平成25年7月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第4584号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成25年4月16日判 決愛知県日進市<以下略>原告マスプロ電工株式会社同訴訟代理人弁護士水野健司同訴訟代理人弁理士足立 勉同岡本武也同補佐人弁理士久納誠司東京都中央区<以下略>被告ユニデン株式会社同訴訟代理人弁理士中山健一同訴訟代理人弁護士達野大輔同補佐人弁理士立花顕治主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成23年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,「受像装置,チューナー,テレビ受像機および再生装置」に関する特許権(特許第4271698号。以下以下以下以下「本件特許権本件特許権本件特許権本件特許権」というというというという。)の特許権者である原告が,被告による別紙物件目録記載の製品(以下以下以下以下「イ号製品号製品号製品号製品」な いしいしいしいし「ト号製品号製品号製品号製品」といいといいといいといい,合わせてわせてわせてわせて「被告製品被告製品被告製品被告製品」というというというという。)。) いしいしいし「ト号製品号製品号製品号製品」といいといいといいといい,合わせてわせてわせてわせて「被告製品被告製品被告製品被告製品」というというというという。)。)。)。)の製造,販売等が本件特許権を侵害すると主張して,被告に対し,民法709条,特許法102条2項に基づき,損害7億6810万円の一部として1億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年2月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提となる事実(末尾に証拠等を付した以外の事実は,被告において明らかに争わない。)(1) 当事者ア原告は,無線及び電気機械器具の製造並びに販売等を目的とする株式会社であり,家庭用テレビ向け地上デジタルチューナーの製造及び販売等を行う。 イ被告は,情報通信機器,音響機器及び家庭電器製品の製造並びに販売等を目的とする株式会社であり,家庭用テレビ向け地上デジタルチューナーの製造及び販売等を行う。 (2) 本件特許権原告は,以下の特許権(本件特許権)を有している。 ア特許番号第4271698号イ発明の名称受像装置,チューナー,テレビ受像機および再生装置ウ原出願日平成17年11月30日出願日平成18年9月22日(特願2006-257288。特願2005-346467の分割出願。甲2)エ登録年月日平成21年3月6日オ特許請求の範囲本件特許権に係る特許請求の範囲,明細書及び図面(以下以下以下以下,合わせてわせてわせてわせて「本件明細書本件明細書本件明細書本件明細書」というというというという。)。)。)。)は別紙特許公報(甲2)のとおりであり,その請求項1 以下以下,合わせてわせてわせてわせて「本件明細書本件明細書本件明細書本件明細書」というというというという。)。)。)。)は別紙特許公報(甲2)のとおりであり,その請求項1,2の発明(以下以下以下以下「本件発明本件発明本件発明本件発明1」「」「」「」「本件発明本件発明本件発明本件発明2」といいといいといいといい,合 わせてわせてわせてわせて「本件発明本件発明本件発明本件発明」というというというという。)。)。)。)の特許請求の範囲は以下のとおりである(甲2)。 「【請求項1】表示装置を接続した状態で用いられる受像装置であって,外部から入力されるアスペクト比16:9の映像を示す映像信号に基づき,該映像信号で示される映像を表示装置に表示させる表示制御手段と,前記表示制御手段による映像の表示方法として,標準サイズによる表示方法,および,該標準サイズの映像におけるX軸,Y軸それぞれを4/3倍に拡大した拡大サイズによる表示方法,のいずれか一方を示す表示サイズを記憶装置に記憶させることにより,映像の表示方法を設定する表示方法設定手段と,前記表示制御手段による映像の表示方法を前記標準サイズによる表示方法または前記拡大サイズによる表示方法へ切り替えるための操作を受け付ける切替操作受付手段と,アスペクト比4:3の映像における左右に画像の存在しない領域である無画部を付加することでアスペクト比16:9の映像にアスペクト変換された付加映像,であることを識別するための識別信号が,外部から入力される映像信号に付加されている場合に,該映像信号で示される映像が前記付加映像であると判定する,といった処理を映像信号が入力されている間繰り返し実行する付加映 識別するための識別信号が,外部から入力される映像信号に付加されている場合に,該映像信号で示される映像が前記付加映像であると判定する,といった処理を映像信号が入力されている間繰り返し実行する付加映像判定手段と,当該受像装置に接続される表示装置の有する表示エリアのアスペクト比を記憶する表示エリア記憶手段と,を備え,前記表示方法設定手段は,前記表示エリア記憶手段により4:3のアスペクト比が記憶され,かつ,前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合に,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで前記拡大サイズによる表示方法を設定して,また,前記切替 操作受付手段により受け付けられた操作に応じた表示方法を示す表示サイズを記憶部に記憶させることでその表示サイズによる表示方法を設定して,以降,再度設定変更をするまでの間その設定状態を継続しており,前記表示制御手段は,前記表示方法設定手段により記憶装置に記憶された表示サイズで示される表示方法により,映像信号で示される映像を前記表示装置に表示させる,ように構成されており,さらに,前記表示方法設定手段は,前記付加映像判定手段により付加映像でないと判定された場合,表示方法の設定変更を行わない一方,前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで表示方法を前記拡大サイズに設定変更して,前記切替操作受付手段は,前記付加映像判定手段による判定が行われた後に,前記表示制御手段による映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付けて,また,前記表示方法設定手段は,前記表示エリア記憶手段により4:3のアスペクト比が記憶されている場合に,前記切替操作受付手段によ よる映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付けて,また,前記表示方法設定手段は,前記表示エリア記憶手段により4:3のアスペクト比が記憶されている場合に,前記切替操作受付手段により受け付けられた操作に応じた表示方法を示す表示サイズを記憶部に記憶させることでその表示サイズによる表示方法を設定することを特徴とする受像装置。 【請求項2】前記表示方法設定手段は,前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合に,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで前記拡大サイズによる表示方法を設定して,また,前記付加映像判定手段により付加映像でないと判定された場合に,前記切替操作受 付手段により操作が受け付けられたら,その操作に応じた表示方法を示す表示サイズを記憶部に記憶させることでその表示サイズによる表示方法を設定することを特徴とする請求項1に記載の受像装置。」(3) 構成要件の分説ア本件発明1について本件発明1を構成要件に分説すると,以下のとおりである。 A 表示装置を接続した状態で用いられる受像装置であって,B 外部から入力されるアスペクト比16:9の映像を示す映像信号に基づき,該映像信号で示される映像を表示装置に表示させる表示制御手段と,C 前記表示制御手段による映像の表示方法として,標準サイズによる表示方法,および,該標準サイズの映像におけるX軸,Y軸それぞれを4/3倍に拡大した拡大サイズによる表示方法,のいずれか一方を示す表示サイズを記憶装置に記憶させることにより,映像の表示方法を設定する表示方法設定手段と,D 前記表示制御手段による映像の表示方法を前記標準サイズによる表示方法または前記拡大サイズによる表示方法へ切り替えるための操作を 憶させることにより,映像の表示方法を設定する表示方法設定手段と,D 前記表示制御手段による映像の表示方法を前記標準サイズによる表示方法または前記拡大サイズによる表示方法へ切り替えるための操作を受け付ける切替操作受付手段と,E アスペクト比4:3の映像における左右に画像の存在しない領域である無画部を付加することでアスペクト比16:9の映像にアスペクト変換された付加映像,であることを識別するための識別信号が,外部から入力される映像信号に付加されている場合に,該映像信号で示される映像が前記付加映像であると判定する,といった処理を映像信号が入力されている間繰り返し実行する付加映像判定手段と,F 当該受像装置に接続される表示装置の有する表示エリアのアスペクト 比を記憶する表示エリア記憶手段と,を備え,G 前記表示方法設定手段は,前記表示エリア記憶手段により4:3のアスペクト比が記憶され,かつ,前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合に,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで前記拡大サイズによる表示方法を設定して,また,前記切替操作受付手段により受け付けられた操作に応じた表示方法を示す表示サイズを記憶部に記憶させることでその表示サイズによる表示方法を設定して,以降,再度設定変更をするまでの間その設定状態を継続しており,H 前記表示制御手段は,前記表示方法設定手段により記憶装置に記憶された表示サイズで示される表示方法により,映像信号で示される映像を前記表示装置に表示させる,ように構成されており,さらに,I 前記表示方法設定手段は,前記付加映像判定手段により付加映像でないと判定された場合,表示方法の設定変更を行わない一方,前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合 さらに,I 前記表示方法設定手段は,前記付加映像判定手段により付加映像でないと判定された場合,表示方法の設定変更を行わない一方,前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで表示方法を前記拡大サイズに設定変更して,J 前記切替操作受付手段は,前記付加映像判定手段による判定が行われた後に,前記表示制御手段による映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付けて,また,K 前記表示方法設定手段は,前記表示エリア記憶手段により4:3のアスペクト比が記憶されている場合に,前記切替操作受付手段により受け付けられた操作に応じた表示方法を示す表示サイズを記憶部に記憶させることでその表示サイズによる表示方法を設定する ことを特徴とする受像装置。 イ本件発明2について本件発明2の構成要件は,本件発明1の構成要件に次の構成要件が加わる。 L 前記表示方法設定手段は,前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合に,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで前記拡大サイズによる表示方法を設定して,また,前記付加映像判定手段により付加映像でないと判定された場合に,前記切替操作受付手段により操作が受け付けられたら,その操作に応じた表示方法を示す表示サイズを記憶部に記憶させることでその表示サイズによる表示方法を設定する(4) 被告の行為アイ号製品被告は,平成20年5月1日(販売開始)から平成22年7月(販売終了)まで,別紙物件目録記載(1)のイ号製品(製品番号:DT30)を製造し,販売し,販売の申出をしていた(弁論の全趣旨)。 イロ号製品被告は,平成19年12月10日(販売開始) 月(販売終了)まで,別紙物件目録記載(1)のイ号製品(製品番号:DT30)を製造し,販売し,販売の申出をしていた(弁論の全趣旨)。 イロ号製品被告は,平成19年12月10日(販売開始)から平成24年1月(販売終了)まで,別紙物件目録記載(2)のロ号製品(製品番号:DT300)を製造し,販売し,販売の申出をしていた(弁論の全趣旨)。 ウハ号製品被告は,平成20年6月20日(販売開始)から平成23年5月(販売終了)まで,別紙物件目録記載(3)のハ号製品(製品番号:DTH110)を製造し,販売し,販売の申出をしていた(弁論の全趣旨)。 エニ号製品被告は,平成20年6月10日(販売開始)から平成22年12月(販 売終了)まで,別紙物件目録記載(4)のニ号製品(製品番号:DT80)を製造し,販売し,販売の申出をしていた(弁論の全趣旨)。 オホ号製品被告は,平成21年6月5日(販売開始)から平成23年7月(販売終了)まで,別紙物件目録記載(5)のホ号製品(製品番号:DTH10)を製造し,販売し,販売の申出をしていた(弁論の全趣旨)。 カヘ号製品被告は,平成21年10月5日(販売開始)から平成23年8月(販売終了)まで,別紙物件目録記載(6)のヘ号製品(製品番号:DTH200)を製造し,販売し,販売の申出をしていた(弁論の全趣旨)。 キト号製品被告は,平成22年4月15日(販売開始)から現在に至るまで,別紙物件目録記載(7)のト号製品(製品番号:DTH11)を製造し,販売し,販売の申出をしている。 (5) 被告製品の構成アイ号製品イ号製品は,以下の構成を有する。 a イ号製品は,地上デジタル信号を受信する地上デジタルチューナーである。 b イ号製 している。 (5) 被告製品の構成アイ号製品イ号製品は,以下の構成を有する。 a イ号製品は,地上デジタル信号を受信する地上デジタルチューナーである。 b イ号製品は,地上デジタル用アンテナにアンテナケーブルを介して接続され,その地上デジタル用アンテナが受信したテレビ映像信号を入力する。 c イ号製品は,4:3画面の標準テレビにケーブルを介して接続可能であり,地上デジタル用アンテナで受信したテレビ映像信号を4:3画面の標準テレビに表示する。 d イ号製品は,地上デジタル用アンテナから「元の映像」として,「は じめからアスペクト比16:9で生成された映像」の信号(以下以下以下以下「真正16 16:9信号信号信号信号」というというというという。)。)。)。)又は「左右に帯の入ったアスペクト比16:9の映像」の信号(以下以下以下以下「帯入帯入帯入帯入16 16:9信号信号信号信号」というというというという。)。)。)。)を入力して,その映像信号で示されるテレビ映像を4:3画面の標準テレビに表示することができる。 e イ号製品は,「元の映像」として,「Aspect_ratio_information」(以下以下以下以下「ARI」「ARI」「ARI」「ARI」というというというという。)。)。)。)が「4:3表示」であることを示すコード番号「2」の信号(以下以下以下以下「ARI「ARI「ARI「ARI4:3信号信号信号信号」というというというという。)。)。)。)の付加されていない帯入16:9信号を入力した場合,4:3画面の標準テレビに表示する方法として,上下左右に帯を入れて表示 3信号信号信号信号」というというというという。)。)。)。)の付加されていない帯入16:9信号を入力した場合,4:3画面の標準テレビに表示する方法として,上下左右に帯を入れて表示する方法(以下以下以下以下「標準表示方法標準表示方法標準表示方法標準表示方法」というというというという。)。)。)。)と,画面いっぱいに表示する方法(以下以下以下以下「拡大表示方法拡大表示方法拡大表示方法拡大表示方法」というというというという。)。)。)。)とが可能である(甲5,弁論の全趣旨)。 f イ号製品は,付属のリモコンで初期設定が可能であり,16:9画面のワイドテレビを接続した場合,「接続テレビ設定」を「ワイドテレビ」に設定することが可能であり,4:3画面の標準テレビを接続した場合,「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」又は「4:3パンスキャン」に設定することが可能である。 g イ号製品は,付属のリモコンを操作することにより「接続テレビ設定」を切り替えることが可能であり,4:3画面の標準テレビを接続した場合,「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」及び「4:3パンスキャン」の一方から他方へ設定を切り替えることができる。 h イ号製品は,「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」とした状態で,ARI4:3信号が付加された帯入16:9信号を入力すると,拡大表示方法により表示する(甲5,弁論の全趣旨)。 i イ号製品は,「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」とした状態で,入力信号がARI4:3信号の付加されていない帯入16:9 信号からARI4:3信号の付加された帯入16:9信号に変化すると,入力する映像信号の変化に応じて,それまで標準表示方法により表示していた画面 RI4:3信号の付加されていない帯入16:9 信号からARI4:3信号の付加された帯入16:9信号に変化すると,入力する映像信号の変化に応じて,それまで標準表示方法により表示していた画面を拡大表示方法により表示する(甲5,弁論の全趣旨)。 j イ号製品は,「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」とした状態で,ARI4:3信号の付加されていない帯入16:9信号を入力すると標準表示方法により表示する(甲5,弁論の全趣旨)。 k イ号製品は,「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」とした状態で,ARI4:3信号の付加されていない帯入16:9信号を入力すると標準表示方法により表示し,さらに,リモコン操作により「接続テレビ設定」を「4:3パンスキャン」に切り替えると拡大表示方法により表示する(甲5,弁論の全趣旨)。 l イ号製品の「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」又は「4:3パンスキャン」に設定した場合,チャンネルを変更した後,元のチャンネルに戻しても当該「4:3レターボックス」又は「4:3パンスキャン」の設定は維持される。 また,イ号製品の「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」又は「4:3パンスキャン」に設定した場合,イ号製品の電源を一旦切った後,再度電源を入れても,当該「4:3レターボックス」又は「4:3パンスキャン」の設定は維持される。 イロ号製品ないしト号製品ロ号製品ないしト号製品は,イ号製品の構成a~lをいずれも備える(甲7ないし12,弁論の全趣旨)。 (6) イ号製品と本件発明1との対比甲5及び弁論の全趣旨によれば,以下の点は容易に認められ,被告も強く争っていない。 ア構成要件Aについて イ号製品の構成cにいう「標準テレビ」が構成要件Aの「表示装置」に 対比甲5及び弁論の全趣旨によれば,以下の点は容易に認められ,被告も強く争っていない。 ア構成要件Aについて イ号製品の構成cにいう「標準テレビ」が構成要件Aの「表示装置」に該当し,イ号製品の構成aにいう「地上デジタルチューナー」が構成要件Aの「受像装置」に該当する。 したがって,イ号製品は,構成要件Aを充足する。 イ構成要件Bについてイ号製品の構成dにいう16:9画面の映像信号(「真正16:9信号」及び「帯入16:9信号」)が構成要件Bの「アスペクト比16:9の映像を示す映像信号」に該当し,これらの映像信号は外部から入力される。イ号製品の構成cにいう「標準テレビ」が構成要件Bの「表示装置」に該当する。 イ号製品の装置構成は,大きく分けて,制御部(CPU),記憶装置(各種レジスタやメモリなどを広く含む),入出力回路,チューナー部などから構成されるところ,イ号製品の制御部(CPU)は,外部から入力される16:9映像(「アスペクト比16:9の映像を示す映像信号」)に基づき,該映像信号で示される映像をテレビ(「表示装置」)に表示させる制御を実行するから,かかる処理を実行するイ号製品の制御部(CPU)は,構成要件Bの「表示制御手段」に相当する。 したがって,イ号製品は,構成要件Bを充足する。 ウ構成要件Cについてイ号製品の構成eにいう「拡大表示方法」及び「標準表示方法」が,構成要件Cの「拡大サイズによる表示方法」及び「標準サイズによる表示方法」にそれぞれ該当する。 イ号製品の制御部(CPU)は,映像の表示方法として,上下又は上下左右に帯が入った表示方法(「標準サイズによる表示方法」)及び画面いっぱいの表示方法(「該標準サイズの映像におけるX軸,Y軸それぞれを4/3倍に拡大した PU)は,映像の表示方法として,上下又は上下左右に帯が入った表示方法(「標準サイズによる表示方法」)及び画面いっぱいの表示方法(「該標準サイズの映像におけるX軸,Y軸それぞれを4/3倍に拡大した拡大サイズによる表示方法」),のいずれか一方を 示す表示サイズを記憶装置に記憶させることにより,映像の表示方法を設定する処理を実行するから,かかる処理を実行するイ号製品の制御部(CPU)は,構成要件Cの「表示方法設定手段」に相当する。 したがって,イ号製品は,構成要件Cを充足する。 エ構成要件Dについてイ号製品の構成gにいう「「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」及び「4:3パンスキャン」の一方から他方へ設定を切り替えることができる」構成が,構成要件Dの「表示制御手段による映像の表示方法を……切り替えるための操作を受け付ける」構成に該当する。 イ号製品の制御部(CPU)は,上下又は上下左右に帯が入った表示方法(「標準サイズによる表示方法」)又は画面いっぱいの表示方法(「拡大サイズによる表示方法」)についてそれぞれ「4:3レターボックス」又は「4:3パンスキャン」への切替操作を受け付けており,「前記標準サイズによる表示方法または前記拡大サイズによる表示方法へ切り替えるための操作を受け付ける」処理を実行するから,かかる処理を実行する制御部(CPU)は,構成要件Dの「切替操作受付手段」に相当する。 したがって,イ号製品は,構成要件Dを充足する。 オ構成要件Eについてイ号製品が構成要件Eにいう「識別信号」に基づいて判定する「付加映像判定手段」を有するかは争いがあり,イ号製品が構成要件Eを充足するかは争いがある。 カ構成要件Fについてイ号製品の構成fにいう,16:9画面のワイドテレビの設定及び いて判定する「付加映像判定手段」を有するかは争いがあり,イ号製品が構成要件Eを充足するかは争いがある。 カ構成要件Fについてイ号製品の構成fにいう,16:9画面のワイドテレビの設定及び4:3画面の標準テレビの設定が,構成要件Fの「表示装置の有する表示エリアのアスペクト比を記憶する」構成に該当する。 イ号製品の記憶装置は,イ号製品に接続されるテレビ(「表示装置」) の有する表示エリアのアスペクト比を記憶するから,かかるデータを記憶する記憶装置は,構成要件Fの「表示エリア記憶手段」に相当する。 したがって,イ号製品は,構成要件Fを充足する。 キ構成要件Gについてイ号製品の構成hにいう「4:3レターボックス」の設定,「拡大表示方法」が,構成要件Gの「4:3のアスペクト比が記憶」,「拡大サイズによる表示方法」にそれぞれ該当する。 イ号製品の構成lにいう「4:3レターボックス」又は「4:3パンスキャン」の設定が維持される構成が,構成要件Gの「設定状態を継続」する構成に該当する。 しかし,イ号製品が構成要件Eの「付加映像判定手段」を有するかは争いがあるから,イ号製品が「前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合に……拡大サイズによる表示方法を設定」するかは争いがある。 したがって,イ号製品が構成要件Gを充足するかは争いがある。 ク構成要件Hについてイ号製品の構成eにいう「拡大表示方法」及び「標準表示方法」が,構成要件Hの「表示サイズで示される表示方法」に該当し,イ号製品のCPUは構成要件Bの「表示制御手段」,構成要件Cの「表示方法設定手段」にそれぞれ該当するから,イ号製品は,表示方法設定手段により記憶装置に記憶された表示サイズで示される表示方法により,映像信号で示さ Uは構成要件Bの「表示制御手段」,構成要件Cの「表示方法設定手段」にそれぞれ該当するから,イ号製品は,表示方法設定手段により記憶装置に記憶された表示サイズで示される表示方法により,映像信号で示される映像を表示装置に表示する構成を有している。 したがって,イ号製品は,構成要件Hを充足する。 ケ構成要件Iについてイ号製品が構成要件Eの「付加映像判定手段」を有するかは争いがあるから,イ号製品が構成要件Iを充足するかも争いがある。 コ構成要件Jについてイ号製品が構成要件Eの「付加映像判定手段」を有するかは争いがあるし,「付加映像判定手段による判定が行われた後に,前記表示制御手段による映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付け」るかも争いがあるから,イ号製品が構成要件Jを充足するかは争いがある。 サ構成要件Kについて映像の表示方法を設定するイ号製品の制御部(CPU)は,構成要件Cの「表示方法設定手段」に相当する。 上記カのとおり,イ号製品は,表示エリア記憶手段で4:3のアスペクト比を記憶する。 イ号製品の構成gにいう「「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」及び「4:3パンスキャン」の一方から他方へ設定を切り替えることができる」構成が,構成要件Kの「操作」に該当する。 イ号製品の構成eにいう「拡大表示方法」及び「標準表示方法」が,構成要件Kの「受け付けられた操作に応じた表示方法」に該当する。 イ号製品は,切替操作受付手段により受け付けられた操作に応じた表示サイズを記憶部に記憶させることでその表示サイズによる表示方法を設定する。 したがって,イ号製品は,構成要件Kを充足する。 (7) イ号製品と本件発明2との対比イ号製品が構成要件Eの「付加映像判定手段」を有 せることでその表示サイズによる表示方法を設定する。 したがって,イ号製品は,構成要件Kを充足する。 (7) イ号製品と本件発明2との対比イ号製品が構成要件Eの「付加映像判定手段」を有するかは争いがあるから,イ号製品が構成要件Lを充足するかも争いがある。 (8) ロ号製品ないしト号製品と本件発明との対比ロ号製品ないしト号製品についても,構成要件AないしD,F,H,Kの充足性については争いがなく,構成要件E,G,I,J,Lの充足性については争いがある。 3 主な争点(1) 構成要件E充足性(争点1)(2) 構成要件J充足性(争点2)(3) 損害(争点3)第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1(構成要件E充足性)について(原告の主張)(1) 本件発明における「識別信号」の意義本件発明における「識別信号」とは,構成要件Eに定義されるとおり「アスペクト比4:3の映像における左右に画像の存在しない領域である無画部を付加することでアスペクト比16:9の映像にアスペクト変換された付加映像,であることを識別するための」信号である。「識別信号」は「付加映像,であることを識別するための」信号であり,厳密な意味で付加映像でないことまでも排除しなければならないものではない。 (2) ARI4:3信号が「識別信号」に当たること本件発明の「識別信号」としてどの信号を選択するかについては,複数の可能性が考えられるところではあるが,例えば,ARIは,元の映像のアスペクト比を示しているため,これが「4:3」であることは,元の映像が4:3映像であることを示している。そのため,例えば,このARI4:3信号を本件発明の「識別信号」として使用することが可能である。 (3) 被告指摘信号 め,これが「4:3」であることは,元の映像が4:3映像であることを示している。そのため,例えば,このARI4:3信号を本件発明の「識別信号」として使用することが可能である。 (3) 被告指摘信号が例外的なものであること被告は,真の16:9映像であってもARIが「4:3」に設定されている場合(以下以下以下以下「被告指摘信号告指摘信号告指摘信号告指摘信号」というというというという。)。)。)。)が「放送大学の番組」や「NHK教育の一部の番組」にあると主張するが,原告代理人が弁護士会を通じて被告指摘信号についての照会を行った結果,放送大学学園からは「なお,本来の映像が16:9で制作した番組は,「Aspect_ratio_information」を 「2」として放送していません。」とする回答が得られた(甲42の1)。 原告が,平成24年9月5日~9月13日,名古屋地区の5つの放送局(NHK教育テレビ,NHK総合テレビ,東海テレビ,中京テレビ,CBCテレビ)について調査した結果,被告指摘信号は,116時間41分中,2分25秒(NHK教育のアニメ「忍たま乱太郎」のオープニング及びエンディング)だけであり(甲45),平成24年10月3日及び同月11日の時点では,「忍たま乱太郎」のオープニング及びエンディングのARIの値は16:9であり,被告指摘信号は確認されていない状態となった(甲46)。 日本放送協会(NHK)の回答書(甲48)によれば,「番組長10分間のうち,本編物語部分7分30秒間についてアスペクト比4:3で制作したものを,アップコンバートして16:9としたものであることから,4:3モニターをお持ちの方が本編部分を望ましい表示でごらんいただけるよう,「Aspect_ratio_informat :3で制作したものを,アップコンバートして16:9としたものであることから,4:3モニターをお持ちの方が本編部分を望ましい表示でごらんいただけるよう,「Aspect_ratio_information」を「2」として放送しました。」,アニメ「忍たま乱太郎」は10分間を全体としてみて「当該番組の元の映像のアスペクト比は4:3という認識です。」と述べており,被告が指摘するような元の映像のアスペクト比が16:9である部分(2分25秒)については無視できる程度のものであることを示唆している。 以上の調査結果から,被告指摘信号の存在が予定されていない例外的な映像信号であることは明らかというべきである。 被告が指摘するのは,ARIBの標準規格に従っておらず通常では存在しないことが想定されている映像信号であり,このような例外的な映像信号が存在することをもって,本件発明にいう「識別信号」に相当しないと解釈するのは,あまりにも硬直的であり,本件出願当時の技術常識から外れている。 ARIB標準規格において,本来の16:9映像は「①16:9の番組1」に含まれるべきものであり,「②16:9の番組2」は,「4:3番組 にサイドパネルを付加した贋16:9番組の場合」を予定していると解釈すべきものである。 したがって,ARI4:3信号は本件発明にいう「識別信号」に相当する。 (4) 当業者の常識本件発明の付加映像判定手段では,付加映像を識別するための識別信号が問題になっており,かかる識別信号は,出願当時の当業者の常識に照らせば,ARIB標準規格にいうARI4:3信号であることが明らかである。 (5) イ号製品と本件発明1との対比アイ号製品の構成要件E充足性イ号製品の構成hにいう「ARI4:3信号」が「識別信号 ARIB標準規格にいうARI4:3信号であることが明らかである。 (5) イ号製品と本件発明1との対比アイ号製品の構成要件E充足性イ号製品の構成hにいう「ARI4:3信号」が「識別信号」に,「帯入16:9信号」が「付加映像」に該当する。 イ号製品の構成hにより,イ号製品はARI4:3信号が付加された帯入16:9信号を入力すると拡大表示方法により表示する処理を行っており,ARI4:3信号が付加された帯入16:9信号であることを判定している。かかる判定処理が構成要件Eの「前記付加映像であることを判定」する処理に該当する。 さらにイ号製品の構成iにより,イ号製品は,入力する映像信号の変化に応じて,それまで標準表示方法により表示していた画面を拡大表示方法により表示する処理を行っており,入力される信号が帯入16:9信号であることの判定を繰り返し行っている。かかる繰り返し実行される判定の処理が,構成要件Eの「繰り返し実行」処理に該当する。 イ号製品の制御部(CPU)は,ARI4:3信号が付加されている場合に,該映像信号で示される映像が帯入16:9信号であると判定する,といった処理を映像信号が入力されている間繰り返し実行しており,かかる処理を実行する制御部(CPU)は,本件発明の「付加映像判定手段」に相当する。 したがって,イ号製品は,構成要件Eを充足する。 イイ号製品の構成要件G充足性イ号製品の構成hにいう「4:3レターボックス」の設定,「ARI4:3信号が付加された帯入16:9信号を入力」した場合,「拡大表示方法」が,構成要件Gの「4:3のアスペクト比が記憶」,「付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合」,「拡大サイズによる表示方法」にそれぞれ該当する。 またイ号製品の構 「拡大表示方法」が,構成要件Gの「4:3のアスペクト比が記憶」,「付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合」,「拡大サイズによる表示方法」にそれぞれ該当する。 またイ号製品の構成lにいう「4:3レターボックス」又は「4:3パンスキャン」の設定が維持される構成が,構成要件Gの「設定状態を維持」する構成に該当する。 かかる処理を実行するイ号製品の制御部(CPU)は,「表示方法設定手段」に相当する。 したがって,イ号製品は,構成要件Gを充足する。 ウイ号製品の構成要件I充足性イ号製品の構成jにいう「ARI4:3信号の付加されていない帯入16:9信号を入力」した場合の処理が,構成要件Iの「付加映像でないと判定された場合,表示方法の設定変更を行わない」処理に該当する。 イ号製品の構成iにいう,「入力信号がARI4:3信号の付加されていない帯入16:9信号からARI4:3信号の付加された帯入16:9信号に変化」した場合の処理が,構成要件Iの「表示方法を前記拡大サイズに設定変更」する処理に該当する。 したがって,イ号製品は,構成要件Iを充足する。 (6) イ号製品と本件発明2との対比イ号製品の構成hにいう「ARI4:3信号が付加された帯入16:9信号を入力すると,拡大表示方法により表示する」ための処理が,構成要件Lの「拡大サイズによる表示方法の設定」に該当する。 イ号製品の構成gにいう「「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」及び「4:3パンスキャン」の一方から他方へ設定を切り替えることができる」構成が,構成要件Lの「操作」に該当する。 イ号製品の構成kにいう「リモコン操作により「接続テレビ設定」を「4:3パンスキャン」に切り替えると拡大表示方法により表示する」構成 ることができる」構成が,構成要件Lの「操作」に該当する。 イ号製品の構成kにいう「リモコン操作により「接続テレビ設定」を「4:3パンスキャン」に切り替えると拡大表示方法により表示する」構成が,構成要件Lの「その表示サイズによる表示方法を設定する」構成に該当する。 したがって,イ号製品は,構成要件Lを充足する。 (7) ロ号製品ないしト号製品においても同様である。 (被告の主張)(1) 本件発明における「識別信号」の意義「識別」とは,「(1)みわけること,(2)人または動物が,質的または量的に異なる二つの刺激を区別しうること。弁別。」とされる(広辞苑第5版)。つまり,「付加映像,であることを識別する」のなら,それによって,「アスペクト比4:3の映像における左右に画像の存在しない領域である無画部を付加することでアスペクト比16:9の映像にアスペクト変換された」映像なのか,そうでないのかが区別できなくてはならない。 これに対して,原告の主張する「識別信号」では,付加映像と判断された映像の中に,本当に付加映像であるものと,実際には付加映像ではないものの両方が混在する可能性があるというのである。このような曖昧な結論が生じるのに,原告の主張する信号が「付加映像,であることを識別する」信号であるというのは,明らかにその文言に反する解釈である。なお,本件明細書の「特許請求の範囲」,「発明の詳細な説明」,「図面の簡単な説明」及び「図面」のいずれにも,「識別する」の文言につき辞書的意味と異なる解釈をすべきことを述べた記載は存在しない。 原告の主張する信号が「識別信号」であるならば,たとえ現実には全ての 放送信号に識別信号が含まれているわけではない,という場合であっても,そのうち識別信号が含まれた放送信号 在しない。 原告の主張する信号が「識別信号」であるならば,たとえ現実には全ての 放送信号に識別信号が含まれているわけではない,という場合であっても,そのうち識別信号が含まれた放送信号については付加映像であるか否かの区別ないし識別ができなければならず,それができないのであれば,それは「識別信号」と呼べるものではない。 (2) ARI4:3信号が「識別信号」に当たらないこと以下のとおり,ARI4:3信号の有無によって,「アスペクト比4:3の映像における左右に画像の存在しない領域である無画部を付加することでアスペクト比16:9の映像にアスペクト変換された付加映像」であるか否か識別することは不可能であるから,ARI4:3信号は本件発明の「識別信号」に当たらない。 まず前提として,ARIの値を「16:9」を示すものにするか,あるいは「4:3」を示すものにするかは,放送信号を送出する側(放送局など)によって,自由に設定することが可能なものである。 このために,付加映像について,本来であればARIを「4:3」を示すようにするのが望ましいのに「16:9」を示すように設定される,という状況が生じうるのである。 しかし,このことは同時に,以下のような状況も生じることを意味する。 すなわち,元の映像がアスペクト比16:9の映像であって,映像の両端にも実画像が存在する(付加映像ではない)にもかかわらず,ARIを「4:3」を示すように設定されて映像が放送される場合である。 このような場合,原告の主張によれば「識別信号あり」と判断されることになるが,該映像信号は付加映像ではない。すなわち,ARI4:3信号をもって,付加映像であるか否かを識別することはできないのである。 ARIB標準規格(甲49,乙9)においても, 判断されることになるが,該映像信号は付加映像ではない。すなわち,ARI4:3信号をもって,付加映像であるか否かを識別することはできないのである。 ARIB標準規格(甲49,乙9)においても,ARI4:3信号が付加される「16:9の番組2」は「Dの値がBの値の3/4に設定されている場合(4:3番組にサイドパネルを付加した贋16:9番組の場合を含 む)」,「グレー部分は実映像がある場合と黒パネルの場合があることを示している」と説明されており,両端まで実映像がある16:9映像でありながらARIが4:3を示す場合が十分に想定されている。 原告は,「16:9の番組2」は「4:3番組にサイドパネルを付加した贋16:9番組」を予定していると解釈すべきなどと主張するが,そのような独自の解釈をすることに何ら正当な理由はない。アスペクト比16:9の映像であっても,アスペクト比4:3の受像機で視聴する場合には中央部分が映されるようにアスペクト比4:3映像であるかのような設定で放送する,ということは一般的に考えられるところであり,ARIB規格の「②16:9の番組2」もこれを想定したものである。その後アスペクト比16:9の受像機が一般的になるにつれ,このような配慮が不要となりつつあるに過ぎない。 (3) 実例上記のように,元の映像がアスペクト比16:9の映像であって,映像の両端にも実画像が存在する(付加映像ではない)にもかかわらず,ARIを「4:3」として設定されて映像が放送される例としては,以下のようなものが存在する。 ・放送大学の番組・NHK教育の一部の番組これらの放送番組においては,元の映像はアスペクト比16:9の映像であって,映像の両端にも実画像が存在するので,ワイドテレビで視聴した場合には,画面いっぱい 番組・NHK教育の一部の番組これらの放送番組においては,元の映像はアスペクト比16:9の映像であって,映像の両端にも実画像が存在するので,ワイドテレビで視聴した場合には,画面いっぱいに実画像が表示されるが,4:3のアスペクト比の受像装置で視聴した場合は,ARIを「4:3」として設定されているために,中央部分のみが切り出されて表示される。 (4) 当業者の常識ARIB標準規格を用いることは常識であっても,ARIB標準規格に含 まれる各種の信号の中でとりわけARI4:3信号を「識別信号」として使用するという規定はどこにもない。 かえって,ARIB「映像アスペクト識別信号」(乙17)をみれば,本件出願当時,当業者には「識別信号」が全く違う意味で理解されていたことが明白である。 原告の主張するような,ARI4:3信号をもって「識別信号」と考えるといったような技術常識は,本件出願当時,存在しなかったのである。 (5) 被告製品の構成要件E充足性被告製品は,ARIが「4:3」であるか否かを映像出力の際に参照しているが,ARI4:3信号は「識別信号」に当たらないから,被告製品は,「アスペクト比4:3の映像における左右に画像の存在しない領域である無画部を付加することでアスペクト比16:9の映像にアスペクト変換された付加映像,であることを識別するための識別信号が,外部から入力される映像信号に付加されている場合に,該映像信号で示される映像が前記付加映像であると判定する,といった処理を映像信号が入力されている間繰り返し実行する付加映像判定手段」という構成要件Eを充足するものではない。 2 争点2(構成要件J充足性)について(原告の主張)(1) 構成要件Jの解釈について被告は,構成要件 し実行する付加映像判定手段」という構成要件Eを充足するものではない。 2 争点2(構成要件J充足性)について(原告の主張)(1) 構成要件Jの解釈について被告は,構成要件Jの切替操作受付手段につき,付加映像であるか否か判定した後に切替操作を受け付けるというプロセスが存在しなければならないとし,被告製品はARIが4:3と判定された後は切替操作を受け付けないことから構成要件Jを充足しないと主張する。 しかし,構成要件Jは,識別信号ありの付加映像について,いわゆる自動拡大した後も切替操作を受け付けることを規定しているが,切替操作により標準サイズに切り替えることまでは規定しているものではない。 本件発明は,識別信号のある付加映像については識別信号を判定して,拡大サイズに表示方法を設定するが,識別信号のない付加映像については識別信号による判定ができないため,ユーザによる切替操作を受け付けて表示方法を拡大サイズに設定するというものである。 そしてこれらの処理は,「映像信号が入力されている間繰り返し実行」(構成要件E)される。 そのため仮に被告の指摘を前提として,識別信号ありの付加映像を拡大サイズに設定した後,切替操作により標準サイズに戻しても,さらに次の瞬間,識別信号であることを判定して拡大サイズに設定されることになる。 したがって,識別信号ありの付加映像の場合,表示方法を拡大サイズに設定した後は切替操作を受け付けたとしても,標準サイズに設定するなどということまで構成要件Jは規定していない。 無画部で囲まれた画面(額縁画面)が表示されることを解消するという本件発明の目的(本件明細書の【0006】)や課題(【0019】)からも,付加映像につき拡大サイズで表示された画面をさらに標準サイ 無画部で囲まれた画面(額縁画面)が表示されることを解消するという本件発明の目的(本件明細書の【0006】)や課題(【0019】)からも,付加映像につき拡大サイズで表示された画面をさらに標準サイズに戻すなどということは予定されていない。 また,識別信号(ARI4:3信号)ありの付加映像を入力した場合に拡大サイズで表示する処理はARIB標準規格(甲49,乙9)により望ましいとされているため,自動拡大された画面をさらに標準サイズに切り換える処理を行うことは,ARIBの主旨にも反するものであり,そのような処理を当業者が予定して特許請求の範囲を規定するなどということは考えられない。 (2) 審決を踏まえた解釈ア本件発明1における,識別信号が付加された映像信号を入力した場合の動作については,被告が請求人となった無効審判請求事件(無効2011-800083)の審決において以下のとおり判断されている(甲43・ 24,25頁。なお審決がいう構成要件1I,1E……は本件発明1の構成要件I,E,…にそれぞれ対応する。)。原告は,かかる審決の解釈に従う。 「[ケース1]-識別信号が付加されている間入力される映像信号に「アスペクト比4:3の映像における左右に画像の存在しない領域である無画部を付加することでアスペクト比16:9の映像にアスペクト変換された付加映像,であることを識別するための識別信号」が付加されている間は,1Eの「付加映像判定手段」での判定が繰り返し実行されて,付加映像であると判定され,1Iの「前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させ」,1G前段「前記表示方法設定手段は,前記表示エリア記憶手段により4:3のアスペクト比が記憶され 段により付加映像であると判定された場合,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させ」,1G前段「前記表示方法設定手段は,前記表示エリア記憶手段により4:3のアスペクト比が記憶され,かつ,前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合に,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで前記拡大サイズによる表示方法を設定し」,1I「前記表示方法設定手段は,前記付加映像判定手段により付加映像でないと判定された場合,表示方法の設定変更を行わない一方,前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで表示方法を前記拡大サイズに設定変更して」このとき,1Dで特定される「前記表示制御手段による映像の表示方法を前記標準サイズによる表示方法または前記拡大サイズによる表示方法へ切り替えるための操作を受け付ける切替操作受付手段」は,1Jで「前記切替操作受付手段は,前記付加映像判定手段による判定が 行われた後に,前記表示制御手段による映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付けて」,1G後段「前記切替操作受付手段により受け付けられた操作に応じた表示方法を示す表示サイズを記憶部に記憶させることでその表示サイズによる表示方法を設定して」で,「標準サイズ」を設定したとしても,「映像信号が入力されている間繰り返し実行」される次の「付加映像判定手段」における判定で,再び「付加映像であると判定」され(1E),「前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで前記拡大サイズによる表示方法を設定して」(1G前段)となる。 すなわち,識別信号が付加されている間は,「切替操作受付手段」による操作に関わ 大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで前記拡大サイズによる表示方法を設定して」(1G前段)となる。 すなわち,識別信号が付加されている間は,「切替操作受付手段」による操作に関わらず,判定手段による拡大設定がなされる(強制的に自動拡大される)。」イ原告の解釈この点につき,これまで原告は,上記[ケース1]の場合,①切替操作自体は受け付けるがその操作に関わらず最終的に拡大設定がなされると説明しており,これを,②そもそも切替操作自体を受けることなく拡大設定がなされると説明したとしても,本件特許発明の動作に何らかの本質的な違いが生ずるわけではない。 これは操作を「受け付ける」という解釈が,単に物理的な操作を受け付けるのか,電気的信号として受け付ける他,又は標準サイズに切り替える処理をも受け付けるのか,多義的であることにも関連する。 すなわちここで議論すべきことは,切替操作を「受け付ける」か否かではなく,審決の結論が示すとおり,「識別信号が付加されている間は,「切替操作受付手段」による操作に関わらず,判定手段による拡大設定がなされる(強制的に自動拡大される)。」という点にある。 したがって,原告は,切替操作受付手段について,審決がいうとおり, 「識別信号が付加されている間は,「切替操作受付手段」による操作に関わらず,判定手段による拡大設定がなされる(強制的に自動拡大される)」と解釈すべきものと考える。 (3) 被告製品の構成要件J充足性アイ号製品の構成gにいう「「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」及び「4:3パンスキャン」の一方から他方へ設定を切り替えることができる」構成が,構成要件Jの「映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付け」る処理に該当する。 イ号製品の構成 ーボックス」及び「4:3パンスキャン」の一方から他方へ設定を切り替えることができる」構成が,構成要件Jの「映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付け」る処理に該当する。 イ号製品の構成kにより,識別信号(ARI4:3信号)の判定後でもリモコンによる切替操作を受け付ける。 したがって,イ号製品は,構成要件Jを充足する。 イロ号製品ないしト号製品においても同様である。 ウ審決を踏まえた解釈に基づく対比被告製品(イ号製品乃至ト号製品)は,ARI4:3信号の付加された付加映像を入力している場合,拡大サイズにより表示がなされ(自動拡大),標準サイズに切り替えようとしても,標準サイズの表示に切り替わることはない(この事実自体に争いはないと思われる。)。 したがって,16:9信号についてARIが「4:3」であることが「識別信号」であるとの前提に立てば,「識別信号が付加されている間は,「切替操作受付手段」による操作に関わらず,判定手段による拡大設定がなされる(強制的に自動拡大される)」。 したがって,被告製品は切替操作受付手段に関連する構成要件(構成要件J,Kなど)を充足する。 (被告の主張)(1) 構成要件I,Jでは,「付加映像判定手段」により「付加映像」であるか否かを判断し,付加映像でなければ表示方法の設定変更を行わず,付加映 像であれば「表示方法を前記拡大サイズに設定変更」し,そして,その後,いずれの場合においても,付加映像か否かにかかわらず,「切替操作受付手段」において,「映像の表示方法を切り替えるための操作」を受け付けるというプロセスをその構成要件としている。 (2) 被告製品における処理被告製品では,元映像がアスペクト比16:9であってARIが4:3を示す場合は,(無画部が えるための操作」を受け付けるというプロセスをその構成要件としている。 (2) 被告製品における処理被告製品では,元映像がアスペクト比16:9であってARIが4:3を示す場合は,(無画部が付加されているか否かにかかわらず)アスペクト比4:3の映像信号と判定し,アスペクト比4:3の画面に相当する部分を拡大表示する。 このように,アスペクト比4:3の映像信号であると判定され拡大表示されることとなった場合,被告製品においては,それ以上に画面の切替操作(例えば,パンスキャンのように画面中央部を拡大するといった操作)をユーザが行うことはできない。アスペクト比4:3の映像信号をアスペクト比4:3の画面に表示すると判断された場合であるのだから,それ以上の拡大等の必要はないからである。 すなわち,上記の場合,被告製品に,本件発明で要求されている,「付加映像判定手段による判定が行われた後に」,付加映像の有無に拘らず,「表示方法を切り替えるための操作を受け付け」るというプロセスは存在しないのである。 したがって,被告製品は構成要件Jを充足しない。 (3) 原告の主位的解釈についてア原告は,切替操作を受け付けたとしても,識別信号による映像判定は繰り返し行われるので,ユーザが切り替えても再度判定が行われ,結局また拡大表示がされるから,最終的には拡大になる,と主張する。 しかし,第一に,たとえ原告の主張を前提としたとしても,「原告の特許においては最終的に拡大になる」という点と,「被告製品ではユーザに よる切替操作を受け付けるプロセスがない」という点は,事実としては全く異なったものである。原告は,本件発明ではユーザの切替操作は受け付けるが,その結果は結局拡大というものに落ち着くという趣旨の主張であろうが,被告製品では プロセスがない」という点は,事実としては全く異なったものである。原告は,本件発明ではユーザの切替操作は受け付けるが,その結果は結局拡大というものに落ち着くという趣旨の主張であろうが,被告製品ではそもそもユーザの切替操作を受け付けないのである。 イ第二に,原告のこの主張は,本件明細書の【0032】【0072】【0076】の記載や,拒絶査定不服審判において原告自身が提出した平成20年11月14日付け上申書(乙16)の記載に反するものである。 上記上申書において,原告は,「リモコン装置3や入力装置14が任意のタイミングで物理的な操作を受け付けた以降,その操作を有効な命令として受け付ける処理(以降「操作を受け付ける」という)を,付加映像であるか否かの判定の後に行います。」,「このS426において操作を受け付ける処理は,図8の記載からも明らかなように,S410による判定結果に拘わらず行われます。」と述べ,操作を受け付けるというのは操作を有効な命令として受け付ける処理,すなわち単にユーザから指示があったことを認識するというだけでなく,それに従った有効な処理を行う意味であることを明らかにしている。また,原告は,この「操作を受け付ける」処理は,本件明細書の図8におけるS410での判定,すなわち付加映像であるか否かの判定(すなわち,拡大表示するか,標準表示をするか)にかかわらず行われると明言している。このS410による判定結果にかかわらず操作を受け付ける処理は行われるというのが上申書における原告の主張なのであるから,識別信号が付加されていた場合にも操作を受け付ける(ユーザが標準サイズを希望すれば標準サイズに切り替える)ことが予定されていることは明らかである。 (4) 原告の「審決を踏まえた解釈」について審決(甲43)で認定されたのは 作を受け付ける(ユーザが標準サイズを希望すれば標準サイズに切り替える)ことが予定されていることは明らかである。 (4) 原告の「審決を踏まえた解釈」について審決(甲43)で認定されたのは,構成要件Jで「前記切替操作受付手段は,前記付加映像判定手段による判定が行われた後に,前記表示制御手段に よる映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付け」た上で,しかしその後の「付加映像判定手段」により結局拡大表示がなされる,というものである。すなわち,映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付けるというプロセスは,当然に本件発明1に必須の要素として認定されているものである。 原告は,この審決のとおり解釈するといいつつ,「原告の解釈」として,本件発明においては「切替操作自体を受けることがない」かのような審決と異なる解釈を行う原告の議論は全く首尾一貫しないものである。 いずれにしても,本件発明においては「付加映像判定手段による判定が行われた後に,前記表示制御手段による映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付け」ると明確に記載されている以上,「そもそも切替操作自体を受けることなく拡大設定がなされる」といった主張が成立する余地がないことは明らかである。 3 争点3(損害)について(原告の主張)(1) イ号製品,ハ号製品,ニ号製品,ホ号製品及びト号製品被告は,遅くとも平成21年3月6日より現在に至るまで,イ号製品,ハ号製品,ニ号製品,ホ号製品及びト号製品を,平均単価6982円で少なくとも19万3200台,製造・販売しており,売上総額は13億4900万円を下らない。このうち被告が得た利益は23.6%を下らないから,特許法102条2項により原告が請求できる金額は,3億1870万円を下らない。 (2 製造・販売しており,売上総額は13億4900万円を下らない。このうち被告が得た利益は23.6%を下らないから,特許法102条2項により原告が請求できる金額は,3億1870万円を下らない。 (2) ロ号製品及びヘ号製品被告は,遅くとも平成21年3月6日より現在に至るまで,ロ号製品及びヘ号製品を,平均単価1万4318円で少なくとも11万6500台,製造・販売しており,売上総額は16億6800万円を下らない。このうち被 告が得た利益は25.1%を下らないから,特許法102条2項により原告が請求できる金額は,4億1940万円を下らない。 (3) 弁護士・弁理士費用原告は事案の性質・内容から弁護士・弁理士である代理人らに本件訴訟を委任せざるを得ず,弁護士・弁理士費用の支払を約した。その結果,少なくとも3000万円の弁護士・弁理士費用相当額の損害を受けた。 (4) よって,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,7億6810万円の一部として1億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年2月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 (被告の主張)否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(構成要件E充足性)について(1) 「識別信号」の意義について原告は,ARI4:3信号が構成要件Eにいう「識別信号」に当たることを前提に被告製品は構成要件Eを充足すると主張するのに対して,被告は,ARI4:3信号は「識別信号」に当たらないと主張する。 そこで,まず,本件発明における「識別信号」の意義について検討する。 ア本件発明1の【特許請求の範囲】の記載によれば,構成要件Eにいう「識別信号」とは,「アスペクト比4:3の映像における左右 そこで,まず,本件発明における「識別信号」の意義について検討する。 ア本件発明1の【特許請求の範囲】の記載によれば,構成要件Eにいう「識別信号」とは,「アスペクト比4:3の映像における左右に画像の存在しない領域である無画部を付加することでアスペクト比16:9の映像にアスペクト変換された付加映像,であることを識別するための」信号であり,それ以外に「識別信号」を定義した箇所はない。 この【特許請求の範囲】における定義からいっても,「識別信号」とは,付加映像と,付加映像でない真の16:9映像とを含むアスペクト比1 6:9の映像の中から「付加映像であること」を「識別」できるものでなければならないと解される。 イ次に,本件明細書を見ると,以下の記載がある(段落【0043】以下は,実施例に関する記載である。)。 「映像信号は,はじめからアスペクト比16:9で生成された映像を示すものだけでなく,無画部を付加することでアスペクト比を16:9とした付加映像を示すものとしても放送されている。このような映像信号を放送する放送局では,付加映像を示す映像信号を,そのようなアスペクト変換をした映像を示すものであることを識別するための識別信号が含まれた信号として放送することが一般的である。」(【0016】。下線部は強調のため裁判所で付した。以下同じ。)「なお,アスペクト比16:9にアスペクト変換された映像を示す映像信号は,本来付加映像を示すものであるにも拘わらず,何らかの事情により識別信号が含まれないまま放送されていることも多い。このような場合,識別信号の有無で付加映像であるか否かを判定する構成では,付加映像であるにも拘わらず,はじめからアスペクト比16:9で生成された映像であると判定してしまい,無画部で囲まれた映像を表示装置に な場合,識別信号の有無で付加映像であるか否かを判定する構成では,付加映像であるにも拘わらず,はじめからアスペクト比16:9で生成された映像であると判定してしまい,無画部で囲まれた映像を表示装置に表示させてしまう恐れがある。」(【0019】)「第4の発明によれば,映像信号に識別信号が含まれているか否かによって,その映像信号で示される映像が付加映像であるか否かを判定することができる。」(【0036】)「また,上述したS402で,アスペクト比が16:9であると判定された場合(S402:NO),外部から入力した映像信号で示される映像が,画像の存在しない領域(以降,「無画部」という)をアスペクト比4:3の映像に付加してなる付加映像であるか否かがチェックされる(S410)。通常,無画部を付加することでアスペクト比を16:9とした付加 映像を示す映像信号は,そのようにアスペクト変換をした映像を示すものであることを識別するための識別信号が含まれた状態で放送される。そのため,このS410では,外部から入力した映像信号に,識別信号が含まれているか否かにより,その映像信号で示される映像が付加映像であるか否かがチェックされる。」(【0091】)「また,表示データ読み出し処理においては,外部から入力した映像信号に識別信号が含まれているか否かによって(図8のS410),その映像信号で示される映像が付加映像であるか否かを判定することができる。」(【0101】)「アスペクト比4:3から16:9にアスペクト変換された映像を示す映像信号は,付加映像を示すものであり,通常は上述した識別信号が含まれた状態で放送される。しかし,現状では,付加映像を示すものであるにも拘わらず,その映像信号が識別信号を含まない状態で放送されていることがある。こ 映像を示すものであり,通常は上述した識別信号が含まれた状態で放送される。しかし,現状では,付加映像を示すものであるにも拘わらず,その映像信号が識別信号を含まない状態で放送されていることがある。このような場合,識別信号の有無だけで付加映像であるか否かを判定する第2実施形態の構成では,付加映像であるにも拘わらず,はじめからアスペクト比16:9で生成された映像であると判定してしまい,無画部で囲まれた映像を表示装置2に表示させてしまう恐れがある。」(【0108】)ウ以上の本件明細書によれば,「識別信号」は,本来,付加映像には付加され,他方,付加映像でない真の16:9映像には付加されないで放送されることが想定されているものと認められる(本件明細書の段落【0016】【0091】)。 そして,本件明細書には,例外的に,付加映像であるにもかかわらず,識別信号が付加されないで放送されることがあることが開示されている(【0019】【0108】)。 しかし,付加映像でない真の16:9映像に識別信号が付加されて放送 されることについては,本件明細書には開示も示唆もない。 エ真の16:9映像に識別信号が付加されて放送される場合,本件発明によれば「付加映像であると判定」され,自動拡大されて左右のサイドパネル部分の映像が表示されなくなってしまう。このような結果は,「このような映像[判決注:付加映像]であれば,拡大サイズによる表示方法で表示したとしても,画像の存在する領域が表示エリアからはみ出してしまうということがない。そのため,自動的に拡大サイズで表示した場合であっても,ユーザが標準サイズによる表示方法で表示すべきと考える可能性が低いといえるため,拡大サイズによる表示方法で表示しても大きな問題はない。むしろ,無用な混乱を避ける,ユー イズで表示した場合であっても,ユーザが標準サイズによる表示方法で表示すべきと考える可能性が低いといえるため,拡大サイズによる表示方法で表示しても大きな問題はない。むしろ,無用な混乱を避ける,ユーザによる無用な操作負担を軽減する,といった観点からは好適といえる。」(本件明細書の【0100】)という,本件発明において「付加映像であると判定」された場合に自動拡大する構成(構成要件G,I)を採用した趣旨にも反するものといえる。 オそうすると,本件発明にいう「識別信号」は,少なくとも,付加映像にのみ付加され,付加映像でない真の16:9映像には付加されないような信号であることが必要であると解される。 そのような信号であれば,当該信号が付加されていれば付加映像であると判定することができるから,(付加映像であるにもかかわらず当該信号が付されない場合があることにより)付加映像か付加映像でないかを厳密に100パーセント判定することができなくても,「付加映像,であることを識別」する信号であるといえる。 (2) ARI4:3信号の「識別信号」該当性についてア社団法人電波産業会の策定した,本件出願当時の「ARIBデジタル放送用受信装置標準規格(望ましい仕様)4.4版」(甲49。平成17年9月29日改定のもの。以下以下以下以下「ARIB「ARIB「ARIB「ARIB標準規格標準規格標準規格標準規格」というというというという。)によれば, ARI4:3信号は,以下のような信号であることが認められる。 ARIのコード番号「2」(ARI4:3信号)は「4:3表示」を意味し,コード番号「3」は「16:9表示」を意味する(甲49・20頁表6-3「表6-1及び表6-2におけるMPEG-2符号化パラメータの各コード番号の意 2」(ARI4:3信号)は「4:3表示」を意味し,コード番号「3」は「16:9表示」を意味する(甲49・20頁表6-3「表6-1及び表6-2におけるMPEG-2符号化パラメータの各コード番号の意味」,26頁「表6-5,表6-6及び表6-7におけるMPEG2符号化パラメータの各コード番号の意味」)。 Sequencedisplayextensionがある場合,ARIはdisplay_vertical_size(C)とdisplay_horizontal_size(D)で指定される領域のアスペクト比を表すことがMPEG規格で規定されている(甲49・22頁表6-2注3,24頁表6-5注1,25頁表6-6注1,26頁表6-7注1)。 16:9映像のうちARI4:3信号が付加される「②16:9の番組2」とは,「Dの値[判決注:SequenceDisplayextension のdisplay_horizontal_sizeの値]がBの値[判決注:SequenceHeaderのhorizontal_size_valueの値]の3/4に設定されている場合(4:3番組にサイドパネルを付加した贋16:9番組の場合を含む)」であり,「4:3モニターには両サイドパネルを捨て,480×720のフル画面表示」,「16:9モニターにはそのまま表示する。グレー部分[判決注:図示されたサイドパネル部分]は実映像がある場合と黒パネルの場合があることを示している」と説明されている(甲49・28頁図6-1「アスペクト比4:3/16:9のモニターにおける望ましい表示形式」)。 すなわち,ARIB標準規格によれば,ARI4:3信号が付加される「②16:9の番組2」は,両サイドパネル部分に「実映像がある場合」を含み,「4:3番組にサイドパネルを付加し 表示形式」)。 すなわち,ARIB標準規格によれば,ARI4:3信号が付加される「②16:9の番組2」は,両サイドパネル部分に「実映像がある場合」を含み,「4:3番組にサイドパネルを付加した贋16:9番組の場合を含む」が,それに限定されてはいないものと想定されているのであり,本件発明でいう「付加映像」に当たらない映像にもARI4:3信号が付さ れる場合があることが想定されているといえる。 イこの点,原告は,本来の16:9映像は「①16:9の番組1」に含まれるべきものであり,「②16:9の番組2」は,「4:3番組にサイドパネルを付加した贋16:9番組の場合」(のみ)を予定していると解釈すべきものである,と主張するが,ARIB標準規格における説明文言に反する解釈であって採用できない。 ARIB規格が想定する両サイドパネル部分に「実映像がある場合」が,どのような場合を想定しているのかは明らかでないが,甲40の1・2,甲42の1・2によれば,サイドパネルに「放送局名のロゴ表示」や「黒以外の本番組に無関係な映像」を付すことがあることがうかがわれ,このような場合を想定している可能性もある(この場合,「画像の存在しない領域である無画部」を付加しているわけではないから,本件発明の「付加映像」には該当しない。)。 また,被告は,「アスペクト比16:9の映像であっても,アスペクト比4:3の受像機で視聴する場合には中央部分が映されるようにアスペクト比4:3映像であるかのような設定で放送する,ということは一般的に考えられるところであり,ARIB規格の「②16:9の番組2」もこれを想定したものである。」と主張しているところ,これを否定するに足りる証拠もない。 ウ実際,NHK教育テレビ(現「Eテレ」。甲40の1)で放送されてい ,ARIB規格の「②16:9の番組2」もこれを想定したものである。」と主張しているところ,これを否定するに足りる証拠もない。 ウ実際,NHK教育テレビ(現「Eテレ」。甲40の1)で放送されていたアニメ「忍たま乱太郎」のオープニング及びエンディングの映像は,客観的には真の16:9映像であるにもかかわらず,少なくとも平成24年9月5日まで,ARI4:3信号を付加して放送されていた(甲45,48,乙15・21頁)。 エ以上によれば,ARI4:3信号は真の16:9映像にも付加して放送される可能性があり,ARI4:3信号の有無によって付加映像であるこ とを識別することはできない場合があるから,ARI4:3信号が構成要件Eにいう「識別信号」に当たるとはいえない。 この点,原告は,客観的には真の16:9映像であるにもかかわらず,ARI4:3信号を付加して放送されているような映像信号(被告指摘信号)はその存在が予定されていない例外的な映像信号であるから,被告指摘信号の存在を理由にARI4:3信号が「識別信号」に当たることを否定することはできない,といった趣旨の主張をする。 しかし,「付加映像,であること」を「識別」することが本件発明にいう「識別信号」の定義であり,本件明細書の記載を参酌してもやはりそのような性質は必須と判断されるのであるから,付加映像であることを識別することができないARI4:3信号をもって「識別信号」に当たるということはできない。このことは,本件出願以降の特定の時期における被告指摘信号の有無,割合によって左右されるものではない。原告の主張は採用できない。 オ本件出願当時,当業者の間で「識別信号」という用語がARI4:3信号を指すものとして周知されていたような証拠もない。 ARIB標準規格には,A るものではない。原告の主張は採用できない。 オ本件出願当時,当業者の間で「識別信号」という用語がARI4:3信号を指すものとして周知されていたような証拠もない。 ARIB標準規格には,ARI4:3信号を「識別信号」と呼んでいる箇所は存在せず,かえって,「ARIB映像アスペクト識別信号技術資料1.0版」(平成12年6月20日策定,平成23年9月16日廃止。乙17,18)では,ARI4:3信号とは別の信号を「映像アスペクト識別信号」と呼んでいる。 (3) イ号製品と本件発明1との対比アイ号製品の構成要件E充足性原告は,イ号製品にARI4:3信号の付加された帯入16:9信号が入力された場合の動作を立証しているが,それ以外に「識別信号」たり得る信号が入力された場合のイ号製品の動作を立証していない(甲5や甲1 9の2に記載されている「識別信号」とは,「ARI4:3信号」を意味する。甲6,甲21の2,弁論の全趣旨)。 ARI4:3信号は構成要件Eにいう「識別信号」に当たらないから,イ号製品が「識別信号が,外部から入力される映像信号に付加されている場合に,該映像信号で示される映像が前記付加映像であると判定する,といった処理を……実行する付加映像判定手段」を有していることを認めるに足りる証拠はない。 かえって,イ号製品は,真の16:9映像であっても,ARI4:3信号が付加されている場合には自動拡大するのであるから(乙11),ARI4:3信号と別の,付加映像のみに付されるような信号(識別信号)の有無による判定を行っているものではなく,ARI4:3信号のみによって自動拡大の有無を判定しているように推測される。 したがって,イ号製品は構成要件Eを充足しない。 イイ号製品が「付加映像判定手段」を有している証 いるものではなく,ARI4:3信号のみによって自動拡大の有無を判定しているように推測される。 したがって,イ号製品は構成要件Eを充足しない。 イイ号製品が「付加映像判定手段」を有している証拠はないから,イ号製品は,付加映像判定手段による判定を前提とする構成要件G,I,Jを充足しない。 (4) イ号製品と本件発明2との対比上記のとおり,イ号製品は構成要件E,G,I,Jを充足しないし,イ号製品が「付加映像判定手段」を有している証拠はないから,イ号製品は,付加映像判定手段による判定を前提とする構成要件Lも充足しない。 (5) 同様に,ロ号製品ないしト号製品も,構成要件E,G,I,J,Lを充足しない。 2 構成要件Jについて(1) 仮にARI4:3信号が「識別信号」に当たるとしても,当裁判所は,被告製品は構成要件Jを充足しないと判断する。 その理由は,以下のとおりである。 (2) 「付加映像判定手段による判定が行われた後」の意義についてア構成要件Jによれば,切替操作受付手段は,「前記付加映像判定手段による判定が行われた後」に,表示制御手段による映像の表示方法を切り替えるための操作を「受け付け」なければならない。 ここでいう「前記付加映像判定手段による判定が行われた後」とは,「付加映像であると判定された後又は付加映像でないと判定された後のいずれか」を意味する(具体的には,付加映像でないと判定された後に切替操作を「受け付け」ればよく,付加映像であると判定された後の動作は構成要件Jの範囲外である)のか,「付加映像であると判定された後及び付加映像でないと判定された後の双方」を意味する(付加映像でないと判定された後だけではなく,付加映像と判定された後にも切替操作を「受け付け」なければならない)のかにつ 加映像であると判定された後及び付加映像でないと判定された後の双方」を意味する(付加映像でないと判定された後だけではなく,付加映像と判定された後にも切替操作を「受け付け」なければならない)のかについて検討する。 イ本件特許権は,拒絶査定(甲51の7)後,拒絶査定不服審判の審決によって登録されたものである(甲51の12)ところ,原告は,拒絶査定不服審判において提出した平成20年11月14日付け上申書(甲51の11,乙16)において,以下のとおり主張していた。 「このS426において操作を受け付ける処理は,図8の記載からも明らかなように,S410による判定結果に拘わらず行われます。このことを明示したのが,請求項1における「前記切替操作受付手段は,前記付加映像判定手段による判定が行われた後に,前記表示制御手段による映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付けて」との記載です。」(乙16・2頁9~14行)「「操作を受け付ける処理」であるS426は,付加映像ではないという判定がなされた場合に限らず,付加映像であるという判定がなされた場合にも行われており,このような実施例は,付加映像であるか否かの判定結果に拘わらず操作が受け付けられる請求項1の記載と対応しています。」 (同頁36~39行)ウ上申書の上記記載によれば,本件発明の構成要件Jにいう「前記付加映像判定手段による判定が行われた後に」とは,「付加映像であると判定された後及び付加映像でないと判定された後との双方」を意味するものであることが明らかである(乙15・16頁参照)。 したがって,被告製品が構成要件Jを充足するといえるためには,識別信号により付加映像でないと判断された後に切替操作を「受け付け」るだけでなく,付加映像であると判定された後にも切替操作を「受け したがって,被告製品が構成要件Jを充足するといえるためには,識別信号により付加映像でないと判断された後に切替操作を「受け付け」るだけでなく,付加映像であると判定された後にも切替操作を「受け付け」なければならない。 (3) 「表示制御手段による映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付けて」の意義についてア構成要件Jにいう「表示制御手段による映像の表示方法を切り替えるための操作」とは,構成要件Dの「前記表示制御手段による映像の表示方法を前記標準サイズによる表示方法または前記拡大サイズによる表示方法へ切り替えるための操作」を指しており,イ号製品の構成gの,付属リモコンにより「接続テレビ設定」の「4:3レターボックス」と「4:3パンスキャン」とを切り替える操作がこれに当たることは実質的に争いがない。 切替操作を「受け付け」るというのが,切替操作に応じて表示方法が実際に切り替えられることまで要するのか,そうでないのかについて検討する。 イ上記(2)イの平成20年11月14日付け上申書(甲51の11,乙16)には,以下の記載がある。 「上述した「切替操作受付手段」について補足しますと,この手段は,本願明細書における段落0057,0058に記載されているように,リモコン装置3や入力装置14によりユーザの命令を入力する手段であり,リモコン装置3や入力装置14が任意のタイミングで物理的な操作を受け付 けた以降,その操作を有効な命令として受け付ける処理(以降「操作を受け付ける」という)を,付加映像であるか否かの判定の後に行います。 具体的にいえば,図8におけるS410が付加映像であるか否かを判定する処理であり,その後に行われるS426が操作を受け付ける処理です。」(乙16・2頁2~9行)ウ上申書の上記記 います。 具体的にいえば,図8におけるS410が付加映像であるか否かを判定する処理であり,その後に行われるS426が操作を受け付ける処理です。」(乙16・2頁2~9行)ウ上申書の上記記載によれば,構成要件Jにいう「操作を受け付ける」とは,物理的な操作を受け付ける(本件明細書の【0088】~【0104】の実施例でいえば,リモコン装置3の表示切替専用ボタン43が押下される)という意味ではなく,「その操作を有効な命令として受け付ける」(上記実施例でいえば,S426の処理において変更指示があったかどうかをチェックする)という意味で用いられていることが明らかである。 この実施例の図8(本件明細書の【0088】の第2実施形態における表示データ読み出しの処理手順)でいうS426の処理は,S410がYesの場合(付加映像であると判定された後)にはS412,S414,S416を経て,S410がNoの場合(付加映像でないと判定された後)にはS418,S420又はS424,S422を経て,付加映像であるか否かの判定結果にかかわらず行われている。 ところで,S426における表示モードの設定が画面表示に反映されるのは,図8でいえばS408,S416又はS422の処理においてである。 S410がNoの場合(付加映像でないと判定された後)には,S426で受け付けた変更指示をS428で設定変更し,標準表示から拡大表示に切り替えた場合にはS402,S410,S418,S424を経てS422で拡大表示による映像が表示される。 拡大表示から標準表示に切り替えた場合には,S428からS402,S410,S418,S420を経てS422で標準表示による映像が表 示される。 他方,S410がYesの場合(付加映像であると判定された 示に切り替えた場合には,S428からS402,S410,S418,S420を経てS422で標準表示による映像が表 示される。 他方,S410がYesの場合(付加映像であると判定された後)には,S412で自動的に拡大表示に設定され,S414を経てS416で拡大表示による映像が表示されている中,S426で標準表示への変更指示を受け付け,S428で標準表示に設定変更したとしても,S402,S410を経てS412で再び拡大表示に再設定され,標準表示による映像表示は一度もされないまま,S416で拡大表示による映像が表示され続けることになる。 すなわち,上記実施例においては,切替操作を「受け付けた」(S426で変更指示の有無をチェックした)としても,実際の映像の表示方法の変更はなされないのである。 そうすると,構成要件Jにいう,切替操作を「受け付け」るとは,「切替操作に応じて映像の表示方法が実際に切り替えられる」ことまでは要しないと解釈するのが相当である。 エこの解釈は,①本件発明1が,構成要件D,G,J,Kで表示方法の切替操作を「受け付け」る「切替操作受付手段」と,構成要件C,G,I,Kで実際の映像の表示方法を「設定」あるいは「設定変更」する「表示方法設定手段」(なお,構成要件G後段,構成要件Kにいう「記憶部」は,構成要件C,構成要件G前段,構成要件H,構成要件Iにいう「記憶装置」と同義と解される。)と,構成要件B,C,Hで映像を表示する「表示制御手段」とを使い分けていること,②ARIB標準規格(甲49)が「②16:9の番組2」を4:3モニターに表示する場合,「両サイドパネルを捨て,480×720のフル画面表示」とすることをデジタル放送用受信装置の「望ましい仕様」としていること(付加映像について標準表示による映 番組2」を4:3モニターに表示する場合,「両サイドパネルを捨て,480×720のフル画面表示」とすることをデジタル放送用受信装置の「望ましい仕様」としていること(付加映像について標準表示による映像を表示させることはARIB標準規格の趣旨に反することとなる。),③本件発明の実施品であると考えられる原告製品も同様の動作 を示すこと(甲47),の3点からも裏付けられる。 ここで,上記①の点をふえんして説明する。 本件発明の構成要件G前段においては,「前記表示方法設定手段は,前記表示エリアの記憶手段により4:3のアスペクト比が記憶され」(構成要件Fにより,これは「当該装置に接続される表示装置の有する表示エリアのアスペクト比」が4:3として記憶されている場合を意味する。),「かつ,前記付加映像判定手段により付加映像であると判定された場合に,前記拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることで前記拡大サイズによる表示方法を設定」する(拡大サイズの自動設定。実施例の【図8】ではS412に相当する。)。 他方,構成要件G後段においては,「前記切替操作受付手段により受け付けられた操作に応じた表示方法を示す表示サイズを記憶部に記憶させることでその表示サイズによる表示方法を設定」する。これは,付加映像判定手段により付加映像であると判定されたか否かにかかわらず(すなわち,付加映像と判定されて拡大サイズが自動設定された場合でも),切替操作を「受け付け」た後,その操作に応じた「設定変更」ができることを意味しているものと解される(付加映像と判定された場合の切替操作受付後の設定変更は,実施例の【図8】でいえば,S412,S414,S416を経た後,S426で切替操作を「受け付け」,S428で「設定変更」する。付加映像でないと判定され 判定された場合の切替操作受付後の設定変更は,実施例の【図8】でいえば,S412,S414,S416を経た後,S426で切替操作を「受け付け」,S428で「設定変更」する。付加映像でないと判定された場合の切替操作受付後の設定変更は,S418,S420又はS424,S422を経た後,S426で切替操作を「受け付け」,S428で「設定変更」する。)。しかし,この段階では,あくまでも切替操作により受け付けられた表示方法が記憶装置に記憶されるという「設定変更」がされるのみであって,表示制御手段による映像の表示方法の変更がされるわけではない。 そして,この切替操作受付後の「設定変更」は,記憶部に記憶され, 「再度設定変更をするまでの間その設定状態が継続」される(構成要件C,構成要件K,構成要件G末尾)。 このとき,付加映像判定手段により付加映像でないと判定された後の切替操作であれば,その後に設定変更が行われないから,切替操作受付手段により「受け付け」られた表示方法に,表示方法設定手段が「設定変更」した後,表示制御手段により「表示」される(構成要件I前段,構成要件H。実施例の【図8】では,S428の後,S402,S410,S418,S420又はS424を経た後のS422)。 しかし,付加映像判定手段によって付加映像であると判定された後の切替操作であれば,切替操作はいったん切替操作受付手段により「受け付け」られ(構成要件J),表示方法設定手段により受け付けられた操作に応じた表示方法が記憶部に記憶されて「設定」され(構成要件K),「再度設定変更をするまでの間その設定状態が継続」する状態になる(構成要件G末尾)ものの,付加映像判定手段による判定が「映像信号が入力されている間繰り返し実行」される(構成要件E)結果,上記設定変更された表 変更をするまでの間その設定状態が継続」する状態になる(構成要件G末尾)ものの,付加映像判定手段による判定が「映像信号が入力されている間繰り返し実行」される(構成要件E)結果,上記設定変更された表示方法による映像が表示制御手段によって表示される前に,再度付加映像判定手段による判定が行われ,表示方法設定手段が「拡大サイズを示す表示サイズを記憶装置に記憶させることによって表示方法を拡大サイズに設定変更」する(構成要件I後段)結果,表示制御手段はこの再設定変更後の拡大サイズによる映像を「表示」する(実施例の【図8】でいえば,最初にS410,S412で拡大サイズが自動設定された後,S414,S416を経てS426で標準サイズへの切替操作を「受け付け」,S428で標準サイズに「設定変更」したとしても,再度S402,S410を経てS412で拡大サイズに再「設定変更」され,S414を経てS416で拡大サイズによる表示がなされ,標準サイズによる表示がなされる瞬間はない。)。 以上のとおり,他の構成要件の解釈との関係でも,切替操作受付手段による切替操作の受付は,「設定変更」がされる前の段階であって,「切替操作に応じて映像の表示方法が実際に切り替えられる」ことまでは要しないものと解される。 オ以上によれば,構成要件Jにいう「操作を受け付ける」とは,物理的な操作を受け付ける(実施例でいえば,リモコン装置3の表示切替専用ボタン43が押下される)という意味ではなく,「操作に応じて映像の表示方法を切り替える」(付加映像であると判定された後に標準サイズに切り替えた場合には,該映像を標準サイズで表示する)という意味でもなく,「その操作を有効な命令として受け付ける」(実施例でいえば,S426の処理において変更指示があったかどうかをチェックする)という り替えた場合には,該映像を標準サイズで表示する)という意味でもなく,「その操作を有効な命令として受け付ける」(実施例でいえば,S426の処理において変更指示があったかどうかをチェックする)という意味に解するのが相当である。 (4) イ号製品と本件発明1との対比ア付加映像でないと判定された後の処理についてイ号製品は,「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」とした状態で,ARI4:3信号の付加されていない帯入16:9信号を入力した場合,上下左右に黒い帯が入った状態(標準表示方法)で表示される(甲5・28頁の写真44)。付属のリモコンにより「接続テレビ設定」を「4:3パンスキャン」に切り替えると,映像の中央部を画面いっぱいに拡大して表示する方法(拡大表示方法)に切り替わる(甲5・29頁の写真46)。 拡大表示方法に切り替わった後,「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」に切り替えると,標準表示方法に切り替わる(弁論の全趣旨)。 すなわち,仮にARI4:3信号が「識別信号」に当たるとした場合,イ号製品は,識別信号なしの帯入16:9映像が入力され,付加映像判定手段により付加映像でないと判定された場合(ARI4:3信号が付加さ れていないと判定された場合),「表示方法を切り替えるための操作を受け付け」て,実際の映像の表示方法も切り替えている。 イ付加映像であると判定された後の処理についてイ号製品は,「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」とした状態で,ARI4:3信号の付加された帯入16:9信号を入力した場合,自動的に,映像の中央部を画面いっぱいに拡大して表示する方法(拡大表示方法)に切り替わる(甲5・27頁の写真42)。 この状態で,付属のリモコンにより「接続テレビ設定」を「4:3レ 力した場合,自動的に,映像の中央部を画面いっぱいに拡大して表示する方法(拡大表示方法)に切り替わる(甲5・27頁の写真42)。 この状態で,付属のリモコンにより「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」に切り替えても,少なくとも映像が標準表示方法に切り替わることはない(乙14,15,弁論の全趣旨)。 映像の表示方法が切り替わらないということは,上記(3)で判断したとおり,切替操作を「受け付ける」(内部的に変更指示の有無をチェックする)ことと矛盾するものではないが,イ号製品において,この場合に切替操作(「接続テレビ設定」を「4:3レターボックス」に切り替える指示)が「受け付け」られている(イ号製品内部で変更指示の有無がチェックされている)ことを認めるに足りる証拠はない(例えば,原告製品では,ズームの状態表示が「ズーム「しない」」から「ズーム中」に切り替わることによって,内部的に「受け付け」られたかどうかを確認可能である。 甲47)。 ウそうすると,仮にARI4:3信号が「識別信号」に当たるとしても,イ号製品は,「前記付加映像判定手段による判定が行われた後」,具体的にはそのうち「付加映像であるという判定の後」(ARI4:3信号が付加されていると判定された場合)に,「前記表示制御手段による映像の表示方法を切り替えるための操作を受け付け」る切替操作受付手段を有しているとは認められないから,イ号製品は構成要件Jを充足しない。 エロ号製品ないしト号製品についても同様である。 (5) 原告の主張について原告は,本件特許権につき被告が申し立てた無効審判の審決(甲43)が,「識別信号が付加されている間は,「切替操作受付手段」による操作に関わらず,判定手段による拡大設定がなされる(強制的に自動拡大される)。」(甲4 権につき被告が申し立てた無効審判の審決(甲43)が,「識別信号が付加されている間は,「切替操作受付手段」による操作に関わらず,判定手段による拡大設定がなされる(強制的に自動拡大される)。」(甲43・25頁)と認定していることから,原告は①切替操作自体は受け付けるがその操作に関わらず最終的に拡大設定がなされると説明していたが,これを,②そもそも切替操作自体を受けることなく拡大設定がなされると説明したとしても,本件特許発明の動作に何らかの本質的な違いが生ずるわけではなく,ここで議論すべきことは,切替操作を「受け付ける」か否かではなく,審決の結論が示すとおり,「識別信号が付加されている間は,「切替操作受付手段」による操作に関わらず,判定手段による拡大設定がなされる(強制的に自動拡大される)。」という点にある,などと主張する。 しかし,審決の上記認定部分は,本件発明1の「作用・動作」について認定した部分であり(甲43・24ないし26頁),本件発明1の構成要件Jの「操作を受け付けて」の解釈を示したものではない。 本件発明1の構成要件Jにいう「前記付加映像判定手段による判定が行われた後」及び「操作を受け付けて」の意義については上記(3)で解釈したとおりであるから,「付加映像であると判定された後」は切替操作を「受け付け」る必要がないことに帰する原告の主張を採用することはできない。 3 結論以上によれば,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属さないから,原告の請求はすべて理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官西村康夫 裁判官森川さつき 京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官西村康夫 裁判官森川さつき 別紙物件目録 (1)イ号製品製品名:地上デジタルチューナー製品番号:DT30(2)ロ号製品製品名:地上・BS・110度CSデジタルハイビジョンチューナー製品番号:DT300(3)ハ号製品製品名:地上デジタルチューナー製品番号:DTH110(4)ニ号製品製品名:地上デジタルチューナー製品番号:DT80(5)ホ号製品製品名:地上デジタルハイビジョンチューナー製品番号:DTH10(6)ヘ号製品製品名:地上・BS・110度CSデジタルハイビジョンチューナー製品番号:DTH200(7)ト号製品製品名:地上デジタルチューナー製品番号:DTH11
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