平成25年8月28日判決言渡平成25年(ネ)第10012号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地裁平成22年(ワ)第44473号事件)口頭弁論終結日平成25年6月5日判決控訴人株式会社森本組訴訟代理人弁護士小池豊同櫻井彰人同萱島博文被控訴人株式会社技研製作所被控訴人新日鐵住金株式会社被控訴人ら訴訟代理人弁護士増井和夫同橋口尚幸同齋藤誠二郎 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1審,第2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 原審で用いられた略語は,当審でもそのまま用いる。原判決を引用する部分では,「原告」又は「原告ら」を「被控訴人」又は「被控訴人ら」に,「被告」を「控訴人」に,それぞれ読み替えるものとする。 2 本件特許権を共有する被控訴人ら(原審原告ら)は,控訴人(原審被告)を構成員に含む本件JVが本件各工事で採用した施工方法(控訴人方法)が,本件特許権の技術的範囲に属するとして,控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償請求に基づき,被控訴人技研に ,控訴人(原審被告)を構成員に含む本件JVが本件各工事で採用した施工方法(控訴人方法)が,本件特許権の技術的範囲に属するとして,控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償請求に基づき,被控訴人技研については,主位的には,損害金●●のうち1億3000万円,二次的には,損害金●●のうち1億3000万円,三次的には,損害金7812万2000円及びこれらに対する不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日(平成22年12月10日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,被控訴人新日鐵については,主位的には,損害金●●二次的には,損害金●●三次的には,損害金7812万2000円及びこれらに対する同日からの同率の遅延損害金の支払をそれぞれ求めた。 原判決は,被控訴人技研の主位的請求を3785万9733円及び同日からの遅延損害金,被控訴人新日鐵の三次的請求を3646万1733円及び同日からの遅延損害金の限度で認容し,被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却した。これに対して,控訴人が,控訴人敗訴部分を不服として控訴した。 3 前提事実は,原判決の「第2 事案の概要」の「1 前提事実」(原判決3頁18行目から7頁9行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 第3 争点に関する当事者の主張 1 次のとおり付加訂正する他は,原判決の「第2 事案の概要」の「2 争点及び当事者の主張」(原判決7頁10行目から37頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決12頁19行目から13頁13行目までを,次のとおり改める。 「エ構成要件Eの充足性控訴人方法において,構築した鋼管杭列に連続し,先端に6個又は15個のビットを備えた鋼管杭で,コンクリートブロック,コンクリート又は裏込材に対して深さ約17mまで回 「エ構成要件Eの充足性控訴人方法において,構築した鋼管杭列に連続し,先端に6個又は15個のビットを備えた鋼管杭で,コンクリートブロック,コンクリート又は裏込材に対して深さ約17mまで回転圧入するという方法は,構成要件Eの「上記鋼管杭列に連続して上記切削用鋼管杭を回転圧入してコンクリート護岸を打ち抜」くことに当たる。 また,本件明細書の発明の詳細な説明の【0013】には,「鋼管杭列PLは,鋼管杭Pを連続的に圧入したものであるが,…一定の間隔を有して圧入することもできる。」と記載されているから,構成要件Eの「連続壁」は,鋼管杭同士が接触している必要はなく,壁面として見られる程度の状態で列状に並んでいる鋼管杭列は,構成要件Eの「連続壁」に当たる。 鋼管杭列が土砂層と接触する場合,隙間から土砂がこぼれ落ちたり,水の浸みだしを防止するように隙間を塞ぐことは当業者が当然適用する事項である。鋼管杭列の本質的な機能は,護岸壁を維持する強度部材となることであって,本件発明における連続壁とは,新たな護岸壁を構築するための十分な強度が得られる程度に鋼管杭が列をなして並んでいることを指すと解するのが合理的である。 したがって,控訴人方法は,構成要件Eを充足する。 オ構成要件Fの充足性控訴人方法において,連続壁を構築した後,鋼管杭列の河川側のコンクリート護岸と土砂を除去する方法は,構成要件Fの「その後,上記鋼管杭列の河川側のコンクリート護岸と土砂を除去する」ことに当たる。 必要に応じ隙間からの背面側土砂のこぼれ落ちを防止する措置をとることは,当業者が当然に考慮する事項である。また,コンクリート護岸(コンクリートブロックと裏込材)は土砂層の表面を保護することにより護岸を形成しており,両者は不可分の関係にあるところ,本件発明 とることは,当業者が当然に考慮する事項である。また,コンクリート護岸(コンクリートブロックと裏込材)は土砂層の表面を保護することにより護岸を形成しており,両者は不可分の関係にあるところ,本件発明の作用効果は,「従来の護岸の構造体を活用できる」(【0019】)とし,「コンクリート護岸の構造体を活用」するとはされていないのであるから,土砂層を活用することも含んでいる。 したがって,控訴人方法は,構成要件Fを充足する。」 3 原判決15頁14行目から17頁2行目までを,次のとおり改める。 「エ構成要件Eの充足性について構成要件Eの「上記鋼管杭列」は,切削用鋼管杭で構築した鋼管杭列を指すから,控訴人方法において先端に9個のビットを備えた鋼管杭で構築した鋼管杭列は,構 成要件Eの「上記鋼管杭列」に当たらない。 また,前記アと同様に,控訴人方法において用いた先端に15個のビットを備えた鋼管杭は,構成要件Eの「上記切削用鋼管杭」に当たるが,先端に6個のビットを備えた鋼管杭は,構成要件Eの「上記切削用鋼管杭」に当たらない。 また,特許請求の範囲や本件明細書の発明の詳細な説明の【0015】の記載によれば,同一の鋼管杭圧入装置を用いて切削用鋼管杭を回転圧入すべきであるから,コウワ機から鋼管パイラー機に取り替えて鋼管杭を回転圧入するものは,構成要件Eの「上記切削用鋼管杭を回転圧入」することに当たらない。 また,前記イと同様,控訴人方法において,裏込材や土砂に対して回転圧入する方法は,構成要件Eの「コンクリート護岸を打ち抜」くことに当たらない。 さらに,構成要件Eの「連続壁」とは,既存のコンクリート護岸と当該コンクリート護岸に打設された鋼管杭列により構成された壁体であり,これにより確実に止水性が確保された鋼管杭列を意味する。控 ない。 さらに,構成要件Eの「連続壁」とは,既存のコンクリート護岸と当該コンクリート護岸に打設された鋼管杭列により構成された壁体であり,これにより確実に止水性が確保された鋼管杭列を意味する。控訴人方法は,鋼管杭より河川側のコンクリートブロック積護岸と土砂を除去する前に,鋼管杭列の河川背面側に薬液を注入し,その後,鋼管杭と鋼管杭の25cmの隙間に鋼板を溶接して連続壁を構築する方法であって,構成要件Eの「連続壁」に当たらない。 加えて,前記イと同様,先端に15個のビットを備えた鋼管杭で,コンクリートブロックやコンクリートに対して回転圧入する場合であっても,特許請求の範囲や本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,同一の切削用鋼管杭で連続壁を構築するものであるから,先端に6個のビットを備えた鋼管杭に取り替えた上で,裏込材や土砂に対して回転圧入して,鋼管杭列を構築するものは,構成要件Eの「連続壁を構築」することに当たらない。 したがって,控訴人方法は,構成要件Eを充足しない。 オ構成要件Fの充足性について構成要件Fの「上記鋼管杭列」は,切削用鋼管杭で構築した鋼管杭列を指すから,控訴人方法の先端に9個又は6個のビットを備えた鋼管杭で構築した鋼管杭列は, 構成要件Fの「上記鋼管杭列」に当たらない。 また,構成要件Fは,既存のコンクリート護岸に鋼管杭を打設して鋼管杭列が形成された後に,当該鋼管杭列の河川側のコンクリート護岸と土砂を除去すること,及び,鋼管杭列の河川と反対側に従来のコンクリート護岸が残存することにより有効活用されることを意味する。控訴人方法では,鋼管杭列を構築した時点で連続壁が構築できず,鋼管杭列を構築した後,薬液注入や鋼板を溶接しながら段階的に河川側のコンクリートブロック積護岸を除去するものである。控訴 ることを意味する。控訴人方法では,鋼管杭列を構築した時点で連続壁が構築できず,鋼管杭列を構築した後,薬液注入や鋼板を溶接しながら段階的に河川側のコンクリートブロック積護岸を除去するものである。控訴人方法では,鋼管杭列の河川と反対側に従来のコンクリートブロック積護岸を残存させず,有効活用することもない。 したがって,控訴人方法は,構成要件Fを充足しない。」 4 原判決26頁8行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入し,同9行目冒頭の「エ」を「オ」に改める。 「エ公然実施された護岸補修工事に基づく本件発明の容易想到性(ア) 本件発明と公然実施された発明との対比a 公然実施された発明乙70(被控訴人技研のホームページ。枝番号を含む。)及び乙72(技研施工のホームページ。枝番号を含む。)に加えて,乙74の3ないし74の6(情報公開によって取得された竣工図)によれば,技研施工は,本件特許の出願前である平成13年9月から10月にかけて,神奈川県横浜市神奈川区幸ケ谷地内で準用河川滝の川補修工事(以下「滝の川工事」という。)を施工し,発明(以下,滝の川工事で実施された発明を「滝の川発明」という。)を公然実施した。滝の川発明の内容は,次のとおり分説できる内容であった。 (a) 鋼矢板を圧入できる鋼矢板杭圧入装置を用いて,(b) 先端にビットを備えたオーガヘッドを有するオーガスクリューを(c) コンクリート護岸を打ち抜き,オーガスクリューを引き抜きながら鋼矢板をコンクリート護岸に圧入して鋼矢板杭列を構築し, (d) この鋼矢板杭列から反力を得ながら,(e) 上記鋼矢板杭列に連続して上記オーガヘッドを有するオーガスクリューを回転させつつ,コンクリート護岸を打ち抜いて,鋼矢板を圧入して鋼矢板連続壁を構築する, の鋼矢板杭列から反力を得ながら,(e) 上記鋼矢板杭列に連続して上記オーガヘッドを有するオーガスクリューを回転させつつ,コンクリート護岸を打ち抜いて,鋼矢板を圧入して鋼矢板連続壁を構築する,(f) 護岸の連続構築方法。 b 本件発明と滝の川発明との相違点(a) 滝の川発明は,「鋼矢板を圧入できる鋼矢板杭圧入装置」であるのに対し,本件発明は「鋼管杭を回転圧入できる鋼管杭圧入装置」である点(相違点1)(b) 滝の川発明は,「先端にビットを備えたオーガヘッドを有するオーガスクリューでコンクリート護岸を打ち抜き,オーガスクリューを引き抜きながら鋼矢板をコンクリート護岸に圧入して鋼矢板杭列を構築する」ものであるのに対し,本件発明は「先端にビットを備えた切削用鋼管杭でコンクリート護岸を打ち抜いて圧入して鋼管杭列を構築する」点(相違点2)(c) 滝の川発明は,連続壁を構築した後の処理形態が不明であるのに対し,本件発明は「鋼管杭列の河川側のコンクリート護岸と土砂を除去する」点(相違点3)(イ) 相違点に係る構成の容易想到性連続壁を鋼矢板ではなく,鋼管杭を使用することは,乙70の4(33頁)にもあるとおり,公知技術であった。また,乙71(特開平6-240672号公報)には,鋼管杭の圧入装置が開示されており,「本実施例は,適用する杭を鋼管矢板Pとしたが,他の杭,例えば鋼矢板やコンクリート矢板等にもクランプ12,13の形状を変更することで適宜対応することができる。」(【0019】)と記載されていることから,乙71は,鋼矢板杭と鋼管矢板杭の置換可能性を教示している。先端にビットを備えた切削用鋼管を使用することは,公報1,2及び5に開示されている。 これらによれば,滝の川発明について,コンクリート護岸を打ち抜く場合,先端 管矢板杭の置換可能性を教示している。先端にビットを備えた切削用鋼管を使用することは,公報1,2及び5に開示されている。 これらによれば,滝の川発明について,コンクリート護岸を打ち抜く場合,先端にビットを備えた切削用鋼管を利用し,かつ,切削用鋼管を回転圧入するように構 成することに格別の創意を要するものではないから,前記相違点1及び2に係る構成は容易想到である。 また,河川側のコンクリート護岸と土砂を除去することは,河川工事の目的に応じて当業者が適宜採用する汎用技術であるから,前記相違点3に係る構成も容易想到である。 以上のとおり,本件発明は,乙70,71,72,公報1,2及び5に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものである。」 5 原判決31頁15行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入し,同16行目冒頭の「エ」を「オ」に改める。 「エ公然実施された護岸補修工事に基づく本件発明の容易想到性について(ア) 第三者が外部から滝の川工事を観察しても,地中の状態は一切分からないし,そもそも圧入工事全体としてみれば,鋼矢板58枚中の2枚がやむを得ず障害物を打ち抜いたにすぎないので,コンクリートを直接打ち抜いた工事を公知とすることは誤りである。 (イ) 滝の川工事は,鋼矢板をアースオーガと組み合わせて圧入する方法を適用したから可能だったのであって,アースオーガを使用しなければ鋼矢板を圧入することはできなかった。鋼管杭にビットを設けたとしても,ハンマーグラブのような大型装置を併用しなければ硬質地盤に回転圧入することは困難であって,鋼矢板をアースオーガを使用して圧入している滝の川発明について,ビットを備えた鋼管杭の回転圧入に変更することは,成功の可能性を予測することができなかった。 竣工図を参照し することは困難であって,鋼矢板をアースオーガを使用して圧入している滝の川発明について,ビットを備えた鋼管杭の回転圧入に変更することは,成功の可能性を予測することができなかった。 竣工図を参照しても,工事前の時点でコンクリートが存在しているか,存在しているとしてどの位置に存在するかを知ることはできない。また,竣工図が公知となるのは,現実に情報公開請求により開示がされた時点であって,本件特許出願前に開示の申請がされたとの立証もない。」 6 原判決36頁22行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「被控訴人技研について損害が発生したとするためには,控訴人による本件特許 の侵害がなければ,被控訴人技研が本件特許を実施でき利益を得ることができたとする因果関係のあることが必要である。しかし,被控訴人技研は,河川工事の競争入札に参加する資格がなく,自らはもとより下請企業を介しても本件特許を実施できなかったのであるから,このような因果関係は認められない。 また,技研施工は,本件特許について何らの権利を有する者でもなく,本件各工事を控訴人が受注したからといって,技研施工にはなんらの損害も生じない。」第4 当裁判所の判断 1 当裁判所も,原判決と同様に,被控訴人技研の主位的請求は3785万9733円及び訴状送達の日の翌日(平成22年12月10日)からの遅延損害金,被控訴人新日鐵の三次的請求は3646万1733円及び同日からの遅延損害金の限度で理由があり,その余の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「第3 当裁判所の判断」(原判決37頁14行目から90頁7行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決46頁7行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「また ,原判決の「第3 当裁判所の判断」(原判決37頁14行目から90頁7行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決46頁7行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「また,控訴人は,「連続壁」とは,既存のコンクリート護岸と当該コンクリート護岸に打設された鋼管杭列により構成された壁体であり,これにより確実に止水性が確保された鋼管杭列を意味するところ,鋼管杭列の河川背面側に薬液を注入し,その後,鋼管杭と鋼管杭の25cmの隙間に鋼板を溶接して連続壁を構築する控訴人方法はこれに当たらないとも主張する。 しかし,前記(2)アのとおり,「コンクリート護岸」とは,川岸や海岸等を流水等による浸食作用から保護するために,法覆工,基礎工及び根固工等によって形成され,法面をコンクリートブロック,コンクリート,自然石又はこれに類する物で被覆するとともに,これらの背面に裏込材を充填した構造物を意味するものであると解される。加えて,鋼管杭同士は,接触して並び,又は一定の間隔を開けて並ぶのであるから(甲2の【0013】,【0016】),止水性を有しない裏込材を打ち抜いた鋼管杭が一定の間隔を開けて並んだ場合,当該鋼管杭列のみによっては止水性 が得られないことは,本件発明の予定するところである。「連続壁」を確実に止水性が確保された鋼管杭列に限定する理由はなく,控訴人の主張は採用できない。」 3 原判決46頁21行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「控訴人は,控訴人方法では,鋼管杭列を構築した時点で連続壁が構築できず,鋼管杭列を構築した後,薬液注入や鋼板を溶接しながら段階的に河川側のコンクリートブロック積護岸を除去するとして,構成要件Fを充足しないとも主張する。 しかし,控訴人方法によって「連続壁」が構築されることは,前記 した後,薬液注入や鋼板を溶接しながら段階的に河川側のコンクリートブロック積護岸を除去するとして,構成要件Fを充足しないとも主張する。 しかし,控訴人方法によって「連続壁」が構築されることは,前記(4)のとおりであって,また,控訴人方法によっても,段階的にせよ河川側のコンクリート護岸と土砂が除去されるのであるから,控訴人の主張は採用できない。」 4 原判決80頁11行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入し,同12行目冒頭の「(5)」を「(6)」に改める。 「(5) 公然実施された護岸補修工事に基づく本件発明の容易想到性についてア時機に後れた攻撃防御方法控訴人は,控訴審に至って,新たな無効事由を主張する。当該主張は,平成13年に実施された滝の川工事で公然実施された滝の川発明に基づくものであるところ,滝の川工事に関する記載は,遅くとも原審口頭弁論終結以前には,被控訴人技研及び技研施工のホームページに掲載されていたと認められるから(甲61),時機に後れている。また,時機に後れたのは控訴人の過失によるものであるし,新たな無効事由の主張は,訴訟の完結を遅延させるものであるから,上記主張を却下する。 なお,念のため,控訴人の主張について判断すれば,次のとおり,控訴人の主張は採用できない。 イ滝の川発明の公然性について滝の川工事で実施された施工方法の一部は,地中で行われているものであって,外見からはどのような工事が行われているかは判然としない。 この点について,控訴人は,本件特許の出願時までに保有する行政機関に対する情報公開によって入手が可能となった滝の川工事の竣工図(乙74の3ないし74 の6)を参照すれば地中で行われた部分についても公然性を充たし得るとする。 これらの竣工図には,「基礎コンクリート(18N よって入手が可能となった滝の川工事の竣工図(乙74の3ないし74 の6)を参照すれば地中で行われた部分についても公然性を充たし得るとする。 これらの竣工図には,「基礎コンクリート(18N/mm2)」あるいは「間詰めコンクリート(18N/mm2)」を表す線と鋼矢板を表す線が交差して描かれている。しかし,「基礎コンクリート」及び「間詰めコンクリート」は,「18N/mm2」との強度を示す表示が直後に指示されていることからしても,地中の既存の構造物を指すのではなく,既設護岸のコンクリートブロックを撤去した後に,鋼矢板前面の露出した基礎地盤を被覆するために新たに打設するコンクリート層を指すと解するのが相当である。 そうすると,前記竣工図の記載をもってしても,滝の川工事のうち,地中で行われている工程については,外見からは知ることができず,地中で行われる工程については公然と実施したとまでは認められない。 そうすると,滝の川発明に基づいて本件発明が容易想到であるとする控訴人の主張は,失当である。 ウ本件発明の容易想到性について滝の川発明について公然性を肯定したとしても,滝の川工事においては,当初はコンクリート護岸を避けた陸側に鋼矢板を打ち込む計画であったところ,31枚目か32枚目の鋼矢板について,予想外の地中の障害物を打ち抜いたため,工事法線を少しずつ陸側にずらし,鋼矢板2枚分のみ地中の障害物を打ち抜いたものであることが認められる(甲61)。 そして,この地中の障害物がコンクリート護岸の一部であったか否かも判然としない(乙70の4,乙72の5の記載は推定にすぎない。乙74の3ないし74の6の記載からは,コンクリート護岸の一部であったとは認定できないことは前記イのとおりである。)のであるから,滝の川発明がコンクリート護岸を 4,乙72の5の記載は推定にすぎない。乙74の3ないし74の6の記載からは,コンクリート護岸の一部であったとは認定できないことは前記イのとおりである。)のであるから,滝の川発明がコンクリート護岸を打ち抜くものであるとの前提の控訴人の主張はこの点で失当である。 また,仮に,地中の障害物がコンクリート護岸の一部であったとしても,滝の川発明と本件発明とを対比すると,本件発明は「コンクリート護岸を打ち抜いて連続 壁を構築」する方法であるのに対して,滝の川発明は,「(鋼矢板の一部について)予想外にコンクリート護岸の一部を打ち抜いて連続壁を構築」する方法であるとの点で相違する。控訴人の指摘する各文献には,コンクリート護岸を敢えて打ち抜き,これを有効活用する点については,何ら言及されるものではないから,滝の川発明に控訴人の指摘する各文献に記載の技術を適用しても,本件発明に至るものではない。この点からしても,控訴人の指摘は失当である。」 5 原判決84頁14行目から19行目までを,次のとおり改める。 「また,控訴人は,被控訴人技研が技研施工と別法人であり,本件発明を実施しているとはいえないから,民法709条による損害を被っていないと主張する。しかし,技研施工は被控訴人技研の完全子会社であること,被控訴人技研は本件発明に係る工法を用いた護岸工事を技研施工に受注させていたこと,被控訴人技研と技研施工は本店所在地と東京での拠点が同一建物内であり,被控訴人技研の代表取締役は技研施工の役員を兼務していること(甲50ないし52)を考慮すれば,被控訴人技研は,本件JVの不法行為によって,技研施工の株式価値の上昇益を通じて通常得られたはずの利益を得ることができなかったと認めることができるのであって,控訴人の上記主張は,採用することができない(最高裁平 は,本件JVの不法行為によって,技研施工の株式価値の上昇益を通じて通常得られたはずの利益を得ることができなかったと認めることができるのであって,控訴人の上記主張は,採用することができない(最高裁平成元年第1400号同5年9月9日第一小法廷判決・民集47巻7号4814頁参照)。」 6 以上によれば,控訴人の本件控訴は理由がない。よって,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官小田真治
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