平成18(ハ)78 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成18年12月13日 名古屋簡易裁判所 棄却
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判決文本文12,320 文字)

- 1 -平成18年(ハ)第78号損害賠償請求事件主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,金139万8286円及びこれに対する平成17年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告を退職した原告が,退職する際,被告との間で,被告の退職年金規定(以下「退職年金規定」という。)に基づき10年間の有期年金を受ける契約が成立したが,退職年金規定を廃止して年金基金を分配した被告の行為は,債務不履行又は不法行為に当たるとして,被告に対し,損害賠償及び遅延損害金の支払を求める事案である。 争いのない事実等(1) 原告は,平成13年12月31日,早期退職援助制度により被告を退職し,退職慰労金及び早期退職加算金を受給したほか,退職年金規定に基づき,年金月額7万2400円を10年間受給することになった。 (2) 退職年金規定の廃止被告の退職年金制度は、昭和48年に所轄官庁の承認を受け,退職年金規定によって運用,実施されてきたが,適格年金制度に関する法律の変更により,適格退職年金制度の新設は平成14年4月1日以降は不可能となり,既存のものも平成24年4月1日以降は税制適格がなくなり,拠出金の損金算入も税制上認められなくなることから,被告は,退職金制度及び退職年金制度の見直し(以下「退職金制度等の見直し」という。)を行い,適格退職年金制度を廃止して確定拠出型年金へ移行させ,退職一時金と確定拠出年金部分との割合を概ね同等とする内容で,被告内の賃金委員会で新制度が決定さ- 2 -れ(平成16年6月),労働組合の同意も得て(同年7月),退職年金規定を平成17年6月1日に廃止(以下「本件廃止」という。)した。(甲1,乙1の1か ,被告内の賃金委員会で新制度が決定さ- 2 -れ(平成16年6月),労働組合の同意も得て(同年7月),退職年金規定を平成17年6月1日に廃止(以下「本件廃止」という。)した。(甲1,乙1の1から3まで,乙2の1から3まで,乙3の1及び2,乙4)(3) 本件廃止による年金基金の分配について原告が退職した当時の退職年金規定は,年金基金の70パーセントは信託契約の信託金としてA銀行株式会社(現「B銀行株式会社」)に払込み,その余の年金基金の30パーセントは保険契約の保険料としてC相互会社に払込み,それぞれ管理運用させることとされていた。そして,制度廃止に際しての年金基金の分配については,「保険契約において,すでに年金の給付事由が生じている者については,その責任準備金相当額を留保し,引続き年金を給付する。」との方法が選択肢の一つとして予定されていた。 その後,退職金制度等の見直しの中で,退職年金規定は平成16年12月1日に改定(以下「本件改定」という。)され,年金基金の管理運用は,全額につき信託契約に基づきB銀行株式会社が行うこととされ,制度廃止時に既に年金の受給事由が生じている者については,制度廃止日現在の責任準備金相当額を分配する方法に統一されることとなった。(甲1,乙1の1から3まで)(4) 被告は,原告に対し,平成17年3月3日付け書面により,本件廃止及び退職年金の一括支給を通知し,一括支給の方法として,選択一時金又は年金基金の分配のいずれかを選択するよう通知した。 (5) 被告は,原告に対し,平成17年8月22日,本件廃止による年金基金の分配として金531万3581円を支払った。 争点 (1) 本件廃止等の適法性(2) 損害 当事者の主張(1) 争点(1)(本件廃止等の適法性)- 3 -(原告の主張)ア退職年金 の分配として金531万3581円を支払った。 争点 (1) 本件廃止等の適法性(2) 損害 当事者の主張(1) 争点(1)(本件廃止等の適法性)- 3 -(原告の主張)ア退職年金は会社と退職者個々との契約であるところ,被告は,原告の了解を得ず,また,契約上の要件である手続を踏むことなく,この契約(退職年金規定)の廃止を自己の利益のみ優先して一方的に強行し,原告に損害を与えた。 イ被告主張の退職年金規定の改廃とは,退職年金規定自体の改廃をいうのであり,退職した原告ら受給者には,会社の規定は影響しようがなく,現存するのは退職時の退職年金規定により確定した債権債務である。この権利関係の変更は双方の了解なくしてはありえない。 ウ仮に,退職年金規定の改廃は制度上予定されており,退職者に対しても規定の改廃の効力が及ぶとしても,「従業員の退職後の生活安定に寄与することを目的とする」(退職年金規定第1条。以下退職年金規定については単に「第○条」と表示する。)とあるように,規定の改廃はこの制度の趣旨を損なわないものでなければならない。次に例示する事由のとおり,退職者の事情を考慮せず,被告の損得計算のみで実施された本件廃止は規定違反であり,債務不履行又は不法行為に当たる。 (ア)差別扱いの禁止(第29条)に違反a本件廃止に際し,従業員に対しては何度か説明会を開き,周知を図ったが,これに対し,原告ら受給者には事前に一度の説明もなく,結果のみの報告で,しかもその報告が制度の廃止があたかも会社の意思でなく,法律によるのだからやむを得ないかのような印象を与え,結果的にほとんどの受給者はまともな判断ができることなく承諾させられた。 b従業員に対しては,本件廃止日現在の要支給額を保証して新制度に移行したが,原告ら受給者には要支給額と関係 うな印象を与え,結果的にほとんどの受給者はまともな判断ができることなく承諾させられた。 b従業員に対しては,本件廃止日現在の要支給額を保証して新制度に移行したが,原告ら受給者には要支給額と関係なく,積立不足状態の本件廃止日現在の拠出額(年金基金)を限度として処理した。 (イ)拠出(第19条)及び年金基金の分配(第32条)の解釈- 4 -第32条は制度を廃止したときの年金基金の処理方法を規定しているに過ぎず,これで被告の確定債務が解消されるわけではなく,要支給額に不足すれば補充する義務があるのは当然である。そもそも年金基金に不足が発生するのは第19条でいう「年金基金が適正な年金数理に基づき,必要な拠出」がなされていなかったことになる。 (ウ)第25条(保険契約の締結)の予告なき削除本件改定は,その時期からして本件廃止が確定した後に行われたと思われるが,なぜこの時期に改定せざるを得なかったのか。 年金基金の30パーセントが保険会社に積み立てられるという利害関係者にとり重要な事項であるにもかかわらず,いかなる事情か制度廃止の直前に削除された。その経緯は原告ら受給者には何の報告もされていないことから,しかるべき手続を踏んだとは言えず問題である。このことも年金基金の不足の一因ではないかとの疑念もでてくる。 (エ)退職年金規定が存続不可能との誤った解釈被告は再三にわたり退職年金制度の継続は不可能だったと主張するが,正確には税制上の「適格」が無くなる(恩典が無くなる)だけであり,存続し得ないことではない。税制では拙速な変更は弊害をもたらすことを配慮し猶予期間を設けている。少なくとも受給者だけでも経過措置期限(平成24年4月)まで当制度を継続すれば当該紛争は生じなかった。 これは被告にとって事務手続上,十分可能なことであった。 (オ)第3 配慮し猶予期間を設けている。少なくとも受給者だけでも経過措置期限(平成24年4月)まで当制度を継続すれば当該紛争は生じなかった。 これは被告にとって事務手続上,十分可能なことであった。 (オ)第30条(年金委員会)退職年金規定の改廃等重要事項については,会社,加入者双方からなる年金委員会を設置し,審議を経なければならないとしているが,その形跡がない。仮に,あったとしても年金受給者の利益代表が参加していない審議等は不当である。 エ原告への分配金受給者への分配金の算出において年率3.5パーセントの現価率で計算- 5 -しているが,定期預金の金利が良くて0.1パーセントの時期,その35倍の利率で計算しており,まさに現実離れした数字となっている。本来分配金の財源となる年金基金は被告が適切に拠出(第19条)をしていれば要支給額に対し不足することはないはずだが,積み立て時の予定利率,そしてこの分配時の現価率等が適切に設定されていなかった結果と思われる。 (被告の主張)ア退職年金規定の性質退職年金規定は就業規則たる性質を有し,退職者と被告との法律関係は,退職時点における退職年金規定によって規律され,第31条により制度の変更及び廃止が留保されており,本件改定及び本件廃止(以下「本件廃止等」という。)は,退職年金規定に基づき適法に行われた。 退職年金規定の内容は,制定以後被告社内で周知されており,原告も当然にその内容を承知しているものとみなされることから,原告にも年金規定の廃止及び廃止に伴う措置に関する規定の効力が及ぶのは当然である。 イ本件廃止等の趣旨及び経緯適格年金制度に関する法律の変更による状況下,被告として将来にわたる(平成24年4月以降も当然に見据えて)安定的な退職金及び年金の制度設計を考えることは当然であり,平成24年3月までの 趣旨及び経緯適格年金制度に関する法律の変更による状況下,被告として将来にわたる(平成24年4月以降も当然に見据えて)安定的な退職金及び年金の制度設計を考えることは当然であり,平成24年3月までの猶予期間の間,従前の制度を維持し税制適格を享受することは法制上は可能である。 しかし,その後の将来にわたり退職金(年金)制度の維持存続を図り,従業員の退職後に備える必要のある企業としては,猶予期間の経過ぎりぎりのタイミングまで現行制度を維持した場合の利害得失をも比較考量の上,移行のタイミングを模索するのは当然である。平成17年6月1日に労使の合意を経て確定拠出型の年金制度に移行させる判断は,被告の年金制度にとり合理的な判断である。原告一人のために平成24年まで従前の制度を維持するとの判断はあり得なかった。 年金基金の分配を受ける対象者であった受給者28人のうち,原告を除- 6 -く27人全員が年金基金の分配に同意している。 適格年金制度がなくなる事態は,第31条の「経済情勢の変化等」に該当することは明らかである。 ウ第32条は,原告の退職時点にも存在し,退職者(年金受給者)を想定した規定であり,その文言上当然に原告にも適用される。原告ら退職者の個別の了解がなければ,適用が不可能とすれば,本規定は何ら意味のない規定と言わざるを得ない。労使間の集団的かつ公平な処理を可能とする就業規則の機能も無意味となる。 エ制度変更時に被告の従業員である者と,原告を含む既退職者との間で扱いを異にすることを差別であると原告は主張するが,被告の従業員であることを前提とする移行後の新制度に退職者を組み込めないのは,企業の年金制度であるから当然であって,それを差別とは言わない。原告ら既退職者には,責任準備金相当額(支給が予定されている支給残存期間に対応する支給年金 る移行後の新制度に退職者を組み込めないのは,企業の年金制度であるから当然であって,それを差別とは言わない。原告ら既退職者には,責任準備金相当額(支給が予定されている支給残存期間に対応する支給年金額の現在価値相当額)の分配,あるいは,選択一時金が原告らの選択によって保証されたのであるから,原告は,制度廃止の事態がなかった場合に年金として受けることが予定されていた経済的利益と同等と評価されるべき経済的な給付を受けているのである。加えて,新制度に移行する被告の従業員に対して保証されるものを下回るものでもない。 よって,原告主張の差別扱いの事実はない。だからこそ,原告以外の受給者は,被告の制度変更に同意し,その手続にも協力したのである。その同意,承諾に瑕疵はなく,被告が虚偽を報告した事実もない。 オ原告に分配された金531万3581円は,支給月(3月,6月,9月,12月)の関係から本件廃止時点で未払いとなっていた3か月分(平成17年3月分,4月分,5月分)の年金給付金21万7200円と,責任準備金相当額(本件廃止日以降支給が予定されている支給残存期間に対応する支給年金額の現在価値相当額)509万6381円の合計額である。 原告についての責任準備金相当額の計算は以下のとおり- 7 -制度廃止日平成17年6月1日年金支給開始年月平成14年1月経過年月3年5か月選択一時金支給率70.392(利率年3.5パーセント,10年保証確定年金現価率)予定利率年3.5パーセント責任準備金相当額7万2400円×70.392=509万6381円※1円未満は切り上げ将来受給が予定されていた給付金額の現在価値相当額を分配したものであるから,そもそも原告には損害は存在しない。 (2) 争点(2)(損害)(原告の主張)ア損害額(ア) 不足額 円未満は切り上げ将来受給が予定されていた給付金額の現在価値相当額を分配したものであるから,そもそも原告には損害は存在しない。 (2) 争点(2)(損害)(原告の主張)ア損害額(ア) 不足額平成17年6月1日現在の未払年金額579万2000円(あ)受けた一時金531万3581円(い)(あ)-(い)=47万8419円(イ) 一括支給による金利メリット(原告が7年間で(あ)を均等に費消したとして計算。利率は年0.6パーセント)579万2000円÷2×0.6%÷12×80か月=11万5840円(う)(ウ) 年金のように一定期間均等に家計に入金されることは安定した生活を送る上で好ましいものであるが,一時金で受け取ってしまうと,それを年金のように使うには原告が資金管理をしなければならない。そこには手間やペイオフ,盗難等のリスクが発生する。言い換えれば,被告にとっては年金として管理してゆくコストの削減が可能となり,大きなメリットとなるが,逆にその分原告にとっては損失となる。この損失は被告- 8 -が免れた信託報酬等を参考にして2パーセントと見積もる。 (579万2000円-(う))÷2×2%÷12×80か月=37万8410円(エ) 税コストの増大。所得税計算上,年金は暦年の課税所得が小さくなり,さらに所得控除が毎年70万円受けられる。一時金は,当然のことながら課税所得が大きくなり,所得控除50万円,2分の1課税となる。この結果,年金の場合よりも所得税額が増える。 一時所得の税額-年金の税額22万5457円-11万8160円=10万7297円イ慰謝料平穏な生活が被告の原告に対する財産権侵害の動きがあった平成17年3月3日以降,これに対応すべく資料収集,弁護士,司法書士との相談等各方面へ出向き活動をせざるを得ず,その精神的,経済 円イ慰謝料平穏な生活が被告の原告に対する財産権侵害の動きがあった平成17年3月3日以降,これに対応すべく資料収集,弁護士,司法書士との相談等各方面へ出向き活動をせざるを得ず,その精神的,経済的負担として,少なくとも金55万円が相当である。 ウ 結論 よって,原告は,被告に対し,損害額と慰謝料の合計金139万8286円及びこれに対する平成17年6月1日から支払済みまで年5分の遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)原告に支給された金531万3581円は,原告の将来の受給予定年金額を現在価値に計算しなおした金額であるから,そもそも損害は存在しない。 原告が主張する管理コスト(2パーセント相当と主張)なるものも存在しない。預貯金として管理,運用すればコストなどかからない。 課税上の不利益についても,制度の改廃が当初から予定されているのであるから,受給方法により適用税率が変動することも折込済みと言わなければならない。よって,原告の損害とはいえない。 慰謝料請求の対象となる事案ではない。 - 9 -第3争点に対する判断 争点(1)について(1)証拠(甲1,甲4,乙1の1から3まで,乙2の1から3まで,乙3の1及び2,乙4)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア退職年金規定の内容(ア) 退職年金規定は,第1章総則,第2章給付,第3章拠出,第4章制度の運営,付則からなり,本件改定以前(原告の退職時)の主な規定は次のとおりである。 第1章総則第1条(目的)この規定による制度(以下この制度という。)は,従業員の退職又は死亡について年金又は一時金を給付し,もって従業員の退職後の生活安定及びその遺族の生活安定に寄与することを目的とする。 第3条(加入者)この制度に加入している従業員を加入者という。 第4章制度の運営第23 いて年金又は一時金を給付し,もって従業員の退職後の生活安定及びその遺族の生活安定に寄与することを目的とする。 第3条(加入者)この制度に加入している従業員を加入者という。 第4章制度の運営第23条(年金基金の設定)会社は,この制度について,会社の選択した金融機関との間に,年金信託契約及び保険契約を締結し,この制度における年金基金を設定し,その管理運用並びに給付の事務を委託する。 第24条(適格退職年金信託契約の締結)1項会社は,前条の規定に基づき,この制度に定める給付金額の100分の70に相当する給付に充てるため,A銀行株式会社と適格退職年金信託契約を締結し,必要な資金を信託契約の信託金として払込むものとする。 2項(略)第25条(保険契約の締結)1項会社は,第23条の規定に基づき,この制度に定める給付- 10 -金額の100分の30に相当する給付に充てるため,C相互会社と保険契約を締結し,必要な資金を保険契約の保険料として払込むものとする。 2項(略)第29条(差別扱いの禁止)この制度における拠出金の額,給付の額,その他給付の要件については,特定の者に対して不当に差別的な取扱いはしない。 第30条(年金委員会)1項この制度の適正な運営をはかるために,年金委員会を設置する。 2項年金委員会は,会社側委員2名並びに加入者側委員2名合計4名をもって構成する。 3項年金委員会は,次に定める事項について会社の諮問に応じて審議し,答申する。 (1),(2)(略)(3)この規定の改廃並びに疑義の解釈(4)(略)4項,5項(略)第31条(規定の改廃)この規定は,経済情勢の変化等に応じてこれを改廃することがある。 第32条(年金基金の分配)この制度が廃止されたときの年金基金は,次の各号により分配する。ただし,保険契約にお 第31条(規定の改廃)この規定は,経済情勢の変化等に応じてこれを改廃することがある。 第32条(年金基金の分配)この制度が廃止されたときの年金基金は,次の各号により分配する。ただし,保険契約において,すでに年金の給付事由が生じている者については,その責任準備金相当額を留保し,引続き年金を給付する。 (1)すでに年金の給付事由が生じている者に対して,制度廃止日現在の責任準備金相当額を分配する。ただし,年金基金に不足をきたす場合は,責任準備金相当額の割合に応じて年金基金を分配する。 - 11 -(2)前号による分配を行って,なお年金基金に残余がある場合には,制度廃止日現在の各人の責任準備金の額の割合に応じて加入者に分配するものとする。 (イ) 本件改定の主な内容第23条を次のとおり変更する。 第23条(年金基金の設定)会社は,この制度について,会社の選択した金融機関との間に,年金信託契約を締結し,この制度における年金基金を設定し,その管理運用並びに給付の事務を委託する。 第24条を次のとおり変更する。 第24条(年金信託契約の締結)1項会社は,前条の規定に基づき,この制度に定める給付金額の給付に充てるため,B銀行株式会社と年金信託契約を締結し,必要な資金を信託契約の信託金として払込むものとする。 2項(略)第25条を次のとおり変更する。 第25条削除第32条を次のとおり変更する。 第32条(年金基金の分配)この制度が廃止されたときの年金基金は,次の各号により分配する。 (1),(2)(改定前と同じ。)イ本件廃止等の経緯と経過(ア) 被告は,適格年金制度に関する法律の変更を契機として,従業員に対する説明会の開催,賃金委員会や取締役会の決定及び労働組合の同意を得て,本件廃止等を実施した。 (イ) 経過平成15年8月20日賃金委 告は,適格年金制度に関する法律の変更を契機として,従業員に対する説明会の開催,賃金委員会や取締役会の決定及び労働組合の同意を得て,本件廃止等を実施した。 (イ) 経過平成15年8月20日賃金委員会において,平成24年までの適格年金制度の廃止を受け,退職金制度等の見直し- 12 -決定同年8月ころ退職金制度等の見直しについて,全従業員を対象にアンケート実施平成16年6月1日賃金委員会において,年金制度の改定と確定拠出年金導入の基本方針決定同年6月29日年金制度改定の目的,新退職金制度(案)等の説明文を従業員に配布同年7月6日から同月9日まで従業員説明会を本店及び各支店で開催同年12月1日本件改定平成17年1月24日本件改定に労働組合同意同年1月25日中央労働基準監督署長へ本件改定の報告同年2月7日賃金委員会において,退職金規定改定案及び日程決定同年2月8日従業員代表に新退職金制度の最終案説明同年3月3日原告ら退職年金受給者に「当社適格退職年金制度廃止のお知らせ」発送(争いのない事実等(4))同年3月15日から同月17日まで従業員説明会を本店及び各支店で開催同年3月25日従業員代表から同意の報告同年4月19日関東信越厚生局長へ退職金制度について労使合意に至るまでの労使協議の経緯を報告同年6月1日本件廃止ウ本件廃止の時点で退職年金規定による年金受給者が28人いたが,平成17年3月3日付け「当社適格退職年金制度廃止のお知らせ」に対し,原告を除く27人は同意し,異議を唱えることなく被告の処理に応じた。 - 13 -エ被告は,原告に対し,平成17年8月22日,予定利率年3.5パーセントの計算で本件廃止日以降支給が予定されている支給残存期間に対応する支給年金額の現在価値相当額を支給した。 た。 - 13 -エ被告は,原告に対し,平成17年8月22日,予定利率年3.5パーセントの計算で本件廃止日以降支給が予定されている支給残存期間に対応する支給年金額の現在価値相当額を支給した。 (2) 以上の認定事実及び争いのない事実等により判断する。 ア退職年金規定は就業規則としての性質を有するもので,就業規則は一種の法規範として当該事業所の従業員に適用されるものと解する。原告の退職年金受給権は,この退職年金規定に基づいて取得したものであって,退職時における,被告と退職者個々との契約に基づくものとは認められない。 したがって,被告と退職者個々との契約によって退職年金受給権を取得したことを前提とする原告の主張は,採用できない。 イ本件廃止等は,必要な手続(第30条の年金委員会の開催については後述する。)を履践して適法になされたものと認められる。 ウそこで,本件廃止等の効果が原告に及ぶかについて検討する。 (ア) 前述のとおり退職年金規定は就業規則としての性質を有するものであるから,退職者には就業規則の適用が考えられない以上,その規定の改廃の効果は当然には退職者に及ばないが,退職時の規定自体に改廃権が留保されている場合には,その規定の適用の結果,原則として,改廃の効果は退職者にも及ぶものと解される。そうすると,原告の退職時の退職年金規定には,第31条で規定の改廃についての定めがあり,退職年金支給開始後の被告の改廃権が留保されていたことから,原則として,改廃の効果が退職者にも及ぶと言わざるを得ない。 しかし,本件廃止等の経過にみられるように,従業員でない退職者には事後的な結果報告がなされるだけであって,事前に意見を述べる機会が保証されていないような場合には,退職者にとって有利不利を問わず,一律にすべての改廃の効果が及ぶとすることは相当で 員でない退職者には事後的な結果報告がなされるだけであって,事前に意見を述べる機会が保証されていないような場合には,退職者にとって有利不利を問わず,一律にすべての改廃の効果が及ぶとすることは相当でなく,合理的な範囲に限定される,すなわち,改廃権の行使は合理的な範囲に限定されるものと解することが相当である。そして,その合理的な範囲か否かは,- 14 -改廃の目的,改廃の内容自体の相当性,改廃によって退職者が不利益を受ける場合にはその程度とその代替措置の内容,改廃によって影響を受ける退職者の対応等によって判断することが相当である。 (イ) 本件廃止等が改廃権の合理的範囲内の行使か否か検討する。 本件廃止等は,適格年金制度の変更を契機とする退職金制度等の見直しの一環として行われたもので,その目的に不相当と認める事情はないこと,本件改定によって退職年金規定の廃止の際の年金を継続して受給する選択肢がなくなり,確定した年金受給権は消滅するが,制度廃止日現在の責任準備金相当額(年金基金)の分配を受ける権利は保証されていること,本件廃止により支給残存期間に対応する支給年金額の現在価値相当額の一括支給を受けたこと,原告以外の年金受給者は,本件廃止等による被告の処理に同意し,異議なく受け入れていることなどから,本件改廃等は改廃権の合理的範囲内の行使と認めることが相当である。 なお,原告以外の年金受給者の同意に瑕疵があったと認めるに足りる証拠はない。 (ウ) したがって,本件廃止等の効果は,原告にも及ぶものと解することが相当である。 エ第2の3(1)(原告の主張)ウにおいて,被告が行った本件廃止等は規定違反であり,債務不履行又は不法行為に当たると主張する。 (ア) 差別扱いの禁止に違反するとの主張について退職金制度等の見直しの過程で,従業員と原告ら退職者 )ウにおいて,被告が行った本件廃止等は規定違反であり,債務不履行又は不法行為に当たると主張する。 (ア) 差別扱いの禁止に違反するとの主張について退職金制度等の見直しの過程で,従業員と原告ら退職者との間に事前の説明会の有無などの差別的取扱いがあったことを理由とするが,規定の性質上,従業員と退職者との間で異なる取扱いがなされることはやむを得ないところであって,特に規定違反に該当するような差別的取扱いがなされたとは認められず,原告の主張は採用できない。 (イ) 本件廃止等について,年金委員会の審議を経ていない,仮にあったとしても年金受給者の利益代表が参加していない審議等は不当であるとの- 15 -主張について確かに,第30条3項によれば,年金委員会は,この規定の改廃について「会社の諮問に応じて審議し,答申する。」とされているが,本件廃止等にあたり年金委員会が開催された事実は認められない。 思うに,規定の変更,廃止等の重要な事項について年金委員会を開催する趣旨は,従業員にとって利害関係が大きいので,従業員の代表者を構成員に加えた委員会を開催し,従業員に意見を述べる機会を与えることにある。そうすると,本件廃止等にあたって,従業員全員を対象として,アンケートの実施,説明文の配布及び説明会の開催が行われ,従業員の意見を聴取する機会を設けているのであるから,年金委員会開催の代替措置としては十分であり,年金委員会不開催が本件廃止等に影響を与えるほどの瑕疵とまでは言えず,それをもって規定違反と認めることは相当でなく,原告の主張は採用できない。 また,年金委員会に年金受給者の利益代表が参加していない審議等は不当である旨主張するが,前述のとおり従業員と退職者とで取扱いが異なることはやむを得ず,規定上年金受給者の参加は予定されていないので,原告の主張は 員会に年金受給者の利益代表が参加していない審議等は不当である旨主張するが,前述のとおり従業員と退職者とで取扱いが異なることはやむを得ず,規定上年金受給者の参加は予定されていないので,原告の主張は採用できない。 (ウ) その余の主張は,本件廃止等の必要性,年金基金の積立不足などを理由とするもので,前述のとおり本件廃止等は改廃権の合理的範囲内での行使であること,年金支給予定額全額の支給を前提として,年金基金に積立不足があったと推測して主張するもので,それを認めるに足りる証拠はないことなどから,いずれも規定違反となる事情とは認められず,原告の主張は採用できない。 オ次に,原告は,年率3.5パーセントで原価率を計算しているのは不当である旨主張する。 交通事故による逸失利益の損害賠償など,将来の請求権を現在価額に換算する場合,法的安定性及び統一的処理の観点から,また,損害賠償債務- 16 -の遅延損害金の割合が年5パーセントであることとの均衡などの理由から,中間利息の控除割合を民法所定の年5パーセントとすることが相当と解され,それとの対比,さらに原告以外の年金受給者は被告の処理に同意し,異議を唱えていないことを考慮すると,被告の示した原価率計算が不当で規定違反であるとまでは言えず,原告の主張は採用できない。 カ以上から,本件廃止等は適法に行われており,原告に対する年金基金の分配も相当であり,本件廃止等に関し,被告の債務不履行又は不法行為の責任は認められない。 よって,争点(2)について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,棄却することとする。 名古屋簡易裁判所裁判官鈴木章夫 主文 ととする。 理由 名古屋簡易裁判所裁判官鈴木章夫

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