令和2(行ウ)54 託送料金認可取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年3月22日 福岡地方裁判所
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判決文本文48,754 文字)

1 主 文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 経済産業大臣が、令和2年9月4日付けで九州電力送配電株式会社(以下「九 州電力送配電」という。)に対して行った託送料金単価を変更する旨の託送供給 等約款の認可決定(以下「本件処分」という。)を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の骨子 ⑴ 原告は、小売電気事業者であり、平成28年6月30日、一般送配電事業 者であった九州電力株式会社(以下「九州電力」という。)との間で、九州電 力の定める託送供給等約款に基づき接続供給兼基本契約(以下、その契約の 有効期間を問わず、「本件接続供給契約」という。)を締結し、小売供給を受 けようとする者に対し、電気の供給をしていた。 経済産業大臣は、平成29年9月、一般送配電事業託送供給等約款料金算 定規則(以下、後記の改正後、令和3年経済産業省令第22号による改正前 のものを「本件算定規則」という。)を改正して、一般送配電事業者が、一般 送配電事業を運営するに当たって必要であると見込まれる営業費として、賠 償負担金相当金及び廃炉円滑化負担金相当金(以下「賠償負担金相当金等」 という。)の額を算定しなければならない旨の規定(本件算定規則4条2項) 等を設け、また、電気事業法施行規則(以下、後記の改正後、令和4年経済 産業省令第24号による改正前のものを「本件施行規則」という。)を改正し て、①一般送配電事業者が経済産業大臣の通知に従い賠償負担金及び廃炉円 滑化負担金(以下「賠償負担金等」という。)をその接続供給の相手方から回 収しなければならない旨(本件施行規則45条の21の2及び45条の21 2 の5)及び②原子力発電事業者が賠償負担金等の額について経済産業大臣の 承認を受けなけれ 。)をその接続供給の相手方から回 収しなければならない旨(本件施行規則45条の21の2及び45条の21 2 の5)及び②原子力発電事業者が賠償負担金等の額について経済産業大臣の 承認を受けなければならない旨(本件施行規則45条の21の3及び45条 の21の6)の規定等を設け(なお、本件施行規則は、平成30年3月にも 更に所要の改正がされた。)、これらの改正後の規定を令和2年4月1日に施 行した。 九州電力送配電は、令和2年4月、九州電力から一般送配電事業等を承継 し、同年7月28日、経済産業大臣に対し、本件算定規則4条2項に規定さ れた賠償負担金相当金等の額を営業費として算定し、これに基づいて託送料 金単価を変更する旨の託送供給等約款の変更認可の申請をしたところ、同年 9月4日付けで、経済産業大臣から、上記申請に係る託送供給等約款の変更 を認可する旨の処分(本件処分)を受けた。 ⑵ 本件は、原告が、経済産業大臣の九州電力送配電に対する託送料金単価を 変更する旨の託送供給等約款の変更認可処分(本件処分)について、①本件 算定規則4条2項は、電気事業法(令和2年法律第49号による改正前のも の。以下「法」という。)の委任に基づくことなく又は法の委任の範囲を越え て、賠償負担金相当金等の額の算定を規定するもので違憲・違法である、② 本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5は、法律の委任に基づ くことなく、接続供給の相手方の一般送配電事業者に対する賠償負担金等の 支払義務を課すもので違憲であるとして、上記各規則に基づいてされた本件 処分は違法・無効であると主張し、被告を相手に、本件処分の取消しを求め る事案である。 2 関係法令等の定め 別紙2のとおり。 3 前提事実(当事者間に争いがないか、各項掲記の証拠及び 主張し、被告を相手に、本件処分の取消しを求め る事案である。 2 関係法令等の定め 別紙2のとおり。 3 前提事実(当事者間に争いがないか、各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によ り容易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番を含む。) 別紙3記載のとおり(以下、この事実を別紙3の項番号等により「前提事実 3 1⑴」等と略称して引用する。)。 4 争点及び争点に関する当事者の主張 本件の争点は、次のとおりであり、これに関する当事者の主張は、別紙4記 載のとおりである。 本案前の争点 原告適格の有無(争点1) 本案の争点 ア 行政事件訴訟法10条1項による主張制限の有無(争点2) イ 本件算定規則4条2項の合憲性及び適法性(争点3) ウ 本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5の合憲性(争点4) 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告適格の有無) 判断枠組み 行政事件訴訟法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条1 項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、 当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は 必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政 法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させる にとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべき ものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法 律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に 侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有す るものというべきである。そして、処分の相手方以外の者について上記の法 律上保護 に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に 侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有す るものというべきである。そして、処分の相手方以外の者について上記の法 律上保護された利益の有無を判断するに当たっては、当該処分の根拠となる 法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該 処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、この場合におい 4 て、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共 通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、当該利益の内 容及び性質を考慮するに当たっては、当該処分がその根拠となる法令に違反 してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害さ れる態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項、最高裁平成16年 (行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号26 45頁参照)。 ⑵ 検討 上記の見地に立って、原告が本件処分の取消しを求める原告適格を有する か否かについて検討する。 ア 法は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、電気 の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、電 気工作物の工事、維持及び運用を規制することによって、公共の安全を確 保し、及び環境の保全を図ることを目的として、電気事業について規制を 定めている(1条)。 一般送配電事業者は、①その申請が「その一般送配電事業の開始がその 供給区域における需要に適合すること」等の要件のいずれにも適合してい ると認められる場合(法5条)に経済産業大臣の許可(法3条)を受けた 上、経済産業大臣が指定する期間内に、その事業を開始しなければならず (法7条1項)、②その供給区域における託送供給 れにも適合してい ると認められる場合(法5条)に経済産業大臣の許可(法3条)を受けた 上、経済産業大臣が指定する期間内に、その事業を開始しなければならず (法7条1項)、②その供給区域における託送供給等に係る料金その他の 供給条件について、経済産業省令で定める期間ごとに、経済産業省令で定 めるところにより、託送供給等約款を定め、経済産業大臣の認可を受けな ければならず(法18条1項前段)、③②の認可を受けた託送供給等約款 (同条5項若しくは8項の規定による変更の届出があったとき、又は法1 9条2項の規定による変更があったときは、その変更後のもの)以外の供 給条件により託送供給等を行ってはならない(法18条2項)とされてい 5 る。 上記②の経済産業大臣の認可は、㋐料金が能率的な経営の下における適 正な原価に適正な利潤を加えたものであること(法18条3項1号)、 ㋑ 当該認可の申請に係る託送供給等約款により電気の供給を受ける者が託 送供給等を受けることを著しく困難にするおそれがないこと(同項2号)、 ㋒料金の額の算出方法が適正かつ明確に定められていること(同項3号)、 ㋓一般送配電事業者及び当該認可の申請に係る託送供給等約款により電 気の供給を受ける者の責任に関する事項並びに電気計器及び工事に関す る費用の負担の方法が適正かつ明確に定められていること(同項4号)、 ㋔特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと(同項5 号)、㋕㋐~㋔に掲げるもののほか、公共の利益の増進に支障がないこと (同項6号)が要件とされている。また、経済産業大臣は、上記②の認可 をしようとするときは、あらかじめ、電力・ガス取引監視等委員会(これ は、法律、経済、金融又は工学に関して専門的な知識と経験を有し、その 職務に関し公正かつ中立な判断をすることができる者である委員長及 をしようとするときは、あらかじめ、電力・ガス取引監視等委員会(これ は、法律、経済、金融又は工学に関して専門的な知識と経験を有し、その 職務に関し公正かつ中立な判断をすることができる者である委員長及び 委員をもって組織される。法66条の5、66条の7参照)の意見を聴か なければならない(法66条の11第1項5号)とされている。 そして、一般送配電事業者は、④経済産業省令で定める期間中において、 これを変更しようとするときは、料金を引き下げる場合その他の電気の使 用者の利益を阻害するおそれがないと見込まれる場合として経済産業省 令で定める場合(法18条4項参照。この場合は、変更後の託送供給等約 款を経済産業大臣に届け出なければならない〔同条5項〕。)を除き、上記 ②の認可を得なければならない(同条1項後段)とされている。 イ 法は、託送供給制度等の導入経緯(前提事実1⑵ア・⑷ア)に照らす と、電気料金を最大限抑制する観点から、小売分野の全面自由化により 電気事業者間の競争を促進する一方で、一般送配電事業者の制度的独占 6 の弊害から電気の使用者の利益を保護し、一般送配電事業者の供給区域 における託送供給等に係る料金その他の供給条件の適正性や事業者間の 実質的公平性を確保する観点から、一般送配電事業者に対して託送供給 等約款の設定義務を課した上、その託送供給等約款の設定又は変更につ いては、原則として上記ア㋐~㋕の事項を要件とする経済産業大臣の認 可を要するものとしている(上記ア②・④)。このように、一般送配電事 業については、電気事業者間の競争を促進しつつ、一般送配電事業者と 電気の供給を受ける者との間の供給条件となる託送供給等約款の設定又 は変更について、料金の額又はその算出方法の適正性に加え、当該託送 供給等約款により電気の供給を受ける者が託 しつつ、一般送配電事業者と 電気の供給を受ける者との間の供給条件となる託送供給等約款の設定又 は変更について、料金の額又はその算出方法の適正性に加え、当該託送 供給等約款により電気の供給を受ける者が託送供給等を受けることを著 しく困難にするおそれがないこと等の認可要件に関する経済産業大臣の 判断を通じて、電気の供給を受ける者(個々の小売電気事業者)におい て適正な市場競争を営むことができるよう、料金その他の供給条件の適 正性や事業者間の実質的公平性を確保する仕組みが設けられているもの といえる。 そして、一般送配電事業者の託送供給等約款の設定又は変更に係る経 済産業大臣の認可が、電気事業を取り巻く国内外の社会情勢、経済状況、 自然環境、国民生活や経済活動への影響その他の諸事情を踏まえた上で、 当該一般送配電事業者の供給区域における供給条件が電気の供給を受け る者(小売電気事業者)において適正な市場競争を営むことができるも のであることについての適切な考慮を欠くものであるならば、当該供給 区域における料金その他の供給条件の適正性や事業者間の実質的公平性 が損なわれ、電気の供給を受ける者(小売電気事業者)がこのような供 給条件を強いられ(上記ア③参照)、ひいては、電気の使用者の利益の保 護及び電気事業の健全な発達が害されるおそれが生じ得るものといえる。 そうすると、法は、上記のようなおそれが生ずることを避けるため、前 7 記 のような一般送配電事業の供給条件に係る規制の仕組みを設けてい るのであるから、上記認可の判断に当たっては、その事柄の性質上、経 済産業大臣に一定の裁量が与えられていると解されるものの、上記のよ うな事項を適切に考慮することが求められるものというべきである。 ウ 以上のような一般送配電事業の供給条件に係る規制の仕組み及び内容、 そ に一定の裁量が与えられていると解されるものの、上記のよ うな事項を適切に考慮することが求められるものというべきである。 ウ 以上のような一般送配電事業の供給条件に係る規制の仕組み及び内容、 その規制に係る法の趣旨及び目的、一般送配電事業者の託送供給等約款の 設定又は変更に係る経済産業大臣の認可の性質及び内容等を総合考慮す ると、法は、一般送配電事業者の供給区域における料金その他の供給条件 の適正性や事業者間の実質的公平性が損なわれることにより、電気の使用 者の利益の保護及び電気事業の健全な発達が害されるおそれが生ずるこ とを防止するため、上記イ のような規制を設け、一般送配電事業者から の託送供給等約款の設定又は変更の申請に対して経済産業大臣が上記イ のような事項を考慮してその許否を判断することを通じて、当該供給区 域における電気事業者間の適正な市場競争を確保する上でその基盤とな るものとして、個々の電気の供給を受ける者(小売電気事業者)の個別的 利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。 したがって、当該託送供給等約款の定める供給条件により電気の供給を受 ける者(小売電気事業者)は、一般送配電事業者に対してされた当該託送 供給等約款の変更に係る経済産業大臣の認可処分について、その取消しを 求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告 適格を有するものというべきである。 エ これを本件についてみると、前提事実によれば、原告は、九州電力送配 電との間で、本件接続供給契約を締結し、九州電力送配電の託送供給等約 款の定める供給条件により電気の供給を受ける者であり(前提事実2⑵)、 本件処分は、九州電力送配電の申請に係る当該託送供給等約款の変更(託 送料金単価を変更する旨のもの)を認可する旨のものである(前提事実2 8 供給条件により電気の供給を受ける者であり(前提事実2⑵)、 本件処分は、九州電力送配電の申請に係る当該託送供給等約款の変更(託 送料金単価を変更する旨のもの)を認可する旨のものである(前提事実2 8 ⑶)。そうすると、原告は、九州電力送配電に対してされた本件処分につい て、その取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消 訴訟における原告適格を有するものと認められる。 ⑶ 被告の主張について これに対し、被告は、別紙4の⑴(被告の主張)イのとおり主張するが、 次の点に照らし、被告の上記主張を採用することはできない。 ア 法は、その目的として、「電気の使用者の利益」の保護及び「電気事業の 健全な発達」を図ることを掲げているところ(1条)、前記⑵において説示 したような一般送配電事業の供給条件に係る規制の仕組み及び内容等に 照らすと、「電気の使用者の利益の保護」と「電気事業の健全な発達」のい ずれの点についても、電気の供給を受ける者(小売電気事業者)を含む電 気事業者間の適正な競争の促進が前提となっているから、電気の供給を受 ける者(小売電気事業者)の個別的利益を保護することをその目的とする ことを否定するものではないと解される。 イ 前記⑵のような法が規定する一般送配電事業の供給条件に係る規制の仕 組み及び内容は、一般送配電事業者の託送供給等約款の設定又は変更に係 る経済産業大臣の認可を通じて、事業許可制の下で自らの供給区域におい て地域独占的立場を有する一般送配電事業者が、その独占的地位を利用し て託送供給等に係る料金その他の供給条件について恣意的に定めたり、託 送供給等を受ける事業者間で不当な差別的取扱いをしたりすることを防止 することにより、最終的に電気の使用者の利益を保護し、電気事業の健全 な発達を図ることを目的とするも 条件について恣意的に定めたり、託 送供給等を受ける事業者間で不当な差別的取扱いをしたりすることを防止 することにより、最終的に電気の使用者の利益を保護し、電気事業の健全 な発達を図ることを目的とするものである。これは、当該供給区域におけ る電気事業者間の適正な市場競争を確保する上でその基盤となるものとし て、託送供給等約款に基づき託送供給等を受ける事業者である個々の小売 電気事業者の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと 解すべきである。 9 ウ 仮に、一般送配電事業者の託送供給等約款の設定又は変更に係る経済産 業大臣の認可が前記⑵イ のような適切な考慮を欠くものであれば、当該 一般送配電事業者から託送供給等を受ける個々の小売電気事業者は、当該 託送供給等約款に係る当該供給区域における料金その他の供給条件の適正 性や事業者間の実質的公平性を損なうような供給条件を強いられ、適正な 条件の下で託送供給等を受けるという具体的利益を害されるおそれがある ことに照らせば、小売電気事業者の上記具体的利益は、重要であり、一般 的公益の中に吸収解消させることは困難であるというべきである。 そうすると、法が、このような重要な具体的利益を侵害するような当該 託送供給等約款に係る供給条件を強いられることとなる小売電気事業者が、 当該認可処分の違法性を直接争うことを許容していないものとは解されな い。 2 争点2(行政事件訴訟法10条1項による主張制限の有無) ⑴ 被告は、原告が、本案の違法事由として、託送料金の原価に賠償負担金相 当金等を算入したことについて、法の委任の範囲を超えた違法があるとして、 法18条3項1号に係る違法事由を主張するにとどまるから、原告の上記主 張は、自己の法律上の利益に関係のない違法をいうものであり、行政事件訴 訟法10条1項によりそ 委任の範囲を超えた違法があるとして、 法18条3項1号に係る違法事由を主張するにとどまるから、原告の上記主 張は、自己の法律上の利益に関係のない違法をいうものであり、行政事件訴 訟法10条1項によりその主張が制限される旨を主張する。 ⑵ しかしながら、原告が本件処分の違法事由として具体的に主張するところ は、いずれも本件処分の根拠規定である、①本件算定規則4条2項が、法の 委任に基づくことなく又は法の委任の範囲を越えて、賠償負担金相当金等の 額の算定を規定するもので違憲・違法である、②本件施行規則45条の21 の2及び45条の21の5が、法律の委任に基づくことなく、接続供給の相 手方の一般送配電事業者に対する賠償負担金等の支払義務を課すもので違憲 であるというものである。そして、前記1 イにおいて説示したとおり、法 18条3項1号は、本件処分の根拠規定であって原告適格を基礎付ける規定 10 の一つであるところ、①本件算定規則4条2項は、後記3において説示する とおり、法18条3項1号に関連するものであることが明らかであり、②本 件施行規則45条の21の2及び45条の21の5は、後記4において説示 するとおり、本件算定規則4条2項を前提とするものであるから、ひいては 法18条3項1号に関連する規定であるというべきである。 したがって、上記のような本件処分の違法事由に関する原告の主張は、自 己の法律上の利益に関係のない違法をいうものであるとはいえない。 よって、被告の上記主張は、採用することができない。 3 争点3(本件算定規則4条2項の合憲性及び適法性) 本件算定規則4条2項の合憲性及び適法性について ア 法は、「一般送配電事業者は、その供給区域における託送供給及び電力量 調整供給に係る料金その他の供給条件について、経済産業省令で定めると こ 本件算定規則4条2項の合憲性及び適法性について ア 法は、「一般送配電事業者は、その供給区域における託送供給及び電力量 調整供給に係る料金その他の供給条件について、経済産業省令で定めると ころにより、託送供給等約款を定め、経済産業大臣の認可を受けなければ ならない」旨(18条1項)を規定するほか、一般送配電事業者の託送供 給等約款の設定又は変更に係る経済産業大臣の認可の要件として、料金が 能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものである こと(同条3項1号)等を規定している。これらの規定を受けて本件算定 規則は、①一般送配電事業者が、託送等供給約款料金を算定しようとする ときは、原価算定期間(4月1日又は10月1日を始期とする1年間を単 位とした将来の合理的な期間)を定め、当該原価算定期間において一般送 配電事業等を運営するに当たり必要と見込まれる原価に利潤を加えて得 た額(原価等)を算定しなければならず(3条1項)、②原価等は、4条に より算定される営業費、5条により算定される事業報酬及び6条により算 定される追加事業報酬の合計額から7条により算定される控除収益の額 を控除して得た額とし(3条2項)、③その営業費の具体的内容及び算定方 法(4条)を規定している。 11 上記のような文言で規定された法18条1項は、託送供給等約款の定め 方に加え、その対象となる「託送供給及び電力量調整供給に係る料金その 他の供給条件」に関する細目について経済産業省令に委任する規定である ことが明らかであり、その趣旨は、料金を能率的な経営の下における適正 な原価に適正な利潤を加えたものとするためにどのような原価等の算定 方法を定めるのが相当であるかの判断には、前記1⑵イにおいて説示した ような専門技術的検討に加え、そのような検討を踏まえた政策的判断も な原価に適正な利潤を加えたものとするためにどのような原価等の算定 方法を定めるのが相当であるかの判断には、前記1⑵イにおいて説示した ような専門技術的検討に加え、そのような検討を踏まえた政策的判断も要 することから、これを経済産業省令に委任したものというべきである。し たがって、経済産業省令においていかなる原価等の算定方法を定めるかに ついては、法の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において、電気エネルギー 政策の所管行政庁である経済産業大臣に専門技術的かつ政策的な観点か らの一定の裁量権が認めているものと解するのが相当である。そして、法 の改正経緯及びその立法過程における議論(前提事実1⑵ア ・⑷ア 参 照)に照らすと、法は、託送供給制度を導入した平成11年改正当初から、 託送供給制度において、電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係 る公益的課題に要する費用を回収することを想定しており、小売分野の全 面自由化に伴う平成26年改正後も、その仕組みに変化が生じたものとは 認められないから、託送供給制度において、電気の全需要家が公平に負担 すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用を託送料金として回収す ることを許容するものであると解される。 そうすると、経済産業大臣が経済産業省令において原価等の算定方法を 定めるに当たり、託送供給制度において、電気の全需要家が公平に負担す べき電気事業に係る公益的課題に要する費用を託送料金として回収する ことを前提とすること(本件に則していえば、託送供給等に係る供給条件 の一つである料金に係る原価等の構成要素である営業費の算定に当たり、 電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する 12 費用を含めること)も、法の委任の趣旨の範囲内であると解するのが相当 である。 イ 以上の見地から本件算定規則4条2項をみると の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する 12 費用を含めること)も、法の委任の趣旨の範囲内であると解するのが相当 である。 イ 以上の見地から本件算定規則4条2項をみると、同項は、「一般送配電事 業者は、前項の規定により算定した合計額のほか、営業費として、賠償負 担金及び廃炉円滑化負担金の額を算定しなければならない。」旨を規定する。 このうち、①賠償負担金は、原子力発電事業者の運用する原子力発電工 作物及び廃止した原子力発電工作物に係る原子力損害(原子力損害の賠償 に関する法律2条2項に規定する原子力損害及びこれに相当するものをい う。)の賠償のために備えておくべきであった資金であって、旧原子力発電 事業者が平成23年3月31日以前に原価として算定することができなか ったものであり(本件施行規則45条の21の3第1項)、内閣が閣議決定 した「原子力災害からの福島復興の加速のための基本方針」(乙39)にお いて、国民全体で福島を支える観点から、福島第一原子力発電所の事故前 には確保されていなかった分の賠償の備えについてのみ、広く需要家全体 の負担とし、そのために必要な託送料金の見直し等の制度整備を行うとし て、本来納付されておくべきであった過去(原子炉運転当初から)の原子 力損害の賠償への備えの不足分の費用(約3.8兆円から令和元年度分ま での推定類型納付額約1.3兆円を控除した約2.4兆円)について、需 要家への負担を求めるために40年度程度にわたって回収していくもので ある(前提事実1⑶ア参照)。このような賠償負担金は、原子力発電という 国のエネルギー・電気事業政策を進める上で、原子力の損害賠償に対処す るために必要な費用であり、過去に安価な原子力発電による電気を等しく 利用してきたにもかかわらず、原子力発電事業者から契約を切り替えた需 のエネルギー・電気事業政策を進める上で、原子力の損害賠償に対処す るために必要な費用であり、過去に安価な原子力発電による電気を等しく 利用してきたにもかかわらず、原子力発電事業者から契約を切り替えた需 要家は負担せず、引き続き原子力発電事業者から電気の供給を受ける需要 家のみが全てを負担することは、需要家間の公平性の観点から適当ではな く、こうした需要家間の格差を解消し、公平性を確保するためには、全需 13 要家が等しく受益していた過去分について、託送料金を通じて、原子力発 電の利益を受けた全ての需要家から公平に回収すること適当である旨の専 門家の意見(貫徹小委員会中間とりまとめ)を踏まえ(前提事実1⑷ア )、 国会審議においても、託送料金によって賠償負担金相当金を回収すること の必要性等につき議論がされた上で(前提事実1⑷ア 参照)、本件算定規 則4条2項の改正により導入されたものである(前提事実1⑷イ参照)。 また、②廃炉円滑化負担金は、特定原子力発電事業者が受けた所定の承 認に係る原子力発電工作物の廃止を円滑に実施するために必要な資金であ り(本件施行規則45条の21の6第1項)、平成26年の小売全面自由化 以前から、原発依存度の低減という国のエネルギー政策における基本方針 の中、原子力発電事業者が会計上の理由から廃炉判断を躊躇することや廃 炉の円滑な実施に支障を来すことがないよう措置された廃炉会計制度を継 続するためのものである(前提事実1⑶イ)。このような廃炉円滑化負担金 は、廃炉会計制度が、原発依存度の低減という国のエネルギー政策に沿っ て措置されたものであり、小売全面自由化においてもその政策に変わりが ないことから、制度を継続することが適当であり、そのために必要となる 着実な費用回収の仕組みについては、小売全面自由化の下でも原発依存度 低減や廃炉の であり、小売全面自由化においてもその政策に変わりが ないことから、制度を継続することが適当であり、そのために必要となる 着実な費用回収の仕組みについては、小売全面自由化の下でも原発依存度 低減や廃炉の円滑な実施等のエネルギー政策の目的を達成するために例外 的な措置として、規制料金として残る託送料金の仕組みを利用することが 妥当である旨の専門家の意見(貫徹小委員会中間とりまとめ)も踏まえ(前 提事実1⑷ア 参照)、国会においても、託送料金によって廃炉円滑化負担 金(相当金)を回収することの必要性等につき議論された上で(前提事実 1⑷ア )、本件算定規則4条2項の改正により導入されたものである(前 提事実1⑷イ参照)。 以上に加え、国の電気・エネルギー事業に係る政策と密接に関わる①原 子力損害の賠償への備えや②廃炉会計制度の継続に必要な費用の回収の在 14 り方及びその仕組みの構築は、その性質上、専門技術的・政策的な領域に 属するものであることを踏まえると、賠償負担金(賠償負担金相当金)及 び廃炉円滑化負担金(廃炉円滑化負担金相当金)は、電気の全需要家が公 平に負担すべき電気事業に係る公益的課題に要する費用であるといえ、こ れらを託送供給等約款料金に係る原価等(具体的には営業費)の構成要素 とした本件算定規則4条2項の規定は、法の委任の趣旨及び所管行政庁で ある経済産業大臣の裁量権の範囲を逸脱するものとはいえない。 ⑵ 原告の主張について ア これに対し、原告は、要旨次の点を主張する。 ① 本件算定規則4条2項は、法18条3項1号に規定する「適正な原 価」、すなわち「一般送配電事業を営むために必要な費用」の具体的な 細目を明示し、その算定方法を示すためのものであるところ、法は、 「一 般送配電事業を営むために必要な費用」以外のものを託送料等として 算定する なわち「一般送配電事業を営むために必要な費用」の具体的な 細目を明示し、その算定方法を示すためのものであるところ、法は、 「一 般送配電事業を営むために必要な費用」以外のものを託送料等として 算定することや供給条件を定めることを省令に委任しているわけでは なく、法18条1項は、認可申請の手続のみを定めることを省令に委任 する規定である。 ② 原告は、本件算定規則4条1項が規定する「営業費」は、同項に列 挙された細目の内容が一般送配電事業を営むために必要な費用である ことや、小売電気事業が全面自由化されてからは一般送配電事業を営 むために必要な費用以外のものを託送料金の原価に含ませることはで きなくなったというべきであることを前提として、本件施行規則にお ける賠償負担金等の定め方、賠償負担金等の用語の定義、賠償負担金 相当金等は発電事業に関連する費用で原子力発電事業者が負担すべき ものであることを踏まえると、賠償負担金等は、一般送配電事業を営 むために必要な費用ではなく、「営業費」にも、法18条3項1号が規 定する「適正な原価」に該当しない。 15 ③ 営業費や事業報酬、控除収益は、いずれもその概念が明確であって 専門的・技術的知見が入り込む余地はなく、接続供給料金に含めてコ スト回収すべき設備や関連するサービスは具体的かつ明確に特定され なければならないのであるから、そこに経済産業大臣の裁量はない。 ④ 託送料金の原価に公益的課題に要する費用を含むことができるとし ても、託送料金で回収できるのはあくまで「託送業務に係る費用」に 限定されており、託送業務に係る費用ではなく、一般送配電事業を営 むための費用である賠償負担金等を含めることはできない。 イ 原告の主張①について 法18条1項が託送供給等に係る料金その ており、託送業務に係る費用ではなく、一般送配電事業を営 むための費用である賠償負担金等を含めることはできない。 イ 原告の主張①について 法18条1項が託送供給等に係る料金その他の供給条件等に関する細 目について定めることを経済産業省令に委任する規定であることは、前 記⑴において説示したとおり、文理上明らかであり、本件算定規則4条 2項がこのような法18条1項の委任を受けて規定されたものであるこ とは、前記⑴において説示したとおりである。 したがって、原告の主張①は、独自の見解を述べるものにすぎず、採 用することができない。 ウ 原告の主張②について 法が、託送供給制度を導入した平成11年改正当初から、託送供給制 度において、電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的 課題に要する費用を回収することを想定し、小売分野の全面自由化に伴 う平成26年改正後も、その仕組み自体に変化が生じたものとは認めら れないことは、前記⑴において説示したとおりである。廃炉円滑化負担 金については、本来、発電事業部門で負担すべき費用であり、発電事業、 送配電事業、小売事業の各事業が峻別された自由化の下では、発電に係 る費用回収のために託送料金の仕組みを利用することの妥当性が問題と なることは否定できないが(乙37【25頁】)、前記⑴で指摘したよう 16 な専門家の意見や国会における議論も踏まえて導入されたものであるこ とに照らすと、この点のみをもって法の委任の趣旨又は経済産業大臣の 裁量権の範囲を逸脱するものとはいえない。 したがって、原告の主張②は、その前提を欠き、採用することができ ない。 エ 原告の主張③について 法は、「原価」の構成要素である「営業費」等について明確に定義をし ておらず したがって、原告の主張②は、その前提を欠き、採用することができ ない。 エ 原告の主張③について 法は、「原価」の構成要素である「営業費」等について明確に定義をし ておらず、経済産業省令においていかなる原価等の算定方法を定めるか については、法の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において、電気エネル ギー政策の所管行政庁である経済産業大臣に専門技術的かつ政策的な観 点からの一定の裁量権が認めていることは、前記⑴において説示したと おりである。このように解すべきことは、現に、本件算定規則やその前 身である一般電気事業託送供給約款算定規則等において、「営業費」等と して算定すべき細目が随時変更されていること(乙16、17、53~ 56)からも裏付けられる。 したがって、原告の主張③は、独自の見解を述べるものにすぎず、採 用することができない。 オ 原告の主張④について 経済産業大臣が原価等の算定方法を定める経済産業省令において、 「託 送供給等に係る供給条件の一つである料金に係る原価等の構成要素であ る営業費の算定に当たり、電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業 に係る公益的課題に要する費用を含む」とすることが、法の委任の趣旨 の範囲内であることは、前記⑴において説示したとおりである。そして、 ここでいう電気の全需要家が公平に負担すべき電気事業に係る公益的課 題に要する費用が、託送業務に係る費用に限定されているとはいえない ことは、前記⑴において説示したところに照らして明らかである。 17 したがって、原告の主張④は、採用することができない。 ⑶ 小括 以上によれば、本件算定規則4条2項について、法の委任を欠き、又はそ の委任の範囲を超えるものとして無効であるとはいえない。 4 争点4(本件施行規則45条 ない。 ⑶ 小括 以上によれば、本件算定規則4条2項について、法の委任を欠き、又はそ の委任の範囲を超えるものとして無効であるとはいえない。 4 争点4(本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5の合憲性及び 適法性) ⑴ 前記3⑴において説示したとおり、本件算定規則4条2項は、法18条1 項等の委任を受けて、賠償負担金(賠償負担金相当金)及び廃炉円滑化負担 金(廃炉円滑化負担金相当金)を託送供給等約款料金に係る原価等(営業費) の構成要素として定めたものであり、同項の規定は、法律の委任の趣旨及び 所管行政庁である経済産業大臣の裁量権の範囲を逸脱するものとはいえない。 そうすると、一般送配電事業者は、本件算定規則4条2項に適合する料金 を定めた託送供給等約款に従って、電気の供給を受ける者から賠償負担金相 当金等を回収することとなるところ、本件施行規則45条の21の2~45 条の21の7は、原子力発電事業者・一般送配電事業者間、一般送配電事業 者・小売電気事業者間の契約関係が存在することを前提として、原子力発電 事業者が賠償負担金等を託送料金の仕組みの中で広く全ての需要家から回収 するための一連の手続を規定したものであり、法の規定(強いていえば、本 件算定規則4条2項に係る法の委任規定等である法18条1項、同条3項等) を実施するための執行命令として定められたものというべきである。 したがって、本件施行規則45条の21の2~45条の21の7は、接続 供給の相手方に賠償負担金等の支払義務を課し、一般送配電事業者にその回 収権限を付与する規定とはいえず、また、法の委任を欠くものとはいえない。 よって、本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5について、 法の委任を欠くものとして、憲法41条に反し、無効であるとはいえない。 る規定とはいえず、また、法の委任を欠くものとはいえない。 よって、本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5について、 法の委任を欠くものとして、憲法41条に反し、無効であるとはいえない。 ⑵ これに対し、原告は、本件施行規則45条の21の2及び45条の21の 18 5が、一般送配電事業者の接続供給の相手方に対し、賠償負担金等の支払義 務を課すものであり、また、一般送配電事業者について、賠償負担金等の回 収権限を定めるものであるところ、接続供給の相手方に対して賠償負担金等 の支払義務を課すことや一般送配電事業者の回収権限を定めることについて 規則に委任する規定は、法に存在しないとして、違憲であり無効である旨を 主張する。 しかしながら、前記⑴において説示したところに照らし、原告の上記主張 は、採用することができない。 5 結論 以上の次第で、原告の請求は、理由がないからこれを棄却することとし、主 文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官 林 史 高 裁判官 柴 田 啓 介 裁判官 本 城 伶 奈 19 (別紙1) 当事者目録 掲載省略 (別紙2) 関係法令 掲載省略 20 (別紙3) 前提事実 1 託送供給等に関する制度 ⑴ 小売電気事業者、一般送配電事業者及び発電事業者の概要 ア 小売電気事業者 小売電気事業者とは、一般の需要に応じ電気を供給する小売供給を行う 事業を営むことについて経済産業大臣の登録を受けた事業者をいう(法2 条1項1~3号)。 イ 一般送配電事業者 一般送配電事業者 電気事業者とは、一般の需要に応じ電気を供給する小売供給を行う 事業を営むことについて経済産業大臣の登録を受けた事業者をいう(法2 条1項1~3号)。 イ 一般送配電事業者 一般送配電事業者とは、自らが維持し、及び運用する送電用及び配電用 の電気工作物によりその供給区域において託送供給及び電力量調整供給 を行う事業を営むことについて経済産業大臣の許可を受けた事業者をい う(法2条1項8号及び9号)。 一般送配電事業者は、一般送配電事業の事業を開始すべき義務(法7条)、 事業の休止及び廃止並びに法人の解散における経済産業大臣の許可を受 けるべき義務(法14条)、託送供給義務等(法17条)、最終保障供給義 務(法20条及び17条3項)、離島供給義務(法21条及び17条3項)、 電圧及び周波数維持義務(法26条)を負うものとされている。 ウ 発電事業者 発電事業者とは、自らが維持し、及び運用する発電用の電気工作物を用 いて、小売電気事業、一般送配電事業等の用に供するための電気を発電す る事業を営むことについて経済産業大臣に対する届出をした事業者をい う(法2条1項14号及び15号)。 21 ⑵ 託送供給制度及び託送供給約款認可の仕組みについて ア 託送供給制度 託送供給制度について a 小売分野の部分自由化に伴う法の平成11年改正において、新規参 入者が需要家に対して電気を供給するために、旧一般電気事業者の送 配電設備を利用することが不可欠となることから、送配電設備を有す る旧一般電気事業者と送配電設備を持たない新規参入者との対等な競 争関係を確保する上で、送配電設備の利用に関するルールを透明で客 観的なものとして定めることが必要となり、託送供給制度が新しく創 設された(乙14【7頁】)。 規参入者との対等な競 争関係を確保する上で、送配電設備の利用に関するルールを透明で客 観的なものとして定めることが必要となり、託送供給制度が新しく創 設された(乙14【7頁】)。 b 電気事業審議会基本政策部会は、平成9年7月に設置され、託送供 給制度については、経済効率性の向上を図るための小売供給の部分自 由化と、供給の信頼度や望ましい電源構成の維持という公益的課題を 両立させるため、旧一般電気事業者、新規参入者、行政、需要家の適 切な役割等を検討してきた。同部会は、平成11年1月21日付けで、 ①託送ルールの在り方について、託送の利用条件に関しては、電力会 社の応諾要件、託送料金、接続に当たっての技術的要件及び公益的課 題との両立のための必要事項について、公平・公正・透明という原則 の下、明確化する必要があること、②公益的課題達成のための必要事 項については、公益的課題のうち、供給信頼度の確保、エネルギーセ キュリティ・環境保全に関する事項に関しては、いずれもネットワー クを保有する電力会社の給電指令によって担保されるものであること 等を踏まえ、旧一般電気事業者は新規参入者に対して託送約款に基づ く給電指令を適切に行うことを通じて公益的課題を達成すること、行 政はその公益的課題の内容設定等を行うこと、需要家は公益的課題の 成果を享受する主体として、そのために必要な負担について、全ての 22 需要家が公平に負うこと等を内容とする報告書(乙14)を提出した。 (乙14【1、7~10頁】) c 政府は、電気事業審議会基本政策部会の上記意見を踏まえ、法の改 正案を提出し、平成11年改正時の国会審議においても、電気事業の 公益的課題に対応する必要性等が議論された上(別紙3の2(第1項) は、その一部である。)、小売分野の部分自由化に伴 意見を踏まえ、法の改 正案を提出し、平成11年改正時の国会審議においても、電気事業の 公益的課題に対応する必要性等が議論された上(別紙3の2(第1項) は、その一部である。)、小売分野の部分自由化に伴う託送供給制度の 導入を内容とする法の平成11年改正が行われた。 d 電力システム改革小委員会は、総合資源エネルギー調査会(経済産 業大臣の諮問機関)の下に設置され、その作業部会である制度設計ワ ーキンググループにおいて、小売分野の全面自由化に伴う法の平成2 6年改正に際し、旧一般電気事業者が独占的に維持管理してきた送配 電設備が一般送配電事業者に引き継がれることを踏まえ、電気の全需 要家が公平に負担すべき費用の回収を検討し、 「小売全面自由化後の託 送制度においても、電気の全需要家が公平に負担すべき費用について は、負担の公平性や事業者間の競争条件の確保を前提に、託送料金で 回収できる仕組みとすることが必要ではないか。」との提言をした(乙 20【33頁】)。 e 政府は、上記dのような専門家の意見も踏まえ、法の改正案を提出し、 平成26年改正時の国会審議においても、託送料金によって電気の全 需要家が公平に負担すべき費用、すなわち、電気事業の公益的課題に 対応する費用を回収していくことの必要性につき議論された上(別紙 3の2(第2項)は、その一部である。)、小売分野の全面自由化を内 容とする法の平成26年改正が行われた。 託送供給等 託送供給とは、振替供給及び接続供給をいう(法2条1項6号)。 振替供給とは、他の者から受電した者が、その受電した場所以外の場 23 所において、当該他の者にその受電した電気の量に相当する量の電気を 供給することをいう(法2条1項4号)。 接続供給とは、①小売供給を行う事業を営む他の者から受電した者が した場所以外の場 23 所において、当該他の者にその受電した電気の量に相当する量の電気を 供給することをいう(法2条1項4号)。 接続供給とは、①小売供給を行う事業を営む他の者から受電した者が、 同時に、その受電した場所以外の場所において、当該他の者に対して、 当該他の者のその小売供給を行う事業の用に供するための電気の量に相 当する電気の量を供給すること(法2条1項5号イ)、②電気事業の用に 供する発電用の電気工作物以外の発電用の電気工作物(非電気事業用電 気工作物)を維持し、及び運用する他の者から当該非電気事業用電気工 作物の発電に係る電気を受電した者が、同時に、その受電した場所以外 の場所において、当該他の者に対して、当該他の者があらかじめ申し出 た量の電気を供給することをいう(法2条1項5号ロ)。 託送供給義務 一般送配電事業者は、その供給区域における託送供給に関する事業を 事実上独占することになるが(法3条、5条5号参照)、託送供給は、需 要家に対する電力の供給についての基盤となる業務でもある。そこで、 法は、一般送配電事業者の制度的独占の弊害から電気の使用者の利益を 保護する観点から、一般送配電事業者は、正当な理由がなければ、その 供給区域における託送供給を拒んではならない旨を規定している(法1 7条1項)。 イ 託送供給等約款の認可に係る仕組み 一般送配電事業者は、上記ア で述べた一般送配電事業者の制度的独占 の弊害から電気の使用者の利益を保護する観点から、その供給区域におけ る託送供給等に係る料金その他の供給条件について、経済産業省令で定め るところにより、託送供給等約款を定め、経済産業大臣の認可を受けなけ ればならず(これを変更しようとするときも同様である。法18条1項)、 一般送配電事業者は、認可を受けた供給約款以外の 産業省令で定め るところにより、託送供給等約款を定め、経済産業大臣の認可を受けなけ ればならず(これを変更しようとするときも同様である。法18条1項)、 一般送配電事業者は、認可を受けた供給約款以外の供給条件により、電気 24 の供給を行うことはできない(法18条2項)とされている。 また、託送供給等約款の適正性を担保する観点から、経済産業大臣は、 法18条3項各号所定の要件(1号「料金が能率的な経営の下における適 正な原価に適正な利潤を加えたものであること」、2号「第1項の認可の申 請に係る託送供給等約款により電気の供給を受ける者が託送供給等を受 けることを著しく困難にするにするおそれがないこと」、3号「料金の額の 算出方法が適正かつ明確に定められていること」、4号「一般送配電事業者 及び第1項の認可の申請に係る託送供給等約款により電気の供給を受け る者の責任に関する事項並びに電気計器及び工事に関する費用の負担の 方法が適正かつ明確に定められていること」、5号「特定の者に対して不当 な差別的取扱いをするものでないこと」、6号「前各号に掲げるもののほか、 公共の利益の増進に支障がないこと」)にいずれも適合していると認める ときは、認可をしなければならないとされている(法18条3項)。 また、託送供給等約款は、小売電気事業者等に対し、一律に適用される 供給条件を定めた定型約款であり、小売電気事業者等は当該約款に拘束さ れることとなることから、一般送配電事業者は、託送供給等約款の認可(変 更認可も含む。)を受けたときは、経済産業省令で定めるところにより、そ の託送供給等約款を公表しなければならないとされている(法18条12 項)。 ⑶ 賠償負担金等について ア 賠償負担金(原子力事故の賠償の備えの不足分として必要な費用) 賠償負担金とは、原子力発電事 款を公表しなければならないとされている(法18条12 項)。 ⑶ 賠償負担金等について ア 賠償負担金(原子力事故の賠償の備えの不足分として必要な費用) 賠償負担金とは、原子力発電事業者の運用する原子力発電工作物及び 廃止した原子力発電工作物に係る原子力損害(原子力損害の賠償に関す る法律2条2項に規定する原子力損害及びこれに相当するものをいう。) の賠償のために備えておくべきであった資金であって、旧原子力発電事 業者が平成23年3月31日以前に原価として算定することができなか 25 ったものをいう(本件施行規則45条の21の3第1項)。 原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成23年法律第94号。以下 「原賠機構法」という。)は、平成23年3月に発生した東日本大震災に 伴う東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」と いう。)後、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給 その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を図るとともに、 廃炉等の適切かつ着実な実施の確保を図ること等を目的として制定され、 原子力事業者が、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下「機構」とい う。)に対し、毎事業年度、機構の業務(所定の原子力損害が生じた場合 における当該原子力事業者が損害を賠償するために必要な資金の交付そ の他の業務)に要する費用に充てるための負担金を納付することを義務 付ける一般負担金制度(同法38条1項)が新たに導入された。 上記制度の導入後における一般負担金の納付額は、平成23年から令 和元年度分までの累計で約1.3兆円であったところ、仮に原子力発電 所が運転開始した昭和41年から一般負担金制度による納付が行われて いれば、福島第一原発事故当時には相応の賠償への備え(約3.8兆円) があったと見込まれた。 内閣は 円であったところ、仮に原子力発電 所が運転開始した昭和41年から一般負担金制度による納付が行われて いれば、福島第一原発事故当時には相応の賠償への備え(約3.8兆円) があったと見込まれた。 内閣は、平成28年12月、「原子力災害からの福島復興の加速のため の基本指針」(乙39)を閣議決定した。この中で、被災者・被災企業へ の賠償については、電力自由化が進展する環境下における受益者間の公 平性や競争中立性の確保を図りつつ、国民全体で福島を支える観点から、 福島第一原発事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについて のみ、広く需要家全体の負担とし、そのために必要な託送料金の見直し 等の制度整備を行うとして、約2.4兆円を令和2年度以降、40年程 度にわたって回収していくものとされた(乙39【26頁】)。 本件施行規則45条の21の3第1項にいう賠償負担金は、上記のよ 26 うに本来納付されておくべきであった過去の原子力損害の賠償への備え の不足分の費用(約3.8兆円から令和元年度分までの推定累計納付額 約1.3兆円を控除した約2.4兆円)について、需要家への負担を求 めることとされたものである(乙37【18~21頁】)。 イ 廃炉円滑化負担金(廃炉に関する会計制度継続のために必要な費用) 廃炉円滑化負担金とは、特定原子力発電事業者が受けた所定の承認に 係る原子力発電工作物の廃止を円滑に実施するために必要な資金をいう (本件施行規則45条の21の6第1項)。 福島第一原発事故後、全国の原子力発電所が長期にわたり稼働停止に なるとともに、「原子力依存度の低減」がエネルギー政策の基本方針とな った。 このような状況の下で、電気事業会計規則(昭和40年通商産業省令 第57号)は、平成25年10月及び平成27年3月の2回にわたり、 原子力発電事業者が会 の低減」がエネルギー政策の基本方針とな った。 このような状況の下で、電気事業会計規則(昭和40年通商産業省令 第57号)は、平成25年10月及び平成27年3月の2回にわたり、 原子力発電事業者が会計上の理由から廃炉判断を躊躇することや原子力 発電事業者による廃炉の円滑な実施に支障を来すことがないよう、設備 の残存簿価等を廃炉後も分割して償却するとの廃炉会計制度等を定める 旨の改正がされた(乙40、41)。 廃炉会計制度は、資産の償却費が廃炉後も着実に回収される料金上の 仕組みを伴うことを前提としており、廃炉後も資産計上して償却を継続 するという会計処理を行うには、計上する資産が収益獲得能力を有して いることが必要であるため、小売規制料金の原価に廃炉後の償却費を含 めることを認め、規制料金による費用回収を担保する措置を講じていた。 しかし、小売規制料金の撤廃後は着実な費用回収の前提がなくなり、制 度が成り立たなくなるため、将来に向けて廃炉会計制度を継続する上で、 着実な費用回収を担保する措置を講じる必要が生じ、その仕組みとして、 小売全面自由化以降も規制料金として残る託送料金の仕組みの中で回収 27 する措置を講ずることとした。 本件施行規則45条の21の6第1項にいう廃炉円滑化負担金は、託 送料金を通じて回収する廃炉会計制度の継続のために必要な費用である。 (乙37【24~26頁】、41、42) ⑷ 原価算入するための制度改正等 ア 改正前の議論等 内閣は、平成25年4月、平成23年3月に発生した東日本大震災を 踏まえ、①広域系統運用の拡大、②小売及び発電の全面自由化、③法的 分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保を柱とする電力シス テム改革につき、3段階に分け、各段階で課題克服のための十分な検証 を行い、その結果を踏まえた 拡大、②小売及び発電の全面自由化、③法的 分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保を柱とする電力シス テム改革につき、3段階に分け、各段階で課題克服のための十分な検証 を行い、その結果を踏まえた必要な措置を講じながら実行する旨の「電 力システムに関する改革方針」を閣議決定した(乙1)。 さらに、内閣は、原子力発電を含むエネルギー政策について、平成2 6年4月、福島の復興・再生を全力で成し遂げることや、震災前に描い てきたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減 すること等を示した「第4次エネルギー基本計画」を閣議決定した(乙 36【4頁】)。 また、法の平成26年改正前の電力システムにおいては、家庭等の需 要家への電気の供給に係る一般電気事業者の制度的独占が担保され、原 子力発電設備の長期停止や燃料コストの増加等による電気料金の上昇圧 力がある中、電気事業者間の競争を促進することにより、電気料金を最 大限抑制することが重要であると考えられたことを踏まえ、電気の小売 業への参入の全面自由化を内容とする電気事業法等の一部を改正する法 律(平成26年法律第72号。以下「平成26年改正法」という。)が成 立した(乙11【16~19頁、42~45頁】)。 平成28年4月、平成26年改正法の施行により電力の小売全面自由 28 化が実現されたが、料金規制の撤廃に伴い、旧一般電気事業者である原 子力発電事業者が、これまで規制料金の下で保証されてきた確実な原価 回収が見込めなくなるという新たな課題が生じた(需要家が電力の供給 者である小売電気事業者を自由に選択できるようになったため、何らの 措置も講じないとすると、新電力に切り替えた需要家は公益的課題を達 成するための費用を負担せず、原子力発電事業者から供給を受ける需要 者である小売電気事業者を自由に選択できるようになったため、何らの 措置も講じないとすると、新電力に切り替えた需要家は公益的課題を達 成するための費用を負担せず、原子力発電事業者から供給を受ける需要 家のみが負担することになる。)。 電力システム改革貫徹のための政策小委員会(以下「貫徹小委員会」 という。)は、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の下に設置さ れ、エネルギー政策を進める上で対応が必要とされた福島の復興・再生 や原発依存度の低減という新たな課題を含め、これまで原子力発電を進 めてきたことに伴う公益的課題に対処する上で、小売全面自由化の下で の原子力事故に係る賠償への備えに関する負担や廃炉に係る会計制度の 在り方に関して検討し、平成29年2月、中間とりまとめ(以下「貫徹 小委員会中間とりまとめ」という。乙37)を公表した。 貫徹小委員会中間とりまとめは、賠償負担金及び廃炉円滑化負担金に ついて、次のa・bのとおり整理した。 a 賠償負担金について 平成28年4月に小売が全面自由化され、新電力への契約切替えに より一般負担金を負担しない需要家が増加していることを踏まえ、需 要家間の公平性等の観点から、福島第1原発事故前に確保されておく べきであった賠償への備え(過去分)の負担に在り方について検討を 行った。過去分を小売料金のみで回収するとした場合、過去に安価な 原子力発電による電気を等しく利用してきたにもかかわらず、原子力 発電事業者から契約を切り替えた需要家は負担せず、引き続き原子力 発電事業者から電気の供給を受ける需要家のみが全てを負担すること 29 になるが、こうした需要家間の格差を解消し、公平性を確保するため には、全需要家が等しく受益していた過去分について、託送料金を通 じて、原子力発電の利 を受ける需要家のみが全てを負担すること 29 になるが、こうした需要家間の格差を解消し、公平性を確保するため には、全需要家が等しく受益していた過去分について、託送料金を通 じて、原子力発電の利益を受けた全ての需要家から公平に回収するこ とが適当であり、福島の復興にも資する。過去分の回収方法としては、 電源構成に占める原子力の割合は供給区域ごとに異なる一方で、過去 分の負担は過去の原子力の電気の利用に応じて行うべきものであるこ とや、現状、一般負担金は小売規制料金に含まれ、供給区域ごとに異 なる水準となっていること等を踏まえると、過去分を国民全体で負担 するに当たっては、特定の供給区域内の全ての需要家に一律に負担を 求める託送料金の仕組みを利用することが適当と考えられる。また、 回収期間を40年(年間回収額600億円)とすることが妥当と考え られる(乙37【18~22頁】)。 b 廃炉円滑化負担金について 廃炉会計制度創設の経緯・趣旨を踏まえれば、廃炉会計制度は、原 発依存度の低減という我が国のエネルギー政策に沿って措置されたも のであり、小売全面自由化においてもその政策に変わりがないことか ら、制度を継続することが適当と考えられる。廃炉会計制度を継続す るために必要となる着実な費用回収の仕組みについては、小売全面自 由化の下でも規制料金として残る託送料金の仕組みを利用することが 妥当である(ただし、発電、送配電、小売の各事業が峻別された自由 化の環境下で、発電に係る費用の回収に託送料金の仕組みを利用する ことは、原発依存度低減や廃炉の円滑な実施等のエネルギー政策の目 的を達成するために講ずる例外的な措置と位置付けられるべきであ る。乙37【24~26頁】)。 平成29年の国会においても、貫徹小委員会中間とりまとめ等を踏ま え 施等のエネルギー政策の目 的を達成するために講ずる例外的な措置と位置付けられるべきであ る。乙37【24~26頁】)。 平成29年の国会においても、貫徹小委員会中間とりまとめ等を踏ま え、託送料金によって賠償負担金相当金等を回収することの必要性等に 30 つき議論された(別紙3の2(第3項)は、その一部である。乙34)。 イ 制度改正 経済産業大臣は、平成29年9月、一般送配電事業託送供給等約款料金 算定規則を改正し、一般送配電事業者は、一般送配電事業を運営するに当 たって必要であると見込まれる営業費として、賠償負担金相当金等の額を 算定しなければならない旨の規定(4条2項)等を設けるとともに、必要 となる料金算定の方法を規定した。 また、経済産業大臣は、平成29年9月、電気事業法施行規則を改正し、 ①一般送配電事業者は、経済産業大臣の通知に従い、賠償負担金等をその 接続供給の相手方から回収しなければならない旨(45条の21の2第1 項、45条の21の5第1項)、②一般送配電事業者は、所定の原子力発電 事業者ごとに賠償負担金相当金等を払い渡さなければならない旨(45条 の21の2第2項、45条の21の5第2項)、③原子力発電事業者は、賠 償負担金等の額について、経済産業大臣の承認を受けなければならない旨 (45条の21の3、45条の21の6)を設けた(更に、電気事業法施 行規則は、平成30年3月、45条の21の6の規定について所要の改正 がされた。)。 一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則(本件算定規則)及び電気 事業法施行規則(本件施行規則)の上記改正規定は、令和2年4月1日に 施行された。(乙44、46) ウ 原価算入の実際の流れ 賠償負担金 原子力発電事業者は、賠償負担金を、一般送配電事業者の行 則)の上記改正規定は、令和2年4月1日に 施行された。(乙44、46) ウ 原価算入の実際の流れ 賠償負担金 原子力発電事業者は、賠償負担金を、一般送配電事業者の行う接続供 給によって回収しようとするときは、賠償負担金の額について、5年ご とに、経済産業大臣の承認を受けなければならない(本件施行規則45 条の21の3第1項)。 31 経済産業大臣は、上記の承認をしたときは、各一般送配電事業者に対 し、回収すべき賠償負担金の額、回収の期間等を通知するものとされ(本 件施行規則45条の21の4第1項)、当該通知を受けた一般送配電事業 者は、当該通知に従い、賠償負担金をその接続供給の相手方から回収し (本件施行規則45条の21の2第1項)、各原子力発電事業者ごとに賠 償負担金相当金を払い渡さなければならない(同条2項)。 この場合、一般送配電事業者は、原則として託送供給等約款の条件に より供給を行わなければならないため(法18条2項)、賠償負担金をそ の接続供給の相手方から回収するためには、託送供給約款を変更しなけ ればならず、当該変更について、経済産業大臣の認可を受けなければな らない(同条1項)。 廃炉円滑化負担金 特定原子力発電事業者は、廃炉円滑化負担金を一般送配電事業者の行 う接続供給によって回収しようとするときは、廃炉円滑化負担金の額に ついて、経済産業大臣の承認を受けなければならない(本件施行規則4 5条の21の6第1項)。 経済産業大臣は、上記の承認をしたときは、各一般送配電事業者に対 し、回収すべき廃炉円滑化負担金の額、回収の期間等を通知するものと され(本件施行規則45条の21の7第1項)、当該通知を受けた一般送 配電事業者は、当該通知に従い、廃炉円滑 は、各一般送配電事業者に対 し、回収すべき廃炉円滑化負担金の額、回収の期間等を通知するものと され(本件施行規則45条の21の7第1項)、当該通知を受けた一般送 配電事業者は、当該通知に従い、廃炉円滑化負担金をその接続供給の相 手方から回収し(本件施行規則45条の21の5第1項)、特定原子力発 電事業者ごとに廃炉円滑化負担金相当額を払い渡さなければならない (同条2項)。 この場合、一般送配電事業者は、原則として託送供給等約款の条件に より供給を行わなければならないため(法18条2項)、廃炉円滑化負担 金をその接続供給の相手方から回収するためには、託送供給約款を変更 32 しなければならず、当該変更について経済産業大臣の認可を受けなけれ ばならない(同条1項)。 2 本件処分に関する事実関係 当事者 ア 原告(甲1) 原告(令和2年3月25日付け商号変更前の商号は、一般社団法人グリ ーン・市民電力である。)は、自然エネルギーによる発電事業と社員に対す る電力供給事業、またそれらの事業の普及を目的とし、その目的に資する ために、自然エネルギーによる発電事業、電力の供給事業、それらの普及、 開発・研究に関する事業等を行う目的とする一般社団法人である。 原告は、法2条3号所定の小売電気事業者として、平成28年5月12 日、経済産業大臣の登録(法2条の2)をし、大阪府、広島県、福岡県等 の1府13県の区域の小売供給を受けようとする者(法2条の13)に対 し、電気の供給をしている。 イ 九州電力送配電株式会社(九州電力送配電) 九州電力送配電は、平成31年4月1日に設立された、電気事業等を目 的とする株式会社であり(甲2)、法2条9号所定の一般送配電事業者であ る。 ⑵ 本 力送配電株式会社(九州電力送配電) 九州電力送配電は、平成31年4月1日に設立された、電気事業等を目 的とする株式会社であり(甲2)、法2条9号所定の一般送配電事業者であ る。 ⑵ 本件接続供給契約の締結 ア 原告は、平成28年6月30日、九州電力株式会社(九州電力)との間 で、九州電力の託送供給等約款(同年4月1日実施)に基づき、契約の有 効期間を同年7月1日から平成29年3月31日とする、接続供給兼基本 契約(本件接続供給契約)を締結した。 本件接続供給契約には、要旨次の①・②のような定めがあった。 ① 九州電力が託送供給等約款を変更する場合は、変更後の託送供給等約 款によるものとし、必要に応じて、本件接続供給契約を改定する(46 33 条)。 ② 本件接続供給契約に記載されていない事項については、本件接続供給 契約に附帯して締結する契約書等によるほか、託送供給等約款による(4 7条)。(甲5) イ 経済産業大臣は、平成29年3月1日、九州電力の申請に係る託送供給 等約款(平成29年4月1日実施。甲4)につき、法18条1項に基づき 認可した。 ウ 原告は、九州電力との間で、平成29年及び平成30年、契約の有効期 間を更新する趣旨で本件接続供給契約を締結し、令和元年9月30日、九 州電力の託送供給等約款(平成30年10月1日実施)に基づき、契約の 有効期間を令和元年10月1日から令和2年9月30日とする本件接続供 給契約(甲6)を締結した。 本件接続供給契約には、要旨次の①・②のような定めがあった。 ① 九州電力が託送供給等約款を変更する場合は、変更後の託送供給等約 款によるものとし、必要に応じて、本件接続供給契約を改定する(46 条)。 ② 本件接続供給契約に記載されていない事項につい ① 九州電力が託送供給等約款を変更する場合は、変更後の託送供給等約 款によるものとし、必要に応じて、本件接続供給契約を改定する(46 条)。 ② 本件接続供給契約に記載されていない事項については、本件接続供給 契約に附帯して締結する契約書等によるほか、託送供給等約款による(4 7条)。 エ 九州電力送配電は、その完全親会社である九州電力との間で、一般送配 電事業及び離島における発電事業等を承継すること等を内容とし、令和2 年4月1日を効力発生日とする吸収分割契約を締結し、同年3月13日付 けで、経済産業大臣から法に基づく会社分割の認可を受けた。(甲2、7) オ 九州電力送配電は、令和2年4月1日、九州電力から、上記エの吸収分 割契約の定めに従い、一般送配電事業及び離島における発電事業を承継し た。なお、九州電力は、以後、発電事業及び小売電気事業等のみを担うこ 34 とになった。(甲7) ⑶ 本件処分に至る経緯 ア 経済産業大臣は、令和2年7月22日、原子力発電事業者からの申請を 受けて本件施行規則45条の21の3及び45条の21の6の各規定に 基づく各承認をした。 また、経済産業大臣は、令和2年7月22日付けで、九州電力送配電に 対して、①本件施行規則45条の21の4に基づき、接続供給の相手方で ある小売電気事業者から回収すべき賠償負担金の額、回収の期間等につい ての通知を、②本件施行規則45条の21の7に基づき、接続供給の相手 方である小売電気事業者から回収すべき廃炉円滑化負担金の額、回収の期 間等についての通知をした。 イ 九州電力送配電は、令和2年7月28日、経済産業大臣に対し、本件算 定規則4条2項に規定された賠償負担金相当金等の額を営業費として算定 した上、託送供給等約款の変更認可の申請をした。 ウ 経済産業大臣 九州電力送配電は、令和2年7月28日、経済産業大臣に対し、本件算 定規則4条2項に規定された賠償負担金相当金等の額を営業費として算定 した上、託送供給等約款の変更認可の申請をした。 ウ 経済産業大臣は、令和2年9月4日付けで、九州電力送配電に対し、そ の申請に係る託送供給等約款の変更を認可する旨の本件処分(甲3)をし た。 エ 本件処分前後の託送供給等約款における託送料金単価の変更内容は、別 紙3の3のとおりである。 以上 35 (別紙3の2) 国会審議の状況について 第1 平成11年改正時における国会審議について 1【平成11年4月20日の衆議院商工委員会】 通商産業大臣 「電気事業というのは二つ視点がございまして、日本人が経済活動をしていく 上で、効率性の高い事業として一定の競争力のある電気料金で電気を供給する ということの他に、やはり供給義務を初めとするいくつかの公益的な使命が実 はございます。今回の制度改正に当たりましては、現在の日本の経済の厳しい 状況を克服するために、高コスト構造の是正が経済構造改革の主要課題として 認識されている中で、電気及びガス事業に対しさらなる効率化が要請されてい ること、これが第一点です。第二点は、電気及びガスは、ユニバーサルサービ スの達成、これは供給義務といってもいいんですが、それから安定供給の維持、 エネルギーセキュリティーの確保、地球環境の保全などの公益的課題への対応、 こういうことが要請されております。これらの要請を今回の法律改正は基本的 な認識としているわけでございます。このような認識に基づきまして、公益的 な課題との両立を図りながら、さらなる競争原理の導入等によって国際的に遜 色のないコスト水準を目指し、我が国 回の法律改正は基本的 な認識としているわけでございます。このような認識に基づきまして、公益的 な課題との両立を図りながら、さらなる競争原理の導入等によって国際的に遜 色のないコスト水準を目指し、我が国の産業活動や国民生活に強靱な活力を生 み出すことが可能となるよう、本制度の改正を行おうとしているところでござ います。」(乙57【17頁4段目】)。 2【平成11年5月13日の参議院経済産業委員会】 資源エネルギー庁長官 「公益的課題といった場合に代表的にありますものは、例えば環境問題あるい は原子力の増設等々を考えたときのために、電源開発促進税というものを自由 36 化された部分についても押しなべて負担するというような形を考えてございま す。また他方で、この自由化をいたしましたときに、原子力、水力あるいはそ の他環境問題のためにその供給のありようをいろいろ議論するところがござい ますが、その場合に電力会社の給電指令に従うような仕組みを、例えば託送の 分野でありますとか、そういうところに十分に盛り込んでいく、そういった配 慮をしながらこの制度設計をしているところでございます。」(乙24【3頁4 段目】) 「今回の制度改正は、競争の導入によりまして効率化を進めることを目的とし たものでございますが、あわせて、この際にエネルギーセキュリティー、地球 環境の保全のために必要な電源構成のベストミックスの実現という公益的課題 に配慮することは当然の前提でございます。具体的な方式としては、電源開発 促進税につきましては、これは電力小売分野に新規に参入する者が供給する電 力につきましてもほかと同様に課税をする。あるいは、原子力、水力などのエ ネルギーセキュリティー、環境上すぐれた電源の供給力を確保するための給電 ルールに新規参入者が従う。かような一般的ルールによりま 力につきましてもほかと同様に課税をする。あるいは、原子力、水力などのエ ネルギーセキュリティー、環境上すぐれた電源の供給力を確保するための給電 ルールに新規参入者が従う。かような一般的ルールによりまして公益的課題の 達成に支障が生じないような制度設計を行うことといたしてございます。」(乙 24【11頁1段目】)。 第2 平成26年改正における国会審議について 【平成26年5月14日 衆議院経済産業委員会】 資源エネルギー庁電力・ガス事業部長 「システム改革の進捗に合わせまして、今、一般電気事業者の経費に係っている ものについてどのような費用で回収するかということでございますけれども、基 本的には、託送につきましては、託送業務に係る費用を回収するということでご ざいます。先ほど申し上げましたとおり、全需要家が公平に負担するべき費用と して、負担の公平性あるいは事業者間の競争条件の確保を前提に、託送料金で回 37 収すべきものがあるかどうか、これについては必要に応じて検討していくという ことでございまして、今現状は発電費に入っておりますけれども、今後について は、もしそういう必要があれば検討していくということでございます。」(乙58 【37頁1段目】)。 第3 平成29年の制度改正に係る国会審議について 1【平成29年2月22日の衆議院予算委員会第七分科会】 経済産業大臣 「電気事業法上、送配電網の維持管理にかかる費用などに加えて、それ以外、 ユニバーサルサービス料金など、全ての消費者が広く公平に負担すべき費用を 託送料金により回収できる、その中身は経済産業大臣が認可することで決めら れるという形になっているわけであります。どうしてそうなったかというと、 現行の託送料金に関する電気事業法の規定は、2000年に電力の小売が部分 的に自由化され 中身は経済産業大臣が認可することで決めら れるという形になっているわけであります。どうしてそうなったかというと、 現行の託送料金に関する電気事業法の規定は、2000年に電力の小売が部分 的に自由化された際に設けられました。これは、当時、審議会の報告書で、供 給信頼度や望ましい電源構成の維持など、公益的課題への対応に必要な負担に ついては、全ての需要家が公平に負うことを原則とするとされたことを踏まえ たものである。」(乙31【29頁2段目】。なお、平成29年3月9日の参議院 経済産業委員会【乙32】においても同趣旨の説明がされている。) 2【平成29年4月12日衆議院経済産業委員会】 ●民進党議員 「電力自由化が完全に実施されますと、小売料金も発電料金も自由競争になり ますので、規制料金というのは送配電網の託送料金だけになるわけでございま す。ですから、公益的な費用だからということで追加するとしたら、この送配 電網の託送料金にどんどん追加されることもあり得るわけでございます。今、 電カシステム改革や電気料金のあり方の見直しを担当している大臣として、託 38 送料金に今後も追加する上でのルールや歯どめというのはしっかりとやってい るんでしょうか。」 ●経済産業大臣 「まさに、今御指摘の言葉の中に歯どめがかかっているんですね。全ての消費 者が広く公平に負担すべき費用を託送料金により回収できる、これが電気事業 法の解釈であります。その根源は、2000年に電力小売を部分的に自由化し たときに、やはりそういった費用が取れなくなっていく可能性があるというこ とで、当時、審議会で議論をしていただいて、託送料で回収をするというメカ ニズムを入れていったわけであります。ただ、それは、常に全ての需要家が公 平に負うことを原則とする、このことが大前提になるわけであります。現在 審議会で議論をしていただいて、託送料で回収をするというメカ ニズムを入れていったわけであります。ただ、それは、常に全ての需要家が公 平に負うことを原則とする、このことが大前提になるわけであります。現在も、 例えば離島の発電費用とか、こういうユニバーサルサービスコスト、こういっ たものは託送料金にいただいています。ただ、特定の会社が何かちょっと経営 が苦しいからとか、そういうことで託送料に上乗せをするなんということは基 本的にできませんし、当然、全ての消費者が本当に広く公平に負担すべき費用 なのかどうかというのは、これは経済産業大臣が認可をすることになるわけで すから、その際に厳しく査定をしていきたいというふうに思いますし、どんど ん何でもかんでもここへ盛り込んでいけば、それはすなわち消費者の電気料金 の値上がりということにもつながるわけですから、そこをのべつ幕なしにやる ということは、これは政策的なスタンスとして、やることはない。厳しく査定 をして、全ての人が負担すべき費用をここで回収するしかないという限定的な 場合にのみ託送料金に乗せていくということになろうかと思います。」(乙33 【17頁2段目】) 3【平成29年4月25日 参議院経済産業委員会】 ●経済産業大臣 「まず、考え方をちょっと御説明させていただきたいと思っていますけれども、 39 今回、福島の原発事故以前には原賠機構法が措置されていなかったものですか ら、いわゆる原発事故の賠償への備えが不足をしていた、これを現行の原賠機 構法の一般負担金の算定方式を前提に算定をしていったということであります。 具体的には、現行制度では、各原子力事業者が納付する一般負担金の額は各事 業者が保有する原子力発電所の設備容量などを基準に決定をされていることを 踏まえて、現在の一般負担金の設備容量当たりの単価を す。 具体的には、現行制度では、各原子力事業者が納付する一般負担金の額は各事 業者が保有する原子力発電所の設備容量などを基準に決定をされていることを 踏まえて、現在の一般負担金の設備容量当たりの単価を1070キロワットと 算出した上で、これに原賠機構法成立以前の全事業者の設備容量の累計である 35億キロワットを乗じることで、福島事故前に確保すべきであったと考えら れる額の総額を3.8兆円とさせていただきました。その上で、現行の機構法 において費用の発生が明らかになった時点で、その時点の料金原価に算入をし て、全ての消費者から公平に回収するという規制料金の考え方を前提として、 一般負担金というのは備えの不足分も含めたものとなっていたわけであります。 こうした経緯も踏まえた上で、全ての消費者に負担を求めるという観点から、 最も保守的な考え方に立って、託送制度を利用した回収を開始する2020年 までの間、回収開始を2020年と想定をして、2011年から19年までの 間に納付されると想定される一般負担金の総額1.3兆円をあえて全て備えの 不足分と整理をして、それを控除して2.4兆円と算定をさせていただいたわ けであります。」(乙34【30・31頁】) 「御指摘の解体引当金の未引き当て分については、現在、解体引当金省令に 基づいて原子力事業者が原則50年掛けて自ら積み立てる、引き当てるという 形になっているわけであります。小売部門の規制料金が撤廃をされた場合は、 廃炉を決めた時点で、廃炉時点で引き当てが完了していない分、すなわち未引 き当て分ということになりますが、これを一括して費用認識する必要が出てき ます。ただ、こういった費用認識が生じることによって、事業者が、それだっ たら、本来はもう廃炉をしたいんだけれども廃炉はやめておこうかなというよ うなことで判断がゆがむ可能性がある 認識する必要が出てき ます。ただ、こういった費用認識が生じることによって、事業者が、それだっ たら、本来はもう廃炉をしたいんだけれども廃炉はやめておこうかなというよ うなことで判断がゆがむ可能性がある、円滑な廃炉に支障を来すことがあり得 40 る、これは我々も原発依存度を下げていくという政策を持っているわけですか ら、適切ではないということで、一括で費用認識を求められる未引き当て分に 限定して託送制度を利用して回収することで費用を分割して計上する仕組みと したわけであります。託送を使うということは、みんなで負担するのが適当だ ということでありますが、これはやはり廃炉を、しっかりと適切な廃炉判断を 事業者に行わせるという公益上の明確な理由があると考えております。」(乙3 4【31、32頁】) 以上 41 (別紙3の3)掲載省略 42 (別紙4) 争点に関する当事者の主張 争点1(原告適格の有無) (原告の主張) ア 本件処分の法的効果により直接権利の制限を受ける者に当たること 小売電気事業者は、法17条1項、18条1項の規定により、経済産 業大臣の認可を受けた託送供給等約款のとおりの内容の託送供給を受け る権利又は法的地位を保障されており、その権利又は法的地位は、経済 産業大臣が託送供給等約款の変更を認可した場合に変動する。 一般送配電事業者は、賠償負担金等を回収する義務を負うところ(本 件施行規則45条の21の2第1項及び本件施行規則45条の21の5 第1項)、経済産業大臣から回収すべき賠償負担金等の額等に関する通知 を受け、賠償負担金等を回収する義務が具体化した場合には(本件施行 規則45条の21の4第1項の通知及び本件施行規則45 条の21の5 第1項)、経済産業大臣から回収すべき賠償負担金等の額等に関する通知 を受け、賠償負担金等を回収する義務が具体化した場合には(本件施行 規則45条の21の4第1項の通知及び本件施行規則45条の21の7 第1項)、託送供給等約款料金のうちの営業費として、賠償負担金相当金 等として算定し(算定規則4条第2項、3条)、その料金変更を含む託送 供給等約款の変更の認可を受けることとなり、その認可によって、小売 電気事業者の賠償負担金相当金等の支払義務が具体化する。よって、小 売電気事業者の賠償負担金相当金等の支払義務が具体的に発生するのは、 本件処分の法的効果である。 したがって、原告は、処分の名宛人以外の者ではあるが、処分の法的 効果による権利の制限を受けるので、本件処分の取消しを求めるにつき 法律上の利益を有する者にあたり、行政事件訴訟法9条2項を持ち出す までもなく、原告には原告適格が認められる。 イ 行政事件訴訟法9条2項による検討 43 根拠法令の趣旨及び目的 a 法の目的について 本件処分の根拠となる法は、その目的について、「電気事業の運営を 適正かつ合理的ならしめること」を通して「電気の使用者の利益を保 護」するとともに、 「電気事業の健全な発達を図る」ことする(法1条)。 法の平成26年改正による電力小売事業の全面自由化により、電気事 業者間の競争を促進することが採用され、電気事業の構造は、従前の 「一般電気事業者及び需要者」という2当事者構造から、「小売電気事 業者、一般送配電事業者及び需要者」という3当事者構造に変化し、 平成27年改正においても一般送配電事業者に対して小売電気事業又 は発電事業の兼業を禁止し行為規制の強化を行うことで、上述の電気 事業者間の競争促進を確保することが強化された。そのため、平成2 6年改正以降 27年改正においても一般送配電事業者に対して小売電気事業又 は発電事業の兼業を禁止し行為規制の強化を行うことで、上述の電気 事業者間の競争促進を確保することが強化された。そのため、平成2 6年改正以降の法においては、上記3当事者構造のもと、電気事業者 間の適正な競争環境が確保され、終局的に「電気の使用者の利益の保 護」と「電気事業の健全な発達」が図られることを目的としている。 また、法が、一般送配電事業者と小売電気事業者の間の規律である 託送供給等約款に関して経済産業大臣が審査をする認可制度(法18 条)を設けた趣旨は、一般送配電事業者がその供給区域における一般 送配電事業について実質的な制度的独占が担保された事業者であるた め、このような制度的独占の弊害からの保護を目的としたものである こと、当該弊害の不利益を直接被るのは、一般送配電事業者と直接的 に対している小売電気事業者であることを踏まえれば、法は、経済産 業大臣による託送供給等約款に対する認可制度を採用することにより、 小売電気事業者の保護を図り、最終的に「電気の使用者の利益の保護」 と「電気事業の健全な発達」を実現しようとしたというべきである。 したがって、法1条は、「電気の使用者の利益の保護」と「電気事業 44 の健全な発達」を図ることを最終的な目的としつつ、その前提条件と して小売電気事業者にとっての「電気事業の運営」が「適正かつ合理 的」に実現されることもまた当然の目的としており、一般送配電事業 者から小売電気事業者に対する不適正な託送料金の請求からの保護を 目的としている。 b 処分基準(法18条3項)について 「料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加え たものであること」(1号)とは、「料金の妥当性を担保する」ことを 目的とする規定であり、具体的には、一般送配電事業者が、 3項)について 「料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加え たものであること」(1号)とは、「料金の妥当性を担保する」ことを 目的とする規定であり、具体的には、一般送配電事業者が、独占的及 び優越的な地位を濫用し妥当性のない料金を小売電気事業者に対し設 定し、小売電気事業者が事業継続のために支払わざるを得ない事態を 避けることを目的としている。また、「第1項の認可の申請に係る託送 供給等約款により電気の供給を受ける者が託送供給等を受けることを 著しく困難にするおそれがないこと」(2号)とは、託送供給等約款に より電気の供給を受ける者に対して提示される料金水準が不当に高い ものではないこと等を求めるものとされており、託送料金が不当に高 いものとなると、小売電気事業者の健全な経営の維持に支障をきたし、 市場競争の基盤が害されることから、法は、電気の使用者の利益を最 終的に保護する前提として、小売電気事業者の健全な経営を確保する ために、適正な託送料金の実現を図ることを、当該認可制度によって 実現することとしている。また、「料金の額の算出方法が適正かつ明確 に定められていること」(3号)も、小売電気事業者間の公平性が確保 され、市場における健全な競争を確保することを目的としており、電 気の使用者の利益を最終的に保護する前提として、小売電気事業者の 利益を保護するものである。 このように、法は、一般送配電事業者によって託送条件が託送供給 45 等約款によって歪められないよう、電気の需要者の利益を最終的に保 護する前提として、小売電気事業者の利益も保護している。 当該処分において考慮されるべき利益の内容及び程度 a 上記ア記載のとおり、経済産業大臣の託送供給等約款の変更に係る 認可があった時点で、託送供給等約款の変更の効果が発生し、当該一 般送 。 当該処分において考慮されるべき利益の内容及び程度 a 上記ア記載のとおり、経済産業大臣の託送供給等約款の変更に係る 認可があった時点で、託送供給等約款の変更の効果が発生し、当該一 般送配電事業者との間で従前から託送供給契約を締結していた小売電 気事業者は、変更後の託送供給等約款がただちに適用されるため、託 送供給等約款の変更認可処分がなされることによって必然的に賠償負 担金等を課せられる地位に立たされる。 b 仮に本件施行規則45条の21の4及び同45条の21の7が法に 基づかないのであれば、そもそも託送供給等約款の変更認可処分が違 法であり、原告を含めた小売電気事業者は法律の根拠を有しないにも かかわらず、規則により直接的に賠償負担金等を課せられる地位に継 続的に立たされる。そして、その利益の侵害態様は深刻である。また、 仮にこれを当事者訴訟や債務不存在確認訴訟の手段によって問うこと があったとしても、それを行う場合には、賠償負担金等を課せられる 地位に立たされる小売電気事業者とそうでない者とが混在し、法が想 定する「電気事業の運営を適正かつ合理的」にすることは図られない のであるから、当該地位は変更認可処分を取り消さない限り、その権 利を救済する手段はなく、法も処分の取消訴訟によってその救済を図 ることを想定している。 以上のとおり、法は、小売電気事業者が適正な託送料金で託送供 給を受ける利益を個別的利益として保護しており、小売電気事業者であ る原告は、託送供給等約款の変更認可処分の取消しを求めるにつき、法 律上の利益を有する。 46 (被告の主張) ア 本件処分の法的効果により直接権利の制限を受ける者に当たらないこと 託送供給等約款の変更認可の小売電気事業者への影響は、同認可の法 的効果に基づくものではなく、一 (被告の主張) ア 本件処分の法的効果により直接権利の制限を受ける者に当たらないこと 託送供給等約款の変更認可の小売電気事業者への影響は、同認可の法 的効果に基づくものではなく、一般送配電事業者と小売電気事業者との 合意によるものである。すなわち、託送供給等約款の認可に関する法1 8条の趣旨は、許可制の下で自らの供給区域において地域独占的な供給 を行う公共事業たる一般送配電事業については、その託送供給等に係る 料金その他の供給条件について恣意の排除や、託送供給等を受ける事業 者間の取扱いの公平のため、定型約款として託送供給等約款の設定義務 を一般送配電事業者に課すとともに、当該約款につき、経済産業大臣の 認可にかからしめることでその適正を担保することとされたものである。 また、経済産業大臣は、託送供給等約款の認可に際して、一般送配電事 業者と小売電気事業者の間において締結する契約を個別に審査している のではなく、事前規制の一種として、一般送配電事業者に対し、今後、 当該約款を用いた契約締結を許容できるかという観点から、約款に記載 されている託送料金等が適正か否かを審査しているにすぎず、託送供給 等約款の認可処分の法的効果は、一般送配電事業者に対し、認可された 託送供給等約款を用いて託送供給を行うことができる地位を与えるとい うことにとどまり、同認可処分は小売電気事業者に対して何らの法的効 果を及ぼすものではない。 約款を契約の内容とするためには、その旨の合意が必要と解され、事 業者が用いる約款が変更されたとしても、変更された約款が当然かつ直 接的に契約の内容となるわけではない。一般送配電事業者と原告のよう な小売電気事業者の間で締結される契約や約款において、供給条件等に つき、託送供給等約款を適用する旨の定めが更に置かれていること自体 直 接的に契約の内容となるわけではない。一般送配電事業者と原告のよう な小売電気事業者の間で締結される契約や約款において、供給条件等に つき、託送供給等約款を適用する旨の定めが更に置かれていること自体、 託送供給等約款の変更認可の法的効果が直接的に一般送配電事業者であ 47 る九州電力送配電と原告との間に及ぶものではないことを示すものであ る。このように、約款について変更認可処分があった場合に小売電気事 業者に与える影響は、飽くまで、本件接続供給契約という、一般送配電 事業者と小売電気事業者である原告との間での、私人間の合意の存在及 びその効力によって、変更認可された託送供給等約款の内容が当該当事 者間の契約内容になるにすぎず、変更認可処分が及ぼす法的効果ではな い。 本件処分による託送料金の変更は、飽くまでも安価で安定した電力を 需要家に供給するという一般的公益のために、一定の地域の小売電気事 業者に一律に同じ内容の同料金を設定することによって、小売電気事業 者間に公平な競争条件を設定し、市場競争の基盤を確保するという制度 の下で、その競争条件を変更するものにすぎず、託送供給等約款の変更 認可による小売電気事業者への影響は、小売電気事業者の何らかの個別 的な権利が制限されたとみることはできない。 原告主張に係る①託送供給の料金に賠償負担金相当金等を上乗せされ ないという権利又は②託送供給の料金を当初の契約で合意した金額で固 定して変更されないか、少なくとも値上げする方向で変更されないとい う権利は、電気事業法を含め、およそ実体法上保護されるようなもので はなく、実体法上の権利としての「財産権」とはいえない。 以上より、原告は、本件処分の法的効果により直接権利の制限を受け る者に当たらない。 イ 行政事件訴訟法9条2項による うなもので はなく、実体法上の権利としての「財産権」とはいえない。 以上より、原告は、本件処分の法的効果により直接権利の制限を受け る者に当たらない。 イ 行政事件訴訟法9条2項による検討 法令の趣旨及び目的 a 法は、1条において、「この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理 的ならしめることによつて、電気の使用者の利益を保護し、及び電気 事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用 48 を規制することによつて、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図 ることを目的とする。」と規定しており、飽くまでも、需要家の保護を 目的として掲げる一方で、原告の主張するような小売電気事業者の保 護をも目的とするとは掲げていない。本件処分における根拠法令であ る法は一般的公益である総体としての需要家全体の利益を保護するも のであるとみるほかなく、同法が小売電気事業者の個別的利益を保護 する目的を有するものとみることはできない。 b 法18条の各規定についても、小売電気事業者の利益を保護する趣 旨が含まれるとはいえない。すなわち、同条3項1号(料金が能率的 な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること) は、一般送配電事業者が本件算定規則に基づいて算定した料金が、効 率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものである かどうかを審査するもので、個々の、託送供給等約款により電気の供 給を受ける者の利益を個別的利益として保護することを目的とするも のではない。同項2号(「第一項の認可の申請に係る託送供給等約款に より電気の供給を受ける者が託送供給等を受けることを著しく困難に するおそれがないこと。」は、不当な条件が設定されることにより、小 売電気事業者といった託送供給等を受けようとする事業者が一般的に 託送供 より電気の供給を受ける者が託送供給等を受けることを著しく困難に するおそれがないこと。」は、不当な条件が設定されることにより、小 売電気事業者といった託送供給等を受けようとする事業者が一般的に 託送供給等を受けることを著しく困難にし、その結果として、需要家 が電気の供給を受けられないなどの事態が発生するなどを防止するも のであり、電力取引における市場競争の基盤を確保することにより、 電気の安定供給を図り、総体としての電気の使用者(需要家)の利益 を保護することを目的としているのであって、個々の小売電気事業者 の個別的利益が害されないようにすることを目的とするものではない。 同項3号(料金の額の算出方法が適正かつ明確に定められていること) は、仮に、託送供給等を利用する者が託送供給等を受けた量等を基に 49 支払うべき料金を算出することが困難である場合などにおいては、実 質的にも公平を阻害されることになりかねないため、これを基準とす るものであって、個々の小売電気事業者の個別の利益の保護を目的と するものではない。同条3項の他の規定や同条4項の規定についても、 個々の小売電気事業者の個別の利益の保護を目的とするものではない。 c 経済産業大臣が、託送供給等約款を認可するに当たり、特に託送供 給を受ける者の意見を聞く等の手続関与の規定は設けられておらず、 法に、小売電気事業者の個別的利益を保護する趣旨を読み取ることが できる規定は存在しない。 当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質 賠償負担金相当金等は、もともと原子力発電によって利益を受 けた需要家から公平に回収することが想定されており、小売電気事業者 は、託送料金の増額分を小売電気料金に転嫁することが可能な制度とな っている。小売電気事業者は、託送料金の増額分を小売電気料金に転嫁 せず た需要家から公平に回収することが想定されており、小売電気事業者 は、託送料金の増額分を小売電気料金に転嫁することが可能な制度とな っている。小売電気事業者は、託送料金の増額分を小売電気料金に転嫁 せず、自ら負担することとした場合であっても、それを他の小売電気事 業者と比較したときの顧客誘引力の強化につなげることができるから、 その経営判断の適切な行使によって、自らの利益へ誘導する余地と機会 があり、託送料金の増額が直ちに小売電気事業者の利益を害することに なるものではなく、また、その増額による影響の程度も小さい。 以上のとおり、託送供給等約款の認可制度を置いている法の規定は、 飽くまで需要家全体の利益を一般的公益として保護する趣旨であり、小 売電気事業者の個別的利益を保護する趣旨を含むとはいえないから、原 告に本件訴訟の原告適格を認めることはできない。 争点2(行政事件訴訟法10条1項による主張制限の有無) (被告の主張) 原告は、本案の違法事由として、託送料金の原価に賠償負担金相当金等を 50 算入したことについて、法の委任の範囲を越えた違法があるとして、法18 条3項1号に係る違法事由を主張するにとどまるから、仮に、原告が同項2 号又は3号によって本件処分の取消しを求める原告適格を有するとしても、 原告の上記主張は、自己の法律上の利益に関係のない違法をいうものであり、 行政事件訴訟法10条1項によりその主張が制限されるというべきである。 (原告の主張) 本件では、原告は、行政事件訴訟法9条1項によって原告適格を認められ るのであるから、全ての違法事由を主張でき、同法10条1項の適用は問題 とならない。 また、仮に、行政事件訴訟法9条2項によって原告適格を認められるとし ても、法18条3項2 原告適格を認められ るのであるから、全ての違法事由を主張でき、同法10条1項の適用は問題 とならない。 また、仮に、行政事件訴訟法9条2項によって原告適格を認められるとし ても、法18条3項2号、3号と同項1号は、密接に関係しているので、「自 己の法律上の利益に関係のない主張」とはならない。 争点3(本件算定規則4条2項の合憲性及び適法性) (原告の主張) ア 法律の委任がないこと 本件算定規則4条2項は、法18条3項1号に規定する「適正な原価」 すなわち「一般送配電事業を営むために必要な費用」の具体的な細目を 明示し、その算定方法を示すためのものであるところ、法は、「一般送配 電事業を営むために必要な費用」以外のものを託送料等として算定する ことや供給条件を定めることを省令に委任しているわけではない。 法18条1項について 法18条の各項の内容を踏まえると、法18条3項が託送供給等約款 の認可の基準を規定しており、法18条1項は、認可申請の手続に関す る規定であると解するのが相当であって、同項所定の経済産業省令は、 認可申請の内容をなす託送供給等約款において定めるべき事項と料金の 算定計算書の記載事項など、手続的事項を規定するものであり、供給条 51 件について省令に委任する規定ではない。また、法18条1項は、法1 8条3項1号に規定する以外のものを「料金」とすることを経済産業省 令に委任していない。法は、本件算定規則について、法18条3項1号 に規定する「一般送配電事業を営むために必要な費用」の具体的な細目 を明示し、その算定方法を示すことのみ予定しているにすぎない。 よって、本件算定規則4条2項は、法律の委任を欠いており、違憲で ある。 イ 法律の委任の範囲を超えていること 本件算定規則4条2項の「一般送 を示すことのみ予定しているにすぎない。 よって、本件算定規則4条2項は、法律の委任を欠いており、違憲で ある。 イ 法律の委任の範囲を超えていること 本件算定規則4条2項の「一般送配電事業者は、前項の規定により算 定した合計額のほか、営業費として、(中略)賠償負担金相当金及び廃炉 円滑化負担金相当金の額を算定しなければならない。」と規定する。 しかし、本件算定規則4条1項が規定する「営業費」は、同項に列挙 された細目の内容を踏まえると、一般送配電事業を営むために必要な費 用であり、法18条3項1号が規定する「能率的な経営の下における適 正な原価」に該当するものである。また、競争を通じて電気事業の効率 化を図り、電気料金を引下げることを目的とした小売電気事業の全面自 由化以降は、一般送配電事業を営むために必要な費用以外のものを託送 料金の原価に含ませることはできなくなったというべきである。 ①本件施行規則の章立て及び賠償負担金等に関する規定の位置、②賠 償負担金等の用語の定義、③賠償負担金相当金等が回収後に原子力発電 事業者に払い渡されるという仕組みを踏まえると、賠償負担金等は、発 電事業に関連する費用で原子力発電事業者が負担すべきものであって、 一般送配電事業を営むために必要な費用ではなく、 「営業費」及び法18 条3項1号が規定する「能率的な経営の下における適正な原価」のいず れにも該当しない。競争を通じて電気事業の効率化を図り、電気料金の 引下げを目的として、小売電気事業が全面自由化された以降平成28年 52 4月以降は、一般送配電事業を営むために必要な費用以外のものを託送 料金の原価に含ませることはできなくなったというべきである。 よって、本件算定規則4条2項は、法の委任の範囲を超えるものであ る。 被告の主張について 被告は、 ために必要な費用以外のものを託送 料金の原価に含ませることはできなくなったというべきである。 よって、本件算定規則4条2項は、法の委任の範囲を超えるものであ る。 被告の主張について 被告は、「適正な原価」であるかといった判断は、専門的・技術的知見 を必要とするものであるため、その細目を法律で定めることにはなじま ず、当該分野に通暁し、省令を制定することができる経済産業大臣の専 門的・技術的な判断を要する事項である旨を主張する。しかし、営業費、 事業報酬、控除収益は、会計の諸原則等に照らし、いずれもその概念及 び意義内容が明確であって専門的・技術的知見が入り込む余地はないし、 接続供給料金に含めてコスト回収すべき設備や関連するサービスは具体 的かつ明確に特定されなければならないのであるから、そこに経済産業 大臣の裁量はない。 また、被告は、一般送配電事業者の固有のコストに限定されない電気 事業に伴う公益的課題に対応することも法の目的に含まれる等と主張す るが、託送料金の原価に公益的課題に要する費用を含むことができると しても、託送料金で回収できるのはあくまで「託送業務に係る費用」に 限定されているのであって、公益的課題に要する費用であれば無限定に 含められるものでもない。本件算定規則4条1項は、営業費として、一 般送配電事業を営むために必要な費用すなわち託送業務に係る費用が規 定しているのに対し、賠償負担金等は一般送配電事業を営むための費用、 託送業務に係る費用に該当するものではない。 よって、本件算定規則4条2項の規定は、法の委任の範囲を超えるも のである。 53 (被告の主張) ア 法律の委任があること 法18条1項は、その本文において、「一般送配電事業者は、その供給区 域における託送供給及び電力量調整供給(以下この条において「託送供給 等 3 (被告の主張) ア 法律の委任があること 法18条1項は、その本文において、「一般送配電事業者は、その供給区 域における託送供給及び電力量調整供給(以下この条において「託送供給 等」という。)に係る料金その他の供給条件について、経済産業省令で定め るところにより、託送供給等約款を定め、経済産業大臣の認可を受けなけ ればならない。」と規定しており、委任する規定が存在することは文理上明 らかである。さらに、その文理からして、同項の「経済産業省令」として、 託送供給等に係る料金その他の供給条件等に関する細目を定めることが 想定されていることは明らかである。 イ 本件算定規則4条2項が法律の委任の範囲内にあること 授権規定の文言 授権規定である法18条1項は、その文理からすれば、一般送配電事 業者に対する託送供給等約款において定めるべき託送供給等に係る料金 その他の供給条件といった細目事項に関して、これを省令に委任するも のであるところ、同条の他の項や、その他の法の法文をみても、そのよ うな託送供給等に係る料金その他の供給条件といった細目事項につき、 いかなる内容の供給条件を具体的に設定するかどうか、また料金として、 具体的にいかなる積算根拠に基づいて設定されるべきかなど、規定上、 特段の限定はしていない。 委任の趣旨 法18条1項は、一般送配電事業者は、許可制の下で自らの供給区域 で地域独占的な供給を行う公益事業であり、その地位を利用して、その 託送供給等に係る料金その他の供給条件を恣意的に定めたり、託送供給 等を受ける事業者間の取扱いが不公平となることを防止する必要がある ため、託送供給等約款の適正を担保すべく経済産業大臣の認可に係らし 54 めたものである。そして、法18条3項によれば、一般送配電事業者が 申請をした託送供給等約款 となることを防止する必要がある ため、託送供給等約款の適正を担保すべく経済産業大臣の認可に係らし 54 めたものである。そして、法18条3項によれば、一般送配電事業者が 申請をした託送供給等約款が経済産業大臣の認可を受けるためには、 「料 金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもので あること」(1号)をはじめとして同項各号のいずれにも適合していなけ ればならないところ、同条1項は、一般配送電事業者に対し、経済産業 省令で定めるところにより、託送供給等約款を定めることを要求し、本 件施行規則は、託送供給等約款に定める事項の細目を規定して、その一 つに「料金」を掲げ(18条2号ロ)、また、本件算定規則は、料金を算 定するに当たり、一般送配電事業を一定期間運営するに当たり必要と見 込まれる原価に利潤を加えて得た額を算定しなければならないとした上 で(3条1項)、算定する原価等の具体的内容(同条2項)、その算定に 用いる「営業費」の具体的算定手法(4条1項及び2項)を規定してい る。このように、法18条1項が、同条3項の認可の条件として「能率 的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること」 に適合することが要求される「料金」の算定につき、経済産業省令であ る本件施行規則及び本件算定規則に委任したのは、いかなる費用が「適 正な原価」であるかといった判断には、社会情勢によって変動する電気 事業を取り巻く環境等を踏まえ、国民生活や経済活動への影響等を勘案 した上でその判断を行う必要があり、専門的・技術的知見を必要とする ものであるため、その細目を法律で定めることにはなじまず、当該分野 に通暁し、省令を制定することができる経済産業大臣の専門的・技術的 な裁量に委ねる趣旨である。授権規定の立法過程の議論等をみれば、法 の経済産業省令への委任の趣 を法律で定めることにはなじまず、当該分野 に通暁し、省令を制定することができる経済産業大臣の専門的・技術的 な裁量に委ねる趣旨である。授権規定の立法過程の議論等をみれば、法 の経済産業省令への委任の趣旨として、経済産業大臣の専門的・技術的 な裁量判断において、託送供給等に係る供給条件の一つである料金に係 る原価等の構成要素たる営業費の算定に、公益的課題に要する費用を含 めることも許容するものであることは明らかである 55 本件規則が授権法全体の趣旨、目的及び仕組に合致すること 一般送配電事業者の固有のコストに限定されない電気事業に伴う公益 的課題に対応することも法の目的に含まれ、全需要家が公平に負担すべ き費用である賠償負担金等を託送料金の仕組みを用いて、託送料金の原 価に算入して回収することは、授権法である法全体の趣旨、目的及び仕 組みに正しく合致する。 委任命令によって制限される権利ないし利益の性質等 本件算定規則4条が託送料金原価の構成要素である営業費の算定範囲 を制限する趣旨は、一般送配電事業者による自由かつ恣意的な料金設定 を防止することにあり、法1条に規定する法の目的に合致するものであ る。また、本件算定規則4条は、小売電気事業者の権利ないし利益を直 接的に制限するものではない。 小括 法18条1項に基づきなされた本件処分に関し、同項の委任を受けて、 賠償負担金相当金等を託送供給等約款における託送供給条件の一つであ る料金に係る原価等の構成要素である営業費の算定に含めることとした 本件算定規則4条2項の規定は、法の授権の趣旨に適合するものであり、 経済産業大臣の専門的・技術的な裁量判断の下、法の委任の範囲内にあ る適法なものである。 争点4(本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5の合憲性) (原告の主張) ア り、 経済産業大臣の専門的・技術的な裁量判断の下、法の委任の範囲内にあ る適法なものである。 争点4(本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5の合憲性) (原告の主張) ア 本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5は、接続供給の相 手方(託送受給者)に、賠償負担金等の支払義務及を課すものであるから、 法規命令である。 しかし、法には、上記のような支払義務を課すことを委任する規定は存 在しない。 56 イ 本件施行規則45条の21の2~45条の21の7の規定が、一般送配 電事業の原価に関するものであるならば、「第2節 一般送配電事業」の中 に定められるべきものである。しかし、本件施行規則の上記各規定は、「第 5節 発電事業」の後に、二つの節を特別に設けて規定められていること からして、一般送配電事業とは独立して規定されたものであり、そのよう な一般送配電事業の回収権限を定めることを委任する規定は、法に存在し ない。 ウ したがって、本件施行規則45条の21の2及び45条の21の5は、 憲法41条に反し、無効である。 (被告の主張) ア 本件施行規則45条の21の2~45条の21の7の規定は、法に基づ く執行命令として、賠償負担金等の算定及び回収に係る一連の手続を規定 したものである。 前記 (被告の主張)のとおり、本件算定規則4条2項の営業費に賠償 負担金相当金等が含まれる以上、一般送配電事業者が、原子力発電事業者 に代わり、託送供給等約款に従って、電気の供給を受ける者からこれらの 費用を回収するのは当然であり、法が、一般送配電事業者の賠償負担金等 を回収する権限を定めていないから、本件施行規則の上記各規定が法の委 任の範囲を超えるというものではない。 イ 賠償負担金相当金等は、法18条1項及び同項の委任 、法が、一般送配電事業者の賠償負担金等 を回収する権限を定めていないから、本件施行規則の上記各規定が法の委 任の範囲を超えるというものではない。 イ 賠償負担金相当金等は、法18条1項及び同項の委任を受けた本件算定 規則4条2項に基づいて託送供給等約款で定める料金の算定における原価 等に含まれるものであるが、本件施行規則45条の21の2~45条の2 1の7の規定は、原子力発電事業者・一般送配電事業者間、一般送配電事 業者・小売電気事業者間の契約関係が存在することを当然の前提に、賠償 負担金等を託送料金の仕組みの中で広く全ての需要家から回収するための 手続として、①原子力発電事業者から経済産業大臣に対する承認申請及び 57 同大臣による承認、②経済産業大臣から一般送配電事業者に対する通知及 び一般送配電事業者の接続供給による回収、③一般送配電事業者から原子 力発電事業者に対する払渡しという一連の手続を規定したものであり、本 件施行規則の「回収」という文言も、新たに義務を創設するものとは解し 難いものである。 また、一般送配電事業者と原子力発電事業者との間の委託契約関係が存 在するのであるから、本件施行規則45条の21の2及び45条の21の 5によって一般送配電事業者がこれらの費用を回収する義務を負うもので はない。 ウ したがって、原告の主張は、本件施行規則の上記各規定を誤って解釈し たことに基づくものであるから、理由がない。 以上

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