平成21(行ウ)324等 固定資産税等賦課処分取消請求事件[A事件],訴えの追加的併合申立事件[B事件]

裁判年月日・裁判所
平成22年9月29日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文14,810 文字)

- 1 - 主文 1 裁決行政庁が原告に対して平成21年3月6日付けでした別紙物件目録記載の家屋に係る平成20年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査の申出に対する決定を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 A事件処分行政庁が原告に対し平成20年6月2日付けでした別紙物件目録記載の家屋に係る平成20年度の固定資産税賦課決定処分のうち176万1000円を超える部分及び都市計画税賦課決定処分のうち37万7300円を超える部分を取り消す。 2 B事件主文第1項と同旨第2 事案の概要本件は,別紙物件目録記載の家屋(以下「本件家屋」という。)の所有者である原告が,① 被告(代表者東京都知事)に対し,処分行政庁がした本件家屋に係る平成20年度の固定資産税賦課決定処分及び都市計画税賦課決定処分(以下「本件各処分」という。)につき,本件家屋に設置された昇降機設備(エレベーター。以下「本件昇降機設備」という。)の所有者は原告ではなく株式会社P1(以下「P1」という。)であるのに,本件昇降機設備の価格を含めた上でされた本件家屋の価格評価は不適正であるなどと主張して,本件各処分の取消しを求める訴え(A事件)と,② 被告(代表者東京都固定資産評価審査委員会)に対し,本件家屋に係る平成20年度固定資産課税台帳の登録価格の見直し(減額)を求めて地方税法432条1項の規定に基づき審査の申出(以下「本件審査申出」という。)をしたのに,審査の申出ができる事項に - 2 -該当しないとして裁決行政庁がこれを却下する旨の決定(以下「本件決定」という。)をしたことが違法である旨主張して,本件決定の取消しを求める訴え(B事件 のに,審査の申出ができる事項に - 2 -該当しないとして裁決行政庁がこれを却下する旨の決定(以下「本件決定」という。)をしたことが違法である旨主張して,本件決定の取消しを求める訴え(B事件)が選択的に併合された事案である。 1 前提事実(顕著な事実,当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)(1) 原告は,本件家屋を所有している。 (2) 平成20年度固定資産課税台帳に登録された本件家屋の価格(以下「本件登録価格」という。)は,1億3606万7600円である。 (3) 本件家屋には,本件昇降機設備が設置されている。本件登録価格は,本件昇降機設備を本件家屋と一体のものとしてされた評価に基づくものである。 (4) 本件昇降機設備について,平成19年6月4日,同年5月18日の売買により原告からP1に譲渡された旨の動産譲渡登記が経由された。 (5) P1は,本件昇降機設備を自ら所有する償却資産として処分行政庁に申告したが,処分行政庁は,これを否認し,平成20年6月2日,原告に対し,上記(2)の価格に基づき,本件各処分(本件家屋の平成20年度の固定資産税につきその課税標準額を1億3606万7600円,納付税額を190万4900円とする賦課決定処分,及び本件家屋の平成20年度の都市計画税につきその課税標準額を1億3606万7600円,納付税額を40万8200円とする賦課決定処分)をし,納税通知書をもって原告にその旨通知した。 原告が本件各処分について知ったのは,同月4日である。(乙1)(6) 原告は,平成20年7月30日,裁決行政庁に対し,本件昇降機設備がP1の所有する地方税法所定の償却資産であるのにこれを本件家屋と一体のものとして評価した誤りがあることを理由に,本件登 (6) 原告は,平成20年7月30日,裁決行政庁に対し,本件昇降機設備がP1の所有する地方税法所定の償却資産であるのにこれを本件家屋と一体のものとして評価した誤りがあることを理由に,本件登録価格を本件昇降機設備分を除外した価格に減額修正するように求めて,地方税法432条1項の規定に基づき本件審査申出をしたが,裁決行政庁は,平成21年3月6日,本件昇降機設備が家屋評価に含まれるか否かについての判断は,本件家屋の - 3 -家屋としての範囲の確定,すなわち課税客体の範囲の確定によるものであり,価格に対する不服には当たらず,したがって,地方税法432条1項の規定により固定資産評価審査委員会(以下「委員会」という。)に審査の申出をすることができる事項(以下「審査申出事項」という。)には当たらないことを理由に,本件審査申出を却下する旨の本件決定をし,その決定書正本を原告に送付した。原告は,同月10日,同正本の送付を受けた。(甲18)(7) 原告は,平成20年8月4日,東京都知事に対し,本件各処分の取消しを求めて審査請求をしたが,東京都知事は,平成21年3月3日,この審査請求を棄却する旨の裁決をした。 (8) 原告は,平成21年6月30日,当裁判所に対し訴状を提出し,A事件の訴えを提起した。(顕著な事実)(9) 原告は,平成22年2月1日,当裁判所に対し訴えの追加的併合申立書を提出し,行政事件訴訟法19条1項の規定に基づき,B事件の訴えをA事件に選択的追加的に併合して提起した。(顕著な事実) 2 争点(本案前)(1) B事件の訴えは出訴期間を徒過した不適法なものか否か。 (本案)(2) 審査申出事項について不服がある場合に当たるか否か。 (3) 本件各処分が適法か否か。 (1) B事件の訴えは出訴期間を徒過した不適法なものか否か。 (本案)(2) 審査申出事項について不服がある場合に当たるか否か。 (3) 本件各処分が適法か否か。 3 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点(1)(B事件の訴えは出訴期間を徒過した不適法なものか否か。)について(被告(代表者東京都固定資産評価審査委員会))B事件の訴えは,原告が本件決定の決定書正本の送付を受けてから6か月を超えた後になって提起されたものであるから,行政事件訴訟法14条1項 - 4 -本文に規定する出訴期間を経過していることが明らかであり,不適法である。 原告は,同項ただし書に規定する正当な理由があるというが,原告は,A事件の訴え提起とともにB事件の訴え提起をすることが可能であったのだから,出訴期間を経過したことに正当な理由があるといえないことは明らかである。 (原告)B事件の訴え提起が,原告に対する本件決定の告知から6か月を経過した後のことであるのは確かである。しかし,原告は,従来の行政解釈に従い,A事件の訴えを提起したところ,被告は,A事件において,B事件の訴えの出訴期間が経過した後の平成21年10月30日付け準備書面によって,裁決行政庁が本件決定の理由としたところと相反する主張を提出するに至った。 そのため,原告の主張する本件家屋の評価に対する不服申立ては,委員会に対する審査の申出によるべきものか,固定資産税賦課決定処分に対する審査請求によるべきものかを確定させる必要が生じたのであり,この場合,行政事件訴訟法14条1項ただし書に規定する正当な理由がある。 (2) 争点(2)(審査申出事項について不服がある場合に当たるか否か。)について(原 せる必要が生じたのであり,この場合,行政事件訴訟法14条1項ただし書に規定する正当な理由がある。 (2) 争点(2)(審査申出事項について不服がある場合に当たるか否か。)について(原告)本件審査申出によって,原告は,平成20年度の固定資産課税台帳に登録された本件家屋の価格に誤りがあることを理由に,当該価格の是正を求めた。 原告がした本件審査申出は,正に審査申出事項すなわち固定資産課税台帳に登録された価格そのものに対する不服の申出であって,地方税法432条1項に規定する場合に当たるというべきである。しかるに,本件審査申出を審査申出事項について不服がある場合に当たらず不適法であるとして却下した本件決定は違法である。 課税客体の存否の認定は,必然的に課税対象たる固定資産の評価額,すな - 5 -わち登録価格の変更をもたらすから,家屋の一部として評価するか,家屋とは別の償却資産として評価するかは,登録価格に関する不服の申出といえるのである。 (被告(代表者東京都固定資産評価審査委員会))ア原告は,本件昇降機設備が原告以外の者の所有であることを理由に,本件昇降機設備部分を外した価格に本件家屋の価格を減額すべきであるとして,本件審査申出をした。 しかし,本件審査申出による不服は,課税客体が存在しないことを理由とするものであって,評価に関するものではないから,これについて地方税法432条1項の規定による審査を申し出ることはできない。本件昇降機設備部分が本件家屋の評価に含まれるか否かは,本件家屋の家屋としての範囲の確定,すなわち課税客体の範囲の確定にかかわる問題であり,これを争う者は賦課決定処分の取消しの形で争うべきである。なぜならば,審査の申出は,固定資産税の納税者がそ かは,本件家屋の家屋としての範囲の確定,すなわち課税客体の範囲の確定にかかわる問題であり,これを争う者は賦課決定処分の取消しの形で争うべきである。なぜならば,審査の申出は,固定資産税の納税者がその納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格に対し不服がある場合に行うものであるから,審査申出事項は,この固定資産課税台帳に登録された価格に限られるのであり,価格以外の事項(登記簿に登記された事項,課税客体の認定,住宅用地に対する課税標準の特例の適用等)については,あくまでも賦課決定処分の取消しの形で争われるべきであるからである。 よって,地方税法433条11項,行政不服審査法40条1項の規定により本件審査申出を不適法として却下した本件決定は適法である。 イ納税者は,固定資産税に関し,市町村長の課税処分に対して審査請求をすることができるほか,委員会に対して審査の申出をすることができる。 地方税法がこうした2通りの方法を規定したのは,通常の行政処分と異なり,固定資産税評価は,① 対象が評価という人の判断によっていわば形 - 6 -成的に決定される事項であることから,一般的な行政不服審査よりも,より客観性,中立性が求められること,② 固定資産の評価が高度な専門的知識を必要とする上,技術的な面も多いので,一般的な行政不服審査では困難な部分があること,③ 評価額を早期に確定し安定した課税関係を維持するためには,据置年度においては原則として争えないこととすることが必要であることから,基準年度における納税者の不服申立ての制度をより充実したものとする必要があることなどによるものとされる。そして,これを受けて,委員会の審査委員は,固定資産の評価について学識経験を有する者等の中から,市町村長が議会 納税者の不服申立ての制度をより充実したものとする必要があることなどによるものとされる。そして,これを受けて,委員会の審査委員は,固定資産の評価について学識経験を有する者等の中から,市町村長が議会の同意を得て選任するものとされている(地方税法423条3項)。 このような経緯を経て,委員会が設置され,審査委員が選任されている以上,委員会において審査されるべきは,評価に対する客観的,中立的,専門的,技術的項目に限られるというべきである。評価について学識経験を有する者等から構成される委員会が審査すべき事項は,特定された対象をいかに評価すべきかというにとどまり,評価の対象に含まれるか否かは,評価そのものではなくその前提となる争点であるから,市町村長が判断すべき事項ということになる。 こうした結論が妥当することは,平成11年度の税制改正において,委員会について,評価に関する不服のみを審査決定する機関として位置付け,特例適用後の課税標準額や納税義務者等は審査申出事項から除外し,審査申出事項を「価格」のみとする改正がされたことからも裏付けられる。 ウ課税客体の認定の問題と価格に関する問題は,原告の主張するように区分けできないものではなく,個別に順次判定すべきものであり,まず課税客体の範囲の確定の問題が,次に価格の問題が検討されるべきである。そのように解しないと,課税客体の認定に問題が生じたときはすべて価格の問題として委員会が審査することになるが,委員会は,「評価審査」とい - 7 -う文言からも明らかなように,課税対象が定まった場合にその評価の適否を審査する機関であって,課税対象か否かを法的に判断するところではないので,この結論は妥当ではない。 (被告(代表者東京都知事))原告の主張は,見方を変えれば た場合にその評価の適否を審査する機関であって,課税対象か否かを法的に判断するところではないので,この結論は妥当ではない。 (被告(代表者東京都知事))原告の主張は,見方を変えれば,本件家屋の評価の誤り,ひいては,本件家屋の誤った評価に基づいて決定された本件登録価格に対する不服を理由として本件各処分の取消しを求めるものとも解されるが,そうすると,原告は,固定資産税の賦課決定処分の取消理由とすることができない本件登録価格に対する不服を本件各処分の取消理由として主張していることになるから(地方税法432条,434条),原告のA事件の請求は理由がない。 (3) 争点(3)(本件各処分が適法か否か。)について(被告(代表者東京都知事))ア原告は,不動産登記簿上,本件家屋の所有者として登記されている。また,本件昇降機設備は,本件家屋の建築計画において本件家屋に設置するものとされ,本件家屋の新築時に原告が取り付けたものである。本件昇降機設備は,本件家屋の天井,壁,床等の構成部分に組み込まれ又は接着して設置されたものであり,その取り外しは容易でなく,自在に移動できるものでもないから,本件家屋と構造上一体となっているものといえる。動産譲渡登記がされた後も引き続き本件家屋内に設置され,使用されて,本件家屋と一体となって効用を果たしており,本件昇降機設備を備えることによって,本件家屋の利便性も高められている。このように,本件家屋の構成部分ないし社会通念上本件家屋の一部分となっているものであるから,本件昇降機設備は,民法242条本文の規定により本件家屋に付合しているものというべきであり,原告の所有であることが明らかである。固定資産評価基準(地方税法388条参照。乙4)に照らしても,本件昇降機設備は,本件家屋 民法242条本文の規定により本件家屋に付合しているものというべきであり,原告の所有であることが明らかである。固定資産評価基準(地方税法388条参照。乙4)に照らしても,本件昇降機設備は,本件家屋に含めて評価すべきものである。 - 8 -したがって,本件昇降機設備を本件家屋に含めて評価した本件各処分は適法である。 イ固定資産税は,土地,家屋及び償却資産の資産価値に着目して課される物税であり,その負担者は,当該固定資産の所有者であることを原則とする。そして,不動産に対する物の付合の要件と効果について定めた民法242条の規定は私法上の所有権の帰属に関する規定であるところ,固定資産税の担税力の基礎は私法上の所有権の帰属という事実にほかならないから,固定資産税の課税に際しても,同条の規定の適用があることを前提に対象物の所有権の帰属及びその範囲を決すべきであることは当然と解される。また,不動産の従としてこれに付合した物がその不動産の構成部分となった場合又は付合物が社会通念上その不動産の一部分と認められる状態となったときは,同条により不動産の所有者は付合物の所有権を取得するのであって,また,このような場合には当該付合物は独立の資産と同一の経済上の効力を有し得ないものであるから,同条ただし書の適用はないものと解される。 そうすると,昇降機設備が償却資産として固定資産税の課税客体となるかどうかについては,当該昇降機設備が建物以外の独立した資産といえるかどうかがまず確定されなければならないのであって,地方税法等の規定を根拠に,建物と昇降機設備とが,その設置状況いかんにかかわらず,常に別個の資産として固定資産課税の対象となるということはできない。 ウ動産譲渡登記制度とは,法人がする動産の譲渡の対抗要件 拠に,建物と昇降機設備とが,その設置状況いかんにかかわらず,常に別個の資産として固定資産課税の対象となるということはできない。 ウ動産譲渡登記制度とは,法人がする動産の譲渡の対抗要件に関し民法の特例等を定め,法人が動産を譲渡した場合において,当該動産の譲渡につき動産譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは,当該動産について民法178条の引渡しがあったものとみなすとするものである。その目的は,企業における動産を活用した資金調達方法の円滑化を図るため,法人がする動産の譲渡について公示性に優れた登記によって対抗要件を備える - 9 -ことを可能とすることにある。しかしながら,動産譲渡登記は,動産の譲渡の事実を公示するものであって,同登記により動産の存在やその所有権の帰属を証明するものではないから,動産譲渡登記がされたことから,同登記の対象物件を建物から独立した所有権の対象と認めなければならないと解することはできない。 (原告)ア地方税法341条4号によれば,同法にいう償却資産とは,法人税法及び所得税法で減価償却額又は減価償却費が損金又は必要経費として認められている資産中,動産その他の設備をいう。そして,所得税法2条1項19号,所得税法施行令6条1号,123条1項,法人税法2条23号,法人税法施行令13条1号等の規定によれば,昇降機設備を家屋とは別の償却資産として認めているのであるから,本件昇降機設備が法人税法及び所得税法上,減価償却額又は減価償却費が損金又は必要経費として認められる動産,すなわち地方税法上の償却資産であることは疑いない。 また,今日の経済取引上,家屋設備は,家屋躯体から取り外すことなどせず,設置されたままで取引の対象としての独立性を有することが認知されている。そして, 上の償却資産であることは疑いない。 また,今日の経済取引上,家屋設備は,家屋躯体から取り外すことなどせず,設置されたままで取引の対象としての独立性を有することが認知されている。そして,特定性,独立性のある動産の譲渡による物権変動につき,登記による公示制度が置かれているところ,本件昇降機設備につき,これがP1に譲渡されたことに伴い,この動産譲渡登記が経由されており,その特定性,独立性が認知されている。さらに,家屋諸設備は固定資産評価基準においても独立した物として認められている。本件昇降機設備が特定された独立の動産であることは明らかである。 イしかるに,本件各処分は,第三者が所有する償却資産たる本件昇降機設備を本件家屋の一部に含ませた上でされた評価に基づく課税標準額によっているので,本件昇降機設備の価格を控除した課税標準額(別紙正しい評価額算定表参照)に基づく納付税額(固定資産税につき176万1000 - 10 -円,都市計画税につき37万7300円)を超える部分は不適法である。 ウ被告は,本件昇降機設備の付合を問題とするが,地方税法は償却資産を固定資産税及び土地計画税の課税客体として一義的かつ明確に規定しているのであり,昇降機設備が償却資産であることも明記されているのであるから,それを離れて,わざわざ私的自治を規律する民法の規定を持ち出して,固定資産税の課税客体の解釈をしなければならない理由はない。そのような解釈をする結果,課税庁によって課税客体となったりならなかったりするのであれば,課税要件明確主義に違反するものといわざるを得ない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(B事件の訴えは出訴期間を徒過した不適法なものか否か。)について(1) 被告(代表者東京都固定資産評価審査委員会) 違反するものといわざるを得ない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(B事件の訴えは出訴期間を徒過した不適法なものか否か。)について(1) 被告(代表者東京都固定資産評価審査委員会)は,B事件の訴えの提起が原告が本件決定の決定書正本の送付を受けてから6か月を超えた後になってされたものであるから,行政事件訴訟法14条1項本文に規定する出訴期間を経過していることが明らかであり,B事件の訴えは不適法であると主張する。 (2) ところで,行政事件訴訟法20条は,同法19条1項前段の規定により,処分の取消しの訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えに併合して提起する場合には,出訴期間の遵守については,処分の取消しの訴えは,裁決の取消しの訴えを提起した時に提起したものとみなす旨定めている。これは,同法10条2項がいわゆる原処分主義を採用し,原処分の違法は原処分の取消しの訴えによってのみ争うべきものとし,原処分を正当として審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えにおいては原処分の違法を争うことができず裁決に固有の違法のみを争うべきものとしたが,何が裁決の固有の瑕疵に当たるかが必ずしも明確ではないところから,誤って原処分の違法を理由に裁決の取消しの訴えを提起する者があることが予想 - 11 -され,そのため出訴期間の徒過等により救済を受ける機会が失われることを防止するために設けられた規定であると解される。 他方,本件は,原告の不服が固定資産課税台帳に登録された価格についてのもの(審査申出事項)に当たるとすれば,地方税法434条2項によりいわゆる裁決主義が採用され,当該不服については委員会の決定の取消しの訴えの方法のみによって争うことができるとされている(逆に,これに当たらないとすれば,当該不服は原処 ,地方税法434条2項によりいわゆる裁決主義が採用され,当該不服については委員会の決定の取消しの訴えの方法のみによって争うことができるとされている(逆に,これに当たらないとすれば,当該不服は原処分ともいうべき賦課決定処分(本件各処分)の取消しの訴えによって争われることになる。)場合である。行政事件訴訟法においては原則として原処分主義が採られ,裁決主義は例外とされており,殊に本件のような場合には,賦課決定処分の取消しの訴えを提起すること自体は禁止されておらず,当該不服が固定資産課税台帳に登録された価格についてのものに当たるか否かによって採るべき争訟方法が異なるという特殊性があるところ,登録された価格についての不服に当たるか否かの判断が微妙な事案においては,委員会の決定の理由いかんにより,上記委員会の決定の取消しの訴えによるべきなのに誤って賦課決定処分の取消しの訴えを提起する者が現れることもあり得るところであり,そうした者が救済を受ける機会を保障する必要があることについて行政事件訴訟法20条の場合と変わらない場合もあるものというべきである。そして,前提事実によれば,原告は,① 委員会に対する本件審査申出と本件各処分の取消しを求める審査請求を相次いで行い,審査請求を棄却する旨の裁決を平成21年3月3日に受け,同月6日には,本件審査申出に対して,審査申出事項に当たらないことを理由にこれを却下する旨の本件決定を受けた(同月10日これを知った)こと,② このため,同年6月30日に本件各処分の取消しの訴えであるA事件の訴えを提起したところ,その後,被告(代表者東京都知事)から,本件登録価格に対する不服を本件各処分の取消理由として主張していることになる旨の主張がされたことなどもあって,平成22年2月1日に行政事 - 12 -件訴訟法19条1 (代表者東京都知事)から,本件登録価格に対する不服を本件各処分の取消理由として主張していることになる旨の主張がされたことなどもあって,平成22年2月1日に行政事 - 12 -件訴訟法19条1項の規定に基づき本件決定の取消しの訴えであるB事件の訴えをA事件に併合して提起したことが認められる。原告の不服の内容がA事件とB事件とで同一であることも,その主張から明らかである。これらの事実に基づき,上記同法20条の趣旨にもかんがみて検討すれば,B事件の訴えは,平成21年3月10日から6か月の出訴期間内である同年6月30日に提起されたものと同視すべきであり,少なくとも,出訴期間を遵守することができなかったことにつき「正当な理由」(行政事件訴訟法14条1項ただし書)があるものというべきである。 したがって,被告(代表者東京都固定資産評価審査委員会)の前記主張は採用することができない。 2 争点(2)(審査申出事項について不服がある場合に当たるか否か。)について(1) 原告は,原告がした本件審査申出は,正に審査申出事項すなわち固定資産課税台帳に登録された価格そのものに対する不服の申出であって,地方税法432条1項に規定する場合に当たると主張しており,これに対し,被告(代表者東京都固定資産評価審査委員会)は,本件審査申出は,課税客体が存在しないことを理由とする不服であって,評価に関する不服ではないから,地方税法432条1項の規定による審査を申し出ることはできないなどとして,これを争っている。 (2) ところで,固定資産税の課税標準たる固定資産の価格は,市町村長が固定資産評価員の行った評価に基づいて決定し(地方税法410条),固定資産課税台帳に登録するのであるが(同法411条1項),固定資産税の納税者は,その納付すべ 税標準たる固定資産の価格は,市町村長が固定資産評価員の行った評価に基づいて決定し(地方税法410条),固定資産課税台帳に登録するのであるが(同法411条1項),固定資産税の納税者は,その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格(以下「登録価格」という。)について不服がある場合においては,委員会に審査の申出をすることができるとされ(同法432条1項),また,審査申出事項について不服がある固定資産税の納税 - 13 -者は,同項及び同法434条1項(固定資産税の納税者は,委員会の決定に不服があるときは,その取消しの訴えを提起することができるとするもの)の規定によることによってのみ争うことができるとされている(同法434条2項)。 このように地方税法が固定資産の登録価格についての不服の審査を評価,課税の主体である市町村長から独立した第三者的機関である委員会に行わせることとしているのは,中立の立場にあり,かつ,固定資産の評価について学識経験を有する者を委員に含む委員会に固定資産の評価額の適否に関する審査を行わせ,これによって固定資産の評価の客観的合理性を担保し,納税者の権利を保護するとともに,固定資産税の適正な賦課を期そうとするものであると解される(最高裁昭和61年(行ツ)第138号平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号253頁参照)。そこで,委員会に申し立てることができる不服は,固定資産の評価に関する事項として固定資産の登録価格についてのものに限られ,登録価格とは直接関係しない事項については,固定資産課税台帳に登録される事項である登記簿に登記された事項はもとより,納税義務者に当たるか否か,課税客体に当たるか否かといった事項についても,審査申出事項に当たらず,審査の申出を 項については,固定資産課税台帳に登録される事項である登記簿に登記された事項はもとより,納税義務者に当たるか否か,課税客体に当たるか否かといった事項についても,審査申出事項に当たらず,審査の申出をすることができないものと解される。他方,課税客体である固定資産について,例えば,それがどのような地目,地積,形状であるか,あるいは,その家屋の種別がいかなるものであり,その床面積はどれほどであるかといった,価格を算出する要因にかかわる当該固定資産の性状あるいは内容の確定に関する不服は,登録価格についての不服として審査の申出の対象となるものと解される。 (3) 以上の観点から,本件審査申出による原告の不服を検討する。 前提事実によれば,本件登録価格は本件昇降機設備を本件家屋と一体のものとしてされた評価に基づくものであるところ,これに対し,原告は,本件審査申出において,本件昇降機設備がP1の所有する地方税法所定の償却資 - 14 -産であるのにこれを本件家屋と一体のものとして評価した誤りがあるとして,本件登録価格を本件昇降機設備分を除外した価格に減額修正するように求めたことが認められる。そうすると,本件審査申出による原告の不服は,課税客体が本件家屋であることを前提に,本件昇降機設備が本件家屋と一体となって本件家屋の内容を構成しておりその全体の評価額が本件登録価格となるとの点に対して,本件家屋には本件昇降機設備が含まれないため本件昇降機設備の評価額の分だけ過大であるから,本件登録価格を本件昇降機設備分だけ減額修正すべきであるというものであると解され,この問題の結論いかんによって本件家屋の価格が直接左右されることが明らかであることにかんがみれば,これが本件家屋の価格を算出する要因にかかわる本件家屋の内容の確定に関する不服に当た であると解され,この問題の結論いかんによって本件家屋の価格が直接左右されることが明らかであることにかんがみれば,これが本件家屋の価格を算出する要因にかかわる本件家屋の内容の確定に関する不服に当たるということができる。よって,本件審査申出による原告の不服は,登録価格についての不服として審査の申出の対象となるものというべきである。 (4) 以上に対し,被告(代表者東京都固定資産評価審査委員会)は,① 本件審査申出は,課税客体が存在しないことを理由とする不服であって,評価に関する不服ではない,② 本件昇降機設備部分が本件家屋の評価に含まれるか否かは,本件家屋の家屋としての範囲の確定,すなわち課税客体の範囲の確定にかかわる問題であり,これを争う者は賦課決定処分の取消しの形で争うべきである,③ 委員会において審査されるべきは,評価に対する客観的,中立的,専門的,技術的項目に限られ,特定された対象をいかに評価すべきかとの問題にとどまり,評価の対象に含まれるか否かは評価そのものではなくその前提となる争点である,④ 課税客体の認定の問題と価格に関する問題は,個別に順次判定すべきものであり,そのように解さないと,課税客体の認定に問題が生じたときはすべて価格の問題として委員会が審査することになるが,この結論は委員会の機能に照らして妥当でないなどと主張している。 - 15 -しかし,上記①について,地方税法388条1項所定の固定資産評価基準(総務大臣が固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を定めたもの)には,「建築設備の評価」との見出しの下で,「家屋の所有者が所有する電気設備,ガス設備,給水設備,排水設備,衛生設備,冷暖房設備,空調設備,防災設備,運搬設備,清掃設備等の建築設備で,家屋に取り付けられ,家屋と構造上 価」との見出しの下で,「家屋の所有者が所有する電気設備,ガス設備,給水設備,排水設備,衛生設備,冷暖房設備,空調設備,防災設備,運搬設備,清掃設備等の建築設備で,家屋に取り付けられ,家屋と構造上一体となって,家屋の効用を高めるものについては,家屋に含めて評価するものとする。」との定めがあるところ(乙4の40頁),このことに照らしても,本件昇降機設備部分が本件家屋の評価に含まれるか否かに関する不服は,評価に関する不服であるという余地が十分にある。このことに,前記(3)において説示したとおり,本件審査申出による原告の不服が,課税客体が本件家屋であることを前提としてその登録価格を争うものというべきものであることを考え併せても,本件審査申出が課税客体が存在しないことを理由とする不服であり,評価に関する不服ではないということは困難である。また,前記②について,課税客体の範囲の確定にかかわる問題であるからといって,それを賦課決定処分の取消しの形で争うべき問題であると直ちに解さなければならない根拠は地方税法及びその関係法令上見当たらない。次に,前記③についても,課税客体として特定された本件家屋の内容を確定して,その価格評価を審査することは,評価に対する客観的,中立的,専門的,技術的項目であるということができ,また,特定された対象をいかに評価すべきかとの問題であるともいうことができる。また,そもそも,審査申出事項は「価格」に対する不服とされているのであり,地方税法その他の関係法令において,審査申出事項を「評価」そのものに対する不服に限定する旨を定める規定はないのであるから,法文上に根拠のない「評価」に当たるか否かを論じることに意味はないともいえ,この観点からしても,被告の前記③の主張は地方税法の解釈論として意味のあるものとはいえない(平成11年 はないのであるから,法文上に根拠のない「評価」に当たるか否かを論じることに意味はないともいえ,この観点からしても,被告の前記③の主張は地方税法の解釈論として意味のあるものとはいえない(平成11年度の税制改正において,委員会の位置付けが見直され,評 - 16 -価に関する不服のみを審査決定する機関とする趣旨で審査申出事項が「価格」のみとされた経過があるにしても,そこでいう「評価に関する不服」は必ずしも一義的に明確なものではなく,抽象的に特定された課税客体の具体的内容を確定することはその評価の一環であるともいえるのである。そして,被告が主張するように,評価の対象に含まれるか否か(課税客体の具体的内容の確定)の問題を具体的内容が確定された課税客体の評価の問題と区別し,後者のみを審査申出事項とすることは,立法論としてはあり得るとしても,地方税法432条1項は「価格」を審査申出事項とする旨を規定するのみであって,他にそうした区別をすべきことの根拠となるような規定は存しないことに照らし,これを現行の地方税法の解釈論として採ることは困難であるといわざるを得ない。)。さらに,前記④について,課税客体に当たるか否かの認定の問題と,課税客体に当たることを前提にその価格を評価する問題は,区別して順次検討すべきものであるとしても,本件では,あくまで本件家屋を課税客体とする登録価格が争われているところ,課税客体として特定された固定資産の内容を確定する問題はその価格評価の一環といえることはこれまでに説示したところから明らかであり,そのように解したとしても,課税客体の認定の問題(課税客体に当たるか否かの問題)一般が広く委員会の審査事項となることはない。 (5) そして,他に本件審査申出が不適法であるというべき事情はうかがわれないところ,以上によれ 体の認定の問題(課税客体に当たるか否かの問題)一般が広く委員会の審査事項となることはない。 (5) そして,他に本件審査申出が不適法であるというべき事情はうかがわれないところ,以上によれば,本件審査申出は,本件登録価格(本件家屋の固定資産課税台帳に登録された価格)すなわち審査申出事項について不服がある場合に当たるというべきであるのに,これに当たらないとして本件審査申出を却下した本件決定は違法であるといわざるを得ない。 第4 結論以上の次第で,原告のB事件の請求は理由があるからこれを認容することとし(選択的併合に係るA事件の請求については判断を要しない。),訴訟費用 - 17 -の負担について行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官川神裕 裁判官小海隆則 裁判官須賀康太郎

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