平成28(ワ)4165 地位確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年10月28日 名古屋地方裁判所
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判決文本文36,577 文字)

令和2年10月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成28年(ワ)第4165号地位確認等請求事件口頭弁論終結日令和2年7月15日判決 主文 1 被告は,原告甲に対し,下記⑴ないし⑶の金員を支払え。 ⑴ 50万0853円及びこれに対する平成28年9月14日から支払済みまで年5%の割合による金員⑵ 263万9521円及び別表1のA-2ないしA-5,A-9ないしA-11に記載された,各月(ただし,平成26年4月分から同年7月分は除く。)の 「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年5%の割合による金員⑶ 41万0298円並びにうち6万1799円に対する平成28年1月1日から,うち5万7599円に対する同年8月1日から,うち6万9776円に対する平成29年1月1日から,うち6万9299円に対する同年8月1日か ら,うち6万9776円に対する平成30年1月1日から,及びうち8万2049円に対する同年8月1日から,各支払済みまで年5%の割合による金員 2 被告は,原告乙に対し,下記⑴及び⑵の金員を支払え。 ⑴ 220万3111円及び別表2のB-1ないしB-3,B-7ないしB-9,B-16及びB-17に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対 する各翌月16日から各支払済みまで年5%の割合による金員⑵ 50万1109円並びに,うち7万7361円に対する平成28年1月1日から,うち7万5645円に対する同年8月1日から,うち6万1225円に対する平成29年1月1日から,うち5万9625円に対する同年8月1日から,うち5万6225円に対する平成30年1月1日から,うち5万8925 円に対する同年8月1日から,うち4万804 円に対する平成29年1月1日から,うち5万9625円に対する同年8月1日から,うち5万6225円に対する平成30年1月1日から,うち5万8925 円に対する同年8月1日から,うち4万8043円に対する平成31年1月1 日から,及びうち6万4060円に対する令和元年8月1日から,各支払済みまで年5%の割合による金員 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告甲と被告との関係では,これを10分し,その7を原告甲の負担とし,その余を被告の負担とし,原告乙と被告との関係では,これを4分し, その3を原告乙の負担とし,その余を被告の負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 原告甲関係 ⑴ 主位的請求ア被告は,原告甲に対し,341万3614円及び別表3のA-9ないしA-11に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 イ被告は,原告甲に対し,385万9142円及び別表3のA-2ないしA -5に記載された,各月(ただし,平成26年4月分から同年7月分は除く。)の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 ウ被告は,原告甲に対し,325万4475円及びこれに対する平成28年9月14日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 エ被告は,原告甲に対し,85万4596円並びにうち21万7900円に対する平成29年1月1日から,うち20万1223円に対する同年8月1日から,うち21万9700円に対する平成30年1月1日から,及びうち21万5773円に対する同年8月1日 うち21万7900円に対する平成29年1月1日から,うち20万1223円に対する同年8月1日から,うち21万9700円に対する平成30年1月1日から,及びうち21万5773円に対する同年8月1日から,各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 ⑵ 予備的請求 ア被告は,原告甲に対し,341万3614円及び別表3のA-9ないしA-11に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 イ被告は,原告甲に対し,385万9142円及び別表3のA-2ないしA-5に記載された,各月(ただし,平成26年4月分から同年7月分は除く。) の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ウ被告は,原告甲に対し,125万8942円並びにうち21万4823円に対する平成28年1月1日から,うち18万9523円に対する同年8月1日から,うち21万7900円に対する平成29年1月1日から,うち2 0万1223円に対する同年8月1日から,うち21万9700円に対する平成30年1月1日から,及びうち21万5773円に対する同年8月1日から,各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 原告乙関係⑴ 主位的請求 ア被告は,原告乙に対し,183万6500円並びに別表4のB-16及びB-17に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 イ被告は,原告乙に対し,314万9179円及び別表4のB-7ないしB-9に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16 日から各支払済みまで年6%の割合に 員を支払え。 イ被告は,原告乙に対し,314万9179円及び別表4のB-7ないしB-9に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16 日から各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 ウ被告は,原告乙に対し,245万1388円及び別表4のB-1ないしB-3に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 エ被告は,原告乙に対し,100万円及びこれに対する平成28年9月14 日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 オ被告は,原告乙に対し,85万1500円並びに,うち22万2300円に対する平成29年1月1日から,うち20万4500円に対する同年8月1日から,うち21万9100円に対する平成30年1月1日から,及びうち20万5600円に対する同年8月1日から,各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 カ被告は,原告乙に対し,45万4600円並びに,うち23万2000円に対する平成31年1月1日から,及びうち22万2600円に対する令和元年8月1日から,各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 ⑵ 予備的請求ア被告は,原告乙に対し,183万6500円並びに別表4のB-16及び B-17に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 イ被告は,原告乙に対し,314万9179円及び別表4のB-7ないしB-9に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ウ被告は,原告乙に対し,245万1388円及び別表4のB-1ないしB- 載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ウ被告は,原告乙に対し,245万1388円及び別表4のB-1ないしB-3に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 エ被告は,原告乙に対し,131万5356円並びに,うち24万3336円に対する平成28年1月1日から,うち22万0520円に対する同年8 月1日から,うち22万2300円に対する平成29年1月1日から,うち20万4500円に対する同年8月1日から,うち21万9100円に対する平成30年1月1日から,及びうち20万5600円に対する同年8月1日から,各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 オ被告は,原告乙に対し,45万4600円並びに,うち23万2000円 に対する平成31年1月1日から,及びうち22万2600円に対する令和 元年8月1日から,各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は,自動車学校の経営等を目的とする株式会社である被告を定年退職した後に,期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を被告と締結して就労していた原告らが,期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を被告と締結している従業員(以下「正職員」という。)との間に,労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違 反する労働条件の相違があると主張して,被告に対し,以下の金員の支払を求めた事案である。 ⑴ 原告甲についてア主位的請求正職員に適 律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違 反する労働条件の相違があると主張して,被告に対し,以下の金員の支払を求めた事案である。 ⑴ 原告甲についてア主位的請求正職員に適用される就業規則等が原告甲にも適用されることを前提に, 労働契約に基づき,平成26年8月から平成30年6月の間の本来支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額及びこれに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで商事法定利率(平成29年法律第44号附則17条3項により平成29年法律第45号による改正前のもの。以下同じ。)の年6%の割合による遅延損害金(主位的請求ア及びイ) 労働契約法20条違反の労働条件の適用という不法行為に基づく損害賠償として,平成25年8月から平成26年7月の間の本来支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額175万4475円及びこれに対する本件訴訟提起の日である平成28年9月14日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号附則17条3項により同法による改正前 のもの。以下同じ。)所定の年5%の割合による遅延損害金(主位的請求 ウ)前記不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料150万円及びこれに対する本件訴訟提起の日である平成28年9月14日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金(主位的請求ウ)正職員に適用される就業規則等が原告甲にも適用されることを前提に, 労働契約に基づき,平成28年年末から平成30年夏の間の本来支給されるべき賞与と実際に支給された賞与との差額及びこれに対する各支払期日の後の日から各支払済みまで商事法定利率の年6%の割合による遅延損害金(主位的請求エ)イ予備的請求 前記不法行為に基づく損害賠償として,平成26年 との差額及びこれに対する各支払期日の後の日から各支払済みまで商事法定利率の年6%の割合による遅延損害金(主位的請求エ)イ予備的請求 前記不法行為に基づく損害賠償として,平成26年8月から平成30年6月の間の本来支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額及びこれに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金(予備的請求ア及びイ)前記不法行為に基づく損害賠償として,平成27年年末から平成30年 夏の間の本来支給されるべき賞与と実際に支給された賞与との差額及びこれに対する各支払期日の後の日から各支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金(予備的請求ウ)⑵ 原告乙についてア主位的請求 正職員に適用される就業規則等が原告乙にも適用されることを前提に,労働契約に基づき,平成26年10月から令和元年9月の間の本来支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額及びこれに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで商事法定利率の年6%の割合による遅延損害金(主位的請求アないしウ) 前記不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料100万円及びこれに対 する本件訴訟提起の日である平成28年9月14日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金(主位的請求エ)正職員に適用される就業規則等が原告乙にも適用されることを前提に,労働契約に基づき,平成28年年末から令和元年夏の間の本来支給されるべき賞与と実際に支給された賞与との差額及びこれに対する各支払期日 の後の日から各支払済みまで商事法定利率の年6%の割合による遅延損害金(主位的請求オ及びカ)イ予備的請求前記不法行為に基づく損害賠償として,平成26年10月から令和元年 る各支払期日 の後の日から各支払済みまで商事法定利率の年6%の割合による遅延損害金(主位的請求オ及びカ)イ予備的請求前記不法行為に基づく損害賠償として,平成26年10月から令和元年9月の間の本来支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額及 びこれに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金(予備的請求アないしウ)前記不法行為に基づく損害賠償として,平成27年年末から令和元年夏の間の本来支給されるべき賞与と実際に支給された賞与との差額及びこれに対する各支払期日の後の日から各支払済みまで民法所定の年5%の 割合による遅延損害金(予備的請求エ及びオ) 2 前提事実(末尾に証拠等を掲げた事実以外は当事者間に争いがない。)⑴ 当事者ア被告は,自動車学校の経営等を目的とする株式会社であり,肩書所在地に主たる事業所(本部)を設置するほか,自動車教習施設として,春日井校(愛 知県春日井市所在),港校(名古屋市港区所在)及び天白校(名古屋市天白区所在)を設置している。 イ原告甲は,昭和51年頃,被告と無期労働契約を締結して教習指導員(正職員)として就労を開始し,平成11年からは春日井校で勤務していた。 ウ原告乙は,昭和55年,被告と無期労働契約を締結して教習指導員(正職 員)として就労を開始し,昭和63年からは春日井校で勤務していた。 ⑵ 被告における正職員の労働条件等ア被告における正職員の労働条件については,正職員に適用される就業規則及び給与規程(以下「正職員就業規則等」という。)に定められている(以下では,正職員のうち教習指導員の業務を担当していた者について検討することから,「正職員」と記載する場合は当該業務を担当する者を指す び給与規程(以下「正職員就業規則等」という。)に定められている(以下では,正職員のうち教習指導員の業務を担当していた者について検討することから,「正職員」と記載する場合は当該業務を担当する者を指すこととす る。)。(甲3,5)イ正職員の労働条件として本件に関連するものは,以下のとおりである。 毎月の賃金被告は,正職員に対し,毎月末日締め翌月15日支払で賃金を支払っている。毎月の賃金は,基本給,役付手当,家族手当,皆精勤手当,敢闘賞 等で構成されるところ,それぞれの趣旨や支給基準は以下のとおりである。 (甲5)a 基本給一律給と功績給により構成される。 b 役付手当 正職員が主任以上の役職に就いている場合,当該役職の区分に応じて支給する。 c 家族手当正職員が,①所得税法上の控除対象配偶者,②満20歳未満で所得税法上の扶養親族に該当する子女を扶養家族とする場合,その人数に応じ て支給する。 d 皆精勤手当正職員が所定内労働時間を欠略なく勤務した場合に支給する。 e 敢闘賞施設ごとに定めた基準に基づき,正職員が1か月に担当した技能教習 等の時間数に応じ,職務精励の趣旨で支給する。 賞与被告は,正職員に対し,毎年,夏季及び年末の2回,賞与を支給しており,夏季分は毎年7月末までに,年末分は毎年12月末までに支払うこととしている。各季の賞与は,各季で正職員一律に設定される掛け率を各正職員の基本給に乗じ,さらに当該正職員の勤務評定分(10段階)を加算 する方法で算定される。各季の掛け率及び勤務評定分は以下のとおりである。(弁論の全趣旨)a 平成25年年末掛け率は1.385,勤務評定分は0円から5万円である。 b 平成26年夏季 掛け率は1. される。各季の掛け率及び勤務評定分は以下のとおりである。(弁論の全趣旨)a 平成25年年末掛け率は1.385,勤務評定分は0円から5万円である。 b 平成26年夏季 掛け率は1.385,勤務評定分は0円から4万2000円である。 c 平成26年年末掛け率は1.385,勤務評定分は0円から5万5000円である。 d 平成27年夏季掛け率は1.5,勤務評定分は0円から5万2000円である。 e 平成27年年末掛け率は1.5,勤務評定分は0円から7万2000円である。 f 平成28年夏季掛け率は1.5,勤務評定分は0円から5万2000円である。 g 平成28年年末 掛け率は1.5,勤務評定分は0円から7万2000円である。 h 平成29年夏季掛け率は1.5,勤務評定分は0円から5万2000円である。 i 平成29年年末掛け率は1.5,勤務評定分は0円から7万2000円である。 j 平成30年夏季 掛け率は1.5,勤務評定分は0円から5万4000円である。 k 平成30年年末掛け率は1.55,勤務評定分は0円から8万7000円である。 l 令和元年夏季掛け率は1.6,勤務評定分は0円から6万円である。 定年制正職員は満60歳が定年であり,定年に達した日の翌日に退職となる。 (甲3)⑶ 被告における定年退職後再雇用者の労働条件等ア被告は,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年法」という。) 9条の高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を採用しており,定年退職した正職員のうち再雇用を希望する者については,嘱託職員として期間1年間の有期労働契約を締結し,これを更新することで原則として65歳まで再雇用することとしている(以下で 制度を採用しており,定年退職した正職員のうち再雇用を希望する者については,嘱託職員として期間1年間の有期労働契約を締結し,これを更新することで原則として65歳まで再雇用することとしている(以下では,嘱託職員のうち定年後再雇用の者について検討することから,「嘱託職員」と記載する場合は定年後再雇用の者を 指すこととする。)。(甲10)イ嘱託職員の労働条件は,正職員とは別に設けられた嘱託規程に定められている。なお,嘱託規程は,嘱託職員の労働条件について,嘱託規程に定めのない事項については正職員就業規則等を準用するが,実態に合わない場合,不都合と判断される場合,正職員就業規則等にも定めがない場合は,その都 度定めるものとしている。(甲10)ウ嘱託規程は,嘱託職員の賃金体系は勤務形態によりその都度決め,賃金額は本人の経歴,年齢その他の実態を考慮して決めるものとしている。また,嘱託規程は,賞与について,嘱託職員に対しては原則として支給しないが,正職員の賞与とは別に勤務成績を勘案して支給することがあるとしている。 (甲10) エ被告は,定年予定の正職員に対し,以下の手続により再雇用希望の有無の確認,労働条件の確認及び労働契約の締結を行っている。また,嘱託職員が有期労働契約を更新する際にも,同様の手続が採られている。(甲4,弁論の全趣旨)被告は,定年予定の正職員に対し,定年後再雇用の希望の有無を確認し, 当該正職員は,再雇用を希望する場合,被告に対し,その旨を記載した書面を提出する。 被告は,再雇用を希望する正職員に対し,定年の3か月前までに(有期労働契約の更新の場合は,期間満了の2か月前までに),再雇用の際の賃金等を含む労働条件を記載した通知書を送付し,正職員は,当該労働条件 雇用を希望する正職員に対し,定年の3か月前までに(有期労働契約の更新の場合は,期間満了の2か月前までに),再雇用の際の賃金等を含む労働条件を記載した通知書を送付し,正職員は,当該労働条件 に同意する場合,当該通知書に署名押印の上,被告に提出する。 再雇用を希望する正職員と被告は,再雇用期間が開始する前に,改めて嘱託職員としての有期労働契約の契約書を作成する。 オ嘱託規程は,定年退職時に役職にある者については,役職を退任した上で再雇用するものとしている。 ⑷ 原告らの定年退職及び再雇用ア原告甲は,平成●年●月●日,正職員を定年となったが,それに先立って,前記⑶エの手順を経て,被告との間で嘱託職員としての有期労働契約を締結することに合意し,同月●日から嘱託職員として勤務を開始した。原告甲は,その後,被告との間で,前記⑶エと同様の手順を経て,嘱託職員としての有 期労働契約を数回更新して勤務を継続し,平成30年7月9日,被告を退職した。なお,原告甲は,定年退職時,主任の役職にあったが,定年時にこれを退任し,嘱託職員となってからは役職に就いていない。(弁論の全趣旨)イ原告乙は,平成●年●月●日,正職員を定年となったが,それに先立って,前記⑶エの手順を経て,被告との間で嘱託職員としての有期労働契約を締結 することに合意し,同月●日から嘱託職員として勤務を開始した。原告乙は, その後,被告との間で,前記⑶エと同様の手順を経て,嘱託職員としての有期労働契約を数回更新して勤務を継続し,令和元年9月30日,被告を退職した。なお,原告乙は,定年退職時,主任の役職にあったが,定年時にこれを退任し,嘱託職員となってからは役職に就いていない。(弁論の全趣旨)⑸ 原告らの定年退職時及び嘱託職員時の賃金 被告を退職した。なお,原告乙は,定年退職時,主任の役職にあったが,定年時にこれを退任し,嘱託職員となってからは役職に就いていない。(弁論の全趣旨)⑸ 原告らの定年退職時及び嘱託職員時の賃金 ア原告甲の定年退職直前の賃金に係る労働条件(役付手当を除く。)を平成25年8月分以降の原告甲の勤務状況に当てはめた場合,毎月の賃金は,別表3のA-1ないしA-5及びA-9ないしA-11の各月の「定年前の金額」欄に記載のとおりとなる。他方,原告甲が平成25年8月分以降,被告を退職するまでの間に被告から支払を受けていた毎月の賃金は,別表3のA -1ないしA-5及びA-9ないしA-11の各月の「支給額」欄に記載のとおりであり,基本給,皆精勤手当及び敢闘賞は,正職員定年退職時に比べ減額して支給され(平成26年8月分からは,皆精勤手当と敢闘賞が統合され,これらと同趣旨の精励手当が支給された。),役付手当及び家族手当は,支給されず,残業手当は,これら支給額を前提に算定され支給された。 イ原告乙の定年退職直前の賃金に係る労働条件(役付手当を除く。)を平成26年10月分以降の原告乙の勤務状況に当てはめた場合,毎月の賃金は,別表4のB-1ないしB-3,B-7ないしB-9,B-16及びB-17の各月の「定年前の金額」欄に記載のとおりとなる。他方,原告乙が平成26年10月分以降,被告を退職するまでの間に被告から支払を受けていた毎 月の賃金は,別表4のB-1ないしB-3,B-7ないしB-9,B-16及びB-17の各月の「支給額」欄に記載のとおりであり,基本給は,正職員定年退職時に比べ減額して支給され,皆精勤手当及び敢闘賞は,精励手当に統合された上,正職員定年退職時に比べ減額して支給され,役付手当(平成26年10月は除く。)及び家族手当 であり,基本給は,正職員定年退職時に比べ減額して支給され,皆精勤手当及び敢闘賞は,精励手当に統合された上,正職員定年退職時に比べ減額して支給され,役付手当(平成26年10月は除く。)及び家族手当は,支給されず,残業手当は,これら 支給額を前提に算定され支給された。 ウ残業手当について,本件訴訟においては,以下のとおり算定することで当事者間に争いはない。 正職員時(基本給+役付手当+指導手当+皆精勤手当+1万1000円)÷173×1.25×残業時間 嘱託職員時(基本給+役付手当+指導手当+皆精勤手当(又は精励手当)+1万1000円)÷173×1.25×残業時間前記及びの「1万1000円」は,別表3及び4の対象月の「残業計算(敢闘賞)」欄に記載がある月のみ加算する。 エ原告らが被告との間で締結した嘱託職員としての有期労働契約の契約書は,いずれも「臨時に支払う給与」(以下「嘱託職員一時金」という。)を正職員の賞与とは別に,勤務成績等を考慮の上支給することがあるとしている。 原告甲が嘱託職員となって以降,被告を退職するまでの間に被告から支払を受けていた嘱託職員一時金は,別表3のA-7及びA-13の各季の「支 給額」欄に記載のとおりで,原告乙が嘱託職員となって以降,被告を退職するまでの間に被告から支払を受けていた嘱託職員一時金は,別表4のB-5,B-11及びB-13の各季の「支給額」欄に記載のとおりであった。被告は,これら嘱託職員一時金を正職員の賞与と同時期に支払っていた。 ⑹ 原告らの職務内容 原告らは,いずれも,正職員を定年退職し嘱託職員となって以降も,従前と同様に春日井校で教習指導員として勤務をしており,再雇用に当たり主任の役職を退任したことを除いて,定年 原告らの職務内容 原告らは,いずれも,正職員を定年退職し嘱託職員となって以降も,従前と同様に春日井校で教習指導員として勤務をしており,再雇用に当たり主任の役職を退任したことを除いて,定年退職の前後で,その業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲(以下,「職務の内容」と併せて「職務内容及び変更範囲」とい う。)に相違はなかった。 3 争点及び当事者の主張本件の争点は,①原告らの嘱託職員としての労働条件と正職員の労働条件の間に労働契約法20条に違反する相違があるかどうか(争点1),②労働契約法20条に違反する労働条件の相違があるとして,労働契約に基づき差額賃金を請求することができるかどうか(争点2),③労働契約法20条に違反する労働条件 の相違があるとして,不法行為に基づく損害賠償を請求することができるかどうか及びその場合の損害額(争点3)であり,当事者の主張は以下のとおりである。 ⑴ 労働契約法20条に違反する相違の有無(争点1)(原告らの主張)ア不合理性の判断方法について 労働契約法20条のいう不合理な相違であるかどうかの判断方法は,問題となる労働条件の性質によって,二通りに分かれる。すなわち,職務内容及び変更範囲その他の事情(以下,併せて「職務の内容等」という。)と関連性がない労働条件の場合には,使用者との間で無期労働契約を締結している者(以下「無期契約労働者」という。)と,有期労働契約を締結して いる者(以下「有期契約労働者」という。)との間で同一の待遇が求められ,異なる待遇は不合理となり(均等審査),職務の内容等と関連性がある労働条件の場合には,無期契約労働者と有期契約労働者の間の前提条件の相違 下「有期契約労働者」という。)との間で同一の待遇が求められ,異なる待遇は不合理となり(均等審査),職務の内容等と関連性がある労働条件の場合には,無期契約労働者と有期契約労働者の間の前提条件の相違と均衡する待遇が求められ,均衡しない待遇は不合理となる(均衡審査)と解すべきである。 本件では,職務内容及び変更範囲には相違がなく,「その他の事情」として定年後再雇用であることが考慮されることとなるため,定年後再雇用と関連性がない労働条件の場合には,嘱託職員と正職員との間で同一の待遇が求められ,定年後再雇用と関連性がある労働条件の場合には,嘱託職員と正職員の間の前提条件の相違と均衡する待遇が求められる。 労働契約法20条は,労働条件の相違の不合理性を判断する際の考慮要 素として,①職務の内容,②当該職務の内容及び配置の変更の範囲のほか,③「その他の事情」を挙げている(職務の内容等)。このうち,③「その他の事情」については,上記①及び②(職務内容及び変更範囲)に関連する事情に限定する必要はないが,労働契約法20条が当該①及び②を考慮要素として明示していることからすれば,当該①及び②に相違がないのであ れば,③「その他の事情」を理由として,両者の間に労働条件に相違を設けるには,「相応の理由」が必要であると解すべきである。 本件では,職務内容及び変更範囲には相違がないため,③「その他の事情」である定年後再雇用を理由として両者の間の労働条件の相違の不合理性を否定するには,「相応の理由」が必要である。 定年後再雇用であることを「その他の事情」として考慮するにしても,労働契約法20条のいう不合理な相違であるかどうかを判断するに際しては,飽くまで,個別企業における個別の賃金項目の趣旨や性質(必要に応じて賃 雇用であることを「その他の事情」として考慮するにしても,労働契約法20条のいう不合理な相違であるかどうかを判断するに際しては,飽くまで,個別企業における個別の賃金項目の趣旨や性質(必要に応じて賃金総額を参照する。)に基づくべきであり,定年後再雇用であればその賃金を切り下げることが社会一般に容認されているなどという考 慮をすべきではない。 イ個別の賃金項目の検討等本件では,以下のとおり,労働契約法20条のいう不合理な相違が認められる(役付手当の不支給については労働契約法20条違反を主張しない。)。 基本給について 被告は,正職員及び嘱託職員のいずれにも基本給を支給しているところ,その計算方法は,明らかではなく,実際のところ,被告は,明確な基準によらずに一方的に決定した金額を基本給として支給している。このような実態に照らすと,被告は,基本給を支給するに当たって,正職員と嘱託職員で異なる扱いをしていなかったといえる。しかし,被告は,原告甲に対 し,正職員定年退職時の40%台前半,原告乙に対し,正職員定年退職時 の45%ほどの基本給しか支給していない。そして,被告が,原告らの基本給にこれほどの減額が生じることに対し,配慮やこれを緩和する工夫を行った形跡はなく,原告らの所属する労働組合との間で,嘱託職員の労働条件について労使交渉を行った事実もない。そうすると,上記のような基本給の相違が生じることについて相応の理由があったとはいえず,当該相 違は,労働契約法20条に違反する不合理な相違である。 皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)について皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)は,その支給要件及び内容に照らすと,被告の教習指導員に対し,所定労働時間を欠略なく出勤すること及び多くの指導業務に就くことを奨 手当及び敢闘賞(精励手当)について皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)は,その支給要件及び内容に照らすと,被告の教習指導員に対し,所定労働時間を欠略なく出勤すること及び多くの指導業務に就くことを奨励する趣旨で支給されるものであるとこ ろ,嘱託職員と正職員の間で,このような奨励を行う必要性に相違はない。 そうすると,精励手当は,定年後再雇用と関連しない賃金項目であり,嘱託職員に対し,正職員より減額して支給することは,労働契約法20条に違反する不合理な相違である。 家族手当について 家族手当は,その支給要件として客観的な基準が明示されており,正職員であってもその基準に該当しない場合には支給がされないものである。 そうすると,家族手当は,定年後再雇用と関連しない賃金項目であり,基準を満たす正職員には支給する一方,嘱託職員には一律支給しないとすることは,労働契約法20条に違反する不合理な相違である。 賞与について被告は,原告ら嘱託職員に対しては,正職員に対する賞与と同趣旨で嘱託職員一時金を支給している。そして,賞与及び嘱託職員一時金は,基本給と併せて労働者の生活保障給の趣旨を有するところ,このような場合,支給の有無及び額について,使用者の裁量の幅は減縮あるいは消滅すると 解すべきであるから,正職員の賞与と比較して嘱託職員の嘱託職員一時金 がわずかな額にとどまることは,労働契約法20条に違反する不合理な相違である。 老齢厚生年金及び高年齢雇用継続基本給付金について原告らは,いずれも,老齢厚生年金(比例報酬分)及び高年齢雇用継続基本給付金を受給しているものの,これらを加えても,正職員定年退職時 の賃金総額の70%を受給していたにとどまり,そのような状態を正当化できる事情は存しない。そう 比例報酬分)及び高年齢雇用継続基本給付金を受給しているものの,これらを加えても,正職員定年退職時 の賃金総額の70%を受給していたにとどまり,そのような状態を正当化できる事情は存しない。そうすると,原告らが老齢厚生年金(比例報酬分)及び高年齢雇用継続基本給付金を受給していることを踏まえ,賃金総額の観点から検討しても,前記で検討した相違は,なお不合理である。 ウ正職員定年退職時と比較することについて 原告らは,前記のとおり,嘱託職員としての労働条件と正職員定年退職時の労働条件を比較するものである。一般的に,企業は,賃金制度を定めて労務管理を行っており,特に,無期契約労働者について年齢や勤続年数に基づいて一定の昇給があることを前提とした制度が存する場合,労働契約法20条のいう不合理な相違があるかどうかを判断する際には,当該制 度を踏まえて比較対象者を選定する必要がある。よって,そのような場合,定年退職直前の無期契約労働者の労働条件と定年退職後の有期契約労働者の労働条件を単純に比較することはできないとの批判があり得る。しかし,被告は,そのような合理的な賃金制度を定めておらず,雇用時の賃金額並びに,昇給の有無及びその額を専ら裁量により決定しており,制度を 踏まえた比較対象者の選定をすることができない。そうすると,原告らのように,被告を定年退職後に嘱託職員となった労働者について,正職員との間で,労働条件に関して労働契約法20条のいう不合理な相違があるかどうかを検討するに当たっては,正職員定年退職時の当該労働者の労働条件と比較するしかない。 なお,原告らの嘱託職員としての労働条件を正職員定年退職時の労働条 件と比較した場合の相違は,現在被告で勤務している別の正職員(以下「正職員F」という と比較するしかない。 なお,原告らの嘱託職員としての労働条件を正職員定年退職時の労働条 件と比較した場合の相違は,現在被告で勤務している別の正職員(以下「正職員F」という。)の労働条件と比較した場合の相違より小さいものである。すなわち,原告らの請求は控えめな請求であるといえ,その意味でも,原告らの請求は認められるべきである。 (被告の主張) ア不合理性の判断方法について労働契約法20条は,不合理性判断の考慮要素として,①職務の内容,②当該職務の内容及び配置の変更の範囲のほか,③「その他の事情」を挙げており(職務の内容等),③「その他の事情」には,不合理性を主張する労働者が定年後再雇用者であることも含まれる。よって,たとえ,正職員と嘱託職 員の間で,上記①及び②(職務内容及び変更範囲)に違いがないとしても,それをもって直ちに両者の賃金の相違が不合理となるものではない。 イ個別の賃金項目の検討等基本給について以下のとおり,原告らの嘱託職員時の基本給と正職員定年退職時の基本 給に相違があったとしても,これは労働契約法20条に違反する相違とはいえない。 a 基本給は,社会の好不況,会社の業績,労働者の勤務実績等の諸要素を総合した総合決定給であり,各種手当のように,その趣旨が明らかなものとは異なる。嘱託職員としての基本給が正職員時の基本給と比較して 何割を下回れば不合理であるなどと判断することは,私的自治の原則に反する行為である。 b 被告は,定年退職が予定されている正職員に対し,事前に定年後再雇用の意向の有無を確認し,再雇用を求める者に対し労働条件を提示しており,これに同意した者が嘱託職員となるのである。原告らはいずれも, このような経過を経て,基本給を含む労働条 事前に定年後再雇用の意向の有無を確認し,再雇用を求める者に対し労働条件を提示しており,これに同意した者が嘱託職員となるのである。原告らはいずれも, このような経過を経て,基本給を含む労働条件についても合意の上,嘱 託職員となっており,決して被告が一方的に定めた労働条件に従っているわけではない。以上の経過は,翌年以降も同様であり,原告らは,労働条件に同意の上,嘱託職員としての勤務を継続していた。また,原告らは,労働組合の構成員として,被告との間で様々な事項について何度も団体交渉を行っていた。そのような原告らが,嘱託職員としての賃金 に納得していなかったのであれば,被告に団体交渉を求めないはずがないところ,そのような事実はない。 c 企業は,定年後再雇用の労働者に対し労働条件を提案するに当たり,①当該労働者が,本来,60歳で定年退職するはずであったこと,②それにもかかわらず,国の政策ミスにより企業が65歳まで雇用せざるを 得なくなったこと,③企業の資金には限りがあること,④当該労働者が退職金を受領していること,⑤当該労働者が高年齢雇用継続基本給付金を受給していること,⑥定年退職した労働者より,将来,企業の中心となってその発展に尽力する者を育成したいこと等を考慮するものであり,これ自体は,不合理と判断されるようなものではない。 d 被告は,半期に一度,嘱託職員に嘱託職員一時金を支給しているところ,これは,正職員の賞与とはその趣旨を異にし,飽くまで毎月の賃金(基本給)の調整のために支給するいわゆる調整給である。よって,嘱託職員と正職員の基本給を比較するに当たり,嘱託職員の基本給については,毎月の支給分だけでなく,①毎月分の高年齢雇用継続基本給付金 及び②嘱託職員一時金の年間合計を12等分した る。よって,嘱託職員と正職員の基本給を比較するに当たり,嘱託職員の基本給については,毎月の支給分だけでなく,①毎月分の高年齢雇用継続基本給付金 及び②嘱託職員一時金の年間合計を12等分した額を加算した結果を用いるべきである。 e 原告らの嘱託職員としての毎月の基本給に当月分の高年齢雇用継続基本給付金を加算すると,原告らは,いずれも,正職員定年退職時の毎月の基本給の60%前後を確保している。また,原告らの嘱託職員とし ての毎月の基本給に前記dを加算した結果は,原告らいずれについても, 教習指導員の有資格者のうち勤続年数5年未満の者の基本給の平均額とほとんど変わらず,むしろ高額な月も存在する。 f 雇用保険法による高年齢雇用継続基本給付金制度は,再雇用時の賃金が60歳時点の賃金の75%以下にならなければ給付金が支給されないこととしている。加えて,上記制度は,再雇用時の賃金が60歳時点 の賃金の61%以下になり得ることまで予定している。 皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)について被告は,これらを清算することについて吝かではない。 家族手当について被告は,正職員が扶養家族の生活費や子女の教育費等で負担が多いと考 えられる現役世代であることから,その福利厚生を主目的として,家族手当を支給しているのであるから,定年後の嘱託職員に対してこれを支給しないことは,不合理ではない。 賞与について賞与は,会社に長く勤めてもらうために政策的に支給する意味合いのも のであり,長期間の雇用が予定されていない嘱託職員に対してこれを支給しないことも,不合理ではない。なお,前記のとおり,被告は,嘱託職員との間で賞与を支給する旨の合意をしておらず,嘱託職員に対して支給している嘱託職員一時金は,正職員の賞与 嘱託職員に対してこれを支給しないことも,不合理ではない。なお,前記のとおり,被告は,嘱託職員との間で賞与を支給する旨の合意をしておらず,嘱託職員に対して支給している嘱託職員一時金は,正職員の賞与とは別物のいわゆる調整給であり,その趣旨を異にする。 ウ正職員定年退職時との比較について被告を含む年功序列制度を採用する会社においては,定年退職直前の賃金が最も高額になるところ,これは,その時々における実際の貢献度と一致するものではない。よって,嘱託職員の労働条件と定年退職直前の労働条件を比較することに意味はない。 なお,原告らは,現在被告で勤務している正職員Fの労働条件との差額 に言及するが,当該正職員は,原告らとは勤務開始日も能力も異なるし,さらに,定年退職時期が迫った者でもあるから,原告らの労働条件と比較することに意味はない。 ⑵ 労働契約に基づく差額賃金請求の可否(争点2)(原告らの主張) ア労働契約法20条は,私法上の効力を有する強行規定であるから,同条に違反する労働条件の定めは,無効になる。労働契約法20条違反の効力として,有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件により自動的に代替されること(直律的効力)を認めることは困難であるものの,合理的解釈を行うことで,有期契約労働者に対して無期契約労働者の労働条件を定め た就業規則等を適用できるのであれば,無期契約労働者の労働条件を有期契約労働者に適用する余地がある。 イ嘱託規程は,嘱託職員の労働条件について,嘱託規程に定めのない事項については正職員就業規則等を準用することとしており,嘱託職員の労働条件が労働契約法20条により無効となった場合,その無効となった部分は,「嘱 託規程に定めのない事項」となるため のない事項については正職員就業規則等を準用することとしており,嘱託職員の労働条件が労働契約法20条により無効となった場合,その無効となった部分は,「嘱 託規程に定めのない事項」となるため,正職員就業規則等が準用されることとなる。よって,原告らについては,役付手当を除き正職員と同様の基準及び計算方法により算定された賃金請求権が生じており,被告は,原告らに対する支給額との差額を未払賃金として支払う必要がある。 なお,賞与については,平成25年年末分から平成26年年末分までは, 原告乙及び正職員Fに対する支給額の平均額を,平成27年夏季分から令和元年夏季分までは正職員Fに対する支給額を正職員と同様の基準及び計算方法により算定された額(別表3のA-7及びA-13,並びに別表4のB-5,B-11,B-13に記載された「定年前の金額」欄の金額)とするのが相当である。 (被告の主張) ア被告においては,正職員に適用される賃金体系と嘱託職員に適用される賃金体系は,別個のものであり,原告ら嘱託職員の労働条件に正職員との間で労働契約法20条に違反する相違があったとしても,嘱託職員に対して正職員就業規則等が適用されることはない。 イ原告らは,嘱託規程のうち正職員就業規則等を準用する規定を指摘するも のの,嘱託規程は,嘱託職員に対する処遇を明確に規定しているのであるから,嘱託職員の賃金等は,嘱託規程に定めがない事項ではない。また,嘱託規程は,実態に合わない場合,不都合と判断される場合,(中略)その都度決めるものとするとも定めている。そうすると,原告ら嘱託職員に対し,正職員就業規則等を適用する余地はない。 ⑶ 不法行為に基づく損害賠償請求の可否及び損害額(争点3)(原告らの主張)ア仮に労働 するとも定めている。そうすると,原告ら嘱託職員に対し,正職員就業規則等を適用する余地はない。 ⑶ 不法行為に基づく損害賠償請求の可否及び損害額(争点3)(原告らの主張)ア仮に労働契約に基づく差額賃金請求が認められないとしても,労働契約法20条は,私法上の効力を有する強行規定であり,同条に違反する取扱いは,不法行為となる。そしてその損害を算定するに当たっては,労働契約法20 条の「不合理」の意味を踏まえる必要がある。すなわち,上記「不合理」には,①正職員と同一内容でないことをもって直ちに不合理であると認められる労働条件(均等審査の労働条件)と,②正職員との相違の程度によって不合理と認められる労働条件(均衡審査の労働条件)があるところ,①については差額全額が損害となり,②については嘱託職員の労働条件と「相応の理 由」のある労働条件との差額が損害となるというべきである。 イ以上を本件に当てはめると,前記ア①に該当する皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)並びに家族手当の差額全額が損害となることはもちろんのこと,前記ア②に該当する基本給及び賞与の差額には,前記⑴で検討したように,これを正当化できる相応の理由が認められない。そうすると,原告らの損害 は,老齢厚生年金及び高年齢雇用継続基本給付金が支給されていることを踏 まえ,裁判所に一定の裁量が認められるとしても,基本的には,役付手当を除き正職員と同様の基準及び計算方法で算定された賃金額と現に支払われた賃金額の差額であると解するべきである(賞与については,前記⑵(原告らの主張)イ記載のとおりである。)。 ウまた,被告は,労働契約法20条に違反する違法な取扱いを行い,原告ら の経験や知識を不当に安価でいわば買い叩いたのであり,原告らは,多大な 記⑵(原告らの主張)イ記載のとおりである。)。 ウまた,被告は,労働契約法20条に違反する違法な取扱いを行い,原告ら の経験や知識を不当に安価でいわば買い叩いたのであり,原告らは,多大な精神的損害を被った。上記損害を金銭に換算すれば,原告甲については150万円,原告乙については100万円を下らない。 (被告の主張)ア皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)の部分について不法行為が成立する余 地はあるが,その余については,不法行為の成立及び損害の発生を争う。 イ労働契約法20条違反の不法行為が成立するには,少なくとも,あるべき労働条件の基準が存在しなくては,何が違法なのか,どのような損害が生じたのかを判断することができない。しかし,特に基本給及び賞与については,企業ごと,従業員ごとに様々な要素を勘案して決定されるものであり,一律 の判断ができる類のものではない。また,労働者は,賃金について納得できないのであれば,経営者との個別の契約締結段階で交渉すべきであるし,労働者には団体交渉権も認められている。加えて,裁判所は,民間企業の内情や従業員の勤務状況を理解していないのであるから,裁判所が労働者の賃金を実質的に決めるようなことは認められるべきではない。そうすると,嘱託 職員の労働条件が正職員の労働条件の何割を下回れば不法行為が成立するなどという判断をすることは不相当であり,皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)の部分以外については不法行為を認めるべきではない。 ウ賠償すべき精神的損害の発生は争う。 第3 当裁判所の判断 1 労働契約法20条違反の有無について(争点1) ⑴ はじめにア労働契約法20条は,有期契約労働者の労働条件が,期間の定めがあることにより,無期契約労働者の労働条件 1 労働契約法20条違反の有無について(争点1) ⑴ はじめにア労働契約法20条は,有期契約労働者の労働条件が,期間の定めがあることにより,無期契約労働者の労働条件と相違する場合においては,当該労働条件の相違は,労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容),当該職務の内容及び配置の変更の範囲(以上,職務内容及び変更範 囲)その他の事情(以上,職務の内容等)を考慮して,不合理と認められるものであってはならない旨を定めている。これは,有期契約労働者については,無期契約労働者と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく,両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ,有期契約労働者の公正な処遇を図るため,その労働条件につき,期間の定めがあることにより 不合理なものとすることを禁止したものである。そして,同条は,有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に,職務の内容等を考慮して,その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり,職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される。 労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより相違していることを前提としているから,両者の労働条件が相違しているというだけで同条を適用することはできない。一方,期間の定めがあることと労働条件が相違していることとの関連性の程度は,労働条件の相違が不合理と認められるものに当たるかどうかの判断に当た って考慮すれば足りるものであるということができる。そうすると,同条にいう「期間の定めがあることにより」とは,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連し 当た って考慮すれば足りるものであるということができる。そうすると,同条にいう「期間の定めがあることにより」とは,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当である。 労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」とは,有期契約労働 者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することが できるものであることをいうと解するのが相当である。そして,両者の労働条件の相違が不合理であるか否かの判断は規範的評価を伴うものであるから,当該相違が不合理であるとの評価を基礎付ける事実については当該相違が同条に違反することを主張する者が,当該相違が不合理であるとの評価を妨げる事実については当該相違が同条に違反することを争う者が,それぞれ 主張立証責任を負うものと解される。(以上,最高裁平成30年6月1日第二小法廷判決・民集72巻2号88頁。以下「最高裁判決1」という。)イ労働者の賃金に関する労働条件は,労働者の職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲(職務内容及び変更範囲)により一義的に定まるものではなく,使用者は,雇用及び人事に関する経営判断の観点から,労働 者の職務内容及び変更範囲にとどまらない様々な事情を考慮して,労働者の賃金に関する労働条件を検討するものということができる。また,労働者の賃金に関する労働条件の在り方については,基本的には,団体交渉等による労使自治に委ねられるべき部分が大きいということもできる。そして,労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の相違が不合 理かどうかを判断する際に考慮する事情として,「その他の事情」を挙げているところ,その内容を職務内容及び変 。そして,労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の相違が不合 理かどうかを判断する際に考慮する事情として,「その他の事情」を挙げているところ,その内容を職務内容及び変更範囲に関連する事情に限定すべき理由は見当たらない。したがって,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断する際に考慮されることとなる事情は,労働者の職務内容及び変更範囲並びにこれらに関 連する事情に限定されるものではないというべきである。 定年制は,使用者が,その雇用する労働者の長期雇用や年功的処遇を前提としながら,人事の刷新等により組織運営の適正化を図るとともに,賃金コストを一定限度に抑制するための制度ということができるところ,定年制の下における無期契約労働者の賃金体系は,当該労働者を定年退職するまで長 期間雇用することを前提に定められたものであることが少なくないと解さ れる。これに対し,使用者が定年退職者を有期労働契約により再雇用する場合,当該者を長期間雇用することは通常予定されていない。また,定年退職後に再雇用される有期契約労働者は,定年退職するまでの間,無期契約労働者として賃金の支給を受けてきた者であり,一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることも予定されている。そして,このような事情は,定 年退職後に再雇用される有期契約労働者の賃金体系の在り方を検討するに当たって,その基礎になるものであるということができる。 そうすると,有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは,当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断において,労働契約法20条にいう「その他 の事情」として考慮されるこ 雇用された者であることは,当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断において,労働契約法20条にいう「その他 の事情」として考慮されることとなる事情に当たると解するのが相当である。 労働者の賃金が複数の賃金項目から構成されている場合,個々の賃金項目に係る賃金は,通常,賃金項目ごとに,その趣旨を異にするものであるということができる。そして,有期契約労働者と無期契約労働者との賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに 当たっては,当該賃金項目の趣旨により,その考慮すべき事情や考慮の仕方も異なり得るというべきである。そうすると,有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に関する労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては,両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく,当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきである。な お,ある賃金項目の有無及び内容が,他の賃金項目の有無及び内容を踏まえて決定される場合もあり得るところ,そのような事情も,有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たり考慮されることになる。(以上,最高裁平成30年6月1日第二小法廷判決・民集72巻2号202頁。以下 「最高裁判決2」という。) ⑵ 期間の定めによる相違であるかどうか原告らは,無期契約労働者である正職員と有期契約労働者である嘱託職員の労働条件の相違は労働契約法20条に違反する旨主張するところ,当該相違は,正職員には正職員就業規則等が,嘱託職員には嘱託規程がそれぞれ適用されることにより生じているものであるから,期間の定めの有 の労働条件の相違は労働契約法20条に違反する旨主張するところ,当該相違は,正職員には正職員就業規則等が,嘱託職員には嘱託規程がそれぞれ適用されることにより生じているものであるから,期間の定めの有無に関連して生じたも のであるということができる。よって,被告における正職員と嘱託職員の労働条件は,同条にいう期間の定めがあることにより相違しているといえる。 ⑶ 正職員と嘱託職員の職務の内容等の相違について原告らは,前記前提事実⑹のとおり,いずれも,再雇用に当たり主任の役職を退任したことを除いて,定年退職の前後で,その職務内容及び変更範囲に相 違はなかった。そして,原告らは,再雇用時に主任の役職を退任しているものの,これによりその業務の内容及び責任の範囲に相違が生じたことを認めるに足りる事実や証拠はない。仮に,主任退任により職務の内容に相違が生じていたとしても,嘱託職員となって以降は,役付手当が不支給となったことで,当該相違は,既に労働条件に反映されているといえる。 したがって,原告らの正職員定年退職時と嘱託職員時では,その職務内容及び変更範囲には相違がなかったものであり,本件において,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断に当たっては,もっぱら,「その他の事情」として,原告らが被告を定年退職した後に有期労働契約により再雇用された嘱託職員であるとの点を考慮 することになる。 ⑷ 基本給についてア原告らが嘱託職員として支払を受けていた基本給について,正職員との間で労働契約法20条に違反する不合理な相違があったかどうかを検討するに当たっては,前記前提事実のほか,以下の事実を指摘することができる。 被告の正職員の基本給は,その勤続年数に応じて増加する 労働契約法20条に違反する不合理な相違があったかどうかを検討するに当たっては,前記前提事実のほか,以下の事実を指摘することができる。 被告の正職員の基本給は,その勤続年数に応じて増加する年功的性格を 有するものであったと認められる。すなわち,平成25年以降5年間の正職員(資格取得から1年以上勤務した者であり,管理職を除く。)の基本給の平均額は,被告全体で月額14万円前後を推移しているところ,勤続年数1年以上5年未満の正職員(以下「若年正職員」という。)の基本給平均額は,月額約11万2000円から約12万5000円である一方,勤続 30年以上の正職員の基本給平均額は,月額約16万7000円から約18万円であり,その間の年代の正職員の基本給平均額を見ても,勤続年数に応じて増加していく傾向にあることが認められる。(乙31)原告甲が定年退職した平成25年の賃金センサスによれば,産業計・男女計・学歴計の55歳ないし59歳の「きまって支給する現金支給額」は, 37万3500円(男計であれば42万0900円),「所定内給与額」は,35万1300円(男計であれば39万4800円),「年間賞与その他特別給与額」は,年額101万1900円(男計であれば118万4900円)である。また,同年の賃金センサスによれば,産業計・男女計・学歴計の60歳ないし64歳の「きまって支給する現金給与額」は,月額27 万5800円(男計であれば29万6300円)であり,「所定内給与額」は,26万2100円(男計であれば28万1100円),「年間賞与その他特別給与額」は,年額49万7000円(男計であれば54万3300円)である。 原告乙が定年退職した平成26年の賃金センサスによれば,産業計・男 女計・学歴計の55歳な ),「年間賞与その他特別給与額」は,年額49万7000円(男計であれば54万3300円)である。 原告乙が定年退職した平成26年の賃金センサスによれば,産業計・男 女計・学歴計の55歳ないし59歳の「きまって支給する現金支給額」は,38万3600円(男計であれば43万2600円),「所定内給与額」は,36万8000円(男計であれば40万6100円),「年間賞与その他特別給与額」は,年額108万9700円(男計であれば127万7800円)である。また,同年の賃金センサスによれば,産業計・男女計・学歴 計の60歳ないし64歳の「きまって支給する現金給与額」は,月額28 万0600円(男計であれば30万0500円)であり,「所定内給与額」は,26万6500円(男計であれば28万4700円),「年間賞与その他特別給与額」は,年額55万1600円(男計であれば60万6300円)である。 原告甲の定年退職時の基本給は,月額18万1640円であり,嘱託職 員時の基本給は,1年目が月額8万1738円で,その後低下し,最終年まで月額7万4677円であった。また,原告乙の定年退職時の基本給は,月額16万7250円であり,嘱託職員時の基本給は,1年目が月額8万1700円で,その後低下し,最終年まで月額7万2700円であった。 このように,原告らの嘱託職員時の基本給は,正職員定年退職時と比較し て,原告甲について45%以下,原告乙について48.8%以下となっている結果,若年正職員の基本給を下回っている。 また,原告らの定年退職時の月額賃金から残業手当を除いた金額は,いずれも約30万円強であり,賞与額も年間約50万円強にとどまっていたと認められる(弁論の全趣旨)から,原告らが被告から定年退職時に受給 してい 年退職時の月額賃金から残業手当を除いた金額は,いずれも約30万円強であり,賞与額も年間約50万円強にとどまっていたと認められる(弁論の全趣旨)から,原告らが被告から定年退職時に受給 していた賃金は,一般に定年退職に近い時期であるといえる55歳ないし59歳の賃金センサス上の平均賃金を下回るものであり,むしろ,定年後再雇用の者の賃金が反映された60歳ないし64歳の賃金センサス上の平均賃金をやや上回るにとどまるものであった。 さらに,原告らが嘱託職員として勤務した期間の総支給額(役付手当, 賞与及び嘱託職員一時金を除く。)をみると,原告甲は,嘱託職員として勤務を開始してから3年間の総支給額が正職員定年退職時の労働条件で就労した場合の56.1%,嘱託職員4年目から退職までの総支給額が正職員定年退職時の労働条件で就労した場合の56.4%にとどまり,原告乙は,嘱託職員として勤務を開始してから平成28年7月分までの総支給額 が正職員定年退職時の労働条件で就労した場合の61.6%,同年8月分 から平成30年6月分までの総支給額が正職員定年退職時の労働条件で就労した場合の59%,同年7月分から退職までの総支給額が正職員定年退職時の労働条件で就労した場合の63.2%にとどまった。このような差額は,総支給額に賞与(嘱託職員一時金)も含めると,さらに大きくなる(別表3及び4参照)。 原告らは,いずれも,正職員定年退職時に退職金の支払を受けたほか,60歳で嘱託職員となった年から雇用保険法による高年齢雇用継続基本給付金の支給を,61歳になった年から老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給を受けていた。なお,高年齢雇用継続基本給付金は,被保険者であった期間が要件を満たす60歳以上65歳未満の労働者が60歳到達後も 継 を,61歳になった年から老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給を受けていた。なお,高年齢雇用継続基本給付金は,被保険者であった期間が要件を満たす60歳以上65歳未満の労働者が60歳到達後も 継続して雇用され,その賃金額が60歳到達時点の賃金月額の75%未満である場合,その低下した比率に応じて支給されるが,対象月の賃金額が60歳到達時点の賃金月額の61%以下に低下した場合,実際に支払われた賃金額の15%の金額の給付金が支給されることとなる。(甲24,25,弁論の全趣旨) 被告は,平成24年法律第78号により高年法が改正され,労使協定により継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定める制度(改正前の9条2項)が廃止されたことを踏まえ,職員代表との間で再雇用制度に係る協定書を作成している。しかし,上記協定書は,飽くまで上記高年法の改正を踏まえ,再雇用までの手続,有期労働契約の更新の基準等につい て定めるものであり,嘱託職員の賃金に係る合意はされていない。その他,本件において,原告らが嘱託職員となる以前に,被告とその従業員との間で嘱託職員の賃金に係る労働条件について合意がされたとか,その交渉結果が制度に反映されたという事実は認められない。 (甲4,弁論の全趣旨)原告甲は,被告代表者に対し,平成27年2月24日,労働契約法20 条に言及した上,正職員定年退職時に比べて嘱託職員としての賃金が大幅 に減額になっていることから労働契約の内容を見直すよう求める書面を送付した。その後,原告甲は,被告代表者との間で,同年7月18日まで,書面により,原告甲が嘱託職員としての賃金等について要望や照会をし,被告代表者がこれに回答する形式のやり取りを行った。また,原告甲は,その所属する労働組合の分会長として,被告 ,同年7月18日まで,書面により,原告甲が嘱託職員としての賃金等について要望や照会をし,被告代表者がこれに回答する形式のやり取りを行った。また,原告甲は,その所属する労働組合の分会長として,被告代表者に対し,平成28年5 月9日,嘱託職員と正職員の賃金の相違について回答を求める書面を送付した。しかし,嘱託職員の労働条件について,正職員の労働条件との相違を踏まえた見直しが行われた事実は認められない。(甲21の1ないし11)イ以上によれば,原告らは,正職員定年退職時と嘱託職員時でその職務内容 及び変更範囲には相違がなかったにもかかわらず,原告らの嘱託職員としての基本給は,正職員定年退職時と比較して,50%以下に減額されており,その結果,原告らに比べて職務上の経験に劣り,基本給に年功的性格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される傾向にある若年正職員の基本給をも下回っている。また,そもそも,原告らの正職員定年退職時の賃金 は,同年代の賃金センサスを下回るものであったところ,原告らの嘱託職員として勤務した期間の賃金額は,上記のような基本給の減額を大きな要因として,正職員定年退職時の労働条件で就労した場合の60%をやや上回るかそれ以下にとどまることとなっている。 そして,このことは,原告らが嘱託職員となる前後を通じて,被告とその 従業員との間で,嘱託職員の賃金に係る労働条件一般について合意がされたとか,その交渉結果が制度に反映されたという事情も見受けられないから,労使自治が反映された結果であるともいえない。 以上に加えて,基本給は,一般に労働契約に基づく労働の対償の中核であるとされているところ,現に,原告らの正職員定年退職時の毎月の賃金に基 本給が占める割合は相応に大きく,これが賞与額にも大きく影響 に加えて,基本給は,一般に労働契約に基づく労働の対償の中核であるとされているところ,現に,原告らの正職員定年退職時の毎月の賃金に基 本給が占める割合は相応に大きく,これが賞与額にも大きく影響していたこ とからすれば,被告においても,基本給をそのように位置付けているものと認められる。被告における基本給のこのような位置付けを踏まえると,上記の事実は,原告らの正職員定年退職時と嘱託職員時の各基本給に係る相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たることを基礎付ける事実であるといえる。 ウ他方,基本給に係る正職員と嘱託職員の相違が不合理であるとの評価を妨げる事実等について検討するに,正職員の基本給は,長期雇用を前提とし,年功的性格を含むものであり,正職員が今後役職に就くこと,あるいはさらに高位の役職に就くことも想定して定められているものである一方,嘱託職員の基本給は,長期雇用を前提とせず,年功的性格を含まないものであり, 嘱託職員が今後役職に就くことも予定されていないことが指摘できる。また,嘱託職員は,正職員を60歳で定年となった際に退職金の支払を受け,それ以降,要件を満たせば,高年齢雇用継続基本給付金及び老齢厚生年金(比例報酬分)の支給を受けることが予定され,現に,原告らはこれらを受給していたことも,基本給に係る相違が不合理であるとの評価を妨げる事実である といえる。 しかし,これら事実は,定年後再雇用の労働者の多くに当てはまる事情であり,前記イの事実,とりわけ原告らの職務内容及び変更範囲に変更がないにもかかわらず,原告らの嘱託職員時の基本給が,それ自体賃金センサス上の平均賃金に満たない正職員定年退職時の賃金の基本給を大きく下回るこ とや,その結果,若年正職員の基本給も下回るこ 更がないにもかかわらず,原告らの嘱託職員時の基本給が,それ自体賃金センサス上の平均賃金に満たない正職員定年退職時の賃金の基本給を大きく下回るこ とや,その結果,若年正職員の基本給も下回ることを正当化するには足りないというほかない。 被告は,定められた手順に従って原告らの定年後再雇用又はその更新の意向を確認し,賃金に係る労働条件も事前に提示しており,原告らが,いずれも,そのような経過を経て,賃金に係る労働条件についても合意の上, 嘱託職員となり,その後も有期労働契約を更新していた旨指摘する。しか し,被告が指摘する経過は,労働契約を締結する過程として当然の事象を指摘するものであるにすぎず,基本給に係る正職員と嘱託職員の相違が不合理であるとの評価を妨げる事実とはいえない。 また,被告は,原告らは賃金に係る労働条件に不満があれば,いつでも団体交渉を求めることができた旨主張するが,原告甲が被告代表者に対し 個人で要望を行っても,労働組合の構成員として要望を行っても,その内容が労働条件に反映された事実がないことは前記のとおりであるから,このことは,同じく基本給に係る正職員と嘱託職員の相違が不合理であるとの評価を妨げる事実とはいえない。 被告は,嘱託職員一時金は正職員の賞与とは異なり,嘱託職員に対する 調整給の趣旨で支給するものであるから,正職員定年退職時と嘱託職員時の基本給の相違を検討するに際しては,毎月の基本給額に嘱託職員一時金も含めるべきである旨主張する。しかし,嘱託職員一時金は,嘱託規程において,嘱託職員に対しては賞与を原則として支給しないものの,正職員に対する賞与とは別に,勤務成績を勘案して支給することがあると規定さ れていること,さらに,嘱託職員としての労働契約書にも,勤務成績等を 託職員に対しては賞与を原則として支給しないものの,正職員に対する賞与とは別に,勤務成績を勘案して支給することがあると規定さ れていること,さらに,嘱託職員としての労働契約書にも,勤務成績等を考慮の上,支給することがあると規定されていることを受けて,嘱託職員に対して支給されるものであり,その支給時期も正職員の賞与支給時期と同時期であることからすれば,嘱託職員一時金は,正職員の賞与に代替するものと位置付けられる。そうすると,嘱託職員一時金について,専ら基 本給の不足を調整することを目的として支給されるものであるなどと解することはできず,これは,賞与に関する相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否かを検討するに当たって考慮すべきものである。被告の上記主張は採用できない。 さらに,被告は,雇用保険法による高年齢雇用継続基本給付金制度は, 定年後再雇用時の賃金が60歳時の賃金の61%以下になる事態も予定 している旨指摘する。しかし,そのことから直ちに,定年後再雇用時の賃金が61%以下となる労働条件の設定が常に許容されるというものではない。 オ以上のとおり,原告らは,被告を正職員として定年退職した後に嘱託職員として有期労働契約により再雇用された者であるが,正職員定年退職時と嘱 託職員時でその職務内容及び変更範囲には相違がなく,原告らの正職員定年退職時の賃金は,賃金センサス上の平均賃金を下回る水準であった中で,原告らの嘱託職員時の基本給は,それが労働契約に基づく労働の対償の中核であるにもかかわらず,正職員定年退職時の基本給を大きく下回るものとされており,そのため,原告らに比べて職務上の経験に劣り,基本給に年功的性 格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される傾向にある若 かわらず,正職員定年退職時の基本給を大きく下回るものとされており,そのため,原告らに比べて職務上の経験に劣り,基本給に年功的性 格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される傾向にある若年正職員の基本給をも下回るばかりか,賃金の総額が正職員定年退職時の労働条件を適用した場合の60%をやや上回るかそれ以下にとどまる帰結をもたらしているものであって,このような帰結は,労使自治が反映された結果でもない以上,嘱託職員の基本給が年功的性格を含まないこと,原告らが退職 金を受給しており,要件を満たせば高年齢雇用継続基本給付金及び老齢厚生年金(比例報酬分)の支給を受けることができたことといった事情を踏まえたとしても,労働者の生活保障の観点からも看過し難い水準に達しているというべきである。 そうすると,原告らの正職員定年退職時と嘱託職員時の各基本給に係る金 額という労働条件の相違は,労働者の生活保障という観点も踏まえ,嘱託職員時の基本給が正職員定年退職時の基本給の60%を下回る限度で,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。 したがって,原告甲の嘱託職員時の基本給(月額)は,18万1640円 (正職員定年退職時の基本給)×60%=10万8984円を下回る部分が, 原告乙の嘱託職員時の基本給(月額)は,16万7250円(正職員定年退職時の基本給)×60%=10万0350円を下回る部分が,それぞれ労働契約法20条にいう不合理なものと認められることとなるが,原告乙が病欠をした平成27年2月分は,正職員であれば8万3628円の基本給であったことが認められるから,8万3628円×60%=5万0177円を下回 る部分が同条にいう不合理なものと認められることになる(別表1及び2 7年2月分は,正職員であれば8万3628円の基本給であったことが認められるから,8万3628円×60%=5万0177円を下回 る部分が同条にいう不合理なものと認められることになる(別表1及び2)。 ⑸ 皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)について原告らは,嘱託職員として,正職員定年退職時より減額された皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)を支給されていたところ,これら賃金項目の支給の趣旨は,所定労働時間を欠略なく出勤すること及び多くの指導業務に就くことを奨 励することであって,その必要性は,正職員と嘱託職員で相違はないから,両者で待遇を異にするのは不合理である旨主張する。 上記原告らの主張は正当として是認できるから,皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)について,正職員定年退職時に比べ嘱託職員時に減額して支給するという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当 たると解するのが相当である。 ⑹ 家族手当について被告は,正職員に対しては,前記前提事実⑵イcのとおり,扶養家族の人数に応じて家族手当を支給しているところ,嘱託職員に対しては,扶養家族の有無にかかわらず,これを支給していない。これを受けて,原告らは,扶養家 族の有無は,定年後再雇用であるかどうかにかかわらない事項であり,正職員と嘱託職員で待遇を異にすることは不合理である旨主張する。 しかし,被告は,労務の提供を金銭的に評価した結果としてではなく,従業員に対する福利厚生及び生活保障の趣旨で家族手当を支給しているのであり,使用者がそのような賃金項目の要否や内容を検討するに当たっては,従業員の 生活に関する諸事情を考慮することになると解される。そして,被告の正職員 は,嘱託職員と異なり,幅広い世代の者が存在し得るところ,そ の要否や内容を検討するに当たっては,従業員の 生活に関する諸事情を考慮することになると解される。そして,被告の正職員 は,嘱託職員と異なり,幅広い世代の者が存在し得るところ,そのような正職員について家族を扶養するための生活費を補助することには相応の理由があるということができる。他方,嘱託職員は,正職員として勤続した後に定年退職した者であり,老齢厚生年金の支給を受けることにもなる。 これらの事情を総合考慮すると,正職員に対して家族手当を支給する一方, 嘱託職員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,不合理であると評価することはできず,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるということはできない。 ⑺ 賞与についてア既に検討したとおり,被告は,正職員に対する賞与と同趣旨で,嘱託職員 に対し,嘱託職員一時金を支給していたものと認められる。そこで,以下では,正職員の賞与と原告らの嘱託職員一時金の間で,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否かを検討する。 イ正職員に対する平成25年年末分から令和元年夏季分までの賞与の算定,正職員一律の調整率を各正職員の基 本給に乗じ,さらに各正職員の勤務評定分を加算するというものである。他方,原告らの嘱託職員一時金の算定方法は明らかではないものの,原告甲は,4万2000円から10万8000円の間で推移し,原告乙は,6万6200円から10万7500円の間で推移していた(原告乙は,平成26年年末分として22万7400円の支払を受けているところ,これは,定年退職時 期との関係で,正職員の算定方法を用いたものと認められる。)。しかし,仮に原告らの嘱託職員時の基本給が正職員定年退職時の60%の金額(前記⑷において不合理である るところ,これは,定年退職時 期との関係で,正職員の算定方法を用いたものと認められる。)。しかし,仮に原告らの嘱託職員時の基本給が正職員定年退職時の60%の金額(前記⑷において不合理であると判断した部分を補充したもの)であるとして,正職員の賞与の算定方法を当てはめると,原告甲は約15万円から約17万4000円,原告乙は約13万9000円から約16万円にそれぞれ勤務評定分 を加算した金額となり,原告らの嘱託職員一時金は,基本給に調整率を乗じ た金額にも満たない。 さらに,前記⑷イの基本給に関する検討と同じく,原告らは,正職員定年退職時と嘱託職員時でその職務内容及び変更範囲には相違がなかったこと,そもそも正職員定年退職時の賃金も賃金センサスの平均賃金を下回ること,原告らの嘱託職員一時金が,原告らに比べて職務上の経験が劣り,金額も抑 制される傾向のある若年正職員の賞与よりも低額であり,賃金の総額が正職員定年退職時の労働条件を適用した場合の60%をやや上回るかそれ以下にとどまること,これが,労使自治が反映された結果であるともいえないことを指摘できる。そうすると,これらの事実は,原告らの嘱託職員一時金と正職員の賞与の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに 当たることを基礎付ける事実であるといえる。 ウ他方,賞与は,月例賃金とは別に支給される一時金であり,労務の対価の後払,功労報償,生活費の補助,労働者の意欲向上等といった多様な趣旨を含み得るものであり,有期契約労働者と無期契約労働者の間で相違が生じていたとしても,これが労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当 たるか否かについては慎重な検討が求められる。そして,前記⑷ウの基本給に関する検討と同じく,正職員は,長期雇用を前提と ていたとしても,これが労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当 たるか否かについては慎重な検討が求められる。そして,前記⑷ウの基本給に関する検討と同じく,正職員は,長期雇用を前提としており,今後役職に就くこと,あるいはさらに高位の役職に就くことが想定されている一方,嘱託職員は,長期雇用が前提とされず,今後役職に就くことも予定されていないこと,嘱託職員は,正職員を60歳で定年となった際に退職金の支払を受 け,それ以降,要件を満たせば,高年齢雇用継続基本給付金及び老齢厚生年金(比例報酬分)の支給を受けることが予定され,現に,原告らはこれらを受給していたことを指摘できる。 しかし,これらの事実は,定年後再雇用の労働者の多くに当てはまる事情であり,賞与について労働契約法20条違反の有無について慎重な検討が求 められることを踏まえても,前記イの事実,とりわけ原告らの職務内容及び 変更範囲に変更がないにもかかわらず,嘱託職員一時金は正職員の賞与に比べ大きく減額されたものであり,その結果,若年正職員の賞与をも下回ること,しかも,賃金の総額も,賃金センサス上の平均賃金を下回る正職員定年退職時の労働条件を適用した場合の60%をやや上回るかそれ以下にとどまることを正当化するには足りないというほかない。 エ以上のとおり,原告らは,被告を正職員として定年退職した後に嘱託職員として有期労働契約により再雇用された者であるが,正職員定年退職時と嘱託職員時でその職務内容及び変更範囲には相違がなかった一方,原告らの嘱託職員一時金は,正職員定年退職時の賞与を大幅に下回る結果,原告らに比べて職務上の経験に劣り,基本給に年功的性格があることから将来の増額に 備えて金額が抑制される傾向にある若年正職員の賞与をも下回る 一時金は,正職員定年退職時の賞与を大幅に下回る結果,原告らに比べて職務上の経験に劣り,基本給に年功的性格があることから将来の増額に 備えて金額が抑制される傾向にある若年正職員の賞与をも下回るばかりか,賃金の総額が正職員定年退職時の労働条件を適用した場合の60%をやや上回るかそれ以下にとどまる帰結をもたらしているものであって,このような帰結は,労使自治が反映された結果でもない以上,賞与が多様な趣旨を含みうるものであること,嘱託職員の賞与が年功的性格を含まないこと,原告 らが退職金を受給しており,要件を満たせば高年齢雇用継続基本給付金及び老齢厚生年金(比例報酬分)の支給を受けることができたことといった事情を踏まえたとしても,労働者の生活保障という観点からも看過し難い水準に達しているというべきである。 そうすると,原告らの正職員定年退職時の賞与と嘱託職員時の嘱託職員一 時金に係る金額という労働条件の相違は,労働者の生活保障という観点も踏まえ,原告らの基本給を正職員定年退職時の60%の金額(前記⑷において不合理であると判断した部分を補充したもの)であるとして,各季の正職員の賞与の調整率(前記前提事実a ないしl)を乗じた結果を下回る限度で,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するの が相当である。 なお,原告らは,原告らの嘱託職員一時金と正職員Fの賞与(原告乙が定年退職する前は,原告乙及び正職員Fの賞与の平均額)を比較するところ,原告らと正職員Fの間では,賞与算定の基礎となる基本給や勤務評定分といった前提条件に相違があるから,その比較結果を直接採用することはできない。 2 労働契約に基づく差額賃金請求の可否(争点2)前記のとおり,原告らの嘱託職員時の労働条件には,正 務評定分といった前提条件に相違があるから,その比較結果を直接採用することはできない。 2 労働契約に基づく差額賃金請求の可否(争点2)前記のとおり,原告らの嘱託職員時の労働条件には,正職員定年退職時の労働条件との間で労働契約法20条にいう不合理と認められる相違が存在する。これを前提に,まず,労働契約に基づき差額賃金を請求することができるかどうかを検討する。 ⑴ 労働契約法20条が有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違は「不合理と認められるものであってはならない」と規定していることや,その趣旨が有期契約労働者の公正な処遇を図ることにあること等に照らせば,同条の規定は私法上の効力を有するものと解するのが相当であり,有期労働契約のうち同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効となるものと解さ れる。もっとも,同条は,有期契約労働者について無期契約労働者との職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であり,その文言上も,両者の労働条件の相違が同条に違反する場合に,当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなる旨を定めていない。そうすると,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相 違が同条に違反する場合であっても,同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当である。(最高裁判決1)⑵ 原告らは,嘱託規程が嘱託職員の労働条件につき,嘱託規程に定めのない事項は正職員就業規則等を準用する旨定めている規定の存在を指摘し,労働契約 法20条により私法上無効となった労働条件は,「嘱託規程に定めのない事項」 に該当するため,正職員と同様の基準 正職員就業規則等を準用する旨定めている規定の存在を指摘し,労働契約 法20条により私法上無効となった労働条件は,「嘱託規程に定めのない事項」 に該当するため,正職員と同様の基準及び計算方法により算定された賃金請求権が発生する旨主張する。しかし,原告らが指摘する嘱託規程の上記規定は,嘱託規程において定めを置かなった事項について,正職員就業規則等により補充することを予定した規定であり,本件のように,原告らと被告の間で行った嘱託職員としての労働条件に関する個別の合意の内容が私法上無効となる場 合に正職員就業規則等を準用することを定めた規定とはいえない。 そうすると,嘱託規程及び正職員就業規則等の解釈を通じて,嘱託職員時の原告らについても正職員就業規則等が適用され,労働契約に基づき差額賃金を請求することができる旨の原告らの上記主張を採用することはできない。 ⑶ よって,原告らの請求のうち,労働契約に基づき差額賃金の支払を請求する 部分については理由がない。 3 不法行為に基づく損害賠償請求の可否及び損害額(争点3)⑴ 前記のとおり,①基本給のうち正職員定年退職時の額の60%を下回る部分,②皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)の減額分,③賞与(嘱託職員一時金)のうち正職員定年退職時の基本給の60%に各季の正職員の賞与の調整率を乗 じた結果を下回る部分は,いずれも労働契約法20条に違反するものである。 また,このような法違反状態の労働条件は,被告が原告らに対して提示し,その後,これに沿った賃金の支払がされたのであるから,被告には,このような違法な取扱いをしたことについて過失があったというべきである。 以上によれば,原告甲については別表1,原告乙については別表2に記載さ れた「あるべき金額」欄と「支給額」欄 被告には,このような違法な取扱いをしたことについて過失があったというべきである。 以上によれば,原告甲については別表1,原告乙については別表2に記載さ れた「あるべき金額」欄と「支給額」欄の差額に相当する損害を被ったということができる。なお,残業手当に係る検討結果を補足すると,本件訴訟においては,前記前提事実⑸ウのとおり残業手当を算定することで当事者間に争いがないところ,その算定の基礎となる基本給及び皆精勤手当(又は精励手当)に上記のような違法があるため,基本給を正職員定年退職時の額の60%とし, 皆精勤手当(又は精励手当)を正職員定年退職時と同額として算定した残業手 当と実際に支給された残業手当の差額は,上記のような違法な取扱いとの間で相当因果関係が認められる。 ⑵ 原告らは,被告の不法行為による精神的損害の発生を主張し,慰謝料(原告甲は150万円,原告乙は100万円)を請求している。しかし,原告らに生じた財産的損害は賠償義務が履行されることによって回復されるものであり, これにより精神的損害も慰藉されるところ,それでもなお賠償すべき精神的損害があるとまでは認められない。 ⑶ そうすると,原告らの請求のうち,不法行為に基づき損害賠償の支払を請求する部分については,前記⑴の範囲で一部理由がある。よって,被告は,原告らに対し,不法行為に基づく損害賠償として上記範囲の金額の支払義務に加え, 毎月の賃金の相違により生じる損害については,毎月の賃金の各支払期日の翌日(原告甲の平成25年8月分から平成26年7月分はその請求どおり平成28年9月14日とする。)から各支払済みまで,各季の賞与(嘱託職員一時金)の相違により生じる損害については,夏季分は支払日より後の日である毎年8月1日,年末分は支払日より後の はその請求どおり平成28年9月14日とする。)から各支払済みまで,各季の賞与(嘱託職員一時金)の相違により生じる損害については,夏季分は支払日より後の日である毎年8月1日,年末分は支払日より後の日である翌年1月1日から各支払済みまで民 法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 第4 結論以上の次第であるから,原告らの請求は,主文第1項及び第2項掲記の範囲で一部理由があるからこれらを認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判長裁判官井上泰人裁判官前田早紀子裁判官伊藤達也 (別紙省略)

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