主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告は,原告に対し,平成29年4月1日から本判決の確定に至るまで,毎月21日限り,月額38万1000円の割合による金員及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,被告が設置し,運営するa大学(以下「被告大学」という。)の特別任用教員(以下「特任教員」という。)として雇用する旨の有期労働契約(以下「本件労働契約」という。)を被告と締結し,6回にわたって本件労働契約を更新された後,平成29年3月31日をもってその更新を拒絶された原告が,同拒絶は労働契約法19条2号に違反すると主張して,被告に対し,労働契約 上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,同年4月1日から本判決の確定に至るまで,毎月21日限り,賃金月額38万1000円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実 ⑴ 当事者ア原告は,平成22年4月1日から平成25年3月31日までの間は被告大学の外国語学部α語学科の,同年4月1日から平成29年3月31日までの間は被告大学の地域共創学群(以下「本件学群」という。)のうちα語専攻の,専任教員である特任教員(被告大学の勤務を本務とし,期間を 定めて任用される専任の教員をいう。)かつ准教授として勤務していた者 である(甲1~6,8,10,37,42,乙7)。 イ被告は,被告大学を設置,運営する学校法人であり,外国語学部を始めとす めて任用される専任の教員をいう。)かつ准教授として勤務していた者 である(甲1~6,8,10,37,42,乙7)。 イ被告は,被告大学を設置,運営する学校法人であり,外国語学部を始めとする5学部を設置していたが,組織改編により,本件学群への一学群化を行い,平成25年4月1日から本件学群内にα語専攻を設置した。 被告は,被告大学の一学群化に伴い,平成24年6月19日,教育職員 免許法施行規則21条に基づき,文部科学大臣に対し,「a大学の教員の免許状授与の所要資格を得させるための課程認定申請書」(以下「本件申請書」という。)を提出し,同大臣から,条件付き(書類不備等を理由とするもの)で,申請に係る課程が教職課程(以下,被告大学の教職課程を「本件教職課程」という。)として適当であることの認定を受けた(乙1 3の1・2)。 ⑵ 被告における特任教員の雇用期間に関する規程 「学校法人a大学特別任用教員規程」(以下「本件規程」という。)は,特任教員について,その雇用期間を1年以内としつつ,必要により,5年を限度として更新することができると規定していた(甲10,27 0,乙7〔各2条,4条〕)。 本件規程はその後改正され,平成26年2月20日に施行された改正後の本件規程で定を維持しつつ,特別に必要とする理由がある場合には,理事会の議決により,雇用期間の更新限度を9年までとすることができることとされ た(甲9,10,29,乙8,16〔4条〕,17)。 イ本件規程は,改正の前後を通じ,特任教員が,教授会,委員会等の大学運営に携わらず,教育上の業務に従事するものとし,教育推進上必要な場合に,学生募集,入学試験,学生の就職活動に係る支援等,担当授業科目以外の教育運営に関する業務を分担することがある旨 委員会等の大学運営に携わらず,教育上の業務に従事するものとし,教育推進上必要な場合に,学生募集,入学試験,学生の就職活動に係る支援等,担当授業科目以外の教育運営に関する業務を分担することがある旨規定している(甲1 0,乙8,16〔各5条〕)。 ⑶ 本件労働契約の締結及び更新の状況等ア原告は,平成22年4月1日,被告との間で,雇用期間を1年間とし,被告大学の外国語学部α語学科の特任教員かつ准教授として雇用する旨の本件労働契約を締結した。その後,本件労働契約は,平成26年度(各年度は,その年の4月1日から翌年の3月31日までである。以下同じ。) まで1年ごとに更新された。 イ原告は,本件規程の改正を踏まえて平成26年3月19日に実施された説明会(以下「本件説明会」という。)や,平成27年3月5日に実施された懇談(以下「本件懇談」という。)において,被告の理事として,労務,人事及び財務を担当していた甲(以下「甲理事」という。)と協議す るなどした上で,同月31日,雇用期間を平成27年4月1日から平成28年3月31日まで(平成27年度)の1年間とすること,雇用期間満了30日前までに原告から解約の意思表示がないときは,雇用期間をその後1年間更新するものとし,その後の雇用を保証するものではないことが記載された契約書(甲6。以下「本件契約書」という。)に押印して,被告 との間において,本件労働契約を更新した。 原告は,本件労働契約に基づき,被告から,毎月21日(ただし,当日が土曜日,日曜日,国が定める祝日又は休日の場合はその前日)に,賃金として,月額38万1000円の支払を受けていた。 ウ被告は,平成27年11月9日,原告に対し,本件契約書において本件 労働契約を更新しないことが合意され 又は休日の場合はその前日)に,賃金として,月額38万1000円の支払を受けていた。 ウ被告は,平成27年11月9日,原告に対し,本件契約書において本件 労働契約を更新しないことが合意されていたとして,平成29年3月31日をもって本件労働契約を終了させる旨の予告通知をした。 エ原告は,平成28年3月1日までに,被告に対し,本件労働契約を解約する旨の意思表示をすることはなく,その結果,本件労働契約は平成28年度まで更新された。 オ原告は,平成29年2月17日付けの文書をもって,被告に対し,本件 労働契約の更新を申し入れたが,被告は,同月24日付けの文書をもって,原告に対し,同申入れには応じられない旨通知した。 (以上のアないしオにつき,甲1~6,8,13,14,21,33,42,45~47,90,91,277,乙27,証人甲〔6,14頁〕) 2 争点及びこれに関する当事者の主張 本件の争点は,原告が,本件労働契約の雇用期間満了時(平成29年3月31日)において,本件労働契約の更新を期待することについて合理的な理由があるか否か(労働契約法19条2号該当性)である。 ⑴ 原告の主張アはじめに 原告が本件労働契約の更新を期待することについて合理的な理由があることを基礎付ける事情としては,【事情①】改正後の本件規程において,特任教員の雇用期間が最大9年に延長されたこと,【事情②】被告が,本件申請書に,原告を専任教員として記載したこと,【事情③】他の特任教員につき,雇用期間満了後も雇用形態を変えて労働契約が継続されていた こと,【事情④】原告が,特任教員としての業務を超えた内容の業務を担当していたこと,【事情⑤】被告側が,原告に対し,雇用継続を期待させる言動をしたことの5つが挙げ て労働契約が継続されていた こと,【事情④】原告が,特任教員としての業務を超えた内容の業務を担当していたこと,【事情⑤】被告側が,原告に対し,雇用継続を期待させる言動をしたことの5つが挙げられるため,これらの事情に沿って主張を整理する。 イ事情①について 甲理事は,平成26年3月19日に実施された本件説明会において,本件規程の改正により,それまでは最長5年であった特任教員の雇用の年限が最長9年となったことを説明したため,原告が,少なくともあと5年(9年-4年〔本件労働契約が締結された平成22年4月1日からの経過年数〕),すなわち平成31年3月31日までは,あるいは,あと9年,す なわち平成35年3月31日までは,本件労働契約が更新されると期待す ることにつき,合理的な理由があった。 ウ事情②について教職課程を担当する専任教員は,対象となる学科等の教育課程の編成に参画し,学生の教職指導を担当するなど,当該学科等の教職課程の運営に主導的に関与する者でなければならないとされているところ,被告は,平 成25年4月1日の本件学群の新設に伴う文部科学大臣に対する教職課程の認定申請(平成24年6月19日申請)に際し,本件申請書に,原告の了解を得て,原告をα語科目の専任教員として記載した。 そして,全ての大学は7年以内に1回,文部科学大臣の認証を受けた認証評価機関による認証評価を受けなければならず,被告大学に対する認証 評価は平成32年度に予定されていたところ,被告大学は,かかる認証評価までは,α語科目の教職課程の専任教員を変更することはできないことから,原告が,少なくとも平成32年度までは本件労働契約が更新されると期待することにつき,合理的な理由があった。 また,本件教職課程の認定申請は文 目の教職課程の専任教員を変更することはできないことから,原告が,少なくとも平成32年度までは本件労働契約が更新されると期待することにつき,合理的な理由があった。 また,本件教職課程の認定申請は文部科学大臣に認可されたところ,文 部科学省は,本件教職課程に配置された専任教員の科目適合性を厳格にチェックする方針を採用しており,本件教職課程を担当する専任教員の変更は予定されていなかったから,原告がα語科目の教職課程の専任教員とされている以上,被告大学にα語専攻が存続する限りは,原告が,本件労働契約が更新されると期待することにつき,合理的な理由があった。 エ事情③について被告が過去に特任教員として雇用した者の中には,最長5年の雇用期間の満了後も期間の定めのない専任教員として雇用された者が4名(A,Z,C,D)存在し,特任教員としての任期が複数年延長された者が2名(E,F)存在する。 また,特任教員としての雇用期間の満了後に,非常勤講師(G,H,I, J,K),特命教授(L,M,N,O),専門員(P)といった別形態で再雇用又は委嘱をされて雇用が維持された者が合計10名存在する。 このような過去の特任教員の雇用継続の実績に照らすと,原告が,平成29年度以降も本件労働契約が更新されると期待することにつき,合理的な理由があった。 オ事情④について原告は,平成22年度以降,α語の講義及びゼミナールを含む演習に加え,α語のネイティブ教員が担当する講義の予習及び質問を受け付けたり,b訪問及びc大会といった学外行事に参加したり,学内外から講義の視察を受け入れたり,公開授業を行ったりするなどした。また,α語の教科書 の作成に関与したり,訪問団の受入れを担当したりするなど,本件学群 びc大会といった学外行事に参加したり,学内外から講義の視察を受け入れたり,公開授業を行ったりするなどした。また,α語の教科書 の作成に関与したり,訪問団の受入れを担当したりするなど,本件学群のα語専攻への貢献を通じて被告大学に貢献した上,多文化コミュニケーション学類会議やα語専攻会議等の各種会議への出席を要請され,発言権を認められるなど,被告大学の校務を分掌した。 このように,原告は,教育上の業務に該当しないα語専攻の行事及び正 課外活動の多くに同行しており,雇用期間の定めのない正規の教員と同じ内容の業務を担当していた。こうした原告の担当業務内容に照らせば,原告が,平成29年度以降も本件労働契約が更新されると期待することにつき,合理的な理由があった。 カ事情⑤について 被告大学の副学長であったQ(以下「Q副学長」という。)は,平成22年9月25日,懇親会の席上で,原告には将来的にも専任教員になっていただきたいと発言し,原告が被告大学で長く働く可能性があることを示唆した。 被告は,被告大学の平成29年度の入学案内において,原告を本件学 群のα語専攻の担当教員として紹介した。 原告は,平成27年度以降,2度にわたり,被告の理事であるR(以下「R理事」という。)に対し,雇用が継続されるかを確認し,R理事は,原告の雇用期間の満了後には,α語専攻を担当する任期付きの助教を公募することになるが,原告が応募することは可能である,当該助教が後に専任の准教授になる可能性はある旨を回答した。 原告が平成27年度以降の本件労働契約を更新するに当たり,当初,被告から提示された契約書案(甲279。以下「本件契約書案」という。)には,雇用期間の終期を平成29年3月31日までとすることが記載さ 原告が平成27年度以降の本件労働契約を更新するに当たり,当初,被告から提示された契約書案(甲279。以下「本件契約書案」という。)には,雇用期間の終期を平成29年3月31日までとすることが記載されていたが,その後,被告の事務局との交渉の結果,上記記載が削除され,「その後の雇用を保証するものではない。」と記載された本件契約 書(甲6)が作成されたことは,平成29年度以降も本件労働契約が更新される可能性に含みを残すものである。 甲理事は,本件説明会において,本件労働契約の雇用期間が平成29年3月31日まで延長されると説明したが,その際,雇用期間がそれ以上延長されることはないとは説明しなかった。 また,甲理事は,原告を含む特任教員に対し,被告としてもいてほしいと考えている,次のステップにつながるように前向きに議論したいなどと伝えた。このため,原告は,少なくとも平成29年3月31日までは本件労働契約の継続が確定したことは理解したが,同日の到来をもって本件労働契約が終了するとは理解しなかった。 さらに,甲理事は,本件懇談において,改正後の本件規程が特任教員の雇用期間の上限を9年に変更した理由,その適用条件,雇用期間が9年に延長される場合の始期等について,原告に対し,誠実な説明をしなかった。 被告の経営企画室の職員は,平成28年8月17日,原告に対し,平 成29年の創立50周年記念事業の一環として策定した新たなシンボル マークを付した名刺を作成し,配布するので,必要事項を記入し,返信するようにという趣旨のメールを送信した。 以上の被告側の言動は,いずれも,原告に対し,平成29年度以降における本件労働契約の更新を期待させるものであり,原告が,平成29年度以降も本件労働契約が更新されると期待するこ メールを送信した。 以上の被告側の言動は,いずれも,原告に対し,平成29年度以降における本件労働契約の更新を期待させるものであり,原告が,平成29年度以降も本件労働契約が更新されると期待することにつき,合理的な 理由があった。 ⑵ 被告の主張ア事情①について改正後の本件規程は,特別に必要とする場合に,理事会の議決により,特任教員の雇用期間の上限を9年とすることができるというものであり, 9年間の雇用を無条件に保証するものではない。 また,甲理事は,本件説明会において,原告を含む特任教員に対し,雇用期間の終期を平成29年3月31日として労働契約が更新されることを説明した。 そうすると,改正後の本件規程の内容や本件説明会における説明内容か ら,最長であと9年又は5年は本件労働契約が更新されるとの期待が原告に生じていたなどとはいえない。 イ事情②について平成25年4月1日に始まる本件教職課程の完成年度(大学が学部を新設した場合における当該学部に最初に入学した学生が卒業する年度)は平 成28年度(平成29年3月31日まで)であるから,それ以後は原告の雇用を維持する必要はない。 また,被告大学に対する認証評価は,平成32年度ではなく,平成29年度に実施されることが予定されていたのであって,原告の主張はその前提において誤っていることに加え,認証評価が終了するまでの間,教員人 事を固定しなければならないわけではなく,その終了までの間,本件労働 契約を継続しなければならない理由はない。 ウ事情③について特任教員としての雇用期間の満了後に期間の定めのない専任教員として継続的に雇用された者として原告が指摘する4名は,カリキュラム運営上の観点から必要な人材を確保するための人事 ウ事情③について特任教員としての雇用期間の満了後に期間の定めのない専任教員として継続的に雇用された者として原告が指摘する4名は,カリキュラム運営上の観点から必要な人材を確保するための人事選考を経て,期間の定めの ない教員として雇用されたのであって,原告が期間の定めのない雇用を期待することの合理的な理由となるものではない。 また,特命教授は,学生募集活動などの特命活動等に寄与できる者に,学長の特命により特命教授の称号を付与し,これらの特命活動等を委嘱したにすぎず,被告と雇用関係にはないし,専門員は,事務職員の一種であ り,特任教員とは全く異なる立場の者である。そうすると,特任教員としての雇用期間の満了後に特命教授又は専門員として採用された者が存在することは,原告において,平成29年度以降も本件労働契約が継続すると期待することとは無関係である。 さらに,特任教員の雇用期間の満了後に非常勤講師の委嘱を受けた者が いるからといって,原告が平成29年度以降も本件労働契約が継続すると期待することの合理的な理由となるものではない。 エ事情④についてα語専攻の開設や開講科目を立案するコーディネーター等,期間の定めのない教員の中核となる業務は,α語,α文学を専門とする教育職員が交 代で受嘱してきたが,原告は一度もこの業務を担当していない。 また,教授会への出席以外の原告が主張する業務は,有期雇用であるか無期雇用であるかを問わず,いずれの教員であっても行っているものであるし,教授会への出席は,オブザーバーとしての出席が認められていたにすぎず,大学運営に参画させることを目的としたものではなかったし,出 席するか否かは原告の意思に委ねられ,かつ,議決に加わったわけでもな かった。 したが の出席が認められていたにすぎず,大学運営に参画させることを目的としたものではなかったし,出 席するか否かは原告の意思に委ねられ,かつ,議決に加わったわけでもな かった。 したがって,原告が主張する上記各業務は,いずれも被告大学の運営に携わる内容のものではなく,原告は教育上あるいは教育推進上の業務を行っていたにすぎないのであるから,原告が本件労働契約の継続を期待することの合理的な理由となるものではない。 オ事情⑤についての原告の各主張に対応するものである。)原告主張の事実は否認する。仮に,Q副学長の発言があったとしても,それは,挨拶又は奨励の域にとどまり,原告に対し,本件労働契約の継続への期待を生じさせるものではない。 平成29年度の入学案内に原告を担当教員として掲載したからといって,同年度以降の雇用継続を保証するものではないし,原告にその期待を生じさせるものでもない。そもそも,かかる入学案内を脱稿する平成28年3月の時点においては,平成29年度の人事が確定していなかったため,原告を担当教員として掲載したにすぎない。 原告主張のR理事の回答は,一般論を述べたものにすぎず,原告がα語専攻を担当する助教になることを確約したものではないことは明らかである。 本件契約書中の「その後の雇用を保証するものではない。」という文言は,その後の雇用が保証されることを否定するという文意であり,原 告に対し,平成29年度以降における本件労働契約の継続に対する期待を生じさせるものではないことは明らかである。 甲理事は,一般論として,改正後の本件規程によると,最大で9年まで雇用が延長される可能性があると伝えたにすぎない。 本件契約書には「その後の雇用を保証するものではない。」と記載さ 明らかである。 甲理事は,一般論として,改正後の本件規程によると,最大で9年まで雇用が延長される可能性があると伝えたにすぎない。 本件契約書には「その後の雇用を保証するものではない。」と記載さ れており,原告と被告の間においては,平成29年度以降は本件労働契 約が更新されないことが明確に合意されていた上,原告が,本件説明会や本件懇談の際に,雇用期間の延長を要望したり,期間の定めのない契約にするよう要望したりしたことはなかったことからすると,甲理事の上記発言は,原告に対し,平成29年度以降における本件労働契約の更新を期待させるものとはいえない。 原告主張の新たな名刺は,被告大学創立50周年の前年である平成28年度中から計画され,その当時の在職教職員全員を対象として準備を進めていたものであり,平成29年度以降に在職する予定の教職員のみを対象として作成を進めていたものではなく,このような名刺の作成指示が,原告に対し,平成29年度以降も本件労働契約が継続するとの期 待を生じさせるものであったとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実⑴ 認定事実の視点について原告は,本件の争点(原告が,本件労働契約の雇用期間満了時において, 本件労働契約の更新を期待することについて合理的な理由があるか否か)の判断の要素として,【事情①】改正後の本件規程において,特任教員の雇用期間が最大9年に延長されたこと,【事情②】被告が,本件申請書に,原告を専任教員として記載したこと,【事情③】他の特任教員につき,雇用期間満了後も雇用形態を変えて労働契約が継続されていたこと,【事情④】原告 が,特任教員としての業務を超えた内容の業務を担当していたこと,【事情⑤】被告側が,原告に対し,雇用継続を期待さ 雇用期間満了後も雇用形態を変えて労働契約が継続されていたこと,【事情④】原告 が,特任教員としての業務を超えた内容の業務を担当していたこと,【事情⑤】被告側が,原告に対し,雇用継続を期待させる言動をしたことの5つの事情を挙げるところ,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,上記の事情に関して,以下の事実が認められる。 ⑵ 本件規程に基づく原告に対する処遇の決定等(事情①,⑤関係) ア被告の常勤理事会は,平成26年3月7日,本件規程が同年2月20日 に改正されたことに伴い,本件労働契約を平成28年度まで更新することを可能とする旨の議事を承認した(乙28)。 イ甲理事は,平成26年3月19日,本件説明会を開催し,原告を含む4名の特任教員に対し,改正後の本件規程に関する説明をした。 甲理事は,原告を含む出席者に対し,改正後の本件規程の内容が記載され た資料を配布した上で(なお,この資料は本件説明会後に回収された。)被告大学が本件学群を設置したことに伴い,完成年度である平成28年度までは,文部科学省に届け出たカリキュラムを維持する必要性が生じているため,原告を含む特任教員4名の雇用期間について,従前の本件規程による5年間から更に2年間延長する旨告知した。 このような告知に対し,原告を含む特任教員から,改正後の本件規程により,自分たちにつき,9年間は雇用が継続されるのか,反対に,完成年度の平成28年度末以降は自分たちが不要となるのかという質問がされたが,甲理事は,被告大学の一学群化に際し,今後もいてほしいと思ったからこそ,原告を含む特任教員を被告大学の教員として文部科学省に届け出 て,その後も雇用を継続してきていること,改正後の本件規程が定める特任教員との労働契約の雇用期間の上限である9年の起算点 からこそ,原告を含む特任教員を被告大学の教員として文部科学省に届け出 て,その後も雇用を継続してきていること,改正後の本件規程が定める特任教員との労働契約の雇用期間の上限である9年の起算点をいつからにするのかについては考えていないことを述べる一方で,これに続けて,今後新規に採用する教員については特別な場合に9年まで延長するものであること,一般に,複数人の教員をまとめて起算点を一律にして9年まで延長 するものではないこと,原告を含む特任教員の雇用継続は完成年度の平成28年度末,すなわち,平成29年3月31日までを念頭に置いており,同日までは雇用の継続が確実であるが,労働契約が1年ごとに更新される以上,2年後,3年後の雇用の継続を約束することはできない旨回答し,同年4月1日以降も原告ら特任教員の雇用を継続することを予定している とは説明しなかった。そして,甲理事は,雇用期間が平成28年度末まで 延長されるのであるから,その間に,次のステップにつながるように,特任教員の人事の在り方について前向きな方向で議論をしてもらいたいとも述べた。 (甲90,91,238,乙9,証人甲〔10~17頁〕,原告本人〔4,24~26,28,31,36,37頁〕) 被告は,平成27年2月10日頃,原告を含む特任教員に対し,本件労働契約の更新に関し,本件契約書案を交付したところ,その2条2項には,「雇用期間の終期は平成29年3月31日とする。」(以下「本件終期条項」という。)と記載されていた(甲15,278,279,原告本人〔9頁〕)。 これを受けて,原告を含む特任教員3名は,甲理事に対し,本件終期条項について説明を求めたところ,甲理事は,同年3月5日の本件懇談において,上記3名に対し,雇用期間は平成29年3月3 )。 これを受けて,原告を含む特任教員3名は,甲理事に対し,本件終期条項について説明を求めたところ,甲理事は,同年3月5日の本件懇談において,上記3名に対し,雇用期間は平成29年3月31日までであり,それ以降の延長はないと説明した。(甲16,239,乙3,証人甲〔4,5,18頁〕,原告本人〔11頁〕) 本件懇談における甲理事からの説明を聞いた原告を含む特任教員3名は,被告大学の教職員組合に本件契約書案中の本件終期条項の記載について相談したところ,同組合は,平成27年3月20日頃から,被告との間で,本件終期条項の修正を求める交渉を行い,その結果,被告から,本件終期条項を削除した上で,「雇用期間をその後1年間更新するものと し,その後の雇用を保証するものではない。」との条項を新たに盛り込むことを提案された。上記組合は,同月24日,原告に対し,被告としては雇用継続に対する過大な期待を持ってもらいたくないという意向がある,修正後の条項であれば,平成28年4月1日以降,担当科目が残れば,雇用の必要が生じ,特任教員として通算9年間の雇用や別の専任教 員ポストへの切替え等の可能性があり,不利な提案ではない旨のメール を送信した。 原告は,同月31日,被告の事務担当者から,「雇用期間の終期は平成29年3月31日とする。」との本件終期条項が記載された本件契約書案と「雇用期間をその後1年間更新するものとし,その後の雇用を保証するものではない。」との条項が記載された本件契約書の2通を示され,い ずれかを選択して押印するよう求められ,本件契約書への押印を選択した。 (甲6,94~100,247,279,証人甲〔21,22頁〕,原告本人〔13~16頁〕)⑶ 本件学群の創設に当たっての原告に対する て押印するよう求められ,本件契約書への押印を選択した。 (甲6,94~100,247,279,証人甲〔21,22頁〕,原告本人〔13~16頁〕)⑶ 本件学群の創設に当たっての原告に対する処遇等(事情②関係) ア平成25年4月1日に新設された本件学群においては,α語が語学の選択科目とされ,原告は,α語の科目の一部を担当することが予定されていた(甲37,38)。 被告は,本件学群においても教職課程を設置することを予定していたところ,R理事は,平成24年5月24日,原告に対し,教職課程の認 定申請に当たり,α語科目のシラバスの作成を依頼し,原告は,これに従ってシラバスを作成した。 被告は,原告の了解を得て,本件申請書に,原告をα語科目の教職課程を担当する専任教員として記載し,平成24年6月19日,本件申請書を文部科学大臣に提出した。 (甲35,36,92,93,乙13の1・2) 文部科学省は,教職課程における専任教員について,認定を受けようとする課程を有する学科等に所属し,かつ,当該学科等の教職課程の授業科目を担当し,教育課程の編成に参画し,学生の教職指導を担当するなど,当該学科等の教職課程の運営に当たり,主導的に関与する者であ ることを要求している(甲249)。 大学が学部を創設した場合,完成年度(大学が学部を新設した場合における当該学部に最初に入学した学生が卒業する年度)までの間は,当該学部の創設年度に申請したカリキュラムの内容及び教員による一連の教育を継続することが求められており,原則として,当該期間中は,当該カリキュラムの内容及び教員の変更ができない。また,教職課程の認 定は,完成年度までその内容を確実に履行することを前提としているため,当該 ることが求められており,原則として,当該期間中は,当該カリキュラムの内容及び教員の変更ができない。また,教職課程の認 定は,完成年度までその内容を確実に履行することを前提としているため,当該教職課程の初年次の活動が開始するまでは,やむを得ない事由により専任教員を変更する場合等のとき以外の変更は認められないが,完成年度までの間に退職が予定されている専任教員については,上記認定の申請時において,後任者が決まっている場合にはその記載をするこ ととし,退職等が未定又は後任者が未定の場合には,後に変更届を提出することとされている。 被告大学においては,平成28年度(平成28年4月1日~平成29年3月31日)が,本件学群及び本件教職課程の完成年度となる。 (甲253〔3枚目〕,乙25,26) 国公私立の全ての大学は,7年以内に1回,文部科学大臣の認証を受けた認証評価機関による認証評価を受けなければならず,認証評価は,各大学の状況が,設置基準等の法令に適合していることの確認,各大学の自主的・自律的な質保証,向上の取組みの支援,各大学の特色ある教育研究の進展の支援を目的として実施される。 被告大学においては,平成29年度中(平成29年4月1日~平成30年3月31日)に認証評価が実施された。 (甲250,乙23,24)⑷ 特任教員として被告と有期雇用契約を締結した者と被告とのその後の契約関係等(事情③,⑤関係) ア被告は,特任教員として被告と有期労働契約を締結した2名の教員(E, F)について,5年の雇用期間経過後も,雇用期間を延長して雇用した(甲54,56,237,262~264,266,267,271,証人甲〔17~20頁〕)。 イ被告は,特任教員として被告 F)について,5年の雇用期間経過後も,雇用期間を延長して雇用した(甲54,56,237,262~264,266,267,271,証人甲〔17~20頁〕)。 イ被告は,特任教員として被告と有期労働契約を締結した4名の教員(A,Z,C,D)について,雇用期間満了後,引き続き,期間の定めのない教 員として採用した(甲49~53,57,58,237,266,267,証人乙〔6頁〕)。 ウ被告は,特任教員として被告と有期労働契約を締結した5名の教員(L,P,M,O,N)について,特命教授又は専門員という地位で,被告の職員としての地位を維持した。 このうち,特命教授は,被告大学学長が候補者を選定し,常勤理事会の議決を経て,学長が委嘱することによって被告の職員となる者であり,被告と雇用関係にあるものではない。また,専門員は,被告の事務職員として勤務する者である。 (甲51,52,54,56,57,237,262~268,271) エ被告は,特任教員として被告と有期労働契約を締結した5名の教員(G,H,I,J,K)について,雇用期間満了により退職扱いとした上で,更に非常勤講師として採用した(甲48~54,56,58,271,証人乙〔1頁〕)。 オ被告は,α語を母国語とする非常勤講師2名(S,T)について,平成 29年4月以降も引き続き非常勤講師として委嘱した(甲228,229,証人乙〔8,9頁〕)。 カ原告と同時期に被告大学に勤務していた特任教員3名(U,V,W)のうちU及びVは平成28年3月31日に,Wは平成29年3月31日に,いずれも被告を退職した(証人甲〔31頁〕,原告本人〔37頁〕)。 ⑸ 原告の被告大学における活動等(事情④関係) ア原告は,被告大 3月31日に,Wは平成29年3月31日に,いずれも被告を退職した(証人甲〔31頁〕,原告本人〔37頁〕)。 ⑸ 原告の被告大学における活動等(事情④関係) ア原告は,被告大学において,α語の講義及びゼミナールを担当したことに加え,α語の講義及びゼミナール等で使用する教材を編集,作成するとともに,c大会の審査員及びdにおけるα語講師を務め,eの文化交流リーダー養成講座事業及びfの講師として講演を行い,また,αからの訪問団の受入れを担当するなどしたほか,被告大学及び他大学の学生並びに一 般社会人らが参加するα語合宿,学外宿泊研修に引率教員又は講師として参加した。 また,原告は,被告大学の本件学群α語専攻の入学試験の面接に関わったこともあった。 (甲33,34,59,69,70,84,85,88,168,177, 178,181,183,189,191,証人乙〔24頁〕,証人甲〔29頁〕,原告本人〔20~22頁〕)。 イ原告は,被告大学が本件学群を創設する前後を通じて,被告大学の外国語学部の教授会にオブザーバーとして出席し,α語学科会議にも出席した(甲24,101~151,153~166)。 そのほか,原告は,α語専攻ミーティングに出席し,乙教授と短期研修の実施についての協議検討をするなどし,また,多文化コミュニケーション学類会議や外国語学系会議にも出席した。学類会議においては,学類の教育や教育課程の編成に関することなどを,学系会議においては,教員の研究や教員の人事の検討に関することなどを審議することとされているが, いずれも特任教員は構成員から除かれている。(甲37,169~176,184~187,192~221,乙21,22)⑹ 平成29年度以降の原告に対する処遇の予定等 こととされているが, いずれも特任教員は構成員から除かれている。(甲37,169~176,184~187,192~221,乙21,22)⑹ 平成29年度以降の原告に対する処遇の予定等(事情⑤関係)ア被告大学の経営企画室の職員は,平成28年8月17日,原告を含む教育職員全員に対し,被告大学が平成29年に創立50周年となることの記 念事業の一環として,新たなシンボルマークを付した名刺を作成するため, 必要事項を記入したシートの返信を依頼する旨のメールを送信し,これに対し,原告は,同月25日,自己の氏名,メールアドレス等の必要事項を記入したシートを返信した(甲39,乙11の1・2)。 被告大学において,平成28年10月24日頃,「2017年度 α語専攻開設授業科目一覧」と題する書面(以下「本件一覧」という。)が作 成された。 原告は,本件一覧において,平成28年度の担当教員欄には,α語入門Ⅰ・Ⅱを担当する専任教員の欄に記載されていたが,平成29年度の担当教員欄には,α語入門Ⅰ・Ⅱ及びα文学講読Bを担当する兼任教員の欄に記載されていた。 また,平成29年度の入学者を募集する被告大学の入学案内にも,原告がα語科目の担当教員として記載されていた。 (甲38,227)被告大学の学生支援オフィスの職員は,平成28年10月25日,原告に対し,乙教授から,原告が平成29年度以降も非常勤講師として講 義を担当することを聞いたとして,必要書類の提出を依頼した(乙4)。 乙教授は,平成28年10月31日,被告大学学長に対し,原告の履歴書,教育研究業績書とともに非常勤講師委嘱理由書を提出し,平成29年4月1日以降も,原告にα語専攻の科目であるα語入門Ⅰ・Ⅱ,α文学講読B等について,非常 0月31日,被告大学学長に対し,原告の履歴書,教育研究業績書とともに非常勤講師委嘱理由書を提出し,平成29年4月1日以降も,原告にα語専攻の科目であるα語入門Ⅰ・Ⅱ,α文学講読B等について,非常勤講師として学生指導を委嘱したい旨の申 入れをしたが,被告はこれを拒絶した。 Q副学長は,平成28年11月19日,乙教授に対してメールを送信し,特任教員を非常勤講師に切り替えにくい理由として,雇用の固定化の問題があるとした上で,特任教員を非常勤講師として雇用すると,当該教員が被告大学の教育に不可欠の人材であることの傍証を積み上げる ことになり,当該教員と被告との間の労働契約を打止めにすることがか なり困難になる可能性があり,被告としては,当該教員が特任教員である間に一度区切りをつけようとしていると推測される旨記載した。 (甲32~34,274,乙5,証人乙〔8,9,11,12,15頁〕,原告本人〔19,20頁〕)その後,被告は,X助教にα語入門Ⅰ・Ⅱを担当させることとし,平 成29年1月27日,乙教授に対し,時間割の再調整を依頼した(甲230)。 ウ R理事は,平成27年10月24日,被告大学の教授であったY(以下「Y教授」という。)を介して原告に対し,原告の本件労働契約の期間が満了した後,助教を新規に公募する可能性があり,助教は,初めは任期付き ではあるものの,その後専任の准教授になる可能性が十分あること,かかる公募に対して原告が応募することは可能であることを伝えた(甲27)。 2 争点(原告が,本件労働契約の雇用期間満了時において,本件労働契約の更新を期待することについて合理的な理由があるか否か)に対する判断⑴ 改正後の本件規程の内容及び本件説明会における甲理事の説明内容につい 件労働契約の雇用期間満了時において,本件労働契約の更新を期待することについて合理的な理由があるか否か)に対する判断⑴ 改正後の本件規程の内容及び本件説明会における甲理事の説明内容につい て(事情①,⑤関係)ア前提事実⑵アのとおり,改正後の本件規程4条は,特任教員の雇用期間を無条件に9年間とするものではなく,特別に当該教員の雇用を継続する必要があり,かつ,理事会の議決がある場合には,雇用期間を最大9年間まで更新することができる旨を規定しているにすぎないから,改正後の本 件規程によって,直ちに9年間の雇用継続への期待が生じるとはいえない。 また,認定事実⑵イのとおり,甲理事は,本件説明会において,原告を含む特任教員4名に対し,従前の本件規程による5年間に加えて更に2年間は雇用期間を延長し,平成28年度末までは確実に雇用する旨説明したが,平成29年度以降の雇用継続については,労働契約が1年ご とに更新される以上,2年後,3年後の雇用の継続を約束することはで きないと述べ,改正後の本件規程による労働契約の上限期間である9年間は雇用が継続されることになるとの説明は一切していない。 もっとも,認定事実⑵イのとおり,甲理事は,本件説明会において,平成29年度以降は本件労働契約が更新されないと説明したわけではなく,また,原告を含む特任教員4名に対し,被告大学の一学群化に際し, 今後もいてほしいと思ったからこそ,原告を含む特任教員を被告大学の教員として文部科学省に届け出て,その後も雇用を継続してきたこと,次のステップにつながるように,特任教員の人事の在り方について前向きな方向で議論をしてもらいたいことに言及している。 確かに,甲理事は,被告の人事を担当していた理事であるから,この 次のステップにつながるように,特任教員の人事の在り方について前向きな方向で議論をしてもらいたいことに言及している。 確かに,甲理事は,被告の人事を担当していた理事であるから,この ような言及は,原告を含めた特任教員の平成29年度以降の雇用継続につき一定の含みを残すものということができる。 しかしながら,本件説明会が実施された平成26年3月19日の時点で,原告は,希望さえすれば,少なくとも約3年後の平成28年度末までは雇用されることが確定していたところ,甲理事は,本件説明会から 3年以上も後の平成29年度以降の本件労働契約の更新については,現時点では何の約束もできないが,なお議論の余地がないわけではなく,本件説明会後の検討に委ねたいという意味で,原告を含む特任教員の例においても,前向きな方向で議論をしてもらいたいと述べたにすぎないといえる。 したがって,甲理事の発言は,平成29年度以降も本件労働契約が更新されるか否かは,更新時期が近づいたら,そのときの状況に応じ,改正後の本件規程4条の要件を満たす場合であるか否かを判断した上で決定するという程度の期待を持たせるものにすぎず,原告が平成29年度以降も本件労働契約が更新されると期待することの合理的な理由となる とはいえない。 これに対し,原告は,本件説明会において,甲理事が,改正後の本件規程に基づく雇用期間の上限について5年から9年に変更すると述べたのみで,特別の必要性や理事会の議決といった要件の説明がなかったこと,上限である9年間の起算点について考えていない旨説明したことから,9年間は無条件に本件労働契約が更新されると期待した旨供述する (原告本人〔7,36,37頁〕)。 確かに,甲理事は,9年 と,上限である9年間の起算点について考えていない旨説明したことから,9年間は無条件に本件労働契約が更新されると期待した旨供述する (原告本人〔7,36,37頁〕)。 確かに,甲理事は,9年の起算点をどの時点とするかは考えていない旨発言しているところではある(認定事実⑵イ)。しかしながら,甲理事は,かかる発言の直後に,新規採用者については特別な場合に9年まで延長する,複数人の教員をまとめて起算点を一律にして9年まで延長す るものではないとも発言していることに加え,原告を含む本件説明会の出席者に対し,改正後の本件規程が記載された資料を配布し,原告もそれに目を通し,その内容を認識した上で,甲理事の説明を聞いていたものである(認定事実⑵イ)。 このような甲理事の一連の言動からすると,原告が供述する甲理事の 発言内容は,本件説明会の出席者の雇用期間を無条件に9年間とすることを前提にしたものであると認めることはできない。 ウ以上によれば,改正後の本件規程の内容及び本件説明会における甲理事の説明内容は,原告に対し,平成29年度以降の本件労働契約の更新を期待させることの合理的な理由となるものではない。 なお,原告は,本件規程の改正手続が不適正である旨種々主張するが,本件規程の改正手続の適正性は,原告に対し,合理的理由をもって,平成29年度以降も本件労働契約が更新されるとの期待を生じさせたか否かの判断とは無関係なものであって,上記結論を左右しない。 ⑵ 本件契約書案及び本件契約書における本件労働契約の終期の記載をめぐる 交渉について(事情⑤関係) ア本件契約書案中の本件終期条項と本件契約書に盛り込まれたその修正条)を比較すると,契約期間の終期を明示する部分が削除されているもの 載をめぐる 交渉について(事情⑤関係) ア本件契約書案中の本件終期条項と本件契約書に盛り込まれたその修正条)を比較すると,契約期間の終期を明示する部分が削除されているものの,それでもなお,平成27年度の本件労働契約に関して同年3月31日に交わされた本件契約書には,本件労働契約に係る従前の契約書にはなかった条項である「雇用期間をその後1年間更新す るものとし,その後の雇用を保証するものではない。」との条項が含まれているところ,この条項中,「その後1年間」とは,平成28年度の1年間を意味するものと解釈されるから,平成29年度以降の本件労働契約の更新は約束されていないことが明示されているということができる。 そして,甲理事は,平成27年度における本件労働契約の更新に先立ち, 同年3月5日に実施された本件懇談において,原告を含む特任教員に対し,雇用期間は平成29年3月31日までであり,それ以降の延長,すなわち契約期間の更新はない被告は,原告を含む特任教員から相談を受けた被告大学の教職員組合との間における交渉を経て,本件終期条項を本件契約書記載の文言に修正して いるところ,そのことについて,同組合は,原告に対し,雇用継続に対する過大な期待を原告に持ってほしくないという意向が被告にはある旨指摘している(認定事実⑵ウ)。 このような本件契約書案中の本件終期条項が修正されるまでの経緯及び上記指摘からすれば,被告は,平成29年度以降の本件労働契約の更新を 保証する趣旨で本件終期条項を修正したものではなく,むしろ,平成29年度以降の本件労働契約の更新は期待できるものではないことを原告に示し,原告もそのことは認識した上で本件契約書を交わしたというべきである。 これらからすれば,本 はなく,むしろ,平成29年度以降の本件労働契約の更新は期待できるものではないことを原告に示し,原告もそのことは認識した上で本件契約書を交わしたというべきである。 これらからすれば,本件終期条項の修正に関する交渉がされた結果,本 件終期条項が削除されて,本件契約書が交わされたことをもって,原告が 平成29年度以降の本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。 イ原告は,甲理事が,本件懇談において,特任教員の雇用期間の上限が9年間となる場合の適用条件等について明確な説明をせず,曖昧な説明に終始した旨主張するが,原告主張に係る事実を認めるに足りる証拠は一切な く,この点に関する原告の主張は採用できない。 ウ以上によれば,本件懇談を含む本件契約書案及び本件契約書における本件労働契約の終期の記載をめぐる交渉は,原告が平成29年度以降の本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。 ⑶ 被告が本件教職課程に係る本件申請書に原告を専任教員として記載したこ とについて(事情②関係)アα語科目のみならず,本件教職課程においても,α語科目を担当していたところ,新設される学部及び認可を受けた教職課程においては,その完成年度までの間,教員を変更することは原則として許されなかったものの,本件 学群及び本件教職課程の完成年度は平成28年度であるから,平成29年4月1日以降は,本件学群及び本件教職課程の教員を変更することが可能となる。 これによれば,本件教職課程に係る本件申請書に原告が専任教員として記載されたとしても,原告において,本件労働契約が更新されることを合 理的な理由をもって期待することができるのは,平成28年度までと によれば,本件教職課程に係る本件申請書に原告が専任教員として記載されたとしても,原告において,本件労働契約が更新されることを合 理的な理由をもって期待することができるのは,平成28年度までということになり,原告が,平成29年度以降において本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。 イまた,原告は,本件学群及び本件教職課程に基づく被告大学の運用が開始された平成25年度(前提事実⑴イ)から起算して7年後に認証評価が 実施されるから,少なくとも平成32年度まで本件労働契約が更新される ことを合理的な理由をもって期待できた旨主張する。 しかしながら,被告大学における認証評価の実施時期は平成29年度で認証評価の目的は,各大学の状況が,設置基準等の法令に適合していることの確認,各大学の自主的・自律的な質保証,向上の取組みの支援,各大学の特色あ る教育研究の進展の支援にあり担当教員の固定が求められているものではないことからすれば,認証評価時まで担当教員の雇用を継続しなければならない合理的な理由は見出し難く,原告の上記主張は採用できない。 ⑷ 他の特任教員と被告との労働契約の継続状況について(事情③関係) ア認定事実⑷アによれば,被告に特任教員として雇用された教員が,契約期間の上限である5年間を超えて雇用継続されている事例も認められる。 しかしながら,他の教員が雇用継続されたのは,当該教員の教育指導状況等の個別事情を踏まえた判断に基づくものであり,そのような個別事情を度外視して,他の教員が雇用継続されたという結果のみをもって,原告 が平成29年度以降における本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。 イそのほか,認定事実⑷ 外視して,他の教員が雇用継続されたという結果のみをもって,原告 が平成29年度以降における本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。 イそのほか,認定事実⑷イないしエによれば,被告の特任教員として雇用された教員で,契約形態を変えて被告と労働契約を締結した者が存在するものの,このような教員の存在は,原告に対し,特任教員としての地位で 本件労働契約が更新されることの期待をそもそも生じさせるものではなく,これらの事実を原告のかかる期待を基礎付ける事実と考えるべきではない。 ウ以上によれば,他の特任教員の雇用継続状況は,原告が平成29年度以降の本件労働契約の更新を期待する合理的な理由となるものではない。 ⑸ 原告が被告大学において担当していた業務について(事情④関係) ア原告は,被告大学において,特任教員が行うべき業務,すなわち教育上の業務及び担当授業科目以外の教育運営に関する事務とはいえないものも担当してきた旨主張し,具体的には,α語合宿や学外宿泊研修の引率をしたり,c大会の審査員やdにおけるα語研修の講師を務めたり,一般市民が参加する講座等で講演を行ったり,講義等で使用する教材を作成した りしたことを挙げ,確かに原告がその主張するような業務を担当していたことは認められる(認定事実⑸ア)。 しかしながら,これらの業務のうち,被告大学の学生が参加する企画についての関与や使用教材の作成については,被告大学のα語学科又はα語専攻の教員としての職務又はこれに付随するものと評価できるし,その他 のものについても,被告大学が業務命令を発するなどして原告に対して任意の協力を求める以上のことをしたとも認められず,また,これらの業務を担当すれば,本件労働契 するものと評価できるし,その他 のものについても,被告大学が業務命令を発するなどして原告に対して任意の協力を求める以上のことをしたとも認められず,また,これらの業務を担当すれば,本件労働契約を更新する旨の提案を被告から受けたとも認められない。 そうすると,これらの業務を担当することにより,将来,その功績が認 められて,本件労働契約が更新されるとの主観的な期待を原告が抱いたとしても,そのような期待は,労働契約法19条2号にいう合理的な理由のある期待ということはできないというべきである。 イまた,原告は,認定事実⑸イのとおり,各種の会議及びミーティングに出席しているが,教授会への参加は,オブザーバーとしてのものであり, 学類会議や学系会議への出席も,それが義務付けられていたと認めるに足りる証拠はなく,その他の会議やミーティングについても同様である。そうすると,原告がこれらの会議及びミーティングに出席していたことから,原告が,特任教員として今後も被告大学の教育体制に関与していくことが予定されていたと認めることはできず,これらの会議及びミーティングへ の出席の事実をもって,原告が平成29年度以降の本件労働契約の更新を 期待することの合理的な理由となるものではない。 ウ以上によれば,原告が認定事実⑸アのとおりの業務を担当し,同イのとおりの会議等に出席したことは,原告が平成29年度以降の本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。 ⑹ 被告大学職員による本件労働契約継続に関連する言動について(事情⑤関 係)ア原告は,被告側による種々の言動により,平成29年度以降も本件労働契約が継続することを期待しており,そのことには合理的理由があった旨主張する。そのよ る言動について(事情⑤関 係)ア原告は,被告側による種々の言動により,平成29年度以降も本件労働契約が継続することを期待しており,そのことには合理的理由があった旨主張する。そのような言動として,原告は,既に説示したもの以外に,①Q副学長の発言,②被告大学の入学案内に原告の氏名が記載されたこと, ③R理事が助教の公募等に関する回答をしたこと,④原告が平成29年における被告大学創立50周年を記念した名刺の作成についての連絡を受けたことを挙げるので,以下,これらについて検討する。 イ ①Q副学長の発言について原告は,平成22年9月25日における講演会後の懇親会において,Q 副学長から,被告大学の専任教員となってもらい,α語学科の未来を担ってもらいたい旨の言葉をかけられたことを,平成29年度以降の本件労働契約の更新に対する期待の一事情として主張し,原告もこれに沿う供述をする(原告本人〔32頁〕)。 しかしながら,まず,Q副学長がこのような発言をしたとの原告の上記 供述を裏付ける客観的証拠はない。また,仮に,原告が供述するとおりのQ副学長の発言があったとしても,それは本件労働契約が締結された約半年後の時点のものである上,上記⑴及び⑵で説示したとおり,平成26年3月以降における本件労働契約の継続に関する原告と被告の間のやり取りの内容が,最終的には平成29年度以降の本件労働契約の継続が保証でき るものではないとの被告の意向を示したものであったことからすれば,原 告主張に係るQ副学長の上記発言が,原告に対して,平成29年度以降における本件労働契約の更新についての期待を生じさせるものということはできないというべきである。 ウ ②被告大学の入学案内に原告の氏名が記載され 長の上記発言が,原告に対して,平成29年度以降における本件労働契約の更新についての期待を生じさせるものということはできないというべきである。 ウ ②被告大学の入学案内に原告の氏名が記載されたことについて認定事実⑹イのとおり,平成29年4月の入学者を募集するための被 告大学の入学案内に原告の氏名が記載されているが,これは,同案内作成時点における教員構成に基づいて作成されるものである上,学生募集のための資料にすぎず,かかる入学案内に原告の氏名が記載されているとしても,そのことから,被告が本件労働契約を平成29年度においても更新することを公的に表示したものということはできず,この記載は,原告が, 平成29年度以降において本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。 エ ③R理事が助教の公募等に関する回答をしたことについて認定事実⑹ウのとおり,R理事がY教授を通じて原告に対して伝達した内容(甲27)は,助教から専任の准教授に昇格する可能性があり,助教 の公募に対して原告が応募することは可能であることを述べるにとどまり,原告が助教として雇用されることの確実性についてまでは言及されていない。そもそも,助教としての採用は,特任教員としての本件労働契約の更新とは全く異なる新たな雇用契約の締結を前提とするものであって,本件労働契約の更新に対する期待に結び付くものではないというべきで ある。 オ ④原告が平成29年における被告大学創立50周年を記念した名刺の作成についての連絡を受けたことについて認定事実⑹アのとおり,原告は,平成29年に被告大学が創立50周年となることを記念したシンボルマークの入った名刺の作成に関する連絡を 受けているが,かかる ての連絡を受けたことについて認定事実⑹アのとおり,原告は,平成29年に被告大学が創立50周年となることを記念したシンボルマークの入った名刺の作成に関する連絡を 受けているが,かかる連絡は,被告大学の経営企画室が平成28年8月1 7日時点で被告大学の教育職員であった者全員に対してされた事務的な連絡であり,平成29年度以降も被告大学に勤務する予定の有無を判断して送信されたものではない。 これによれば,かかる連絡は,原告が,平成29年度以降の本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。 カその他の言動について本件一覧の平成29年度担当教員欄には,原告は「兼任」と記載されており,他方,平成28年度担当教員欄には,原告は「専任」として記載さ しかしながら,そもそも,特任教員は専任教員であるから(前提事実⑴ ア),本件一覧の記載は,原告が,平成29年度以降の本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるものではない。 キ小括以上によれば,被告側による本件労働契約の継続に関連する言動は,原告が,平成29年度以降において本件労働契約の更新を期待することの合 理的な理由となるものではない。 ⑺ 原告の本件労働契約の継続に対する期待についてア上記⑴から⑹で検討してきたこれらの事情は,いずれも,原告が,平成29年度以降も本件労働契約が更新されると期待することにつき合理的な理由があると評価するには足りない。 イこのほか,原告は,特任教員でなくとも,雇用形態を変えて被告に雇用されると期待していた旨主張するが,労働契約継続の前後において雇用形態が異なる以上,原告と被告の間における特任教員としての本件労働契約が更新される は,特任教員でなくとも,雇用形態を変えて被告に雇用されると期待していた旨主張するが,労働契約継続の前後において雇用形態が異なる以上,原告と被告の間における特任教員としての本件労働契約が更新されることを合理的な理由をもって期待させるものではなく,原告の主張は採用できない。 なお,原告は,被告が,原告を非常勤講師としても雇用しないとした理 由は,原告と被告の間の労働契約が期間の定めのないものに転換することを阻止するためであり,このような扱いは,労働契約法18条1項の適用を潜脱することになる旨をも主張する。 確かに,原告とほぼ同時期に非常勤講師の委嘱を申し出た2名の教員は,いずれも被告に非常勤講師として採用されたが,原告は非常勤講師として しかしながら,いかなる者を非常勤講師として採用するかは,被告の判断に委ねられる事項である。 また,Q副学長は,雇用の固定化を防止するため,原告を非常勤講師としても採用できない旨のメールを送信しているが,他 方で,教育研究の活性化及び高度化のため,教員の流動性を高めることが要請されている現状(乙14)にも鑑みれば,労働契約法18条1項により,期間の定めのない教員としての雇用義務が被告に生じる前の段階で,当該教員の雇用継続を打ち切ることも,被告の採用の自由の範囲内に属する判断として尊重されるべきである。その上で,原告が従前担当していた 科目を,X助教という別の教員を採用し,X助教に担当させること(認定 ウ以上のとおりであって,事情①ないし⑤を個別に,かつ,総合的に検討しても,原告が,本件労働契約の契約期間満了時である平成29年3月31日の時点において,本件労働契約の更新を期待することについて合理的 な理由があったということはできない。 ,総合的に検討しても,原告が,本件労働契約の契約期間満了時である平成29年3月31日の時点において,本件労働契約の更新を期待することについて合理的 な理由があったということはできない。 第4 結論以上によれば,被告が平成29年度以降において本件労働契約を更新しなかったことは,労働契約法19条2号に違反するものではなく,原告と被告との間の本件労働契約が継続していることを前提とする賃金の支払請求も理由がな い。そうすると,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却すべきこ ととなる。 よって,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第2部裁判長裁判官武部知子 裁判官向井宣人 裁判官臼倉尭史
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