令和5(わ)289 傷害致死、傷害

裁判年月日・裁判所
令和6年12月23日 高知地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-93736.txt

判決文本文3,851 文字)

令和5年(わ)第273号、同第289号傷害致死、傷害被告事件 主文 被告人を懲役8年6月に処する。 未決勾留日数中270日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、分離前の相被告人Aから、同人が同B及び同C(A及びBと合わせて「Aら3名」という。)と共同で販売していた薬物リキッドを、D及び同人の友人であるEにより代金の支払を受けることなく持ち逃げされたので同人らを捜索してほしいと依頼され、Aら3名が制裁目的でD及びEに暴行を加えようとしていることを認識したものの、Aら3名に協力しようと考え、Aら3名及び分離前の相被告人Fと共謀の上、第1 令和5年9月26日午後8時30分頃から同日午後9時頃までの間に、高知市(住所省略)南西約150メートル先路上において、E(当時21歳)に対し、その顔面等を拳で多数回殴り、足で多数回蹴るなどの暴行を加え、よって、同人に加療約4週間を要する鼻骨骨折、頭部・顔面・四肢打撲傷及び頸椎捻挫の傷害を負わせ(同年10月18日付け起訴状公訴事実)、第2 令和5年9月26日午後9時30分頃から同月27日午前1時頃までの間に、同所において、D(当時22歳)に対し、その顔面等を拳と掌で多数回殴り、足で多数回蹴り、その臀部を安全靴を履いた足で1回蹴るなどの暴行を加え、同人に頭部打撲傷、外傷性くも膜下出血、鼻骨骨折、多量鼻出血等の傷害を負わせ、よって、その頃、同所において、同人を前記傷害に基づく外傷性ショックにより死亡させた(同年11月8日付け起訴状公訴事実)。 (量刑の理由) 1 本件は、被告人が、いずれも他の共犯者4名と共謀の上、被害者に対し殴る蹴るの暴行を加えて傷害を負わせた傷害の事案(判示第1)と、その直後に 同年11月8日付け起訴状公訴事実)。 (量刑の理由) 1 本件は、被告人が、いずれも他の共犯者4名と共謀の上、被害者に対し殴る蹴るの暴行を加えて傷害を負わせた傷害の事案(判示第1)と、その直後に、別の 被害者に対し殴る蹴るの暴行を加えて傷害を負わせ、外傷性ショックにより死亡させた傷害致死の事案(判示第2)である。 そこで、本件の量刑判断の中心となる重い判示第2の傷害致死の事案について、共犯として関与し、動機が集団リンチであり、被害者の遺族と示談等をしておらず、被告人に見るべき前科がない事案を同種事案として犯情を検討し、更に判示第1の傷害の事案の犯情や被告人個別の犯情及び一般情状を検討して被告人に対する量刑を決める。 2 まず、判示第2の傷害致死の事案についてみると、被告人らは、犯行に使用する道具を準備し、人気のない場所を犯行現場として選定した上、被告人の知人を介して同所にDを連れ出すなど、一定の計画を立てて犯行に及んでいる。犯行態様は、無抵抗のDを複数名で取り囲んだ上、その頭部や顔面等の重要な部位を数十回にわたって殴る蹴るなどして一方的に暴行を加えるというもので、強度かつ執拗である。 かかる犯行は、本件各犯行の被害者であるD及びEがAら3名の薬物リキッドを持ち逃げしたことが発端となってはいるが、これについて制裁を加えるため集団で暴行を加えるというのは余りに社会規範から外れた暴力的な発想であって、動機や経緯に酌むべき点を見出すことはできない。 被害者であるDは、前記のとおり人気のない場所で激しい暴行を受けて重傷を負い、適切な救命活動もなされないまま22歳という若さで命を失ったものであり、同人が受けた肉体的・精神的苦痛が大きいことは明らかであって、その無念は察するに余りある。被害結果は取り返しのつかない重大なものであり、愛 活動もなされないまま22歳という若さで命を失ったものであり、同人が受けた肉体的・精神的苦痛が大きいことは明らかであって、その無念は察するに余りある。被害結果は取り返しのつかない重大なものであり、愛する家族を奪われたその遺族らが厳重処罰を望むのは当然である。 加えて、被告人らは、判示第2の犯行後、Dの携帯電話を破壊したり、Bが単独で犯行に及んだと偽装することを合意した上、Bのみを犯行現場に残して立ち去るなどの各種証拠隠滅行為を行っており、犯行後の事情も芳しくない。 3 判示第1の犯行も、判示第2の犯行の直前にこれと同様の動機・経緯で敢行し たもので、同様に無抵抗のEに対して激しい暴行を一方的に加えており、同人が負った傷害の程度も比較的重いから、軽くみることはできない。 4 次に、被告人個別の犯情等について検討する。 被告人は、前記のとおり、本件各犯行の前日にAから薬物リキッドが持ち逃げされた経緯等について説明を受けた上でDらの捜索を依頼され、Aら3名に協力しようと考えて本件各犯行に加担したもので、知人を通じてDらを呼び出すなど重要な役割を果たしている。また、被告人は、判示第1の犯行においては、AがEに対して50万円を支払うよう提案した後にその金額を100万円に吊り上げるなどして自らの経済的利益を得ようとし(被告人は、紛争解決のためにこのような行動に及んだもので現実に支払を求める意図はなかったなどと弁解するが、不合理で信用できない。)、判示第2の犯行においては、BやCに対してDの身体を押さえつけるよう指示した上で、事前にBに準備させたペットボトルを用いてDの指を折ろうとするような暴行を加えるなど(被告人は公判廷においてかかる暴行の存在を否定するが、Bが、本件に先立つ自身の公判手続において、被告人の指示でペットボトルを準備し たペットボトルを用いてDの指を折ろうとするような暴行を加えるなど(被告人は公判廷においてかかる暴行の存在を否定するが、Bが、本件に先立つ自身の公判手続において、被告人の指示でペットボトルを準備したことや、被告人がペットボトルを用いてDの指を折ろうとした際に被告人の指示でDを押さえつけたことを供述し(甲96)、Cも公判廷でペットボトルを用いてDの指を反らすため被告人の指示でDを押さえつけた旨を供述していることなどに照らせば、これらに反する被告人の供述は信用できない。)、本件各犯行に主体的かつ直接的に関与している。そして、被告人は、Bの実兄で、A、C及びFとの関係でも現在又は元の雇用主であるなど、共犯者間では最も優位にあり、共犯者らを制止し得る立場にありながらこれを十分に制止せず、また、共犯者が救急に通報するよう提案した際には消極的な態度を示し、結果としてDは苛烈な暴行を受けた末、適切な救命措置を受けることなく命を失うに至っている。さらに、被告人は、本件各犯行後、Eや共犯者らに対して被告人が関与していたことを言わないよう求めるなどの口止め行為にも及んでいる。このような事実経過等に照らせば、被告人は、本件各犯行において、直接 的に暴行に及んだ局面は少なかったとしても、他の共犯者らより優位な立場にあり、同人らに強い影響力を及ぼしつつ、本件各犯行に積極的かつ能動的に関与していたことは明らかである。 以上で検討したところを踏まえれば、本件各犯行における被告人の役割は、被告人に被害者らの捜索を依頼するなど主体的かつ積極的に行動し自らも被害者らに対して強い暴行を加えたAや、被害者らに対し相当に激しい暴行を加えたFと概ね同等で、B及びCよりも重い。 5 一般情状についてみると、被告人は本件各犯行を認めて公判廷において反省の言葉を述べて に対して強い暴行を加えたAや、被害者らに対し相当に激しい暴行を加えたFと概ね同等で、B及びCよりも重い。 5 一般情状についてみると、被告人は本件各犯行を認めて公判廷において反省の言葉を述べており、このことは被告人にとって有利に評価できる。もっとも、被告人は、前記のとおり公判廷において自らの刑事責任を軽く見せるような不合理な弁解を繰り返しており、自らの刑事責任に向き合う姿勢が十分とはいえない。 6 以上で検討したところを基に、被告人の量刑を決める。同種事案の量刑傾向をみると、概ね懲役3年から12年までの範囲に分布し、中間値は懲役8年である。 集団リンチによる傷害致死の事案は、複数の共犯者が関与するもので、被害者に対して一方的に激しい暴行が加えられるのが通常であること、同種事案に、判示第2の犯行で使用された安全靴や竹の棒に比べて危険性が高い刃物や火気等の凶器を危険な用法で使用した事案や、長期間にわたり常習的に同一の被害者に激しい暴行を加えた事案など犯行態様が本件より苛烈なものが相当数存在することを踏まえ、判示第2の犯行の直前に敢行された判示第1の事案の犯情も考慮すると、同種事案における本件の犯情は中程度に位置付けられる。そして、本件の犯情に、既に確定している共犯者3名の判決結果(Aについて懲役8年6月、B及びCについて懲役8年の判決がそれぞれ言い渡されている。)、被告人個別の犯情及び一般情状を考慮すれば、被告人に対し、主文の刑をもって臨むのが相当である。 (求刑:懲役12年、被害者参加人の科刑意見:懲役15年)(弁護人の科刑意見:懲役5年)令和6年12月23日 高知地方裁判所刑事部 裁判長裁判官稲田康史 裁判官大友真紀子 裁判官徳 令和6年12月23日 高知地方裁判所刑事部 裁判長裁判官稲田康史 裁判官大友真紀子 裁判官徳舛純一

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る