昭和44(う)667 器物破損、不動産侵奪被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和45年2月14日 福岡高等裁判所
ファイル
hanrei-pdf-23584.txt
🤖 AI生成要約2026/3/13

【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人は無罪。          理    由  弁護人小田村元彦が陳述した控訴趣意は、記録に編綴の同弁護人提出の控訴趣意 書に記載のとおり(但し

タグ

キーワード(AI生成)

判決文本文4,603 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人は無罪。 理由 弁護人小田村元彦が陳述した控訴趣意は、記録に編綴の同弁護人提出の控訴趣意書に記載のとおり(但し、六枚目裏九行目の「原判示第二事実」を「原判示第一事実」と訂正する)であるから、これを引用する。 弁護人の控訴趣意中、事実誤認について。 所論は、原判決は本件第一、第二の公訴事実につき、すべて有罪を認定しているが、被告人は本件店舗につき、Aに対抗しうる賃借権を有し、これに基き、本件犯行当時の前後を通じ(Bの退去に関係なく)占有を継続しでいたものであるから、(一)原判示第一の所為は賃借権者として当然許容されることであり、また同判示第二の所為は占有侵奪に該らない。(二)、かりに共同占有者Bが本件店舗をAに明渡した事実があつたとしても、被告人は右賃借権による占有の継続を確信していたものであるから、同判示第一、第二の所為については、いずれも故意を欠如し、あるいは後者につき不法領得の意思を欠いていたことになり、いずれにしても無罪である、というにある。 そこで検討するに、本件記録および原裁判所で取り調べた証拠によれば、(一)本件店舗はCの所有物であつたところ、昭和四〇年四月二七日Dがこれを期間の定めなく、賃料月額五、〇〇〇円で賃借し、その後同年六月八日被告人が代表者代表取締役である有限会社E不動産(いわゆる個人会社)がCの同意を得てこの賃借権を譲受け、爾来被告人は同店舗でバナナやちり紙等の販売をしていたが、同年一二月下旬本件店舗の隣で履物販売をしていたBから同店舗の賃借方の申込みを受けるに及んで、これを一応拒絶したうえ新たに同人との間に原判示のとおりの約定をなして本件店舗で同人と共同で履物販売業をはじめ、以後同人と共同でこれを占有していたこと。(二) 店舗の賃借方の申込みを受けるに及んで、これを一応拒絶したうえ新たに同人との間に原判示のとおりの約定をなして本件店舗で同人と共同で履物販売業をはじめ、以後同人と共同でこれを占有していたこと。(二)、この店舗には、右賃借権設定前の昭和三九年二月一三日、既にF商事株式会社に抵当権が設定されており、これは同四〇年六月二六日抵当権の実行に着手され、同四一年二月七日Aが競落許可決定を経て同年三月四日所有権取得登記をなしたこと。(三)、そこでAは、本件店舗をBが前記のように使用しているのをみて、同人を相手に明渡請求の訴を起し、同年一一月一六日勝訴したので、Bもわずらわしくなつて判決の確定をまつまでもなく本件店舗における右営業を廃止することに定め、被告人と協議したところ被告人もこれに応じ、Bが被告人の商品を引きとつて清算することになつた。その後Bは商品引揚げを同月二六日と定めてこれを被告人に通知し、同日本件店舗から被告人の商品を運び出してこれを空にしたのであるが、このときBとしては本件店舗をめぐる紛争からのがれたい一心でその占有を積極的に被告人ないしはAのどちらにも譲渡する意思はなく、これを放棄する意思であり、従つて、本件店舗のシヤツタードアの内外錠の鍵を壁に掛けたままにしておいたのであるが、これを右荷物引揚完了後間もなく同店舗を訪れたAが勝手に使用して右ドアに施錠して戸締りを完了し、もつて本件店舗の占有を取得したこと(四)、右のようにAが占有を取得したときから四日後に、被告人は前記賃借権およびこれに基く占有を確保するため本件各公訴事実の如く、シヤツタードアの内外錠を損壊してその取り替えをなし、同日自動車の格納をしたうえ新たに施錠して戸締りし、もつて本件店舗の占有を取得し、更に二日程してシヤツタードアにE不動産と白ペンキで表示して自己の占有を公示し アの内外錠を損壊してその取り替えをなし、同日自動車の格納をしたうえ新たに施錠して戸締りし、もつて本件店舗の占有を取得し、更に二日程してシヤツタードアにE不動産と白ペンキで表示して自己の占有を公示したこと等の事実が認められる。 そこで、右認定事実を前提にして考察するに、まず、後叙のように被告人は原判示各所為のとき本件店舗につきAに対抗しうる賃借権を有していたのであるが、その故に、所論のように判示第一の所為が当然許容されるものとはいえない。ついで後叙のように被告人の原判示第一の所為および同第二の自動車の格納行為は、被告人が本件店舗の占有をAによつて、侵奪されこれを奪回する以前にすなわち被侵奪中に為されたものであり、しかも被告人がこれに反して占有が継続していると確信していたと認め難い以上、如何に右賃借権を被告人が有しておつたとしても、右第一の所為をもつて所論のように器物損壊罪の故意を欠如するものとか、同第二の所為をもつて不動産侵奪罪の侵奪行為に該当せぬとか或は、同罪の故意ならびに不法領得の意思を欠如するものとは、到底認めることができない。 しかしながら、更に職権で按ずるに、被告人は前記履物販売業を経営していた当時、Bと本件店舗の共同占有者であつたことは明らかであるから、他の共同占有者である同人と、その占有の根拠である本件店舗における履物業を廃止することおよび同人が同店舗から引揚げることを約したと同時に同人からその占有簡の易の引渡しを受けたものと解すべきであり、仮にこのとき簡易の引渡がなかつたとしても、前叙のようにBが店舗から引揚げたとき、その占有を放棄する意思であつたのであるから、共同占有の性質上当然にこの時点において同人の占有は被告人にいわば復帰するから、いずれにしても本件店舗の占有は、Aがこれを前叙のようにして取得する以前に被告 占有を放棄する意思であつたのであるから、共同占有の性質上当然にこの時点において同人の占有は被告人にいわば復帰するから、いずれにしても本件店舗の占有は、Aがこれを前叙のようにして取得する以前に被告人の単独占有に帰したものと認めざるを得ない(なお仮に、被告人が右履物業を営業中、本件店舗をBを占有代理人として占有していたものと解しても、Bとの間に前叙右営業廃止の約定がなされたときないしは同人がこの約に従い本件店舗から引揚げたときに矢張り被告人は本件店舗の直接占有を取得したといえる。)。そして、Aの前叙占有の取得による被告人の前叙単独直接占有の喪失は、被告人の意思にもとずかずになされたことは明らかであるから、被告人はAによつて占有を侵奪されたことになる。 <要旨>しかして、被告人はAに対し、右占有の回収を得るための占有訴権を有することは多言を要しないとこ</要旨>ろ、更に被告人の原審第二回公判期日における供述、Aの検察官に対する昭和四二年八月一一日付供述調書、実況見分調書によれば、Aが本件店舗の占有を取得したとき以降、前叙被告人がシヤツタードアーの内外錠を取り替えたときまで、本件店舗内には被告人の陳列棚が三脚程残置されていたことが認められ、また前叙のようにAの占有が戸締りをすることによつてなされたものであり、他方同人の検察官に対する昭和四二年八月三日付供述調書によれば、Aは右占有取得前から被告人が前記賃借権にもとずく占有の存在およびその継続の意思を主張していることを知悉していたことが認められるうえに、被告人が本件店舗の前叙錠を取り替えるまでにはAの右占有取得後四日しか経過していないのであるから、結局、Aの本件建物に対する右占有は、被告人との関係において、被告人の右錠取り替えのときまでに、未だ安定した生活秩序として確立していなかつたものと認め 占有取得後四日しか経過していないのであるから、結局、Aの本件建物に対する右占有は、被告人との関係において、被告人の右錠取り替えのときまでに、未だ安定した生活秩序として確立していなかつたものと認めるのが相当である。 そして、平和秩序維持のため物に対する事実的支配の外形を保護せんとする占有制度の趣旨および作用からいつて、占有侵奪者であるAの占有が前叙のように未だ平静に帰して新しい事実秩序を形成する前である限り、被侵奪者である被告人の喪失した占有は未だ法の保護の対象となつているものと解すべく、従つて、被告人はAの右占有を実力によつて排除ないしは駆逐して、自己の右占有を回収(奪回)することが法律上許容されるものと解される。(いわゆる自救行為として)。 してみると、被告人の前叙シヤツタードアーの内外錠の取り替えならびに自動車の格納は、その目的は何であれ、ともかく本件店舗に対する前記賃借権の存続を前提とするものであり、しかも右賃借権は、Aが本件店舗の所有権を取得した当時なお被告人の本件店舗に対する占有は継続しており、右賃借権はAの所有権に対し対抗力を有していたことが明らかであるから、その後被告人が右の様に一時的に占有を喪失してもAに対して対抗力を失うべき理はないので、これに基く従前からの占有を確保するために、Aから本件店舗の占有を奪回する手段方法として為されたものであることは、原審において取り調べた各証拠により明らかであるとともに、その手段方法としても必ずしも不当とはいえないのであるから、被告人が右錠の取り替えの一環としてなした原判示第一の旧内外錠の損壊行為ならびに自動車の格納行為には違法性がないものというべきである。 そして、被告人の右占有の奪回は右内外錠を取り替えたうえ自動車を格納し、これに施錠することによつて完了したものと認められるから 壊行為ならびに自動車の格納行為には違法性がないものというべきである。 そして、被告人の右占有の奪回は右内外錠を取り替えたうえ自動車を格納し、これに施錠することによつて完了したものと認められるから(ちなみにAにはこの奪回に対する占有訴権のないことはむろんである)、これの二日程後になされた被告人の原判示第二のその余の所為が不動産の侵奪行為に該当しないことは多言を要しまい。 すると原判決には、これらの点を看過し、もつて事実を誤認した違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は結局理由がある。 そこで量刑不当の論旨に対する判断を省略して刑事訴訟法三九七条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により更に自ら判決する。 本件公訴事実の要旨は「被告人は第一昭和四一年一一月三〇日頃、佐世保市a町b番地A所有の木造亜鉛鍍鋼板葺二階家店舗において、同店舗のシヤツタードアについていた内外錠を情を知らないG、Hをしてハンマー、タガネ等をもつて損壊させ、もつて他人の器物を損壊し、第二前回日頃、何らの権限なく、前記店舗内に自動車一台を格納した上、同年一二月二日頃、右店舗のシヤツタードアにE不動産事務所と白ペンキで表示し、同シヤツタードアに自己が新しく取付けさせた内外錠を施錠し、もつてA所有の右店舗の階下部分(床面積一〇・五七平米)を侵奪したものである。」というにあるが、前叙説示のとおり本件各公訴事実については犯罪の証明がないことに帰するから、刑事訴訟法三三六条により無罪の言渡をする。 よつて、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官岡林次郎裁判官緒方誠哉裁判官池田良兼) 判官 岡林次郎 裁判官 緒方誠哉 裁判官 池田良兼

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る