主文 一被告大阪府立成人病センター総長及び同大阪府立成人病センター事務局長に対する本件訴え並びに被告A、同B、同C、同Dに対する地方自治法二四二条の二第一項四号前段に基づく本件訴えを却下する。 二被告Eは、大阪府に対し、一二五万八三二〇円及びこれに対する平成一〇年四月二四日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。 三原告のその余の請求を棄却する。 四訴訟費用は、被告大阪府立成人病センター総長、同大阪府立成人病センター事務局長、同F、同G、同H、同A、同B、同C、同D、同近畿ビルサービス株式会社に生じた費用は原告の負担とし、その余の費用はこれを一〇分し、その一を同Eの、その余を原告の各負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 被告大阪府立成人病センター総長(以下「被告総長」という。)、同大阪府立成人病センター事務局長(以下「被告事務局長」という。)が、大阪府立成人病センター(以下「成人病センター」という。)と被告近畿ビルサービス株式会社(以下「被告会社」という。)との間の平成九年九月一日付警備及び駐車場業務の委託契約(以下「本件警備契約」という。)及び防災センター防災監視盤監視等業務委託契約(以下「本件防災契約」といい、本件警備契約と併せて「本件各契約」という。)を解除することを怠ることが違法であることを確認する。 2 被告F、同G、同E、同H、同A、同B、同C、同Dは、連帯して、大阪府に対し、二一六八万二五〇〇円及びこれに対する平成一〇年四月二四日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。 3 被告会社は、大阪府に対し、二一六八万二五〇〇円及びこれに対する平成一〇年四月二四日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告らの負担とする 合による金員を支払え。 3 被告会社は、大阪府に対し、二一六八万二五〇〇円及びこれに対する平成一〇年四月二四日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 5 仮執行宣言二本案前の答弁 1 被告総長、同事務局長、同F、同A、同B、同C、同Dに対する訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 三本案の答弁 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 第二当事者の主張一請求原因 1 原告は、大阪府(以下「府」ということがある。)の住民である。 2 大阪府が経営する成人病センターにおいて、平成九年八月一一日、平成九年九月一日から平成一〇年三月三一日までの有人警備業務及び駐車場整備業務(以下「本件警備業務」という。)を委託する契約についての公募型指名競争入札が、同年八月一五日、右期間中の防災センター防災監視盤監視業務(以下「本件防災業務」という。)を委託する契約についての公募型指名競争入札がそれぞれ行われた(右各入札を、以下「本件各入札」という。)。 その際、予定価格のほか、最低制限価格も設定された。 本件警備業務については、被告会社が最低の価格をもって申込みをし、その価格は予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価格以上であったので、被告会社が落札者となり、同年九月一日、成人病センター総長であった被告Gと被告会社の間で本件警備契約が締結された。 本件防災業務については、日経サービス株式会社が最低の価格をもって申込みをしたが、最低制限価格を下回ったために同社は失格し、二番目に低い込みをした被告会社が落札者となり、同年九月一日、同じく被告G豊島と被告会社の間で本件防災契約が締結された。 3 本件各入札において最低制限価格を設定したのは、成人病センターの事務局 し、二番目に低い込みをした被告会社が落札者となり、同年九月一日、同じく被告G豊島と被告会社の間で本件防災契約が締結された。 3 本件各入札において最低制限価格を設定したのは、成人病センターの事務局長であった被告Eであり、本件各契約も、同被告が被告会社との間で総長名でしたものであり、本件各契約に基づく各代金の支払は、会計課長であった被告Hが支出命令をして、同被告が企業出納員及び金銭出納員としてその支出をした。本件警備契約については、その代金として一五〇一万五〇〇〇円が、本件防災契約については、六六六万七五〇〇円が、いずれも平成一〇年四月二四日までに、被告会社に支払われた。 4 違法性成人病センターは、大阪府が経営する地方公営企業であるが、地方公営企業がする契約においても、地方公営企業法四〇条の特則を除くほかは、地方自治法(以下「法」という。)の規定が適用される(地方公営企業法二条二項、六条)。 ところで、法二三四条三項、地方自治法施行令(以下「施行令」という。)一六七条の一〇第二項、一六七条の一三によれば、指名競争入札により契約を締結しようとする場合、右契約が「工事又は製造の請負の契約」であって、かつ、「当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるとき」に限り、あらかじめ最低制限価格を設けて、予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価格以上の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもって申込みをした者を落札者とすることができ、右要件がないときは、入札に当たって最低制限価格を設けることができないものとされている。 本件各契約は、いずれも「工事又は製造の請負の契約」に当たらないし、また、本件各入札の際、契約の内容に適合した履行を確保するため特に最低制限価格を設ける必要があるともいえなかった。 ところが、事務局長 各契約は、いずれも「工事又は製造の請負の契約」に当たらないし、また、本件各入札の際、契約の内容に適合した履行を確保するため特に最低制限価格を設ける必要があるともいえなかった。 ところが、事務局長であった被告Eは、本件各入札において最低制限価格を設定したもので、かような入札手続は違法であり、この違法な入札に基づいてされた本件各契約の締結並びにこれに係る支出命令及び支出はいずれも違法である。 5 怠る事実の違法確認被告総長は、本件各契約の締結につき知事から委任を受け、被告事務局長は専決権限を有しているから、右被告らは、本件各契約を解除する権限を有している。右被告らが本件各契約を解除するのを怠っているのは違法である。 6 被告らの責任(一) 被告F被告Fは大阪府知事であり、本件各契約の締結並びにこれに係る支出命令について、法令上の最終的権限者である。そして、成人病センターに係る契約の締結及び支出命令については、大阪府企業財務規則(乙一、以下「企業財務規則」という。)三条により、知事から総長に委任され、更に、大阪府立成人病センター事務専決実施細目(乙三、以下「本件細目」という。)により、本件各契約の締結については、成人病センター事務局長の被告Eに、支出命令については会計課長の被告Hにそれぞれ専決させるものとされていた。被告Fは、その指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により、被告Eの違法な契約の締結及び被告Hの違法な支出命令を阻止しなかった。 (二) 被告G被告Gは、成人病センター総長として、企業財務規則により、府知事から、本件各契約の締結及び支出命令について権限の委任を受けていたが、これらの権限は、前記のとおり、被告E及び同Hに専決させるものとされていた。被告Gは、指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により、被告Eの違法な契約 結及び支出命令について権限の委任を受けていたが、これらの権限は、前記のとおり、被告E及び同Hに専決させるものとされていた。被告Gは、指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により、被告Eの違法な契約の締結及び同Hの違法な支出命令を阻止しなかった。なお、被告Gは、企業財務規則六七条により法二四三条の二第一項後段のいわゆる予算執行職員から除外されているから、軽過失の場合でも損害賠償責任を負うものと解すべきである。 (三) 被告E被告Eは、成人病センター事務局長として、故意又は重大な過失によって、本件各入札に際して最低制限価格を自ら設定し、被告会社との間で本件各契約を締結したもので、府に対し、地方公営企業法三四条によって準用される法二四三条の二及び企業財務規則六七条による損害賠償責任を負う。 (四) 被告H被告Hは、成人病センター会計課長として、本件各契約に基づく被告会社に対する代金の支払につき、支出命令を発するとともに、企業出納員及び金銭出納員としてその支出を自ら行った。同被告は、地方公営企業法三四条によって準用される法二四三条の二及び企業財務規則六七条による損害賠償責任を負う。 (五) 被告A、同B、同C、同D被告Aは、府環境保健部長として、府の環境保健行政の最高責任者であって、大阪府立病院の業務運営における政策決定に権限を有するとともに、職員を指揮監督すべき立場にあった。被告Bは、平成九年八月当時、同部次長として部長を補佐し、事務部門の実質的な責任者として、大阪府立病院の業務運営における政策決定に権限を有するとともに、職員を指揮監督すべき立場にあった。被告Cは、環境保健総務課課長、同Dは、病院管理室長として、大阪府立病院における経営管理を指導監督するとともに、職員を指揮監督する地位にあった。 右被告らは、府環境保健部幹部職員と き立場にあった。被告Cは、環境保健総務課課長、同Dは、病院管理室長として、大阪府立病院における経営管理を指導監督するとともに、職員を指揮監督する地位にあった。 右被告らは、府環境保健部幹部職員として、大阪府立病院の入札実施に関して政策決定を行うとともに、本件各入札の執行を指導し、成人病センターの職員らを指揮監督することにより、府に損害を与えたことにつき故意又は過失がある。 したがって、右被告らは、法二四二条の二第一項四号前段にいう当該職員に当たるか、そうでなくとも、違法な財務会計行為に加担した者であって、府に対して損害賠償義務を負うところ、府は右義務の履行を求めることを怠っているから、法二四二条一項四号後段の怠る事実の相手方に当たる。 (六) 被告会社被告会社は、昭和四五年に設立されたビルメンテナンス業を営む会社である。被告会社は、本件各入札の執行が違法であることを知りながら又は容易に知り得べき立場であったにもかかわらず、不法な利益を得るため、故意又は過失により、本件各契約を締結した。本件各契約は、法及び施行令に反するものとして無効である。 したがって、被告会社は、府に対して、不法行為に基づく損害賠償責任、又は本件各契約に基づき府から交付を受けた金員の不当利得返還義務を負う。 7 損害本件各契約については、入札手続において違法に最低制限価格が設定されたことにより、公正で自由な競争によって得られるべき契約金額の成立が妨げられた。 大阪府は、これにより、本件警備契約については、被告会社の落札価格(一四三〇万円、消費税及び地方消費税相当額を加えると一五〇一万五〇〇〇円)全額、又は、これと適正価格との差額、あるいは、落札価格一四三〇万円と最低制限価格一三六〇万円との差額相当の損害を、本件防災契約については、被告会社の落札価格(六三五 加えると一五〇一万五〇〇〇円)全額、又は、これと適正価格との差額、あるいは、落札価格一四三〇万円と最低制限価格一三六〇万円との差額相当の損害を、本件防災契約については、被告会社の落札価格(六三五万円、消費税及び地方消費税相当額を加えると六六六万七五〇〇円)全額、又は、これと適正価格との差額、さもなくば、失格した日経サービスの入札金額(五一五万一六〇〇円)との差額相当の損害を被った。 8 原告は、平成九年九月二二日、大阪府監査委員に対し、本件各契約の締結、その代金についての支出命令、支出につき、これらが違法であるとして、監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。これに対し、同監査委員は、同年一一月二〇日、本件監査請求が理由がない旨の監査結果を決定し、それから数日以内に原告に通知した。 9 よって、原告は、法二四二条の二第一項三号に基づき、被告総長と被告事務局長が本件各契約を解除することを怠っていることが違法であることの確認を求めるとともに、同項四号前段に基づき、府に代位して、被告F、同G、同E、同H、同A、同B、同C、同Dに対し(なお、被告A、同B、同C、同Dに対しては予備的に同号後段に基づき)、損害賠償として請求の趣旨2の裁判を求め、被告会社に対しては、同号後段に基づき、損害賠償又は不当利得の返還として請求の趣旨3の裁判を求める。 二本案前の主張 1 被告総長、同事務局長本件各契約に基づく業務の履行並びに代金の支出命令及びこれに基づくすべての支出は、平成一〇年四月二四日をもって終了しているから、右被告両名に対する訴えは、訴えの利益を欠く。 また、契約の解除は、法二四二条一項にいう公金の賦課、徴収、財産の管理等の財務会計行為に当たらない。 2 被告F原告がした本件監査請求は、平成九年一一月二〇日に申立てを棄却する旨の監査 欠く。 また、契約の解除は、法二四二条一項にいう公金の賦課、徴収、財産の管理等の財務会計行為に当たらない。 2 被告F原告がした本件監査請求は、平成九年一一月二〇日に申立てを棄却する旨の監査がされ、それから数日以内に原告に通知された。ところが、被告Fに対する訴えは、平成一〇年九月二二日に提出された請求の追加的併合の申立書によって提起された。したがって、右訴えは、法二四二条の二第二項一号所定の出訴期間の経過後にされたものである。 3 被告A、同B、同C、同D右被告らは、いずれも、本件各契約の締結、本件各契約に基づく代金支払のための支出命令及び支出について、何らの権限を有しないから、法二四二条の二第一項四号前段の当該職員に当たらない。 三本案前の主張に対する認否 1 本案前の主張1のうち、本件各契約に基づく被告会社に対するすべての支出が完了していることは認め、その余は争う。 2 同2は争う。被告Fに対する新訴の出訴期間の遵守については、他の被告らに対する本件訴訟の提起の時に訴えの提起があったものとみなすべきである。 3 同3は争う。 四請求原因に対する認否 1 被告会社以外のその余の被告ら(一) 請求原因1ないし3の事実は認める。 (二) 同4ないし7は争う。なお、成人病センターの総長、事務局長及び会計課長の権限については認める。 (三) 同8の事実は認める。 2 被告会社(一) 請求原因1の事実は不知。 (二) 同2、3の事実は認める。 (三) 同4ないし7は争う。なお、被告Gが原告主張の権限を受任していたこと、同E、同Hが専決権限を有していたことは認める。被告A、同B、同C、同Dが原告主張の職にあったことは認める。被告会社は、本件各契約の締結が違法であるとは認識していなかったし、そのように認識しなかったことについて過失もない。し いたことは認める。被告A、同B、同C、同Dが原告主張の職にあったことは認める。被告会社は、本件各契約の締結が違法であるとは認識していなかったし、そのように認識しなかったことについて過失もない。しかも、本件各契約の効力を無効としなければ最低制限価格に関する法令の趣旨を没却する結果となる何らの事情もない(最三小判昭和六二年五月一九日・民集四一巻四号六八七頁参照)。このような場合に、本件各契約の私法上の効力が無効であるとするならば、被告会社は、不測の損害を被る。 (四) 同8の事実は認める。 五被告らの主張 1 最低制限価格を設定する趣旨は、契約の相手方として不適格な落札者を排除して、契約不履行の事態を避け、契約内容の適正な履行確保を図ることにある。 本件警備契約は、成人病センターの定める警備仕様書に基づいて、(1) 来庁者出入口での警備、(2) 巡回警備、(3) 緊急事態発生時等の処置等の警備業務、案内その他の業務を行うことを目的とし、本件防災契約は、同じく業務仕様書に基づいて、仕様書に記載する監視盤等の点検及び緊急時の通報等の業務を行うことを目的とする。 このように、本件各契約は、労務の提供を主たる内容とする契約であり、契約金額に占める人件費の割合が大きく、物の売買等のように一般的客観的な基準がない。したがって、本件各契約のための入札においては、その性質上、仕事を獲得するために通常の取引価格を逸脱した価格で入札される可能性は否定できない。また、本件各契約の内容たる業務は、火災、盗難、その他事故の発生を未然に防止し、安全な状態を保持するという継続的な仕事の完成を目指し、質の高い業務の履行が求められるものであり、その履行の確保には万全を期す必要がある。更に、履行内容の検査方法は日報等の記入内容の確認等の形式に限られる。本件各業務は、この 続的な仕事の完成を目指し、質の高い業務の履行が求められるものであり、その履行の確保には万全を期す必要がある。更に、履行内容の検査方法は日報等の記入内容の確認等の形式に限られる。本件各業務は、このように、文理上、典型的な「工事又は製造の請負の契約」ではないが、その内容、性質において、不適切な落札業者を排除して、契約内容の適正な履行確保を図る必要性が高い契約であり、この点において「工事又は製造の請負の契約」と異なるところはない。 したがって、本件各契約は、右の契約に準ずる性格を有するものであり、施行令一六七条の一〇第二項の規定を類推適用して、その入札の際には最低制限価格を設定することができる。この解釈は、平成一一年政令第二五号による改正で新設された施行令一六七条の一〇の二の規定の趣旨にも沿う。 2 被告Gは、本件各契約について何ら関与しておらず、事務局長や会計課長の行為を違法と考える何らの事由もなかった。したがって、被告Gにこれらを阻止する義務を怠った過失があるとはいえない。 3 最低制限価格を設定することは大阪府立の他の病院、大阪府の他の部課において従前から行われてきた。また、最低制限価格を設定することにはそれなりの合理性がある。このように長年にわたって一般の官公庁において実行されてきた制度を踏襲して行うことは公務員としてごく自然のことであるし、最低制限価格を設定することが違法か否かは高度の法的判断を求められる事項である。被告Eには過失はない。 4 被告Hは、事務局長である被告Eがした本件各契約の締結に基づき、その出来高に応じて支払をするための支出命令及び支出を行ったにすぎず、単に定められた義務を機械的に履行しただけにすぎない。 5 被告A、同B、同C及び同Dは、府の環境保健部職員であって、成人病センターが行った本件各契約に係る財務会計 支出命令及び支出を行ったにすぎず、単に定められた義務を機械的に履行しただけにすぎない。 5 被告A、同B、同C及び同Dは、府の環境保健部職員であって、成人病センターが行った本件各契約に係る財務会計行為については何らの権限も責任も有していない。 6(一) 被告会社は、普通地方公共団体の専門的知識を有する契約担当者が、本件各入札において、最低制限価格を設定した以上、当然に法、施行令に適合するものと信じていた。被告会社は、本件各契約の締結が違法であるとは認識していなかったし、そのように認識しなかったことについて過失もない。 (二) 被告会社は、本件各契約に係る業務をすべて履行済みである。その結果、被告会社には、本件警備契約については八一万五八〇九円、本件防災契約については六六万五六四五円の欠損が生じており、府は本件各契約の対価に見合う利益を得ているから、損害や損失はない。 理由 一請求原因2、3、8の事実は、全当事者間に争いがなく同1の事実は、被告会社を除くその余の被告らと原告との間で争いがない。また、本案前の主張1のうち、本件各契約に基づく代金の支出命令及びこれに基づくすべての支出が、平成一〇年四月二四日をもって終了したことは、被告総長及び同事務局長と原告との間で争いがない。 二本案前の主張について検討する。 1 被告総長及び同事務局長に対する解除権の行使を怠ることが違法であることの確認を求める訴えについては、本件各契約を解除することは、法二四二条一項所定の財務会計上の行為に該当しないというべきであるし、前記一のとおり、本件各契約に基づく代金の支出も業務の履行もいずれも完了しており、本件各契約の各当事者双方の義務の履行がすべて完了し、もはや契約関係は消滅しているから、かような場合、右訴えは不適法であるというほかない。本 約に基づく代金の支出も業務の履行もいずれも完了しており、本件各契約の各当事者双方の義務の履行がすべて完了し、もはや契約関係は消滅しているから、かような場合、右訴えは不適法であるというほかない。本案前の主張1は理由がある。 2 被告Fに対する訴えについては、監査請求を前置したといえるかどうか、更に、出訴期間を経過したかどうかが問題になる。 まず、甲一、四及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告Fの名こそ挙げていないが、本件各入札の際に最低制限価格が違法に設定され、本件各契約が違法に締結されたことを主張し、その後の支出命令、支出の違法についても本件監査請求において主張していたと解されるから、被告Fに対する訴えについても、監査請求を前置したものというべきである(被告Fの名が挙げられていない点については最二小判平成一〇年七月三日・判例時報一六五二号六五頁参照)。 次に、同被告に対する訴えは、訴えの追加的変更の手続により提起されたものであり、右訴えについて出訴期間が遵守されているかどうかは、原則として、右の訴えの変更時を基準としてこれを決すべきである。 しかしながら、変更後の新請求と変更前の旧請求との間に存する関係から、出訴期間の遵守の点において、変更後の新請求に係る訴えを当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視し得る特段の事情があるときは、例外的に当初の訴えの提起の時に新請求の訴えの提起があったものとみなすことにより、出訴期間の遵守に欠ける点がないと判断すべき場合がある(東京地判平成元年六月二三日・行裁集四〇巻六号六〇三頁、その控訴審東京高判平成五年九月二八日・行裁集四四巻八・九号八二六頁、高松地判平成三年七月一六日・行裁集四二巻六・七号一一二三頁参照)。 これを本件についてみるに、記録上、原告は、平成九年一一月二〇日付けでそれから数日 年九月二八日・行裁集四四巻八・九号八二六頁、高松地判平成三年七月一六日・行裁集四二巻六・七号一一二三頁参照)。 これを本件についてみるに、記録上、原告は、平成九年一一月二〇日付けでそれから数日以内に本件監査請求についての監査結果の通知を受け、その後、同年一二月一四日、まず、被告F以外のその余の被告らを相手方として、本件各契約の代金が未だ支出されていないことを前提に、公金の支出の差止め、本件各契約を解除しないことの違法確認、支出を条件とする府に代位して損害賠償を求める訴訟(前訴)を提起し、その後、平成一〇年四月二四日、右代金の支出がされた後、同年九月二二日、被告Fに対し、右代金が支出されたことを原因として、府に代位して損害賠償を求める訴訟(後訴)を提起したこと、以上が認められる。右事実によれば、前訴の内容と後訴の内容は、その中心的な争点を共通とするのみならず、前訴を提起した時点では、当該公金の支出(及び支出命令)が未だ実際にされていなかったのであるから、前訴やそれに先立つ本件監査請求においては、右公金の支出の手続や支出命令についての具体的な違法事由の主張をすべてすることは、そもそもできなかったもので、その後、実際に支出命令や支出があった後にはじめて、それが可能になり、後訴を提起して右の具体的な違法事由の主張をしたいという関係にある。結局、後訴の請求の内容は、その具体的な要件事実は、本件監査請求及び前訴の時点では未だ発生していなかったもので(支出命令や支出が現実にされた後でなければ、それが違法である旨の主張をすべて具体的にすることは不可能である。)、ただ、監査請求においては、支出負担行為が違法であることを前提に、それから派生する支出命令や支出についてもその防止措置も求め得るもので、その対象範囲を訴訟上の請求のように狭義に解すべきではな る。)、ただ、監査請求においては、支出負担行為が違法であることを前提に、それから派生する支出命令や支出についてもその防止措置も求め得るもので、その対象範囲を訴訟上の請求のように狭義に解すべきではないことから、前記のとおり、監査請求前置の関係からは、その要件に欠けるところはないと判断されたにすぎないという事情がある(なお、原告の請求原因6(一)の主張のうち、支出負担行為である本件各契約の締結についての被告Fの指揮監督責任については、必ずしも、このようにはいえない。しかし、支出命令及び支出の一部については正にかような関係になる。甲三七参照)。このようにみてくると、被告Fに対する後訴は、法二四二条の二第二項の出訴期間の遵寸の関係においては、前訴の提起の時に提起されたものと同視し、出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるものというべきである。本案前の主張2は採用できない。 3 原告の主張によっても、被告A、同B、同C、同Dは、いずれも、府の環境保健部の職員であり、本件各契約の締結並びにその支出命令及び支出に係る如何なる権限も有していないことは明らかである。右被告らに対する法二四二条の二第一項四号前段に基づく訴えは不適法である。本案前の主張3は理由がある。 三甲五ないし一一、一七、一八、二〇ないし二六、二九ないし三一、三三、三七、四二ないし四四、四八、五〇ないし五五、乙1の一ないし一三、乙2の一、丙一、二の1ないし51、被告E、同H各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次のとおり認められる。 1 成人病センターは、大阪府立成人病センター事業条例によって昭和三四年に設立された大阪府の出先機関であり、一日当たり約一五〇〇人の外来患者があり、常時約五〇〇人の入院患者を有する病院施設であり、病院、研究所、調査部、附属看護 成人病センター事業条例によって昭和三四年に設立された大阪府の出先機関であり、一日当たり約一五〇〇人の外来患者があり、常時約五〇〇人の入院患者を有する病院施設であり、病院、研究所、調査部、附属看護学院及び事務局がある。 2 成人病センターに係る契約の締結及び支払の命令(支出命令)については、企業財務規則三条、別表第一により、大阪府知事から総長に委任され、更に、大阪府事務決裁規定(乙二)一九条に基づいて定められた本件細目により、契約予定額が五〇〇〇万円未満の委託料の支出負担行為は事務局長が、支出命令は会計課長がそれぞれ専決することとされている。 3 契約に基づく支払については、企業出納員であり、金銭出納員でもある会計課長が支払命令者の命令により行うものとされている(地方公営企業法二条二項、二八条一項、三項、企業財務規則三条の二、別表第二・第二欄、第四欄)。 4 なお、大阪府立成人病センター処務規程(甲四八)四条によると、総長は、上司の命を受け、成人病センターの業務を掌理し、職員を指揮監督するとされており、事務局長は、上司の命を受け、事務を掌理し、所属職員を指揮する、課長は、上司の命を受け、担任事務を掌理し、所属職員を指揮監督すると定められている。同規程六条によれば、本来総長に属する権限を事務局長、部長、課長らに専決させていたとしても、八条、九条により事後速やかに上司の閲覧に供し、あるいは業務の運営状況等を報告するものとされている。 5 本件警備契約の内容は、成人病センターの定める警備仕様書(甲一一)に基づいて、(1) 来庁者出入口での警備、(2) 巡回警備、(3) 緊急事態発生時等の処置等の警備業務、案内、並びに、駐車場において、自動車や自転車などの車両を順序よく整理し、歩行者や車両の事故防止のため、これらを誘導すること等の業務を平成九年 巡回警備、(3) 緊急事態発生時等の処置等の警備業務、案内、並びに、駐車場において、自動車や自転車などの車両を順序よく整理し、歩行者や車両の事故防止のため、これらを誘導すること等の業務を平成九年九月一日から平成一〇年三月三一日までの間委託するというものである。 6 本件防災契約の内容は、同じく業務仕様書に基づいて、火災受信盤や中央防災盤及び医療ガス警報盤等の各監視盤を終日監視するとともに、その点検及び緊急時の通報等の業務を行うことを右と同じ期間委託するものである。 7 成人病センターでは、従来、清掃及び塵芥分別業務の委託契約のための入札においては最低制限価格を設定していたが(甲五七)、警備契約、防災契約については、入札の方法を採らず、随意契約の方法によっていた。しかし、成人病センターを含む大阪府立病院の経営を改善すべきであるとの観点から、平成八年末には府立病院経営改善一〇箇年計画が作成され、同センター事務局では、経費節減のため、警備業務と防災業務についても指名競争入札を実施することにした。その際、事務局長であった被告Eは、会計課長であった被告Hに指示をして他の大阪府立病院や大阪府の他の部課の状況も調査した上、最低制限価格を設定する旨の方針を決定した。 8 被告Eは、総長であった被告Gに対し、経費節減のため随意契約をやめて入札を実施する方向で検討している旨を報告したが、入札に際して最低制限価格を設定することや最低制限価格の設定が法令上制限されていることは報告しなかった。 9 被告Gは、医師であり、研究者として政府関係の各種委員等も兼任しており、平成八年四月以降は非常勤の勤務体制の下で出勤するのは週三日程度であった。 10 平成九年七月一日、成人病センター会計課の施設係長であったJが、本件各入札を実施する旨の告示を大阪府公報に登載するための伺 成八年四月以降は非常勤の勤務体制の下で出勤するのは週三日程度であった。 10 平成九年七月一日、成人病センター会計課の施設係長であったJが、本件各入札を実施する旨の告示を大阪府公報に登載するための伺い文書(甲四二、四三)を起案し、警備業務については、同月一七日までに、会計課長であった被告H、事務局長であった被告E、総長であった被告Gらが決裁し、次いで、府の病院管理室長であった被告D、環境保健総務課長(被告Cであるが、Kが代決した。)らが決裁し、同月二三日の大阪府公報に登載された(甲五一)。防災業務についても、同月二四日までに、同様の決裁がされ、同月三〇日の大阪府公報に登載された(甲五二)。 なお、右伺い文書や公報への登載内容には、最低制限価格を設定することは記載されていなかった。 11 平成九年七月三一日には、Jが、本件警備業務に係る指名競争入札説明会の開催を通知することについての伺い文書(甲四二の三枚目)を起案し、同日、会計課長であった被告H、事務局長であった被告Eらが決裁し、平成九年八月五日、右説明会を実施した。同月一〇日には、被告Eが決定した予定価格と最低制限価格を被告Hが予定価格調書(甲四九)に記載した。予定価格は標準賃金と諸手当をもとに、最低制限価格は最低賃金と諸手当をもとに、それぞれ積算したものに基づいて決定したものであった。 12 本件防災業務についても、本件警備業務におけると同じ者により、平成九年八月七日、説明会開催について同様の起案(甲四三の三枚目)、決裁がされ、同月一一日、説明会が実施され、同月一四日、予定価格調書が作成された。 右各説明会において、被告会社の担当者は、本件各入札において最低制限価格が設定される旨の説明を受けた。 13 本件警備業務については、平成九年七月三一日、本件防災業務については、同年八月七日 た。 右各説明会において、被告会社の担当者は、本件各入札において最低制限価格が設定される旨の説明を受けた。 13 本件警備業務については、平成九年七月三一日、本件防災業務については、同年八月七日、それぞれ、業務の履行確保ができるようにとの観点から入札に参加する業者を選定し、各業者にその通知がされた。 14 こうして、本件警備業務については平成九年八月一一日、本件防災業務については同月一五日、それぞれ、前記のとおり指名された業者の間で指名競争入札が実施され、本件警備業務については、最低入札価格は一四三〇万円、最高入札価格は三九六四万九〇〇〇円となり、最低制限価格である一三六〇万円を下回った申込みはなかったため、最低の価格で申込みをした被告会社が落札者となり、本件防災業務については、最低入札価格は五一五万一六〇〇円、最高入札価格は一六〇〇万円となり、最低の価格で申込みをした日経サービスの価格が最低制限価格である六二七万円を下回ったため、二番目に低い価格である六三五万円で申込みをした被告会社が落札者となった。 15 右各落札結果を受けて、被告Eが、総長名で、被告会社との間で、平成九年九月一日、代金一五〇一万五〇〇〇円(落札価格と消費税及び地方消費税相当額)で本件警備契約を、代金六六六万七五〇〇円(右同)で本件防災契約を締結した。 16 被告Hは、支出命令の専決権者及び企業出納員兼金銭出納員として、平成九年一〇月三一日から平成一〇年四月二四日までの間に、本件各契約に基づく代金(委託料)の支払について支出命令をするとともに、被告会社に対し、本件各契約に係る委託料合計二一六八万二五〇〇円を支出し、支払った。 四そこで、以下、本件各入札に際して最低制限価格を設定したことが、法二三四条三項、施行令一六七条の一〇第二項、一六七条の一三の規定に違反して違 係る委託料合計二一六八万二五〇〇円を支出し、支払った。 四そこで、以下、本件各入札に際して最低制限価格を設定したことが、法二三四条三項、施行令一六七条の一〇第二項、一六七条の一三の規定に違反して違法であるかどうか、本件各契約の締結が違法かどうか、本件各契約が有効かどうかについて、順次判断する。 1 本件各契約の内容は、前記三で認定したとおりであるから、本件各契約は、業務の委託契約であって、「工事」を目的とするものでも「製造」を目的とするものでもなく、更にはその法的性質も、「請負」契約には該当しないものといわざるを得ない。 したがって、本件各契約は、施行令十六七条の一〇第二項所定の「工事又は製造の請負」の契約ではなく、府の支出の原因となる契約であるから、法二三四条三項、施行令十六七条の十三、十六七条の一〇第二項によって、その入札の際最低制限価格を設けることは禁止されているもので、これに反して本件各入札の際最低制限価格が設けられたとは違法であるというべきである。 この点につき、被告らは、本件各契約の内容たる業務は、病院施設等からなる成人病センターの安全な状態を保持することを目的としており、その履行の確保には万全を期する必要があるから、不適切な落札業者を排除する必要がある場合があるなどと主張する(被告らの主張1)。確かに、前記三で認定した本件各業務の内容に照らすと、右主張のように、本件各契約においても、不適切な落札業者を排除する必要がある場合も全く否定できないといわなければならない。 しかしながら、更に、法及び施行令の規定を検討すると次のとおりである。 法二三四条三項は、支出の原因となる契約について、予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもって申込みをした者以外の者を契約の相手方とすることができる場合を政令 ある。 法二三四条三項は、支出の原因となる契約について、予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもって申込みをした者以外の者を契約の相手方とすることができる場合を政令の定めに委ねており、これを受けて、施行令は、十六七条の十三、一六七条の一〇の第一項において、最低の価格をもって申込みをした者について、契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認めるとき、その者と契約することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあって著しく不適当であると認めるときは、右の申込者を排除し、他の者のうち最低の申込みをした者を落札者とする扱い、すなわち落札後に右のような具体的な危険がある場合のいわば事後排除の規定と、更に、第二項において、当該契約の履行を確保するため特に必要があると認めるときは、入札に際して予め最低制限価格を設けることによるいわば事前排除の規定を設けており、両規定ともこれらの排除の場合を「工事又は製造の請負の契約」の場合に限定している。これらの規定に照らすと、本件各契約について、仮にその履行確保のために不適格な落札者を排除する必要があって「工事又は製造の請負の契約」に準じて処理するのが合理的である場合があるとしても、それは、前記の事後排除の規定の要件が具体的にある場合に問題になるだけであり、予め入札の前に事前排除の規定である最低制限価格を設ける規定を類推適用する根拠にはなり得ないというべきである。平成一一年政令第二五号により新設された施行令一六七条の一〇の二も、改正されたのは右の事後排除の規定であって、最低制限価格を設ける場合の要件自体には何ら変更がないのである。 のみならず、前記三の認定事実によっても、本件各入札は、成人病センターがそれぞれの業務を適正に履行できると判断した業者のみを選択した上でされた 格を設ける場合の要件自体には何ら変更がないのである。 のみならず、前記三の認定事実によっても、本件各入札は、成人病センターがそれぞれの業務を適正に履行できると判断した業者のみを選択した上でされた指名競争入札の方法によって行われたものであって、本件各入札時において、最低の価格をもって申込みをした者を落札者から排除しなければ、本件各契約の履行が確保できないような危険を窺わせる事情があったとはいえず、本件全証拠をもってしても、右の危険を窺わせる事情を認めるに足りる証拠もない。被告らのこの点についての前記主張は採用できない。 2 そうすると、本件各入札において最低制限価格が設定されたのは違法であって、最低制限価格の設定自体は財務会計行為とはいえないが、それは入札態様の一つとして契約の相手方及び代金を決定する重要な要素であるというべきであるから、本件各契約の締結自体もまた違法というべきである。 3 次に、本件各契約の締結は、前記のとおり違法ではあるが、これを直ちに私法上当然に無効であるということはできない。すなわち一般に、法二三四条三項、施行令一六七条の一〇第二項に違反してされた違法な入札結果に基づく契約であっても、原則として私法上は有効と解すべきであり、ただ、施行令一六七条の一〇第二項に掲げる事由に当たらないことが何人の目にも明らかである場合や、契約の相手方において、最低制限価格を設定した入札が許されないことを知り、又は知り得た場合等、当該契約を無効としなければ最低制限価格を設ける場合を限定した法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情がある場合に限り、右の契約を無効と解すべきである(随意契約の制限に違反した契約の効力についての前掲最三小判昭和六二年五月一九日参照)。そして、前記三の事実関係の下においては、本件各入札の際、右の入札が違法である 、右の契約を無効と解すべきである(随意契約の制限に違反した契約の効力についての前掲最三小判昭和六二年五月一九日参照)。そして、前記三の事実関係の下においては、本件各入札の際、右の入札が違法であることが何人の目にも明らかであったということはできないし、また、従来随意契約としてされていたものが指名競争入札によることになった経緯や本件各契約又はこれらに類する契約に係る入札について最低制限価格を設定することが違法であるとの司法判断も未だ見当たらないことに照らしても、被告会社において、最低制限価格の設定が違法であることを知っていた、又はこれを知り得べき事情があったともいえない。更に、他にこれを知り得べき事情を認めるに足りる証拠もない。 そうすると、本件各契約は、その締結は違法であるが、私法上は有効というべきである。 五次に、本件各契約についての財務会計上の行為に関与した被告らの責任について検討する。 1 事務局長であった被告Eは、本件各契約の締結を決定した専決権者であり、前記三の事実関係の下で、その職責に鑑みても、その入札に際して最低制限価格を設定することが法及び施行令に反することを知っていたか、又は少なくとも極めて容易に知り得たものというべきであるから、本件各契約の締結について重大な過失が認められる。 2 会計課長であった被告Hは、本件各契約に基づく代金の支払について、専決権者として支出命令を発し、企業出納員及び金銭出納員として支出を行ったものである。しかし、本件各契約が前記のとおり有効である以上、右の支出命令も支出も適法なものといわざるを得ない。したがって同被告には責任は認められない。 3 総長である被告Gは、本件各契約の締結を行う権限を知事から委任されている者であり、これを事務局長である被告Eに専決させていたから、被告Eが、前記のとお 。したがって同被告には責任は認められない。 3 総長である被告Gは、本件各契約の締結を行う権限を知事から委任されている者であり、これを事務局長である被告Eに専決させていたから、被告Eが、前記のとおり、違法に本件各契約を締結したことにつき指揮監督上の注意義務違反がある場合に限り、その責任を肯認し得るものというべきである(最二小判平成三年一二月二〇日・民集四五巻九号一四五五頁、最三小判平成五年二月一六日・民集四七巻三号一六八七頁参照)。 前記三の認定事実によると、被告Gは、本件各契約の入札において、最低制限価格を設定することは報告されておらず、その勤務体制に照らしても、右入札の状況、被告Eの本件各契約の締結について、それを知ってこれを是正すべき指揮監督上の注意義務違反があったとまではいえず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 4 知事である被告Fは、本件各契約の締結を行う権限を法令上本来的に有するとされている者で、総長である被告Gにその権限を委任し、総長である被告Gは、前記のとおり、これを事務局長である被告Eに専決させていたものであるから、被告Eがした違法な本件各契約の締結について、指揮監督上の注意義務違反があったかどうかが問題になる。そして、右の指揮監督責任は、事務局長である被告Eが違法に本件各契約を締結したことによる総長の指揮監督を更に指揮監督する責任ということになり、前記三の認定事実によっても、被告Fが右の指揮監督について注意義務違反があったということはいえず、他にこれを認めるに足りる証拠がないというべきである。 5 被告A、同B、同C、同Dについて、原告は、法二四二条の二第一項四号の後段の相手方としての責任も主張するが、前記三の事実関係によっても、右被告らが、被告Eと共謀して違法に本件各契約の締結をしたとか、又は、過失によってこ 同Dについて、原告は、法二四二条の二第一項四号の後段の相手方としての責任も主張するが、前記三の事実関係によっても、右被告らが、被告Eと共謀して違法に本件各契約の締結をしたとか、又は、過失によってこれに加担したとまではいえず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 6 被告会社の責任については、本件各契約が前記のとおり有効であり、これに基づく代金の支払もすべて適法である以上、被告会社が右代金を受領したとしても、これが法律上の原因を欠くことにならないのは明らかである。また、前記三の認定事実によっても、営利企業である被告会社としては、府の担当者を信頼して、違法事由はないものと認識していたのであって、最低制限価格が設定された入札による本件各契約が違法であったことを知り得べきであったとも認められないから、損害賠償責任も認められないといわざるを得ない。 六被告Eが、違法に本件各契約を締結したことによる府の損害について検討する。 1 本件警備契約については、前記三の認定事実によっても、最低制限価格を設けたことが契約の相手方や代金額に影響したかどうかは不明であって、その契約の締結によって、府に具体的な損害が発生したとはいえず、他に府に具体的な損害が発生したことを認めるに足りる証拠がない。したがって、被告Eに対する本件警備契約の締結による損害賠償請求は理由がない。 2 本件防災契約については、前記三の認定事実によれば被告Eの違法な契約の締結により、府は、少なくとも、最低制限価格が設定されていなければ落札者となったであろう日経サービスの入札価格と被告会社の落札価格との差額である一二五万八三二〇円相当(消費税及び地方消費税相当額込み)の損害を被ったものと認められるが、それ以上の損害を被ったことについては、認めるに足りる証拠がない。 七以上によれば、本件訴えの の差額である一二五万八三二〇円相当(消費税及び地方消費税相当額込み)の損害を被ったものと認められるが、それ以上の損害を被ったことについては、認めるに足りる証拠がない。 七以上によれば、本件訴えのうち、被告総長及び同事務局長に対する本件各契約の解除権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求める訴え、及び、被告A、同B、同C、同Dに対する法二四二条の二第一項四号前段の訴えは、いずれも不適法であるから却下し、その余の本件請求のうち、被告Eが本件防災契約を締結したことに基づく、同被告に対する右六の2の一二五万八三二〇円及びこれに対する最後の支出の日である平成一〇年四月二四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから認容し、その余の請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法六四条、六五条、六一条を、仮執行の宣言について行政事件訴訟法七条、民訴法二五九条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第七民事部裁判長裁判官八木良一裁判官青木亮裁判官谷口哲也
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