0850% 被告三田市 1.7178%被告加古川市 3.2725% 被告加西市 0.5000%被告龍野市 1.9402% 被告三原町 1.7178%(9) 原告らが法的義務の根拠として主張する法規等自転車競技法14条1項は,施行者及び自転車競技会に対し,競輪場内の秩序を維持し,競輪の公正及び安全を確保するため,入場者の整理,選手の出場に関する適正な条件の確保,競輪に関する犯罪及び不正の防止その他必要な措置を講じるべきことを規定している。 施行規則17条(現行34条)は,施行者に対し,4半期ごとに,入場者数,車券の発売金額,競輪開催に関する収支決算について,その主たる事務所の所在地を管轄する経済産業局長に報告しなければならず,また,競輪の実施に関し事故があったときは,その状況を遅滞なくその主たる事務所の所在地を管轄する経済産業局長に報告しなければならない旨を規定している。 登録規則21条は,日自振が,正当な理由がないのに1年以上引き続き競輪競技に出走しなかった選手や,公正かつ安全な競走を行うに不適と認められる理由がある場合には,当該競輪選手に対し,登録を抹消することができる旨を規定している。 日自振の選手出場あっせん調整基準4条は,あっせんされた競輪競技に正当,かつ,やむを得ないと認められる事由によって参加できないことを証明すべき書類を添えて提出しないまま当該競技に参加しなかっ 日自振の選手出場あっせん調整基準4条は,あっせんされた競輪競技に正当,かつ,やむを得ないと認められる事由によって参加できないことを証明すべき書類を添えて提出しないまま当該競技に参加しなかった競輪選手は,当該あっせんもあっせんを受けた回数として算入される旨を規定している。(乙5)本件約款2項の3は,施行者と競輪選手は,出場契約を締結するにあたり,日自振が「競輪に関する業務の方法に関する規程」及び「選手出場あっせん調整基準」その他出場あっせんに関する規則・要領に基づいて行う出場あっせんを相互に尊重する旨規定しており,同3項は,施行者と競輪選手が,競輪の公正かつ円滑な実施を図るため,競輪の実施に関する法令,通達,条例,規則,その他競輪の運営に関する諸制度において定められた事項を順守し,相互に協力する旨を規定し,同5項は,競輪選手が施行者の開催する競輪競技に参加し,施行者が公正安全な競輪競技の実施のために行う選手及び自転車の管理,検査を受けるとともに競輪の本旨に則し全力を尽くして施行者の指定する競走に出場するものとする旨を規定している。(甲4) 3 争点及び当事者の主張本件の争点は,(1)原告ら競輪選手全員と本件組合との間に,契約継続の期待利益が保護の対象となり,契約の解消について特別の配慮が必要な長期間にわたる継続的な競輪出場に関する契約(以下「継続的出場契約」という。)が成立していたか否か,(2)本件組合が継続的出場契約を解約するやむを得ない事由が存在したか否か,(3)本件組合は競輪事業を廃止するに際し,原告らに対して負う信義則上の義務を怠ったか否か,(4)法制度に基づく損害賠償責任の成否,(5)原告らの損害である。 (1) 原告ら競輪選手全員と本件組合との間に継続的出場契約が成立していたか否か して負う信義則上の義務を怠ったか否か,(4)法制度に基づく損害賠償責任の成否,(5)原告らの損害である。 (1) 原告ら競輪選手全員と本件組合との間に継続的出場契約が成立していたか否かア原告らの主張競輪事業の実態及び本件約款等によれば以下の事情が存することが明らかであるから,原告ら競輪選手全員と本件組合(個々の施行者)との間(なお,「個々の原告と本件組合(個々の施行者)との間」ではなく,また,「原告ら全員と全施行者との間」でもない。)には,期間の定めのない継続的出場契約が成立しており,本件組合は原告らに対し継続的に競輪競技を開催して出場させるべき義務を負っていたのに,これを怠った。 (ア) 日自振のあっせんによって競輪競技に参加する競輪選手は,あっせんを受けた場合,どの施行者の開催する競輪競技であっても,傷病等正当な理由がない限り,あっせんに応じる義務を負わされている。 (イ) このあっせんの仕組が,競輪施行者による開催が円滑かつ公正に行われるように日自振が選手の割当を調整しているのであり,選手全員と施行者は,日自振のあっせんに従うという意思を有している。 (ウ) 仮に競輪選手が正当な理由に基づきあっせんを辞退した場合,日自振は必ず代替の選手をあっせんする上,個別出場契約が成立した後であっても,出場が予定されている競輪選手の氏名が公表されるまでであれば,補充の選手を出場させる体制が取られている。 (エ) 前記のようなあっせんに基づく競輪競技の開催は,昭和48年度から平成13年度に至るまで,全国50競技場で年間600開催と固定して実施されてきた。 (オ) 競輪選手は,固定的な競輪開催によって,将来的に出場機会が確保される 催は,昭和48年度から平成13年度に至るまで,全国50競技場で年間600開催と固定して実施されてきた。 (オ) 競輪選手は,固定的な競輪開催によって,将来的に出場機会が確保されるとの期待を前提として,競輪学校の試験に挑戦し,訓練を積んで選手の資格を取得している。 (カ) 施行者は,競輪競技に必要な選手が必ず出場し,欠員が生じても他の選手が補充され,支障なく競輪競技を実施できるとの期待を有している。 (キ) 競輪選手全員を対象として円滑かつ公正なあっせんが行われるように,原告ら競輪選手全員と施行者との間には,個々の出場契約を包括する基本契約が成立し,本件約款(甲4)として明文化されている。 イ被告らの主張争う。 (ア) 個々の原告らと本件組合との間で締結される出場契約は,競輪開催ごとの個別の契約であり,個別契約ごとに契約を締結するか否かは当事者双方の自由である。このことは,参加申込書の体裁からみても明らかである。 (イ) 原告らの20.8%(約830名)は,西宮・甲子園競輪のいずれにも出場したことがない。 (ウ) 出場あっせん通知書の体裁からも明らかなように,あっせんが行われるまでは,いかなる選手が当該競輪に出場するかは全く白紙の状態であり,いかなる選手であっても,開催される競輪の賞金を獲得できる蓋然性が高いとはいえない。 (エ) 競輪選手は何人とも雇用関係をもたない自営業者であり,その独立性こそが公正な自転車競走を実施するための要件である。 (オ) 原告らは,本件約款を継続的出場契約の基本契約である旨主張するが,本件約款の内容は,多くが個別出場契約における給付や補償に関する事項であ 転車競走を実施するための要件である。 (オ) 原告らは,本件約款を継続的出場契約の基本契約である旨主張するが,本件約款の内容は,多くが個別出場契約における給付や補償に関する事項であるし,全国各地で開催される競輪において締結される選手と各施行者との個別出場契約について,その解釈,運用が個別の競輪場ごとに一致しないことから生じる運用上の不都合を避けるために,個別的出場契約の内容を全国的に統一する必要があって作成されたものにすぎない。 本件約款は,個別出場契約の当事者以外の者によって合意されたものであり,個別の選手と施行者にとっては,個別の出場契約が締結され,個別の契約の条件として引用されて初めて本件約款の内容が個別契約に組み入れられ法的な意味を持つものというほかはない。 (カ) 競輪選手は,S級,A級,B級とランク分けされており,出場できるレースが限定されているから,出場機会の喪失割合は異なるはずであるが,原告らの主張では,それが全く考慮されていない。 (キ) 競輪事業は必ず継続を要求される事業ではない。その証左として,自転車競技法1条1項の規定により,市町村でいえば,総務大臣から指定された団体のみが競輪を施行できることになっているところ,その指定の有効期間についても,1年間ないし2年間とされている団体もある。つまり,地方財政の健全化目的を達成できる限りにおいて認められる事業にすぎず,赤字を税金で補填しながら継続するべき事業ではない。 (ク) 競輪事業の衰退傾向が明らかな中で,収支が赤字となることの確実な事務組合が,競輪ファンや競輪事業に関わる関係者のためだけに,仮に一定期間であっても,税金による補填をしてまで競輪事業を継続しなければならないとすることには らかな中で,収支が赤字となることの確実な事務組合が,競輪ファンや競輪事業に関わる関係者のためだけに,仮に一定期間であっても,税金による補填をしてまで競輪事業を継続しなければならないとすることには何ら合理性がない。 (2) 本件組合が継続的出場契約を解約するやむを得ない事由が存在したか否かア被告らの主張(ア) 継続的出場契約を解約するための要件競輪事業は,赤字を税金で補填しながら継続すべき事業ではないから,やむを得ない事由を厳格に要求されることなく,財政上の問題などを理由に解約することができる。 これに対し,原告らは,継続的出場契約の解消には正当な理由が必要である旨主張するが,当該主張は,当事者双方が経済的に破綻していない正常な状態にあることを前提として初めて成り立つものであり,相手が経済的に破綻している場合に,相手に対し,出場契約を締結する義務を求めたり,相当期間事業の継続を求めたりすることはありえない。 したがって,常に正当な理由が要求される旨の原告らの主張には理由がない。 (イ) やむを得ない事由の存在仮にやむを得ない事由が必要であるとしても,本件組合は,下記aからfの経緯を踏まえて,今後赤字解消の目処が全くないことが明らかとなり,したがって自転車競技法1条の公益目的を達成することが困難であることが明白で,税金を使用してまで競輪事業を継続することはできなかったために当該事業から撤退したのであり,やむを得ない事由が存在していたといえるから,仮に継続開催義務を負っていたとしても,撤退したことに違法性はない。 a 平成3年のバブル経済の崩壊後,公営競技全般の売上が下降す あり,やむを得ない事由が存在していたといえるから,仮に継続開催義務を負っていたとしても,撤退したことに違法性はない。 a 平成3年のバブル経済の崩壊後,公営競技全般の売上が下降する中,競輪については,ファンが高齢化した上,ファン層のマニア化傾向が高まり,車券売上高が大幅に減少した。5つの公営競技中,競輪事業の総売上額は昭和49年まで第1位であったが,平成4年度以降は長期低迷し,平成10年度では第3位となった。 平成5年度以降,開催収支が赤字となる施行者が増え続け,平成8年度以降,多数の競輪事務組合が競輪事業から撤退している。 b 本件組合は,西宮・甲子園競輪事業の収支改善に取り組むべく,売上増強策を講じるとともに,併せて開催経費の削減に取り組んできた。 c 平成10年度以降赤字が連続する中,平成12年度には,同年度以降の売上予測と競輪の今後の動向調査等を専門家に依頼し,それに基づく事業収支予測を行ったところ,赤字の解消が全く見込めない状況であることが判明した。そこで,従事員賃金等の削減,施設会社の賃料減額等経費の削減を行うなどして,ようやく平成13年度の事業継続が可能となった。 d 平成13年度においては,同年の上半期(4月から9月)までの売上実績をもとに平成14年度から平成17年度までの売上予測及び事業収支試算を行ったが,平成14年度以降の各年度とも黒字となる見通しは立たず,甲子園一場案の検討もしたが,平成14年度の1年のみわずかな黒字になるだけとの試算結果であったため,同年3月末をもって競輪事業から撤退することを平成13年11月に決定し,これを発表した。この間,日本競輪選手会を含む関係各団体に対し,資料を用いて報告,協議を行い,日 だけとの試算結果であったため,同年3月末をもって競輪事業から撤退することを平成13年11月に決定し,これを発表した。この間,日本競輪選手会を含む関係各団体に対し,資料を用いて報告,協議を行い,日自振に対する各交付金の交付率を改める等の要望活動を行ってきたが,収支の悪化を回避することができなかった。 e 平成13年度以降の開催経費の減少を図ることを目的に従事員の離職慰労金制度を廃止することとし,廃止のために必要な離職慰労金の支払に充てるため事務組合の財政基金を活用した。その結果,財政基金は大幅に減少した。また,平成12年9月14日,阪急電鉄及び甲子園土地企業の両設置者との間で,平成13年度の賃借料率を25%削減する旨の確認書を締結し,同月11日には,従事員組合との間で,平成13年度の賃金を半額にする旨の確認書を締結した。 f 日本競輪選手会は平成13年1月から競輪活性化推進研究会を設け,同研究会において,「増収のための基本方針」(乙10)を報告しているが,同報告の中で,競輪場数は現在の半数で十分とした上,全国を20ないし26に分け,関西・中国では岸和田・甲子園・西宮の3場を1場に縮小することを提案し,競輪場を削減することにより,経費の削減,施設の改善,運営の改善が易しくなるとし,閉鎖した競輪場は専用場外車券売場(サテライト)を含む飲食・物販・娯楽施設等複合商業施設として開発し,競輪場が半減した分は,レースを増やして補填するという改善策が提案されていた。 (ウ) やむを得ない事由が存在しなかった旨の原告らの主張について原告らは,平成12年度に支払われた退職金額が高額にすぎた旨主張するが,本件組合は,平成12年度末に全員退職として退職金を支払い,翌年度(平成13年 旨の原告らの主張について原告らは,平成12年度に支払われた退職金額が高額にすぎた旨主張するが,本件組合は,平成12年度末に全員退職として退職金を支払い,翌年度(平成13年度)は,平均賃金の半額の一律8000円の日額賃金とし,以後退職金制度を設けないこととしたのであって,本件組合は,むしろ,平成13年度以降の事業継続を可能ならしめるために退職金の支払を行ったのである。原告は,退職金の額についても適正であったか疑わしいとするが,退職金(離職慰労金)の額は,労使協定によって昭和45年に制定された「兵庫県下競輪従事員離職慰労金支給規程」に基づくものであって,本件組合はことさらに増額するなどの措置は講じていない。平均支払額が約1000万円となったのは平均勤務年数が24年と長く,しかも,西宮・甲子園の2場での勤務となっているためである。 また,原告らは,平成13年度に甲子園競輪場で開催された記念競輪の売上額が著しく低下したとされることをカモフラージュであると主張するが,甲子園競輪場以外でも同年度の記念競輪で売上が減少した競輪場も存在するし,記念競輪の売上額の多寡は,出場する選手,開催時期,場外発売の日数に大きく影響されるが,開催日数や場外発売を増加させることについては,過去に騒擾事件が発生した経験があったこと等の事情があるため困難であった。また,将来展望も見据えた競輪事業運営改善を進めるためには,売上額だけに固執するのではなく,収益性を重視した経営方針に転換する努力が必要であった。ファンの間には,車券購入レースの選別化が見られ,特別競輪や記念競輪等のグレードの高いレースに偏って車券が購入されていることから,記念競輪での場外発売の拡大は,かえって普通競輪離れに拍車をかけているといえた。しかし,特別競輪 ースの選別化が見られ,特別競輪や記念競輪等のグレードの高いレースに偏って車券が購入されていることから,記念競輪での場外発売の拡大は,かえって普通競輪離れに拍車をかけているといえた。しかし,特別競輪の開催は競輪事業の継続のため重要であるため,平成13年3月にも,平成15年度の特別競輪の開催申請を行うなど対策を講じていた。 さらに,原告らは,旧自治省と本件組合関係者との協議によって,平成12年7月ころには既に競輪事業の廃業が決定されていた旨主張するところ,同年7月12日に旧自治省B課の課長補佐と復命書のとおりの協議が行われたことは事実である。しかし,当時は,専門家による売上予測によって平成12年度から平成17年度までの収支試算を策定した直後であって,試算で全ての年度で赤字見込となったため,これを旧自治省に説明し,本件組合による競輪事業は危機的な状況にあることを理解してもらう必要があったために協議が行われたのであって,あくまで廃業は想定であり,協議の前提ではなかった。なお,廃業の最終意思決定がなされたのは,平成13年11月2日に開催された「管理者・副管理者会」においてである。 原告らは,専門家による意見,調査分析も廃業のための理由作りのためである旨主張する。しかし,関西学院大学のC経済学部教授及びD社会学部教授に意見を求めたのは,平成12年4月であったところ,当時は,平成11年度の収支が平成10年度に引続き赤字が見込まれるという厳しい局面にあり,抜本的な経営改善のための競輪事業運営改善計画を策定し,具体化に乗り出した時期であったし,両教授は,それぞれの専門分野から,自由にしかも異なった意見を述べているのであって,廃止のための理由作りなどではない。 イ原告らの主張( 化に乗り出した時期であったし,両教授は,それぞれの専門分野から,自由にしかも異なった意見を述べているのであって,廃止のための理由作りなどではない。 イ原告らの主張(ア) 継続的出場契約を解約するための要件について本件組合が継続的出場契約を一方的に解約するには,やむを得ない事由と相当な予告期間の2要件が必要であるところ,別の施行者を探したり,設備・人員等の特殊資産を他に転用したりする時間的余裕を考慮することに意義が乏しい本件の場合には,仮にやむを得ない事由があって解約する場合であっても,相当な予告期間に代わる金銭的補償をしない限り,解約を正当化することができないものと解すべきである。 (イ) やむを得ない事由の存在についてa 売上確保のための努力が本件組合において不足していたこと全国競輪売上額に占める西宮・甲子園競輪売上額の比率は,昭和55年に6.02%であったものが,以後毎年確実に低下し続け,平成11年には3.3%へと半減している。全国的な減少以上に西宮・甲子園競輪の売上が減少した原因は,偏に本件組合の努力不足によるものである。関西圏よりもはるかに人口の少ない地域でも売上を維持している競輪場は数多く存在するし,西宮・甲子園競輪場地域が全国平均よりも高齢者が多いというわけでもない。また,本件組合は,平成10年に事業収支が赤字になった後,売上増強のための施策を講じず,むしろ,広告宣伝費の削減,CATVの廃止等売上増加にとってマイナスとなるものしか行っていない。 平成13年度に甲子園競輪場で開催された記念競輪の売上が著しく低下したことは,本件組合が売上増のための努力をいかに怠ったかを示しているところ,かか のしか行っていない。 平成13年度に甲子園競輪場で開催された記念競輪の売上が著しく低下したことは,本件組合が売上増のための努力をいかに怠ったかを示しているところ,かかる怠慢は,本件組合が既にこの段階で廃止を決定していたことから,売上増をマイナス材料と判断していたことに由来するものと思われる。 b 本件組合が事務組合財産基金を安易に取り崩したこと本件組合は,経費削減と称して,従事員を一旦全員離職させ,事務組合財産基金から退職金約42億円を取り崩し,事業収支が赤字であった平成10年度,平成11年度においても,同基金を取り崩して被告ら市町に対し配分金を出捐したが,これらの措置は,競輪事業の経営の健全化を図る趣旨で積み立てられてきた同基金の趣旨に反するものである。 かかる取崩しの結果,基金残高は,平成11年度には約75億円であったのに,平成12年度には約25億円にまで減少してしまい,競輪事業からの撤退を早める原因ともなった。 c 本件組合による将来の赤字見込は安易なものであること本件組合は,平成12年度に行われた従事員賃金の大幅削減及び施設賃借料率の引下げ等の成果も見ない状態で,平成14年度から平成17年度までの4年間で各年度黒字が見込めないとの安易な予測を行い,甲子園一場のみを存続させて競輪事業を継続する案をも安易に排斥した。 d 事業継続のための諸策本件組合は,平成12年度初めころ,人件費削減や設置賃借料の削減,専門家による車券売上予測等を行ったが,復命書(甲16)によると,平成12年7月14日には旧自治省との協議において既に競輪事業の廃止が決定されていたのであるから ころ,人件費削減や設置賃借料の削減,専門家による車券売上予測等を行ったが,復命書(甲16)によると,平成12年7月14日には旧自治省との協議において既に競輪事業の廃止が決定されていたのであるから,かかる諸策は廃止決定のための準備作業であり,カモフラージュにすぎない。 (3) 本件組合は競輪事業を廃止するに際し,原告らに対して負う信義則上の義務を怠ったか否かア原告らの主張(ア) 信義則上の義務競輪競技は,前記(1)アの(ア)から(キ)のとおり,各関係団体が互いに信頼し,協力し合うことによって,公正かつ円滑に実施されているのであり,そのために様々な組織が作られ,そのための人員も配置されている。 すなわち,競輪選手については,全国で競輪競技を年間600開催,1開催2節6日間,1日は10競走で1競走に9名の選手が参加し,1節の間は同一選手が出場するから,述べ人数で10万8000人が必要であるところ,1人年間27回前後の出場の機会を確保するために,新人選手の登録や成績不良選手の登録消除を毎年実施して,総選手数が約4000人になるように運営されてきた。 したがって,施行者が,他の関係団体と何の協議もせずに,利益の生まれる可能性が少なくなったと判断するや否や,廃止に伴う各関係者の損失補償についての対策を講じないまま,自己の一存で競輪事業を廃止することを決めるということが許されるはずはなく,全競輪選手から毎年1回の出場機会を奪うことになる競輪事業の廃業に際しては,競輪選手への影響が大きいことに照らしても,施行者は競輪選手全員に対し,誠実な対応をすべき信義則上の義務を負っていた。 かかる信義則上の義務は,競輪事業を廃止する 業に際しては,競輪選手への影響が大きいことに照らしても,施行者は競輪選手全員に対し,誠実な対応をすべき信義則上の義務を負っていた。 かかる信義則上の義務は,競輪事業を廃止する必要事由とその程度,廃止を避けるための努力の有無と程度,相手方の協力の度合等の事情を考慮してもなお,その結果が相手方の正当な期待に反する場合には認められるべきものであって,継続的になされてきた個別的契約を一方が今後締結しないときには,他方当事者が新たな個別契約の相手方を見つけるまでの猶予期間を置くべきこと,また,猶予期間・予告期間を置かない場合には,当該期間に得べかりし利益を補償すべきである。 (イ) 信義則上の義務に違反する行為本件組合は,かかる信義則上の義務に反して,売上増強などの必要な対策を行わず,突然競輪事業を廃業し,損失補償も行わなかった。よって,本件組合は,廃業により原告らが被った損害を賠償すべきである。 イ被告らの主張(ア) 信義則上の義務について信義則上の義務というのは,個別具体的な契約当事者間において認められるものであるから,個別の出場契約が存続していない競輪選手と施行者との間において信義則上の義務が発生することはあり得ないところ,単に個別的契約が継続されてきただけで,競輪事業の廃止に猶予期間を置くことや猶予期間に得べかりし利益を補償することが必要となると解するのは不当である。現代社会における取引関係は,もはや単回の契約で終わるという方が珍しいくらいであり,単に個別的契約が反復継続してきただけで原告ら主張の義務が発生すると考えるのは不当である。なお,本件では,原告らは,本件組合による競輪事業の廃業によって2場がなくなったとしても, しいくらいであり,単に個別的契約が反復継続してきただけで原告ら主張の義務が発生すると考えるのは不当である。なお,本件では,原告らは,本件組合による競輪事業の廃業によって2場がなくなったとしても,なお48場の競輪場で開催される競輪に出場して選手賞金を獲得することができるのであるから,ことさら信義則という一般条項を持ち出して競輪事業から撤退する本件組合に対し,原告ら主張のような義務を課す必要性は認められない。 そもそも,必要な競輪選手の数を確保してきたのは日自振であって原告らではない。競技に必要な延べ10万8000名の選手を確保するためには,より多数の選手を育成すればよいはずであるのに,日自振は1人あたりの年間出場回数や賞金額を維持する意図から,むしろ,選手の利益のために,競輪選手数を4000人に抑えてきた。かかる経緯に鑑みても,本件組合が原告らに対して信義則上の義務を負うということはない。 また,原告らは,長年にわたって競輪事業に貢献してきた旨主張するが,原告らの中には,登録して数年しか経っていない選手が相当数いるはずであり,これらの競輪選手については,長年にわたる貢献があったとはいえないはずである。1名あたりの年間あっせん回数は24回であるから,全国の競輪場が50場であることからすると,競輪選手は1人あたり2年に1回程度本件組合が開催する競輪競技に出場する程度であって,継続的に個別的出場契約を締結する関係にあるとはいえない。施行者は,競輪競走に必要な選手数の確保を期待してはいるものの,個別具体的な競輪選手の出場を期待しているわけではない。 このように,原告らの主張は,具体的な選手を前提とした場合には,矛盾が生じて成り立たないものであるし,抽象的な競輪選手全員を前提と な競輪選手の出場を期待しているわけではない。 このように,原告らの主張は,具体的な選手を前提とした場合には,矛盾が生じて成り立たないものであるし,抽象的な競輪選手全員を前提としても,抽象的な意味での競輪選手には実体がなく,また,法人格もなく,その権利義務を論じる余地はないから,主張自体失当である。 (イ) 信義則上の義務に違反する行為についてa 突然の廃業であったとの主張について本件組合は,原告らが所属する選手会及びその支部との間で,約2年間協議を重ねた上で,競輪事業から撤退した。すなわち,本件組合は,平成12年4月から定期的に旧通商産業省,選手会を含む関係団体に対し,本件組合の事業収支等の報告と事業の継続の困難さについての陳情を繰り返し行ってきた。 とりわけ,本件組合が撤退を視野に入れて意見をとりまとめるとの方針を打ち出した同年7月27日以降は,管理者・副管理者会,組合議会等で,事業収支試算等の内容を報告するとともに,その席で提出された原告ら関係者からの要望に対し,双方で話し合う等してきた。また,平成14年3月31日をもって撤退するとの方針を決定した平成12年11月10日以降は,日本競輪選手会を含むその他の関係団体に売上額等を参考にした試算結果を詳細な書類に示して報告してきた。 さらに,その後,日本競輪選手会等から提案された甲子園競輪場1場のみでの継続開催案についても,平成13年5月と同年8月の2回にわたって,実現が極めて困難であることを報告している。 よって,本件組合は,日本競輪選手会に対して協議を尽くし,平成14年度以降赤字である場合は,事業から撤退する旨の予告を与 って,実現が極めて困難であることを報告している。 よって,本件組合は,日本競輪選手会に対して協議を尽くし,平成14年度以降赤字である場合は,事業から撤退する旨の予告を与えてきたのであって,一方的に突然撤退を決定したわけではない。 b 廃止の理由に正当性がないとの主張について前記(2)イ(イ)のとおりc 売上増強策を講じなかったとの主張について本件組合は,昭和57年以降,売上減少対策として,近畿初の電話投票の導入や,ナイター競輪導入の具体的検討,場外発売,有名選手のあっせん要望,車券投票制度のマークシート導入,送迎バスの運行等ファンサービスの充実,場内実況カラーテレビの導入,CATVによる中継放送の拡大を行ってきた。 甲子園競輪場は甲子園球場と近接しているところ,甲子園球場で野球が開催されている期間内は,雑踏整理に必要な警察官の配置が困難であるため競輪競技の開催日数には制約があった。同様に西宮競輪場は住宅地にあるので,西宮競輪においても開催日数については地元との調整が必要であった。 d 肩代わり施行に向けた努力をしなかったとの主張についてこれまで撤退した施行者はもともと競輪場を所有していた施行者から年に何回か借りていた借上げ施行者であり,借上げ施行者の開催していた場所と同じ場所で競輪を開催していた他の施行者が存在していたからこそ円滑に肩代わり開催が実現できたにすぎない。本件組合の場合には,同じ場所で競輪競技を開催していた他の施行者はなかった。 e 東京都による競輪事業の廃止と本件組合による場合との比較東京都は,昭和4 件組合の場合には,同じ場所で競輪競技を開催していた他の施行者はなかった。 e 東京都による競輪事業の廃止と本件組合による場合との比較東京都は,昭和44年1月に,昭和45年度から3年以内に後楽園競輪等公営競技を段階的に廃止することを発表し,昭和48年3月末に全ての公営競技から撤退した。他方,本件組合は,平成12年7月27日,選手会を含む関係者に対し,収支予測に基づき競輪事業の厳しい経営状況について説明した。その後,平成13年度は関係者の協力を得て継続開催することとしたが,翌年度以降の開催については,平成13年度中に行う事業収支見込結果を見て判断することとなった。その結果,平成13年度末をもって競輪事業から撤退することとなり,同年11月,撤退を表明した。 東京都が競輪事業を廃止した当時,競輪事業の総売上額は公営競技の中で第1位と順調であったが,本件組合が撤退した時期は,平成4年度以降売上額が全国的に減少を続け,競輪施行者が次々と競輪事業から撤退する状況であり,車券売上が回復することはおよそ考えられない状況であった。また,撤退の理由についても,東京都では,①自治体財政の近代化,合理化,民主化の確立のため,②国の税の配分が適正でなく公営ギャンブルに頼らざるを得ない現状を改善するべく公営競技を廃止した上で,国に対し適正配分を求めるため,③ギャンブルは広い意味での公害であるためとの政策的なものであったが,本件組合の場合は,経営改善の努力にもかかわらず平成10年度以降赤字が累積し,今後の事業収支見込によると将来的に赤字の解消の目処が立たなかったことから,自転車競技法の目的に反して地方財政を悪化させる事態を回避するために,やむを得ず廃止するというものであった。 (4) 後の事業収支見込によると将来的に赤字の解消の目処が立たなかったことから,自転車競技法の目的に反して地方財政を悪化させる事態を回避するために,やむを得ず廃止するというものであった。 (4) 法制度に基づく損害賠償責任の存否ア原告らの主張我が国の競輪競技は,都道府県及び総務大臣の指定を受けた市町村のみが実施することができ,その余の者は一切競輪競技の施行者となることができない。また,経済産業省は,施行者の数,全国の競輪場の数を勘案して,各施行者並びに1競輪場の年間開催回数を施行規則によって定めている。 かかる法制からすれば,競輪事業を廃止しようとする施行者は,予め競輪選手側や監督官庁にその旨の意向を表示して,当該施行者が廃止することによる開催回数及び賞金の減少分を,他の施行者の行う競輪競技によって補填したり,日自振の登録選手数を徐々に減少したりする等の対応をすることができる時間的余裕をもった措置を取るべきであるにもかかわらず,施行者のみの都合によって勝手に廃止するということは,競輪競技の公正かつ安全な実施を目的とする自転車競技法の精神に反するものである。 自転車競技法14条1項,施行規則17条(現行34条),登録規則21条,日自振の選手出場あっせん調整基準第4条,本件約款2項の3,3項,5項にも同法の精神が顕れている。 しかるに,これを行わず,一方的に競輪事業を廃止することは明らかに違法であり,本件組合は原告らに対し,廃止から2年間に得べかりし利益につき損害賠償しなければならない。 イ被告らの主張仮に本件組合に継続開催義務違反があるとしても,原告ら競輪選手は,日自振のあっせんによって初めて出場する競輪競技が つき損害賠償しなければならない。 イ被告らの主張仮に本件組合に継続開催義務違反があるとしても,原告ら競輪選手は,日自振のあっせんによって初めて出場する競輪競技が決まるのであるから,本件組合が開催していた西宮競輪・甲子園競輪に出場する具体的権利が保障されていたわけではない。したがって,本件組合が,西宮競輪・甲子園競輪を開催しなかったとしても,原告らの権利は何ら侵害されていない。 日自振による1人あたりの出場あっせん回数が減少したとしても,あっせんを受ける回数が選手に対して法的に保障されているわけではない。原告らが減少したと主張する基準となる出場回数は27回であるが,この回数も生活保障のために選手らが要望してきたというものにすぎず,日自振や関係者がその回数を法的に保障しているわけではない。 また,日自振の選手出場あっせん調整基準第2条1項(乙5)では,あっせん回数は年間24回を標準とするとされているが,同2項において,年間24回の標準あっせん回数は,当該あっせん調整期間の開催必要選手数と実働選手数との需給関係により増減できるとしているから,年間24回という回数も絶対的に保障されたものとはいえない。 なお,現実に日自振によって行われた1人あたりの年度間あっせん回数は,平成12年度平均27.18回,平成13年度平均27.21回,平成14年度平均25.99回,平成15年度大体27回であり,西宮・甲子園競輪が開催されなかった平成14年度は例年よりも約1.2回減少しているが,翌15年度には従前の回数にほぼ回復している。 原告らは,選手の生活の安定は不正競走を防止するために必要である旨主張するが,選手の生活が安定すれば不正競走がなくなるとは ているが,翌15年度には従前の回数にほぼ回復している。 原告らは,選手の生活の安定は不正競走を防止するために必要である旨主張するが,選手の生活が安定すれば不正競走がなくなるとはいえないから関係はない。 (5) 原告らの損害ア原告らの主張原告らの相当数の者は,本件組合との出場契約の機会を絶たれ,出場選手に支払われる賞金を獲得することもできなくなった。また,本件組合との出場契約の見込のない者も,本件組合との出場契約の機会を絶たれた競輪選手が他の施行者開催の競輪競技に出場することによって,そのしわ寄せを受けて出場する機会を失い,その結果,本来出場して獲得することができる賞金を得ることができなくなった。そもそも,日自振は全競輪選手に対し,平等に出場機会を与えていることから,被告との出場契約の機会の有無に関わらず,全ての競輪選手が被害を受けていることになる。 しかるところ,個々の競輪選手の損害額については,本件組合開催の競輪競技の賞金総額を按分することで競輪選手間で合意が成立している。 原告らが競輪事業の廃止に対応するための準備期間としては,少なくとも2年間が相当であるから,原告らが本件組合の競輪事業で獲得することができるはずであった賞金2年分が本件組合が原告らの不利益に対して賠償すべき損害・損失額となるところ,その額は,西宮・甲子園両競輪場の廃止前3年間の平均年間賞金額22億3316万2666円の2年分である44億6632万5332円であり,これを登録選手3988名で平等に按分して分配すると1名あたり111万9941円となる。 そして,本件組合から被告らへの債務の分賦の比率を乗ずると,各被告らが各原告に支払うべき損害金は請 録選手3988名で平等に按分して分配すると1名あたり111万9941円となる。 そして,本件組合から被告らへの債務の分賦の比率を乗ずると,各被告らが各原告に支払うべき損害金は請求の趣旨のとおりとなる。 イ被告らの主張(ア) 一律損害論の不合理性競輪競技は,それぞれの選手の能力により賞金獲得額に差が生じるものであるところ,出場者のうち,誰が,どのレースに何着で入賞するかも全く不明であるのに,原告ら全員に抽象的に出場の蓋然性があるとすることはできない。 また,獲得できたはずの賞金を全員に平等に按分して分配する合意をし,損害賠償請求に及ぶ旨の合意が法的に有効か疑問であるし,債権譲渡や贈与等の法的性質によって説明するとしても,誰と誰との間の法律行為であるのか不明であって,結局上記のような合意は不可能というべきである。 そもそも,原告らは,日自振のあっせんを受けない限り,出場する競輪競技は決まらないのであるから,原告ら個々人が具体的に西宮・甲子園競輪の賞金を獲得する旨の期待は法的に保護されないものである。 (イ) 原告らの当事者適格原告らのうち8名は,選手として協議に出場しない者であるところ,年齢・体力から賞金も稼げないため,本件の当事者とはなれない。また,原告らのうち40名は,日本競輪選手会の40支部において,賞金も稼ぐが給料も受けている者であるところ,賞金と給料の内訳が不明であるから,2年間の賞金獲得の機会を奪われた者に該当するか否かは不明である。さらに,原告らのうち75名は,本件組合が競輪事業を廃業した日の翌日である平成14年4月1日に登録選手となった者であるが,平成13年11月に西 金獲得の機会を奪われた者に該当するか否かは不明である。さらに,原告らのうち75名は,本件組合が競輪事業を廃業した日の翌日である平成14年4月1日に登録選手となった者であるが,平成13年11月に西宮・甲子園競輪が廃止されることを知っているから,両競輪での賞金の獲得を予見することもない。最後に,原告らのうち約200名は,本件訴訟の提起後に競輪選手を辞めており,原告らに何らかの請求権が成立するとしても,辞職によって請求権を放棄しており,本訴請求をすることはできない。 以上のように,原告らには,明らかに損害賠償を請求することができない者が多数混在しており,原告らのうち誰が損害賠償請求をすることができるかは全く不明であって,結局,原告ら全員について,損害賠償請求権を否定せざるを得ない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1),(2)について(1) 原告らは,競輪選手全員と本件組合との間に継続的出場契約が成立していたことを前提として,本件組合はやむを得ない事由がないのに同契約を解約した旨主張する。 しかしながら,前記「前提となる事実」に照らし考察すると,競輪選手全員と本件組合との間には,競輪選手全員の中から,日自振のあっせんによって本件組合が開催する競輪競技に出場する選手が選ばれ,本件組合との間で個別の出場契約を締結するとの制度的かつ事実上の関係が存続してきたことは認められるものの,それを超えて,競輪出場につき法的義務を伴う継続的契約関係が成立しているものとは認められない。 たしかに,競輪競技を開催するにあたって,出場する競輪選手が確保されていることは個々の施行者にとって不可欠の条件であるといえるが,前記「前提となる事実」によれば,個々の競輪選手が出場あっせんを受け入れるか否かはあ 競技を開催するにあたって,出場する競輪選手が確保されていることは個々の施行者にとって不可欠の条件であるといえるが,前記「前提となる事実」によれば,個々の競輪選手が出場あっせんを受け入れるか否かはあくまで選手の自由意思に委ねられるものである。もっとも,施行者は,日自振によるあっせんを競輪選手が受け入れなかった場合でも,再度のあっせんに応じた別の競輪選手との間で個別の競輪出場契約を締結することができ,そのように再度のあっせんによって,最終的には競輪選手として登録している選手の出場を確保しているが,これは競輪事業を適法に成り立たせている法制度ないしその運営の結果であるし,他方,競輪選手としても,出場の機会を与えられれば格別の理由がない限りこれに応ずることが予定されているものの,これはそうすることが自らの収入の途を得ることになり,自らの利益に適うからであって,あっせんに応ずることにつき法的な強制力を受けるためとまでは認められない。 加えて,施行者は,競輪選手としての資格を有する選手のうち誰を出場選手として選ぶかについては,日自振によるあっせんに一任しているのであるから,競輪選手全員に対し,出場する選手を確保するために直接契約上の権利等を主張し,これを行使したような事情は認められず,かかる点に照らしても,競輪選手全員と本件組合との間には,法制度が予定している関係を超えた特別な継続的契約関係が構築されてきたとは認められない。 そもそも,契約関係から生ずる権利,義務の内容を考慮する場合に,原告ら主張のように,個々の競輪選手ではなく,競輪選手全員という自然人の団体を一方当事者として想定することには,当該団体の法的性質をどう捉えるかという点を始めとして相当の困難を伴うことはいうまでもない。加えて,証拠(原告A本人)及び弁 なく,競輪選手全員という自然人の団体を一方当事者として想定することには,当該団体の法的性質をどう捉えるかという点を始めとして相当の困難を伴うことはいうまでもない。加えて,証拠(原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,競輪選手として登録している者の中には,出場することが想定されていない者が確実に含まれていると認められる上,登録選手の全員にあっせんを受ける可能性が等しく認められるわけではなく,中にはあっせんを受けることをおよそ期待できない者も競輪選手として登録していることが認められるから,そのような者を含んだ団体を一方当事者として,法的義務を伴う契約関係を想定することはおよそ困難であるといわざるを得ない。 よって,競輪選手全員と本件組合との間には継続的出場契約の存在は認められないから,これが存在することを前提とする争点(1),(2)に関する原告らの主張にはいずれも理由がないことは明らかである。 (2) 以上に対し,原告らは,本件組合が主催する競輪出場のあっせんを原告らが受けた場合,競輪選手は事実上拒否することができない旨主張する。しかしながら,前記「前提となる事実」(6)カ及び証拠(乙2,3)によれば,あっせんを受けた選手が日自振から送付される「競輪参加申込書」には,不参加の場合の記載欄も設けられており,不参加の回答も制度上予定されていると認められるし,現にあっせんを受けながら参加を辞退している選手が存在していることも明らかであるから,出場あっせんに事実上の拘束力がある旨の原告らの主張には疑問があるし,競輪選手が,日自振に対しては正当かつやむを得ない理由なしにあっせんを拒否できない立場にあるとしても(ただし,それも,正当な理由なく出場を拒否した場合に,それに応じて出場の機会を喪失するという不利益を被るためと考えられる ては正当かつやむを得ない理由なしにあっせんを拒否できない立場にあるとしても(ただし,それも,正当な理由なく出場を拒否した場合に,それに応じて出場の機会を喪失するという不利益を被るためと考えられる。),本件組合に対して直接法的義務を負い,あるいは強制力の行使を受ける地位にあるとは解されない。したがって,いずれにせよ原告らの主張には理由がない。 また,原告らは,個々の施行者が競輪競技に必要な人数分の競輪選手の出場を必ず期待することができ,そのような関係が40年以上も続いてきた旨主張する。そこで,検討するに,前記「前提となる事実」と証拠(原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,競輪選手に競輪競技への出場の機会を与えることができるのは適法に指定を受けたあっせん機関である日自振のみであるところ,施行者が開催する総競技数と適正な出場機会数を考慮して,競輪選手側はなるべく1人あたり年間27回の出場機会が確保されるように登録選手数の調整を行ってきたこと,かかる調整の結果,良質の競輪選手が登録,育成され,施行者らも安定して選手らが供給されることを期待してきたことが認められる。しかしながら,競輪選手の人数調整は,競輪選手を職業として成り立たせるために,多分に選手側の利益のために行われてきた側面があることも否定し難いし,競輪選手の人数調整や開催日数の調整は,競輪事業を,監督官庁である経済産業省(旧通商産業省)の監督の下,公営ギャンブルとして適法ならしめるために,いわば法制度上の必要から行われてきたものであることは明らかであるから,かかる供給調整が法制度ないし運営上行われていること自体から,私法上の継続的出場契約関係が個々の施行者と競輪選手全員との間に成立しているとまで解することは困難である。 さらに,原告らは,競輪選手全員と個 度ないし運営上行われていること自体から,私法上の継続的出場契約関係が個々の施行者と競輪選手全員との間に成立しているとまで解することは困難である。 さらに,原告らは,競輪選手全員と個々の施行者らとの間には,継続的出場契約の根底となる基本契約が存在する旨主張する。しかしながら,証拠(甲4)によれば,原告らが基本契約として主張する本件約款は,継続的な出場機会の提供に関する規定ではないと認められ,むしろ,個別の出場契約に関する付随的事項を,全施行者と競輪選手との間で統一するために合意されたものと解されるのであり,それ自体を継続的出場契約の基本契約であると解するには無理があるというべきである。 そもそも,原告らの主張は,競輪選手全員が抽象的に本件組合が開催する競輪競技に出場する機会が認められることを前提とするものと解されるが,かかる関係が認められることは,競輪事業を適法に成り立たせている法制度ないしその法の趣旨に沿った運営の結果にすぎないことは既に判示したとおりであるから,いずれにせよ原告らの主張に理由がないことは明らかである。 2 争点(3)について(1) 原告らは,本件組合の原告らに対する継続開催義務までは認められなくとも,これまでの原告らと本件組合との関係からすれば,本件組合は,競輪事業を廃止するに際して,原告らに対し,原告らが新たな契約の相手方を見つけるまでの猶予期間を置き,または,その間の得べかりし利益を補償するなどの信義則上の義務を負う旨主張する。 たしかに,前記「前提となる事実」によれば,原告らと本件組合との間には,競輪選手である原告らは適法に競輪事業を開催し得る施行者との間で出場契約を締結しなければならず,他方,競輪事業を開催しようとする施行者らは,競輪選手として登録した れば,原告らと本件組合との間には,競輪選手である原告らは適法に競輪事業を開催し得る施行者との間で出場契約を締結しなければならず,他方,競輪事業を開催しようとする施行者らは,競輪選手として登録した者としか出場契約を締結できないという相互に契約相手を制限された関係が認められ,この点において競輪事業の運営には競輪選手と施行者との間の協力関係が不可欠である。 しかしながら,かかる関係は,ギャンブルである競輪事業を,適法な公営事業ならしめるために法制度上制約を課せられた結果であることは既に前記説示したとおりであって,この関係から当事者間に私法上の契約関係を律する信義誠実義務を想定することはできない。 よって,競輪事業からの撤退にあたって,本件組合が原告らに対して前記内容の信義則上の義務を負う旨の原告らの主張には理由はない。 (2) 以上に対し,原告らは,本件組合が自らの利益のみを追求し,利益が見込めなくなった場合に直ちに,撤退することは信義則上許されない旨主張する。 そして,たしかに,証拠(甲7,9,乙15,原告E本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件組合は,法律に定められた特別な地位を背景として競輪選手の出場を確保し,競輪事業によって収益金を上げてきたこと,記念競輪等の特別な競輪開催計画については開催の2年前から開催場の決定等がなされていることが認められる。 しかしながら,本件組合は営利団体として競輪事業を開催しているものではなく,地方財政に資することを目的として同事業を行っているものであるところ(自転車競技法1条),同法及び施行規則その他の法令には,競輪事業を廃止する場合の要件に関する規定が定められていないことに照らすと,地方財政への組入れが期待できない場合に競輪事業を随時廃止することに法令上の制約はないもの 同法及び施行規則その他の法令には,競輪事業を廃止する場合の要件に関する規定が定められていないことに照らすと,地方財政への組入れが期待できない場合に競輪事業を随時廃止することに法令上の制約はないものと解されるから,利益が見込めないことを理由に競輪事業から撤退することが信義則上の義務に反する旨の主張は,それ自体理由がないものといわざるを得ない。 また,原告らは,本件組合による競輪事業からの撤退が,競輪選手らから出場機会を奪うことになることから,本件組合には長年競輪事業により収益を上げることに貢献してきた競輪選手全員に対して何らかの信義則上の義務が生ずるものと主張する。しかしながら,本件組合の廃業によって競輪事業の存続が困難になり,原告らが競輪選手としての収入の途を一挙に失うような場合は検討の余地があるとしても,本件においては,証拠(甲5の12ないし14,乙5,原告A本人)によると,日自振が,競輪選手1名あたりが受ける1年あたりのあっせん回数について,公正安全な競走を行うに適当と認められる選手に対しては年間24回を標準とする旨を規定している一方で,平成12年度の選手1人あたりの平均あっせん回数は27.18回で,平成13年度も27.21回であったのであり,平成14年度には25.99回と減少したものの,平成15年度には約27回に回復したことが認められるところ,本件組合が競輪事業から撤退したことに伴って,1人あたり1回以上のあっせん回数が減少したと認められるものの,未だ,日自振が定めている標準あっせん回数を上回るあっせん回数は確保されていると認められる。また,1人あたり平均27回のあっせんを受けることが,何らかの形で競輪選手らに保障されていたわけでもない。したがって,本件組合の撤退による競輪選手らの出場機会の減少は,未だ本件組合に と認められる。また,1人あたり平均27回のあっせんを受けることが,何らかの形で競輪選手らに保障されていたわけでもない。したがって,本件組合の撤退による競輪選手らの出場機会の減少は,未だ本件組合に何らかの信義則上の義務を本件組合に生じさせるものとは到底いえない。よって,原告らの主張には理由がない。 (3) なお,証拠(甲13)によれば,西宮市周辺地域に居住する競輪選手には,甲子園競輪場で練習し,さらに,西宮競輪・甲子園競輪において先頭誘導員として出走し,それに対する手当を受ける等の特別の機会が与えられていたことが認められ,そのように何らかの出場の機会を反復継続して受けていた選手の存在が本件で窺われないでもない。しかしながら,そのような選手が得る練習や出場の機会は,競輪事業が居住地域において開催されることに伴う反射的な利益にすぎない上,賞金等総額の損害賠償を請求する原告らの本訴請求とは無関係である。 3 争点(4)について(1) 原告らは,競輪事業を成り立たせている法制度上,本件組合が突然撤退することは許されず,継続して開催すべき義務を負っていた旨主張する。 そこで検討するに,前記「前提となる事実」に加え,証拠(甲6ないし8,10,11,16,17,乙6,14の3・4,原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,競輪事業は経済産業省(旧通商産業省)が監督官庁となって,施行者の数,全国の競技場の数を勘案して,各施行者及び1競輪場の年間開催回数を施行規則によって法定していること,施行者は,都道府県及び総務大臣の指定を受けた市町村のみであること,競輪選手の人数は1人あたりの平均あっせん回数が生活水準に見合うように調整されていること,競輪事業の年間計画は2年ほど先を見越してたてられていること,平成13年3月以降,経済産業省産 のみであること,競輪選手の人数は1人あたりの平均あっせん回数が生活水準に見合うように調整されていること,競輪事業の年間計画は2年ほど先を見越してたてられていること,平成13年3月以降,経済産業省産業構造審議会車両競技分科会において,競輪事業の概況や問題点が議論され,その中で競輪選手の人数についても言及がなされたこと,同年6月ころ,施行者らが,経済産業省に対し,売上額から一定割合で納付することが義務付けられている交付金制度を改めるように陳情をなしたことが認められる。 しかしながら,いかに競輪選手の数が競輪開催総数に対応する形で決定されてきた事実が認められるとしても,競輪選手の出場機会確保のために,地方財政から補填してでも競輪事業を継続し続けなければならない義務が生じるとは解されないし,他方,競輪選手の数を完全に開催総数に一致させるように調整することも極めて困難であると推認されるから,赤字とならない程度に競輪事業から段階的に撤退するというような特別の配慮をすべき注意義務が施行者に生じるものとも解されない。 (2) また,原告らは,競輪事業を成り立たせている法制度及び自転車競技法の精神からすれば,本件組合には,予め競輪選手側や監督官庁に廃止の意向を表示して,廃止に伴う開催回数や賞金の減少分を他の施行者の競輪競技によって補填する等の措置を取るべき注意義務があった旨主張する。しかしながら,現実の問題として,売上増加のための工夫を重ねながら,売上や収支の予測をして競輪事業を継続してきた場合,廃業する明確な見込を競輪選手側や監督官庁に対して2年以上も前に告知することは極めて困難であると考えられるから,原告らが主張するようにおよそ2年前から,競輪事業から撤退する見込を対外的に表示していなければならないとの義務が,法制度上,施行 対して2年以上も前に告知することは極めて困難であると考えられるから,原告らが主張するようにおよそ2年前から,競輪事業から撤退する見込を対外的に表示していなければならないとの義務が,法制度上,施行者に課せられているものとは解されない。 なお,証拠(甲6,16,17,原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件組合は,平成12年4月以降,別紙「中央への陳情状況一覧表」記載のとおり,旧通商産業省,旧近畿通商産業課長,選手会,日自振,自転車競技会,自転車振興会,全国競輪場施設協会,全国競輪施行者協議会等の関係機関に対し,事業収支状況や収支予測を,専門家による分析や客観的資料を多数添付して行った上,支援要請等を行ったこと,平成12年7月ころには,本件組合が撤退も視野に入れた検討が行っていることを旧自治省担当者に伝えていること,同年8月には,選手会理事長から本件組合に対し,事業継続に関する問題が提起されていることを選手会も認識した上で,事業継続に向けた取組をするように求める文書が発出されていることが認められるところ,本件組合は,原告らが主張するように突然に競輪事業からの撤退を表明したのではなく,事前にある程度根拠のある資料を示しながら,各関係機関に対する各種の陳情や要請を行ってきたと認められる。 原告らは,さらに,自転車競技法14条1項,施行規則17条(現行34条),登録規則21条,日自振の選手出場あっせん調整基準第4条,本件約款2項の3,3項,5項等からすれば,本件組合は原告らに対し継続開催をすべき義務を負うことが認められる旨主張するが,独自の見解であって,何ら合理性がない。 第4 結論以上の次第で,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの請求にはいずれも理由はないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき 旨主張するが,独自の見解であって,何ら合理性がない。 第4 結論以上の次第で,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの請求にはいずれも理由はないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第6民事部 裁判長裁判官田中澄夫 裁判官大藪和男裁判官三宅知三郎(別紙)請求の趣旨一覧表 1 被告姫路市は原告らに対し,各金7万3674円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告尼崎市は原告らに対し,各金7万3674円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告明石市は原告らに対し,各金7万3674円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告西宮市は原告らに対し,各金49万4528円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告洲本市は原告らに対し,各金2万0483円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告伊丹市は原告らに対し,各金8万1474円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済 (訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告伊丹市は原告らに対し,各金8万1474円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告相生市は原告らに対し,各金1万9238円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 被告豊岡市は原告らに対し,各金2万3350円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 9 被告加古川市は原告らに対し,各金3万6650円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 10 被告龍野市は原告らに対し,各金2万1729円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 11 被告赤穂市は原告らに対し,各金2万3675円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 12 被告西脇市は原告らに対し,各金2万2541円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 13 被告宝塚市は原告らに対し,各金3万4216円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 14 被告三木市は原告らに対し,各金1万9238円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各 9日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 14 被告三木市は原告らに対し,各金1万9238円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 15 被告高砂市は原告らに対し,各金1万9238円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 16 被告川西市は原告らに対し,各金1万9238円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 17 被告小野市は原告らに対し,各金1万9238円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 18 被告三田市は原告らに対し,各金1万9238円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 19 被告加西市は原告らに対し,各金5599円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 20 被告三原町は原告らに対し,各金1万9238円及びこれに対する平成14年12月19日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
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