主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,札幌市に対し,1593万2686円及びこれに対する平成14年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,市政に関する調査研究のため,札幌市が条例に基づいて被告に交付した平成13年度の政務調査費の一部について,被告がこれを議員会一時貸付金として使用したことが,同条例で定められた使用目的に違反しているなどと主張して,同市の住民である原告が,被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号の規定(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)に基づき,札幌市に代位して,目的外の使用に係る金員を不当利得又は不法行為に基づく損害の賠償として支払うよう求めた住民訴訟である。 1 前提事実(括弧内に証拠を掲記した事実の他は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,札幌市の住民である。 イ被告は,札幌市議会における会派であり,いわゆる権利能力なき社団である。 (2) 平成12年に改正された地方自治法100条12項(平成12年法律第89号により新設された同条項は,平成14年法律第4号により改正され,現在は13項となっている。以下同じ。)により,「普通地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務調査費を交付することができる。」と定められたことを受け,札幌市では,平成13年3月30日に札幌市議会政務調査費の交付に関する条例(以下「本件条例」という。)及び同規則(以下「本件規則」という。)が制定され,同年4月から,同条例及び同規則に基づいて政務調査費が交付されるようになった。 (3) 札幌市は,本件 の交付に関する条例(以下「本件条例」という。)及び同規則(以下「本件規則」という。)が制定され,同年4月から,同条例及び同規則に基づいて政務調査費が交付されるようになった。 (3) 札幌市は,本件条例に基づき,被告に対し,平成13年4月10日,同年7月10日,同年10月10日及び平成14年1月10日にそれぞれ3120万円ずつ,合計1億2480万円を政務調査費として交付した(乙第1,第2,第10号証)。 (4) 被告は,札幌市から交付された政務調査費の一部合計1593万2686円を,以下のとおり,議員会一時貸付金として使用した(以下,併せて「本件各支出」という。)。 ア平成13年4月20日 195万円イ同年6月20日 70万0630円ウ同年7月23日 715万円エ同年10月23日 195万円オ同年12月12日 223万2056円カ同14年1月24日 195万円(5) 原告は,平成14年5月17日,札幌市監査委員に対し,被告が支出した政務調査費の使途を調査し,その結果条例違反の支出行為があった場合には札幌市の被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを求めて住民監査請求をした。 これに対し,札幌市監査委員は,同年7月16日付けで同監査請求を棄却した。 2 争点及びこれに対する当事者双方の主張(1) 本件各支出が本件条例5条所定の使途の基準に違反して違法であるか否か(原告の主張)本件条例5条は,「会派は,政務調査費を,別表に定める使途に従って使用するものとし,市政に関する調査研究に資するために必要な経費以外のものに充ててはならない。」と定めているところ,政務調査費を議員会一時貸付金として使用することは,同条例の定める政務調査費の使用目的を逸脱しているから違法な支出に該当する。 政務調査費を所定の使途以外 に充ててはならない。」と定めているところ,政務調査費を議員会一時貸付金として使用することは,同条例の定める政務調査費の使用目的を逸脱しているから違法な支出に該当する。 政務調査費を所定の使途以外の目的に支出することは,前記のとおり禁止されているから,本件各支出の違法性を判断するに際しては,同支出に相当する金員が後に返還される予定であるか,実際に返還されたかどうかは全く問題とならない。 (被告の主張)本件各支出は,政務調査費の一部を被告が議員会会費に一時的に流用するため,議員会一時貸付金として帳簿上処理したものであり,年度内に返還することを予定して一時的に他の支出に流用したものに過ぎないから,実質的な違法性はない。仮に,本件各支出に違法性がないとは言えないとしても,争点(2)の被告の主張のとおり,被告が年度内に本件各支出と同額の金員を返還したことにより,違法な状態は解消された。 (2) 本件各支出に相当する金員が返還されたか否か(被告の主張)被告は,本件各支出に相当する金員のうち,70万0630円を平成13年10月17日に,残りの1523万2056円を平成14年2月28日に,それぞれ政務調査費の勘定に返還した。後者の金員について補足すると,1523万2056円のうち,223万2056円については,被告の議員会会費用の口座から引き出して政務調査費専用の口座に入金し,残りの1300万円については,同年3月1日,被告に属する各議員が調査研究費として支出した支出内容を被告が確認した上,各議員が負担した金額の範囲内で政務調査分担費として政務調査費を分配したが,被告の経理担当者が政務調査費の取扱いに不慣れであったため,議員会会費用の口座から引き出された金員は,政務調査費の専用口座に振り込まれることなく,直接各議員に交付された。しかしながら,こ 配したが,被告の経理担当者が政務調査費の取扱いに不慣れであったため,議員会会費用の口座から引き出された金員は,政務調査費の専用口座に振り込まれることなく,直接各議員に交付された。しかしながら,このような資金の処理については,何ら問題とされるべき点は存在しない。 地方自治法242条の2第1項4号に基づく請求は,地方自治体がその職員又は相手方に対して有する不当利得返還請求権ないし損害賠償請求権を住民が代位行使するものであるから,仮に本件各支出が違法と評価されるものであっても,被告が本件各支出に相当する金員全額を政務調査費の勘定に返還した以上,本件条例9条に基づく不当利得返還請求権は消滅することになるか,又は札幌市には損害がないことになるから,同条に基づく不当利得返還請求ないし損害賠償請求はいずれも理由がない。 (原告の主張)被告が本件各支出相当額を政務調査費の勘定に返還したことは否認する。 被告が平成14年2月28日に返還したとする1523万2056円のうち,1300万円については被告の政務調査費専用口座に入金されていないから,少なくとも同金員については返還の事実は存在しないというべきである。 また,本件条例9条によれば,市政の調査研究に資するために必要な経費として支出した額を控除した残余の額は札幌市に返還されるべきものであるから,札幌市への返還がなされていない以上,不当利得返還請求ないし不法行為に基づく損害賠償請求は認められるべきである。 (3) 政務調査分担費としての支出が違法であるか否か(原告の主張)仮に本件各支出相当額がいったん返還されたと評価できるとしても,返還された金員を被告が被告所属の各議員に政務調査分担費として支払ったことは,以下のとおり,本件条例の趣旨を逸脱した違法な支出というべきであり,これにより,札幌市は同金額相当 と評価できるとしても,返還された金員を被告が被告所属の各議員に政務調査分担費として支払ったことは,以下のとおり,本件条例の趣旨を逸脱した違法な支出というべきであり,これにより,札幌市は同金額相当の損害を被ったから,被告は,札幌市に対し,同額の不当利得返還又は損害賠償義務を負う。 即ち,まず,本件条例2条が政務調査費の交付対象を会派に限り,政務調査費の使用目的について定めた同条例5条の別表が「会派の行う」「会派の」などという文言を用いていること,議員各人にその使途を委ねてしまうと,会派がその使途を適正に管理することが困難であることなどに照らすと,政務調査費は,議員個人に支給されるものではなく,会派に対して支給されることが原則であるというべきである。しかるに,被告は,返還したとする政務調査費のうち1300万円を平成14年3月1日に,242万0165円を同月29日に,いずれも支出内容を吟味することなくそれぞれ各議員に配布しているのであって,このような政務調査費の各議員への配布は本件条例の趣旨に反して違法というべきである。また,被告は,各議員に配布された政務調査費のその後の使途を明らかにする資料を提出しないことから,当該政務調査費を使途不明金として,使用目的外の違法な支出とみるべきである。 (被告の主張)被告は,各議員が調査研究費として支出した支出の内容を確認した上,各議員が負担した金額の範囲内で被告所属の議員に対し,政務調査費分担費として政務調査費を分配した。 即ち,平成14年3月1日に支払った1300万円は,議員26名に対してそれぞれ50万円ずつ政務調査分担費として概算払したもの,同月29日に支払った242万0165円は,議員21名に対し,それぞれの調査研究経費の負担状況に応じて政務調査分担費として支払ったものである。 また,政務調査費 つ政務調査分担費として概算払したもの,同月29日に支払った242万0165円は,議員21名に対し,それぞれの調査研究経費の負担状況に応じて政務調査分担費として支払ったものである。 また,政務調査費は,本件条例上は会派に対して交付されるものとされているが,これは札幌市議会においては議員数が多数にのぼり,議会運営上会派の存在が前提とされていることから,会派を受給権者とし,会派に当該政務調査費にかかる収入及び支出の報告や適正な経理及び保管を義務づけるのが相当と考えられたことによるものである。地方自治法上,政務調査費は「地方公共団体の議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し交付することができる。」とされている(同法100条12項)こと,条例上も,「札幌市議会議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として」交付されるものとされていること(本件条例1条)などに照らすと,会派がこれを当該会派に属する議員の調査研究活動に必要な経費に充てるため,各議員に政務調査分担費として支払うことは当然許容されているものというべきである。 したがって,被告がその所属の各議員に支払った政務調査分担費は,政務調査費の支出として何ら違法な点はない。 なお,被告が政務調査分担費として支払った具体的な使途等については,各議員の政治活動の内容そのものに関わる問題であり,その明細を明らかにするのは相当ではなく,また,その必要性もない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件各支出が本件条例5条所定の使途の基準に違反して違法であるか否か)について(1) 前記前提事実に加え,甲第1,第2,第4,第6号証,乙第1ないし第10号証(枝番号のあるものを含む。),証人Aの証言及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,同認定を左右 か)について(1) 前記前提事実に加え,甲第1,第2,第4,第6号証,乙第1ないし第10号証(枝番号のあるものを含む。),証人Aの証言及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,同認定を左右するのに足りる証拠はない。 ア札幌市においては,昭和43年12月に札幌市議会各会派に対する調査研究費の交付に関する規則が設けられ,同規則に従って調査研究費が支給されてきたところ,平成12年に改正された地方自治法100条12項により,「普通地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し交付することができる。この場合において,当該政務調査費の交付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めなければならない。」と定められたことを受けて,平成13年3月30日に本件条例及び同規則が制定され,同年4月から,同条例及び同規則に基づいて政務調査費が交付されるようになった。 イ本件条例及び本件規則の内容本件条例及び本件規則には,政務調査費の交付・使用・管理につき,概ね以下のとおりの定めがある(甲第1,第2号証)。 (ア) 政務調査費は,札幌市議会における会派に対して交付する(本件条例2条)。 (イ) 会派に交付する政務調査費の月額は,40万円に各月1日における当該会派の所属議員数を乗じて得た額とする(同3条)。 (ウ) 会派は,政務調査費を下記の使途に従って使用するものとし,市政に関する調査研究に資するために必要な経費以外にものに充ててはならない(同5条)。 記研究研修費,調査旅費,資料作成費,資料購入費,広報費,広聴費,人件費,事務所費,その他の経費(エ) 会派は,政務調査費の保管及び経理の状況を明確にするため,経理責任者を置かなければならない(同6条)。 (オ) 政務調 資料作成費,資料購入費,広報費,広聴費,人件費,事務所費,その他の経費(エ) 会派は,政務調査費の保管及び経理の状況を明確にするため,経理責任者を置かなければならない(同6条)。 (オ) 政務調査費の交付を受けた会派の代表者は,当該交付を受けた年度分の政務調査費について,収入及び支出の報告書(以下「収支報告書」という。)を作成し,議長に提出しなければならない(同7条)。 (カ) その年度において会派が交付を受けた政務調査費の総額から,その年度において市政の調査研究に資するために必要な経費として当該会派が支出した政務調査費の額の総額を控除して残余がある場合には,当該会派は,当該残余の額を返還しなければならない(同9条)。 (キ) 政務調査費の交付を受けた会派は,政務調査費に係る経理を次のとおり行わなければならない(本件規則6条1項)。 a 会派の代表者が支出の決定を行うこと。 b 経理責任者は,会派の代表者が発行した収入支出伝票に基づいて出納を行うこと。 c 経理責任者は,支払に当たっては領収書を徴すること。ただし,領収書を徴し得ない経費について支払を行う場合には,会派の代表者が発行したその支払を証明する旨の書面をもってこれに代えることができる。 d 経理責任者は,政務調査費専用の預金口座及び会計帳簿を調製し,その管理を適正に行うこと。 (ク) 政務調査費の交付を受けた会派の経理責任者は,(キ)の規定により取り扱った会計帳簿等の書類を当該政務調査費に係る収支報告書の提出期限日の属する年度の翌年度の4月1日から起算して5年を経過する日まで保存しなければならない(同規則6条2項)。 ウ被告は,平成13年3月29日,政務調査費専用の銀行口座として,B銀行C支店に被告会長D名義の普通預金口座(乙第2号証)を設けるとともに,政務調査費元帳(乙第1号 ばならない(同規則6条2項)。 ウ被告は,平成13年3月29日,政務調査費専用の銀行口座として,B銀行C支店に被告会長D名義の普通預金口座(乙第2号証)を設けるとともに,政務調査費元帳(乙第1号証)を調製してこれを管理した。札幌市は,被告に対し,政務調査費として,平成13年4月10日,同年7月10日,同年10月10日及び平成14年1月10日に,それぞれ3120万円ずつ,合計1億2480万円を交付した。 被告においては,札幌市から交付を受けた政務調査費を,会派が全体として行う調査研究活動や,議会の各種委員会の委員として各議員が行う共通の調査研究活動などの会派自体の調査研究活動費用に充てるほか,会派の承認の下に,個々の議員が行う政策の立案検討などの個々の議員の調査研究活動費用にも充てていた。被告は,平成13年度の政務調査費の交付を受けるたびに,その一部を,個々の議員の政務調査分担費に充てるために各議員に対して概算払をし,同年度末近くになると,各議員から同年度の調査研究活動の費用明細を提出させて,不足分の支払をしていた。 エ被告は,政務調査費専用の銀行口座を設けて政務調査費を管理していた他,被告の議員会会費用の銀行口座を別途開設し,同口座により議員会会費の会計を管理していたが,議員会会費用の口座の残高が不足したため,以下の(ア)ないし(カ)のとおり,札幌市から交付された政務調査費の一部合計1593万2686円を議員会会費に流用して使用し,政務調査費の会計上は,議員会一時貸付金として処理した(本件各支出)。 (ア) 平成13年4月20日 195万円(イ) 同年6月20日 70万0630円(ウ) 同年7月23日 715万円(エ) 同年10月23日 195万円(オ) 同年12月12日 223万2056円(カ) 同14年1月24日 円(イ) 同年6月20日 70万0630円(ウ) 同年7月23日 715万円(エ) 同年10月23日 195万円(オ) 同年12月12日 223万2056円(カ) 同14年1月24日 195万円被告は,本件各支出による金員を利用して,被告所属議員のE党F支部連合会の会費や同連合会の主催するセミナーへの参加費を立替払するなどした。 オ被告は,本件各支出のうち,前記エ(イ)の支出に相当する70万0630円を,平成13年10月17日付けで政務調査費専用の預金口座に入金するとともに,政務調査費元帳に同金員が返還された旨を記載した。 また,被告は,本件各支出のうち,前記エ(イ)の70万0630円を除く支出に相当する1523万2056円について,被告所属の各議員から1人当たり50万円を議員会会費の口座に入金させることにより議員会一時貸付金の残金を回収することとし,順次入金させることにより,平成14年2月26日の時点で同口座に1623万9192円の資金を保有することとなったため,同月28日付けで政務調査費元帳に本件各支出の残額1523万2056円が返還された旨を記載した。但し,被告は,同日,上記1523万2056円のうち223万2056円を議員会会費の口座から引き出して政務調査費の専用口座に入金したものの,残額の1300万円については,同年3月1日,議員会会費の口座から引き出しただけで,政務調査費の専用口座には入金しなかった。 カ被告の経理責任者Aは,平成14年3月1日以降,政務調査費を以下のとおり支出した。 (ア) 平成14年3月1日 1300万円被告所属の議員26名に対し,政務調査分担費として1人当たり50万円を概算払した。 (イ) 同月14日 30万円被告の事務局の小口の支払などに充てるため,政務調査費の口座から引き 1300万円被告所属の議員26名に対し,政務調査分担費として1人当たり50万円を概算払した。 (イ) 同月14日 30万円被告の事務局の小口の支払などに充てるため,政務調査費の口座から引き出した上,会議室借上げ費用等の支払に充て,残額10万9896円は下記(オ)の政務調査分担費の支払に充てた。 (ウ) 同月29日 104万円広報活動に必要な郵便切手の支払に充てられた。 (エ) 同月29日 28万1925円政策資料作成費として株式会社Gに支払った。 (オ) 同月29日 242万0165円各議員から平成13年度の調査研究活動に関する費用の明細を提出させ,これを精査した上で,不足分についての追加の政務調査分担費として21名の議員に1人当たり1万円から38万3000円の範囲で支払った。このうち,10万9896円は,前記(イ)のとおり小口現金の残額をもって充てた。 (2) 以上に認定した事実を前提として,本件各支出が条例5条所定の使途の基準に違反して違法であるか否か検討するに,前記(1)イ(ウ)のとおり,本件条例5条は,政務調査費の使途を研究研修費,調査旅費,資料作成費,資料購入費,広報費,広聴費,人件費,事務所費,その他の経費に限定し,市政に関する調査研究に必要な経費以外のものに充てることを禁止しているのであって,被告が議員会会費の不足分を補うために政務調査費を流用して行った本件各支出が同条に反して違法であることは明らかである。 被告は,本件各支出は,年度内に返還することを予定して一時的に議員会会費に流用したものに過ぎないから実質的な違法性はない,仮に違法性がないとは言えないとしても,年度内に返還したことにより違法状態は解消されたと主張するが,政務調査費の使途を限定している本件条例の趣旨に照らすと,同条例がこのような流用を許容す 性はない,仮に違法性がないとは言えないとしても,年度内に返還したことにより違法状態は解消されたと主張するが,政務調査費の使途を限定している本件条例の趣旨に照らすと,同条例がこのような流用を許容するものとは到底解することができない。このことは,流用された政務調査費が後に返還されたとしても同様である。 よって,この点に関する被告の主張を採用することはできない。 2 争点(2)(本件各支出に相当する金員が返還されたか否か)について(1) 地方自治法242条の2第1項4号に基づく請求は,地方公共団体が有する実体法上の請求権(損害賠償請求権,不当利得返還請求権等)につき,その地方公共団体の住民が,同地方公共団体に代位して,同請求権の履行義務者である相手方に対して損害賠償,不当利得の返還等を請求することなどをその内容とするものであるから,同条項に基づく請求にあっては,同請求の前提として,地方公共団体の相手方に対する上記実体法上の請求権が存在することが必要である。 本件各支出が違法であることは前記1(2)のとおりであるが,前記1(1)オのとおり,被告は,本件各支出のうち,平成13年6月20日に支出した議員会一時貸付金相当額である70万0630円については同年10月17日に政務調査費専用の預金口座に同額の金員を入金しており,残りの1523万2056円についても,うち223万2056円については前記1(1)オのとおり政務調査費専用の口座に入金し,さらに,被告所属の各議員から1人当たり50万円を議員会会費の口座に順次入金させることにより議員会一時貸付金の残金1300万円の回収を図り,平成14年2月28日までには同回収を終えて,同日付けで政務調査費元帳に本件各支出の残額1523万2056円が返還された旨記載しているところである。そして,この1300万円につ 0万円の回収を図り,平成14年2月28日までには同回収を終えて,同日付けで政務調査費元帳に本件各支出の残額1523万2056円が返還された旨記載しているところである。そして,この1300万円については,議員会会費の口座から引き出された日に政務調査分担費として被告所属の議員26名に対して支払われているものの,後記3のとおり,政務調査費の使途として,議員の調査研究活動に必要な経費に充てるため政務調査分担費として各議員に政務調査費を支出することが許容されていると解するのが相当であることをも考え併せると,違法に支出された本件各支出に相当する金員は,全額が実質的に政務調査費の会計に返還されたと評価することができるというべきである。 本件条例9条は,その年度において交付を受けた政務調査費の総額から政務調査費として支出した額を控除して残余がある場合に,その残余金を札幌市に返還すべき義務を規定したものであって,所定以外の使途に支出した金額を直ちに札幌市に返還すべきものと規定しているわけではないことに鑑みると,本件においては,同条項にいう残余が生じたものとは言えないから,被告に不当利得返還義務は発生しないというべきであるし,札幌市には本件各支出を原因とする損害は発生しなかったというべきであるから,いずれにしても札幌市の被告に対する実体法上の請求権が存在するということはできない。よって,その存在を前提とする原告の請求はいずれも理由がない。 (2) 原告は,被告が平成14年2月28日に返還したとする1523万2056円のうち,1300万円については被告の政務調査費専用口座に入金されていないから,少なくとも同金員については返還の事実は存在しないと主張する。確かに,前記1(1)オのとおり,被告は,平成14年2月28日までに回収した1523万2056円のうち, 専用口座に入金されていないから,少なくとも同金員については返還の事実は存在しないと主張する。確かに,前記1(1)オのとおり,被告は,平成14年2月28日までに回収した1523万2056円のうち,223万2056円については議員会会費の口座から引き出して政務調査費の専用口座に入金したものの,残額の1300万円については,政務調査費の専用口座には入金していない。そして,本件各支出相当額が政務調査費に返還されたことを明確にするためには政務調査費の専用口座に入金されることが望ましく,また,証人Aの証言によれば,被告は,平成13年度の政務調査費元帳を平成14年3月ころに清書するため書き換えるとともに,従前のものを廃棄したことが認められるのであって,被告のこれらの処理は,政務調査費の会計の透明性を確保しようとした本件規則6条1・2項の趣旨に反することは明らかであり,極めて不適切な処理であったと言わざるを得ないところである。 しかしながら,前記1(1)カ(ア)のとおり,議員会会費の口座に振り込まれた残額の1300万円は,政務調査分担費の支払に充てるため引き出され,実際にも各議員に対して政務調査分担費の概算払として支払われているから,実質的にみて,本件各支出相当額の金員が政務調査費の勘定に返還されたと評価することができるのであり,上記のような被告の不適切な処理があったからといって,返還されなかったとまではいうことができない。 3 争点(3)(政務調査分担費としての支出が違法であるか否か)について前記1(1)カのとおり,被告は,平成14年3月1日,被告所属の議員26名に対し,政務調査分担費として1人当たり50万円ずつ合計1300万円の政務調査費を支払い,同月29日にも各議員の調査研究活動の内容に応じて21名の議員に対して合計242万0165円の政務調査 26名に対し,政務調査分担費として1人当たり50万円ずつ合計1300万円の政務調査費を支払い,同月29日にも各議員の調査研究活動の内容に応じて21名の議員に対して合計242万0165円の政務調査分担費を支払ったところ,原告は,これらの支出は政務調査費の交付対象を会派に限った本件条例の趣旨に反し違法であると主張する。 そこで検討するに,そもそも政務調査費の制度は地方議会の審議能力を強化してその活性化を図るため,地方議員の調査活動の基盤を充実させるとの観点から,平成12年の地方自治法改正の際に議会の会派又は議員に対する調査研究費等の助成として制度化されたものであるところ(乙第11号証,弁論の全趣旨),このような制度趣旨に鑑みると,議員個人に対する政務調査費の交付が当然に禁止されるものでないことは明らかであり,このことは,地方自治法100条12項が,政務調査費の交付の対象を条例で定めるものとし,会派のみとするか議員のみとするか又は会派及び議員双方とするかの選択を地方議会等に委ねていることからも明らかである。 そして,札幌市においては,本件条例によって,政務調査費は会派に対して交付されるものとされている(同条例1条)が,これは,札幌市議会においては議員数が多数にのぼり,議会運営上会派の存在がその前提とされていることから,会派を受給権者とし,会派に当該政務調査費にかかる収入及び支出の報告や適正な経理処理及び保管を義務づけるのが相当であると考えられたことによるものと解される。 そうすると,政務調査費の経理の適正及び保管について会派が責任をもって行うとの前提の下に,当該会派に属する個々の議員の調査研究活動に必要な経費に充てる目的で政務調査費を使用することは許容されていると解するのが相当であるから,札幌市から交付を受けた政務調査費を,被告において各 前提の下に,当該会派に属する個々の議員の調査研究活動に必要な経費に充てる目的で政務調査費を使用することは許容されていると解するのが相当であるから,札幌市から交付を受けた政務調査費を,被告において各議員が支出した調査研究活動の経費の内容に応じて政務調査分担費として各議員に交付したことをもって違法ということはできない。 また,被告が各議員に配布された政務調査分担費の使途を明らかにする資料を提出せず,これらの政務調査分担費の使途が不明であるからといって,それが直ちに違法であるということはできない。 よって,原告の主張は採用できない。 第4 結論以上によれば,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第2部裁判長裁判官奥田正昭裁判官鈴木秀行裁判官徳井真
▼ クリックして全文を表示